JP5098013B2 - ヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍の細胞株の樹立方法、ヒト悪性卵巣胚腫瘍細胞株、及びその利用 - Google Patents
ヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍の細胞株の樹立方法、ヒト悪性卵巣胚腫瘍細胞株、及びその利用 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5098013B2 JP5098013B2 JP2006337852A JP2006337852A JP5098013B2 JP 5098013 B2 JP5098013 B2 JP 5098013B2 JP 2006337852 A JP2006337852 A JP 2006337852A JP 2006337852 A JP2006337852 A JP 2006337852A JP 5098013 B2 JP5098013 B2 JP 5098013B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- human
- cells
- cell
- cell line
- yolk sac
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Landscapes
- Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
- Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
- Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
Description
一方、卵黄嚢腫瘍に限らず、悪性卵巣胚細胞腫瘍の中で最も症例が多い未分化胚細胞腫についても、その細胞株の樹立に成功したという報告はない。このように、悪性卵巣胚細胞腫瘍に由来する細胞株の樹立は非常に困難と考えられている。
そこで本発明は、悪性卵巣胚細胞腫瘍由来の細胞株の樹立方法、悪性卵巣胚細胞腫瘍由来の細胞株、及び悪性卵巣胚細胞腫瘍由来の細胞株を利用したスクリーニング方法等を提供することを課題とする。悪性卵巣胚細胞腫瘍に由来する細胞株が得られれば、それを用いた基礎的及び応用的研究が可能となり、発症機構の解明や適切な治療法の開発への途が開かれる。
本発明はまた、悪性卵巣胚腫瘍の一つである卵黄嚢腫瘍に対する治療法の確立に向けて、標的となる分子(標的分子)及びその用途を提供することを課題とする。
以上の点に鑑みて本発明者らは、生体から分離された卵黄嚢腫瘍細胞を初代培養する際の培地の選択が重要であると考え、様々な培地を用いた培養実験を実施した。その結果、培養の初期段階に特定の成分を培地中に添加することによって卵黄嚢腫瘍細胞が良好に生存及び分裂することが判明し、株化に成功した。また、通常より低濃度の血清存在下で培養の初期段階を行うことが細胞株の樹立に対して有効に作用すると考えられた。
一方、トリプシン処理等で細胞をばらした後に培養するのではなく、生体より分離された組織片(卵黄嚢腫瘍細胞)の状態のままで培養に供し、組織片から目的の細胞を遊走させてコロニーを形成させることが細胞株の樹立に重要であることが判明した。さらに、培養の初期段階においては線維芽細胞が極めて優位であり目的の細胞の増殖は認められなかったものが、特定の成分を含有する培地で長期に亘って培養を継続することによって次第に線維芽細胞の数と目的の細胞の数とが逆転し、実質的に目的の細胞のみからなるコロニーを形成させることに成功した。このことから、細胞株の樹立において、本発明者らが見出した特定の成分を含有する培地を用いた培養を長期間に亘って継続することが重要であることが判明した。さらに、形成されたコロニーから細胞を採取した後の継代培養においても、しばらくの間、培養初期に使用した培地と同等の培地を使用することによって、良好な細胞増殖が得られた。つまり、コロニーから細胞を採取した後の継代培養の初期段階においても、本発明者らが見出した特定の成分を含有する培地を使用することが、細胞株の樹立に対して有効に作用することが明らかとなった。
一方、樹立された細胞株(NOY1)の特性を検証したところ、α−フェトプロテイン(AFP)及びサイトケラチンの発現が認められ、卵黄能腫瘍細胞に由来する細胞であることが確認された。
また、卵黄嚢腫瘍細胞と同じ悪性卵黄腫瘍に分類され、その由来及び特徴において卵黄嚢腫瘍細胞に近似する未分化胚性細胞種の細胞株樹立にも、本発明者らが見出した新規な培養条件が有効であると予想された。
さらに検討を進め、樹立された細胞株(NOY1)を元に抗癌剤耐性株を樹立することに成功した。特筆すべきことに、耐性株の一つはシスプラチンに対して約10倍の耐性を獲得していた。
一方、樹立された細胞株(NOY1)では、AFPの転写に関与する転写因子Nkx2.5が高発現していることを確認するとともに、Nkx2.5の発現抑制によってNOY1の細胞増殖能が有意に抑制されることが判明した。
本発明は主として以上の知見又は成果に基づくものであり、以下の樹立方法等を提供する。
[1] 血清、インスリン及び上皮細胞増殖因子を含有する培地中でヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍細胞を培養することを特徴とする、ヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍の細胞株の樹立方法。
[2] 前記培地中の前記血清の含有量が約5%(v/v)である、[1]に記載の樹立方法。
[3] 以下のステップ(1)〜(3)を含む、[1]又は[2]に記載の樹立方法:
(1)血清、インスリン及び上皮細胞増殖因子を含有する培地中でヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍細胞を含む組織片を培養するステップ;
(2)血清、インスリン及び上皮細胞増殖因子を含有する培地中で、前記組織片から遊走した細胞を培養するステップ;
(3)増殖した細胞を継代培養するステップ。
[4] 混在する線維芽細胞の数が減少し、ヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍細胞が主体になるまでステップ(2)の培養を継続することを特徴とする、[3]に記載の樹立方法。
[5] 実質的にヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍細胞のみからなるコロニーが形成されるまでステップ(2)の培養を継続し、形成されたコロニーより細胞を採取し、採取した細胞をステップ(3)の継代培養に供することを特徴とする、[3]に記載の樹立方法。
[6] ステップ(3)において継代培養の最初の数代が血清、インスリン及び上皮細胞増殖因子(EGF)を含有する培地中で行われ、その後の継代培養がインスリン及び上皮細胞増殖因子(EGF)を含有しない培地中で行われることを特徴とする、[3]〜[5]のいずれかに記載の樹立方法。
[7] ステップ(3)において継代培養の第3代〜第5代までが血清、インスリン及び上皮細胞増殖因子(EGF)を含有する培地中で行われることを特徴とする、[6]に記載の樹立方法。
[8] 前記ヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍細胞がヒト卵黄嚢腫瘍細胞又はヒト未分化胚細胞腫細胞であることを特徴とする、[1]〜[7]のいずれかに記載の樹立方法。
[9] 前記ヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍細胞がヒト卵黄嚢腫瘍細胞であることを特徴とする、[1]〜[7]のいずれかに記載の樹立方法。
[10] [9]に記載の方法で樹立され、α−フェトプロテイン及びサイトケラチン陽性のヒト卵黄嚢腫瘍細胞株。
[11] 受託番号がFERM P−21055である、[10]に記載のヒト卵黄嚢腫瘍細胞株。
[12] [10]又は[11]に記載のヒト卵黄嚢腫瘍細胞株を抗癌剤に曝露することによって、該抗癌剤への耐性を獲得した耐性ヒト細胞。
[13] [10]又は[11]に記載のヒト卵黄嚢腫瘍細胞株をシスプラチン又はカルボプラチンに曝露することによって、シスプラチン又はカルボプラチンへの耐性を獲得した耐性ヒト細胞。
[14] 培養液中のシスプラチン濃度が3μ/mlで維持可能である、[13]に記載の耐性ヒト細胞。
[15] シスプラチンに対する耐性が、[11]に記載のヒト卵黄嚢腫瘍細胞株の約10倍である、[13]に記載の耐性ヒト細胞。
[16] 被検物質の存在下、[10]若しくは[11]に記載のヒト卵黄嚢腫瘍細胞株、又は[12]〜[15]のいずれかに記載の耐性ヒト細胞を培養し、該細胞の生存率を測定・評価することを特徴とする、ヒト卵黄嚢腫瘍に対して有効な物質のスクリーニング方法。
[17] 転写因子Nkx2.5を標的分子とすることを特徴とする、ヒト卵黄嚢腫瘍に対して有効な化合物のスクリーニング方法。
本発明の細胞株の樹立方法では、採取されたヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍細胞を培養する際、少なくとも初期段階において特定の培地が使用される。
ヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍細胞は、悪性卵巣胚細胞腫瘍に罹患した患者の腫瘍組織より生検で採取することができる。悪性卵巣胚細胞腫瘍は、未分化胚細胞腫、卵黄嚢腫瘍、未熟奇形種、及びその他の腫瘍に分類される。本発明の細胞株の樹立方法はこの中でも特に未分化胚細胞腫又は卵黄嚢腫瘍を対象とする。これら二つはその由来及び特徴において類似することから、片方に対して有効な細胞株樹立法は、当然に他方に対しても有効と考えられる。
EGFとしては、組換えヒトEGF(hEGF)(CHEMICON社、湧永製薬株式会社、R&D Systems社等)、ヒトリコンビナントEGF(Pepro Tech EC社)等を使用することができる。培地へのEGFの添加濃度は、例えば0.2μg/l〜20μg/l、好ましくは1μg/l〜10μg/l、更に好ましくは約4μg/lとする。
1.ステップ(1)
このステップでは、血清、インスリン及び上皮細胞増殖因子(EGF)を含有する培地中でヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍細胞を含む組織片を培養する。ヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍細胞を含む組織片としては、悪性卵巣胚細胞腫瘍に罹患した患者の腫瘍組織の一部から採取されたものを使用することができる。本発明の特徴の一つは、採取された腫瘍組織片を直接、培養に供することである。即ち、採取された腫瘍組織片にトリプシン処理等を施して細胞をばらした後に培養するのではなく、組織片のままの状態で培養を開始する。これによって、目的のヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍細胞がトリプシン処理等で損傷するのを防止できる。尚、ここでの「直接、初代培養に供する」とは、トリプシン処理のように目的のヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍細胞に損傷を与えるような操作を経ることなく培養が開始されることを意味する。従って、組織片の洗浄や付着物の切除など、組織片を培養する際に通常行われる操作を培養前に行うことを妨げない。
組織片の培養を開始すると、組織片より細胞が遊走する現象が観察される。組織片からの十分な細胞の遊走が認められた後は組織片を取り除いてもよい。通常、培養開始から5日〜1週間程度経過した後に組織片の除去を行う。
ステップ(1)に続くステップ(2)では、血清、インスリン及び上皮細胞増殖因子(EGF)を含有する培地中で、組織片より遊走した細胞を培養する。通常はステップ(1)で使用した培地と同一の培地を使用して当該ステップ(2)の培養を行う。但し、ステップ(1)で使用した培地と異なる培地を使用することを妨げるものではない。つまり、血清、インスリン及び上皮細胞増殖因子(EGF)を含有するという条件を満たす限り、任意の培地を用いて当該ステップ(2)を行うことができる。
このステップでは、ステップ(2)で増殖した細胞を継代培養する。継代培養は常法で行うことができる。即ち、培養容器内でサブコンフルエント又はコンフルエントになった時点で細胞を回収し、回収された細胞の一部を別の培養容器に播種して培養を継続する。細胞の回収はトリプシンやセルスクレイパー等を用いて行われる。継代培養を繰り返し、長期間に亘って細胞を維持する。例えば1週〜2週に1度の頻度で継代する。十分な期間(例えば継代培養開始から2ヶ月以上)経過後、均一な細胞集団からなり、且つ十分な増殖能を維持していることを確認する。
尚、継代培養の全過程を通して血清、インスリン及び上皮細胞増殖因子(EGF)を含有する培地を使用することにしてもよい。
本発明の他の局面は、本発明の方法で樹立されたヒト卵黄嚢腫瘍細胞株に関する。本発明のヒト卵黄嚢腫瘍細胞株はその特性の一つとしてα−フェトプロテイン(AFP)及びサイトケラチン陽性を示す。AFP陽性であることは、例えば、細胞の培養上清から回収したタンパク質を試料として用い、検出試薬として抗ヒトAFP抗体を用いたウエスタンブロット法や、抗ヒトAFP抗体を用いた細胞免疫染色法で確認することができる。他方、サイトケラチン陽性であることは、例えば、抗ヒトサイトケラチン抗体を用いた細胞免疫染色法で確認することができる。
本発明の樹立方法で得られたヒト卵黄嚢腫瘍細胞株の一つ(NOY1)は以下の通り所定の寄託機関に寄託されている。
寄託機関:独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番1号 中央第6)
寄託日(受領日):平成18年(2006年)10月6日
受託番号:FERM P−21055
曝露量は任意に設定可能である。例えば、1回の曝露で少なくとも一部(例えば10%〜30%)の細胞が生存状態を維持できる量とする。通常、常に曝露された状態で維持する。
抗癌剤を曝露後、生細胞を回収する。通常、以上の曝露及び回収の操作を繰り返すことによって、特定の抗癌剤に耐性を示す変異株(耐性ヒト細胞)が得られる。
抗癌剤としてシスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、パクリタキセル、ブレオマイシン(塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシンを含む)等を使用することができる。これらを任意に組み合わせて使用してもよい。
後述の実施例に示すように、本発明者らは以上の方法によってシスプラチン耐性株(IC50=12.5μg/ml、約5倍耐性)とカルボプラチン耐性株(IC50=18μg/ml、約5倍耐性)の樹立に成功している。更なる検討の末、培養液中のシスプラチン濃度が3μg/mlで維持可能なシスプラチン耐性株(NOY1CR3.0)の樹立にも成功した。細胞株NOY1に比較し、細胞株NOY1CR3.0はシスプラチンに関して約10倍耐性である。ここでの耐性の評価はシスプラチンのIC50に基づく。
本発明の更なる局面は、上記ヒト卵黄嚢腫瘍細胞株又は上記耐性ヒト細胞を利用したスクリーニング方法に関する。ヒト卵黄嚢腫瘍細胞株を利用したスクリーニング方法で選抜された化合物は、ヒト卵黄嚢腫瘍に対する治療又は予防(以下これらをまとめて「治療等」という)に有効であると期待される。即ち、選抜された化合物はヒト卵黄嚢腫瘍に対する医薬の有効成分の有力な候補(リード化合物)となる。選抜された化合物が十分な薬効を有する場合にはそのまま薬剤の有効成分として使用することができる。一方で十分な薬効を有しない場合には化学的修飾などの改変を施してその薬効を高めた上で薬剤の有効成分としての使用に供することができる。勿論、十分な薬効を有する場合であっても、更なる薬効の増大を目的として同様の改変を施してもよい。
上記耐性ヒト細胞を利用したスクリーニング方法で選抜された化合物についても、ヒト卵黄嚢腫瘍に対する医薬の有効成分の有力な候補(リード化合物)とみなすことができる。この場合に選抜された物質は耐性ヒト細胞に対する活性を有することから、薬剤耐性を獲得するに至った症例に対して特に有効なリード化合物であり、その価値は高い。
特定の抗癌剤に対して耐性を獲得した変異株(耐性ヒト細胞)を用いたスクリーニング方法において同様に選抜された被験物質については、当該抗癌剤が無効となった症例に対して有効であると判断することができる。
本発明者らの検討によって、転写因子Nkx2.5がヒト卵黄嚢腫瘍の治療における標的分子として有望であることが判明した。当該知見に基づき、本発明は更なる局面として、転写因子Nkx2.5の発現量又は作用量を低下させることを特徴とする、ヒト卵黄嚢腫瘍の治療法を提供する。例えば、アンチセンス法やRNA干渉によって、或いはリボザイムの使用によってNkx2.5の発現を阻害(抑制)し、これによってNkx2.5の発現量又は作用量を低下させることができる。
アンチセンス核酸としてDNA分子を使用する場合、Nkx2.5をコードするmRNAの翻訳開始部位(例えば-10〜+10の領域)を含む領域に由来するオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。
アンチセンス核酸は例えば市販の自動DNA合成装置(例えばアプライド・バイオシステムズ社等)を使用するなど、常法で合成することができる。核酸修飾体や誘導体の作製には例えば、Stein et al.(1988), Nucl. Acids Res. 16:3209やSarin et al., (1988), Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:7448-7451等を参照することができる。
アンチセンス核酸の発現は、哺乳動物細胞(好ましくはヒト細胞)で機能することが知られている任意のプロモーター(誘導性プロモーター又は構成的プロモーター)によって行うことができる。例えば、SV40初期プロモーター領域 (Bernoist and Chambon, 1981, Nature 290:304-310)、ラウス肉腫ウィルスの3'末端領域由来のプロモーター(Yamamoto et al., 1980, Cell 22:787-797)、疱疹チミジン・キナーゼ・プロモーター(Wagner et al., 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1441-1445)等のプロモーターを使用することができる。
尚、RNAiは様々な細胞種(例えば、HeLa細胞、NIH/3T3細胞、COS 細胞、293細胞等)において遺伝子発現を減少させる効果的な手段であることが確認されている。また、通常は、アンチセンス法よりも効果的に発現阻害を行える。
アンチセンス法の場合と同様に、例えば安定性やターゲット能を向上させることを目的として、修飾されたオリゴヌクレオチドを用いてリボザイムを構築してもよい。効果的な量のリボザイムを標的細胞内で生成させるために、例えば、強力なプロモーター(例えばpol IIやpol III)の制御下に、当該リボザイムをコードするDNAを配置した核酸コンストラクトを使用することが好ましい。
卵黄嚢腫瘍の治療においては、卵黄嚢腫瘍細胞を保有する対象(患者)に上記の薬剤が投与される。薬剤はその形態に応じて経口投与又は非経口投与(静脈内、動脈内、皮下、筋肉、腹腔内注射、標的細胞への直接導入など)によって対象(患者)に適用され得る。
薬剤の投与量は症状、患者の年齢、性別、及び体重などによって異なるが、当業者であれば適宜適当な投与量を設定することが可能である。例えば、成人(体重約60kg)を対象として一日当たりの有効成分量が約0.001mg〜約100mgとなるよう投与量を設定することができる。投与スケジュールとしては例えば一日一回〜数回、二日に一回、或いは三日に一回などを採用できる。投与スケジュールの設定においては、患者の病状や薬剤の効果持続時間などを考慮することができる。
本発明者らの検討によって、転写因子Nkx2.5が卵黄嚢腫瘍を対象とした創薬の標的分子として有望であることが判明した。当該知見に基づき、本発明は更なる局面として、転写因子Nkx2.5を標的分子とすることを特徴とする、ヒト卵黄嚢腫瘍に対して有効な化合物のスクリーニング方法を提供する。当該スクリーニング方法で選抜された化合物は、ヒト卵黄嚢腫瘍に対する治療等に有効であると期待される。即ち、選抜された化合物はヒト卵黄嚢腫瘍に対する医薬の有効成分の有力な候補(リード化合物)となる。選抜された化合物が十分な薬効を有する場合にはそのまま薬剤の有効成分として使用することができる。一方で十分な薬効を有しない場合には化学的修飾などの改変を施してその薬効を高めた上で薬剤の有効成分としての使用に供することができる。勿論、十分な薬効を有する場合であっても、更なる薬効の増大を目的として同様の改変を施してもよい。
本発明のスクリーニング方法では例えば、Nkx2.5タンパク質に対する試験物質の結合性、Nkx2.5の発現量又は作用量に対する試験物質の作用(影響)などを指標とする。
本発明のスクリーニング方法に供する試験物質については、上記の(細胞株の利用法)の中で説明したスクリーニング方法の場合と同様である。
本発明のスクリーニング方法の一態様では、Nkx2.5タンパク質に対する結合性を指標として有効な化合物を選抜する。例えば、以下のステップ(1)及び(2)を実施し、有効な化合物を選抜する。
(1)Nkx2.5タンパク質と試験物質とを接触させるステップ。
(2)試験物質のNkx2.5タンパク質に対する結合性を評価するステップ。
以下、ステップ毎にその詳細を説明する。尚、Nkx2.5タンパク質の立体構造に基づき、コンピューター上でNkx2.5タンパク質と試験物質との結合性をシミュレーションしたり、Nkx2.5タンパク質に結合性を有する化合物をデザインしたりする、いわゆるin silicoスクリーニングによって、Nkx2.5タンパク質に結合性を有する化合物を選抜することにしてもよい。
ステップ(1)ではNkx2.5タンパク質と試験物質とを接触させる。具体的には例えば、プレートや膜、或いはビーズ等の不溶性支持体に固定したNkx2.5タンパク質に反応用溶液中で試験物質を接触させる。所定時間経過した後、適当な溶液で洗浄することで非特異的結合成分を除去する。
反応用溶液は特に限定されず、公知又は市販の緩衝液、生理食塩水などを用いることができる。例えば、反応用溶液としてはリン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、トリス酢酸緩衝液などを用いることができ、そのpHは例えばpH6.0〜pH8.0、好ましくはpH6.5〜pH7.5とする。また、反応温度は例えば4℃〜45℃、好ましくは4℃〜40℃とすることができる。反応時間については例えば1分〜24時間の範囲で設定できる(具体的には例えばオーバーナイトで反応させる)。
試験物質を抗Nkx2.5抗体と競合的にNkx2.5タンパク質に接触させることにしてもよい。即ち、試験物質の存在下及び非存在下でそれぞれ、Nkx2.5タンパク質と抗Nkx2.5抗体を接触させる実験系を採用してもよい。Nkx2.5タンパク質に対する結合活性を試験物質が有すれば、試験物質の存在によって、抗Nkx2.5抗体のNkx2.5タンパク質に対する結合が阻害される。従って、Nkx2.5タンパク質に結合した抗Nkx2.5抗体の量を、試験物質の存在下で抗Nkx2.5抗体を接触させた場合と、試験物質の非存在下で抗Nkx2.5抗体を接触させた場合との間で比較すれば、間接的に試験物質のNkx2.5タンパク質に対する結合活性を求めることができる。
ステップ(2)では、試験物質のNkx2.5タンパク質に対する結合性を評価する。即ち、試験物質のNkx2.5タンパク質への結合量を測定し、測定結果から結合活性を求める。Nkx2.5タンパク質に対する結合量の測定は、試験物質の種類、性状などに応じて適当な方法で実施される。例えば試験物質がタンパク質性分子であれば、Nkx2.5タンパク質に結合した成分を回収した後にタンパク質量を測定することや、試験物質に特異的に結合性を有する抗体を用いた免疫学的手法などの利用によって、Nkx2.5タンパク質に結合した試験物質量を算出することができる。これらの方法は単なる一例であって、Nkx2.5タンパク質への結合量を測定できる限りにおいて任意の測定法を採用することができる。
上記のように抗Nkx2.5抗体を用いた実験系を採用した場合には、Nkx2.5タンパク質に結合した抗Nkx2.5抗体の量が測定対象となる。そして、測定結果(抗Nkx2.5抗体の結合量)から試験物質の結合活性が求められる。
本発明のスクリーニング方法の他の一態様では、Nkx2.5の発現量又は作用量に対する試験物質の作用(影響)を指標として有効な化合物を選抜する。例えば、Nkx2.5の発現量又は作用量を評価することが可能な細胞を用いたレポータージーンアッセイを行う。レポータージーンアッセイではNkx2.5遺伝子、又はNkx2.5によって転写制御を受ける遺伝子(例えばα−フェトプロテイン(AFP))の発現量をレポーター遺伝子の発現量に基づいて評価し、Nkx2.5遺伝子の発現に対する試験物質の阻害(抑制)能、又はNkx2.5遺伝子の作用に対する試験物質の阻害(抑制)能を判定する。
レポータージーンとしては、CAT(クロラムフェニコール)遺伝子、LUC(ルシフェラーゼ)遺伝子等を用いることができる。
レポータージーンアッセイに利用する細胞としてはHeLa細胞、COS細胞、CHO細胞を例示することができる。これらの細胞は例えばATCCなどの細胞バンクから容易に入手可能である。
尚、レポータージーンアッセイは常法に従って行えばよい。レポータージーンアッセイの詳細は様々な成書や論文に紹介されており、例えばMolecular Cloning(Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)或いはCurrent protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987)、新遺伝子工学ハンドブック(羊土社)等を参考にすることができる。
1−1.方法
平成17年5月30日に手術が施行された、28歳の卵黄嚢腫瘍(yolk sac tumor)の患者より細胞株を樹立することの同意を得て腫瘍組織を採取した。採取した組織片をPBSにて十分洗浄した後に、組織片を1〜2mm角に細切しトリプシン処理は行わずに下記の培養液中に多数片培養した。
市販のSmGM培地(CAMBREX社)(500ml)に5%FBS(ギブコ社)、2.5mgのインスリン(株式会社 細胞科学研究所)、2μgのhEGF(R&D Systems社)、及び抗生物質(ペニシリン 10万単位、ストレプトマイシン100mg)を添加した培養液を使用した。培養開始5日目に組織片を取り除き、同時に培地交換をした。以後は3日に1回の頻度で培地交換を繰り返した。
尚、予備実験として、10%FBS含有RPMI 1640培地又は10%FBS含有SmGM培地を使用して同様の操作を行ったところ、卵黄嚢腫瘍細胞の増殖は認められなかった。
培養開始2週間後よりコロニーの形成を確認できた。しかしながら線維芽細胞の混在があった。その後継代を繰り返すことにより、培養開始4週目から線維芽細胞が減少し、卵黄嚢腫瘍細胞が主体となってきた。腫瘍細胞がコロニーを形成してきたため、線維芽細胞がほぼ消失した段階で10個のコロニーを採取し、コロニーごとに培養した。各コロニー由来の細胞を別々に培養し、継代を繰り返した。第5継代までは上記の培養液を使用したが、その後の継代培養では10%FBS含有RPMI 1640培地を使用した。継代培養開始から5ヶ月以上経過した時点(継代数25)においても十分な増殖能を維持していることを確認した。現在の継代数は28である。
以上のようにして株化された卵黄嚢細胞(NOY1)を以下の通り寄託した。
寄託機関:独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番1号 中央第6)
寄託日(受領日):平成18年(2006年)10月6日
受託番号:FERM P−21055
2−1.ウエスタンブロット法によるAFP発現の確認
10コロニーそれぞれの細胞(第21継代)の破砕液(1% Triton Xによる)から常法で蛋白を回収した。回収した蛋白(10μg)をサンプルとしてウエスタンブロット法を実施した。検出用の抗体として抗ヒトα-1-フェトプロテイン抗体(Dako Cytomation)を用いた。尚、子宮体癌細胞株(Ishikawa)においても同様に発現を検討した(ネガティブコントロール)。
ウエスタンブロットの結果を図1に示す。10コロニーすべてにおいて、70kDa付近にAFPの発現を認めた。ネガティブコントロールとして用いた子宮体癌細胞株(Ishikawa)においては発現を認めなかった。コロニーNo.2において最も強い発現を認めたので以下の解析にはコロニーNo.2を使用した。
2−1.の結果を踏まえて選択した細胞(コロニーNo.2)に対して抗ヒトα-1-フェトプロテイン抗体(Dako Cytomation)および抗ヒトサイトケラチン抗体(Dako Cytomation)を用い細胞免疫染色(avidin-biotin immunoperoxidase technique)を行った。
免疫染色の結果を図2に示す。免疫染色によって、強弱の差はあるもののほとんどすべての細胞の細胞質にAFPの染色を認めた。また、サイトケラチンの発現も認め、卵黄嚢腫瘍に特徴的な蛋白の発現を免疫染色にて確認した。
75mm培養皿に細胞(コロニー2)を30x104個/mlで培養し、24、48、及び72時間後の培養液を回収し、Alfa-Fetoprotein ELISA kit(R and D SYSTEMS)を用いてAFPの分泌を検討した。
検出結果を図3に示す。細胞のAFP分泌能をELISA kitで測定すると、24時間培養液で49ng/ml、48時間培養液で146ng/ml、72時間培養液で218ng/mlと高いAPF分泌能を有していることが示された。
細胞増殖能をCell Titer 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay kit (Promega)を用いたmodified tetrazolium salt assay (MTSアッセイ)にて検討した。その結果、細胞増殖能は代表的な上皮性卵巣癌細胞株(SKOV)と同程度であり、倍化時間は45時間であった(図4)。
細胞破砕液から回収した蛋白をウエスタンブロット法に供し、インスリン、EGFなどの増殖因子レセプターの発現を調べた。その結果、インスリンレセプターαの発現を認めた(図5)。
細胞(コロニーNo.2)に対してシスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、パクリタキセルを各種濃度で添加し、各抗癌剤のIC50を検討した。その結果、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、及びパクリタキセルに対するIC50はそれぞれ2.8μg/ml、3.5μg/ml、122μg/ml、及び150ng/mlであった。このように、樹立された卵黄嚢細胞株はシスプラチン、カルボプラチンに対しては高感受性であったが、エトポシド、パクリタキセルに対する感受性は低かった。
各抗癌剤のIC50を参考にして各種抗癌剤の耐性株の樹立を試みた。実験方法は次の通りとした。即ち、シスプラチン及びカルボプラチンを0.1μg/mlの濃度から曝露開始し、継代を行いながら2週間ごとに0.1μg/mlずつ曝露濃度を上げていき、1μg/mlで維持可能な耐性株を獲得した。
結果、シスプラチン耐性株(IC50=12.5μg/ml、約5倍耐性)と、カルボプラチン耐性株(IC50=18μg/ml、約5倍耐性)の樹立に成功した。
悪性卵巣胚細胞腫瘍は悪性卵巣腫瘍の5〜10%と発生頻度は高くないものの、そのほとんどが35歳以下の若年女性に発症し、進行、再発癌の予後は極めて不良であり、その治療法の開発は重要な課題である。悪性卵巣胚細胞腫瘍の治療としては手術に加え、シスプラチン、エトポシド、ブレオマイシンを中心とした化学療法が行われている(非特許文献6)。しかしながら、これは精巣腫瘍を中心とした胚細胞腫瘍症例の臨床データにより決められたレジメンであり、まだまだ十分な効果が得られているとは言えず、レジメンの選択を含めさらなる治療法の開発が必要である。細胞株の樹立は悪性卵巣胚細胞腫瘍の治療法の開発にとって重要である。悪性卵巣胚細胞腫瘍の細胞株が樹立されれば、それを用いた抗癌剤感受性試験が可能となる。そして抗癌剤感受性試験の結果は、最も効果のある化学療法のレジメン決定に大きく寄与する。さらに、悪性卵巣胚細胞腫瘍の細胞株を利用することによって、種々の増殖因子受容体、シグナル伝達物質の発現など機能解析が進み、新たな分子標的治療薬の応用、開発が可能になると考える。また、現在最も重要な課題である、シスプラチン耐性症例の治療に対して、今回樹立した細胞株のシスプラチン耐性株の機能解析を行うことによってシスプラチン耐性克服が可能になれば、悪性卵巣胚細胞腫瘍の予後は飛躍的に改善する可能性がある。以上のように、ヒト卵黄嚢腫瘍細胞株の樹立は悪性卵巣胚細胞腫瘍の治療につながる基礎研究をすすめるために価値あるものであると考える。
卵黄嚢腫瘍はシスプラチンを中心とした化学療法により多くは奏功する疾患であるが、再発症例においてはシスプラチン耐性獲得によりきわめて予後不良である。(非特許文献7)また、当初よりシスプラチン耐性である場合も報告されている(非特許文献5)。さらに、卵黄嚢腫瘍の患者の中には、シスプラチンに対してアレルギーがあるがためにその使用ができず、結果として予後不良となる者もいる。以上のことから、卵黄嚢腫瘍のシスプラチン耐性メカニズムの検討が重要な課題であるとともに、新規の分子標的治療法の開発も望まれるところである。我々は、上述の通り、既に抗癌剤耐性株の樹立に成功しているが、さらに耐性の強い細胞株の樹立を目指して以下の検討を行った。
4−1.方法
卵黄嚢腫瘍細胞株(NOY1)に対してシスプラチンを0.1μg/mlより添加を行い、passageを繰り返しながら、シスプラチン濃度を徐々にあげていき(6ヶ月間)、現在3μg/mlで維持可能な細胞(NOY1CR3.0)を樹立した。この細胞株(NOY1CR3.0)におけるシスプラチンIC50の測定を行った。
4−2.結果
NOY1のシスプラチンIC50は2.8μg/mlであった。これに対してNOY1CR3.0のシスプラチンIC50は27.5μg/mlであり、NOY1よりも約10倍耐性であった(図6)。このように、卵黄嚢腫瘍細胞株の樹立に加えて、シスプラチン10倍耐性株の樹立に成功した。進行した卵黄嚢腫瘍に対してはシスプラチンを中心とした化学療法が施行され、多くの症例では治癒するが、シスプラチン耐性になった場合の予後は極めて不良である。今回樹立に成功したNOY1CR3.0のマイクロアレイや蛋白アレイの解析から、耐性機序の解明が可能になり、新規の分子標的治療も可能になる。また、シスプラチン耐性株に対する他の抗癌剤の感受性試験のデータから、セカンドラインの抗癌剤治療の薬剤選択が可能になるであろう。
卵黄嚢腫瘍がα−フェトプロテイン(AFP)を産生するという特徴に着目し、AFPの転写に関与するとの報告があるNkx2.5(非特許文献8)をターゲットとした、卵黄嚢腫瘍細胞株の増殖抑制効果を検討した。
5−1.方法
まず、NOY1におけるNkx2.5の発現をウエスタンブロットにて検討した。ウエスタンブロットには抗Nkx2.5抗体(Santa cruz biotechnology,sc-8697)を使用し、SDS-PAGE後の蛋白質を電気泳動にてニトロセルロースメンブレンに転写し、抗体にて検出した。一方、卵黄嚢腫瘍組織におけるNkx2.5の発現を免疫組織染色にて検討した。インフォームドコンセントを行い、同意を得て手術時に採取した検体を試料とし、パラフィン切片を作製した。免疫組織染色には抗Nkx2.5.抗体(Santa cruz biotechnology,sc-8697)を使用し、アルカリフォスファターゼ法にて検出した。また、NOY1におけるNkx2.5.の発現をsiRNAにてノックダウンし、細胞増殖能を検討した。尚、使用したsiRNAは次の通りである。
センス鎖:5’AGAUCUGGUUCCAGAAUCA 3’(配列番号1)
アンチセンス鎖:5’UGAUUCUGGAACCAGAUCU 3’(配列番号2)
コントロールsiRNAには次のものを使用した。
センス鎖:5’ACAACAACUUCGUGAACUU 3’(配列番号3)
アンチセンス鎖:5’AAGUUCACGAAGCACUUGAA 3’(配列番号4)
ウエスタンブロットの結果を図7に示す。上皮性卵巣癌の細胞株に比べてNOY1ではNkx2.5.が高発現していた(図7)。
一方、卵黄嚢腫瘍組織におけるNkx2.5.免疫組織染色にて腫瘍細胞にNkx2.5.の発現を確認した(図8)。
また、NOY1にNkx2.5.のsiRNAを導入し、Nkx2.5.発現を抑制すると、AFPの発現を抑制するとともに、細胞増殖能が72時間後で約50%抑制された(図9)。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
Claims (15)
- 以下のステップ(1)〜(3)を含む、ヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍の細胞株の樹立方法:
(1)血清、インスリン及び上皮細胞増殖因子を含有する培地中でヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍細胞を含む組織片を培養するステップ;
(2)血清、インスリン及び上皮細胞増殖因子を含有する培地中で、前記組織片から遊走した細胞を培養するステップ;
(3)増殖した細胞を継代培養するステップ。 - 前記培地中の前記血清の含有量が約5%(v/v)である、請求項1に記載の樹立方法。
- 混在する線維芽細胞の数が減少し、ヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍細胞が主体になるまでステップ(2)の培養を継続することを特徴とする、請求項1又は2に記載の樹立方法。
- 実質的にヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍細胞のみからなるコロニーが形成されるまでステップ(2)の培養を継続し、形成されたコロニーより細胞を採取し、採取した細胞をステップ(3)の継代培養に供することを特徴とする、請求項1又は2に記載の樹立方法。
- ステップ(3)において継代培養の最初の数代が血清、インスリン及び上皮細胞増殖因子(EGF)を含有する培地中で行われ、その後の継代培養がインスリン及び上皮細胞増殖因子(EGF)を含有しない培地中で行われることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の樹立方法。
- ステップ(3)において継代培養の第3代〜第5代までが血清、インスリン及び上皮細胞増殖因子(EGF)を含有する培地中で行われることを特徴とする、請求項5に記載の樹立方法。
- 前記ヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍細胞がヒト卵黄嚢腫瘍細胞又はヒト未分化胚細胞腫細胞であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の樹立方法。
- 前記ヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍細胞がヒト卵黄嚢腫瘍細胞であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の樹立方法。
- 請求項8に記載の方法で樹立され、α−フェトプロテイン及びサイトケラチン陽性のヒト卵黄嚢腫瘍細胞株。
- 受託番号がFERM P−21055である、請求項9に記載のヒト卵黄嚢腫瘍細胞株。
- 請求項9又は10に記載のヒト卵黄嚢腫瘍細胞株を抗癌剤に曝露することによって、該抗癌剤への耐性を獲得した耐性ヒト細胞。
- 請求項9又は10に記載のヒト卵黄嚢腫瘍細胞株をシスプラチン又はカルボプラチンに曝露することによって、シスプラチン又はカルボプラチンへの耐性を獲得した耐性ヒト細胞。
- 培養液中のシスプラチン濃度が3μ/mlで維持可能である、請求項12に記載の耐性ヒト細胞。
- シスプラチンに対する耐性が、請求項10に記載のヒト卵黄嚢腫瘍細胞株の約10倍である、請求項12に記載の耐性ヒト細胞。
- 被検物質の存在下、請求項9若しくは10に記載のヒト卵黄嚢腫瘍細胞株、又は請求項11〜14のいずれかに記載の耐性ヒト細胞を培養し、該細胞の生存率を測定・評価することを特徴とする、ヒト卵黄嚢腫瘍に対して有効な物質のスクリーニング方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006337852A JP5098013B2 (ja) | 2005-12-19 | 2006-12-15 | ヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍の細胞株の樹立方法、ヒト悪性卵巣胚腫瘍細胞株、及びその利用 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005365168 | 2005-12-19 | ||
JP2005365168 | 2005-12-19 | ||
JP2006337852A JP5098013B2 (ja) | 2005-12-19 | 2006-12-15 | ヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍の細胞株の樹立方法、ヒト悪性卵巣胚腫瘍細胞株、及びその利用 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2007190013A JP2007190013A (ja) | 2007-08-02 |
JP5098013B2 true JP5098013B2 (ja) | 2012-12-12 |
Family
ID=38446174
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2006337852A Active JP5098013B2 (ja) | 2005-12-19 | 2006-12-15 | ヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍の細胞株の樹立方法、ヒト悪性卵巣胚腫瘍細胞株、及びその利用 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5098013B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN116121191A (zh) * | 2022-09-08 | 2023-05-16 | 中山大学孙逸仙纪念医院 | 一种人乳腺恶性叶状肿瘤细胞系sysh-mpt-04及其应用 |
-
2006
- 2006-12-15 JP JP2006337852A patent/JP5098013B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2007190013A (ja) | 2007-08-02 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Morel et al. | A stemness-related ZEB1–MSRB3 axis governs cellular pliancy and breast cancer genome stability | |
Trimmer et al. | CAV1 inhibits metastatic potential in melanomas through suppression of the integrin/Src/FAK signaling pathway | |
US11471477B2 (en) | Methods for treating triple-negative breast cancer | |
Yang et al. | MicroRNA‐145 induces the senescence of activated hepatic stellate cells through the activation of p53 pathway by ZEB2 | |
Bell et al. | The role of MYCN in the failure of MYCN amplified neuroblastoma cell lines to G1 arrest after DNA damage | |
US20130347136A1 (en) | Compositions and Methods for Characterizing and Treating Muscular Dystrophy | |
Vu-Phan et al. | The thyroid cancer PAX8–PPARG fusion protein activates Wnt/TCF-responsive cells that have a transformed phenotype | |
Hayashi et al. | Potential role of LMP2 as an anti-oncogenic factor in human uterine leiomyosarcoma: morphological significance of calponin h1 | |
KR20210056959A (ko) | 간암의 예방 또는 치료용 조성물 | |
WO2016152352A1 (ja) | メラノーマ特異的バイオマーカー及びその利用 | |
CN112011614A (zh) | Kmt5a在调控胶质瘤干细胞特性及胶质瘤诊治中的应用 | |
Li et al. | miR-200bc/429 inhibits osteosarcoma cell proliferation and invasion by targeting PMP22 | |
Luo et al. | LncRNA CASC2 inhibits proliferation and migration of adenocarcinoma cells via miR‐4735‐3p and mTOR | |
US11510911B2 (en) | Method for prediction of susceptibility to sorafenib treatment by using SULF2 gene, and composition for treatment of cancer comprising SULF2 inhibitor | |
JP5098013B2 (ja) | ヒト悪性卵巣胚細胞腫瘍の細胞株の樹立方法、ヒト悪性卵巣胚腫瘍細胞株、及びその利用 | |
EP2773961B1 (en) | Adam22 for use as a prognostic variable, and target for therapy, of a metastatic breast cancer disease | |
KR101974509B1 (ko) | 보체 단백질의 간암 진단 용도 | |
WO2019031637A1 (ko) | p53-비돌연변이 암에 대한 암 마커 유전자 및 치료제 스크리닝 방법 | |
CN113679735A (zh) | Slc7a11基因在肝细胞癌介入栓塞术后中的应用 | |
JP6839707B2 (ja) | Gpr160を過剰発現する癌の予防、診断および治療 | |
JP2020045303A (ja) | 癌細胞における免疫チェックポイント因子の発現抑制剤及び癌治療用医薬組成物 | |
Wang et al. | CDCA5 is a potent therapeutic target of clear cell renal cell carcinoma | |
EP3522924A1 (en) | Large-scale epigenomic reprogramming links anabolic glucose metabolism to distant metastasis during the evolution of pancreatic caner progression | |
JP7510144B2 (ja) | 抗癌剤及びその使用 | |
JP7226763B2 (ja) | 癌幹細胞における薬物耐性の低減剤、癌幹細胞における転移能の抑制剤及び癌の転移性再発リスクを予測する方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424 Effective date: 20090123 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20091127 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20120515 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20120712 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20120827 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 5098013 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |