加温装置に加えてタイマーを備える特許文献1の自動販売機によれば、予め設定した時季における加温装置への不必要な通電を防止して、同装置の消費電力を削減することができる。しかし、各季節の間の気温は一定ではなく、例えば冬季であっても、貯蔵物の凍結のおそれがない温度まで気温が上昇することはある。季節に基づき加温装置の要否を判定する特許文献1の制御方法では、冬季の高温日などに加温装置への不必要な通電を防止することは困難である。
低温貯蔵庫の外気温を検出する外気温センサを設け、外気温が低い場合にのみ加温装置に通電するように設定すれば、特許文献1の上記の問題点はある程度は改善される。しかし、貯蔵物の凍結のおそれは外気温のみで決まるものではなく、低温貯蔵庫の断熱性能や扉の開閉の頻度などによっても凍結のおそれは異なる。そのため、外気温のみに基づく凍結のおそれの有無の判定は、常に正確であるとは限らない。また、外気温センサを設けると、その分だけ低温貯蔵庫の全体コストが上昇してしまう。
本発明の目的は、貯蔵物の凍結のおそれの有無を正確に判定して、凍結のおそれがあるときはこれを加温装置で確実に防止し、凍結のおそれがないときは加温装置の無駄な駆動を避けることができる低温貯蔵庫を提供することにある。
本発明に係る低温貯蔵庫は、庫内Rを冷却する冷却装置3と、庫内Rを加熱する凍結防止用の加温装置4と、庫内温度Dを検出する温度センサ21とを備える。運転モードとして、冷却装置3が断続的に駆動する通常冷蔵モードと、加温装置4が断続的に駆動する凍結防止モードを備える。所定の第1低温度DL1および第1低温時間TL1がそれぞれ設定されており、通常冷蔵モードにおいて、冷却装置3の停止中に、温度センサ21で検出される庫内温度Dが第1低温度DL1以下の状態が第1低温時間TL1以上続いた場合に、凍結防止モードへ移行することを特徴とする。
第1低温度DL1より低い第2低温度DL2と、第1低温時間TL1より短い第2低温時間TL2とがそれぞれ設定されており、通常冷蔵モードにおいて、冷却装置3の停止中に、庫内温度Dが第2低温度DL2以下の状態が第2低温時間TL2以上続いた場合にも、凍結防止モードへ移行する形態を採ることができる。
第1低温度DL1より高い第1高温度DH1と、所定の第1高温時間TH1とがそれぞれ設定されており、凍結防止モードにおいて、加温装置4の停止中に、温度センサ21で検出される庫内温度Dが第1高温度DH1以上の状態が第1高温時間TH1以上続いた場合に、通常冷蔵モードへ復帰する形態を採ることができる。
第1高温度DH1より高い第2高温度DH2と、第1高温時間TH1より短い第2高温時間TH2とがそれぞれ設定されており、凍結防止モードにおいて、加温装置4の停止中に、庫内温度Dが第2高温度DH2以上の状態が第2高温時間TH2以上続いた場合にも、通常冷蔵モードへ復帰する形態を採ることができる。
庫内Rの目標温度D0を所定の範囲内で変更可能に設定し、第1低温度DL1を、目標温度D0の設定値にかかわらず同一の値に固定することができる。
庫内Rの目標温度D0を所定の範囲内で変更可能に設定し、凍結防止モードにおいて、加温装置4の駆動を開始する加熱開始温度donと、加温装置4の駆動を停止する加熱停止温度doffとをそれぞれ設定し、加熱開始温度donおよび加熱停止温度doffを、目標温度D0の設定値にかかわらず同一の値に固定することができる。
通常冷蔵モードにおいて、目標温度D0を含む所定の温度幅の目標温度帯を設定し、冷却装置3の駆動を開始する冷却開始温度Donを、目標温度帯の上閾値に設定するとともに、冷却装置3の駆動を停止する冷却停止温度Doffを、目標温度帯の下閾値に設定し、加温装置4の駆動を停止する加熱停止温度doffを、目標温度D0を下限値に設定したときの上閾値に一致させることができる。
庫内Rの空気を循環させるための循環ファン16を備えており、凍結防止モードにおいて循環ファン16が常時駆動される形態を採ることができる。
本発明では、通常冷蔵モードにおける冷却装置3の停止中に、庫内温度Dが第1低温度DL1以下の状態が第1低温時間TL1以上続いた場合に、加温装置4で庫内Rを加熱する凍結防止モードへ移行するようにした。つまり、貯蔵物Pが収容される庫内Rの実際の温度を直接的に検出し、当該温度に基づいて貯蔵物Pの凍結のおそれの有無を判定し、凍結のおそれがある場合にのみ通常冷蔵モードから凍結防止モードへ移行するようにした。実際の庫内温度Dに基づいて凍結のおそれの有無を判定すると、外気温などに基づいて判定する場合に比べて、判定をより正確に行うことができる。凍結のおそれの有無を正確に判定すると、凍結のおそれがあるときは、凍結防止モードへ移行して加温装置4を駆動させ、凍結を確実に防止することができる。また、凍結のおそれがないときは、凍結防止モードへ移行しないようにして、加温装置4の無駄な駆動を避けて、その消費電力を削減することができる。
また本発明では、第1低温度DL1に加えて第1低温時間TL1を設定し、庫内温度Dが第1低温度DL1以下の状態が第1低温時間TL1以上続いて始めて、通常冷蔵モードから凍結防止モードへ移行するようにした。換言すれば、庫内温度Dが一時的に第1低温度DL1以下になっただけでは、凍結防止モードへ移行しないようにした。庫内温度Dが一時的に第1低温度DL1以下になっても、その後すぐに第1低温度DL1を上回った場合は、貯蔵物Pが凍結するおそれは少なく、加温装置4で庫内を加熱する必要性は低い。本発明によれば、こうした場合の加温装置4の無駄な駆動を避けて、その消費電力を削減することができる。
庫内温度Dが第1低温度DL1よりさらに低い第2低温度DL2まで低下すると、貯蔵物Pの凍結のおそれがより高くなる。そこで本発明では、庫内温度Dが第2低温度DL2まで低下したときは、その状態が第1低温時間TL1より短い第2低温時間TL2以上続いた時点で、凍結防止モードへ移行するようにした。これにより、凍結防止モードへ速やかに移行して加温装置4を駆動させ、貯蔵物Pの凍結を確実に防止することができる。
凍結防止モードにおいては、加温装置4の停止中に、庫内温度Dが第1高温度DH1以上の状態が第1高温時間TH1以上続いた場合に、通常冷蔵モードへ復帰するようにした。つまり、凍結防止モードにおいても、貯蔵物Pが収容される庫内Rの実際の温度を直接的に検出し、当該温度に基づいて貯蔵物Pの凍結のおそれの有無を判定し、凍結のおそれがない場合にのみ通常冷蔵モードへ復帰するようにした。実際の庫内温度Dに基づいて凍結のおそれの有無を判定すると、前述のように判定を正確に行うことができる。凍結のおそれが解消されていれば、通常冷蔵モードへ復帰して、加温装置4の無駄な駆動を避けて、その消費電力を削減することができる。また、凍結のおそれが依然として解消されていなければ、凍結防止モードを維持することにより、貯蔵物Pの凍結を引き続き防止することができる。
また本発明では、第1高温度DH1に加えて第1高温時間TH1を設定し、庫内温度Dが第1高温度DH1以上の状態が第1高温時間TH1以上続いて始めて、凍結防止モードから通常冷蔵モードへ復帰するようにした。換言すれば、庫内温度Dが一時的に第1高温度DH1以上になっただけでは、通常冷蔵モードへ復帰しないようにした。庫内温度Dが一時的に第1高温度DH1以上になっても、その後すぐに第1高温度DH1を下回った場合は、貯蔵物Pの凍結のおそれが解消されているとは言い難い。本発明によれば、こうした場合に凍結防止モードを維持して、貯蔵物Pの凍結を引き続き防止することができる。
庫内温度Dが第1高温度DH1よりさらに高い第2高温度DH2まで上昇すると、貯蔵物Pの凍結のおそれはほぼ解消される。そこで本発明では、庫内温度Dが第2高温度DH2まで上昇したときは、その状態が第1高温時間TH1より短い第2高温時間TH2以上続いた時点で、通常冷蔵モードへ復帰するようにした。これにより、通常冷蔵モードへ速やかに復帰して庫内Rの冷却を再開するとともに、加温装置4の不要な駆動を避けることができる。
第1低温度DL1を目標温度D0にかかわらず同一の値に固定すると、常に同じ条件の下で通常冷蔵モードから凍結防止モードへ移行させ、あるいは通常冷蔵モードを維持することができる。本発明とは逆に、第1低温度DL1が設定温度D0に依存する場合、例えば、設定温度D0と第1低温度DL1の差を一定に保持する場合は、設定温度D0が比較的高く設定されたときに第1低温度DL1も高くなり、貯蔵物Pの凍結のおそれがないような場合でも凍結防止モードへ移行してしまい、無駄に加温装置4で電力を消費してしまう。これに対し本発明では、第1低温度DL1を常に同じ値に固定するので、設定温度D0の設定値にかかわらず、凍結のおそれの有無を正確に判定することができる。
本発明では、加温装置4による加熱開始温度donと加熱停止温度doffを、目標温度D0にかかわらず同一の値に固定することができる。本発明とは逆に、加熱開始温度donと加熱停止温度doffが設定温度D0に依存する場合、例えば、両温度don・doffを設定温度D0の上下の値に設定する場合は、凍結防止モードにおいても庫内温度Dを設定温度D0の近傍に維持できるというメリットはあるが、特に設定温度D0が比較的高い場合に、加温装置4の駆動時間が長くなり、消費電力が大きくなる不利がある。これに対し本発明では、設定温度D0の設定値にかかわらず、加熱開始温度donと加熱停止温度doffを同一の値に固定するので、加温装置4の消費電力が一定以上に大きくなることがなく、省エネルギー性に優れる。
加温装置4の駆動を停止する加熱停止温度doffが、目標温度D0を下限値に設定したときの上閾値、すなわち上閾値の最低値に一致していると、凍結防止モードにおける庫内温度Dが、加温装置4の発熱の影響で目標温度帯を超えることを抑制できる。つまり、凍結防止モードにおいて、庫内Rを上閾値の最低値まで加熱して、貯蔵物Pの凍結を確実に防止しながら、目標温度帯を超えない低温状態で庫内Rの貯蔵物Pを貯蔵することができ、庫内温度Dの過度の上昇や加温装置4の消費電力の増大を招くことが無い。
凍結防止モードにおいて循環ファン16を常時駆動すると、加温装置4の熱を庫内Rの全体へ行き渡らせて、庫内Rの温度ムラを解消することができる。これにより、庫内Rの一部の貯蔵物Pだけが加熱されずに凍結したり、加温装置4に近い一部の貯蔵物Pだけが過度に加熱されるなどの不都合を防止することができる。
(実施例) 本発明に係る低温貯蔵庫の実施例を図1ないし図12に示す。図2において低温貯蔵庫は、正面に開口を有する縦長直方体状の箱体からなる貯蔵庫本体1と、貯蔵庫本体1の開口を開閉する扉2とを備える。貯蔵庫本体1と扉2で囲まれる庫内Rには、玄米や青果物などの貯蔵物Pを貯蔵することができる。庫内Rは、通常冷蔵モードにおいて、貯蔵庫本体1の上面に設置された冷却装置3で冷却されるとともに、凍結防止モードにおいて、貯蔵庫本体1の内壁面に沿って配置された複数個のヒーター(加温装置)4で加熱される。両運転モードの詳細については後述する。冷却装置3は、一群の通気口を備える角箱状のカバー5に収容されている。カバー5の正面には、ユーザーが庫内Rの目標温度D0などを入力するための操作パネル6が設けられている。
カバー5内の一側には、吸込口8と吹出口9を介して庫内Rに連通する冷却室10が形成されている。冷却室10は、庫内Rに臨む下面を除いて断熱壁で囲まれて、カバー5の内側の空間から断熱されている。図3において冷却装置3は、冷媒配管で接続された圧縮機11、凝縮器12、膨張部13および蒸発器14と、凝縮器12を冷却する凝縮器ファン15などで構成されており、このうち蒸発器14が冷却室10内に配置されている。また冷却室10内には、循環ファン16が配置されている。冷却装置3と共に循環ファン16を駆動させると、庫内Rの空気が吸込口8から冷却室10に吸い込まれて、蒸発器14を通過する間に冷却されて、吹出口9から庫内Rに吹き出される。
図3において制御装置20は、操作パネル6から入力された庫内Rの目標温度D0と、庫内温度Dを検出する温度センサ21の検出値とに基づいて、冷却装置3(圧縮機11・凝縮器ファン15)とヒーター4と循環ファン16を制御する(詳細は後述する)。温度センサ21は、冷却室10における蒸発器14の上流側に配置されており、庫内Rから吸込口8を介して冷却室10に吸い込まれた直後の空気(蒸発器14を通過する前の空気)の温度を検出する。
本実施例に係る低温貯蔵庫は、通常冷蔵モードと凍結防止モードの2つの運転モードを備える。図1のフローチャートに示すように、低温貯蔵庫の電源が投入されると、制御装置20はまず運転モードを通常冷蔵モードに設定する(ステップS1)。通常冷蔵モードによる運転中に、後述する第1移行条件または第2移行条件を満たすと(ステップS2またはステップS3でYES)、制御装置20は運転モードを凍結防止モードに切り換える(ステップS4)。なお、凍結防止モードに切り換わったことは、例えば操作パネル6の表示部などを利用してユーザーに報知される。また、凍結防止モードによる運転中に、後述する第1復帰条件または第2復帰条件を満たすと(ステップS5またはステップS6でYES)、制御装置20は運転モードを通常冷蔵モードに切り換える(ステップS1)。
通常冷蔵モードにおいては、制御装置20は冷却装置3を断続的に駆動させて、庫内温度Dを目標温度D0の近傍に維持する。具体的には、図4に示すように、目標温度D0を中心とする(D0±f)℃の目標温度帯を設定し、当該温度帯の上閾値すなわち(D0+f)℃を、冷却装置3の駆動を開始する冷却開始温度Donとし、当該温度帯の下閾値すなわち(D0−f)℃を、冷却装置3の駆動を停止する冷却停止温度Doffとする。制御装置20は、庫内温度Dが冷却開始温度Donまで上昇すると冷却装置3を駆動させ、庫内温度Dが冷却停止温度Doffまで低下すると冷却装置3を停止させる制御を繰り返すことにより、庫内温度Dを目標温度帯の範囲内に維持する。循環ファン16は冷却装置3と同時に駆動されて、同装置3と同一のタイミングでオンオフ制御される。本実施例では、操作パネル6から入力可能な目標温度D0の範囲を2〜15℃とした。また、目標温度帯を定める温度幅fを2℃に設定した。例えば目標温度D0が2℃に設定されたときの冷却開始温度Donは4℃であり、冷却停止温度Doffは0℃である。
含水率が高い青果物などの食材が凍結すると、その細胞が氷の結晶により破壊されて、品質が大きく損なわれてしまう。これを防止するため、本実施例に係る低温貯蔵庫は凍結防止モードを備える。凍結防止モードにおいては、制御装置20は冷却装置3を停止させたまま、ヒーター4を断続的に駆動させる。具体的には、図5に示すように、ヒーター4による加熱開始温度donと加熱停止温度doffをそれぞれ設定し(don<doff)、庫内温度Dが加熱開始温度donまで低下するとヒーター4に通電し、庫内温度Dが加熱停止温度doffまで上昇するとヒーター4への通電を停止する。循環ファン16はヒーター4の通電状態にかかわらず常時駆動される。本実施例では、加熱開始温度donを2℃に設定し、加熱停止温度doffを4℃に設定した。先に説明した通常冷蔵モードにおける冷却開始温度Donと冷却停止温度Doffは、目標温度D0の値に応じて変化する変数であるが、凍結防止モードにおける加熱開始温度donと加熱停止温度doffは、目標温度D0とは無関係に設定された定数である。
通常冷蔵モードによる低温貯蔵庫の運転中に、庫内温度Dが必要以上に低下して、貯蔵物Pの凍結のおそれが生じた場合には、運転モードを凍結防止モードに切り換えて、庫内Rをヒーター4で加熱する必要がある。ヒーター4による加熱の必要性、すなわち凍結防止モードへの移行の必要性を正確に判定するため、第1移行条件と第2移行条件がそれぞれ設定されている。ここで第1移行条件とは、簡単に説明すると、圧縮機11(冷却装置3)の停止中に、凍結のおそれがやや高い低温状態が比較的長時間にわたって継続することである。また第2移行条件とは、圧縮機11の停止中に、凍結のおそれがかなり高い低温状態が比較的短時間にわたって継続することである。本発明では、凍結のおそれがやや高い低温状態のことを「第1低温度DL1以下の状態」と定義し、凍結のおそれがかなり高い低温状態のことを「第2低温度DL2以下の状態」と定義する(DL1>DL2)。第1低温度DL1と第2低温度DL2は、可変値である目標温度D0とは無関係に設定された定数である。本実施例では、第1低温度DL1を2℃に設定し、第2低温度DL2を−2℃に設定した。また本発明では、比較的長時間を「第1低温時間TL1」と定義し、比較的短時間を「第2低温時間TL2」と定義する(TL1>TL2)。本実施例では、第1低温時間TL1を60分に設定し、第2低温時間TL2を10秒に設定した。
第1移行条件および第2移行条件について、図6のフローチャートを用いて詳細に説明する。同図に示す制御では、第1時間T1を計時する第1タイマーと、第2時間T2を計時する第2タイマーを使用する。通常冷蔵モードによる低温貯蔵庫の運転中に、圧縮機11が停止しかつ庫内温度Dが第1低温度DL1(2℃)まで低下すると(ステップS11およびステップS12でYES)、制御装置20は第1タイマーによる計時を開始する(ステップS13)。なお、圧縮機11が停止する冷却停止温度Doffは、庫内Rの目標温度D0の値に応じて変化する。目標温度D0と冷却停止温度Doffが比較的高いときは、庫内温度Dが第1低温度DL1まで低下する前に圧縮機11が停止し、目標温度D0と冷却停止温度Doffが比較的低いときは、庫内温度Dが第1低温度DL1まで低下した後に圧縮機11が停止する。目標温度D0が4℃のときは、冷却停止温度Doffが第1低温度DL1と同じ2℃になるため、ステップS11とステップS12で同時にYESとなる。
ステップS13に続くステップS14〜ステップS16では、上から順に、庫内温度Dが上昇して第1低温度DL1(2℃)を超えたか否か、庫内温度Dが第2低温度DL2(−2℃)まで低下したか否か、第1時間T1が第1低温時間TL1(60分)に達したか否かをそれぞれ監視し、これら3つのステップのいずれかでYESとなるのを待つ。ステップS15とステップS16より先にステップS14でYESとなった場合、すなわち、庫内温度Dが上昇して第1低温度DL1を上回った場合は、制御装置20は第1タイマーによる計時を停止して(ステップS17)、ステップS11へ戻る。つまり、低温貯蔵庫の運転モードを通常冷蔵モードに維持する。なお、本実施例において、庫内Rの目標温度D0の下限値は2℃であるから、圧縮機11が起動する冷却開始温度Donの下限値は4℃である。従って、ステップS14でYESとなる(庫内温度Dが第1低温度DL1を超える)前に圧縮機11が起動することは無い。
ステップS14とステップS15より先にステップS16でYESとなった場合、すなわち、ステップS13の計時開始から第1低温時間TL1(60分)が経過した場合は、制御装置20は第1タイマーによる計時を停止するとともに(ステップS18)、運転モードを通常冷蔵モードから凍結防止モードへ移行させる(ステップS19)。ここでは第1移行条件に基づいて運転モードが切り換わっている。
ステップS14とステップS16より先にステップS15でYESとなった場合、すなわち、庫内温度Dが第2低温度DL2(−2℃)まで低下した場合は、制御装置20は第1タイマーによる計時を継続したまま、第2タイマーによる計時を開始する(ステップS20)。この計時を開始してから第2低温時間TL2(10秒)が経過する前に、庫内温度Dが上昇して第2低温度DL2を上回った場合は(ステップS22でNO、ステップS21でYES)、制御装置20は第2タイマーによる計時を停止して(ステップS23)、前述のステップS14〜ステップS16のループに復帰する。逆に、庫内温度Dが第2低温度DL2を上回ることなく、第2低温時間TL2が経過した場合は(ステップS21でNO、ステップS22でYES)、制御装置20は第2タイマーおよび第1タイマーによる計時を停止して(ステップS24・ステップS18)、運転モードを通常冷蔵モードから凍結防止モードへ移行させる(ステップS19)。ここでは第2移行条件に基づいて運転モードが切り換わっている。
凍結防止モードによる低温貯蔵庫の運転中に、低温貯蔵庫の庫外温度の上昇などを理由に、貯蔵物Pの凍結のおそれが解消された場合には、運転モードを通常冷蔵モードに復帰させることが好ましい。通常冷蔵モードへの復帰の可否を正確に判定するため、第1復帰条件と第2復帰条件がそれぞれ設定されている。ここで、第1復帰条件とは、簡単に説明すると、ヒーター4の停止中に、凍結のおそれが十分に低い温度状態が比較的長時間にわたって継続することである。また第2復帰条件とは、ヒーター4の停止中に、凍結のおそれが全く無い温度状態が比較的短時間にわたって継続することである。本発明では、凍結のおそれが十分に低い温度状態のことを「第1高温度DH1以上の状態」と定義し、凍結のおそれが全く無い温度状態のことを「第2高温度DH2以上の状態」と定義する(DH1<DH2)。第1高温度DH1と第2高温度DH2は、可変値である目標温度D0とは無関係に設定された定数である。本実施例では、第1高温度DH1を4℃に設定し、第2高温度DH2を6℃に設定した。また本発明では、比較的長時間を「第1高温時間TH1」と定義し、比較的短時間を「第2高温時間TH2」と定義する(TH1>TH2)。本実施例では、第1高温時間TH1を第1低温時間TL1と同じ60分に設定し、第2高温時間TH2を第2低温時間TL2と同じ10秒に設定した。
第1復帰条件および第2復帰条件について、図7のフローチャートを用いて詳細に説明する。同図に示す制御でも、第1時間T1を計時する第1タイマーと、第2時間T2を計時する第2タイマーを使用する。凍結防止モードによる低温貯蔵庫の運転中に、ヒーター4が停止しかつ庫内温度Dが第1高温度DH1(4℃)まで上昇すると(ステップS31およびステップS32でYES)、制御装置20は第1タイマーによる計時を開始する(ステップS33)。なお本実施例では、ヒーター4が停止する加熱停止温度doffと第1高温度DH1が同じ4℃であるため、ステップS31とステップS32は同時にYESとなる。
ステップS33に続くステップS34〜ステップS36では、上から順に、庫内温度Dが第1高温度DH1(4℃)未満に低下したか否か、庫内温度Dが第2高温度DH2(6℃)まで上昇したか否か、第1時間T1が第1高温時間TH1(60分)に達したか否かをそれぞれ監視し、これら3つのステップのいずれかでYESとなるのを待つ。ステップS35とステップS36より先にステップS34でYESとなった場合、すなわち、庫内温度Dが第1高温度DH1未満に低下した場合は、制御装置20は第1タイマーによる計時を停止して(ステップS37)、ステップS31へ戻る。つまり、低温貯蔵庫の運転モードを凍結防止モードに維持する。なお、本実施例において、ヒーター4への通電を開始する加熱開始温度donは2℃であるから、ステップS34でYESとなる(庫内温度Dが第1高温度DH1を下回る)前にヒーター4への通電が開始されることは無い。
ステップS34とステップS35より先にステップS36でYESとなった場合、すなわち、ステップS33の計時開始から第1高温時間TH1(60分)が経過した場合は、制御装置20は第1タイマーによる計時を停止するとともに(ステップS38)、運転モードを凍結防止モードから通常冷蔵モードに復帰させる(ステップS39)。ここでは第1復帰条件に基づいて運転モードが切り換わっている。
ステップS34とステップS36より先にステップS35でYESとなった場合、すなわち、庫内温度Dが第2高温度DH2(6℃)まで上昇した場合は、制御装置20は第1タイマーによる計時を継続したまま、第2タイマーによる計時を開始する(ステップS40)。この計時を開始してから第2高温時間TH2(10秒)が経過する前に、庫内温度Dが低下して第2高温度DH2を下回った場合は(ステップS42でNO、ステップS41でYES)、制御装置20は第2タイマーによる計時を停止して(ステップS43)、前述のステップS34〜ステップS36のループに復帰する。逆に、庫内温度Dが第2高温度DH2を上回ることなく、第2高温時間TH2が経過した場合は(ステップS41でNO、ステップS42でYES)、制御装置20は第2タイマーおよび第1タイマーによる計時を停止して(ステップS44・ステップS38)、運転モードを凍結防止モードから通常冷蔵モードに復帰させる(ステップS39)。ここでは第2復帰条件に基づいて運転モードが切り換わっている。
庫内温度Dと低温貯蔵庫の各部の駆動状態の時間的な変化の一例を、図8のタイミングチャートに示す。ここでは、通常冷蔵モードにおける庫内Rの目標温度D0を、下限値である2℃に設定した。従って、圧縮機11(冷却装置3)が起動する冷却開始温度Donは4℃であり、圧縮機11が停止する冷却停止温度Doffは0℃である。これ以降に説明するタイミングチャートにおいても、断りが無い限りは各温度D0・Don・Doffは同じとする。
最初の時点t1では、庫内温度Dが冷却停止温度Doffである0℃まで低下して、圧縮機11と循環ファン16が停止している。またこのとき、庫内温度Dが第1低温度DL1(2℃)以下であるから、制御装置20は第1タイマーによる計時を開始する(図6のステップS11〜S13)。次の時点t2では、庫内温度Dが第1低温度DL1すなわち2℃まで上昇している。ここでは、第1タイマーによる計時開始から第1低温時間TL1(60分)が経過していないから(t2−t1<60分)、制御装置20は第1タイマーによる計時を停止して、低温貯蔵庫の運転モードを通常冷蔵モードに維持する(図6のステップS14・S17)。次の時点t3では、庫内温度Dが冷却開始温度Donすなわち4℃まで上昇して、圧縮機11と循環ファン16が起動している。
時点t4における制御手順は、前述の時点t1と同一であるが、その後の庫内温度Dの上昇速度が、時点t1〜t2と比べて緩やかになっている。温度上昇が緩やかになる主な原因は、低温貯蔵庫の外気温の低下である。次の時点t5では、第1タイマーによる計時開始から第1低温時間TL1(60分)が経過したことに伴い、制御装置20は第1タイマーによる計時を停止して、運転モードを凍結防止モードに移行させている(図6のステップS16・S18・S19)。凍結防止モードに移行すると、循環ファン16が駆動を開始する。またこのとき、庫内温度Dが加熱開始温度donすなわち2℃以下であるから、制御装置20はヒーター4への通電を開始する。ヒーター4への通電は、庫内温度Dが加熱停止温度doffすなわち4℃に達する時点t6まで継続される。加熱停止温度doffが、冷却開始温度Donすなわち目標温度帯の上閾値に一致していると、凍結防止モードにおいても、庫内温度Dが目標温度帯を超えることを抑制して、庫内Rを貯蔵物Pに適した低温状態に維持することができる。
外気温が0℃を下回る冬季の寒冷地などにおいては、低温貯蔵庫の扉2を開放したときに、低温の外気が庫内Rに侵入して、庫内温度Dが目標温度D0を大きく下回ることがある。外気の侵入後に扉2を閉めても、外気温が低いことから庫内温度Dの自然な上昇は望み難い。庫内温度Dを上昇させて貯蔵物Pの凍結を防ぐためには、運転モードを速やかに凍結防止モードに移行させる必要がある。
図9に示すタイミングチャートでは、庫内温度Dが0℃まで低下して圧縮機11が停止した時点t11の後も、庫内Rへの外気の侵入により庫内温度Dが低下し続けている。制御装置20は、第1タイマーによる計時を時点t11に開始し(図6のステップS11〜S13)、さらに庫内温度Dが第2低温度DL2(−2℃)まで低下した時点t12に、第2タイマーによる計時を開始する(図6のステップS15・S20)。次の時点t13では、第2タイマーによる計時開始から第2低温時間TL2(10秒)が経過したことに伴い、制御装置20は第2タイマーおよび第1タイマーによる計時を停止して、運転モードを凍結防止モードに移行させている(図6のステップS22・S24・S18・S19)。時点t13における庫内温度Dは加熱開始温度donすなわち2℃を下回っているから、制御装置20はヒーター4への通電を開始する。ヒーター4への通電は、庫内温度Dが加熱停止温度doffすなわち4℃に達する時点t14まで継続される。次の時点t15では、庫内温度Dが加熱開始温度donすなわち2℃まで低下して、ヒーター4への通電が再開されている。
図9に示す例では、時点t11から第1低温時間TL1(60分)が経過するのを待たずに、時点t12から第2低温時間TL2(10秒)が経過した時点t13に、凍結防止モードに移行している。本実施例に係る低温貯蔵庫によれば、庫内温度Dが第1低温度DL1(2℃)よりさらに低い第2低温度DL2(−2℃)まで低下したときは、速やかに凍結防止モードに移行して庫内Rの加熱を開始することができ、これにより貯蔵物Pの凍結を確実に防止することができる。
図10のタイミングチャートは、凍結防止モードから通常冷蔵モードに復帰する様子の一例を示したものである。通常冷蔵モードから凍結防止モードへ移行するのは、主に低温貯蔵庫の外気温が低いときであるから、凍結防止モードへ移行した直後は、ヒーター4への通電を停止すると、庫内温度Dは緩やかな低下傾向を示すことが多い(時点t21〜t22)。一方、凍結防止モードへの移行時に比べて外気温が上昇すると、ヒーター4への通電の停止後も庫内温度Dは緩やかに上昇する(時点t23〜t24)。
制御装置20は、ヒーター4が停止しかつ庫内温度Dが第1高温度DH1(4℃)まで上昇した時点t23に、第1タイマーによる計時を開始する(図7のステップS31〜S33)。そして、計時開始から第1高温時間TH1(60分)が経過した時点t24に、第1タイマーによる計時を停止して、運転モードを通常冷蔵モードに復帰させている(図7のステップS36・S38・S39)。通常冷蔵モードに復帰した時点t24において、庫内温度Dは冷却開始温度Donすなわち4℃を超えているから、制御装置20は圧縮機11を起動し、また循環ファン16の駆動状態を維持する。次の時点t25では、庫内温度Dが冷却停止温度Doffすなわち0℃まで低下したことに伴い、制御装置20が圧縮機11と循環ファン16を停止させている。
図11のタイミングチャートは、凍結防止モードにおけるヒーター4の停止中に、庫内温度Dが図10よりも速いペースで上昇した場合を示したものである。制御装置20は、ヒーター4が停止しかつ庫内温度Dが第1高温度DH1(4℃)まで上昇した時点t31に、第1タイマーによる計時を開始し(図7のステップS31〜S33)、さらに庫内温度Dが第2高温度DH2(6℃)まで上昇した時点t32に、第2タイマーによる計時を開始する(図7のステップS35・S40)。次の時点t33では、第2タイマーによる計時開始から第2高温時間TH2(10秒)が経過したことに伴い、制御装置20は第2タイマーおよび第1タイマーによる計時を停止して、運転モードを通常冷蔵モードに復帰させている(図7のステップS42・S44・S38・S39)。時点t33における庫内温度Dは冷却開始温度Donすなわち4℃を超えているから、制御装置20は圧縮機11を起動し、また循環ファン16の駆動状態を維持する。圧縮機11と循環ファン16の駆動状態は、庫内温度Dが冷却停止温度Doffすなわち0℃に達する時点t34まで継続される。次の時点t35では、庫内温度Dが冷却開始温度Donすなわち4℃まで上昇して、圧縮機11と循環ファン16が再び起動されている。
図11に示す例では、時点t31から第1高温時間TH1(60分)が経過するのを待たずに、時点t32から第2高温時間TH2(10秒)が経過した時点t33に、通常冷蔵モードに復帰している。本実施例に係る低温貯蔵庫によれば、庫内温度Dが第1高温度DH1(4℃)よりさらに高い第2高温度DH2(6℃)まで上昇したときは、速やかに通常冷蔵モードに復帰して庫内Rの冷却を再開することができる。
前述のように、庫内Rの目標温度D0は2〜15℃の範囲内で設定することができる。図12のタイミングチャートは、目標温度D0を8℃に設定して低温貯蔵庫を運転した場合の庫内温度Dの変化を示したものである。冷却開始温度Donは目標温度D0より2℃低い6℃であり、冷却停止温度Doffは目標温度D0より2℃高い10℃である。例えば夏季など、外気温が目標温度D0より十分に高い時季には、低温貯蔵庫は通常冷蔵モードで運転される。制御装置20は、タイミングチャートの左側に示すように、圧縮機11(冷却装置3)と循環ファン16をオンオフ制御することにより、庫内温度Dを(D0±f)℃の目標温度帯の範囲内に維持する。
一方、冬季などに外気温が氷点下まで低下し、前述の第1移行条件または第2移行条件を満たすと、運転モードが通常冷蔵モードから凍結防止モードへ自動的に切り換わる。制御装置20は、タイミングチャートの右側に示すように、循環ファン16を常時駆動させながらヒーター4をオンオフ制御することにより、庫内温度Dを加熱開始温度don(2℃)と加熱停止温度doff(4℃)の間に維持して、庫内Rの貯蔵物Pの凍結を防止する。庫内Rをヒーター4で目標温度帯(6〜10℃)まで加熱することは技術的には可能であるが、本実施例では省エネの観点から、凍結防止モードにおいては、凍結防止に必要な最小限の加熱だけを行うようにしている。
以上のように、本実施例に係る低温貯蔵庫では、貯蔵物Pが収容される庫内Rの実際の温度を直接的に検出し、当該温度に基づいて貯蔵物Pの凍結のおそれの有無を判定し、凍結のおそれがある場合にのみ通常冷蔵モードから凍結防止モードへ移行し、凍結のおそれが解消されたときには通常冷蔵モードに復帰するようにした。実際の庫内温度Dに基づいて凍結のおそれの有無を判定すると、外気温などに基づいて判定する場合に比べて、判定をより正確に行うことができる。凍結のおそれの有無を正確に判定すると、凍結のおそれがあるときは、凍結防止モードへ移行してヒーター4を駆動させ、凍結を確実に防止することができる。また、凍結のおそれがないときは、通常冷蔵モードを維持し、凍結防止モードから通常冷蔵モードに復帰して、ヒーター4の無駄な駆動を避けて、その消費電力を削減することができる。
上記実施例に係る低温貯蔵庫は、通常冷蔵モードと凍結防止モードの2つの運転モードを備えるものとしたが、本発明はこれに限られず、例えば玄米用と青果物用など、貯蔵対象の食材ごとに複数種の通常冷蔵モードを備えていてもよい。この場合は、各通常冷蔵モードにおいて、庫内Rの目標温度D0の設定可能な範囲や、目標温度帯を定める温度幅fなどを異ならせることができる。また、通常冷蔵モードにおいて、循環ファン16を常時駆動させてもよい。特に、青果物用の通常冷蔵モードを実装する場合は、圧縮機11の停止中に循環ファン16を駆動させることにより、蒸発器14に付着した霜を気化させて、その水蒸気を庫内Rへ送給して、庫内Rを青果物の保存に適した高湿状態に保つことができる。さらに低温貯蔵庫は、2種類以上の凍結防止モードを備えることもできる。この場合は、各凍結防止モードにおいて、加熱開始温度donや加熱停止温度doffなどを異ならせることができる。第1低温時間TL1と第1高温時間TH1は同一である必要は無く、第2低温時間TL2と第2高温時間TH2も同一である必要は無い。冷却装置3と加温装置4は冷凍機とヒーターに限らず、例えばペルチェ素子などで構成してもよい。