JP2019030394A - 衣類 - Google Patents
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Abstract
【課題】着用者の身体に負担や不快感を与える外部的な拘束や着用者の意識的な動作によることなく、前述の体性反射、特に深部反射による筋肉の反応を活用することで、単に着用するだけで無意識かつ自発的に身体の姿勢を矯正可能な衣類を提供する。【解決手段】着用時において人体の特定の表在性受容器に当接する位置の布地の裏面に弾性小突起を配設し、該表在性受容器に触刺戟を与えることで体性反射を誘起可能に構成したことを特徴とする衣類。【選択図】 図3
Description
本発明は、人体の皮膚に分布する特定の感覚器官である受容器に微小な触刺戟を与えて無意識下での体性反射を誘起することで身体の姿勢を改善できる衣類に関するものである。
人体は、外部からの物理的刺戟を受容器によって感知している。受容器には、皮膚、粘膜、皮下組織に分布する表在性受容器と、筋肉、腱、靭帯、関節、骨膜等に分布する深部受容器とがあるが、触覚・圧覚といった機械的刺戟は、マイスナー小体等の「メカノレセプター」と総称される表在性受容器により感知される。また、メカノレセプターが微小な触刺戟を感知すると、その部位によって無意識に特定の筋肉を収縮させて運動としての反応を生じる体性反射を誘起することが知られている。体性反射には、関係する筋肉の運動を直接に誘起する深部反射と皮膚表面が反応する表在反射とがあり、膝をハンマーで叩くと無意識に足が上がる膝蓋腱反射は代表的な深部反射の一つである。また、体性反射の現れ方には屈曲反射や姿勢反射などがある。屈曲反射は刺戟を受けた部位を無意識に刺戟から遠ざけようと屈筋が収縮する反射である。一方、姿勢反射は体の姿勢を維持しようと関係する筋肉の動きを無意識にコントロールする反射である。そのため、体性反射は、皮膚の表在受容器への物理的刺戟身体の姿勢や、身に着ける物(衣服や履物)と姿勢との関係に重要な影響を及ぼしている。
日本人の身体の姿勢は欧米人と比べ、起立時には猫背気味で顔(顎)が前に出て、歩行時には踵が外旋(爪先が内旋)して内股気味となる傾向がある。これは、図1に示すように、本来はS字カーブを描いて頭部の重量を身体の軸線上で支えるべき脊柱が逆C字型に湾曲したり、ほとんど湾曲のないI字型となっており、やはり本来は前傾しているべき骨盤が後傾していたり、腰椎の第4、第5椎が過度に屈曲した「反り腰」になっているためである。脊柱がS字を描かず骨盤が後傾していると両肩がすぼまって下がり、胸部や腹部が圧迫される。こうした姿勢は、肩凝りや腰痛、内臓の圧迫、外反母趾の原因となるだけでなく、踵に体重が偏り、足趾が浮き上がって使われない歩行姿勢となって、高齢者や子供の転倒事故の要因ともなっている。また、逆に、猫背を気にする余り意識的に腰を前に突き出した姿勢を取り続けると、「反り腰」が極端化して腰椎に負担が掛かり、脊柱が不自然なS字カーブを描くにも関わらずやはり頭が身体の重心よりも前に出た状態となる。こうした傾向は、座敷に座る生活等の歴史的な生活慣習によって形作られた日本人の身体が、欧米式の椅子に座り靴を履く文化に適応する過程で生じ、近年ではコンピュータやスマホの使用による不自然な姿勢が常態化していることも関係していると思われる。言い換えれば、身体の不自然な姿勢は本人が望まずとも、衣服や履物等、身体に干渉するものによって形作られ、脳は、いったん習慣化して出来上がった骨格の位置や筋肉の動き・使い方を「楽なもの」として維持しようとするため(ホメオスタシス)、意識的に良い姿勢を心がけても定着しにくいのである。
こうした身体の姿勢を矯正する手段として、従来から特許文献1〜4のような各種の姿勢矯正具が提案されている。例えば、特許文献1に開示された背筋矯正具は、非伸縮性の板状部材・扁平筒状部材を伸縮性の肩掛けベルト・胴部ベルトにて背筋に沿わせて装着し、猫背を矯正するものである。特許文献2に開示された姿勢矯正衣料は、通常の衣料の上半身部に帯状の張力部を配し、その緊縛力で肩甲骨を内側に引き寄せて脊柱のS字カーブを維持させようとするものである。特許文献3に開示された姿勢改善衣類は、衣類本体よりも伸縮力の強い難伸縮性領域を後見頃に設け、肩甲骨を下制誘導することにより胸郭の拡張と胸椎の進展を促して猫背を矯正するものである。特許文献4に開示されたウェアは、たとえば上半身用ウェアの後見頃における肩甲骨に沿った縦向きの部位にファスナーを設け、ファスナーの開閉を繰り返す腕や腰の動作によって身体の歪み補正効果を期待するものである。
特開2003−38536号公開特許公報
特開2006−320640号公開特許公報
特開2010−42097号公開特許公報
特開2017−12675号公開特許公報
しかし、特許文献1〜3に係る先行技術はいずれも、衣類に設けた部材によって外部から身体を機械的に拘束して望ましい姿勢を強制するものであり、その拘束感は着用者にとって不快なものとなるだけでなく、姿勢の歪みに直接関与していない筋肉や関節に無用な負荷を課すことによる悪影響が生じる。また、非着用時には前述のホメオスタシスによって姿勢が逆戻りする可能性が高く、少なくとも着用者の身体を内発的に望ましい姿勢に導く自然な効果を奏するものではない。一方、特許文献4に係る先行技術の効果は、着用者によるファスナーの開閉動作が前提とするいわばストレッチ運動用の用具であり、姿勢の矯正には着用者の意識的な努力を要することから、効果の継続性に問題がある。なお、これら以外にも、衣類の内側に身体各所のツボ(経絡孔)を押圧する突起を設ける構成の先行技術が多数提案されてはいるが、指圧による筋肉の凝りの緩和は、必ずしも身体の姿勢を矯正する効果を奏するものではない。
本発明は、以上の先行技術の有する問題に鑑み、着用者の身体に負担や不快感を与える外部的な拘束や着用者の意識的な動作によることなく、前述の体性反射、特に深部反射による筋肉の反応を活用することで、単に着用するだけで無意識かつ自発的に身体の姿勢を矯正可能な衣類を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る衣類は、着用時において人体の特定の表在性受容器に当接する位置の布地の裏面に弾性小突起を配設し、該表在性受容器に触刺戟を与えることで体性反射を誘起可能に構成している。
衣類は、着用者の体格・体型に応じて着用した際に身体に密着する形状・サイズのものとし、半袖又は長袖のTシャツのような上半身衣、ボクサーブリーフあるいは股引のような下半身衣、靴下、あるいは上半身衣と下半身衣が合体したボディスーツが好適である。
弾性小突起は、衣類の生地の裏面に帯状又は点状のシリコンゴム等の軟質部材を貼付して構成可能であり、皮膚に当接する表面は、過度な刺戟を与えないよう凹凸のない滑らかな形状とする。たとえば、断面蒲鉾型の軟質部材を接着剤で生地に接着することが好適であるが、シリコンゴム等を必要な大きさ・形状に生地上に直接押し出して乾燥付着させて構成することもできる。ところで、表在性受容器は、衣類が触れる範囲の皮膚にも広範に分布するが、特に身体全体の姿勢に影響が大きい主なものとしては、図2に示したようなものが挙げられる。従って、衣類の種類と矯正すべき姿勢の歪みに応じて、適切な箇所に弾性小突起を配設する。
なお、弾性小突起の大きさは、当接させる身体の箇所に応じて適宜設定する。一般に手足のように表在性受容器の密度の大きな敏感な箇所では厚さ0.5mm、幅2.0mm程度が好適であり、胴体や脚部のように比較的密度が小さな箇所でも厚さ1mm以下、幅1cm以下とすることが望ましく、長さは当接すべき範囲の皮膚に対応させるものとする。弾性小突起の目的はあくまで微細な触刺戟による無意識の体性反射の誘起であり、前記以上の大きさでは衣類の着用時に着用者は常時明確な異物として認識してしまい、体性反射が誘起されないからである。
請求項2に係る上半身衣は、少なくとも胸椎の上部及び下部の範囲の皮膚に当接するように布地の裏面に弾性小突起を配設し、該皮膚に触刺戟を与えることで体性反射を誘起可能に構成してなることを特徴とする。該皮膚に触刺戟を与えることで体性反射を誘起可能に構成したものであり、猫背になった脊柱を本来のS字カーブへと矯正する効果を目的とするものである。胸椎の上部、具体的には脊椎骨の第2椎から第5椎の位置の皮膚の表在性受容器が弾性小突起の触刺戟を受けると、人体は、無意識に弾性小突起から離れるように脊柱(胸椎)を前方に移動させようとする体性反射(屈曲反射)を誘起し、肩甲骨と肩関節とを結ぶ棘上筋、棘下筋、大円筋、小円筋と、脊柱と肩甲骨を結ぶ大小の菱形筋が収縮する。これによって、丸まっていた脊柱の胸椎が前方に出ることにより、猫背の場合には体の前にあった頭部が脊柱の軸線上に載るようになり、頭の重さによる背中や肩への負担が減り、これだけでも肩凝りや頸椎への負担による頭痛が軽減される。また、胸椎が前方に移動することにより、猫背では胸が窄まって身体の前面で拘縮していた大胸筋が自動的に伸びて胸部が拡がり、呼吸がスムーズになる。
さらに、胸椎の下部、具体的には脊椎骨の第9椎、第10椎の位置の皮膚の表在性受容器が触刺戟を受けると、ここでも脊柱を前方に移動させようとする体性反射を誘起し、広背筋、僧帽筋が収縮する。これら背中の大きな筋肉が働くことにより、猫背状態では前傾した上半身の重量を支えていた腰椎への負担が軽減され、腰痛の改善・予防が図られる。
次に、請求項3に係る発明は、請求項2に記載した上半身衣であって、さらに、少なくとも僧帽筋、外腹斜筋の範囲の皮膚のいずれか又はその双方に当接するように布地の裏面に弾性小突起を配設し、該皮膚に触刺戟を与えることで体性反射を誘起可能に構成してなることを特徴とする。
背中の頸部から肩部、胸椎に懸けての表層部に位置する僧帽筋は、肩甲骨を挙上、内転、上方外旋させる筋肉であり、脇腹の表層部に位置する外腹斜筋は、腹直筋とともに体幹を屈曲させ、左右単独で作用させることで体幹を回旋、側屈させる。僧帽筋の位置の皮膚の表在性受容器が触刺戟を受けて僧帽筋を収縮させると、肩甲骨が挙上しつつ内転して胸椎に引き寄せる体性反射を誘起することで、脊柱(胸椎)が相対的に前方に移動する。一方、前述の僧帽筋、広背筋の収縮状態での外腹斜筋上の皮膚への触刺戟は、体幹を屈曲させる代わりに腰椎を前方に引き寄せるように作用する。以上により、前述の胸椎の上部及び下部の皮膚への触刺戟による僧帽筋、広背筋の収縮状態との相乗効果を生じて胸椎及び腰椎の前方移動を促し、結果的に脊柱に望ましいS字カーブを描かせることで猫背が改善されるのである。
次に、請求項4に記載の下半身衣は、少なくとも股関節外側、大殿筋上部の範囲の皮膚のいずれか又はその双方に当接するように布地の裏面に弾性小突起を配設し、該皮膚に触刺戟を与えることで体性反射を誘起可能に構成してなることを特徴とする。
股関節には腰椎と大腿骨とを結ぶ筋肉群である腸腰筋の下部が繋がっている。腸腰筋の働きは主に股関節の屈曲であるが、腰椎のS字カーブを維持する働きを有する。股関節の外側の皮膚への触刺戟で腸腰筋を収縮させる体性反射が誘起されると、腸骨(骨盤)の上端が前方に移動する作用を生じる。一方、大殿筋は、臀部の表層にある単一筋としては人体で最大の面積を持つ筋肉である。その作用は股関節の伸展や外旋であるが、腰を伸ばした状態で上部に触刺戟を受けた大殿筋の収縮により臀部が挙上されて締まることで、腸骨(骨盤)の下端を後方に移動させる作用が生じる。以上の作用は、いずれも腸骨(骨盤)の後傾を矯正する効果を生じるのである。
本発明に係る衣類は、単に着用するだけで脊柱を望ましいS字カーブへと導いて猫背を矯正できるとともに、猫背の場合に生じがちな骨盤後傾を矯正でき、身体の姿勢の歪みによる肩凝りや頭痛、内臓の圧迫に伴う各種の疾患の改善や予防の効果が期待できる。従来技術のように身体の一部を拘束して望ましい姿勢を強制するものではなく、皮膚の表在性受容器への触刺戟で人体に備わる体性反射を誘起することで生じる無意識の筋肉の収縮を利用して姿勢を矯正するものであるため、身体への負担が小さく、着用を止めた後の姿勢の逆戻りも少ない。
(第一実施形態)
以下、本発明の実施形態について図3から図9を用いて説明する。図3は、本発明の第一実施形態に係る上半身衣1の平面略図であり、左図は正面側(胸側)、右図は背面側(背中側)を表す。上半身衣1は、着用者の上半身にぴったり密着する、例えば半袖のスポーツシャツであり、その布地の裏面には点線で示される弾性小突起P1〜P5を設けている。弾性小突起P1〜P5は、厚さ1mm程度、幅5mm程度とし、その形状はP1、P4、P5については円状、P2、P3、P6は帯状としている。
以下、本発明の実施形態について図3から図9を用いて説明する。図3は、本発明の第一実施形態に係る上半身衣1の平面略図であり、左図は正面側(胸側)、右図は背面側(背中側)を表す。上半身衣1は、着用者の上半身にぴったり密着する、例えば半袖のスポーツシャツであり、その布地の裏面には点線で示される弾性小突起P1〜P5を設けている。弾性小突起P1〜P5は、厚さ1mm程度、幅5mm程度とし、その形状はP1、P4、P5については円状、P2、P3、P6は帯状としている。
まず、上半身衣1の背面側については、上半身衣1を着用した際に、弾性小突起P4が胸椎の第2椎〜第5椎のいずれかの上の皮膚に、弾性小突起P5が第9椎又は第10椎のいずれかの上の皮膚に当接するように配置している。弾性小突起P4が第2〜5椎のいずれかに当接すると当該皮膚下の表在性受容器が触刺戟を受け、誘起された体性反射によって肩甲骨と肩関節とを結ぶ棘上筋、棘下筋、大円筋、小円筋と、脊柱と肩甲骨を結ぶ大小の菱形筋が収縮する。これにより肩甲骨が後方に牽引されて間隔が狭まり(内転)、相対的に脊柱(胸椎)が前方に移動する。また、弾性小突起P5によって誘起された体性反射は、広背筋及び僧帽筋という背中の大きな筋肉を収縮させるため、前傾した上半身を引き起こすとともに、その重量を支えていた腰椎を前方に押し出すよう作用する。さらに、弾性小突起P6は、僧帽筋上部、P7は僧帽筋中部の位置の皮膚に当接するよう配置しており、体性反射により僧帽筋を収縮させることで、やはり肩甲骨を内転させるとともに挙上させる。
一方、上半身衣1の正面側については、弾性小突起P1を鎖骨と上腕骨が接続する肩鎖関節付近に、弾性小突起P2を大胸筋上部に沿って配置している。大胸筋自体は、物を動かす等の負荷を掛けて能動的に動かす場合には、本来肩関節を正面側に内転させるよう作用するが、単なる起立状態や歩行程度の軽負荷状態においては、触刺戟による体性反射で肩を内転させるほどの動きは起こさず、前記背面側の体性反射による僧帽筋の収縮で前方に移動する脊柱(胸椎)の位置を安定させるとともに、肩甲骨が挙上し過ぎないようバランスを取るように作用する。
また、弾性小突起P3は両脇腹の外腹斜筋に沿う形に配置している。外腹斜筋自体は、やはり負荷を掛けた状態では腹直筋とともに体幹を前屈させるよう作用するが、触刺戟による体性反射では、強力な広背筋の収縮で前方に移動する胸椎の下部や腰椎の位置を安定させてバランスを取るように作用する。以上により、猫背気味の着用者が上半身衣1を着用することで、無意識のうちに脊柱が望ましいS字カーブへと導かれ、猫背が矯正される。
(第二実施形態)
図4は、本発明の第二実施形態に係る下半身衣2の平面略図であり、左図は正面側(腹側)、右図は背面側(臀側)を表す。下半身衣2は、着用者の腰から臀部に懸けてぴったり密着する、例えばボクサーブリーフ(短パンツ)であり、その布地の裏面には点線で示される弾性小突起P8、P9を設けている。弾性小突起P8、P9は、厚さ1mm程度、幅5mm程度とし、その形状は帯状としている。
図4は、本発明の第二実施形態に係る下半身衣2の平面略図であり、左図は正面側(腹側)、右図は背面側(臀側)を表す。下半身衣2は、着用者の腰から臀部に懸けてぴったり密着する、例えばボクサーブリーフ(短パンツ)であり、その布地の裏面には点線で示される弾性小突起P8、P9を設けている。弾性小突起P8、P9は、厚さ1mm程度、幅5mm程度とし、その形状は帯状としている。
まず、下半身衣2の腹側については、下半身衣2を着用した際に、左右各3本の弾性小突起P8を股関節外側の皮膚に当接するように設けており、臀側については、左右各3本の弾性小突起P9を大殿筋上部の皮膚に当接するように設けている。かかる構成により、弾性小突起P8の触刺戟によって腸腰筋を収縮させる体性反射が誘起され、腸骨(骨盤)の上端が前方に移動する作用を生じる。一方、弾性小突起P9の触刺戟によって大殿筋を収縮させる体性反射が誘起され、臀部が挙上されて締まることで、腸骨(骨盤)の下端を後方に移動させる作用が生じる。以上の腹側、臀側の両面の体性反射の作用により、後傾した腸骨(骨盤)が望ましい位置に矯正される。なお、脊柱が望ましいS字カーブを描かず猫背となっているときは骨盤も後傾気味となっている場合が多いため、第一実施形態に係る上半身衣1と本下半身衣2とを併用することで、体幹の姿勢矯正に相乗的効果が期待できる。
(第三実施形態)
図5は、本発明の第三実施形態に係る下半身衣3の平面略図であり、左図は正面側(腹側)、右図は背面側(臀側)を表す。下半身衣3は、着用者の下半身全体にぴったり密着する、例えば股引あるいはスパッツであり、その腰部・臀部の布地の裏面には点線で示される弾性小突起P10、P11を設けている。弾性小突起P10、P11は、厚さ1mm程度、幅5mm程度とし、その形状は帯状としている。
図5は、本発明の第三実施形態に係る下半身衣3の平面略図であり、左図は正面側(腹側)、右図は背面側(臀側)を表す。下半身衣3は、着用者の下半身全体にぴったり密着する、例えば股引あるいはスパッツであり、その腰部・臀部の布地の裏面には点線で示される弾性小突起P10、P11を設けている。弾性小突起P10、P11は、厚さ1mm程度、幅5mm程度とし、その形状は帯状としている。
下半身衣3は基本的に下半身衣2の下腿部を延長したものであり、弾性小突起P10、P11を配置する位置及び作用効果は下半身衣2における弾性小突起P8、P9と共通である。一方、下半身衣3では、弾性小突起P12を膝関節の膝蓋骨外側に配置している。膝蓋骨の外側の皮膚直下には深部受容器を有する外側側副靭帯があるが、弾性小突起P12が当該皮膚に当接する触刺戟によって膝を内旋させる体性反射が誘起され、膝腱部を介して大腿部の内転筋(大内転筋、短内転筋)の収縮が促される。骨盤後傾となっている場合には膝が外転したいわゆるO脚になりがちであるが、弾性小突起12によるかかる体性反射の作用で膝が内転することによりO脚が改善されるだけでなく、腰椎や腸骨(骨盤)と大腿骨とを繋ぐインナーマッスルである大腰筋・腸骨筋の活動も促進されることにより、骨盤後傾が改善される効果も期待できる。
(第四実施形態)
図6は、限定的ながら猫背の矯正効果を期待できる、本発明の第四実施形態に係るブラジャー4の正面略図である。ブラジャー4の形状は一般的な後ホック型であるが、サイドベルト内側とストラップ(肩紐)のサイドベルトへの取付部に近い位置のそれぞれの内側に短い帯状の弾性小突起P13、P14を設けており、また、ストラップのカップへの取付部に近い位置の内側にも同様の弾性小突起P15を設けている。
図6は、限定的ながら猫背の矯正効果を期待できる、本発明の第四実施形態に係るブラジャー4の正面略図である。ブラジャー4の形状は一般的な後ホック型であるが、サイドベルト内側とストラップ(肩紐)のサイドベルトへの取付部に近い位置のそれぞれの内側に短い帯状の弾性小突起P13、P14を設けており、また、ストラップのカップへの取付部に近い位置の内側にも同様の弾性小突起P15を設けている。
着用時には、弾性小突起P13、P14は僧帽筋下部の範囲の皮膚に当接することで、第一実施形態の上半身衣1における弾性小突起P7と同様の体性反射を誘起し、脊柱(胸椎)を前方に押し出す作用を奏する。また、弾性小突起P15は、大胸筋上部の範囲の皮膚に当接することで、第一実施形態の上半身衣1における弾性小突起P2と同様の体性反射を誘起し、脊柱(胸椎)の位置を安定させるとともに、肩甲骨が挙上し過ぎないようバランスを取るように作用する。
(第五実施形態)
前述した第一〜第四実施形態に係る衣類は、起立時や歩行時において猫背及び骨盤後傾の傾向がみられる人体の姿勢の矯正を目的とするものであるが、表在性受容器への触刺戟による体性反射の誘起による作用は、身体の姿勢に問題のない健常者の身体能力向上にも利用可能である。具体的には、全身の筋肉を使用するスポーツを行う場合は、脊柱のS字カーブによる柔軟性や安定性を保ちつつも、背中側と正面側の双方の筋肉を瞬時に協調して使用する頻度が高いが、着用するウェアの内面に適切に弾性小突起を配設することで、体性反射の効果により無意識のうちに筋肉の適度の緊張状態を維持させ、効果的に筋力を発揮させることが可能である。
前述した第一〜第四実施形態に係る衣類は、起立時や歩行時において猫背及び骨盤後傾の傾向がみられる人体の姿勢の矯正を目的とするものであるが、表在性受容器への触刺戟による体性反射の誘起による作用は、身体の姿勢に問題のない健常者の身体能力向上にも利用可能である。具体的には、全身の筋肉を使用するスポーツを行う場合は、脊柱のS字カーブによる柔軟性や安定性を保ちつつも、背中側と正面側の双方の筋肉を瞬時に協調して使用する頻度が高いが、着用するウェアの内面に適切に弾性小突起を配設することで、体性反射の効果により無意識のうちに筋肉の適度の緊張状態を維持させ、効果的に筋力を発揮させることが可能である。
図7は、本発明の第五実施形態に係る上半身衣5の平面略図であり、左図は正面側(胸側)、右図は背面側(背中側)を表す。上半身衣5や配設する弾性小突起自体の構造、素材は第一実施形態に係る上半身衣1と同様であるが、上半身衣5では、弾性小突起P1〜P5は共通としつつ、正面側においては、両脇腹の外腹斜筋に沿う弾性小突起P3の代わりに大胸筋の範囲の皮膚に当接する弾性小突起P16を左右各3本、背中側においては、僧帽筋中部に当接する弾性小突起P7の代わりに広背筋の範囲の皮膚に当接する弾性小突起P17を左右各4本、配置している。
かかる構成により、上半身衣5の着用者は、弾性小突起P1〜P5の作用によって上半身衣1と同様に無意識のうちに脊柱のS字カーブを保つ一方、弾性小突起16が大胸筋の広範囲に触刺戟を与えることにより、肩を前方に内転させる作用を受ける。これにより、身体の重心軸に対して前後方向に拮抗した力が加わり、体幹の筋肉が適度な緊張状態におかれたいわば動的平衡状態となり、前後いずれの方向の移動や負荷に対しても瞬時に対応可能となる。
(第六実施形態)
図8は、前述の上半身衣5と同様の動的平衡状態を生じさせることを意図した本発明の第六実施形態に係る下半身衣6の平面略図である。下半身衣6や配設する弾性小突起自体の構造、素材は第二実施形態に係る下半身衣2と同様であるが、下半身衣2の腹側には股関節外側の皮膚に当接する弾性小突起P8の代わりに腹斜筋下部の範囲の皮膚に当接する左右各3本の弾性小突起P18を、臀側には大殿筋上部の範囲の皮膚に当接する弾性小突起P9の代わりに大殿筋下部の範囲の皮膚に当接する左右各3本の弾性小突起P19を配設している。
図8は、前述の上半身衣5と同様の動的平衡状態を生じさせることを意図した本発明の第六実施形態に係る下半身衣6の平面略図である。下半身衣6や配設する弾性小突起自体の構造、素材は第二実施形態に係る下半身衣2と同様であるが、下半身衣2の腹側には股関節外側の皮膚に当接する弾性小突起P8の代わりに腹斜筋下部の範囲の皮膚に当接する左右各3本の弾性小突起P18を、臀側には大殿筋上部の範囲の皮膚に当接する弾性小突起P9の代わりに大殿筋下部の範囲の皮膚に当接する左右各3本の弾性小突起P19を配設している。
かかる構成によれば、弾性小突起P18の触刺戟により腹斜筋を収縮させるとともに、弾性小突起P19の触刺戟により大殿筋を収縮させる体性反射が誘起される。両者の作用は腸骨(骨盤)に対して前後方向に拮抗する作用を生じるとともに、インナーマッスルである大腰筋・腸骨筋をも適度な緊張状態に置く動的平衡状態となり、やはり前後いずれの方向の移動や負荷に対しても瞬時に対応可能となる。また、第五実施形態に係る上半身衣5と本下半身衣6とを併用することで相乗的効果が期待できる。
以上、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明したが、本発明は、必ずしも上述した構成にのみ限定されるものではなく、本発明の目的を達成し、効果を有する範囲内において、適宜変更実施することが可能なものであり、本発明の技術的思想の範囲内に属する限り、それらは本発明の技術的範囲に属する。
本発明に係る衣類は、身体に密着する形状の一般的なアンダーウェアやスポーツウェアの内側の目的に応じた位置に弾性小突起を配設することで実現可能である。
P1〜P19 弾性小突起
1 上半身衣(第一実施形態)
2 下半身衣(第二実施形態)
3 下半身衣(第三実施形態)
4 ブラジャー(第四実施形態)
5 上半身衣(第五実施形態)
6 下半身衣(第六実施形態)
1 上半身衣(第一実施形態)
2 下半身衣(第二実施形態)
3 下半身衣(第三実施形態)
4 ブラジャー(第四実施形態)
5 上半身衣(第五実施形態)
6 下半身衣(第六実施形態)
Claims (6)
- 着用時において人体の特定の表在性受容器に当接する位置の布地の裏面に弾性小突起を配設し、該表在性受容器に触刺戟を与えることで体性反射を誘起可能に構成してなることを特徴とする衣類。
- 少なくとも胸椎の上部及び下部の範囲の皮膚に当接するように布地の裏面に弾性小突起を配設し、該皮膚に触刺戟を与えることで体性反射を誘起可能に構成してなることを特徴とする上半身衣。
- 請求項2に記載した上半身衣であって、さらに、少なくとも僧帽筋、外腹斜筋の範囲の皮膚のいずれか又はその双方に当接するように布地の裏面に弾性小突起を配設し、該皮膚に触刺戟を与えることで体性反射を誘起可能に構成してなることを特徴とする上半身衣。
- 少なくとも股関節外側、大殿筋上部の範囲の皮膚のいずれか又はその双方に当接するように布地の裏面に弾性小突起を配設し、該皮膚に触刺戟を与えることで体性反射を誘起可能に構成してなることを特徴とする下半身衣。
- 前記弾性小突起は、厚さ1mm以下かつ幅1cm以下、長さは当接すべき範囲の皮膚に対応させたものであることを特徴する、請求項2又は請求項3のいずれかに記載した上半身衣。
- 前記弾性小突起は、厚さ1mm以下かつ幅1cm以下、長さは当接すべき範囲の皮膚に対応させたものであることを特徴する、請求項4に記載した下半身衣。
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Citations (4)
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JPS55142138U (ja) * | 1979-03-31 | 1980-10-11 | ||
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JP2013503268A (ja) * | 2009-08-31 | 2013-01-31 | インテリスキン ユーエスエー,エルエルシー | 感覚運動刺激衣服および方法 |
-
2017
- 2017-08-05 JP JP2017152072A patent/JP2019030394A/ja active Pending
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