JP2019029498A - 電解コンデンサおよび電解コンデンサ用電解液 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐電圧の高い電解コンデンサおよび電解コンデンサ用電解液を提供する。【解決手段】表面に誘電体層を有する陽極部材と、陰極部材と、誘電体層と接する液状成分と、を備え、電解液が、オキソ酸を含み、さらに、下記化学式で表される単位構造を含むポリマー化合物A及び/又は前記化合物Aと前記オキソ酸の反応化合物Bを含む、電解コンデサー。(R1はC1〜6のアルキレン基;Xはヒドロキシ基又はアミノ基;R2はH又はメチル基)【選択図】なし

Description

本発明は、電解コンデンサおよび電解コンデンサ用電解液に関する。
電解コンデンサは、誘電体層を有する陽極部材と、陰極部材と、陽極部材と陰極部材の間に介在する電解液と、を備える。電解液の組成について様々な検討が行われている。
例えば、特許文献1では、イミダゾリニウムイオンを陽イオンとする電解質塩を溶媒に溶解させた電解液に、多価アルコール、ほう酸、ほう酸と多価アルコールの錯化合物から選ばれる1種以上を添加し、且つ、電解液のpHを5〜8の範囲内に調整することが提案されている。これにより、電解コンデンサの耐電圧を向上させることができるとしている。
特開平9−213583号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、耐電圧を十分に高めることができない。
本発明の一局面は、表面に誘電体層を有する陽極部材と、陰極部材と、前記誘電体層と接する液状成分と、を備え、
前記液状成分は、オキソ酸を含み、さらに、下記化学式(1):
Figure 2019029498
で表される単位構造を含むポリマー化合物A(ただし、R1は炭素数1〜6のアルキレン基であり、Xはヒドロキシ基またはアミノ基であり、R2は水素またはメチル基である)および/または前記化合物Aと前記オキソ酸の反応化合物Bを含む、電解コンデンサに関する。
本発明の別の側面は、オキソ酸を含み、さらに、上記化学式(1)で表される単位構造を含むポリマー化合物A(ただし、R1は炭素数1〜6のアルキレン基であり、Xはヒドロキシ基またはアミノ基であり、R2は水素またはメチル基である)および/または前記化合物Aと前記オキソ酸の反応化合物Bを含む、電解コンデンサ用電解液に関する。
本発明によれば、耐電圧を高めた電解コンデンサ、および当該電解コンデンサ用電解液を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図である。 同実施形態に係るコンデンサ素子の構成を説明するための概略図である。
本発明に係る電解コンデンサは、表面に誘電体層を有する陽極部材と、陰極部材と、誘電体層に接する液状成分と、を備える。液状成分には、上記化学式(1)で表される単位構造を含むポリマー化合物Aおよびオキソ酸が配合されている。なお、以下において、ポリマー化合物Aは、単に、化合物Aと称することがある。
化学式(1)において、R1は炭素数1〜6のアルキレン基であり、R2は水素またはメチル基である。即ち、化合物Aは、アクリル酸エステル(R2が水素基の場合)またはメタクリル酸エステル(R2がメチル基の場合)をモノマーとして重合させて得られるアクリル系ポリマーである。また、化合物Aは、アクリル酸またはメタクリル酸とエステル結合によって結合したアルキレン基R1を有する。アルキレン基R1は、また、官能基Xとも結合している。アルキレン基R1は、エチレン基(−C−)、プロピレン基(−C−)、またはブチレン基(C−)のいずれかが好ましい。
官能基Xは、ポリマー化合物Aの溶解性を検討した結果、ヒドロキシ基(−OH)またはアミノ基(−NH)が好ましい。
このような構造を有する化合物Aが液状成分に含有されていることで、耐電圧を高めた電解コンデンサが実現される。この理由は明確ではないが、誘電体層の表面と化合物Aは親和性を有するため、液状成分中に化合物Aを含有させることで誘電体層側に化合物Aを偏在させることができる。これにより、化合物Aにより誘電体層を保護することができるので、電解コンデンサの耐電圧を向上できると推測される。
一方で、液状成分に化合物Aを添加した場合、電解コンデンサに電圧を印加し続けると容量特性が低下する。容量が低下する理由としては、誘電体層の表面に偏在する化合物Aが誘電体層の修復を阻害することが一因と考えられる。つまり、化合物Aの液状成分への添加は、耐電圧を高めることができるが、長時間使用時において容量を低下させる惧れがある。しかしながら、液状成分にオキソ酸を加えることによって、オキソ酸が、電圧の印加により損傷した誘電体層(酸化皮膜)の欠陥部を修復することができる。
したがって、液状成分に化合物A、および、オキソ酸を含むことによって、電解コンデンサの容量低下を抑制しつつ、電解コンデンサの耐電圧を高めることが可能になる。
なお、化合物Aは誘電体層側に偏在することに加えて、セパレータ側や陰極部材側にも偏在してもよい。また、化合物Aは液状成分内に分散していてもよい。このような場合においても電解コンデンサの耐電圧を高めることができる。
また、化合物Aおよびオキソ酸を液状成分に加えることで、多価アルコールおよびホウ酸を加える場合よりもオキソ酸の添加量を低減できる。オキソ酸は、液状成分に含まれるアルコール類と反応してエステル化合物を生成し、このとき水が生成され得る。オキソ酸の添加量を低減することで、液状成分中の水分量を低減でき、これにより高温環境下で水分が気化することにより電解コンデンサが膨張することを抑制できる。
さらに、化合物Aおよびオキソ酸を含有する液状成分が導電性を有する電解液の場合、耐電圧を高め、且つ、電解コンデンサの低温におけるESR(等価直列抵抗)の上昇を抑制できる。この理由は明確ではないが、化合物Aは誘電体層側に偏在しているため、低温においても電解液中において電解質を均一に分布できるので低温におけるESRの上昇を抑制できると推測できる。
なお、Xがヒドロキシ基(−OH)であり、化合物Aおよびオキソ酸が液状成分に含まれる場合、化合物A中のヒドロキシ基とオキソ酸が反応し、脱水縮合反応による反応化合物を生成し得る。したがって、液状成分は、化合物A、および/または、化合物Aとオキソ酸の脱水縮合反応による反応生成物(化合物B)を含み得る。同様に、Xがアミノ基(−NH)であり、化合物Aおよびオキソ酸が液状成分に含まれる場合、塩基性のアミノ基とオキソ酸が反応し、化合物Aとオキソ酸の塩を生成し得る。この場合、液状成分は、化合物A、および/または、化合物Aとオキソ酸の反応生成物である塩(化合物B)を含み得る。
液状成分に占める化合物Aの含有量は、0.1〜15質量%であることが好ましい。なお、上述の通り、化合物Aは、オキソ酸との反応生成物である化合物Bの一部としても存在し得るが、ここでいう化合物Aの含有量には、化合物Bの一部として存在する化合物Aを考慮に入れるものとする。ただし、化合物Aの含有量を質量%で算出する場合、化合物Bの全質量のうちオキソ酸部分による質量は考慮しない。換言すると、電解コンデンサの製造において、液状成分の調製時に、液状成分に占める化合物Aの配合量を、0.1〜15質量%とすることが好ましい。より好ましくは、化合物Aの配合量(含有量)は、1〜12質量%であるとよく、さらに好ましくは、4〜10質量%であるとよい。
化合物Aの含有量を0.1質量%以上とすることで、電解コンデンサの耐電圧を向上する効果が得られる。化合物Aの含有量を増加させるほど、電解コンデンサの耐電圧が上昇するため、好ましい。しかしながら、化合物Aの含有量の増加にともなって、電気伝導性は逆に低下(抵抗が上昇)する傾向がある。低ESRを維持し、かつ耐電圧を高めるために、化合物Aの含有量は15質量%以下に抑えることが好ましい。
液状成分に占めるオキソ酸の含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましく、1〜3質量%であることが特に好ましい。なお、上述の通り、オキソ酸は、化合物Aとの反応生成物である化合物Bの一部としても存在し得るが、ここでいうオキソ酸の含有量には、化合物Bの一部として存在するオキソ酸を考慮に入れるものとする。また、エステル化合物の加水分解、或いはオキソ酸塩の溶解により、液状成分中にオキソ酸が生成されることがある。オキソ酸の含有量には、このようにして生成され得るオキソ酸も考慮に入れる。本発明では、このように他の化合物と反応または結合した状態で存在するオキソ酸も、考慮に入れるものとする。ただし、反応化合物中のオキソ酸の含有量を算出する場合には、反応化合物の全質量のうちオキソ酸を構成する部分による質量のみを考慮して、生成され得るオキソ酸の質量%を計算するものとする。
オキソ酸の含有量を0.1質量%以上とすることで、化合物Aの誘電体層(酸化皮膜)の欠陥修復機能を高めることができる。また、シンチレーション発生時の急激な電圧変動を抑制できる。一方で、オキソ酸の溶媒に対する溶解性、および、脱水縮合反応により発生する水分量の増加を考慮すると、オキソ酸の含有量は10質量%以下に抑えることが好ましい。
なお、シンチレーションとは、電解コンデンサに印加する端子電圧を上昇させながら充電を継続するときに、端子電圧がある印加電圧を超えたときに生じる急激な電圧変動であり、誘電体を構成する酸化膜の欠陥修復が間に合わなくなる結果生じる急激な放電に起因する。
オキソ酸は、好ましくは、カルボン酸、ならびに、ホウ酸、リン酸、硫酸およびこれらの誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。より好ましくは、オキソ酸は、ホウ酸またはその誘導体である。
ホウ酸は、HBOのほか、ホウ酸同士が脱水縮合して得られる四ホウ酸(H)などのポリホウ酸を含む。ホウ酸の誘導体としては、ボロン酸(R−B(OH))などが挙げられる。リン酸は、HPOのほか、亜リン酸(HPO)、および、リン酸同士が脱水縮合して得られる二リン酸(ピロリン酸)、三リン酸などのポリリン酸を含む。リン酸の誘導体としては、ホスホン酸(R−PO(OH))が挙げられる。硫酸(HSO)の誘導体としては、スルホン酸(R−SOOH)が挙げられる。さらに、これらカルボン酸(R−COOH)、ホウ酸、リン酸、硫酸等がアルコール類と結合したエステル化合物は、加水分解によりオキソ酸を生成する。上記において、Rは有機官能基である。
液状成分は、好ましくは、酸成分および塩基成分を電解質として含有することで、電解コンデンサ用の電解液として利用できる。さらに、液状成分は、誘電体層の表面の少なくとも一部を被覆する固体電解質層を具備する電解コンデンサの電解液としても使用することができる。当該固体電解質層を具備する電解コンデンサの電解質は、導電性高分子などの固体電解質層と液状成分で構成される。この場合、固体電解質層と接触する液状成分は、酸成分および塩基成分を含有していても、含有していなくてもよい。つまり、液状成分は導電性を有しても、導電性を有さなくてもよい。
液状成分が酸成分および塩基成分を含有する場合、酸成分(アニオン成分)として有機カルボン酸化合物を、塩基成分(カチオン成分)としてアミジン化合物を、それぞれ、含有することが好ましい。
電解コンデンサ中の液状成分に占める水分の含有量は、電解コンデンサの製造工程において、コンデンサ素子やケースに付着した水分が電解液に溶け込むことにより、液状成分の調製時から増加する傾向にある。一方で、リフロー処理後の電解コンデンサでは、リフロー時の熱や、長時間使用により電解液(液状成分)中の成分が脱水縮合し水分が発生する場合もあるが、一般に、液状成分中の水分が揮発して水分量が減少する。
電解コンデンサ中の液状成分に占める水分の含有量は、6質量%以下であることが好ましい。電解コンデンサは、リフロー処理時に100℃以上の高温に加熱されることがある。このとき、100℃以上の高温環境において水分が気化すると、コンデンサの内圧が上昇し、ケースの開口部に配されたゴム製の封止部材が変形して、実装不良などの不具合が生じる虞がある。電解コンデンサの製造において、水分の含有量を6質量%以下に抑えることで、リフロー処理工程での実装不良を抑制することができる。この場合、液状成分の調製時において、液状成分に占める水分の配合量を2質量%以下とすることにより、製造後の電解コンデンサ中の液状成分に占める水分含有量を6質量%以下とすることができる。
より好ましくは、電解コンデンサ中の液状成分に占める水分の含有量を5質量%にとどめることで、リフロー処理工程での電解コンデンサの実装不良を確実に抑制することができる。この場合、液状成分の調製時において、液状成分に占める水分の配合量を1質量%以下とすることにより、製造後の電解コンデンサ中の液状成分に占める水分含有量を5質量%以下とすることができる。
本発明に係る電解コンデンサ用電解液は、オキソ酸、および、上述のポリマー化合物Aが配合されている。このような電解液を用いることで、上述の通り、耐電圧を高めた電解コンデンサを実現できる。なお、ポリマー化合物Aは、液中でオキソ酸と反応する結果、ポリマー化合物Aの少なくとも一部が化合物Bとして存在していることがある。
なお、ポリマー化合物Aにおいて、単位構造を構成するアクリル酸またはメタクリル酸の全てがアルキレン基R1と結合している必要はなく、一部がアクリル酸またはメタクリル酸の状態で存在していてもよい。また、アルキレン基R1は、炭素数の異なる複数種が、ポリマー化合物A内に含まれていてもよい。また、ポリマー化合物Aにおいて、モノマーとしてアクリル酸またはメタクリル酸の両方が含まれていてもよい。ポリマー化合物Aにおいて、化学式(1)で示される単位構造以外の単位構造を含む場合、ポリマー化合物Aの総質量において、化学式(1)で示される単位構造以外の単位構造が占める質量は、50%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。
ポリマー化合物Aの重合度(単位構造の数)は、20〜200が好ましい。
以下、本発明を実施形態に基づいて、より具体的に説明する。ただし、以下の実施形態は本発明を限定するものではない。
図1は、本実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図であり、図2は、同電解コンデンサに係るコンデンサ素子の一部を展開した概略図である。
電解コンデンサは、例えば、コンデンサ素子10と、コンデンサ素子10を収容する有底ケース11と、有底ケース11の開口を塞ぐ封止部材12と、封止部材12を覆う座板13と、封止部材12から導出され、座板13を貫通するリード線14A、14Bと、リード線とコンデンサ素子10の電極とを接続するリードタブ15A、15Bと、電解液(図示せず)とを備える。有底ケース11の開口端近傍は、内側に絞り加工されており、開口端は封止部材12にかしめるようにカール加工されている。
封止部材12は、ゴム成分を含む弾性材料で形成されている。ゴム成分としては、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、ハイパロンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどを用いることができる。封止部材12は、カーボンブラック、シリカなどのフィラーを含んでもよい。
コンデンサ素子10は、図2に示すような巻回体から作製される。巻回体は、リードタブ15Aと接続された陽極部材21と、リードタブ15Bと接続された陰極部材22と、セパレータ23とを備える。セパレータ23は、陽極部材21と陰極部材22の間に挟まれるように設けられている。
セパレータ23は、好ましくは、セルロース系の繊維により構成され、繊維内に電解液が含侵されている。セパレータ23の材料は、例えば、天然セルロース、合成セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ビニロン、アラミド繊維などを主成分とする不織布を用いることができる。
陽極部材21および陰極部材22は、セパレータ23を介して巻回されている。巻回体の最外周は、巻止めテープ24により固定される。なお、図2は、巻回体の最外周を止める前の、一部が展開された状態を示している。陽極部材21は、表面が凹凸を有するように粗面化された金属箔を具備し、凹凸を有する金属箔上に誘電体層が形成されている。
コンデンサ素子10は、更に固体電解質層を備えてもよい。誘電体層の表面の少なくとも一部に、導電性高分子を付着させることにより、固体電解質層が形成される。固体電解質層は、陰極部材22の表面および/またはセパレータ23の表面の少なくとも一部を被覆していてもよい。コンデンサ素子10は、電解液(図示しない)とともに、有底ケース11に収容される。
有底ケース11に収容されている電解液は、溶媒および溶質を含み、溶質は、上述のポリマー化合物Aおよびオキソ酸またはこれらの反応生成物を含む。
溶媒は、公知の材料を用いることができる。例えば、スルホン化合物、スルホキシド、ラクトン化合物、カーボネート化合物、グリコール化合物などを用いることができる。
スルホン化合物は、分子内にスルホニル基(−SO−)を有する有機化合物である。スルホン化合物としては、例えば、鎖状スルホン、環状スルホンが挙げられる。鎖状スルホンとしては、例えば、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、ジフェニルスルホンが挙げられる。環状スルホンとしては、例えば、スルホラン、3−メチルスルホラン、3,4−ジメチルスルホラン、3,4−ジフェニメチルスルホランが挙げられる。
スルホキシドとしては、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどを用いることができる。
なかでも、溶質の解離性および熱的安定性の観点から、スルホン化合物は、スルホランであることが好ましい。スルホランは、スルホン化合物の中でも粘度が低いため、溶質を溶解し易い。
ラクトン化合物としては、例えば、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトンが挙げられる。
カーボネート化合物としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)が挙げられる。
グリコール化合物としては、例えば、アルキレングリコール、重量平均分子量が300未満のポリアルキレングリコールが挙げられる。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコールなどが挙げられる。なかでも、グリコール化合物は、エチレングリコールであることが好ましい。エチレングリコールは、グリコール化合物の中でも粘度が低いため、溶質を溶解しやすい。また、エチレングリコールは、熱伝導性が高く、リップル電流が発生したときの放熱性にも優れているため、耐熱性を向上させる効果も大きい。
なお、これらの溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
化合物Aの溶解度、イオン伝導性および耐熱性の観点から、これらの中でも、溶媒は、γ−ブチロラクトン、スルホラン、および、エチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種を含有することがより好ましい。
電解液中の溶媒の含有量は、例えば、60〜70質量%である。
また、溶媒は、他の成分として、重量平均分子量が300〜1000程度のポリアルキレングリコールを含有してもよい。これにより、電解コンデンサのショート不良の発生を抑制できる。ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールが挙げられる。
溶質は、酸成分として有機カルボン酸化合物と、塩基成分としてアミン化合物、アミジン化合物、または第4級アンモニウム化合物とを含むことが好ましい。アミジン化合物の中でも、第4級アミジニウム化合物が好ましい。溶質は、有機カルボン酸の第1級〜第3級アンモニウム塩、有機カルボン酸の第4級アミジニウム塩、または有機カルボン酸の第4級アンモニウム塩を含んでもよい。このような溶質を含む電解液は、誘電体層の欠陥部を修復する機能を発揮するほか、カチオンおよびアニオンの解離度が大きく、電気伝導性を高めることができる。また、熱的安定性に優れており、かつ、低い漏れ電流を維持することができる。塩基成分の中でも、第4級アミジニウム化合物が、電解液の電気伝導性を高め、ESRを更に低減することができる点で好ましい。
なお、上記で列挙した酸成分および塩基成分は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電解液に含まれる、酸成分としての有機カルボン酸化合物と、塩基成分としてのアミン化合物、アミジン化合物、第4級アミジニウム化合物、または第4級アンモニウム化合物とを含む溶質の割合は、5〜40質量%であることが好ましく、10〜35質量%であることがより好ましい。
有機カルボン酸化合物としては、例えば、フタル酸(オルト体)、イソフタル酸(メタ体)、テレフタル酸(パラ体)、マレイン酸、安息香酸、サリチル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族カルボン酸、またはアジピン酸などの脂肪族カルボン酸が挙げられる。中でも、電解液の誘電体層の修復機能および熱的安定性の観点から、フタル酸が好ましい。
アミン化合物は、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物、および第3級アミン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。この場合、電解液の耐熱性が高められ、電解コンデンサの熱的安定性を高めることができる。アミン化合物として、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミンなどを用いることができるが、分子量72〜102の脂肪族アミンが、解離度が高い点で好ましい。
第1〜3級アミン化合物としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、スペルミジン、スペルミン、アマンタジン、アニリン、フェネチルアミン、トルイジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、イミダゾール、イミダゾリン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、4−ジメチルアミノピリジンが挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、トリエチルアミン、モノエチルジメチルアミンなどの第3級アミンが特に好ましい。
第4級アミジニウム化合物は、環状のアミジン化合物の4級化物であることが好ましく、第4級イミダゾリニウム化合物および第4級イミダゾリウム化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。第4級アミジニウム化合物は、アミジニウムカチオンである。この場合、電解液の電気伝導性を高められ、ESRを更に低減することができる。
第4級イミダゾリウム化合物としては、例えば、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1,2−ジエチル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジエチル−2−メチルイミダゾリウムが挙げられる。中でも、電気化学的安定性の観点から、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムが好ましい。
第4級イミダゾリニウム化合物としては、例えば、1,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,3−ジエチルイミダゾリニウム、1,2−ジエチル−3−メチルイミダゾリニウム、1,3−ジエチル−2−メチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムが挙げられる。中でも、電気化学的安定性の観点から、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウムが好ましい。
第4級アンモニウム化合物としては、例えば、ジエチルジメチルアンモニウム、モノエチルトリメチルアンモニウムなどが好ましい。
電解液は、更に他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、リン酸エチルやリン酸ジブチルのようなリン酸エステル、p−ニトロ安息香酸やp−ニトロフェノールのようなニトロ化合物が挙げられる。電解液中の他の成分の含有量は、例えば、0.1〜0.5質量%である。このリン酸エステルは、陽極部材を水から保護する目的で用いられる。ニトロ化合物は、陰極側で発生する水素ガスを吸収する目的で用いられる。
電解コンデンサは、更に、誘電体層の表面の少なくとも一部を被覆する、酸化マンガンや導電性高分子などを含む固体電解質層を備えてもよい。
固体電解質層は、π共役系導電性高分子を含むことができる。π共役系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェンおよびポリアニリンなどが好ましい。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上のモノマーの共重合体でもよい。
なお、本明細書では、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどは、それぞれ、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどを基本骨格とする高分子を意味する。したがって、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどには、それぞれの誘導体も含まれ得る。例えば、ポリチオフェンには、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などが含まれる。
π共役系導電性高分子の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば1000〜100000である。
固体電解質層の劣化を更に抑制するために、電解液は、塩基成分よりも酸成分を多く含むことが好ましい。酸成分は、初期から電解液のpHを低下させ、導電性高分子からのドーパントの脱ドープを抑制する。塩基成分よりも酸成分を多く含むことで、導電性高分子からのドーパントの脱ドープおよびそれに伴う固体電解質の劣化を抑制することができる。また、酸成分は、電解液の誘電体層の修復機能に寄与していることからも、塩基成分よりも酸成分を多く含むことが好ましい。
固体電解質層の劣化抑制および電解液の誘電体層の修復機能向上の観点から、塩基成分に対する酸成分のモル比:(酸成分/塩基成分)は、1.1〜10.0であることが好ましい。
固体電解質層は、モノマー、ドーパントおよび酸化剤などを含有する溶液を誘電体層に付与し、その場で、化学重合もしくは電解重合させる方法で形成してもよい。また、固体電解質層は、溶媒に分散する導電性高分子を含む高分子分散体(特に、導電性高分子と高分子ドーパントとを含む高分子分散体)により形成してもよい。
高分子分散体に含まれるπ共役系導電性高分子の濃度は、0.5〜10質量%であることが好ましい。また、π共役系導電性高分子の平均粒径D50は、例えば0.01〜0.5μmであることが好ましい。ここで、平均粒径D50は、動的光散乱法による粒度分布測定装置により求められる体積粒度分布におけるメディアン径である。固体電解質層の形成条件を調整することにより、固体電解質により完全に充填されておらず、固体電解質を構成する分子間や粒子間に隙間や孔を設けることができ、固体電解質層を有する場合であっても、液状成分は誘電体層と接することができる。よって、固体電解質を有する電解コンデンサにおいても液状成分に化合物Aおよびオキソ酸を添加することにより耐電圧を高めることができる。例えば、本実施形態の固体電解質は、誘電体層の表面、セパレータの繊維の表面、および陰極部材の表面を被覆して形成されていることが好ましい。また、セパレータを有さない場合において、誘電体層と陰極部材との間の固体電解質層は多孔体であることが好ましい。
≪電解コンデンサの製造方法≫
以下、本実施形態に係る電解コンデンサの製造方法の一例について、工程ごとに説明する。
(1)誘電体層を有する陽極部材21を準備する工程
まず、陽極部材21の原料である金属箔を準備する。金属の種類は特に限定されないが、誘電体層の形成が容易である点から、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。
次に、金属箔の表面を粗面化する。粗面化により、金属箔の表面に、複数の凹凸が形成される。粗面化は、金属箔をエッチング処理することにより行うことが好ましい。エッチング処理は、例えば直流電解法や交流電解法により行えばよい。
次に、粗面化された金属箔の表面に誘電体層を形成する。形成方法は特に限定されないが、金属箔を化成処理することにより形成することができる。化成処理では、例えば、金属箔をアジピン酸アンモニウム溶液などの化成液に浸漬し、熱処理する。また、金属箔を化成液に浸漬し、電圧を印加してもよい。
通常、量産性の観点から、大判の弁作用金属などの箔(金属箔)に対して、粗面化処理および化成処理が行われる。その場合、処理後の箔を所望の大きさに裁断することによって、陽極部材21が準備される。
(2)陰極部材22を準備する工程
陰極部材22には、陽極部材と同様、金属箔を用いることができる。金属の種類は特に限定されないが、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。必要に応じて、陰極部材22の表面を粗面化してもよい。
(3)巻回体(コンデンサ素子10)の作製
次に、陽極部材21および陰極部材22を用いて巻回体を作製する。
まず、陽極部材21と陰極部材22とを、セパレータ23を介して巻回する。このとき、リードタブ15A、15Bを巻き込みながら巻回することにより、図2に示すように、リードタブ15A、15Bを巻回体から植立させることができる。
セパレータ23の材料は、例えば、天然セルロース、合成セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ビニロン、アラミド繊維などを主成分とする不織布を用いることができる。
リードタブ15A、15Bの材料も特に限定されず、導電性材料であればよい。リードタブ15A、15Bの各々に接続されるリード線14A、14Bの材料についても、特に限定されず、導電性材料であればよい。
次に、巻回された陽極部材21、陰極部材22およびセパレータ23のうち、最外層に位置する陰極部材22の外側表面に、巻止めテープ24を配置し、陰極部材22の端部を巻止めテープ24で固定する。なお、陽極部材21を大判の金属箔を裁断することによって準備した場合には、陽極部材21の裁断面に誘電体層を設けるために、巻回体に対し、さらに化成処理を行ってもよい。
(4)液状成分(電解液)を調製する工程
本工程では、溶媒に、溶質を加えて液状成分液を調製する。本実施形態では、ポリマー化合物Aおよびオキソ酸を加えて、液状成分を調製する。ポリマー化合物Aおよびオキソ酸のほか、上記で例示した物質を溶媒または溶質として利用することができる。液状成分中の溶媒の含有量は、例えば、60〜70質量%である。
(5)コンデンサ素子10に電解液を含浸させる工程
次に、コンデンサ素子10に、電解液としての液状成分を含浸させる。これにより、誘電体層の修復機能に優れた電解コンデンサが得られる。コンデンサ素子10に液状成分を含浸させる方法は特に限定されない。例えば、容器に収容された液状成分にコンデンサ素子10を浸漬させる方法が簡易で好ましい。浸漬時間は、コンデンサ素子10のサイズにもよるが、例えば1秒間〜5分間である。含浸は、減圧下、例えば10〜100kPa、好ましくは40〜100kPaの雰囲気で行うことが好ましい。
(6)コンデンサ素子を封止する工程
次に、コンデンサ素子10を封止する。具体的には、まず、リード線14A、14Bが有底ケース11の開口する上面に位置するように、コンデンサ素子10を有底ケース11に収納する。有底ケース11の材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、鉄、真鍮などの金属あるいはこれらの合金を用いることができる。
次に、リード線14A、14Bが貫通するように形成された封止部材12を、コンデンサ素子10の上方に配置し、コンデンサ素子10を有底ケース11内に封止する。次に、有底ケース11の開口端近傍に、横絞り加工を施し、開口端を封止部材12に加締めてカール加工する。そして、カール部分に座板13を配置することによって、図1に示すような電解コンデンサが完成する。その後、定格電圧を印加しながら、エージング処理を行ってもよい。
誘電体層の表面の少なくとも一部に、固体電解質層を形成する場合には、上記工程(3)の後、かつ工程(5)の前に、誘電体層の少なくとも一部を覆う導電性高分子を含む膜を形成すればよい。
上記の実施形態では、巻回型の電解コンデンサについて説明したが、本発明の適用範囲は上記に限定されず、他の電解コンデンサ、例えば、陽極部材として金属の焼結体を用いるチップ型の電解コンデンサや、金属板を陽極部材として用いる積層型の電解コンデンサにも適用することができる。
以下、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
本実施例では、定格電圧80V、定格静電容量33μFの巻回型の電解コンデンサ(Φ10.0mm×L(長さ)10.0mm)を作製した。以下に、電解コンデンサの具体的な製造方法について説明する。
(陽極部材の準備)
厚さ105μmのアルミニウム箔にエッチング処理を行い、アルミニウム箔の表面を粗面化した。その後、アルミニウム箔の表面に、化成処理により、誘電体層を形成した。化成処理は、アジピン酸アンモニウム溶液にアルミニウム箔を浸漬し、これに120Vの電圧を印加することにより行った。その後、アルミニウム箔を、縦×横が5.3mm×180mmとなるように裁断して、陽極部材を準備した。
(陰極部材の準備)
厚さ50μmのアルミニウム箔にエッチング処理を行い、アルミニウム箔の表面を粗面化した。その後、アルミニウム箔を、縦×横が5.3mm×180mmとなるように裁断して、陰極部材を準備した。
(巻回体の作製)
陽極部材および陰極部材に陽極リードタブおよび陰極リードタブを接続し、陽極部材と陰極部材とを、リードタブを巻き込みながら、セパレータを介して巻回した。巻回体から突出する各リードタブの端部には、陽極リード線および陰極リード線をそれぞれ接続した。そして、作製された巻回体に対して、再度化成処理を行い、陽極部材の切断された端部に誘電体層を形成した。次に、巻回体の外側表面の端部を巻止めテープで固定して巻回体を作製した。
(液状成分の調製)
溶媒に、電解質としてフタル酸テトラメチルイミダゾリニウムを加え、更に、オキソ酸としてのホウ酸、およびポリマー化合物Aとしてアクリル酸ポリマー(平均重合度80)を添加し、液状成分(以下、電解液)を調製した。表1に、ポリマー化合物Aの化学式(1)におけるR1およびXの構造を示す。溶媒には、γ−ブチロラクトンおよびスルホラン(質量比80:20)を用いた。フタル酸テトラメチルイミダゾリニウムは、電解液全体に対して15質量%添加した。
表1に、液状成分全体に対するポリマー化合物A、ホウ酸の添加量を示す。電解液中の溶媒量は、電解液全体に対するポリマー化合物Aおよびホウ酸の添加量が、夫々、表1に示す値となるようにすることで、化合物Aの構造、化合物Aおよびオキソ酸の含有量の異なる8種の電解液A1〜A8を調製した。
Figure 2019029498
さらに、電解液にホウ酸を添加しないことを除いて、電解液A1と同様の方法で電解液B1を調製した。また、電解液に、ホウ酸、および、ポリマー化合物Aに代えてマンニトールを溶媒に加えて電解液B2を調製した。表1に、電解液B2の全体に対するマンニトールおよびホウ酸の添加量を示す。
(液状成分の含浸)
減圧雰囲気(40kPa)中で、電解液にコンデンサ素子を5分間浸漬し、コンデンサ素子に液状成分を含浸させた。
(コンデンサ素子の封止)
液状成分を含浸させたコンデンサ素子を封止して、電解コンデンサを完成させた。具体的には、有底ケースの開口側にリード線が位置するようにコンデンサ素子を有底ケースに収納し、リード線が貫通するように形成された封止部材(ゴム成分としてブチルゴムを含む弾性材料)をコンデンサ素子の上方に配置して、コンデンサ素子を有底ケース内に封止した。そして、有底ケースの開口端近傍に絞り加工を施し、更に開口端をカール加工し、カール部分に座板を配置することによって、図1に示すような電解コンデンサを完成させた。その後、80Vの電圧を印加しながら、100℃で2時間エージング処理を行った。
このようにして、電解液A1〜A8、B1、B2を用いた評価用の電解コンデンサを、それぞれ作製した。
[評価]
(1)電解液の火花発生電圧の測定(耐電圧評価)
陽極としてエッチング処理および化成処理された高圧用アルミニウム箔(面積10cm)、陰極として表面が平坦なアルミニウム箔(面積10cm)を用い、この陽極および陰極を電解液に浸漬させ、電解液の耐電圧評価サンプルを作成した。25℃において、各評価サンプルの電極間に定電流法(2mA)による負荷をかけ、経時変化にともなう電圧の変化を測定することにより、電解液の火花発生電圧を測定した。結果を表2に示す。なお、電解液A1〜A8の水分含有量は、1〜1.4質量%であり、2質量%以下であったが、電解液B2の水分含有量は3.5質量%であり、2質量%を超えていた。
Figure 2019029498
電解液A1〜A8は、電解液B2と比較して、火花電圧を高めることができた。なお、化合物Aを添加し、ホウ酸を添加しなかった電解液B1については、150V付近から100V以下までシンチレーションを伴う電圧降下が生じた。電解液A8では、シンチレーションは見られなかった。
次に、電解液A1〜A8、B1、B2を用いた電解コンデンサの性能を評価した。
(2)信頼性維持時間および容量変化率の評価
電解コンデンサを135℃の環境下におき、容量の時間変化を測定した。そして、測定した容量が定格値の7割(22.6μF)未満に低下した時間を信頼性維持時間として評価した。併せて、初期容量から1500時間経過後の容量の初期容量からの変化割合を容量変化率((1500時間経過後容量/初期容量)×100)として評価した。その結果を表3に示す。
Figure 2019029498
電解液A1〜A8を用いた電解コンデンサは、電解液B2を用いた電解コンデンサと比べて容量の低下を抑制できた。また、1500時間経過後においても初期容量から80%以上の容量を維持していた。
(3)低温環境下におけるESR測定
まず、電解コンデンサを135℃の環境下におき、1250時間定格電圧を印加した。その後、室温(25℃)および−40℃の環境下におけるESR値を測定した。なお、ESR値は、4端子測定用のLCRメータを用いて、周波数100kHzにおける値を測定した。表4に、室温、および、−40℃の夫々において、初期ESR値から高温負荷試験後の各温度におけるESR値の比(負荷後のESR値/初期のESR値)を示す。
Figure 2019029498
表4に示すように、電解液B2を用いた電解コンデンサでは、−40℃におけるESR比が、室温におけるESR比に対して67%も増加しており、室温よりも低温(−40℃)におけるESRの上昇が顕著である。これに対し、電解液A1〜A8を用いた電解コンデンサでは、−40℃におけるESR比は、室温におけるESR比に対して、最大でもA8において32%の上昇にとどまっており、低温(−40℃)におけるESR比の上昇が抑制されている。
低温でのESRの上昇が抑えられる理由としては、ポリマー化合物AのSP値(溶解度パラメータ)の観点から、ポリマー化合物Aは、溶媒よりもむしろ陽極部材表面に形成された誘電体層との親和性が高いことが考えられる。ポリマー化合物Aは誘電体層の周辺に偏在しており、電解コンデンサ内で、ポリマー化合物Aの濃度分布が生じていることがあり得る。誘電体層から離れた陽極部材と陰極部材の間の領域では、ポリマー化合物Aの濃度が低いことから低粘度になっており、この結果、低温下においても高い伝導度が得られたと考えられる。
以上より、ポリマー化合物Aおよびオキソ酸を電解液に添加することによって、電解コンデンサの耐電圧を高めることができる。また、低温におけるESRの上昇が抑制された電解コンデンサを実現することができる。ニオブ、タンタルやチタンなどアルミ以外の弁作用金属を含む陽極を用いた場合も、ポリマー化合物Aと誘電体層の親和性が高いことから、同様の効果を期待できる。
また、この電解液(液状成分)は、ポリマー化合物Aおよびオキソ酸を含有することにより火花発生電圧を高めることができる。また、電解液(液状成分)において、ポリマー化合物Aおよびオキソ酸の量を調整することにより、コンデンサの定格電圧を例えば200Vまで高めることができる。なお、誘電体層の修復性を維持することを考慮すると、ポリマーAを含有する電解コンデンサは定格電圧200V以下が好ましく、より好ましくは定格電圧150V以下である。
また、ポリマー化合物Aの総質量において、化学式(1)で示される単位構造以外の単位構造が占める質量を10%以下とすることによりシンチレーションを伴う電圧降下を抑制でき、5%以下とすることによりシンチレーションを伴う電圧降下をさらに抑制できる。
本発明は、電解コンデンサに利用することができる。
10:コンデンサ素子、11:有底ケース、12:封止部材、13:座板、14A,14B:リード線、15A,15B:リードタブ、21:陽極部材、22:陰極部材、23:セパレータ、24:巻止めテープ

Claims (11)

  1. 表面に誘電体層を有する陽極部材と、陰極部材と、前記誘電体層と接する液状成分と、を備え、
    前記液状成分は、オキソ酸を含み、さらに、下記化学式(1):
    Figure 2019029498
    で表される単位構造を含むポリマー化合物A(ただし、R1は炭素数1〜6のアルキレン基であり、Xはヒドロキシ基またはアミノ基であり、R2は水素またはメチル基である)および/または前記化合物Aと前記オキソ酸の反応化合物Bを含む、電解コンデンサ。
  2. 前記液状成分に占める前記化合物Aの含有量は、0.1〜15質量%である、請求項1に記載の電解コンデンサ。
  3. 前記液状成分に占める前記オキソ酸の含有量は、0.1〜10質量%である、請求項1または2に記載の電解コンデンサ。
  4. 前記液状成分に占める水分の含有量は、6質量%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
  5. 前記化合物Aにおいて、R1はエチレン基、プロピレン基、またはブチレン基のいずれかである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
  6. 前記液状成分は、γ−ブチロラクトン、スルホラン、および、エチレングリコールよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
  7. 前記陽極部材と前記陰極部材との間には、セパレータが設けられ、前記セパレータはセルロース系の繊維により構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
  8. 前記オキソ酸は、カルボン酸、ならびに、ホウ酸、リン酸、硫酸およびこれらの誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
  9. 前記オキソ酸は、ホウ酸またはその誘導体である、請求項8に記載の電解コンデンサ。
  10. 前記液状成分は、有機カルボン酸化合物とアミジン化合物を含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
  11. オキソ酸を含み、
    さらに、下記化学式(1):
    Figure 2019029498
    で表される単位構造を含むポリマー化合物A(ただし、R1は炭素数1〜6のアルキレン基であり、Xはヒドロキシ基またはアミノ基であり、R2は水素またはメチル基である)および/または前記化合物Aと前記オキソ酸の反応化合物Bを含む、電解コンデンサ用電解液。
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