以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。以下で説明する形状、材料、及び個数は、説明のための例示であって、被固定部材付パイプの仕様に応じて適宜変更することができる。以下では、被固定部材付パイプを構成するパイプ部材が、車両のインストルメントパネル内に配置されるインパネレインフォースメントである場合を説明する。一方、パイプ部材は、これに限定するものではなく、種々の構造に適用できる。以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。また、本文中の説明においては、必要に応じてそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
図1は、実施形態の被固定部材付パイプの製造方法において製造する被固定部材付パイプ10を示す図である。この製造方法を説明する前に、被固定部材付パイプ10の構造を説明する。
被固定部材付パイプ10は、パイプ部材12と、パイプ部材12の外側から固定される複数のパイプ被固定部材とを備える。パイプ部材12は、インパネレインフォースメントである。インパネレインフォースメントは、車両のインストルメントパネル内において、車両幅方向に沿って配置される。インストルメントパネルは、インパネレインフォースメントに組み付けられる。
図1では、複数のパイプ被固定部材として、運転席側エクステンション20、ステアリングサポート22、カウルブレース26、助手席側エクステンション27、2つの外側ブラケット28,29が、パイプ部材12に固定されている。以下では、運転席側はD側、助手席側はP側と記載する場合がある。上記の複数のパイプ被固定部材は、パイプ部材12の内側に配置した電磁コイルを用いた電磁成形によって、パイプ部材12の外側に固定される。
パイプ部材12は、アルミニウム合金等の電気伝導度の高い金属により長尺円環状に形成される。これにより、パイプ部材12の内側に後述のように電磁コイルを配置し、この電磁コイルに通電することにより、パイプ部材12の変形による電磁成形を行いやすい。
パイプ部材12は、運転席側(D側)である一端側(図1の左側)に配置される長尺円筒状のD側パイプ素子14と、D側パイプ素子14の他端部(図1の右端部)に嵌合されて結合され、軸方向他方側に伸びて配置される長尺円筒状のP側パイプ素子16とを含む。D側パイプ素子14は、第1パイプ素子に相当し、P側パイプ素子16は、第2パイプ素子に相当する。後述の図2に示すように、D側パイプ素子14の軸方向他端部(図2の右端部)の内側には、P側パイプ素子16の軸方向一端部(図2の左端部)が嵌合され、電磁成形によってカウルブレース26とともにかしめ固定される。本実施形態では、D側パイプ素子14の全長は、P側パイプ素子16の全長より短い。また、D側パイプ素子14及びP側パイプ素子16の嵌合部以外の部分において、D側パイプ素子14は、P側パイプ素子16より外径及び内径がそれぞれ大きい。
D側エクステンション20は、パイプ部材12において、運転席側である一方側の端部の外側に固定される。P側エクステンション27は、パイプ部材12において、助手席側である他方側の端部の外側に固定される。D側、及びP側エクステンション20,27は、ボルト及びナット等の締結部材により、車体フレーム(図示せず)に固定される。D側の外側ブラケット28は、パイプ部材12の外側において、D側エクステンション20の軸方向他方側に隣り合うように固定される。P側の外側ブラケット29は、パイプ部材12の外側において、P側エクステンション27の軸方向一方側に隣り合うように固定される。
ステアリングサポート22は、D側パイプ素子14の軸方向中間部の外側に固定される。図1に戻って、ステアリングサポート22は、本体部23と、本体部23に分岐するように連結された2つの脚部24,25とを含み、各脚部24,25がD側パイプ素子14に固定される。ステアリングサポート22には、ステアリングシャフトを支持するためのステアリングコラム(図示せず)が固定される。
カウルブレース26は、インストルメントパネルの内側に配置される部材(図示せず)に連結される。
上記の被固定部材付パイプ10は、パイプ部材12の外側に、D側エクステンション20、ステアリングサポート22等の複数のパイプ被固定部材が電磁成形によって固定されることにより形成される。このとき、比較例の方法として、パイプ部材12に1つのパイプ被固定部材を固定する毎にそのパイプ被固定部材の固定位置におけるパイプ部材12の内側に電磁コイルを配置し、その電磁コイルにパルス通電しパイプ部材12をかしめる方法が考えられる。そして、パイプ被固定部材を固定する毎にその方法を繰り返す。しかしながら、その方法では、被固定部材付パイプの製造時間が長くなるため、被固定部材付パイプの製造コストの増大を招く可能性がある。
一方、別の比較例の方法として、被固定部材付パイプの製造時間を短くするために、上記の本発明の目的の前に説明したように、同時電磁成形方法でパイプ部材に複数のパイプ被固定部材を固定することも考えられる。しかしながら、この方法では、複数の電磁コイルに同時に通電しようとしても、実際には複数のかしめ部の間で通電タイミングに微小なずれが発生してしまう可能性がある。これにより、その結果的に生じた通電順序によっては、被固定部材付パイプを所望の形状に成形できないおそれがある。本実施形態の製造方法は、このような課題を解決するために発明した。
図2、図3を用いて、被固定部材付パイプ10の製造方法を説明する。図2は、被固定部材付パイプ10の製造方法を示している図1のA−A断面図である。図3は、図2の左半部の拡大図である。
被固定部材付パイプ10の製造装置38は、4つの電磁コイルである2つずつの第1電磁コイル40,41及び第2電磁コイル42,43を含む。具体的には、製造装置38は、パイプ部材12の軸方向一端から内側に挿入する第1軸部材44と、同じく軸方向他端から内側に挿入する第2軸部材50と、電力供給装置60とを含む。第1軸部材44は、樹脂45により形成された長尺な円柱の軸状であり、軸方向に離れた2つの位置の内側に第1電磁コイル40,41が樹脂45により包埋されている。第2軸部材50は、樹脂51により形成された長尺な円柱の軸状であり、軸方向に離れた2つの位置の内側に第2電磁コイル42,43が樹脂51により包埋されている。
第1軸部材44は、D側パイプ素子14の内側に配置され、第2軸部材50は、P側パイプ素子16の内側に配置される。第1軸部材44は、D側パイプ素子14とP側パイプ素子16との長さの関係に応じて、第2軸部材50より短い。また、D側パイプ素子14の内径がP側パイプ素子16の内径より大きいことに応じて、第1軸部材44の外径は第2軸部材50の外径より大きい。
また、第1軸部材44の軸方向他端面(図2、図3の右端面)の中心部には、凹部46が形成される。この凹部46には、第2軸部材50の軸方向一端面(図2、図3の左端面)が挿入されて突き当てられる。第2軸部材50の軸方向一端面の外周部には断面円弧形の面取りが形成される。これに応じて、凹部46の底面と内周面との連続部にも断面円弧形の面取りが形成される。これにより、第1軸部材44及び第2軸部材50を突き当てる場合に、第2軸部材50の面取りが第1軸部材44の他端面の凹部開口端に引っかかりにくくなり、各軸部材44,50の中心軸を一致させやすい。
図2、図3では、第1軸部材44及び第2軸部材50の外径がD側パイプ素子14及びP側パイプ素子16の内径とほぼ一致するように示している。一方、実際には、各パイプ素子14,16の内側で、対応する軸部材44,50の軸方向へのスムーズな移動を可能とするために、第1軸部材44及び第2軸部材50のそれぞれと、対応するパイプ素子14,16との間には、直径方向の隙間が形成される。このことは、後述の図4、図5の構成においても同様である。
上記のように第1軸部材44の凹部46には第2軸部材50の軸方向一端面を突き当てる。この状態で、2つの第1電磁コイル40,41の一方の電磁コイル40は、D側エクステンション20及びD側の外側ブラケット28の固定位置におけるD側パイプ素子14の内側に位置するように、第1軸部材44に固定される。また、この状態で、2つの第1電磁コイル40,41の他方の電磁コイル41は、ステアリングサポート22の各脚部24,25の固定位置におけるD側パイプ素子14の内側に位置するように、第1軸部材44に固定される。
また、この状態で、2つの第2電磁コイル42,43の一方の第2電磁コイル42は、カウルブレース26の固定位置におけるP側パイプ素子16の内側に位置するように、第2軸部材50に固定される。また、この状態で、2つの第2電磁コイル42,43の他方の第2電磁コイル43は、P側エクステンション27及びP側の外側ブラケット29の固定位置におけるP側パイプ素子16の内側に位置するように、第2軸部材50に固定される。
電力供給装置60(図2)は、第1電源部61及び第2電源部62と、制御部63と、4つの放電スイッチ64,65,66,67とを含む。第1電源部61は、各第1電磁コイル40,41に電力を供給するものであり、バッテリ等の直流高圧電源、充電スイッチ、及びコンデンサを含む。第1電源部61は、2つの放電スイッチ64,65を介して2つの第1電磁コイル40,41に接続される。各放電スイッチ64,65がオフされ、充電スイッチがオンされることで直流高圧電源からコンデンサに大電荷が蓄積されてコンデンサが充電される。各充電スイッチがオフされ、放電スイッチ64,65のいずれかがオンされることでコンデンサから大きなパルス電流が、対応する第1電磁コイル40,41に出力される。直流高圧電源は、商用交流電源から供給された交流電力を直流電流に変換するAC/DC変換部を有する構成としてもよい。
第2電源部62は、各第2電磁コイル42,43に電力を供給するものであり、その構成及び機能は、第1電源部61と同様である。第2電源部62は、2つの放電スイッチ66,67を介して2つの第2電磁コイル42,43に接続される。
制御部63は、各電源部61,62の充電スイッチ、及び各放電スイッチ64,65,66,67を制御する。制御部63は、演算処理部、メモリ等の記憶部、及び、I/Oインターフェースなどを備えるマイクロコンピュータによって好適に構成される。制御部63は、記憶部に記憶されたプログラム、データ等を読み出して、所定の動作を実行する。制御部63がプログラムを実行することによって、各放電スイッチ64,65,66,67及び各充電スイッチの動作が制御され、各電磁コイル40,41,42,43に、後述のように予め設定された順序でパルス通電させる。
演算処理部は、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。演算処理部は、1つまたは複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。
実施形態の製造方法は、配置ステップ及び電磁成形ステップを含む。「配置ステップ」は、パイプ部材12の複数のパイプ被固定部材についての軸方向の複数の固定位置におけるパイプ部材12の外側に複数のパイプ被固定部材を配置する。複数のパイプ被固定部材は、ステアリングサポート22、D側、P側エクステンション20,27、2つの外側ブラケット28,29、及びカウルブレース26である。このとき、パイプ部材12を構成するD側パイプ素子14及びP側パイプ素子16は円筒状であり、D側パイプ素子14の他端部の内側にP側パイプ素子16の一端部が嵌合される。
各エクステンション20,27、各外側ブラケット28,29、ステアリングサポート22及びカウルブレース26は、それぞれ治具(図示せず)により固定される。各エクステンション20,27、各外側ブラケット28,29、ステアリングサポート22、及びカウルブレース26は、それぞれ円形の貫通孔を有している。D側エクステンション20、D側の外側ブラケット28、ステアリングサポート22、及びカウルブレース26の貫通孔の内側には、D側パイプ素子14が隙間を持って嵌合される。カウルブレース26の貫通孔の内側には、D側パイプ素子14及びP側パイプ素子16の嵌合部が配置される。D側パイプ素子14及びP側パイプ素子16は上記の治具(図示せず)によりパイプ被固定部材を介して支持される。このとき、D側パイプ素子14及びP側パイプ素子16は、それぞれの中心軸が径方向にずれないように、ガイド部材(図示せず)により軸方向へのスライド可能に支持することが、被固定部材付パイプ10の形状精度を高くする面からより好ましい。P側エクステンション27及びP側の外側ブラケット29の貫通孔の内側には、P側パイプ素子16の他端部(図2の右端部)が隙間を持って嵌合される。
「配置ステップ」は、これとともに、パイプ部材12の複数のパイプ被固定部材についての複数の固定位置におけるパイプ部材12の内側に、電磁コイル40,41,42,43をそれぞれ配置する。このとき、第1電磁コイル40,41を含む第1軸部材44は、パイプ部材12の外側に配置したガイドである一方側の2つのガイドローラ70(図5参照)により、パイプ部材12の内側において軸方向に沿って移動可能に配置する。また、第2電磁コイル42,43を含む第2軸部材50は、パイプ部材12の外側に配置した他方側のガイドローラ71(図5参照)により、パイプ部材12の内側において軸方向に沿って移動可能に配置する。そして、パイプ部材12の軸方向一端から内側に、第1軸部材44を挿入するとともに、パイプ部材12の軸方向他端から内側に第2軸部材50を挿入する。各軸部材44,50のパイプ部材12内への挿入時に、各電源部61,62のコンデンサが充電されてもよい。これにより、製造時間の短縮を図れる。そして、第1軸部材44及び第2軸部材50を軸方向に突き当てた状態とする。この状態で2つの第1電磁コイル40,41のうち、一方の第1電磁コイル40は、D側のエクステンション20及び外側ブラケット28についての固定位置の内側に配置される。他方の第1電磁コイル41は、ステアリングサポート22の各脚部24,25についての固定位置の内側に配置される。また、2つの第2電磁コイル42,43のうち、一方の第2電磁コイル42は、カウルブレース26についての固定位置の内側に配置される。他方の第2電磁コイル43は、P側のエクステンション27及び外側ブラケット29についての固定位置の内側に配置される。
「電磁成形ステップ」は、その後、予め設定された順序にしたがって、各電磁コイル40,41,42,43にパルス通電する。このとき、制御部63の記憶部にはその順序が記憶されている。制御部63は、電磁コイル40,41,42,43への通電がその順序にしたがうように、放電スイッチ64,65,66,67及び充電スイッチのオンオフ状態を切り換える。
図2では、電磁コイル40,41,42,43内の丸で囲んだ数字により、電磁コイル40,41,42,43への通電順序を示している。具体的には、カウルブレース26の内側の第2電磁コイル42にパルス通電し、その後、ステアリングサポート22の内側の第1電磁コイル41にパルス通電する。次いで、P側のエクステンション27及び外側ブラケット29の内側の第2電磁コイル43、D側のエクステンション20及び外側ブラケット28の内側の第1電磁コイル40の順に、パルス通電する。各電磁コイル40,41,42,43のパルス通電の後には、対応する電源部61,62の直流高圧電源からコンデンサへの充電が行われる。
これにより、パイプ部材12において、電磁コイル40,41,42,43とパイプ部材12の軸方向に一致する部分を拡径させ、パイプ部材12に複数のパイプ被固定部材を電磁成形でかしめ固定する。
このとき、複数のパイプ被固定部材についての複数の固定位置におけるパイプ部材12と複数のパイプ被固定部材との複数の結合部は、第1結合部G1と第2結合部G2、G3とを含む。第1結合部G1は、パイプ部材12とカウルブレース26との結合部であって、D側パイプ素子14とP側パイプ素子16との嵌合部の外側にカウルブレース26が結合された結合部である。第2結合部G2は、パイプ部材12とD側のエクステンション20及び外側ブラケット28との結合部である。第2結合部G3は、パイプ部材12とP側のエクステンション27及び外側ブラケット29との結合部である。第2結合部G2,G3は、D側パイプ素子14及びP側パイプ素子16のそれぞれにおいて、D側パイプ素子14及びP側パイプ素子16の嵌合部とは異なる位置にパイプ被固定部材が結合された2つの結合部である。第1結合部G1は、各第2結合部G2,G3より組立公差がきつくなりやすい、すなわち絶対値が小さくなりやすい。この理由は、第1結合部G1では、電磁成形によってD側パイプ素子14及びP側パイプ素子16の2本を変形させ、外側のD側パイプ素子14の変形部をカウルブレース26の軸方向両端にかしめ付ける必要があるためである。また、第2結合部G2,G3では2本のパイプ素子を変形させる必要がない。このために第1結合部G1では、嵌合締め代(ラップ量)を厳しく管理するように、第2結合部G2、G3より、要求される組立精度が高くなりやすい。例えば、第1結合部G1の組立公差の絶対値がC1である場合に、第2結合部G2の組立公差の絶対値はC2であり、C1はC2より小さい。
本実施形態では、パイプ部材12の内側に複数の電磁コイル40,41,42,43を配置した状態で各電磁コイルに通電することにより、パイプ部材における複数位置を拡径させ、パイプ部材12に複数のパイプ被固定部材をかしめ固定する。これにより、被固定部材付パイプ10の製造時間の短縮を図れる。また、第1結合部G1を構成するカウルブレース26を、第2結合部G2,G3を構成する各エクステンション20,27及び各外側ブラケット28,29より先に、パイプ部材12に電磁成形でかしめ固定するように、複数の電磁コイルにパルス通電する。これにより、パイプ部材12において、第2結合部G2,G3を形成する部分より先に、第1結合部G1を形成する部分が加工されるので、第1結合部G1の組立精度が高くなるように管理しやすい。また、第1結合部G1では、第2結合部G2,G3より要求される組立精度が高くなりやすい。これにより、パイプ部材12のうち、第1結合部G1を形成する部分の変形に伴って、第2結合部G2,G3を形成する部分が変形しても、その変形精度の悪化を第2結合部G2,G3で吸収しやすい。このため、被固定部材付パイプ10の形状精度を高くするように複数の電磁コイルへの通電順序を適切に設定することができ、被固定部材付パイプ10の製造時間の短縮を図りつつ、被固定部材付パイプ10を所望の形状に製造できる。
また、D側パイプ素子14には、複数のパイプ被固定部材として、D側エクステンション20及びカウルブレース26と、D側の外側ブラケット28及びステアリングサポート22とだけが電磁成形でかしめ固定される。D側エクステンション20及びカウルブレース26は、D側パイプ素子14に固定される複数のパイプ被固定部材のうち、D側パイプ素子14の両端のそれぞれの最も近くに配置される。D側エクステンション20及びカウルブレース26は、2つの端側被固定部材に相当する。D側の外側ブラケット28及びステアリングサポート22は、2つの中間被固定部材に相当する。D側パイプ素子14に隙間を持って嵌合させるようにD側エクステンション20及びカウルブレース26と、D側の外側ブラケット28及びステアリングサポート22とを治具に固定した状態とする。この状態で、D側エクステンション20及びカウルブレース26のうち、後でD側パイプ素子14に固定されるD側エクステンション20は、ステアリングサポート22よりも後であり、D側の外側ブラケット28と同時に、D側パイプ素子14に電磁成形でかしめ固定する。このような条件で複数の第1及び第2電磁コイル40,41,42,43にパルス通電する。
これにより、被固定部材付パイプ10の形状精度を高くしやすい。具体的には、被固定部材付パイプ10の製造方法は次のように行われる。次の説明で矢印は、「その後」の意味を示している。複数のパイプ被固定部材を治具で固定する。→D側パイプ素子14の他端部の内側にP側パイプ素子16の一端部を嵌合させた状態で複数のパイプ被固定部材にD側、P側パイプ素子14,16を挿通させる。→D側パイプ素子14に、2つの端側被固定部材のうち、先に固定する端側被固定部材であるカウルブレース26をかしめ固定する。→D側パイプ素子14に中間被固定部材であるステアリングサポート22をかしめ固定する。→D側パイプ素子14に、他の中間被固定部材であるD側外側ブラケット28と、2つの端側被固定部材のうち、後に固定する端側被固定部材であるD側エクステンション20とを同時にかしめ固定する。→複数のパイプ被固定部材を治具から取り外す。これにより、D側エクステンション20及びカウルブレース26のうち、後でD側パイプ素子14に固定されるD側エクステンション20は、ステアリングサポート22よりも後であり、D側の外側ブラケット28と同時に、D側パイプ素子14に電磁成形でかしめ固定される。D側パイプ素子14は、パイプ被固定部材をかしめ固定する前には、治具には固定されていない。これにより、D側の外側ブラケット28及びステアリングサポート22をD側パイプ素子14にかしめ固定する際に、D側パイプ素子14のD側エクステンション20側の端部が治具に固定されていない状態となっている。このため、かしめによりD側パイプ素子14に発生した応力を逃がすようにD側パイプ素子14の軸方向の変形(縮み)が許容される。例えば、ステアリングサポート22をD側パイプ素子14にかしめ固定する際に、D側パイプ素子14の一部が、厚みが小さくなるように拡径するが、拡径部の周方向長さが大きくなる分、拡径部の両側から材料の肉を集めるように軸方向長さが縮む傾向となる。このとき、D側パイプ素子14のD側エクステンション20側の端部がD側エクステンション20の内側でスライドして拡径部に近づくように変形することが許容されるので、かしめによりD側パイプ素子14に発生した応力を逃がすことができる。これにより、D側パイプ素子14が、治具に固定された複数のパイプ被固定部材についての複数の固定位置の間で弾性的に引っ張られた状態となることがない。このため、その後に治具からパイプ被固定部材を取り外した際に、D側パイプ素子14にD側エクステンション20及びカウルブレース26が固定された状態で、D側パイプ素子14に対する引っ張り力の解消によりD側パイプ素子14が軸方向に変形する(縮む)ことを抑制できる。この結果、D側パイプ素子14のD側エクステンション20及びカウルブレース26の間の長さを所望値にしやすいので、被固定部材付パイプ10の形状精度を高くしやすい。
また、ステアリングサポート22のD側パイプ素子14へのかしめ固定の際には、D側パイプ素子14におけるかしめ部の形成に伴ってD側パイプ素子14が短くなる方向に変形する。このとき、D側パイプ素子14にはD側エクステンション20は固定されていないので、D側エクステンション20の貫通孔に対しD側パイプ素子14が軸方向に変位することが許容される。これにより電磁成形によってD側パイプ素子14は短くなるがその短くなる量を見込んでD側パイプ素子14を予め長くしておけばよい。なお、D側エクステンション20は、D側の外側ブラケット28よりも後に、D側パイプ素子14に電磁成形でかしめ固定されてもよい。
一方、本実施形態と異なり、D側エクステンション20及びカウルブレース26のうち、後にD側パイプ素子14に固定されるD側エクステンション20より後に、D側の外側ブラケット28及びステアリングサポート22のいずれかの部材を、D側パイプ素子14に電磁成形でかしめ固定することが考えられる。この場合には、D側エクステンション20及びカウルブレース26の両方をD側パイプ素子14に固定した後には、D側パイプ素子14の両側の端部がD側エクステンション20及びカウルブレース26を介して治具に固定された状態となっている。このため、その後に、上記のいずれかの部材がD側パイプ素子14にかしめ固定される際に発生した応力を逃がすことができない。このとき、D側パイプ素子14は、D側エクステンション20及びカウルブレース26の固定位置の間で弾性的に引っ張られた状態となっている。したがって、治具からパイプ被固定部材を取り外した際に、その応力を逃がすようにD側パイプ素子14が縮むように変形し、D側エクステンション20及びカウルブレース26の間の長さが小さくなる可能性がある。本実施形態によれば、このような点を改良でき、被固定部材付パイプ10の形状精度をより高くしやすい。
また、「配置ステップ」において、パイプ部材12の軸方向両端から内側に第1軸部材44及び第2軸部材50をそれぞれ挿入し、各軸部材44,50を軸方向に突き当てた状態で、各電磁コイル40,41,42,43にパルス通電する。これにより、パイプ部材12に複数のパイプ被固定部材を電磁成形でかしめ固定する。このため、電磁成形を行うために比較的短い第1軸部材44と第2軸部材50とをパイプ部材12に挿入すればよく、パイプ部材12への電磁コイル40,41,42,43の配置を容易に行える。
また、「電磁成形ステップ」において、第2軸部材50に配置した第2電磁コイル42,43と、第1軸部材44に配置した第1電磁コイル40,41とに、交互にパルス通電する。このとき、第2電磁コイル42,43と第1電磁コイル40,41とには、異なる電源部である第1電源部61及び第2電源部62からそれぞれ通電される。これにより、各電源部61,62からの放電後、充電スイッチのオンによりコンデンサへ充電し、その後、同じ電源部から再放電するまでの時間を長くしながら、最初の電磁コイルへの通電開始から最後の電磁コイルへの通電終了までの全体の時間を短くできる。これにより、充電時間を確保できることにより大電力でのパルス通電が可能となり、かつ、製造時間の短縮を図れる。
図4は、実施形態の別例の被固定部材付パイプの製造方法を示す図である。図5は、実施形態の別例において、第1段階の電磁成形を行う状態(a)及び第2段階の電磁成形を行う状態(b)を示している図である。
図4に示す構成では、D側中間ブラケット80及び複数のP側中間ブラケット81,82,83が溶接により、パイプ部材12の外側の周方向一部に固定されている。また、D側中間ブラケット80は、D側パイプ素子14において、軸方向中間部の周方向一部に形成された平面部15に固定されている。このために、後述のように電磁成形によってD側パイプ素子14の軸方向中間部には平面加工が施される。
製造装置38aは、第1軸部材44a及び第2軸部材50を軸方向に移動させる軸移動部(図示せず)を含んでおり、制御部63は、その軸移動部の駆動も制御する。例えば、軸移動部は、各軸部材44a,50を上下に挟んで配置されるそれぞれ2つずつのガイドローラ70,71と、上下2つのガイドローラ70,71のうち、一方のガイドローラを回転させるモータ(図示せず)とを含んでいる。このとき、モータが駆動されることにより、一方のガイドローラが回転し、対応する軸部材が移動する。そして、軸部材の移動に伴って他方のガイドローラも回転する。
また、製造装置38aは、コイル冷却システム85を含む。コイル冷却システム85は、冷却油または冷却水等の冷媒が供給される2つの冷却部86,87に第1軸部材44a及び第2軸部材50をそれぞれ接触させながら通過させる。冷却部86,87は、伝熱性の高い材料により形成される容器等である。これにより、各軸部材44a,50に固定された電磁コイルを冷却できるので、電磁コイルの良好な性能を維持しやすい。上記のコイル冷却システム85は、上記の図1〜図3の実施形態に用いることもできる。
さらに、第1軸部材44aには、軸方向他端寄り部分(図4の右端寄り部分)のみに2つの第1電磁コイル40,41が配置される。2つの第1電磁コイル40,41は、それぞれ放電スイッチ64,65を介して第1電源部61に接続される。
図4に示す矢印A1,A2・・・A6は、制御部63が各電源部61,62、放電スイッチ64,65,66,67を制御することを示しており、矢印A3、A6は、電磁成形において、放電スイッチ64,65,66,67がオンになる順序を示している。具体的には、放電スイッチ64の後に放電スイッチ65がオンされ、放電スイッチ66の後に放電スイッチ67がオンされる。
本実施形態の製造方法では、「配置ステップ」において、第1軸部材44a及び第2軸部材50をパイプ部材12の軸方向両端から内側に挿入し、それぞれの軸方向端面を突き当てる。各軸部材44a、50のパイプ部材12内への挿入時に、各電源部61,62のコンデンサが充電されてもよい。この状態で、第1軸部材44aの軸方向他端(図4の右端)は、所定の第1位置に位置決めされる。このとき、第1軸部材44aの2つの第1電磁コイル40,41は、ステアリングサポート22の2つの脚部24,25のそれぞれについての固定位置の内側に配置される。また、2つの第2電磁コイル42,43は、カウルブレース26についての固定位置と、P側のエクステンション27及び外側ブラケット29についての固定位置との内側にそれぞれ配置される。このときの電磁コイルの配置状態は、図5(a)の場合と同じである。
「電磁成形ステップ」では、この状態で、図5(a)に示すように、第1段階の電磁成形を行う。第1段階の電磁成形では、2つの第1電磁コイル40,41のうち、一方の第1電磁コイル40にパルス通電させた後、第1電源部61のコンデンサが充電され、その後に他方の第1電磁コイル41にパルス通電させる。図5では、各電磁コイル40,41,42,43内の丸で囲んだ数字により、パルス通電の順序を示している。これにより、ステアリングサポート22の2つの脚部24,25をD側パイプ素子14に電磁成形でかしめ固定する。2つの第1電磁コイル40,41への通電順序は逆であってもよい。2つの脚部24,25で時間的に分けてD側パイプ素子14にかしめ固定することで、それぞれの脚部24,25の内側の第1電磁コイル40,41に大電力を供給しやすい。これにより、脚部24,25のかしめ固定を行いやすい。
次いで、2つの第2電磁コイル42,43のうち、一方の第2電磁コイル42にパルス通電させた後、第2電源部62のコンデンサが充電され、その後に他方の第2電磁コイル43にパルス通電させる。これにより、カウルブレース26がD側、及びP側パイプ素子14,16の嵌合部にかしめ固定された後、P側の外側ブラケット29及びエクステンション27がP側パイプ素子16の他端部(図5(a)の右端部)にかしめ固定される。これにより、図1〜図3の実施形態と同様に、第1結合部G1を構成するカウルブレース26が、第2結合部G3を構成するP側エクステンション27及び後述の第2結合部G2を構成するD側エクステンション20より先に、パイプ部材12にかしめ固定される。また、第1結合部G1では、第2結合部G2、G3より、要求される組立精度が高くなりやすい。このため、被固定部材付パイプ10を所望の形状に製造できる。
また、図5(b)に示すように、各第2電磁コイル42,43への通電と同時、またはその通電の後に第1軸部材44aを、パイプ部材12の一端(図5(b)の左端)から外側に引き出す方向に、パイプ部材12の内側で軸方向に移動させる。この第1軸部材44aの移動中に第1電源部61のコンデンサを充電させる。そして、第1軸部材44aの軸方向他端(図5(b))が所定の第2位置で位置決めされた状態で第1軸部材44aの移動を停止させる。この状態で、第1軸部材44aの2つの第1電磁コイル40,41は、D側パイプ素子14の平面加工を行う部分の内側と、D側の外側ブラケット28及びエクステンション20についての固定位置の内側とに配置される。このとき、D側パイプ素子14において一方の第1電磁コイル40の外側にD側の外側ブラケット28及びエクステンション20が位置する。図5(b)では、第2軸部材50がパイプ部材12の軸方向他端(図5(b))の右端から引き出されているが、第2軸部材50はパイプ部材12の内側に残っていてもよい。
そして、この状態で、第2段階の電磁成形として、2つの第1電磁コイル40,41のうち、他方の第1電磁コイル41にパルス通電することにより、D側パイプ素子14に平面部15を形成する。このとき、平面部15を形成する部分におけるD側パイプ素子14の周囲に、予め平面加工治具90(図6)を配置しておく。
図6は、第2段階の電磁成形により、平面加工治具90を用いてパイプ部材12の一部に平面部15を形成することを示している図5(b)のB−B断面相当図である。図6に示すように、平面加工治具90は、片面に断面略半円形の凹部が形成された2つの素子91,92を、それぞれの凹部が向き合うように一体に突き合わせることにより、内部に非円形の孔93を有するように形成される。この孔93は、周方向一部に平面部94が形成され、この平面部94と断面が略円形の部分とが連結される形状である。孔93の略円形の部分には電磁成形前のD側パイプ素子14の外周面がほぼ密接する。そして、平面加工治具90によりD側パイプ素子14の軸方向中間部を覆った状態で、他方の第1電磁コイル41(図5(b))にパルス通電する。これにより、D側パイプ素子14の軸方向中間部のうち、平面加工治具90の平面部94に対向する部分が拡径することにより、この軸方向中間部に平面部15が形成される。このとき、D側パイプ素子14は図6の矢印α側に拡径するように変形する。この平面部15には、後で上記のようにD側中間ブラケット80が溶接により固定される。
次いで、2つの第1電磁コイル40,41のうち、一方の第1電磁コイル40にパルス通電することにより、D側パイプ素子14の一端部に、第2結合部G2を構成するD側の外側ブラケット28及びエクステンション20を電磁成形でかしめ固定する。
上記の構成によれば、第1軸部材44aを第1位置で位置決めした状態で第1電磁コイル40,41にパルス通電し、その後、第1軸部材44aを軸方向に移動させ第2位置で位置決めした状態で第1電磁コイル40,41にパルス通電する。このように第1軸部材44aの移動により、同じ第1電磁コイル40,41で別の部材であるステアリングサポート22とD側の外側ブラケット28及びエクステンション20をかしめ固定できる。これにより、電磁成形に必要な電磁コイルの数を少なくできる。
また、本実施形態では、図2に示した実施形態と異なり、ステアリングサポート22の後にカウルブレース26を、パイプ部材12にかしめ固定している。これにより第1軸部材44aの第1電磁コイル40,41を用いたステアリングサポート22のパイプ部材12へのかしめ固定後、第1軸部材44aの移動中に、第2軸部材50の第2電磁コイル42を用いてカウルブレース26をパイプ部材12にかしめ固定できる。
また、本実施形態では、D側パイプ素子14の軸方向中間部に平面加工を電磁成形により行っている。また、その平面加工のための電磁成形を、D側パイプ素子14の両端に固定するカウルブレース26及びD側エクステンション20のうち、後にD側パイプ素子14に固定するD側エクステンション20より前に行っている。このため、D側パイプ素子14に平面加工を行う際に、D側パイプ素子14のD側エクステンション20側の端部が治具に固定されていない状態となっているので、平面加工によりD側パイプ素子14に発生した応力を逃がすことができる。したがって、その後に治具からパイプ被固定部材を取り外した際に、D側パイプ素子14が軸方向に変形することを抑制できるので、被固定部材付パイプ10の形状精度を高くしやすい。本実施形態において、その他の構成及び作用は、図1〜図3に示した実施形態と同様である。
上記の各実施形態では、パイプ部材がD側、及びP側パイプ素子により構成される場合を説明したが、これに限定するものではない。例えば、パイプ部材を、D側パイプ素子部分とP側パイプ素子部分とを有する筒状のパイプ素子のみにより形成してもよい。この構成では、配置ステップにおいて、パイプ素子に隙間を持って嵌合させるように、複数のパイプ被固定部材をパイプ素子の外側に配置して治具に固定した状態とする。また、複数のパイプ被固定部材を、複数の中間被固定部材と、両端に位置する2つの端側被固定部材(D側、P側エクステンション等)とにより構成する。このとき、2つの端側被固定部材のうち、後でパイプ素子に固定される端側被固定部材は、複数の中間被固定部材よりも後に、またはいずれかの中間被固定部材と同時に、パイプ素子に電磁成形でかしめ固定することが好ましい。この好ましい構成によっても、図1〜図3で示した実施形態と同様に、被固定部材付パイプの形状精度を高くしやすい。