以下、図面を参照しながら本実施形態に係わるX線コンピュータ断層撮影装置を説明する。
図1は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1の構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1は、架台10とコンソール100とを有する。例えば、架台10はCT検査室に設置され、コンソール100はCT検査室に隣接する制御室に設置される。架台10とコンソール100とは互いに通信可能に接続されている。架台10は、X線CT撮影のための撮影機構を搭載する。コンソール100は、架台10を制御するコンピュータである。
図1に示すように、架台10は、開口が形成された略円筒形状の回転フレーム11を有する。回転フレーム11は、回転部とも呼ばれている。図1に示すように、回転フレーム11には、開口を挟んで対向するように配置されたX線管13とX線検出器15とが取付けられている。回転フレーム11は、アルミ等の金属により円環形状に形成された金属枠である。架台10は、アルミ等の金属により形成されたメインフレームを有する。メインフレームは、固定部とも呼ばれている。回転フレーム11は、当該メインフレームにより回転可能に支持されている。
X線管13は、X線を発生する。X線管13は、熱電子を発生する陰極と、陰極から飛翔する熱電子を受けてX線を発生する陽極と、陰極と陽極との間に設けられたグリッド電極とを保持する真空管を含む。X線管13は高圧ケーブルを介してX線高電圧装置17に接続されている。陰極と陽極との間には、X線高電圧装置17により管電圧が印加される。管電圧の印加により陰極から陽極に向けて熱電子が飛翔する。陰極から陽極に向けて熱電子が飛翔することにより管電流が流れる。熱電子が衝突する陽極の一部分は焦点と呼ばれている。グリッド電極間には、X線高電圧装置17によりバイアス電圧が印加される。バイアス電圧の印加により陰極から陽極に飛翔する熱電子が偏向される。すなわち、バイアス電圧の調節により管電流、焦点サイズ及び焦点位置が調節される。
X線高電圧装置17は、変圧式X線高電圧装置、定電圧型X線高電圧装置、コンデンサ式X線高電圧装置、インバータ式X線高電圧装置等の如何なる形式にも適用可能である。X線高電圧装置17は、例えば、回転フレーム11に取付けられている。X線高電圧装置17は、架台制御回路33による制御に従い管電圧、管電流、X線焦点サイズ及びX線焦点位置等のX線パラメータを調節する。
X線管13にはコリメータ21が取り付けられている。コリメータ21は、X線管13から発生されたX線を整形する。具体的には、コリメータ21は、可変のスリット開口を有するX線遮蔽板を搭載する。コリメータ21は、架台駆動装置23からの動力を受けてX線遮蔽板を動かすことによりスリット開口幅を調節する。
図1に示すように、回転フレーム11は、架台駆動装置23からの動力を受けて、回転軸Z回りに一定の角速度で回転する。また、回転フレーム11は、架台駆動装置23からの動力を受けて、回転軸Zに水平に直交するチルト軸回りにチルトする。架台駆動装置23は、例えば、架台10に収容されている。
架台駆動装置23は、架台制御回路33からの駆動信号を受けて、スリット開口幅の調節のためにコリメータ21を駆動するための動力を発生する。また、架台駆動装置23は、架台制御回路33からの駆動信号を受けて、回転フレーム11を回転又はチルトするための動力を発生する。架台駆動装置23としては、ダイレクトドライブモータやサーボモータ等の任意のモータが用いられる。
回転フレーム11の開口にはFOVが設定される。回転フレーム11の開口内には寝台25に支持された天板が挿入される。天板には被検体が載置される。寝台25は、天板を移動自在に支持する。寝台25には寝台駆動装置27が収容されている。寝台駆動装置27は、架台制御回路33からの駆動信号を受けて天板を前後、昇降及び左右に移動させるための動力を発生する。寝台25は、被検体の撮影部位がFOV内に含まれるように天板を位置決めする。
X線検出器15は、X線管13から発生されたX線を検出する。具体的には、X線検出器15は、2次元湾曲面上に配列された複数の検出素子を有している。各検出素子は、シンチレータと光センサとを有する。シンチレータは、X線を光子に変換する物質により形成される。シンチレータは、入射X線を、当該入射X線量に応じた光子量の光に変換する。光センサは、シンチレータから発生した光を増幅して電気信号に変換する回路素子である。光センサとしては、例えば、光電子増倍管やフォトダイオード等が用いられる。なお、検出素子は、上記の通りX線を光子に変換してから検出する間接変換型でも良いし、X線を直接的に電気信号に変換する直接変換型であっても良い。
X線検出器15にはデータ収集回路19が接続されている。データ収集回路19は、X線検出器15により検出されたX線の線量に応じた電気信号をX線検出器15から読み出し、読み出した電気信号を可変の増幅率(以下、DASゲインと呼ぶ)で増幅し、ビュー期間に亘り電気信号を積分することにより当該ビュー期間に亘るX線の線量に応じたデジタル値を有する生データを収集する。DASゲインは、架台制御回路33により調節される。データ収集回路19は、例えば、生データを生成可能な回路素子を搭載したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により実現される。なお、本実施形態においては、キャリブレーションのために収集された生データを補正データと呼ぶことにする。データ収集回路19は、検出素子の読み出しチャネルの束ね単位を変更するためのスイッチを有している。当該束ね単位をDAS束ね単位と呼ぶことにする。当該スイッチは、例えば、積分信号を生成する積分回路の前段、又は積分信号を生データに変換するA/D変換器の前段に設けられる。データ収集回路19は、架台制御回路33からの指示に従いスイッチを制御してDAS束ね単位を切り替える。
図1に示すように、架台制御回路33は、コンソール100の処理回路101からの撮影条件に従いX線CT撮影を実行するために、X線高電圧装置17、データ収集回路19、架台駆動装置23及び寝台駆動装置27を同期的に制御する。本実施形態に係る架台制御回路33は、補正データを収集するためのX線CT撮影(以下、補正データ収集スキャン)を実行する。ハードウェア資源として、架台制御回路33は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の処理装置(プロセッサ)とROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶装置(メモリ)とを有する。また、架台制御回路33は、ASICやフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)により実現されても良い。
図1に示すように、コンソール100は、処理回路101、表示回路103、入力回路105及び記憶回路107を有する。処理回路101、表示回路103、入力回路105及び記憶回路107間のデータ通信は、バス(bus)を介して行われる。
処理回路101は、ハードウェア資源として、CPUあるいはMPU、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。処理回路101は、各種プログラムの実行により前処理機能111、再構成機能113、画像処理機能115、撮影計画機能117及びシステム制御機能119を実現する。なお、前処理機能111、再構成機能113、画像処理機能115、撮影計画機能117及びシステム制御機能119は、一の基板の処理回路101により実装されても良いし、複数の基板の処理回路101により分散して実装されても良い。
前処理機能111において処理回路101は、架台10から伝送された生データに対数変換等の前処理を施す。前処理後の生データは、投影データとも呼ばれる。また、処理回路101は、架台10から伝送された補正データに基づいてキャリブレーションを実行する。
再構成機能113において処理回路101は、前処理後の生データに基づいて被検体に関するCT値の空間分布を表現するCT画像を発生する。画像再構成アルゴリズムとしては、FBP(filtered back projection)法や逐次近似再構成法等の既存の画像再構成アルゴリズムが用いられれば良い。
画像処理機能115において処理回路101は、再構成機能113により再構成されたCT画像に種々の画像処理を施す。例えば、処理回路101は、当該CT画像にボリュームレンダリングや、サーフェスボリュームレンダリング、画素値投影処理、MPR(Multi-Planer Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の3次元画像処理を施して表示画像を生成する。
撮影計画機能117において処理回路101は、補正データ収集スキャンに関する撮影計画を、自動的又はユーザによる入力回路105を介した指示に従い立案する。
システム制御機能119において処理回路101は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1の統括的に制御する。具体的には、処理回路101は、記憶回路107に記憶されている制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従ってX線コンピュータ断層撮影装置1の各部を制御する。
表示回路103は、補正データ収集スキャンの計画画面やCT画像等の種々のデータを表示する。表示回路103としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。
入力回路105は、ユーザからの各種指令を入力する。具体的には、入力回路105は、入力機器と入力インタフェースとを有する。入力機器は、ユーザからの各種指令を受け付ける。入力機器としては、キーボードやマウス、トラックボール、ジョイスティック、各種スイッチ等が利用可能である。入力インタフェースは、入力機器からの出力信号をバスを介して処理回路101に供給する。
記憶回路107は、種々の情報を記憶するHDDやSSD、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、記憶回路107は、CD−ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。例えば、記憶回路107は、本実施形態に係る補正データ収集スキャン等に関する制御プログラム等を記憶する。
以下、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1の動作について詳細に説明する。
上記の通り、本実施形態に係る架台制御回路33は、補正データを収集するために補正データ収集スキャンを実行する。補正データ収集スキャンにおいては、空気(すなわち、ファントム及び被検体なし)又は水等の基準物質を主体としたファントムをCTスキャンすることにより補正データが収集される。補正データは、CT値換算係数のキャリブレーションや、X線管13やX線検出器15の位置ずれ等のキャリブレーション等に用いられる。補正データは、CT撮影パラメータが取り得る値毎に収集される。本実施形態に係るCT撮影パラメータとしては、焦点サイズ、焦点位置、管電圧、管電流、DASゲイン、スリット開口幅及びDAS束ね単位等の多くの種類がある。X線検出器15の出力又は感度は、回転軸Z回りの角度(以下、回転角度と呼ぶ)に対する依存性を有するので、CT撮影パラメータの種類及び取り得る値毎に、異なる回転角度において補正データを収集する必要がある。従って補正データを効率的に収集する必要がある。
図14は、補正データを収集するための標準的な方法の概念を示す図である。なお、図14においてCT撮影パラメータは、焦点サイズであるとする。図14に示すように、小サイズの焦点(以下、小焦点と呼ぶ)に関する補正データ、中サイズの焦点(以下、中焦点と呼ぶ)に関する補正データ、大サイズの焦点(以下、大焦点と呼ぶ)に関する補正データを収集するものとする。標準的な方法においては、まず、焦点サイズを小焦点に設定してX線管13及びX線検出器15を一周回転させると共に補正データを収集し、次に焦点サイズを中焦点に設定してX線管13及びX線検出器15を一周回転させると共に補正データを収集し、最後に、焦点サイズを大焦点に設定してX線管13及びX線検出器15を一周回転させると共に補正データを収集する。このように、焦点サイズ毎にX線管13及びX線検出器15を周回させる必要があるため、焦点サイズの段数分だけX線管13及びX線検出器15を周回させる必要がある。このため、補正データの収集対象のCT撮影パラメータの種類及び段数が増加するにつれ、補正データの収集時間及び手間が増大する。
図2は、本実施形態に係る補正データ収集スキャンの概念を示す図である。なお、図2においても、CT撮影パラメータは、図14との比較のため、焦点サイズであるとする。図2に示すように、本実施形態に係る補正データ収集スキャンにおいては、各所定の単位角度範囲において焦点サイズを小焦点、中焦点及び大焦点に順番に切り替えながら補正データを収集する。このように、各所定の単位角度範囲において焦点サイズを小焦点、中焦点及び大焦点に切り替えるので、X線管13及びX線検出器15を一回転させる間に小焦点、中焦点及び大焦点に関する補正データを収集することができる。所定の単位角度範囲は、回転角度に対するX線検出器15の出力又は感度の変化を許容できる角度範囲、換言すれば、X線検出器15の出力又は感度の回転角度依存性を無視できる角度範囲に規定される。以下、この所定の角度範囲を単位許容角度範囲と呼ぶことにする。
本実施形態に係る架台制御回路33は、X線管13とX線検出器15との回転時(すなわち、回転フレーム11の回転時)において、X線高電圧装置17を制御してX線管13からX線を発生させると共に、X線高電圧装置17とデータ収集回路19との少なくとも一方を制御して補正データ収集対象の所定のCT撮影パラメータを、1回転の中で変化させる。より詳細には、本実施形態に係る架台制御回路33は、X線管13とX線検出器15との回転時(すなわち、回転フレーム11の回転時)において、X線高電圧装置17を制御してX線管13からX線を発生させると共に、X線高電圧装置17とデータ収集回路19との少なくとも一方を制御して補正データ収集対象のCT撮影パラメータを、各単位許容角度範囲において所定のパラメータ値範囲内で変化させる。
まず、本実施形態に係るCT撮影パラメータの収集シーケンスの構築について説明する。CT撮影パラメータの収集シーケンスは、撮影計画機能117において処理回路101により決定される。撮影計画機能117は、補正データ収集スキャンの計画時において実行される。撮影計画機能117において処理回路101は、まず、パラメータテーブルを利用して補正データ収集スキャンにおける収集条件を決定する。パラメータテーブルは、LUT(Look Up Table)又はデータベースにより実現される。
図3は、パラメータテーブルの一例を示す図である。図3に示すように、パラメータテーブルは、複数のCT撮影パラメータ各々に設定値を関連付けている。例えば、CT撮影パラメータとしては、焦点サイズ、焦点位置、管電圧、管電流、DASゲイン、スリット開口幅及びDAS束ね単位が登録されている。設定値としては、補正データ収集対象のCT撮影パラメータが取り得る値が登録されている。例えば、CT撮影パラメータが焦点サイズである場合、焦点サイズに係る設定値として小焦点、中焦点及び大焦点の離散値が関連付けられている。また、CT撮影パラメータが焦点位置である場合、焦点位置に係る設定値として−1cm〜+1cmまでの連続値が関連付けられる。各単位許容角度範囲において、設定値の下限値から上限値までのパラメータ値範囲に亘りCT撮影パラメータのパラメータ値が変化される。なお、図3に示す設定値は一例であり、これに限定されない。例えば、焦点サイズの設定値は、小焦点、中焦点及び大焦点の3サイズではなく、4以上のサイズであっても良いし、下限サイズから上限サイズまでの連続値であっても良い。CT撮影パラメータがDAS束ね単位である場合、DAS束ね単位に係る設定値として0.5mm、1.0mm、2.0mm、4.0mm及び8.0mmの離散値が関連付けられている。束ね態様は正方形を前提としている。この場合、例えば、設定値「0.5mm」は縦×横=0.5mm×0.5mmを意味する。束ね態様は長方形でも良い。
具体的には、処理回路101は、補正データ収集対象のCT撮影パラメータを、パラメータテーブルに登録されている複数のCT撮影パラメータの中から、自動的又はユーザによる入力回路105を介した指示に従い手動的に任意に選択する。CT撮影パラメータが選択されると処理回路101は、補正データ収集対象のCT撮影パラメータに、パラメータテーブルにおいて関連付けられた設定値を特定する。なお、補正データ収集対象のCT撮影パラメータの数は、1種類に限定されず、2種以上が選択されても良い。また、設定値は、パラメータテーブルに登録された値から、入力回路105等を介して任意の値に修正可能である。
撮影計画機能117において処理回路101は、単位許容角度範囲を、予め決定された複数の値の何れかの値に設定する。また、処理回路101は、単位許容角度範囲を、補正データ収集対象のCT撮影パラメータの種類に応じて設定しても良い。例えば、CT撮影パラメータの全ての設定値に切り替えるために必要な角度範囲に応じて単位許容角度範囲が決定される。CT撮影パラメータが焦点サイズであり、設定値が小焦点、中焦点及び大焦点である場合、単位許容角度範囲は、焦点サイズを小焦点、中焦点及び大焦点の全てに切り替えるために必要な角度範囲以上に設定される。この場合、処理回路101は、CT撮影パラメータの種類と単位許容角度範囲とを関連付けたテーブル又はデータベースを有し、当該テーブル又はデータベースを利用して、補正データ収集対象のCT撮影パラメータから単位許容角度範囲を自動的に決定する。
また、撮影計画機能117において処理回路101は、補正データ収集スキャンに関する収集条件に応じて単位許容角度範囲を決定しても良い。単位許容角度範囲の決定に利用される収集条件としては、例えば、CT撮影パラメータ、スライス厚及び回転フレーム11の回転速度が挙げられる。例えば、回転速度が高速である場合、X線管13やX線検出器15に作用する遠心力が大きくなりX線管13やX線検出器15のブレが大きいので、単位許容角度範囲が比較的小さい値に設定され、回転速度が低速である場合、X線管13やX線検出器15に作用する遠心力が小さくX線管13やX線検出器15のブレが小さいので、単位許容角度範囲が比較的大きい値に設定される。また、CT撮影パラメータである焦点サイズが大焦点である場合、単位許容角度範囲が比較的大きい値に設定され、焦点サイズが小焦点である場合、単位許容角度範囲が比較的小さい値に設定される。
CT撮影パラメータの種類とCT撮影パラメータの設定値と単位許容角度範囲とが決定されると処理回路101は、CT撮影パラメータの種類とCT撮影パラメータの設定値と単位許容角度範囲とに基づいてCT撮影パラメータの収集シーケンスを構築する。補正データ収集スキャンにおいて、被検体を撮影しないので画質は求められていない。従って、回転フレーム11を一周させる間に切り替えられるCT撮影パラメータの段数が、画質が要求される通常スキャンの段数に比して多い場合であっても、処理回路101は、単位許容角度範囲において全ての設定値に切り替えるように収集シーケンスを構築する。具体的には、回転フレーム11が一周する間に焦点サイズを小焦点、中焦点及び大焦点まで順番に切り替えると画質が著しく劣化するので、画質が要求される通常スキャンにおいては、回転フレーム11が一周する間に焦点サイズを多段で切り替える実益はない。補正データ収集スキャンにおいては、画質が要求されないので、画質を確保するための段数の制約を無視できる。すなわち、本実施形態に係る補正データ収集スキャンにおいては、各単位許容角度範囲において小焦点、中焦点及び大焦点の全てのサイズに切り替える事が可能になり、小焦点、中焦点及び大焦点に関する補正データを迅速に収集することが可能になる。すなわち、処理回路101は、補正データの収集効率を重視した、画質が要求される通常スキャンでは許容されない段数、変化態様及び変化度合でCT撮影パラメータのパラメータ値を変化させるような収集シーケンスを構築できる。構築された収集シーケンスに関する情報(以下、収集シーケンス情報)は、記憶回路107に記憶される。
以下、補正データ収集スキャンの種々の実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1に係る架台制御回路33は、回転フレーム11の回転時においてX線管13からX線を発生させると共に、補正データ収集対象の1種類のCT撮影パラメータを、各単位許容角度範囲において離散的に変化させる。
図4は、実施例1に係る補正データ収集スキャンに関するCT撮影パラメータの収集シーケンスを簡易に示す図である。収集シーケンスは、管球位置又はビューの経過に伴うCT撮影パラメータのパラメータ値の変化を示す。図4の縦軸はCT撮影パラメータのパラメータ値に規定され、横軸はX線管13の回転軸Z回りの回転角度(以下、管球位置と呼ぶ)[°]に規定される。図4においては、焦点サイズをCT撮影パラメータの具体例に挙げている。焦点サイズは、小さい方から順番に第1サイズ、第2サイズ、第3サイズ及び第4サイズと称することにする。単位許容角度範囲RAは、例えば、30°に設定される。
実施例1に係る架台制御回路33は、補正データ収集スキャンの開始指示を受けると、記憶回路107に記憶された収集シーケンス情報に従いX線高電圧装置17、データ収集回路19及び架台駆動装置23を同期的に制御して、補正データ収集スキャンを実行する。具体的には、架台制御回路33は、架台駆動装置23を制御して回転フレーム11を回転軸Z回りに回転させる。回転フレーム11の回転速度が一定速度に到達し、X線管13の管球位置が補正データ収集スキャンの開始管球位置に到達すると架台制御回路33は、X線高電圧装置17を制御してX線管13からX線を照射させる。データ収集回路19は、X線検出器15を介して補正データをビュー毎に収集する。ビュー毎の補正データは、ビュー数とCT撮影パラメータの種類と設定値とに関連付けて記憶回路107に記憶される。
X線の照射とともに架台制御回路33は、X線高電圧装置17とデータ収集回路19との少なくとも一方を制御して、各単位許容角度範囲RAにおいてCT撮影パラメータのパラメータ値を複数の設定値に順番に切り替える。例えば、図4の場合、架台制御回路33は、X線高電圧装置17を制御して、各単位許容角度範囲RAにおいて焦点サイズを第1サイズ、第2サイズ、第3サイズ及び第4サイズに順番に切り替える。各焦点サイズは一定角度間隔(以下、安定期と呼ぶ)に亘り維持される。安定期は、単位許容角度範囲RAと当該単位許容角度範囲RAにおいて切り替えられる設定値の段数とに基づいて、処理回路101の撮影計画機能117により決定される。例えば、処理回路101は、単位許容角度範囲RAを段数で除した値を安定期に決定する。図4の場合、単位許容角度範囲RAが30°であり、段数が4であるので、安定期は30°/4より小さい値に決定される。第1の実施例においては各単位許容角度範囲RAでの焦点サイズの切替順序は全て昇順であり同一である。
このように、架台制御回路33は、回転フレーム11が一周する間、各単位許容角度範囲RAにおいて焦点サイズを第1サイズ、第2サイズ、第3サイズ及び第4サイズに順番に切り替えながら、データ収集回路19を制御して補正データを収集する。これにより、第1サイズ、第2サイズ、第3サイズ及び第4サイズに関する補正データを、回転フレーム11が一周する間に収集することができる。
なお、図4においてはCT撮影パラメータが焦点サイズであるとしたが、焦点位置、管電圧、管電流、DASゲイン又はスリット開口幅であっても良い。CT撮影パラメータが焦点位置、管電圧、管電流又はスリット開口幅である場合、架台制御回路33は、架台駆動装置23を制御して当該CT撮影パラメータのパラメータ値を変化させる。CT撮影パラメータがDASゲインである場合、架台制御回路33は、データ収集回路19を制御して当該CT撮影パラメータのパラメータ値を変化させる。
CT撮影パラメータの段間(過渡期)においてはCT撮影パラメータの値が安定していない。従って架台制御回路33は、過渡期においてはX線高電圧装置17を制御してX線管13からのX線の照射を停止しても良い。また、架台制御回路33は、過渡期においてデータ収集回路19を制御して補正データの収集を停止しても良い。あるいは記憶回路107は、過渡期においてデータ収集回路19により収集された補正データを破棄しても良い。
なお、図4に示すように、各単位許容角度範囲RAにおいてCT撮影パラメータのパラメータ値は、下限値から上限値まで上昇するものとした。しかしながら、パラメータ値の変化態様は、これに限定されない。
図5、図6及び図7は、実施例1に係る補正データ収集スキャンに関するCT撮影パラメータの他の収集シーケンスを示す図である。図5、図6及び図7は、段間の過渡期についても図示している。図5、図6及び図7のCT撮影パラメータは、管電圧[kV]であるとする。管電圧の設定値は、下限値である第1管電圧値、第2管電圧値、第3管電圧値及び上限値である第4管電圧値であるものとする。
図5の場合、X線高電圧装置17は、各単位許容角度範囲RAにおいて、管電圧を下限値から上限値まで離散的に上昇させた後、上限値から下限値まで離散的に下降させる。単位許容角度範囲RA毎に、上記の下限値から上限値までの上昇変化と上限値から下限値までの下降変化とが交互に繰り返される。X線高電圧装置17は、各単位許容角度範囲RAにおいて、3ビュー(安定期)に亘り管電圧を一定値に保持し、1ビュー(過渡期)の間に管電圧値を切り替える。
図6の場合、X線高電圧装置17は、各単位許容角度範囲RAにおいて、管電圧を下限値とその他の設定値とを、当該その他の設定値を上昇させつつ交互に繰り返し、その後、上限値とその他の設定値とを、当該その他の設定値を下降させつつで交互に繰り返す。単位許容角度範囲RA毎に、上記のジグザグ状の変化が繰り返される。X線高電圧装置17は、各単位許容角度範囲RAにおいて、3ビュー(安定期)に亘り管電圧を一定値に保持し、1ビュー(過渡期)の間に管電圧値を切り替える。
図7の場合、各単位許容角度範囲RAにおいて、デュアルエナジー(DE:Dual Energy)用の管電圧に関する補正データとシングルエナジー(SE:Single Energy)用の管電圧に関する補正データとが順番に収集される。この場合、X線高電圧装置17は、各単位許容角度範囲RAにおいて、管電圧を、デュアルエナジー用の管電圧値とシングルエナジー用の管電圧値とに順番に切り替える。デュアルエナジー用の管電圧値は、例えば、低電圧値(第1管電圧値)と高電圧値(第4管電圧値)との2種類が挙げられる。シングルエナジー用の管電圧値は、例えば、第1管電圧値、第2管電圧値、第3管電圧値及び第4管電圧値の4種類が挙げられる。X線高電圧装置17は、各単位許容角度範囲RAにおいて、まず、デュアルエナジー用補正データ収集のため、管電圧を低電圧値(第1管電圧値)と高電圧値(第4管電圧値)との間で交互に繰り返し、その後、シングルエナジー用補正データ収集のため、管電圧を第1管電圧値、第2管電圧値、第3管電圧値及び第4管電圧値に順番に切り替える。X線高電圧装置17は、各単位許容角度範囲RAにおいて、3ビュー(安定期)に亘り管電圧を一定値に保持し、1ビュー(過渡期)の間に管電圧値を切り替える。
上記の通り、実施例1に係る架台制御回路33は、回転フレーム11の回転時においてX線管13からX線を発生させると共に、補正データ収集対象の1種類のCT撮影パラメータを、単位許容角度範囲毎に離散的に変化させる。実施例1に係る架台制御回路33は、回転フレーム11が1回転する間に、1種類のCT撮影パラメータに係る複数の設定値に関する全ての補正データを収集できるので、これら補正データを迅速に収集することができる。
(実施例2)
実施例1においてCT撮影パラメータは離散的に変化するものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。実施例2に係る架台制御回路33は、補正データ収集対象の1種類のCT撮影パラメータを連続的に変化させる。
図8は、実施例2に係る補正データ収集スキャンに関するCT撮影パラメータの収集シーケンスを示す図である。なお、図8においては、図4と同様、焦点サイズをCT撮影パラメータの具体例に挙げている。図8の上段、中段及び下段の縦軸は焦点サイズに規定され、横軸は管球位置[°]に規定される。実施例2に係る焦点サイズの設定値は、下限値から上限値まで連続値をとる。
図8に示すように、実施例2に係る架台制御回路33は、X線高電圧装置17を制御し、単位許容角度範囲RA毎に、焦点サイズを、下限値と上限値との間の範囲において連続的に変化させる。具体的には、連続的な変化の仕方としては種々の態様が可能である。例えば、図8の上段に示すように、X線高電圧装置17は、焦点サイズを、各単位許容角度範囲RAにおいて下限値から上限値まで線形的に変化する。この場合、焦点サイズは三角波状に変化することとなる。図8の中段に示すように、X線高電圧装置17は、各単位許容角度範囲RAにおいて、焦点サイズを、下限値から上限値まで線形的に変化させ、その後、上限値から下限値まで線形的に変化させる。この場合、焦点サイズは、のこぎり波状に変化することとなる。焦点サイズの昇順変化と降順変化とを交互に繰り返すことにより、焦点サイズの急激な変化を抑制することができる。図8の下段に示すように、X線高電圧装置17は、各単位許容角度範囲RAにおいて、焦点サイズを、下限値から上限値まで非線形的に変化させ、その後、上限値から下限値まで非線形的に変化させる。より詳細には、下限値及び上限値の近傍においては焦点サイズの時間変化率が小さく、中途部においては焦点サイズの時間変化率が大きくなるように変化される。この場合、焦点サイズは、サイン波状に変化することとなる。このように、下限値及び上限値近傍において時間変化率を小さくすることにより、昇順変化と降順変化との切替における焦点サイズの急激な変化を抑制することができる。
焦点サイズ等のCT撮影パラメータの設定値の変化態様は、ユーザにより入力回路105を介して指定可能である。撮影計画機能117において処理回路101は、指定された変化態様に従い各単位許容角度単位においてCT撮影パラメータの設定値が変化するように収集シーケンスを構築する。
上記の通り、実施例2に係る架台制御回路33は、回転フレーム11の回転時においてX線管13からX線を発生させると共に、補正データ収集対象の1種類のCT撮影パラメータを、単位許容角度範囲毎に連続的に変化させる。実施例2に係る架台制御回路33は、回転フレーム11が1回転する間に、1種類のCT撮影パラメータに係る複数の設定値に関する全ての補正データを収集できるので、これら補正データを迅速に収集することができる。
(実施例3)
実施例1及び2に係るCT撮影パラメータは一種類であるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。実施例3に係るCT撮影パラメータは2種類であるとする。
図9は、実施例3に係る補正データ収集スキャンに関するCT撮影パラメータの収集シーケンスを示す図である。なお、図9においては、焦点位置と焦点サイズとをCT撮影パラメータの具体例に挙げる。図9の縦軸は焦点位置及び焦点サイズに規定され、横軸は管球位置[°]に規定される。実施例3に係る焦点位置の設定値は、下限値から上限値まで連続的に変化し、焦点サイズの設定値は、下限値から上限値まで段階的に変化する。
まず、2種類のCT撮影パラメータに関する補正データ収集スキャンの収集条件の決定について説明する。撮影計画機能117において処理回路101は、まず、自動的又はユーザによる入力回路105を介した指示に従い手動的に、2種類のCT撮影パラメータを選択し、選択された2種類のCT撮影パラメータ各々の設定値を、パラメータテーブルを利用して決定する。例えば、図9の場合、CT撮影パラメータとして焦点サイズと焦点位置とが選択される。焦点サイズの設定値は第1サイズ、第2サイズ、第3サイズ及び第4サイズの離散値であり、焦点位置の設定値は下限値から上限値までの連続値である。
次に、処理回路101は、選択された2種類のCT撮影パラメータのうちの一方を低速で設定値を切り替えるCT撮影パラメータ(以下、低速切替パラメータと呼ぶ)に設定し、他方を低速切替パラメータに比して高速で設定値を切り替えるCT撮影パラメータ(以下、高速切替パラメータと呼ぶ)に設定する。例えば、処理回路101は、選択された2種類のCT撮影パラメータのうちの設定値が離散値であるCT撮影パラメータを低速切替パラメータに設定し、設定値が連続値であるCT撮影パラメータを高速切替パラメータに設定する。処理回路101は、選択された2種類のCT撮影パラメータの双方の設定値が離散値である場合、当該2種類のCT撮影パラメータの切替可能速度を比較し、切替可能速度が速い方のCT撮影パラメータを高速切替パラメータに設定し、切替可能速度が遅い方のCT撮影パラメータを低速切替パラメータに設定する。例えば、図9の場合、焦点サイズの設定値が離散値であり、焦点位置の設定値が連続値であるので、焦点サイズが低速切替パラメータに設定され、焦点位置が高速切替パラメータに設定される。
そして処理回路101は、各単位許容角度範囲RAにおいて低速切替パラメータの設定値が所定の態様で離散的に変化し、低速切替パラメータの各設定値において高速切替パラメータが所定の態様で変化するように、収集シーケンスを構築する。低速切替パラメータの各設定値の安定期の時間長は、高速切替パラメータを全ての設定値に変化させるのに必要な時間よりも長い時間に設定される。例えば、図9の場合、各単位許容角度範囲RAにおいて、焦点サイズが第1サイズから第4サイズまで一定間隔で順番に変化し、各焦点サイズにおいて焦点位置が下限値から上限値まで線形的に変化するように、収集シーケンスが構築される。単位許容角度範囲RAは、低速切替パラメータを全ての設定値に変化させるのに必要な角度範囲を有しているものとする。収集シーケンス情報は、記憶回路107に記憶される。
実施例3に係る架台制御回路33は、補正データ収集スキャンの開始指示を受けると、記憶回路107に記憶された収集シーケンス情報に従いX線高電圧装置17、データ収集回路19及び架台駆動装置23を同期的に制御して、補正データ収集スキャンを実行する。具体的には、架台制御回路33は、架台駆動装置23を制御して回転フレーム11を回転軸Z回りに回転させる。回転フレーム11の回転速度が一定速度に到達し、X線管13の管球位置が補正データ収集スキャンの開始管球位置に到達すると架台制御回路33は、X線高電圧装置17を制御してX線管13からX線を照射させる。データ収集回路19は、X線検出器15を介して補正データをビュー毎に収集する。ビュー毎の補正データは、ビュー数とCT撮影パラメータの種類と設定値とに関連付けて記憶回路107に記憶される。
X線の照射とともに架台制御回路33は、X線高電圧装置17とデータ収集回路19との少なくとも一方を制御して、各単位許容角度範囲RAにおいて、低速切替パラメータのパラメータ値を複数の設定値に順番に変化させつつ、低速切替パラメータのパラメータ値が各設定値を維持している期間において、高速切替パラメータのパラメータ値を複数の設定値に順番に変化させる。例えば、図9の場合、架台制御回路33は、各単位許容角度範囲RAにおいて、焦点サイズを下限値から上限値まで離散的に変化させつつ、焦点サイズが一の設定値を維持している期間において、焦点位置を下限値から上限値まで連続的に変化させる。架台制御回路33は、回転フレーム11が一周する間、単位許容角度範囲RA毎に、低速切替パラメータと高速切替パラメータとを全ての設定値に亘り変化させながら、データ収集回路19を制御して補正データを収集する。これにより、低速切替パラメータの設定値と高速切替パラメータの設定値との全ての組合せに関する補正データを、回転フレーム11が一周する間に収集することができるので、これら補正データを迅速に収集することができる。
2種類のCT撮影パラメータは上記例にのみ限定されない。例えば、図10に示すように、CT撮影パラメータは、焦点位置とDAS束ね単位とに設定される。図10の縦軸は焦点位置及びDAS束ね単位に規定され、横軸は管球位置[°]に規定される。実施例3に係る焦点位置の設定値は、下限値から上限値まで連続的に変化し、DAS束ね単位の設定値は、下限値(図3の場合、0.5mm)から上限値(図3の場合、8.0mm)まで段階的に変化される。この場合においても上記方法により、回転フレーム11が一周する間に焦点位置とDAS束ね単位とを入れ子状に順番に変化されることができる。これにより、焦点位置とDAS束ね単位とに係る補正データを迅速に収集することができる。
(実施例4)
実施例1、2及び3においては一周で全ての補正データを収集できるものとした。しかしながら、単位許容角度範囲内においてCT撮影パラメータを全ての設定値に亘り変化させることが出来ない等のため、1周で全ての補正データを収集できない場合がある。実施例4に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、周回数を決定する。
撮影計画機能117において処理回路101は、単位許容角度範囲とCT撮影パラメータを全ての設定値に亘り変化させるために必要最小限の角度範囲(以下、必要最小限角度範囲と呼ぶ)との比率に基づいて、補正データ収集スキャンにおける回転フレーム11の周回数を決定する。必要最小限角度範囲が単位許容角度範囲以下である場合、処理回路101は、周回数を1周に設定する。必要最小限角度範囲が単位許容角度範囲よりも大きく且つ単位許容角度範囲の2倍以下である場合、処理回路101は、周回数を2周に設定する。同様に、必要最小限角度範囲が単位許容角度範囲の2倍よりも大きく且つ単位許容角度範囲の3倍以下である場合、処理回路101は、周回数を3周に設定する。必要最小限角度範囲は、例えば、補正データ収集対象のCT撮影パラメータの段数(設定値の個数)とパラメータ値の変化速度とに基づいて決定される。
図11は、周回数が2である場合の収集シーケンスを示す図である。図11において、一周目の管球位置は0°から360°であり、二周目の管球位置は360°から720°である。高速切替パラメータが管電圧[kV]であり、低速切替パラメータが焦点サイズであるとする。図11に示すように、管電圧[kV]及び焦点サイズの変化速度が比較的遅いため、一の単位許容角度範囲RAにおいて、管電圧[kV]及び焦点サイズの全ての組合せを実現することができないものとする。この場合、上記の周回数の決定方法に従い、周回数が2周に決定される。
周回数が2周である場合、架台制御回路33は、低速切替パラメータの変化順序を一周目と二周目とで逆転させる。これにより、各角度範囲において低速切替パラメータと高速切替パラメータとの設定値の全ての組合せに関する補正データを収集することができる。例えば、図11に示すように、一周目においては焦点サイズが第1サイズから第4サイズまで昇順で変化され、二周目においては焦点サイズが第4サイズから第1サイズまで降順で変化される。従って、例えば、一周目の0°から30°の単位許容角度範囲RAでは第1サイズ及び第2サイズに係る補正データが収集され、二周目の同一範囲(360°から390°)の単位許容角度範囲RAでは第3サイズ及び第4サイズに係る補正データが収集される。よって、当該角度範囲において焦点サイズと管電圧との設定値の全ての組合せに関する補正データを収集することができる。
なお、一周目と二周目とで設定値の変化順序を逆転させる対象は低速切替パラメータのみに限定されない。すなわち、低速切替パラメータと共に高速切替パラメータの設定値の変化順序を逆転させても良い。また、CT撮影パラメータが一種類の場合においても一周目と二周目とで設定値の変化順序を逆転させても良い。
(実施例5)
実施例5に係るX線コンピュータ断層撮影装置1は、補正データと共にX線検出器15の残光特性(アフターグロー:After Glow)を計測する。
図12は、実施例5に係る補正データの収集シーケンスを示す図である。なお、図12のCT撮影パラメータは、一例として、管電流[mA]であるとする。図12に示すように、架台制御回路33は、各単位許容角度範囲RAにおいて、管電流のパラメータ値を下限値から上限値まで離散的に変化させる。架台制御回路33は、管電流の変化タイミングに同期してX線高電圧装置17を制御してパルスX線を繰り返し照射する。X線照射停止期間ROにおいてX線検出器15が出力する電気信号の波高値は、管電圧や管電流に依存する非線形な変化を呈する。架台制御回路33は、データ収集回路19を制御し、パルスX線の照射期間すなわち管電流の安定期だけでなく、X線照射停止期間ROにおいてもX線検出器15を介して補正データを収集する。X線照射停止期間ROにおいて収集された補正データは、X線検出器15のアフターグローの影響が大きい。X線照射停止期間ROにおいて収集された補正データをアフターグローデータと呼ぶことにする。アフターグローデータは、管球位置とCT撮影パラメータの種類と直前の設定値とに関連付けて記憶回路107に記憶される。
このように、実施例5において架台制御回路33は、CT撮影パラメータの段間においてX線照射を停止しつつ、当該X線照射停止期間においてアフターグローデータを収集するものとした。これにより、アフターグローデータの収集効率も高めることができる。
なお、上記実施例においては、残光特性データは、CT撮影パラメータの段間において収集されるものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。アフターグローデータは、X線照射停止期間であれば、如何なるタイミングで収集されても良い。
図13は、実施例5に係る他の収集シーケンスを示す図である。図13に示すように、架台制御回路33は、X線高電圧装置17を制御してX線の照射と停止とを繰り返す。架台制御回路33は、X線照射期間ONにおいてX線高電圧装置17を制御してX線を照射する。X線照射期間ONとX線照射停止期間OFFとは如何なる管球位置範囲に設定されても良い。X線照射期間ONにおいて架台制御回路33は、CT撮影パラメータのパラメータ値を変化させずに、単にX線を照射させても良いし、補正データの収集のため、X線高電圧装置17とデータ収集回路19との少なくとも一方を制御してCT撮影パラメータのパラメータ値を変化させても良い。X線照射停止期間OFFにおいて架台制御回路33は、データ収集回路19を制御してアフターグローデータを収集する。
アフターグローデータの収集においても画質が求められないので、上記の通り、画像化を目的としたスキャンに比して高頻度又は長時間に亘りX線照射停止期間を設けることができる。従って、実施例5に係る架台制御回路33は、効率良くアフターグローデータを収集することが可能になる。
上記の実施例1−5で述べたように、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1は、X線管13、X線検出器15、回転フレーム11、架台制御回路33及びデータ収集回路19を有する。X線管13は、X線を発生する。X線検出器15は、X線管13から発生されたX線を検出する。回転フレーム11は、X線管13とX線検出器15とを回転軸Z回りに回転可能に支持する。架台制御回路33は、X線管13とX線検出器15との回転時において、X線管13からX線を発生させると共に、補正データ収集対象の所定のCT撮影パラメータを、X線検出器15の出力又は感度の変化を許容できる単位許容角度範囲毎に、所定のパラメータ値範囲内で変化させる。データ収集回路19は、X線管13とX線検出器15との回転時において、所定のCT撮影パラメータの所定のパラメータ値範囲に関する補正データを、X線検出器15を介して収集する。
上記構成により、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1は、X線検出器の出力又は感度の管球位置に対する依存性に基づく単位許容角度範囲毎にCT撮影パラメータを所定のパラメータ値範囲で変化させる。補正データ収集スキャンは、補正データの収集が目的であるため、被検体を撮影する通常スキャンとは異なり、画質が要求されない。すなわち、補正データ収集スキャンにおいては、画質が要求される通常スキャンでは許容されない段数、変化態様及び変化度合でCT撮影パラメータのパラメータ値を変化させることができるので、補正データの収集効率を重視した収集シーケンスを構築できる。従って、CT撮影パラメータの設定値が多段に亘る場合においても、従来に比して少周回数で全ての設定値に関する補正データを収集することができる。
上記の少なくとも一以上の実施形態によれば、補正データを高効率で収集することが可能になる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。