以下の例示的な実施形態等の同様の構成要素には共通の符号を付与して、重複する説明を適宜省略する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の運転支援システムが搭載される車両10の平面図である。車両10は、移動体の一例である。車両10は、例えば、内燃機関(例えば、エンジン)及び電動機(例えば、モータ)を駆動源とする自動車(例えば、ハイブリッド自動車)であってよい。また、車両10は、種々の変速装置を搭載することができるし、内燃機関及び電動機を駆動するのに必要な種々の装置を搭載することができる。また、車両10における車輪13の駆動に関わる装置の方式、個数、及び、レイアウト等は、種々に設定することができる。
図1に示すように、車両10は、車体12と、4個の車輪13と、1または複数(本実施形態では4個)の撮像部14a、14b、14c、14dと、1または複数(本実施形態では2個)の測距部16a、16bとを備える。撮像部14a、14b、14c、14dを区別する必要がない場合、撮像部14と記載する。測距部16a、16bを区別する必要がない場合、測距部16と記載する。
車体12は、乗員が乗車する車室を構成する。車体12は、車輪13、撮像部14及び測距部16等を収容または保持する。
4個の車輪13は、車体12の前後左右に設けられている。例えば、前側の2個の車輪13は、転舵輪として機能して、後側の2個の車輪13は、駆動輪として機能する。
撮像部14は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)、または、CIS(CMOS Image Sensor)等の撮像素子を内蔵するデジタルカメラである。撮像部14は、所定のフレームレートで生成される複数のフレーム画像を含む動画、または、静止画のデータを撮像画像のデータとして出力する。撮像部14は、それぞれ、広角レンズまたは魚眼レンズを有し、水平方向の140°〜190°の範囲を撮影することができる。撮像部14の光軸は、斜め下方に向けて設定されている。従って、撮像部14は、段差等の対象物が存在する路面を含む車両10の周辺を撮像した撮像画像のデータを出力する。
撮像部14は、車体12の周囲に設けられている。例えば、撮像部14aは、車体12の前端部の左右方向の中央部(例えば、フロントバンパー)に設けられている。撮像部14aは、車両10の前方の周辺を撮像した撮像画像を生成する。撮像部14bは、車体12の後端部の左右方向の中央部(例えば、リアバンパー)に設けられている。撮像部14bは、車両10の後方の周辺を撮像した撮像画像を生成する。撮像部14cは、車体12の左端部の前後方向の中央部(例えば、左側のサイドミラー12a)に設けられている。撮像部14cは、車両10の左方の周辺を撮像した撮像画像を生成する。撮像部14dは、車体12の右端部の前後方向の中央部(例えば、右側のサイドミラー12b)に設けられている。撮像部14dは、車両10の右方の周辺を撮像した撮像画像を生成する。
測距部16は、例えば、超音波等の検出波を出力し、車両10の周辺に存在する障害物及び段差等の対象物が反射した検出波を捉えるソナーである。測距部16は、レーザ光等の検出波を出力して捉えるレーザレーダであってもよい。測距部16は、車両10の周辺の対象物の方向及び対象物までの距離に関する情報である測距情報を検出して出力する。例えば、測距部16は、車両10の周辺の対象物の方向、及び、検出波を送信してから受信するまでの時間である送受信時間を測距情報として検出する。測距部16は、車両10の外周部に設けられている。具体的には、測距部16aは、車体12の前端部の左右方向の中央部(例えば、フロントバンパー)に設けられている。測距部16aは、車両10の前方の対象物の方向及び対象物までの距離を算出するための測距情報を検出する。測距部16bは、車体12の後端部の左右方向の中央部(例えば、リアバンパー)に設けられている。測距部16bは、車両10の後方の対象物の方向及び対象物までの距離を算出するための測距情報を検出する。
図2は、第1実施形態の運転支援システム20の全体構成を示すブロック図である。運転支援システム20は、車両10に搭載されて、車両10の周辺の対象物に応じて、車両10を制御して自動運転(一部自動運転を含む)することにより、車両10の運転を支援する。
図2に示すように、運転支援システム20は、撮像部14と、測距部16と、制動システム22と、加速システム24と、操舵システム26と、変速システム28と、車輪速センサ30と、測位端末31と、加速度センサ32と、モニタ装置33と、運転支援装置34と、車内ネットワーク36とを備える。
撮像部14は、車両10の周辺を撮像した撮像画像を運転支援装置34へと出力する。
測距部16は、測距した対象物の測距情報を車内ネットワーク36へ出力する。
制動システム22は、車両10の減速を制御する。制動システム22は、制動部40と、制動制御部42と、制動部センサ44とを有する。
制動部40は、例えば、ブレーキ及びブレーキペダル等を含み、車両10を減速させるための装置である。
制動制御部42は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサを有するマイクロコンピュータ等のコンピュータである。制動制御部42は、運転支援装置34からの指示に基づいて、制動部40を制御して、車両10の減速を制御する。
制動部センサ44は、例えば、位置センサであって、制動部40がブレーキペダルの場合、ブレーキペダルの位置を制動部40の位置として検出する。制動部センサ44は、検出した制動部40の位置を車内ネットワーク36に出力する。
加速システム24は、車両10の加速を制御する。加速システム24は、加速部46と、加速制御部48と、加速部センサ50とを有する。
加速部46は、例えば、アクセルペダル等を含み、車両10を加速させるための装置である。
加速制御部48は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサを有するマイクロコンピュータ等のコンピュータである。加速制御部48は、運転支援装置34からの指示に基づいて、加速部46を制御して、車両10の加速を制御する。
加速部センサ50は、例えば、位置センサであって、加速部46がアクセルペダルの場合、アクセルペダルの位置を加速部46の位置として検出する。加速部センサ50は、検出した加速部46の位置を車内ネットワーク36に出力する。
操舵システム26は、車両10の進行方向を制御する。操舵システム26は、操舵部52と、操舵制御部54と、操舵部センサ56とを有する。
操舵部52は、例えば、ハンドルまたはステアリングホイール等を含み、車両10の転舵輪を転舵させる装置である。
操舵制御部54は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサを有するマイクロコンピュータ等のコンピュータである。操舵制御部54は、運転支援装置34からの指示に基づいて、操舵部52を制御して、車両10の進行方向を制御する。
操舵部センサ56は、例えば、ホール素子等を含む角度センサであって、操舵部52がハンドル等の場合、ハンドル等の回転角を操舵部52の位置として検出する。操舵部センサ56は、検出した操舵部52の位置を車内ネットワーク36に出力する。
変速システム28は、車両10の前後の進行方向、及び、変速比等を制御する。変速システム28は、変速部58と、変速制御部60と、変速部センサ62とを有する。
変速部58は、例えば、シフトレバー等を含み、車両10の変速比または車両10の前後の進行方向(ドライブ、パーキング、及び、リバース等)を変更させる装置である。
変速制御部60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサを有するマイクロコンピュータ等のコンピュータである。変速制御部60は、運転支援装置34からの指示に基づいて、変速部58を制御して、車両10の変速比または車両10の前後の進行方向を制御する。
変速部センサ62は、例えば、位置センサであって、変速部58がシフトレバーの場合、シフトレバーの位置を変速部58の位置として検出する。変速部センサ62は、検出した変速部58の位置を車内ネットワーク36に出力する。
車輪速センサ30は、例えば、車両10の車輪13の近傍に設けられたホール素子を有し、車輪13の回転量または単位時間当たりの回転数等を示すパルス数を含む車輪速パルス情報を車輪13の回転数に関する情報として検出するセンサである。車輪速センサ30は、車速等を算出するための値として、車輪速パルス情報を車内ネットワーク36へ出力する。
測位端末31は、例えば、GPS(Global Positioning System)端末である。測位端末31は、地図情報が示す地図内等における車両10の位置を測位するための緯度及び経度を含む測位情報を衛星等から取得して、車内ネットワーク36へ出力する。
加速度センサ32は、車両10に作用する加速度を検出して、車内ネットワーク36へ出力する。加速度センサ32は、例えば、車両10の前後方向の加速度を検出する。尚、加速度センサ32は、車両10の上下方向の加速度を検出してもよい。また、車両10に複数の加速度センサ32を設け、複数の加速度センサ32が、車両10の前後方向及び上下方向の加速度をそれぞれ検出するようにしてもよい。
モニタ装置33は、車両10の車室内のダッシュボード等に設けられている。モニタ装置33は、表示部64と、音声出力部66と、操作入力部68とを有する。
表示部64は、運転支援装置34が送信した画像データに基づいて、画像を表示する。表示部64は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、または、有機ELディプレイ(OELD:Organic Electroluminescent Display)等の表示装置である。表示部64は、例えば、測位端末31の測位及び地図情報によるナビゲーションにおいて、地図及び地図内の車両10の位置等を表示する。
音声出力部66は、運転支援装置34が送信した音声データに基づいて音声を出力する。音声出力部66は、例えば、スピーカである。音声出力部66は、例えば、ナビゲーションにおいて、運転手を案内する音声を出力する。
操作入力部68は、乗員の入力を受け付ける。操作入力部68は、例えば、タッチパネルである。操作入力部68は、表示部64の表示画面に設けられている。操作入力部68は、表示部64が表示する画像を透過可能に構成されている。これにより、操作入力部68は、表示部64の表示画面に表示される画像を乗員に視認させることができる。操作入力部68は、表示部64の表示画面に表示される画像に対応した位置を乗員が触れることによって入力した指示を受け付けて、運転支援装置34へ送信する。例えば、操作入力部68は、自動運転の指示またはナビゲーションにおける目標位置の指示等を受け付ける。なお、操作入力部68は、タッチパネルに限らず、押しボタン式等のハードスイッチであってもよい。
運転支援装置34は、ECU(Electronic Control Unit)等のマイクロコンピュータを含むコンピュータである。運転支援装置34は、撮像部14から撮像画像のデータを取得する。運転支援装置34は、撮像画像等に基づいて生成した画像または音声に関するデータをモニタ装置33へ送信する。運転支援装置34は、運転者への指示、及び、運転者への通知等の画像または音声に関するデータをモニタ装置33へ送信するとともに、運転者からの指示をモニタ装置33から受信する。運転支援装置34は、測距部16から測距情報、及び、車輪速センサ30から車輪速パルス情報を取得する。運転支援装置34は、撮像画像及び測距情報に基づいて、障害物及び段差等の車両10の周辺の対象物までの距離及び対象物の位置及び形状等を特定する。ここでいう段差は、予め設定された閾値高さ等によって車両10が乗り上げることが可能と運転支援装置34によって判定される対象物である。段差の高さは、例えば、車両10の車体12の底面よりも低い。運転支援装置34は、特定した対象物に応じて目標位置を設定する。運転支援装置34は、車輪速パルス情報等から自車位置を推定し、各システム22、24、26、28の少なくともいずれかを制御して車両10を目標位置まで自動運転し、車両10の運転を支援する。また、運転支援装置34は、段差の形状等に応じて、自動運転中に自車位置を補正する。運転支援装置34は、CPU(Central Processing Unit)34aと、ROM(Read Only Memory)34bと、RAM(Random Access Memory)34cと、表示制御部34dと、音声制御部34eと、SSD(Solid State Drive)34fとを備える。CPU34a、ROM34b及びRAM34cは、同一パッケージ内に集積されていてもよい。
CPU34aは、ハードウェアプロセッサの一例であって、ROM34b等の不揮発性の記憶装置に記憶されたプログラムを読み出して、当該プログラムにしたがって各種の演算処理および制御を実行する。CPU34aは、例えば、車両10を自動運転する運転支援の処理を実行する。
ROM34bは、各プログラム及びプログラムの実行に必要なパラメータ等を記憶する。RAM34cは、CPU34aでの演算で用いられる各種のデータを一時的に記憶する。表示制御部34dは、運転支援装置34での演算処理のうち、主として、撮像部14で得られた画像の画像処理、表示部64に表示させる表示用の画像のデータ変換等を実行する。音声制御部34eは、運転支援装置34での演算処理のうち、主として、音声出力部66に出力させる音声の処理を実行する。SSD34fは、書き換え可能な不揮発性の記憶装置であって、運転支援装置34の電源がオフされた場合にあってもデータを維持する。
車内ネットワーク36は、例えば、CAN(Controller Area Network)及びLIN(Local Interconnect Network)等を含む。車内ネットワーク36は、加速システム24と、制動システム22と、操舵システム26と、変速システム28と、測距部16と、車輪速センサ30と、モニタ装置33の操作入力部68と、運転支援装置34とを互いに情報を送受信可能に接続する。
図3は、第1実施形態の運転支援装置34の機能を説明する機能ブロック図である。図3に示すように、運転支援装置34は、処理部72と、記憶部74とを有する。
処理部72は、例えば、CPU34a等の機能として実現される。処理部72は、取得部76と、運転支援部78とを有する。処理部72は、例えば、記憶部74に格納された運転支援プログラム80を読み込むことによって、取得部76、及び、運転支援部78の機能を実現してよい。取得部76、及び、運転支援部78の一部または全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を含む回路等のハードウェアによって構成してもよい。取得部76、及び、運転支援部78の一部または全部は、システム22、24、26、28の制御部42、48、54、60のいずれかに設けてもよい。
取得部76は、自動運転等に必要なデータを取得する。例えば、取得部76は、車内ネットワーク36を介して、操作入力部68が受け付けた運転手の指示等の情報を取得する。取得部76は、周辺を撮像した撮像画像の情報を撮像部14から取得する。取得部76は、車内ネットワーク36を介して、段差等の周辺の対象物の方向及び対象物までの距離に関する情報である測距情報を測距部16から取得する。取得部76は、車内ネットワーク36を介して、車輪13の回転に関する情報である車輪速パルス情報を車輪速センサ30から取得する。取得部76は、車内ネットワーク36を介して、測位情報を測位端末31から取得する。取得部76は、車内ネットワーク36を介して、車両10の加速度に関する情報を加速度センサ32から取得する。撮像画像の情報、測距情報及び加速度は、段差に関する情報、より具体的には段差の高さに関する情報である段差情報の例である。段差に関する情報は、段差に対応して変化する情報であってよい。段差の高さに関する情報は、例えば、段差の高さを算出または特定可能な情報であってよい。従って、段差の高さに関する情報は、段差の高さそのものであってもよい。取得部76は、各システム22、24、26、28のセンサ44、50、56、62から制動部40、加速部46、操舵部52及び変速部58の位置情報を取得する。取得部76は、取得した情報を運転支援部78へ出力する。
運転支援部78は、取得部76から取得した情報に基づいて、各システム22、24、26、28を制御することによって車両10を自動運転して、運転を支援する。例えば、運転支援部78は、撮像部14の撮像画像及び測距部16の測距情報に基づいて、車両10の周辺の対象物(例えば、他の車両、駐車場の枠線、及び、段差)の位置及び形状等を特定する。尚、測距情報が、検知波の送受信時間を含む場合、運転支援部78は、当該送受信時間と検知波の速度とから段差等の対象物の位置を検出するための対象物までの距離を算出してよい。運転支援部78は、特定した対象物に基づいて、駐車可能な位置を検出して駐車目標位置等の目標位置を設定する。運転支援部78は、システム22、24、26、28を制御して、目標位置へと車両10を自動運転する。
ここで、運転支援部78は、自動運転中において、車輪速センサ30の車輪速パルス情報から車両10の移動距離を算出するとともに、操舵部52の位置情報(=操舵部52の回転情報)に基づいて車両10の進行方向を算出することにより、車両10の位置である自車位置を算出しつつ、車両10の運転を支援する。自車位置は、例えば、後側の2つの車輪13を接続する後輪車軸の中心である。
運転支援部78は、取得部76から取得した段差情報に基づいて、段差により移動距離にずれが生じた自車位置を補正して、運転を支援する。また、運転支援部78は、車両10が段差に乗り上げたか、車両10が段差を乗り越えたか、段差の乗り上げ及び乗り越えに失敗したかを、加速度、または、車輪速パルス情報及び車両10の周囲に定められた基準位置までの距離に基づいて判定し、当該判定結果に応じて、自車位置の補正方法を異ならせてもよい。尚、車両10が段差に乗り上げるとは、車両10の車輪13が段差に乗った状態を維持することである。車両10が段差を乗り越えるとは、段差が進行方向に短い単突起(例えば、車輪止め)の場合、車両10の車輪13が段差に乗り上げた後、段差の反対側に落ちることである。車両10が段差の乗り上げ等に失敗するとは、車両10の車輪13が段差の上面まで乗り上げることなく、段差の同じ側に落ちて戻ることである。基準位置の一例は、段差上の位置(例えば、予め設定された停止位置)等である。
記憶部74は、ROM34b、RAM34c、及び、SSD34fの機能として実現される。記憶部74は、ネットワーク上の記憶装置(例えば、クラウド)の機能として実現してもよい。記憶部74は、処理部72が実行するプログラム、プログラムの実行に必要なデータ、及び、プログラムの実行によって生成されたデータ等を記憶する。例えば、記憶部74は、処理部72が実行する運転支援プログラム80を記憶する。記憶部74は、運転支援プログラム80の実行に必要な車輪13の半径等を含む運転支援データ82を記憶する。記憶部74は、運転支援プログラム80の実行によって車輪速パルス情報及び操舵部52の位置等から生成された自車位置、及び、自車位置の補正データ等を記憶する。
次に、図4、図5及び図6を用いて、車両10の各状態(乗り上げ、乗り越え、失敗)について説明する。図4から図6の各図は、下方にいくにつれて、時刻が経過することを示す図である。
図4は、車両10が段差90に乗り上げた状態を説明する側面図である。図4に示すように、車両10の車輪13が段差90へ向かって進行して段差90に接触する。段差90との接触によって、車両10は、進行方向と反対側(紙面左側)の加速度を受ける(時刻ta1)。次に、運転支援部78が、加速部46を操作して、車両10を加速させることによって、車輪13が斜め上方に進行して段差90を登り始める(時刻ta2)。車輪13が段差90を登り切って段差90の平坦面に達した状態が、車両10が段差90に乗り上げた状態である(時刻ta3)。
図5は、車両10が段差90を乗り越えた状態を説明する側面図である。図5に示すように、車両10の車輪13が段差90へ向かって進行する(時刻tb1)。車輪13が段差90と接触すると、車両10は、進行方向と反対側(紙面左側)の加速度を受ける(時刻tb2)。次に、運転支援部78が、加速部46を操作して、車両10を加速させることによって、車輪13が斜め上方に進行して段差90を登り始める(時刻tb3)。この後、車輪13が段差90を登り切る(時刻tb4)。更に、車両10が進行方向(紙面右側)への加速度を受けつつ進み、車輪13が段差90の反対側へと落下した状態が、車両10が段差90を乗り越えた状態である(時刻tb5)。
図6は、車両10が段差90の乗り上げ及び乗り越えに失敗した状態を説明する側面図である。図6に示すように、車両10の車輪13が段差90へ向かって進行する(時刻tc1)。車輪13が段差90と接触すると、車両10は、進行方向と反対側(紙面左側)の加速度を受ける(時刻tc2)。次に、運転支援部78が、加速部46を操作して、車両10を加速させることによって、車輪13が斜め上方に進行して段差90を登り始める(時刻tc3)。この後、車輪13が段差90を登り切らずに、段差90の同じ側(即ち、登り始めた側)に戻り始める(時刻tc4)。更に、車輪13が落下して、車輪13が段差90の同じ側の路面へと落下した状態が、車両10が段差90の乗り上げ等に失敗した状態である(時刻tc5)。
次に、運転支援部78による車両10が段差90に乗り上げたか否かを判定する方法について説明する。図7は、車両10が段差90に乗り上げる過程におけるグラフである。図7における各時刻ta1、ta2、ta3は、図4における時刻ta1、ta2、ta3の状態に対応する。
図7の上図は、乗り上げる過程における加速度センサ32が検出した加速度及び車両10の勾配(=傾斜)を示す図である。加速度センサ32は、車両10が水平の場合、上下方向の加速度を検出することなく、前後方向の加速度のみを検出するように設置されている。しかしながら、車両10の傾斜に伴って傾斜した加速度センサ32は、上下方向の成分を含む加速度を検出する。ここでいう上下方向の加速度は、重力を含む。車両10の勾配は、加速度センサ32が検出した上下方向の加速度から算出された値である。尚、重力を検出している加速度センサ32は安定するまで時間がかかるので、加速度から算出した勾配は、実際の車両10の勾配に対して時間差がある。
図7の下図は、乗り上げる過程における車両10から基準位置までの距離の図である。基準位置は、車両10の周囲に適宜設定してよく、例えば、図4の時刻ta3における段差90上の位置の近傍(例えば、進行方向の奥側)に設定してよい。図7の下図において、白抜きの角丸長方形は、測距部16の測距情報に基づいて算出した基準位置までの距離である。太実線は、車輪速センサ30が検出した車輪速パルス情報に基づいて算出した基準位置までの距離である。
例えば、図4の時刻ta1に示すように車輪13が段差90に接触すると車両10が進行方向と反対側の大きな加速度を受けるので、図7の上図の時刻ta1以降に示すように、加速度が負の方向(即ち、進行方向と反対方向)に大きく変化する。加速度は、時刻ta1から一定の時間、大きい負の値を示す。図4の時刻ta2に示すように車輪13に段差90を登らせるために車両10を加速させると、図7の上図の時刻ta2以降に示すように、加速度が正の方向に大きくなる。図4の時刻ta3に示すように、車輪13が段差90の上面で傾斜して停止すると、車両10のサスペンション等による揺れが収束するので、図7の上図の時刻ta3以降に示すように、下方向の重力の成分を含む加速度が徐々に負の値へと収束する。これにより、加速度から算出される車両10の勾配が徐々に収束して一定の値となる。従って、運転支援部78は、加速度及び加速度から算出される勾配の変化に基づいて、車両10が段差90に乗り上げたか否かを判定することができる。
図7の下図に示すように、太点線で示す測距情報から算出した基準位置までの距離及び太実線で示す車輪速パルス情報から算出した基準位置までの距離が時刻ta1から時刻ta2の間で徐々に小さくなる。更に、測距情報及び車輪速パルス情報のそれぞれから算出した基準位置までの距離が時刻ta2から時刻ta3の間で更に小さくなる。時刻ta3以降は、車両10が停止するので、当該距離が、同じ値で一定となる。ここで、運転支援部78が車輪速パルス情報から算出する距離は、移動距離の大きさであって、正負の判別(即ち、前後の判別)がない。従って、車両10が段差90に跳ね返されることなく乗り上げに成功して一方の方向(前進または後進)に進行している場合、測距情報及び車輪速パルス情報のそれぞれから算出した基準位置までの距離は一致する。従って、図7の時刻ta3以降に示すように、測距情報及び車輪速パルス情報のそれぞれから算出した基準位置までの距離が一致している場合、運転支援部78は、車両10の乗り上げに成功したと判定できる。
次に、運転支援部78による車両10が段差90の乗り上げ及び乗り越しに失敗したか否かを判定する方法について説明する。図8は、車両10が段差90の乗り上げ等に失敗した過程におけるグラフである。図8における各時刻tc1、tc2、tc3は、図6における時刻tc1、tc2、tc3に対応する。図8の上図は、乗り上げ等の失敗過程における加速度センサ32が検出した加速度及び車両10の勾配(=傾斜)を示す図である。図8の下図は、乗り上げ等の失敗過程における車両10から基準位置までの距離の図である。
例えば、図6の時刻tc2に示すように車輪13が段差90に接触すると車両10が進行方向と反対側の大きな加速度を受けるので、図8の上図の時刻tc2以降に示すように、加速度が負の方向に大きく変化する。加速度は、時刻tc2から一定の時間、大きい負の値を示す。図6の時刻tc3に示すように車輪13に段差90を登らせるために車両10を加速させると、図8の上図の時刻tc3以降に示すように、加速度が正の方向に大きくなる。
図6の時刻tc4に示すように、車輪13が段差90の上面に達することなく戻り始めると、図8の上図の時刻tc4以降に示すように加速度が負の方向に大きく変化する。図6の時刻tc5に示すように、車輪13が路面に達して車両10が水平になり車両10のサスペンション等による揺れが収束すると、図8の時刻tc5に示すように、加速度が徐々に0の値へと収束する。これにより、加速度から算出される車両10の勾配が徐々に0(即ち、水平)へと収束して一定の値となる。従って、運転支援部78は、加速度及び加速度から算出される勾配の変化に基づいて、車両10が段差90の乗り上げに失敗したか否かを判定できる。
図8の下図に示すように、測距情報及び車輪速パルス情報のそれぞれから算出した基準位置までの距離が時刻tc2から時刻tc3の間で徐々に小さくなる。更に、測距情報及び車輪速パルス情報のそれぞれから算出した基準位置までの距離が時刻tc3から時刻tc4の直前の間で更に小さくなる。時刻tc4以降は、車両10が段差90に戻されて逆方向に進行する。ここで、車輪速パルス情報による距離は、正負の判別(即ち、前後の判別)がなく、移動距離の大きさの積算なので、車両10が逆方向に進行しても、徐々に増加する。従って、車輪速パルス情報から算出した基準位置までの距離は、車両10が逆方向に進行しても徐々に小さくなる。一方、測距情報から算出した基準位置までの距離は、車両10が逆方向に進行すると徐々に大きくなる。従って、図8の時刻tc4以降に示すように、測距情報及び車輪速パルス情報のそれぞれから算出した基準位置までの距離は、徐々に乖離していく。従って、2つの距離が乖離する場合、運転支援部78は、車両10の乗り上げ等に失敗したと判定できる。
次に、運転支援部78による車両10が段差90を乗り越えたか否かを判定する方法について説明する。
乗り越えの第1の判定方法として、運転支援部78は、加速度及び勾配に基づいて車両10の乗り上げまたは失敗と判定できない場合、または、測距情報及び車輪速パルス情報のそれぞれから算出した基準位置までの距離に基づいて車両10の乗り上げまたは失敗と判定できない場合、車両10が段差90を乗り越えたと判定してもよい。
乗り越えの第2の判定方法として、図8の上図に示すように、加速度から算出した勾配が、最初と最後の定常状態(時刻tc2以前及び時刻tc5以降)で水平状態を示し、かつ、加速度の積分値が判定用閾値以上であれば、運転支援部78は、車両10が段差90を乗り越えたと判定してよい。尚、判定用閾値は、段差90の乗り上げ等に失敗した場合における加速度の積分値未満の値となるように予め設定されている。判定用閾値は、運転支援データ82に含まれていてよい。
乗り越えの第3の判定方法として、運転支援部78は、加速度、または、測距情報及び車輪速パルス情報のそれぞれから算出した基準位置までの距離に基づいて、車両10の乗り越えを判定してもよい。例えば、図5の時刻tb4までの加速度及び勾配は、図7の上図に示す時刻ta3までの加速度及び勾配と同様である。図5の時刻tb4以降の加速度及び勾配は、図8の上図に示す時刻tc4以降の加速度の大きさ及び勾配と同様である。従って、加速度及び勾配が、図7の上図に示す時刻ta3までの加速度及び勾配と同様であり、かつ、図8の上図に示す時刻tc4以降の加速度の大きさ及び勾配と同様であれば、運転支援部78は、加速度及び勾配に基づいて、車両10が段差90を乗り越えたと判定してもよい。
乗り越えの第4の判定方法として、運転支援部78は、加速度から算出した勾配が最初と最後の定常状態で水平状態を示し(図8の上図の時刻tc2以前及び時刻tc5以降)、かつ、測距情報及び車輪速パルス情報のそれぞれから算出した基準位置までの距離がほぼ同じ値となった場合(図7の上図の時刻ta3以降)、車両10が段差90を乗り越えたと判定してもよい。
次に、運転支援部78が実行する自車位置の補正について説明する。図9は、運転支援部78が実行する段差90に乗り上げた場合の自車位置の補正について説明するための側面図である。図9の上図は、段差90を乗り越えた場合の車輪13の移動距離を説明する図である。図9の下図は、段差90のない平坦な路面を移動する車輪13の移動距離を説明する図である。図9の上図及び下図は、2回転した車輪13の移動の図であり、点線は車輪13の外周の一点の軌跡を示す。車輪13の有効半径をrとする。車輪13が段差90に接触した個所と路面に接触している個所との中心角をθcとする。中心角θcは、車輪13が段差90に接触してから段差90の上面に乗り上がるまでの車輪13の回転角と同じである。図9に示すΔDが、段差90によって生じる車輪速パルス情報から算出される水平方向の移動距離のずれである。運転支援部78は、段差90に乗り上げた場合、段差90の高さh及び車両10の車輪13の大きさである半径r(または直径)に基づいてずれΔDを算出して、自車位置を補正する。以下、具体的に段差90に乗り上げた場合の運転支援部78による自車位置の補正を説明する。
車輪13が段差90を乗り越える場合の水平方向の移動距離はr×sinθcである。一方、車輪13が平坦な路面で回転角θcだけ回転した場合の水平方向の移動距離はr×θcである。これにより、段差90がある場合と、段差90がない平坦な路面との移動距離のずれΔDは、r×(θc−sinθc)となる。従って、運転支援部78は、車輪13が段差90に乗り上げた場合、車輪速パルス情報から算出した移動距離からずれΔDを引くことによって、水平方向の移動距離を補正すればよい。運転支援部78は、補正した移動距離に基づいて、車両10の自車位置を補正(以下、乗り上げ補正)してよい。
ここで、運転支援部78は、中心角θc(または回転角θc)を、段差90の高さhから算出してよい。尚、高さhと中心角θcは、h=r×(1−cosθc)を満たす。運転支援部78は、加速度から算出した車両10の勾配及び車両10のホイールベースに基づいて、高さhを算出してよい。また、運転支援部78は、測距部16が検出した段差90の複数個所の距離から特定した段差90の形状に基づいて高さhを特定してもよい。
運転支援部78は、車輪13が単突起等の短い段差90を乗り越えたと判定した場合、車輪速パルス情報から算出した移動距離からずれΔDの2倍(=2×ΔD)を引くことで、水平方向の移動距離を補正し、自車位置を補正(以下、乗り越え補正)してよい。
運転支援部78は、車輪13が段差90の同じ側に戻されて、車輪13が段差90の乗り上げ等に失敗したと判定した場合、車両10の自車位置を車輪13が段差90の乗り上げ開始前の位置に基づいて、自車位置を補正してよい。具体的には、運転支援部78は、失敗したと判定した場合、車両10の自車位置を車輪13が段差90の乗り上げ開始前の位置にリセットして自車位置を補正(以下、失敗補正)してよい。尚、運転支援部78は、乗り上げ等に失敗したと判定した場合、測距部16が測距した段差90までの距離に基づいて、車両10の自車位置を補正してもよい。具体的には、運転支援部78は、乗り上げ等に失敗したと判定した場合、段差90までの距離が、測距部16が測距した距離となる位置となるように自車位置を補正(以下、失敗補正)してよい。換言すれば、運転支援部78は、車両10が段差90の乗り上げ等に失敗し、失敗したと判定した場合、段差90に乗り上げた場合と異なる方法で自車位置を補正する。
図10は、運転支援装置34が実行する第1実施形態の運転支援処理のフローチャートである。処理部72は、運転支援プログラム80を読み込むことによって、運転支援処理を実行する。
図10に示すように、運転支援処理では、取得部76が、運転手等の乗員の運転支援指示を操作入力部68から取得したか否かを判定する(S102)。取得部76は、運転支援指示を取得するまで待機状態となる(S102:No)。
取得部76は、運転支援指示を取得すると(S102:Yes)、自動運転に必要な情報を取得する(S104)。例えば、取得部76は、撮像部14から撮像画像及び測距部16から測距情報を取得する。取得部76は、取得した情報を運転支援部78へ出力する。
運転支援部78は、取得部76から取得した情報に基づいて、駐車目標位置等の目標位置を設定し、当該目標位置への経路を設定する(S106)。運転支援部78は、設定した経路に沿って目標位置への自動運転を実行する(S108)。
取得部76は、自動運転を開始して走行中の車両10についての新たな情報を取得する(S110)。例えば、取得部76は、測距部16(例えば、測距部16b)から測距情報、加速度センサ32から加速度の情報及び車輪速センサ30から車輪速パルス情報等の情報を取得する。また、取得部76は、センサ44、50、56、62から自動運転中の制動部40、加速部46、操舵部52及び変速部58の位置情報を取得する。取得部76は、取得した情報を運転支援部78へ出力する。
運転支援部78は、段差90に接触したか否かを判定する(S112)。例えば、運転支援部78は、取得部76から取得した加速度センサ32が検出した車両10の加速度の変化によって、段差90に接触したか否かを判定してよい。具体的には、運転支援部78は、進行方向と反対方向の加速度が予め定められた接触判定用の閾値加速度より大きくなった場合、段差90に接触したと判定してよい。運転支援部78は、段差90に接触していないと判定すると(S112:No)、ステップS130を実行する。
運転支援部78は、取得部76から取得した情報に基づいて、段差90に接触したと判定すると(S112:Yes)、車両10が段差90に乗り上げたか否かを判定する(S114)。運転支援部78は、例えば、図7の上図に示すように、加速度センサ32が検出した加速度及び加速度から算出した勾配に基づいて、車両10が段差90に乗り上げたか否かを判定してよい。また、運転支援部78は、図7の下図に示すように、測距部16が検出した測距情報及び車輪速センサ30が検出した車輪速パルス情報に基づいて、車両10が段差90に乗り上げたか否かを判定してもよい。運転支援部78は、車両10が段差90に乗り上げたと判定すると(S114:Yes)、乗り上げ補正を実行して、図9に示すように段差90の高さh及び車輪13の半径rに基づいて、車両10の移動距離及び自車位置を補正する(S116)。この後、運転支援部78は、ステップS130を実行する。
運転支援部78は、車両10が段差90に乗り上げていないと判定すると(S114:No)、車両10が乗り上げまたは乗り越えに失敗したか否かを判定する(S118)。運転支援部78は、例えば、図8の上図に示すように、加速度センサ32が検出した加速度及び加速度から算出した勾配に基づいて、車両10が段差90に乗り上げ等に失敗したか否かを判定してよい。また、運転支援部78は、図8の下図に示すように、測距部16が検出した測距情報及び車輪速センサ30が検出した車輪速パルス情報に基づいて、車両10が段差90の乗り上げ等に失敗したか否かを判定してもよい。運転支援部78は、車両10が段差90の乗り上げ等に失敗したと判定すると(S118:Yes)、失敗補正を実行して、車両10の移動距離及び自車位置を補正する(S120)。この後、運転支援部78は、ステップS130を実行する。
運転支援部78は、車両10が段差90を乗り越えた場合、車両10が段差90の乗り上げ等に失敗していないと判定して(S118:No)、乗り越え補正を実行して、車両10の移動距離及び自車位置を補正する(S122)。この後、運転支援部78は、ステップS130を実行する。
運転支援部78は、ステップS130において、補正した自車位置に基づいて、自動運転中の車両10が目標位置に達したか否かを判定する。運転支援部78は、車両10が目標位置に達していないと判定すると(S130:No)、ステップS104以降を繰り返す。尚、運転支援部78は、ステップS106において、自車位置が経路からずれている場合、経路を再設定してもよい。運転支援部78は、車両10が目標位置に達していると判定すると(S130:Yes)、自動運転を終了して(S132)、運転支援処理を終了する。
上述したように、第1実施形態の運転支援装置34では、段差情報に基づいて自車位置を補正するので、段差90に起因する自車位置のずれを低減して、車両10の運転支援の精度を向上させることができる。
運転支援装置34では、自車位置のずれの大きさの要因となる段差90の高さh及び車両10の車輪13の大きさである半径rに基づいて段差90による自車位置のずれを補正するので、補正の演算に必要な負荷を低減しつつ、自車位置の補正の精度を向上できる。
運転支援装置34では、加速度に基づいて段差90に乗り上げたか否かを判定し、乗り上げたと判定した場合、段差90の高さh及び車輪13の半径rに基づいて自車位置のずれを補正している。このように、運転支援装置34は、乗り上げて傾斜すると平坦時とは異なる値を示す加速度によって段差90に乗り上げたか否かを判定するので、当該判定の精度を向上させることができる。更に、運転支援装置34は、段差90の高さh及び車輪13の半径rに基づいて補正が可能な乗り上げ時に自車位置を補正するので、より適切な状況で精度の高い補正を実現できる。特に、段差90と誤認する可能性のある後方の対象物が移動する歩行者等の場合であっても、運転支援装置34は、加速度に基づいて段差90への乗り上げの判定、及び、自車位置の補正をするので、誤った判定及び補正を抑制できる。
運転支援装置34では、車輪速パルス情報及び測距情報に基づいて段差90に乗り上げたか否かを判定し、乗り上げたと判定した場合、段差90の高さh及び車輪13の半径rに基づいて自車位置のずれを補正している。このように、運転支援装置34は、段差90に乗り上げたか否かに応じて大きく異なる車輪速パルス情報及び測距情報によって段差90に乗り上げたか否かを判定するので、当該判定の精度を向上させることができる。更に、運転支援装置34は、段差90の高さh及び車輪13の半径rに基づいて補正が可能な乗り上げ時に自車位置を補正するので、より適切な状況で精度の高い補正を実現できる。
運転支援装置34では、段差90の乗り上げ等に失敗したと判定した場合、乗り上げた場合と異なる方法で自車位置を補正する。これにより、運転支援装置34は、より状況に応じた自車位置の補正を実行することができる。
運転支援装置34では、段差90の乗り上げ等に失敗したと判定した場合、段差90の乗り上げ開始時の位置、または、段差90までの距離に基づいて、自車位置を補正している。このように、運転支援装置34は、乗り上げ等に失敗して、段差90の高さhから自車位置の補正が困難な場合でも、精度よく自車位置を補正できる。
<第2実施形態>
第2実施形態の運転支援装置34について説明する。第2実施形態の運転支援装置34は、第1実施形態の運転支援装置34と構成はほぼ同様であるが、各構成の機能及び処理が異なる。従って、第2実施形態の運転支援装置34については、異なる点について詳細に説明する。
第2実施形態の運転支援装置34では、取得部76が、段差90の情報として、車両10の周辺の段差90の位置を示す地図情報を取得するとともに、加速度センサ32が検出した加速度に関する情報を取得する。地図情報は、運転支援データ82の一部として含まれていてよい。運転支援部78は、当該加速度に基づいて段差90と車両10の1つ目の車輪13との接触を検出すると、地図情報が示す地図内における自車位置を補正する。運転支援部78は、当該加速度に基づいて段差90と車両10の2つ目の車輪13との接触を検出すると、地図情報が示す地図内における車両10の方向を補正する。1つ目の車輪13が第1車輪の一例であり、2つ目の車輪13が第2車輪の一例である。尚、第1車輪は、2つ目に接触した車輪13、または、3つ目に接触した車輪13等であってもよく、第2車輪は、3つ目に接触した車輪13、または、4つ目に接触した車輪13等であってもよい。
図11は、1つ目の車輪13と段差90とが接触した状態を示す平面図である。図12は、2つ目の車輪13と段差90とが接触した状態を示す平面図である。図11及び図12において、点線で示す段差90が各段階での補正前の段差であり、実線で示す段差90が各段階での補正後の段差である。
図11に示すように、運転支援部78は、段差90との接触がまだ検出されていない状態で、加速度センサ32が検出した加速度が初めて進行方向と反対側に接触判定用の閾値加速度以上となると、1つ目の車輪13と段差90とが接触したことを検出する。運転支援部78は、地図情報が示す段差90(点線参照)と、接触した自車位置における車輪13との位置がずれている場合、地図情報が示す地図内での自車位置を補正する。例えば、運転支援部78は、車輪13が段差90と接触するまで、段差90の端面に対して垂直な方向に沿って車輪13を段差90に対して相対的に移動させて、自車位置を補正してよい(実線の段差90参照)。
次に、図12に示すように、運転支援部78は、加速度センサ32が検出した加速度が再度進行方向と反対側に接触判定用の閾値加速度以上となると、2つ目の車輪13と段差90とが接触したことを検出する。運転支援部78は、地図情報が示す段差90(点線参照)と、新たに接触した自車位置における車輪13との位置がずれている場合、地図情報が示す地図内での車両10の方向を補正する。例えば、運転支援部78は、段差90と接触した2個の車輪13の位置を通る直線と、段差90の端面の位置とが一致するように、1つ目の車輪13が接触した個所を中心に段差90を車輪13に対して回転させることによって、車両10の方向を段差90に対して補正する(実線の段差90参照)。
第2実施形態の運転支援処理について説明する。図13は、第2実施形態の運転支援処理のフローチャートである。第2実施形態の運転支援処理の各ステップのうち、第1実施形態と同様のステップは、同じステップ番号を付与して、説明を簡略化する。
図13に示すように、処理部72は、ステップS102からS110まで実行する。次に、運転支援部78は、加速度センサ32が検出した加速度に基づいて、1つ目の車輪13が段差90に接触したか否かを判定する(S202)。運転支援部78は、1つ目の車輪13が段差90に接触していないと判定すると(S202:No)、ステップS130以降を実行する。
運転支援部78は、1つ目の車輪13が段差90に接触したと判定すると(S202:Yes)、1つ目の車輪13が段差90と接触するように、自車位置を段差90に対して相対的に移動させて、段差90の位置を含む地図情報が示す地図内での自車位置を補正する(S204)。運転支援部78は、自車位置を補正すると、表示部64に表示させているナビゲーション画像等に反映させてよい。
運転支援部78は、2つ目の車輪13が段差90に接触したか否かを判定する(S206)。運転支援部78は、2つ目の車輪13が段差90に接触していないと判定すると(S206:No)、待機状態となる。尚、ここでの待機状態は、予め定められた時間が経過したら解除してもよい。
運転支援部78は、2つ目の車輪13が段差90に接触したと判定すると(S206:Yes)、2つ目の車輪13が段差90と接触するように、1つ目の車輪13との接触個所を中心にして車両10を回転させて、車両10の方向を補正する(S208)。運転支援部78は、車両10の方向を補正すると、表示部64に表示させているナビゲーション画像等に反映させてよい。
この後、運転支援部78は、ステップS130以降を実行して、運転支援処理を終了する。
上述したように、第2実施形態の運転支援装置34では、段差90と車輪13とが接触すると、当該接触した位置に基づいて、段差90の位置を含む地図情報が示す地図内での自車位置を補正している。このように、運転支援装置34は、実際に段差90と接触した位置に基づいて、段差90を含む地図内での自車位置を補正するので、より精度よく自車位置を補正できる。
運転支援装置34では、2つの車輪13が段差90と接触した2つの位置から特定できる方向に基づいて、車両10の方向を補正している。これにより、運転支援装置34は、自車位置だけでなく車両10の方向も精度よく補正できる。
運転支援装置34では、加速度の変化で車輪13と段差90との接触を検出するので、パルス間隔以下の精度で接触を検出することが難しい車輪速パルス情報等による判定の場合に比べて、接触をタイムリーに精度よく検出することができる。
次に、上述した実施形態の一部を変更した変更形態について説明する。下記の変更形態は、各実施形態と組み合わせてよい。
<第1変更形態>
運転支援部78は、段差90の形状によっては、車両10の自車位置を補正しなくてもよい。図14は、第1変更形態において自車位置を補正しない例を説明する側面図である。図14に示すように、運転支援部78は、傾斜形状(例えば、フラップ形状)の段差90の場合、自車位置を補正しなくてもよい。運転支援部78は、段差90の形状が傾斜か否かを、加速度センサ32が検出した加速度に基づいて判定してよい。具体的には、運転支援部78は、進行方向と反対側の加速度が予め設定された傾斜判定用の閾値加速度よりも小さい場合、段差90が傾斜形状であると判定して補正不要とし、進行方向と反対側の加速度が閾値加速度以上の場合、段差90が段であると判定して自車位置を補正してよい。
<第2変更形態>
次に、乗り上げたか否かの別の判定方法について説明する。図15から図18は、第2変更形態における車両10の縦列駐車の過程を示す平面図である。矢印で示す方向をZ方向とする。図15から図18に示すように、自車位置SPが駐車領域PAの目標駐車位置TPに達するように、車両10がクロソイド曲線を含む設定経路SRに沿って走行する縦列駐車を例に挙げて判定方法を説明する。車両10の+Z方向側が、前側であって、−Z方向側が後側である。即ち、車両10は、後側から駐車領域PAに入庫して縦列駐車する。目標駐車位置TPのZ方向の位置は、0mmとする。設定経路SRの開始点のZ方向の位置は、4000mmとする。対象物92Fが車両10の前側に存在し、対象物92Rが車両10の後側に存在する。一般的な縦列駐車の場合、一点鎖線で示す直線94aと直線94bとの間に段差90が存在すると想定する。第2変更形態では、車両10は、6個の測距部16FL、16FC、16FR、16RL、16RC、16RRを有する。測距部16FL、16FC、16FR、16RL、16RC、16RRは、それぞれ車両10の左前端部、前端中央部、右前端部、左後端部、後端中央部、右後端部に設けられている。測距部16FL、16FC、16FR、16RL、16RC、16RRを区別する必要がない場合、測距部16と記載する。
図15から図18を参照して、車両10の縦列駐車について説明する。
まず、車両10が、設定経路SRに沿って走行して図15に示す位置に達すると、例えば、進行方向側かつ外側である左後の車輪13が、直線94aの位置に段差90がある場合、当該段差90に接触する。ここでのZ方向の自車位置SPは、約3140mmとする。
車両10が、設定経路SRに沿って更に走行して図16に示す位置に達すると、例えば、進行方向側かつ外側である左後の車輪13が、直線94bの位置に段差90がある場合、当該段差90に接触する。ここでのZ方向の自車位置SPは、約2000mmとする。
車両10が、設定経路SRに沿って更に走行して図17に示す位置に達すると、例えば、進行方向の反対側かつ外側である左前の車輪13が、直線94aの位置に段差90がある場合、当該段差90に接触する。ここでのZ方向の自車位置SPは、約900mmとする。
車両10が、設定経路SRに沿って更に走行して図18に示す位置に達すると、例えば、進行方向の反対側かつ外側である左前の車輪13が、直線94bの位置に段差90がある場合、当該段差90に接触する。ここでのZ方向の自車位置SPは、約350mmとする。
この後、車両10が、設定経路SRに沿って更に走行して、自車位置SPと目標駐車位置TPとが一致すると、縦列駐車が完了する。
次に、図15から図18の過程において、測距部16による対象物92F、92Rの測距について説明する。図19は、測距部16による対象物92F、92Rの検出結果を示す図である。図19の横軸は、Z方向における目標駐車位置TPから自車位置SPまでの距離[mm]を示す。縦軸の距離[mm]は、各測距部16が測距した対象物92Fまたは対象物92Rのいずれかまでの距離[mm]、または、Z方向における目標駐車位置TPから自車位置SPまでの距離[mm]を示す。
太二点鎖線D_Zは、自車位置SPまでのZ方向上の距離を示す。従って、太二点鎖線D_Zは、縦軸及び横軸の値が同じ位置を通る。破線D_RCは、後端中央部の測距部16RCが測距した対象物92Rまでの距離を示す。細実線D_RRは、右後端部の測距部16RRが測距した対象物92Rまでの距離を示す。太破線D_FLは、左前端部の測距部16FLが測距した対象物92Fまでの距離を示す。細一点鎖線D_FCは、前端中央部の測距部16FCが測距した対象物92Fまでの距離を示す。太実線D_FRは、右前端部の測距部16FRが測距した対象物92Fまでの距離を示す。
図15及び図16に示す後側の車輪13が段差90に接触する位置であってZ方向の距離が3140mmから2000mmである車両10では、図19に示すように、前側の測距部16FL、16FC、16FRが測距した距離を示す線D_FL、D_FC、D_FRが、自車位置SPまでのZ方向上の距離を示す太二点鎖線D_Zと交差している。特に、前側の測距部16FCが測距した距離を示す線D_FCの傾きが、自車位置SPまでのZ方向上の距離を示す太二点鎖線D_Zとほぼ直交している。これは、車両10が目標駐車位置TPに近づき太二点鎖線D_Zが示す目標駐車位置TPまでの距離が小さくなると、線D_FL、D_FC、D_FRが示す対象物92Fまでの距離が大きくなることを示している。このことから、Z方向の距離が3140mmから2000mmである車両10では、前側の測距部16FL、16FC、16FRが、前方の対象物92Fの距離を精度よく測距できていることがわかる。
ここで、後方に進行中の車両10の後側の車輪13が段差90の乗り上げに失敗して、車両10が前方に戻されると、徐々に大きくなっていた対象物92Fまでの距離は、小さくなる。従って、前側の測距部16FL、16FC、16FRが測距した距離は増加から減少に反転する。従って、後側の車輪13が段差90に乗り上げたか失敗したかは、前側の測距部16FL、16FC、16FRが測距した前方の対象物92Fまでの距離で判定できることがわかる。
図17及び図18に示す前側の車輪13が段差90に接触する位置であってZ方向の距離が900mmから350mmである車両10では、図19に示すように、後側の測距部16RC、16RRが測距した距離を示す線D_RC、D_RRが、自車位置SPまでのZ方向上の距離を示す太二点鎖線D_Zとほぼ平行になっている。これは、車両10が目標駐車位置TPに近づき太二点鎖線D_Zが示す目標駐車位置TPまでの距離が小さくなると、線D_RC、D_RRが示す対象物92Rまでの距離が小さくなることを示している。このことから、Z方向の距離が900mmから350mmである車両10では、後側の測距部16RC、16RRが、後方の対象物92Rの距離を精度よく測距できていることがわかる。
ここで、後方に進行中の車両10の前側の車輪13が段差90の乗り上げに失敗して、車両10が前方に戻されると、徐々に小さくなっていた対象物92Rまでの距離は、大きくなる。従って、後側の測距部16RC、16RRが測距した距離は増加から減少に反転する。従って、前側の車輪13が段差90に乗り上げたか失敗したかは、後側の測距部16RC、16RRが測距した前方の対象物92Fまでの距離で判定できることがわかる。
従って、運転支援部78は、後側の車輪13が段差90に乗り上げたか否かを前側の測距部16FL、16FC、16FRが測距した前方の対象物92Fまでの距離に基づいて判定してよい。
運転支援部78は、前側の車輪13が段差90に乗り上げたか否かを後側の測距部16RL、16RC、16RRが測距した後方の対象物92Fまでの距離に基づいて判定してよい。
運転支援部78は、入庫方向と反対側(図15から図18に示す例では前側)の車輪13が段差90に乗り上げたか否かを、入庫方向側の測距部(図15から図18に示す例では測距部16RL、16RC、16RR)のうち、旋回円の内側から中央の測距部(図15から図18に示す例では測距部16RC、16RR)が測距した入庫方向側の対象物(図15から図18に示す例では対象物92R)までの距離に基づいて判定することが好ましい。
上述した各実施形態及び各変更形態の構成の機能、接続関係、個数、配置等は、発明の範囲及び発明の範囲と均等の範囲内で適宜変更、削除等してよい。各実施形態及び各変更形態を適宜組み合わせてもよい。各実施形態の各ステップの順序を適宜変更してよい。
上述の第1実施形態の運転支援装置34では、段差90に乗り上げた場合、段差90の乗り上げ等に失敗した場合、段差90を乗り越した場合のそれぞれに応じた自車位置の補正を実行するように構成したが、補正方法はこれに限定されない。例えば、運転支援装置34は、加速度または車輪パルス数及び段差90までの距離に基づいて、少なくとも段差90に乗り上げたと判定した場合、自車位置を補正するようにしてもよい。運転支援装置34は、段差90に乗り上げた場合及び段差90を乗り越した場合のみ、自車位置を補正するようにしてもよい。運転支援装置34は、段差90に乗り上げた場合及び失敗した場合のみ、自車位置を補正するようにしてもよい。
上述の第2実施形態の運転支援装置34では、車両10の自車位置及び方向を補正する例を挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、第2実施形態の運転支援装置34は、1つ目の車輪13と段差90との接触に基づいて、車両10の自車位置のみを補正するようにしてもよい。
運転支援システム20は、加速度センサ32が検出した加速度のうち、特定の周波数(例えば、1Hz〜20Hz)を通過させるバンドパスフィルタを有してもよい。この場合、運転支援装置34の運転支援部78は、バンドパスフィルタが通過させた加速度に基づいて、上述の各処理を実行してよい。
上述の実施形態では、移動体の例として四輪の車両10を例に挙げて説明したが、移動体は車両10に限定されない。例えば、移動体は、内燃機関及び電動機等の駆動源を有し、当該駆動源が回転させる車輪を有する車両または飛行機等であってもよい。