以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、全図面を通して、同一の部位については同一の符号を付して二度目以降の説明を省略している。
(実施の形態1)
最初に、図1及び図2を用いて本発明に係る加湿装置Aの概略構成を説明する。
図1は、加湿装置Aの基本構成を示す斜視図である。
図2は、加湿装置Aの基本構成を示す断面図である。図2は、図1のI−I断面を図1に示す矢印方向から見た図である。
図1、図2に示すように、加湿装置Aは、本体ケース1と、本体ケース1内に設けられた操作部9と、加湿部2と、送風部3と、制御部51とを備えている。
本体ケース1は、縦長の箱形状であり、本体ケース1内は、水平に設けられた平板形状の仕切板部4によって、第1の空間部5と第2の空間部6とに仕切られている。第1の空間部5は、第2の空間部6の上方に配置されている。本体ケース1の外周面の前面側には吸込口7が備えられている。本体ケース1の天面の背面側には吹出口8が備えられている。吸込口7と吹出口8は、本体ケース1外と第1の空間部5とを連通している。本体ケース1における第1の空間部5内には、吸込口7と吹出口8とを連通する風路10を有している。
操作部9は、四角形状を有し、本体ケース1の天面の前面側に備えられている。操作部9は、制御部51と接続されており、ユーザによる入力を受け付けて制御部51に送信することで、加湿装置Aへの命令を制御部51に伝達する。
加湿部2は、貯水容器11と、加湿フィルター12と、水供給部材13と、給水パイプとを備えている。
貯水容器11は、上方が開口した椀形状であり、水を貯水することができる。貯水容器11は、第2の空間部6内に設けられ、本体ケース1における前面側から着脱可能に装着されている。貯水容器11を本体ケース1における前面側へ引き出すと、本体ケース1から貯水容器11が外れる。貯水容器11は、貯水容器11内の水量を検知する水量検知部54を備えている。貯水容器11は、上方から内部空間にかけてタンク部31を備えているが詳細は後述する。
水量検知部54は、貯水容器11内部に設けられ、貯水容器11内の水量を検知する。水量検知部54は、貯水容器11の渇水を検知し、あるいは所定の水量以上、以下を検知し、あるいは貯水容器内に貯められている水の量を例えば水位から検知するものであってもよい。
加湿フィルター12は、平板形状であり、多くの繊維を備え、繊維と繊維の間に水を保水することができる。加湿フィルター12は、第1の空間部5内に、吸込口7と加湿フィルター12の平面部が対向するように設けられている。貯水容器11内の水が、水供給部材13によって加湿フィルター12の上方から供給される。
水供給部材13は、ポンプ部14と、供給部15と、ドレンパン部16とを備えている。
ポンプ部14は、貯水容器11内の水を供給部15へ供給し、供給部15では供給部15内の水が加湿フィルター12へ滴下する。滴下した水のうち、加湿フィルター12で保水されない余剰水は、ドレンパン部16を介して貯水容器11へ戻される。ポンプ部14は、ポンプ17と、ポンプモータ18とを備えている。
ポンプ17は、一例として、ケーシング内で羽根車が回転することにより送水する遠心ポンプである。ポンプ17は、貯水容器11内に設けられ、第1の管19の一方側の端部と接続されている。ポンプ17は、ポンプモータ18によって駆動すると、貯水容器11内の水を吸い上げ、筒形状である第1の管19へ水を送る。
ポンプモータ18は、ポンプ17を回動させるが詳細は後述する。
給水パイプは、ポンプ部14と供給部15とを連通する給水経路を構成する。給水パイプは、第1の管19と、第2の管20と、連結ユニット21とを備えている。
第1の管19及び第2の管20は、中空円筒形で柔軟性を有する素材にて形成されるチューブであり、素材としては例えばシリコンが利用可能である。
連結ユニット21は、第1の連結部22と第2の連結部23とを有している。第1の連結部22と第2の連結部23とは着脱自在な構成である。
第1の連結部22は、第1の管19の他端側の端部に接続されている。貯水容器11を本体ケース1における前面側へ引き出すと、第1の連結部22は第2の連結部23から外れ、貯水容器11とポンプ17と第1の管19と第1の連結部22とが一体となって本体ケース1から外れる。
第2の連結部23は、仕切板部4の下面側であってポンプモータ18を固定している壁面に固定され、第2の管20の一方側の端部と接続されている。連結ユニット21である第1の連結部22と第2の連結部23は、第1の管19と第2の管20とを連通している。ポンプ17によって、第1の管19へ送られた水は、連結ユニット21を介して、第2の管20へ送られる。第2の管20の他方側の端部は、供給部15に接続されている。第2の管20は、仕切板部4に設けられた孔である第1の連通部4Aを介して、第2の空間部6から第1の空間部5へ延びている。なお、第2の管20の外面は、第1の連通部4Aである孔に嵌っており、第2の管20と第1の連通部4Aとの間には実質的な隙間が無い状態である。
供給部15は、加湿フィルター12の上方に配置され、第2の管20から送られた水を、加湿フィルター12へ滴下する。
ドレンパン部16は、加湿フィルター12の下端部の下方に配置され、仕切板部4に固定されている。ドレンパン部16は、仕切板部4における孔である第2の連通部4Bを介して、第1の空間部5から第2の空間部6へ延びている。加湿フィルター12で保水されない余剰水は、ドレンパン部16を介して貯水容器11へ戻される。なお、ドレンパン部16の外面は、第2の連通部4Bである孔に嵌っており、ドレンパン部16と第2の連通部4Bとの間には実質的な隙間が無い状態である。
供給部15と加湿フィルター12とドレンパン部16とによって、第1の空間部5は、第1の前面空間部24と第1の背面空間部25の2つの空間に仕切られている。第1の前面空間部24は、加湿フィルター12より前面側の空間であり、第1の背面空間部25は、加湿フィルター12より背面側の空間である。
送風部3は、第1の背面空間部25に固定されている。送風部3は、スクロール形状のケーシング26と、ケーシング26に固定されたモータ27と、モータ27によって回転する羽根28とを備えている。
ケーシング26は、上面に吐出口29を、前面側に吸気口30を備えている。ケーシング26の吸気口30は、加湿フィルター12と吸込口7とに対向している。ケーシング26の吐出口29は、本体ケース1の吹出口8と対向している。
続いて、図3を用いてタンク部31の詳細構成を説明する。
図3は、タンク部31を示す分解断面図である。
図3に示すように、タンク部31は、水を貯水するタンク32と、タンク32のタンク開口33に設けた蓋34とを備えている。蓋34は、タンク32内の水を貯水容器11に供給する弁機構35を備えている。
タンク32は、箱形状で、貯水容器11内にタンク部31を装着した状態において、タンク32の天面にタンクハンドル36を備え、タンク32の下面にはタンク開口33を備えている。
弁機構35は、蓋34を鉛直下方に向けて貯水容器11に配置することで、タンク32内に貯められた水を貯水容器11に一定量供給する。これにより、タンク32内に水がある限り、貯水容器11内には一定量の水が常時確保される。
続いて、図4及び図5を用いて、ポンプ部14の詳細構成を説明する。
図4は、ポンプ部14を示す斜視図であり、図5は、ポンプ17を示す分解斜視図である。
図2、図4、及び図5に示す通り、ポンプモータ18は、ポンプ17と対向し、第2の空間部6内であって貯水容器11の外側に配置された壁面に設けられている。ポンプモータ18の回転軸41には、回動磁石42が固定されており、回転軸41の回転により回動磁石42が回動する。ポンプモータ18は、具体的にはブラシレスDCモータが利用できる。
ブラシレスDCモータは、三相の巻線が施された固定子と、磁石回転子と巻線との位置関係を検出する位置検出部と、速度指示信号を介して磁石回転子の回転速度を指示する速度指示部とを備える。また、速度指示部からの速度指示信号に基づいて固定子に与える印加電圧のデューティを決定するデューティ決定部と、位置検出部が検出した位置関係とデューティ決定部が決定したデューティとに基づいてインバータを構成する複数のスイッチング素子にデューティ信号を分配出力するモータ制御部(後述のモータ制御部65)とを備える。
ポンプ17内には、応動磁石がインサート成形された羽根車43が回転自在に設けられており、羽根車43は、ポンプ蓋44で、ポンプ17内に回動自在に保持されている。
貯水容器11が本体ケース1に装着された状態で、ポンプモータ18の回転軸41と、ポンプ17内の羽根車43の回転軸は、同軸上に配置されており、近接することにより、磁力により回転が同期することになる。ポンプモータ18の回動磁石42が回転することによって、回動磁石42とは非接触状態であるポンプ17内の応動磁石、すなわち羽根車43が回転し、ポンプ17は貯水容器11内の水を吸い上げて第1の管19、及び第2の管20を介して供給部15へ送ることができる。
以上が加湿装置Aの構成である。
続いて、加湿装置Aの上記構成における加湿処理の概略について説明する。なお、加湿処理は、例えば操作部9の背面に備えられた制御部51により制御される。
まず、ポンプモータ18によってポンプ17が駆動すると、ポンプ17は、貯水容器11内の水を吸い上げ、第1の管19、連結ユニット21、第2の管20を介して、供給部15へ水を送る。
供給部15は、第2の管20から送られた水を、加湿フィルター12へ滴下する。加湿フィルター12は、滴下した水の一部を保水する。加湿フィルター12で保水されない余剰水は、ドレンパン部16を介して貯水容器11へ戻される。
この状態で、送風部3のモータ27によって羽根28が回転すると、本体ケース1外の空気が、吸込口7から第1の空間部5内へ吸い込まれ、加湿フィルター12へ送風される。保水した加湿フィルター12を通過するときに空気が加湿され、この加湿された空気が、送風部3の吸気口30、吐出口29を介して、吹出口8から本体ケース1外へ送風される。
続いて、図6を用いて制御部51の概要について説明する。
図6は、加湿装置Aの機能ブロックを示す図である。
図6に示す通り、制御部51は、駆動部、すなわち送風部3と、ポンプ部14を構成するポンプモータ18と、水量検知部54と、操作部9と接続されており、命令やあるいは情報を電気信号として各駆動部と送受信することで、各駆動部の動作を制御する。
制御部51は、具体的には、マイクロコンピュータ、いわゆるマイコンとして設けられている。マイクロコンピュータは、内部にCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)を備え、加湿装置Aにおける各駆動部(デバイス)が内部バスを介して接続されている。CPUは、例えばRAMを作業領域として利用し、ROMに記憶されているプログラムを実行し、当該実行結果に基づいて各駆動部と情報(データ)や命令を授受することにより各駆動部の動作を制御する。
制御部51は、通常処理部60と、モータ制御部65と、エア抜き準備処理部61と、エア抜き処理部62と、エア混入防止処理部63と、脱調検知部64とを備える。
通常処理部60は、加湿装置Aにおいて、上述した基本的な加湿処理を制御する。つまり、通常処理部60は、加湿装置Aを構成する送風部3とポンプ部14に接続されており、信号の送受信を行なうことで、制御部51からの信号に従って動作し、上述の加湿処理を実現する。
モータ制御部65は、上述のブラシレスDCモータの説明にて述べたように、デューティ信号の出力を介してポンプモータ18の回転数を制御する。なお、通常処理部60による加湿装置Aの通常運転時には、モータ制御部65は、ブラシレスDCモータを例えば回転数一定制御することにより、供給部15に随時一定量の水を供給する。
エア抜き準備処理部61は、ポンプ部14の動作開始時に、所定の初期動作時間の間のみ、ポンプモータ18を回動させる。
エア抜き処理部62は、エア抜き準備処理部61が初期動作時間の間ポンプモータ18を回動させた後、つまり初期動作時間経過した後、所定の初期停止時間の間、ポンプモータ18を停止させる。
エア混入防止処理部63は、通常処理部60による加湿処理の停止後に、所定の終了動作時間の間、ポンプモータ18を、通常処理部60による加湿処理時よりも低い回転数で回動させる。
脱調検知部64は、モータ制御部65がブラシレスDCモータを回転数一定制御している場合において、ポンプモータ18に与えられる電気的値、つまり電圧値や電流値、あるいはデューティをモータ制御部65から取得して、脱調を検知するが詳細は後述する。
以上が、制御部51の概要である。
<動作開始時の処理>
続いて、加湿装置Aの動作開始時における制御部51の処理の詳細について、図6、図7、図8を用いて説明する。
図7は、制御部51の動作開始時の処理を示すフローチャートである。
図8は、ポンプ17の動作時間と給水経路内の水量との関係を示す図であり、図8(a)は、ポンプの動作時間と動作速度を示すグラフ、図8(b)は、図8(a)に対応する給水経路内の水量を示すグラフである。なお、加湿装置Aでは、図2に示した通り、給水経路はポンプ17を下方の基点として鉛直上方の供給部15までに多少の歪曲が存在するが、理解に供するため、給水経路は鉛直上下方向の直線であるものとしてグラフ(b)のY軸を示している。言い換えると、グラフ(b)における給水経路内の水量(Y軸)は、簡易的に、ポンプ17を基点として、ポンプ部14から供給部15に送る水の、給水経路内における先端部の高さとすることができる。
動作開始時には、まず、例えばユーザが、タンク部31に給水を行って貯水容器11に固定し、貯水容器11を加湿装置Aの第2の空間部6に正しく配置する。この状態では、連結ユニット21が正常に連結されることで、給水パイプは、ポンプ17と供給部15とを水供給可能に連通する。また、タンク部31から貯水容器11に加湿用の水が適量供給され、貯水容器11の水位が一定に保たれる。そして、ユーザは、操作部9より例えば「加湿開始」のボタンを押下することで、制御部51は、加湿を開始するために、貯水容器11から供給部15に水を供給する。
ただし、この状態に至る過程で、タンク部31から供給された水の水位は、ポンプ17の底部から徐々に上昇する。この際に、図5に示した吸水口58からポンプ17内に水が浸入するのであるが、羽根車43の羽形状やその他ポンプ17内部の凹凸などにより、ポンプ17内部に一定量の空気が混入してしまい、自然にはポンプ17から抜け切れずに維持されてしまう。そのため、ポンプ部14の動作開始直後は、空気を含んだ状態で羽根車43が回動することとなり、ポンプ内や給水パイプ、あるいは給水パイプが水を排出する供給部15等で、いわゆるエア噛みによる異音が発生する場合がある。
そこで、制御部51は、以下の処理を行う。
まず、エア抜き準備処理部61は、ポンプ部14の動作開始時に、所定の初期動作時間T1の間のみ、ポンプモータ18を回動させる(S1)。これにより、ポンプ17内の水が給水経路(給水パイプ)内を上昇し、すなわち給水経路内の水量が増加する。なお、所定の初期動作時間T1は、ポンプ部14の給水能力によって異なるが、ポンプ部14から供給部15に送る水の先端部が給水経路内の第1の所定位置52に達するまでの時間である。なお、第1の所定位置52とは、給水経路内の水が自重、言い換えると給水経路内の水の圧力でポンプ17内の空気を吸水口58から押し出すことができる位置である。
次に、エア抜き処理部62は、エア抜き準備処理部61がポンプモータ18を回動させた後、つまり初期動作時間T1が経過した後に、所定の初期停止時間T2の間、ポンプモータ18を停止させる(S2)。なお、初期停止時間T2は、特に給水経路の径等により異なるが、供給部15側からポンプ17に戻る水の先端部が、給水経路内であって第1の所定位置52よりも低い第2の所定位置53に達するまでの時間である。また、第2の所定位置53は、貯水容器11からポンプ17に供給される水が通過する最高位置よりも高い位置とする。ここでいう最高位置とは、例えば図5に示した吸水口58の円形における上端部(図5の上方端部)である。戻る水の先端が最高位置よりも低位に来てしまうと、水の先端よりも上方の空気がポンプ17内に混入してしまう恐れがあるためである。これにより、給水経路内の水の重量がポンプ17内の水に加わり、吸水口58から水が排出され、この際、ポンプ17内の空気も水と一緒に排出することができるため、ポンプ17の中に含まれる空気を減少させ、空気による異音の発生を防ぐことが可能になる。
エア抜き処理部62が初期停止時間T2の間、ポンプモータ18を停止した後は、通常処理部60が、一定回転速度でポンプモータ18を動作させ、供給部15に水を供給する。また同時に、通常処理部60は、送風部3を動作させて空気を加湿し、送風する点については、上述したとおりである(S3:加湿処理)。
以上のように、エア抜き準備処理部61は、初期動作時間T1の間に、第2の管20および第1の管の一部に第1の所定位置52までの高さの水を汲み上げる。その間は、ポンプ17内に空気が含まれた状態であるが、その後、エア抜き処理部62が、初期停止時間T2の間、ポンプ17を停止させることで、初期動作時間T1に汲み上げた、第1の所定位置52までの高さの水が、自重でポンプ17を通過し、その一部が貯水容器に戻ることとなる。このとき、ポンプ17の中に含まれている空気を押し出すことができ、結果として、ポンプ17のエア噛みによる異音の発生を防ぐことができる。なお、エア抜き処理部62は、初期停止時間T2の間、ポンプ17を停止しているが、ポンプ17を逆回転させても本実施の形態における「停止」の概念に含まれる。つまり、逆回転させて強制的にポンプ17内から水を排出させてもよい。
なお、制御部51は、水量検知部54が検知した水量が所定の水量以下になった後のポンプモータ18の回動開始時にエア抜き準備処理部61及びエア抜き処理部62の処理を行えばよい。
つまり、貯水容器11には、タンク部31から水が供給されるため、ポンプ17は水で満たされている。しかしながら、タンク部31が空になるなどして、タンク部31から水が供給されなくなると、貯水容器11の水位が低下し、ポンプ17に空気が入る恐れがある。また、このとき、貯水容器11を本体ケース1から取り外し、給水等が行われることが想定される。
すなわち、水量検知部54が所定の水量以下になった後のポンプモータ18の回動開始時にのみ、エア抜き準備処理部61及びエア抜き処理部62の処理を行うことにより、給水などの際にポンプ17に混入した空気を減少させ、ポンプ17のエア噛み時に発生する異音の発生を防げばよい。
<動作終了時の処理>
続いて、加湿装置Aの動作終了時における制御部51の処理の詳細について、図6、図7、図8を用いて説明する。
動作終了時には、例えばユーザが、操作部9を介して加湿を停止する旨を入力する。または、水量検知部54が、貯水容器11内の水量が低下(減少)した旨を検知した際に制御部51に対してその旨を送信する。
加湿を停止する旨の入力、または水量が低下した旨を受信すると、制御部51は、水量の低下による停止か、あるいはユーザによる操作部9を介した停止かを判定する(S4)。
水量低下による停止ではない場合、エア混入防止処理部63を介して、加湿処理S3の停止後に所定の終了動作時間T4の間、ポンプモータ18を加湿処理S3時よりも低い回転数R4で回動させる(S4NO→S5)。
加湿処理S3の停止直後は、供給部15とポンプ17の間の給水経路に水が満たされた状態である。この状態で、ポンプモータ18を停止すると、給水経路内の水は自重で、ポンプ17を通過しながら貯水容器11に回収される。このとき、ポンプ17の中の羽根車43は、回動自在であるため、水の通過によって逆回転する。勢いのついた羽根車43は、給水経路内の水がなくなった後も、慣性の法則で回転を続ける。そして、回転の惰性で、給水経路内を戻る水の先端部よりもさらに上方の空気をポンプ17内に空気を吸い込んでしまう。
そこで、エア混入防止処理部63は、ポンプモータ18の回転数を落として回転させるのである。回転数Rは、供給部15に水を供給することはできない回転数ではあるが、水の先端部、すなわち水位を徐々に低下させる回転数であるので、水位の急激な低下を防止し、回転の惰性による空気のポンプ17内への吸い込みを抑制することができる。
結果として、再始動時のポンプ17のエア噛みによる異音の発生を防ぐ効果が期待できる。
また、エア混入防止処理部63は、所定の終了動作時間T4の間でポンプモータ18の回転数を漸次低下させてもよい。ポンプモータ18の回転数が急激に変化すると、給水経路内の水が落ちる勢いがつく場合がある。ポンプモータ18の回転数を漸次低下させることにより、給水経路内の残水が貯水容器11に戻る勢いを抑制することができるので、結果として、再始動時のポンプ17のエア噛みによる異音の発生を防ぐ効果を奏する。
なお、制御部51は、水量検知部54が所定の水量以下になったことにより加湿処理S3を停止させる場合には、所定の終了動作時間T4を設けずにポンプモータ18を停止する(S4YES)。所定の水量以下になった場合は、貯水容器11を本体ケース1から取り外し、タンク部31に給水するとともに、貯水容器11の残水は一度排水され、ポンプ17内の水も排水されることとなる。すなわち、所定の終了動作時間T4を設ける効果が得られないため、直ちにポンプモータ18を停止することで、不要なポンプ動作を防ぎ、耐久性向上および省エネルギー性能を向上できるという効果を奏する。
<通常処理時の異常検知>
続いて、加湿装置Aの通常処理時の異常検知処理の詳細について、図5、図6を用いて説明する。
上述の加湿装置Aでは、ポンプ17とポンプモータ18とが分離しており、磁力で連結されている。また、ポンプモータ18は、回転数一定で動作するように制御されている。このため、汚れなどでポンプが閉塞された場合や、トレーが正しく取り付けられていない場合であっても、ポンプモータ18が正しい回転数で駆動してしまう。このため、ポンプモータ18の回転数に基づいては異常を検知することができないという課題を有していた。
つまり、図5に示す通り、ポンプ17の吸水口58は、異物などの混入を防ぐために、メッシュ状の形状になっている。水中のスケールなどの汚れ成分が、吸水口58やポンプ17内の羽根車43に付着するなどして、ポンプ17内に水を吸えなくなったり、羽根車43が回らなくなったりする場合がある。また、貯水容器11が本体ケース1に正しく取り付けられていない場合でも、応動磁石と回動磁石42との連携が不能となり、羽根車43を回すことができなくなる。このとき、水を汲み上げる負荷がかからないため、水を汲み上げている状態よりもポンプモータ18の負荷が軽くなる。しかしながら、回転数一定で動作するように制御されているため、ポンプモータ18の回転数からは異常を検知できない。
そこで、加湿装置Aは、ポンプモータ18を回転数一定制御するモータ制御部65と、回転数一定制御時におけるポンプモータ18への負荷に基づいて、ポンプモータ18における脱調状態を検知する脱調検知部64とを備える。
脱調検知部64は、ポンプモータ18を構成するコイルに与えられる電圧値、電流値、またはコイルに与えられる電圧値を決定するデューティを常時検知している。なお、羽根車43の負荷が少ない状態で、ポンプモータを回転数一定制御すると、水を汲み上げている状態よりも電圧値、電流値、デューティ値が低くなる。
デューティ値の判断方法について一例を示す。
制御部51の記憶できる記憶領域(例えばROM、RAMなどの記憶部)に定常状態、つまり異常状態ではない時のデューティ値の範囲を記憶させる。ポンプモータ18を運転する場合は、一旦記憶領域に記憶させているデューティ値で運転を開始する。
ポンプモータ18が運転を開始すると回転数一定制御となるため、記憶領域に記憶されているデューティ値の範囲で運転を行う。しかしながら、何らかの要因で脱調状態になるとデューティ値の値が低下し、記憶されているデューティ値の範囲から外れるため脱調検知部64が脱調と判断することができる。
デューティ値を記憶する手段を制御部51の記憶領域としているが、例えば不揮発性メモリー(EEPROM)等、他の記憶きる手段を用いても同様の効果を奏することができる。
脱調検知部64は、通常処理S3を行っている際に、電圧値や電流値あるいはデューティ値の低下を検知すると、脱調状態であると判断し、空運転を継続することなくポンプモータ18を停止することができるので、ポンプモータ18の耐久性を向上することができる。なお、脱調状態を判断すると、例えば操作部9に対して異常である旨を通知し、あるいは音を発生させてユーザに異常である旨を報知するなどの処理が可能である。
以上、実施の形態に係る加湿装置Aについて説明したが、各実施の形態及び変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。