JP2019018918A - 蓋体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】衝突により台部の外周壁が中折れしてしまっても、飲料用容器のシートの破れを低減した蓋体を提供する。【解決手段】蓋体は、中心領域に拡がるカガミ部2と、カガミ部の周縁を基端として膨出するリング状の台部3と、蓋体の最外周に位置する嵌合部4を備える。台部3は、カガミ部2から立ち上がる内周壁31と、内周壁31の上端から屈曲してカガミ部2と平行に延びる天面部32と、天面部32の外周縁から垂れ下がる外周壁33とに囲まれて画成される。内周壁31は、外周壁33よりも壁が厚い。【選択図】図3

Description

本発明は、アルミニウム等のシートで封止された飲料用容器に被せられる蓋体に関する。
飲料用容器は、各種理由により蓋体が被せられて販売されることが多い。例えば内容物がコーヒーであれば、その飲料用容器内のコーヒーはチルドカップコーヒーとも呼ばれる。例えば、蓋体は、見栄えの良さから購買意欲を増進させるべく、飲料用容器に被せられる。また例えば、飲料用容器内には、開口面にアルミニウムシートが熱融着されることで飲料物が封止されるが、このアルミニウムシートに外部からの突き刺さり抑止や、ホコリ等の異物が付着することを阻止すべく、蓋体が被せられる。また例えば、差し込まれるストローの揺動を抑制すべく、ストローが差し込まれる差込孔を備えつつ、蓋体が被せられる。また蓋体はデスクに水滴が落ちるのを防止するコースターともなり得る。
このような蓋体は、中心に平坦な領域であるカガミ部を備え、また、このカガミ部の周囲を膨出させることで、上面視ではリング状であり、リングを寸断する断面では概略台形の台部を備えている(例えば特許文献1参照)。この台部は、蓋体の意匠性を高めるため、又はコースターとして蓋体を使用する際に飲料用容器を周囲から支えるために膨出している。
この台部は、典型的には、カガミ部の縁から立ち上がる内周壁と、内周壁の上端から屈曲してカガミ部と平行に延びる天面部と、天面部の外周縁から垂れ下がる外周壁により画成されている。
特開2008−239244号公報
台部を備える蓋体を飲料用容器に被せた状態で、台部の角の一点に過大な荷重がかかるオフセット衝突が生じると、台部の外周壁が中折れして先鋭化し、飲料容器のアルミニウムシートを突き破ってしまう虞がある。突き破るまで至らなくとも、中折れした先端がアルミニウムシートに強い圧力を加え、フランジの内縁に沿ってアルミニウムシートに亀裂が生じる虞がある。
アルミニウムシートを突き破ったり、アルミニウムシートに亀裂を生じさせてしまうと、飲料用容器内に封止されていた飲料物が解放されて外部に飛び散ってしまう。例えば、飲料用容器を陳列棚から落下させてしまい、地面との衝突によって外周壁の中折れが生じると、床が汚れてしまう。また例えば、アルミニウムシートに微細な亀裂が入った状態でバッグの中に飲料用容器を収容していると、搬送時の振動や、温度膨張等により内容物が噴出しバッグが汚れてしまう不具合も発生した。
上記課題に際して、アルミニウムシートの突き刺し強度を上げる手法も考えられる。しかしながら、アルミニウムシートには切欠き状のストロー先端部を突き刺すことが予定されており、アルミニウムシートの強度向上の観点では相反する課題を解決することは困難であった。
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、台部の角の一点に過大な荷重がかかるオフセット衝突が生じ、台部の外周壁が中折れしてしまっても、飲料用容器を封止しているシートが破れ難いように処置された蓋体を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明の蓋体は、開口がシートで封止された飲料用容器に対して前記シートの上から被さり、前記飲料用容器のフランジに嵌め込まれる蓋体であって、前記蓋体の中心領域に拡がるカガミ部と、前記カガミ部の周縁を基端として膨出するリング状の台部と、前記蓋体の最外周に位置し、前記フランジと嵌合する嵌合部と、を備え、前記台部は、前記カガミ部から立ち上がる内周壁と、前記内周壁の上端から屈曲して前記カガミ部と平行に延びる天面部と、前記天面部の外周縁から垂れ下がる外周壁と、に囲まれて画成され、前記内周壁は、前記外周壁よりも壁が厚いこと、を特徴とする。
前記内周壁の壁の厚みは、前記外周壁の壁の厚みよりも1.0倍超から1.45倍以下であるようにしてもよい。
前記内周壁よりも壁が薄い前記外周壁は、衝撃に対して率先して中折れし、前記内周壁は、障壁として、前記シートに向かう前記外周壁の中折れ部分の行く手を阻むようにしてもよい。
前記内周壁は段部を備えているようにしてもよい。
前記段部は、径方向内側に張り出していてもよい。また、前記内周壁は、前記段部下方の下側内周壁が、前記段部上方の上側内周壁より径方向内側に張り出していてもよい。
前記天面部は径方向の幅が2mm以下であるようにしてもよい。
前記天面部は、内周縁、又は内周縁と外周縁の両方にR面取りされた丸味部を有するようにしてもよい。
熱可塑性樹脂シートを雄型で成型されて成るようにしてもよい。
前記カガミ部は、前記外周壁の中位位置よりも、前記天面部とは反対の下方位置に延在するようにしてもよい。
前記外周壁の傾斜角が変更される傾斜角変化点を前記外周壁に備え、前記カガミ部は、前記傾斜角変化点よりも、前記天面部とは反対の下方に延在するようにしてもよい。
前記傾斜角変化点は、前記外周壁の中位位置よりも、前記天面部側の上方に位置するようにしてもよい。
前記嵌合部は、内側へ膨出する大突起と小突起を内周面の周方向に沿って一列に交互に並べて備え、前記大突起は前記小突起よりも膨出量が相対的に大きく、前記小突起は前記大突起よりも膨出量が相対的に小さく、前記フランジが前記大突起と前記小突起とを乗り越えて前記嵌合部に収容されることで、前記飲料用容器と合体するようにしてもよい。
前記大突起から蓋体中心を挟んで反対側は前記小突起であり、前記小突起から蓋体中心を挟んで反対側は前記大突起であるようにしてもよい。
前記嵌合部は、前記大突起と前記小突起の列から上方に前記フランジを収容する嵌合懐部を備え、前記嵌合懐部は、前記嵌合部に前記フランジが嵌め込まれたとき、前記フランジの厚みよりも広く、前記フランジの厚みに対して遊びを有して収容するようにしてもよい。
前記カガミ部は、切り込みにより成るストロー差込口を有し、前記蓋体が前記飲料用容器と合体したとき、前記シートよりも前記ストロー差込口の長さ分以上に高く位置するようにしてもよい。
前記段部には1又は複数のスタックボッチが形成されているようにしてもよい。
上記の目的を達成するため、本発明の製造方法は、前記蓋体に相当する雄型を熱可塑性樹脂シートに押し付けて前記蓋体を成型すること、を特徴とする。
前記押し付けの過程で、まず、前記天面部に相当する前記雄型の箇所に前記熱可塑性樹脂シートが接触し、次に、前記段部に相当する前記雄型の箇所に前記熱可塑性樹脂シートが接触するようにしてもよい。
本発明によれば、台部の外周壁が中折れしてしまっても、台部の内周壁で中折れ部がシートにまで至らないように障壁となって行く手を阻むので、シートが破ける虞を低減できる。
蓋体を飲料用容器に被せた状態を示す斜視図である。 蓋体の斜視図である。 蓋体の断面図である。 蓋体の底面図である。 蓋体の各所の寸法関係を示す断面図である。 蓋体の成型過程を示し、(a)は天面部に該当する箇所に雄型が当たった状態を示し、(b)は段部に雄型が当たった状態を示す。 飲料用容器が蓋体から地面に衝突直後の一時点を示す模式図である。 飲料用容器が蓋体から地面に衝突直後の他の一時点を示す模式図である。 飲料用容器が蓋体から地面に衝突直後の更に他の一時点を示す模式図である。 飲料用容器及び蓋体が寝た状態で、飲料用容器が蓋体から地面に衝突した後の一時点を示す模式図である。 飲料用容器及び蓋体が寝た状態で、飲料用容器が蓋体から地面に衝突した後の蓋体の斜視図である。
本発明の実施形態に係る蓋体について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、各図面においては、理解容易のため、厚み、寸法、位置関係、比率等を強調して示している。また、以下、容器と蓋との関係が引っくり返ろうとも、蓋から容器の方向を下方又は下側といい、反対に容器から遠ざかる方向を上方又は上側という。
(1.構成)
図1は、使用状態の蓋体1を示す斜視図である。図1に示すように、蓋体1は飲料用容器100に被せられる。飲料用容器100は、内容物がコーヒーであればチルドカップコーヒーとも呼ばれており、寸胴或いは口縁へ向けて暫次拡径し、上面が開口した円筒のコップ形状を有する。飲料用容器100の開口面にはアルミニウムシート101が熱融着されており、コーヒー等の飲料物が封止される。蓋体1は、アルミニウムシート101の上から飲料用容器100に被さることで、アルミニウムシート101へのホコリ等の異物の付着を阻止している。
この蓋体1には、カガミ部2にC字或いはU字状のストロー差込口21が切り込まれている。ストローはストロー差込口21を通して蓋体1を貫通し、更にアルミニウムシート101を突き破って内部に差し込まれる。この蓋体1は、ストロー差込口21を固定し、ストローの揺動を抑制している。更に、カガミ部2を飲料用容器100の底面径と一致させ、カガミ部2の周囲を盛り上げてリング状の台部3を形成することで、商品販売時の陳列の際に容器を重ねる事ができる。また、蓋体1はデスクに水滴が落ちるのを防止するコースターともなり得る。
この蓋体1の詳細構成を説明する。図2は蓋体1の斜視図であり、図3は蓋体1の中心を通る鉛直軸線よりも径方向外側を示した断面図である。図4は蓋体の底面図である。図2乃至図4に示すように、蓋体1は、飲料用容器100の上部外形に合わせて、上面視では円形状を有する。蓋体1の円形中心領域は円形のカガミ部2になっており、蓋体1の大部分を占めている。このカガミ部2は、アルミニウムシート101に対向する平坦面であり、アルミニウムシート101の被覆機能を主に担っている。
カガミ部2の外側には、蓋体1の意匠性を高めるべく、或いはコースターとして飲料用容器100を支えるべく、台部3が形成されている。台部3は、上面視ではカガミ部2を囲んだリング形状を有し、カガミ部2の周縁を基端として上方に膨出している。そして、蓋体1の最外周、即ち台部3の外側には、飲料用容器100のフランジ102が嵌る嵌合部4が設けられている。嵌合部4は、台部3の周縁を基端とするリング形状を有し、カガミ部2よりも下方に垂れ下がっている。カガミ部2と台部3と嵌合部4は、蓋体1のシート成型により連続し、一つの蓋体1を形成している。
台部3は、上面視では径方向に幅を有するリング形状を有するが、リングを寸断した断面形状では概略台形である。但し、台部3の脚に関し、内周壁31よりも外周壁33は長く、外周壁33はカガミ部2の位置を下回って垂れ下がっている。尚、台部3の下底は無い。即ち、台部3は、カガミ部2から立ち上がる内周壁31と、内周壁31の上端から屈曲してカガミ部2と平行に延びる天面部32と、天面部32の外周縁から垂れ下がる外周壁33とによって画成されている。
内周壁31は、カガミ部2の周縁を基端として立ち上がるが、途中にカガミ部2と平行な段部311が設けられている。段部311は、同一の高さで内周壁31に沿って一周している。そのため、内周壁31は、天面部32から段部311までの上側内周壁312と、段部311からカガミ部2までの下側内周壁313に分けられている。上側内周壁312の方が下側内周壁313よりも蓋体1の径方向外側に立設されている。換言すれば、段部311は蓋体1の径方向内側に張り出しており、内周壁31は、段部311の下方の下側内周壁313が、段部311上方の上側内周壁312より蓋体1の径方向内側に張り出している。そのため、図3に示すように、台部3は、段部311の上方で径方向に幅狭で、段部311の下方で径方向に幅広になっている。尚、段部311は、高さを違えて、複数設けられていてもよい。
この段部311には、複数箇所にスタックボッチ314が設けられている。スタックボッチ314は、半球又は錐台等の窪みであり、段部311から下方に凹んでいる。このスタックボッチ314の主たる機能は、蓋体1を重ねたスタック状態におけるブロッキングの発生抑制であるが、内周壁31の剛性向上も担う。
天面部32は、平坦面を備えるのみならず、内周縁又は内周縁と外周縁の両方が1周に亘ってR面取りされた丸味部321を備えていることが好ましい。天面部32の幅は、雄型を用いたシート成型によって内周壁31を肉厚にする観点から、2mm以下が望ましく、丸味部321を除いた平坦域は1.5mm以下が望ましい。
外周壁33は、天面部32から嵌合部4までストレートに延びるか、又は途中で傾斜角が変化する傾斜角変化点331を有する。傾斜角変化点331を備える場合、傾斜角変化点331から天面部32までの上側外周壁332と、傾斜角変化点331から嵌合部4までの下側外周壁333とで、傾斜角が異なっている。例えば、外周壁33が天面部32から嵌合部4までの途中で外側に膨出するようにしても良い。すなわち、傾斜角変化点331を中心に、下側外周壁333の抜き勾配よりも上側外周壁332の抜き勾配を大きくし、上方に向かうにつれてより窄むようにしても良い。
嵌合部4の上面部41は、台部3の外周壁33の末端から蓋体1の径方向に飲料用容器100のフランジ102と同一径になるまで拡がる。また嵌合部4の側面部42は、上面部41の外周縁からフランジ102を包み込むように垂れ下がっている。この嵌合部4の内周面には、大突起43と小突起44が周に沿って交互に、また一列に整列している。
大突起43及び小突起44は、蓋体1の径方向内側に弧状に膨出し、その形状は半分のラグビーボール状であり、蓋体1の周方向に長い。大突起43は、小突起44に比べて突出量が大きい。大突起43から蓋体1の中心を挟んで反対側には小突起44が並ぶように、大突起43と小突起44の数を調整するとよい。
大突起43と小突起44の列と上面部41との間の空間は、嵌合懐部45になっている。即ち、蓋体1を飲料用容器100に被せたときに、大突起43と小突起44をフランジ102が乗り越えて、当該フランジ102が嵌合懐部45に嵌り込む。これにより、蓋体1は飲料用容器100と合体する。また、大突起43と小突起44を交互に配置することで、製造工程におけるキャップ装着工程にて、容器カット径の差異に対して嵌合強度を調整できるという効果を有する。
図5を参照しつつ、この蓋体1の各所の寸法関係を説明する。図5は蓋体1の寸法関係を明示した断面図である。まず、台部3の内周壁31の肉厚Aは、台部3の外周壁33の肉厚Bよりも厚い。肉の厚さ或いは肉厚とは壁の厚さである。次に、カガミ部2は、台部3が備える外周壁33の半分の高さCよりも低い位置Dに延在する。外周壁33の高さは、嵌合部4の上面部41から天面部32までの長さである。
傾斜角変化点331は、少なくともカガミ部2の位置Dよりも高い位置Eに形成され、即ちカガミ部2よりも天面部32側に形成され、望ましくは、台部3が備える外周壁33の半分の高さCよりも高い位置に形成される。例えば、傾斜角変化点311を中心に、例えば、上側外周壁332の抜き勾配が8度であり、下側外周壁333の抜き勾配が7度である。
また、嵌合部4の上面部41とカガミ部2の底面との距離Fが、少なくともストロー差し込み口21の径Gよりも距離を取って、ストローを差し込んだ時にストロー差込み口21が開くように、カガミ部2の高さは設定される。そして、嵌合懐部45の高さH、即ち大突起43及び小突起44の列と上面部41との間の長さHは、フランジ102の厚みJよりも長い。例えば、嵌合懐部45は、大突起43及び小突起44の列と上面部41との間が、フランジ102の厚みよりも0.25mm程度長い。
また、熱可塑性樹脂シートの厚みを100%とする。このとき、製造公差もあるが、天面部32の肉厚は87%以上95%以下に収まることが好ましい。外周壁33の肉厚は57%以上67%以下に収まることが好ましい。内周壁31の肉厚は、外周壁33よりも壁が厚く、且つ67%以上77%以下に収まることが好ましい。尚、これら肉厚の数値は、各部の最も厚みを有する部分を測定して得られる。外周壁33であれば上側、内周壁31であれば上側内周壁312の位置を測定することが望ましい。
天面部32の肉厚を100%として換算し直す。そうすると、外周壁33の肉厚は60%以上77%以下に収まることが好ましい。内周壁31の肉厚は、外周壁33よりも壁が厚く、且つ70%以上88%以下に収まることが好ましい。また、外周壁33の肉厚と内周壁31の肉厚との比率に換算すると、内周壁31の肉厚は、外周壁33の肉厚の1.0倍超から1.45倍以下が好ましい。
(2.製造方法)
このような蓋体1は次の通り製造できる。図6に示すように、蓋体1は熱可塑性樹脂シート200を用いたシート成型により作製される。熱可塑性樹脂シート200は、例えばポリエチレンテレフタレート製、ポリ塩化ビニル製、ポリスチレン製、ポリエチレン製、ポリプロピレン製又はポリカーボネート製である。
成型機内で、平らな熱可塑性樹脂シート200を加熱した熱盤に吸い付け加熱し軟化させ、当該熱可塑性樹脂シート200の片面側から蓋体1の雄型201を押し付ける。加熱した熱盤側から圧縮空気を熱可塑性樹脂シート200に押し付けて、熱可塑性樹脂シート200を延伸させ雄型201へ密着させる。成型機内では複数の雄型201が一定間隔を空けて縦横に並べられている。成型機内では、複数の雄型201が一枚の熱可塑性樹脂シート200に対して同時に押し当てられる。そのため、一枚の熱可塑性樹脂シート200から複数の蓋体1が同時に作製される。
ここで、図6の(a)に示すように、成型機内では、まず雄型201のうち、天面部32と対応する箇所が先に熱可塑性樹脂シート200に当たる。熱可塑性樹脂シート200の温度T1よりも雄型201の天面部32の位置の温度T2は低いため、天面部32は冷却され、天面部32の延伸性は低下する。但し、蓋体1では、天面部32の幅は薄く、延び難くなっている領域は狭い。そのため、内周壁31及び外周壁33に向けて多くの材料が流れて延伸していく。このように、天面部32の幅の薄さは、内周壁31及び外周壁33の肉を厚くする方向に寄与している。
更に、丸味部321が備えられていると、材料は内周壁31及び外周壁33に向けて一層流れ易くなる。従って、天面部32に形成される丸味部321は、内周壁31及び外周壁33の肉を一層厚くする方向に寄与している。
また、図6の(b)に示すように、天面部32から延伸している熱可塑性樹脂シート200は、雄型201のうち、段部311と対応する箇所に当たる。熱可塑性樹脂シート200の温度T1よりも雄型200の段部311に相当する位置の温度T2は冷たいため、天面部32から延伸した材料は段部311で冷やされ、段部311で上側内周壁312の延伸は鈍る。従って、上側内周壁312は延び過ぎず、厚みが確保される。また冷却された段部311の厚みも確保される。
更に、冷却により厚みが確保された段部311から材料が延伸されて、また段部311から延伸しにくくなった分、カガミ部2から材料が延伸されて、下側内周壁313が形成される。従って、下側内周壁313の形成に必要な材料は十分に供給され、下側内周壁313の厚みも確保される。
一方、外周壁33は段部311が無い為、途中で雄型201と接触して冷却されることがなく、外周壁33は内周壁31よりも薄くなる。このように、この蓋体1では、天面部32が薄いこと、内周壁31に段部311が設けられていること、これらの各々の要因によって、台部3において外周壁33よりも内周壁31の肉が厚くなっている。
(3.作用)
図7乃至図11は、飲料用容器100が落下して蓋体1から地面に衝突した状態を示している。図7乃至図11に示すように、地面300に対して、鉛直方向と蓋体1及び飲料容器100の軸方向とが交差する所謂オフセット衝突したものとする。図7乃至図9と、図10及び図11とではオフセット量が異なる。
すなわち、図7乃至図9は、鉛直方向と蓋体1及び飲料用容器100の軸方向との角度が小さく、地面300に対して飲料用容器100が立った状態で地面に衝突した状態を示し、図10及び図11は、鉛直方向と蓋体1及び飲料用容器100の軸方向との角度が大きく、地面300に対して飲料用容器100が寝た状態で地面に衝突した状態を示している。以下では、地面300との衝突の際の、鉛直方向と蓋体1及び飲料用容器100の軸方向との角度の違いにより、蓋体1の潰れ方が異なることを説明する。
(3−1.飲料用容器100が立った状態での衝突)
図7に示すように、落下によって蓋体1の台部3の一箇所と地面300とが接触する。台部3の外周壁33は内周壁31と比べて薄い。そのため、内周壁31よりも外周壁33が率先して折れ曲がる中折れが生じる。外周壁33の中折れ部5は、先鋭化して蓋体1の内側へ向けて折れつつ、衝突によって潰れていくため、その先端はアルミニウムシート101に向けて斜め下方に進行していく。
一方、内周壁31は、天面部32の幅が狭いこと、及び段部311を有していること、これら各々の理由により肉が厚くなっている。また、段部311で区切られていることにより、上側内周壁312と下側内周壁313の長さは外周壁33と比べて短く、上側内周壁312と下側内周壁313は各々座屈し難くなっている。更に、段部311に形成されているスタックボッチ314がリブとなって、内周壁31の剛性を増している。そのため、ひとたび外周壁33に中折れ部5が生じれば、この中折れ部5で破壊が進行していき、多くの場合、内周壁31は破壊を免れ得る。
図8に示されるように、潰れの進行に伴って、破壊を免れた内周壁31に中折れ部5が近づいていき、ついには、内周壁31に中折れ部5が当接する。内周部31は、そのまま中折れ部5を押し留めて行く手を阻み、中折れ部5がアルミニウムシート101に到達するのを阻止する。即ち、この内周壁31は、外周壁33よりも肉厚になることで、外周壁33で生じた中折れ部5に当接して、中折れ部5がアルミニウムシート101へ向けて拡大進行していくことを阻む障壁となる。
中折れ部5は、外周壁33の中位位置で発生し易い。そこで、カガミ部2は、外周壁33の半分の高さよりも低い位置に延在する。換言すると、内周壁31は、中折れ部5が発生し易い箇所よりも更に下方に延びている。そのため、内周壁31の守備範囲は十分に広く、中折れ部5が斜め下方に進行しても、カガミ部2の下に中折れ部5が潜ることは抑制され、アルミニウムシート101への到達を更に困難にしている。
外周壁33に傾斜角変化点331を備えていると、中折れ部5は傾斜角変化点331で発生することが多くなる。即ち、傾斜角変化点331は、中折れ部5の発生地点をコントロールする中折れ制御部となる。そしてカガミ部2は、この傾斜角変化点331よりも低い位置に延在する。そのため、カガミ部2の下に中折れ部5が潜ってアルミニウムシート101に至るように中折れ部5が進行することが更に抑制される。
次に、図9に示すように、フランジ102を収容する嵌合懐部45は、大突起43及び小突起44の列と上面部42との間がフランジ102の全高より長い。そのため、蓋体1と飲料用容器100は遊びを持って嵌り合っている。そうすると、飲料用容器100が地面300に衝突した衝撃で、蓋体1と飲料用容器100が別個にバウンドし、蓋体1が外れ易くなる。
このとき、図9に示すように、蓋体1は地面300と接触していない箇所1aから外れる。そのため、衝突箇所が支点となって蓋体1は回転し、蓋体1は地面300に対して平行になって、リング状の台部3全体が地面300に当接する。そうすると、蓋体1が外れ易くなることで、地面300に接触した衝撃を台部3全体で受け止めることができ、衝突力が台部3の全体に分散し、中折れ部5の拡大進行を緩和することができる。即ち、中折れ部5を内周壁31で受け止め易くなる。また万一、内周壁31で中折れ部5が滑って、アルミニウムシート101に進行しようとしても、アルミニウムシート101に届くまで中折れ部5が成長する可能性は少なくなる。
更に、この蓋体1の外れ易さに関し、嵌合部4には大突起43と小突起44が交互に並んでいる。大突起43は、フランジ102と接触している部分が多く、フランジ102が大突起43を乗り越えて嵌合懐部45から脱しにくい。一方、小突起44は、フランジ102と接触している部分が少なく、フランジ102が小突起44を乗り越えて嵌合懐部45から脱しやすい。
そのため、大突起43が外れ難さを向上させ、小突起44が外れ易さを向上させており、飲料用容器100が落下していない状態では蓋体1と飲料用容器100は適度に嵌り合い、飲料用容器100が落下して地面300に蓋体1から衝突したときには、スムーズに蓋体1が外れる。そのため、大突起衝突を台部3全体で受け止められるようになる。
更に、大突起43の反対側が小突起44になるように調整されている場合、大突起43の位置が地面300との衝突箇所であれば、中心を挟んで衝突箇所と反対の箇所には小突起44が配置されており、中心を挟んで衝突箇所と反対側が外れやすくなる。また、小突起44の位置が地面300との衝突箇所であれば、衝突箇所とは反対の箇所は大突起43であるが、その大突起43の両隣は小突起44であり、この場合も衝突箇所とは反対側が外れやすくなる。従って、蓋体1が外れて台部3全体が地面300に接触し易くなる。
このように、蓋体1の大突起43と小突起44の列、及び嵌合懐部45は、各々が蓋体1を飲料容器100から外れ易くして衝撃が一点に集中することを阻止する衝撃緩和部となり、中折れ部5の拡大成長を阻止し、アルミニウムシート101に中折れ部5が進行し難くしている。
(3−2.飲料用容器100が寝た状態での衝突)
図10に示すように、蓋体1及び飲料用容器100が寝た状態で地面300に衝突すると、外周壁33、又は、外周壁33及び天面部32に亘る範囲で衝撃力が加わる。そのため、外周壁33、天面部33及び上側内周壁312が径方向内側に倒れ込もうとする。ここで、段部311は径方向内側に張り出しているので、上側内周壁312の剛性が高められており、これらの部位33、33、312の倒れ込みを抑制する。換言すれば、段部311は上側内周壁312に対して垂直に張り出したリブとして機能する。特に、段部311が周方向に沿って円環状に設けられているので、上側内周壁312の剛性が更に向上する。
また、段部311が径方向内側に張り出していることから、下側内周壁313は上側内周壁312よりも径方向内側に張り出している。そのため、台部3の段部331の上方が段部311の下方より幅狭であることにより、外周壁33、天面部32、及び上側内周壁312が蓋体1の径方向内側に倒れ込んだとしても、段部311及び下側内周壁313で支えることができる。すなわち、段部311及び下側内周壁313がリブとして機能し、段部311及び下側内周壁313が倒れ込み進行を阻む。或いは、倒れ込みが進行しても、段部311と接触するとともに段部311を下側内周壁313が支えるため、物理的な障壁ともなる。その結果、倒れ込みが食い止められ、アルミシート101の突き破りを防止することができる。
また、図11に示すように、外周壁33が径方向内側に倒れ込もうとする際、外周壁33は円環状に設けられているので、蓋体1の周方向に衝撃が分散される。そのため、外周壁33の部分的な範囲Rに衝撃が加わり、外周壁33が範囲Rを持って内側に倒れ込む。これに対し、段部311及び下側内周壁313が蓋体1の周方向に円環状に設けられているので、外周壁33が範囲Rを持って内側に倒れ込んできても、範囲を持って支えることができる。
また、天面部32の幅を2mm以下にしていることで、外周壁33が範囲Rを持って内側に倒れ込んだ際に当該範囲Rの端に折り目34が形成され易くなる。この折り目34は、天面部32を含む近傍に形成される。すなわち、天面部32、外周壁33、及び上側内周壁312に形成される。この折り目34は天面部32の幅が狭い方が形成され易い。段部311が円環状に設けられ、上側内周壁312の剛性が向上していることで、更に天面部32近傍に折り目34が形成されやすい。この折り目34において衝撃が吸収されるため、段部311下方への破壊が抑制され、結果としてアルミシート101の突き破りを防止することができる。
(4−1.実施例)
(実施例1)
0.280mmの厚みを有する熱可塑性樹脂シート200を雄型201で成型し、実施例1の蓋体1を作製した。雄型201の天面部32に関しては、全幅は2mm、丸味部321を有し、平坦部の幅が1.5mmである。雄型201の上側内周壁312は高さが3.5mmで、下側内周壁313の高さは3.5mmである。段部311の幅は、1.5mmである。外周壁33の高さは、13mmである。
このとき、実施例1の蓋体1は、天面部32の肉厚が0.261mmであった。熱可塑性樹脂シート200の厚みを100%とすると93.2%に相当する。外周壁33の肉厚は、上部側を計測すると0.178mmで、熱可塑性樹脂シート200の63.6%に相当した。内周壁31については、外周壁33と同じ計測位置として上側内周壁312を計測すると、その肉厚は0.211mmであり、熱可塑性樹脂シート200の75.3%に相当した。尚、カガミ部2の肉厚は下側内周壁313寄りの箇所は0.213mmで、中央部は0.234mmであった。同76.0%及び83.5%に相当した。
(比較例1)
0.280mmの厚みを有する熱可塑性樹脂シート200を別の雄型で成型し、比較例1の蓋体1を作製した。この成型品の天面部に関しては、全幅は4.6mm、丸味部321は無い。この成型品は段部311を備えず、台部3の内周壁はストレートである。そして、この成型品の内周壁は高さは4.5mmで、外周壁33の高さは、13mmである。
このとき、比較例1の蓋体は、天面部の肉厚が0.279mmであった。熱可塑性樹脂シート200の厚みを100%とすると99.6%に相当する。天面部が幅広であり、広い領域が雄型で冷却されたために、延伸性が低下し、肉厚を維持したことが確認できる。
また、比較例1の外周壁の肉厚は、実施例1と同じ高さの上部側を測定すると0.203mmで、熱可塑性樹脂シート200の72.5%に相当した。一方、内周壁の肉厚は、外周壁と同じ高さを測定すると0.184mmであった。比較例1の内周壁は、高さが実施例1の計7mmと比べて約67%の4.7mmであり、それだけ延伸量が少ないにも関わらず、熱可塑性樹脂シート200の65.7%まで薄くなり、しかも外周壁よりも内周壁が薄くなっていることが確認された。
ここで、実施例1のカガミ部2の内周壁31寄りの肉厚が76%まで減少しているのに対して、比較例1のカガミ部の内周壁寄り肉厚が95.3%も保持されていた。すなわち、内周壁に段部を設けない比較例1においては、成型時に内周壁に肉厚が残らずそのままシートが延伸されるため、内周壁が薄くなることが確認できた。このように、天面部32を幅狭としたり、内周壁31に段部311を設けたりした実施例1は、外周壁33の肉厚と比べて内周壁31の肉が厚くなることが確認された。
(4−2.落下試験1)
以下表1の寸法を有する実施例1及び実施例2の蓋体1と比較例1及び比較例2の蓋体を、アルミニウムシート101で飲料物が封止された飲料用容器100に嵌め込み、蓋側を下にして高さ130cmから落下させた。130cmの高さは、コンビニエンスストア等の販売店で陳列されている高さを想定したものである。尚、実施例2は、実施例1と同じように天面部32が2mmであり、また段部311を有しているため、内周壁31は外周壁33よりも厚くなっている。
Figure 2019018918
落下試験の最中はハイスピードカメラ(カシオ計算機株式会社EX−F1)にて動画撮影した。そして、動画を閲覧し、地面に対して蓋体1から斜めにオフセット衝突したケースを各実施例及び比較例において10個ずつ採用した(n=10)。そして、採用した各ケースにつき、中折れ部5がアルミニウムシート101に到達することで、アルミニウムシート101に破れが生じたか否かを目視で確認した。その結果を下表2に示す。
Figure 2019018918
表2に示すように、各実施例の蓋体1であると、比較例の蓋体と比べて中折れ部5が原因でアルミニウムシート101を破ってしまう頻度が減少した。即ち、中折れ部5は発生したが、中折れ部5が内周壁31で食い止められ、また蓋体1が飲料用容器100から外れて途中から台部3全体が地面に付いて衝撃が分散され、アルミニウムシート101が中折れ部5に到達する頻度が減少したことが確認された。
特に、天面部32の幅を2mmとし、段部311を設置した実施例1と比べ、更にカガミ部2を低い位置に置いた実施例2の蓋体3は、全ての中折れ部5が内周壁31で食い止められ、アルミニウムシート101を突き破ったケースはなかった。内周壁31が延びたことにより、内周壁31の守備範囲が広くなって、また中折れ部5がアルミニウムシート101側に滑ることもなくなったと考えられる。
(4−3.衝撃試験)
さらに実施例2の蓋体1と比較例1の蓋体を、アルミニウムシート101で飲料物が封止された飲料用容器100に嵌め込み、蓋側を下にした状態で固定し、衝撃試験機(群馬県立群馬産業技術センター、吉田精機株式会社ASQ−700型)にて自由落下高さ120cm想定の衝撃強度にて試験を実施した(n=10)。
衝撃試験機は落下試験における自由落下と異なり、検証サンプルを固定した台が下降した後に上昇し衝撃を伝える為に、内容物であるコーヒー飲料が挙動し必ずしもアルミシートに内容物の荷重が集中しない。その為に、中折れ部5がアルミシートに接した際に、アルミシートに荷重が集中しない為にアルミ突破り現象を確認しにくい。その為、中折れ先端部が先鋭化してカガミ部2より下位に到達しているか目視で確認を実施した。その結果を下記表3に示す。
Figure 2019018918
表3に示すように、比較例1では、衝撃強度にて中折れ部5が全て先鋭化し、アルミニウムシート101に到達していた。一方、実施例2の蓋体1であると、衝撃強度により中折れ部5は発生したが、全て内周壁31にて食い止められ、中折れ部5はアルミニウムシート101に未達であった。また、実施例2では、内周壁31の強度が十分に保たれている為に、カガミ部2がアルミニウムシート101に下降して面で接するようにアルミニウムシート101まで降りていることが確認された。
上記結果より、消費者が故意に天面部2を机等に斜めから叩きつけた際においても、中折れ部5が発生しても内周壁31にて食い止められるため、またカガミ部2がアルミニウムシート101を面で支えるため、アルミニウムシート101が突き破られる虞が低減するものである。
(4−4.落下試験2)
下記表4の寸法を有する実施例3の蓋体1と比較例2及び比較例3の蓋体を、アルミニウムシート101で飲料物が封止された飲料用容器100に嵌め込み、蓋側を下にし、飲料用容器100及び蓋体1の軸が、上記落下試験1時より寝た状態で試験機(東京都立産業技術センター、神栄テクノロジー株式会社製DT−205H)に固定し、高さ110cmから自由落下させた。高さ110cmの高さは、コンビニエンスストア等の販売店における陳列棚の中段程度の高さを想定したものである。
Figure 2019018918
実施例3は、天面部32の幅が丸味部321を含めた幅であり、平坦部の幅は1.5mmである。比較例2は、上記と同じであり、段部311を有しない。すなわち、平坦な天面部から内側、外側において内周壁、外周壁がストレートに垂れ下がってなる。天面部が最も肉厚であり(約0.28mm)、外周壁が最も肉薄である。外周壁の肉厚分布は、上部が約0.201mm、中央部が約0.193mm、下部が約0.188mmである。比較例3は、平坦な天面部の内側及び外側に丸味部を有し、内側の丸味部よりも外側の丸味部の方が丸味が大きい。内周壁には段部311を有さずストレートであり、外周壁もストレートである。
落下試験の最中はハイスピードカメラ(カシオ計算機株式会社EX−F1、EX−100F)にて動画撮影した。また、アルミニウムシート101に破れが生じたか否かを目視で確認した。その結果を下記の表5に示す。なお、比較例2及び比較例3については、検証サンプル数を40個とし、実施例3については、高さ110cmで検証サンプル数を31個とし、高さ120cmで検証サンプル数を4個とした。
Figure 2019018918
表5に示すように、実施例3では、検証サンプルの35個全てでアルミシート101の破れは生じていないことが確認された。地面との衝突により外周壁33、天面部32及び上側内周壁312が蓋体1の内側に倒れるが、反発力が大きく、跳ね上がった高さが実施例3、比較例2,3の中で最大であった。外周壁33、天面部32及び上側内周壁312内側に倒れ込むものの、衝撃が蓋体1の周方向に分散され、周方向に延在する段部311及び下側内周壁313の支えにより弾性力が発揮されたためと考えられる。
比較例2では、検証サンプルの40個全てでアルミシート101の破れが生じているのが確認された。地面には肉厚の天面部が衝突するが、外周壁が肉薄であるために、外周壁の中央部が潰れて蓋体の内側に先鋭化し、アルミシート101を突き破っていることが確認された。
比較例3では、検証サンプル40個中19個でアルミシート101の破れが生じているのが確認された。アルミシート101の破れが確認された検証サンプルを検証すると、地面には天面部外側の丸味部が衝突して押し込まれ、アルミシート101の方に向けてV字状に先鋭化するとともに、当該丸味部で受けた衝撃により、天面部と比べて肉薄となる外周壁の中央部が周方向に潰れることで、丸味部に形成された先鋭部の先端がアルミシート101に進行し、アルミシート101を突き破ることが確認された。
(5.効果)
このように、台部3を備えて其の外周壁33に中折れ部5が生じる虞に対し、この蓋体1は、内周壁31を中折れ部5のアルミニウムシート101への進展を阻む障壁とした。そして障壁としての機能をより高めるべく、第1に、内周壁31の障壁としての信頼性を高める各種措置を施し、第2に、内周壁31の守備範囲を拡げる措置を施し、第3に、内周壁31の守備範囲内に中折れ部5が生じる中折れ制御措置を施し、第4に、中折れ部5を進展させる衝撃エネルギーを分散する衝撃分散措置を施した。
即ち、まず内周壁31を障壁として機能させるべく、内周壁31は外周壁33よりも壁を厚くした。好ましくは内周壁31の厚みを外周壁33よりも1.0倍超から1.45倍以下とした。このために、内周壁31は段部311を備えているようにし、これにより内周壁31の厚みを増加させ、強度を増加させた。内周壁31の厚みを増加させる効果を発生する限り、段部311は複数段としてもよい。
また内周壁31は、上側内周壁312と下側内周壁313に分かれ、各々全長が段部311が無い場合と比べて短くなり、座屈し難くなる。また、天面部32は径方向の幅が2mm以下になるようにした。これにより、熱可塑性樹脂シート200の肉が内周壁31側へ延伸しやすくなり、内周壁31の厚みが増し、強度が増す。
また天面部32は内周縁と外周縁の両方にR面取りされた丸味部321を有するようにした。これより、熱可塑性樹脂シート200の肉が内周壁31側へ流れやすくなり、内周壁31の厚みが増し、強度が増す。尚、目的は内周壁31の厚みを増加させることにあり、丸味部321は少なくとも天面部32の内周縁にあればよい。
更に、段部311には1又は複数のスタックボッチ314が形成されているようにした。これにより、内周壁31の剛性が上がる。
次に、内周壁31の守備範囲を拡げる措置として、カガミ部2は、外周壁33の中位位置よりも、天面部32とは反対の下方に延在するようにした。即ち、内周壁31を下方に延ばした。これにより、内周壁31を回避して中折れ部5がアルミニウムシート101に向かう虞は低減する。
更に、内周壁31の守備範囲内に中折れ部5が生じる中折れ制御措置として、外周壁33の傾斜角が変更される傾斜角変化点331を外周壁33に備え、カガミ部2は、傾斜角変化点331よりも、天面部32とは反対の下方に延在するようにした。これにより、中折れ部5が傾斜角変化点331で発生し易くなり、即ち内周壁31の守備範囲内で中折れ部5が発生し易くなり、内周壁31で中折れ部5を食い止める可能性が高まる。
そして、中折れ部5を進展させる衝撃エネルギーを分散する衝撃分散措置として、嵌合部4は、膨出量が相対的に大きい大突起43と、膨出量が相対的に小さい小突起44とを内周面の周方向に沿って一列に交互に並べて備えるようにした。フランジ102が大突起43と小突起44とを乗り越えて嵌合部4に収容されることで、飲料用容器100と蓋体1とが合体する。
また、嵌合部4は、大突起44と小突起43の列から上方にフランジ102を収容する嵌合懐部45を備えるようにした。そして、嵌合懐部45は、フランジ102の高さよりも高く、フランジ102を遊びを有して収容する。
これらの各々により、中折れ部5が発生するような大きさの衝撃を受けた時には、蓋体1が飲料容器100から外れ易くなり、衝撃を台部3全体で受け止めることができ、衝撃が中折れ部5以外に分散していくため、中折れ部5がアルミニウムシート101まで進展することを抑制できる。
なお、本実施形態では、嵌合部4の内周面に周に沿って膨出量の異なる大突起43と小突起44を設けたが、これらの突起43、44に代えて膨出量を同じにした突起を設けるようにしても良い。突起の膨出量を同じにしても、中折れ部5のアルミニウムシート101への進展を阻止する効果を得ることができる。
また、段部311は、径方向内側に張り出すようにした。これにより、上側内周壁312の剛性を向上させることができ、蓋体1及び飲料用容器100の軸が地面に対し寝た状態で衝突しても、外周壁33、天面部32及び上側内周壁312の倒れ込みを抑制し、アルミシート101の突き破りを抑止することができる。
さらに、内周壁31は、段部311下方の下側内周壁313が、段部311上方の上側内周壁312より径方向内側に張り出すようにした。これにより、蓋体1及び飲料用容器100の軸が地面に対し寝た状態で衝突しても、外周壁33、天面部32及び上側内周壁312が蓋体1の径方向内側に倒れ込んだとしても、段部311及び下側内周壁313で支えられるので、外周壁33、天面部32及び上側内周壁312の倒れ込みの進行を食い止めることができる。したがって、アルミシート101の突き破りを防止することができる。このように、落下角度又は衝突角度が変わったとしても、アルミシート101の突き破り防止に対応することができる。
特に、段部311及び下側内周壁313は蓋体1の周方向に円環状に設けるようにした。これにより、上側内周壁312の剛性向上を図ることができるとともに、外周壁33で受けた衝撃を周方向において分散して受けることができるので、アルミシート101を突き破るような蓋体1の激しい変形を防止することができる。
天面部の幅を2mm以下にしていることで、外周壁33が内側に部分的に倒れ込んだ際に倒れ込んだ範囲の端に折り目34が形成されやすくなる。この折り目34において衝撃が吸収されるため、段部311下方への衝撃波及及び段部311下方の破壊が抑制され、結果としてアルミシート101の突き破りを防止することができる。
また、外周壁33には、外側に膨出するように傾斜角変更点331を設けた。これにより、蓋体1及び飲料用容器100の軸が地面に対し寝た状態で衝突する際、外周壁33の外側から衝撃が加わっても外周壁33が外側に膨出しているため、傾斜角変更点331を中心として外周壁33の上方及び下方に衝撃を緩和することができ、結果的に外周壁33全体を内側に倒れ込ませ、衝撃集中を緩和することができる。換言すれば、中折れ部5の発生を抑制することができる。なお、衝撃が強く、傾斜角変更点331が内側に進行して中折れ部5が発生しても内周壁31が障壁となるのでアルミニウムシート101の突き破りは抑制される。
以上の各種措置は、同一又は異なるメカニズムによって、中折れ部5のアルミニウムシート101への進展又は段部311上方のアルミニウムシート101への進展を抑制する。従って、以上の各種措置は単独で用いられても、少なくとも2個以上の各種の組み合わせで用いられてもよく、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1 蓋体
2 カガミ部
21 ストロー差込口
3 台部
31 内周壁
311 段部
312 上側内周壁
313 下側内周壁
314 スタックボッチ
32 天面部
321 丸味部
33 外周壁
331 傾斜角変化点
332 上側外周壁
333 下側外周壁
34 折れ目
4 嵌合部
41 上面部
42 側面部
43 大突起
44 小突起
45 嵌合懐部
5 中折れ部
100 飲料用容器
101 アルミニウムシート
102 フランジ
200 熱可塑性樹脂シート
201 雄型
300 地面

Claims (19)

  1. 開口がシートで封止された飲料用容器に対して前記シートの上から被さり、前記飲料用容器のフランジが嵌め込まれる蓋体であって、
    前記蓋体の中心領域に拡がるカガミ部と、
    前記カガミ部の周縁を基端として膨出するリング状の台部と、
    前記蓋体の最外周に位置し、前記フランジと嵌合する嵌合部と、
    を備え、
    前記台部は、
    前記カガミ部から立ち上がる内周壁と、
    前記内周壁の上端から屈曲して前記カガミ部と平行に延びる天面部と、
    前記天面部の外周縁から垂れ下がる外周壁と、
    により画成され、
    前記内周壁は、前記外周壁よりも壁が厚いこと、
    を特徴とする蓋体。
  2. 前記内周壁の壁の厚みは、前記外周壁の壁の厚みよりも1.0倍超から1.45倍以下であること、
    を特徴とする蓋体。
  3. 前記内周壁よりも壁が薄い前記外周壁は、衝撃に対して率先して中折れし、
    前記内周壁は、障壁として、前記シートに向かう前記外周壁の中折れ部分の行く手を阻むこと、
    を特徴とする請求項1又は2記載の蓋体。
  4. 前記内周壁は段部を備えていること、
    を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の蓋体。
  5. 前記段部は、径方向内側に張り出していること、
    を特徴とする請求項4記載の蓋体。
  6. 前記内周壁は、前記段部下方の下側内周壁が、前記段部上方の上側内周壁より径方向内側に張り出していること、
    を特徴とする請求項5記載の蓋体。
  7. 前記天面部は径方向の幅が2mm以下であること、
    を特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の蓋体。
  8. 前記天面部は、内周縁、又は内周縁と外周縁の両方にR面取りされた丸味部を有すること、
    を特徴とする請求項7記載の蓋体。
  9. 熱可塑性樹脂シートを雄型で成型されて成ること、
    を特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の蓋体。
  10. 前記カガミ部は、前記外周壁の中位位置よりも、前記天面部とは反対の下方位置に延在すること、
    を特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の蓋体。
  11. 前記外周壁の傾斜角が変更される傾斜角変化点を前記外周壁に備え、
    前記カガミ部は、前記傾斜角変化点よりも、前記天面部とは反対の下方に延在すること、
    を特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の蓋体。
  12. 前記傾斜角変化点は、前記外周壁の中位位置よりも、前記天面部側の上方に位置すること、
    を特徴とする請求項11記載の蓋体。
  13. 前記嵌合部は、
    内側へ膨出する大突起と小突起を内周面の周方向に沿って一列に交互に並べて備え、
    前記大突起は前記小突起よりも膨出量が相対的に大きく、
    前記小突起は前記大突起よりも膨出量が相対的に小さく、
    前記フランジが前記大突起と前記小突起とを乗り越えて前記嵌合部に収容されることで、前記飲料用容器と合体すること、
    を特徴とする請求項1乃至12の何れかに記載の蓋体。
  14. 前記大突起から蓋体中心を挟んで反対側は前記小突起であり、
    前記小突起から蓋体中心を挟んで反対側は前記大突起であること、
    を特徴とする請求項13記載の蓋体。
  15. 前記嵌合部は、
    前記大突起と前記小突起の列から上方に前記フランジを収容する嵌合懐部を備え、
    前記嵌合懐部は、前記嵌合部に前記フランジが嵌め込まれたとき、前記フランジの厚みよりも広く、前記フランジの厚みに対して遊びを有して収容すること、
    を特徴とする請求項13又は14記載の蓋体。
  16. 前記カガミ部は、
    切り込みにより成るストロー差込口を有し、
    前記蓋体が前記飲料用容器と合体したとき、前記シートよりも前記ストロー差込口の長さ分以上に高く位置すること、
    を特徴とする請求項1乃至15の何れかに記載の蓋体。
  17. 前記段部には1又は複数のスタックボッチが形成されていること、
    を特徴とする請求項1乃至16の何れかに記載の蓋体。
  18. 請求項1乃至17の何れかに記載の蓋体に相当する雄型を熱可塑性樹脂シートに押し付けて前記蓋体を成型すること、
    を特徴とする蓋体の製造方法。
  19. 前記押し付けの過程で、まず、前記天面部に相当する前記雄型の箇所に前記熱可塑性樹脂シートが接触し、次に、前記段部に相当する前記雄型の箇所に前記熱可塑性樹脂シートが接触すること、
    を特徴とする請求項18記載の蓋体の製造方法。
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