JP2020000190A - 油性組成物、およびそれを用いた分析方法 - Google Patents

油性組成物、およびそれを用いた分析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 流動性および安定性の高い油中水型エマルジョンを形成可能な油性組成物を提供する。【解決手段】 脂肪族炭化水素またはシリコーンオイルと、界面活性剤と、を含有する油性組成物であって、前記脂肪族炭化水素と前記シリコーンオイルの25℃における動粘度は4mm2/s未満であり、前記界面活性剤が、側鎖にアルキル基を有するシリコーンをポリエーテルで架橋したポリエーテル変性シリコーン架橋物であることを特徴とする油性組成物。【選択図】 なし

Description

本発明は、油性組成物、およびそれを用いた分析方法に関する。
特定の塩基配列を有する核酸(標的核酸)を定量分析する方法として、「デジタルPCR(dPCR:digital Polymerase Chain Reaction)」法が注目されている。
dPCRでは、標的核酸を含むサンプルを、標的核酸を増幅するための増幅試薬、標的核酸を検出するための蛍光試薬などと混合して希釈し、物理的に独立した多数の反応場に分割する。そして、多数の反応場のそれぞれにおいて独立にPCRを生じさせ、標的核酸を増幅する。このとき、標的核酸を含むサンプルを十分に希釈しておき、それぞれの反応場に含まれる標的核酸の数が1個または0個のいずれかとなるようにしておく。これにより、増幅後にシグナルが検出された反応場の数(陽性反応場数)および/または増幅後にシグナルが検出されなかった反応場の数(陰性反応場数)から、サンプル中の標的核酸の濃度を取得することができる。
dPCRにおいてサンプルを含む反応液を物理的に独立した多数の反応場に分割する方法として、反応液の液滴をオイル中に形成する方法、すなわち、油中水型エマルジョン(W/Oエマルジョン)中の液滴を反応場として用いる方法がある(特許文献1)。
特表2012−503773号公報
油中水型エマルジョンを用いたdPCRなど、油中水型エマルジョンを用いた反応や分析においては、油中水型エマルジョンの形成から反応、分析の完了までの一連のプロセスの間に、油中水型エマルジョンを流動させる必要がある。このとき、油中水型エマルジョンの流動性が低いとスループットが低下してしまうため、油中水型エマルジョンの流動性は高いほうが好ましい。
しかしながら、油中水型エマルジョンにおいては一般に、連続相であるオイルの動粘度が高いほどエマルジョンが安定であり、オイルの動粘度が低いほどエマルジョンが不安定であることが知られている。そのため、油中水型エマルジョンの流動性を高めるためにオイルの動粘度を低くすると、エマルジョンの安定性が低下してしまうという課題があった。
そこで本発明では、上述の課題に鑑み、流動性およびエマルジョンの安定性の高い、油中水型エマルジョンを形成可能な油性組成物を提供することを目的とする。
本発明の一側面としての油性組成物は、脂肪族炭化水素またはシリコーンオイルと、界面活性剤と、を含有する油性組成物であって、前記脂肪族炭化水素と前記シリコーンオイルの25℃における動粘度はそれぞれ4mm/s未満であり、前記界面活性剤が、側鎖にアルキル基を有するシリコーンをポリエーテルで架橋したポリエーテル変性シリコーン架橋物であることを特徴とする。
本発明によれば、流動性および安定性の高い油中水型エマルジョンを形成可能な油性組成物を提供することができる。
本発明の実施例7の油中水型エマルジョンの光学顕微鏡画像である。 本発明の実施例13の油中水型エマルジョンの蛍光顕微鏡画像である。 本発明の実施例14の油中水型エマルジョンの蛍光顕微鏡画像である。 本発明の実施例15の油中水型エマルジョンの蛍光顕微鏡画像である。 本発明の実施例16の油中水型エマルジョンの蛍光顕微鏡画像である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対して適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に含まれる。
[油性組成物(O)]
本実施形態に係る油性組成物(O)は、脂肪族炭化水素またはシリコーンオイル(A)と、界面活性剤(B)と、を含有する。本実施形態において、脂肪族炭化水素またはシリコーンオイル(A)の25℃における動粘度はそれぞれ4mm/s未満であり、界面活性剤(B)は、側鎖にアルキル基を有するシリコーンをポリエーテルで架橋したポリエーテル変性シリコーン架橋物である。
脂肪族炭化水素またはシリコーンオイル(A)は油性組成物(O)の主成分であり、脂肪族炭化水素またはシリコーンオイル(A)として、25℃における動粘度が4mm/s未満のオイルを用いることで、油性組成物(O)の動粘度を低くすることができる。すなわち、脂肪族炭化水素(A)として炭素原子数が7以上20以下の脂肪族炭化水素を用いることで、油性組成物(O)の動粘度を低くすることができる。あるいは、シリコーンオイル(A)として分子量が600以下のポリシロキサンを用いることで、油性組成物(O)の動粘度を低くすることができる。これにより、油性組成物(O)を用いて形成される油中水型エマルジョンの流動性を向上させることができる。また、油性組成物(O)の動粘度を4mm/s未満とすることにより、膜乳化等によって油中水型エマルジョンを形成する際にも、液滴(水相)のサイズを均一にしやすくすることができる。
一般に、25℃における動粘度が4mm/s未満といった低い動粘度の脂肪族炭化水素またはシリコーンオイルを主成分とした、低動粘度の油性組成物(O)を用いて形成される油中水型エマルジョンは、エマルジョンの安定性が低い傾向にある。本発明者らの検討の結果、この場合でも、側鎖にアルキル基を有するシリコーンをポリエーテルで架橋したポリエーテル変性シリコーン架橋物を界面活性剤(B)として用いることで、安定性の高い油中水型エマルジョンを形成可能な油性組成物を実現した。
以下、油性組成物(O)の各成分について、詳細に説明する。
<脂肪族炭化水素またはシリコーンオイル(A)>
本実施形態に係る脂肪族炭化水素またはシリコーンオイル(A)は、25℃における動粘度が4mm/s未満のオイルである。脂肪族炭化水素(A)の25℃における動粘度は、3mm/s未満であることが好ましい。これにより、油性組成物(O)を用いて膜乳化法等によって油中水型エマルジョンを形成したときに、液滴のサイズのばらつきが低いエマルジョンを形成することができる。脂肪族炭化水素またはシリコーンオイル(A)の25℃における動粘度の下限は特に限定はされないが、0.5mm/s以上であることが好ましく、1mm/s以上であることがより好ましい。これにより、油性組成物(O)を用いて膜乳化法等によって油中水型エマルジョンを形成したときに、安定性の高いエマルジョンを形成することができる。
脂肪族炭化水素またはシリコーンオイル(A)は、25℃において液体である。脂肪族炭化水素またはシリコーンオイル(A)の沸点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。脂肪族炭化水素またはシリコーンオイル(A)の沸点が100℃以上であることにより、油性組成物(O)を用いて形成した油中水型エマルジョンをPCRのために加熱しても、油性組成物(O)の蒸発を抑制することができる。
脂肪族炭化水素またはシリコーンオイル(A)の含有量は、油性組成物(O)の全体を100質量%としたときに、70質量%以上99.9質量%以下であることが好ましく、80質量%以上99質量%以下であることがより好ましい。
脂肪族炭化水素またはシリコーンオイル(A)の比重は、0.92g/cm未満であることが好ましく、0.88g/cm未満であることがより好ましい。脂肪族炭化水素またはシリコーンオイル(A)の比重の下限は特に限定はされないが、0.3g/cm以上であることが好ましく、0.5g/cm以上であることがより好ましい。脂肪族炭化水素またはシリコーンオイル(A)の比重が0.92g/cm未満の場合、油性組成物(O)の比重を1g/cm未満にでき、油性組成物(O)を用いて油中水型エマルジョンを形成したときに液滴を重力方向下側に集めやすい。その結果、油中水型エマルジョンを用いた反応や分析を行う際に、均一に反応を進行させやすくなり、液滴の観察も容易になるため、好ましい。
脂肪族炭化水素(A)は、パラフィン系炭化水素であることが好ましく、イソパラフィン系炭化水素やシクロパラフィン系炭化水素であることがより好ましい。また、脂肪族炭化水素(A)は、炭素原子数が7以上20以下であることが好ましく、10以上18以下であることが特に好ましい。脂肪族炭化水素(A)の炭素原子数が20以下であることで、脂肪族炭化水素(A)の分子量を小さくすることができ、25℃における動粘度を低くすることができる。なお、脂肪族炭化水素(A)は、複数種類の脂肪族炭化水素によって構成されていてもよい。
脂肪族炭化水素(A)として好適な、25℃における動粘度が4mm/s未満のイソパラフィン系炭化水素の市販品としては、アイソパーE(25℃における動粘度0.83mm/s)、アイソパーG(25℃における動粘度1.49mm/s)、アイソパーH(25℃における動粘度1.80mm/s)、アイソパーL(25℃における動粘度1.61mm/s)、アイソパーM(25℃における動粘度3.77mm/s)(以上、エクソンモービル製、「アイソパー」はエクソンモービルの登録商標)等が挙げられる。
また、脂肪族炭化水素(A)として好適な、25℃における動粘度が4mm/s未満のシクロパラフィン系炭化水素の市販品としては、エクソールD30(25℃における動粘度1.04mm/s)、エクソールD40(25℃における動粘度1.30mm/s)、エクソールD60(25℃における動粘度1.73mm/s)、エクソールD80(25℃における動粘度2.09mm/s)、エクソールD95(25℃における動粘度2.49mm/s)、エクソールD110(25℃における動粘度3.43mm/s)(以上、エクソンモービル製、「エクソール」はエクソンモービルの登録商標)等が挙げられる。
シリコーンオイル(A)は、ポリシロキサンであることが好ましく、ジメチルポリシロキサンであることがより好ましい。また、シリコーンオイル(A)は、分子量が100以上600以下であることが好ましく、200以上500以下であることがより好ましい。シリコーンオイル(A)の分子量が600以下であることで、25℃における動粘度を低くすることができる。なお、シリコーンオイル(A)は、複数種類のシリコーンオイルによって構成されていてもよい。
シリコーンオイル(A)として好適な、25℃における動粘度が4mm/s未満のシリコーンオイルの市販品は、KF−96L−0.65cs(25℃における動粘度0.65mm/s)、KF−96L−1cs(25℃における動粘度1mm/s)、KF−96L−1.5cs(25℃における動粘度1.5mm/s)、KF−96L−2cs(25℃における動粘度1.61mm/s)(以上、信越化学工業製)、DOW CORNING TORAY SH 200 FLUID 0.65 CS(25℃における動粘度0.65mm/s)、DOW CORNING TORAY SH 200 FLUID 1 CS(25℃における動粘度1mm/s)、DOW CORNING TORAY SH 200 FLUID 1.5 CS(25℃における動粘度1.5mm/s)、DOW CORNING TORAY SH 200 FLUID 2 CS(25℃における動粘度2mm/s)(以上、東レ・ダウコーニング製)等が挙げられる。
<界面活性剤(B)>
界面活性剤(B)は、側鎖にアルキル基を有するシリコーンをポリエーテルで架橋したポリエーテル変性シリコーン架橋物である。
エマルジョンの安定性を向上させる方法として、界面活性剤を添加することは知られているが、エマルジョンを構成するオイルなどの種類によって好適な界面活性剤は異なる。本発明者らの検討の結果、上記脂肪族炭化水素またはシリコーンオイル(A)を主成分とする油性組成物(O)で、側鎖にアルキル基を有するシリコーンをポリエーテルで架橋したポリエーテル変性シリコーン架橋物を界面活性剤に用いることが好適だとわかった。すなわち、油性組成物(O)が界面活性剤(B)を含有することで、油性組成物(O)を用いて油中水型エマルジョンを形成したときに、エマルジョンの安定性を向上させることができる。これは、界面活性剤(B)が側鎖にアルキル基を有するために脂肪族炭化水素またはシリコーンオイル(A)との親和性が高いこと、高分子のポリシロキサン骨格を有するためにエマルジョンを安定化させやすいこと、等に起因するものと発明者らは推測している。
界面活性剤(B)は、具体的には、(PEG−15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー(INCI名)、(PEG−10/ラウリルジメチコン)クロスポリマー(INCI名)、(PEG−15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー(INCI名)等を挙げることができる。界面活性剤(B)としては、これらの材料で構成される群から選択される少なくとも1つを選択できる。
(PEG−15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー(INCI名)の市販品としては、KSG−310(信越化学工業製)、KSG−320(信越化学工業製)、KSG−330(信越化学工業製)を使用することができる。(PEG−10/ラウリルジメチコン)クロスポリマー(INCI名)の市販品としては、KSG−340(信越化学工業製)を使用することができる。PEG−15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー(INCI名)の市販品としては、KSG−320Z(信越化学工業製)、KSG−350Z(信越化学工業製)、KSG−360Z(信越化学工業製)、KSG−380Z(信越化学工業製)等を使用することができる。
界面活性剤(B)の含有量は、油性組成物(O)の全体を100質量%としたときに、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上8質量%以下であることがより好ましい。また、1質量%以上4質量%以下であることが特に好ましい。
[水性組成物(W)]
本実施形態に係る油性組成物(O)は、水を含み、油性組成物(O)と相溶しない水性組成物(W)と組み合わせることで、安定な油中水型エマルジョンを形成することができる。油中水型エマルジョンでは、連続相である油性組成物(O)中に、分散相である水性組成物(W)の液滴が分散している。本実施形態に係る油性組成物(O)を用いて形成される油中水型エマルジョンは高い安定性を有するため、油中水型エマルジョン中の複数の液滴のそれぞれを反応場として利用する、液滴ベースの反応や分析に好適に用いることができる。例えば、油中水型エマルジョン中の複数の液滴のそれぞれを反応場としてPCRを生じさせて分析を行う、dPCRに好適に用いることができる。
以下、本実施形態に係る油性組成物(O)と組み合わせて用いることのできる、水性組成物(W)の各成分について、詳細に説明する。
<水>
水性組成物(W)は、水を含有する。水性組成物(W)の水の含有量は特に限定はされないが、水性組成物(W)全体を100質量%としたときに、60質量%以上99.9質量%以下であることが好ましく、80質量%以上99.5質量%以下であることがより好ましい。
<その他成分>
水性組成物(W)が含有する水以外の成分については特に限定はされず、油中水型エマルジョンの用途に応じて選択することができる。例えば、油中水型エマルジョンを液滴ベースの反応に用いる場合には、水性組成物(W)は反応物を含有してもよい。また、油中水型エマルジョンを液滴ベースの分析に用いる場合には、水性組成物(W)は分析対象物を含有してもよい。以下、油中水型エマルジョンを液滴ベースの分析に用いる場合の水性組成物(W)が含有する成分について説明する。
(分析対象物)
水性組成物(W)は、少なくとも1つの分析対象物を含有する。本実施形態に係る分析対象物とは、例えばdPCRにおける分析対象核酸など、サンプル中に含まれ、定量分析などの分析の対象になる化合物や粒子をいう。本実施形態に係る分析対象物は、液滴中での反応によって検出可能にすることができるものであれば、特に限定はされない。分析対象物としては、例えば、核酸、ペプチド、タンパク質、酵素などが挙げられる。
核酸は、詳しくは後述するが、核酸を増幅させるための増幅試薬と核酸の増幅に応じて蛍光を発する蛍光試薬とを、核酸を検出可能にするための薬剤として用い、PCRなどの核酸増幅法を用いて検出可能にすることができる。また、ペプチドやタンパク質は、ELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)法などによって検出可能にすることができる。なお、分析対象物は上記の核酸、ペプチド、タンパク質などを含む物質であってもよい。例えば、核酸、ペプチド、およびタンパク質の少なくともいずれかが共有結合等で結合または付着した分子、マイクロ粒子、ナノ粒子、細胞などが挙げられる。
例えば、ヒトから採取した血液や、そこから抽出された核酸などを検体とし、該検体に含まれ得る、がんや感染症などの疾病に関わる遺伝子を含む核酸を分析対象物とすれば、当該疾病の診断などに有用な情報が得られると期待できる。また、食品を検体とすれば、遺伝子組換え作物(GMO)の評価などの食品検査を行うことができる。あるいは、環境中の土壌や水を検体とすれば、環境モニタリングを行うことができる。
本実施形態において核酸を分析対象物とする場合、核酸は、増幅の対象になる鋳型核酸であれば特に限定されず、DNA(DeoxyriboNucleic Acid)であってもよいし、RNA(RiboNucleic Acid)であってもよい。核酸の形態も特に限定されず、直鎖状の核酸であってもよく、また環状の核酸であってもよい。また、核酸は単一の塩基配列を有する1種類の核酸であってもよく、また、種々の塩基配列をそれぞれ有する複数種類の核酸(例えば相補的DNAライブラリーなど)であってもよい。
分析対象物の含有量は特に限定はされないが、油中水型エマルジョンを形成したときに、油中水型エマルジョン中の複数の液滴のそれぞれに含まれる分析対象物の数が1個または0個となるような量であることが好ましい。このようにすることで、液滴ベースのデジタル分析の定量の精度を向上させることができる。
(分析対象物を検出可能にするための薬剤)
分析対象物が核酸である場合は、PCR法に代表されるような、酵素を用いた核酸増幅反応を用いて核酸を増幅することで、検出可能にすることができる。ここで、核酸増幅反応としては、反応場をサーマルサイクルに供することで反応を進行させるPCR法やLCR(Ligase Chain Reaction)法が挙げられる。この他に、反応場をサーマルサイクルに供さずに温度調整することで反応を進行させるSDA(Strand Displacement Amplification)法、ICAN(Isothermal andChimeric primer−initiated Amplificationof Nucleic acids)法、LAMP(Loop−Mediated Isothermal Amplification)法などを好ましく使用することができる。
核酸増幅反応を用いる場合は、核酸を増幅させるための増幅試薬と、核酸の増幅に伴って蛍光を発する蛍光発生試薬と、を核酸を検出可能にするための薬剤として用いる。
増幅試薬は、標的核酸の有する所定の塩基配列に相補的な塩基配列を有する一対のプライマー(フォワードプライマーおよびリバースプライマー)および核酸合成反応を促進する生体触媒であるポリメラーゼを含有する。また、増幅試薬は、核酸の原料としてのdNTP(DeoxyriboNucleotide−5’−TriPhosphate)などのリボ核酸を含有する。さらに、増幅試薬は、反応液中の水素イオン濃度(pH)をコントロールするための緩衝液または緩衝剤や、塩を含むことが好ましい。なお、増幅試薬は、上記各成分を含む市販のキットを用いてもよい。
プライマーとしては、分析対象核酸の一部の領域の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、核酸増幅反応に用いることができるオリゴヌクレオチドであれば特に限定されない。ここで、ストリンジェントな条件とは、プライマーと鋳型核酸との間に少なくとも90%以上、好ましくは95%以上の配列同一性があるときに、該プライマーが鋳型核酸に特異的にハイブリダイズできる条件である。プライマーは、分析対象核酸の塩基配列に基づいて適宜設計できる。また、プライマーは、核酸増幅法の種類に応じて設計されることが望ましい。プライマーの長さは、通常、5〜50ヌクレオチド、好ましくは、10〜40ヌクレオチドである。なお、プライマーは、分子生物学領域において一般に用いられる核酸合成方法により生成することができる。
緩衝液または緩衝剤としては、任意の適切な緩衝液または緩衝剤を用いることができる。緩衝液または緩衝剤は、反応液の水素イオン濃度(pH)を、所望の反応が効率的に起こり得るpH、または、その近傍に維持するよう構成することが好ましい。反応工程においてPCRを実施する場合、反応液のpHは、例えば6.5〜9.0の間で、使用する薬剤の各成分にあわせて任意に選択することができる。緩衝液または緩衝剤の種類は、分子生物学領域で一般に使用されるものを使用することができる。例えば、Tris(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)バッファー、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルフォン酸)バッファー、MES(2−モルホリノエタンスルホン酸)バッファー等を用いることができる。
塩としては、例えば、CaCl、KCl、MgCl、MgSO、NaCl、およびこれらの組み合わせから適宜選択されたものを用いることができる。
蛍光試薬は、一般的にPCR法等に用いられる、蛍光インターカレーター(蛍光色素)またはプローブアッセイ用のプローブ(蛍光標識プローブ)を含有する。蛍光インターカレーターとしては、エチジウムブロマイド、SYBR Green I(「SYBR」はモレキュラープローブスの登録商標)、LC Greenなどを好適に用いることができる。蛍光標識プローブとしては、標的核酸に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(プローブ)であって、一方の末端(5´末端)がレポーターで修飾され、もう一方の末端(3´末端)がクエンチャーで修飾されたものを用いることができる。レポーターとしてはFITC(Fluorescein−5−IsoThioCyanate)やVICなどの蛍光物質を、クエンチャーとしてはTAMARAなどの蛍光物質や、Eclipse、DABCYL、MGBなどを用いることができる。蛍光標識プローブとしては、TaqMan(「TaqMan」はロシュダイアグノスティックスの登録商標)プローブなどを用いることができる。なお、ここでは蛍光試薬を用いる場合について説明したが、蛍光以外の発光を利用する発光試薬を使用してもよい。
一方、分析対象物がペプチドやタンパク質である場合は、ELISA法のような、分析対象物を特異的に反応する抗体(または抗原)と酵素を用いた抗原抗体反応および酵素反応により、検出可能にすることができる。より具体的には、例えば、分析対象物に酵素で標識された抗体(または抗原)を抗原抗体反応によって複合化させ、この酵素の酵素反応によって生じる発色または発光物質を検出する。なお、分析対象物と抗原抗体反応を生じさせる抗体(または抗原)は予め酵素標識されていなくてもよく、抗原抗体反応後に酵素によって標識されてもよい。
ELISA法を用いる場合は、抗体(または抗原)と酵素を含む試薬を、分析対象物を検出可能にするための薬剤として用いる。ELISA法に用いる試薬として市販されている市販のキットを用いてもよい。
なお、発生させる蛍光の波長が異なるなど、それぞれの分析対象物を区別できるように検出可能にする複数種類の薬剤を用いれば、複数種類の分析対象物を同時に検出することもできる。
[油中水型エマルジョン]
上述のように、本実施形態に係る油性組成物(O)は、水性組成物(W)と組み合わせることで、油中水型エマルジョンを形成することができる。本実施形態に係る油性組成物(O)を用いて形成される油中水型エマルジョンは高い安定性を有するため、油中水型エマルジョン中の複数の液滴のそれぞれを反応場として利用する、液滴ベースの反応や分析に好適に用いることができる。
油中水型エマルジョンにおける、水性組成物(W)に対する油性組成物(O)の体積比は特に限定はされないが、1以上300以下であることが好ましく、1以上150以下であることがより好ましい。
油中水型エマルジョン中の液滴のサイズは特に限定はされないが、直径で、1μm以上300μm以下であることが好ましく、10μm以上200μm以下であることがより好ましく、20μm以上150μm以下であることがさらに好ましい。液滴の直径を300μm以下とすることで、油中水型エマルジョンを分析に用いる際の検体量やサンプル量が少ない場合であっても、十分な数の液滴に分割することができ、分析の精度を向上させることができる。また、液滴の直径を300μm以下とすることで、エマルジョンの安定性を向上させることができる。
油中水型エマルジョンの形成方法は特に限定はされず、従来公知の乳化方法を利用できる。例えば、撹拌装置や超音波破砕装置などにより機械的エネルギーを付与することでエマルジョンを形成する機械的乳化法が挙げられる。また、マイクロチャネル乳化法やマイクロ流路分岐乳化法などのマイクロ流路デバイスを用いた方法、乳化膜を用いる膜乳化法などが挙げられる。これらの方法は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも機械的乳化法や膜乳化法は、マイクロ流路デバイスを用いた方法に比べて液滴のサイズのばらつき(分散)が大きくなる傾向にあるものの、スループット良くエマルジョンを形成できるため好ましい。また、エマルジョンを形成する装置の装置構成を単純にできること、液滴のサイズのばらつきが比較的低いエマルジョンを形成できることなどから、膜乳化法が特に好ましい。
膜乳化法は、分散相または連続相、あるいは分散相および連続相の混合物を複数の細孔やスリットを有する乳化膜に透過させることでエマルジョンを形成する方法である。膜乳化法において分散相または連続相、あるいは分散相および連続相の混合物を乳化膜に透過させる回数は特に限定はされず、1回であってもよいし、複数回であってもよい。
膜乳化法としては、直接膜乳化法やポンピング乳化法などを用いることができる。直接膜乳化法とは、乳化膜を介して分散相を一定圧力で押し出すことにより、押し出される側をゆっくり流れている連続相中に、エマルジョンを形成する方法である。ポンピング乳化法とは、連続相を採取したシリンジと分散相を採取したシリンジとで乳化膜を挟み、2つのシリンジから液体を交互に押し出して乳化膜を通過させることによって、エマルジョンを調製する方法である。なおポンピング乳化法においては、2つのシリンジの一方に連続相と分散相の混合物を採取しておき、もう一方のシリンジは空にしておいてもよい。ポンピング乳化法においては、それぞれシリンジと接続可能な一対のコネクターの間に乳化膜を挟み込んだポンピング式の乳化デバイスを用いることができる。
膜乳化法で使用する乳化膜としては、複数の細孔を有する多孔質体の膜や、スリットを有する膜を用いることができる。具体的には、SPG(シラス多孔質ガラス)などの多孔質ガラス膜、ポリカーボネート製メンブレンフィルター、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製メンブレンフィルター、などを用いることができる。また、乳化膜の表面は疎水化処理されていることがより好ましい。乳化膜の孔径は、形成しようとする油中水型エマルジョン中の液滴のサイズに応じて選択することができ、0.2μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。
[油中水型エマルジョンを用いた分析方法]
上述の通り、本実施形態に係る油中水型エマルジョンは、油中水型エマルジョン中の複数の液滴のそれぞれを反応場として利用する、液滴ベースの反応や分析に好適に用いることができる。以下、本実施形態に係る油性組成物を用いた分析対象物の分析方法について説明する。
本実施形態に係る分析方法は、下記の工程を有する。
(a)水と、分析対象物と、分析対象物を検出可能にするための薬剤と、を含有する水性組成物と、油性組成物と、から、油中水型エマルジョンを形成するエマルジョン形成工程
(b)油中水型エマルジョン中の複数の液滴のそれぞれにおいて反応を進行させ、分析対象物を検出可能にする反応工程
(c)油中水型エマルジョン中の複数の液滴のそれぞれについて、分析対象物の検出と、液滴のサイズの計測と、を行う観察工程
(d)液滴のサイズと、分析対象物が検出された液滴の数と、に基づいて、水性組成物中に含まれていた分析対象物の濃度を取得する濃度取得工程
以下、各工程について、詳細に説明する。
<(a)エマルジョン形成工程>
本工程は、水性組成物と、油性組成物と、から、油中水型エマルジョンを形成する工程である。水性組成物、油性組成物の組成や比率、油中水型エマルジョンの形成方法については上述の通りである。
<(b)反応工程>
本工程は、油中水型エマルジョン中の複数の液滴のそれぞれにおいて反応を進行させ、分析対象物を検出可能にする工程である。
分析対象物が核酸である場合は、上述の通り、PCR法に代表されるような、酵素反応を用いた核酸増幅反応を用いて核酸を増幅することで、検出可能にすることができる。核酸増幅反応としては、上述の通り、PCR法やLCR法、SDA法、ICAN法、LAMP法などを好ましく使用することができる。本実施形態では、核酸分子1分子からの増幅を行うことを想定しているため、核酸増幅反応としてPCRを行う場合は、サーマルサイクル処理を20〜70サイクル行うことが好ましく、30〜50サイクル行うことがより好ましい。
本工程では、油中水型エマルジョンを容器に入れ、温度調整装置を使用して容器中の油中水型エマルジョンの温度を調整することで、油中水型エマルジョンを温度制御やサーマルサイクルに供することが好ましい。容器の形状は特に限定はされず、マイクロチューブや、油中水型エマルジョン中の液滴を平面状に並べることが可能な、薄い平面状の空間を有する容器、マイクロ流路デバイス等を用いることができる。温度調整装置としては、従来公知のヒーター等を用いることができ、例えばペルチェヒーター等を用いることができる。
本工程では、油中水型エマルジョン中の液滴を平面状に並べた状態で、油中水型エマルジョンの温度を調整することが好ましい。これにより、それぞれの液滴における反応を均一に進行させることができる。また、後述する観察工程におけるシグナルの検出や、液滴サイズの計測を容易にすることができる。本実施形態に係る油性組成物によって形成される油中水型エマルジョンは上述の通り流動性が高いため、液滴を平面状に並べる際のスループットを高くすることができる。また、エマルジョンの安定性も高いため、反応工程の前後でエマルジョンの状態(液滴のサイズ等)を保持することができ、分析の精度を向上させることができる。
一方、分析対象物がペプチドやタンパク質である場合は、例えばELISA法のような、酵素反応と免疫反応とを組み合わせた分子生物学的手法で分析対象物の増幅を行い、検出可能にすることができる。
<(c)観察工程>
本工程は、油中水型エマルジョンを観察し、複数の液滴のそれぞれについて、分析対象物の検出と、液滴のサイズの計測と、を行う工程である。
油中水型エマルジョン中の複数の液滴のうち、(b)反応工程の前に分析対象物が含まれていた液滴からはシグナルが検出される。そのため、このシグナルを検出することで、液滴中の分析対象物を検出することができる。なお、(b)反応工程の前に分析対象物が含まれていなかった液滴からは、通常、シグナルが検出されないか、または分析対象物が含まれていた液滴と区別可能な程度に微弱なシグナルが検出される。
分析対象物が核酸であり、(b)反応工程において増幅試薬と蛍光発生試薬を用いて核酸を検出可能にした場合は、蛍光励起手段と蛍光検出手段とを用いて蛍光検出を行うことで、シグナルの検出を行うことができる。例えば、一般的に利用されている蛍光励起手段と蛍光検出手段を備えたフローサイトメーター、またはこれと同様の機能を備えたマイクロ流体デバイスなどを使用して、蛍光検出することができる。また、上述のように油中水型エマルジョン中の複数の液滴を平面状に並べておけば、蛍光検出手段として撮像素子や該素子を備えた撮像装置を用いることで、複数の液滴について同時にシグナルの検出を行うことができる。この方法によれば多数の液滴についてスループット良くシグナルの検出を行うことができるので好ましい。撮像素子は特に限定されない。例えばCCD(電荷結合素子、Charge Coupled Device)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体、Complementary Metal Oxide Semiconductor ImageSensor)等を用いることができる。蛍光励起および蛍光検出においては、使用する蛍光試薬の特性に応じて、光学フィルターを用いて励起光または検出光の波長を調整することができる。さらに、蛍光波長が異なる、複数の種類の蛍光試薬を用いることによって、複数の種類の分析対象物を同時に計測することも可能である。
<(d)濃度取得工程>
分析対象物の濃度の計算は、従来行われているデジタル分析における濃度計算方法を採用して実施することができる。例えば、反応工程の前に1つの液滴に複数個の分析対象物が含まれていなかったとみなせば、分析対象物が検出された液滴の数xを、観察工程において分析対象物の検出の対象とした体積Vsの水性組成物中に含まれていた分析対象物の数とみなすことができる。よって、下記式(9)により、水性組成物中の分析対象物の濃度λを計算することができる。なお、観察工程において分析対象物の検出の対象とした水性組成物の体積Vsは、観察工程において取得した液滴のサイズに基づいて算出することができる。
λ=x/Vs ・・・式(9)
また、例えば、反応工程の前に、1つの液滴に複数個の分析対象物が入り得るとみなせる場合は、Poissonモデルによる補正を行うことで、分析対象物の濃度を計算することができる。この場合は、反応工程の前にそれぞれの液滴に含まれていた分析対象物の平均個数Cを推定することにより、分析対象物の濃度算出を行う。具体的には、液滴の個数をn、それぞれの液滴に含まれる分析対象物の平均個数をC、とすると、Poissonモデルの式から、下記式(10)が成り立つ。
分析対象物を1つも含まない液滴を得る確率は、式(10)においてn=0として、下記式(11)で表される。
P(n=0,C)=e−C ・・・式(11)
反応工程の前に1つの液滴中に少なくとも1つの分析対象物が含まれていれば、その液滴からはシグナルを検出することができるが、反応工程の前にその液滴に含まれていた分析対象物の数の情報までは分からない。そこで、検出対象とした液滴の総数に対する分析対象物が検出されなかった液滴の割合(=シグナルが検出されなかった液滴の割合)に基づいて、式(11)を用いて、検出対象とした水性組成物中に含まれていた分析対象物の個数を推定する。具体的には、シグナルが検出された反応場の個数と、検出対象とした液滴の総数とから、シグナルが検出されなかった液滴の割合Fを算出する。そして、下記式(12)から、検出対象とした液滴に反応工程の前に含まれていた分析対象物の平均個数Cを推定する。
C=−1n(F) ・・・式(12)
ここで、観察工程において分析対象物の検出の対象とした液滴の総体積をvとすると、下記式(13)により、水性組成物中の分析対象物の濃度λを計算することができる。なお、観察工程において分析対象物の検出の対象とした液滴の総体積vは、観察工程において取得した液滴のサイズに基づいて算出することができる。
λ=C/v ・・・式(13)
このようにして得られた、水性組成物中の分析対象物の濃度は、検体から水性組成物を調整する際の希釈倍率を用いることによって、検体中の分析対象物の濃度に換算することもできる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下に使用される「%」は、特に示さない限りすべて質量基準である。
(実施例1)
界面活性剤であるKSG−320(信越化学工業製)をイソパラフィン系脂肪族炭化水素であるアイソパーL(エクソンモービル製)に溶解させ、実施例1の油性組成物を調製した。本実施例では、油性組成物の全体を100質量%としたときに界面活性剤の濃度が4質量%となるように油性組成物を調製した。アイソパーLの25℃における動粘度は1.61mm/sである。また、アイソパーLは炭素原子数が11〜15のイソパラフィンを主成分とする(85質量%以上含有する)イソパラフィン系脂肪族炭化水素である。
次に、調製した油相組成物3mLに対して、水性組成物であるリン酸緩衝生理食塩水(以下、「PBS」と称する。)100μLをゆっくりと滴下しながら、マグネチックスターラー(回転数1000rpm)で撹拌して、油中水型エマルジョンを調製した。
得られた油中水型エマルジョンに下記のステップからなるサーマルサイクルを施し、サーマルサイクルに対するエマルジョンの安定性を評価した。
<サーマルサイクル条件>
(1)95℃で10分間
(2)95℃で30秒間の後60℃で60秒間のサイクルを40サイクル
(3)98℃で10分間
(4)4℃に下げる
なお、表1の安定性評価の欄において、○はエマルジョンに変化が見られなかったことを示し、×はエマルジョンの合一が生じたことを示す。
(実施例2〜6、比較例1〜6)
実施例2〜6、比較例1〜6において、界面活性剤の種類や量、およびオイルの種類を表1に示すように変えて油性組成物および油中水型エマルジョンを調製し、調製した油中水型エマルジョンの安定性(サーマルサイクル安定性)を評価した。結果をまとめて表1に示す。
比較例1で用いた界面活性剤KF−6028(信越化学工業製)は側鎖にアルキル基を有さないポリエーテル変性ポリシロキサンである。比較例2で用いた界面活性剤Span 80(Sigma−Aldrich製)はソルビタンモノオレエートであり、ポリオールエステル系非イオン界面活性剤である。比較例3で用いた界面活性剤ソルゲン 30(第一工業製薬製)はソルビタンセスキオレートであり、ソルビタン脂肪酸エステル系非イオン界面活性剤である。比較例4で用いた界面活性剤エパン U−103(第一工業製薬製)はポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールであり、エーテル系非イオン界面活性剤である。比較例5と6で用いた界面活性剤DKS NL−15(第一工業製薬製)はポリオキシエチレンラウリルエーテルであり、エーテル系非イオン界面活性剤である。
表1に示すように、界面活性剤として側鎖にアルキル基を有するシリコーンをポリエーテルで架橋したポリエーテル変性シリコーン架橋物を用いた油性組成物で形成した油中水型エマルジョンは高い安定性を有していた(実施例1〜6)。このようなエマルジョンの安定性は、界面活性剤が側鎖にアルキル基を有するために脂肪族炭化水素またはシリコーンオイルとの親和性が高いこと、高分子のポリシロキサン骨格を有するためにエマルジョンを安定化させやすいこと、等に起因するものと考えられる。一方、界面活性剤として側鎖にアルキル基を有さないポリエーテル変性ポリシロキサンを用いた場合(比較例1)や他の非イオン界面活性剤を用いた場合(比較例2〜6)はエマルジョンの安定性が低かった。
(実施例7)
界面活性剤であるKSG−320(信越化学工業製)をシリコーンオイルであるKF−96L−1.5cs(信越化学工業製)に溶解させ、実施例7の油相組成物を調製した。本実施例では、油性組成物の全体を100質量%としたときに界面活性剤の濃度が4質量%となるように油性組成物を調製した。
次に、水性組成物であるPBSを採取したシリンジ(SS−05LZ、テルモ製)の先端に、乳化膜であるシラス多孔質ガラス(SPG)膜(DC20U、細孔径20μm、SPGテクノ製)を接続した。シリンジをシリンジポンプ(SPS−1、アズワン製)にセットし、シリンジの先端の乳化膜を上記油性組成物13mL中に浸し、油性組成物を少量吸い上げた。その後、1mL/hの乳化流速(水性組成物注入速度)で水性組成物(0.4mL)を注入した。これにより、油中水型エマルジョンを調製した。得られた油中水型エマルジョンの光学顕微鏡画像を図1に示す。また、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA−950、堀場製作所製)を用いて測定した。油中水型エマルジョン中の液滴の平均直径は58μmであった。
得られた油中水型エマルジョンについて、実施例1と同様にしてサーマルサイクルに対するエマルジョンの安定性を評価した。結果を表2に示す。なお、表2の安定性評価の欄において、○はエマルジョンに変化が見られなかったことを示し、×はエマルジョンの合一が生じたことを示す。
(実施例8〜12)
実施例8〜12において、界面活性剤とオイルの種類を表2に示すように変えて油性組成物および油中水型エマルジョンを調製し、調製した油中水型エマルジョンの安定性(サーマルサイクル安定性)を評価した。結果をまとめて表2に示す。
表2に示すように、界面活性剤として側鎖にアルキル基を有するシリコーンをポリエーテルで架橋したポリエーテル変性シリコーン架橋物を用いた油性組成物で形成した油中水型エマルジョンは高い安定性を有していた(実施例7〜12)。
(実施例13)
(油中水型エマルジョンの形成)
Internal DNA extraction control kit( 型番 INT−DNA−FAMおよびINT−DNA−YY、Primerdesign社製)のプロトコルに従い、添付のコントロールDNA、プライマー・プローブを混合した。その後、Premix Ex Taq(型番 RR390A、タカラバイオ社製)、滅菌蒸留水を混合して、実施例13の水性組成物を調製した。本実施例では、蛍光色素としてFAMを使用した。
界面活性剤であるKSG−320(信越化学工業製)をイソパラフィン系脂肪族炭化水素であるアイソパーL(エクソンモービル製)に溶解させ、実施例13の油相組成物を調製した。本実施例では、油性組成物の全体を100質量%としたときに界面活性剤の濃度が4質量%となるように油性組成物を調製した。
前記水性組成物を採取したシリンジ(08040、ニプロ製)の先端に乳化膜であるシラス多孔質ガラス(SPG)膜(DC20U、SPGテクノ製)を接続した。シリンジをシリンジポンプ(SPS−1、アズワン製)にセットし、シリンジの先端の乳化膜を上記油性組成物9mL中に浸し、油性組成物を少量吸い上げた。その後、1mL/hの乳化流速(水性組成物注入速度)で水性組成物を注入して、油中水型エマルジョンを調製した。
(油中水型エマルジョンを用いたPCR)
得られたエマルジョンに下記のサーマルサイクル条件でサーマルサイクルを施してPCRを行ったところ、油中水型エマルジョン中の液滴は合一や凝集することなく、安定であった。また、サーマルサイクル後のエマルジョンを蛍光顕微鏡観察したところ、蛍光が検出される液滴と蛍光が検出されない液滴とが確認できた(図2)。
<サーマルサイクル条件>
1)初期変性(95℃で5分間):1サイクル
2)PCR(95℃で30秒間、55℃で1分間):50サイクル
3)信号安定化(4℃で5分間、90℃で5分間):1サイクル
4)保持(4℃)1サイクル
(実施例14)
実施例13の界面活性剤をKSG−320Z(信越化学工業製)に変え、実施例13と同様に操作して油中水型エマルジョンを形成し、それを用いてPCRを行った。
本実施例においても、サーマルサイクル後に油中水型エマルジョン中の液滴は合一や凝集することなく、安定であった。また、サーマルサイクル後のエマルジョンを蛍光顕微鏡観察したところ、蛍光が検出される液滴と蛍光が検出されない液滴とが確認できた(図3)。
(実施例15)
実施例13のイソパラフィン系脂肪族炭化水素をシリコーンオイルであるKF−96L−1.5cs(信越化学工業製)に変え、実施例13と同様に操作して油中水型エマルジョンを形成し、それを用いてPCRを行った。
本実施例においても、サーマルサイクル後に油中水型エマルジョン中の液滴は合一や凝集することなく、安定であった。また、サーマルサイクル後のエマルジョンを蛍光顕微鏡観察したところ、蛍光が検出される液滴と蛍光が検出されない液滴とが確認できた(図4)。
(実施例16)
実施例15の界面活性剤をKSG−380Z(信越化学工業製)に変え、実施例15と同様に操作して油中水型エマルジョンを形成し、それを用いてPCRを行った。
本実施例においても、サーマルサイクル後に油中水型エマルジョン中の液滴は合一や凝集することなく、安定であった。また、サーマルサイクル後のエマルジョンを蛍光顕微鏡観察したところ、蛍光が検出される液滴と蛍光が検出されない液滴とが確認できた(図5)。

Claims (14)

  1. 脂肪族炭化水素またはシリコーンオイルと、界面活性剤と、を含有する油性組成物であって、
    前記脂肪族炭化水素と前記シリコーンオイルの25℃における動粘度はそれぞれ4mm/s未満であり、前記界面活性剤が、側鎖にアルキル基を有するシリコーンをポリエーテルで架橋したポリエーテル変性シリコーン架橋物を含み構成されることを特徴とする油性組成物。
  2. 前記脂肪族炭化水素が、イソパラフィンであることを特徴とする請求項1に記載の油性組成物。
  3. 前記イソパラフィンが、炭素原子数が7以上20以下のイソパラフィンであることを特徴とする請求項2に記載の油性組成物。
  4. 前記脂肪族炭化水素が、シクロパラフィンであることを特徴とする請求項1に記載の油性組成物。
  5. 前記シクロパラフィンが、炭素原子数が7以上20以下のシクロパラフィンであることを特徴とする請求項4に記載の油性組成物。
  6. 前記シリコーンオイルが、分子量が100以上600以下のポリシロキサンであることを特徴とする請求項1に記載の油性組成物。
  7. 前記脂肪族炭化水素または前記シリコーンオイルの含有量が、前記油性組成物の全体を100質量%としたときに、70質量%以上99.9質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の油性組成物。
  8. 前記界面活性剤が、(PEG−15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(PEG−10/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(PEG−15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマーで構成される群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の油性組成物。
  9. 水と、分析対象物と、前記分析対象物を検出可能にするための薬剤と、を含有する水性組成物と、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の油性組成物と、から、油中水型エマルジョンを形成するエマルジョン形成工程と、
    前記薬剤によって、前記油中水型エマルジョン中の複数の液滴のそれぞれにおいて反応を進行させ、前記分析対象物を検出可能にする反応工程と、
    前記油中水型エマルジョン中の前記複数の液滴のそれぞれについて前記分析対象物を検出する検出工程と、を有することを特徴とする分析方法。
  10. 前記エマルジョン形成工程が、膜乳化法によって前記油中水型エマルジョンを形成する工程であることを特徴とする請求項9に記載の分析方法。
  11. 前記分析対象物が、核酸であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の分析方法。
  12. 前記薬剤が、PCRによって前記核酸を増幅させるための増幅試薬と、前記核酸の増幅に応じて蛍光を発する蛍光試薬と、を含み、
    前記反応工程が、前記油中水型エマルジョンをサーマルサイクルに供し、前記核酸を増幅させる工程であることを特徴とする請求項11に記載の分析方法。
  13. 前記観察工程が、油中水型エマルジョン中の前記複数の液滴のそれぞれについて、シグナルの検出と、前記液滴のサイズの計測と、を行う工程であることを特徴とする請求項9乃至請求項12のいずれか一項に記載の分析方法。
  14. 前記複数の液滴のそれぞれのサイズと、前記シグナルが検出された液滴の数と、に基づいて、前記水性組成物中に含まれていた前記分析対象物の濃度を取得する濃度取得工程をさらに有することを特徴とする請求項13に記載の分析方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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