以下において、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を貼付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。また、以下に示す本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
<運転支援装置>
本発明の実施形態に係る運転支援装置は、例えば車両に搭載される(以下、本発明の実施形態に係る運転支援装置が搭載される車両を「自車両」という)。本発明の実施形態に係る運転支援装置は、図1に示すように、処理回路1、周囲センサ2、車両センサ3、生体情報センサ(脳波センサ)4、記憶装置5、出力インターフェース(I/F)6及びアクチュエータ7を備える。処理回路1と、周囲センサ2、車両センサ3、脳波センサ4、記憶装置5、出力I/F6及びアクチュエータ7とは、コントローラエリアネットワーク(CAN)バス等の有線又は無線でデータや信号を送受信可能である。
周囲センサ2は、自車両前方の状況を含む自車両の周囲環境(周囲状況)を検出するセンサである。周囲センサ2は、カメラ21、レーダ22及び通信機23を備える。なお、周囲センサ2の種類や個数はこれに限定されない。カメラ21としては、CCDカメラ等が使用可能である。カメラ21は単眼カメラであってもよく、ステレオカメラであってもよい。カメラ21は、自車両の周囲環境を撮像し、撮像画像から自車両以外の車両(他車両)、歩行者、自転車等の障害物(物体)と自車両との相対位置、障害物と自車両との距離、道路上の車線境界線(白線)等の道路構造を含む自車両の周囲環境のデータを検出し、検出された周囲環境のデータを処理回路1に出力する。
レーダ22としては、例えばミリ波レーダやレーザレーダ、レーザレンジファインダ(LRF)等が使用可能である。レーダ22は、障害物と自車両との相対位置、障害物と自車両との距離、障害物と自車両との相対速度を含む自車両の周囲環境のデータを検出し、検出された周囲環境のデータを処理回路1に出力する。
通信機23は、自車両と他車両との間の車車間通信又は自車両と路側機との間の路車間通信等を行うことにより、他車両の位置、他車両の速度、他車両の加速度を含む他車両の走行情報を受信する。通信機23は、受信した他車両の走行情報を処理回路1に出力する。
車両センサ3は、自車両の現在位置及び自車両の走行状態を検出するセンサである。車両センサ3は、全地球型測位システム(GNSS)受信機31、車速センサ32、加速度センサ33及び角速度センサ34を備える。なお、車両センサ3の種類及び個数はこれに限定されない。
GNSS受信機31は、地球測位システム(GPS)受信機等であり、複数の航法衛星から電波を受信して自車両の現在位置を取得し、取得した自車両の現在位置を処理回路1に出力する。処理回路1は、GNSS受信機31により取得した自車両の現在位置を記憶装置5に記憶された地図データMDと照合して、記憶装置5に記憶された地図データMD上の自車両の現在位置を設定する。処理回路1は、設定した地図データMD上の自車両の現在位置から、乗員等により設定された目的地までの走行予定経路を設定し、設定した走行予定経路に沿って自車両の走行を制御したり、設定した走行予定経路の案内情報を乗員に提示したりすることができる。
車速センサ32は、自車両の車輪速を検出し、検出された車輪速から車速を検出し、検出された車速を処理回路1に出力する。加速度センサ33は、自車両の前後方向及び車幅方向の加速度を検出し、検出された加速度を処理回路1に出力する。角速度センサ34は、自車両の角速度を検出し、検出された角速度を処理回路1に出力する。
記憶装置5としては、半導体記憶装置、磁気記憶装置又は光学記憶装置等が使用可能である。記憶装置5は、処理回路1に内蔵されていてもよい。記憶装置5は、地図データMD及び基準値THを記憶している。地図データMDは、道路種別、道路線形及び制限速度を含む。基準値THは、本発明の実施形態に係る運転支援装置による障害物の回避動作の実行を判断する際に参照される値(閾値)である。基準値THの詳細は後述する。
脳波センサ4は、複数の電極を有し、複数の電極が乗員(例えば運転者又は運転者以外の同乗者)の頭部に取り付けられる。脳波センサ4の複数の電極は、例えば図2に示すように、国際10−20法に準拠し、認知機能に関わる乗員の頭頂部Fz,Fcz,Cz,CPzに配置される。脳波センサ4が有する複数の電極の頭部への取り付け方法は特に限定されないが、例えば複数の電極を設けた装着型の電極キャップで構成されていてもよい。脳波センサ4は、乗員の脳波(脳活動)のデータを検出し、検出された脳波のデータを処理回路1に出力する。
処理回路1は、本発明の実施形態に係る運転支援装置が行う動作に必要な処理の算術論理演算を行う電子制御ユニット(ECU)等のコントローラであり、例えば、プロセッサ、記憶装置及び入出力インターフェースを備えてもよい。プロセッサには、算術論理演算装置(ALU)、制御回路(制御装置)、各種レジスタ等を含む中央演算処理装置(CPU)等に等価なマイクロプロセッサ等を対応させることができる。処理回路1に内蔵又は外付けされる記憶装置は、半導体メモリやディスクメディア等からなり、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM及びRAM等の記憶媒体を含んでいてもよい。例えば、記憶装置に予め記憶された、本発明の実施形態に係る運転支援装置の動作に必要な一連の処理を示すプログラム(運転支援プログラム)をプロセッサが実行し得る。
処理回路1は、周囲環境認識部11、動作決定部12、実行判断部13、車両制御部14、提示制御部15及び違和感判断部16等の論理ブロックを機能的若しくは物理的なハードウェア資源として備える。これらの論理ブロックを、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)等のプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)等で物理的に構成してもよく、汎用の半導体集積回路中にソフトウェアによる処理で等価的に設定される機能的な論理回路等でも構わない。
また、処理回路1を構成する周囲環境認識部11、動作決定部12、実行判断部13、車両制御部14、提示制御部15及び違和感判断部16等は、単一のハードウェアから構成されてもよく、それぞれ別個のハードウェアから構成されてもよい。例えば、処理回路1は、車載インフォテイメント(IVI)システム等のカーナビゲーションシステムと、先進運転支援システム(ADAS)等の運転支援システムとで構成できる。
周囲環境認識部11は、周囲センサ2により検出された周囲環境に基づき、自車両前方で、自車両の走行予定経路上に存在する障害物を回避対象として認識する。本明細書において、回避対象となる障害物は、駐車中、停車中又は減速中の他車両、他車両以外の静止物体、又は道路の規定車速に対して極低速の移動体を含む。極低速の移動体は、歩行者、自転車、極低速の他車両を含む。更に、周囲環境認識部11は、周囲センサ2により検出された自車両と他車両との相対位置及び相対速度、車線境界線の位置、車両センサ3により検出された自車両の速度等に基づき、自車両前方から接近中の対向車(他車両)を認識する。
例えば図3に示すように、対向二車線道路において、自車両100、障害物101、対向車102が存在する場面を想定する。左側の車線L1を自車両100が矢印で示す進行方向に走行中であり、自車両100の前方で自車両100の走行車線L1上に障害物101が存在する。障害物101は例えば駐車中の他車両である。右側の対向車線L2を対向車102が矢印で示す進行方向に走行し、自車両100に対して障害物101よりも前方から自車両100に接近している。
周囲環境認識部11は、周囲センサ2により検出された周囲環境に基づき、自車両100の前方で自車両100の走行車線L1上に存在する障害物101を回避対象として認識する。周囲環境認識部11は、周囲センサ2により検出された周囲環境に基づき、自車両100から所定距離以内で、自車両100の走行車線L1に隣接する対向車線L2上を走行し、自車両100の前方から接近中の対向車102を認識する。
動作決定部12は、周囲センサ2により検出された周囲環境と、車両センサ3により検出された自車両の走行状態に基づき、周囲環境認識部11により回避対象と認識された障害物との接触を回避するための回避動作(回避行動)を決定(計画)する。動作決定部12は、例えば図3に示すように、周囲センサ2により検出された障害物101と自車両100との相対位置、障害物101と自車両100の距離D0、障害物101と自車両100との相対速度と、車両センサ3により検出された自車両100の車速等に基づき、障害物101との接触を安全に回避するための回避経路R1を生成する。回避経路R1は、障害物101の手前で右側に横移動して対向車線L2に進入し、障害物101を追い越した後、再び左側の車線L1へ戻る経路である。動作決定部12は、生成した回避経路R1に沿って自車両100が走行する制御を回避動作として決定するとともに、自車両100が回避動作を実行するためのアクチュエータ7の制御目標値を算出する。なお、障害物101が極低速の移動体である場合には、障害物101の移動方向及び移動速度等に基づき、障害物101が移動する可能性の有る範囲への進入を回避するように回避動作を決定すればよい。
実行判断部13は、周囲センサ2により検出された車両境界線等に基づき、動作決定部12により決定された回避動作を実行した場合に対向車の走行を妨げる可能性の有無を判断する。対向車の走行を妨げる可能性が有る場合とは、例えば回避動作を実行した場合に対向車が自車両と接触する可能性が有る場合を含み、対向車が自車両と接触する可能性が無くても、対向車の乗員に危険感を与えるような場合も含む。
例えば図3に示すように、実行判断部13は、回避動作により自車両100が中央線を越えて対向車線L2に進入する必要がある場合、対向車102が自車両100と接触する可能性があり、対向車102の走行を妨げる可能性が有ると判断する。一方、実行判断部13は、回避動作により自車両100が対向車線L2に進入しない場合に、対向車102が自車両100と接触する可能性が無く、対向車102の走行を妨げる可能性が無いと判断してもよい。或いは、実行判断部13は、回避動作により自車両100が対向車線L2に進入しなくても、中央線に近接する場合には、対向車102の乗員に危険感を与えるため、対向車102の走行を妨げる可能性が有ると判断してもよい。また、中央線の無い道路においては、例えば道路の幅員の中央を超える場合又は対向車の走行予定経路上に進入する必要がある場合に、対向車の走行を妨げる可能性が有ると判断してもよい。
実行判断部13は、動作決定部12により決定された回避動作を実行した場合に対向車の走行を妨げる可能性が有ると判断された場合、回避実行判断基準を用いて対向車が自車両側方を通過前に現時点で回避動作を実行するか否(即ち、対向車が自車両側方を通過するまで待機する)かを判断する。ここで、「回避実行判断基準」とは、実行判断部13による回避動作の実行の判断の基準となる、回避動作を実行した場合の対向車に対する余裕度を示す指標であり、周囲センサ2により検出された対向車等に基づいて設定される。回避実行判断基準は、例えば自車両と対向車との相対位置、自車両と対向車との相対速度、自車両と対向車との距離等に基づいて適宜設定可能である。
実行判断部13は、記憶装置5から基準値THを読み出して、回避実行判断基準が基準値TH以上か否かを判断することにより、回避動作を実行するか否かを判断する。基準値THは、回避実行判断基準と比較可能な値に設定されており、回避動作の実行により対向車の走行を妨げない範囲で設定可能である。基準値THが高い(大きい)ほど回避実行判断基準が厳しくなり、回避動作を実行すると判断され難くなる。一方、基準値THが低い(小さい)ほど回避実行判断基準が緩くなり、回避動作を実行すると判断され易くなる。
例えば図4に示すように、実行判断部13は、周囲センサ2により検出された自車両100と対向車102との相対位置、対向車102の車幅W1等に基づき、回避動作を実行した場合に回避経路R1上で自車両100(破線で図示)が対向車102の進行方向と交錯する末端地点P1を予測する。更に、実行判断部13は、周囲センサ2により検出された自車両100と対向車102との相対位置、自車両100と対向車102との相対速度等に基づき、自車両100が末端地点P1に到達時の対向車102(破線で図示)の位置P2、自車両100と対向車102の距離D1、自車両100と対向車102との相対速度を予測する。
更に、実行判断部13は、自車両100が末端地点P1に到達時の予測される自車両100と対向車102の距離D1と、自車両100と対向車102との相対速度から、自車両100が末端地点P1に到達時の自車両100と対向車102の衝突余裕時間(TTC)を回避実行判断基準として予測する。TTCは、自車両が末端地点P1に到達時の自車両100と対向車102の距離D1を、自車両100と対向車102との相対速度で除することで算出可能である。
実行判断部13は、回避実行判断基準であるTTCが、記憶装置5から読み出された基準値TH以上か否かを判断することにより、対向車102が自車両100の側方を通過前に現時点で回避動作を実行するか否かを判断する。実行判断部13は、TTCが基準値TH以上の場合、回避動作を実行すると判断する。一方、TTCが基準値TH未満の場合、回避動作を実行しないと判断する。例えば、図4に示した距離D1が大きいほどTTCが長くなり、回避動作を実行すると判断され易くなる。また、自車両100と対向車102との相対速度が高いほどTTCが短くなり、自車両が回避動作を実行すると判断され難くなる。
なお、回避実行判断基準はTTCに限定されない。例えば、回避実行判断基準として、回避動作を実行した場合に回避経路R1上で対向車102の進行方向と交錯する末端地点P1に到達時の自車両100(破線で図示)と対向車102(破線で図示)の車間時間(THW)を採用してもよい。THWは、回避経路R1上で対向車102の進行方向と交錯する末端地点P1に到達時の自車両100と対向車102の距離D1を自車両100の速度で除した値である。また、回避実行判断基準は、自車両が末端地点P1に到達時の自車両100と対向車102の距離D1であってもよい。また、回避実行判断基準を複数種類設定し、実行判断部13は、複数種類の回避実行判断基準のそれぞれが対応する基準値TH以上か否かを判断してもよい。この場合、実行判断部13は、例えば複数種類の回避実行判断基準のすべてが対応する基準値TH以上の場合に回避動作を実行すると判断し、複数種類の回避実行判断基準の少なくとも1つが対応する基準値TH未満の場合に回避動作を実行しないと判断してもよい。
車両制御部14は、実行判断部13により回避動作を実行すると判断された場合、動作決定部12により決定された回避動作を実行するように、アクチュエータ7を制御するための制御信号を出力する。回避動作の実行時には、車両制御部14が、乗員が関与せずに駆動制御、制動制御、操舵制御のすべてを実行する自動運転を行ってもよい。或いは、車両制御部14が駆動制御、制動制御、操舵制御の少なくとも一部を実行する自動運転を行うとともに、乗員が運転操作の一部を実行してもよい。
なお、回避動作の実行時以外の通常走行時は、車両制御部14が、駆動制御、制動制御、操舵制御のすべてを実行する自動運転を行ってもよい。或いは、通常走行時は、車両制御部14が、駆動制御、制動制御、操舵制御の少なくとも一部を実行する自動運転を行うとともに、乗員が運転操作の一部を実行してもよい。また、車両制御部14が、車線逸脱防止制御や先行車追従制御を行っていてもよい。或いは、通常走行時は、車両制御部14が自動運転を行わず、乗員による手動運転を行っていてもよい。
提示制御部15は、実行判断部13により回避動作を実行すると判断された場合、回避動作実行の指示を乗員に対して提示するように出力I/F6を制御する。提示制御部15は、実行判断部13により回避動作を実行しないと判断された場合、待機指示を乗員に対して提示するように出力I/F6を制御する。或いは、出力I/F6は、待機指示を提示する代わりに、単に回避動作実行の指示を提示しないことで、回避動作を実行しない(待機中である)ことを示してもよい。
アクチュエータ7は、車両制御部14からの制御信号に応じて自車両の走行を制御する。アクチュエータ7は、アクセルアクチュエータ71、ブレーキアクチュエータ72及びステアリングアクチュエータ73を備える。アクセルアクチュエータ71は、例えばスロットルバルブからなり、自車両のアクセル開度を制御する。ブレーキアクチュエータ72は、例えば油圧回路からなり、自車両のブレーキの制動動作を制御する。ステアリングアクチュエータ73は、例えばステアリングシャフトにトルクを伝達可能なモータからなり、ステアリングシャフトの操舵量を制御する。
出力I/F6は、提示制御部15からの制御信号に応じて回避動作実行の指示又は待機指示を乗員に対して提示する。出力I/F6は、表示装置61及びスピーカ62を備える。表示装置61は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)等のディスプレイであり、文字情報やアイコン等により回避動作実行の指示又は待機指示を表示する。スピーカ62は、音声や報知音により回避動作実行の指示又は待機指示を乗員に対して提示する。
違和感判断部16は、脳波センサ4により検出された乗員の脳波のデータから、乗員の違和感の有無を判断する。ここで、「乗員の違和感」とは、乗員が意図(想定)する自車両の制御に対する実際の制御のズレに起因して乗員が覚える違和感を意味する。例えば、乗員が障害物及び対向車を視認し、対向車が接近してくる前に障害物の回避動作を実行するのが良いと感じていたが、その乗員の意図に反して回避動作が実行されずに待機状態となった場合に、乗員は違和感を覚える。また、乗員が障害物の回避動作を実行せずに対向車が自車両側方を通過するまで待機するのが良いと感じていたが、その乗員の意図に反して回避動作が実行された場合に、乗員は違和感を覚える。
例えば、違和感判断部16は、脳波センサ4により検出された乗員の脳波のデータに対して周波数解析を行い、思考や認知の結果として現れる脳の反応を示す事象関連電位(ERP)を検出することにより乗員の違和感の発生を検出する。例えば、記憶装置5に乗員が違和感を覚えたときの脳波のパターンを予め記憶しており、記憶装置5に記憶された脳波のパターンと、脳波センサ4により検出された脳波のパターンとの一致度から乗員の違和感の有無を判断してもよい。
違和感判断部16は、例えば図5に示すように、所定時間T(例えば500ミリ秒)の脳波信号からN個の特徴量p1,p2,…,pNを抽出し、脳波の特徴ベクトルP=(p1,p2,…,pN)を生成する。特徴量は、例えば一定間隔でサンプリングした値等を使用可能である。違和感判断部16は更に、図6に示すように、違和感を覚えているときの脳波の特徴量を特徴空間へ配置したときの特徴量領域Dを決定する。特徴量領域Dの決定は、例えば複数サンプルがあれば、ベクトル集合{P}の重心点を中心とし集合{P}を包含する円を特徴量領域Dとする。違和感判断部16は、脳波センサ4によりリアルタイムで計測された乗員の脳波の特徴ベクトルPと、違和感の特徴量領域Dを比較し、脳波の特徴ベクトルPが特徴量領域Dに属する場合、乗員の違和感が有ると判断する。一方、脳波の特徴ベクトルPが特徴量領域Dに属さない場合、違和感判断部16は、乗員の違和感が無いと判断する。
また、乗員の通常時の脳波と違和感を覚えている時の脳波のデータがあれば、違和感判断部16は、線形判別法により、図6に示す平面P0を設定し、平面P0を用いて、乗員の違和感の有無を判断してもよい。また、違和感判断部16は、サポート・ベクター・マシン(SVM)やニューラル・ネットワーク法等の機械学習により乗員の違和感の有無を判断してもよい。
実行判断部13は、車両制御部14による自車両の走行制御に対する乗員の違和感の有無に応じて、記憶装置5に記憶された基準値THを調整する。例えば図3に示した場面において、実行判断部13により回避動作を実行すると判断され、回避動作の横移動を開始直後(例えば回避動作の開始時刻から所定時間以内)に乗員の違和感が有ると判断された場合を考える。この場合、乗員は対向車102が自車両100の側方を通過するまで待機し、対向車102が通過してから回避動作を実行するのが良いと感じていたのに、その乗員の意図に反して回避動作が開始されたため、乗員が違和感を覚えたと推測できる。そこで、実行判断部13は、記憶装置5に記憶された基準値THを引き上げて(例えばTTCの基準値THを2秒から3秒として)回避動作を実行すると判断され難くし、結果的に回避動作を実行し難くする。基準値THを引き上げる程度は適宜設定可能であり、回避実行判断基準と基準値THの乖離量等に応じて設定してもよく、所定の一定量であってもよい。調整後の基準値THは、記憶装置5に記憶され、次回以降の回避動作の実行の判断時に使用可能である。
一方、図3に示した場面において、実行判断部13により回避動作を実行しない(待機する)と判断し、車両制御部14により障害物101の手前で停止するために減速を開始直後(例えば減速の開始時刻から所定時間以内)に乗員の違和感が有ると判断された場合を考える。この場合、乗員は対向車102が自車両100の側方を通過前に回避動作を実行するのが良いと感じていたが、その乗員の意図に反して減速が開始されたため、乗員が違和感を覚えたと推測できる。そこで、実行判断部13は、記憶装置5に記憶された基準値THを引き下げて(例えばTTCの基準値THを3秒から2秒として)回避動作を実行すると判断され易くし、結果的に回避動作を実行し易くする。基準値THを引き下げる程度は適宜設定可能であり、回避実行判断基準と基準値THの乖離量等に応じて変化してもよく、所定の一定量であってもよい。調整後の基準値THは、記憶装置5に記憶され、次回以降の回避動作の実行の判断時に使用可能である。
<運転支援方法>
次に、図7のフローチャートを参照しながら、本発明の実施形態に係る運転支援方法の一例を説明する。図7のフローチャートの手順は所定の制御周期で繰り返し実行される。
ステップS1において、周囲センサ2は、自車両の周囲環境のデータを検出する。周囲環境認識部11は、例えば図3に示した場面において、周囲センサ2により検出された周囲環境のデータから、自車両100の走行車線L1上の障害物101を回避対象として認識する。更に、周囲環境認識部11は、対向車線L2上を接近中の対向車102を認識する。
ステップS2において、動作決定部12は、周囲センサ2により検出された周囲環境と、車両センサ3により検出された自車両100の走行状態に基づき、周囲環境認識部11により回避対象と認識された障害物101を回避するための回避経路R1を生成し、回避経路R1に沿った回避動作(回避行動)を決定(計画)する。実行判断部13は、周囲センサ2により検出された周囲環境に含まれる車両境界線等のデータから、回避経路R1が対向車102の走行を妨げる可能性の有無を判断する。対向車102の走行を妨げる可能性が無いと判断された場合には、処理を完了する。この場合、車両制御部14が、動作決定部12により決定された回避動作を実行してもよい。一方、ステップS2において対向車102の走行を妨げる可能性が有ると判断された場合には、ステップS3に移行する。
ステップS3において、実行判断部13は、周囲センサ2により検出された周囲環境のデータ等に基づき、自車両100から所定距離以内において、対向車線L2上を接近中の対向車102が検出された否かを判断する。対向車が検出されない場合、処理を完了する。この場合、車両制御部14が、動作決定部12により決定された回避動作を実行してもよい。一方、ステップS3において対向車102が検出された場合、ステップS4に移行する。
ステップS4において、実行判断部13は、周囲センサ2により検出された周囲環境のデータ及び車両センサ3により検出された自車両100の走行状態のデータに基づき、回避実行判断基準を用いて、対向車102が自車両100の側方を通過前に回避動作を実行するか否(対向車102が自車両100の側方を通過するまで待機する)かを判断する。例えば図4に示すように、実行判断部13は、周囲センサ2により検出された周囲環境のデータ及び車両センサ3により検出された自車両の走行状態に基づき、自車両100が回避経路R1上の対向車102と交錯する末端地点P1に到達時の自車両100と対向車102のTTCを回避動作判断基準として算出する。実行判断部13は、算出したTTCが、記憶装置5から読み出した基準値TH以上か否かを判断する。実行判断部13は、TTCが基準値TH以上の場合に回避動作を実行すると判断し、TTCが基準値TH未満の場合に回避動作を実行しない(待機する)と判断する。回避動作を実行すると判断された場合、ステップS5に移行する。
ステップS5において、車両制御部14は、回避動作を実行するように自車両100の走行を制御するための制御信号をアクチュエータ7に出力する。アクチュエータ7は、車両制御部14からの制御信号に応じて回避動作を実行し、自車両100を回避経路R1に沿って走行するように制御する。
ステップS6において、脳波センサ4が、乗員の脳波のデータを検出する。違和感判断部16が、脳波センサ4により検出された脳波のデータに基づき、ステップS5における回避動作の開始直後の乗員の違和感の有無を判断する。例えば、違和感判断部16が、回避動作の横移動を開始した時刻から所定時間以内に検出された脳波のデータから、乗員の違和感の有無を判断する。乗員の違和感が無いと判断された場合、乗員が回避動作を実行するのが良いと感じていた時に、その乗員の意図に合致して回避動作が実行されたため、乗員は違和感を覚えなかったと推定できる。そこで、実行判断部13は、現在の基準値THを調整せずに維持して、処理を完了する。
一方、ステップS6において乗員の違和感が有ると判断された場合、乗員が回避動作を実行せずに待機するのが良いと感じていた時に、その乗員の意図に反して回避動作が実行されたため、乗員が違和感を覚えたものと推定できる。この場合、ステップS7に移行し、車両制御部14は、回避動作を中止するように自車両100の走行を制御するための制御信号をアクチュエータ7に出力する。アクチュエータ7は、車両制御部14からの制御信号に応じて自車両100を減速させ、障害物101の手前で停止させて、対向車102が自車両100の側方を通過するまで待機させる。なお、ステップS6において乗員の違和感が有ると判断された場合であっても、自車両100が既に対向車線L2に進入している場合等には、車両制御部14は回避動作を継続させることもできる。
ステップS8において、実行判断部13は、乗員の意図を次回以降の制御周期に反映するように、基準値THを引き上げて回避動作を実行しないと判断され難くし、結果として回避動作が実行され難くする。調整後の基準値THは記憶装置5に記憶され、次回以降の制御周期における回避動作の実行の判断時に使用される。
一方、ステップS4において回避動作を実行しない(待機する)と判断された場合、ステップS9に移行する。ステップS9において、車両制御部14は、対向車102が自車両100の側方を通過するまで、自車両100を障害物101の手前で待機させるための制御信号をアクチュエータ7に出力する。アクチュエータ7は、車両制御部14からの制御信号に応じて、自車両100を減速させ、障害物101の手前で停止させる。
ステップS10において、脳波センサ4が、乗員の脳波のデータを検出する。違和感判断部16が、脳波センサ4により検出された脳波のデータに基づき、ステップS9における減速等の待機動作の開始直後の乗員の違和感の有無を判断する。例えば、違和感判断部16が、減速を開始した時刻から所定時間以内に検出された脳波のデータから、乗員の違和感の有無を判断する。乗員の違和感が無いと判断された場合、乗員が回避動作を実行せずに待機するのが良いと感じていた時に、その乗員の意図に合致して待機動作が開始されたため、乗員は違和感を覚えなかったと推測できる。このため、実行判断部13は、現在の基準値THを調整せずに維持し、処理を完了する。
一方、ステップS10において乗員の違和感が有ると判断された場合、乗員が回避動作を実行するのが良いと感じていた時に、その乗員の意図に反して回避動作が開始されなかったため、乗員が違和感を覚えたと推定でき、ステップS11に移行する。
ステップS11において、実行判断部13は、乗員の意図を次回以降の制御周期に反映するように、基準値THを引き下げて回避動作を実行しない(待機する)と判断され易くし、結果として回避動作が実行され易くする。調整後の基準値THは記憶装置5に記憶され、次回以降の制御周期における回避動作の実行の判断時に使用される。
なお、図7のステップS7において自車両100が回避動作の中止後、障害物101の手前で待機中に図7の手順を繰り返し、先の制御周期のステップS4において調整後の基準値THを用いて回避動作の実行を判断してもよい。同様に、ステップS9において自車両100が障害物101の手前で待機中に図7の手順を繰り返し、先の制御周期のステップS4において調整後の基準値THを用いて回避動作の実行を判断してもよい。これらの場合には、先の制御周期のステップS2で決定した回避経路R1を用いて同様の回避動作の実行を判断してもよい。或いは、自車両100の現在の待機位置に基づく新たな回避経路を生成して回避動作を決定し、その回避動作の実行を判断してもよい。
<違和感判断方法>
次に、図8のフローチャートを参照しながら、図7のステップS6,S10の違和感有無判断方法の一例を説明する。ステップS21において、脳波センサ4が、乗員の脳波信号をリアルタイムに計測する。ステップS22において、所定時間T(例えば500ミリ秒)で計測した脳波信号を記憶装置5に記憶させる。ステップS23において、違和感判断部16が、所定時間Tの脳波信号からN個の特徴量を抽出し、脳波の特徴ベクトルP=(p1,p2,…,pN)を生成する。
ステップS24において、記憶装置5から特徴空間へ配置したときの特徴量領域Dを読み出して、乗員からリアルタイムで計測した脳波の特徴ベクトルPと違和感の特徴量領域Dを比較する。脳波の特徴ベクトルPが特徴量領域Dに属する場合、ステップS25に移行し、乗員の違和感が有ると判断する。一方、ステップS24において脳波の特徴ベクトルPが特徴量領域Dに属していない場合、ステップS26に移行し、乗員の違和感が無いと判断する。
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、自車両前方の障害物及び対向車を検出し、障害物の回避動作を決定し、対向車に基づき設定されるTTC等の回避動作判断基準を用いて回避動作を実行するか否かを判断し、この判断結果に基づき自車両の走行を制御する。そして、自車両の走行に対する乗員の違和感の有無を判断し、違和感の有無に応じて、回避動作判断基準の閾値である、回避動作の実行を判断するための基準値THを調整する。これにより、乗員の意図には個人差があるところ、乗員の意図を反映して回避動作を実行するか否かを判断することができる。したがって、障害物の回避動作及び待機動作に対する乗員の違和感を低減又は解消することができる。
更に、回避動作により対向車の走行を妨げる可能性の有無を判断し、可能性が有ると判断された場合、回避動作を実行するか否かを判断する。これにより、回避動作により対向車の走行を妨げる可能性の有ると判断される場合にのみ選択的に回避動作を実行するか否かを判断することができる。例えば、回避動作により対向車の走行を妨げる可能性が無いと判断された場合には、回避動作を実行するか否かを判断する処理を行わすに、即座に回避動作を実行してもよい。したがって、効率的に回避動作を実行することができ、処理回路1の演算負荷も抑制できる。
更に、例えば図3に示すように自車両100が障害物101に接近中であり、障害物101よりも前方から対向車102が自車両100に接近中である場面等において、対向車102が自車両100の側方を通過前に障害物101の回避動作を実行すると判断され、回避動作を開始直後に乗員の違和感が有ると判断された場合を考える。この場合、基準値THを引き上げて回避動作を実行すると判断し難くし、回避動作を実行し難くする。これにより、同様の場面で回避動作を実行し難くなり、乗員の違和感を低減又は解消し得る。一方、回避動作を実行しないと判断され、自車両100の減速を開始直後に乗員の違和感が有ると判断された場合、基準値THを引き下げて回避動作を実行すると判断し易くし、回避動作を実行し易くする。これにより、同様の場面で回避動作を実行し易くなり、乗員の違和感を低減又は解消し得る。
更に、図3に示した場面において、対向車102が自車両100の側方を通過前に障害物101の回避動作を実行すると判断され、回避動作を開始直後に乗員の違和感が有ると判断された場合に、回避動作を即時に中止する。これにより、乗員の意図に合致した運転行動を実現できる。
更に、脳波センサ4により乗員の脳波のデータを検出し、検出した脳波のデータに対して解析を行い乗員の違和感を検出することにより、乗員にかける負担を抑制しつつ、乗員の違和感を高精度に検出することができる。
(第1の変形例)
本発明の実施形態の第1の変形例として、図9に示す場面での運転支援方法の一例を説明する。図9は、自車両100が回避対象である障害物101の手前で停車又は減速し、第1対向車(「先行対向車」という。)102が自車両100の側方を通過するのを待機中であり、先行対向車102に後続する第2対向車(「後続対向車」という。)103が接近中である場面である。障害物101は、停止、減速又は低速走行中の他車両である。
図1に示した動作決定部12は、周囲センサ2により検出された障害物101と自車両100との相対位置及び距離等に基づき、障害物101との接触を回避するための回避経路R2を生成し、回避経路R2に沿った回避動作を決定する。実行判断部13は、周囲センサ2により検出された先行対向車102及び後続対向車103に基づき、回避判断基準を用いて、先行対向車102が通過後、且つ後続対向車103が通過前に回避動作を実行するか否かを判断する。例えば、実行判断部13は、図4に示した場面と同様に、周囲センサ2により検出された周囲環境と、車両センサ3により検出された自車両の走行状態に基づき、先行対向車102が通過後に回避動作を実行した場合に、自車両100の回避経路R2上で後続対向車103の進行方向と交錯する末端地点に到達時の自車両100と後続対向車103のTTCを回避判断基準として予測する。実行判断部13は、予測されたTTCが基準値TH以上であるか否かを判断することにより、回避動作を実行するか否かを判断する。
実行判断部13により回避動作を実行すると判断され、先行対向車102が自車両100の側方を通過後、回避動作を開始直後(例えば、再発進した時刻から所定時間以内)に乗員の違和感が有ると判断された場合、乗員は後続対向車103が自車両100の側方を通過するまで待機するのが良いと感じていたのに、その乗員の意図に反して回避動作が開始されたため、乗員が違和感を覚えたと推定できる。そこで、実行判断部13は、基準値THを引き上げて回避動作を実行し難くする。調整後の基準値THは記憶装置5に記憶され、次回以降の制御周期における回避動作の実行の判断時に使用される。
一方、実行判断部13により回避動作を実行しないと判断され、先行対向車102が通過後の待機中に、先行対向車102が自車両100の側方の通過時から所定時間以内に乗員の違和感が有ると判断された場合、乗員は後続対向車103が自車両100の側方を通過前に回避動作を実行するのが良いと感じていたのに、その乗員の意図に反して回避動作が開始されなかったため、乗員が違和感を覚えたと推定できる。そこで、実行判断部13は、基準値THを引き下げて、回避動作を実行し易くする。調整後の基準値THは記憶装置5に記憶され、次回以降の制御周期における回避動作の実行の判断時に使用される。
次に、図10のフローチャートを参照しながら、第1の変形例に係る運転支援方法の一例を説明する。図10のフローチャートの手順は所定の制御周期で繰り返し実行される。
ステップS31において、周囲センサ2は、例えば図9に示した場面における自車両100の周囲環境のデータを検出する。周囲環境認識部11は、周囲センサ2により検出された周囲環境のデータから、自車両100の走行車線L1上の障害物101と、対向車線L2上の先行対向車102及び後続対向車103を含む周囲環境を認識する。動作決定部12は、周囲センサ2により検出された周囲環境と、車両センサ3により検出された自車両の走行状態に基づき、周囲環境認識部11により回避対象と認識された障害物101を回避するための回避経路R2を生成し、回避経路R2に沿った回避動作(回避行動)を決定(計画)する。
ステップS32において、実行判断部13は、周囲センサ2により検出された周囲環境のデータ等に基づき、自車両から所定距離以内において、対向車線L2上を接近中の後続対向車103が検出された否かを判断する。対向車線L2上を接近中の後続対向車が検出されない場合、処理を完了する。この場合、車両制御部14が、動作決定部12により決定された回避動作を実行してもよい。一方、ステップS32において対向車線上を接近中の後続対向車103が検出された場合、ステップS33に移行する。
ステップS33において、実行判断部13は、周囲センサ2により検出された後続対向車103に基づく回避判断基準を用いて、先行対向車102が自車両100の側方を通過後、且つ後続対向車103が自車両100の側方を通過前に、回避動作を実行するか否(待機する)かを判断する。例えば図9に示した場面において、実行判断部13は、先行対向車102が自車両100の側方を通過後に自車両100が回避動作を実行した場合に、後続対向車103の進行方向と交錯する末端地点に到達時の自車両100と後続対向車103のTTCを回避動作判断基準として予測する。実行判断部13は、予測されたTTCが基準値TH以上か否かを判断する。実行判断部13は、TTCが基準値TH以上の場合に回避動作を実行すると判断し、TTCが基準値TH未満の場合に回避動作を実行しない(待機する)と判断する。回避動作を実行すると判断された場合、ステップS34に移行する。
ステップS34において、車両制御部14は、回避動作を実行するように自車両100の走行を制御するための制御信号をアクチュエータ7に出力する。アクチュエータ7は、車両制御部14からの制御信号に応じて回避動作を実行する。
ステップS35において、脳波センサ4が、乗員の脳波のデータを検出する。違和感判断部16が、脳波センサ4により検出された脳波のデータに基づき、ステップS34における回避動作の開始直後に、回避動作(走行制御)に対する乗員の違和感の有無を判断する。例えば、違和感判断部16が、回避動作を実行するための再発進を開始した時刻から所定時間以内に検出された脳波のデータから、乗員の違和感の有無を判断する。乗員の違和感が無いと判断された場合、乗員が回避動作を実行するのが良いと感じていた時に、その乗員の意図に合致して回避動作が実行されたため、乗員は違和感を覚えなかったと推定できる。そこで、実行判断部13は、現在の基準値THを調整せずに維持して、処理を完了する。
一方、ステップS35において乗員の違和感が有ると判断された場合、乗員が回避動作を実行せずに待機するのが良いと感じていた時に、その乗員の意図に反して回避動作が実行されたため、乗員が違和感を覚えたものと推定できる。この場合、ステップS36に移行し、車両制御部14は、回避動作を中止するように自車両100の走行を制御するための制御信号をアクチュエータ7に出力する。アクチュエータ7は、車両制御部14からの制御信号に応じて、自車両100の発進動作を中止し、障害物101の手前で再度停止して、後続対向車103が自車両100の側方を通過するまで待機させる。なお、ステップS35において乗員の違和感が有ると判断された場合であっても、自車両100が既に対向車線L2に進入している場合等には、車両制御部14は、回避動作を継続することもできる。
ステップS37において、実行判断部13は、次回以降の制御周囲で乗員の意図を反映するために、基準値THを引き上げて回避動作が実行され難くする。調整後の基準値THは記憶装置5に記憶され、次回以降の制御周期における回避動作の実行の判断時に使用される。
一方、ステップS33において回避動作を実行しない(待機する)と判断された場合、ステップS38に移行する。ステップS38において、車両制御部14は、後続対向車103が自車両100の側方を通過するまで、自車両100を障害物101の手前で待機させるための制御信号をアクチュエータ7に出力する。アクチュエータ7は、車両制御部14からの制御信号に応じて、自車両100を障害物101の手前で待機させる。
ステップS39において、脳波センサ4が、乗員の脳波のデータを検出する。違和感判断部16が、脳波センサ4により検出された脳波のデータに基づき、先行対向車102が自車両100の側方を通過した時刻から所定時間以内の乗員の違和感の有無を判断する。乗員の違和感が無いと判断された場合、乗員が回避動作を実行せずに待機するのが良いと感じており、その乗員の意図に合致して待機動作が開始されたため、乗員は違和感を覚えなかったと推測できる。このため、実行判断部13は、現在の基準値THを調整せずに維持し、処理を完了する。
一方、ステップS39において乗員の違和感が有ると判断された場合、乗員が回避動作を実行するのが良いと感じていたが、その乗員の意図に反して回避動作が開始されなかったため、乗員が違和感を覚えたと推定でき、ステップS40に移行する。
ステップS40において、実行判断部13は、次回以降の制御周囲で乗員の意図を反映するために、基準値THを引き下げて回避動作が実行され易くする。調整後の基準値THは記憶装置5に記憶され、次回以降の制御周期における回避動作の実行の判断時に使用される。
なお、図10のステップS36において自車両100が回避動作の中止後、障害物101の手前で待機中に図10の手順を繰り返し、先の制御周期のステップS37において調整後の基準値THを用いて回避動作の実行を判断してもよい。同様に、図10のステップS38において自車両100が障害物101の手前で待機中に図10の手順を繰り返し、先の制御周期のステップS40において調整後の基準値THを用いて回避動作の実行を判断してもよい。
第1の変形例によれば、例えば図9に示すように、自車両100の側方を先行対向車102が通過するまで自車両100が障害物101の手前で待機中であり、自車両100の前方から後続対向車103が自車両100に接近中である場面等において、先行対向車102が自車両100の側方を通過後、且つ後続対向車103が自車両100の側方を通過前に回避動作を実行するか否かを判断する。そして、回避動作を実行すると判断され、回避動作を開始直後に乗員の違和感が有ると判断された場合、基準値THを引き上げて回避動作を実行し難くする。これにより、同様の場面で回避動作を実行し難くなり、乗員の違和感を低減又は解消し得る。一方、自車両100の前方から後続対向車103が検出されている場合に、回避動作を実行しないと判断され、自車両100の待機中に先行対向車102が自車両100の側方を通過してから所定時間以内に違和感が有ると判断された場合、基準値THを引き下げて回避動作を実行し易くする。これにより、同様の場面で回避動作を実行し易くなり、乗員の違和感を低減又は解消し得る。
更に、図9に示した場面において、回避動作を開始直後に乗員の違和感が有ると判断された場合、乗員が違和感を覚えた回避動作を即座に中止することにより、乗員の意図に合致した運転行動が実現できる。
(第2の変形例)
本発明の実施形態の第2の変形例として、基準値THの設定方法の一例を説明する。回避動作を実行するか否かの判断結果に対して乗員の違和感が有ると判断された場合、同一の場面において回避動作を実行するか否かの判断結果が逆の判断結果となるように基準値THを調整してもよい。例えば、回避動作を実行するとの判断結果に対して違和感が検出され、基準値THを引き上げる場合、同一の場面において回避動作を実行しないと判断される値にまで基準値THを引き上げる。一方、回避動作を実行しないとの判断結果に対して違和感が検出され、基準値THを引き下げる場合、同一の場面において回避動作を実行すると判断される値にまで基準値THを引き下げる。
例えば図7のステップS4において、実行判断部13が算出した回避実行判断基準としてのTTCが3秒であり、TTCの基準値THが2秒である場合、実行判断部13が回避動作を実行すると判断し、ステップS5に移行し車両制御部14が回避動作を実行する。ステップS6において、違和感判断部16が回避動作を開始直後に乗員の違和感が有ると判断した場合、ステップS7に移行し、車両制御部14が回避動作を中止する。ステップS8において、実行判断部13が、TTCの基準値THを2秒から、回避実行判断基準として算出されたTTCよりも長い設定可能な最小値(例えば3.1秒)にまで引き上げる。これにより、回避実行判断基準としてのTTCが3秒である場合に基準値TH未満となり、実行判断部13により回避動作を実行しないと判断されることになる。或いは、回避実行判断基準として算出されたTTCと同一の3秒にまで引き上げて、実行判断部13が、回避実行判断基準が基準値TH以下か否かを判断し、回避実行判断基準が基準値TH以下の場合に回避動作を実行しないと判断しないと判断してもよい。これにより、回避実行判断基準としてのTTCが3秒である場合に基準値TH以下となり、実行判断部13により回避動作を実行しないと判断されることになる。
一方、図7のステップS4において、実行判断部13が算出した回避実行判断基準としてのTTCが2秒であり、TTCの基準値THが3秒である場合、実行判断部13が回避動作を実行しないと判断し、ステップS9に移行し車両制御部14が回避動作を実行する。ステップS10において、違和感判断部16が回避動作を開始直後に乗員の違和感が有ると判断した場合、ステップS11に移行し、実行判断部13が、TTCの基準値THを3秒から、回避実行判断基準として算出されたTTCと同一の2秒にまで引き下げる。これにより、回避実行判断基準としてのTTCが2秒である場合に基準値TH以上となり、実行判断部13により回避動作を実行すると判断されることになる。
また、図10のステップS33において、実行判断部13が算出した回避実行判断基準としてのTTCが3秒であり、TTCの基準値THが2秒である場合、実行判断部13が回避動作を実行すると判断し、ステップS34に移行し車両制御部14が回避動作を実行する。ステップS35において、違和感判断部16が回避動作を開始直後に乗員の違和感が有ると判断した場合、ステップS36に移行し、車両制御部14が回避動作を中止する。ステップS37において、実行判断部13が、TTCの基準値THを2秒から、回避実行判断基準として算出されたTTCよりも長い設定可能な最小値(例えば3.1秒)にまで引き上げる。これにより、回避実行判断基準としてのTTCが3秒である場合に基準値TH未満となり、実行判断部13により回避動作を実行しないと判断されることになる。或いは、回避実行判断基準として算出されたTTCと同一の3秒にまで引き上げて、実行判断部13が、回避実行判断基準が基準値TH以下か否かを判断し、回避判実行判断基準が基準値TH以下の場合に回避動作を実行しないと判断しないと判断してもよい。これにより、回避実行判断基準としてのTTCが3秒である場合に基準値TH以下となり、実行判断部13により回避動作を実行しないと判断されることになる。
一方、図10のステップS33において、実行判断部13が算出した回避実行判断基準としてのTTCが2秒であり、TTCの基準値THが3秒である場合、実行判断部13が回避動作を実行しないと判断し、ステップS38に移行し車両制御部14が回避動作を実行する。ステップS39において、違和感判断部16が回避動作を開始直後に乗員の違和感が有ると判断した場合、ステップS40に移行し、実行判断部13が、TTCの基準値THを3秒から、回避実行判断基準として算出されたTTCと同一の2秒にまで引き下げる。これにより、回避実行判断基準としてのTTCが2秒である場合に基準値TH以上となり、実行判断部13により回避動作を実行すると判断されることになる。
第2の変形例によれば、回避動作を開始した直後に乗員の違和感が有ると判断され、基準値THを引き上げる場合、同一の場面で回避動作を実行しないと判断される値にまで基準値THを引き上げる。一方、回避動作を実行しない時に乗員の違和感が有ると判断され、基準値THを引き下げる場合、同一の場面において回避動作を実行すると判断される値にまで基準値THを引き下げる。これにより、一回の違和感有無判断処理によって同一の場面において乗員の意図に合致する判断が可能なように効率的に基準値THを調整することができる。
なお、基準値THを引き上げる場合、同一の場面において回避動作を実行しないと判断される値を超えて更に高い(大きい)値に基準値THを引き上げてもよい。一方、基準値THを引き下げる場合、同一の場面において回避動作を実行すると判断される値を超えて更に低い(小さい)値に基準値THを引き下げてもよい。この場合も、同一の場面において回避動作を実行するか否かの判断結果が逆の判断結果となる。
また、基準値THを引き上げる場合、同一の場面において回避動作を実行しないと判断される値よりも低い(小さい)値にまで基準値THを引き上げてもよい。一方、基準値THを引き下げる場合、同一の場面において回避動作を実行すると判断される値よりも高い(大きい)値にまで基準値THを引き下げてもよい。この場合は、同一の場面において回避動作を実行するか否かの判断結果はそのままであるが、調整前の基準値THと比較して乗員の意図に沿った判断をし易くなる。
また、実際に脳が遅いと感じてから事象関連電位が検出されるまでには400ms程度の時間がかかるので、事象関連電位が検出されるまで時間を考慮して基準値THを調整してもよい。例えば、回避判断基準がTTCであり、TTCの基準値THを引き上げる場合に、回避実行判断基準として算出されたTTCよりも所定時間(400ms程度)だけ大きい値にまで引き上げてもよい。また、回避判断基準がTTCであり、TTCの基準値THを引き下げる場合に、回避実行判断基準として算出されたTTCよりも所定時間(400ms程度)だけ大きい値にまで引き下げてもよい。
(第3の変形例)
本発明の実施形態の第3の変形例として、図11のフローチャートを参照して、基準値THと乗員の違和感の有無のデータベースを作成しておき、基準値THの最適値を算出する場合を説明する。
ステップS51において、実行判断部13は、記憶装置5に記憶された基準値THを読み出して、回避実行判断基準が基準値TH以上か否かを判断することにより、回避動作を実行するか否かを判断する。ステップS52において、実行判断部13は、回避動作を実行するか否かの判断結果に応じた自車両100の走行に対する違和感の有無の判断結果を記憶装置5のデータベースに記憶し、データベースを更新する。ステップS53において、実行判断部13は、記憶装置5のデータベースに記憶された過去の基準値THと対応する違和感の有無の判断結果を参照し、二分探索法等を用いて、基準値THが乗員の意図に最も合致する最適値となるように、基準値THを設定する。
本発明の実施形態の第3の変形例によれば、過去の基準値THと違和感のデータベースを作成し、基準値THの最適値を設定することにより、乗員の意図(乗員の固有の判断基準)を正確に割り出すことができる。更に、乗員の意図にばらつきが有る場合にも、最適な基準値THに設定することができる。
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
例えば、本発明の実施形態においては、実行判断部13による回避動作の実行の有無の判断結果に応じて、提示制御部15が、回避動作の実行指示又は待機指示を乗員に対して提示するように出力I/F6を制御してもよい。そして、車両制御部14による走行制御に対する乗員の違和感の有無を判断する代わりに、提示制御部15による回避動作の実行指示又は待機指示に対する乗員の違和感の有無を判断してもよい。この場合、提示制御部15による回避動作の実行指示又は待機指示に対する乗員の違和感を低減又は解消することができる。
また、本発明の実施形態においては、脳波センサ4により脳波のデータを検出し、検出された脳波のデータから乗員の違和感の有無を判断する場合を例示したが、脳波センサ4以外の生体情報センサを用いて乗員の生体情報を検出し、検出した生体情報から乗員の違和感の有無を判断してもよい。例えば、脳血流、心拍数、呼吸数又は発汗量等の生体情報を検出する生体情報センサを用いて、検出された生体情報から乗員の違和感の有無を判断してもよい。或いは、撮像装置により乗員を撮像し、撮像画像を画像解析することにより、乗員の違和感の有無を判断してもよい。
本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。