JP2019030892A - 鋼の連続鋳造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 鋳片厚み中心部の凝固組織を等軸晶化する方法やデンドライト柱状晶の一次アーム間隔を制御する方法とは異なる方法を用いて、連続鋳造機内の鋳片の偏析粒サイズを小さくする。【解決手段】 本発明の鋼の連続鋳造方法は、タンディッシュ2内の溶鋼9を連続鋳造機1の鋳型5に注入しつつ、前記溶鋼が凝固して生成した凝固シェル11を前記鋳型から引き抜いて鋳片10を製造する鋼の連続鋳造方法であって、前記連続鋳造機内の前記鋳片の横断面全体での固相率fsの平均値が0より大きく0.4以下の領域で、且つ、前記鋳型の下方の二次冷却帯の少なくとも一部で、前記鋳片の長辺面を挟んで相対する直流磁極14を介して、前記鋳片に対して、鋳片厚み中心位置の磁場強度が0.2T以上である、前記鋳片の引き抜き方向と直交する方向の静磁場を前記鋳片の幅方向全体に印加する。【選択図】 図2
Description
本発明は、連続鋳造によって製造される鋳片の中心偏析の低減に有効な鋼の連続鋳造方法に関し、詳しくは、鋳片下面側(連続鋳造時の鋳片の厚み中心よりも鉛直方向下側の部分)の分岐デンドライト柱状晶及び鋳片厚み中心部の等軸晶を低減して鋳片の中心偏析を抑制する連続鋳造方法に関する。
連続鋳造機で鋳造される鋼鋳片に要求される品質基準として、中心偏析が軽微であることが挙げられる。中心偏析は、鋼製品の品質を決定づける基準となることが多く、軽減することが必要である。また、中心偏析の評価には或る程度の大きさを持った偏析粒の個数が指標の一つとなっており、大きな偏析粒を減らすことが中心偏析改善にとって重要である。
炭素(C)、燐(P)、硫黄(S)、マンガン(Mn)などの溶質元素を含有する溶鋼が凝固する際、状態図に則って、つまり凝固時の再分配により、固相から液相へ溶質元素が排出され、凝固界面前方の液相で溶質濃度が濃化して偏析となる。鋳片の中心偏析の形成要因として、溶鋼静圧による鋳片のバルジング(膨らみ)や凝固収縮などによる未凝固層の流動が挙げられるが、最終凝固部での溶質の再分配自体も要因となる。
溶質の再分配に起因する偏析粒のサイズは、生長する固相間の液相スポットのサイズに依存する。下記の(1)式に示されるシャイル則によれば、固相間の液相スポットのサイズが大きくなればなるほど、偏析粒のサイズが大きくなり、品質上問題となる。
ここで、(1)式において、CLは凝固途中の液相の溶質濃度、C0は凝固前の液相の初期溶質濃度、fsは固相率(0〜1.0)、kは平衡分配係数である。
偏析粒サイズの拡大に起因する中心偏析を防止するために、いくつかの対策が提案されており、そのうちの一つに、鋳片の凝固組織を制御して最終凝固部における固相間の液相スポットのサイズを縮小する方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、鋳片の未凝固層を鋳型内及び二次冷却帯で電磁攪拌するとともに、連続鋳造機の鋳造方向で、鋳型下端から鋳片の横断面凝固率が25%までの範囲を含み、且つ、メニスカスから鋳片厚み中心位置の固相率が0.8となる位置までの鋳造方向長さのうちの40%以上の範囲の鋳片表面を、0.5L/kg以上の比水量で冷却し、鋳片の偏析及びセンターポロシティを改善する技術が提案されている。
特許文献1は、電磁攪拌により、浸漬ノズルからの高温の吐出流が鋳片の未凝固層奥深くへ侵入することを防止するとともに、0.5L/kg以上の比水量で冷却して、鋳片未凝固層の溶鋼の過熱度を速やかに減少させ、これによって鋳片厚み中心部の凝固組織を微細な等軸晶に制御し、固相間の液相スポットのサイズを小さくするという技術である。
特許文献2には、軽圧下帯で鋳片を軽圧下する鋼の連続鋳造方法において、鋳型直下から鋳造方向長さが2.5mまでの二次冷却帯の比水量を0.15L/kg以上とし、更に、鋳造方向長さが2.5mよりも下流側の二次冷却帯の比水量及び幅切り量を調整して、軽圧下開始位置での鋳片短辺部の断面平均温度を1050℃以上とし、これにより、鋳片の実績圧下速度を0.3〜1.0mm/minとし、且つ、鋳片厚み中心部のデンドライト柱状晶の一次アーム間隔を1.6mm以下とする連続鋳造方法が提案されている。
特許文献2は、鋳片を最適な圧下速度で軽圧下すると同時に、二次冷却帯の比水量の調整によって鋳片厚み中心部のデンドライトの一次アーム間隔を1.6mm以下として、固相間の液相スポットのサイズを小さくするという技術である。
しかしながら、上記従来技術には以下の問題がある。
即ち、特許文献1は、鋳片厚み中心部の凝固組織を微細な等軸晶として偏析粒サイズを小さくしているが、等軸晶間の偏析粒サイズは限度があり、つまり、凝固組織が等軸晶である限り、それ相当の大きさの偏析粒サイズとなり、近年の厳格化された中心偏析を満足する偏析粒サイズまで小さくすることはできない。
特許文献2は、二次冷却を強化することで鋳片厚み中心部のデンドライト一次アーム間隔を小さくし、これによって偏析粒サイズを小さくしているが、一般的に連続鋳造で製造される鋳片は厚みが200mm以上であり、厚みが200mm以上の鋳片の厚み中心部の冷却速度は凝固した部分の熱抵抗が律速になり、二次冷却の強化によってデンドライトの一次アーム間隔を小さくすることは極めて難しい。尚、二次冷却を強化しすぎると、鋳片表面に縦割れや横割れなどの表面欠陥が発生するおそれがある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、鋳片厚み中心部の凝固組織を等軸晶化する方法やデンドライト柱状晶の一次アーム間隔を制御する方法とは異なる方法を用いて、連続鋳造機内の鋳片の偏析粒サイズを小さく方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するべく、鋭意研究を行った。その結果、鋳片の未凝固層内の溶鋼流動に起因するデンドライト柱状晶の一次アーム及び二次アームの溶断を抑制することで、鋳片厚み中心部の凝固組織がデンドライト柱状晶になり、固相間の液相スポットのサイズが小さくなり、偏析粒サイズが小さくなることを知見した。
本発明は上記知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1]タンディッシュ内の溶鋼を連続鋳造機の鋳型に注入しつつ、前記溶鋼が凝固して生成した凝固シェルを前記鋳型から引き抜いて鋳片を製造する鋼の連続鋳造方法であって、
前記連続鋳造機内の前記鋳片の横断面全体での固相率fsの平均値が0より大きく0.4以下の領域で、且つ、前記鋳型の下方の二次冷却帯の少なくとも一部で、前記鋳片の長辺面を挟んで相対する直流磁極を介して、前記鋳片に対して、鋳片厚み中心位置の磁場強度が0.2T以上である、前記鋳片の引き抜き方向と直交する方向の静磁場を前記鋳片の幅方向全体に印加することを特徴とする、鋼の連続鋳造方法。
[2]前記タンディッシュ内の前記溶鋼の過熱度が20℃以上であることを特徴とする、上記[1]に記載の鋼の連続鋳造方法。
[3]前記溶鋼の炭素含有量が0.001質量%以上0.09質量%以下であることを特徴とする、上記[1]または上記[2]に記載の鋼の連続鋳造方法。
[1]タンディッシュ内の溶鋼を連続鋳造機の鋳型に注入しつつ、前記溶鋼が凝固して生成した凝固シェルを前記鋳型から引き抜いて鋳片を製造する鋼の連続鋳造方法であって、
前記連続鋳造機内の前記鋳片の横断面全体での固相率fsの平均値が0より大きく0.4以下の領域で、且つ、前記鋳型の下方の二次冷却帯の少なくとも一部で、前記鋳片の長辺面を挟んで相対する直流磁極を介して、前記鋳片に対して、鋳片厚み中心位置の磁場強度が0.2T以上である、前記鋳片の引き抜き方向と直交する方向の静磁場を前記鋳片の幅方向全体に印加することを特徴とする、鋼の連続鋳造方法。
[2]前記タンディッシュ内の前記溶鋼の過熱度が20℃以上であることを特徴とする、上記[1]に記載の鋼の連続鋳造方法。
[3]前記溶鋼の炭素含有量が0.001質量%以上0.09質量%以下であることを特徴とする、上記[1]または上記[2]に記載の鋼の連続鋳造方法。
本発明によれば、静磁場の印加により未凝固層内の溶鋼流動が抑制され、これにより、デンドライト柱状晶の一次アーム及び二次アームの溶断が防止され、つまり、鋳片厚み中心部の凝固組織を分岐デンドライト柱状晶または等軸晶とする結晶核の生成が防止され、鋳片厚み中心部の凝固組織がデンドライト柱状晶となり、結果として、鋳片の偏析粒サイズが縮小されて中心偏析が軽減される。
以下、本発明を具体的に説明する。
連続鋳造機によって製造される鋼鋳片の凝固組織は、一般的に、鋳片の表面側にチル晶、その内側に柱状晶、柱状晶の内側の鋳片厚み中心部に等軸晶が形成される。このうち、チル晶は、鋳型と接触して急速に凝固した、方向性を有していない微細な結晶である。
柱状晶は、鋳片表面が抜熱されることにより生起する熱流束の向きとは反対向きに生長した結晶であり、同じ方向に平行に生長した結晶となる。連続鋳造機で製造される鋼鋳片の場合、柱状晶はデンドライト(樹枝状晶)で形成される。このデンドライトは、デンドライトの生長方向を向いた一次アームと、一次アームと直交する方向に生長する二次アームとで構成されており、デンドライトで形成される柱状晶を、通常、デンドライト柱状晶と呼ぶ。
鋳片の冷却速度が遅くなって固液界面の温度勾配が小さくなったりすると、デンドライトの一次アームの方向が、平行にならずに種々の方向を向いて生長する。この凝固組織を、分岐柱状晶または分岐デンドライト柱状晶という。本明細書では、分岐デンドライト柱状晶と表示する。
等軸晶は、冷却速度が遅くなったり、溶鋼の過熱度が低くなったりして、デンドライト柱状晶の生長が遅くなったとき、または、デンドライト柱状晶が生長しなくなったときに、デンドライト柱状晶の内側に形成される結晶である。また、等軸晶は、デンドライト柱状晶を形成するデンドライトの一次アームや二次アームが、溶鋼流動などによってデンドライト柱状晶から溶断されると、溶断された一次アーム及び二次アームを凝固核として、鋳片厚み中心部及び鋳片下面側(連続鋳造時の鋳片の厚み中心よりも鉛直方向下側の部分)に形成される。これは、溶断された一次アーム及び二次アームが、重力によって未凝固層内を沈降し、鋳片厚み中心部及び鋳片の下面側に至り、等軸晶の凝固核となることによる。等軸晶は、デンドライト結晶及び粒状結晶の2種類が存在する。
図1に、デンドライト柱状晶及び分岐デンドライト柱状晶の模式図を示す。デンドライト柱状晶は、それぞれのデンドライトの一次アームの方向が揃っており、その方向はほぼ熱流束の向きと反対向きになる。これに対して、分岐デンドライト柱状晶では、それぞれのデンドライトの一次アームの方向が揃っておらず、デンドライトは、熱流束の方向に左程影響されずに未凝固層の内側に向かって生長する。
連続鋳造機で鋳造中の鋼鋳片において、デンドライト柱状晶の一次アームまたは二次アームが溶鋼流動によって溶断すると、溶断した一次アームまたは二次アーム(以下、溶断した一次アームまたは二次アームを、まとめて「アーム片」と記す)は重力によって未凝固層内を沈降し、鋳片下面側のデンドライト柱状晶の上に堆積する。鋳片下面側のデンドライト柱状晶は堆積するアーム片によって生長が止められる。一方、鋳片上面側は、デンドライト柱状晶の一次アームまたは二次アームが溶断しても、鋳片の厚み中心位置または中心位置近くまで、デンドライト柱状晶が生長する。
鋳片下面側のデンドライト柱状晶の上に堆積したアーム片は凝固の核となり、それぞれのアーム片の一次アームの方向を向いた新たな結晶が形成される。それぞれのアーム片の一次アームの方向を向いた結晶は、鋳片の厚み中心までの生長距離が短く、したがって、熱流束方向に平行な方向を優先生長方向とするデンドライトが、その他の方向を生長方向とするデンドライトを淘汰する現象が起こり難く、溶断したアーム片を核とする結晶は、それぞれの方向を向いて鋳片の厚み中心まで生長する。その結果、鋳片下面側のデンドライト柱状晶の上側に、それぞれのデンドライトの生長方向が種々異なる分岐デンドライト柱状晶が形成される。尚、溶断したアーム片が鋳片の厚み中心まで堆積すると、分岐デンドライト柱状晶は生成せずに、鋳片の厚み中心部及び下面側には等軸晶が生成する。
分岐デンドライト柱状晶では、デンドライトの傾角のばらつきが大きくなる。これに対して、デンドライト柱状晶では、デンドライトの傾角のばらつきは小さい。ここで、デンドライトの傾角とは、デンドライトの生長方向(一次アームの方向)と、鋳片表面に垂直な方向(基本的な熱流束の方向)との角度差である。
デンドライトの傾角のばらつきが大きければ、最終凝固部に形成される固相間の液相スポットのサイズが大きくなり、これに伴って、偏析粒のサイズは大きくなる傾向にある。したがって、デンドライト傾角のばらつきを小さくすれば、一定の大きさ以上の偏析粒を減らすことが可能であり、結果として偏析部を無害化することができる。尚、本発明者らは、鋳片の厚み中心部及び下面側が等軸晶の場合は、分岐デンドライト柱状晶の場合よりも偏析粒のサイズが大きくなることを確認している。
このように、偏析粒のサイズを小さくするためには、鋳片下面側のデンドライト傾角のばらつきを小さくすることが有利であるが、鋳片下面側に分岐デンドライト柱状晶が形成される限り、鋳片下面側のデンドライト傾角のばらつきを小さくすることに限界がある。
そこで、本発明では、デンドライト柱状晶の一次アームまたは二次アームの溶断を防止し、鋳片下面側に分岐デンドライト柱状晶が生成しないようにする方法を検討した。鋳片下面側に分岐デンドライト柱状晶が形成されなければ、鋳片下面側はデンドライト柱状晶になり、デンドライト傾角のばらつきは小さくなる。尚、等軸晶は、分岐デンドライト柱状晶よりも更にアーム片が多い条件下で発生するので、鋳片下面側での分岐デンドライト柱状晶の形成を抑制すれば、同様に、鋳片下面側及び鋳片厚み中心部での等軸晶の生成も抑制される。
デンドライト柱状晶の一次アームまたは二次アームの溶断は、溶鋼流動によって発生する。静磁場は、静磁場内を移動しようとする溶鋼の移動を制動する機能、つまり、溶鋼の移動方向と逆向きの電磁力を与える機能を有しており、したがって、鋳片の幅方向全体に、鋳片の引き抜き方向と直交する方向の静磁場を印加して溶鋼流動を強制的に抑え、溶鋼流動を抑えることで、デンドライト柱状晶の一次アームまたは二次アームの溶断が防止され、これによって、鋳片下面側での分岐デンドライト柱状晶の形成を防止できることを、本発明者らは知見した。
本発明は上記知見に基づくものであり、本発明に係る鋼の連続鋳造方法は、タンディッシュ内の溶鋼を連続鋳造機の鋳型に注入しつつ、前記溶鋼が凝固して生成した凝固シェルを前記鋳型から引き抜いて鋳片を製造する鋼の連続鋳造方法であって、前記連続鋳造機内の前記鋳片の横断面全体での固相率fsの平均値が0より大きく0.4以下の領域で、且つ、前記鋳型の下方の二次冷却帯の少なくとも一部で、前記鋳片の長辺面を挟んで相対する直流磁極を介して、前記鋳片に対して、鋳片厚み中心位置の磁場強度が0.2T以上である、前記鋳片の引き抜き方向と直交する方向の静磁場を前記鋳片の幅方向全体に印加することを必須とする。
ここで、鋳片の横断面全体での固相率fsの平均値とは、鋳片の引き抜き方向に直交する断面を微小領域に離散化して行う伝熱凝固計算によって各領域の固相率fsを求め、或る時刻におけるこれら微小領域の全ての固相率fsを平均した値である。固相率fsは0〜1.0の範囲であり、固相率fs=0が未凝固、固相率fs=1.0が凝固完了を表している。伝熱凝固計算は、例えば、刊行物1(社団法人日本鉄鋼協会編集発行「連続鋼片加熱炉における伝熱実験と計算方法(熱経済技術部会加熱炉小委員会報告)」昭和46年5月10日発行)に記載される伝熱計算式を用いて行うことができる。
静磁場の印加位置を、鋳片の横断面全体での固相率fsの平均値が0より大きく0.4以下の領域の二次冷却帯に限定する理由は、この領域は他の領域に比較して溶鋼流動に起因する一次アーム及び二次アームの溶断頻度が高く、効率的に分岐デンドライト柱状晶を軽減できることによる。また、印加する静磁場の磁場強度を、鋳片厚み中心位置の磁場強度で0.2T以上とする理由は、0.2T未満では溶鋼流動の制御が十分でなく、鋳片下面側に分岐デンドライト柱状晶が形成される可能性があることによる。
また、本発明を実施する際に、タンディッシュ内の溶鋼の過熱度を20℃以上に制御することで、鋳型内及び鋳型下方の未凝固層においても溶鋼が十分な過熱度を保ち、溶断したアーム片が再溶解し、分岐デンドライト柱状晶の発生を更に低減することができる。
また更に、連続鋳造される溶鋼の炭素含有量が0.001質量%以上0.09質量%以下であれば、包晶変態に起因する一次アーム及び二次アームの溶断も回避することができ、本発明の効果を更に効率的に得ることができる。
以下、本発明の実施形態例を図面に基づいて説明する。図2は、本発明に係る連続鋳造方法を実施する際に用いられる連続鋳造機の一例を示す概略図である。
図2において、符号1はブルーム連続鋳造機、2はタンディッシュ、3はスライディングノズル、4は浸漬ノズル、5は鋳型、6は鋳片支持ロール、7は搬送ロール、8は鋳片切断機、9は溶鋼、10は鋳片、11は凝固シェル、12は未凝固層、13は凝固完了位置、14は、鋳片の長辺面を挟んで相対する直流磁極である。スライディングノズル3は、タンディッシュ2から鋳型5への溶鋼流量を調整する装置であり、スライディングノズル3の代わりにストッパーを使用することもできる。
ブルーム連続鋳造機1において、タンディッシュ2から浸漬ノズル4を介して鋳型5に注入された溶鋼9は、鋳型5で冷却されて凝固シェル11を形成し、外殻を凝固シェル11とし内部に未凝固層12を有する鋳片10として、鋳型5の下方に設けた鋳片支持ロール6に支持されつつ、鋳型5の下方に連続的に引き抜かれる。鋳造方向に隣り合う鋳片支持ロール6の間隙には、水スプレーノズル或いはエアーミストスプレーノズルなどのスプレーノズルが配置された二次冷却帯(図示せず)が構成されており、鋳片10は、鋳片支持ロール6を通過する間、二次冷却帯の二次冷却水で冷却され、凝固シェル11の厚みを増大し、凝固完了位置13で内部までの凝固を完了する。凝固完了後の鋳片10は、搬送ロール7によって搬送されながら、搬送ロール7の上方に設置された鋳片切断機8によって切断されて鋳片10aとなる。
このようにして鋳片10を連続鋳造する際に、鋳片10の長辺面を挟んで相対する、二次冷却帯に設置された直流磁極14を介して、鋳片10に対して、鋳片厚み中心位置の磁場強度が0.2T以上である、鋳片10の引き抜き方向と直交する方向の静磁場を鋳片10の幅方向全体に印加する。直流磁極14は、鋳片10の長辺面を挟んで相対する、直流電磁石のN極及びS極であり、N極からS極に向かって鋳片10を貫通する静磁場を印加する。
但し、直流磁極14は、鋳片10の横断面全体での固相率fsの平均値が0より大きく0.4以下となる領域の少なくとも一部に設置する。予め、鋳片10の横断面全体での固相率fsを、鋳片引き抜き速度及び二次冷却帯の比水量に基づいて上記伝熱凝固計算によって求めることで、鋳片10の横断面全体での固相率fsの平均値が0より大きく0.4以下となる領域を特定することができる。
未凝固層12では、直流磁極14から印加される静磁場によって溶鋼9の流動が抑制される。つまり、浸漬ノズル4から鋳型内に注入される溶鋼9の吐出流による溶鋼流動が抑制され、デンドライト柱状晶の一次アーム及び二次アームの溶断が防止される。また、凝固シェル側の温度の低い未凝固層12と、鋳片厚み中心側の温度の高い未凝固層12との混合、つまり、未凝固層12による熱対流が抑制され、溶鋼9の熱対流による溶断も防止される。
図2では、直流磁極14を鋳造方向に1段設置しているが、鋳造方向に2段以上設置することが可能である。未凝固層12における溶鋼流動を防止する観点からは、直流磁極14を鋳造方向に多段に設置することが好ましい。
このようにして溶鋼9を連続鋳造することで、静磁場の印加によって未凝固層内の溶鋼流動が抑制され、これにより、デンドライト柱状晶の一次アーム及び二次アームの溶断が防止される。つまり、鋳片厚み中心部の凝固組織を分岐デンドライト柱状晶または等軸晶とする結晶核の生成が防止され、鋳片厚み中心部の凝固組織がデンドライト柱状晶となり、結果として、鋳片10の偏析粒サイズが縮小されて中心偏析が軽減される。
尚、図2はブルーム連続鋳造機であるが、本発明はブルーム連続鋳造機に限るものではなく、スラブ連続鋳造機やビレット連続鋳造機でも、本発明を適用することで、上記と同等の効果が得られる。
以下、数値計算の結果を示す。数値計算として、溶鋼流動によるデンドライトの一次アーム及び二次アームの溶断及び沈降を考慮した凝固組織計算を行い、鋳片厚み中心部におけるデンドライト傾角のばらつきを調査した。計算結果を評価するにあたり、鋳片厚み中心部で隣り合うデンドライトの傾角の差 が10°以上である境界の数を、デンドライト傾角のばらつきの評価指標とした。この境界の数が多いほど、デンドライト傾角のばらつきが大きいことを表す。
図3に、デンドライトの傾角の差Δθを求める模式図を示す。図3において、デンドライトAとデンドライトBとが隣り合っており、デンドライトAの傾角(デンドライトの一次アームの方向と鋳片表面に垂直な方向との角度差)がθ1で、デンドライトBの傾角がθ2である。但し、傾角の測定方向は時計回りの方向であり、θ1は負の値、θ2は正の値になる。デンドライトAとデンドライトBとの傾角の差はΔθで表示しており、差Δθは「|θ2−θ1|」であり、正負の関係から、「Δθ=θ2+|θ1|」となる。
数値計算では、湾曲半径が15m、鋳型長さが900mm、鋳片の断面サイズが、厚み250mm、幅410mmの湾曲型ブルーム連続鋳造機を想定し、溶鋼の炭素含有量、静磁場の印加位置、静磁場の強度、タンディッシュ内の溶鋼の過熱度を変更して、デンドライトの傾角の差 Δθが10°以上である境界の数(個/cm)を数えた。調査結果を表1に示す。表1では、本発明の範囲内の計算条件を「本発明例」と表示し、それ以外を「比較例」と表示している。
例えば、表1に示す、溶鋼の炭素含有量を0.180質量%に設定した計算条件1と、溶鋼の炭素含有量を0.030質量%に設定した計算条件10との比較からも明らかなように、溶鋼の炭素含有量が高くなると、傾角の差 Δθが10°以上である境界の数が多くなる。これは、溶鋼の炭素含有量によって鋳片の凝固組織が変化し、溶鋼の炭素含有量が高くなると分岐デンドライト柱状晶が生成し易くなることによる。したがって、表1において、静磁場印加の影響は、溶鋼の炭素含有量が同一である条件同士で比較することが必要である。
つまり、溶鋼の炭素含有量が0.180質量%である計算条件1〜3と、計算条件19〜34との比較、及び、溶鋼の炭素含有量が0.030質量%の計算条件10〜12と、計算条件35〜46との比較から、本発明を満足する範囲で静磁場を印加することで、デンドライトの一次アーム及び二次アームの溶断が抑制され、結果としてデンドライト傾角のばらつきが低減されることがわかった。
そして、例えば、計算条件19と計算条件25との比較、及び、計算条件35と計算条件37との比較からも明らかなように、溶鋼の過熱度が高くなるほど、デンドライト傾角のばらつきが低減されることがわかった。
また、静磁場を印加しても、鋳片の横断面全体での固相率fsの平均値が0.4を超えた位置で印加する場合(例えば、計算条件4〜6)、または、磁場強度が0.1Tの場合(例えば、計算条件7〜9)には、静磁場印加によるデンドライト傾角のばらつき低減効果は見られないことがわかった。
また更に、磁場強度を増すほどデンドライト傾角のばらつき低減効果が増大し、鋳片厚み中心位置の磁束密度が0.5T以上では、鋳片の凝固組織に分岐デンドライト柱状晶及び等軸晶は見られず、完全なデンドライト柱状晶となることが確認できた。
以上のことから、本発明により、鋳片厚み中心部におけるデンドライト傾角のばらつきが低減され、偏析粒のサイズが縮小されることがわかった。
1 ブルーム連続鋳造機
2 タンディッシュ
3 スライディングノズル
4 浸漬ノズル
5 鋳型
6 鋳片支持ロール
7 搬送ロール
8 鋳片切断機
9 溶鋼
10 鋳片
11 凝固シェル
12 未凝固層
13 凝固完了位置
14 直流磁極
2 タンディッシュ
3 スライディングノズル
4 浸漬ノズル
5 鋳型
6 鋳片支持ロール
7 搬送ロール
8 鋳片切断機
9 溶鋼
10 鋳片
11 凝固シェル
12 未凝固層
13 凝固完了位置
14 直流磁極
Claims (3)
- タンディッシュ内の溶鋼を連続鋳造機の鋳型に注入しつつ、前記溶鋼が凝固して生成した凝固シェルを前記鋳型から引き抜いて鋳片を製造する鋼の連続鋳造方法であって、
前記連続鋳造機内の前記鋳片の横断面全体での固相率fsの平均値が0より大きく0.4以下の領域で、且つ、前記鋳型の下方の二次冷却帯の少なくとも一部で、前記鋳片の長辺面を挟んで相対する直流磁極を介して、前記鋳片に対して、鋳片厚み中心位置の磁場強度が0.2T以上である、前記鋳片の引き抜き方向と直交する方向の静磁場を前記鋳片の幅方向全体に印加することを特徴とする、鋼の連続鋳造方法。 - 前記タンディッシュ内の前記溶鋼の過熱度が20℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載の鋼の連続鋳造方法。
- 前記溶鋼の炭素含有量が0.001質量%以上0.09質量%以下であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の鋼の連続鋳造方法。
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