JP2019034081A - 医療用マニピュレーターの屈曲構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】小型化を図りつつ耐荷重及び屈曲性に優れた医療用マニピュレーターの屈曲構造体を提供する。【解決手段】超弾性合金からなる可撓チューブ15と、可撓チューブ15内に配置され医療用マニピュレーターの駆動ワイヤーをガイドするガイド部17とを備え、可撓チューブ15は、この可撓チューブ15の軸線方向に連設された複数のリング部21と、軸線方向で隣接するリング部21間を周方向の一部で結合するチューブ結合部23a,23bと、軸線方向で隣接するリング部21間においてチューブ結合部23a,23bの周方向両側に区画されチューブ結合部23a,23bの曲げによる可撓チューブ15の屈曲を許容するチューブスリット25とを備え、ガイド部17は、少なくとも可撓チューブ15のリング部21間での曲げ剛性が可撓チューブ15のチューブ結合部23a,29bの曲げ剛性よりも小さく設定されている。【選択図】 図3
Description
本発明は、手術ロボット等の医療用マニピュレーターの屈曲部に適用可能な屈曲構造体に関する。
近年の医療においては、手術の際に患者及び医師の双方の負担を軽減可能とする手術ロボットのロボット鉗子や手動鉗子等の医療用マニピュレーターが普及してきている。
ロボット鉗子や手動鉗子等の医療用マニピュレーターは、患者の小さな創から内視鏡カメラとアームを挿入し、医師が3Dモニターを通して術野を目で捉えながら、実際に鉗子を動かしている感覚で手術を行うことを可能とする。
このような医療用マニピュレーターとしては、特許文献1のように、アームに屈曲部による関節機能を持たせることにより、高い自由度を確保でき、より精緻な手術操作を可能とするものがある。
この医療用マニピュレーターでは、アームの屈曲部にコイルスプリングを用い、内部を通る駆動ワイヤーを引くことによって、コイルスプリングを屈曲させるようになっている。
こうした医療用マニピュレーターのアームは、患者の創を小さくして、精神的、肉体的な負担を軽減するために、小型化が望まれる。これに応じて、アームに用いられる屈曲部も、小型化が望まれている。
しかし、特許文献1の技術では、屈曲部がコイルスプリングによって構成されているため、耐荷重及び屈曲性を確保する必要性から、小型化に限界があった。
このような問題は、上記のようにロボット鉗子や手動鉗子等の医療用マニピュレーターだけでなく、内視鏡カメラ等の他の医療用マニピュレーターにおいても同様に存在する。
解決しようとする問題点は、小型化を図りつつ耐荷重及び屈曲性を確保することに限界があった点である。
本発明は、小型化を図りつつ耐荷重及び屈曲性に優れたものとするために、超弾性合金からなる可撓チューブと、前記可撓チューブ内に配置され医療用マニピュレーターの駆動ワイヤーをガイドするガイド部とを備え、前記可撓チューブは、該可撓チューブの軸線方向に連設された複数のリング部と、前記軸線方向で隣接するリング部間を周方向の一部で結合するチューブ結合部と、前記軸線方向で隣接するリング部間において前記チューブ結合部の周方向の両側に区画され前記チューブ結合部の曲げによる前記可撓チューブの屈曲を許容するスリットとを備え、前記ガイド部は、少なくとも前記可撓チューブのリング部間での曲げ剛性が前記可撓チューブの前記チューブ結合部の曲げ剛性よりも小さく設定されたことを屈曲構造体の最も主な特徴とする。
本発明は、超弾性合金からなる可撓チューブが、複数のリング部を軸線方向でチューブ結合部によって結合して形成され、チューブ結合部の曲げによって屈曲が可能となっているため、小型化を図りつつ耐荷重及び屈曲性に優れたものとすることができる。
しかも、少なくとも可撓チューブのリング部間でのガイド部の曲げ剛性が、可撓チューブのチューブ結合部の曲げ剛性よりも小さく設定されたため、可撓チューブの屈曲を妨げることなく、駆動ワイヤーを適切な位置に保持し、安定且つ正確な屈曲動作を行わせることができる。
本発明は、小型化を図りつつ耐荷重及び屈曲性に優れ、安定且つ正確な屈曲動作を可能にするという目的を、超弾性合金製の可撓チューブ内にガイド部を設けることにより実現した。
具体的には、屈曲構造体が、超弾性合金からなる可撓チューブと、可撓チューブ内に配置され医療用マニピュレーターの駆動ワイヤーをガイドするガイド部とを備える。
可撓チューブは、軸線方向に連設された複数のリング部と、軸線方向で隣接するリング部間を周方向の一部で結合するチューブ結合部と、軸線方向で隣接するリング部間においてチューブ結合部の周方向の両側に区画されチューブ結合部の曲げによる可撓チューブの屈曲を許容するスリットとを備える。
ガイド部は、少なくとも可撓チューブのリング部間での曲げ剛性が可撓チューブのチューブ結合部の曲げ剛性よりも小さく設定される。
チューブ結合部は、軸線方向で隣接するリング部間を径方向で対向する周方向の二ヵ所で結合し、各リング部の軸線方向の一側のチューブ結合部と軸線方向の他側のチューブ結合部とが周方向に180/N度(Nは2以上の整数)ずれており、軸線方向の一側及び他側のチューブ結合部の曲げによって交差する異なる方向への可撓チューブの屈曲を可能としてもよい。
ただし、交差する異なる方向へ屈曲させる場合は、一つの可撓チューブを上記のように構成するものに限られず、例えば、二つの可撓チューブを連続して設け、それぞれが異なる方向へ曲がるように構成することも可能である。
ガイド部は、可撓チューブの少なくとも中央部分に配置され、中央部分を越えて駆動ワイヤーが移動することを抑制する。
また、ガイド部は、材質及び形状の何れか一方又は双方を設定することにより、上記のように曲げ剛性を設定することが可能である。
例えば、ガイド部は、可撓チューブよりもヤング率の小さい材料からなり、可撓チューブの複数のリング部内周にそれぞれ位置し、駆動ワイヤーを挿通する挿通孔を有する円板状の複数のガイド体と、軸線方向で隣接するガイド体間を可撓チューブのチューブ結合部に対応して周方向の一部で結合するガイド結合部と、軸線方向で隣接するガイド体間においてガイド結合部の両側に区画されたスリットとを備えてもよい。
[ロボット鉗子の構造]
図1(A)は、屈曲構造体を用いたロボット鉗子を示す正面側から見た斜視図、図1(B)は同背面側から見た斜視図、図2(A)は同側面図、図2(B)は同正面図である。なお、図1及び図2では、後述する屈曲構造体3のガイド部17の図示を省略している。
図1(A)は、屈曲構造体を用いたロボット鉗子を示す正面側から見た斜視図、図1(B)は同背面側から見た斜視図、図2(A)は同側面図、図2(B)は同正面図である。なお、図1及び図2では、後述する屈曲構造体3のガイド部17の図示を省略している。
ロボット鉗子1は、医療用マニピュレーターである手術ロボットのロボットアーム先端を構成するものである。なお、ロボット鉗子1は、医療用マニピュレーターの一例である。屈曲構造体3を適用可能な医療用マニピュレーターは、手術ロボットに取り付けるか否かに拘わらず、医師等が手で操作するものであって、屈曲動作を行う屈曲部を有すれば、特に限定されるものではない。従って、医療用マニピュレーターには、手術ロボットに取り付けない内視鏡カメラや手動鉗子等も含まれる。
ロボット鉗子1は、シャフト部5、屈曲部7、把持部9によって構成されている。
シャフト部5は、円筒形状に形成されている。シャフト部5内には、屈曲部7を駆動するための駆動ワイヤー11(図10)や把持部9を駆動するためのプッシュプルケーブル13(図10)が通っている。シャフト部5の先端には、屈曲部7を介して把持部9が設けられている。
屈曲部7は、本実施例の屈曲構造体3によって構成され、駆動ワイヤー11の操作により屈曲可能となっている。屈曲構造体3の詳細は後述する。
把持部9は、屈曲部7の先端に取り付けられた基部9aに対して鉗子部9bが軸支されている。鉗子部9bは、プッシュプルケーブル13の進退動作(プッシュプル動作)で開閉するようになっている。
把持部9の駆動は、プッシュプルケーブル13に限らず、エアチューブや複数の駆動ケーブルを用いても良い。
[屈曲構造体の構造]
図3は、図1のロボット鉗子1の屈曲構造体3を示す斜視図、図4は、同正面図、図5は、図3の屈曲構造体3の可撓チューブ15を示す斜視図、図6は同正面図、図7は同一部拡大正面図である。なお、図3〜図7の屈曲構造体3は、図1及び図2とは形状が僅かに異なるが、同一のものを簡略化したものとなっている。
図3は、図1のロボット鉗子1の屈曲構造体3を示す斜視図、図4は、同正面図、図5は、図3の屈曲構造体3の可撓チューブ15を示す斜視図、図6は同正面図、図7は同一部拡大正面図である。なお、図3〜図7の屈曲構造体3は、図1及び図2とは形状が僅かに異なるが、同一のものを簡略化したものとなっている。
屈曲構造体3は、可撓チューブ15と、ガイド部17とを備え、軸線方向の一側(基端側)を固定側、軸線方向の他側(先端側)を可動側として屈曲可能となっている。なお、図3〜図7において、基端側は下方側、先端側は上方側である。
可撓チューブ15は、超弾性合金からなり、連結部19a,19bと、リング部21と、チューブ結合部23a,23bと、チューブスリット25とで構成されている。なお、超弾性合金は、NiTi合金(ニッケルチタン合金)、ゴムメタル(登録商標)等のチタン系合金、Cu-Al-Mn合金(銅系合金)、Fe-Mn-Al系合金(鉄系合金)等とすることが可能である。
連結部19a,19bは、両端部に設けられたリング状であり、ロボット鉗子1側に連結される部分である。これら連結部19a,19b間には、複数のリング部21が位置している。
複数のリング部21は、軸線方向に等間隔で平行に連設されている。軸線方向で隣接するリング部21間の間隔dは一定に保持されており、各リング部21の径r1、軸線方向での寸法としての軸線方向幅w1、及び肉厚tも一定となっている。なお、肉厚tは、連結部19a,19b及びチューブ結合部23a,23bを含めた可撓チューブ15全体において一定である。
隣接するリング部21は、周方向の一部でチューブ結合部23a,23bによって結合されている。両端部のリング部21は、チューブ結合部23a,23bによって連結部19a,19bに結合されている。
チューブ結合部23a,23bは、リング部21に一体に設けられ、軸線方向で隣接するリング部21間を径方向で対向する周方向の二ヵ所で結合している。
各リング部21において、軸線方向の一側(基端側)に位置するチューブ結合部23a,23bと他側(先端側)に位置するチューブ結合部23b,23aは、周方向に180/N度ずれて配置されている。ここでのチューブ結合部23a,23bのずれは、チューブ結合部23a,23bの中心線間のずれをいう(以下、同じ。)。Nは、2以上の整数である。本実施例では、N=2であり、チューブ結合部23a,23bが90度ずれて配置されている。
なお、チューブ結合部23a,23b間のずれは、60度等とすることも可能であるが、90度にするのが好ましい。これは、可撓チューブ15の屈曲に必要なリング部21の数を少なくでき、全体の長さをコンパクトにすることができるためである。
各チューブ結合部23a,23bは、軸線方向に伸びる矩形板状であり、リング部21に応じて僅かに曲率を有している。チューブ結合部23a,23bの両端部は、円弧部26を介してリング部21に遷移する。これにより、チューブ結合部23a,23bとリング部21との間は、接線連続となっている。
なお、リング部21の径方向において、チューブ結合部23a,23bとリング部21の間は、内外周が段差なく遷移している。ただし、チューブ結合部23a,23bをリング部21よりも厚肉又は薄肉にして段差を有するような形態とすることも可能である。
チューブ結合部23a,23bの周方向幅w2は、リング部21の軸線方向幅w1よりも小さく形成されている。円弧部26の曲率半径r2は、リング部21の軸線方向幅w1よりも小さく、チューブ結合部23a,23bの周方向幅w2と同一か僅かに異なる程度となっている。
チューブ結合部23a,23bは、中立軸を境に周方向の一側を圧縮して他側を伸長するように曲がることで可撓チューブ15の屈曲を可能とする。本実施例では、周方向に90度ずれたチューブ結合部23a,23bが曲がることにより、交差する異なる二方向X及びYへの屈曲が可能となっている。
各チューブ結合部23a,23bの周方向両側には、チューブ結合部23a,23bの曲げによる可撓チューブ15の屈曲を許容するチューブスリット25が設けられている。
すなわち、チューブスリット25は、軸線方向で隣接するリング部21間においてチューブ結合部23a,23bの周方向両側に区画されている。各チューブスリット25は、リング部21及びチューブ結合部23a,23bの形状に応じて、角の丸い矩形状となっている。
チューブスリット25の軸線方向幅d(リング部21間の間隔dと同じ)は、リング部21の軸線方向幅w1よりも大きく形成されている。
なお、本実施例の可撓チューブ15の各部の寸法は、全長Lが22.4mm、リング部21の径r1が6mm、軸線方向幅w1が0.8mm、肉厚tが0.4mm、チューブ結合部23a,23bの周方向幅w2が0.2〜0.5mm、円弧部26の曲率半径r2が0.3mm、チューブスリット25の軸線方向幅dが1.0mmとなっている。
ただし、これら各部の寸法は、一例であり、要求される大きさや特性に応じて適宜変更することが可能である。例えば、リング部21及びチューブ結合部23a,23bの肉厚t、リング部21の径r1、軸線方向幅w1は、可撓チューブ15に要求される特性に応じて一定としなくてもよい。また、リング部21の径r1、軸線方向幅w1、チューブ結合部23a,23bの周方向幅w2、円弧部26の曲率半径r2、チューブスリット25の軸線方向幅dの相対的な大きさの関係を変更することも可能である。
図8は、図3の屈曲構造体3のガイド部17を示す斜視図、図9は、同正面図、図10は、同平面図である。
本実施例のガイド部17は、ガイド部17は、可撓チューブ15の少なくとも中央部分に配置され、中央部分を越えて駆動ワイヤー11が移動することを抑制するものである。中央部分は、本実施例において挿通孔33bの位置する軸心部並びに軸心部を囲む領域をいう。
このガイド部17は、可撓チューブ15よりもヤング率の小さい材料からなる。ガイド部17の材料としては、ポリプロピレン等の樹脂を用いることが可能である。また、本実施例のガイド部17は、可撓チューブ15と対応した形状に形成されており、可撓チューブ15に位相を合わせている。
ただし、ガイド部17は、可撓チューブ15内に配置され、少なくとも可撓チューブ15のリング部21間でのガイド部17の曲げ剛性が、可撓チューブ15のチューブ結合部23a,23bの曲げ剛性よりも小さく設定された構成となっていれば、形状や材質は特に限定されるものではない。
本実施例のガイド部17は、ガイド体27と、ガイド結合部29a,29bと、ガイドスリット31とを備えている。
ガイド体27は、可撓チューブ15の複数のリング部21内周にそれぞれ位置する円板状に形成されている。本実施例のガイド体27は、可撓チューブ15のリング部21の範囲内に収まるように軸線方向の板厚Tが設定されている。ガイド体27は、リング部21の内周に嵌合するように径r3が設定されている。なおガイド体27は、リング部21の内周に遊嵌させることも可能である。
各ガイド体27は、駆動ワイヤー11及びプッシュプルケーブル13を挿通する挿通孔33a,33bを有する。なお、駆動ワイヤー11は、ガイド部17を挿通した後、屈曲構造体3の先端側に固定される。プッシュプルケーブル13は、把持部9に連結される。
プッシュプルケーブル13を挿通する挿通孔33bは、軸心部に設けられている。駆動ワイヤー11を挿通する挿通孔33aは、本実施例において周方向に90度毎に位置して4つ設けられており、それぞれが挿通孔33bに対して径方向外側に偏倚して配置されている。これにより、周方向に90度毎に駆動ワイヤー11をバランスよく保持する。この保持により、ガイド部17は、各駆動ワイヤー11が可撓チューブ15の中央部分を越えて移動することを抑制する。
なお、可撓チューブ15の中央部分を越えた移動とは、駆動ワイヤー11が中央部分へ向かう移動によって、その中央部分を挟んだ反対側へ移動することをいう。本実施例では、駆動ワイヤー11が保持部分から中央部分側へ移動することがない。
なお、ガイド体27は、可撓チューブ15の各リング部21の内周に位置させる必要はなく、例えば一つおきや可撓チューブ15の軸線方向の中間部でのみリング部21の内周に位置させることも可能である。
隣接するガイド体27は、ガイド結合部29a,29bによって結合されている。ガイド結合部29a,29bは、ガイド体27に一体に設けられ、可撓チューブ15のチューブ結合部23a,23bに対応した周方向の一部で隣接するガイド体27を結合している。
本実施例のガイド結合部29aは、軸線方向で隣接する可撓チューブ15のリング部21間において、径方向で対向する可撓チューブ15のチューブ結合部23a間に渡って設けられている。ガイド結合部29bも、同様にチューブ結合部23b間に渡って設けられている。
これにより、ガイド結合部29a,29bは、径方向に延設された帯状に形成され、径方向の中央部及びその両側に肉抜き穴35a,35b,35cが設けられている。
また、ガイド結合部29a,29bは、径方向においてチューブ結合部23a,23bに重なる形状となっており、チューブ結合部23a,23bと同様、軸線方向の両端部が円弧部37を介してガイド体27に遷移し、リング部21との間が接線連続となっている。
これらガイド結合部29a,29bは、チューブ結合部23a,23bと共に周方向の一側を圧縮して他側を伸長するように曲がることでガイド部17の屈曲を可能とする。ガイド結合部29a,29bの曲げ剛性は、可撓チューブ15のチューブ結合部23a,23bの曲げ剛性よりも低く設定されている。
従って、本実施例では、少なくとも可撓チューブ15のリング部21間でのガイド部17の曲げ剛性が、可撓チューブ15のチューブ結合部23a,23bの曲げ剛性よりも小さく設定された構成となっている。
各ガイド結合部29a,29bの周方向両側には、ガイド結合部29a,29bの曲げによるガイド部17の屈曲を許容するガイドスリット31が設けられている。
すなわち、ガイドスリット31は、軸線方向で隣接するリング部21間においてガイド結合部29a,29bの周方向両側に区画されている。各ガイドスリット31は、ガイド体27及びガイド結合部29a,29bの形状に応じて、角の丸い矩形状となっている。
[屈曲構造体の動作]
屈曲部7としての屈曲構造体3は、医師がロボット鉗子1を操作する際、何れか一つの駆動ワイヤー11を引くことにより、シャフト部5側に位置する固定側に対して把持部9側に位置する可動側が屈曲する。そして、いくつかの駆動ワイヤー11を組み合わせて引くことにより、360度全方位に屈曲させることが可能となる。
屈曲部7としての屈曲構造体3は、医師がロボット鉗子1を操作する際、何れか一つの駆動ワイヤー11を引くことにより、シャフト部5側に位置する固定側に対して把持部9側に位置する可動側が屈曲する。そして、いくつかの駆動ワイヤー11を組み合わせて引くことにより、360度全方位に屈曲させることが可能となる。
何れか一つの駆動ワイヤー11を引いて屈曲させる際、可撓チューブ15は、図6のように中立軸上に位置するチューブ結合部23a,23bの一方(実施例ではチューブ結合部23b)が、中立軸に対する屈曲内側部分を圧縮させると共に屈曲外側部分を伸長させるように曲がる。
チューブ結合部23bが曲がると、チューブ結合部23bに対する先端側のリング部21がチューブ結合部23bを支点としてチューブスリット25を閉じるように変位する。一方で、中立軸上のチューブ結合部23bから周方向に90度ずれたチューブ結合部23aは、曲がらずにリング部21の姿勢を保持する。
このように、可撓チューブ15は、中立軸上に位置するチューブ結合部23bが曲がることで全体として屈曲することになる。
この可撓チューブ15の屈曲は、ガイド部17によって妨げられることがない。すなわち、ガイド部17は、可撓チューブ15と同様にして、中立軸上に位置するガイド結合部29a,29bの一方(本実施例ではガイド結合部29b)が曲がることで全体として屈曲する。
このとき、ガイド結合部29bは、チューブ結合部23bよりも曲げ剛性が小さいため、チューブ結合部23bの曲げによる屈曲の妨げとはならない。特に、本実施例のガイド部17では、ガイド結合部29bが可撓チューブ15のチューブ結合部23bと対応した形状であり、可撓チューブ15よりもヤング率が1/50程度の大幅に小さい材料である。このため、ガイド結合部29bの曲げ剛性がチューブ結合部23bの曲げ剛性よりも大幅に小さく、可撓チューブ15の屈曲の妨げとなることがない。
なお、ガイド部17は、ガイド結合部29bを省略して可撓チューブ15のリング部21間に位置する部分を有さないようにし、これにより可撓チューブ15の屈曲の妨げとならないようにすることも可能である。
この場合、可撓チューブ15のリング部21間でのガイド部17の曲げ剛性がゼロとなるため、可撓チューブ15のチューブ結合部23bの曲げ剛性よりもガイド部17の曲げ剛性が小さくなる。
かかる屈曲時には、ガイド部17によって駆動ワイヤー11を適切な位置に維持するため、医師の操作に応じて屈曲部7としての屈曲構造体3に安定且つ正確な屈曲動作を行わせることができる。
[耐荷重]
図11は、実施例1に係る屈曲構造体3に用いられる可撓チューブ15の荷重と屈曲角との関係を示すグラフである。
図11は、実施例1に係る屈曲構造体3に用いられる可撓チューブ15の荷重と屈曲角との関係を示すグラフである。
図11では、可撓チューブ15のチューブ結合部23a,23bの周方向幅w2を0.2mm、0.3mm、0.4mmとしたものにおいて、屈曲角が0度から90度となるまで屈曲させ、その後に0度まで戻るときの荷重をプロットしている。なお、本実施例では、屈曲角が90度のときに荷重が10Nとなる線形特性を理想的な耐荷重特性を示す理想線ISとしている。
チューブ結合部23a,23bの周方向幅w2が0.2mm及び0.3mmの場合は、荷重が全体として理想線ISよりも低いものの、屈曲時と戻り時との間でヒステリシスが少なく線形性が高い。このため、チューブ結合部23a,23bの折損リスクを軽減することができ、耐荷重性が優れたものとなっている。
チューブ結合部23a,23bの周方向幅w2が0.4mmの場合は、線形性は低下しているものの、屈曲角90度のときの荷重が15N程度と理想線ISよりも高く、耐荷重性が優れたものとなっている。
[屈曲性]
本実施例では、図11のように、屈曲角90度のときに、荷重が約3N、5.5N、15Nであり、チューブ結合部23a,23bの折損がなく、曲げ半径Rを約14.3mmと小さくすることができた。なお、曲げ半径Rは、中立軸の曲げ半径をいう(以下、同じ。)。
本実施例では、図11のように、屈曲角90度のときに、荷重が約3N、5.5N、15Nであり、チューブ結合部23a,23bの折損がなく、曲げ半径Rを約14.3mmと小さくすることができた。なお、曲げ半径Rは、中立軸の曲げ半径をいう(以下、同じ。)。
このように、本実施例では、屈曲構造体3の小型化を図っても、小さい曲げ半径で容易且つ確実に屈曲させることができ、屈曲性に優れたものとすることができる。
[実施例1の効果]
以上説明したように、本実施例の屈曲構造体3は、超弾性合金からなる可撓チューブ15と、可撓チューブ15内に配置され医療用マニピュレーターの駆動ワイヤー11をガイドするガイド部17とを備えている。
以上説明したように、本実施例の屈曲構造体3は、超弾性合金からなる可撓チューブ15と、可撓チューブ15内に配置され医療用マニピュレーターの駆動ワイヤー11をガイドするガイド部17とを備えている。
可撓チューブ15は、この可撓チューブ15の軸線方向に連設された複数のリング部21と、軸線方向で隣接するリング部21間を周方向の一部で結合するチューブ結合部23a,23bと、軸線方向で隣接するリング部21間においてチューブ結合部23a,23bの周方向両側に区画されチューブ結合部23a,23bの曲げによる可撓チューブ15の屈曲を許容するチューブスリット25とを備える。
そして、ガイド部17は、少なくとも可撓チューブ15のリング部21間での曲げ剛性が可撓チューブ15のチューブ結合部23a,23bの曲げ剛性よりも小さく設定されている。
従って、本実施例の屈曲構造体3は、超弾性合金からなる可撓チューブ15が、複数のリング部21を軸線方向でチューブ結合部23a,23bによって結合して形成され、チューブ結合部23a,23bの曲がることによって屈曲が可能となっている構成により、小型化を図りつつ耐荷重及び屈曲性に優れたものとすることができる。
しかも、本実施例の屈曲構造体3は、可撓チューブ15がリング部21間をチューブ結合部23a,23bによって結合する構成により、ねじり剛性に優れたものとすることもできる。
さらに、本実施例の屈曲構造体3は、少なくとも可撓チューブ15のリング部21間でのガイド部17の曲げ剛性が、可撓チューブ15のチューブ結合部23a,23bの曲げ剛性よりも小さく設定されていることにより、可撓チューブ15の屈曲を妨げることなく、駆動ワイヤー11を適切な位置に保持し、安定且つ正確な屈曲動作を行わせることができる。
また、本実施例では、チューブ結合部23a,23bが軸線方向で隣接するリング部21間を径方向で対向する周方向の二ヵ所で結合し、各リング部21の軸線方向の一側のチューブ結合部23bと軸線方向の他側のチューブ結合部23aとが周方向に180/N度、特に90度ずれており、軸線方向の一側及び他側のチューブ結合部23b,23aの曲げによって異なる方向への可撓チューブ15の屈曲を可能としている。
従って、本実施例の屈曲構造体3では、駆動ワイヤー11の操作を通じて360度全方位に屈曲可能とすることができると共に屈曲の異方性を抑制することができる。
本実施例のガイド部17は、可撓チューブよりもヤング率の小さい材料からなり、可撓チューブ15の複数のリング部21内周にそれぞれ位置し、駆動ワイヤー11を挿通する挿通孔33aを有する円板状の複数のガイド体27と、軸線方向で隣接するガイド体27間を可撓チューブ15のチューブ結合部23a,23bに対応して周方向の一部で結合するガイド結合部29a,29bと、軸線方向で隣接するガイド体27間においてガイド結合部29a,29bの両側に区画されたガイドスリット31とを備える。
従って、本実施例のガイド部17は、可撓チューブ15に位相を合わせることができ、動作の安定性、正確性を確保できる。
図12は、本発明の実施例2に係る屈曲構造体を示す正面図、図13は、同平面図である。なお、実施例2では、実施例1と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。
本実施例の屈曲構造体3は、ガイド部17を円柱形状としたものである。なお、可撓チューブ15は、実施例1と同構成である。
ガイド部17は、円柱状のガイド体27に、周方向90度毎に駆動ワイヤー11をガイドする溝部33cが軸心方向に沿って設けられている。各溝部33cは、平面視において、ガイド体27の外周面から軸心部に向けて径方向に伸びる。軸心部には、プッシュプルケーブル13を挿通する挿通孔33bが設けられている。
かかる実施例2においても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
図14は、本発明の実施例3に係る屈曲構造体を示す斜視図、図15は、同側面図、図16は、同平面図である。実施例3では、実施例1と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。
本実施例の屈曲構造体3は、ガイド部17を超弾性合金のコイルばねとしたものである。その他は、実施例1と同一形状である。
ガイド部17は、コイル状の内径がプッシュプルケーブル13の外径と同等になっており、コイル状の内周部にプッシュプルケーブル13を挿通する構成となっている。駆動ワイヤー11は、ガイド部17の外周側に配置されている。
従って、本実施例では、ガイド部17によりプッシュプルケーブル13を適切な位置に保持しつつ駆動ワイヤー11が中央部分を越えて極端に移動することを妨げ、安定且つ正確な屈曲動作を行わせることができる。
その他、本実施例においても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
図17は、本発明の実施例4に係る屈曲構造体を示す斜視図、図18は、同側面図、図19は、同平面図である。実施例4では、実施例3と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。
本実施例の屈曲構造体3は、実施例3に対し、ガイド部17のコイル状の内外径を大きくしたものである。その他は、実施例3と同一構成である。
具体的には、ガイド部17の内径がプッシュプルケーブル13の外径よりも大きく、それに応じてガイド部17のコイル状の外径も大きくなっている。
このように構成しても、実施例3と同様の作用効果を奏することができる。
図20は、本発明の実施例5に係る屈曲構造体を示す斜視図、図21は、同側面図、図22は、同平面図である。実施例5では、実施例1と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。
本実施例の屈曲構造体3は、実施例1のガイド部を第1ガイド部17とし、この第1ガイド部17に実施例3と同一の超弾性合金からなるコイルばね状のガイド部を第2ガイド部18として追加したものである。その他は、実施例1と同一構成である。
第1ガイド部17は、軸心部の挿通孔33bが実施例1よりも大きい径を有している。この挿通孔33bには、第2ガイド部18が挿通されている。そして、第1ガイド部17の挿通孔33aには、駆動ワイヤー11が挿通し、第2ガイド部18の内周部には、プッシュプルケーブル13が挿通している。
従って、本実施例においても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
図23は、本発明の実施例6に係る屈曲構造体の可撓チューブを示す一部拡大正面図である。実施例6では、実施例1と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。
本実施例では、実施例1に対し、可撓チューブ15のリング部21の形状を変更したものである。なお、ガイド部17は、実施例1と同様、可撓チューブ15に対応した形状とすればよいが、実施例2のように円柱形状、実施例3及び4のようにコイルばね状、実施例5のように可撓チューブ15に対応した形状のガイド部にコイルばね状のガイド部を組み合わせたもの、或は他の形状を採用することも可能である。
各リング部21は、周方向一部がチューブスリット25を周方向の中間部で軸線方向に狭めるように軸線方向に偏倚している。具体的には、リング部21が平行部21aと傾斜部21bとで構成されている。平行部21aには、チューブ結合部23a,23bが一体に設けられている。
図24は、変形例に係る屈曲構造体の可撓チューブを示す一部拡大正面図である。
変形例のリング部21は、図23の実施例6とは逆に、チューブスリット25を周方向の中間部で軸線方向に拡げるように、ウェーブ形状を有している。
かかる実施例6及び変形例でも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
図25は、本発明の実施例7に係る屈曲構造体の可撓チューブを示す一部拡大正面図である。実施例7では、実施例1と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。
本実施例の屈曲構造体3は、実施例1に対し、可撓チューブ15のチューブ結合部23a,23bの数を変更したものである。なお、ガイド部17は、実施例1と同様、可撓チューブ15に対応した形状とすればよいが、実施例2のように円柱形状、実施例3及び4のようにコイルばね状、実施例5のように可撓チューブ15に対応した形状のガイド部にコイルばね状のガイド部を組み合わせたもの、或は他の形状を採用することも可能である。
本実施例では、隣接するリング部21間において、チューブ結合部23a,23bが周方向60度毎に三つ配置されている。
このようにチューブ結合部23a,23bの数を変更しても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
1 ロボット鉗子(医療用マニピュレーター)
3 屈曲構造体
15 可撓チューブ
17 ガイド部
21 リング部
23a,23b チューブ結合部
25 チューブスリット
27 ガイド体
29a,29b ガイド結合部
31 ガイドスリット
3 屈曲構造体
15 可撓チューブ
17 ガイド部
21 リング部
23a,23b チューブ結合部
25 チューブスリット
27 ガイド体
29a,29b ガイド結合部
31 ガイドスリット
Claims (4)
- 超弾性合金からなる可撓チューブと、
前記可撓チューブ内に配置され医療用マニピュレーターの駆動ワイヤーをガイドするガイド部とを備え、
前記可撓チューブは、該可撓チューブの軸線方向に連設された複数のリング部と、前記軸線方向で隣接するリング部間を周方向の一部で結合するチューブ結合部と、前記軸線方向で隣接するリング部間において前記チューブ結合部の周方向の両側に区画され前記チューブ結合部の曲げによる前記可撓チューブの屈曲を許容するスリットとを備え、
前記ガイド部は、少なくとも前記可撓チューブのリング部間での曲げ剛性が前記可撓チューブの前記チューブ結合部の曲げ剛性よりも小さく設定された、
ことを特徴とする医療用マニピュレーターの屈曲構造体。 - 請求項1記載の屈曲構造体であって、
前記チューブ結合部は、前記軸線方向で隣接するリング部間を径方向で対向する周方向の二ヵ所で結合し、
各リング部の前記軸線方向の一側のチューブ結合部と前記軸線方向の他側のチューブ結合部とが周方向に180/N度ずれており、前記軸線方向の一側及び他側の前記チューブ結合部の曲げによって異なる方向への前記可撓チューブの屈曲を可能とし、
Nは、2以上の整数である、
ことを特徴とする屈曲構造体。 - 請求項1又は2記載の屈曲構造体であって、
前記ガイド部は、前記可撓チューブの少なくとも中央部分に配置され、前記中央部分を越えて前記駆動ワイヤーが移動することを抑制する、
ことを特徴とする屈曲構造体。 - 請求項1〜3の何れか一項に記載の屈曲構造体であって、
前記ガイド部は、
前記可撓チューブよりもヤング率の小さい材料からなり、
前記可撓チューブの前記複数のリング部内周にそれぞれ位置し、前記駆動ワイヤーを挿通する挿通孔を有する円板状の複数のガイド体と、
前記軸線方向で隣接するガイド体間を前記可撓チューブの前記チューブ結合部に対応して周方向の一部で結合するガイド結合部と、
前記軸線方向で隣接するガイド体間において前記ガイド結合部の両側に区画されたスリットと、
を備えたことを特徴とする屈曲構造体。
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JP2017158916A JP2019034081A (ja) | 2017-08-21 | 2017-08-21 | 医療用マニピュレーターの屈曲構造体 |
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-
2017
- 2017-08-21 JP JP2017158916A patent/JP2019034081A/ja active Pending
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