JP2019019593A - 救助設備及び救助方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】作業者への処置を速やかに行うことができる救助設備及び救助方法を提供する。【解決手段】一実施形態に係る救助設備は、作業が行われるケーソンCに用いられる救助設備1である。救助設備1は、作業室3に対して上方に延びるマテリアルシャフト6と、マテリアルシャフト6の作業室3よりも上方の位置に設けられたマテリアルロック10と、作業室3において作業者M1を収容し、マテリアルシャフト6の内側を通り作業室3とマテリアルロック10との間を昇降する収容装置20と、マテリアルロック10の上方から収容装置20を昇降させる揚重機30と、を備え、マテリアルロック10は、作業者M1に処置を施す処置空間10aを有する。【選択図】図1
Description
本発明は、ケーソンで作業をする作業者を救助する救助設備及び救助方法に関する。
従来からケーソンで作業を行う作業者を救助する救助設備は知られている。実公平7−47458号公報には、ニューマチックケーソンの作業室で作業を行う作業者を救助する救出カプセルが記載されている。この救出カプセルは、ニューマチックケーソンで鉛直方向に延びるシャフト内に通されるワイヤロープを介してクレーンに接続されている。
作業室において、急性の発病又は怪我等をした作業者が生じたときには、函内責任者が地上の責任者に連絡し、地上の責任者は、ロックテンダーと地上玉掛け者に連絡する。地上玉掛け者は、救出カプセルに設けられた吊り金具にクレーンのワイヤロープを接続する。そして、ロックテンダーは、上記の救出カプセルがある位置にクレーンを操作する。
その後、シャフトを介して作業室にまでクレーンで救出カプセルを降ろし、作業者を救出カプセルに乗せると共に必要であれば介護人も救出カプセルに乗り込み、救出カプセルを地上にまで引き上げて当該作業者を救出する。また、作業室は高圧となっているので、救出カプセルは、シャフト内の上部ロックで大気圧にまで減圧されてから地上に運ばれて処置が施される。
しかしながら、前述した救出カプセルでは、大気圧まで減圧されて地上に運ばれた後に、作業者に対する処置が施される。よって、作業者への処置を速やかに行えないという問題がある。また、従来の救助設備は、作業者が移動したり、作業者がはしごを登ったりすることが必要であった。従って、大けがをしている作業者、又は大病を患った作業者等、重篤な作業者は、救助カプセル等に乗ることが困難となる場合がある。すなわち、作業者に救助カプセル等に入るための負担をかける可能性がある。
本発明は、作業者への処置を速やかに行うことができる救助設備及び救助方法を提供することを目的とする。
本発明に係る救助設備は、作業が行われる作業室を備えたケーソンに用いられる救助設備であって、作業室に対して上方に延びるマテリアルシャフトと、マテリアルシャフトの作業室よりも上方の位置に設けられたマテリアルロックと、作業室において作業者を収容し、マテリアルシャフトの内側を通り作業室とマテリアルロックの間を昇降する収容装置と、マテリアルロックの上方から収容装置を昇降させる揚重機と、を備え、マテリアルロックは、作業者に処置を施す処置空間を有する。
この救助設備は、作業室に対して上方に延びるマテリアルシャフトと、作業室よりも上方の位置に設けられたマテリアルロックとを備え、マテリアルロックは、作業者に処置を施す処置空間を有する。よって、資材及び機材の搬送を行うマテリアルシャフト及びマテリアルロックを、作業者に処置を施す設備として利用しているため、マテリアルシャフト及びマテリアルロックを有効利用することができる。また、作業者を収容する収容装置を揚重機で吊り上げてマテリアルロックに移動させることによって作業者をマテリアルロックの処置空間に移動させることができるため、作業者への処置を地上に戻す前に速やかに行うことができる。更に、作業者は、収容装置に収容された後には、自力での移動を要さずに処置空間に自動的に移動する。従って、作業者が収容装置に収容されてから処置空間に移動するまで、作業者は自力で移動する必要がないので、一切の負担を作業者にかけないようにすることができる。
また、収容装置は、マテリアルロック及びマテリアルシャフトを通るワイヤを介して揚重機に接続されていてもよい。この場合、作業室とマテリアルロックの間を昇降する収容装置がワイヤを介して揚重機に吊り下げられることにより、収容装置を昇降させることができる。
また、収容装置は、ヘリウム混合ガスを供給する第1供給部と、酸素を供給する第2供給部と、を備えてもよい。この場合、収容装置に収容した作業者にヘリウム混合ガス又は酸素を吸入させることができるので、安全な減圧を行うと共に作業者に応急処置を施すことができる。
また、収容装置は、消火器を備えてもよい。この場合、作業室又はマテリアルロックで万が一火災が発生しても、消火器によって消火を行うことができる。従って、作業室及びマテリアルロックの安全性を高めることができる。
また、マテリアルロックは、処置空間の気圧を調整する気圧調整部と、処置空間の温度を調整する温度調整部と、ヘリウム混合ガスを供給する第3供給部と、酸素を供給する第4供給部と、を備えてもよい。この場合、マテリアルロックの内部において、処置空間の気圧及び温度の調整を行うことができる。また、気圧及び温度の調整を行いながら作業者にヘリウム混合ガス又は酸素を吸入させることができる。従って、安全な減圧を速やかに行うことができる。
また、マテリアルロックは、ワイヤを通す挿通孔を有し、ワイヤには、挿通孔を下から塞ぐ封止部材が取り付けられてもよい。この場合、マテリアルロックの挿通孔が下から封止部材によって塞がれる。従って、当該挿通孔から気体が漏れることによってマテリアルロック内の気圧が急激に低下する問題を回避することができる。
本発明に係る救助方法は、作業が行われる作業室を備えたケーソンで行われる作業者の救助方法であって、作業室に位置する収容装置に作業者を収容する工程と、ケーソンのマテリアルシャフトを介してマテリアルロックの処置空間に収容装置を上昇させる工程と、処置空間の減圧を予め定められた計画速度で行うと共に、収容装置に収容されている作業者に処置を施す工程と、を備える。
この救助方法では、ケーソンのマテリアルシャフトを昇降する収容装置に作業者を収容し、収容装置を上昇させてマテリアルロックに設けられた処置空間に移動させてから減圧及び処置を施す。従って、収容装置に収容された作業者は、そのまま処置空間に自動的に移動して速やかに処置を受けることができる。よって、作業者への処置を地上に戻す前に速やかに行うことができる。また、収容装置に収容された作業者は、自力で移動することなく処置を受けることができるので、一切の負担を作業者にかけないようにすることができる。更に、処置空間では、減圧を予め定められた計画速度で行うので、急激な気圧の低下を抑制することができる。従って、減圧症の発生を抑制することができる。
本発明によれば、作業者への処置を速やかに行うことができる。
以下では図面を参照しながら本発明に係る救助設備及び救助方法の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素は同一の符号を付し重複する説明を適宜省略する。
図1に示されるように、本実施形態に係る救助設備1は、ケーソンCに設けられている。ケーソンCは、ニューマチックケーソン工法によって構築される。ニューマチックケーソン工法では、地上Gで鉄筋コンクリート製の躯体2を構築し、躯体2の下部に作業室3を設ける。作業室3に地下水圧に相当する圧縮空気を送り込むことによって作業室3への地下水の浸入を防いでいる。作業室3の高さは例えば2〜3mである。
作業室3の内部で掘削及び排土を行って躯体2を沈下させ、躯体2を、橋梁等の建築物の基礎、下水ポンプ場、地下調整池、シールドトンネルの立杭、又は、道路のトンネル等の構造物として利用する。躯体2の底部側には、作業室3を形成するスラブ4が設けられており、スラブ4の上側には、水荷重を付与する水貯留部5が設けられている。なお、スラブ4の上側には、水荷重が付与されないこともある。
ケーソンCは、資材及び機材の搬送を行うマテリアルシャフト6と、マテリアルシャフト6の上端に設けられたマテリアルロック10と、作業者M1,M2が通常移動用として用いる螺旋階段を備えたマンシャフト及びマンロック(図示せず)とを備える。本実施形態において、マテリアルロック10は、けがをしたり病気になったりした作業者M1を救助する救助用ロックとして用いられる。マテリアルロック10は、例えば、地上Gよりも高い位置に設けられている。
マテリアルシャフト6は、スラブ4から鉛直上方に延びており、マテリアルシャフト6の上端にマテリアルロック10が設けられる。マテリアルシャフト6は、後述する収容装置20が昇降する内部空間6aを有し、内部空間6aは、作業室3からマテリアルロック10の上端にまで鉛直方向に延びている。救助設備1は、マテリアルシャフト6及びマテリアルロック10の他に、収容装置20と、収容装置20とワイヤ31を介して接続されておりワイヤ31で収容装置20を吊り上げる揚重機30と、を備える。
図1及び図2に示されるように、収容装置20は、作業者M1を収容する装置である。収容装置20は、カプセル状、又はカゴ状とされていてもよい。重篤である作業者M1(例えば、意識を失った作業者M1等)は、作業室3にいる別の仲間である作業者M2によって収容装置20に収容される。収容装置20は、例えば、全体として有底円筒状とされており、上部にメッシュ状とされた金網部23を備える。すなわち、収容装置20は、有底円筒状の本体部22と、本体部22の上端で円錐状とされた金網部23とを備える。
金網部23は、ワイヤ31を取り付けるワイヤ取付け部23aを備える。ワイヤ取付け部23aは、例えば、金網部23の上端に設けられており、ワイヤ31の下端を結びつける取付孔を備える。ワイヤ31は、金網部23から鉛直上方に延びると共に、マテリアルシャフト6の内部空間6aで鉛直方向に延在しており、ワイヤ31の上端は揚重機30に接続されている。
揚重機30は、ケーソンCにおいて行われる作業を行うために用いられる。揚重機30は、通常時は、ケーソンCの資材及び機材をケーソンCの内外で運搬するために設けられる。本実施形態では、このケーソンCの作業で用いられる揚重機30が収容装置20の昇降に用いられるので、揚重機30を有効利用することが可能である。
収容装置20の本体部22は、本体部22の矩形状に切り欠かれた部分において本体部22の周方向にスライド自在とされたスライドドア21を有する。スライドドア21は、例えば、矩形状に窪んだ取っ手部21aと、スライドドア21の施錠を可能とする鍵穴部21bとを有する。本体部22の内部には、ヘリウム混合ガスを供給する第1供給部22aと、純酸素を供給する第2供給部22bと、消火器22cと、が設けられる。
第1供給部22aは、作業者M1にヘリウム混合ガスを吸引させる機器であり、第2供給部22bは、作業者M1に純酸素を吸引させる機器である。ヘリウム混合ガスは、例えば、ヘリウム及び酸素が含まれたヘリオックスであってもよい。また、ヘリウム混合ガスは、ヘリウム、窒素及び酸素が混合された気体であってもよく、ヘリウム、窒素及び酸素の混合比は、一例として、それぞれ55%、25%及び20%である。但し、ヘリウム、窒素及び酸素の混合比は適宜変更可能である。
消火器22cは、例えば、水消火器であり、具体例として加圧式水消火器、又は高圧型消火器であってもよい。消火器22cは複数設けられていてもよい。消火器22cの種類は、例えば、作業室3の作業気圧に応じて適宜変更可能である。一例として、消火器22cは、作業気圧が0.4MPa未満である場合には通常の消火器であってもよいし、作業気圧が0.4MPa以上である場合には高圧型の消火器であってもよい。このように作業気圧に応じて消火器22cの種類が選択されることにより、どのような作業気圧であっても確実に消火器22cを用いることが可能となる。また、収容装置20は、救急箱を含む救急装置24と、作業者M1を移動させるための担架25とを備える。救急装置24は、例えば、救急三角布、添え着、又は氷等、応急処置に用いられる機器を備えていてもよい。
図3(a)及び図3(b)に示されるように、担架25は、作業者M1を寝かせた状態で椅子型に変形することが可能とされている。担架25は、作業者M1の背中が載せられる背当て部26と、作業者M1の臀部が載せられる座部27と、座部27から延びる4体のキャスタ部28と、を備える。
担架25は、背当て部26及び座部27が水平方向に延びている状態で背当て部26及び座部27に作業者M1が載せられて、この状態で背当て部26及び座部27に作業者M1を着座させることが可能である。作業者M1が着座する担架25は4体のキャスタ部28によってスムーズに移動させることが可能である。
作業者M1は、担架25に着座した状態で収容装置20に収容される。これにより、作業者M1を寝かせるスペースが不要となるので、収容装置20を小型化することができる。収容装置20に収容された作業者M1は、担架25に着座した状態で作業室3からマテリアルロック10に引き上げられる。
図4は、マテリアルロック10の内部構造を模式的に示す縦断面図である。図4に示されるように、マテリアルロック10は、資材及び機材を搬送する通常のマテリアルロックが救助用として改造されたものであり、作業者M1を救助するための設備を備える。マテリアルロック10は、例えば、他の部分よりも拡径された2つの拡張部10Aを備える。マテリアルロック10は、作業者M1を治療する医療機器を備えるため、高い清浄度が維持されている。マテリアルロック10は、作業者M1に処置を施す処置空間10aを有する。また、マテリアルロック10には、他のマテリアルロック又はマンロックと識別するため、色彩等の識別手段が施されていてもよい。
処置空間10aは、普段は使用されず、緊急時に使用される空間である。ここで「緊急」とは、作業者M1がけがをしたり病気になったりした状態を含んでおり、治療等の処置が必要な作業者M1がいる状態を含む。処置空間10aは、このような緊急のときに用いられる空間である。また、処置空間10aは、高い清浄度が求められるため、平時は使用されない。
マテリアルロック10は、ヘリウム混合ガスを供給する第3供給部11と、純酸素を供給する第4供給部12と、処置空間10aの気圧を調整する気圧調整部13と、処置空間10aの温度を調整する温度調整部19を備える。更に、マテリアルロック10は、処置空間10aの作業者M1を撮影するカメラ14a、マテリアルロック10の外部と通信を行う携帯端末14b、消火用設備14c、処置空間10aを照らす照明設備14d、処置空間10aにおける電気機器の使用を可能とするコンセント14e、及びWifiルータ14fを備えていてもよい。
第3供給部11及び第4供給部12の構成は、例えば、前述した収容装置20の第1供給部22a及び第2供給部22bの構成と同一であってもよい。気圧調整部13は、処置空間10aに外部から気体を導入する吸気部13a、及び処置空間10aから気体を排出する排気部13bを含む。気圧調整部13は、吸気部13a及び排気部13bを調整することにより、処置空間10aの気圧を予め定められた計画速度に則って低下させる。吸気部13aは、例えば、インレットバルブを含み、排気部13bは、アウトレットバルブを含む。
カメラ14aは、作業者M1を撮影し、作業者M1に異常がないかどうかを判断するために設けられる。カメラ14aの撮影画像は、地上Gに送信される。よって、地上Gにいる作業者は、カメラ14aの撮影画像を視認することにより、作業者M1の状態を把握することが可能である。また、カメラ14aは、処置空間10aの音声を取得するレコーダ機能を備えていてもよい。
携帯端末14b及びWifiルータ14fは、処置空間10aの外部に情報を伝えたいときに用いられる緊急用の通信手段である。消火用設備14cは、処置空間10aにおいて火災が生じたときに消火を行う設備である。消火用設備14cは、例えば、消火用の水を高圧で噴出させる消火用ホースを含む。照明設備14dは、例えば、処置空間10aの上部に設けられており、処置空間10aを明るくするために設けられる。
照明設備14dにより、処置空間10a内がよく見えるようになるので、作業者M1に対する処置をスムーズに行うことが可能となる。コンセント14eは、処置空間10aで電気機器を使用するときに、当該電気機器のプラグが差し込まれる部位である。このコンセント14eにより、処置空間10aにおいて種々の電気機器を使用することが可能である。
図1及び図4に示されるように、マテリアルロック10は、例えば、処置空間10aの下部を開閉する下ドア15と、処置空間10aの上部を開閉する上ドア16と、天端17と、手摺り及び踊り場等の作業用スペース18とを備える。下ドア15は、収容装置20がマテリアルロック10より下方に位置するときには開放されている。また、下ドア15は、収容装置20が、マテリアルロック10、又はマテリアルロック10よりも上方に位置するときには閉塞されている。上ドア16は、処置空間10aに作業者が入り込むときには開放されており、処置空間10aの気圧調整をするときには閉塞されている。
図5に示されるように、マテリアルロック10の天端17は、揚重機30から下方に延びるワイヤ31を挿通させる挿通孔17aを有する。天端17に対してワイヤ31をスムーズに上下に動かすため、挿通孔17aの直径は、ワイヤ31の直径よりも大きくなっている。従って、ワイヤ31と挿通孔17aとの間には隙間Sが形成されるので、何らの対策も施さない場合には、処置空間10aの気体が挿通孔17aから漏れるので、処置空間10aの気圧が急激に下がることが懸念される。
そこで、本実施形態では、挿通孔17aを塞ぐ封止部材32を備える。封止部材32は、例えば、ゴム製であり、下から挿通孔17aに入り込むことによって挿通孔17aを塞ぎ込む。封止部材32は、ワイヤ31に固定されている。封止部材32は、例えば、上方に向かうに従って徐々に縮径する円錐状とされている。よって、封止部材32は、挿通孔17aに押し込みやすい形状とされているので、挿通孔17aをより確実に封止することが可能である。
封止部材32は、ワイヤ31に固定させる前には、例えば、円錐の軸線方向に延びる平面で分割された2つの半割部材とされている。ワイヤ31に封止部材32を固定させるときには、2つの半割部材でワイヤ31を挟み込み、2つの半割部材をネジで互いに接合させることにより、封止部材32がワイヤ31に固定される。よって、ワイヤ31への封止部材32の固定作業を容易に行うことが可能である。
次に、ケーソンCで作業者M1を救助する救助方法について説明する。ケーソンCの作業室3における作業中等に作業者M1がけがをしたり病気になったりした場合において、当該作業者M1を治療し地上Gに連れ戻す手順について説明する。まず、図4に示されるように、揚重機30で収容装置20を吊り降ろしてマテリアルロック10の処置空間10aに収容装置20を配置する。
そして、上ドア16を開けて応急処置を行う作業者を処置空間10aに配置し、照明設備14dを点灯させて作業者M1の受け入れの準備を行う。また、下ドア15及び上ドア16を閉めて気圧調整部13が吸気部13a及び排気部13bを制御することにより、処置空間10aを高圧状態とする。これにより、処置空間10aの気圧を作業室3の気圧と均衡させる。
処置空間10aの気圧を作業室3の気圧と均衡させた後には、下ドア15を開けて揚重機30によって収容装置20を作業室3に吊り降ろす。そして、収容装置20のスライドドア21を開けて、けが等をしていない作業者M2が作業者M1を担架25に乗せて担架25を椅子型にし、作業者M1を収容装置20に収容する(作業者を収容する工程)。
このとき、キャスタ部28で担架25を簡単に移動させることができるので、収容装置20への作業者M1の収容をスムーズに行うことが可能である。そして、スライドドア21を閉めて揚重機30でワイヤ31を吊り上げることにより、収容装置20をマテリアルロック10の処置空間10aに移動させる(収容装置を上昇させる工程)。そして、ワイヤ31に封止部材32を固定させて、封止部材32で天端17の挿通孔17aを封止する。
処置空間10aに移動した作業者M1は、処置空間10aにおいて直ちに処置を受けることができる。また、前述した応急処置を行う作業者が作業者M1に対して応急処置を行う(作業者に処置を施す工程)。ここで、処置空間10aの気圧が0.3MPaより高い(作業室3の深さが30mより深い)ときには、第3供給部11を作業者M1に装着させてヘリウム混合ガスの吸入を行うと共に、予め定められた計画速度で処置空間10aの減圧を開始する。
このとき、ワイヤ31に固定された封止部材32によって天端17の挿通孔17aが封止されているので、気圧調整部13が吸気部13a及び排気部13bを制御することにより、処置空間10aの気圧の制御を高精度に行うことが可能である。処置空間10aの減圧を開始して処置空間10aの気圧が0.3MPa以下となったときに、作業者M1から第3供給部11を外して作業者M1に空気を吸引させる。
処置空間10aの減圧が進行し、処置空間10aの気圧が0.12MPa以下となったときに、作業者M1に第4供給部12を装着させて純酸素の吸入を行う。このとき、作業者M1が純酸素の吸入を行うことにより、酸素が人体で消費されると共に、体内の窒素を外に排出させることが可能となる。そして、処置空間10aの気圧が大気圧と均衡した後には、作業者M1が収容されている収容装置20を揚重機30で地上Gに移動させ、作業者M1を病院等に搬送する。
次に、本実施形態に係る救助設備1及び救助方法から得られる作用効果について詳細に説明する。
救助設備1は、作業室3に対して上方に延びるマテリアルシャフト6と、作業室3よりも上方の位置に設けられたマテリアルロック10と、を備え、マテリアルロック10は、作業者M1に処置を施す処置空間10aを有する。よって、資材及び機材の搬送を行うマテリアルシャフト6及びマテリアルロック10を作業者M1に処置を施す設備として利用しているため、マテリアルシャフト6及びマテリアルロック10を有効利用することができる。
また、作業者M1を収容する収容装置20を揚重機30で吊り上げてマテリアルロック10に移動させることによって作業者M1をマテリアルロック10の処置空間10aに移動させることができるため、作業者M1への処置を地上Gに戻す前に速やかに行うことができる。
更に、作業者M1は、収容装置20に収容された後には、自力での移動を要さずに処置空間10aに自動的に移動する。従って、作業者M1が収容装置20に収容されてから処置空間10aに移動するまで、作業者M1は自力で移動する必要がないので、一切の負担を作業者M1にかけないようにすることができる。すなわち、はしごを登ったり、歩いて移動したりすることは一切不要である。
また、収容装置20は、マテリアルロック10及びマテリアルシャフト6を通るワイヤ31を介して揚重機30に接続されている。従って、作業室3とマテリアルロック10の間を昇降する収容装置20がワイヤ31によって揚重機30に吊り下げられることにより、収容装置20を昇降させることができる。
また、収容装置20は、ヘリウム混合ガスを供給する第1供給部22aと、酸素を供給する第2供給部22bと、を備える。よって、収容装置20に収容した作業者M1にヘリウム混合ガス又は酸素を吸入させることができるので、安全な減圧を行うと共に作業者M1に応急処置を施すことができる。
また、収容装置20は、消火器22cを備える。よって、作業室3又はマテリアルロック10で万が一火災が発生しても、消火器22cによって消火を行うことができる。従って、作業室3及びマテリアルロック10の安全性を高めることができる。
また、マテリアルロック10は、処置空間10aの気圧を調整する気圧調整部13と、処置空間10aの温度を調整する温度調整部19と、ヘリウム混合ガスを供給する第3供給部11と、酸素を供給する第4供給部12と、を備える。よって、マテリアルロック10の内部において、処置空間10aの気圧及び温度の調整を行うことができる。また、気圧及び温度の調整を行いながら作業者M1にヘリウム混合ガス又は酸素を吸入させることができる。従って、安全な減圧を速やかに行うことができる。
また、マテリアルロック10は、ワイヤ31を通す挿通孔17aを有し、ワイヤ31には、挿通孔17aを下から塞ぐ封止部材32が取り付けられる。よって、マテリアルロック10の挿通孔17aが下から封止部材32によって塞がれる。従って、挿通孔17aから気体が漏れることによってマテリアルロック10内の気圧が急激に低下する問題を回避することができる。
本実施形態に係る救助方法は、ケーソンCのマテリアルシャフト6を昇降する収容装置20に作業者M1を収容し、収容装置20を上昇させてマテリアルロック10に設けられた処置空間10aに移動させてから減圧及び処置を施す。従って、収容装置20に収容された作業者M1は、そのまま処置空間10aに自動的に移動して処置を受けることができるので、救助設備1と同様の効果が得られる。更に、処置空間10aでは、減圧を予め定められた計画速度で行うので、急激な気圧の低下を抑制することができる。従って、減圧症の発生を確実に回避することができる。
以上、本発明に係る救助設備及び救助方法の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、本発明は、各請求項の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能であり、救助設備を構成する各部の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は適宜変更可能である。更に、救助方法を構成する各工程の順序は適宜変更可能である。
例えば、前述の実施形態では、ゴム製である封止部材32について説明した。しかしながら、封止部材は、ゴム以外の材料によって構成されていてもよい。例えば、封止部材は、金属製であってもよく、オイルが塗布された金属製の封止部材がメタルタッチで挿通孔17aを封止してもよい。また、封止部材32は円錐状であったが、封止部材の形状は、直方体状、円柱状、楕円体状、角錐状、又は球状であってもよく、適宜変更可能である。
また、前述の実施形態では、椅子型の担架25について説明した。しかしながら、収容装置に設けられる担架は、適宜変更可能である。また、収容装置20は、スライドドア21、本体部22及び金網部23を備えていたが、収容装置のレイアウト、及び収容装置に設けられる設備も適宜変更可能である。
また、前述の実施形態では、2つの拡張部10Aを備えるマテリアルロック10について説明したが、マテリアルロックの形状、大きさ、数及び配置態様は適宜変更可能である。更に、マテリアルロックが有する設備の種類、数、大きさ、形状及び配置態様についても適宜変更可能である。
1…救助設備、2…躯体、3…作業室、4…スラブ、5…水貯留部、6…マテリアルシャフト、6a…内部空間、10…マテリアルロック、10A…拡張部、10a…処置空間、11…第3供給部、12…第4供給部、13…気圧調整部、13a…吸気部、13b…排気部、14a…カメラ、14b…携帯端末、14c…消火用設備、14d…照明設備、14e…コンセント、14f…Wifiルータ、15…下ドア、16…上ドア、17…天端、17a…挿通孔、18…作業用スペース、19…温度調整部、20…収容装置、21…スライドドア、21a…取っ手部、21b…鍵穴部、22…本体部、22a…第1供給部、22b…第2供給部、23…金網部、23a…ワイヤ取付け部、24…救急装置、25…担架、26…背当て部、27…座部、28…キャスタ部、30…揚重機、31…ワイヤ、32…封止部材、C…ケーソン、G…地上、M1,M2…作業者、S…隙間。
Claims (7)
- 作業が行われる作業室を備えたケーソンに用いられる救助設備であって、
前記作業室に対して上方に延びるマテリアルシャフトと、
前記マテリアルシャフトの前記作業室よりも上方の位置に設けられたマテリアルロックと、
前記作業室において作業者を収容し、前記マテリアルシャフトの内側を通り前記作業室と前記マテリアルロックの間を昇降する収容装置と、
前記マテリアルロックの上方から前記収容装置を昇降させる揚重機と、
を備え、
前記マテリアルロックは、前記作業者に処置を施す処置空間を有する、
救助設備。 - 前記収容装置は、前記マテリアルロック及び前記マテリアルシャフトを通るワイヤを介して前記揚重機に接続される、
請求項1に記載の救助設備。 - 前記収容装置は、ヘリウム混合ガスを供給する第1供給部と、酸素を供給する第2供給部と、
を備える請求項1又は2に記載の救助設備。 - 前記収容装置は、消火器を備える、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の救助設備。 - 前記マテリアルロックは、前記処置空間の気圧を調整する気圧調整部と、前記処置空間の温度を調整する温度調整部と、ヘリウム混合ガスを供給する第3供給部と、酸素を供給する第4供給部と、
を備える請求項1〜4のいずれか一項に記載の救助設備。 - 前記マテリアルロックは、前記ワイヤを通す挿通孔を有し、
前記ワイヤには、前記挿通孔を下から塞ぐ封止部材が取り付けられる、
請求項2に記載の救助設備。 - 作業が行われる作業室を備えたケーソンで行われる作業者の救助方法であって、
前記作業室に位置する収容装置に前記作業者を収容する工程と、
前記ケーソンのマテリアルシャフトを介してマテリアルロックの処置空間に前記収容装置を上昇させる工程と、
前記処置空間の減圧を予め定められた計画速度で行うと共に、前記収容装置に収容されている前記作業者に処置を施す工程と、
を備える救助方法。
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