以下、本発明の実施の形態に係る立体ディスプレイについて図面を参照しながら説明する。
(1)立体ディスプレイの構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る立体ディスプレイの模式的断面図である。図2は、図1の立体ディスプレイの模式的平面図である。
図1に示すように、立体ディスプレイ1は、複数の光線発生器2、制御装置3、記憶装置4および反射部材7により構成される。制御装置3は、例えばパーソナルコンピュータ、サーキットボードまたは組み込みシステム等からなる。記憶装置4は、例えばハードディスク、メモリカード等からなる。記憶装置4には、立体画像300を提示するための立体形状データが記憶される。
図1および図2の立体ディスプレイ1の一部は、テーブル5に取り付けられる。テーブル5は、円形の天板51および複数の脚52からなる。天板51は中心に円形の孔部51hを有する。孔部51hの形状は円形に限らず、三角形もしくは四角形等の多角形、楕円またはその他の形状であってもよい。また、テーブル5の孔部51hに透明の板が嵌め込まれてもよい。テーブル5の周囲にいる観察者10は、テーブル5の天板51の斜め上方から天板51の中心近傍を観察することができる。
反射部材7は、テーブルの孔部51hの下方において、上下方向に延びる軸Aの周囲を取り囲むように設けられる。本例において、反射部材7は、軸Aを中心に回転対称な略円筒形状を有する。反射部材7は、軸Aを中心とする内周面を反射面7aとして有する。軸Aに垂直な面内(水平面内)で、反射面7aは、軸Aを中心とする円形である。また、反射面7aは、上下方向において凹状に湾曲する。反射面7aの詳細については後述する。反射部材7の内部から上方にかけて形成される画像提示空間RSに立体画像300が提示される。
複数の光線発生器2は、テーブル5の天板51の下方において、軸Aの周囲を取り囲むように固定的に設けられる。本例において、複数の光線発生器2は、軸Aをそれぞれ中心とする円Cp1,Cp2上に配置される。円Cp1,Cp2は、軸Aを取り囲むように定義され、軸Aに垂直で互いに異なる仮想面上に設定される。円Cp1,Cp2は、それぞれ軸Aに関して反射部材7より外方にも位置し、円Cp2は、円Cp1より下方に位置する。複数の光線発生器2は、円Cp1に沿って円環状に並べられるとともに、円Cp2に沿って円環状に並べられる。複数の光線発生器2は、テーブル5および反射部材7に対して固定的な位置に設けられる。複数の光線発生器2が、光線発生器アレイとして一体的に設けられてもよい。各光線発生器2は、複数の光線からなる光線群を出射する光線出射部Pを有する。各光線発生器2の光線出射部Pは、反射部材7の反射面7aに向けられる。また、光線出射部Pから出射される光線群の少なくとも一部は、軸Aを通る。ここで、光線とは、拡散しない直線で表される光をいう。光線発生器2としては、例えば走査型プロジェクタが用いられる。走査型プロジェクタは、光線を出射するとともにその光線を水平面内および垂直面内で偏向させることができる。
各光線の色(各画素の色)は、提示されるべき立体画像300に応じて設定される。光線発生器2として走査型プロジェクタを用いる場合には、光線の出射方向ごとに光線の色が設定される。これにより、擬似的に光線群を形成することができる。
光線発生器2は、空間光変調器および複数のレンズからなるレンズアレイ等の投影系を備えた一般的なプロジェクタであってもよい。ここで、投影系のアパーチャ(開口)が十分に小さい場合には、走査型プロジェクタと同様に光線群を形成することができる。空間光変調器は、例えばDMD(Digital Micromirror Device)、LCD(Liquid Crystal Display)またはLCOS(Liquid Crystal on Silicon)である。あるいは、点光源またはレーザポインタとスライドフィルムとを組み合わせて光線発生器2としてもよい。
制御装置3は、記憶装置4に記憶される立体形状データに基づいて複数の光線発生器2を制御する。これにより、画像提示空間RSに立体画像300が提示される。
テーブル5の天板51より高い位置に、軸Aを中心とする円環状の観察領域Ce1,Ce2が設定される。本例では、軸Aに関して円Cp1,Cp2よりも外方に観察領域Ce1,Ce2が位置する。図1および図2においては、観察領域Ce1,Ce2がそれぞれ線で示されるが、観察領域Ce1,Ce2は上下方向および水平方向において一定の幅を有してもよい。観察者10は、観察領域Ce1,Ce2から、画像提示空間RSに提示される立体画像300を観察することができる。
(2)光線発生器の動作
図3は、光線発生器2の動作を説明するための模式的平面図および模式的側面図である。図3(a)には、円Cp1上に配置される1つの光線発生器2が示される。図3(b)には、円Cp1上に配置される1つの光線発生器2および円Cp2上に配置される1つの光線発生器2が示される。
各光線発生器2から出射される光線群は、複数列および複数行に並ぶ複数の光線Lを含む。列は上下方向の並びであり、行は水平方向の並びである。すなわち、各列の複数の光線は上下方向に平行な面上に並び、各行の複数の光線は水平方向に平行な面上に並ぶ。以下、各列の複数の光線Lの並びを光線列と呼び、各行の複数の光線Lの並びを光線行と呼ぶ。
図3(a)に示すように、水平方向において、円Cp1上の光線発生器2から出射される光線群は、円形の水平断面を有する反射面7aで反射される。この場合、共通の光線行に含まれる複数の光線Lが、平面視で互いに異なる方向に進行する。円Cp2上の光線発生器2から出射される光線群についても同様である。
図3(b)に示すように、円Cp1上の光線発生器2から出射される光線群は、反射面7aで反射されて上下方向において観察領域Ce1に集光される。この場合、共通の光線列に含まれる複数の光線Lは、観察領域Ce1内のほぼ共通の位置に到達する。また、円Cp2上の光線発生器2から出射される光線群は、反射面7aで反射されて上下方向において観察領域Ce2に集光される。この場合、共通の光線列に含まれる複数の光線Lは、観察領域Ce2内のほぼ共通の位置に到達する。
観察者10は、観察領域Ce1内のある位置において、円Cp1上に配置された1つの光線発生器2から出射される光線群のうち、共通の光線列に含まれる複数の光線Lを視認することができる。また、観察者10は、観察領域Ce2内のある位置において、円Cp2上に配置された1つの光線発生器2から出射される光線群のうち、共通の光線列に含まれる複数の光線Lを視認することができる。
なお、図3(a)に示すように、各光線発生器2から出射される光線列は、反射面7aで反射されることによって進行方向が分散する。そのため、水平方向において、観察領域Ce1,Ce2に到達する複数の光線の間隔が大きくなりやすい。そこで、各光線発生器2から出射される光線群について、光線行の密度は、光線列の密度よりも高いことが好ましい。光線の密度とは、単位角度当たりの光線数を意味する。光線行の密度は、上下方向に拡がる複数の光線のうち単位角度当たりの光線数であり、光線列の密度は、水平方向に広がる複数の光線のうち単位角度当たりの光線数である。すなわち、光線列における単位角度当たりの光線数より光線行における単位角度当たりの光線数が多いことが好ましい。この場合、観察領域Ce1,Ce2に到達する複数の光線Lの間隔を縮めることができるので、立体画像300の精細度を高めることができる。
(3)立体画像の提示方法
図4は立体画像300の提示方法を説明するための模式的平面図である。ここでは、円Cp1上に配置された複数の光線発生器2による立体画像300の提示方法について説明する。以下、観察領域Ce1で観察されるべき立体画像300を立体画像300Aと呼び、観察領域Ce2で観察されるべき立体画像300を立体画像300Bと呼ぶ。図4には、円Cp1上に配置された3つの光線発生器2A,2B,2Cが示される。
図4(a)において、例えば、画像提示空間RSの位置PRに赤色の画素を提示する場合には、光線発生器2Aは、反射面7aで反射されて位置PRを通るように赤色の光線LA0を出射し、光線発生器2Bは、反射面7aで反射されて位置PRを通るように赤色の光線LB0を出射し、光線発生器2Cは、反射面7aで反射されて位置PRを通るように光線LC0を出射する。
それにより、赤色の光線LA0,LB0,LC0の交点に点光源となる赤色の画素が提示される。具体的には、観察者の眼が、位置IA0,IB0,IC0にある場合に、位置PRに赤色の画素が見える。位置IA0,IB0,IC0は、観察領域Ce1内の互いに異なる位置である。
同様にして、画像提示空間RSの位置PGに緑色の画素を提示する場合、光線発生器2Aは、反射面7aで反射されて位置PGを通るように緑色の光線LA1を出射し、光線発生器2Bは、反射面7aで反射されて位置PGを通るように緑色の光線LB1を出射し、光線発生器2Cは、反射面7aで反射されて位置PGを通るように緑色の光線LC1を出射する。
それにより、緑色の光線LA1,LB1,LC1の交点に点光源となる緑色の画素が提示される。この場合、観察者の眼が位置IA1,IB1,IC1にある場合に、位置PGに緑色の画素が見える。位置IA1,IB1,IC1は、観察領域Ce1内の互いに異なる位置である。
このようにして、複数の光線発生器2A,2B,2Cの各々から立体画像300Aの各位置を通る方向に提示すべき色の光線が出射される。
光線発生器2A,2B,2Cを含む複数の光線発生器2が円Cp1に沿うように密に並べられており、それらの複数の光線発生器2から出射される光線群によって画像提示空間RSが十分に密に交点群で満たされていれば、観察領域Ce1内のいずれの位置から画像提示空間RSを観察しても位置PR,PGを通過する適切な光線が眼に入射することになり、人の眼はそこに点光源があるように認識する。実物体の表面にて反射または拡散した照明光を人は物体として認識するので、物体の表面は点光源の集合とみなすことができる。すなわち、物体の表面としたい複数の位置の色を複数の光線発生器2より飛来する光線によって適切に再現することにより、観察領域Ce1で観察可能な立体画像300Aを提示することができる。
また、観察領域Ce1内において、観察者10の右眼の位置と左眼の位置とは互いに異なる。観察者10が1つの点光源を見る場合、その点光源をなす複数の光線のうち、異なる方向の光線が右眼および左眼にそれぞれ入射する。そのため、観察者10は、右眼と左眼とで異なる視線方向に各点光源を見ることができる。すなわち右眼の視線方向と左眼の視線方向との間には輻輳角がある。また、右眼で見る複数の点光源の位置関係と、左眼で見る複数の点光源の位置関係とは異なる。すなわち視差が発生する。これらにより、観察者10は、光線群により形成される画像を立体視することができる。
上下方向においては、共通の光線列に含まれる複数の光線Lが観察領域Ce1のほぼ共通の位置に集光される。例えば、図4(a)の位置IA0には、光線発生器2Aから出射される光線群のうち、光線LA0と共通の光線列に含まれる複数の光線Lが到達する。これにより、上下方向において物体の表面を表す複数の色を再現することができる。
同様にして、円Cp2上に配置された複数の光線発生器2は、図示しない立体画像300Bの各位置を通るように、提示すべき色の光線を出射する。それにより、観察領域Ce2で観察可能な立体画像300Bを画像提示空間RSに提示することができる。
立体画像300A,300Bは、例えば上下方向において互いに視差を有する画像である。すなわち、観察領域Ce1から見える物体の表面の各位置の色が円Cp1上の複数の光線発生器2から出射される光線群によって再現され、観察領域Ce2から見える物体の表面の各位置の色が円Cp2上の複数の光線発生器2から出射される光線群によって再現される。
(4)位置関係
図5は、図4の反射面7a、円Cp1および観察領域Ce1の位置関係について説明するための図である。図4の反射面7a、円Cp2および観察領域Ce2の位置関係は、図5に示す位置関係と同様である。図5には、反射面7aが示されるとともに、円Cp1および観察領域Ce1にそれぞれ対応する仮想円Cp1’および仮想観察領域Ce1’が示される。仮想円Cp1’は、上下方向(軸Aに平行な方向)において、軸Aに垂直でかつ反射面7aと交差する面(以下、仮想面と呼ぶ。)に円Cp1が投影されることによって定まる仮想的な円である。仮想観察領域Ce1’は、上下方向において、仮想面に観察領域Ce1が投影されることによって定まる仮想的な観察領域である。
図5の例では、仮想観察領域Ce1’内の任意の点をPeとし、点Peから軸Aを通って仮想円Cp1’と交差する直線をLpaとし、直線Lpaと仮想円Cp1’との一対の交点をPpa,Ppa’とする。点Ppaと点Peとの間の距離は、点Ppa’と点Peとの間の距離よりも大きい。また、仮想円Cp1’上の点Ppbと点Peとを通る直線をLpbとする。仮想円Cp1’上において、点Ppbは点Ppaとは異なる点である。直線Lpbは、反射面7aと2点で交差する。
直線Lpaと反射面7aとの一対の交点のうち、点Peからの距離が大きい側の点をPmaとし、直線Lpbと反射面7aとの一対の交点のうち、点Peからの距離が大きい側の点をPmbとする。また、点Pmbにおける法線をLnbとし、法線Lnbに関して直線Lpbと線対称な直線をLmbとし、直線Lmbと仮想円Cp1’との一対の交点のうち、点Pmbからの距離が遠い側の点をPpb’とする。また、仮想円Cp1’上における点Ppaと点Ppbとの間の距離をWpとし、仮想円Cp1’上における点Ppa’と点Ppb’との間の距離をWp’とする。この場合、距離Wp’が距離Wpよりも大きい。以下に説明するように、本実施の形態では、図5の点Ppa’,Ppb’間の距離Wp’が点Ppa,Ppb間の距離Wpよりも大きいという関係を利用している。
(5)入射光線密度の比較
本実施の形態では、光線発生器2から出射された光線が、反射部材7の反射面7aで反射して観察者10の眼に到達する。この場合、光線発生器2から出射された光線が直接的に観察者10の眼に到達する場合と比べて、観察者10の眼に入射する光線の密度(以下、入射光線密度と呼ぶ。)が高くなる。
図6は、光線発生器2から出射された光線が直接的に観察者10の眼に入射する場合の入射光線密度について説明するための図である。図7は、本実施の形態における入射光線密度について説明するための図である。図6および図7には、図5と同様に、仮想円Cp1’および仮想観察領域Ce1’が示される。
図6の例では、仮想円Cp1’上の位置PpL’,PpM’に光線発生器2L’,2M’が仮想的に配置される。光線発生器2L’から出射される光線群のうちの光線LL’が仮想観察領域Ce1’上の位置IXに到達するとともに、光線発生器2M’から出射される光線群のうちの光線LM’が位置IXに到達する。位置PpL’は、第3の仮想出射点の例であり、位置PpM’は、第4の仮想出射点の例であり、位置IXは仮想観察点の例である。
光線LL’と光線LM’とは、角度θをなす。この場合、光線発生器2L’と光線発生器2M’との間に位置する他の光線発生器2の数が多いほど、角度θの範囲内における入射光線密度が高い。
しかしながら、光線発生器2L’,2M’の間に配置可能な光線発生器2の数は、光線発生器2の物理的な大きさによって制限される。そのため、光線発生器2L’と光線発生器2M’との間の光線発生器2の数を増やすには限界がある。一方、角度θを維持しながら、光線発生器2L’,2M’と位置IXとの間の距離を大きくする(光線発生器2L’,2M’を位置IXから遠ざける)と、光線発生器2L’と光線発生器2M’との間隔が広がる。そのため、光線発生器2L’と光線発生器2M’との間により多くの光線発生器2を配置することが可能となり、角度θの範囲内における入射光線密度を高めることが可能となる。しかしながら、その場合には立体ディスプレイ1の占有面積が増大する。
図7の例では、仮想円Cp1’上の位置PpL,PpMに、光線発生器2L,2Mが仮想的に配置される。光線発生器2Lから出射される光線群のうちの光線LLが、反射面7aの位置PmLで反射されて位置IXに到達するとともに、光線発生器2Mから出射される光線群のうちの光線LMが、反射面7aのPmMで反射されて位置IXに到達する。位置PpLは第1の仮想出射点の例であり、位置PpMは第2の仮想出射点の例であり、位置PmLは第1の反射点の例であり、位置PmMは第2の反射点の例である。
図7の光線発生器2L’は、位置PmLと位置IXとを通る直線上に位置し、図7の光線発生器2M’は、位置PmMと位置IXとを通る直線上に位置する。そのため、反射後の光線LLと光線LMとがなす角度は、図6の光線LL’と光線LM’とがなす角度θと等しい。
光線発生器2Lと位置PmLとの間の距離DLは、光線発生器2L’と位置PmLとの間の距離DL’よりも大きい。また、光線発生器2Mと位置PmMとの間の距離DMは、光線発生器2M’と位置PmMとの間の距離DM’よりも大きい。この場合、光線発生器2Lと光線発生器2Mとの間の距離は、図6の光線発生器2L’と光線発生器2M’との間の距離よりも大きい。そのため、光線発生器2Lと光線発生器2Mとの間に配置可能な光線発生器2の数は、光線発生器2L’と光線発生器2M’との間に配置可能な光線発生器2の数よりも多い。したがって、図7の例では、図6の例と比べて、立体ディスプレイの占有面積を増大させることなく、角度θの範囲内における入射光線密度を高めることができる。他の角度範囲においても、同様の効果が得られる。
このように、反射部材7が設けられる場合には、反射部材7が設けられない場合と比べて、立体ディスプレイの占有面積を増大させることなく、入射光線密度を高くすることができる。また、反射部材7が設けられない場合の光線発生器2の数より反射部材7が設けられる場合の光線発生器2の数が少なくても、反射部材7が設けられない場合と反射部材7が設けられる場合とで同等の入射光線密度を得ることが可能である。観察領域Ce2における入射光線密度についても図6および図7の例と同様に、円Cp2の各光線発生器2から出射される光線Lを反射部材7の反射面7aで反射させることにより、入射光線密度を高くすることができる。
(6)上下方向の視差
上記のように、円Cp1上の光線発生器2から出射される光線群は、上下方向において観察領域Ce1に集光され、かつ円Cp2上の光線発生器2から出射される光線群は、上下方向において観察領域Ce2に集光される。
図8は、反射面7aの詳細について説明するための図である。図8においては、XY座標が定義される。X軸は、軸Aと直交しかつ反射面7aの上端を通る。Y軸は、軸Aと平行である。X軸とY軸との交差位置に、原点Oが定義される。
図8の例では、円Cp1上の点PpGから出射される1つの光線が、反射面7a上の点PmGで反射され、観察領域Ce1内の点IGに到達する。ここで、点PpGの座標を(x1,−y1)とし、点IGの座標を(x2,y2)とし、Y軸から点PmGまでの距離をΔxとし、X軸から点PmGまでの距離をΔyとする。また、点PmGから点PpGに到るベクトルをV1とし、点PmGから点IGに到るベクトルをV2とする。また、点PmGと点IGとを通る直線が、点PmGを中心としかつ点PpGを通る円と交差する点をIG’とし、点IG’の座標を(x2’,y2’)とし、点PmGから点IG’に到るベクトルをV2’とする。x1,y1、x2,y2,Δx,Δy,x2’,y2’は、それぞれ正の値である。
ベクトルV2’の長さ|V2’|は、定義からベクトルV1の長さ|V1|と等しい。ベクトルV1の長さ|V1|とベクトルV2の長さ|V2|との間には、次式(1)が成立する。
|V1|/|V2|=|V2’|/|V2|
=(x2’+Δx)/(x2+Δx)
=(y2’+Δy)/(y2+Δy) ・・・(1)
|V2’|=|V2|を比αとすると、V2’=αV2であり、次式(2),(3)が成立する。
x2’+Δx=α(x2+Δx) ・・・(2)
y2’+Δy=α(y2+Δy) ・・・(3)
また、|V1|および|V2|は、次式(4),(5)で表される。
|V1|=√{(x1+Δx)2+(y1−Δy)2} ・・・(4)
|V2|=√{(x2+Δx)2+(y2+Δy)2} ・・・(5)
点PmGにおける法線ベクトルNは、t(V2’+V1)で表される。tは、0以外の任意の値である。t=1とすると、次式(6)が成立する。
N=[x2’+Δx,y2’+Δy]+[x1+Δx,−(y1−Δy)]
=[α(x2+Δx)+x1+Δx,α(y2+Δy)−(y1−Δy)]
・・・(6)
法線ベクトルN=[Nx,Ny]をXY平面上で90度回転させることにより、反射面7aの点PmGにおける傾きである接ベクトルTが求められる。接ベクトルTは、Rot・N=[−Ny,Nx]で表される。Rotは、90度の回転行列[0 −1;1 0]を表す。
XY平面上において、反射面7aの任意の点における法線ベクトルNn(nは、0以上の整数)および接ベクトルTnは、例えば、ΔxおよびΔyを用いた漸化式で求めることができる。ここで、初期値として、反射面7aの上端の(Δx,Δy)を(0,0)とすると、反射面7aの上端における法線ベクトルN0=(Nx0,Ny0)が求められる。この場合、反射面7aの上端の接ベクトルはT0=(−Ny0,Nx0)である。
Y軸上の微小な単位区間をdとしてX軸上の微小な移動量をxとすると、反射面7aの上端の傾きはd/x=Nx0/−Ny0であり、x=(−Ny0・d)/Nx0である。これにより、Y軸上で単位区間dだけ離れた点の接ベクトルT1は、(Δx,Δy)=(x0,d)として計算すればよく、それ以降の傾きTnは、(Δx,Δy)=(Σxi,d・n)として計算すればよい。iは、0以上(n−1)以下の整数である。このようにして求められた(Δx,Δy)の列を通る曲線を、軸Aを中心として360度回転させた回転体が反射面7aとして定義される。
このような定義を満たすように反射面7aが形成されることにより、円Cp1上の各光線発生器2から出射される光線群を上下方向において観察領域Ce1に集光することができる。また、上記の定義が満たされる場合、円Cp2上の各光線発生器2から出射される光線群は、上下方向において一定の領域に集光される。その領域が観察領域Ce2に設定される。
(7)効果
本実施の形態に係る立体ディスプレイ1においては、軸Aを中心とする円Cp1,Cp2に沿って並ぶように固定的に設けられた複数の光線発生器2の各々から複数の光線Lからなる光線群が出射される。複数の光線発生器2から出射された光線群は、反射部材7の反射面aで反射され、一部の光線Lが観察者10の眼に到達する。この場合、光線発生器2で出射された光線Lが観察者10の眼に直接的に到達する場合に比べて、光線の飛来距離が長い。そのため、隣り合う2つの光線発生器2のうち一方の光線発生器2から観察者10の眼に到達する光線Lと他方の光線発生器2から観察者10の眼に到達する光線Lとの間の角度が小さくなる。したがって、観察者10の眼に到達する光線Lの密度が高くなる。その結果、観察者10に高精細な立体画像300を提示することができる。
また、各光線発生器2が回転されないので、回転駆動機構が不要であり、構成の複雑化が抑制される。さらに、各光線発生器2が時分割で光線群を出射する必要がないので、立体画像300の光量の低下および色数の減少が抑制される。加えて、各光線発生器2が固定されているので、各光線発生器2により出射される光線Lを観察者の眼に時分割でなく連続的に入射させることができる。それにより、立体画像300を連続的に変化させることが容易になる。その結果、立体画像300として高画質の動画像を提示することが容易となる。
また、本実施の形態では、円Cp1,CP2が軸Aに関して反射面7aよりも外方に位置する。それにより、光線発生器2で出射されてから観察者10の眼に到達するまでの光線Lの飛来距離をより長くすることができる。それにより、多くの光線発生器2を配置することが可能となり、観察者10の眼に到達する光線密度をより高めることができる。その結果、観察者10に高精細な立体画像300を提示することが可能となる。
また、本実施の形態では、円Cp1上の光線発生器2から出射される光線群が、反射面7aで反射されることによって上下方向において観察領域Ce1に集光され、円Cp2上の光線発生器2から出射される光線群が、反射面7aで反射されることによって上下方向において観察領域Ce2に集光される。これにより、構成を複雑化させることなく、観察領域Ce1,Ce2での立体画像300の観察を可能とすることができる。また、観察者10は、観察領域Ce1と観察領域Ce2とで異なる立体画像300を観察することが可能となる。例えば、観察領域Ce1から見える立体画像300および観察領域Ce2から見える立体画像300が同じ物体を表してもよい。具体的には、観察領域Ce1から観察される立体画像300(立体画像300A)および観察領域Ce2から観察される立体画像300(立体画像300B)を、それぞれ観察領域Ce1から見える物体の表面の部分を再現した画像および観察領域Ce2から見える物体の表面の部分を再現した画像とする。これにより、観察者10の視点位置が上下方向に動いても、観察者10は、共通の物体を再現した高精度な立体画像300を観察することが可能となる。
(8)反射部材の他の例
上記実施の形態では、反射部材7の反射面7aが円形の水平断面を有するが、反射面7aは、他のパラメトリック曲線状の水平断面を有してもよい。パラメトリック曲線は、円、楕円および多角形を含む。図9は、反射部材7の第1の変形例について説明するための図である。
図9の例では、反射面7aが長軸および短軸を含む楕円形状の水平断面を有する。以下、上下方向に平行でかつ反射面7aの長軸を含む面(短軸に垂直な面)を長軸面ALと呼び、上下方向に平行でかつ反射面7aの短軸を含む面(長軸に垂直な面)を短軸面ASと呼ぶ。
図9(a)には、長軸面AL上に位置する1つの光線発生器2から長軸面ALを中心とする角度範囲θ1内に出射される光線列が示される。この場合、反射面7aで反射された光線列は、角度θ1aで拡がりながら観察領域Ce1に到達する。
図9(b)には、短軸面AS上に位置する1つの光線発生器2から短軸面ASを中心とする角度範囲θ1内に出射される光線列が示される。この場合、反射面7aで反射された光線列は、角度θ1bで拡がりながら観察領域Ce1に到達する。
図9(b)における角度θ1bは、図9(a)における角度θ1aよりも大きい。そのため、観察領域Ce1内の位置によって、観察者10の眼に到達する光線の水平密度(水平方向における密度)が異なる。具体的には、観察領域Ce1における長軸面AL上の位置I10またはそれに近い位置に到達する光線の水平密度は、観察領域Ce1における短軸面AS上の位置I11またはそれに近い位置に到達する光線の水平密度よりも高い。したがって、長軸面AL上の位置I10またはそれに近い位置で観察される立体画像300の特性と、短軸面AS上の位置I11またはそれに近い位置で観察される立体画像300の特性とが互いに異なる。
そこで、観察領域Ce1内の各位置において好適に観察される立体画像300が提示されることが好ましい。図10は、楕円形状の水平断面を有する反射面7aが設けられる場合の立体画像300の提示例を示す図である。
図10(a)には、観察領域Ce1における長軸面AL上の位置I10(図9(a))から観察される立体画像300が示され、図10(b)には、観察領域Ce1における短軸面AS上の位置I11(図9(b))から観察される立体画像300が示される。
図10(a)および図10(b)の立体画像300は、物体OB1,OB2,OB3を含む。物体OB2は、看板OB2aを含む。上記のように、長軸面AL上の位置I10またはそれに近い位置では、到達する光線の水平密度が高い。それにより、高い解像度を要する情報を提示することができる。一方、到達する光線の水平方向の間隔が小さいため、観察される立体画像300の水平方向の寸法が小さくなる。そこで、図10(a)の例では、看板OB2aが正面に向けられ、看板OB2a上に高い解像度を要する文字情報TDが提示される。また、物体OB1,OB2,OB3が互いに重なるように提示される。
短軸面AS上の位置I11またはそれに近い位置では、到達する光線の水平密度が低い。それにより、高い解像度を要する情報を提示することは困難である。一方、到達する光線の水平方向の間隔が大きいため、観察される立体画像300の水平方向の寸法が大きくなる。それにより、水平方向において情報を分散的に提示することができる。そこで、図10(b)の例では、物体OB1,OB2,OB3が水平方向において分散的に提示される。一方、看板OB2aが横に向けられ、看板OB2a上の文字情報は提示されない。
図10(a)の立体画像300における物体OB1,OB2,OB3の3次元上の位置関係と図10(b)の立体画像300における物体OB1,OB2,OB3の3次元上の位置関係とは互いに同じである。本例では、位置I10で観察される立体画像300の特性と位置I11で観察される立体画像300の特性との違いを利用して、立体画像300における物体OB1,OB2,OB3の配置が設定される。
なお、図9および図10においては、観察領域Ce1で観察される立体画像300について説明したが、観察領域Ce2で観察される立体画像300についても同様である。
図11は、反射部材7の第2の変形例を示す図である。図11(a)の例および図11(b)の例について、図1の反射部材7と異なる点を説明する。図11(a)の例では、反射面7aが複数の辺7a1からなる多角形状の水平断面を有する。本例では、反射面7aの水平断面が正方形状を有する。この場合、各辺7a1に対応する反射面7aの部分で反射された光線が、反射面7aの当該部分に対向する観察領域Ce1,Ce2内の位置に到達する。それにより、複数の辺7a1にそれぞれ対応する観察領域Ce1,Ce2内の複数の位置で立体画像300を観察することができる。複数の辺7a1の長さは、互いに等しくてもよく、互いに異なってもよい。また、複数の辺7a1の少なくとも一部が離間していてもよい。このように、観察方向が予め限定されている場合、反射面7aの製造がより容易になる。
図11(b)の例では、反射面7aが複数の円弧7a2を含む水平断面を有する。この場合、各円弧7a2に対応する反射面7aの部分で反射された光線が、反射面7aの当該部分に対向する観察領域Ce1,Ce2内の位置に集光される。それにより、複数の円弧7a2にそれぞれ対応する観察領域Ce1,Ce2内の複数の位置で高精細な立体画像300を観察することができる。複数の円弧7a2の曲率は、互いに等しくてもよく、互いに異なってもよい。また、複数の円弧7a2の間隔は、均一であってもよく、不均一であってもよい。複数の円弧7a2が互いにつながっていてもよい。
図12は、反射部材7の第3の変形例を示す模式的断面図である。図12(a)には、反射部材7の全体が示され、図12(b)には、反射部材7の一部が拡大して示される。図9の反射部材7について、図1の反射部材7と異なる点を説明する。
図12(a)および図12(b)の反射部材7は軸Aを中心とする略円筒形状を有し、その上端部の内径と下端部の内径とがほぼ同じである。図12(b)に示すように、反射部材7の内周面には、複数の微小な突出部71が上下方向に並ぶように形成されている。各突出部71は、軸Aを中心とする円環形状を有する。また、各突出部71は、軸Aに対して傾斜する傾斜面72を有する。複数の突出部71の傾斜面72により、反射面73が構成される。上下方向における突出部71のピッチは、例えば、反射面73上に到達した光線列における光線のピッチと等しく設定される。
複数の突出部71の傾斜面72の傾きは互いに異なる。上下方向の各位置において、反射面73の傾きが図1の反射面7aの傾きと等しくなるように、各傾斜面72の傾きが設定される。これにより、反射面73は、図1の反射面7aと同様に、各光線発生器2から出射される光線群を反射するとともに、上下方向において光線群を集光する。
傾斜面72の傾きは、上式(6)により算出することができる。ただし、本例においては、ΔXが一定であるとみなすことができる。例えば、ΔXを0とみなすことにより、上式(6)は、次式(6’)となる。これにより、傾斜面72の傾きをより容易に算出することができる。
N=[x2’,y2’+Δy]+[x1,−(y1−Δy)]
=[αx2+x1,α(y2+Δy)−(y1−Δy)] ・・・(6’)
複数の突出部71の作製方法としては、例えば、ナノ加工機等を用いた微細加工技術により物理的に鋸歯状の面を切削し、めっきまたは銀塗装により鏡面化する方法がある。また、フィルム状の回折格子またはホログラムを円筒の内周面に貼り付けることにより、同様の光学的効果を実現することも可能である。
図13は、反射部材7の第4の変形例を示す模式的斜視図である。図13の反射部材7が図12の反射部材7と異なる点は、複数の突出部71の代わりに複数の突出部74,75が上下方向に交互に並ぶように形成されている点である。複数の突出部74,75は、複数の突出部71と同様に軸A(図12(a))を中心とする円環形状を有する。突出部74は、軸Aを中心とする傾斜面74aを有し、突出部75は、軸Aを中心とする傾斜面75aを有する。複数の傾斜面74a,75aにより反射面76が形成される。
本例では、円Cp1上にのみ複数の光線発生器2が配置され、円Cp2上に光線発生器2が配置されない。上下方向において異なる位置にある複数の傾斜面74aの傾きは互いに異なり、上下方向において異なる位置にある複数の傾斜面75aの傾きは互いに異なる。複数の傾斜面74aは、各光線発生器2から出射された複数の光線Lが上下方向において観察領域Ce1に集光されるように形成される。複数の傾斜面75aは、各光線発生器2から出射された複数の光線Lが上下方向において観察領域Ce2に集光されるように形成される。
上下方向における突出部74,75のピッチは、反射面76上に到達した光線列における光線のピッチと等しく設定される。この場合、傾斜面74a,75aの各々には、各光線発生器2から出射される光線群のうちの1の光線行が照射される。傾斜面74aに照射された光線行は、観察領域Ce1に向けて反射され、傾斜面75aに照射された光線行は、観察領域Ce2に向けて反射される。
以下、各光線発生器2から出射される複数の光線行について、上から順に1番目の光線行、2番目の光線行、・・・と呼ぶ。本例においては、(2m−1)番目(mは正の整数)の光線行が傾斜面74aに照射され、2m番目の光線行が傾斜面75aに照射される。この場合、(2m−1)番目の光線行は、傾斜面74aにより観察領域Ce1に向けて反射され、2m番目の光線行は、傾斜面75aにより観察領域Ce2に向けて反射される。
そこで、(2m−1)番目の光線行と2m番目の光線行とがそれぞれ異なる立体画像300を表すように、各光線発生器2が制御される。具体的には、(2m−1)番目の光線行には、観察領域Ce1で観察される立体画像300(立体画像300A)に対応する色が割り当てられ、2m番目の光線行には、観察領域Ce2で観察される立体画像300(立体画像300B)に対応する色が割り当てられる。これにより、複数の光線発生器2を上下2段に設けることなく、観察領域Ce1,Ce2で異なる立体画像300を観察することが可能となる。
なお、観察領域Ce1に到達する複数の光線の上下方向における間隔、および観察領域Ce2に到達する複数の光線の上下方向における間隔は、図12の例に比べて大きい。そのため、立体画像300A,300Bの各々に間隙が形成されないように、後述の拡散部材によって各光線が上下方向に拡散されることが好ましい。
第4の変形例では、光線行毎に立体画像300A,300Bの一方または他方を表すように各光線発生器2が制御されるが、同様にして、光線列毎に立体画像300A,300Bの一方または他方を表すように各光線発生器2が制御されてもよい。この場合、各光線列が観察領域Ce1,Ce2の一方または他方に反射されるように反射部材7の反射面が形成される。
図14は、反射部材7の第5の変形例を示す模式的斜視図である。図14の反射部材7が図12の反射部材7と異なる点は、複数の突出部71の代わりに複数の凸部77,78が形成されている点である。複数の凸部77,78は、軸Aを中心とする周方向に交互に並ぶとともに、上下方向において交互に並ぶ。各凸部77は、傾斜面77aを有し、各凸部78は、傾斜面78aを有する。複数の凸部77,78の傾斜面77a,78aにより反射面79が形成される。
上下方向における凸部77,78のピッチは、例えば反射面76上に到達した光線列における光線のピッチの2分の1に設定され、周方向における複数の凸部77,78のピッチは、例えば反射面76上に到達した光線行における光線のピッチの2分の1に設定される。
本例では、円Cp1上にのみ複数の光線発生器2が配置され、円Cp2上に光線発生器2が配置されない。円Cp1上に配置される複数の光線発生器2は、観察領域Ce1用の光線発生器2(以下、下段用光線発生器2と呼ぶ。)と観察領域Ce2用の光線発生器2(以下、上段用光線発生器2と呼ぶ。)とに分類される。下段用光線発生器2と上段用光線発生器2とは、円Cp1上に交互に配置される。下段用光線発生器2は、反射面79の複数の傾斜面77aに複数の光線Lをそれぞれ照射し、上段用光線発生器2は、反射面79の複数の傾斜面78aに複数の光線Lをそれぞれ照射する。この場合、下段用光線発生器2から出射される各光線と上段用光線発生器2から出射される各光線とが互いに干渉しないように、各光線が整形されることが好ましい。
軸Aを中心とする共通の円周上に配置される複数の傾斜面77aの傾きは互いに等しく、軸Aを中心とする共通の円周上に配置される複数の傾斜面78aの傾きは互いに等しい。また、上下方向において異なる位置にある複数の傾斜面77aの傾きは互いに異なり、上下方向において異なる位置にある複数の傾斜面78aの傾きは互いに異なる。複数の傾斜面77aは、下段用光線発生器2から出射された複数の光線Lが上下方向において観察領域Ce1に集光されるように形成される。複数の傾斜面78aは、上段用光線発生器2から出射された複数の光線Lが上下方向において観察領域Ce2に集光されるように形成される。これにより、観察者10は、観察領域Ce1において、複数の下段用光線発生器2から出射された光線群により提示される立体画像300(立体画像300A)を観察することができ、かつ観察領域Ce2において、複数の上段用光線発生器2から出射された光線群により提示される立体画像300(立体画像300B)を観察することができる。
このように、図14の反射部材7を用いることにより、複数の光線発生器2を上下2段に設けることなく、観察領域Ce1,Ce2で異なる立体画像300を観察することが可能となる。
反射部材7の変形例として、図14の第5の変形例をさらに変形した第6の変形例が考えられる。第6の変形例について、第5の変形例と異なる点を説明する。第6の変形例では、上下方向における凸部77,78のピッチが、反射面79上に到達した光線列における光線のピッチと等しく設定され、周方向における複数の凸部77,78のピッチが、反射面79上に到達した光線行における光線のピッチと等しく設定される。
複数の光線発生器2は、下段用光線発生器2と上段用光線発生器2とに分類されない。各光線発生器2から出射される各光線は、傾斜面77a,78aの一方または他方に照射される。傾斜面77aに照射される光線と、傾斜面78aに照射される光線とは、各光線列および各光線行において交互に位置する。傾斜面77aに照射された光線は、観察領域Ce1に向けて反射され、傾斜面78aに照射された光線は、観察領域Ce2に向けて反射される。
この場合、傾斜面77aに照射される光線と傾斜面78aに照射される光線とが互いに異なる立体画像300を表すように、各光線発生器2が制御される。具体的には、傾斜面77aに照射される光線は、立体画像300Aに対応する色が割り当てられ、傾斜面78aに照射される光線は、立体画像300Bに対応する色が割り当てられる。これにより、複数の光線発生器2を上下2段に設けることなく、観察領域Ce1,Ce2で異なる立体画像300を観察することが可能となる。
(9)光線発生器の他の配置例
上記実施の形態では、複数の光線発生器2が円Cp1,Cp2に沿って並ぶように配置されるが、複数の光線発生器2の配置はこれに限定されない。複数の光線発生器2が他のパラメトリック曲線等に沿って並ぶように配置されてもよい。
図15は、複数の光線発生器2の他の配置例を示す図である。図15(a)の例では、複数の光線発生器2が、円Cp1の代わりに、多角形状の線CL1に沿って並ぶように配置される。本例では、線CL1が正六角形状であるが、線CL1が正五角形状または正八角形状等の他の正多角形でもよい。また、線CL1の複数の辺の長さが不均一であってもよい。このような例においても、各光線発生器2を適切に制御することにより、高精細な立体画像300を提示することができる。なお、線CL1の辺の数が少ない場合(例えば、線CL1が正方形である場合)には、線CL1の形状に対応する適切な位置で立体画像300を観察することが好ましい。また、本例では、複数の光線発生器2が円に沿って配置される場合に比べて、複数の光線発生器2を光線発生器アレイとして一体的に設けることが容易である。
図15(b)の例では、複数の光線発生器2が、円Cp1の代わりに、楕円形状の線CL2に沿って並ぶように配置される。このような例においても、各光線発生器2を適切に制御することにより、図1の例と同様に立体画像300を提示することができる。例えば、立体ディスプレイ1を直方体状のケースに収容する必要がある場合等、一定の制約がある場合に、複数の光線発生器2を本例のように配置することにより、制約を満たすことができる。また、本例では、複数の光線発生器2が一定の間隔で配置された場合でも、線CL2上の位置によって光線発生器2と反射面7aとの間の距離が異なる。そのため、観察領域Ce1内の位置によって異なる解像度で立体画像300を観察することができる。一方、複数の光線発生器2の配置間隔を適切に調整することにより、観察領域Ce1内の全体において均一な解像度で立体画像300を観察することができる。
上記実施の形態では、複数の光線発生器2が反射部材7の反射面7aより下方に配置されるが、複数の光線発生器2が反射部材7の反射面7aより上方に配置されてもよい。図16は、複数の光線発生器2が反射面7aより上方に配置された例を示す図である。図16の例では、複数の光線発生器2が、円Cp1の代わりに、反射面7aより上方であってかつ観察領域Ce1より上方に位置する円Cp3に沿って並ぶように配置される。この場合、各光線発生器2から発生される光線群が観察領域Ce1に到達するように、反射面7aの傾きが調整される。それにより、図1の例と同様に立体画像300を提示することができる。なお、反射部材7の反射面7aより上方において、図15(a)の例または図15(b)の例のように、多角形状または楕円形状の線に沿うように、複数の光線発生器2が配置されてもよい。
なお、図15および図16においては、円Cp1上の光線発生器2の他の配置例について説明したが、円Cp2上の光線発生器2についても同様である。
(10)光線の密度の調整例
上記のように、各光線発生器2から出射される光線群について、光線行の密度は、光線列の密度よりも高いことが好ましい。以下、光線の密度の調整例について説明する。
図17は、光線発生器2の一構成例を示す模式図である。図17の光線発生器2は、光源20およびミラー21を含む。図17の光線発生器2は、例えばMEMSプロジェクタである。光源20からミラー21に光線が照射され、ミラー21によって反射された光線が光線発生器2から出射される。ミラー21の角度(向き)は、図示しない駆動部によって縦方向および横方向に複数段階で調整される。この場合、光線発生器2からの光線の出射方向が縦方向および横方向に複数段階で変化される。これにより、擬似的に光線群を形成することができる。本例では、縦方向におけるミラー21の角度の変化によって光線列が形成され、横方向におけるミラー21の角度の変化によって光線行が形成される。なお、一般的なMEMSプロジェクタから出射される光線は、進行方向に垂直な断面において一定の径を有する。そのため、光線の密度が高い場合には、反射面7a上で複数の光線が部分的に重なる場合がある。しかしながら、図3(a)の例のように、複数の光線は、反射面7aで反射されることによって分散的に進行するので、観察者10の眼には、互いに分離した状態で複数の光線が到達する。
光線列の密度は、縦方向における1段階当たりのミラー21の角度の変化幅(以下、縦変化幅と呼ぶ。)に依存し、光線行の密度は、横方向における1段階当たりのミラー21の角度の変化幅(以下、横変化幅と呼ぶ。)に依存する。それにより、縦変化幅および横変化幅をそれぞれ調整することにより、光線行の密度を光線列の密度よりも高くすることができる。例えば、縦変化幅が1/100度に調整され、横変化幅が1/500度に調整される。また、縦方向におけるミラー21の角度の段階数は、光線列に含まれる光線の数と等しく、横方向におけるミラー21の角度の段階数は、光線行に含まれる光線の数と等しい。そのため、これらの段階数を調整することにより、光線列に含まれる光線の数および光線行に含まれる光線の数を調整することができる。なお、縦変化幅および横変化幅は一律でなくてもよい。例えば、縦方向においてミラー21の角度が50度の範囲内で500段階に変化される場合、縦変化幅が上から順に0.05度、0.10度、0.05度、・・・のように変化してもよい。第4、第5および第6の変形例において、反射面上における各光線の照射位置を決めるような場合、変化幅が一律ではなく、異なる変化幅で多段階の光線を投影することが望ましい。
図18は、光線発生器2の他の構成例を示す模式図である。図18の光線発生器2は、光源24、空間光変調器25およびレンズ26を含む。光源24により発生される光が、空間光変調器25およびレンズ26を通して光線発生器2から出射される。図19は、空間光変調器25の一例を示す模式図である。空間光変調器25は、例えば液晶パネルである。図19に示すように、空間光変調器25は、縦方向および横方向に並べられた複数のピクセル251を含む。以下、縦方向における複数のピクセル251の並びをピクセル列と呼び、横方向における複数のピクセル251の並びをピクセル行と呼ぶ。各ピクセル行に含まれるピクセル251の数は、各ピクセル列に含まれるピクセル251の数より多い。また、図19の例において、各ピクセル251は、正方形状を有する。この場合、縦方向におけるピクセルの密度(以下、ピクセル列の密度と呼ぶ。)と、横方向におけるピクセルの密度(以下、ピクセル行の密度と呼ぶ。)とは、互いに等しい。
各ピクセル251は、例えば、“R”(レッド)、 “G”(グリーン)および“B”(ブルー)にそれぞれ対応する3つのサブピクセルを含む。この場合、光源24により発生された光は、空間光変調器25を通して複数のピクセル251にそれぞれ対応する複数の光線に変換される。その複数の光線が、レンズ26を通して光線群として縦方向および横方向に拡がるように出射される。あるいは、各ピクセル251は通過する光量を変化させるものであり、光源が発生する光の色が“R”、“G”および“B”に時分割で変化することも考えられる。
図20は、レンズ26の構成について説明するための模式図である。図20(a)の例では、円形のレンズ26が用いられる。この場合、縦方向におけるレンズ26の画角と横方向におけるレンズ26の画角とは互いに等しいため、縦方向における光線群の拡がりの度合いと横方向における光線群の拡がりの度合いとは互いに等しい。この場合、光線列の密度と光線行の密度との比は、ピクセル列の密度とピクセル行の密度との比と等しいので、1:1である。それに対して、図20(b)の例では、レンズ26が縦長の楕円形に形成される。この場合、横方向におけるレンズ26の画角が縦方向におけるレンズ26の画角よりも小さくなり、横方向における光線群の拡がりの度合いが、縦方向における光線群の拡がりの度合いよりも小さくなる。それにより、光線行の密度が光線列の密度よりも高くなる。
図21は、空間光変調器25の他の例を示す模式図である。図21の空間光変調器25が図19の空間光変調器25と異なる点は、各ピクセル251が、正方形状でなく、縦長の長方形状を有する点である。この場合、ピクセル行の密度が、ピクセル列の密度よりも高い。これにより、図20(a)の例のような円形のレンズ26が用いられた場合でも、光線行の密度が光線列の密度よりも高くなる。
(11)観察領域の他の例
観察領域Ce1,Ce2の少なくとも一方が、水平方向に幅を有してもよく、あるいは上下方向に幅を有してもよい。各光線の進行方向においては、いずれの位置においてもその光線を観察することができる。そのため、観察者10の眼の位置が水平方向において移動しても、立体画像300を表す複数の光線が観察者10の眼に到達しやすい。そのため、水平方向においては、比較的広い幅を有するように観察領域Ce1,Ce2を設定することができる。
上記実施の形態では、観察領域Ce1,Ce2がそれぞれ真円であるが、観察領域Ce1,Ce2の少なくとも一方がパラメトリック曲線等であってもよい。
(12)拡散部材
複数の光線発生器2から出射される光線群を上下方向に平行な面内で拡散させる拡散部材が設けられてもよい。図22は、拡散部材の第1の例を示す模式的断面図である。図22の例では、図1の反射部材7の反射面7aを覆うように、拡散部材80が形成されている。拡散部材80は、各光線Lを上下方向にのみ拡散し、水平方向には拡散しない。すなわち、拡散部材80は、各光線Lを上下方向に平行な面内で拡散し、水平方向に平行な面内で拡散しない。この場合、複数の光線発生器2から出射された光線群が拡散部材80により上下方向に拡散されつつ反射面7aで反射される。
これにより、観察領域Ce1,Ce2の各々において、各光線列の集光の幅が上下方向に広がる。そのため、観察領域Ce1,Ce2の各々において、立体画像300を形成する複数の光線Lが観察者10の眼に到達しやすくなる。その結果、構成を複雑化させることなく、観察者10が観察領域Ce1,Ce2の各々で立体画像300を適切に観察することができる。
図23は、拡散部材の第2の例を示す模式的断面図である。図23の拡散部材81は、軸Aを中心として回転対称な円錐形状を有する。本例では、円筒形状の反射部材70が用いられる。反射部材70の反射面70aの垂直断面は、上下方向に直線状に延びる。拡散部材81は、反射部材70の内側に配置される。図22の拡散部材80と同様に、拡散部材81は、各光線Lを上下方向にのみ拡散し、水平方向には拡散しない。各光線発生器2から出射された光線群は、反射部材70の反射面70aで反射され、拡散部材81を通して上下方向に拡散される。図23の例では、各光線を上下方向において比較的大きい角度範囲に拡散することができる。それにより、反射面70a上での反射によって光線群が上下方向に集光されなくても、各光線が観察者10の眼に到達する。この場合、観察者10は、上下方向における広い範囲で立体画像300を観察することができる。例えば、円Cp1上にのみ複数の光線発生器2を配置し、円Cp2上に光線発生器2を配置しない場合であっても、拡散部材81を通して各光線を上下方向に拡散させることにより、観察領域Ce1,Ce2を含む広い範囲で立体画像300を観察することが可能となる。
図24は、拡散部材の第3の例を示す模式的断面図である。図24の拡散部材82は、平板形状を有し、反射部材7の上方に水平に配置される。拡散部材82は、反射部材7の内部に配置されてもよい。図22の拡散部材80と同様に、拡散部材82は、各光線Lを上下方向にのみ拡散し、水平方向には拡散しない。各光線発生器2から出射された光線群は、反射部材7の反射面7aで反射され、拡散部材82を通して上下方向に拡散される。
図24の例では、各光線を上下方向において比較的小さい角度範囲に拡散することができる。それにより、立体画像300を観察可能な観察領域Ce1の上下方向の幅および立体画像300を観察可能な観察領域Ce2の上下方向の幅をそれぞれ拡げることができる。したがって、観察者10は、観察領域Ce1,Ce2の各々において、立体画像300を容易に観察することができる。
(13)他の実施の形態
上記実施の形態では、上下方向の異なる位置で異なる立体画像300が観察可能なように、2つの円Cp1,Cp2の各々に沿って光線発生器2が配置され、かつ上下2段の観察領域Ce1,Ce2が設定されるが、本発明はこれに限らない。1つのパラメトリック曲線等に沿って光線発生器2が配置され、1段の観察領域のみが設定されてもよい。あるいは、3以上のパラメトリック曲線等に沿って光線発生器2が配置され、3段以上の観察領域が設定されてもよい。
上記実施の形態では、軸Aに関して、反射部材7の反射面7aより外方に円Cp1,Cp2が設定され、かつ円Cp1,Cp2より外方に観察領域Ce1,Ce2が設定されるが、本発明にこれに限らない。軸Aに関して反射部材7の反射面7aより内方に円Cp1,Cp2が設定されてもよい。さらに、軸Aに関して円Cp1,Cp2のうち一方が反射部材7の反射面7aより内方でかつ他方が外方に設定されてもよい。この場合、反射部材7内に複数の光線発生器2が設けられてもよい。また、軸Aに関して円Cp1,Cp2より内方に観察領域Ce1,Ce2が設定されてもよい。さらに、軸Aに関して観察領域Ce1,Ce2のうち一方が円Cp1,Cp2より内方でかつ他方が外方に設定されてもよい。
上記実施の形態では、円Cp1,Cp2の全周にわたって光線発生器2が配置されるが、円Cp1,Cp2の一部の円弧部にのみ光線発生器2が配置されてもよい。また、反射部材7の反射面が、軸Aの全周を取り囲むのではなく、周方向において軸Aの一部のみを取り囲むように設けられてもよい。
円Cp1,CP2の各々における複数の光線発生器2のピッチは、均一であってもよく、位置によって異なってもよい。複数の光線発生器2のピッチが均一でない場合でも、各光線発生器2が出射する光線の密度、または反射面の形状を調整することにより、提示される立体画像300の精細度を一定に調整することができる。
反射部材7として、ハーフミラーが用いられてもよい。図25は、反射部材7としてハーフミラーが用いられる例を示す模式的断面図である。図25の例では、反射部材7の周囲を取り囲むように複数の光線発生器2が配置される。各光線発生器2から出射される光線群は、反射部材7を透過して反射部材7の外方から内方に導かれ、反射部材7の内方で反射面7aにより反射され、観察領域Ce1,Ce2に導かれる。これにより、立体ディスプレイ1の配置スペースを上下方向において縮小することができる。
(14)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各構成要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
上記実施の形態においては、立体ディスプレイ1が立体ディスプレイの例であり、反射部材7が反射部材の例であり、反射面7a,73,76,79が反射面の例であり、光線発生器2が第1および第2の光線発生器の例であり、円Cp1および線CL1,CL2が囲み線の例であり、仮想円Cp1’が仮想線の例であり、制御装置3が制御部の例であり、拡散部材80が拡散部材の例であり、軸Aが基準軸の例である。
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の構成要素を用いることもできる。