JP2019043045A - 射出成形用金型 - Google Patents
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Abstract
Description
射出成形された樹脂成形品には、成形時の体積収縮の影響によって、いわゆるヒケが発生することがある。樹脂成形品の意匠面(例えばシボや梨地等の模様や鏡面状の光沢を有する表面)にヒケが発生した場合には、美観を損ない商品性を低下させる恐れがある。
また、同様に、特許文献2では、反意匠面側(非意匠面側)の金型キャビティ形成面(請求項における「非意匠面形成部」に相当。)に、意匠面側の金型キャビティ面(請求項における「意匠面形成部」に相当。)より樹脂が離型しやすくなる表面加工するとともに、意匠面側の金型キャビティ面の温度が反意匠面側の金型キャビティ面の温度より高くなるように設定し、金型キャビティ内に射出充填した樹脂の圧力が、射出完了後、1秒から7秒までの時間範囲内で、0Paとなるようにすることで、意匠面側のヒケの発生を抑制する方法が提案されている。
しかしながら、この意匠面側加熱成形法では、キャビティ内のガスがキャビティに注入した樹脂の流動端末やウェルド部に圧縮された状態でキャビティ面と成形品との間に残ると、このガスが保圧完了後の樹脂圧低下(冷却による樹脂の収縮も含む)により固化完了前の成形品の意匠面とキャビティ面との間に拡がり、成形品意匠面側のヒケ発生や、キャビティ面に対する密着部位と離間部位との境界へのラインの発生を招くことがあった。
パーティング面に排気促進用の溝を形成する対策では、キャビティ内のガスを樹脂充填に伴って排気することが可能である。このため、この対策では、キャビティ内のガスがキャビティに注入した樹脂の流動端末やウェルド部に残るケースを減少させることが可能である。
しかしながら、パーティング面に排気促進用の溝を形成する対策を意匠面側加熱成形法に適用しても、樹脂流動端末やウェルド部の付近に圧縮状態のガスが残存すれば、このガスが保圧完了後の樹脂圧低下によって固化完了前の成形品の意匠面とキャビティ面との間に拡がることを防ぐことはできないのが実情であった。
また、成形品の端面付近では金型の意匠面側と非意匠面側が、パーティング面を介して接触しているため、高温の意匠面側から非意匠面側への熱の移動により、両者の温度差が小さくなり、意匠面への樹脂の密着力が低下することがあった。
第1の態様の射出成形用金型は、樹脂成形品の意匠面形成用の凹部が形成された第1金型と、前記第1金型に対して開閉自由に存在し、前記第1金型に閉じ合わせたときに前記第1金型との間に前記凹部を含むキャビティを形成する第2金型とを有し、前記第2金型には、前記キャビティの内面の一部であり前記樹脂成形品の前記意匠面とは反対の裏面側を成形する裏側成形面と、前記裏側成形面に開口する通気路と、前記通気路を介して前記キャビティに連通するガス格納空間とが形成され、前記通気路は、前記キャビティと前記ガス格納空間との間のガスが流通可能、かつ前記キャビティからの溶融樹脂の流入を規制可能に形成され、前記ガス格納空間は、その内部にガスを大気圧よりも高圧の状態を保ったまま収容可能に形成されている。
前記第2金型には前記裏側成形面から窪む凹所が形成され、前記第2金型は前記凹所内に前記凹所の底面から前記キャビティ側に離隔させて設けられて前記裏側成形面に面一に配置された蓋部材を有し、前記蓋部材と前記凹所内側面との間あるいは前記蓋部材を貫通する前記通気路が確保され、前記凹所の底面と前記蓋部材との間に前記ガス格納空間が確保されていても良い。
前記第2金型の前記凹所は、前記キャビティに流入された溶融樹脂の前記キャビティ内における流動経路末端あるいはウェルド部に対応する位置に形成されていても良い。
前記ガス格納空間のその内部から外部へのガス移動は前記通気路のみ可能とされていても良い。
前記第2金型は、前記ガス格納空間から延在して前記第2金型の型締め時に第1金型に覆われず露呈する外面に開口する内圧調整用排気路と、前記内圧調整用排気路に設けられたバルブとを有し、前記バルブは、前記内圧調整用排気路の前記バルブから前記ガス格納空間側のガス圧が大気圧よりも高圧に設定した設定圧力以上になったときのみ、前記内圧調整用排気路の前記ガス格納空間側から前記第2金型の外側へのガス排気を許容する、構成も採用可能である。
また、キャビティ内の溶融樹脂の保圧完了後の樹脂圧低下が生じたとき、ガス格納空間に格納されていたガスがガス格納空間から通気路を介してキャビティ内の樹脂成形品と第2金型の裏側成形面との間に放出され、樹脂成形品を第2金型の裏側成形面から強制的に離隔させる。ガス格納空間から樹脂成形品と第2金型の裏側成形面との間に放出されたガスは、その圧力によって樹脂成形品を第1金型の凹部内面に押し付けるように作用する。その結果、樹脂成形品意匠面の第1金型の凹部内面に対する密着状態を維持でき、樹脂成形品の意匠面にラインが形成されることを防止できる。また、樹脂成形品の冷却に伴う固化進行によるヒケは樹脂成形品の意匠面ではなく意匠面とは反対の裏面側に集中的に生じさせることができ、このことにより樹脂成形品の意匠面のヒケ発生を抑制できる。
図1〜図3は本発明の1実施形態の射出成形金型10を示す図であり、型締め状態の射出成形金型10を示す正断面図である。
図1〜図3は射出成形金型10を用いた樹脂成形品1の製造方法を説明する図である。
図1は射出成形金型10のキャビティ11への溶融樹脂2の充填途中、図2は図1の溶融樹脂2のキャビティ11への充填完了間際、図3は図1の溶融樹脂2のキャビティ11への充填が完了しキャビティ11内に溶融樹脂2から成形された樹脂成形品1が存在する状態を示す。
第2金型30を、以下、コア型、とも言う。
コア型30の裏側成形面31は、コア型30をキャビティ型20に閉じ合わせたときにコア型30とキャビティ型20との間に確保される樹脂成形用空間であるキャビティ11を介してキャビティ型20の意匠面成形面22とは反対の側に位置する。
図1〜図3に示すように、コア型30の裏側成形面31は、キャビティ型20に閉じ合わせたコア型30におけるキャビティ11に臨む面である。
コア型30の裏側成形面31は、コア型本体32に形成された裏側成形主面31aと、コア型本体32に固定された蓋部材35に裏側成形主面31aに連続するように形成されたおもて面35a(以下、蓋部材おもて面、とも言う)とによって構成されている。
キャビティ型20のパーティング面23は成形用凹部21の開口部(コア型30側開口部)を取り囲むように形成されている。
コア型本体32のパーティング面33は裏側成形面31を取り囲むように形成されている。コア型30は、コア型本体32のパーティング面33をキャビティ型20のパーティング面23に重ね合わせてキャビティ型20に閉じ合わされる。
但し、コア型30の裏側成形面31は、その一部または全体が、型締め時にキャビティ型20の成形用凹部21内に入り込むようにキャビティ型20の成形用凹部21に向かって突出する形状であっても良い。
樹脂流動経路末端は、樹脂流動経路における溶融樹脂流入口から最も遠い箇所であり、キャビティ型20の成形用凹部21の開口部内面付近に位置する。
格納空間用凹所34は、コア型本体32の裏側成形主面31aにおけるキャビティ11内の樹脂流動経路末端に対応する位置から窪んでコア型本体32に形成されている。
蓋部材35は、格納空間用凹所34の裏側成形主面31aにおける開口部を塞ぐように設けられている。また、蓋部材35のキャビティ11に臨むおもて面35a(蓋部材おもて面)は、裏側成形主面31aに連続するように形成され、裏側成形主面31aに位置合わせされている。
コア型30は、コア型本体32の格納空間用凹所34のその内底面34aと蓋部材35との間(すなわち蓋部材35のおもて面35aとは反対の裏面35b側)に確保されたガス格納空間36を有する。
蓋部材35は、その裏面35bの外周部を、格納空間用凹所34の拡張部34b(以下、凹所拡張開口部、とも言う)と凹所主部との間の段差に当接させて凹所拡張開口部34bに収容されている。
図1〜図3に示す蓋部材35は具体的にはそのおもて面35aに垂直の方向を板厚とする板状に形成されている。
蓋部材35の側周面35cは、凹所拡張開口部34b内周面に比べて僅かに小さい相似形に形成される。蓋部材35の側周面35cは、例えば、凹所拡張開口部34b内周面からその中心軸線方向へ0.1mm程度(0.05〜0.15mm)小さいサイズに形成される。
図1〜図3の蓋部材35は、金属部材等の非通気性部材を用いている。
図4(a)、(b)に示すように、蓋部材35(具体的にはその側周面35c)と凹所拡張開口部34b内周面との間には、ガス格納空間36とキャビティ11との間のガス流通を可能にする通気路37が確保される。通気路37の一端はガス格納空間36に開口され、他端はコア型30の裏側成形面31に開口されている。
また、図4(a)に示すように、蓋部材側周面35cが凹所拡張開口部34b内周面に当接された箇所では、蓋部材35の側周面35c及び凹所拡張開口部34b内周面の微小な凹凸により通気路37が確保される。
通気路37は、ガス格納空間36とキャビティ11との間のガス流通を許可し、キャビティ11から格納空間用凹所34への溶融樹脂2の漏出を規制する。
接着性を有する熱固化性樹脂を用いた接着固定は、蓋部材35の外面の一部のみを局所的にコア型本体32に熱固化性樹脂を用いて接着固定し、蓋部材35外面の格納空間用凹所34内に位置する部分の殆どがコア型本体32に接着されていないようにする。これにより、蓋部材35側周とコア型本体32内周との間の通気路37を確保する。
ガス格納空間36は、通気路37のみがガス格納空間36の内外へのガス流通を可能にする流路となっている。
ガス格納空間36は、通気路37以外に内部のガスの出口が無く、例えばそのキャビティ11側を気密に封止すればガスを大気圧よりも高圧の状態を保ったまま収容可能である。
型開き後の射出成形金型10は型締めすることで、以下、上記の手順にて再び樹脂成形品1の製造に用いることができる。
なお、本明細書では、キャビティ11に充填された溶融樹脂2全体の固化が完了したもの以外、キャビティ11への充填完了後、冷却固化途中の溶融樹脂2についても「樹脂成形品」として説明する。
樹脂成形品は、射出成形金型10の型開きまでにその全体の固化を完了し、全体の固化完了後の射出成形金型10の型開きによって射出成形金型10から取り出される。
溶融樹脂2はキャビティ11内への充填完了時点で所定圧力に保圧されている。キャビティ11内の樹脂圧は、キャビティ11内の樹脂成形品1の冷却固化に伴う体積収縮によって低下していく。このとき、ガス格納空間36内のガスがその内圧によって通気路37を介して、キャビティ11内の樹脂成形品1(固化途中の溶融樹脂2を含んでいても良い)をキャビティ型20の意匠面成形面22に向かって押圧し、樹脂成形品1と裏側成形面31との間に排出される。ガス格納空間36から樹脂成形品1と裏側成形面31との間に排出されたガスは、樹脂成形品1をコア型30の裏側成形面31から引き剥がす。これにより、樹脂成形品1の裏面1bとコア型30の裏側成形面31に入り込んだガスが、その圧力によって、キャビティ11内の樹脂成形品1をキャビティ型20の意匠面成形面22に向かって押圧し、樹脂成形品1の意匠面1aをキャビティ型20の意匠面成形面22に押し付ける。
したがって、射出成形金型10を用いた樹脂成形品1の成形(製造)では、樹脂成形品1の意匠面1aを高精度に安定に形成することができる。このため、射出成形金型10を用いた樹脂成形品1の成形(製造)では、キャビティ内のガスの排気をパーティング面に形成した排気促進用の溝のみに頼る技術に比べて美観に優れた意匠面1aをより確実に得ることが可能である。
図1〜図3に示す射出成形金型10を用いた樹脂成形品1の成形では、型締め状態におけるキャビティ型20からコア型30への熱移動の有無に関係無く、成形品意匠面1aへのヒケによる窪みやラインの形成を防ぐことができる。
型締め保持時間は、その途中で、ガス格納空間36から樹脂成形品1とコア型30の裏側成形面31との間へのガス排出が生じ、ガス格納空間36からのガス排出後、樹脂成形品1の冷却がさらに進行したタイミングで射出成形金型10を型開きするように設定する。
図1〜図3の射出成形金型10のコア型30は、キャビティ11内の樹脂流動経路末端に対応する位置に蓋部材35及びガス格納空間36を有する。但し、蓋部材及びガス格納空間は、例えば、第2金型における、キャビティ内のウェルド部に対応する位置に設けても良い。
射出成形用金型は、キャビティ内における樹脂流動経路末端及びウェルド部の一方又は両方を有する構成を採用できる。蓋部材及びガス格納空間は、キャビティの樹脂流動経路末端、ウェルド部の1以上に設けることができる。
通気性多孔質材は通気路として機能する空孔を有する。通気性多孔質材を有し通気性多孔質材の空孔によって通気路を確保した蓋部材を用いる場合あるいは貫通孔形成金属部材を蓋部材に採用した場合は、格納空間用凹所の開口部内周面と蓋部材との間に通気路を確保した構成、格納空間用凹所の開口部内周面と蓋部材との間に通気路を確保していない構成のいずれも採用可能である。
なお、多孔質材料を使用する場合は、例えば格納空間用凹所全体を埋め込むサイズの多孔質材料を使用することで、キャビティ型にガス格納用の空間を別途設けることなく、多孔質部材中に高圧のガスを貯留することが出来る。
射出成形金型10では、ガス格納空間からの排出ガスによって樹脂成形品と第2金型の裏側成形面との間に形成される隙間が第1金型及び第2金型の一方または両方のパーティング面の排気用溝に連通して、ガス格納空間からの排出ガスが排気用溝から排出されることを防ぐことができる。このため、射出成形金型10では、ガス格納空間から樹脂成形品と第2金型の裏側成形面との間へ排出させたガスが樹脂成形品を第1金型の意匠面成形面へ向かって押圧する押圧力を確実に確保できる。
図5の第2金型30Aは図1〜図3のコア金型30に内圧調整用排気路41及びリークバルブ42を設けた構成である。
図5の第2金型30Aのリークバルブ42は、内圧調整用排気路41のリークバルブ42からガス格納空間36側のガス圧が大気圧よりも高圧に設定した設定圧力以上になったときに、内圧調整用排気路41のガス格納空間36側から第2金型30A外側へのガス排気を許容する。
リークバルブ42が内圧調整用排気路41のガス格納空間36側から第2金型30A外側へのガス排気を許容する設定圧力は、例えば、キャビティ11及びガス格納空間36の内部のガス圧が樹脂焼けを生じず、かつ、キャビティ11内の樹脂成形品1のその成形過程における体積収縮時にガス格納空間36から樹脂成形品1と第2金型30Aの裏側成形面31との間へのガス排出(ガス圧による裏側成形面31から樹脂成形品1の引き剥がしを含む)が可能な範囲に設定する。
リークバルブ42は、内圧調整用排気路41のリークバルブ42からガス格納空間36側のガス圧が設定圧力よりも低いときは、内圧調整用排気路41のガス格納空間36側から第2金型30A外側へのガス排気を規制する。
Claims (5)
- 樹脂成形品の意匠面形成用の凹部が形成された第1金型と、前記第1金型に対して開閉自由に存在し、前記第1金型に閉じ合わせたときに前記第1金型との間に前記凹部を含むキャビティを形成する第2金型とを有し、
前記第2金型には、前記キャビティの内面の一部であり前記樹脂成形品の前記意匠面とは反対の裏面側を成形する裏側成形面と、前記裏側成形面に開口する通気路と、前記通気路を介して前記キャビティに連通するガス格納空間とが形成され、
前記通気路は、前記キャビティと前記ガス格納空間との間のガスが流通可能、かつ前記キャビティからの溶融樹脂の流入を規制可能に形成され、
前記ガス格納空間は、その内部にガスを大気圧よりも高圧の状態を保ったまま収容可能に形成されている射出成形用金型。 - 請求項1に記載の射出成形用金型において、
前記第2金型には前記裏側成形面から窪む凹所が形成され、
前記第2金型は前記凹所内に前記凹所の底面から前記キャビティ側に離隔させて設けられて前記裏側成形面に面一に配置された蓋部材を有し、前記蓋部材と前記凹所内側面との間あるいは前記蓋部材を貫通する前記通気路が確保され、前記凹所の底面と前記蓋部材との間に前記ガス格納空間が確保されている射出成形用金型。 - 請求項1又は2に記載の射出成形用金型において、
前記第2金型の前記凹所は、前記キャビティに流入された溶融樹脂の前記キャビティ内における流動経路末端あるいはウェルド部に対応する位置に形成されている射出成形用金型。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の射出成形用金型において、
前記ガス格納空間のその内部から外部へのガス移動は前記通気路のみ可能とされている射出成形用金型。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の射出成形用金型において、
前記第2金型は、前記ガス格納空間から延在して前記第2金型の型締め時に第1金型に覆われず露呈する外面に開口する内圧調整用排気路と、前記内圧調整用排気路に設けられたバルブとを有し、前記バルブは、前記内圧調整用排気路の前記バルブから前記ガス格納空間側のガス圧が大気圧よりも高圧に設定した設定圧力以上になったときのみ、前記内圧調整用排気路の前記ガス格納空間側から前記第2金型の外側へのガス排気を許容する射出成形用金型。
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