JP2019030273A - 分析システム、分析方法、プログラム、および記憶媒体 - Google Patents

分析システム、分析方法、プログラム、および記憶媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】 反応場のサイズにばらつきがある場合であっても、従来よりも簡便な方法で、分析結果の信頼度を高める。
【解決手段】 サンプル中の分析対象物の濃度を分析する際に、前記サンプルを含む液体を分割して生成された、サイズの分布が多分散である複数の反応場について、サイズの分布を単分散とみなせる反応場のサイズの範囲を決定し、決定された前記範囲に含まれるサイズを有する反応場に関する情報に基づいて、前記範囲に含まれるサイズを単一のサイズとみなして、サンプル中の分析対象物の数または濃度を導出する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、分析システム、分析方法、プログラム、および記憶媒体に関する。
特定の塩基配列を有する核酸(標的核酸)を分析対象物として定量分析する方法として、デジタルPCR(dPCR;digital Polymerase Chain Reaction)法が注目されている。
デジタルPCRでは、標的核酸を含むサンプルを、標的核酸を増幅するための増幅試薬、標的核酸を検出するための蛍光試薬などと混合して希釈し、物理的に独立した多数の反応場に分割する。このとき、それぞれの反応場に含まれる標的核酸の数が1個または0個のいずれかとなるようにサンプルを希釈(以下、このような希釈を「限界希釈」と称する)しておく。そして、複数の反応場のそれぞれにおいて独立にPCRを生じさせ、標的核酸を増幅して検出可能にする。これにより、増幅後にシグナルが検出された反応場の数(陽性反応場数)および/または増幅後にシグナルが検出されなかった反応場の数(陰性反応場数)から、サンプル中の標的核酸の濃度を取得することができる。
デジタルPCRにおいてサンプルを含む反応液を物理的に独立した多数の反応場に分割する方法として、反応液の液滴をオイル中に形成する方法、すなわち、油中水型エマルジョン(W/Oエマルジョン)を形成する方法がある。この方法では、油中水型エマルジョン中の1つ1つの液滴を反応場として用いる(特許文献1)。油中水型エマルジョンを形成する方法としては、マイクロ流路デバイスを用いた方法や、機械撹拌を用いた方法などがあるが、特に、油中水型エマルジョンの形成を高速に行った場合には、液滴のサイズ、すなわち反応場のサイズにばらつきが生じやすい。
また、定量分析のダイナミックレンジを拡大する目的で、サイズをばらつかせた反応場を用いるデジタルPCRも提案されている(特許文献2)。
特表2012−503773号公報 特表2014−505476号公報
反応場のサイズがばらついている場合に分析対象物の濃度または数を計算する方法としては、反応場のサイズに関する情報と、当該反応場における分析対象物の存在に関する情報とを、1つ1つの反応場ごとに対応付けて計算する方法が考えられる。しかしながらこの方法では、極めて煩雑な計算が必要となる。
一方、反応場のサイズのばらつきを無視して反応場のサイズの分布を単分散とみなせば、特許文献1に記載されているような従来の計算方法で、分析対象物の濃度または数を簡便に計算することができる。しかしながらこの方法では、反応場のサイズのばらつきが大きくなるにつれて、分析結果の信頼度が低下してしまう。
そこで本発明では、上述の課題に鑑み、反応場のサイズにばらつきがある場合であっても、従来よりも簡便な方法で、分析結果の信頼度を高めることを目的とする。
本発明の一側面としての分析システムは、サンプル中の分析対象物の濃度を分析する分析システムであって、前記サンプルを含む液体を分割して生成された、サイズの分布が多分散である複数の反応場について、前記複数の反応場のそれぞれのサイズに関する情報を取得するサイズ情報取得部と、前記複数の反応場のそれぞれにおける前記分析対象物の存在に関する情報を取得する分析対象物情報取得部と、サイズの分布を単分散とみなせる反応場のサイズの範囲を決定するサイズ範囲決定部と、前記分析対象物情報取得部で取得された情報のうち、前記サイズ範囲決定部で決定された前記範囲に含まれるサイズを有する反応場に関する情報に基づいて、前記範囲に含まれるサイズを単一のサイズとみなして、前記サンプル中の前記分析対象物の数または濃度を導出する導出部と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、反応場のサイズにばらつきがある場合であっても、従来よりも簡便な方法で、分析結果の信頼度を高めることができる。
分析システムの構成を模式的に示す図である。 情報処理ユニットのハードウエア構成を模式的に示す図である。 本実施形態に係る導出部が分析対象物の数または濃度の導出に用いるデータを模式的に示す図である。 分析システムによる分析処理の手順を示すフローチャートである。 サーマルサイクル後のエマルジョン1〜4の蛍光顕微鏡画像である。 比較例1および実施例1のそれぞれにおける、相対希釈倍率とサンプル中の分析対象物の濃度の計算結果との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態に係る分析システムについて、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対して適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に含まれる。
[分析システムの構成]
図1は、本実施形態に係る分析システムの構成を模式的に示す図である。本実施形態に係る分析システム1は、反応場生成ユニットU1と、反応ユニットU2と、検出ユニットU3と、情報処理ユニットU4と、を有する。各ユニット間は、部分的にまたは全体的に、LANまたはインターネットなどのネットワークを介して接続されていてもよい。
<反応場生成ユニット>
反応場生成ユニットU1は、サンプル中の分析対象物を含む反応液などの液体を分割して、互いに物理的に独立した、複数の反応場を生成するユニットである。
(反応場)
本明細書において反応場とは、液液界面、気液界面、および固液界面からなる群から選択される少なくとも1つの界面によって囲まれた空間をいう。反応場における反応はこの閉じた空間内で生じ、他の反応場とは独立して反応が進行する。換言すれば、1つの反応場における反応は、上述の界面によって規定される空間内に閉じ込められた物質のみが関与する。
例えば、マイクロプレートのようなプレート上の複数のウエルに反応液がそれぞれ分注されている場合、それぞれのウエルに分注されているそれぞれの反応液が反応場となる。この場合、反応場はウエルの壁面と反応液との間の固液界面と、大気と反応液との間の気液界面と、によって囲まれている。あるいは、反応液が、油中水型エマルジョン(W/Oエマルジョン)などのエマルジョンにおける液滴を形成している場合は、エマルジョン中の各液滴が反応場となる。この場合、反応場は連続相と分散相との間の液液界面によって囲まれている。
(分析対象物)
本明細書において分析対象物とは、サンプル中に含まれ、定量分析の対象となる化合物や粒子をいう。本実施形態に係る分析対象物は、後述する反応場中での反応によって検出可能にすることができるものであれば、特に限定はされず、例えば、核酸、ペプチド、タンパク質、酵素などが挙げられる。
本明細書において「検出可能にする」とは、後述する反応ユニットU2における反応によって分析対象物に由来するシグナルを検出可能にすることをいう。例えば、もともとは検出不可能な程に微弱だったシグナルが、反応ユニットU2における増幅反応により分析対象物の数または濃度が増加することでシグナルが増強することによって、検出可能になる。また、反応によって所定のシグナルを発する物質が分析対象物から生成されることでも、分析対象物を検出可能にすることができる。あるいは、分析対象物が化学変化するなどしてシグナルを発するように変化しても、分析対象物を検出可能にすることができる。
核酸は、詳しくは後述するが、核酸を増幅させるための増幅試薬と、核酸と相互作用して蛍光を発する蛍光試薬と、を核酸を検出可能にするための薬剤として用い、PCRなどの核酸増幅反応によって検出可能にすることができる。また、ペプチドやタンパク質は、ELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)法などによって検出可能にすることができる。なお、分析対象物は上記の核酸、ペプチド、タンパク質などを含む物質であってもよい。例えば、核酸、ペプチド、およびタンパク質の少なくともいずれかが共有結合等で結合または付着した分子、マイクロ粒子、ナノ粒子、細胞などが挙げられる。
例えば、ヒトから採取した血液や、そこから抽出された核酸などを検体とし、該検体に含まれ得る、がんや感染症などの疾病に関わる遺伝子を含む核酸を分析対象物とすれば、当該疾病の診断などに有用な情報が得られると期待できる。また、食品を検体とすれば、遺伝子組換え作物(GMO)の評価などの食品検査を行うことができる。あるいは、環境中の土壌や水を検体とすれば、環境モニタリングを行うことができる。
本実施形態において核酸を分析対象物とする場合、核酸は、増幅の対象になる鋳型核酸であれば特に限定されず、DNA(DeoxyriboNucleic Acid)であってもよいし、RNA(RiboNucleic Acid)であってもよい。核酸の形態も特に限定されず、直鎖状の核酸であってもよく、また環状の核酸であってもよい。また、核酸は単一の塩基配列を有する1種類の核酸であってもよく、また、種々の塩基配列をそれぞれ有する複数種類の核酸(例えば相補的DNAライブラリーなど)であってもよい。
(検体)
本明細書において検体とは、生物や食品、環境などから採取または抽出された、サンプルの供給源である。一般には、定量分析されたサンプル中の分析対象物の濃度は、検体中の濃度に換算した上で、医療診断や食品、環境の評価などの各種の目的に利用される。
(サンプル)
本明細書においてサンプルとは、本実施形態に係る分析に供するものをいい、本実施形態では、サンプル中の分析対象物の濃度が測定される。サンプルは、検体そのものであってもよいし、検体に対して精製や濃縮、分析対象物の化学修飾や断片化など、分析のための前処理や調整を施したものであってもよい。サンプル中の分析対象物の濃度(単位体積当たりの数)は特に限定されないが、複数の反応場を生成したときに、複数の反応場のそれぞれに含まれる分析対象物の数が1個または0個となるような量であることが好ましい。このようにすることで、分析結果の信頼度を向上させることができる。
反応場生成ユニットU1は、サンプル注入部101と、反応場生成部102と、容器103と、を有する。
(サンプル注入部)
サンプル注入部101は、サンプルを含む液体である反応液を反応場生成部102へと注入する部分である。
サンプル注入部101から注入された反応液は、反応場生成部102へと送液される。このとき、反応液は、ポンプ等の送液手段(不図示)によって送液されてもよい。また、サンプル注入部101から注入された反応液は、反応場生成部102へと送液される間に、エマルジョンを形成するための連続相としてのオイルと混合されてもよい。あるいは、サンプル注入部101からサンプルのみが注入され、反応場生成部102へと送液される間に、分析対象物を検出するための薬剤等と混合されて反応液を生成してもよい。
(反応液)
本明細書において反応液とは、分析対象物を含むサンプルと、当該分析対象物を検出可能にするための薬剤と、を少なくとも含む液体をいう。反応液は、水を含む水性液体であることが好ましい。
(分析対象物を検出可能にするための薬剤)
分析対象物が核酸である場合は、PCR法に代表されるような、酵素を用いた核酸増幅反応を用いて核酸を増幅することで、分析対象物を検出可能にすることができる。ここで、核酸増幅反応としては、反応場をサーマルサイクルに供することで反応を進行させるPCR法やLCR(Ligase Chain Reaction)法や、反応場をサーマルサイクルに供さずに温度調節することで反応を進行させるSDA(Strand Displacement Amplification)法、ICAN(Isothermal and Chimeric primer−initiated Amplification of Nucleic acids)法、LAMP(Loop−Mediated Isothermal Amplification)法などを好ましく使用することができる。
核酸増幅反応を用いる場合は、核酸を増幅させるための増幅試薬と、核酸と相互作用して蛍光を発する蛍光試薬と、を核酸を検出可能にするための薬剤として用いる。
増幅試薬は、分析対象物である標的核酸の有する所定の塩基配列に相補的な塩基配列を有する1つまたは一対のプライマー(フォワードプライマーおよびリバースプライマー)と、核酸合成反応を促進するする生体触媒であるポリメラーゼと、を含有する。ポリメラーゼは、耐熱ポリメラーゼであることが好ましく、耐熱DNAポリメラーゼであることがより好ましい。また、増幅試薬は、核酸の原料としてのdNTP(DeoxyriboNucleotide−5’−TriPhosphate)などのリボ核酸を含有する。さらに、増幅試薬は、反応液中の水素イオン濃度(pH)をコントロールするための緩衝液または緩衝剤や、塩を含むことが好ましい。なお、増幅試薬は、上記各成分を含む市販のキットを用いてもよい。
プライマーとしては、標的核酸の一部の領域の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、核酸増幅反応に用いることができるオリゴヌクレオチドであれば特に限定されない。ここで、ストリンジェントな条件とは、プライマーと鋳型核酸との間に少なくとも90%以上、好ましくは95%以上の配列同一性があるときに、該プライマーが鋳型核酸に特異的にハイブリダイズできる条件である。プライマーは、標的核酸の塩基配列に基づいて適宜設計できる。また、プライマーは、核酸増幅法の種類に応じて設計されることが望ましい。プライマーの長さは、通常、5〜50ヌクレオチド、好ましくは、10〜40ヌクレオチドである。なお、プライマーは、分子生物学領域において一般に用いられる核酸合成方法により生成することができる。
緩衝液または緩衝剤としては、任意の適切な緩衝液または緩衝剤を用いることができる。緩衝液または緩衝剤は、反応液の水素イオン濃度(pH)を、所望の反応が効率的に起こり得るpH、または、その近傍に維持するよう構成することが好ましい。PCRを実施する場合、反応液のpHは、例えば6.5〜9.0の間で、使用する増幅試薬の各成分にあわせて任意に選択することができる。緩衝液または緩衝剤の種類は、分子生物学領域で一般に使用されるものを使用することができ、例えば、Tris(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)バッファー、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルフォン酸)バッファー、MES(2−モルホリノエタンスルホン酸)バッファーなどを使用することができる。
塩としては、例えば、CaCl、KCl、MgCl、MgSO、NaCl、およびこれらの組み合わせから適宜選択されたものを使用することができる。
蛍光試薬は、核酸と相互作用して蛍光を発する薬剤であり、一般的にPCR法に用いられる、蛍光インターカレーター(蛍光色素)やプローブアッセイ用のプローブ(蛍光標識プローブ)を用いることができる。蛍光インターカレーターとしては、エチジウムブロマイド、SYBR Green I(「SYBR」はモレキュラープローブスの登録商標)、LC Greenなどを好適に用いることができる。蛍光標識プローブとしては、標的核酸に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(プローブ)であって、一方の末端(5´末端)がレポーターで修飾され、もう一方の末端(3´末端)がクエンチャーで修飾されたものを用いることができる。レポーターとしてはFITC(Fluorescein−5−IsoThioCyanate)やVICなどの蛍光物質を、クエンチャーとしてTAMARAなどの蛍光物質や、Eclipse、DABCYL、MGBなどを用いることができる。蛍光標識プローブとしては、TaqMan(「TaqMan」はロシュダイアグノスティックスの登録商標)プローブなどを用いることができる。なお、ここでは蛍光試薬を用いる場合について説明したが、蛍光以外の発光を利用する発光試薬を使用してもよい。
一方、分析対象物がペプチドやタンパク質である場合は、ELISA法のような、分析対象物を特異的に反応する抗体(または抗原)と酵素を用いた抗原抗体反応および酵素反応により、分析対象物を検出可能にすることができる。より具体的には、例えば、分析対象物に酵素で標識された抗体(または抗原)を抗原抗体反応によって複合化させ、この酵素の酵素反応によって生じる発色または発光物質を検出する。なお、分析対象物と抗原抗体反応を生じさせる抗体(または抗原)は予め酵素標識されていなくてもよく、抗原抗体反応後に酵素によって標識されてもよい。
ELISA法を用いる場合は、抗体(または抗原)と酵素を含む試薬を、分析対象物を検出可能にするための薬剤として用いる。ELISA法に用いる試薬として市販されているキットを用いてもよい。
なお、発生させる蛍光の波長が異なるなど、複数の分析対象物を区別できるようにそれぞれ検出可能にする複数種類の薬剤を用いれば、複数種類の分析対象物を一度の分析でまとめて検出することもできる。
(反応場生成部)
反応場生成部102は、サンプル注入部101から注入された反応液を分割して、互いに物理的に独立した、複数の反応場を生成する。反応液を分割して複数の反応場を生成する方法としては、例えば、下記の方法が挙げられる。
第1の方法として、マイクロウエルプレートのような、基板上に複数の微小なウエルが形成されたガラスや樹脂の基板を用い、それぞれのウエルに反応液を分注する方法が挙げられる。これにより、微小なウエルのそれぞれの内部が反応場となる。
第2の方法として、表面に所定のパターン形状で撥水処理または撥油処理が施されたガラスや樹脂の基板を用い、基板上に反応液を塗布する方法が挙げられる。例えば格子状に撥水処理が施されたガラス基板上に水性の反応液を塗布すれば、それぞれの格子の内側に液滴が形成され、この複数の液滴のそれぞれが反応場となる。
第3の方法として、反応液と、反応液と相溶しない液体(以下、「非相溶液体」と称する)とから、非相溶液体中に反応液が液滴状に分散しているエマルジョンを形成する方法が挙げられる。この方法は、換言すれば、非相溶液体が連続相であり、反応液が分散相であるエマルジョンを形成する方法である。例えば、水を含む水性液体である反応液と、油性液体(オイル)と、を混同して、油中水型エマルジョン(W/Oエマルジョン)を形成すれば、オイル中に分散している反応液からなる液滴のそれぞれが反応場となる。
反応場生成部102は、これらの中でも第3の方法、すなわち、反応液と非相溶液体とから、非相溶液体中に反応液が液滴状に分散したエマルジョンを形成する方法によって反応場を生成することが好ましい。すなわち、反応場生成部102は、反応液と、反応液と非相溶な非相溶液体とから、エマルジョンを生成するエマルジョン生成部であることが好ましい。
(エマルジョン生成部)
エマルジョンを生成する方法としては、特に限定はされず、従来公知の乳化方法を利用できる。例えば、撹拌装置や超音波破砕装置などにより機械的エネルギーを付与することでエマルジョンを形成する機械乳化法が挙げられる。また、マイクロ流路乳化法やマイクロ流路分岐乳化法などのマイクロ流路デバイスを用いた方法、乳化膜を用いる膜乳化法などが挙げられる。これらの方法は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも機械的乳化法や膜乳化法は、マイクロ流路デバイスを用いた方法に比べて液滴のサイズのばらつき(分散)が大きくなる傾向にあるものの、スループット良くエマルジョンを形成できるため好ましい。また、エマルジョンを形成する装置の装置構成を単純にできること、液滴のサイズのばらつきが比較的低いエマルジョンを形成できることなどから、膜乳化法が特に好ましい。すなわち、反応場生成部102は、膜乳化手段または機械的乳化手段であることがより好ましく、膜乳化手段であることが特に好ましい。
膜乳化法は、分散相または連続相、あるいは分散相および連続相の混合物を複数の細孔やスリットを有する乳化膜に透過させることでエマルジョンを形成する方法である。膜乳化法において分散相または連続相、あるいは分散相および連続相の混合物を乳化膜に透過させる回数は特に限定はされず、1回であってもよいし、複数回であってもよい。
膜乳化法としては、直接膜乳化法やポンピング乳化法などを用いることができる。直接膜乳化法とは、乳化膜を介して分散相を一定圧力で押し出すことにより、押し出される側をゆっくり流れている連続相中に、エマルジョンを形成する方法である。ポンピング乳化法とは、連続相を採取したシリンジと分散相を採取したシリンジとで乳化膜を挟み、2つのシリンジから液体を交互に押し出して乳化膜を通過させることによって、エマルジョンを調製する方法である。なおポンピング乳化法においては、2つのシリンジの一方に連続相と分散相の混合物を採取しておき、もう一方のシリンジは空にしておいてもよい。ポンピング乳化法においては、それぞれシリンジと接続可能な一対のコネクターの間に乳化膜を挟み込んだポンピング式の乳化デバイスを用いることができる。
膜乳化法で使用する乳化膜としては、複数の細孔を有する多孔質体の膜や、スリットを有する膜を用いることができる。具体的には、SPG(シラス多孔質ガラス)などの多孔質ガラス膜、ポリカーボネート製メンブレンフィルター、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製メンブレンフィルター、などを用いることができる。また、乳化膜の表面は疎水化処理されていることがより好ましい。乳化膜の孔径は、形成しようとする油中水型エマルジョン中の液滴のサイズに応じて選択することができ、0.2μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。
(オイル)
反応液が水を含む水性液体である場合は、反応液と相溶しない非相溶液体として、油性液体(オイル)を用いることができる。この場合、反応場生成手段102によって、W/Oエマルジョンが生成される。
オイルとしては、炭化水素系オイル、シリコーンオイル、フッ素系オイルなどを用いることができる。炭化水素系オイルとしては、ミネラルオイル;スクワランオイル、オリーブオイルなどの動植物由来のオイル;n−ヘキサデカンなどの炭素原子数10〜20のパラフィン系炭化水素;炭素原子数10〜20のオレフィン系炭化水素などを用いることができる。炭化水素系オイルの市販品としては、例えば、TEGOSOFT DEC(炭酸ジエチルヘキシル)(エボニック製、「TEGOSOFT」はエボニックの登録商標)を用いることができる。フッ素系オイルとしては、HFE−7500(2−(トリフルオロメチル)−3−エトキシドデカフルオロヘキサン)などを用いることができる。フッ素系オイルの市販品としては、例えば、FLUORINERT FC−40、FLUORINERT FC−40、FLUORINERT FC−3283(スリーエム製、「FLUORINERT」はスリーエムの登録商標)などを用いることができる。また、炭化水素系オイル、シリコーンオイル、フッ素系オイルを適宜組み合わせて用いてもよい。
(その他添加剤)
エマルジョンを生成する際に、界面活性剤をさらに添加してもよい。界面活性剤を添加することで、エマルジョン中の液滴のサイズの制御やエマルジョンを安定に維持するなどの効果が期待できる。界面活性剤としては、乳化処理において一般的に用いられている従来公知の界面活性剤を用いることができ、例えば、非イオン性界面活性剤、フッ素系樹脂、ホスホコリン含有樹脂などを用いることが好ましい。非イオン系界面活性剤としては炭化水素系界面活性剤や、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤を用いることができる。
炭化水素系非イオン性界面活性剤の市販品としては、例えば、Pluronic F−68(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン ブロックコポリマー)(シグマ−アルドリッチ製、「Pluronic」はBASFの登録商標)、Span 60(ソルビタンモノステアラート)(東京化成工業製、「Span」はクローダインターナショナルの登録商標)、Span 80(ソルビタンモノオレアート)(シグマ−アルドリッチ製、「Span」はクローダインターナショナルの登録商標)、Triton−X100(ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル)(シグマ−アルドリッチ製、「Triton」はユニオンカーバイドの登録商標)、Tween 20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート)、Tween 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)(以上、シグマ−アルドリッチ製、「Tween」はクローダインターナショナルの登録商標)、などを用いることができる。シリコーン系非イオン性界面活性剤としては、ABIL EM90(セチルジメチコンコポリオール(セチルPEG/PPG10−1ジメチコン))、ABIL EM120(ビス−(グリセリル/ラウリル)グリセリルラウリルジメチコン)、ABIL EM180(セチルPEG/PPG10−1ジメチコン)、ABIL WE09(イソステアリン酸ポリグリセリル−4、セチルジメチコンコポリオール、ラウリン酸ヘキシル)(以上、エボニック製、「ABIL」はエボニックの登録商標)、などを用いることができる。フッ素系樹脂としては、Krytox−AS(「Krytox」はケマーズの登録商標)などを用いることができる。ホスホコリン含有樹脂としては、Lipidure−S(日油製、「Lipidure」は日油の登録商標)などを用いることができる。
エマルジョンにおける界面活性剤の濃度は、特に限定はされないが、0.01質量%以上10質量%以下とすることが好ましく、0.1質量%以上8質量%以下とすることがより好ましく、1質量%以上4質量%以下とすることがさらに好ましい。
エマルジョンにおける、反応液(分散相)に対する非相溶液体(連続相)の体積比は特に限定はされないが、1以上300以下であることが好ましく、1以上150以下であることがより好ましい。
エマルジョン中の液滴のサイズは特に限定はされないが、直径で、1μm以上300μm以下であることが好ましく、1μm以上200μm以下であることがより好ましく、20μm以上150μm以下であることがさらに好ましい。液滴の直径を300μm以下とすることで、臨床検査などのように、検体量やサンプル量が数十〜数百μL程度と少ない場合であっても、液滴の数(反応場の数)を多くすることができ、分析の精度が高めることができる。また、液滴の直径を300μm以下とすることで、エマルジョンの安定性を高めることができる。
エマルジョン中の液滴のサイズの分布は、多分散であることが好ましい。なお、本明細書において、多分散とは、単分散ではないこと、すなわち、液滴のサイズが均一でなく、ばらついていることをいう。エマルジョン中の液滴のサイズの分布は、単分散に近い分布(例えば、液滴直径の変動係数(CV)が数%以下)であってもよく、複数のサイズの液滴が混合されていてもよい。機械的乳化法や膜乳化法により生成したエマルジョン中の液滴のサイズの分布は、一般に、液滴直径の変動係数(CV)が10〜20%程度、あるいはそれ以上の分布を有する場合が多い。特に、エマルジョンの形成を高速に行った場合は、エマルジョン中の液滴のサイズは多分散になりやすい。本実施形態によれば、液滴のサイズにばらつきがある場合であっても、信頼度の高い定量分析を行うことができる。
エマルジョン中の液滴の数は、100個以上1,000,000,000個以下であることが好ましく、100個以上20,000,000個以下であることがより好ましく、2,000個以上20,000,000個以下であることがより好ましい。後述する通り、本発明者らによる試算では、デジタル分析において分析結果の信頼度を確保するためには、少なくとも100個以上の液滴が分析対象物を含むと判定されることが好ましいため、液滴の数は100個以上であることが好ましい。例えば、臨床検査の場合、反応液の量は一般に、0.01mL〜0.5mL程度で設定される場合が多く、液滴のサイズが10μm〜200μm程度である場合は、液滴の数としておよそ2,000個〜1,000,000,000個の間で設定されることになる。
(容器)
容器103は、反応場生成部102で生成された複数の反応場を保持する容器である。反応場生成部102がエマルジョン生成部である場合は、容器103は、エマルジョン生成部によって生成されたエマルジョンを収容する容器である。また、反応場生成部102が、基板上に複数の微小なウエルが形成されたガラスや樹脂の基板を用い、それぞれのウエルに反応液を分注することで複数の反応場を生成する場合には、ウエルが形成された基板が容器103となる。
容器103は複数の反応場を保持した状態で、搬送ユニット(不図示)によって反応場生成ユニットU1から反応ユニットU2へ、そして検出ユニットU3へと搬送される。なお、搬送ユニット(不図示)によって容器103をユニット間で搬送する場合について説明するが、これに限定はされず、分析システム1の操作者が容器103を搬送してもよい。
容器103は、サンプル注入部101および反応場生成部102の一部または全部とともに、反応場生成ユニットU1から着脱可能に構成されていることが好ましい。すなわち、反応場生成ユニットU1は、サンプル注入部101、反応場生成部102、容器103の各機能を備えたカートリッジが、反応場生成ユニットU1の本体から着脱可能な構成であることが好ましい。このような構成とすることで、サンプル間でのコンタミを防ぐことができる。なお、当該カートリッジは、後述する反応制御器201を備えていてもよい。
<反応ユニット>
反応ユニットU2は、反応制御器201を有し、反応場生成ユニットU1が生成した複数の反応場のそれぞれにおいて反応を進行させるユニットである。この反応により、複数の反応場のそれぞれに含まれている分析対象物を検出可能にすることができる。
(反応)
分析対象物が核酸である場合は、上述の通り、PCR法に代表されるような、酵素を用いた核酸増幅反応を用いて核酸を増幅することで、分析対象物を検出可能にすることがでる。核酸増幅反応としては、上述の通り、PCR法やLCR法、SDA法、ICAN法、LAMP法などを好ましく用いることができる。これらの核酸増幅反応を行う場合には、反応場をサーマルサイクルに供したり、一定の温度に維持したり、所定のプロファイルで温度を与えたりするなど、反応場の温度を調節することで反応を制御することが好ましい。あるいは、所定の形状のマイクロ流路を有するマイクロ流路デバイスのマイクロ流路中に反応場を流すことで、反応を制御する方法も知られている(Science,280,1046(1998))。
分析対象物がペプチドやタンパク質である場合は、上述の通り、ELISA法のような、酵素反応と抗原抗体反応とを組み合わせた分子生物学的手法によって、分析対象物を検出可能にすることができる。この場合は、反応場の温度を所定の温度に維持するように、反応場の温度を調節することが好ましい。
(反応制御器)
反応制御器201は、容器103中の複数の反応場のそれぞれにおける反応を制御する。反応制御器201は、容器103中の複数の反応場のそれぞれにおいて反応を進行させる反応部ということもできる。反応制御器201が複数の反応場のそれぞれにおける反応を制御する方法は特に限定はされず、例えば、反応場の温度を制御することで反応を制御してもよいし、マイクロ流路中における反応場の位置や速度を制御することで反応場を制御してもよい。すなわち、反応制御器201は、加熱器や冷却器などの温度調節器を有していてもよいし、マイクロ流路に接続されるポンプを有していてもよい。
また、反応制御器201は、反応場における反応の種類に応じて、複数の反応場のそれぞれに熱、磁場、電場、電流、光、および放射線からなる群から選択される少なくとも1つを付与するものであってもよい。なお、反応ユニットU2としては、市販のサーマルサイクラーを用いることもできる。
<検出ユニット>
検出ユニットU3は、複数の反応場のそれぞれのサイズの検出と、複数の反応場のそれぞれについて分析対象物の検出と、を行うユニットである。検出ユニットU3は、複数の反応場のそれぞれにおける分析対象物の存在に関する情報を取得する分析対象物情報取得部301と、複数の反応場のそれぞれのサイズに関する情報を取得するサイズ情報取得部302と、を有する。
なお、検出ユニットU3による検出は、容器103に保持された複数の反応場のうち、一部の反応場を取り出して実施してもよいが、計測可能なすべての反応場について実施することが好ましい。これにより、検出を行う反応場の数を増やすことができ、分析結果の信頼度を向上させることができる。
(分析対象物情報取得部)
分析対象物情報取得部301は、複数の反応場のそれぞれについて分析対象物の検出を行う部分である。分析対象物情報取得部301は、反応ユニットU2において反応が進行した複数の反応場のそれぞれについて、分析対象物に由来するシグナルの検出を行う。分析対象物情報取得部301は、分析対象物に由来するシグナルの検出を行い、複数の反応場のそれぞれについて、分析対象物が含まれていたか否かを判定する。これにより、分析対象物情報取得部301は複数の反応場のそれぞれにおける分析対象物の存在に関する情報(分析対象物情報)を取得する。シグナルとしては、光が好適に用いられる。
本明細書においては、分析対象物情報取得部301によってシグナルが検出された反応場、すなわち、分析対象物が含まれていた反応場を「陽性反応場」と称する。また、分析対象物情報取得部301によってシグナルが検出されなかった反応場、すなわち、分析対象物が含まれていなかった反応場を「陰性反応場」と称する。なお、本明細書においては、分析対象物情報取得部301によって検出されたシグナルの強度が、予め設定された閾値よりも弱い場合にはシグナルは検出されなかったものとみなす。すなわち、反応場に分析対象物が含まれていたか否かは、その反応場からのシグナルの強度を所定の閾値と比較することで行う。
例えば、分析対象物が核酸であり、分析対象物を検出可能にするための薬剤として増幅試薬および蛍光試薬を用いた場合は、分析対象物情報取得部301は、分析対象物に由来するシグナルとして、所定の波長の蛍光を検出することが好ましい。
分析対象物情報取得部301が蛍光などの光をシグナルとして検出する場合、分析対象物情報取得部301は、光源303aと、検出器304aと、制御部(不図示)と、で構成することができる。光源303aは、検出したいシグナルに応じた波長の光を、容器103に保持された複数の反応場のそれぞれに照射する。検出器304aは、光が照射された複数の反応場のそれぞれから発せられたシグナルを検出する。すなわち、光源303aは励起手段として機能し、検出器304aは光検出手段として機能する。
検出器304aとしては、フォトダイオードやラインセンサ、イメージセンサ(撮像素子)等を用いることができ、中でも、多数の反応場について一括してシグナルの検出ができる点で、イメージセンサを用いることが好ましい。イメージセンサとしては、CCD(電荷結合素子、Charge Coupled Device)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体、Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを用いることができる。あるいは、検出器304aとしては、イメージセンサを備えたデジタルカメラを用いてもよい。また、検出器304aによって光を検出する場合は、光学フィルターを用いて反応場からの光の波長を調整してもよい。
分析対象物情報取得部301は、流路中を流れる複数の反応場について順次検出を行うフローサイトメーターであってもよい。あるいは、分析対象物情報取得部301は、複数の反応場について、二次元的に励起および検出を行うものであってもよい。すなわち、平面状に並べた複数の反応場に対して二次元的に光を照射して励起させ、反応場から発せられたシグナルをイメージセンサを用いて二次元的に検出する構成であってもよい。この構成は、多数の反応場についてスループットよくシグナルの検出を行うことができるため好ましい。
なお、分析対象物情報取得部301の有する光源303aは、互いに異なる複数の波長の光を反応場に照射する光源であってもよい。例えば、光源303aは、波長可変光源であってもよいし、波長が互いに異なる光をそれぞれ発する光源を複数有していてもよい。これにより、発生させる蛍光の波長が異なるなど、複数の分析対象物を区別できるようにそれぞれ検出可能にする複数種類の薬剤を用いることで、複数種類の分析対象物を一度の分析でまとめて検出することができる。
(サイズ情報取得部)
サイズ情報取得部302は、複数の反応場のそれぞれのサイズの検出を行う部分である。サイズ情報取得部302は、反応ユニットU2において反応が進行した複数の反応場のそれぞれについて、複数の反応場のそれぞれのサイズの検出を行う。
サイズ情報取得部302は、検出器304bと、制御部(不図示)と、で構成することができる。検出器304bは、反応場からの光を検出する。検出器304bとしては、検出器304aと同様の検出器を用いることができる。また、検出器304aが検出器304bの機能を兼ね備えてもよい。サイズ情報取得部302は、光源303bをさらに有していてもよい。光源303bは、光源303aと波長の異なる光を発する光源であることが好ましい。なお、光源303bが波長可変光源である場合は、光源303bが光源303aの機能を兼ね備えてもよい。
サイズ情報取得部302は、反応場からの散乱光を検出して、反応場のサイズの検出を行うことが好ましい。また、サイズ情報取得部302が有する検出器304bとしては、多数の反応場を一括して検出できる点で、イメージセンサを用いることが好ましい。
サイズ情報取得部302は、視野内に多数の反応場が含まれる反応場の画像を取得し、制御部(不図示)によってその画像データから反応場のサイズを取得することが特に好ましい。この場合は、例えば、一般に使用されている画像解析ソフトウエアを用いて、取得した画像データを解析して、それぞれの反応場のサイズに関する情報を取得することができる。例えば、反応場が液滴の場合で、該液滴の形状が真球とみなせる場合は、前記画像より液滴の半径、直径、断面積、および体積からなる少なくとも1つの情報を取得することができる。
<情報処理ユニット>
情報処理ユニットU4は、検出ユニットU3の検出結果(反応場のそれぞれのサイズに関する情報および反応場のそれぞれにおける分析対象物の存在に関する情報)に基づいて、サンプル中の分析対象物の濃度を導出するユニットである。
図2は、情報処理ユニットU4のハードウエア構成図である。情報処理ユニットU4は、ハードウエア的には、CPU451と、ROM452と、RAM453と、ストレージ454と、入出力I/F455と、通信I/F456と、画像出力I/F457と、を有する。
CPU451は、ROM452に記憶されているプログラムまたはRAM453にロードされたプログラムを実行し、情報処理ユニットU4が有する各部の制御を行う。ROM452は、不揮発性のメモリであり、情報処理ユニットU4の初期動作において必要なプログラムなどを記憶する。RAM453は、揮発性のメモリであり、ROM452またはストレージ454、あるいは外部記憶装置(不図示)に格納されているプログラムの読み出しに用いられる。また、RAM453は、これらのプログラムを実行するときに、CPU451の作業領域としても利用される。
ストレージ454には、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムなど、CPU451に実行させるための種々のプログラムおよびプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。ストレージ454には、検出ユニットU3から与えられた測定データを解析し、分析結果を出力するためのプログラムがインストールされている。
ストレージ454のような記憶媒体に格納されたプログラムをRAM453にロードし、RAM453にロードされたプログラムに従ってCPU451が動作することにより、図1に示す各部の機能、および後述する図4に示す各処理が実行される。
入出力インターフェース(I/F)455には、マウスやキーボード、タッチパネルなどで構成された入力部407が接続されており、ユーザが入力部407を使用することにより、情報処理ユニットU4にデータが入力される。画像出力インターフェース(I/F)457は、液晶パネル等で構成された表示部408に接続されており、画像データに応じた映像信号を、表示部408に出力する。表示部408は、入力された映像信号をもとに、画像を表示する。また、情報処理ユニットU4は、通信インターフェース(I/F)456を介して反応場生成ユニットU1、反応ユニットU2、検出ユニット、搬送ユニット(不図示)の各ユニットに接続されている。情報処理ユニットU4は、通信インターフェース456により、上述の各ユニットに対してデータの送受信が可能となる。
情報処理ユニットU4は、その機能として、図1に示すように、記憶部401と、制御部402と、分布データ生成部403と、サイズ範囲決定部404と、導出部405と、を有する。
記憶部401は、検出ユニットU3または入力部407から受信したデータや情報処理ユニットU4による処理によって生成されたデータを記憶する部分である。制御部402は、反応場生成ユニットU1、反応ユニットU2、検出ユニットU3、搬送ユニット(不図示)の各部の動作を制御する部分である。
(分布データ生成部)
分布データ生成部403は、反応場のそれぞれのサイズに関する情報と、反応場のそれぞれにおける分析対象物の存在に関する情報と、を検出ユニットU3から取得し、これらの情報を統合して分布データを生成する。すなわち、分布データ生成部403によって生成される分布データは、反応場のそれぞれのサイズに関する情報と、反応場のそれぞれにおける分析対象物の存在に関する情報と、が対応付けられたデータである。より具体的には、分布データ生成部403は、反応場のサイズの分布を複数の区間(階級)に分け、区間ごとに、陽性反応場の数に関する情報、および、陰性反応場の数に関する情報、からなる群から選択される少なくとも1つの情報を含む分布データを生成する。なお、ここでいう「数に関する情報」とは、例えば、数そのもの、または割合などが挙げられる。また、以下の説明においては、「陽性反応場の数に関する情報、および、陰性反応場の数に関する情報、からなる群から選択される少なくとも1つの情報」を「ネガポジ情報」と称することもある。また、検出ユニットU3から取得される、反応場のそれぞれのサイズに関する情報およびネガポジ情報の少なくとも一方を含むデータを「検出データ」と称することもある。
例えば、複数の反応場のそれぞれの形状がほぼ球形である場合において、反応場のサイズが球相当径で最小10μm、最大210μmであったとする。この場合、分布データ生成部403は、例えば、反応場のサイズの分布を20μm刻みで10個の区間に分ける。そして、各区間に含まれるサイズを有する複数の反応場について、陽性反応場の数および陰性反応場の数を集計する。またこのとき、区間ごとに、陽性反応場の数と陰性反応場の数の合計、すなわちその区間に含まれる反応場の総数を集計したり、その区間に含まれる全反応場に対する陽性反応場の割合や陰性反応場の割合を集計したりしてもよい。なお、分布データ生成部403が分布データを生成する際の区間の数や区間の幅については特に限定はされず、サイズ情報取得部302の分解能に応じて決定してもよいし、統計処理における一般的な方法によって決定してもよい。
なお、検出ユニットU3から取得される反応場のサイズに関する情報は、当該反応場が分析対象物を含んでいたか否か(陽性反応場または陰性反応場のいずれであるか)の情報と紐付けられて取得されることが好ましい。分析対象物情報取得部301およびサイズ情報取得部302がいずれもイメージセンサを用いて画像データを取得する手段を含む場合には、それぞれから取得される画像データを重ねあわせることで、上述の情報の紐付けを行うことができる。
(サイズ範囲決定部)
サイズ範囲決定部404は、サイズの分布を単分散とみなせる反応場のサイズの範囲を決定する。複数の反応場のサイズが単分散ではなく多分散である場合、サイズの分布を単純に単分散とみなして分析対象物の数または濃度の導出を行うと、真の値からの差異が生じてしまう。そこで本実施形態では、単分散とみなして分析対象物の数または濃度の導出を行っても真の値からの差異がそれほど大きくならず、生じる差異が許容されうるようなサイズ範囲を、「単分散とみなせるサイズ範囲」として決定する。なお、許容される差異は、分析の種類等に応じて適宜設定される。
本実施形態では、サイズ範囲決定部404は分布データ生成部403が生成した分布データに含まれる、複数の反応場のサイズに関する情報に基づいて上記サイズ範囲を決定する。なお、本実施形態のようにサイズ範囲決定部404が複数の反応場のサイズに関する情報に基づいて上記サイズ範囲を決定する場合には、サイズ範囲決定部404が用いる分布データにはネガポジ情報は必ずしも含まれていなくてもよい。すなわち、サイズ範囲決定部404は、少なくとも、サイズ情報取得部302で取得されたサイズに関する情報に基づいて上記サイズ範囲を決定する。
サイズ範囲決定部404は、サイズ情報取得部302で取得されたサイズに関する情報をもとに、分析対象物の数または濃度を仮定してポアソンモデルに基づいてシミュレーションすることによってサイズ範囲を決定することが好ましい。より具体的には、ポアソンモデルに基づいてシミュレーションすることによって得られるサイズ分布に対応付けられたネガポジ情報をもとに、あるサイズ範囲を単分散とみなして分析対象物の数または濃度を逆算する。そして、逆算して得られた分析対象物の数または濃度と、仮定した分析対象物の数または濃度と、を比較して、その差異が許容できるか否かを判定することで、サイズ範囲の決定を行う。サイズ範囲決定部404によってサイズ範囲を決定する具体的な方法は、例えば下記の(1)〜(10)の工程を含む。
(1)サイズ情報取得部302から、複数の反応場のそれぞれのサイズに関する情報を取得する。本実施形態では、分布データ生成部403から分布データを取得することで、当該分布データに含まれているサイズに関する情報を取得する。
(2)分布データの取得の際に検出対象とされた複数の反応場について、当該複数の反応場を生成する前に、当該複数の反応場に相当する液体中に含まれていた分析対象物の数(設定値1)を仮定する。
(3)分布データ中の複数の区間のそれぞれに、仮定した分析対象物を振り分ける。ここでは、全反応場の総体積に対する、それぞれの区間に含まれる反応場の総体積の割合に比例して、それぞれの区間に分析対象物が割り分けられるものとする。
(4)分布データ中の複数の区間のそれぞれにおいて、分析対象物が含まれる反応場の数と含まれない反応場の数を、ポアソンモデルに基づいて確率論的に計算する。分析対象物が含まれる反応場の数を陽性反応場の数、分析対象物が含まれない反応場の数を陰性反応場の数とする。例えば、複数の区間のそれぞれにおいて、分析対象物が1つも含まれない反応場の割合をポアソンモデルに基づいて計算し、それに基づいて陰性反応場および陽性反応場の数を算出してもよい。これにより、設定値1に対応する、区間ごとのネガポジ情報が取得される。
(5)(4)で得られた区間ごとのネガポジ情報について、少なくとも1つの区間を選択してそれらを統合することで、一部のサイズ範囲を選択する。
(6)選択されたサイズ範囲のネガポジ情報に基づいて、当該サイズ範囲を単分散とみなして、分析対象物の数(逆算値)を逆算する。分析対象物の数の計算方法としては、後述するポアソンモデルに基づく計算が好ましい。
(7)設定値1のうち、選択されたサイズ範囲に振り分けられる分析対象物の数(理論値)を計算する。
(8)(5)〜(7)の処理を、サイズ範囲を変えつつ行い、単分散とみなすサイズ範囲と、理論値および逆算値と、の関係を取得する。このとき、理論値および逆算値の差異が十分に小さく、所定値以下であれば、そのサイズ範囲は「単分散とみなせるサイズ範囲」であるといえる。ここで、所定値、すなわちどの程度まで差異を許容するかは、分析の用途や要求される分析の精度などに応じて適宜設定できるが、例えば、理論値と逆算値の差異が10%以下である場合を「単分散とみなせるサイズ範囲」としてもよい。なお、(2)において設定値として分析対象物の濃度を設定した場合には、(6)においても分析対象物の濃度を逆算し、(8)において設定値と逆算値の差異を算出してもよい。
(9)(2)〜(8)の処理を設定値を変えつつ行い、n個の設定値(設定値1〜n)のそれぞれについて、単分散とみなせるサイズ範囲の情報を取得し、両者を対応付けたテーブルを取得する。
(10)得られたn個の設定値に対する単分散とみなせるサイズ範囲に関するテーブルに基づき、単分散とみなすサイズ範囲を決定する。このとき、例えば、想定される分析対象物の数または濃度と、上記テーブルと、に基づいてサイズ範囲を決定してもよい。または、上記テーブルに基づいてサイズ範囲を決定して分析対象物の数または濃度を導出した後に、テーブル中のサイズ範囲に対応する設定値と導出結果とを比較して、両者が大きく異なる場合には別のサイズ範囲で導出し直す、という処理を行ってもよい。あるいは、単分散とみなせるサイズ範囲についてネガポジ情報まで計算してその情報をテーブルに含めておき、分析対象物情報取得部301で取得されたネガポジ情報と、上記テーブルと、に基づいてサイズ範囲を決定してもよい。
なお本実施形態では上述のように、サイズ範囲決定部404がサイズ情報取得部302で取得されたサイズに関する情報に基づいて「単分散とみなせるサイズ範囲」を決定したが、これに限定はされない。例えば、サイズ範囲決定部404は、ユーザの入力に応じて「単分散とみなせるサイズ範囲」を決定してもよいし、過去の計算結果に基づいて「単分散とみなせるサイズ範囲」を決定してもよい。サイズ範囲決定部404がユーザの入力に応じて「単分散とみなせるサイズ範囲」を決定する場合には、上述のテーブルを表示部408に表示して、ユーザによる入力を受け付けるようにしてもよい。また、サイズ範囲決定部404は、導出部405による分析対象物の数または濃度の導出の際に「単分散とみなせるサイズ範囲」の決定を毎回行ってもよいし、毎回は行わずに数回に一度行ってもよい。
サイズ範囲決定部404がサイズ情報取得部302で取得されたサイズに関する情報に基づいて「単分散とみなせるサイズ範囲」を決定する場合にも、サイズ範囲決定部404はポアソンモデルに基づくシミュレーションを行わずにサイズ範囲を決定してもよい。例えば、分析対象物の濃度が既知の標準サンプルを用意し、この標準サンプルを用いて分析を行う。そして、サイズに関する情報とネガポジ情報を取得し、あるサイズ範囲で単分散をみなして分析対象物の濃度を計算する。これを濃度やサイズ分布を変えつつ行うことで、計算される濃度と既知の濃度との差異が所定値以下となるサイズ範囲を、サイズに関する情報ごとに記憶部401に予め記憶しておく。これにより、サイズ範囲決定部404はサイズ情報取得部302で取得されたサイズに関する情報に基づいて、ポアソンモデルに基づくシミュレーションを行わずに「単分散とみなせるサイズ範囲」を決定することもできる。
(導出部)
導出部405は、サイズ範囲決定部404によって決定されたサイズ範囲に含まれるサイズを有する反応場に関する情報に基づいて、当該サイズ範囲内における反応場のサイズ分布を単分散とみなして、サンプル中の分析対象物の数または濃度を導出する。すなわち、導出部405は、当該サイズ範囲に含まれるサイズを単一のサイズとみなして、サンプル中の分析対象物の数または濃度を導出する。
本実施形態では、導出部405は、分布データ生成部403が生成した分布データのうちの少なくとも一部のデータを用いて、サンプル中の分析対象物の数または濃度を導出する。図3に、本実施形態に係る導出部405が分析対象物の数または濃度の導出に用いるデータの模式図を示す。図3に示すように、導出部405は、サイズに関する情報とネガポジ情報とが統合された分布データのうち、サイズ範囲決定部404によって決定されたサイズ範囲以外のデータを棄却して、残ったデータを用いて分析対象物の数または濃度を導出する。すなわち、導出部405は、サイズ範囲決定部404によって決定されたサイズ範囲に含まれるサイズを有する反応場に関する情報以外の情報を棄却、棄却されなかった情報を用いて分析対象物の数または濃度を導出する。ここで、本明細書において「棄却」とは、物理的にデータを捨てることに限定されず、決定されたサイズ範囲以外のデータを導出に用いないことも「棄却」と表現する。
なお、上述のようにサイズ範囲決定部404がサイズ範囲を決定する際に用いる、分布データ生成部403によって生成される分布データには、ネガポジ情報は含まれていなくてもよい。その場合は、サイズ範囲決定部404がサイズ範囲を決定した後に、決定されたサイズ範囲に含まれるサイズを有する反応場について、検出ユニットU3による検出を行えばよい。
導出部405は、分析対象物の数を下記に示すようなポアソンモデルに基づく計算によって導出することが好ましい。そして、導出部405は、導出された分析対象物の数を、計算に用いた反応場の総体積で割ることで濃度を導出することが好ましい。
以下、導出部405がサンプル中の分析対象物の濃度を導出する際の計算処理について説明する。
(分析対象物の濃度の計算)
分析対象物の濃度の計算は、従来行われているデジタル分析における濃度計算方法を採用して実施することができる。反応ユニットU2における反応の前に、それぞれの反応場が含む分析対象物が1個または0個のいずれかであるとみなせる場合について説明する。この場合は、分析対象物が検出された反応場(陽性反応場)の数xを、サイズ範囲決定部404によって決定されたサイズ範囲に含まれる、総体積Vsの反応場に含まれていた分析対象物の数とみなすことができる。よって、下記式(1)により、反応液中の分析対象物の濃度λを計算することができる。なお、体積Vsは、検出ユニットU3から取得される反応場のサイズに関する情報とサイズ範囲決定部404によって決定されたサイズ範囲とに基づいて算出することができる。
λ=x/Vs ・・・式(1)
また、例えば、反応ユニットU2における反応の前に、1つの反応場に複数個の分析対象物が入り得るとみなせる場合は、ポアソンモデルによる補正を行うことで、分析対象物の濃度を計算することができる。この場合は、反応ユニットU2における反応の前にそれぞれの反応場に含まれていた分析対象物の平均個数Cを推定することにより、分析対象物の濃度算出を行う。サイズ範囲決定部404によって決定されたサイズ範囲に含まれる反応場について、1つの反応場に含まれる分析対象物の平均個数をCとすると、1つの反応場にn個の分析対象物が含まれる確率は、ポアソンモデルの式から、下記式(2)のように表される。
ここで、1つの反応場が分析対象物を1つも含まない確率は、式(2)においてn=0として、下記式(3)で表される。
P(0,C)=e−C ・・・式(3)
反応ユニットU2における反応の前に1つの反応場中に少なくとも1つの分析対象物が含まれていれば、その反応場からはシグナルを検出することができるが、反応の前にその反応場に含まれていた分析対象物の数の情報までは分からない。そこで、サイズ範囲決定部404によって決定されたサイズ範囲に含まれる反応場の総数に対する、分析対象物が検出されなかった反応場の割合に基づいて、式(3)を用いて、検出対象とした反応液中に含まれていた分析対象物の個数を推定する。
具体的には、シグナルが検出された反応場の個数またはシグナルが検出されなかった反応場の個数と、サイズ範囲決定部404によって決定されたサイズ範囲に含まれる反応場の総数とから、シグナルが検出されなかった反応場の割合Fを算出する。そして、下記式(4)から、検出対象とした反応場に、反応ユニットU2における反応の前に1つの反応場に含まれていた分析対象物の平均個数Cを推定する。
C=−ln(F) ・・・式(4)
ここで、サイズ範囲決定部404によって決定されたサイズ範囲に含まれる反応場の平均体積をvとすると、下記式(5)により、反応液中の分析対象物の濃度λを計算することができる。なお、サイズ範囲決定部404によって決定されたサイズ範囲に含まれる反応場の平均体積vは、検出ユニットU3から取得される反応場のサイズに関する情報とサイズ範囲決定部404によって決定されたサイズ範囲とに基づいて算出することができる。
λ=C/v ・・・式(5)
なお、反応液中の分析対象物の濃度λは、分析対象物の平均個数Cと反応場の数を乗じて得られる分析対象物の総数と、反応場の平均体積vと反応場の数を乗じて得られる反応場の総体積と、に基づいて算出してもよい。
このようにして得られた、反応液中の分析対象物の濃度は、検体またはサンプルから反応液を調整した際の希釈倍率を用いることによって、検体またはサンプル中の分析対象物の濃度に換算することができる。
[分析方法]
次に、本実施形態に係る分析システム1を用いた分析方法について、図4を用いて説明する。図4は、分析システム1による分析処理の手順を示すフローチャートである。
S401にて、分析対象物の定量分析を行うサンプルが準備される。ここでは、検体を希釈、前処理するなどして、サンプルを準備する。なお、サンプルの準備は、分析システム1内で行ってもよいし、分析システム1外の装置、例えば、市販の検体前処理装置を用いて行ってもよい。
S402にて、反応場生成ユニットU1は、サンプルを含む反応液を分割して、互いに独立した、複数の反応場を生成する。
S403にて、反応ユニットU2は、複数の反応場のそれぞれにおいて反応を進行させ、分析対象物を検出可能にする。
S404にて、検出ユニットU3は、複数の反応場のそれぞれについて、分析対象物の検出と、複数の反応場のそれぞれのサイズの検出と、を行う。これにより、複数の反応場のそれぞれについて、サイズに関する情報とネガポジ情報とを取得する。なお、ここでは「単分散とみなせるサイズ範囲」の決定(S406)の前にネガポジ情報の取得も行っているが、これに限定はされず、ネガポジ情報の取得は「単分散とみなせるサイズ範囲」の決定の後に行ってもよい。
S405にて、情報処理ユニットU4は、各反応場のサイズに関する情報とネガポジ情報とを検出ユニットU3から取得し、これらの情報を統合して、分布データを生成する。なお、S404にてネガポジ情報の取得を行わなかった場合などには、各反応場のサイズに関する情報に基づいて分布データ、すなわちサイズ分布データを生成してもよい。
S406にて、情報処理ユニットU4は、各反応場のサイズに関する情報に基づいて、「単分散とみなせるサイズ範囲」を決定する。各反応場のサイズに関する情報に基づいて「単分散とみなせるサイズ範囲」を決定する方法は、上述の通りである。なお、上述の通り、「単分散とみなせるサイズ範囲」の決定は毎回行う必要はない。また、情報処理ユニットU4は、ユーザの入力に応じて「単分散とみなせるサイズ範囲」を決定してもよい。
S407にて、情報処理ユニットU4は、S406で決定されたサイズ範囲のデータを用いて、当該サイズ範囲を単分散とみなして、分析対象物の数または濃度を導出する。なお、S404にてネガポジ情報の取得を行わなかった場合には、S407の前にネガポジ情報の取得を行えばよい。
[その他の実施形態]
本発明の実施形態として分析システム1について説明したが、本発明はこれに限定はされず、本発明は分析システム1を構成する各部の一部からなる分析システムによっても実現可能である。
また、本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又はコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下に限定されるものではない。
(準備例1)
<エマルジョン1の生成>
QuickPrimer Control DNA 5(5ng/μL、型番MR405、タカラバイオ社製)の10倍希釈液を2μL、QuickPrimer Escherichia / Shigella group(16S rDNA)(フォワードプライマー、リバースプライマーそれぞれ2.0μM、型番MR201、タカラバイオ社製)を4μL、SYBR Premix Ex Taq(Tli RNaseH Plus)(型番RR420、タカラバイオ社製)を10μL、滅菌蒸留水を4μL、用意して混合した。
この混合液に下記のサーマルサイクル条件でサーマルサイクルを施してPCRを行い、大腸菌16S rDNAのアンプリコンを取得した。アガロースゲル電気泳動により413bpの増幅産物が得られたことを確認した。アンプリコンの濃度がおおよそ5×10コピー/μL程度となるよう溶液を希釈して、テンプレート1とした。
[サーマルサイクル条件]
1)初期変性(95℃2分間) 1サイクル
2)PCR(95℃20秒間、55℃20秒間、74℃20秒間)35サイクル
3)保持(4℃)1サイクル
市販のインターカレーター法のPCR試薬(ddPCR EvaGreen Supermix、バイオ・ラッドラボラトリーズ社製)10μLに、上述のテンプレート1を2μL、QuickPrimer Escherichia / Shigella group(16S rDNA)(フォワードプライマー、リバースプライマーそれぞれ2.0 μM、型番MR201、タカラバイオ社製)を1μL、滅菌蒸留水を7μL、それぞれ添加し混合し、分散相とした。
上述の分散相に、連続相として、市販のデジタルPCR用のオイル(Droplet Generator Oil for Evagreen、バイオ・ラッドラボラトリーズ社製)を50μL添加した。この混合液をボルテックスミキサーで撹拌して、油中水型エマルジョンであるエマルジョン1を生成した。
<エマルジョンを用いたPCR>
得られたエマルジョン1に下記のサーマルサイクル条件でサーマルサイクルを施してPCRを行った。
[サーマルサイクル条件]
1)酵素活性化(95℃5分間) 1サイクル
2)PCR(95℃30秒間、55℃1分間) 50サイクル
3)信号安定化(4℃5分間、90℃5分間) 1サイクル
4)保持(4℃) 1サイクル
<サーマルサイクル後の液滴の計測>
サーマルサイクル後のエマルジョン1を、ガラス製沈査用プレート(MUR−300、松浪硝子工業株式会社)に20μL採取し、蛍光顕微鏡(BZ−8000、株式会社キーエンス)を用いて観察した。観察は、1つの視野につき、同一視野において可視光像と蛍光像(励起波長480/30nm、吸収波長510nm)を内蔵のカメラ(撮像素子:150万画素CCDイメージセンサ)で撮影し、これを5つの視野において行った。撮影した画像の一例を図9(a)に示す。
得られた可視光像より、画像処理ソフトウエアを用いて、それぞれの液滴の直径を計測した。このとき、計測の分解能は10μmであり、直径10μm以下の液滴は計測対象外とした。また、得られた蛍光像より、目視による判定によって、それぞれの液滴について遺伝子増殖による蛍光増強の有無を判定し、分析対象物が検出されたか否かを判定した。可視光像と蛍光像とを重ね合わせることで、それぞれの液滴のサイズの情報と分析対象物が検出されたか否かの情報とを対応付けたデータを作成した。
得られたデータについて、液滴のサイズを複数の区間に分け、度数分布データを作成した。具体的には、液滴径が20μm以上30μm未満を1つの区間として、以降同様にして、計測の分解能である10μmを区間の幅として、液滴径を18個の区間に分けた。そして、区間ごとに液滴の数、陽性液滴の数、陰性液滴の数、をそれぞれ集計した。この結果を表1にまとめて示す。
表中、液滴径は液滴の平均直径、Totalは液滴の総数、Positiveは蛍光増強があった液滴(陽性液滴)の数、Negativeは蛍光増強がなかった液滴(陰性液滴)の数、をそれぞれ示す(以降、同様である)。
(準備例2)
準備例1において、テンプレート1を10倍に希釈して、テンプレート2とした。すなわち、テンプレート2では、アンプリコンの濃度がおおよそ5×10コピー/μL程度となっている。テンプレート1の代わりにテンプレート2を用いて分散相を形成したこと以外は準備例1と同様にして、エマルジョン2を生成した。
このエマルジョン2について、準備例1と同様にサーマルサイクルを施してPCRを行い、準備例1と同様にサーマルサイクル後の液滴を計測した。撮影した画像の一例を図9(b)に示す。計測結果を表1にまとめて示す。
(準備例3)
準備例1において、テンプレート1を100倍に希釈して、テンプレート3とした。すなわち、テンプレート3では、アンプリコンの濃度がおおよそ5×10コピー/μL程度となっている。テンプレート1の代わりにテンプレート3を用いて分散相を形成したこと以外は準備例1と同様にして、エマルジョン3を生成した。
このエマルジョン3について、準備例1と同様にサーマルサイクルを施してPCRを行い、準備例1と同様にサーマルサイクル後の液滴を計測した。撮影した画像の一例を図9(c)に示す。計測結果を表1にまとめて示す。
(準備例4)
準備例1において、テンプレート1を1000倍に希釈して、テンプレート4とした。すなわち、テンプレート4では、アンプリコンの濃度がおおよそ5×10コピー/μL程度となっている。テンプレート1の代わりにテンプレート4を用いて分散相を形成したこと以外は準備例1と同様にして、エマルジョン4を生成した。
このエマルジョン4について、準備例1と同様にサーマルサイクルを施してPCRを行い、準備例1と同様にサーマルサイクル後の液滴を計測した。撮影した画像の一例を図9(d)に示す。計測結果を表1にまとめて示す。
(比較例1)
準備例1〜4のエマルジョン1〜4について、液滴を用いるデジタルPCRで一般に行われている方法で、サンプル中の分析対象物(標的核酸)の濃度を計算した。具体的には、全区間の液滴の総数の合計、全区間の陰性液滴の数の合計を用いて陰性液滴の割合を計算し、式(4)を用いて1つの反応場に含まれていた分析対象物の平均個数Cを算出した。そして、平均個数Cと全区間の液滴の総数の合計とを掛け合わせて、検出対象とした全液滴に含まれていた分析対象物の総数を算出した。その後、各区間の液滴の総数とその区間の液滴の液滴径とから、各区間に含まれる液滴の体積を計算し、検出対象とした液滴の総体積を計算した。そして、検出対象とした全液滴に含まれていた分析対象物の総数を検出対象とした全液滴の総体積で割ることで反応液における濃度を算出し、それに希釈倍率10倍を掛けることで、サンプル中の分析対象物の濃度に換算した。結果を表2に示す。
(実施例1)
エマルジョン1〜4について、各エマルジョンの液滴のサイズの分布に基づいて単分散とみなせるサイズ範囲を決定し、そのサイズ範囲に含まれる液滴のネガポジ情報に基づいて、分析対象物の濃度を計算した。
(単分散とみなせるサイズ範囲の決定)
サーマルサイクル後のエマルジョン1〜4の液滴のサイズの分布は、表1のとおりであった。このサイズの分布に基づいて、エマルジョン1〜4のそれぞれについて、単分散とみなせるサイズ範囲を決定した。
具体的な手順について、エマルジョン1を例に説明する。まず、表1に示されるサイズ分布を有する複数の液滴が、エマルジョン形成前に含んでいた分析対象物の総数(設定値)を、100,000コピーと仮定した。次に、表1に示される複数の区間のそれぞれに、仮定した100,000コピーの分析対象物を振り分けた。このとき、全液滴の総体積に対する、それぞれの区間に含まれる液滴の総体積の割合に比例させて、それぞれの区間に分析対象物を振り分けた。
次に、複数の区間のそれぞれについて、分析対象物が1つも含まれない液滴の割合を、ポアソンモデルに基づいて確率論的に計算した。そして、得られた割合を1から差し引くことで、分析対象物を1つ以上含む液滴の割合を計算した。分析対象物を1つも含まない液滴はすべて陰性液滴、分析対象物を1つ以上含む液滴はすべて陽性液滴となるものとして、得られた割合と、区間に含まれる液滴の総数とを掛け合わせることで、陰性液滴および陽性液滴の数を計算した。
エマルジョン形成前に含まれていた分析対象物の総数(設定値)を30,000コピー、10,000コピー、3,000コピー、1,000コピー、300コピー、100コピー、30コピー、10コピー、3コピーと仮定した場合についても同様にそれぞれ計算して、陽性液滴および陰性液滴の数を計算した。
次に、表3のネガポジ情報をもとに、区間1〜17(液滴径で20〜180μm)を単一の区間(すなわち、単分散の区間)とみなして、式(4)および式(5)に基づいて、分析対象物の濃度を逆算した。設定値ごとの逆算結果を表4にまとめて示す。
次に、表3のネガポジ情報をもとに、単一の区間とみなす範囲を変えながら、上記方法と同様にして、設定値に対する逆算値の差異の計算を行った。具体的には、単一の区間とみなす範囲を、区間1〜16、区間1〜15、…、区間1〜2、区間1と変えながら、上記逆算を行い、設定値に対する逆算値の差異を算出した。結果を、区間1〜17に関する結果もあわせて表5にまとめて示す。
ただし、表3からすべての液滴が陰性液滴となると計算され、式(4)および式(5)に基づく分析対象物の数や濃度の計算ができなかった場合は、表5において「範囲外」と記載した。
ここで、単分散とみなして濃度を導出した際に生じる真の値からの差異が10%以下であれば許容されるとした場合、単分散とみなせるサイズ範囲は、表6のようになる。ここで、表6中、○は単分散とみなして計算できる(すなわち、前記差異が10%以下と試算される)ことを表し、×は単分散とみなして計算できない(すなわち、前記差異が10%を超えると試算される)ことを表す。
次に、作成した単分散とみなせるサイズ範囲の表(表6)をもとに、単分散とみなせるサイズ範囲を決定し、当該サイズ範囲に含まれるサイズを有する液滴のサイズ分布を単分散とみなして、サンプル中の分析対象物の濃度を計算した。
本実施例では、まず、表6において単分散とみなせるとされたサイズ範囲のそれぞれについて、表3の情報をもとに陰性反応場の数(設定値から計算される理論値)を計算し、表1の情報をもとに陰性反応場の数の実測値と比較を行った。その結果を表7に示す。
表7において、反応場のサイズ範囲が20〜30μmの行を見ると、陰性液滴数が58〜79個である場合にはこのサイズ範囲を単分散とみなせることがわかる。このサイズ範囲においては陰性液滴数の実測値は72個であったため、20〜30μmは単分散とみなせるサイズ範囲と言える。また、同様に、反応場のサイズ範囲が20〜40μmも単分散とみなせるサイズ範囲であることがわかった。単分散とみなせるサイズ範囲が複数ある場合、いずれかのサイズ範囲を選択してもよいし、複数のサイズ範囲を選択して分析対象物の数または濃度の計算を行ってから、その計算結果を平均してもよい。ここでは、より多数の反応場の情報から計算するため、20〜40μmを、単分散とみなせるサイズ範囲として決定した。
決定したサイズ範囲について、表1から陰性反応場の割合(0.866)を計算し、反応場の直径からこのサイズ範囲内の反応場の総体積(0.0022μL)を計算した。これを用いて、上述のポアソンモデルに基づく式(式(4)および(5))を用いて計算した結果、分析対象物の数は18コピー、反応液中の分析対象物の濃度は8,180コピー/μLと計算できた。これにサンプルの希釈倍率10倍を掛け、サンプル中の分析対象物の濃度に換算した。
エマルジョン2〜3についてもエマルジョン1と同様にして計算を行い、サンプル中の分析対象物の濃度を計算した。計算結果をまとめて表8に示す。なお、エマルジョン4については単分散とみなせるサイズ範囲がなかったため、分析対象物の濃度の計算を行わなかった。
<比較例1と実施例1の比較>
表3,6,11に示されるように、比較例1、実施例1,2のそれぞれにおいて、エマルジョン1,2,3,4は、それぞれ、エマルジョン1に対する相対希釈倍率が1倍、10倍、100倍、1000倍に相当する。したがって、エマルジョン1,2,3,4においてサンプル中の分析対象物の濃度は、それぞれ、エマルジョン1に対して1倍、0.1倍、0.01倍、0.001倍となるはずである。
図11は、比較例1、実施例1,2のそれぞれにおける、相対希釈倍率とサンプル中の分析対象物の濃度の計算結果との関係を示すグラフである。図11(a)は比較例1の結果、図11(b)は実施例1の結果、図11(c)は実施例2の結果を、横軸を相対希釈倍率、縦軸を濃度の計算結果とした両対数グラフでそれぞれ示している。
上述のように、相対希釈倍率と濃度は、相対希釈倍率をy、濃度をxとすると、y=ax−1が成り立つ。したがって、両対数グラフにおいては両者の関係は傾きが−1の直線で表されるはずである。図6(a)〜(b)において、エマルジョン1においてサンプル中の分析対象物の濃度が5×10コピー/μLであったと仮定したときの相対希釈倍率と濃度の関係を、点線で示した。また、図6(a)〜(b)において、実線は両対数グラフにおいて比較例1、実施例1の結果を累乗近似したときの近似曲線を示している。図6(a)〜(b)を比較すると、図6(b)では、図6(a)よりも、実線の傾きが点線の傾きに近いことがわかった。具体的には、近似曲線の傾きは、比較例1では−0.77、実施例1では−1.18となった。このことから、実施例1では、比較例1よりも真の値に近い結果が得られたこと、すなわち、定量分析の信頼度が高いことがわかった。実施例1では、特に希釈倍率の低い部分、すなわち、サンプル中の分析対象物の濃度が高い部分において、真の値に近い結果が得られることがわかった。以上から、本発明によれば、液滴のサイズにばらつきがある場合であっても、信頼度の高い分析結果が得られることがわかった。
1 分析システム
301 分析対象物情報取得部
302 サイズ情報取得部
404 サイズ範囲決定部
405 導出部

Claims (20)

  1. サンプル中の分析対象物の濃度を分析する分析システムであって、
    前記サンプルを含む液体を分割して生成された、サイズの分布が多分散である複数の反応場について、前記複数の反応場のそれぞれのサイズに関する情報を取得するサイズ情報取得部と、
    前記複数の反応場のそれぞれにおける前記分析対象物の存在に関する情報を取得する分析対象物情報取得部と、
    サイズの分布を単分散とみなせる反応場のサイズの範囲を決定するサイズ範囲決定部と、
    前記分析対象物情報取得部で取得された情報のうち、前記サイズ範囲決定部で決定された前記範囲に含まれるサイズを有する反応場に関する情報に基づいて、前記範囲に含まれるサイズを単一のサイズとみなして、前記サンプル中の前記分析対象物の数または濃度を導出する導出部と、
    を有することを特徴とする分析システム。
  2. 前記サイズ範囲決定部が、前記サイズ情報取得部で取得された前記複数の反応場のサイズに関する情報に基づいて、サイズの分布を単分散とみなせるサイズ範囲を決定することを特徴とする請求項1に記載の分析システム。
  3. 前記サイズ範囲決定部が、前記サイズ情報取得部で取得された前記複数の反応場のサイズに関する情報をもとに分析対象物の数または濃度を仮定してポアソンモデルに基づいてシミュレーションすることで、サイズの分布を単分散とみなせる反応場のサイズの範囲を決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の分析システム。
  4. 前記サイズ範囲決定部が、前記サイズ情報取得部で取得された前記複数の反応場のサイズに関する情報をもとに分析対象物の数または濃度を仮定してポアソンモデルに基づいてシミュレーションし、単分散とみなして計算した際に仮定した分析対象物の数または濃度からの差異が所定値以下となるサイズ範囲を、サイズの分布を単分散とみなせるサイズ範囲として決定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の分析システム。
  5. 前記導出部が、ポアソンモデルに基づいて前記サンプル中の前記分析対象物の数または濃度を導出することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の分析システム。
  6. 前記サイズ範囲決定部が決定する前記範囲が、前記複数の反応場のサイズ範囲の一部であることを特徴する請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の分析システム。
  7. 前記分析対象物情報取得部が、前記サイズ範囲決定部で決定されたサイズ範囲に含まれるサイズを有する反応場から、前記分析対象物の存在に関する情報を取得することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の分析システム。
  8. 前記サイズ情報取得部および前記分析対象物情報取得部が、前記複数の反応場の少なくとも一部を撮像する撮像手段を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の分析システム。
  9. 前記サイズ情報取得部で取得された前記サイズに関する情報と、前記分析対象物情報取得部で取得された前記分析対象物の存在に関する情報と、を対応付けた分布データを生成する分布データ生成部をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の分析システム。
  10. 前記液体を分割して前記複数の反応場を生成する反応場生成部をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の分析システム。
  11. 前記反応場生成部が、前記液体が、前記液体と非相溶な第2の液体中に液滴状に分散されたエマルジョンを生成する手段であることを特徴とする請求項10に記載の分析システム。
  12. 前記反応場生成部が、膜乳化法または機械乳化法によって前記エマルジョンを生成する手段であることを特徴とする請求項11に記載の分析システム。
  13. 前記液体は前記分析対象物を検出可能にするための薬剤を含有しており、
    前記複数の反応場のそれぞれにおいて前記薬剤による反応を進行させ、前記分析対象物を検出可能にする反応部をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の分析システム。
  14. 前記分析対象物が、核酸であることを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の分析システム。
  15. 前記薬剤が、前記核酸を増幅させるための増幅試薬と、前記核酸と相互作用して蛍光を発する蛍光試薬と、を含むことを特徴とする請求項14に記載の分析システム。
  16. 前記反応が、PCRを含むことを特徴とする請求項14または請求項15に記載の分析システム。
  17. 前記反応部が、前記複数の反応場のそれぞれの温度を調節する温度調節器を有することを特徴とする請求項13乃至請求項16のいずれか一項に記載の分析システム。
  18. サンプル中の分析対象物の濃度を分析する分析方法であって、
    前記サンプルを含む液体を分割して生成された、サイズの分布が多分散である複数の反応場について、前記複数の反応場のそれぞれのサイズに関する情報を取得するサイズ情報取得工程と、
    前記複数の反応場のそれぞれにおける前記分析対象物の存在に関する情報を取得する分析対象物情報取得工程と、
    サイズの分布を単分散とみなせる反応場のサイズの範囲を決定するサイズ範囲決定工程と、
    前記分析対象物情報取得工程で取得された情報のうち、前記サイズ範囲決定工程で決定された前記範囲に含まれるサイズを有する反応場に関する情報に基づいて、前記範囲に含まれるサイズを単一のサイズとみなして、前記サンプル中の前記分析対象物の数または濃度を導出する導出工程と、を有することを特徴とする分析方法。
  19. コンピュータに、分析対象物を含むサンプルを含む液体を分割して生成された、サイズの分布が多分散である複数の反応場に関する、前記複数の反応場のそれぞれのサイズに関する情報と、前記複数の反応場のそれぞれにおける前記分析対象物の存在に関する情報と、を含む検出データの処理を実行させるプログラムであって、
    前記処理が、
    サイズの分布を単分散とみなせる反応場のサイズの範囲を決定するサイズ範囲決定ステップと、
    前記サイズ範囲決定ステップで決定された前記範囲に含まれるサイズを有する反応場に関する情報に基づいて、前記範囲に含まれるサイズを単一のサイズとみなして、前記サンプル中の前記分析対象物の数または濃度を導出する導出ステップと、
    を有することを特徴とするプログラム。
  20. 請求項19に記載のプログラムを格納した、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
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