JP2019034940A - 癌幹細胞における薬物耐性の低減剤、癌幹細胞における転移能の抑制剤及び癌の転移性再発リスクを予測する方法 - Google Patents

癌幹細胞における薬物耐性の低減剤、癌幹細胞における転移能の抑制剤及び癌の転移性再発リスクを予測する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、肝癌転移性再発に特異的な遺伝子を同定して転移性再発リスクを予測する方法を提供すると共に、肝癌転移性再発の抑制に有効な癌幹細胞に対する薬物耐性の低減剤や癌幹細胞における転移能の抑制剤を提供することにある。【解決手段】(I)RAB3B遺伝子の発現を抑制する核酸分子;(II)配列番号1に示されるRAB3Bタンパク質に結合する抗体若しくは低分子化合物;の(I)又は(II)のいずれかを有効成分とする、癌幹細胞における薬物耐性の低減剤を作製する。また、被検者から採取した生体試料中のRAB3B遺伝子のmRNAの発現量、前記mRNAがコードするタンパク質の発現量、又はRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAの発現量を指標として、癌の転移性再発リスクを予測する。【選択図】なし

Description

本発明は、癌幹細胞における薬物耐性の低減剤や、癌幹細胞における転移能の抑制剤や、癌の転移性再発リスクを予測する方法に関する。
肝細胞癌(hepatocellular carcinoma:HCC)を含む肝癌 (hepatoma)は、治癒切除にもかかわらず再発率の高い癌である。この再発率の高さは、肝炎ウイルス感染を素地とするde novoによる再発に加えて、血行性転移による原発巣除去後の術後肝内再発の2つがあるためである。患者QOLにおいて癌の発生防止が第一であり、外科手術後は再発を怖れずに安心して暮らせる術後補助療法が求められるが、肝癌においては標準的な術後補助療法は確立出来ていない。なお、肝細胞癌においては、遺伝子の解析により発症又は再発を予測する技術が開発されている(特許文献1-3参照)。
近年、自己複製能、多分化能、造腫瘍能、再発、転移能、又は治療抵抗性などを持つ癌の根本ともいえる癌幹細胞(cancer stem cells:CSC)の存在が報告され、癌幹細胞をターゲットとする新たな癌治療の概念が報告されている。一方、癌幹細胞の研究の困難な点は、癌組織中の癌幹細胞の割合が少ないため、多くの癌幹細胞を用いた研究を行うことが難しかった。そこで本発明者らは、血清を含有しない動物細胞培養用基礎培地に、神経生存因子−1(NSF-1)を添加した培地を用いた消化器系癌幹細胞の増殖方法(特許文献4参照)を提案した。これによって、CSCの特性を有するがん幹細胞様細胞(cancer stem-like cells; CSLC)を効率的に得ることが出来るようになった。
また、癌治療において、癌細胞だけでなく癌幹細胞も治療標的とすることが重要である。しかしながら、癌幹細胞は癌細胞集団において極めて少数であるということだけでなく、癌細胞における不均一性(heterogeneity)と同様に、癌幹細胞においてもheterogeneityがあることが分かってきており、コンセプトに基づく癌治療法の開発は困難であった。これまでに、幾つかの癌幹細胞マーカーが報告されているが、これらの癌幹細胞マーカーを用いての癌幹細胞の選択では真に癌の再発又は転移の責任細胞を解析することは困難であった。
ところで、癌幹細胞の中には、薬剤耐性を獲得しているものがあることが報告されている(非特許文献1参照)。したがって、治療によって大部分の癌細胞を除いても、ごく少数の癌幹細胞が生き残っていれば再発が起こりうることになり、これが癌においてしばしば再発が起きる理由の一つとして考えられている。したがって、癌幹細胞における抗癌剤耐性を弱めて癌細胞と同時に癌幹細胞も除去することができれば、癌の転移や再発の防止にも有用な治療法の開発につながることが期待されている。
特開2016-140262号公報 特開2014-27898号公報 国際公開第2011/122021号パンフレット 特開2013-208104号公報
Cancer stem-like sphere cells induced from de-differentiated hepatocellular carcinoma-derived cell lines possess the resistance to anti-cancer drugs. BMC Cancer, 14: 722 (2014)
現在、肝癌において、de novo再発についてはインターフェロンのような抗ウイルス薬が考えられるが、転移性再発についてはバイオマーカーの開発が進んでいるものの、有効な治療法はない。また、転移性再発には薬物耐性を獲得した癌幹細胞が関与すると考えらえており、かかる薬物耐性を獲得した癌幹細胞に対する薬物耐性の低減剤の開発が求められている。そこで、本発明の課題は、肝癌転移性再発に特異的な遺伝子を同定して転移性再発リスクを予測する方法を提供すると共に、肝癌転移性再発の抑制に有効な癌幹細胞に対する薬物耐性の低減剤や癌幹細胞における転移能の抑制剤を提供することにある。
本発明者らは、自らが開発した独自の誘導法により、癌幹細胞の特性の一つである浮遊細胞塊(sphere)形成能を癌幹細胞の指標としてCSLCの機能的選択を行い、これによって得られた細胞群において、種々の抗癌剤に対する耐性が亢進するだけでなく、血行性肝転移能が亢進していることを免疫不全マウスにおける経門脈的肝転移モデルにおいて確認した。従来のCSCマーカーCD44v9によるソーティング法では得られる細胞数が少ないため、さらにDNA chip等の網羅的解析を行うことが困難であったが、本発明者らは癌幹細胞の性質を有する細胞を誘導することで、大量のCSLCを得ることが可能となり、RNA-seq解析 (mRNA)、DNA chip解析 (microRNA)を行った。さらに、癌幹細胞の性質の中でも再発・転移能に着目してヒト臨床検体でのRNA-seq解析結果も統合して解析することで、転移性肝内再発に特異的な遺伝子であるRAB3B遺伝子を同定し、本発明を完成した。なお、本発明者らが開発した方法による肝癌CSLCは、実験的に抗癌剤耐性と肝転移能亢進の両方を示すものの、従来の肝癌CSCマーカーであるCD133を発現していなかった。そのため、CD133をマーカーとしたソーティング法からは転移能・抗癌剤耐性能の両者を有する上記CSLCは得られていなかった。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)以下の(I)又は(II)のいずれかを有効成分とする、癌幹細胞における薬物耐性の低減剤。
(I)RAB3B遺伝子の発現を抑制する核酸分子;
(II)配列番号1に示されるRAB3Bタンパク質に結合する抗体若しくは低分子化合物;
(2)癌幹細胞が、肝癌幹細胞であることを特徴とする上記(1)記載の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤。
(3)核酸分子がRAB3B遺伝子を標的とする二本鎖siRNA、microRNA、shRNA、アンチセンス核酸、及びリボザイムからなる群から選択される少なくとも1種の核酸分子であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤。
(4)核酸分子がRAB3B遺伝子を標的とする二本鎖siRNAであることを特徴とする上記(3)記載の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤。
(5)薬物が、抗腫瘍性抗生物質、微小管阻害剤、プラチナ製剤、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、又はキナーゼ阻害剤であることを特徴とする上記(4)記載の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤。
(6)薬物が、ドキソルビシン、ドセタキセル、カルボプラチン、ボリノスタット、又はスニチニブであることを特徴とする上記(5)記載の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤。
(7)核酸分子がRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAであって、該microRNAがhas-miR-15a-5pであることを特徴とする上記(3)記載の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤。
(8)薬物が、抗腫瘍性抗生物質、微小管阻害剤、プラチナ製剤、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、キナーゼ阻害剤、又はトポイソメラーゼ阻害剤であることを特徴とする上記(7)記載の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤。
(9)薬物が、ドキソルビシン、ドセタキセル、カルボプラチン、ボリノスタット、スニチニブ又はイリノテカンであることを特徴とする上記(8)記載の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤。
(10)以下の(I)又は(II)のいずれかを有効成分とする、癌幹細胞における転移能の抑制剤。
(I)RAB3B遺伝子の発現を抑制する核酸分子;
(II)配列番号1に示されるRAB3Bタンパク質に結合する抗体若しくは低分子化合物;
(11)癌幹細胞が、肝癌幹細胞であることを特徴とする上記(10)記載の癌幹細胞における転移能の抑制剤。
(12)被検者から採取した生体試料中のRAB3B遺伝子のmRNAの発現量、前記mRNAがコードするタンパク質の発現量、又はRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAの発現量を指標として、癌の転移性再発リスクを予測する方法。
(13)癌が肝癌であることを特徴とする上記(12)記載の癌の転移性再発リスクを予測する方法。
(14)生体試料が、原発肝腫瘍組織又は血液であることを特徴とする上記(12)又は(13)記載の方法。
(15)上記(12)〜(14)のいずれか記載の方法に用いるためのキットであって、以下の(I)又は(II)を含むキット。
(I)被検者から採取した生体試料中のRAB3B遺伝子のmRNAの発現量、又はRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAの発現量を検出するためのプライマー対若しくはプローブ、又はそれらの標識物;
(II)被検者から採取した生体試料中のmRNAがコードするタンパク質の発現量を検出するための抗体、又はそれらの標識物;
(15)配列番号1に示されるRAB3Bタンパク質のアミノ酸配列のうち、連続する5-50個のアミノ酸からなるペプチドを有効成分とする癌ペプチドワクチン。
本発明の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤を用いることにより、癌幹細胞における薬物耐性を低減することが可能となる。また、本発明の癌幹細胞における転移能の抑制剤を用いることにより、癌幹細胞における転移能を低減することが可能となる。さらに、生体試料中のRAB3B遺伝子のmRNAの発現量、又は前記mRNAがコードするタンパク質の発現量を指標とすることで、癌の転移性再発リスクを予測することが可能となる。
実施例2において、免疫不全マウスにおける経門脈的肝転移マウスモデルではSK-sphereの注入により血行性肝転移能が亢進していることを示す図である。 実施例3におけるSK-sphereにて特異的に発現亢進を示し、かつ、転移性肝内再発有り群においても共通して発現亢進を示す遺伝子の探索手法の概略を示す図である。 実施例3におけるMA plot解析(SK-sphere vs SK-HEP-1)の結果を示す図である。 実施例3におけるMA plot解析(Short-DFS vs Long-DFS in Tumor)の結果を示す図である。 (a)は実施例4におけるRNA-seq解析からRAB3B mRNA発現量を抽出した結果を示すグラフであり、(b)は定量PCR (RT-qPCR) にてRAB3B mRNA発現量を解析した結果を示すグラフである。それぞれ縦軸はSK-HEP-1のmRNA発現レベルを1とした場合の相対発現レベルである。(c)はタンパク質レベルでRAB3Bがsphereで亢進しているWestern blot解析の結果を示す図である。VCPは内在コントロールとしてのValosin Containing Proteinの発現量を示す。 摘除手術後2年を超えて肝内再発無しHCC患者(HCC without IHR(>2 year))若しくは摘除手術後1年以内転移性肝内再発有りHCC患者(HCC with IHR(≦1year))からの摘除標本(それぞれn = 10)における癌部組織及び周辺非癌部肝組織からのRAB3B mRNA発現量をまとめた箱ひげ図である。縦軸は非癌部肝組織(n=20)における平均値を1とした場合の比を示す。 実施例4において、術後無再発生存期間解析として、RAB3B mRNA発現に基づいてHCC患者20例の群分けを行い、Kaplan-Meier生存曲線及びLog-Rank検定によるP値を示した結果を示す図である。図中、Lowはカットオフ値未満、Highはカットオフ値以上である。 (a) は実施例5におけるqPCRによるmRNAレベルでのノックダウンの結果、(b) はWestern blotによるタンパク質レベルでのノックダウン解析の結果を示す図である。 実施例5におけるsiRNAによるノックダウン解析の結果を示す図である。 実施例5におけるコントロール(siNegaCont)及びsiRNAによるRAB3Bノックダウン株(siRAB3B#1,#2)における接着細胞数/浮遊細胞塊細胞数比を示す図である。 実施例6における抗癌剤に対する感受性解析におけるコントロール(抗癌剤無し)の結果を示す図である。左側 (a) がSK-HEP-1細胞を血清含有DMEM培地で培養した場合、右側 (b) がSK-HEP-1細胞をNSC含有無血清培地で培養した場合である。以下の図9B-Gも同様である。 実施例6における抗癌剤ドキソルビシンに対する感受性解析の結果を示す図である。○はsiRNAのコントロール(siNegaCont)、△がsiRNA(siRAB3B#1)、□がsiRNA(siRAB3B#2)でノックダウンした場合である。以下の図9C-Gも同様である。 実施例6における抗癌剤ドセタキセルに対する感受性解析の結果を示す図である。 実施例6における抗癌剤カルボプラチンに対する感受性解析の結果を示す図である。 実施例6における抗癌剤ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(SAHA)に対する感受性解析の結果を示す図である。 実施例6における抗癌剤スニチニブに対する感受性解析の結果を示す図である。 実施例6における抗癌剤イリノテカンに対する感受性解析の結果を示す図である。 (a)実施例7において、SK-HEP-1とSK-sphereにおける培地中のtotal RNA濃度を調べた結果を示す図である。(b)実施例7において、SK-HEP-1、SK-sphere及びSK-sphereの培養上清それぞれにおけるhas-miR-15a-5p発現量を調べた結果を示す図である。(c)実施例7において、has-miR-15a-5のmimic RNAの移入によるRAB3BのmRNA発現抑制効果を調べた結果を示す図である。 実施例8における抗癌剤ドキソルビシンに対する感受性解析の結果を示す図である。左側 (a) がSK-HEP-1細胞を血清含有DMEM培地で培養した場合、右側 (b) がSK-HEP-1細胞をNSC含有無血清培地で培養した場合であり、○はmicroRNAのコントロール(cont-RNA)、△がhas-miR-15a-5のmimic RNA(mimic-miR15a-5p)を移入した場合である。以下の図11B-Fも同様である。 実施例8における抗癌剤ドセタキセルに対する感受性解析の結果を示す図である。 実施例8における抗癌剤カルボプラチンに対する感受性解析の結果を示す図である。 実施例8における抗癌剤ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(SAHA)に対する感受性解析の結果を示す図である。 実施例8における抗癌剤スニチニブに対する感受性解析の結果を示す図である。 実施例8における抗癌剤イリノテカンに対する感受性解析の結果を示す図である。 実施例9で行ったゲノム編集に関する配列を示す図である。図中、「200_201insA」は、RAB3B coding配列における200番目と201番目の間にアデニン(A)がインサートされたことを示す。 実施例9において、RAB3B発現を解析した結果を示す図である。(a)は、HuH-7細胞株、mono-allelic RAB3B knock-out細胞株(RAB3B-KO8細胞株)及びSK-HEP-1細胞株それぞれを血清含有DMEM培地(normal)又はNSC含有無血清培地(NSC)で培養し、RAB3B発現を確認した結果を示す図である。(b)は上記それぞれの細胞株においてウエスタンブロット解析からのRAB3Bタンパク質発現を調べた結果を示す。 実施例9において、SK-HEP-1細胞株及びmono-allelic RAB3B knock-out (RAB3B-KO8)株の形態を調べた結果である。(a)はSK-HEP-1細胞株を血清含有DMEM培地(normal)で培養した場合、(b)はRAB3B-KO8細胞株を血清含有DMEM培地(normal)で培養した場合、(c)はSK-HEP-1細胞株をsphere誘導のNSC培地(NSC)で培養した場合、(d)はRAB3B-KO8細胞株をsphere誘導のNSC培地(NSC)で培養した場合である。 実施例9において、pcDNA3.1(-) vectorのみのmock移入株とpRAB3B移入株をそれぞれsphere誘導のNSC培地にて7-24日間のsphere誘導処置を行い、顕微鏡下にて観察した結果を示す図である。 実施例9において、免疫不全マウスにSK-HEP-1細胞株又はRAB3B-KO8細胞株を注射し、肝腫瘍形成頻度を調べた結果を示す図である。 実施例10において、RAB3B-KO8細胞株を用いてMTSアッセイにより抗癌剤に対する感受性解析を行った結果を示す図である。 実施例11において、SK-HEP-1細胞株又はRAB3B-KO8細胞株の周期における細胞集団の割合を求めた結果を示す図である。 実施例12において、ABCG2タンパク質の発現をフローサイトメトリーにより解析した結果を示す図である。
本発明の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤や、本発明の癌幹細胞における転移能の抑制剤としては、RAB3B遺伝子の発現を抑制する核酸分子又は前記RAB3B遺伝子がコードするタンパク質に結合する抗体若しくは低分子化合物であれば特に制限されず、ここで、「RAB3B」(Entrez Gene ID:5865, mRNA: NM_002867.3, protein: NP_002858.2)は、Rasスーパーファミリーに属し、炎症反応に依存して誘導されることや、下垂体培養細胞において分泌顆粒の細胞内輸送の過程に関与していることが知られている。
また、本発明の癌の転移性再発リスクを予測する方法としては、被検者から採取した生体試料中のRAB3B遺伝子のmRNAの発現量、前記mRNAがコードするタンパク質の発現量、又はRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAの発現量を指標として、癌の転移性再発リスクを予測する方法であれば特に制限されず、ここで、「転移性再発」とは、主として血行性転移による原発巣除去後の術後再発であり、除去手術後1年若しくは2年以内の早期再発である。具体的には微小転移巣、例えば肝内微小転移巣や、血液からの遺残癌細胞の再増殖による再発であり、de novoによる再発、例えば肝炎ウイルス感染を素地とするde novoによる再発と区別されるものである。なお、上述の血行性転移による原発巣除去後の術後肝内再発を以下「転移性肝内再発」ともいう。
さらに、本発明の癌ペプチドワクチンとしては、配列番号1に示されるRAB3Bタンパク質のアミノ酸配列のうち、連続する5-50個、好ましくは9-25のアミノ酸からなるペプチドを有効成分とする癌ペプチドワクチンであればよく、かかる癌ペプチドワクチンは、癌ペプチドワクチン療法に用いることができる。
上記「RAB3B遺伝子の発現を抑制する核酸分子」としてはRAB3B遺伝子の発現を抑制できるかぎり特に制限されず、RAB3B遺伝子の転写を抑制するものや、RAB3B遺伝子を破壊するものや、RAB3B遺伝子の翻訳を抑制するものを挙げることができ、RAB3B遺伝子の全長又は部分配列を標的とする二本鎖siRNA、microRNA、shRNA、RAB3B遺伝子を標的とするguide RNA、アンチセンス核酸、リボザイム等を挙げることができる。二本鎖siRNAとしては、例えば配列番号2に示されるセンス配列と配列番号3に示されるアンチセンス配列とから形成されるsiRNA、又は配列番号4に示されるセンス配列と配列番号5に示されるアンチセンス配列とから形成されるsiRNAを挙げることができ、Cas9タンパク質をゲノムに標的化させるguide RNA配列としては配列番号10に示されるguide RNA配列を挙げることができ、microRNAとしては配列番号6に示されるhas-miR-15a-5p(microRNA database(http://www.mirbase.org/)ID:MIMAT0000068)や、has-miR-15a-5pの塩基配列と少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の同一性を示す塩基配列からなり、かつRAB3B遺伝子を標的としてRAB3B遺伝子の発現を抑制できるRNAを挙げることができる。なお、配列番号2における3’末端のtt(tはチミン)、配列番号3における3’末端のcc(cはシトシン)、配列番号4における3’末端のtt、配列番号5における3’末端のgg(gはグアニン)はRNAをヌクレアーゼから保護するためのオーバーハング配列である。
上記「RAB3Bタンパク質に結合する抗体」としては、配列番号1に示されるRAB3Bタンパク質に結合する抗体であれば特に制限されず、RAB3Bタンパク質に特異的に結合する抗体であることが好ましく、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体等の抗体であってもよく、また、この中には、F(ab’)2、Fab、diabody、Fv、ScFv、Sc(Fv)2等の抗体の一部からなる抗体断片も含まれる。
上記「RAB3Bタンパク質に結合する低分子化合物」としては、RAB3Bタンパク質に結合する低分子の化合物であればよく、ゲニステイン(Genistein)等のチロシンキナーゼ (tyrosine kinase) 阻害剤を挙げることができ、かかる低分子化合物は、公知の方法によりスクリーニングして得ることができ、天然の化合物であっても又は人工の化合物のいずれであっても良い。上記スクリーニング方法としては、例えば、RAB3Bタンパク質又はその部分ペプチドと被検低分子化合物を接触させて、RAB3Bタンパク質又はその部分ペプチドと被検化合物との結合活性を調べ、RAB3Bタンパク質又はその部分ペプチドと結合する化合物を選択する方法を挙げることができる。
上記「癌幹細胞における薬物耐性」とは、癌幹細胞が薬物に対して抵抗性を有し、薬剤が効かない、又は効きにくくなる状態を意味する。具体的には、薬剤が抗癌剤の場合には、癌幹細胞が抗癌剤による細胞障害活性に対して抵抗性を有し、抗癌剤を投与しても癌幹細胞の生存率が下がりにくくなることをいう。
上記「癌幹細胞における転移能」とは、癌幹細胞として原発巣より遊離して脈管浸潤し、足場非依存的に脈管内にて生存し、転移巣における腫瘍形成および癌細胞への分化による腫瘍増大までの一連の能力を意味する。肝癌における臨床像としては血行性転移による肝内転移に相当する。
上記「癌幹細胞」における癌、又は上記「癌ペプチドワクチン」における癌としては、固形癌でも血液癌でもよく、肝癌(肝細胞癌、又は胆管細胞癌)、膵臓癌、胃癌、食道癌、腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌、未分化癌、大細胞癌、小細胞癌、皮膚癌、乳癌、前立腺癌、膀胱癌、膣癌、頸部癌、子宮癌、腎臓癌、脾臓癌、肺癌、気管癌、気管支癌、大腸癌(直腸癌、又は結腸癌)、小腸癌、胆嚢癌、胆道癌、精巣癌、卵巣癌等の癌や、骨組織、軟骨組織、脂肪組織、筋組織、血管組織及び造血組織の癌のほか、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性血管内皮腫、悪性シュワン腫、骨肉腫、軟部組織肉腫等の肉腫や、肝芽腫、髄芽腫、腎芽腫、神経芽腫、膵芽腫、胸膜肺芽腫、網膜芽腫等の芽腫や、胚細胞腫瘍や、リンパ腫や、白血病を挙げることができる。
上記「薬物」としては、ドキソルビシン、イダルビジン、マイトマイシンC等の抗腫瘍性抗生物質、ドセタキセル、ビンクリスチン等の微小管阻害剤、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン等のプラチナ製剤、ボリノスタット等のヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、スニチニブ、イマチニブ、ゲフェチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、ダサチニブ、トラメチニブ等のキナーゼ阻害剤、イリノテカン、エトポシド等のトポイソメラーゼ阻害剤、シクロスポリン、タクロリムス等のカルシニューリン阻害薬、シクロホスファミド、ベンダムスチン、イオスファミド、ダカルバジン等のアルキル化薬、ペントスタチン、フルダラビン、クラドリビン、メソトレキセート、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、エノシタビン等の代謝拮抗薬、リツキシマブ、セツキシマブ、トラスツズマブ等の分子標的薬、ボルテゾミブ等のプロテアソーム阻害剤、タモキシフェン、ビカルダミド等のホルモン療法薬、インターフェロン、ニボルマブ、ペンブロリズマブ等の免疫制御薬を挙げることができ、抗腫瘍性抗生物質、微小管阻害剤、プラチナ製剤、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、キナーゼ阻害剤、又はトポイソメラーゼ阻害剤を好適に挙げることができる。また、核酸分子としてRAB3B遺伝子を標的とする二本鎖siRNAを用いる場合にはドキソルビシン、ドセタキセル、カルボプラチン、ボリノスタット、又はスニチニブを挙げることができ、核酸分子としてRAB3B遺伝子を標的とするguide RNAを用いる場合には5−フルオロウラシル、ドキソルビシン、ドセタキセル、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、イリノテカン、スニチニブ、又はソラフェニブを好適に挙げることができ、核酸分子としてRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAを用いる場合にはドキソルビシン、ドセタキセル、カルボプラチン、ボリノスタット、スニチニブ又はイリノテカンを好適に挙げることができる。
本発明の癌幹細胞の薬物耐性の低減剤又は癌幹細胞における転移能の抑制剤には、薬学的に許容される添加剤を含有してもよく、前記添加剤としては、生理食塩水、緩衝生理食塩水、細胞培養培地、デキストロース、注射用水、グリセロール、エタノール及びこれらの組合せ、安定剤、可溶化剤及び界面活性剤、緩衝剤及び防腐剤、等張化剤、充填剤、並びに潤滑剤を挙げることができる。
本発明の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤又は癌幹細胞における転移能の抑制剤は、当業者に既知の方法を用いて、癌の治療を必要とする被検体に投与することができ、投与方法としては、静脈内、腫瘍内、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、動脈内、髄内、心臓内、関節内、滑液嚢内、頭蓋内、髄腔内、及びくも膜下(髄液)への注射を挙げることができる。
本発明の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤又は癌幹細胞における転移能の抑制剤の投与量は、癌の種類、位置、重症度、治療を受ける被検体の年齢、体重及び状態等に応じて適宜調整できるが、好ましくは、1回の投与において体重1kgあたりRAB3B遺伝子の発現を抑制する核酸分子として0.01μg-1000μg、好ましくは0.1μg-100μgを挙げることができ、配列番号1に示されるRAB3Bタンパク質に結合する抗体若しくは低分子化合物として0.01μg-100μg、好ましくは0.1μg-10μgを挙げることができる。
投与する幹細胞における薬物耐性の低減剤又は癌幹細胞における転移能の抑制剤は、1日4回、3回、2回又は1回、1日おき、2日おき、3日おき、4日おき、5日おき、週1回、7日おき、8日おき、9日おき、週2回、月1回又は月2回独立して投与する方法を挙げることができる。
本発明の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤は、該薬物と併用して用いることこができる。前記「該薬物と併用して用いる」方法としては、該薬物を用いて処理し、その後本発明の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤を用いる方法や、本発明の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤と該薬物を同時に用いる方法や、本発明の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤を用いて処理し、その後該薬物を用いる方法を挙げることができ、該薬物を用いて処理し、その後本発明の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤を用いる方法を好適に挙げることができる。また、本発明の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤と該薬物と併用した場合には、薬物の治療効果がより向上すると共に、該薬物の投与回数又は投与量を減らすことで、該薬物による副作用を低減させることが可能となる。
上記癌の転移性再発リスクを予測する方法における「生体試料」としては、原発肝腫瘍組織、細胞等の非液性試料や、血液、血清、唾液等の液性試料、原発肝腫瘍組織、原発肝腫瘍組織周辺の非癌部組織を例示することができ、原発肝腫瘍組織又は血液であることを好適に例示することができる。なお、転移生再発は血行性転移でもあることから、上記細胞として血液中の循環癌細胞を用いてもよい。また、上記原発肝腫瘍組織は、被検者より採取された後に、凍結処理が施された凍結組織であっても、病理組織学的処理が施された病理組織であってもよく、かかる病理組織としては、ホルマリン固定組織や、ホルマリン固定パラフィン包埋組織等を例示することができる。
本発明の癌の転移性再発リスクを予測する方法において、RAB3B遺伝子のmRNAの発現量を検出する方法としては、RAB3B遺伝子のmRNAの一部若しくは全部を特異的に検出できる方法であればどのような方法であってもよい。具体的には、(1)被検者から採取された生体試料中のtotal RNAを抽出・精製し、RAB3B遺伝子のmRNAに相補的な塩基配列からなるプローブを用いたノーザンブロッティング法で検出する方法、(2)被検者から採取された生体試料中の細胞におけるtotal RNAを抽出・精製し、逆転写酵素を用いてcDNAを合成した後、かかるcDNAを特異的に増幅するプライマー対を用いた、競合的PCR法、リアルタイムPCR法等の定量PCR法で検出する方法、(3)被検者から採取された生体試料中のtotal RNAを抽出・精製し、逆転写酵素を用いてcDNAを合成した後、ビオチン(biotin)やジゴキシゲニン(digoxigenin)等でcDNAをラベルし、蛍光物質が標識されたビオチンに対する親和性の高いアビジン(avidin)やジゴキシゲニンを認識する抗体等で間接的にcDNAを標識した後、ガラス、シリコン、プラスチック等のハイブリダイゼーションに使用可能な支持体上に固定化された、RAB3B遺伝子のcDNAに相補的な塩基配列からなるプローブを用いたマイクロアレイで検出する方法、(4)被検者から採取された生体試料中のtotal RNAを抽出・精製し、逆転写酵素を用いてcDNAを合成した後、cDNAを制限酵素よって切断し、アダプター配列を結合した後、これらを鋳型DNAとしたPCRを行い、それぞれのPCR産物をキャピラリー電気泳動により展開し、得られたPCR産物由来のピークを検証するHiCEP法等の方法、等を挙げることができる。なお、RAB3B遺伝子のmRNAやcDNAの配列情報は、例えばRAB3B遺伝子名を基に、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/guide/)のデータベースで検索することにより得ることができる。
本発明の癌の転移性再発リスクを予測する方法において、RAB3B遺伝子のmRNAがコードするタンパク質の発現量を検出する方法としては、RAB3B遺伝子のmRNAがコードするタンパク質(以下、「RAB3Bタンパク質」という)の一部若しくは全部を特異的に検出できる方法であればどのような方法であってもよく、具体的には、RAB3Bタンパク質を特異的に認識する抗体を用いた免疫学的測定法や、RAB3Bタンパク質を構成するペプチドを検出する質量分析法を挙げることができる。なお、RAB3Bタンパク質のアミノ酸配列情報は、例えばRAB3Bタンパク質名を基に、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/guide/)のデータベースで検索することにより得ることができる。
本発明の癌の転移性再発リスクを予測する方法において、RAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAの発現量を検出する方法としては、RAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAの一部若しくは全部を特異的に検出できる方法であればどのような方法であってもよい。具体的には、(1)被検者から採取された生体試料中の細胞におけるtotal RNAを抽出・精製し、逆転写酵素を用いてcDNAを合成した後、かかるcDNAを特異的に増幅するプライマー対を用いた、競合的PCR法、リアルタイムPCR法等の定量PCR法で検出する方法、(2)被検者から採取された生体試料中のtotal RNAを抽出・精製し、逆転写酵素を用いてcDNAを合成した後、ビオチン(biotin)やジゴキシゲニン(digoxigenin)等でcDNAをラベルし、蛍光物質が標識されたビオチンに対する親和性の高いアビジン(avidin)やジゴキシゲニンを認識する抗体等で間接的にcDNAを標識した後、ガラス、シリコン、プラスチック等のハイブリダイゼーションに使用可能な支持体上に固定化された、RAB3B遺伝子のcDNAに相補的な塩基配列からなるプローブを用いたマイクロアレイで検出する方法等を挙げることができる。
本発明の癌の転移性再発リスクを予測する方法における癌の転移性再発リスクの予測は、被検者から採取された生体試料中のRAB3B遺伝子のmRNAの発現量、前記mRNAがコードするタンパク質の発現量、又はRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAの発現量を測定することによって行うことができる。肝癌の場合で例えると、以下の方法(I)−(III)を挙げることが出来る。
方法(I)
事前に摘除手術後5年以上再発無し肝癌患者と、摘除手術後1年又は2年以内転移性再発有り肝癌患者それぞれ2検体以上、好ましくは4検体以上、より好ましくは5検体以上、さらに好ましくは10検体以上から採取された生体試料中のRAB3B遺伝子のmRNAの発現量、前記mRNAがコードするタンパク質の発現量、又はRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAの発現量を測定し、かかる発現量の中央値又は平均値等を算出し、前記中央値又は平均値等を基にカットオフ値を定める。次いで被検者から採取された生体試料中のRAB3B遺伝子のmRNAの発現量、前記mRNAがコードするタンパク質の発現量、又はRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAの発現量を測定し、被検者から採取された生体試料中のmRNAの発現量、前記mRNAがコードするタンパク質の発現量、又はRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAの発現量と前記カットオフ値とを比較することで、被検者における肝癌の転移性再発リスクを予測することが可能である。
被検者から採取された生体試料中のmRNAの発現量、前記mRNAがコードするタンパク質の発現量、又はRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAの発現量がカットオフ値以上であれば、被検者の肝癌の転移性再発リスクが高い、或いは被検者における肝癌治療の予後が悪い(予後不良)と予測することができる。一方、被検者から採取された生体試料中のmRNAの発現量、前記mRNAがコードするタンパク質の発現量、又はRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAの発現量がカットオフ値未満であれば、被検者の肝癌の転移性再発リスクが低い、或いは被検者における肝癌治療の予後がよい(予後良好)と予測することができる。
方法(II)
被検者の手術摘出標本を用いて、非癌部RAB3B mRNA発現量にする癌部RAB3B mRNA発現量の比を求め、かかる非癌部RAB3B mRNA発現量に対する癌部RAB3B mRNA発現量の比を用いることで、被検者における肝癌の転移性再発リスクを予測することが可能である。カットオフ値は、好ましくは発現比1.0、より好ましくは1.5、さらに好ましくはReceiver operating characteristic曲線におけるYouden indexによって定めた1.16である。また、事前にHCC患者2検体以上、好ましくは4検体以上、より好ましくは5検体以上、さらに好ましくは10検体以上から採取された生体試料中の癌部及び非癌部それぞれのRAB3B遺伝子のmRNAの発現量、前記mRNAがコードするタンパク質の発現量、又はRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAの発現量を測定し、非癌部RAB3B mRNA発現量にする癌部RAB3B mRNA発現量の比を求め、かかる発現量の比の中央値又は平均値等を算出し、前記中央値又は平均値等を基にカットオフ値を定めても良い。
被検者の非癌部RAB3B mRNA発現量に対する癌部RAB3B mRNA発現量の比がカットオフ値以上であれば、被検者の肝癌の転移性再発リスクが高い、或いは被検者における肝癌治療の予後が悪い(予後不良)と予測することができる。一方、被検者の非癌部RAB3B mRNA発現量に対する癌部RAB3B mRNA発現量の比がカットオフ値未満であれば、被検者の肝癌の転移性再発リスクが低い、或いは被検者における肝癌治療の予後がよい(予後良好)と予測することができる。
方法(III)
被検者から採取された生体試料中のmRNAの発現量、前記mRNAがコードするタンパク質の発現量、又はRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAの発現量、及び、摘除手術後5年以上再発無し肝癌者と、摘除手術後1年又は2年以内転移性再発有り肝癌患者それぞれ2検体以上、好ましくは4検体以上、より好ましくは5検体以上、さらに好ましくは10検体以上から採取された生体試料中のRAB3B遺伝子のmRNAの発現量、前記mRNAがコードするタンパク質の発現量、又はRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAの発現量とを組み合わせた判別式をロジスティック回帰分析等の統計解析により構築して予測する方法を挙げることができる。
なお、上記方法(I)-(III)に示す肝癌の転移性再発リスクの予測方法において、RAB3B遺伝子のmRNA、又はRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAの発現量の代わりに、RAB3B遺伝子のmRNA、前記mRNAがコードするタンパク質の発現量、又はRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAの発現量と相関又は逆相関の関係にあるセルフリーDNA又はセルフリーRNAの発現量を測定してもよい。
本発明の癌の転移性再発リスクを予測する方法に用いるためのキットとしては、
(I)被検者から採取した生体試料中のRAB3B遺伝子のmRNAの発現量、又はRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAの発現量を検出するためのプライマー対若しくはプローブ、又はそれらの標識物;
(II)被検者から採取した生体試料中のmRNAがコードするタンパク質の発現量を検出するための抗体、又はそれらの標識物;
を含んでいれば特に制限されず、上記キットには、必要と目的に応じた緩衝液、pH調製剤、反応容器、癌の転移性再発リスクを予測するための説明書等をさらに備えたものであってもよい。
上記キットにおけるプライマー対としては、RAB3B遺伝子又はRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAから合成されるcDNAの上流及び下流の配列の一部とストリンジェントな条件下でアニーリングしうる相補的なプライマー対であれば、プライマー配列の長さ、かかるcDNAとアニーリングする部位、増幅するcDNAの長さ等は、DNAの増幅効率や特異性を考慮して適宜選択することができる。
上記キットにおけるプローブとしては、RAB3B遺伝子、又はかかる遺伝子から合成したcDNAの一部若しくは全部とストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするプローブであれば、プローブの長さ、ハイブリダイズする部位等は、ハイブリダイゼーションの効率や特異性を考慮して適宜選択することができる。
上記ストリンジェントな条件としては、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、具体的には、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは100%の同一性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより同一性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗浄の条件である65℃、1×SSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)、0.1%SDS、又は0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件を挙げることができる。
上記プローブ又は上記プライマー対は当該技術分野において周知の方法を用いて化学合成等することにより得ることができる。上記プローブ又は上記プライマー対を用いて定量PCR法又はマイクロアレイ法を行うことにより、RAB3B遺伝子のmRNAの発現量又はRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAを測定することが可能となる。
上記キットにおける抗体としては、mRNAがコードするタンパク質に結合する抗体であればよく、mRNAがコードするタンパク質に特異的に結合する抗体であることが好ましく、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体等の抗体であってもよく、また、この中には、F(ab’)2、Fab、diabody、Fv、ScFv、Sc(Fv)2等の抗体の一部からなる抗体断片も含まれる。また、上記キットには、上記mRNAがコードするタンパク質に結合する抗体を検出するための、蛍光物質、酵素等の標識物をコンジュゲートした2次抗体を含めることができる。
上記キットにおけるプライマー対、プローブ、又は抗体における標識物としては、ビオチン、緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein;GFP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(Horse Radish Peroxidase;HRP)、32P等を具体的に挙げることができる。
本発明の癌ペプチドワクチンは、癌ペプチドワクチン療法に用いることができ、かかる癌ペプチドワクチンを癌患者に投与することで、投与した癌患者における癌細胞に対する細胞傷害活性を誘導することが可能となる。より具体的には、(a)AB3Bタンパクのアミノ酸配列全長に対して、T細胞におけるMHC-class IやMHC-class IIに対して親和性の高いペプチド配列をIEDB Analysis Resourceにあるプログラム (http://tools.immuneepitope.org/main/tcell/)等によって予測したRAB3Bペプチド、好ましくは、(b)上記(a)によって予測したRAB3Bペプチドの中からin vitro affinity assayによる親和性の高さによって選択したRAB3Bペプチド、より好ましくは、(c)上記(b)によって選択したRAB3Bペプチドの中からProteasomal cleavage効率やTAP transport親和性も考慮して選択したRAB3Bペプチド、さらに好ましくは、(d)上記(b)又は(c)によって選択したRAB3Bペプチドの中からELISpot assay等によりT細胞の活性化を確認したRAB3Bペプチドを、担癌患者において癌摘出手術の術前あるいは術後、若しくは術前及び術後に免疫賦活化剤と共に投与することで、担癌患者自身の免疫細胞におけるRAB3B発現細胞に対する細胞障害活性を誘導することにより、RAB3B高発現癌細胞を除去することが可能である。
上記癌ペプチドワクチンは、RAB3Bタンパク質をタンパク質分解酵素で処理する方法や、通常の液相法や固相法によるペプチド合成方法によって得ることができる。得られたペプチドワクチンは、必要に応じてイオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、アフィニティークロマトグラフィー等のペプチド化学の分野で汎用されている方法を適宜組み合わせて精製することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの
例示に限定されるものではない。
[実施例1]
(SK-HEP-1細胞株からの浮遊細胞塊の誘導)
本発明者らが以前開示した癌幹細胞誘導法(上記特許文献4)を用い、肝癌由来の肝癌細胞株SK-HEP-1より、浮遊細胞塊(sphere)形成能を有する癌幹細胞を誘導した。具体的には以下に示すとおりである。
まず、低分化型肝細胞癌由来の肝癌細胞株であるSK-HEP-1細胞株の生細胞数をトリパンブルー染色より計測し、1.0×10個/mlとなるように以下に示すNSC(neural survival factor-1)含有無血清培地(以下、「NSF含有無血清培地」ともいう)に懸濁した後、ベントキャップタイプフラスコ(BDファルコン社製)又は超低接着表面フラスコ カントネック ベントキャップ(Corning社製)に播種し、37℃、5%CO2条件下で培養した。培養後7日目には、SK-HEP-1細胞株由来の癌幹細胞様細胞塊のうち浮遊した細胞塊の細胞(以下、「SK-sphere」ともいう)を誘導した。NSC含有無血清培地は、以下の成分A、B、及びCからなるものを作製して用いた。
(1)成分A
DMEM/F12(シグマ−アルドリッチ社製社製) 86mL
1M Hepes(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid) 900μL
Antibiotic/antimycotic liquid(100倍濃度) 900μL
30% グルコース 1.7mL
(2)成分B
DMEM/F12培地(シグマ−アルドリッチ社製) 8.6mL
30%グルコース(シグマ−アルドリッチ社製) 200μL
トランスフェリン(シグマ−アルドリッチ社製)10mg+H2O 200μL
インスリン(シグマ−アルドリッチ社製) 2.5mg+0.1N HCl 100μL(先にインスリンを溶解) +H2O 900μL(溶解後に加える) 計1mL
プトレシン(Alexis Biochemicals社製) 19.33mg
0.3mM 亜セレン酸ナトリウム(シグマ−アルドリッチ社製) 10μL
2mM プロゲステロン(シグマ−アルドリッチ社製) 1μL
(3)成分C
200μg/mL ヒトEGF(シグマ−アルドリッチ社製) 10μL
4μg/mL Basic FGF(和光純薬工業社製) 500μL
1mg/mL ヘパリン(シグマ−アルドリッチ社製) 200μL
10μg/mL LIF(ケミコン社製) 100μL
NSF-1(50倍濃度)(カンブレックス社製) 2mL(最終濃度;2%[w/v])
60mg/mL N−アセチルシステイン(N-acetylcysteine)(シグマ−アルドリッチ社製) 100μL
なお、ここでは約100mLの無血清培地を作製する場合の組成を記載している。また、無血清培地は、成分A、B及びCをそれぞれ個別に作製した後、混合して作製した。
(SK-HEP-1細胞株の培養)
SK-HEP-1細胞株を1.0×10個/mLとなるように10%ウシ胎児血清(FBS:fetal bovine serum)を含むDMEM培地(以下、単に「血清含有DMEM培地」という)に懸濁した後、培養シャーレに播種し、37℃、5% CO2条件下で3日間培養した。血清含有DMEM培地で培養したSK-HEP-1細胞株(以下、「SK-HEP-1」ともいう)は培養シャーレに接着する接着性の癌細胞株である。
(HuH7細胞株の培養)
高分化型肝細胞癌由来の細胞株であるHuH7細胞株を、上記NSC含有無血清培地、又は上記血清含有DMEM培地で培養した。具体的には、HuH7細胞株を1.0×105個/mLとなるように上記NSC含有無血清培地又は上記血清含有DMEM培地に懸濁した後、培養シャーレに播種し、37℃、5%CO2条件下でそれぞれ7日間又は3日間培養した。上記NSC含有無血清培地及び上記血清含有DMEM培地で培養したHuH7細胞株(それぞれ、以下「HuH7/NSC」、「HuH7/DMEM」ともいう)はいずれも培養シャーレに接着し、浮遊細胞塊は形成されなかった。したがって、NSC含有無血清培地を用いたとしても、低分化型肝癌由来のSK-HEP-1細胞株を培養した場合には浮遊細胞塊を形成するのに対し、低分化型肝癌由来のHuH7細胞株を培養した場合には浮遊細胞塊を形成しないことが明らかとなった。なお、本発明者らにより、上記非特許文献4により、NSC含有無血清培地を用いたとしても、低分化型肝癌由来のHLE細胞株を培養した場合には浮遊細胞塊を形成するのに対し、低分化型肝癌由来のHep3B細胞株を培養した場合には浮遊細胞塊を形成しないことも明らかにされている。
[実施例2]
実施例1で得られたSK-sphereが血行性肝転移能を有するかどうかを、以下のモデル実験により調べた。まず、実施例1で得られたSK-sphere及びSK-HEP-1細胞をAccumax (Innovative Cell Technologies社製), Accutase (Innovative Cell Technologies社製), Tripsin-EDTA (Gibco社製)を用いて細胞を解離した後に、血球計算板等を用いて細胞濃度を計算し、PBS若しくはHank's平衡塩溶液を用いて1×103 and 1×104 cells/50 μLの細胞懸濁液を調製した。これら細胞懸濁液50 μL (1×103 or 1×104 cells) を2%イソフルランにて麻酔下の免疫不全マウスNOD-Rag1null IL2r null double mutant mice (NRG mice) の脾臓に27Gの注射針を用いて注入した後に脾臓は摘出した。上記処置8週間後にマウスを開腹し肝腫瘍形成を確認した。結果を図1に示す。図1中、(a)、(b)は1×103 cells注入群、(c)、(d)は1×104 cells注入群である。
その結果、図1に示すように、1×103 cells注入群においてSK-HEP-1と比較してSK-sphereでの有意な肝腫瘍形成率(図中のFrequency)が観察された。また、1×104 cells注入群においてSK-HEP-1と比較してSK-sphereでの肝腫瘍形成率に有意差は見られなかったが、明らかな肝腫瘍形成量の増大を認めた。したがって、実施例1で得られたSK-sphereが血行性肝転移能を有することが確認された。
[実施例3]
(転移性肝内再発に特異的な遺伝子の同定)
実施例1で得られたSK-sphere、SK-HEP-1、HuH7/NSC、HuH7/DMEMそれぞれの肝細胞癌由来細胞、及び摘除手術後5年以上肝内再発無しHCC患者(HCC without IHR(≧5year))若しくは摘除手術後1年以内転移性肝内再発ありHCC患者(HCC with IHR(≦1year))からの摘除標本における癌部組織及び周辺非癌部組織のmRNA発現を解析することで、原発巣除去後の転移性肝内再発に特異的な遺伝子の同定を行った。
(mRNAの抽出)
miRNeasy(QIAGEN社製)を用いて、実施例1で作製したSK-sphere、SK-HEP-1、HuH7/NSC、HuH7/DMEMそれぞれの癌由来細胞株、及び摘除手術後5年以上肝内再発無しHCC患者(HCC without IHR(≧5year))及び摘除手術後1年以内転移性肝内再発有りHCC患者(HCC with IHR(≦1year))からの摘除原発巣標本(それぞれn=5)における癌部組織からtotal RNAを抽出した。
(mRNAの発現解析)
TruSeq Stranded Total RNA with Ribo-Zero Gold LT Sample Prep kit(イルミナ社製)及びNextSeq500(イルミナ社製)を用いて、そのプロトコルに従ってribosomal RNA除去後にRNAシークエンスを行い、26,475遺伝子の網羅的なmRNA発現解析を行った。NextSeq 500より得られたfastqファイルからcutadaptによるデータトリミング、FastQCによるクオリティ確認を経てSTARによるhg38ヒトリファレンスゲノムへのマッピングを行った。26,475遺伝子それぞれにおけるリードカウント数について、R softwareにおけるTCCパッケージを用いて正規化及び群間比較を行った。群間比較に先立って正規化後に何れの分においても発現量が低い(read count = 10)遺伝子は除外した。発現変動遺伝子 (Differentially expressed Genes; DEGs) の検出にはGLM LRT法を用いた。解析にあたっては、(a)SK-sphereとSK-HEP-1、(b)SK-sphereとHuH7/NSC、(c)HCC with IHR(≦1year) vs HCC without IHR(≧5year)におけるmRNAの発現量を比較して、転移性肝内再発有り群及びSK-sphereに共通して発現亢進を示す遺伝子候補を選択した。選択基準は(Fold-change)2.0、q値〈0.05)とした。q値は、FDR多重検定(multiple-testing correction)により算出した。
(MA plot解析)
さらに、上記それぞれの発現量解析の結果を統合してMA plot解析(SK-sphere vs SK-HEP-1及びShort-DFS(Disease-free survival)vs Long-DFS in Tumor)を行い、SK-sphere及び転移性肝内再発有り群に共通して発現亢進を示す遺伝子の探索を行った。肝癌におけるDFSは無再発生存期間を意味し、RFS (relapse-free survival) と同義である。上記遺伝子の探索手法の概略を図2に、MA plot解析の結果を図3及び4に示す。図3及び4中、横軸はSK-sphereとSK-HEP-1での総カウント数 (mRNAの発現量に相当)又はShort-DFSとLong-DFSでの総カウント数のLog2値、縦軸はSK-sphere/SK-HEP-1又はShort-DFS/Long-DFS発現比のLog2値を表す。
図4に示すMA plot解析により、転移性肝内再発有り群及びSK-sphereに共通して発現亢進を示す遺伝子、すなわち、原発巣除去後の術後転移性肝内再発に特異的な遺伝子の候補として図4の矢印のスポットに位置するsmall GTPaseをコードする遺伝子RAB3Bを同定した。
[実施例4]
(mRNA発現レベルの比較及び生存曲線解析)
1.RNA−シークエンス
実施例3におけるmRNAの発現解析によるSK-sphere、SK-HEP-1、HuH7/NSC、HuH7/DMEMそれぞれの癌由来細胞株からのRAB3B mRNA発現をまとめたグラフを図5A(a)に示す。図5A(a)に示すように、SK-sphereはSK-HEP-1と比較して2.3倍もRAB3BのmRNAが発現していることが明らかとなった。一方、HuH7においては、培養条件にかかわらずRAB3BのmRNA発現レベルはSK-HEP-1におけるRAB3BのmRNA発現レベルよりも低かった。
2.定量PCR
定量PCRによりSK-sphere、SK-HEP-1、HuH7/NSC、HuH7/DMEMそれぞれの癌由来細胞株、及び摘除手術後5年以上肝内再発無しHCC患者(HCC without IHR(≧5year))若しくは摘除手術後1年以内転移性肝内再発有りHCC患者(HCC with IHR(≦1year))からの摘除標本(それぞれn=5)における癌部組織からのRAB3B mRNA発現量を解析した。定量PCR解析は、以下の方法で行った。
まず、miRNeasy(QIAGEN社製)を用いてtotalRNAを抽出及び精製し、さらにPrimeScript T reagent Kit with gDNA Eraser(TaKaRa Bio社製)を用いてゲノムDNA除去後にcDNAを合成した。合成したcDNAを鋳型として、LightCycler 480 Probe Master(Roche Diagnostics社製)、Universal ProbeLibrary(Roche Diagnostics社製)、及びLightCycler480 System II(Roche Diagnostics社製)を用いて定量PCRを行った。その後の統計学的解析は、R softwareを用いて行った。P値は、漸近計算した対応のないt−検定(unpaired t-test)により算出した。結果を図5A(b)、(c)、図5Bに示す。図5A(c)は図5A(b)のSK-HEP-1、SK-sphereのウエスタンブロットの結果である。RAB3Bに対する抗体にはAnti-RAB3B Mouse monoclonalantibody (ab55655, abcam社製)を用いた。
図5A(b)、図5Bに示すように、RAB3Bは親株と比較してSK-sphereにてmRNA発現が有意に2.9倍上昇し、かつ臨床検体において5年以上肝内再発無しと比較して術後1年以内転移性肝内再発有りにおいてmRNA発現が有意に9.5倍上昇していた。さらに非癌部と比較して癌部でのmRNA発現が3.7倍高かった。HuH7においても通常培養下と比較して浮遊細胞塊誘導条件下での発現亢進を認めるが、その発現レベルはSK-HEP-1よりも低いことが明らかとなった。また、図5A(c)に示すように、タンパク質レベルでRAB3Bがsphereで発現が亢進していることが確認された。図5A(b)、(c)、図5Bの結果より、RAB3Bの発現が浮遊細胞塊形成や転移性肝内再発に関与することが明らかとなった。また、かかる結果により、RAB3B遺伝子は転移性肝内再発のバイオマーカーとなることも明らかとなった。
3.生存曲線解析
術後無再発生存期間解析として、上記RAB3B mRNA発現に基づいてHCC患者20例の群分けを行い、Kaplan-Meier生存曲線及びLog-Rank検定によるP値を示した。結果を図5Cに示す。群分けのカットオフ値として、非癌部におけるRAB3B mRNA発現量に対する癌部RAB3B mRNA発現量の比が1.0, 1.16, 1.5 , 2.0としたものをそれぞれ図5C(a)-(d)に示す。カットオフ値1.16はReceiver operating characteristic曲線におけるYouden indexを用いて得た。また、Cox回帰解析からのハザード比 (HR) 及びP値を各グラフの左下に記した。
図5Cに示すように、被検者から採取された生体試料中のRAB3B mRNAの発現量を測定し、非癌部RAB3B mRNA発現量にする癌部RAB3B mRNA発現量の比がカットオフ値より高ければ無再発生存期間が短く、カットオフ値より低ければ無再発生存期間が長いことが明らかとなった。したがって、非癌部RAB3B mRNA発現量にする癌部RAB3B mRNA発現量の比を求めることによって、癌の転移性再発を含む術後肝内再発リスクを予測することができることが明らかとなった。
[実施例5]
(siRNAによるノックダウン解析)
SK-HEP-1細胞に対して、Lipofectamine RNAiMAX Transfection Reagent (Thermo Fisher Scientific社製) を用いてreverse transfection法により以下のsiRNAsをトランスフェクションした。siRNAとして、配列番号2(Sense 5’ to 3’: GCUUCAUUCUGAUGUAUGAtt)に示されるセンス配列と配列番号3(Antisense 5’ to 3’: UCAUACAUCAGAAUGAAGCcc)に示されるアンチセンス配列とから形成されるsiRAB3B#1、又は、配列番号4(Sense 5’ to 3’: GCUAUGCUGAUGACACGUUtt))に示されるセンス配列と配列番号5(Antisense 5’ to 3’: AACGUGUCAUCAGCAUAGCgg)に示されるアンチセンス配列とから形成されるsiRAB3B#2の塩基配列、及びコントロールsiRNA (siNegaCont: Silencer(登録商標) Select Negative Control No.1 siRNA; Thermo Fisher Scientific社製)を用いた。Reverse transfection法には以下の条件を適用した。1x105 cells/ 5nM each siRNA/1 μL Lipofectamine RNAiMAX Transfection Reagent/ 1mL Opti-MEM I Reduced Serum培地 (Thermo Fisher Scientific社製)。結果を図6(a)、(b)、図7、図8に示す。
図6(a)、(b)に示すように、RAB3B遺伝子発現を、siRNA(siRAB3B#1,#2)を用いてノックダウンしたところ、RAB3Bが遺伝子レベル (移入3日後) でもタンパク質レベル (移入4日後) でも発現が抑制されていることが確認された。また、図7に示すように、SK-HEP-1株においてRAB3B遺伝子発現を、siRNA(siRAB3B#1,#2)を用いてノックダウンしたところ、浮遊細胞塊誘導条件下では「浮遊細胞塊」から「接着性の細胞」への転換が見られた。さらに、図8に示すように、コントロール(siNegaCont)と比較してsiRNAによるRAB3Bノックダウン株(siRAB3B#1,#2)では接着細胞数/浮遊細胞塊細胞数比が2倍以上上昇していた。このことから、RAB3B遺伝子の発現を抑制することで、癌幹細胞における接着性(adherent)誘導、換言すれば、幹細胞性(stemness)解除を誘導することができることが明らかとなった。なお、細胞における接着性が誘導されれば、血中で浮遊状態での生存がしづらく、転移能が低下すると考えられている。
[実施例6]
(抗癌剤に対する感受性解析−1)
上記実施例5の結果を踏まえて、SK-HEP-1細胞株をNSC含有無血清培地又は血清含有DMEM培地で培養し、RAB3B遺伝子の発現をsiRNAによりノックダウンした場合の抗癌剤感受性を解析した。抗癌剤としては、ドキソルビシン(Dxorubicin)、ドセタキセル(Docetael)、カルボプラチン(Carboplatine)、ボリノスタット(ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤(Suberoylanilide hydroxamic acid:SAHA))、スニチニブ(Sunitinib)、イリノテカン(Irinotecan)を用いた。抗癌剤感受性はMTS(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム)アッセイ(上記非特許文献1)と同様の方法により評価した。簡潔に述べると、実施例5に示す条件にてReverse transfectionを行い、96-well plateに50μL (5,000 cells)/well播種し、翌日にDMEM培地又はNSC培地と交換した。培地交換後1日又は2日後に抗癌剤含有培地を添加し、さらに24時間後にMTS試薬を添加し、その2時間後に吸光度を測定した。細胞の培養は37℃、5%CO2条件下で行った。試薬製造者の指示に従い、MTS染料の吸収を測定することにより、細胞の増殖を評価した。吸収は、Wallac 1420 ARVOsx Multilabel Counter (Perkin-Elmer社製)を用いて行った。実験は2回の独立系で、夫々、4穴複製からの値を用いた。
抗癌剤未添加、ドキソルビシン(Dxorubicin)、ドセタキセル(Docetael)、カルボプラチン(Carboplatine)、ボリノスタット(SAHA)、スニチニブ(Sunitinib)、イリノテカン(Irinotecan)添加時の結果をそれぞれ図9A-Gに示す。
図9Aに示すように、RAB3B遺伝子の発現をノックダウンした場合において抗癌剤未添加時には有意な細胞増殖への影響は示さなかった。すなわち、siRNAによるRAB3B遺伝子の発現を抑えることだけでは、癌幹細胞の生存を抑制する効果は見られないことが確認された。一方、図9B-G示すように、RAB3B遺伝子の発現をノックダウンすると共に各抗癌剤を投与することによって、通常培養条件下でも抗癌剤ドキソルビシン(Dxorubicin)、ドセタキセル(Docetael)、カルボプラチン(Carboplatine)、ボリノスタット(SAHA)、スニチニブ(Sunitinib)に対する感受性が増加しており、浮遊細胞塊誘導条件下においても癌幹細胞様細胞として獲得した抗癌剤耐性の減弱が見られた。抗癌剤耐性に対する変化はドキソルビシンに対する効果が最も著明であった。したがって、抗癌剤を投与する際に、RAB3B遺伝子の発現を抑制する物質をさらに投与することで、癌幹細胞における薬物耐性を低減すること、換言すれば、癌幹細胞における抗癌剤感受性を増加させることが明らかとなった。
[実施例7]
(SK-sphere特異的microRNAの探索)
microRNAは配列依存的に複数の遺伝子発現を制御するnon-coding RNAである。近年、microRNAは細胞内だけでなく、エクソソーム小胞に内包され細胞外に分泌されることも知られるようになった。すなわち、microRNAは細胞内における一つの遺伝子発現制御だけでなく、他の細胞における遺伝子発現をも制御しうる。まず、SK-HEP-1とSK-sphereにおける培地中のRNA濃度を調べたところ、SK-sphereはSK-HEP-1と比較してRNA濃度が上昇していた(図10(a))。そのため、CSLCにおいてはmicroRNAによって癌微小環境や周辺細胞の制御が考えられた。
そこで、SK-sphere特異的microRNAの探索を行った。microRNAの発現解析は3D-Gene miRNA Labeling kit及び3D-Gene Human miRNA Oligo Chip(東レ社製)を用いて行った。サンプルとしてSK-HEP-1、SK-sphere及びSK-sphereの培養上清を用い、ハイブリダイゼーションシグナルの相対蛍光強度をそれぞれの中央値を指標として標準化した後に、それぞれにおけるmicroRNAの発現量を比較し、Log2 Ratio及びFisher比を求めた。その結果、SK-sphere特異的microRNAとしてhas-miR-15a-5p (MIMAT0000068)を同定した。SK-HEP-1、SK-sphere及びSK-sphereの培養上清それぞれの発現量の結果を図10(b)に示す。
図10(b)において、has-miR-15a-5pはSK-HEP-1と比較してSK-sphereにて発現が低下し、SK-sphere培養上清における発現割合も低いmicroRNAであることが明らかとなった。興味深いことに、has-miR-15a-5pはRAN3B mRNAを標的とするということは配列上からは予測されていないが、図10(c)に示すように、has-miR-15a-5のmimic RNA(mirVana miRNA mimic, Thermo Fisher Scientific社製, mature miRNA Sequence; UAGCAGCACAUAAUGGUUUGUG(配列番号7), stem loop sequence; CCUUGGAGUAAAGUAGCAGC ACAUAAUGGUUUGUGGAUUU UGAAAAGGUGCAGGCCAUAU UGUGCUGCCUCAAAAAUACA AGG(配列番号8)の移入によってRAB3BのmRNA発現抑制が観察された。has-miR-15a-5のmimic RNAの移入は以下の条件下でのReverse transfection法により行った;1x105 cells/ 10nM each RNA/ 1μL Lipofectamine RNAiMAX Transfection Reagent/ 1mL Opti-MEM I Reduced Serum培地 (Thermo Fisher Scientific社製)。コントロールRNA (cont-RNA) としてmirVana miRNA Mimic, Negative Control No. 1 (Thermo Fisher Scientific社製)を同濃度用いた。
[実施例8]
(抗癌剤に対する感受性解析−2)
SK-HEP-1細胞株をNSC含有無血清培地又は血清含有DMEM培地で、has-miR-15a-5のmimic RNA又はコントロールRNAを加えて培養し、実施例6と同様の方法で抗癌剤感受性を解析した。抗癌剤としては、ドキソルビシン(Dxorubicin)、ドセタキセル(Docetael)、カルボプラチン(Carboplatine)、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤(Suberoylanilide hydroxamic acid:SAHA)、スニチニブ(Sunitinib)、イリノテカン(Irinotecan)を用いた。結果を図11A-Fに示す。
図11A-Fに示すように、has-miR-15a-5のmimic RNAの移入によって抗癌剤ドキソルビシン(Dxorubicin)、ドセタキセル(Docetael)、カルボプラチン(Carboplatine)、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤(Suberoylanilide hydroxamic acid:SAHA)、スニチニブ(Sunitinib)、イリノテカン(Irinotecan)に対する感受性が増加することが明らかとなった。
[実施例9]
(CRISPR/Cas9によるノックアウト解析)
CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集技術を用いて、SK-HEP-1株を親株としてmono-allelic RAB3B knock-out株を樹立した。ゲノム編集にはCas9 mRNA及び配列番号9に示す(-)鎖配列(GTTTCACCCGCTTCTCGTGA)及び続くCGGをそれぞれ標的配列及びPAM配列とし、配列番号10に示す配列 (GUUUCACCCGCUUCUCGUGA guuuuagagcuagaaauagcaaguuaaaauaaggcuaguccguuaucaacuugaaaaaguggcaccgagucggugcuuuu) をguide RNAとして合成し、guide RNAをlipofectamine RNAi Max(Thermo Fisher Scientific社製)によりSK-HEP-1細胞株に移入した後にsingle cell cloningを行った。得られたcloneからgenome DNAを抽出し、サンガーシーケンスにより変異導入を確認した。上記guide RNAとCas9 mRNAを用いてゲノム編集を行うことで、図12に示されるように、SK-HEP-1細胞株におけるgenome DNA中のPAM配列に隣接する標的配列に二本鎖切断が起こり、結果として配列番号1に示されるRAB3Bのアミノ酸配列が、配列番号11に示されるアミノ酸配列へと変異したクローンが得られた。
HuH-7細胞株、上記で樹立したmono-allelic RAB3B knock-out細胞株(RAB3B-KO8細胞株)及びSK-HEP-1細胞株それぞれを血清含有DMEM培地(normal)又はNSC含有無血清培地(NSC)で培養し、RAB3B発現を確認した結果を図13に示す。図13(a)は上記それぞれの細胞株においてRNA-seq解析からのRAB3B mRNA発現を示す。RAB3B-KO8細胞株ではsphere誘導のNSC培地においてもSK-HEP-1よりも低い発現レベルであった。また、図13(b)は上記それぞれの細胞株においてウエスタンブロット解析からのRAB3Bタンパク発現及び内部標準としてvalosin containing protein (VCP) 発現を示す。normal培地とsphere誘導のNSC培地の両方において、SK-HEP-1と比較してRAB3B-KO8細胞株におけるRAB3B発現低下を認めた。
次に、SK-HEP-1細胞株及び上記で樹立したmono-allelic RAB3B knock-out (RAB3B-KO8)株の形態を調べた。結果を図14に示す。図14(a)はSK-HEP-1細胞株を血清含有DMEM培地(normal)で培養した場合、図14(b)はRAB3B-KO8細胞株を血清含有DMEM培地(normal)で培養した場合、図14(c)はSK-HEP-1細胞株をsphere誘導のNSC培地(NSC)で培養した場合、図14(d)はRAB3B-KO8細胞株をsphere誘導のNSC培地(NSC)で培養した場合である。図14(d)に示すように、RAB3B-KO8細胞株ではsphere形成の著しい抑制が観察された。
さらに、レスキュー実験として、RAB3B-KO8細胞株にpcDNA3.1(-) vector 、又はpRAB3B(pcDNA3.1(-) vectorにRAB3Bをクローニングしたもの)をlipofectamine 3000を用いて移入した後に、抗生物質G418により薬剤選択を行った。得られた、pcDNA3.1(-) vectorのみのmock移入株とpRAB3B移入株をそれぞれsphere誘導のNSC培地にて7-24日間のsphere誘導処置を行い、顕微鏡下にて観察した結果を図15に示す。図15に示すように、pRAB3B移入株におけるsphere形成能の回復が見られた。上記結果から、RAB3Bがsphere形成能に関与していることが確認された。
(癌幹細胞における転移性)
免疫不全マウスNOD-Rag1null IL2r null double mutant mice (NRG mice)へ細胞を脾臓注入することによって、肝腫瘍形成頻度を調べた。HBSSに懸濁した1000個のSK-HEP-1細胞株又はRAB3B-KO8細胞株をマウス脾臓に注射し、脾臓を摘出したうえで閉腹し、8週後に肝腫瘍の有無を確認した。培地は血清含有DMEM培地(normal)又はsphere誘導のNSC培地(NSC)を用いた。結果を図16に示す。図中、yesは肝腫瘍有りのマウスの数、noは肝腫瘍無しのマウスの数である。また、上段がSK-HEP-1細胞株を注射した場合、下段がRAB3B-KO8細胞株を注射した場合である。図16に示すように、SK-HEP-1細胞株ではsphere誘導のNSC培地にて7日間処置すると肝腫瘍形成頻度が向上していたが、RAB3B-KO8細胞株ではsphere誘導のNSC培地にて7日間処置しても肝腫瘍形成頻度の向上は認められなかった。すなわち、RAB3B-KO8細胞株は癌幹細胞における転移性が抑制されていることが明らかとなった。
[実施例10]
(抗癌剤に対する感受性解析−3)
実施例6同様に、RAB3B-KO8細胞株を用いてMTSアッセイにより抗癌剤に対する感受性解析を行った。SK-HEP-1細胞株又はRAB3B-KO8細胞株を、各抗癌剤に24時間暴露後の生存率を調べた結果を図17に示す。培地は血清含有DMEM培地(normal)又はsphere誘導のNSC培地(NSC)を用いた。図17に示すように、NSC培地においてSK-HEP-1細胞株と比較してRAB3B-KO8細胞株での抗癌剤耐性の有意な減弱が認められた。したがって、RAB3B遺伝子の発現を抑制することで、癌幹細胞における抗癌剤耐性を低減することが可能であることが確認された。
[実施例11]
(細胞周期における影響)
SK-HEP-1細胞株又はRAB3B-KO8細胞株を70%エタノールにより固定した後に、RNase処理及びPIによるDNA標識を行い、フローサイトメーターを用いた、各細胞周期における細胞集団の割合を求めた。結果を図18に示す。図18に示すように、SK-HEP-1株ではNSC培地でのsphereを誘導によってG0/G1期停止が見られたのに対して、RAB3B-KO8細胞株ではnormal培地での培養によるS期の増加とNSC培地でのsphereを誘導によるG2/M期停止が観察された。したがって、癌幹細胞においてRAB3B遺伝子の発現を抑制することで、G0/G1期停止が解除されることが確認された。
[実施例12]
(ABCG2タンパク質の発現)
RAB3Bを標的とする薬物耐性の原理を検討する中で、多剤耐性を担う薬剤排出ポンプとして働くABCG2タンパクの発現に着目し、かかるABCG2タンパクの発現をフローサイトメトリーにより解析した結果を図19に示す。図19に示すように、RAB3B-KO8細胞株ではABCG2陽性細胞割合が減少していた。したがって、癌幹細胞においてRAB3B遺伝子の発現を抑制することで、癌細胞における薬剤排出機能が低減し、その結果薬物耐性が低減していることが明らかとなった。

Claims (16)

  1. 以下の(I)又は(II)のいずれかを有効成分とする、癌幹細胞における薬物耐性の低減剤。
    (I)RAB3B遺伝子の発現を抑制する核酸分子;
    (II)配列番号1に示されるRAB3Bタンパク質に結合する抗体若しくは低分子化合物;
  2. 癌幹細胞が、肝癌幹細胞であることを特徴とする請求項1記載の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤。
  3. 核酸分子がRAB3B遺伝子を標的とする二本鎖siRNA、microRNA、shRNA、アンチセンス核酸、及びリボザイムからなる群から選択される少なくとも1種の核酸分子であることを特徴とする請求項1又は2記載の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤。
  4. 核酸分子がRAB3B遺伝子を標的とする二本鎖siRNAであることを特徴とする請求項3記載の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤。
  5. 薬物が、抗腫瘍性抗生物質、微小管阻害剤、プラチナ製剤、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、又はキナーゼ阻害剤であることを特徴とする請求項4記載の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤。
  6. 薬物が、ドキソルビシン、ドセタキセル、カルボプラチン、ボリノスタット、又はスニチニブであることを特徴とする請求項5記載の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤。
  7. 核酸分子がRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAであって、該microRNAがhas-miR-15a-5pであることを特徴とする請求項3記載の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤。
  8. 薬物が、抗腫瘍性抗生物質、微小管阻害剤、プラチナ製剤、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、キナーゼ阻害剤、又はトポイソメラーゼ阻害剤であることを特徴とする請求項7記載の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤。
  9. 薬物が、ドキソルビシン、ドセタキセル、カルボプラチン、ボリノスタット、スニチニブ又はイリノテカンであることを特徴とする請求項8記載の癌幹細胞における薬物耐性の低減剤。
  10. 以下の(I)又は(II)のいずれかを有効成分とする、癌幹細胞における転移能の抑制剤。
    (I)RAB3B遺伝子の発現を抑制する核酸分子;
    (II)配列番号1に示されるRAB3Bタンパク質に結合する抗体若しくは低分子化合物;
  11. 癌幹細胞が、肝癌幹細胞であることを特徴とする請求項10記載の癌幹細胞における転移能の抑制剤。
  12. 被検者から採取した生体試料中のRAB3B遺伝子のmRNAの発現量、前記mRNAがコードするタンパク質の発現量、又はRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAの発現量を指標として、癌の転移性再発リスクを予測する方法。
  13. 癌が肝癌であることを特徴とする請求項12記載の癌の転移性再発リスクを予測する方法。
  14. 生体試料が、原発肝腫瘍組織又は血液であることを特徴とする請求項12又は13記載の方法。
  15. 請求項12〜14のいずれか記載の方法に用いるためのキットであって、以下の(I)又は(II)を含むキット。
    (I)被検者から採取した生体試料中のRAB3B遺伝子のmRNAの発現量、又はRAB3B遺伝子を標的とするmicroRNAの発現量を検出するためのプライマー対若しくはプローブ、又はそれらの標識物;
    (II)被検者から採取した生体試料中のmRNAがコードするタンパク質の発現量を検出するための抗体、又はそれらの標識物;
  16. 配列番号1に示されるRAB3Bタンパク質のアミノ酸配列のうち、連続する5-50個のアミノ酸からなるペプチドを有効成分とする癌ペプチドワクチン。
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