JP2019021838A - 電磁波シールドフィルム及びその製造方法、並びに電磁波シールドフィルム付きプリント配線板及びその製造方法 - Google Patents

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Kazuyoshi Yoshida
一義 吉田
貴司 権田
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Abstract

【課題】絶縁樹脂層と導電層との接着力を十分に高くでき、耐熱性に優れる電磁波シールドフィルムを提供する。【解決手段】本発明の電磁波シールドフィルム1は、絶縁樹脂層10と、絶縁樹脂層10に隣接する導電層20とを有し、絶縁樹脂層10が芳香族ポリエーテルケトン及びフラーレンを含有し、導電層20が、少なくとも、金属を含む導電性接着剤層24を有する。前記芳香族ポリエーテルケトンはポリエーテルエーテルケトン又はポリエーテルケトンケトンであってもよい。導電層20は、絶縁樹脂層10側に設けられた金属薄膜層22と、金属薄膜層22の絶縁樹脂層10とは反対側に設けられた導電性接着剤層24とを有してもよい。【選択図】図1

Description

本発明は、電磁波シールドフィルム及びその製造方法、並びに電磁波シールドフィルム付きプリント配線板及びその製造方法に関する。
プリント配線板から発生する電磁波ノイズや外部からの電磁波ノイズを遮蔽するために、絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層に隣接する導電層とからなる電磁波シールドフィルムを、絶縁フィルム(カバーレイフィルム)を介してプリント配線板の表面に設けることがある(例えば、特許文献1参照)。
電磁波シールドフィルムは、例えば、キャリアフィルムの片面に、熱硬化性樹脂と硬化剤と溶剤とを含む塗料を塗布し、乾燥させて絶縁樹脂層を形成し、絶縁樹脂層の表面に導電層を設けることによって製造される。導電層は、金属薄膜層及び接着剤層(例えば導電性接着剤層)の少なくとも一方から形成される。
特開2016−86120号公報
熱硬化性樹脂から形成する従来の絶縁樹脂層においては、金属を含む導電層に対する接着性が低かった。とりわけ、導電層が金属薄膜層を有し、金属薄膜層と絶縁樹脂層とが接する場合には、接着性が特に低かった。そのため、従来の電磁波シールドフィルムにおいては、絶縁樹脂層と導電層との接着力が弱く、電磁波シールドフィルムを取り扱っている最中に層間剥離することがあった。例えば、キャリアフィルムを絶縁樹脂層から剥離した際に、キャリアフィルムと共に絶縁樹脂層が導電層から剥離してしまうことがあった。
また、近年、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板が高温環境下でも使用されることがある。しかし、従来の絶縁樹脂層は耐熱性を考慮して樹脂設計されたものではなく、従来の電磁波シールドフィルムは耐熱性が十分でないことがあった。
本発明は、金属を含む導電層と絶縁樹脂層との接着力を十分に高くでき、耐熱性にも優れる電磁波シールドフィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、金属を含む導電層と絶縁樹脂層との接着力が十分に高く、耐熱性にも優れる電磁波シールドフィルム付きプリント配線板及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を包含する。
[1]絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層に隣接する導電層とを有し、前記絶縁樹脂層が芳香族ポリエーテルケトン及びフラーレンを含有し、前記導電層が、金属を含む導電性接着剤層を少なくとも有する、電磁波シールドフィルム。
[2]前記絶縁樹脂層における前記フラーレンの含有量が、前記芳香族ポリエーテルケトン100質量部に対して0.05質量部以上5質量部以下である、[1]に記載の電磁波シールドフィルム。
[3]前記芳香族ポリエーテルケトンがポリエーテルエーテルケトン又はポリエーテルケトンケトンである、[1]又は[2]に記載の電磁波シールドフィルム。
[4]前記絶縁樹脂層の厚さが3μm以上100μm以下である、[1]〜[3]のいずれか一に記載の電磁波シールドフィルム。
[5]前記導電層が、前記絶縁樹脂層側に設けられた金属薄膜層と、前記金属薄膜層の前記絶縁樹脂層とは反対側に設けられた導電性接着剤層とを有する、[1]〜[4]のいずれか一に記載の電磁波シールドフィルム。
[6]前記金属薄膜層が金属蒸着層である、[5]に記載の電磁波シールドフィルム。
[7]前記金属蒸着層が銀蒸着層又は銅蒸着層である、[6]に記載の電磁波シールドフィルム。
[8]前記絶縁樹脂層の前記導電層とは反対側の面に、キャリアフィルムをさらに有する、[1]〜[7]のいずれか一に記載の電磁波シールドフィルム。
[9]基板の少なくとも片面にプリント回路が設けられたプリント配線板と、前記プリント配線板の前記プリント回路が設けられた側の面に隣接する絶縁フィルムと、前記導電性接着剤層が前記絶縁フィルムに隣接するように設けられた[1]〜[8]のいずれか一に記載の電磁波シールドフィルムと、を有する、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板。
[10]芳香族ポリエーテルケトン及びフラーレンを含む混合物をフィルム状に成形して絶縁樹脂層を形成する工程と、前記絶縁樹脂層の一方の面側に、金属を含む導電性接着剤層を少なくとも有する導電層を形成する工程と、を有する、電磁波シールドフィルムの製造方法。
[11]基板の少なくとも片面にプリント回路が設けられたプリント配線板と、[1]〜[8]のいずれか一に記載の電磁波シールドフィルムとを、絶縁フィルムを介して圧着する工程を有し、圧着する際には、前記絶縁フィルムを、前記プリント配線板の前記プリント回路が設けられた側の面に密着させると共に、前記電磁波シールドフィルムの前記導電性接着剤層に密着させる、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の製造方法。
本発明の電磁波シールドフィルムは、金属を含む導電層と絶縁樹脂層との接着力を十分に高くでき、耐熱性にも優れる。
本発明の電磁波シールドフィルムその製造方法によれば、上記の電磁波シールドフィルムを容易に製造できる。
本発明の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板は、金属を含む導電層と絶縁樹脂層との接着力が十分に高く、耐熱性にも優れる。
本発明の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の製造方法によれば、上記の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板を容易に製造できる。
本発明の電磁波シールドフィルムの第一実施形態を示す断面図である。 本発明の電磁波シールドフィルムの第二実施形態を示す断面図である。 本発明の電磁波シールドフィルムの第三実施形態を示す断面図である。 本発明の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の一実施形態を示す断面図である。 図4の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の製造工程を示す断面図である。
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「等方導電性接着剤層」とは、厚さ方向及び面方向に導電性を有する導電性接着剤層を意味する。
「異方導電性接着剤層」とは、厚さ方向に導電性を有し、面方向に導電性を有しない導電性接着剤層を意味する。
「面方向に導電性を有しない導電性接着剤層」とは、表面抵抗が1×10Ω以上である導電性接着剤層を意味する。
粒子の平均粒子径は、粒子の顕微鏡像から30個の粒子を無作為に選び、それぞれの粒子について、最小径及び最大径を測定し、最小径と最大径との中央値を一粒子の粒子径とし、測定した30個の粒子の粒子径を算術平均して得た値である。導電性粒子の平均粒子径も同様である。
フィルム(離型フィルム、絶縁フィルム等)、塗膜(絶縁樹脂層、導電性接着剤層等)、金属薄膜層等の厚さは、顕微鏡を用いて測定対象の断面を観察し、5箇所の厚さを測定し、平均した値である。
貯蔵弾性率は、測定対象に与えた応力と検出した歪から算出され、温度又は時間の関数として出力する動的粘弾性測定装置を用いて、粘弾性特性の一つとして測定される。
導電性粒子の10%圧縮強度は、微小圧縮試験機を用いた測定結果から、下記式(α)によって求める。
C(x)=2.48P/πd (α)
ただし、C(x)は10%圧縮強度(MPa)であり、Pは粒子径の10%変位時の試験力(N)であり、dは粒子径(mm)である。
表面抵抗は、石英ガラス上に金を蒸着して形成した、2本の薄膜金属電極(長さ10mm、幅5mm、電極間距離10mm)を用い、この電極上に被測定物を置き、被測定物上から、被測定物の10mm×20mmの領域を0.049Nの荷重で押し付け、1mA以下の測定電流で測定される電極間の抵抗である。
図1〜図5における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
<電磁波シールドフィルム>
本発明の第一態様は、絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層に隣接する導電層とを有し、前記絶縁樹脂層が芳香族ポリエーテルケトンを含有する電磁波シールドフィルムである。
図1は、第一実施形態の電磁波シールドフィルム1を示す断面図であり、図2は、第二実施形態の電磁波シールドフィルム1を示す断面図であり、図3は、第三実施形態の電磁波シールドフィルム1を示す断面図である。
第一実施形態、第二実施形態及び第三実施形態の電磁波シールドフィルム1はいずれも、絶縁樹脂層10と、絶縁樹脂層10に隣接する導電層20と、絶縁樹脂層10の導電層20とは反対側に隣接するキャリアフィルム30と、導電層20の絶縁樹脂層10とは反対側に隣接する離型フィルム40とを有する。
第一実施形態の電磁波シールドフィルム1は、導電層20が、絶縁樹脂層10に隣接する金属薄膜層22と、離型フィルム40に隣接する異方導電性接着剤層24とを有する。
第二実施形態の電磁波シールドフィルム1は、導電層20が、絶縁樹脂層10に隣接する金属薄膜層22と、離型フィルム40に隣接する等方導電性接着剤層26とを有する。
第三実施形態の電磁波シールドフィルム1は、導電層20が等方導電性接着剤層26からなる。
(絶縁樹脂層)
絶縁樹脂層10は、電磁波シールドフィルム1をフレキシブルプリント配線板の表面に設けられた絶縁フィルムの表面に貼着し、キャリアフィルム30を剥離した後には、導電層20の保護層となる。
絶縁樹脂層10は、芳香族ポリエーテルケトン及びフラーレンを含有する。芳香族ポリエーテルケトンは、エーテル結合を介してベンゼン環同士を結合した構造と、ケトン基を介してベンゼン環同士を結合した構造とを有するポリマーである。
芳香族ポリエーテルケトンとしては、例えば、化学式(1)で表される化学構造を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、化学式(2)で表される化学構造を有するポリエーテルケトン(PEK)、化学式(3)で表される化学構造を有するポリエーテルケトンケトン(PEKK)、化学式(4)で表される化学構造を有するポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、化学式(5)で表される化学構造を有するポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)が挙げられる。絶縁樹脂層10に含まれる芳香族ポリエーテルケトンは1種単独でもよいし、2種以上でもよい。
また、芳香族ポリエーテルケトンは、化学式(1)〜(5)で表される化学構造を2つ以上有する共重合体であってもよい。
なお、芳香族ポリエーテルケトンの両末端は水素原子となっている。
前記芳香族ポリエーテルケトンのなかでも、絶縁樹脂層10を形成しやすい点では、ポリエーテルエーテルケトンが好ましい。
電磁波シールドフィルム1に耐熱性が求められる場合には、芳香族ポリエーテルケトンのなかでも、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトンが好ましい。ポリエーテルケトンのガラス転移温度は152℃、ポリエーテルケトンケトンのガラス転移温度は154℃、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトンのガラス転移温度は162℃であり、いずれも、ポリエーテルエーテルケトンのガラス転移温度143℃より高い。そのため、耐熱性が求められる用途に適している。樹脂のガラス転移温度は、示差熱走査熱量測定(DSC)によって求められる。
前記耐熱性に優れる芳香族ポリエーテルケトンのうち、ポリエーテルケトンケトンは耐熱性に優れるのみならず、成形性にも優れることから、より好ましい。
Figure 2019021838
前記化学式(1)〜(5)の各々のnは、機械的特性の観点から、10以上が好ましく、20以上がより好ましい。一方、芳香族ポリエーテルケトンを容易に製造できる点では、nは5000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましい。すなわち、10以上5000以下が好ましく、20以上1000以下がより好ましい。
芳香族ポリエーテルケトンは、本発明の効果を損なわない範囲において、エーテルサルホン等の他の共重合可能な単量体とのブロック共重合体、ランダム共重合体又は変性体であってもよい。
芳香族ポリエーテルケトンは、前記化学式(1)〜(5)のいずれかで表されるポリエーテルケトン単位の割合が、芳香族ポリエーテルケトン100モル%に対し、50モル%以上100モル%以下であることが好ましく、70モル%以上100モル%以下であることがより好ましく、80モル%以上100モル%以下であることがさらに好ましく、100モル%であることが最も好ましい。芳香族ポリエーテルケトンにおいて前記芳香族ポリエーテルケトン単位の割合が前記下限値以上であれば、絶縁樹脂層10と導電層20との接着力をより強くできる。
芳香族ポリエーテルケトンの製造方法、とりわけポリエーテルエーテルケトンの製造方法としては、例えば、特開昭50−27897号公報、特開昭51−119797号公報、特開昭52−38000号公報、特開昭54−90296号公報、特公昭55−23574号公報、特公昭56−2091号公報に開示されている。
ポリエーテルケトンケトンの製造方法としては、例えば米国特許第3,516,966号、米国特許第3,637,592号、米国特許第3,441,538号、特公平4−63900号公報、特公平6−10258号公報等に開示されている。
絶縁樹脂層10には、芳香族ポリエーテルケトン以外に他の樹脂が含まれてもよい。他の樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルホン、ポリフェニレンサルフィド、ポリフェニレンサルフィドサルホン、ポリフェニレンサルフィドケトン等が挙げられる。
絶縁樹脂層10に含まれる全樹脂に対する芳香族ポリエーテルケトンの含有量は50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましい。絶縁樹脂層10に含まれる樹脂が芳香族ポリエーテルケトンのみからなってもよい。絶縁樹脂層10に含まれる全樹脂に対する芳香族ポリエーテルケトンの含有量が前記下限値以上であれば、導電層20に対する絶縁樹脂層10の接着力をより強くすることができる。
フラーレンは炭素のみから構成され、中空状の閉殻構造をなす球殻状又は略球殻状の炭素クラスタである。バルクのフラーレンの形態としては特に制限されず、例えば、粉体状、頼粒状、塊状等が挙げられる。フラーレンは、芳香族ポリエーテルケトン、特にポリエーテルエーテルケトンに対する親和性が高く、芳香族ポリエーテルケトン中に容易に分散される。
フラーレンの炭素数は、通常60以上130以下の偶数であり、一般式Cnで表される(ここで、nは60以上130以下の整数である。)。フラーレンの具体例としては、C60、C70、C76、C78、C80、C82、C84、C86、C88、C90、C92、C94、C96、C100等が挙げられる。また、これらよりも多くの炭素を有する高次の炭素クラスタであってもよい。
また、フラーレンとしては、フラーレンを構成する少なくとも1つの炭素原子に有機又は無機の分子を結合させたフラーレン誘導体、フラーレンの中空状の閉殻構造内部に金属又は化合物を内包させたフラーレン錯体、フラーレン多量体(フラーレンの2量体又は3量体等)も使用できる。
前記フラーレンは、1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
前記フラーレンのなかでも、入手の容易さの点から、C60及びC70の少なくとも一方が好ましく、低コストであることから、C60とC70との混合物がより好ましい。
フラーレンの具体例としては、フロンティアカーボン社製、製品名nanomシリーズが挙げられる。
フラーレンの製造方法としては、例えば、加熱フローガス中レーザー蒸発法、抵抗加熱法、アーク放電法、燃焼法、高周波誘電加熱法、ナフタレン熱分解法等の公知の製造方法が挙げられる。
フラーレンは、カップリング剤と反応させることによって変性してもよい。カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等を使用できる。カップリング剤によってフラーレンを変性すれば、芳香族ポリエーテルケトンとの親和性がより高くなる。
シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルエトキシシラン、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアネート、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
チタネート系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチルチタネート)、テトラオクチルビス(ジ−トリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等が挙げられる。
アルミニウム系カップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
絶縁樹脂層10におけるフラーレンの含有量は、芳香族ポリエーテルケトン100質量部に対して0.05質量部以上5.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上4.8質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上4.0質量部以下であることがさらに好ましい。絶縁樹脂層10におけるフラーレンの含有量が前記下限値以上であれば、導電層20に対する絶縁樹脂層10の接着力がより強くなり、前記上限値以下であれば、絶縁樹脂層10の作製時に溶融粘度を適度な範囲にでき、絶縁樹脂層10を容易に形成できる。
絶縁樹脂層10は、プリント配線板のプリント回路を隠蔽したり、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板に意匠性を付与したりするために、着色剤(顔料、染料等)及びフィラーのいずれか一方又は両方を含んでいてもよい。
着色剤及びフィラーのいずれか一方又は両方としては、耐候性、耐熱性、隠蔽性の点から、顔料又はフィラーが好ましく、プリント回路の隠蔽性、意匠性の点から、黒色顔料、又は黒色顔料と他の顔料もしくはフィラーとの組み合わせがより好ましい。
絶縁樹脂層10は、本発明の特性を損なわない範囲で、酸化防止剤、光安定剤、紫外線安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱向上剤、無機充填剤、有機充填剤等の添加剤が含まれてもよい。
絶縁樹脂層10の表面抵抗は、電気的絶縁性の点から、1×10Ω以上が好ましい。
絶縁樹脂層10の表面抵抗は、実用上の点から、1×1019Ω以下が好ましい。
絶縁樹脂層10の厚さは、3.0μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましく、5μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。絶縁樹脂層10の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、絶縁樹脂層10が保護層としての機能を十分に発揮できる。絶縁樹脂層10の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム1を薄くできる。
(導電層)
導電層は、金属を含む導電性接着剤層を少なくとも有する。金属は、薄膜状でもよいし、粒子状でもよいし、その他の形状でもよい。
具体的には、上述したように、第一実施形態における導電層20は、絶縁樹脂層10に隣接する金属薄膜層22と、離型フィルム40に隣接する異方導電性接着剤層24とを有する。
第二実施形態における導電層20は、絶縁樹脂層10に隣接する金属薄膜層22と、離型フィルム40に隣接する等方導電性接着剤層26とを有する。
第三実施形態における導電層20は、等方導電性接着剤層26からなる。
導電層20としては、電磁波遮蔽性が十分に高くなることから、金属薄膜層22と、異方導電性接着剤層24又は等方導電性接着剤層26とを有することが好ましい。すなわち、導電層20は、金属薄膜層と導電性接着剤層の2層を有することが好ましい。
[金属薄膜層]
金属薄膜層22は、金属の薄膜からなる層である。金属薄膜層22は、面方向に広がるように形成されていることから、面方向に導電性を有し、電磁波シールド層等として機能する。
金属薄膜層22としては、物理蒸着(真空蒸着、スパッタリング、イオンビーム蒸着、電子ビーム蒸着等)又は化学蒸着によって形成された蒸着膜、めっきによって形成されためっき膜、金属箔等が挙げられる。面方向の導電性に優れる点では、導電層20は、蒸着膜、めっき膜が好ましい。導電層20を薄くでき、かつ厚さが薄くても面方向の導電性に優れ、ドライプロセスにて簡便に形成できる点では、導電層20は蒸着膜がより好ましく、物理蒸着による蒸着膜がさらに好ましい。
金属薄膜層22を構成する金属としては、アルミニウム、銀、銅、金、導電性セラミックス等が挙げられ、電気伝導度の点からは、銀又は銅が好ましい。
金属薄膜層22のなかでも、電磁波遮蔽性が高く、しかも金属薄膜層を容易に形成しやすいことから、金属蒸着層が好ましく、銀蒸着層又は銅蒸着層がより好ましい。
金属薄膜層22の表面抵抗は、0.001Ω以上1Ω以下が好ましく、0.001Ω以上0.5Ω以下がより好ましい。金属薄膜層22の表面抵抗が前記範囲の下限値以上であれば、金属薄膜層22を十分に薄くできる。金属薄膜層22の表面抵抗が前記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールド層として十分に機能できる。
金属薄膜層22の厚さは、0.01μm以上5μm以下が好ましく、0.05μm以上3μm以下がより好ましい。金属薄膜層22の厚さが0.01μm以上であれば、面方向の導電性がさらに良好になる。金属薄膜層22の厚さが0.05μm以上であれば、電磁波ノイズの遮蔽効果がさらに良好になる。金属薄膜層22の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム1を薄くできる。また、電磁波シールドフィルム1の生産性、可とう性がよくなる。
[異方導電性接着剤層]
第一実施形態における異方導電性接着剤層24は、厚さ方向に導電性を有し、面方向には導電性を有さず、かつ、接着性を有する。
異方導電性接着剤層24は、導電性接着剤層を容易に薄くでき、後述する導電性粒子の量を少なくでき、その結果、電磁波シールドフィルム1を薄くでき、電磁波シールドフィルム1の可とう性が高くなる利点を有する。
異方導電性接着剤層24としては、硬化後に耐熱性を発揮できる点から、熱硬化性の導電性接着剤層が好ましい。熱硬化性の異方導電性接着剤層24は、未硬化の状態であってもよく、Bステージ化された状態であってもよい。
熱硬化性の異方導電性接着剤層24は、例えば、熱硬化性接着剤24aと導電性粒子24bとを含む。熱硬化性の異方導電性接着剤層24は、必要に応じて難燃剤を含んでいてもよい。
熱硬化性接着剤24aとしては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、合成ゴム、紫外線硬化アクリレート樹脂等が挙げられる。耐熱性に優れる点から、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、可とう性付与のためのゴム成分(カルボキシ変性ニトリルゴム、アクリルゴム等)、粘着付与剤等を含んでいてもよい。
熱硬化性接着剤24aは、異方導電性接着剤層24の強度を高め、打ち抜き特性を向上させるために、セルロース樹脂、ミクロフィブリル(ガラス繊維等)を含んでいてもよい。前記熱硬化性接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。
導電性粒子24bとしては、金属(銀、白金、金、銅、ニッケル、パラジウム、アルミニウム、ハンダ等)の粒子、黒鉛粉、焼成カーボン粒子、めっきされた焼成カーボン粒子等が挙げられる。導電性粒子24bとしては、異方導電性接着剤層24がさらに適度の硬さを有するようになり、熱プレスの際の異方導電性接着剤層24における圧力損失をさらに低減できる点からは、金属粒子が好ましく、銅粒子がより好ましい。
導電性粒子24bの10%圧縮強度は、30MPa以上200MPa以下が好ましく、50MPa以上150MPa以下がより好ましく、70MPa以上100MPa以下がさらに好ましい。導電性粒子の10%圧縮強度が前記範囲の下限値以上であれば、熱プレスの際に金属薄膜層22にかけられた圧力を大きく損失することなく、異方導電性接着剤層24が絶縁フィルムの貫通孔を通ってプリント配線板のプリント回路により確実に電気的に接続される。導電性粒子24bの10%圧縮強度が前記範囲の上限値以下であれば、金属薄膜層22との接触がよくなり、電気的接続が確実になる。
異方導電性接着剤層24における導電性粒子24bの平均粒子径は、2μm以上26μm以下が好ましく、4μm以上16μm以下がより好ましい。導電性粒子24bの平均粒子径が前記範囲の下限値以上であれば、異方導電性接着剤層24の厚さを確保することができ、十分な接着強度を得ることができる。導電性粒子24bの平均粒子径が前記範囲の上限値以下であれば、異方導電性接着剤層24の流動性を確保でき、後述するように異方導電性接着剤層24を絶縁フィルムの貫通孔に押し込んだ際に絶縁フィルムの貫通孔内を導電性接着剤で十分に埋めることができる。
異方導電性接着剤層24における導電性粒子24bの割合は、異方導電性接着剤層24の100体積%のうち、1体積%以上30体積%以下が好ましく、2体積%以上15体積%以下がより好ましい。導電性粒子24bの割合が前記範囲の下限値以上であれば、異方導電性接着剤層24の導電性が良好になる。導電性粒子24bの割合が前記範囲の上限値以下であれば、異方導電性接着剤層24の接着性、流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)が良好になる。また、電磁波シールドフィルム1の可とう性がよくなる。
異方導電性接着剤層24の180℃における貯蔵弾性率は、1×10Pa以上5×10Pa以下が好ましく、5×10Pa以上1×10Pa以下がより好ましい。異方導電性接着剤層24の180℃における貯蔵弾性率が前記範囲の下限値以上であれば、異方導電性接着剤層24がさらに適度の硬さを有するようになり、熱プレスの際の導電性接着剤層における圧力損失を低減できる。その結果、導電性接着剤層とプリント配線板のプリント回路とが十分に接着され、異方導電性接着剤層24が絶縁フィルムの貫通孔を通ってプリント配線板のプリント回路により確実に電気的に接続される。導電性接着剤層の180℃における貯蔵弾性率が前記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム1の可とう性がよくなる。その結果、電磁波シールドフィルム1が絶縁フィルムの貫通孔内に沈み込みやすくなり、異方導電性接着剤層24が絶縁フィルムの貫通孔を通ってプリント配線板のプリント回路により確実に電気的に接続される。
異方導電性接着剤層24の表面抵抗は、1×10Ω以上1×1016Ω以下が好ましく、1×10Ω以上1×1014Ω以下がより好ましい。異方導電性接着剤層24の表面抵抗が前記範囲の下限値以上であれば、導電性粒子24bの含有量が低く抑えられる。異方導電性接着剤層24の表面抵抗が前記範囲の上限値以下であれば、実用上、異方性に問題がない。
異方導電性接着剤層24の厚さは、3μm以上25μm以下が好ましく、5μm以上15μm以下がより好ましい。異方導電性接着剤層24の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、異方導電性接着剤層24の流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)を確保でき、絶縁フィルムの貫通孔内を導電性接着剤で十分に埋めることができる。異方導電性接着剤層24の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム1を薄くできる。また、電磁波シールドフィルム1の可とう性がよくなる。
[等方導電性接着剤層]
第二実施形態又は第三実施形態における等方導電性接着剤層26は、厚さ方向及び面方向に導電性を有し、かつ、接着性を有する。
等方導電性接着剤層26は、電磁波シールドフィルム1の電磁波遮蔽性をより高くできる利点を有する。
等方導電性接着剤層26としては、硬化後に耐熱性を発揮できる点から、熱硬化性の導電性接着剤層が好ましい。熱硬化性の等方導電性接着剤層26は、未硬化の状態であってもよく、Bステージ化された状態であってもよい。
熱硬化性の等方導電性接着剤層26は、例えば、熱硬化性接着剤26aと導電性粒子26bとを含む。熱硬化性の等方導電性接着剤層26は、必要に応じて難燃剤を含んでいてもよい。
等方導電性接着剤層26に含まれる熱硬化性接着剤26aの成分及び導電性粒子26bの材質は、異方導電性接着剤層24に含まれる熱硬化性接着剤24aの成分及び導電性粒子24bの材質と同様である。
等方導電性接着剤層26における導電性粒子26bの平均粒子径は、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.2μm以上1μm以下がより好ましい。導電性粒子26bの平均粒子径が前記範囲の下限値以上であれば、導電性粒子26bの接触点数が増えることになり、3次元方向の導通性を安定的に高めることができる。導電性粒子26bの平均粒子径が前記範囲の上限値以下であれば、等方導電性接着剤層26の流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)を確保でき、絶縁フィルムの貫通孔内を導電性接着剤で十分に埋めることができる。
等方導電性接着剤層26における導電性粒子26bの割合は、等方導電性接着剤層26の100体積%のうち、50体積%以上80体積%以下が好ましく、60体積%以上70体積%以下がより好ましい。導電性粒子26bの割合が前記範囲の下限値以上であれば、等方導電性接着剤層26の導電性が良好になる。導電性粒子26bの割合が前記範囲の上限値以下であれば、等方導電性接着剤層26の接着性、流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)が良好になる。また、電磁波シールドフィルム1の可とう性がよくなる。
等方導電性接着剤層26の180℃における貯蔵弾性率は、1×10Pa以上5×10Pa以下が好ましく、5×10Pa以上1×10Pa以下がより好ましい。前記範囲が好ましい理由は、異方導電性接着剤層24と同様である。
等方導電性接着剤層26の表面抵抗は、0.05Ω以上2.0Ω以下が好ましく、0.1Ω以上1.0Ω以下がより好ましい。等方導電性接着剤層26の表面抵抗が前記範囲の下限値以上であれば、導電性粒子26bの含有量が低く抑えられ、導電性接着剤の粘度が高くなりすぎず、塗布性がさらに良好となる。また、等方導電性接着剤層26の流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)をさらに確保できる。等方導電性接着剤層26の表面抵抗が前記範囲の上限値以下であれば、等方導電性接着剤層26の全面が均一な導電性を有するものとなる。
等方導電性接着剤層26の厚さは、5μm以上20μm以下が好ましく、7μm以上17μm以下がより好ましい。等方導電性接着剤層26の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、等方導電性接着剤層26の導電性が良好になり、電磁波シールド層として十分に機能できる。また、等方導電性接着剤層26の流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)を確保でき、絶縁フィルムの貫通孔内を導電性接着剤で十分に埋めることができ、耐折性も確保でき繰り返し折り曲げても等方導電性接着剤層26が断裂することはない。
等方導電性接着剤層26の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム1を薄くできる。また、電磁波シールドフィルム1の可とう性がよくなる。
(キャリアフィルム)
キャリアフィルム30は、絶縁樹脂層10及び導電層20を補強及び保護する支持体であり、電磁波シールドフィルム1のハンドリング性を良好にする。特に、絶縁樹脂層10として、薄いフィルム、具体的には厚さ20μm以下のフィルムを用いた場合には、キャリアフィルム30を有することによって、絶縁樹脂層10の破断を防ぐことができる。
キャリアフィルム30は、電磁波シールドフィルム1をプリント配線板等に貼り付けた後には、絶縁樹脂層10から剥離される。
本実施形態において使用されるキャリアフィルム30は、キャリアフィルム本体32と、キャリアフィルム本体32の絶縁樹脂層10側の表面に設けられた粘着剤層34とを有する。
キャリアフィルム本体32の樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」ということもある。)、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、合成ゴム、液晶ポリマー等が挙げられる。樹脂材料としては、電磁波シールドフィルム1を製造する際の耐熱性(寸法安定性)及び価格の点から、PETが好ましい。
キャリアフィルム本体32は、着色剤(顔料、染料等)及びフィラーのいずれか一方又は両方を含んでいてもよい。
着色剤及びフィラーのいずれか一方又は両方としては、絶縁樹脂層10と明確に区別でき、熱プレスした後にキャリアフィルム30の剥がし残しに気が付きやすい点から、絶縁樹脂層10とは異なる色のものが好ましく、白色顔料、フィラー、又は白色顔料と他の顔料もしくはフィラーとの組み合わせがより好ましい。
キャリアフィルム本体32の180℃における貯蔵弾性率は、8×10Pa以上5×10Paが好ましく、1×10Pa以上8×10Paがより好ましい。キャリアフィルム本体32の180℃における貯蔵弾性率が前記範囲の下限値以上であれば、キャリアフィルム30が適度の硬さを有するようになり、熱プレスの際のキャリアフィルム30における圧力損失を低減できる。キャリアフィルム本体32の180℃における貯蔵弾性率が前記範囲の上限値以下であれば、キャリアフィルム30の柔軟性が良好となる。
キャリアフィルム本体32の厚さは、3μm以上75μm以下が好ましく、12μm以上50μm以下がより好ましい。キャリアフィルム本体32の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、電磁波シールドフィルム1のハンドリング性が良好となる。キャリアフィルム本体32の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、絶縁フィルムの表面に電磁波シールドフィルム1の導電性接着剤層(異方導電性接着剤層24又は等方導電性接着剤層26)を熱プレスする際に導電性接着剤層に熱が伝わりやすい。
粘着剤層34は、例えば、キャリアフィルム本体32の表面に粘着剤を含む粘着剤組成物を塗布して形成される。キャリアフィルム30が粘着剤層34を有することによって、離型フィルム40を導電性接着剤層から剥離する際や電磁波シールドフィルム1をプリント配線板等に熱プレスによって貼り付ける際に、キャリアフィルム30が絶縁樹脂層10から剥離することが抑えられる。そのため、キャリアフィルム30が保護フィルムとしての役割を十分に果たすことができる。
粘着剤は、熱プレス前にはキャリアフィルム30が絶縁樹脂層10から容易に剥離することなく、熱プレス後にはキャリアフィルム30を絶縁樹脂層10から剥離できる程度の適度な粘着性を粘着剤層34に付与するものであることが好ましい。
粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。
粘着剤のガラス転移温度は、−100℃以上60℃以下が好ましく、−60℃以上40℃以下がより好ましい。
キャリアフィルム30の厚さは、25μm以上125μm以下が好ましく、38μm以上100μm以下がより好ましい。キャリアフィルム30の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、電磁波シールドフィルム1のハンドリング性が良好となる。キャリアフィルム30の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、絶縁フィルムの表面に電磁波シールドフィルム1の導電性接着剤層を熱プレスする際に導電性接着剤層に熱が伝わりやすい。
(離型フィルム)
離型フィルム40は、導電性接着剤層を保護するものであり、電磁波シールドフィルム1のハンドリング性を良好にする。離型フィルム40は、電磁波シールドフィルム1をプリント配線板等に貼り付ける前に、導電性接着剤層(異方導電性接着剤層24又は等方導電性接着剤層26)から剥離される。
離型フィルム40は、例えば、離型フィルム本体42と、離型フィルム本体42の導電性接着剤層側の表面に設けられた離型剤層44とを有する。
離型フィルム本体42の樹脂材料としては、キャリアフィルム本体32の樹脂材料と同様なものが挙げられる。
離型フィルム本体42は、着色剤、フィラー等を含んでいてもよい。
離型フィルム本体42の厚さは、5μm以上500μm以下が好ましく、10μm以上150μm以下がより好ましく、25μm以上100μm以下がさらに好ましい。
離型剤層44は、離型フィルム本体42の表面を離型剤で処理して形成される。離型フィルム40が離型剤層44を有することによって、離型フィルム40を導電性接着剤層から剥離する際に、離型フィルム40を剥離しやすく、導電性接着剤層が破断しにくくなる。
離型剤としては、公知の離型剤を用いればよい。
離型剤層44の厚さは、0.05μm以上30μm以下が好ましく、0.1μm以上20μm以下がより好ましい。離型剤層44の厚さが前記範囲内であれば、離型フィルム40をさらに剥離しやすくなる。
(電磁波シールドフィルムの厚さ)
電磁波シールドフィルム1の厚さ(キャリアフィルム30及び離型フィルム40を除く)は、3μm以上50μm以下が好ましく、5μm以上30μm以下がより好ましい。キャリアフィルム30及び離型フィルム40を含まない電磁波シールドフィルム1の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、キャリアフィルム30を剥離する際に破断しにくく、前記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板を薄くできる。
<電磁波シールドフィルムの製造方法>
本発明の第二態様は、芳香族ポリエーテルケトン及びフラーレンを含む混合物をフィルム状に成形して絶縁樹脂層を形成する工程と、前記絶縁樹脂層の一方の面に導電層を形成する工程とを有する、電磁波シールドフィルムの製造方法である。
具体的に、第一実施形態の電磁波シールドフィルムを製造する方法として、下記の方法(A1)、方法(A2)が挙げられる。第二実施形態の電磁波シールドフィルムを製造する方法として、下記の方法(B1)、方法(B2)が挙げられる。第三実施形態の電磁波シールドフィルムを製造する方法として、下記の方法(C1)、方法(C2)が挙げられる。
方法(A1)は、下記の工程(A1−1)〜(A1−4)を有する方法である。
工程(A1−1):芳香族ポリエーテルケトン及びフラーレンを含む混合物をフィルム状に成形して形成した絶縁樹脂層10を、キャリアフィルム30に積層する工程。
工程(A1−2):絶縁樹脂層10のキャリアフィルム30とは反対側の面に金属薄膜層22を形成する工程。
工程(A1−3):金属薄膜層22の絶縁樹脂層10とは反対側の面に異方導電性接着剤層24を形成する工程。
工程(A1−4):異方導電性接着剤層24の金属薄膜層22とは反対側の面に離型フィルム40を積層する工程。
以下、方法(A1)の各工程について詳細に説明する。
工程(A1−1)では、芳香族ポリエーテルケトン及びフラーレンを含む混合物をフィルム状に成形する。
芳香族ポリエーテルケトン及びフラーレンを含む混合物は、例えば、芳香族ポリエーテルケトンとフラーレンとを各種ミキサーを用いて混合した後に溶融混練することにより得られる。ミキサーによる混合を省略し、溶融させた芳香族ポリエーテルケトンにフラーレンを添加し、溶融混練して、混合物を得てもよい。
芳香族ポリエーテルケトンとフラーレンとを混合する際に用いるミキサーとしては、例えば、タンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、V型混合機、ナウターミキサー、リボンブレンダー、万能ミキサー等が挙げられる。
混合の際、芳香族ポリエーテルケトンの形状は、粉体状、顆粒状、塊状、ペレット状等のいずれであってもよいが、フラーレンに対してより均一に分散できることから、粉体状が好ましい。具体的に、芳香族ポリエーテルケトンの粒度は、エアージェットシーブ標準ふるいにより測定したときに、5メッシュを通過するものが好ましく、6メッシュを通過するものがより好ましい。
芳香族ポリエーテルケトンを粉砕して粉体状にする方法としては、例えば、せん断粉砕法、衝撃粉砕法、衝突粉砕法、冷凍粉砕法、溶液粉砕法等が挙げられる。
溶融混練の際に使用される溶融混練機としては、例えば、多軸押出成形機(二軸押出成形機、三軸押出成形機、四軸押出成形機、八軸押出成形機等)、単軸押出成形機、ミキシングロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー等が挙げられる。
溶融混練の温度は、芳香族ポリエーテルケトンとフラーレンとを溶融混練可能で且つ芳香族ポリエーテルケトンが分解しない温度であれば特に制限されない。芳香族ポリエーテルケトンがポリエーテルエーテルケトンである場合、溶融混練温度は、ポリエーテルエーテルケトンの融点以上熱分解温度未満にすることが好ましく、360℃以上450℃以下にすることがより好ましく、360℃以上420℃にすることがさらに好ましく、370℃以上400℃以下にすることが特に好ましい。
溶融混練機の原料投入口は、溶融混練時の芳香族ポリエーテルケトンの酸化劣化及び酸素架橋を防止するために、不活性ガス雰囲気にすることが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、窒素ガス、二酸化炭素ガス等が用いられる。
また、溶融混練の際には、真空ポンプ等を用いて溶融混練機内を減圧して、芳香族ポリエーテルケトン及びフラーレンに含まれている水分及び低分子化合物等を揮発させて除去してもよい。
溶融混練の後には、得られた混練物をフィルム状に成形する。フィルム状に成形する方法としては、溶融押出成形法、カレンダー成形法、キャスティング法等が挙げられ、設備の簡略化の観点から、溶融押出成形法が好ましい。
溶融押出成形法では、溶融押出成形機を使用して、芳香族ポリエーテルケトン及びフラーレンを含む混合物を溶融し、溶融押出成形機の先端部に設けられたTダイスから連続的に帯状に押し出すことにより、フィルム状に成形する。
芳香族ポリエーテルケトンがポリエーテルエーテルケトンである場合、溶融押出成形機の温度は、ポリエーテルエーテルケトンの融点以上450℃以下にすることが好ましく、350℃以上430℃以下にすることがより好ましく、350℃以上400℃にすることがさらに好ましい。溶融押出成形機の温度が前記下限値以上であれば、ポリエーテルエーテルケトンを容易に溶融押出成形でき、また、フラーレンをポリエーテルエーテルケトン中により均一に分散できる。溶融押出成形機の温度が前記上限値以下であれば、ポリエーテルエーテルケトンの分解を防ぐことができる。
溶融押出成形機に供する芳香族ポリエーテルケトンの含水率は、0ppm以上5000ppm以下であることが好ましく、0ppm以上2000ppm以下であることがより好ましい。芳香族ポリエーテルケトンの含水率が前記上限値以下であれば、芳香族ポリエーテルケトンの発泡を防ぐことができる。芳香族ポリエーテルケトンの含水率を低下させる方法としては、例えば、乾燥器を用いて乾燥する方法、前記溶融混練の際に脱揮する方法等が挙げられる。
溶融押出成形機の原料投入口は、溶融混練時の芳香族ポリエーテルケトンの酸化劣化及び酸素架橋を防止するために、不活性ガス雰囲気にすることが好ましい。不活性ガスとしては、上述したものと同様のガスを用いることができる。
溶融押出成形機とTダイスとの間には、ギヤポンプ及びフィルタが取り付けられていることが好ましい。ギヤポンプを用いることによって、溶融押出成形機にて溶融した混合物を容易に一定流量でTダイスに供給することができ、安定してフィルム状にできる。フィルタを用いることによって、溶融した混合物に含まれるゲル化物等の異物を除去でき、フィルムの品質を向上させることができる。
Tダイスから押し出された溶融状態のフィルムは、金属ロールに密着させて冷却することが好ましい。金属ロールの温度は、芳香族ポリエーテルケトンの融点未満にすることが好ましく、結晶化温度以下にすることがより好ましく、ガラス転移温度以下にすることがさらに好ましい。金属ロールの温度が芳香族ポリエーテルケトンの融点未満であれば、フィルムの破断を防止できる。芳香族ポリエーテルケトンがポリエーテルエーテルケトンの場合には、金属ロールの温度を50℃以上260℃以下にすることが好ましく、100℃以上230℃以下にすることがより好ましい。
前記金属ロールには、圧着ロールが少なくとも1個以上接していることが好ましい。金属ロールと圧着ロールとで溶融状態のフィルムを挟み、圧着ロールによって金属ロールの方向に押圧することにより、フィルムを確実に金属ロールに密着させて冷却することができる。
圧着ロールとしては、金属製のロール本体の周面にゴム層が被覆されたものを使用することが好ましい。ゴム層を構成するゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ノルボルネンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらゴムのなかでも、耐熱性が高いことから、シリコーンゴム、フッ素ゴムが好ましい。
圧着ロールの温度は金属ロールと同様の温度にすることが好ましい。
上記のようにして得たフィルム状の絶縁樹脂層10を、キャリアフィルム30の粘着剤層34が設けられた面に積層する。フィルム状にした直後の絶縁樹脂層10をそのままキャリアフィルム30に積層してもよいし、フィルム状にした絶縁樹脂層10を一旦巻き取ってロール状にした後、ロールからフィルム状の絶縁樹脂層10を送出してキャリアフィルム30に積層してもよい。
工程(A1−2)における金属薄膜層の形成方法としては、物理蒸着、CVD(化学気相蒸着)によって蒸着膜を形成する方法、めっきによってめっき膜を形成する方法、金属箔を貼り付ける方法等が挙げられる。面方向の導電性に優れる金属薄膜層を形成できる点から、物理蒸着、CVDによって蒸着膜を形成する方法、又はめっきによってめっき膜を形成する方法が好ましい。金属薄膜層の厚さを薄くでき、かつ厚さが薄くても面方向の導電性に優れる金属薄膜層を形成でき、ドライプロセスにて簡便に金属薄膜層を形成できる点から、物理蒸着、CVDによって蒸着膜を形成する方法がより好ましく、物理蒸着によって蒸着膜を形成する方法がさらに好ましい。
工程(A1−3)では、金属薄膜層22の絶縁樹脂層10とは反対側の面に、導電性接着剤塗料を塗布する。導電性接着剤塗料は、熱硬化性接着剤24aと導電性粒子24bと溶剤とを含有する。塗布した導電性接着剤塗料より溶剤を揮発させることにより、異方導電性接着剤層24を形成する。
導電性接着剤塗料に含まれる溶剤としては、例えば、エステル(酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールモノアセテート等)、ケトン(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリールモノメチルエーテル、プロピレングルコール等)等が挙げられる。
導電性接着剤の塗布方法としては、例えば、ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等の各種コーターを用いた方法を適用することができる。
工程(A1−4)では、離型フィルム40を、異方導電性接着剤層24の金属薄膜層22とは反対側の面に、離型剤層44が異方導電性接着剤層24に接するように積層する。
離型フィルム40を異方導電性接着剤層24に積層した後には、キャリアフィルム30、絶縁樹脂層10、金属薄膜層22、異方導電性接着剤層及び離型フィルム40からなる積層体に、各層同士の密着性を高めるための加圧処理を施してもよい。
加圧処理における圧力としては、0.1kPa以上100kPa以下が好ましく、0.1kPa以上20kPa以下がより好ましく、1kPa以上10kPa以下がさらに好ましい。
加圧処理と同時に加熱してもよい。その際の加熱温度としては50℃以上100℃以下が好ましい。
方法(A2)は、下記の工程(A2−1)〜(A2−4)を有する方法である。
工程(A2−1):芳香族ポリエーテルケトン及びフラーレンを含む混合物をフィルム状に成形して形成した絶縁樹脂層10を、キャリアフィルム30に積層する工程。
工程(A2−2):絶縁樹脂層10のキャリアフィルム30とは反対側の面に金属薄膜層22を形成して積層体(I)を形成する工程。
工程(A2−3):離型フィルム40に異方導電性接着剤層24を形成して積層体(II)を形成する工程。
工程(A2−4):積層体(I)と積層体(II)とを、積層体(I)の金属薄膜層22と積層体(II)の異方導電性接着剤層24とが接するように貼り合せる工程。
工程(A2−1)及び工程(A2−2)は、前記方法(A1)における工程(A1−1)及び工程(A1−2)と同様である。
工程(A2−3)では、離型フィルム40の離型剤層44が設けられた面に導電性接着剤塗料を塗布する。塗布した導電性接着剤塗料より溶剤を揮発させることにより、異方導電性接着剤層24を形成する。導電性接着剤塗料及び塗布方法は、前記方法(A)における工程(A1−3)と同様である。
工程(A2−4)では、積層体(I)と積層体(II)との貼り合せでは、積層体(I)と積層体(II)との密着性を高めるための加圧処理を施してもよい。加圧条件は、工程(A1−4)における加圧処理と同様である。また、工程(A2−4)においても、工程(A1−4)と同様に加熱してもよい。
方法(B1)は、導電性接着剤塗料を熱硬化性接着剤26aと導電性粒子26bと溶剤とを含有する塗料に変更して等方導電性接着剤層26を形成したこと以外は方法(A1)と同様の方法である。
方法(B2)は、導電性接着剤塗料を熱硬化性接着剤26aと導電性粒子26bと溶剤とを含有する塗料に変更して等方導電性接着剤層26を形成したこと以外は方法(A2)と同様の方法である。
方法(C1)は、下記の工程(C1−1)〜(C1−3)を有する方法である。
工程(C1−1):芳香族ポリエーテルケトン及びフラーレンを含む混合物をフィルム状に成形して形成した絶縁樹脂層10を、キャリアフィルム30に積層する工程。
工程(C1−2):絶縁樹脂層10のキャリアフィルム30とは反対側の面に等方導電性接着剤層26を形成する工程。
工程(C1−3):等方導電性接着剤層26の絶縁樹脂層10とは反対側の面に離型フィルム40を積層する工程。
方法(C1)は、金属薄膜層の形成を省略し、導電性接着剤として等方導電性接着剤を用い、絶縁樹脂層10に等方導電性接着剤層26を直接形成したこと以外は方法(A1)と同様の方法である。
方法(C2)は、下記の工程(C2−1)〜(C2−3)を有する方法である。
工程(C2−1):芳香族ポリエーテルケトン及びフラーレンを含む混合物をフィルム状に成形して形成した絶縁樹脂層10を、キャリアフィルム30に積層して積層体(I)を形成する工程。
工程(C2−2):離型フィルム40に等方導電性接着剤層26を形成して積層体(II)を形成する工程。
工程(C2−3):積層体(I)と積層体(II)とを、積層体(I)の絶縁樹脂層10と積層体(II)の等方導電性接着剤層26とが接するように貼り合せる工程。
方法(C2)は、金属薄膜層の形成を省略し、導電性接着剤として等方導電性接着剤を用い、絶縁樹脂層10に等方導電性接着剤層26を貼り合せたこと以外は方法(A2)と同様の方法である。
(作用効果)
絶縁樹脂層10が芳香族ポリエーテルケトン及びフラーレンを含有する本態様の電磁波シールドフィルム1によれば、金属を含む導電層20に対する絶縁樹脂層10の接着力を高めることができる。そのため、電磁波シールドフィルム1の取り扱い中に絶縁樹脂層10と導電層20との層間剥離が起きることを防止できる。この効果は、導電層20が金属薄膜層22を有する場合に特に発揮され、金属薄膜層22に対して、芳香族ポリエーテルケトン及びフラーレンを含有する絶縁樹脂層10は高い接着力で接着する。
また、フラーレンは耐熱性が高い材料であるから、芳香族ポリエーテルケトンに加えてフラーレンを含有する絶縁樹脂層10は耐熱性が高い。例えば、150℃における絶縁樹脂層10単体の引張最大強度を80N/mm以上、引張破断伸びを400%以上にすることができる。前記引張最大強度及び前記引張破断伸びは、フィルム状の絶縁樹脂層10より、JIS K7160に規定の3形の試験片を作製し、150℃に加熱した恒温槽付きの引張試験機のつまみ具に前記試験片を取り付け、引張速度50mm/分で測定した際の値である。
上記のような耐熱性が高い絶縁樹脂層10を有する本態様の電磁波シールドフィルム1は耐熱性に優れ、例えば150℃以上の高温環境下で使用しても絶縁樹脂層10と導電層20との層間剥離を防止できる。
また、絶縁樹脂層10にフラーレンが含まれることによって、絶縁樹脂層10を着色化(黒色化)できる。銀蒸着層及び銅蒸着層等の金属薄膜層22は、光反射性が高く、金属光沢を有する。絶縁樹脂層10が着色、特に黒に着色されていれば、金属薄膜層22の金属光沢を抑制できる。そのため、例えば、電磁波シールドフィルム1をディスプレイ用のフレキシブルプリント配線板に使用しても、金属薄膜層22の光沢がディスプレイの視認性に影響を与えることを防止できる。
(他の実施形態)
本態様の電磁波シールドフィルムは、上記実施形態に限定されない。
例えば、異方導電性接着剤層24又は等方導電性接着剤層26の表面の粘着力が小さい場合には、離型フィルム40を省略しても構わない。
絶縁樹脂層10が十分な柔軟性や強度を有する場合は、キャリアフィルム30を省略しても構わない。
キャリアフィルム30は、キャリアフィルム本体32が自己粘着性を有するフィルムである場合には、粘着剤層34を有しなくてもよい。
離型フィルム40は、離型フィルム本体42のみで十分な離型性を有する場合は、離型剤層44を有しなくてもよい。
<電磁波シールドフィルム付きプリント配線板>
本発明の第三態様は、基板の少なくとも片面にプリント回路が設けられたプリント配線板と、前記プリント配線板の前記プリント回路が設けられた側の表面に隣接する絶縁フィルムと、前記接着剤層が前記絶縁フィルムに隣接するように設けられた前記態様の電磁波シールドフィルムと、を有する電磁波シールドフィルム付きプリント配線板である。
図4は、本態様の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の一実施形態を示す断面図である。
電磁波シールドフィルム付きプリント配線板2は、フレキシブルプリント配線板50と、絶縁フィルム60と、第一実施形態の電磁波シールドフィルム1とを備える。
フレキシブルプリント配線板50は、ベースフィルム52の少なくとも片面にプリント回路54が設けられたものである。
絶縁フィルム60は、フレキシブルプリント配線板50のプリント回路54が設けられた側の表面に設けられる。
電磁波シールドフィルム1の異方導電性接着剤層24は、絶縁フィルム60の表面に接着され、かつ硬化されている。また、異方導電性接着剤層24は、絶縁フィルム60に形成された貫通孔(図示略)を通ってプリント回路54に電気的に接続されている。
電磁波シールドフィルム付きプリント配線板2においては、離型フィルムは、異方導電性接着剤層24から剥離されている。
電磁波シールドフィルム付きプリント配線板2においてキャリアフィルム30が不要になった際には、キャリアフィルム30は絶縁樹脂層10から剥離される。
貫通孔のある部分を除くプリント回路54(信号回路、グランド回路、グランド層等)の近傍には、電磁波シールドフィルム1の金属薄膜層22が、絶縁フィルム60及び異方導電性接着剤層24を介して離間して対向配置される。
貫通孔のある部分を除くプリント回路54と金属薄膜層22との離間距離は、絶縁フィルム60の厚さと異方導電性接着剤層24の厚さの総和とほぼ等しい。離間距離は、30μm以上200μm以下が好ましく、60μm以上200μm以下がより好ましい。離間距離が30μmより小さいと、信号回路のインピーダンスが低くなるため、100Ω等の特性インピーダンスを有するためには、信号回路の線幅を小さくしなければならず、線幅のバラツキが特性インピーダンスのバラツキとなって、インピーダンスのミスマッチによる反射共鳴ノイズが電気信号に乗りやすくなる。離間距離が200μmより大きいと、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板2が厚くなり、可とう性が不足する。
(フレキシブルプリント配線板)
フレキシブルプリント配線板50は、銅張積層板の銅箔を公知のエッチング法により所望のパターンに加工してプリント回路54としたものである。
銅張積層板としては、ベースフィルム52の片面又は両面に接着剤層(図示略)を介して銅箔を貼り付けたもの;銅箔の表面にベースフィルム52を形成する樹脂溶液等をキャストしたもの等が挙げられる。
接着剤層の材料としては、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
接着剤層の厚さは、0.5μm以上30μm以下が好ましい。
[ベースフィルム]
ベースフィルム52としては、耐熱性を有するフィルムが好ましく、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルムがより好ましく、ポリイミドフィルムがさらに好ましい。
ベースフィルム52の表面抵抗は、電気的絶縁性の点から、1×10Ω以上が好ましい。ベースフィルム52の表面抵抗は、実用上の点から、1×1019Ω以下が好ましい。
ベースフィルム52の厚さは、5μm以上200μm以下が好ましく、屈曲性の点から、6μm以上50μm以下がより好ましく、10μm以上25μm以下がより好ましい。
[プリント回路]
プリント回路54を構成する銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられ、屈曲性の点から、圧延銅箔が好ましい。プリント回路54は、例えば、信号回路、グランド回路、グランド層等として使用される。
銅箔の厚さは、1μm以上50μm以下が好ましく、18μm以上35μm以下がより好ましい。
プリント回路54の長さ方向の端部(端子)は、ハンダ接続、コネクター接続、部品搭載等のため、絶縁フィルム60や電磁波シールドフィルム1に覆われず、露出している。
(絶縁フィルム)
絶縁フィルム60(カバーレイフィルム)は、絶縁フィルム本体(図示略)の片面に、接着剤の塗布、接着剤シートの貼り付け等によって接着剤層(図示略)を形成したものである。
絶縁フィルム本体の表面抵抗は、電気的絶縁性の点から、1×10Ω以上が好ましい。絶縁フィルム本体の表面抵抗は、実用上の点から、1×1019Ω以下が好ましい。
絶縁フィルム本体としては、耐熱性を有するフィルムが好ましく、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルムがより好ましく、ポリイミドフィルムがさらに好ましい。
絶縁フィルム本体の厚さは、1μm以上100μm以下が好ましく、可とう性の点から、3μm以上25μm以下がより好ましい。
接着剤層の材料としては、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、ポリオレフィン等が挙げられる。エポキシ樹脂は、可とう性付与のためのゴム成分(カルボキシ変性ニトリルゴム等)を含んでいてもよい。
接着剤層の厚さは、1μm以上100μm以下が好ましく、1.5μm以上60μm以下がより好ましい。
絶縁フィルム60に形成される貫通孔の開口部の形状は、特に限定されない。貫通孔の開口部の形状としては、例えば、円形、楕円形、四角形等が挙げられる。
<電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の製造方法>
本発明の第四態様の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の製造方法は、基板の少なくとも片面にプリント回路が設けられたプリント配線板と、前記態様の電磁波シールドフィルムとを、絶縁フィルムを介して圧着する工程を有し、圧着する際には、前記絶縁フィルムを、前記プリント配線板の前記プリント回路が設けられた側の面に密着させると共に、前記電磁波シールドフィルムの前記導電性接着剤層に密着させる、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の製造方法、である。
前記実施形態の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板2は、例えば、下記の工程(a)〜(d)を有する方法によって製造できる(図5参照)。
工程(a):フレキシブルプリント配線板50のプリント回路54が設けられた側の表面に、プリント回路54に対応する位置に貫通孔62が形成された絶縁フィルム60を設け、絶縁フィルム付きプリント配線板3を得る工程。
工程(b):工程(a)の後、絶縁フィルム付きプリント配線板3と、離型フィルム40を剥離した電磁波シールドフィルム1とを、絶縁フィルム60の表面に異方導電性接着剤層24が接触するように重ね、これらを圧着する工程。
工程(c):工程(b)の後、キャリアフィルム30が不要になった際にキャリアフィルム30を剥離する工程。
工程(d):必要に応じて、工程(a)と工程(b)との間、又は工程(c)の後に異方導電性接着剤層24を本硬化させる工程。
以下、各工程について、図5を参照しながら詳細に説明する。
(工程(a))
工程(a)は、フレキシブルプリント配線板50に絶縁フィルム60を積層して、絶縁フィルム付きプリント配線板3を得る工程である。
具体的には、まず、フレキシブルプリント配線板50に、プリント回路54に対応する位置に貫通孔62が形成された絶縁フィルム60を重ねる。次いで、フレキシブルプリント配線板50の表面に絶縁フィルム60の接着剤層(図示略)を接着し、接着剤層を硬化させることによって、絶縁フィルム付きプリント配線板3を得る。フレキシブルプリント配線板50の表面に絶縁フィルム60の接着剤層を仮接着し、工程(d)にて接着剤層を本硬化させてもよい。
接着剤層の接着及び硬化は、例えば、プレス機(図示略)等による熱プレスによって行う。
(工程(b))
工程(b)は、絶縁フィルム付きプリント配線板3に電磁波シールドフィルム1を圧着する工程である。
具体的には、絶縁フィルム付きプリント配線板3に、離型フィルム40を剥離した電磁波シールドフィルム1を重ね、熱プレス等により圧着する。これにより、絶縁フィルム60の表面に異方導電性接着剤層24を接着すると共に、異方導電性接着剤層24を貫通孔62内に押し込み、貫通孔62内を埋めてプリント回路54に電気的に接続する。これにより、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板2を得る。
異方導電性接着剤層24の接着及び硬化は、例えば、プレス機(図示略)等による熱プレスによって行う。
熱プレスの時間は、20秒以上60分以下が好ましく、30秒以上30分以下がより好ましい。熱プレスの時間が前記範囲の下限値以上であれば、絶縁フィルム60の表面に異方導電性接着剤層24を容易に接着できる。熱プレスの時間が前記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板2の製造時間を短縮できる。
熱プレスの温度(プレス機の熱盤の温度)は、140℃以上190℃以下が好ましく、150℃以上175℃以下がより好ましい。熱プレスの温度が前記範囲の下限値以上であれば、絶縁フィルム60の表面に異方導電性接着剤層24を容易に接着できる。また、熱プレスの時間を短縮できる。熱プレスの温度が前記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム1、フレキシブルプリント配線板50等の劣化等を容易に抑えることができる。
熱プレスの圧力は、0.5MPa以上20MPa以下が好ましく、1MPa以上16MPa以下がより好ましい。熱プレスの圧力が前記範囲の下限値以上であれば、絶縁フィルム60の表面に異方導電性接着剤層24が接着される。また、熱プレスの時間を短縮できる。熱プレスの圧力が前記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム1、フレキシブルプリント配線板50等の破損等を抑えることができる。
(工程(c))
工程(c)は、キャリアフィルム30を剥離する工程である。
具体的には、キャリアフィルムが不要になった際に、絶縁樹脂層10からキャリアフィルム30を剥離する。
(工程(d))
工程(d)は、異方導電性接着剤層24を本硬化させる工程である。
工程(b)における熱プレスの時間が20秒以上10分以下の短時間である場合、工程(b)と工程(c)との間、又は工程(c)の後に異方導電性接着剤層24の本硬化を行うことが好ましい。
異方導電性接着剤層24の本硬化は、例えば、オーブン等の加熱装置を用いて行う。
加熱時間は、15分以上120分以下であり、30分以上60分以下がより好ましい。加熱時間が前記範囲の下限値以上であれば、異方導電性接着剤層24を十分に硬化できる。加熱時間が前記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板2の製造時間を短縮できる。
加熱温度(オーブン中の雰囲気温度)は、120℃以上180℃以下が好ましく、120℃以上150℃以下がより好ましい。加熱温度が前記範囲の下限値以上であれば、加熱時間を短縮できる。加熱温度が前記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム1、フレキシブルプリント配線板50等の劣化等を抑えることができる。
(作用効果)
本態様の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板は、上記電磁波シールドフィルム1を用いるものであるから、絶縁樹脂層10と金属を含む導電層20との接着力が十分に高い。そのため、絶縁樹脂層10と導電層20との間の層間剥離を防ぐことができる。
また、本態様の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板は、上記電磁波シールドフィルム1を用いるものであるから、耐熱性が高く、例えば150℃以上の高温環境下で使用しても絶縁樹脂層10と導電層20との間の層間剥離を防ぐことができる。
(他の実施形態)
本態様の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板は、上記の実施形態に限定されない。
例えば、フレキシブルプリント配線板50は、裏面側にグランド層を有するものであってもよい。また、フレキシブルプリント配線板50は、両面にプリント回路54を有し、両面に絶縁フィルム60及び電磁波シールドフィルム1が貼り付けられたものであってもよい。
フレキシブルプリント配線板50の代わりに、柔軟性のないリジッドプリント基板を用いてもよい。
第一実施形態の電磁波シールドフィルム1の代わりに、第二実施形態の電磁波シールドフィルム1又は第三実施形態の電磁波シールドフィルム1を用いてもよい。
(製造例1)
ポリエーテルエーテルケトン(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、製品名:キータスパイアポリエーテルエーテルケトングレード:KT−851NL SP)を冷凍粉砕法により粉砕した。粉砕したポリエーテルエーテルケトンの粒度を、エアージェットシーブ標準ふるいにより測定したところ、6メッシュパスであった。
次いで、粉砕したポリエーテルエーテルケトン100質量部と、フラーレン(フロンティアカーボン社製、製品名:nanom mix STH、組成:C60とC70の混合物)0.3質量部とを樹脂容器に投入した。その樹脂容器には、攪拌子として直径10mmのジルコニアボールを併せて投入した。
樹脂容器に蓋を取り付けてタンブラーミキサーに装着した後、このタンブラーミキサーを室温で1時間回転させて、ポリエーテルエーテルケトン及びフラーレンを混合し、その後、ジルコニアボールを取り出して溶融混練用混合物を得た。
次いで、前記溶融混練用混合物を、スクリュー直径25mmの同方向回転二軸押出機(L/D=41)に供給し、減圧下で溶融混練した。その際、同方向回転二軸押出成形機のシリンダー温度を投入口側で350℃とすると共にダイス側で380℃とし、ダイス温度を380℃とした。
前記同方向回転二軸押出成形機のダイスから溶融混練物を棒状に押し出した。ダイス出口から吐出した直後の溶融混練物の温度を測定したところ、398℃であった。前記溶融混練物を水冷した後に裁断して、ポリエーテルエーテルケトンとフラーレンとの混合物であるペレットを得た。
次いで、前記ペレットを150℃に加熱した熱風乾燥機に投入し、12時間乾燥させて、水分率を300ppm以下にした。前記含水率は、微量水分測定装置(三菱化学社製、CA−100型)を用い、カールフィッシャー滴定法により測定した値である。
次いで、乾燥したペレットを、幅400mmのTダイスを備えた単軸押出成形機(スクリュータイプ:フルフライトスクリュー、スクリュー直径:40mm、L/D:32、圧縮比:2.5)に投入し、溶融した。その際、単軸押出成形機のペレット投入口には、窒素ガスを18L/分の流量で供給して窒素雰囲気とした。また、単軸押出成形機のシリンダー温度を投入口側で380℃とすると共にダイス側で400℃とし、ダイス温度を400℃とした。また、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度を400℃に調整した。
前記押出成形機にて溶融した溶融物をTダイスから連続的に押し出し、帯形に押出成形して、溶融状のフィルムを得た。Tダイス出口から吐出した直後の溶融物の温度を測定したところ、397℃であった。
溶融状のフィルムを、シリコーンゴム製の圧着ロールと、周面に凹凸を備えた210℃の金属ロールとで挟んで冷却して、厚さ12μmのフラーレン含有ポリエーテルエーテルケトンフィルム(以下、「フラーレン含有PEEKフィルム」という。)を得た。得られたフラーレン含有PEEKフィルムは、巻取管で巻き取った。
(製造例2)
製造例1においてポリエーテルエーテルケトンにフラーレンを配合しなかった以外は製造例1と同様の方法によりポリエーテルエーテルケトンを帯形に押出成形して、フラーレンを含有しないポリエーテルエーテルケトンフィルム(PEEKフィルム)を得た。
(実施例1)
アクリル系粘着剤からなる粘着剤層がPETフィルム(キャリアフィルム本体)の片面に設けられたキャリアフィルムを用意した。キャリアフィルムの粘着剤層表面に、製造例1で得たフラーレン含有PEEKフィルムからなる絶縁樹脂層を貼り合せた。
次いで、前記絶縁樹脂層のキャリアフィルムとは反対側の面に、電子ビーム蒸着法により銅を物理的に蒸着させて、金属薄膜層(銅蒸着膜、厚さ0.07μm、表面抵抗0.3Ω)を形成した。
エポキシ樹脂からなる熱硬化性接着剤(DIC社製、EXA−4816)100質量部と、硬化剤(味の素ファインテクノ社製、PN−23)20質量部とを混合して、潜在硬化性エポキシ樹脂組成物を得た。
前記潜在硬化性エポキシ樹脂組成物と、銅粒子からなる導電性粒子(平均粒子径7.5μm)40質量部とを、メチルエチルケトンからなる溶剤200質量部に溶解又は分散させて、導電性接着剤塗料を得た。
次いで、前記導電性接着剤塗料を、前記金属薄膜層の絶縁樹脂層とは反対側の面に、ダイコーターを用いて塗布し、溶剤を揮発させてBステージ化することによって、異方導電性接着剤層(厚さ7μm、銅粒子4.5体積%)を形成した。
非シリコーン系離型剤からなる離型剤層(厚さ0.1μm)がPETフィルム(厚さ50μm)の片面に設けられた離型フィルム(リンテック社製、T157)を用意した。
前記異方導電性接着剤層の金属薄膜層とは反対側の面に前記離型フィルムを、前記異方導電性接着剤層に前記離型剤層が接するように貼り付けて、実施例1の電磁波シールドフィルムを得た。
(比較例1)
絶縁樹脂層形成用塗料として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製、エピクロン840−S)100質量部と、硬化剤(三菱ケミカル社製、JERキュア113)20質量部と、2−エチル−4−メチルイミダゾール2質量部と、カーボンブラック2質量部とを、メチルエチルケトン200質量部に溶解させた塗料を調製した。
前記絶縁樹脂層形成用塗料を、実施例1において使用したキャリアフィルムと同様のキャリアフィルムの粘着剤層表面に塗布し、60℃、2分間加熱して乾燥させ、半硬化させて厚さ5μmの絶縁樹脂層を形成した。この絶縁樹脂層には1個/m以上3個/m以下のピンホールが観察された。
ピンホールのない領域を選択し、その選択された領域における絶縁樹脂層の表面に、電子ビーム蒸着法により銅を物理的に蒸着させて、金属薄膜層(銅蒸着膜、厚さ0.07μm、表面抵抗0.3Ω)を形成した。
実施例1と同様に、金属薄膜層の絶縁樹脂層とは反対側の面に異方導電性接着剤層を形成し、異方導電性接着剤層に離型フィルムを貼り付けて、比較例1の電磁波シールドフィルムを得た。
[評価]
(接着性)
実施例1と比較例1の電磁波シールドフィルムについて、下記の方法により、絶縁樹脂層と金属薄膜層との接着性を評価した。
厚さ25μmのポリイミドフィルムに、離型フィルムを剥離した電磁波シールドフィルムを重ね、ホットプレス装置(折原製作所社製、G−12)を用い、熱盤温度:180℃、荷重:2MPaで120秒間熱プレスした。次いで、キャリアフィルムを剥離した。これにより、絶縁フィルムの表面に異方導電性接着剤層を仮接着して、電磁波シールドフィルム付きポリイミドを得た。
前記電磁波シールドフィルム付きポリイミドフィルムを、高温槽(楠本化成社製、HT210)を用い、温度160℃、1時間加熱することにより、異方導電性接着剤層を本硬化させた。
次いで、電磁波シールドフィルムの絶縁樹脂層の表面に、ボンディングシート(デクセリアルズ社製、D3410)を介して、厚さ25μmのポリイミド補強板を熱圧着して、引張試験用試験片を作製した。
前記試験片のポリイミドフィルムとポリイミド補強板とに引張試験機のチャックを取り付け、JIS Z0237に従い、180°剥離方向、引張速度50mm/分の条件で剥離試験をおこなった。
[結果]
実施例1の電磁波シールドフィルムを用いた試験片では、剥離強度が9.4N/cmでボンディングシートの母材破壊が起こっており、絶縁樹脂層と金属薄膜層との接着は維持されていた。
比較例1の電磁波シールドフィルムを用いた試験片では、剥離強度3.5N/cmで、絶縁樹脂層と金属薄膜層との間で層間剥離が生じていた。
これらの結果より、芳香族ポリエーテルケトン及びフラーレンを含む絶縁樹脂層は、従来使用されていた熱硬化性樹脂からなる絶縁樹脂層よりも金属薄膜層との接着力が強いことがわかった。
(耐熱性)
製造例1のフラーレン含有PEEKフィルムと製造例2のPEEKフィルムについて、下記の方法により150℃における引張最大強度を測定し、耐熱性を評価した。
フィルムの150℃における引張最大強度は、フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。測定用の試験片は、JIS K7160 3形を使用した。具体的には、得られたフィルムから、JIS K7160 3形になるように試験片を切り出し、この試験片を予め150℃の加熱した恒温槽付き引張試験機に取り付け、JISK7127に準拠し、引張速度50mm/分で測定した。測定においては、試験片を恒温槽内の引張試験機のつまみ具に取り付け、恒温槽の扉を閉じ、恒温槽の温度が150±2℃に達した後、3分間放置後に実施した。
上記方法により測定された引張最大強度が高い程、耐熱性が高いことを意味する。
[結果]
製造例1のフラーレン含有PEEKフィルムは、押出方向の引張最大強度が101N/mmであり、幅方向の引張最大強度が90N/mmであった。
これに対し、製造例2のフラーレンを含有しないPEEKフィルムは、押出方向の引張最大強度が70N/mmであり、幅方向の引張最大強度が73N/mmであった。
これらの結果より、フラーレン含有PEEKフィルムは耐熱性が高いことは明らかである。また、この耐熱性が高いフラーレン含有PEEKフィルムを有する電磁波シールドフィルムは、耐熱性が高いことは容易に推測できる。
1 電磁波シールドフィルム
2 電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板
3 絶縁フィルム付きフレキシブルプリント配線板
10 絶縁樹脂層
22 金属薄膜層
20 導電層
24 異方導電性接着剤層
24a 熱硬化性接着剤
24b 導電性粒子
26 等方導電性接着剤層
26a 熱硬化性接着剤
26b 導電性粒子
30 キャリアフィルム
32 キャリアフィルム本体
34 粘着剤層
40 離型フィルム
42 離型フィルム本体
44 離型剤層
50 フレキシブルプリント配線板
52 ベースフィルム
54 プリント回路
60 絶縁フィルム
62 貫通孔

Claims (11)

  1. 絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層に隣接する導電層とを有し、
    前記絶縁樹脂層が芳香族ポリエーテルケトン及びフラーレンを含有し、前記導電層が、金属を含む導電性接着剤層を少なくとも有する、電磁波シールドフィルム。
  2. 前記絶縁樹脂層における前記フラーレンの含有量が、前記芳香族ポリエーテルケトン100質量部に対して0.05質量部以上5質量部以下である、請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
  3. 前記芳香族ポリエーテルケトンがポリエーテルエーテルケトン又はポリエーテルケトンケトンである、請求項1又は2に記載の電磁波シールドフィルム。
  4. 前記絶縁樹脂層の厚さが3μm以上100μm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電磁波シールドフィルム。
  5. 前記導電層が、前記絶縁樹脂層側に設けられた金属薄膜層と、前記金属薄膜層の前記絶縁樹脂層とは反対側に設けられた導電性接着剤層とを有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電磁波シールドフィルム。
  6. 前記金属薄膜層が金属蒸着層である、請求項5に記載の電磁波シールドフィルム。
  7. 前記金属蒸着層が銀蒸着層又は銅蒸着層である、請求項6に記載の電磁波シールドフィルム。
  8. 前記絶縁樹脂層の前記導電層とは反対側の面に、キャリアフィルムをさらに有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電磁波シールドフィルム。
  9. 基板の少なくとも片面にプリント回路が設けられたプリント配線板と、
    前記プリント配線板の前記プリント回路が設けられた側の面に隣接する絶縁フィルムと、
    前記導電性接着剤層が前記絶縁フィルムに隣接するように設けられた請求項1〜8のいずれか一項に記載の電磁波シールドフィルムと、
    を有する、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板。
  10. 芳香族ポリエーテルケトン及びフラーレンを含む混合物をフィルム状に成形して絶縁樹脂層を形成する工程と、前記絶縁樹脂層の一方の面側に、金属を含む導電性接着剤層を少なくとも有する導電層を形成する工程と、を有する、電磁波シールドフィルムの製造方法。
  11. 基板の少なくとも片面にプリント回路が設けられたプリント配線板と、請求項1〜8のいずれか一項に記載の電磁波シールドフィルムとを、絶縁フィルムを介して圧着する工程を有し、
    圧着する際には、前記絶縁フィルムを、前記プリント配線板の前記プリント回路が設けられた側の面に密着させると共に、前記電磁波シールドフィルムの前記導電性接着剤層に密着させる、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の製造方法。
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