《第1実施形態》
以下、本発明の第1実施形態に係る排気熱回収ユニット(以降、「第1ユニット」と称される場合がある。)について説明する。
第1ユニットは、熱電発電装置と、熱回収器と、を備える統合型排気熱回収ユニットである。熱電発電装置は、内燃機関から排出される排気と内燃機関へと流入する冷却媒体との温度差により発電する。このような熱電発電装置の構成は、排気と冷却媒体との温度差により発電することが可能である限り、特に限定されない。熱電発電装置の構成の具体例としては、例えば、ゼーベック効果による熱電変換素子の接合点の一方を高熱源(排気)と、他方を低熱源(冷却媒体)と、それぞれ熱伝導可能に配設し、両者の間に電位差を生じさせることにより、熱エネルギーを電力エネルギーに変換する構成を挙げることができる。
更に、熱電変換素子の高熱源側の接合点と排気との間及び/又は熱電変換素子の低熱源側の接合点と冷却媒体との接触面積を増大させて、これらの間での熱交換を促進することを目的として、排気の流路の内側及び/又は熱電変換素子の低熱源側の接合点と熱伝導可能な位置にフィン等を設けてもよい。
熱回収器は、内燃機関から排出される排気から回収した熱を内燃機関へと流入する冷却媒体に与える。このような熱回収器の構成は、排気から回収した熱を冷却媒体に与えることが可能である限り、特に限定されない。熱回収器の具体例としては、例えば、所定の流路(例えば、管等)の内側を流れる排気から当該流路の外側を流れる冷却媒体へと、当該流路を画定する部材(例えば、管壁等)を介して、熱を移動させる熱交換器等を挙げることができる。逆に、所定の流路の内側を冷却媒体が流れ、当該流路の外側を排気が流れるようにしてもよい。更に、所定の流路を画定する部材と排気及び/又は冷却媒体との接触面積の増大を目的として当該流路の外側及び/又は内側にフィン等を設けてもよい。
第1ユニットにおいて、熱電発電装置及び熱回収器は共通のハウジング内に収納されている。ここで言う「共通のハウジング」とは、当該ハウジングの内部空間が1つの連続的な空間であることを意味する。従って、当該ハウジングは、熱電発電装置及び熱回収器の両方を収納する単一の容器によって構成されていてもよい。或いは、当該ハウジングは、例えば、冷却媒体の流れを過度に妨げない限り、熱電発電装置及び熱回収器をそれぞれ収納する別個の容器からなり且つこれら別個の容器の内部空間が互いに連通するように構成されていてもよい。
内燃機関へと流入する冷却媒体を上記ハウジングの内部空間を介して循環させることにより、熱電発電装置及び熱回収器の両方に冷却媒体を常に供給して、熱電発電装置及び熱回収器の両方から冷却媒体が常に受熱することが可能な冷媒流路を容易に構成することができる。また、回収器及び熱電発電装置への冷却媒体の供給を個別に切り替える機構(例えば、切替弁等)を必要としないので、ユニットの大型化及び複雑化を回避することができる。
また、排気の流れに対して熱電発電装置と熱回収器とが並列に配置されている。ここで言う「排気の流れに対して並列に配置されている」構成は、内燃機関から排出される排気が、熱電発電装置及び熱回収器の何れか一方に供給された後に残る他方に供給される「排気の流れに対して直列に配置されている」構成ではなく、内燃機関から排出される排気を熱電発電装置及び熱回収器の両方に分けて同時に供給することが可能な構成を意味する。
上記のように、第1ユニットにおいては、排気の流れに対して熱電発電装置と熱回収器とが並列に配置されている。従って、前述した直列統合型排気熱回収ユニットに比べて、ユニットをより小型化すると共に、排気の圧力損失をより小さくすることができる。更に、直列統合型排気熱回収ユニットとは異なり、熱電発電装置及び熱回収器のうち上流側にある方が下流側にある方よりも先に排気の熱を奪うために下流側にある方に到達する排気の温度が低くなり下流側にある方における発電効率又は冷却媒体の加熱効率が低下するという問題が生ずる虞が無い。
加えて、詳しくは後述するように熱電発電装置及び熱回収器への排気の供給を切り替える機構と組み合わせることにより、熱回収器による熱交換及び熱電発電装置による熱電変換の実施と非実施とをそれぞれ独立に切り替えることができる。このため、前述したように、第1ユニットにおいては、熱回収器及び熱電発電装置への冷却媒体の供給を個別に切り替える機構を設ける必要が無い。従って、第1ユニットによれば、ユニットの大型化及び複雑化を回避することができる。
更に、ハウジング内における冷却媒体の流路である冷媒流路は、冷却媒体が熱電発電装置に到達した後に熱回収器に到達するように構成されている。このような冷媒流路の構成は、冷却媒体が熱電発電装置に到達した後に熱回収器に到達することが可能である限り、特に限定されない。冷媒流路の具体例としては、例えば、ハウジング内に導入された冷却媒体を熱電発電装置における冷却媒体の流路(低熱源側)に導いた後に熱回収器における冷却媒体の流路に導き、その後にハウジングから冷却媒体を導出するように構成された配管等を挙げることができる(後述する図1を参照)。
或いは、ハウジングの内面と熱電発電装置及び熱回収器の外面との間の空隙並びに熱電発電装置の外面と熱回収器の外面との間の空隙を冷媒流路とし、熱電発電装置に近い位置から冷却媒体をハウジング内へと冷却媒体を導入し、熱回収器に近い位置から冷却媒体をハウジング外へと導出するようにしてもよい(後述する図2を参照)。
上記によれば、例えばラジエータにおける放熱等によって冷却された冷却媒体が、熱回収器よりも先に熱電発電装置に到達するので、熱電発電装置における排気と冷却媒体との温度差を大きくすることができ、結果として熱電発電装置による発電効率を高めることができる。このようにして熱電発電装置における発電に利用された冷却媒体の温度はある程度上昇するが、当該冷却媒体が熱電発電装置の後に到達する熱回収器においては内燃機関から排出された非常に高い温度を有する排気と当該冷却媒体との間において熱交換が実施される。従って、熱回収器における排気と冷却媒体との温度差は依然として大きいので、熱回収器において十分に大きい熱量を排気から冷却媒体に与えることができる。即ち、熱回収器において十分に高い熱回収効率を達成することができる。
以上のように、第1ユニットによれば、ユニットの大型化及び複雑化を低減しつつ、熱回収器による熱交換及び熱電発電装置による熱電変換の実施と非実施とをそれぞれ独立に切り替えることができる。
ここで、図面を参照しながら第1ユニットの構成について説明する。図1は第1ユニットの構成の1つの具体例を示す模式的な断面図である。図1に示す第1ユニット101は、熱電発電装置10と、熱回収器20と、を備える統合型排気熱回収ユニットである。熱電発電装置10は、内燃機関(図示せず)から排出される排気と内燃機関へと流入する冷却媒体との温度差により発電する。熱回収器20は、内燃機関から排出される排気から回収した熱を内燃機関へと流入する冷却媒体に与える。
第1ユニット101において、熱電発電装置10及び熱回収器20は共通のハウジング30内に収納されている。また、排気の流れに対して熱電発電装置10と熱回収器20とが並列に配置されている。図1に示した例においては、熱電発電装置10に排気を供給する排気流路11と、熱回収器20に排気を供給する排気流路21と、が並列に配設されている。尚、図1において排気の流れは白抜きの矢印によって示されている。
ハウジング30内における冷却媒体の流路である冷媒流路31は、斜線が施された領域によって表されている。即ち、ハウジング30内における冷却流路31は、冷却媒体が熱電発電装置10に到達した後に熱回収器20に到達するように構成されている。より具体的には、図1において斜線が施された矢印によって表されているように、冷却媒体はハウジング30の下部からハウジング30内に導入され、熱電発電装置10を構成する熱電変換素子12(黒塗りの四角形)の内側(高熱源側)に配設された排気流路11とは反対側(低熱源側)に形成された空間を通過した後、熱回収器20の内側に配設された排気流路21の周囲に形成された空間を通過し、ハウジング30の上部からハウジング30外に導出される。
尚、図1に示した例においては、上記のようにハウジング30内に独立して形成された冷却媒体の流路(配管)により、ハウジング30内に導入された冷却媒体を熱電発電装置10に導いた後に熱回収器20に導き、その後にハウジング30から導出している。
しかしながら、図2に示す第1ユニット102のように、ハウジング30の内面と熱電発電装置10及び熱回収器20の外面との間の空隙並びに熱電発電装置10の外面と熱回収器20の外面との間の空隙を冷媒流路とし、熱電発電装置10に近い位置から冷却媒体をハウジング30内へと導入し、熱回収器20に近い位置から冷却媒体をハウジング30外へと導出するようにしてもよい。図2に示した例においては、排気流路11と熱電変換素子12とその周囲の空隙を含む領域(破線によって囲まれる領域)が熱電発電装置10に該当し、排気流路21とその周囲の空隙を含む領域(点線によって囲まれる領域)が熱回収器20に該当する。
尚、上述した図1及び図2に示した構成はあくまでも第1ユニットの構成の模式的な例示に過ぎず、各構成要素の配置並びに排気及び冷却媒体の流れる方向等、第1ユニットの構成の詳細については、上述した構成要件を満たす限り、これらの例示に限定されない。
例えば、上述した図1及び図2においては、本発明に関する理解を容易にすることを目的として、熱電発電装置10が1つの排気流路11を備え且つ熱回収器20が1つの排気流路21を備える構成を例示したが、熱電発電装置10及び/又は熱回収器20が複数の排気流路を備えていてもよい。また、熱電発電装置10における熱電変換素子12の数及び配置についても、熱電発電装置10の構成に応じて種々の組み合わせを採用することができる。
《第2実施形態》
以下、本発明の第2実施形態に係る排気熱回収ユニット(以降、「第2ユニット」と称される場合がある。)について説明する。
第2ユニットは、当該排気熱回収ユニットの使用時の姿勢にあるハウジング内において、冷却媒体が鉛直方向における下側からハウジング内に導入され、鉛直方向における上側から導出されるように、冷媒流路が構成されている点を除き、上述した第1ユニットと同様の構成を有する排気熱回収ユニットである。ここで言う「排気熱回収ユニットの使用時の姿勢」とは、例えば、車両に搭載された内燃機関からの排気熱の回収を目的として第2ユニットが使用される場合においては、当該車両に搭載された第2ユニットの姿勢(配設状態)を意味する。
上記により、熱電発電装置及び/又は熱回収器における受熱により冷却媒体から蒸気が発生した場合においても、当該蒸気が鉛直方向における上側からハウジング外へと容易に排出される。従って、冷媒流路内に滞留した当該蒸気の圧力が過度に上昇して例えば冷却流路の破損等の問題に繋がる虞を低減することができる。
更に、第2ユニットにおいては、熱電発電装置は鉛直方向における下側に、熱回収器は鉛直方向における上側に配置されている。一方、上記のように、冷媒流路は、冷却媒体が鉛直方向における下側からハウジング内に導入され、鉛直方向における上側から導出されるように構成されている。即ち、第2ユニットにおいても、冷却媒体は、熱電発電装置に到達した後に熱回収器に到達する。
上記により、第2ユニットにおいても、第1ユニットと同様に、熱電発電装置による発電効率を高めると共に、熱回収器において十分に高い熱回収効率を達成することができる。
尚、第1ユニット101に関する説明において述べた通り、図1及び図2に示した例においては、冷却媒体は、鉛直方向における下側からハウジング30内に導入され、鉛直方向における上側から導出される。従って、図1及び図2に例示した構成は、第2ユニットの構成要件を満たしている。
《第3実施形態》
以下、本発明の第3実施形態に係る排気熱回収システム(以降、「第3システム」と称される場合がある。)について説明する。
第3システムは、上述した第1ユニット及び第2ユニットを始めとする本発明に係る排気熱回収ユニット(本発明ユニット)と、切り替え機構と、制御装置と、を備える排気熱回収システムである。
切り替え機構は、排気熱回収ユニットを構成する熱電発電装置及び熱回収器への排気の供給流路の開閉を互いに独立に切り替えるように構成された機構である。このような切り替え機構の構成は、熱電発電装置及び熱回収器への排気の供給流路の開閉を互いに独立に切り替えることが可能である限り、特に限定されない。切り替え機構の具体例としては、例えば、熱電発電装置及び熱回収器への排気の供給流路にそれぞれ介装された弁及び当該供給流路の熱電発電装置及び熱回収器への分岐部に介装された三方弁等を挙げることができる。また、これらの弁は、例えば電動機等のアクチュエータによって開閉を切り替えたり、開度を調整したりすることができる。
制御装置は、切り替え機構を制御して熱電発電装置及び熱回収器への排気の供給を切り替えるように構成されている。このような制御装置の構成は、切り替え機構を制御して熱電発電装置及び熱回収器への排気の供給を切り替えることが可能である限り、特に限定されない。制御装置の具体例としては、例えば、CPU、ROM、RAM及びインタフェース等を含むマイクロコンピュータを主要構成部品として有する電子制御回路(ECU)等を挙げることができる。CPUは、メモリ(ROM)に格納されたインストラクション(ルーチン)を実行することにより、内燃機関及び排気熱回収ユニットの状態に応じて切り替え機構を制御して熱電発電装置及び熱回収器への排気の供給を切り替える。
以上のように、第3システムによれば、ユニットの大型化及び複雑化を低減しつつ、内燃機関及び排気熱回収ユニットの状態に応じて、熱回収器による熱交換及び熱電発電装置による熱電変換の実施と非実施とを、それぞれ独立に切り替えることができる。
ここで、図面を参照しながら第3システムの構成について説明する。図3は第3システムの構成の1つの具体例を示す模式的な断面図である。図3に示す第3システム301は、第1ユニット101と、切り替え機構40と、制御装置(ECU)50と、を備える排気熱回収システムである。第1ユニット101の構成については図1を参照しながら既に上述したので、ここでは説明を繰り返さない。
切り替え機構40は、第1ユニット101を構成する熱電発電装置10及び熱回収器20への排気の供給流路の開閉を互いに独立に切り替える。図3に示した例における切り替え機構40は、熱電発電装置10及び熱回収器20への排気の供給流路の熱電発電装置10及び熱回収器20への分岐部に介装されたロータリー型三方弁として構成されている。内部に排気の流路が形成されたロータ41(流路部分が白抜きになっている黒い円)をアクチュエータとしての電動機(図示せず)によって回転させることにより、熱電発電装置10及び熱回収器20への排気の供給流路の開閉を互いに独立に切り替えることができる。
具体的には、ロータ41が図3の(a)に示す状態にある場合、熱電発電装置10及び熱回収器20の両方への排気の供給流路が開いているので、熱電発電装置10及び熱回収器20の両方へ排気を供給することができる。ロータ41が(b)に示す状態にある場合、熱電発電装置10への排気の供給流路のみが開いているので、熱電発電装置10のみに排気を供給することができる。ロータ41が(c)に示す状態にある場合、熱回収器20への排気の供給流路のみが開いているので、熱回収器20のみに排気を供給することができる。
尚、上述したように、切り替え機構40の構成は上記に限定されず、熱電発電装置10及び熱回収器20への排気の供給流路の開閉を互いに独立に切り替えることが可能である限り、特に限定されない。例えば、上記のようなロータリー型三方弁に代えて、仕切板状の弁体を所定の軸の周りに回転させる単純な構造を採用してもよい。或いは、熱電発電装置10及び熱回収器20への排気の供給流路にそれぞれ個別の弁を介装してもよい。この場合の弁の方式も特に限定されず、例えば仕切弁及びバタフライ弁等、種々の方式から適宜選択することができる。
制御装置50は、切り替え機構40を制御して熱電発電装置10及び熱回収器20への排気の供給を切り替える。図3に示した例においては、制御装置50は、ロータ41を回転させるアクチュエータとしての電動機(図示せず)への電源供給を制御して、ロータ41を所定の回転位置に回転させることにより、熱電発電装置10及び熱回収器20への排気の供給流路の開閉を切り替えることができる。
次に、図4は第3システムの構成のもう1つの具体例を示す模式的な断面図である。図4に示す第3システム302は、第1ユニット102と、切り替え機構40と、制御装置(ECU)50と、を備える排気熱回収システムである。第1ユニット102の構成については図2を参照しながら既に上述したので、ここでは説明を繰り返さない。
第3システム302においては、切り替え機構40として、熱電発電装置10及び熱回収器20への排気の供給流路の熱電発電装置10及び熱回収器20への分岐部において所定の軸の周りに回転可能に配設された仕切板状の弁体42を備える切り替え弁を採用している。弁体42をアクチュエータとしての電動機(図示せず)によって回転させることにより、熱電発電装置10及び熱回収器20への排気の供給流路の開閉を互いに独立に切り替えることができる。
具体的には、弁体42が図4の(a)に示す状態にある場合、熱電発電装置10及び熱回収器20の両方への排気の供給流路が開いているので、熱電発電装置10及び熱回収器20の両方へ排気を供給することができる。弁体42が(b)に示す状態にある場合、熱電発電装置10への排気の供給流路のみが開いているので、熱電発電装置10のみに排気を供給することができる。弁体42が(c)に示す状態にある場合、熱回収器20への排気の供給流路のみが開いているので、熱回収器20のみに排気を供給することができる。
尚、上述した図3及び図4に示した構成はあくまでも第3システムの構成の模式的な例示に過ぎず、各構成要素の配置、排気及び冷却媒体の流れる方向、並びに制御装置によって実行される制御の具体的内容等、第3システムの構成及び動作の詳細については、上述した構成要件を満たす限り、これらの例示に限定されない。
《第4実施形態》
以下、本発明の第4実施形態に係る排気熱回収システム(以降、「第4システム」と称される場合がある。)について説明する。
上述したように、第3システムによれば、ユニットの大型化及び複雑化を低減しつつ、内燃機関及び排気熱回収ユニットの状態に応じて、熱回収器による熱交換及び熱電発電装置による熱電変換の実施と非実施とを、それぞれ独立に切り替えることができる。
第4システムは、その時々の内燃機関及び排気熱回収ユニットの状態を所定の検出手段によって検出し、その結果に応じて、熱回収器による熱交換及び熱電発電装置による熱電変換の実施と非実施とを、制御装置によって自動的に、それぞれ独立に切り替えることができるように構成される。
具体的には、第4システムは、温度検出手段と、電力検出手段と、を更に備える点を除き、上述した第3システムと同様の構成を有する排気熱回収システムである。温度検出手段は、内燃機関から流出する冷却媒体の温度である冷媒温度を検出するように構成されている。このような温度検出手段の構成は、冷媒温度を検出することが可能である限り、特に限定されない。温度検出手段の具体例としては、例えば、サーミスター等の温度センサ等を挙げることができる。尚、温度検出手段は、必ずしも冷媒温度自体を検出する必要は無く、冷媒温度と相関関係を有する温度を検出し、検出された温度を制御装置によって冷媒温度に換算するようにしてもよい。或いは、検出された温度に基づいて後述する制御を実行するようにしてもよい。
電力検出手段は、熱電発電装置によって発電される電力である発電電力を検出するように構成されている。このような電力検出手段の構成は、発電電力を検出することが可能である限り、特に限定されない。電力検出手段の具体例としては、例えば、熱電発電装置の出力電圧を検出する電圧センサと出力電流を検出する電流センサとの組み合わせ等を挙げることができる。これによれば、検出された出力電圧及び出力電流に基づいて制御装置によって発電電力を算出することができる。
更に、第4システムにおいて、制御装置は、以下に列挙する(1)乃至(4)に示す制御を実行するように構成されている。
(1)冷媒温度が所定の下限温度未満であると判定される場合は、切り替え機構を制御して熱回収器への排気の供給流路を開く。ここで言う「所定の下限温度」としては、例えば、内燃機関の暖機が不要であると判断される冷媒温度の最低温度を採用することができる。換言すれば、良好な運転効率を達成し得る内燃機関の最低温度に対応する冷媒温度を所定の下限温度として設定することができる。このような下限温度に冷媒温度が到達していない(即ち、冷媒温度が下限温度未満である)場合、熱回収器による熱交換(熱回収)を実施して冷媒温度を高めることが望ましい。そこで、制御装置は、切り替え機構を制御して熱回収器への排気の供給流路を開き、熱回収器による熱交換を実施する。
(2)冷媒温度が所定の上限温度以上であると判定される場合は、切り替え機構を制御して熱回収器への排気の供給流路を閉じ且つ熱電発電装置への排気の供給流路を開く。ここで言う「所定の上限温度」としては、例えば、ラジエータにおける放熱によって冷却媒体の温度を十分に低下させることが困難となり内燃機関を十分に冷却することが困難となる虞があると判断される冷却媒体の最低温度(例えば、80℃)を採用することができる。このような上限温度に冷媒温度が到達している(即ち、冷媒温度が上限温度以上である)場合、熱回収器による熱交換(熱回収)を停止して冷媒温度の更なる上昇を低減することが望ましい。
そこで、制御装置は、切り替え機構を制御して熱回収器への排気の供給流路を閉じる。このとき熱電発電装置への排気の供給流路が閉じている場合、内燃機関から排出される排気の排出経路が遮断されてしまう。そこで、制御装置は、切り替え機構を制御して熱電発電装置への排気の供給流路を開く。当然のことながら、このとき熱電発電装置への排気の供給流路が既に開いている場合は、制御装置によって熱電発電装置への排気の供給流路を改めて開く必要は無い。
(3)冷媒温度及び発電電力に基づき、熱電発電装置における排気と冷却媒体との温度差が所定の上限温度差未満であると判定される場合は、切り替え機構を制御して熱電発電装置への排気の供給流路を開く。上記「熱電発電装置における排気と冷却媒体との温度差」は、冷媒温度及び発電電力に基づいて制御装置によって算出することができる。具体的には、例えば、熱電発電装置を構成する熱電変換素子の高熱源側と低熱源側との間の温度差を検出する検出手段を備える実験用の熱電発電装置を用意し、当該熱電発電装置を用いて上記温度差と発電電力との対応関係を様々な冷媒温度において予め求めておく。そして、実際の制御の実行時には、上述した温度検出手段によって検出される冷媒温度及び上述した電力検出手段によって検出される発電電力から上記対応関係に基づいて上記温度差を特定することができる。
また、ここで言う「所定の上限温度差」としては、例えば、熱電発電装置を構成する熱電変換素子の高熱源側と低熱源側との間の温度差によって生ずる熱電変換素子の高熱源側と低熱源側との間の熱変形量の違い等に起因する熱電変換素子の破損が発生する上記温度差の最小値を採用することができる。このような最小値は第4システムを構成する熱電発電装置を用いる事前実験等によって予め求めておくことができる。
このような上限温度差に上記温度差が到達していない(即ち、上記温度差が所定の上限温度差未満である)場合、熱電発電装置による熱電変換を実施しても上記のような熱電変換素子の破損が発生する可能性は低い。従って、この場合、省エネルギーの観点からは、熱電発電装置による熱電変換を実施することが望ましい。そこで、制御装置は、切り替え機構を制御して熱電発電装置への排気の供給流路を開き、熱電発電装置による熱電変換を実施する。
(4)上記温度差が上記上限温度差以上であると判定される場合は、切り替え機構を制御して熱電発電装置への排気の供給流路を閉じ且つ熱回収器への排気の供給流路を開く。上記上限温度差に上記温度差が到達している(即ち、上記温度差が上限温度差以上である)場合、熱電発電装置への排気の供給を実施又は継続すると、上記のような熱電変換素子の破損が発生する可能性が高い。従って、この場合、熱電発電装置への排気の供給を停止して上記温度差の更なる増大を低減することが望ましい。
そこで、制御装置は、切り替え機構を制御して熱電発電装置への排気の供給流路を閉じる。このとき熱回収器への排気の供給流路が閉じている場合、内燃機関から排出される排気の排出経路が遮断されてしまう。そこで、制御装置は、切り替え機構を制御して熱回収器への排気の供給流路を開く。当然のことながら、このとき熱回収器への排気の供給流路が既に開いている場合は、制御装置によって熱回収器への排気の供給流路を改めて開く必要は無い。
以上のように、第4システムによれば、その時々の内燃機関及び排気熱回収ユニットの状態を所定の検出手段によって検出し、その結果に応じて、熱回収器による熱交換及び熱電発電装置による熱電変換の実施と非実施とを、制御装置によって自動的に、それぞれ独立に切り替えることができる。
ここで、図面を参照しながら第4システムの構成について説明する。図5は第4システムの構成の1つの具体例を示す模式的な断面図である。図5に示す第4システム401は、温度検出手段51及び電力検出手段52を更に備える点並びにこれらの検出手段による検出結果に応じて熱電発電装置10による熱電変換及び熱回収器20による熱交換の実施と非実施とを自動的且つ独立に切り替えるように制御装置50が構成されている点を除き、図3を参照しながら上述した第3システム301と同様の構成を有する。従って、以下の説明においては、第3システム301との相違点に着目して、第4システム401について説明する。
温度検出手段51は、図示しない内燃機関から流出する冷却媒体の温度である冷媒温度を検出するように構成されている。電力検出手段52は、熱電発電装置10によって発電される電力である発電電力を検出するように構成されている。制御装置50は、切り替え機構40を制御して、上述した(1)乃至(4)に示す制御を実行する。具体的には、制御装置50は、熱電発電装置10及び熱回収器20への排気の供給流路の分岐部に介装されたロータリー型三方弁のアクチュエータとしての電動機(図示せず)を制御してロータ41を回転させることにより、以下の(1’)乃至(4’)に列挙する制御を実行する。
(1’)冷媒温度が所定の下限温度未満であると判定される場合は、切り替え機構40を制御して熱回収器20への排気の供給流路を開く(図5の(a)又は(c)を参照)。
(2’)冷媒温度が所定の上限温度以上であると判定される場合は、切り替え機構40を制御して熱回収器20への排気の供給流路を閉じ且つ熱電発電装置10への排気の供給流路を開く(図5の(b)を参照)。
(3’)冷媒温度及び発電電力に基づき、熱電発電装置10における排気と冷却媒体との温度差が所定の上限温度差未満であると判定される場合は、切り替え機構40を制御して熱電発電装置10への排気の供給流路を開く(図5の(a)又は(b)を参照)。
(4’)温度差が上限温度差以上であると判定される場合は、切り替え機構40を制御して熱電発電装置10への排気の供給流路を閉じ且つ熱回収器20への排気の供給流路を開く(図5の(c)を参照)。
ロータ41が図5の(d)に示す状態にある場合、即ち、熱電発電装置10への排気の供給流路及び熱回収器20への排気の供給流路の両方が閉じられている場合、内燃機関から排出される排気の排出経路が遮断されてしまう。従って、制御装置50は、上記(1’)乃至(4’)に示したように、ロータ41が図5の(d)に示す状態にはならないように、切り替え機構40を制御する。
次に、図6は第4システムの構成のもう1つの具体例を示す模式的な断面図である。図6に示す第4システム402は、温度検出手段51及び電力検出手段52を更に備える点並びにこれらの検出手段による検出結果に応じて熱電発電装置10による熱電変換及び熱回収器20による熱交換の実施と非実施とを自動的且つ独立に切り替えるように制御装置50が構成されている点を除き、図4を参照しながら上述した第3システム302と同様の構成を有する。また、第4システム402が備える制御装置50が実行する制御は、上述した(1)乃至(4)及び(1’)乃至(4’)に列挙する制御と同様である。従って、第4システム402の構成及び第4システム402が備える制御装置50が実行する制御についての説明は割愛する。
尚、第4システム402においては、第3システム302と同様に、切り替え機構40として、熱電発電装置10及び熱回収器20への排気の供給流路の分岐部において所定の軸の周りに回転可能に配設された仕切板状の弁体42を備える切り替え弁を採用している。従って、第4システム401とは異なり、熱電発電装置10への排気の供給流路及び熱回収器20への排気の供給流路の両方が閉じられてしまって内燃機関から排出される排気の排出経路が遮断されてしまう虞は無い。
尚、上述した図5及び図6に示した構成はあくまでも第4システムの構成の模式的な例示に過ぎず、各構成要素の配置、排気及び冷却媒体の流れる方向、並びに制御装置によって実行される制御の具体的内容等、第4システムの構成及び動作の詳細については、上述した構成要件を満たす限り、これらの例示に限定されない。
《第5実施形態》
以下、本発明の第5実施形態に係る排気熱回収システム(以降、「第5システム」と称される場合がある。)について説明する。
上述したように、冷媒温度が所定の上限温度以上であると判定される場合は、熱回収器への排気の供給流路を閉じて熱回収器への排気の供給を停止することが望ましい。また、熱電発電装置における排気と冷却媒体との温度差が所定の上限温度差以上であると判定される場合は、熱電発電装置への排気の供給流路を閉じて熱電発電装置への排気の供給を停止することが望ましい。
従って、冷媒温度が所定の上限温度以上であり且つ熱電発電装置における排気と冷却媒体との温度差が所定の上限温度差以上であると判定される場合は、熱回収器への排気の供給流路及び熱電発電装置への排気の供給流路の両方を閉じることが望ましい。しかしながら、上述した第3システム及び第4システムにおいて熱回収器への排気の供給流路及び熱電発電装置への排気の供給流路の両方を閉じると、内燃機関から排出される排気の排出経路が遮断されてしまう。
そこで、第5システムにおいては、排気熱回収ユニットを経由しない排気の流路であるバイパス流路が更に設けられ、切り替え機構を制御して熱電発電装置、熱回収器及びバイパス流路への排気の供給を切り替えるように制御装置が構成されている点を除き、上述した第3システムと同様の構成を有する排気熱回収システムである。
具体的には、第5システムは、本発明に係る排気熱回収ユニット(本発明ユニット)を経由しない排気の流路であるバイパス流路を更に備える。このようなバイパス流路は、第5システムに含まれる本発明ユニットが備える熱電発電装置及び熱回収器との熱の授受を実質的に伴わずに排気を排出することができる排気の流路である限り、特に限定されない。
更に、第5システムにおいては、排気熱回収ユニットを構成する熱電発電装置及び熱回収器並びにバイパス流路への排気の供給流路の開閉を互いに独立に切り替えるように、切り替え機構が構成されている。このような切り替え機構の構成は、熱電発電装置への排気の供給流路、熱回収器への排気の供給流路及び上記バイパス流路への排気の供給流路の開閉を互いに独立に切り替えることが可能である限り、特に限定されない。切り替え機構の具体例としては、第3システムについて上述したように、例えば、熱電発電装置、熱回収器及びバイパス流路への排気の供給流路にそれぞれ介装された弁及び当該供給流路の熱電発電装置、熱回収器及びバイパス流路への分岐部に介装された四方弁等を挙げることができる。また、これらの弁は、例えば電動機等のアクチュエータによって開閉を切り替えたり、開度を調整したりすることができる。
加えて、切り替え機構を制御して熱電発電装置、熱回収器及びバイパス流路への排気の供給を切り替えるように、制御装置が構成されている。このような制御装置の構成は、切り替え機構を制御して熱電発電装置、熱回収器及びバイパス流路への排気の供給を切り替えることが可能である限り、特に限定されない。制御装置の具体例としては、例えば、上述したような電子制御回路(ECU)等を挙げることができる。ECUを構成するCPUは、メモリ(ROM)に格納されたインストラクション(ルーチン)を実行することにより、内燃機関及び排気熱回収ユニットの状態に応じて切り替え機構を制御して熱電発電装置及び熱回収器への排気の供給を切り替える。
以上のように、第5システムによれば、ユニットの大型化及び複雑化を低減しつつ、内燃機関及び排気熱回収ユニットの状態に応じて、熱回収器による熱交換及び熱電発電装置による熱電変換の実施と非実施とを、それぞれ独立に切り替えることができる。加えて、第5システムによれば、冷媒温度が所定の上限温度以上であり且つ熱電発電装置における排気と冷却媒体との温度差が所定の上限温度差以上であると判定される場合等において熱回収器への排気の供給流路及び熱電発電装置への排気の供給流路の両方を閉じても、内燃機関から排出される排気の排出経路をバイパス流路によって確保することができる。
ここで、図面を参照しながら第5システムの構成について説明する。図7は第5システムの構成の1つの具体例を示す模式的な断面図である。図7に示す第5システム501は、以下の点を除き、図3を参照しながら上述した第3システム301と同様の構成を有する。
第5システム501は、第1ユニット101を経由しない排気の流路であるバイパス流路60を更に備える。図7に示した例においては、バイパス流路60は、図示しない内燃機関から排出される排気が流れる流路が内部に形成された排気管である。熱電発電装置10に排気を供給する排気流路11と、熱回収器20に排気を供給する排気流路21と、バイパス流路60と、は互いに並列に配設されている。尚、図7においても、排気の流れは白抜きの矢印によって示されている。
更に、第5システム501においては、第1ユニット101を構成する熱電発電装置10及び熱回収器20並びにバイパス流路60への排気の供給流路の開閉を互いに独立に切り替えるように、切り替え機構40が構成されている(格子が施された円として示す領域)。尚、図7においては切り替え機構40の具体的な構成は省略したが、切り替え機構40の構成の具体例については後述する実施例において詳細に説明する。
加えて、第5システム501においては、切り替え機構40を制御して熱電発電装置10、熱回収器20及びバイパス流路60への排気の供給を切り替えるように、制御装置50が構成されている。図7に示した例においては、制御装置50は、切り替え機構40を構成する弁体(図示せず)を回転させるアクチュエータとしての電動機(図示せず)への電源供給を制御して、熱電発電装置10、熱回収器20及びバイパス流路60への排気の供給流路の開閉を切り替えることができる。
次に、図8は第5システムの構成のもう1つの具体例を示す模式的な断面図である。図8に示す第5システム502は、第1ユニット101に代えて第1ユニット102を備える点を除き、図7を参照しながら上述した第5システム501と同様の構成を有する。従って、第5システム502の詳細についての説明は割愛する。
尚、上述した図7及び図8に示した構成はあくまでも第5システムの構成の模式的な例示に過ぎず、各構成要素の配置、排気及び冷却媒体の流れる方向、並びに制御装置によって実行される制御の具体的内容等、第5システムの構成及び動作の詳細については、上述した構成要件を満たす限り、これらの例示に限定されない。
《第6実施形態》
以下、本発明の第6実施形態に係る排気熱回収システム(以降、「第6システム」と称される場合がある。)について説明する。
上述したように、第5システムによれば、ユニットの大型化及び複雑化を低減しつつ、内燃機関及び排気熱回収ユニットの状態に応じて、熱回収器による熱交換及び熱電発電装置による熱電変換の実施と非実施とを、それぞれ独立に切り替えることができる。加えて、第5システムによれば、冷媒温度が所定の上限温度以上であり且つ熱電発電装置における排気と冷却媒体との温度差が所定の上限温度差以上であると判定される場合等において熱回収器への排気の供給流路及び熱電発電装置への排気の供給流路の両方を閉じても、内燃機関から排出される排気の排出経路をバイパス流路によって確保することができる。
第6システムは、その時々の内燃機関及び排気熱回収ユニットの状態を所定の検出手段によって検出し、その結果に応じて、熱回収器による熱交換及び熱電発電装置による熱電変換の実施と非実施とを、制御装置によって自動的に、それぞれ独立に切り替えることができるように構成される。更に、第6システムは、熱回収器への排気の供給流路及び熱電発電装置への排気の供給流路の両方を閉じる場合には、制御装置によって自動的に、内燃機関から排出される排気の排出経路をバイパス流路によって確保するように構成される。
具体的には、第6システムは、温度検出手段と、電力検出手段と、を更に備える点を除き、上述した第5システムと同様の構成を有する排気熱回収システムである。温度検出手段は、内燃機関から流出する冷却媒体の温度である冷媒温度を検出するように構成されている。電力検出手段は、熱電発電装置によって発電される電力である発電電力を検出するように構成されている。このような温度検出手段及び電力検出手段の構成については、上述した第3システムに関する説明において既に述べたので、ここでの説明は割愛する。
更に、第6システムにおいて、制御装置は、以下に列挙する(5)乃至(9)に示す制御を実行するように構成されている。
(5)冷媒温度が所定の下限温度未満であると判定される場合は、切り替え機構を制御して熱回収器への排気の供給流路を開く。ここで言う「所定の下限温度」については、第4システムに関する説明において既に述べたので、ここでの説明は割愛する。上述したように、冷媒温度が下限温度に到達していない(即ち、冷媒温度が下限温度未満である)場合、熱回収器による熱交換(熱回収)を実施して冷媒温度を高めることが望ましい。そこで、制御装置は、切り替え機構を制御して熱回収器への排気の供給流路を開き、熱回収器による熱交換を実施する。
(6)冷媒温度が所定の上限温度以上であると判定される場合は切り替え機構を制御して熱回収器への排気の供給流路を閉じる。ここで言う「所定の上限温度」についても、第4システムに関する説明において既に述べたので、ここでの説明は割愛する。冷媒温度が上限温度に到達している(即ち、冷媒温度が上限温度以上である)場合、熱回収器による熱交換(熱回収)を停止して冷媒温度の更なる上昇を低減することが望ましい。そこで、制御装置は、切り替え機構を制御して熱回収器への排気の供給流路を閉じる。
(7)冷媒温度及び発電電力に基づき、熱電発電装置における排気と冷却媒体との温度差が所定の上限温度差未満であると判定される場合は、切り替え機構を制御して熱電発電装置への排気の供給流路を開く。上記「熱電発電装置における排気と冷却媒体との温度差」及び「所定の上限温度差」については、第4システムに関する説明において既に述べたので、ここでの説明は割愛する。上記温度差が上限温度差に到達していない(即ち、上記温度差が所定の上限温度差未満である)場合、熱電発電装置による熱電変換を実施しても上述したような熱電変換素子の破損が発生する可能性は低い。従って、この場合、省エネルギーの観点からは、熱電発電装置による熱電変換を実施することが望ましい。そこで、制御装置は、切り替え機構を制御して熱電発電装置への排気の供給流路を開き、熱電発電装置による熱電変換を実施する。
(8)上記温度差が上記上限温度差以上であると判定される場合は前記切り替え機構を制御して前記熱電発電装置への前記排気の供給流路を閉じる。上記温度差が上記上限温度差に到達している(即ち、上記温度差が上限温度差以上である)場合、熱電発電装置への排気の供給を実施又は継続すると、上述したような熱電変換素子の破損が発生する可能性が高い。従って、この場合、熱電発電装置への排気の供給を停止して上記温度差の更なる増大を低減することが望ましい。そこで、制御装置は、切り替え機構を制御して熱電発電装置への排気の供給流路を閉じる。
(9)熱回収器への排気の供給流路及び熱電発電装置への排気の供給流路の両方を同時に閉じる場合は、切り替え機構を制御してバイパス流路への排気の供給流路を開く。当然のことながら、内燃機関から排出される排気の全ての排出流路が遮断されてしまうと当該内燃機関の運転を継続することはできない。そこで、制御装置は、上記(5)乃至(8)に列挙した制御の結果として熱回収器への排気の供給流路及び熱電発電装置への排気の供給流路の両方を同時に閉じることとなる場合、バイパス流路への排気の供給流路を開く。当然のことながら、このときバイパス流路への排気の供給流路が既に開いている場合は、制御装置によってバイパス流路への排気の供給流路を改めて開く必要は無い。
上記(9)に示した制御により、上記(5)乃至(8)に列挙した制御の結果として熱回収器への排気の供給流路及び熱電発電装置への排気の供給流路の両方を同時に閉じることとなる場合においても、内燃機関から排出される排気の排出経路をバイパス流路によって確保することができる。
以上のように、第6システムによれば、その時々の内燃機関及び排気熱回収ユニットの状態を所定の検出手段によって検出し、その結果に応じて、熱回収器による熱交換及び熱電発電装置による熱電変換の実施と非実施とを、制御装置によって自動的に、それぞれ独立に切り替えることができる。
上記に加えて、第6システムによれば、冷媒温度が所定の上限温度以上であり且つ熱電発電装置における排気と冷却媒体との温度差が所定の上限温度差以上であると判定される場合等において熱回収器への排気の供給流路及び熱電発電装置への排気の供給流路の両方を閉じても、制御装置によって自動的に、内燃機関から排出される排気の排出経路をバイパス流路によって確保することができる。
ここで、図面を参照しながら第6システムの構成について説明する。図9は第6システムの構成の1つの具体例を示す模式的な断面図である。図9に示す第6システム601は、以下の(A)乃至(C)に列挙する点を除き、図7を参照しながら上述した第5システム501と同様の構成を有する。
(A)温度検出手段51及び電力検出手段52を更に備える。上述した第5システム501に関する説明において既に述べたように、温度検出手段51は、図示しない内燃機関から流出する冷却媒体の温度である冷媒温度を検出するように構成されている。また、電力検出手段52は、熱電発電装置10によって発電される電力である発電電力を検出するように構成されている。
(B)温度検出手段51及び電力検出手段52による検出結果に応じて熱電発電装置10による熱電変換及び熱回収器20による熱交換の実施と非実施とを自動的且つ独立に切り替えるように制御装置50が構成されている。具体的には、制御装置50は、上述した(5)乃至(8)に列挙する制御を実行する。
(C)熱電発電装置10への排気の供給流路及び熱回収器20への排気の供給流路の両方を閉じる場合にはバイパス流路60への排気の供給流路を自動的に開くように制御装置50が構成されている。具体的には、制御装置50は、上述した(9)に示す制御を実行する。
次に、図10は第6システムの構成のもう1つの具体例を示す模式的な断面図である。図10に示す第6システム602は、第1ユニット101に代えて第1ユニット102を備える点を除き、図9を参照しながら上述した第6システム601と同様の構成を有する。従って、第6システム602の詳細についての説明は割愛する。
尚、上述した図9及び図10に示した構成はあくまでも第6システムの構成の模式的な例示に過ぎず、各構成要素の配置、排気及び冷却媒体の流れる方向、並びに制御装置によって実行される制御の具体的内容等、第6システムの構成及び動作の詳細については、上述した構成要件を満たす限り、これらの例示に限定されない。
以上、本発明の種々の実施形態に係る排気熱回収ユニット及び排気熱回収システムについて説明してきたが、本発明の代表的な実施例に係る排気熱回収ユニットにつき、図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
〔構成〕
図11は、本発明の実施例1に係る排気熱回収ユニット(以降、「第1実施例ユニット101e」と称される)の使用時の姿勢(例えば、車両搭載時の姿勢等)における当該ユニットの上面図(平面図)である。第1実施例ユニット101eは、上述した第1ユニット101及び/又は102に対応する排気熱回収ユニットである。
第1実施例ユニット101eを構成する熱電発電装置10及び熱回収20器並びに冷却媒体の流路である冷媒流路31はハウジング30内に収納されている。図11において、排気は、第1実施例ユニット101eの紙面に向かって左側から導入され、右側へと排出される(白抜きの矢印を参照)。冷却媒体は、第1実施例ユニット101eの紙面に向かって右下側に設けられた冷媒流路の導入部31aからハウジング30内に導入され、左上側に設けられた冷媒流路の導出部31bを介してハウジング30内から上側へと排出される(斜線が施された矢印を参照)。
図12は、第1実施例ユニット101eを排気の流れの上流側から見たときの正面図である。冷却媒体は、ハウジング30の紙面に向かって右下側に設けられた冷媒流路の導入部31aからハウジング30内に導入され、左上側に設けられた冷媒流路の導出部31bを介してハウジング30内から上側へと排出される(斜線が施された矢印を参照)。排気は、排気流路11により熱電発電装置10の高熱源側へと導入され、及び/又は、排気流路21により熱回収器20の高熱源側へと導入される。図12に示した例においては、排気からの受熱効率を高めることを目的として、排気流路11及び21の内部に波板状のフィン11f及び21fがそれぞれ形成されている。
図13は、第1実施例ユニット101eを排気の流れに対して右側から(即ち、図11に示す矢印Aの方向から)見たときの側面図である。但し、図13においては、第1実施例ユニット101eのハウジング30が図1に示した線A−Aを含む平面によって切り取られた状態を示している。
図13に示されるように、紙面に向かって下側に熱電発電装置10が、紙面に向かって上側に熱回収器20が、それぞれ配置され、それらが共通のハウジング30内に収納されている。図13に示した熱電発電装置10は3つのケース13によって構成されており、各々のケース13の内部には排気流路11及び熱電変換素子12(図示せず)が収納されている。即ち、熱電発電装置10は3系統の熱電発電部を備えている。熱回収器20は2つのケース23によって構成されており、各々のケース23の内部には排気流路21が収納されている。即ち、熱回収器20は2系統の熱回収部を備えている。尚、ケース23と排気流路21とは必ずしも別個の部材である必要は無く、排気流路21がケース23を兼ねていてもよい。即ち、排気流路21及びケース23が一体的に形成されていてもよい。
図14は、図11に示した線A−Aを含む平面による第1実施例ユニット101eの断面図である。(a)に示すように、第1実施例ユニット101eは、3系統の熱電発電部10pを備える熱電発電装置10と、2系統の熱回収部20pを備える熱回収器20と、によって構成されている。また、(b)に示すように、個々の熱電発電部10pは、ケース13の内部に収納された排気流路11及び熱電変換素子12を備える。更に、(c)に示すように、個々の熱回収部20pは、ケース23の内部に収納された排気流路21を備える。
ケース13及びケース23の表面には、外側に突出するディンプル13d及び23dがエンボス加工によってそれぞれ形成されている。第1実施例ユニット101eは、3系統の熱電発電部10p及び2系統の熱回収部20pが積層されることによって構成されている。この状態において、上記ディンプル同士が当接して隣接するケースの間に空隙を形成する。第1実施例ユニット101eにおいては、当該間隙によって冷媒流路31を構成している。また、このようにして構成される冷媒流路31はハウジング30内において連通している。
尚、隣接するケースの間に空隙を形成するための方策は上記に限定されず、例えば、別個の部材をケースの表面に取り付けることによりディンプルを形成してもよく、或いは、隣接するケースの間にスペーサを介在させてもよい。
〔効果〕
第1実施例ユニット101eによれば、上記構成により高熱源である排気流路11と低熱源である冷媒流路31との間に熱電変換素子12を介在させて熱電発電装置10を集成することにより、効率の良い熱電発電を実現することができる。一方、熱回収器20においては、排気流路21と冷媒流路31とが交互に隣接して形成されるので、排気と冷却媒体との間での熱交換効率を高め、効率の良い熱回収を実現することができる。
更に、熱電発電装置10と熱回収器20とを並列に配置しているので、ユニットの大型化及び複雑化を低減することができると共に、排気流路の全長を短くすることができるので排気の圧力損失を低減することができる。また、上述したような切り替え機構を第1実施例ユニット101eの上流側に設けることにより、熱回収器による熱交換(暖機)及び熱電発電装置による熱電変換(発電)の実施と非実施とをそれぞれ独立に切り替えることができる。
加えて、第1実施例ユニット101eにおいては、使用時の姿勢にあるハウジング30内において、冷却媒体が鉛直方向における下側からハウジング30内に導入され、鉛直方向における上側から導出されるように、冷媒流路31が構成されている。一方、ハウジング30内において、熱電発電装置10は鉛直方向における下側に、熱回収器20は鉛直方向における上側に配置されている。これにより、冷却媒体が熱回収器20よりも先に熱電発電装置10に到達するので、熱電発電装置10による発電効率を高めることができる。その後、ある程度加熱された冷却媒体が熱回収器20に到達することとなるが、熱回収器20における排気と冷却媒体との温度差は依然として大きいので、熱回収器20において十分に高い熱回収効率を達成することができる。
次に、本発明のもう1つの代表的な実施例に係る排気熱回収システムにつき、図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
〔構成〕
図15は、本発明の実施例2に係る排気熱回収システム(以降、「第2実施例システム301e」と称される)の使用時の姿勢(例えば、車両搭載時の姿勢等)における当該システムの断面図である。第2実施例システム301eは、上述した第3システム301及び/又は302に対応する排気熱回収システムである。
第2実施例システム301eは、上述した第1実施例ユニット101eと、切り替え機構40と、制御装置50と、を備える排気熱回収システムである。第2実施例システム301eにおける切り替え機構40は、前述した第3システム302と同様に、熱電発電装置10及び熱回収器20への排気の供給流路の熱電発電装置10及び熱回収器20への分岐部において所定の軸の周りに回転可能に配設された仕切板状の弁体42を備える。前述したように、制御装置(ECU)50によりアクチュエータとしての電動機(図示せず)を制御して弁体42を回転させることにより、熱電発電装置10及び熱回収器20への排気の供給流路の開閉を互いに独立に切り替えることができる。
例えば内燃機関の冷間始動時等において冷媒温度が所定の下限温度未満であり当該内燃機関の暖機が必要であると判断される場合は、図15に示すように熱電発電装置10への排気の供給流路を閉じるように弁体42を回転させる。これにより、熱回収器20のみに排気を供給して、排気から冷却媒体への熱の移動(受熱)を優先的に実施することができる。
また、熱電発電装置10による熱電変換と熱回収器20による熱交換とを並行して実施する場合は、図16に示すように熱電発電装置10及び熱回収器20の両方への排気の供給流路を開くように弁体42を回転させる。これにより、熱電発電装置10及び熱回収器20の両方へ排気を供給して、熱電発電装置10による熱電変換と熱回収器20による熱交換とを並行して実施することができる。
更に、例えば内燃機関が十分に暖機されており冷媒温度が所定の下限温度以上であり熱電発電装置10による熱電変換を重点的に実施したい場合及び冷媒温度が所定の上限温度以上であり冷媒温度の更なる上昇を回避したい場合等においては、図17に示すように熱回収器20への排気の供給流路を閉じるように弁体42を回転させる。これにより、熱電発電装置10のみに排気を供給して、熱電発電装置10による熱電変換(発電)を優先的に実施することができる。
〔効果〕
以上のように、第2実施例システム301eによれば、ユニットの大型化及び複雑化を低減しつつ、内燃機関及び排気熱回収ユニットの状態に応じて、熱回収器による熱交換及び熱電発電装置による熱電変換の実施と非実施とを、それぞれ独立に切り替えることができる。尚、前述した第4システムのように予め定められた条件に従って制御装置50により、熱回収器による熱交換及び熱電発電装置による熱電変換の実施と非実施とを自動的に切り替えるようにしてもよい。
〔実施例2の変形例〕
上記第2実施例システム301eは、熱回収器による熱交換及び熱電発電装置による熱電変換の実施と非実施とを、それぞれ独立に切り替え可能に構成した。しかしながら、熱電発電装置による熱電変換は常に実施し、熱回収器による熱交換の実施と非実施のみを切り替え可能に構成することもできる。そこで、このような本発明の実施例2の変形例に係る排気熱回収システム(以降、「第2実施例システム302e」と称される)につき、図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
〔構成〕
図18は、第2実施例システム302eの使用時の姿勢における断面図である。図18に示すように、第2実施例システム302eは、弁体42によって熱電発電装置10への排気の供給流路を閉じることができないように切り替え機構40が構成されている点を除き、上述した第2実施例システム301eと同様の構成を有する。
例えば内燃機関の冷間始動時等において冷媒温度が所定の下限温度未満であり当該内燃機関の暖機が必要であると判断される場合は、図18に示すように切り替え機構40によって熱回収器20への排気の供給流路を開いて、熱電発電装置10による熱電変換と熱回収器20による熱交換とを並行して実施することができる。
一方、例えば内燃機関が十分に暖機されており冷媒温度が所定の下限温度以上であり熱電発電装置10による熱電変換を重点的に実施したい場合及び冷媒温度が所定の上限温度以上であり冷媒温度の更なる上昇を回避したい場合等においては、図19に示すように、熱回収器20への排気の供給流路を閉じて、熱電発電装置10による熱電変換のみを優先的に実施することができる。
〔効果〕
以上のように、第2実施例システム302eによっても、ユニットの大型化及び複雑化を低減しつつ、内燃機関及び排気熱回収ユニットの状態に応じて、熱回収器による熱交換及び熱電発電装置による熱電変換の実施と非実施とを、それぞれ独立に切り替えることができる。尚、この場合も、前述した第4システムのように予め定められた条件に従って制御装置50により、熱回収器による熱交換及び熱電発電装置による熱電変換の実施と非実施とを自動的に切り替えるようにしてもよい。
次に、本発明の更にもう1つの代表的な実施例に係る排気熱回収システムにつき、図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
〔構成〕
図20は、本発明の実施例3に係る排気熱回収システム(以降、「第3実施例システム501e」と称される)の使用時の姿勢(例えば、車両搭載時の姿勢等)における当該システムの断面図である。第3実施例システム501eは、上述した第5システム501及び/又は502に対応する排気熱回収システムである。
第3実施例システム501eは、上述した第1実施例ユニット101eと、切り替え機構40と、制御装置50と、第1実施例ユニット101eを経由しない排気の流路であるバイパス流路60と、を備える排気熱回収システムである。
図20に示すように、切り替え機構40を構成する弁体42は、熱電発電装置10、熱回収器20及びバイパス流路60への排気の供給流路の開閉を必要に応じて切り替えるように設計された形状を有する。尚、弁体42の具体的な形状は、熱電発電装置10、熱回収器20及びバイパス流路60への排気の供給流路の形状並びに実現しようとする熱電発電装置10、熱回収器20及びバイパス流路60への排気の供給流路の開閉パターンに応じて適宜設計される。
図20に示すようにバイパス流路60への排気の供給流路を閉じるように弁体42を回転させることにより、熱電発電装置10及び熱回収器20の両方に排気を供給して、熱電発電装置10による熱電変換と熱回収器20による熱交換とを並行して実施することができる。
また、図21に示すように熱回収器20及びバイパス流路60への排気の供給流路を閉じるように弁体42を回転させることにより、熱電発電装置10のみに排気を供給して、熱電発電装置10による熱電変換のみを実施することができる。
更に、図22に示すように熱回収器20への排気の供給流路のみを閉じるように弁体42を回転させることにより、熱電発電装置10及びバイパス流路60に排気を供給して、熱電発電装置10による熱電変換を実施しつつ、排気の一部については第1実施例ユニット101eを経由すること無くバイパス流路60を介して排出することができる。
加えて、熱電発電装置10による熱電変換及び熱回収器20による熱交換の何れも実施する必要が無い場合は、図23に示すように熱電発電装置10及び熱回収器20への排気の供給流路を両方とも閉じるように弁体42を回転させることにより、バイパス流路60のみに排気を供給して、第1実施例ユニット101eを経由すること無くバイパス流路60のみを介して全ての排気を排出することができる。
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び変形例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び変形例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。