JP2019039856A - リチウム樹枝状結晶の観察用対称セル、リチウム樹枝状結晶の観察方法およびリチウム樹枝状結晶の制御方法 - Google Patents

リチウム樹枝状結晶の観察用対称セル、リチウム樹枝状結晶の観察方法およびリチウム樹枝状結晶の制御方法 Download PDF

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重輔 志村
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梓実 本間
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Abstract

【課題】リチウム樹枝状結晶をin situ観察することが可能であるリチウム樹枝状結晶の観察用対称セルを提供する。【解決手段】リチウム樹枝状結晶の観察用対称セルは、リチウム金属を含む第1電極と、その第1電極に対向すると共にリチウム金属を含む第2電極と、第1電極と第2電極との間に配置されると共にX線の減弱能を有する複数の造影粒子を含む電解質とを備える。【選択図】図1

Description

本技術は、リチウム樹枝状結晶を観察するために用いられる観察用対称セル、ならびにその観察用対称セルを用いたリチウム樹枝状結晶の観察方法およびリチウム樹枝状結晶の制御方法に関する。
携帯電話機などの多様な電子機器が広く普及しており、その電子機器の小型化、軽量化および長寿命化が要望されている。そこで、電源として、小型かつ軽量であると共に高エネルギー密度を得ることが可能な二次電池の開発が進められている。
二次電池としては、リチウムイオン二次電池などが知られている。このリチウムイオン二次電池では、リチウムイオンの吸蔵現象およびリチウムイオンの放出現象を利用して負極の容量が得られる。
しかしながら、リチウムイオン二次電池では、充放電時において意図せずにリチウム金属の析出物が成長しすぎることに起因して、短絡が発生する可能性がある。このリチウム金属の析出物は、いわゆるリチウム樹枝状結晶(リチウムデンドライト)である。
そこで、リチウム樹枝状結晶に関するさまざまな検討がなされている。具体的には、リチウム樹枝状結晶が発生することを抑制するために、二次電池の充電時において、充電方向と放電方向とに交互にパルス電流が供給されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開平05−152002号公報
リチウム樹枝状結晶に関するさまざまな検討がなされているが、そのリチウム樹枝状結晶の成長状態に関しては、未だ解明されていないことが多い。このような状況において、リチウム樹枝状結晶が発生することをより抑制するためには、そのリチウム樹枝状結晶の成長状態を詳細に調べる必要がある。
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、リチウム樹枝状結晶をin situ観察することが可能であるリチウム樹枝状結晶の観察用対称セル、リチウム樹枝状結晶の観察方法およびリチウム樹枝状結晶の制御方法を提供することにある。
本技術のリチウム樹枝状結晶の観察用対称セルは、リチウム金属を含む第1電極と、その第1電極に対向すると共にリチウム金属を含む第2電極と、第1電極と第2電極との間に配置されると共にX線の減弱能を有する複数の造影粒子を含む電解質とを備えたものである。
本技術のリチウム樹枝状結晶の観察方法は、上記した本技術のリチウム樹枝状結晶の観察用対称セルと同様の構成を有する観察用対称セルを用いて、その観察用対称セルに対して、第1電極においてリチウム金属が溶出されると共に第2電極においてリチウム金属が析出される第1通電方向と第2電極においてリチウム金属が溶出されると共に第1電極においてリチウム金属が析出される第2通電方向とに交互にパルス電流を供給しながら、X線コンピュータ断層撮影装置を用いて、第2電極と電解質との界面に発生するリチウム樹枝状結晶を観察するものである。
本技術のリチウム樹枝状結晶の制御方法は、上記した本技術のリチウム樹枝状結晶の観察用対称セルと同様の構成を有する観察用対称セルを用いて、その観察用対称セルに対して、第1電極においてリチウム金属が溶出されると共に第2電極においてリチウム金属が析出される第1通電方向と第2電極においてリチウム金属が溶出されると共に第1電極においてリチウム金属が析出される第2通電方向とに交互にパルス電流を供給しながら、X線コンピュータ断層撮影装置を用いて、第2電極と電解質との界面に発生するリチウム樹枝状結晶の成長状態を観察し、パルス電流の供給条件とリチウム樹枝状結晶の成長状態との相関を調べることにより、所望の成長状態となるようにリチウム樹枝状結晶の成長状態を制御することが可能であるパルス電流の供給条件を特定するものである。
本技術のリチウム樹枝状結晶の観察用対称セル、リチウム樹枝状結晶の観察方法またはリチウム樹枝状結晶の制御方法によれば、その観察用対称セルでは、リチウム金属を含む第1電極とリチウム金属を含む第2電極との間に電解質が配置されており、その電解質がX線の減弱能を有する複数の造影粒子を含んでいる。よって、リチウム樹枝状結晶をin situ観察、すなわち「その場」観察することができる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるわけではなく、本技術中に記載されたいずれの効果であってもよい。
本技術の一実施形態におけるリチウム樹枝状結晶の観察用対称セルの構成を表す断面図である。 図1に示した観察用対称セルのうちの主要部の構成を表す斜視図である。 観察用対称セルの構成に関する変形例を表す断面図である。 リチウム樹枝状結晶の観察結果であるX線コンピュータ断層撮影画像を模式的に表す斜視図である。 リチウム樹枝状結晶の観察時における観察用対称セルのうちの主要部の構成を表す断面図である。 図5に示したリチウム樹枝状結晶の分析手順を説明するための断面図である。 リチウム樹枝状結晶の観察結果であるX線コンピュータ断層撮影画像(充電電流の供給後の経過時間=6時間)である。 リチウム樹枝状結晶の観察結果であるX線コンピュータ断層撮影画像(充電電流の供給後の経過時間=13時間)である。 リチウム樹枝状結晶の観察結果であるX線コンピュータ断層撮影画像(充電電流の供給後の経過時間=20時間)である。 充電電流の供給後において電解質の表面を観察した顕微鏡写真である。 充電電流の供給前において電解質の表面を観察した顕微鏡写真である。 パルス電流の供給パターン(K型)を説明するための図である。 パルス電流の供給パターン(N型)を説明するための図である。 パルス電流の供給パターン(T型)を説明するための図である。
以下、本技術の一実施形態に関して、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。

1.リチウム樹枝状結晶の観察用対称セル
1−1.構成
1−2.製造方法
1−3.使用方法
1−4.作用および効果
1−5.変形例
2.リチウム樹枝状結晶の観察方法
2−1.観察手順
2−2.分析手順
2−3.作用および効果
2−4.変形例
3.リチウム樹枝状結晶の制御方法
3−1.制御手順
3−2.作用および効果
3−3.変形例
<1.リチウム樹枝状結晶の観察用対称セル>
最初に、本技術の一実施形態におけるリチウム樹枝状結晶の観察用対称セルに関して説明する。
ここで説明する観察用対称セルは、X線コンピュータ断層撮影(CT:Computed Tomography )を用いて、その観察用対称セルの通電時において発生するリチウム樹枝状結晶(いわゆるリチウムデンドライト)を観察するために用いられる。この観察用対称セルを用いることにより、リチウム樹枝状結晶の成長状態が観察可能になる。
<1−1.構成>
まず、本技術の一実施形態におけるリチウム樹枝状結晶の観察用対称セルである観察用対称セル100の構成に関して説明する。
図1は、観察用対称セル100の断面構成を表していると共に、図2は、図1に示した観察用対称セル100のうちの主要部(第1電極1、第2電極2、電解質3、分離部材4および基準部材7)の斜視構成を表している。
ただし、図2では、第1電極1、第2電極2、電解質3、分離部材4および基準部材7が互いに離間された状態を示していると共に、第1電極1、第2電極2および電解質3のそれぞれに網掛けを施している。
図2に示した上向きの矢印(成長方向S)は、後述するように、観察用対称セル100に通電した際にリチウム樹枝状結晶Dが成長する方向を表している。この「成長方向S」は、第1電極1と第2電極2とが互いに対向する方向であり、より具体的には、例えば、第2電極2から第1電極1に向かう方向である。
この観察用対称セル100は、例えば、図1に示したように、第1電極1と、第2電極2と、第1電極1と第2電極2との間に配置された電解質3とを備えている。すなわち、観察用対称セル100は、2つの電極(第1電極1および第2電極2)により電解質3が挟まれた対称構造を有している。
より具体的には、観察用対称セル100は、例えば、外装部材20と、その外装部材20の内部に収納されたセル素子10とを備えている。このセル素子10は、例えば、第1電極1と、第2電極2と、電解質3と、分離部材4と、絶縁部材5,6と、基準部材7とを含んでいる。第1電極1には、例えば、リード8が接続されていると共に、第2電極2には、例えば、リード9が接続されている。
このセル素子10では、例えば、基準部材7と、絶縁部材6と、第2電極2と、電解質3および分離部材4と、第1電極1と、絶縁部材5とがこの順に積層されている。
[第1電極]
第1電極1は、電解質3を利用して電極反応(充放電反応)を進行させるための一方の電極であり、リチウム金属を含んでいる。ここでは、第1電極1は、例えば、図2に示したように、板状のリチウム金属(いわゆるリチウム金属板)である。
なお、リチウム金属板の電気化学的安定性を向上させるために、そのリチウム金属板の表面は、例えば、炭酸リチウム(Li2 CO3 )などを含む薄膜(被膜)により被覆されていてもよい。また、第1電極1は、例えば、リチウム金属が表面に析出された金属材料および炭素材料などでもよい。この金属材料は、例えば、リチウム以外の銅などである。
[第2電極]
第2電極2は、電解質3を利用して電極反応を進行させるための他方の電極であり、電解質3を介して第1電極1に対向している。この第2電極2は、上記した第1電極1と同様に、リチウム金属を含んでいる。第2電極2の構成に関する詳細は、例えば、第1電極1の構成に関する詳細と同様である。
[電解質]
電解質3は、第1電極1と第2電極2との間に配置されており、その第1電極1と第2電極2との間においてリチウムイオンを移動させるための媒介である。この電解質3は、第1電極1に隣接されていると共に、第2電極2に隣接されている。
(複数の造影粒子)
特に、電解質3は、X線の減弱能を有する複数の造影粒子を含んでいる。複数の造影粒子は、電解質3中において分散されているため、その電解質3の立体的構造をX線CTで捉えるための造影剤として機能する。
詳細には、第1電極1および第2電極2のそれぞれに含まれているリチウム金属は、X線を透過させる性質を有している。また、上記したように、複数の造影粒子を含んでいる電解質3は、X線を減弱させる性質(減弱能)を有しているため、X線CTを用いて、電解質3の立体的構造を捉えることができる。これにより、後述する観察用対称セル100の通電時においてリチウム金属の析出物(リチウム樹枝状結晶)が発生すると、そのリチウム樹枝状結晶が可視化されるため、そのリチウム樹枝状結晶が直接的に観察可能になる。
X線で捉えたい対象は、複数の造影粒子そのものではなく、その複数の造影粒子が分散されている電解質3の立体的構造である。このため、複数の造影粒子ができるだけ均一に分散されることにより、その複数の造影粒子が造影剤として機能しやすくなるようにするために、その複数の造影粒子の平均粒径は、十分に小さいことが好ましい。この場合には、厳密には、一次粒子の平均粒径が小さいだけでは不十分であり、その一次粒子の凝集体である二次粒子の平均粒径が十分に小さいことが重要であるため、その二次粒子の平均粒径を制御することが必要である。具体的には、複数の二次粒子が複数の造影粒子を含んでいる場合、その複数の二次粒子のメジアン径D50(μm)は、X線CT(またはX線CT装置)におけるX線の焦点寸法(μm)よりも小さいことが好ましい。すなわち、メジアン径D50は、X線CT装置の光学分解能以下であることが好ましい。この場合には、複数の造影粒子が粒子として観察されずに連続体として観察され、すなわち複数の造影粒子が造影剤として機能しやすくなるため、その複数の造影粒子によりリチウム樹枝状結晶が可視化されやすくなる。
上記した「X線の焦点寸法」とは、X線CT装置に搭載されているX線源(X線管)の仕様に応じて決定される値である。X線管の内部では、陰極から発生した電子線を集光させると共に陽極に衝突させることによりX線を発生させており、そのX線の発生部位におけるX線の寸法をX線の焦点寸法と呼称する。X線CT装置の光学分解能は、上記した焦点寸法と共に拡大率に応じて決定され、その拡大率は、試料(観察用対称セル100)の光学的配置に応じて決定される。原理上、焦点寸法よりも小さい寸法を有する構造体を観察することは不可能である。
メジアン径D50がX線の焦点寸法よりも小さければ、そのメジアン径D50は、特に限定されない。中でも、メジアン径D50は、10μm未満であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、1μm〜2μmであることがさらに好ましい。メジアン径D50が十分に小さくなるため、X線の焦点寸法の範囲(下限値)に関する自由度を担保しながら、複数の造影粒子が造影剤としてより機能しやすくなるからである。これにより、X線の焦点寸法の変動などに起因する影響をほとんど受けずに、リチウム樹枝状結晶が安定に可視化されやすくなる。
複数の造影粒子は、造影剤として機能するために、X線減弱材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この「X線減弱材料」とは、X線の減弱能を有する材料の総称である。
X線減弱材料の減弱係数は、複数の造影粒子が造影剤として機能することができれば、特に限定されない。中でも、X線CT装置に用いられるX線(入射X線)の波長におけるX線減弱材料の減弱係数は、そのX線の波長におけるリチウム金属の減弱係数の10倍以上であることが好ましい。減弱係数が十分に大きくなるため、複数の造影粒子が造影剤として機能しやすくなるからである。
具体的には、X線減弱材料は、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3 )、酸化アルミニウム(Al2 3 )、酸化チタン(TiO2 )および酸化ケイ素(SiO2 )などである。減弱係数が十分に大きくなるため、複数の造影粒子が造影剤として機能しやすくなるからである。中でも、X線減弱材料は、チタン酸バリウムであることが好ましい。チタン酸バリウムは優れたX線の減弱能を有しているため、複数の造影粒子が造影剤としてより機能しやすくなるからである。
電解質3中における複数の造影粒子の含有量は、特に限定されないが、例えば、1重量%〜30重量%である。複数の造影粒子が造影剤として十分に機能するため、リチウム樹枝状結晶が安定に可視化されやすくなるからである。
ここでは、電解質3は、例えば、後述するように、電解質膜である。この電解質3の立体的構造は、特に限定されないが、例えば、円筒状である。この円筒状の電解質3は、例えば、分離部材4に設けられた貫通口4Kに嵌め込まれることにより、第1電極1に隣接されていると共に、第2電極2に隣接されている。
より具体的には、第1電極1は、電解質3に対向する対向面1Mを有しているため、その対向面1Mにおいて電解質3に隣接されている。また、第2電極2は、電解質3に対向する対向面2Mを有しているため、その対向面2Mにおいて電解質3に隣接されている。
(他の材料)
なお、電解質3は、例えば、上記した複数の造影粒子と共に、他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。この他の材料は、例えば、溶媒、電解質塩および高分子化合物などである。
具体的には、電解質3は、例えば、複数の造影粒子と共に、液状電解質(いわゆる電解液)と、その電解液を保持する高分子化合物とを含んでいる非液状電解質であり、その電解液は、例えば、溶媒および電解質塩を含んでいる。すなわち、電解質3は、例えば、いわゆるゲル状の電解質(電解質膜)である。電解質3中において複数の造影粒子が分散されやすくなると共に、その複数の造影粒子の分散状態が維持されやすくなるため、リチウム樹枝状結晶が安定に可視化されやすくなるからである。この電解質3では、例えば、電解液中において複数の造影粒子が分散されていると共に、その複数の造影粒子が電解液と一緒に高分子化合物により保持されている。
(溶媒)
溶媒は、例えば、有機溶剤などの非水溶媒うちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この非水溶媒は、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、ラクトン、鎖状カルボン酸エステルおよびニトリル(モノニトリル化合物)などである。
環状炭酸エステルは、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレンおよび炭酸ブチレンなどである。鎖状炭酸エステルは、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルおよび炭酸メチルプロピルなどである。ラクトンは、例えば、γ−ブチロラクトンおよびγ−バレロラクトンなどである。鎖状カルボン酸エステルは、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチルおよびトリメチル酢酸エチルなどである。モノニトリル化合物は、例えば、アセトニトリル、メトキシアセトニトリルおよび3−メトキシプロピオニトリルなどである。
また、非水溶媒は、例えば、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチルおよびジメチルスルホキシドなどでもよい。
さらに、非水溶媒は、例えば、不飽和環状炭酸エステル、ハロゲン化炭酸エステル、スルホン酸エステル、酸無水物、ジシアノ化合物(ジニトリル化合物)、ジイソシアネート化合物およびリン酸エステルなどを含んでいてもよい。
不飽和環状炭酸エステルは、例えば、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレンおよび炭酸メチレンエチレンなどである。ハロゲン化炭酸エステルは、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)および炭酸ジフルオロメチルメチルなどである。スルホン酸エステルは、例えば、1,3−プロパンスルトンおよび1,3−プロペンスルトンなどである。酸無水物は、例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水エタンジスルホン酸、無水プロパンジスルホン酸、無水スルホ安息香酸、無水スルホプロピオン酸および無水スルホ酪酸などである。ジニトリル化合物は、例えば、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリルおよびフタロニトリルなどである。ジイソシアネート化合物は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートなどである。リン酸エステルは、例えば、リン酸トリメチルおよびリン酸トリエチルなどである。
(電解質塩)
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの金属塩のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。リチウム塩は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 )、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C6 5 4 )、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3 SO3 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、ビス(フルオロスルホニル)アミドリチウム(LiN(SO2 F)2 )、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドリチウム(LiN(CF3 SO2 2 )、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4 )、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2 SiF6 )、塩化リチウム(LiCl)および臭化リチウム(LiBr)などである。
(高分子化合物)
高分子化合物は、いわゆる電解液を保持するマトリクス高分子である。高分子化合物の種類は、例えば、いわゆるポリマー電解質に用いられるマトリクスポリマーのうちのいずれか1種類または2種類以上であれば、特に限定されない。この高分子化合物は、例えば、ポリエーテル類、ポリエステル類、ポリアミン類、シリコーン類およびポリスルフィド類などであり、中でも、高いイオン伝導性を有するポリエーテル類が好ましい。なお、高分子化合物は、共重合体でもよい。
[分離部材]
分離部材4は、第1電極1と第2電極2との間に配置されており、第1電極1と第2電極2とを互いに離間させると共に電解質3を保持する部材である。
この分離部材4は、例えば、絶縁性の高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その絶縁性の高分子化合物は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリイミドなどである。これにより、第1電極1と第2電極2とは、電解質3が存在している領域を除いて、分離部材4を介して互いに電気的に分離されている。
具体的には、分離部材4は、例えば、上記した絶縁性の高分子化合物を含むシート(いわゆる高分子シート)である。
なお、分離部材4には、例えば、上記したように、円筒状の電解質3が嵌め込まれる貫通口4Kが設けられている。貫通口4Kの立体的構造は、例えば、電解質3の立体的構造に対応している。
[絶縁部材]
絶縁部材5は、外装部材20(後述する第1外装部材21)から第1電極1を離間させる部材であり、その第1電極1と第1外装部材21との間に配置されている。
この絶縁部材5は、例えば、絶縁性の高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その絶縁性の高分子化合物に関する詳細は、例えば、上記した分離部材4に用いられる絶縁性の高分子化合物に関する詳細と同様である。
具体的には、絶縁部材5は、例えば、上記した絶縁性の高分子化合物を含むフィルム(いわゆる高分子フィルム)である。このフィルムは、例えば、ポリプロピレンなどの単層の高分子フィルムなどである。
ただし、絶縁部材5は、例えば、絶縁性の高分子化合物と共に金属材料を含む複合フィルムでもよい。複合フィルムの層数は、2層以上であれば、特に限定されない。具体的には、複合フィルムは、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの高分子層とアルミニウム箔などの金属層とが互いに積層されたラミネートフィルムなどである。
絶縁部材6は、外装部材20(後述する第2外装部材22)から第2電極2を離間させる部材であり、その第2電極2と第2外装部材22との間に配置されている。絶縁部材6の構成に関する詳細は、例えば、上記した絶縁部材5の構成に関する詳細と同様である。
特に、絶縁部材6は、基準部材7が第2電極2および電解質3のそれぞれに接触しないようにするために、その基準部材7を保護する役割を果たしていると共に、第2電極2と基準部材6との位置関係が変化しないようにするために、その第2電極2と基準部材6との間の距離を維持する役割も果たしている。
[基準部材]
基準部材7は、観察用対称セル100を用いてリチウム樹枝状結晶を観察する際に、例えば、成長方向Sにおける第2電極2と電解質3との界面Fの位置(基準位置)を特定するために用いられる部材である。
X線CT装置を用いたリチウム樹枝状結晶の観察時には、例えば、第2電極2と電解質3との界面Fにおいて、上記した基準位置に対する構造変化を追跡することにより、リチウム樹枝状結晶が観察される。すなわち、リチウム樹枝状結晶の発生の有無およびリチウム樹枝状結晶の成長の程度は、上記した基準位置に基づいて判断される。
この基準部材7は、例えば、X線CT装置を用いたリチウム樹枝状結晶の観察を阻害しないようにするために、X線の透過性を有している。また、基準部材7は、界面Fに対向する基準面7Mを有している。すなわち、基準面7Mは、界面Fに対して略平行である。上記した「基準位置」は、成長方向Sにおける基準面7Mの位置に基づいて特定される。
観察用対称セル100の充電時において、例えば、第1電極1においてリチウム金属が溶出されると共に第2電極2においてリチウム金属が析出されるように観察用対称セル100に対してパルス電流が供給される場合には、上記したように、界面Fにおいてリチウム樹枝状結晶が発生する。より具体的には、対向面2Mのうちの電解質3に対向する領域において、その対向面2Mにリチウム樹枝状結晶が発生する。
この場合には、基準部材7は、例えば、第1電極1よりも第2電極2に近い側に配置されているため、その第2電極2は、例えば、電解質3と基準部材7との間に配置されている。成長方向Sにおける基準面7Mの位置に基づいて基準位置を特定しやすくするためである。ただし、基準部材7の数は、例えば、1個に限らず、2個以上でもよい。
特に、上記したように、成長方向Sにおける基準面7Mの位置は、リチウム樹枝状結晶の観察時における基準位置を特定することになるため、その基準面7Mは、できるだけ界面Fに対して平行であることが好ましいと共に、できるだけ平滑(平坦)であることが好ましい。このため、基準面7Mの表面粗さは、特に限定されないが、できるだけ小さいことが好ましい。より具体的には、基準面7Mの算術平均粗さRaは、X線CT装置におけるX線の焦点寸法以下であることが好ましい。基準位置が正確に特定されやすくなるため、リチウム樹枝状結晶の観察精度が向上するからである。
この基準部材7は、例えば、ウェハおよびガラス板などである。具体的には、ウェハは、例えば、シリコンウェハなどであると共に、ガラス板は、例えば、スライドガラスなどである。高い平滑度が担保されるように研磨されたウェハの研磨面およびガラス板の平滑面などを基準面7Mとして利用することにより、基準位置がより正確に特定されやすくなるため、リチウム樹枝状結晶の観察精度がより向上するからである。ただし、基準部材7は、例えば、ウェハおよびガラス板などの一部(小片)でもよい。
なお、観察用対称セル100は、例えば、基準部材7を備えていなくてもよい。ただし、成長方向Sにおいて界面Fの位置を高精度に特定することにより、リチウム樹枝状結晶の観察精度を向上させるためには、観察用対称セル100は基準部材7を備えていることが好ましい。
[リード]
リード8は、第1電極1に接続された配線であると共に、リード9は、第2電極2に接続された配線である。リード8,9のそれぞれは、例えば、銅などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
リード8の一端部は、例えば、第1電極1に接続されていると共に、そのリード8の他端部は、例えば、外装部材20の内部から外部に導出されている。リード9の一端部は、例えば、第2電極2に接続されていると共に、そのリード9の他端部は、例えば、外装部材20の内部から外部に導出されている。なお、リード9の導出方向は、例えば、リード8の導出方向と反対の方向である。
[外装部材]
外装部材20は、セル素子10を収納する収納部材である。ここでは、観察用対称セル100は、例えば、フィルム状の外装部材20を備えている。
この外装部材20は、例えば、1層または2層以上の高分子化合物を含む層と、1層または2層以上の金属材料を含む層とが任意の順に互いに積層されたラミネートフィルムである。具体的には、外装部材20は、例えば、例えば、融着層と、金属層と、表面保護層とが内側からこの順に積層された金属ラミネートフィルムである。
融着層は、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのフィルムのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。金属層は、例えば、アルミニウム箔などの金属箔のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。表面保護層は、例えば、ナイロンおよびポリエチレンテレフタレートなどのフィルムのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
ここでは、外装部材20は、例えば、2枚のフィルム(第1外装部材21および第2外装部材22)を含んでいる。第1外装部材21と第2外装部材22とは、例えば、融着層のうちの外周縁部同士が互いに融着されることにより、互いに張り合わされている。第1外装部材21は、例えば、絶縁部材5に隣接されていると共に、第2外装部材22は、例えば、基準部材7に隣接されている。
<1−2.製造方法>
続いて、図1および図2を参照して、観察用対称セル100の製造方法に関して説明する。この観察用対称セル100は、例えば、以下の手順により製造される。
[電解質の形成]
観察用対称セル100を製造する場合には、最初に、電解質3を形成する。この場合には、最初に、溶媒と、電解質塩と、複数の造影粒子とを混合したのち、その混合物を撹拌することにより、電解液を調製する。続いて、電解液と高分子化合物とを混合したのち、その混合物を撹拌することにより、その高分子化合物により電解液が保持された電解質組成物を形成する。最後に、成型機を用いて電解質組成物を成型することにより、電解質3を形成する。
ここで、複数の造影粒子(複数の二次粒子)のメジアン径D50が大きすぎる場合には、例えば、以下の手順により、そのメジアン径D50を調整してもよい。この場合には、有機溶剤中に複数の造影粒子を投入したのち、その有機溶剤中の複数の造影粒子に超音波を照射する。これにより、複数の造影粒子が解砕されるため、その解砕後の複数の造影粒子を含む懸濁液が得られる。有機溶剤の種類は、特に限定されないが、例えば、アセトニトリルなどである。超音波の照射条件(照射強度および照射時間など)は、特に限定されないため、任意に設定可能である。こののち、懸濁液中に含まれている複数の造影粒子を回収する。これにより、複数の二次粒子のメジアンD50が適正に小さくなるように調整された複数の造影粒子が得られる。
ただし、懸濁液を得たのち、その懸濁液の上澄み液を採取することにより、その上澄み液中に含まれている複数の造影粒子を回収してもよい。これにより、複数の二次粒子のメジアン径D50が大きい状態のままである複数の造影粒子が排除されるため、複数の二次粒子のメジアン径D50がより小さくなるように調整された複数の造影粒子が得られる。
なお、複数の造影粒子を解砕させる方法は、特に限定されない。このため、有機溶剤中の複数の造影粒子に超音波を照射する代わりに、例えば、フィルミックスなどの分散攪拌装置を用いて、複数の造影粒子が含まれている有機溶剤を撹拌してもよい。
[セル素子の組み立て]
次に、上記した電解質3を用いてセル素子10を組み立てる。この場合には、最初に、第1電極1にリード8を接続させると共に、第2電極2にリード9を接続させる。第1電極1にリード8を接続させる方法は、特に限定されないが、例えば、超音波溶接法などである。第2電極2にリード9を接続させる方法は、例えば、上記した第1電極1にリード8を接続させる方法と同様である。続いて、分離部材4に設けられている貫通口4Kに電解質3を嵌め込むことにより、その分離部材4に電解質3を固定する。最後に、基準部材7と、絶縁部材6と、リード9が接続された第2電極2と、電解質3が固定された分離部材4と、リード8が接続された第1電極1と、絶縁部材5とをこの順に積層させることにより、セル素子10を組み立てる。
なお、セル素子10を組み立てたのち、必要に応じて、セル素子10を加温処理してもよい。セル素子10の組み立て後において、第2電極2に隣接されている電解質3の表面に皺(歪み)などが存在していても、その皺などが加温処理を利用して消失するからである。これにより、電解質3の表面が平坦化するため、界面Fが平滑化する。よって、X線CT装置を用いて界面Fに発生したリチウム樹枝状結晶を観察する際に、そのリチウム樹枝状結晶の観察精度が向上する。加温処理の条件(加温温度および加温時間など)は、任意に設定可能である。
[観察用対称セルの作製]
最後に、外装部材20の内部にセル素子10を収納することにより、観察用対称セル100を作製する。この場合には、最初に、融着層と、金属箔と、表面保護層とがこの順に積層されたラミネートフィルムである第1外装部材21と、同様のラミネートフィルムである第2外装部材22とを準備する。続いて、セル素子10を介して第1外装部材21と第2外装部材22とを互いに積層させることにより、第1外装部材21と第2外装部材22との間にセル素子10を配置する。最後に、第1外装部材21のうちの融着層の外周縁部と第2外装部材22のうちの融着層の外周縁部とを互いに融着させる。この場合には、リード8の他端部が外装部材20の外部に導出されると共に、リード9の他端部が外装部材20の外部に導出されるようにする。これにより、外装部材20(第1外装部材21および第2外装部材22)の内部にセル素子10が収納されるため、観察用対称セル100が完成する。
<1−3.使用方法>
続いて、図1および図2を参照して、観察用対称セル100の使用方法に関して説明する。
この観察用対称セル100は、上記したように、X線CT装置を用いてリチウム樹枝状結晶を観察するために用いられる。X線CT装置を用いてリチウム樹枝状結晶を観察する場合には、観察用対称セル100に対して第1通電方向および第2通電方向に交互にパルス電流が供給される。
この「第1通電方向」とは、例えば、第1電極1においてリチウム金属が溶出されると共に第2電極2においてリチウム金属が析出されるパルス電流の供給方向である。一方、「第2通電方向」とは、第2電極2においてリチウム金属が溶出されると共に第1電極1においてリチウム金属が析出されるパルス電流の供給方向であり、いわゆる逆電流の方向である。以下では、例えば、第1通電方向を「充電方向」とすると共に、第2通電方向を「放電方向」とする。
これにより、界面Fにおいてリチウム樹枝状結晶が発生すると、その電解質3に含まれている複数の造影粒子(造影剤)を利用してリチウム樹枝状結晶が可視化されるため、そのリチウム樹枝状結晶が観察される。
なお、リチウム樹枝状結晶の観察方法の詳細に関しては、後述する。
<1−4.作用および効果>
この観察用対称セル100によれば、リチウム金属を含む第1電極1とリチウム金属を含む第2電極2との間に電解質3が配置されており、その電解質3がX線の減弱能を有する複数の造影粒子を含んでいる。
この場合には、上記したように、第1電極1および第2電極2のそれぞれの物性(X線透過性)と複数の造影粒子の物性(X線の減弱能)との違いを利用して、X線CT装置によりリチウム樹枝状結晶が可視化される。しかも、観察装置としてX線CT装置を用いることにより、リチウム樹枝状結晶の立体的構造が継続的に可視化されるため、そのリチウム樹枝状結晶の構造変化(成長状態)がリアルタイムで可視化される。よって、リチウム樹枝状結晶をin situ観察することができる。
特に、複数の造影粒子(複数の二次粒子)のメジアン径D50がX線の焦点寸法よりも小さければ、複数の造影粒子が造影剤として機能しやすくなるため、より高い効果を得ることができる。この場合には、メジアン径D50が10μm未満であれば、X線の焦点寸法の変動などに起因する影響をほとんど受けずにリチウム樹枝状結晶が安定に可視化されやすくなるため、さらに高い効果を得ることができる。
また、複数の造影粒子がX線減弱材料を含んでいれば、その複数の造影粒子が造影剤として機能しやすくなるため、より高い効果を得ることができる。この場合には、X線CT装置におけるX線の波長におけるX線減弱材料の減弱係数がそのX線の波長におけるリチウム金属の減弱係数の10倍以上であれば、複数の造影粒子が造影剤として機能しやすくなるため、さらに高い効果を得ることができる。特に、X線減弱材料がチタン酸バリウムなどを含んでいれば、減弱係数が十分に大きくなるため、著しく高い効果を得ることができる。
また、電解質3が電解液(液状電解質)とその電解液を保持する高分子化合物とを含んでいる電解質膜(非液状電解質)であれば、複数の造影粒子の分散状態が維持されやすくなる。よって、リチウム樹枝状結晶が安定に可視化されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
また、観察用対称セル100が基準面7Mを有すると共にX線透過性を有する基準部材7を備えていれば、基準面7Mの位置に基づいて界面Fの位置(基準位置)が特定される。よって、界面Fにおける構造変化が追跡されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。この場合には、基準面7Mの算術平均粗さRaがX線の焦点寸法以下であれば、リチウム樹枝状結晶の観察精度が向上するため、さらに高い効果を得ることができる。また、基準部材7Mがシリコンウェハなどであれば、高い平滑度を有する研磨面(基準面7M)を利用してリチウム樹枝状結晶の観察精度がより向上するため、著しく高い効果を得ることができる。
<1−5.変形例>
観察用対称セル100の構成に関しては、任意に変更可能である。
具体的には、例えば、非液状電解質である電解質3を用いたが、その非液状電解質である電解質3に代えて、液状電解質(電解液)である電解質11を用いてもよい。
図3は、観察用対称セル100の構成に関する変形例である観察用対称セル200の断面構成を表しており、図1に対応している。この観察用対称セル200は、例えば、図3に示したように、例えば、電解質3および分離部材4に代えて電解質11(電解液)およびセパレータ12を備えていると共に、そのセパレータ12に電解質11が含浸されていることを除いて、観察用対称セル100と同様の構成を有している。
電解質11(溶媒および電解質塩を含む電解液)の構成に関する詳細は、上記した通りである。すなわち、電解質11は、複数の造影粒子を含んでいる。
セパレータ12は、例えば、高分子化合物およびセラミックなどの多孔質膜のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、2種類以上の多孔質膜の積層膜でもよい。高分子化合物は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどである。
この場合においても、電解質11中に含まれている複数の造影粒子が造影剤として機能することにより、リチウム樹枝状結晶の立体的構造がリアルタイムで可視化されるため、そのリチウム樹枝状結晶をin situ観察することができる。
<2.リチウム樹枝状結晶の観察方法>
次に、上記した観察用対称セル100を用いたリチウム樹枝状結晶の観察方法に関して説明する。
ここでは、上記したように、観察用対称セル100と共にX線CT装置を用いてリチウム樹枝状結晶を観察する。このX線CT装置は、例えば、X線CTスキャンなどである。
<2−1.観察手順>
まず、リチウム樹枝状結晶の観察手順に関して説明する。
図4は、リチウム樹枝状結晶の観察結果であるX線CT画像を模式的に表していると共に、図5は、リチウム樹枝状結晶の観察時における観察用対称セル100のうちの主要部(第2電極2および電解質3のそれぞれのうちの一部)の断面構成を表している。
なお、図4では、界面F(または対向面2M)よりも下方の領域R1に第2電極2が存在していると共に、その界面Fよりも上方の領域R2に電解質3が存在している。
リチウム樹枝状結晶を観察する場合には、観察用対称セル100(第1電極1および第2電極2)に対して充電方向および放電方向に交互にパルス電流を供給しながら、X線CT装置を用いて、界面Fにおける構造変化を観察する。
観察用対称セル100に対して供給されるパルス電流の供給条件は、任意に設定可能である。パルス電流の供給条件を規定する一連のパラメータに関する詳細は、例えば、以下の通りである。
第1に、充電方向に供給されるパルス電流(以下、「充電パルス電流」と呼称する。)の電流値は、任意に設定可能である。この場合には、充電パルス電流の電流密度(mA/cm2 )を設定してもよい。なお、充電パルス電流の電流密度を繰り返して供給する際に、その電流密度を一定にしてもよいし、その電流密度を変化させてもよい。
第2に、放電方向に供給されるパルス電流(以下、「放電パルス電流」と呼称する。)の電流値は、任意に設定可能である。この場合には、放電パルス電流の電流密度(mA/cm2 )を設定してもよい。なお、放電パルス電流の電流密度を繰り返して供給する際に、その電流密度を一定にしてもよいし、その電流密度を変化させてもよい。また、放電パルス電流の電流密度は、充電パルス電流の電流密度と同じでもよいし、充電パルス電流の電流密度と異なってもよい
第3に、パルス電流の供給方向を充電方向から放電方向に切り替える際に、そのパルス電流を供給しない休止時間(以下、「充電後休止時間」と呼称する。)を設けてもよい。すなわち、充電パルス電流を供給したのち、直ちに放電パルス電流を供給するのではなく、充電後休止時間が経過してから放電パルス電流を供給してもよい。充電後休止時間は、任意に設定可能である。なお、充電後休止時間を繰り返して設定する場合には、その充電後休止時間を一定にしてもよいし、その充電後休止時間を変化させてもよい。もちろん、充電後休止時間を設けなくてもよい。
第4に、パルス電流の供給方向を放電方向から充電方向に切り替える際に、そのパルス電流を供給しない休止時間(以下、「放電後休止時間」と呼称する。)を設けてもよい。すなわち、放電パルス電流を供給したのち、直ちに充電パルス電流を供給するのではなく、放電後休止時間が経過してから充電パルス電流を供給してもよい。放電後休止時間は、任意に設定可能である。なお、放電後休止時間を繰り返して設定する場合には、その放電後休止時間を一定にしてもよいし、その放電後休止時間を変化させてもよい。もちろん、放電後休止時間を設けなくてもよい。
パルス電流の供給条件は、例えば、上記した一連のパラメータ(充電パルス電流の電流密度、放電パルス電流の電流密度、充電後休止時間および放電後休止時間)のそれぞれを任意に設定しながら、それらの一連のパラメータを互いに組み合わせることにより、所望の条件となるように設定可能である。
もちろん、ここでは、一連のパラメータとして4個のパラメータを例に挙げたが、その4個のパラメータ以外の他のパラメータを設定してもよい。また、パラメータの総数は、特に限定されないため、4個以外でもよい。
これにより、図4に示したように、界面F(対向面2M)にリチウム樹枝状結晶Dが発生すると、X線CT装置の画像処理を利用してリチウム樹枝状結晶Dが可視化(3次元の立体画像化)される。このため、リチウム樹枝状結晶Dの発生と共に、そのリチウム樹枝状結晶Dの構造変化(成長状態)が可視化される。
この場合には、上記したように、リチウム樹枝状結晶Dの成長に依存せずに不動である基準部材7の基準面7Mに基づいて、基準位置(界面Fの位置)が特定される。このため、成長方向Sに成長するリチウム樹枝状結晶Dの状態が正確に可視化される。
よって、リチウム樹枝状結晶Dがリアルタイムで観察されるため、そのリチウム樹枝状結晶Dがin situ観察される。
なお、図4では、例えば、2個のリチウム樹枝状結晶Dが発生した場合を示している。ただし、図示内容を簡略化するために、2個のリチウム樹枝状結晶Dのそれぞれを円筒状に示していると共に、その2個のリチウム樹枝状結晶Dの周辺領域を平坦にしている。
このリチウム樹枝状結晶Dは、図5に示したように、界面F(対向面2M)において発生したのち、成長方向Sに成長するため、電解質3に食い込んでいる。これにより、電解質3に窪みUが形成されていると共に、その窪みUの内部にリチウム樹枝状結晶Dが入り込んでいる。図5では、例えば、2個のリチウム樹枝状結晶Dが発生したため、電解質3に2個の窪みUが形成された場合を示している。
ただし、電解質3に窪みUが形成される要因としては、上記したように、リチウム樹枝状結晶Dが電解質3に食い込むことの他に、ガス(気泡)などの異物が電解質3に食い込むことも考えられる。図5では、気泡に起因して電解質3に1個の窪みUが形成された場合を示している。この窪みUの内部にはガスが存在しているため、その窪みUの内部にはリチウム樹枝状結晶Dが存在していない。
<2−2.分析手順>
続いて、リチウム樹枝状結晶Dの分析手順に関して説明する。
図6は、図5に示したリチウム樹枝状結晶Dの分析手順を説明するために、図5に対応する断面構成を示している。
図5に示したように、界面Fにおいて発生したリチウム樹枝状結晶Dが成長方向Sに成長すると、そのリチウム樹枝状結晶Dが電解質3に食い込む。しかしながら、図4に示したX線CT画像から確認できることは、厳密には、リチウム樹枝状結晶Dが電解質3に食い込んでいることではなく、何らかの物質が電解質3に食い込んでいることにより、その何らかの物質が電解質3を部分的に窪ませていることだけである。電解質3を部分的に窪ませる物質としては、上記したように、リチウム樹枝状結晶Dの他に、ガス(気泡)なども考えられるからである。
そこで、電解質3を部分的に窪ませている物質(以下、「要因物質」と呼称する。)の種類(材質)を特定するために、その要因物質が何であるかを分析する必要がある。要因物質を調べる場合には、まず、図6に示したように、観察用対称セル100を解体することにより、第2電極2から電解質3を剥離させる。
この電解質3の剥離面(第2電極2に隣接されていた面)を確認することにより、その電解質3に窪みUだけが設けられている場合には、要因物質はガスであると考えられる。この「電解質3に窪みUだけが設けられている」とは、電解質3に窪みUが形成されているが、その窪みUの内部に何らかの物質が入り込んでいない状態である。
一方、電解質3に窪みUが形成されており、その窪みUの内部にガス以外の要因物質が入り込んでいる場合には、その要因物質はリチウム樹枝状結晶Dである可能性がある。
なお、電解質3の剥離面を確認する方法は、特に限定されないため、目視でもよいし、光学顕微鏡などの各種顕微鏡を用いてもよい。特に、電解質3に窪みUが形成されており、その窪みUの内部に要因物質が入り込んでいる場合において、その要因物質の色が電解質3の色と異なっていれば、電解質3に窪みUが形成されており、その窪みUの内部にガス以外の要因物質が入り込んでいると考えられる。
窪みUの内部にガス以外の要因物質が入り込んでいる場合には、その要因物質を分析することにより、その要因物質の種類(材質)を特定する。
要因物質の分析方法は、特に限定されないが、例えば、エネルギー分散型X線分析法(EDX:Energy dispersive X-ray spectrometry)などの元素分析法のうちのいずれか1種類または2種類以上である。EDXを用いて要因物質を分析した場合には、例えば、EDXスペクトルが検出されなければ、その要因物質の構成元素は原子番号が5以下の元素であるため、その要因物質はリチウム(リチウム樹枝状結晶D)であると判断される。観察用対称セル100を構成している一連の構成要素の構成元素を考えると、その要因物質の構成元素(原子番号が5以下である元素)はリチウム以外に考えられないからである。
<2−3.作用および効果>
このリチウム樹枝状結晶の観察方法によれば、観察用対称セル100(第1電極1および第2電極2)に対して充電方向および放電方向に交互にパルス電流を供給しながら、X線CT装置を用いてリチウム樹枝状結晶Dを観察している。
この場合には、観察用対称セル100の作用および効果に関して説明したように、リチウム樹枝状結晶Dが発生したのち、そのリチウム樹枝状結晶Dの立体的構造の変化(成長状態)がリアルタイムで観察される。よって、リチウム樹枝状結晶Dをin situ観察することができる。
特に、パルス電流の供給条件を設定するために、上記した一連のパラメータ(充電パルス電流の電流密度、放電パルス電流の電流密度、充電後休止時間および放電後休止時間)を用いれば、そのパルス電流の供給条件に応じてリチウム樹枝状結晶Dの成長状態が変化する。よって、パルス電流の供給条件を変化させることにより、成長状態を変化させながらリチウム樹枝状結晶Dが観察されるため、リチウム樹枝状結晶Dの多様な成長状態を観察することができる。
これ以外のリチウム樹枝状結晶の観察方法に関する作用および効果は、上記したリチウム樹枝状結晶の観察用対称セルに関する作用および効果と同様である。もちろん、ここで説明したリチウム樹枝状結晶の観察方法では、観察用対称セル100に代えて観察用対称セル200を用いてもよい。
<2−4.変形例>
リチウム樹枝状結晶の観察方法の手順に関しては、任意に変更可能である。
例えば、観察用対称セル100に対して交互にパルス電流を供給する際に、充電方向では第1電極1においてリチウム金属が溶出されると共に第2電極2においてリチウム金属が析出され、放電方向では第2電極2においてリチウム金属が溶出されると共に第1電極1においてリチウム金属が析出されるようにした。しかしながら、充電方向と放電方向とを互いに逆にしてもよい。すなわち、充電方向では第2電極2においてリチウム金属が溶出されると共に第1電極1においてリチウム金属が析出され、放電方向では第1電極1においてリチウム金属が溶出されると共に第2電極2においてリチウム金属が析出されるようにしてもよい。この場合においても、リチウム樹枝状結晶Dの成長状態がリアルタイムで観察されるため、同様の効果を得ることができる。
ただし、充電方向と放電方向とを互いに逆にした場合には、第2電極2と電解質3との界面Fではなく、第1電極1と電解質3との界面においてリチウム樹枝状結晶Dが発生する。このため、第1電極1と電解質3との界面の位置を特定しやすくするために、第2電極2よりも第1電極1に近い側に基準部材7を配置することが好ましい。すなわち、基準部材7と電解質3との間に第1電極1を配置させることが好ましい。
<3.リチウム樹枝状結晶の制御方法>
最後に、上記したリチウム樹枝状結晶の観察方法を応用したリチウム樹枝状結晶の制御方法に関して説明する。
ここで説明するリチウム樹枝状結晶の制御方法は、既に説明したリチウム樹枝状結晶の観察方法を利用することにより、所望の成長状態となるようにリチウム樹枝状結晶Dの成長状態を制御する方法である。
<3−1.制御手順>
リチウム樹枝状結晶Dの成長状態の制御手順に関して説明する。
上記したように、リチウム樹枝状結晶の観察方法では、パルス電流の供給条件、すなわちパルス電流の供給条件を決定する一連のパラメータ(充電パルス電流の電流密度、放電パルス電流の電流密度、充電後休止時間および放電後休止時間)を任意に設定しながら、X線CT装置を用いてリチウム樹枝状結晶Dの成長状態がin situ観察される。
この場合には、一連のパラメータを変更することにより、リチウム樹枝状結晶Dの成長状態が変化するため、その一連のパラメータを設定すると共にリチウム樹枝状結晶Dの成長状態を観察する手順を繰り返すことにより、パルス電流の供給条件とリチウム樹枝状結晶Dの成長状態との相関関係を調べることができる。よって、上記した相関関係に基づいて、所望の成長状態となるようにリチウム樹枝状結晶Dの成長状態を制御することが可能であるパルス電流の供給条件、すなわち一連のパラメータの値を特定することができる。
具体的には、例えば、リチウム樹枝状結晶Dの過度な成長に起因して第1電極1と第2電極2とが短絡することを抑制するためには、リチウム樹枝状結晶Dが発生しても、成長方向Sに成長しにくくなるようにリチウム樹枝状結晶Dの成長状態を制御することが望ましい。
この場合には、上記したように、パルス電流の供給条件を設定すると共にリチウム樹枝状結晶Dの成長状態を観察する手順を繰り返すことにより、パルス電流の供給条件とリチウム樹枝状結晶Dの成長状態との相関関係に基づいて、リチウム樹枝状結晶Dが成長方向Sに成長しにくくなるパルス電流の供給条件を特定すればよい。
<3−2.作用および効果>
このリチウム樹枝状結晶の制御方法によれば、上記したリチウム樹枝状結晶の観察方法を利用して、パルス電流の供給条件とリチウム樹枝状結晶Dの成長状態との相関を調べることにより、所望の成長状態となるようにリチウム樹枝状結晶Dの成長状態を制御することが可能であるパルス電流の供給条件を特定する。この場合には、パルス電流の供給条件に応じて所望の成長状態となるようにリチウム樹枝状結晶Dの成長状態が制御されるため、所望のリチウム樹枝状結晶Dの成長状態が容易かつ安定に実現される。よって、リチウム樹枝状結晶Dをin situ観察することにより、所望の成長状態となるようにリチウム樹枝状結晶Dの成長状態を制御することができる。
特に、リチウム樹枝状結晶Dが成長方向Sに成長しにくくなるパルス電流の供給条件を特定すれば、そのパルス電流の供給条件において観察用対称セル100を充電させることにより、そのリチウム樹枝状結晶Dの過度な成長に起因して第1電極1と第2電極2とが短絡することを抑制することができる。
この場合には、上記したリチウム樹枝状結晶Dが成長方向Sに成長しにくくなるパルス電流の供給条件をリチウムイオン二次電池の充放電条件に適用すれば、そのリチウムイオン二次電池がリチウム樹枝状組成物Dに起因して意図せずに短絡することを抑制することができる。
これ以外のリチウム樹枝状結晶の制御方法に関する作用および効果は、上記したリチウム樹枝状結晶の観察方法に関する作用および効果と同様である。もちろん、ここで説明したリチウム樹枝状結晶の制御方法では、観察用対称セル100に代えて観察用対称セル200を用いてもよい。
<3−3.変形例>
リチウム樹枝状結晶の制御方法に関しては、任意に変更可能である。
具体的には、例えば、リチウム樹枝状結晶Dが成長方向Sに成長しにくくなるパルス電流の供給条件を特定する場合に関して説明したが、そのパルス電流の供給条件を特定する目的は、特に限定されない。このため、目的に応じて、所望のリチウム樹枝状結晶Dの成長状態が実現される任意のパルス電流の供給条件を特定してもよい。
一例を挙げると、目的によっては、成長方向Sに成長しやすくなるようにリチウム樹枝状結晶Dの成長状態を制御することが可能なパルス電流の供給条件を特定してもよい。この場合においても、リチウム樹枝状結晶Dをin situ観察することにより、所望の成長状態となるようにリチウム樹枝状結晶Dの成長状態が制御されるため、同様の効果を得ることができる。
本技術の実施例に関して説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。

1.観察用対称セルの作製
2.リチウム樹枝状結晶の観察
3.リチウム樹枝状結晶の制御
4.短絡の発生状況の評価
5.まとめ
<1.観察用対称セルの作製>
まず、上記した観察用対称セル100の製造手順により、図1および図2に示した観察用対称セル100を作製した。観察用対称セル100の構成は、以下の通りである。なお、「幅」は図2中の奥行き方向の寸法、「長さ」は図2中の左右方向の寸法、「厚さ」は図2中の上下方向の寸法である。

第1電極1:炭酸リチウム被膜により被覆されたリチウム金属板(本城金属株式会社製),幅=8mm×長さ=20mm×厚さ=0.2mm
第2電極2:炭酸リチウム被膜により被覆されたリチウム金属板(本城金属株式会社製),幅=8mm×長さ=20mm×厚さ=0.2mm
電解質3 :高分子化合物(ポリエチレンオキサイド(PEO)),電解質塩(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドリチウム(LiTFSA),組成=PEO18 LiTFSA),複数の造影粒子(チタン酸バリウム粉末,複数の二次粒子のメジアン径D50=5μm,含有量=10重量%),直径=6mm×厚さ=0.2mm
分離部材4:ポリプロピレンシート,幅=8mm×長さ=25mm×厚さ=0.2mm,貫通口4Kの直径=6mm
絶縁部材5,6:ラミネートフィルム(株式会社生産日本社製のラミジップ(登録商標),幅=10mm×長さ=30mm×厚さ=0.1mm
基準部材7:シリコンウェハの小片,幅=10mm×長さ=30mm×厚さ=0.5mm
リード8、9:銅線
外装部材20(第1外装部材21および第2外装部材22):アルミラミネートフィルム(融着層(ポリエチレン,厚さ=60μm)/金属層(アルミニウム箔,厚さ=10μm)/表面保護層(ナイロン,厚さ=10μm))
複数の造影粒子を用いる場合には、以下の手順により、複数の二次粒子のメジアン径D50を調整した。有機溶剤(アセトニトリル)中に複数の造影粒子を投入したのち、その有機溶剤中の複数の造影粒子に超音波(照射強度=45W,照射時間=30分間)を照射した。これにより、複数の造影粒子が解砕されたため、その解砕後の複数の造影粒子を含む懸濁液が得られた。続いて、懸濁液の上澄み液を採取したのち、その上澄み液中に含まれている複数の造影粒子を回収した。
なお、セル素子10を組み立てたのち、恒温槽中においてセル素子10を加温処理(加温温度=60℃,加温時間=6時間)した。
<2.リチウム樹枝状結晶の観察>
次に、以下の手順により、観察用対称セル100を用いてリチウム樹枝状結晶を観察した。
ここでは、リチウム樹枝状結晶を意図的に発生しやすくするために、観察用対称セル100(第1電極1および第2電極2)に一定の充電電流(電流密度=0.05mA/cm2 )を供給しながら、X線CT装置を用いて、界面Fに発生したリチウム樹枝状結晶を継続的に観察した。この場合には、X線CT装置としてX線CTスキャン(ソニー株式会社の内製装置)を用いると共に、X線として非平行X線(X線源はタングステン線源,70kV,120μA)を用いた。この結果、図7〜図9に示した観察結果が得られた。
図7〜図9のそれぞれは、リチウム樹枝状結晶の観察結果であるX線CT画像を表している。ただし、充電電流の供給後の経過時間は、図7では6時間、図8では13時間、図9では20時間である。
図7〜図9に示したように、充電電流の供給後、高い突起物である略円筒状のリチウム樹枝状結晶D1がin situ観察された。このリチウム樹枝状結晶D1は、時間の経過に応じて成長方向Sに成長した。
ここでは、略円筒状の樹枝状結晶D1と共に、そのリチウム樹枝状結晶D1の周辺領域に低い突起物であるリチウム島状結晶D2も観察された。リチウム樹枝状結晶D1は、対向面2Mに対する占有面積が相対的に小さいのに対して成長方向Sの寸法が相対的に大きい立体的構造を有していた。これに対して、リチウム島状結晶D2は、上記したリチウム樹枝状結晶D1とは異なり、対向面2Mに対する占有面積が相対的に大きいのに対して成長方向Sの寸法が相対的に小さい立体的構造を有していた。
ここで、充電電流の供給を停止したのち(経過時間=20時間)、図5および図6を参照しながら説明したように、光学顕微鏡を用いて第2電極2から剥離された電解質3の表面を観察したところ、図10に示した観察結果が得られた。なお、比較のために、充電電流の供給前においても同様に電解質3の表面を観察したところ、図11に示した結果が得られた。
図10は、充電電流の供給後において電解質3の表面を観察した顕微鏡写真であると共に、図11は、充電電流の供給前において電解質3の表面を観察した顕微鏡写真である。
観察用対称セル100に対して充電電流を供給する前には、図11に示したように、電解質3の表面に異物(要因物質)が観察されなかった。これに対して、観察用対称セル100に対して充電電流を供給したのちには、図10に示したように、電解質3の表面に複数の黒色の要因物質が観察された。図10では、太い白色の矢印Yで要因物質を示している。
そこで、EDXを用いて要因物質を元素分析したところ、EDXスペクトルが検出されなかった。このため、図10に示した黒色の要因物質はリチウム(図7〜図9に示したリチウム樹枝状結晶D1)であると確認された。すなわち、図10では、図6を参照しながら説明したように、リチウム樹枝状結晶D1が電解質3に食い込んだため、その電解質3に形成された窪みUにリチウム樹枝状結晶D1が入り込んでいる。
<3.リチウム樹枝状結晶の制御>
次に、リチウム樹枝状結晶の成長に起因して第1電極1と第2電極2とが短絡することを抑制するために、以下の手順により、成長方向Sに成長しにくくなるようにリチウム樹枝状結晶の成長状態を制御することが可能なパルス電流の供給条件を探索した。
[パルス電流の供給条件の探索手順]
具体的には、図7〜図9に示したように、X線CT画像中において、リチウム樹枝状結晶D1およびリチウム島状結晶D2が観察されたが、高い突起状でないリチウム島状結晶D2は短絡の発生要因になりにくいのに対して、高い突起状であるリチウム樹枝状結晶D1は短絡の発生要因になりやすいと考えられる。
そこで、有限要素法を用いて、パルス電流の供給条件とリチウム樹枝状結晶D1の成長状態との関係を調べることにより、成長方向Sにおけるリチウム樹枝状結晶D1の成長が抑制されると共に成長方向Sにおけるリチウム島状結晶D2の成長が促進されるパルス電流の供給条件を探索した。
この場合には、略円筒状であるリチウム樹枝状結晶D1の立体的構造に基づいて、有限要素法ソフトウェアを用いて二次元軸対称モデルを構築した。有限要素法ソフトウェアとしては、COMSOL社製の汎用物理シミュレーションソフト COMSOL Multiphysics(登録商標)を用いた。この二次元軸対称モデルは、第1電極1に対応する上部電極と第2電極2に対応する下部電極との間に電解質3が配置されており、その下部電極(直径=200μm)の上にリチウム樹枝状結晶D1を模倣した円筒状構造物(直径=20μm,高さ=50μm)が配置されているモデルである。この場合には、上部電極においてリチウムが溶出すると共に下部電極においてリチウムが析出する場合における電流の方向を正とした。
[パルス電流の供給パターン]
パルス電流の供給パターンとしては、3種類の供給パターンを設定した。図12〜図14のそれぞれは、パルス電流の供給パターンを表している。以下では、図12に示したパルス電流の供給パターンを「K型」、図13に示したパルス電流の供給パターンを「N型」、図14に示したパルス電流の供給パターンを「T型」とそれぞれ呼称する。
パルス電流の供給パターンがK型である場合には、図12に示したように、充電パルス電流P1(電流密度I1)を供給(供給時間T1)し、充電後休止時間T2が経過したのち、放電パルス電流P2(電流密度I2)を供給(供給時間T3)し、放電後休止時間T4が経過する工程を繰り返した。
パルス電流の供給パターンがN型である場合には、図13に示したように、充電パルス電流P3(電流密度I3)を供給(供給時間T5)し、放電パルス電流P4(電流密度I4)を供給(供給時間T6)し、放電後休止時間T7が経過したのち、充電パルス電流P5(電流密度I5)を供給(供給時間=T8)し、充電後休止時間T9が経過する工程を繰り返した。ただし、図13中においてnで表された工程は、n回繰り返されることを表している。
パルス電流の供給パターンがT型である場合には、図14に示したように、放電パルス電流P6(電流密度I6)を供給(供給時間T10)し、放電後休止時間T11が経過したのち、充電パルス電流P7(電流密度I7)を供給(供給時間T12)し、充電後休止時間T13が経過する工程を繰り返した。
図12〜図14に示した一連のパラメータ(電流密度I1〜I7、供給時間T1,T3,T5,T6,T8,T10,T12、充電後休止時間T2,T9,T13および放電後休止時間T4,T7,T11)に関する詳細は、表1〜表3に示した通りである。すなわち、表1〜表3に示したように一連のパラメータを変更することにより、パルス電流の供給条件を変化させた(供給条件1−1〜1−7,2−1〜2−21,3−1〜3−13)。
Figure 2019039856
Figure 2019039856
Figure 2019039856
なお、比較のために、表4に示したように、パルス電流に代えて直流電流を供給すると共に、その直流電流の供給条件(電流密度I)を一定にした(供給条件4−1〜4−8)。以下では、電流密度Iが一定である直流電流の供給パターンを「R型」と呼称する。
Figure 2019039856
[リチウム樹枝状結晶の成長速度の評価]
図12〜図14および表1〜表4に示したようにパルス電流の供給条件などを設定しながら、有限要素法ソフトウェアを用いてめっきシミュレーションを実施した。有限要素法ソフトウェアとしては、COMSOL社製の電気めっきモジュール COMSOL Batteries and Fuel Cells Module およびElectrodeposition Module(登録商標)を用いた。
この場合には、上部電極におけるリチウム金属の溶出量(mol)と、下部電極におけるリチウム金属(リチウム樹枝状結晶D1)の析出量(mol)と、下部電極におけるリチウム金属(リチウム島状結晶D2)の析出量(mol)とを計算した。これにより、上記したように、成長方向Sにおけるリチウム樹枝状結晶D1の成長が抑制されると共に成長方向Sにおけるリチウム島状結晶D2の成長が促進されるパルス電流の供給条件を探索した。
この「リチウム樹枝状結晶D1の成長が抑制されると共にリチウム島状結晶D2の成長が促進される」とは、リチウム樹枝状結晶D1の発生領域においてリチウムの析出量が相対的に小さくなると共に、リチウム島状結晶D2の発生領域においてリチウムの析出量が相対的に大きくなることを意味している。
ここで、成長方向Sにおけるリチウム樹枝状結晶D1の成長速度を評価するために成長係数Cdを求めたところ、表5および表6に示した結果が得られた。なお、供給パターンがK型(供給条件1−2)である場合には、後述する成長係数Cdの算出過程において分母の値が0になったため、その成長係数Cdを求めることができなかった。
Figure 2019039856
Figure 2019039856
[成長係数の定義]
ここで、上記した成長係数Cdの定義は、以下の通りである。成長係数Cdを求めるためには、以下のように、上記した有限要素法ソフトウェアを用いて計算される一連のパラメータ(N1,N2,N2,Tp,S1,S2)を設定した。これらの一連のパラメータを用いると、リチウム樹枝状結晶D1の成長速度Vd(mol/秒)は、Vd=N2/Tpで表される。

N1(mol):上部電極におけるリチウムの溶出量
N2(mol):下部電極におけるリチウム金属(リチウム樹枝状結晶D1)の析出量
N3(mol):下部電極におけるリチウム金属(リチウム島状結晶D2)の析出量
Tp(秒):充放電パターンの周期
S1(cm2 ):リチウム樹枝状結晶D1の表面積
S2(cm2 ):リチウム島状結晶D2の表面積
また、電流I(mA)、時間T(秒)、イオンの価数Zおよびファラデー定数Fという一連のパラメータを用いると、上記したリチウムの溶出量N1は、ファラデーの電気分解の法則に基づいてN1=(I×T)/(Z×F)と表されるため、イオンの価数Z=1である場合の溶出速度V(mol/秒)は、V=N1/T=I/Fと表される。
ここで、リチウム樹枝状結晶D1の発生領域とリチウム島状結晶D2との発生領域とにおいてリチウムの析出量に差違がない場合、そのリチウム樹枝状結晶D1の成長速度Vdi(mol/秒)は、Vdi=V×(S2/(S2+S3))=(I/F)×(S2/(S2+S3))と表される。この成長速度Vdiは、形状因子を考慮せずに算出される成長速度である。
リチウム樹枝状結晶D1の成長係数Cdは、上記した有限要素法ソフトウェアを用いて計算される成長速度Vdが形状因子を考慮せずに算出された成長速度Vdiに対してどれぐらい大きいかを表す係数であり、成長係数Cd=Vd/VQiと表される。すなわち、成長係数Cdが大きいということは、リチウム樹枝状結晶D1が成長しやすいことを表していると共に、成長係数Cdが小さいということは、リチウム樹枝状結晶D1が成長しにくいことを表している。
[パルス電流の供給条件の探索結果]
表5および表6に示したように、成長係数Cdは、パルス電流の供給条件などに応じて大きく変動した。
具体的には、供給パターンがR型である場合(供給条件4−1〜4−8)である場合には、電流密度Iにほとんど依存せずに、成長係数Cdが著しく大きくなった。
一方、供給パターンがK型、N型およびT型である場合(供給条件1−1〜1−7,2−1〜2−21,3−1〜3−13)には、供給パターンがR型である場合と比較して、成長係数Cdが小さくなった。この場合には、表1〜表3に示した一連のパラメータによっては、成長係数Cdがより小さくなった。
特に、供給パターンがT型である場合には、表3に示した一連のパラメータによっては、成長係数Cdが著しく小さくなった。すなわち、放電パルス電流を供給し、放電後休止時間が経過したのち、充電パルス電流を供給し、充電後休止時間が経過するという供給サイクルを繰り返すことにより、リチウム樹枝状結晶D1が著しく成長しにくくなった。
これにより、上記した有限要素法ソフトウェアを用いためっきシミュレーションを利用して、リチウム樹枝状結晶D1が成長しにくくなる適正なパルス電流の供給条件を特定することができた。
<4.短絡の発生状況の評価>
最後に、上記したリチウム樹枝状結晶D1が成長しにくくなるパルス電流の供給条件に関する有効性を確認するために、観察用対称セル100を用いて通電試験を実施した。
通電試験を行う場合には、恒温漕(温度=60℃)の内部に観察用対称セル100を設置したのち、バッテリー充放電システム(株式会社TCK製のCHD−100X)を用いて観察用対称セル100にパルス電流を供給した。この場合には、パルス電流の供給条件として、T型の供給条件3−6(放電パルス電流の電流密度I6=−3mA/cm2 ,供給時間T10=20秒,放電後休止時間T11=10秒,充電パルス電流の電流密度I7=3.3mA/cm2 ,供給時間T12=20秒,充電後休止時間T13=10秒)を採用した。供給条件3−6におけるパルス電流の平均値は、1mA/cm2 である。
観察用対称セル100にパルス電流を供給したのち、その観察用対称セル100が短絡するまで通電試験を継続することにより、その観察用対称セル100が短絡するまでの時間(短絡時間(時間))を調べたところ、表7に示した結果が得られた。この場合には、比較のために、直流電流の供給条件としてR型の供給条件4−7(電流密度I=1mA/cm2 )を採用した場合に関しても、同様の手順により短絡時間を調べた。
Figure 2019039856
表7から明らかなように、パルス電流を供給すると共に、そのパルス電流の供給条件を適正化した場合(T型の供給条件3−6)には、一定の直流電流を供給した場合(R型の供給条件4−7)と比較して、短絡時間が3倍以上になった。この結果は、表6に示した成長係数Cdの違い(T型の供給条件3−6では成長係数Cd=0.16,R型の供給条件4−7では成長係数Cd=1.28)が反映された結果である。よって、上記した成長係数Cdに基づいてリチウム樹枝状結晶D1の成長状態を制御することに関する有効性(信頼性)が確認された。
<5.まとめ>
これらのことから、上記した観察用対称セルを用いることにより、リチウム樹枝状結晶をin situ観察することができた。また、パルス電流の供給条件に応じて、リチウム樹枝状結晶の成長状態を制御することができると共に、そのパルス電流の供給条件を適正化することにより、観察用対称セルが短絡することを抑制することができた。
以上、一実施形態および実施例を挙げながら本技術を説明したが、その本技術に関しては、実施形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。
具体的には、例えば、上記したリチウム樹枝状結晶の観察用対称セル、リチウム樹枝状結晶の観察方法およびリチウム樹枝状結晶の制御方法の用途は、特に限定されない。このため、リチウム樹枝状結晶の観察用対称セル、リチウム樹枝状結晶の観察方法およびリチウム樹枝状結晶の制御方法は、各種用途に適用可能である。
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
なお、本技術は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
リチウム金属を含む第1電極と、
前記第1電極に対向すると共に、前記リチウム金属を含む第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置されると共に、X線の減弱能を有する複数の造影粒子を含む電解質と
を備えた、リチウム樹枝状結晶の観察用対称セル。
(2)
前記複数の造影粒子は、複数の二次粒子を含み、
前記複数の二次粒子のメジアン径D50は、X線コンピュータ断層撮影における前記X線の焦点寸法よりも小さい、
上記した(1)に記載のリチウム樹枝状結晶の観察用対称セル。
(3)
前記複数の二次粒子のメジアン径D50は、10μm未満である、
上記した(2)に記載のリチウム樹枝状結晶の観察用対称セル。
(4)
前記複数の造影粒子は、前記X線の減弱能を有するX線減弱材料を含む、
上記した(1)ないし(3)のいずれかに記載のリチウム樹枝状結晶の観察用対称セル。
(5)
X線コンピュータ断層撮影における前記X線の波長における前記X線減弱材料の減弱係数は、そのX線の波長における前記リチウム金属の減弱係数の10倍以上である、
上記した(4)に記載のリチウム樹枝状結晶の観察用対称セル。
(6)
前記X線減弱材料は、チタン酸バリウム(BaTiO3 )、酸化アルミニウム(Al2 3 )、酸化チタン(TiO2 )および酸化ケイ素(SiO2 )のうちの少なくとも1種を含む、
上記した(4)または(5)に記載のリチウム樹枝状結晶の観察用対称セル。
(7)
前記電解質は、さらに、溶媒および電解質塩を含む液状電解質であり、
または、前記電解質は、さらに、前記液状電解質および前記液状電解質を保持する高分子化合物を含む非液状電解質である、
上記した(1)ないし(6)のいずれかに記載のリチウム樹枝状結晶の観察用対称セル。
(8)
さらに、
前記第2電極と前記電解質との界面に対向する基準面を有すると共に、前記X線の透過性を有する基準部材を備え、
前記第2電極は、前記電解質と前記基準部材との間に配置されている、
上記した(1)ないし(7)のいずれかに記載のリチウム樹枝状結晶の観察用対称セル。
(9)
前記基準面の算術平均粗さRaは、X線コンピュータ断層撮影における前記X線の焦点寸法以下である、
上記した(8)に記載のリチウム樹枝状結晶の観察用対称セル。
(10)
前記基準部材は、シリコンウェハおよびスライドガラスのうちのいずれかである、
上記した(8)または(9)に記載のリチウム樹枝状結晶の観察用対称セル。
(11)
上記した(1)ないし(10)のいずれかに記載した観察用対称セルを用いて、
前記観察用対称セルに対して、前記第1電極において前記リチウム金属が溶出されると共に前記第2電極において前記リチウム金属が析出される第1通電方向と、前記第2電極において前記リチウム金属が溶出されると共に前記第1電極において前記リチウム金属が析出される第2通電方向とに交互にパルス電流を供給しながら、
X線コンピュータ断層撮影装置を用いて、前記第2電極と前記電解質との界面に発生するリチウム樹枝状結晶を観察する、
リチウム樹枝状結晶の観察方法。
(12)
前記パルス電流の供給条件は、前記第1通電方向に供給される前記パルス電流の電流密度(mA/cm2 )と、前記第2通電方向に供給される前記パルス電流の電流密度(mA/cm2 )と、前記パルス電流の供給方向を前記第1通電方向から前記第2通電方向に切り替える際に設ける休止時間(秒)と、前記パルス電流の供給方向を前記第2通電方向から前記第1通電方向に切り替える際に設ける休止時間(秒)とを含む、
上記した(11)に記載のリチウム樹枝状結晶の観察方法。
(13)
上記した(1)ないし(10)のいずれかに記載した観察用対称セルを用いて、
前記観察用対称セルに対して、前記第1電極において前記リチウム金属が溶出されると共に前記第2電極において前記リチウム金属が析出される第1通電方向と、前記第2電極において前記リチウム金属が溶出されると共に前記第1電極において前記リチウム金属が析出される第2通電方向とに交互にパルス電流を供給しながら、
X線コンピュータ断層撮影装置を用いて、前記第2電極と前記電解質との界面に発生するリチウム樹枝状結晶の成長状態を観察し、
前記パルス電流の供給条件と前記リチウム樹枝状結晶の成長状態との相関を調べることにより、所望の成長状態となるように前記リチウム樹枝状結晶の成長状態を制御することが可能である前記パルス電流の供給条件を特定する、
リチウム樹枝状結晶の制御方法。
(14)
前記パルス電流の供給条件は、前記第1通電方向に供給される前記パルス電流の電流密度(mA/cm2 )と、前記第2通電方向に供給される前記パルス電流の電流密度(mA/cm2 )と、前記パルス電流の供給方向を前記第1通電方向から前記第2通電方向に切り替える際に設ける休止時間(秒)と、前記パルス電流の供給方向を前記第2通電方向から前記第1通電方向に切り替える際に設ける休止時間(秒)とを含む、
上記した(13)に記載のリチウム樹枝状結晶の制御方法。
1…第1電極、2…第2電極、2M…対向面、3…電解質、7…基準部材、7M…基準面、F…界面。

Claims (14)

  1. リチウム金属を含む第1電極と、
    前記第1電極に対向すると共に、前記リチウム金属を含む第2電極と、
    前記第1電極と前記第2電極との間に配置されると共に、X線の減弱能を有する複数の造影粒子を含む電解質と
    を備えた、リチウム樹枝状結晶の観察用対称セル。
  2. 前記複数の造影粒子は、複数の二次粒子を含み、
    前記複数の二次粒子のメジアン径D50は、X線コンピュータ断層撮影における前記X線の焦点寸法よりも小さい、
    請求項1記載のリチウム樹枝状結晶の観察用対称セル。
  3. 前記複数の二次粒子のメジアン径D50は、10μm未満である、
    請求項2記載のリチウム樹枝状結晶の観察用対称セル。
  4. 前記複数の造影粒子は、前記X線の減弱能を有するX線減弱材料を含む、
    請求項1記載のリチウム樹枝状結晶の観察用対称セル。
  5. X線コンピュータ断層撮影における前記X線の波長における前記X線減弱材料の減弱係数は、そのX線の波長における前記リチウム金属の減弱係数の10倍以上である、
    請求項4記載のリチウム樹枝状結晶の観察用対称セル。
  6. 前記X線減弱材料は、チタン酸バリウム(BaTiO3 )、酸化アルミニウム(Al2 3 )、酸化チタン(TiO2 )および酸化ケイ素(SiO2 )のうちの少なくとも1種を含む、
    請求項4記載のリチウム樹枝状結晶の観察用対称セル。
  7. 前記電解質は、さらに、溶媒および電解質塩を含む液状電解質であり、
    または、前記電解質は、さらに、前記液状電解質および前記液状電解質を保持する高分子化合物を含む非液状電解質である、
    請求項1記載のリチウム樹枝状結晶の観察用対称セル。
  8. さらに、
    前記第2電極と前記電解質との界面に対向する基準面を有すると共に、前記X線の透過性を有する基準部材を備え、
    前記第2電極は、前記電解質と前記基準部材との間に配置されている、
    請求項1記載のリチウム樹枝状結晶の観察用対称セル。
  9. 前記基準面の算術平均粗さRaは、X線コンピュータ断層撮影における前記X線の焦点寸法以下である、
    請求項8記載のリチウム樹枝状結晶の観察用対称セル。
  10. 前記基準部材は、シリコンウェハおよびスライドガラスのうちのいずれかである、
    請求項8記載のリチウム樹枝状結晶の観察用対称セル。
  11. リチウム金属を含む第1電極と、前記第1電極に対向すると共に前記リチウム金属を含む第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置されると共にX線の減弱能を有する複数の造影粒子を含む電解質とを備えた観察用対称セルを用いて、
    前記観察用対称セルに対して、前記第1電極において前記リチウム金属が溶出されると共に前記第2電極において前記リチウム金属が析出される第1通電方向と、前記第2電極において前記リチウム金属が溶出されると共に前記第1電極において前記リチウム金属が析出される第2通電方向とに交互にパルス電流を供給しながら、
    X線コンピュータ断層撮影装置を用いて、前記第2電極と前記電解質との界面に発生するリチウム樹枝状結晶を観察する、
    リチウム樹枝状結晶の観察方法。
  12. 前記パルス電流の供給条件は、前記第1通電方向に供給される前記パルス電流の電流密度(mA/cm2 )と、前記第2通電方向に供給される前記パルス電流の電流密度(mA/cm2 )と、前記パルス電流の供給方向を前記第1通電方向から前記第2通電方向に切り替える際に設ける休止時間(秒)と、前記パルス電流の供給方向を前記第2通電方向から前記第1通電方向に切り替える際に設ける休止時間(秒)とを含む、
    請求項11記載のリチウム樹枝状結晶の観察方法。
  13. リチウム金属を含む第1電極と、前記第1電極に対向すると共に前記リチウム金属を含む第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置されると共にX線の減弱能を有する複数の造影粒子を含む電解質とを備えた観察用対称セルを用いて、
    前記観察用対称セルに対して、前記第1電極において前記リチウム金属が溶出されると共に前記第2電極において前記リチウム金属が析出される第1通電方向と、前記第2電極において前記リチウム金属が溶出されると共に前記第1電極において前記リチウム金属が析出される第2通電方向とに交互にパルス電流を供給しながら、
    X線コンピュータ断層撮影装置を用いて、前記第2電極と前記電解質との界面に発生するリチウム樹枝状結晶の成長状態を観察し、
    前記パルス電流の供給条件と前記リチウム樹枝状結晶の成長状態との相関を調べることにより、所望の成長状態となるように前記リチウム樹枝状結晶の成長状態を制御することが可能である前記パルス電流の供給条件を特定する、
    リチウム樹枝状結晶の制御方法。
  14. 前記パルス電流の供給条件は、前記第1通電方向に供給される前記パルス電流の電流密度(mA/cm2 )と、前記第2通電方向に供給される前記パルス電流の電流密度(mA/cm2 )と、前記パルス電流の供給方向を前記第1通電方向から前記第2通電方向に切り替える際に設ける休止時間(秒)と、前記パルス電流の供給方向を前記第2通電方向から前記第1通電方向に切り替える際に設ける休止時間(秒)とを含む、
    請求項13記載のリチウム樹枝状結晶の制御方法。
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CN114824663A (zh) * 2022-07-01 2022-07-29 河南锂动电源有限公司 一种对称电池的制备方法及对称电池

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