以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態のガスタービン20Aを備える火力発電設備10を模式的に示した図である。なお、図1には、ガスタービン20Aと、排熱回収ボイラ30において発生する蒸気で駆動される蒸気タービン40とを組み合わせたコンバインドサイクルの火力発電設備10を例示している。
図1に示すように、火力発電設備10は、ガスタービン20A、排熱回収ボイラ30、蒸気タービン40、復水器50、制御装置80を備えている。また、火力発電設備10は、例えば、ガスタービン20Aと蒸気タービン40に一軸で連結された発電機60を備える。
ガスタービン20Aは、圧縮機21と、燃焼器22Aと、タービン23とを備える。また、ガスタービン20Aは、圧縮機21が吸引する空気を清浄する空気フィルタ24を圧縮機21の吸引系統に備えている。
また、燃焼器22Aは、アンモニアを燃焼器22Aに導入するアンモニア供給管25と、ガス燃料を燃焼器22Aに導入するガス燃料供給管26とを備えている。ここで、燃焼器22Aに供給されるアンモニアは気体である。
ガス燃料は、窒素化合物を主として含まない気体の燃料である。すなわち、ガス燃料としては、ガス燃料が燃焼することでフューエルNOxを主として生成しない燃料が使用される。ガス燃料として、具体的には、例えば、天然ガスやメタンなどの炭化水素、水素が使用される。また、ガス燃料として、例えば、一酸化炭素および水素などを含む石炭ガス化ガス燃料を使用することもできる。
なお、窒素化合物を主として含まないガス燃料とは、燃料中の窒素化合物の体積比率が0.3%以下の気体燃料をいう。例えば、石炭ガス化ガス燃料に含まれる窒素化合物は、主にNH3である。
ここで、前述したように、ガスタービン発電設備の場合、煙突から排出される排ガス中のNOx濃度は、70ppm(O2:16%換算)以下に規制されている。NOxの排出濃度のさらなる低減が進められ、例えば、煙突から排出されるNOの濃度が15ppm(O2:16%換算)程度と仮定する。この場合、脱硝装置における脱硝効率を90%とすると、ガスタービンの出口(脱硝装置の入口)におけるNOの濃度は、150ppm(O2:16%換算)となる。
現状のガスタービンから排出されるサーマルNOの濃度は、例えば、10ppm程度(O2:16%換算)である。そのため、窒素化合物としてNH3をガス燃料に含む場合、残りの140ppm(O2:16%換算)に相当するNOは、燃料に含まれるNH3がすべてフューエルNOとして転換されたものである。
現状の1600℃級のガスタービンでは、排ガスと、燃焼器全体に供給される空気と、燃焼器全体に供給される燃料との体積比率(排ガス:空気:燃料)は、1:0.958:0.042となる。この場合、燃料中のNH3の体積濃度は、0.33%((140/10000/0.042)×100)となる。
上記したように、ガス燃料において、燃料中の窒素化合物の体積比率を0.3%以下とすることで、燃料中の窒素化合物がすべてフューエルNOに転換されても、フューエルNOは、140ppm(O2:16%換算)よりも低い濃度となる。
このようなことから、ガス燃料が窒素化合物を含む場合において、燃料中の窒素化合物の体積比率を0.3%以下とした。
アンモニア供給管25には、流量調整弁25a、遮断弁25b、流量計25cが介在している。流量調整弁25aは、燃焼器22Aに供給するアンモニアの流量を調整する弁である。遮断弁25bは、燃焼器22Aへのアンモニアの供給を遮断する弁である。流量計25cは、燃焼器22Aに供給されるアンモニアの流量を検出する装置である。なお、アンモニアは、図示しない供給源からアンモニア供給管25に供給される。
ガス燃料供給管26には、流量調整弁26a、遮断弁26b、流量計26cが介在している。流量調整弁26aは、燃焼器22Aに供給するガス燃料の流量を調整する弁である。遮断弁26bは、燃焼器22Aへのガス燃料の供給を遮断する弁である。流量計26cは、燃焼器22Aに供給されるガス燃料の流量を検出する装置である。なお、ガス燃料は、図示しない供給源からガス燃料供給管26に供給される。
燃焼器22Aは、アンモニアを導入することで生成した燃焼ガスの温度を検出する温度検出器27を備える。なお、燃焼器22Aは、燃焼装置として機能し、温度検出器27は、温度検出部として機能する。また、燃焼器22Aの構成については、後に詳しく説明する。
空気フィルタ24において清浄された空気は、圧縮機21に吸引され、圧縮される。圧縮された空気は、燃焼器22Aに供給され、アンモニアおよびガス燃料と燃焼する。
燃焼器22Aにおいて生成された燃焼ガスは、例えば、1600℃前後の高温高圧のガスである。この燃焼ガスは、タービン23に導入され、タービン23を駆動する。タービン23を駆動した燃焼ガスは、排熱回収ボイラ30に導入される。なお、排熱回収ボイラ30に導入される燃焼ガスの温度は、例えば、600℃程度である。
排熱回収ボイラ30は、入口側から燃焼ガスが流れる方向に向かって順に、過熱器31、アンモニア噴出ノズル32、脱硝触媒33、蒸発器34、節炭器35を備える。
節炭器35は、排熱回収ボイラ30の出口側に設けられ、ボイラ給水を予熱する。すなわち、節炭器35は、節炭器35の内部を流れるボイラ給水に、燃焼ガスから得た熱量を与える熱交換器としての機能を備える。そして、節炭器35で加熱されたボイラ給水は、蒸発器34に導かれる。
蒸発器34は、節炭器35で加熱されたボイラ給水を加熱して蒸気を発生させる。すなわち、蒸発器34は、蒸発器34の内部を流れるボイラ給水に、燃焼ガスから得た熱量を与える熱交換器としての機能を備える。そして、蒸発器34で発生した蒸気は、過熱器31に導かれる。
過熱器31は、蒸発器34で発生した蒸気を飽和温度以上に過熱して過熱蒸気とする。すなわち、過熱器31は、過熱器31の内部を流れる、蒸発器34で発生した蒸気に、燃焼ガスから得た熱量を与える熱交換器としての機能を備える。そして、過熱器31において過熱蒸気となった蒸気は、蒸気タービン40に導入される。
過熱器31と蒸発器34との間には、アンモニア噴出ノズル32および脱硝触媒33が設けられている。
アンモニア噴出ノズル32は、例えば、過熱器31を通過した燃焼ガスが流れる通路に設けられる。なお、アンモニア噴出ノズル32は、この燃焼ガスが通過する通路断面に複数設けられてもよい。また、アンモニア噴出ノズル32にアンモニアを導く配管36には、流量調整弁36a、遮断弁36b、流量計36cが介在している。
流量調整弁36aは、アンモニア噴出ノズル32に供給するアンモニアの流量を調整する弁である。遮断弁36bは、アンモニア噴出ノズル32へのアンモニアの供給を遮断する弁である。流量計36cは、アンモニア噴出ノズル32に供給されるアンモニアの流量を検出する装置である。なお、アンモニアは、図示しない供給源から配管36に供給される。
アンモニア噴出ノズル32は、過熱器31を通過した燃焼ガス中にアンモニアを噴出する。そして、アンモニアを含む燃焼ガスは、脱硝触媒33を通過する。この際、アンモニアは、還元剤として機能し、脱硝触媒33において燃焼ガスに含まれるNOxを選択接触還元法によって還元するときに利用される。
このように、アンモニア噴出ノズル32および脱硝触媒33は、選択接触還元法による脱硝装置を構成している。
脱硝触媒33としては、例えば、主成分が二酸化チタンで、バナジウムやタングステンなどが添加された触媒が使用できる。この脱硝触媒33は、燃焼ガスとの接触面積を増加させるために、例えば、ハニカム構造やポーラス体などの多孔質構造である。
ここで、還元剤としてアンモニアを使用した選択接触還元法によるNOxの還元は、次の式(3)によって示される。なお、ここでは、燃焼ガス中のNOxは、大部分がNOであると仮定し、式(3)の反応を示している。
4NO + 4NH3 + O2 → 4N2 + 6H2O …式(3)
このように、NOは、アンモニア(NH3)との反応により、水蒸気(H2O)と窒素(N2)に分解される。この還元は、触媒の表面温度が350℃程度で高活性化が得られ、脱硝効率が高い。そこで、脱硝触媒33は、温度が300〜400℃の燃焼ガスが流れる位置に配置される。なお、この温度範囲の中でも、脱硝触媒33は、温度が350℃の燃焼ガスが流れる位置に配置されることが好ましい。
なお、排熱回収ボイラ30を通過した燃焼ガスは、温度が100℃程度となり、煙突70から大気中に排出される。
また、排熱回収ボイラ30の入口には、タービン23から排出された燃焼ガスの一部を採取するためのサンプリングプローブ37が設けられている。排熱回収ボイラ30の入口の断面において、1または複数の位置における燃焼ガスがサンプリングプローブ37によって採取される。
サンプリングプローブ37は、例えば、ガス分析装置(図示しない)に連通している。このガス分析装置によって、NOx濃度が検出される。NOx濃度を検出する場合には、例えば、化学発光法を利用したガス分析装置などが使用される。なお、ガス分析装置は、特に限定されるものではなく、測定したい成分の濃度を検出できる装置であればよい。また、ガス分析装置では、NOx以外にも、例えば、O2、CO2などの他の成分も分析することができる。
蒸気タービン40は、過熱器31から導入された過熱蒸気によって駆動される。そして、蒸気タービン40およびガスタービン20Aのタービン23と連結された発電機60を駆動して、発電する。
蒸気タービン40を駆動した蒸気は、復水器50に流入する。復水器50では、蒸気を凝縮させて水とする。そして、その水は、給水ポンプ51によって加圧され、ボイラ給水として排熱回収ボイラ30の節炭器35に給水される。
制御装置80は、例えば、火力発電設備10の各装置や各機器から情報を取得して処理し、各装置や各機器の動作を制御する。この制御装置80は、例えば、演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)やランダムアクセスメモリ(RAM)などの記憶手段、出入力手段などを主に備えている。CPUでは、例えば、記憶手段に格納されたプログラムやデータなどを用いて各種の演算処理を実行する。
出入力手段は、外部機器から電気信号を入力したり、外部機器に電気信号を出力する。出入力手段は、例えば、流量調整弁25a、26a、36a、遮断弁25b、26b、36b、流量計25c、26c、36c、温度検出器27、ガス分析装置(図示しない)、圧縮機21の入口案内翼の駆動角度検出装置(図示しない)、出力入力コントローラ、発電機60などと各種信号の出入力が可能に接続されている。
制御装置80は、例えば、圧縮機21の入口案内翼の駆動角度検出装置からの出力信号に基づいて、圧縮機21が吸引する空気流量を算出することができる。また、制御装置80は、ガス分析装置からの出力信号に基づいて、排熱回収ボイラ30の入口(タービン23の出口)における燃焼ガスの各種成分の濃度に係る出力信号を検出することができる。
さらに、制御装置80は、出力入力コントローラによって入力された火力発電設備10における出力要求情報に基づいて、例えば、燃料としてのガス燃料やアンモニアの流量を調整する。また、制御装置80は、温度検出器27からの出力信号に基づいて、例えば、燃料としてのアンモニアの流量を調整する。また、制御装置80は、発電機60からの出力信号に基づいて、実際の発電出力を検出することができる。
なお、制御装置80が実行する処理は、例えば、コンピュータ装置などで実現される。また、制御装置80は制御部として機能する。
次に、ガスタービン20Aの燃焼器22Aの構成について、詳しく説明する。
図2は、第1の実施の形態のガスタービン20Aを模式的に示した図である。前述したように、ガスタービン20Aは、圧縮機21と、燃焼器22Aと、タービン23とを備える。
燃焼器22Aは、図2に示すように、燃焼器ケーシング100と、燃焼器ケーシング100内に2つの燃焼器ライナ110、120とを備える。燃焼器ケーシング100は、燃焼器ライナ110、120の周囲を所定の空間101を有して包囲している。
なお、燃焼器ライナ110、120は、例えば、燃焼器ケーシング100の周方向に複数設置されるが、図2では、一つの燃焼器ライナ110、120を示している。
この燃焼器ケーシング100と燃焼器ライナ110、120との間の空間101には、図2に示すように、圧縮機21によって圧縮された空気(圧縮空気)が、例えば、燃焼器ライナ120側から燃焼器ライナ110側に向かって流れる。
燃焼器ライナ110、120は、筒状形状を有している。燃焼器ライナ110は、上流側に位置し、燃焼器ライナ120は、燃焼器ライナ110の下流端に連結されている。すなわち、燃焼器ライナ110と燃焼器ライナ120は、燃焼ガスが流れる方向に直列に連結され、それぞれが連通している。なお、燃焼器ライナ110は、第1の燃焼器ライナとして機能し、燃焼器ライナ120は、第2の燃焼器ライナとして機能する。
燃焼器ライナ110の上流端には、アンモニア供給管25が連結されている。また、燃焼器ライナ110の側壁には、燃焼器ライナ110の周囲の空間101を流れる圧縮空気を内部に取り込むための空気導入口111が形成されている。この空気導入口111は、例えば、燃焼器ライナ110の周方向に複数形成されている。
ここで、図2には、アンモニア供給管25からアンモニアを燃焼器ライナ110に導入する一例を示したが、この構成に限られない。
例えば、燃焼器ケーシング100と燃焼器ライナ110との間のアンモニア供給管25に、圧縮空気を内部に導入するための空気導入口を形成してもよい。この空気導入口は、アンモニア供給管25の周方向に複数形成されてもよい。このように空気導入口を備えることで、アンモニアと圧縮空気の予混合気が燃焼器ライナ110に導入される。
燃焼器ライナ120の上流側の側壁には、ガス燃料供給管26が連結されている。燃焼器ケーシング100と燃焼器ライナ120との間のガス燃料供給管26には、例えば、圧縮空気を内部に導入するための空気導入口121が形成されている。この空気導入口121は、例えば、ガス燃料供給管26の周方向に複数形成されている。
空気導入口121からガス燃料供給管26内に導入された圧縮空気は、ガス燃料供給管26を流れるガス燃料と混合して、燃焼器ライナ120に導入される。
なお、ここでは、ガス燃料供給管26に空気導入口121を備え、ガス燃料と圧縮空気の予混合気を燃焼器ライナ120に導入する一例を示したが、この構成に限られない。例えば、ガス燃料供給管26に空気導入口121を設けずに、ガス燃料供給管26から燃焼器ライナ120にガス燃料を導入してもよい。
また、図2において、1本のガス燃料供給管26を備えた構成を例示しているが、燃焼器ライナ120の周囲に複数本のガス燃料供給管26を備えてもよい。複数本のガス燃料供給管26を備えることで、燃焼器ライナ120内の混合燃焼状態をより均一にすることができる。
また、燃焼器ライナ120の側壁には、燃焼器ライナ120の周囲の空間101を流れる圧縮空気を内部に取り込むための空気導入口122が形成されている。この空気導入口122は、例えば、図2に示すように、燃焼器ライナ120とガス燃料供給管26との連結部よりも下流側に形成される。この空気導入口122は、例えば、燃焼器ライナ120の周方向に複数形成されている。
なお、空気導入口122の位置は、特に限定されるものではなく、空気導入口122は、燃焼器ライナ120とガス燃料供給管26との連結部よりも上流側に形成されてもよい。すなわち、空気導入口122は、ガス燃料供給管26から導入されたガス燃料を燃焼器ライナ120内において完全燃焼させるのに最適な位置に設けられていればよい。
また、燃料としてアンモニアが導入される燃焼器ライナ110には、燃焼器ライナ110内の燃焼ガスの温度を検出する温度検出器27が備えられている。温度検出器27は、例えば、熱電対などで構成される。
ここで、燃焼器ライナ110には、アンモニア供給管25からアンモニアが導入され、空気導入口111から圧縮空気が導入される。この燃焼器ライナ110では、アンモニアを熱分解して燃焼させる。すなわち、燃焼器ライナ110では、アンモニアを熱分解することで生成した水素(H2)を燃焼させる。
なお、燃焼器ライナ110の空気導入口111からは、アンモニアの熱分解によって生成した水素を完全燃焼させるために必要な空気量を超える量の空気が導入される。すなわち、燃焼器ライナ110内は、全体として、いわゆる燃料リーンの状態である。
アンモニアの熱分解を促進するとともに、水素を効率よく燃焼させるために、燃焼器ライナ110内の燃焼場の温度、すなわち燃焼ガスの温度を800〜1100℃に維持している。アンモニアの熱分解によって生成された水素が燃焼することで、燃焼器ライナ110内の燃焼ガスの温度を上記した範囲に維持することができる。なお、燃焼器ライナ110内の燃焼ガスの温度は、ガスタービンにおける負荷によらず、上記した範囲に維持される。
燃焼器ライナ110内の燃焼ガスの温度を上記した範囲に維持するため、制御装置80は、温度検出器27からの出力信号に基づいて、アンモニア供給管25の流量調整弁25aを制御している。
なお、温度検出器27は、例えば、燃焼器ライナ110内においてアンモニアの熱分解および水素の燃焼が活発に行われている領域の温度を検出できるように設置されることが好ましい。
一方、燃焼器ライナ120には、燃焼器ライナ110からの燃焼ガス、ガス燃料供給管26からガス燃料、および空気導入口122から圧縮空気が導入される。なお、燃焼器ライナ110からの燃焼ガスは、燃焼器ライナ110と燃焼器ライナ120との連結開口部から燃焼器ライナ120内に流入する。
燃焼器ライナ120に導入されるガス燃料の流量は、例えば、火力発電設備10における出力要求情報などに基づいて調整される。具体的には、制御装置80は、例えば、出力入力コントローラによって入力された火力発電設備10における出力要求情報に係る出力信号を検出すると、流量調整弁26aを制御して、その出力要求に応じたガス燃料を燃焼器ライナ120に導入する。
なお、出力要求によっては、燃焼器ライナ120内の燃焼ガスの温度は、例えば、1600℃程度になることもある。
燃焼器ライナ120の空気導入口122からは、ガス燃料を完全燃焼させるために必要な空気量を超える量の空気が導入される。すなわち、燃焼器ライナ120内は、全体として、いわゆる燃料リーンの状態である。
ここで、燃焼器ライナ110内の燃焼ガスの温度を上記した温度範囲とする理由について説明する。
図3は、アンモニアの熱分解および酸化の特性と温度の関係を示す図である。なお、図3は、数値解析によって得られた結果である。
アンモニア、窒素および水素の関係は、次の式(4)で表される。
2NH3 → N2 + 3H2 …式(4)
アンモニアは、熱を与えることで窒素と水素への分解が促進される。この熱分解は、高温であるほど、また低圧であるほど促進される。図3に示すように、アンモニアの熱分解は、温度が350℃から急速に促進され、温度が高くなるに伴って、残存アンモニア濃度は低下する。
このように熱を与えることで、アンモニアは、窒素と水素に分解される。すなわち、フューエルNOxの発生源であるアンモニアは減少する。
一方、アンモニアは、大気中の酸素によって酸化され、主としてNOを生成する。このNOの濃度は、図3に示すように、温度が高くなるに伴って、急速に増加する。図3に示すように、温度が1100℃を超えるとアンモニアの酸化が促進され、温度が2000℃では、NOの濃度は、10000ppm(1%)に達する。
すなわち、温度が1100℃を超える高温の雰囲気に、アンモニアを噴出すると数千ppmのフューエルNOxが生成される。
そこで、図3に示された結果から、800〜1100℃の温度場にアンモニアを噴出することで、アンモニアの熱分解が促進されるとともに、アンモニアの酸化が抑制されることがわかる。
すなわち、アンモニアを熱分解して水素を燃焼させることで、燃料としてのアンモニアによるフューエルNOxの生成が抑制される。さらに、800〜1100℃の温度場にアンモニアを噴出することで、アンモニアが酸化することによるフューエルNOxの生成が抑制される。
このようなことから、燃焼器ライナ110内の燃焼ガスの温度を800〜1100℃に維持している。
次に、ガスタービン20Aの燃焼器22Aの作用について、図1、図2、図4を参照して説明する。
図4は、第1の実施の形態における火力発電設備10の発電出力とガスタービン20Aの燃焼器22Aに供給される燃料流量の関係を示した図である。
図4に示すように、ガスタービン20Aには、最低出力から定格出力まで幅広い運用が要求される。そのため、出力要求によって、燃焼器22Aへの投入熱量も大きく変化する。
前述したように、フューエルNOxの生成を抑制するために、燃焼器ライナ110内の燃焼ガスの温度は所定の範囲に維持される。この燃焼器ライナ110内の燃焼ガスの温度範囲で調整可能な、最低出力(点A)から所定の出力(点B)までは、燃料としてアンモニアのみを使用することで対応できる。すなわち、この出力範囲では、燃焼器ライナ110に供給されるアンモニアの流量を調整することで出力制御を行う。そのため、燃焼器ライナ120には、ガス燃料は供給されない。
なお、最低出力(点A)時において、燃焼器ライナ110内の燃焼ガスの温度は、800℃に維持されている。また、所定の出力(点B)時において、燃焼器ライナ110内の燃焼ガスの温度は、1100℃に維持されている。
このアンモニアの流量を調整することで出力制御を行う場合、具体的には、制御装置80は、例えば、出力入力コントローラによって入力された火力発電設備10における出力要求情報に係る出力信号を検出すると、記憶手段に記憶された出力要求情報に係る出力信号とアンモニア流量とを対応付けるデータを参照する。
そして、制御装置80は、出力要求情報に係る出力信号およびそのデータに基づいて、流量調整弁25aを制御して、その出力要求に応じた流量のアンモニアを燃焼器ライナ110に導入する。なお、この際、遮断弁25bは、開いている。
さらに、制御装置80は、記憶手段に記憶された出力要求情報に係る出力信号と燃焼器ライナ110内の燃焼ガス温度とを対応付けるデータを参照する。そして、制御装置80は、温度検出器27からの出力信号およびそのデータに基づいて、流量調整弁25aを制御して、燃焼器ライナ110に導入するアンモニアの流量を調整する。
例えば、温度検出器27からの出力信号から検出した燃焼ガス温度が、記憶手段に記憶された出力要求に対応する燃焼ガス温度よりも高い場合には、制御装置80は、流量調整弁25aを制御して、燃焼器ライナ110に導入するアンモニアの流量を小さくする。
この場合において、記憶手段に記憶された出力要求情報に係る出力信号に対応するアンモニア流量と、温度検出器27からの出力信号から検出した燃焼ガス温度に基づいて調整されたアンモニア流量とが異なる場合には、燃焼ガス温度に基づくアンモニア流量の制御が適用される。
所定の出力(点B)よりも高い出力が要求される場合には、燃焼器ライナ120においてガス燃料を燃焼させる。すなわち、所定の出力(点B)を超え、定格出力(点C)までの範囲では、燃焼器ライナ110にアンモニアを供給するとともに、燃焼器ライナ120にガス燃料を供給する。この際、出力の調整は、燃焼器ライナ120に供給されるガス燃料の流量の調整によって行われる。なお、燃焼器ライナ110内の燃焼ガス温度は、1100℃に維持される。
このガス燃料の流量を調整することで出力制御を行う場合、具体的には、制御装置80は、例えば、出力入力コントローラによって入力された火力発電設備10における出力要求情報に係る出力信号を検出すると、記憶手段に記憶された出力要求情報に係る出力信号と、ガス燃料流量およびアンモニア流量とを対応付けるデータを参照する。
そして、制御装置80は、出力要求情報に係る出力信号およびそのデータに基づいて、流量調整弁26aを制御して、その出力要求に応じた流量のガス燃料を燃焼器ライナ120に導入する。なお、この際、遮断弁26bは、開いている。
さらに、制御装置80は、火力発電設備10における出力要求情報に基づく要求出力と、発電機60からの出力信号に基づく実際の発電出力を比較する。そして、制御装置80は、その比較した結果に基づいて、流量調整弁26aを制御して、燃焼器ライナ120に導入するガス燃料の流量を調整する。
例えば、発電出力が、要求出力よりも低い場合には、制御装置80は、流量調整弁26aを制御して、燃焼器ライナ120に導入するガス燃料の流量を大きくする。
また、ガス燃料の流量を調整することで出力制御を行うときにおいても、制御装置80は、温度検出器27からの出力信号に基づいて、燃焼器ライナ110内の燃焼ガス温度が1100℃になるように、流量調整弁25aを制御して、燃焼器ライナ110に導入するアンモニアの流量を調整している。
上記したように、第1の実施の形態における燃焼器22Aは、アンモニアを熱分解して水素を燃焼させる燃焼器ライナ110と、ガス燃料を燃焼させる燃焼器ライナ120を備える。このように、燃焼器22Aの燃焼器ライナを直列に連結された2つの燃焼器ライナ110、120で構成することで、それぞれの燃焼器ライナにおける作用を区分することができる。
燃焼器ライナ110において、アンモニアを熱分解して水素を燃焼させることで、燃料としてのアンモニアによるフューエルNOxの生成が抑制される。また、燃焼器ライナ110内の燃焼ガスの温度を前述した範囲に維持することで、水素が燃焼する際のサーマルNOxの生成も抑制される。
また、アンモニアの流量を調整することによる出力制御と、ガス燃料の流量を調整することによる出力制御とを切り替える制御を行うことができる。アンモニアの流量を調整することによる出力制御において、燃焼器ライナ110内の燃焼ガス温度を800〜1100℃の範囲に維持することができる。ガス燃料の流量を調整することによる出力制御においては、燃焼器ライナ110内の燃焼ガス温度を1100℃に維持しつつ、発電出力を調整することができる。
また、燃焼器ライナ110においてアンモニアを熱分解して水素を燃焼させることで、燃焼器ライナ110内における燃焼では、二酸化炭素は生成されない。燃焼器ライナ120において燃料として炭化水素を使用した場合には、二酸化炭素が生成される。しかしながら、本実施の形態の燃焼器22Aは、供給される燃料がすべて炭化水素である燃焼器に比べて、同じ発電出力において、二酸化炭素の排出量を大幅に低減することができる。
次に、排熱回収ボイラ30内に設置された、アンモニア噴出ノズル32および脱硝触媒33を備える脱硝装置の作用について説明する。
前述したように、火力発電設備10は、排熱回収ボイラ30内に、アンモニア噴出ノズル32、脱硝触媒33を備える(図1参照)。
アンモニア噴出ノズル32は、タービン23から排出されて過熱器31を通過した燃焼ガスにアンモニアを噴出する。そして、アンモニアを含む燃焼ガスが脱硝触媒33と接触することで、アンモニアを還元剤とする前述した式(3)による脱硝作用が主に促進される。これによって、燃焼ガスに含まれるNOxは、水蒸気(H2O)と窒素(N2)に分解される。
このように、排熱回収ボイラ30内にアンモニア噴出ノズル32および脱硝触媒33を備えることで、タービン23から排出された燃焼ガス中のNOx濃度を低減することができる。
ここで、アンモニア噴出ノズル32から噴出するアンモニアの流量は、例えば、次のように設定される。
制御装置80は、排熱回収ボイラ30の入口に設けられたサンプリングプローブ37によって採取された燃焼ガスにおけるNOx濃度を、ガス分析装置の出力信号に基づいて算出する。また、制御装置80は、圧縮機21の入口案内翼の駆動角度検出装置からの出力信号に基づいて、圧縮機21が吸引した空気流量を算出する。
さらに、制御装置80は、流量計25cの出力信号に基づいて、燃焼器ライナ110に導入されたアンモニアの流量を算出し、流量計26cの出力信号に基づいて、燃焼器ライナ120に導入されたガス燃料の流量を算出する。
そして、制御装置80は、算出した、空気流量、アンモニアの流量およびガス燃料の流量に基づいて、排熱回収ボイラ30の入口における燃焼ガスの流量を算出する。そして、制御装置80は、NOx濃度、算出した燃焼ガスの流量に基づいて排熱回収ボイラ30の入口における燃焼ガスに含まれるNOx量を算出する。
続いて、制御装置80は、算出したNOx量に基づいて、そのNOx量と等モル量のアンモニアをアンモニア噴出ノズル32から噴出するように、流量調整弁36aを制御する。なお、アンモニア噴出ノズル32から噴出するアンモニアの流量の調整は、例えば、流量計36cの出力信号に基づいて行われる。
なお、前述した式(3)の反応を行うためには、1モルのNO(一酸化窒素)に対して1モルのアンモニアが必要である。そのため、ここでは、算出された燃焼ガスに含まれるNOx量と等モル量のアンモニアを噴出している。なお、ここでも式(3)を示したときと同様に、燃焼ガス中のNOxは、大部分がNOであると仮定し、アンモニア噴出ノズル32から噴出するアンモニアの流量を算出している。
これによって、脱硝処理後、燃焼ガス中に還元剤としてのアンモニアが残存することを防止できる。
このように、排熱回収ボイラ30内に、アンモニア噴出ノズル32、脱硝触媒33を備えることで、高温燃焼場となる燃焼器ライナ120内で生成したNOxを還元することができる。これによって、煙突70から排出される燃焼ガス中のNOx濃度を低減できる。
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態のガスタービン20Bを模式的に示した図である。なお、以下の実施の形態において、第1の実施の形態の構成と同一の構成部分には、同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
第2の実施の形態のガスタービン20Bは、第1の実施の形態のガスタービン20Aと燃焼器の構成が異なる。そのため、ここでは、この異なる構成について主に説明する。
図5に示すように、ガスタービン20Bは、圧縮機21と、燃焼器22Bと、タービン23とを備える。
燃焼器22Bは、図5に示すように、燃焼器ケーシング100と、燃焼器ケーシング100内に燃焼器ライナ110、120とを備える。また、燃焼器ライナ110は、上流側燃焼器ライナ110Aと、下流側燃焼器ライナ110Bとを備える。すなわち、燃焼器22Bは、上流側燃焼器ライナ110A、下流側燃焼器ライナ110B、および燃焼器ライナ120の3つの燃焼器ライナを備える。
燃焼器ケーシング100は、燃焼器ライナ110、120の周囲を所定の空間101を有して包囲している。
上流側燃焼器ライナ110A、下流側燃焼器ライナ110B、および燃焼器ライナ120は、筒状形状を有している。上流側燃焼器ライナ110Aは、最上流側に位置し、下流側燃焼器ライナ110Bは、上流側燃焼器ライナ110Aの下流端に連結されている。また、燃焼器ライナ120は、最下流側に位置し、下流側燃焼器ライナ110Bの下流端に連結されている。
すなわち、上流側燃焼器ライナ110A、下流側燃焼器ライナ110B、および燃焼器ライナ120は、燃焼ガスが流れる方向に直列に連結され、それぞれが連通している。なお、燃焼器ライナ110は、第1の燃焼器ライナとして機能し、燃焼器ライナ120は、第2の燃焼器ライナとして機能する。
上流側燃焼器ライナ110Aの上流端には、アンモニア供給管25が連結されている。また、上流側燃焼器ライナ110Aの側壁には、上流側燃焼器ライナ110Aの周囲の空間101を流れる圧縮空気を内部に取り込むための空気導入口112が形成されている。この空気導入口112は、例えば、上流側燃焼器ライナ110Aの周方向に複数形成されている。
ここで、図5には、アンモニア供給管25からアンモニアを上流側燃焼器ライナ110Aに導入する一例を示したが、この構成に限られない。
例えば、燃焼器ケーシング100と上流側燃焼器ライナ110Aとの間のアンモニア供給管25に、圧縮空気を内部に導入するための、空気導入口を形成してもよい。この空気導入口は、アンモニア供給管25の周方向に複数形成されてもよい。このように空気導入口を備えることで、アンモニアと圧縮空気の予混合気が上流側燃焼器ライナ110Aに導入される。
下流側燃焼器ライナ110Bの側壁には、下流側燃焼器ライナ110Bの周囲の空間101を流れる圧縮空気を内部に取り込むための空気導入口113が形成されている。この空気導入口113は、例えば、図5に示すように、下流側燃焼器ライナ110Bにおける上流端側に形成される。換言すると、空気導入口113は、例えば、上流側燃焼器ライナ110Aと下流側燃焼器ライナ110Bとの連結部の直下流側における下流側燃焼器ライナ110Bの側壁に形成される。この空気導入口113は、例えば、下流側燃焼器ライナ110Bの周方向に複数形成されている。
燃焼器ライナ120の構成については、第1の実施の形態における構成と同じである。
なお、空気導入口112、113の位置は、特に限定されるものではない。すなわち、空気導入口112、113は、上流側燃焼器ライナ110A、下流側燃焼器ライナ110B内におけるアンモニアの熱分解、この熱分解によって生成した水素を完全燃焼することができる位置に設けられていればよい。
また、下流側燃焼器ライナ110Bには、下流側燃焼器ライナ110B内の燃焼ガスの温度を検出する温度検出器27が備えられている。
ここで、上流側燃焼器ライナ110Aには、アンモニア供給管25からアンモニアが導入され、空気導入口112から圧縮空気が導入される。
この空気導入口112から上流側燃焼器ライナ110A内に導入される空気の流量は、上流側燃焼器ライナ110A内に導入されるアンモニアが熱分解して生成する水素と理論混合気を形成する空気の流量よりも小さい。ここで、理論混合気とは、燃料と、この燃料を完全燃焼させるために理論上必要な最少の空気との混合気である。
すなわち、空気導入口112からは、例えば、アンモニアが熱分解して生成した水素を完全燃焼させるために必要な最少の空気量よりも少ない量の空気が導入される。そのため、上流側燃焼器ライナ110A内は、全体として、いわゆる燃料リッチの状態となる。
上流側燃焼器ライナ110Aでは、アンモニアを熱分解して燃焼させる。すなわち、上流側燃焼器ライナ110Aでは、アンモニアを熱分解することで生成した水素を燃焼させる。
なお、アンモニア供給管25から導入されたアンモニアの全部が、上流側燃焼器ライナ110A内で熱分解されない。そのため、一部のアンモニアは、アンモニアの状態のまま、下流側燃焼器ライナ110Bに流入する。また、上流側燃焼器ライナ110A内は、燃料リッチの状態であるため、熱分解によって生成された水素の一部が、上流側燃焼器ライナ110A内で完全燃焼せずに、下流側燃焼器ライナ110Bに流入することもある。
下流側燃焼器ライナ110Bには、上流側燃焼器ライナ110Aからの燃焼ガス、アンモニア、空気導入口113から圧縮空気が導入される。
ここで、燃焼器ライナ110、すなわち上流側燃焼器ライナ110Aおよび下流側燃焼器ライナ110Bには、全体として、アンモニア供給管25から導入されたアンモニアの熱分解によって生成した水素を完全燃焼させるために必要な空気量を超える量の空気が導入される。なお、ここでは、このアンモニアの熱分解によって生成した水素を完全燃焼させるために必要な空気量を超える空気量を過剰空気量と呼ぶ。
そのため、この過剰空気量から、上流側燃焼器ライナ110Aに導入された空気量を差し引いた分の空気量が、空気導入口113から下流側燃焼器ライナ110B内に導入される。なお、下流側燃焼器ライナ110Bには、下流側燃焼器ライナ110B内において熱分解によって生成する水素を完全燃焼させるために必要な空気量を超える量の空気が導入される。
下流側燃焼器ライナ110Bでは、上流側燃焼器ライナ110Aと同様に、アンモニアを熱分解して燃焼させる。すなわち、下流側燃焼器ライナ110Bでは、アンモニアを熱分解することで生成した水素を燃焼させる。
さらに、下流側燃焼器ライナ110Bでは、アンモニアを還元剤とする無触媒選択還元法によって、上流側燃焼器ライナ110Aで生成したNOxを還元する。なお、還元剤のアンモニアは、上流側燃焼器ライナ110Aで熱分解されずに、下流側燃焼器ライナ110Bに流入したアンモニアである。
アンモニアの熱分解の促進、水素の燃焼促進、下流側燃焼器ライナ110BにおけるNOxの還元を図るために、上流側燃焼器ライナ110A内および下流側燃焼器ライナ110B内(燃焼器ライナ110内)の燃焼場の温度、すなわち燃焼ガスの温度を800〜1100℃に維持している。
アンモニアの熱分解によって生成された水素が燃焼することで、燃焼器ライナ110内の燃焼ガスの温度を上記した範囲に維持することができる。なお、燃焼器ライナ110内の燃焼ガスの温度は、ガスタービンにおける負荷によらず、上記した範囲に維持される。
燃焼器ライナ110内の燃焼ガスの温度を上記した範囲に維持するため、制御装置80は、温度検出器27からの出力信号に基づいて、アンモニア供給管25の流量調整弁25aを制御している。
一方、燃焼器ライナ120には、下流側燃焼器ライナ110Bからの燃焼ガス、ガス燃料供給管26からガス燃料、および空気導入口122から圧縮空気が導入される。燃焼器ライナ120に導入されるガス燃料の流量や空気量などについては、第1の実施の形態で説明したとおりである。
ここで、燃焼器ライナ110内の燃焼ガスの温度を上記した温度範囲とする理由について説明する。
なお、アンモニアの熱分解の促進、およびアンモニアの酸化抑制の観点から、上記した温度範囲とすることは、第1の実施の形態で説明したとおりである。
ここでは、アンモニアを還元剤とするNOxの無触媒選択還元の観点から、上記した温度範囲とすることが好ましいことについて説明する。
図6は、還元剤をアンモニアとする無触媒選択還元法における、脱硝率と温度との関係を示した図である。なお、図6には、比較のため、還元剤をアンモニアとする選択接触還元法におけるこれらの関係も示している。
選択接触還元法では還元触媒が使用され、無触媒選択還元法では還元触媒が使用されない。無触媒選択還元法では、燃焼ガス中にアンモニアを噴射して、上記した式(3)の還元を行う。
図6に示すように、無触媒選択還元法では、800〜1100℃の温度範囲で脱硝率が高い。これに対して、選択接触還元法では、350℃を中心に脱硝率が高い。
このように、無触媒選択還元法の観点からも、800〜1100℃の温度範囲が好ましいことがわかる。
このようなことから、燃焼器ライナ110内の燃焼ガスの温度を800〜1100℃に維持している。
なお、ガスタービン20Bの燃焼器22Bの作用については、第1の実施の形態における燃焼器22Aの作用と同様である。
上記したように、第2の実施の形態の燃焼器22Bでは、燃焼器ライナ110を上流側燃焼器ライナ110Aおよび下流側燃焼器ライナ110Bで構成している。そして、下流側燃焼器ライナ110Bにおいて、無触媒選択還元法によってNOxを還元する。
第2の実施の形態の燃焼器22Bでは、第1の実施の形態の燃焼器22Aにおける作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
すなわち、燃焼器ライナ110において、アンモニアを熱分解して水素を燃焼させることで、燃料としてのアンモニアによるフューエルNOxの生成が抑制される。また、燃焼器ライナ110内の燃焼ガスの温度を前述した範囲に維持することで、水素が燃焼する際のサーマルNOxの生成も抑制される。燃焼器ライナ110においてアンモニアを熱分解して水素を燃焼させることで、燃焼器ライナ110内における燃焼では、二酸化炭素は生成されない。
さらに、第2の実施の形態の燃焼器22Bでは、下流側燃焼器ライナ110Bにおいて、無触媒選択還元法によって、上流側燃焼器ライナ110A内で生成されたNOxを還元することができる。
(第3の実施の形態)
図7は、第3の実施の形態のガスタービン20Cを備える火力発電設備11を模式的に示した図である。図8は、第3の実施の形態のガスタービン20Cにおける静翼の冷却空気系統を模式的に示した図である。図9は、図8のA−A断面を示す図である。
第3の実施の形態のガスタービン20Cは、第1の実施の形態のガスタービン20Aとでは、燃焼器から排出された燃焼ガスに対する脱硝方法が異なる。そのため、ここでは、この異なる構成について主に説明する。
なお、ガスタービン20Cに使用される燃焼器22Cは、第1の実施の形態における燃焼器22Aであっても、第2の実施の形態における燃焼器22Bであってもよい。
第3の実施の形態のガスタービン20Cでは、冷却空気を静翼130、131、132に導入するための冷却空気系統に、アンモニアを供給するアンモニア供給系統が連結されている。また、ガスタービン20Cには、第1および第2の実施の形態で備えられた、アンモニア噴出ノズル32、配管36、流量調整弁36a、遮断弁36b、流量計36cは、備えられていない。
また、ガスタービン20Cは、圧縮機21の吐出部における圧縮空気の温度を検出する温度検出器170を備えている。さらに、ガスタービン20Cは、タービン23の出口における燃焼ガスの温度を検出する温度検出器171を備えている。
図7および図8に示すように、ガスタービン20Cは、タービン23の静翼130、131、132、133を冷却するための冷却空気を静翼130、131、132、133に導入するための冷却空気系統を備えている。
なお、タービン23において、各静翼130、131、132、133の下流に各動翼140、141、142、143が配置されている。そして、例えば、静翼130と動翼140とによって初段(第1段)のタービン段落を構成している。ここでは、4段のタービン段落を備えたタービン23を例示している。
ここでは、図9に示す静翼130の断面を参照して静翼構造を説明する。なお、他の静翼131、132、133の構造も、図9に示す静翼130の構造と同じである。
静翼130は、図9に示すように内部に中空部135を有している。また、静翼130の翼有効部には、スリットや孔などの噴出孔136が形成されている。
この噴出孔136は、中空部135と静翼130の外部とを連通する孔である。噴出孔136は、複数形成されている。噴出孔136から冷却空気を、例えば、静翼130の表面に沿うように噴出することで、高温の燃焼ガスから翼表面を保護する。
各静翼130、131、132、133には、冷却空気系統を構成する抽気管150、151、152、153を通り、圧縮機21から抽気された空気が導入される。なお、冷却空気は、例えば、静翼130、131、132、133を支持する外周壁に形成された貫通孔(図示しない)を介して静翼130、131、132、133内に導入される。
ここで、タービン段落によって、冷却空気を噴出する流れ場(タービン内の通路)の圧力が異なる。そのため、図8に示すように、各タービン段落に対応して冷却空気系統は、それぞれ独立して設けられている。そして、圧縮機21から抽気された各タービン段落に適した圧力の冷却空気は、各冷却空気系統から静翼130、131、132、133内に導入される。
導入される冷却空気の圧力は、初段の静翼130が最も高く、第4段の静翼133が最も低い。例えば、初段の静翼130には、圧縮機21の吐出部から抽気した最も高圧の圧縮空気が供給される。
このように、各タービン段落の静翼130、131、132、133に導入される冷却空気の圧力に応じて、抽気する圧縮機21の段落を変えている。これによって、圧縮機21の動力損失が抑制される。なお、各静翼130、131、132、133に導入される冷却空気の圧力は、冷却空気が噴出される流れ場の圧力よりも高い。
図8に示すように、例えば、各冷却空気系統の抽気管150、151、152には、アンモニアを供給するアンモニア供給系統の配管160、161、162が連結されている。
配管160、161、162には、流量調整弁160a、161a、162a、遮断弁160b、161b、162b、流量計160c、161c、162cが介在している。なお、アンモニアは、図示しない供給源から配管160、161、162に供給される。
流量調整弁160a、161a、162aは、抽気管150、151、152に供給するアンモニアの流量を調整する弁である。遮断弁160b、161b、162bは、抽気管150、151、152へのアンモニアの供給を遮断する弁である。流量計160c、161c、162cは、抽気管150、151、152に供給されるアンモニアの流量を検出する装置である。
なお、図8では示していないが、最終段の抽気管153にも、アンモニア供給系統の配管を連結してもよい。この場合においても、配管には、流量調整弁、遮断弁、流量計が介在する。
抽気管150、151、152に導入されたアンモニアは、冷却空気とともに静翼130、131、132の中空部135に流入する。そして、アンモニアと冷却空気との混合気は、静翼130、131、132を内部から冷却する。さらに、その混合気は、静翼130、131、132の噴出孔136から、タービン23内を流れる燃焼ガス中に噴出される。
ここで、燃焼ガス中にアンモニアを噴出するための系統は、アンモニア噴出部として機能する。なお、ここでは、アンモニア供給系統、アンモニアが導入される抽気管、アンモニアが導入される静翼、アンモニアが導入される静翼の噴出孔136が、アンモニア噴出部として機能する。
ここでは、アンモニアを燃焼ガス中に噴出することで、前述した無触媒選択還元法における脱硝を図っている。そこで、脱硝率を上げるため、前述したように、アンモニアは、800〜1100℃の温度の燃焼ガス中に噴出することが好ましい。なお、800〜1100℃の温度は、第1の温度として機能する。
そこで、アンモニアが冷却空気とともに供給される静翼は、燃焼ガスの温度が上記範囲となるタービン段落の静翼である。すなわち、燃焼ガスの温度が上記範囲となるタービン段落の静翼に冷却空気を供給する抽気管にアンモニアが導入される。
ここで、制御装置80における出入力手段は、例えば、流量調整弁25a、26a、160a、161a、162a、遮断弁25b、26b、160b、161b、162b、流量計25c、26c、160c、161c、162c、温度検出器27、170、171、ガス分析装置(図示しない)、圧縮機21の入口案内翼の駆動角度検出装置(図示しない)、出力入力コントローラ、発電機60などと各種信号の出入力が可能に接続されている。
ここで、燃焼ガスの温度が800〜1100℃となるタービン段落は、例えば、次のように特定される。
制御装置80は、圧縮機21の入口案内翼の駆動角度検出装置からの出力信号に基づいて、圧縮機21が吸引した空気流量を算出する。また、制御装置80は、温度検出器170からの出力信号に基づいて、圧縮機21の吐出部における圧縮空気の温度を検出する。
さらに、制御装置80は、流量計25cの出力信号に基づいて燃焼器ライナ110に導入されたアンモニアの流量、および流量計26cの出力信号に基づいて、燃焼器ライナ120に導入されたガス燃料の流量を算出する。また、制御装置80は、温度検出器171からの出力信号に基づいて、タービン23の出口における燃焼ガスの温度を検出する。
制御装置80は、算出した空気流量、圧縮機21の吐出部における圧縮空気の温度、アンモニアの流量、ガス燃料の流量に基づいて、タービン23の入口における燃焼ガスの温度を算出する。
続いて、制御装置80は、算出したタービン23の入口における燃焼ガスの温度、および検出されたタービン23の出口における燃焼ガスの温度に基づいて、タービン23内の各タービン段落における燃焼ガスの温度分布を算出する。なお、この燃焼ガスの温度分布は、ガスタービンの運転状態によっても変化する。
そして、制御装置80は、算出した燃焼ガスの温度分布から、燃焼ガスの温度が800〜1100℃となるタービン段落を特定する。
制御装置80は、特定したタービン段落にアンモニアを供給する配管に設けられた流量調整弁、遮断弁を開く。その際、制御装置80は、流量調整弁を制御して、抽気管に導入されるアンモニアを所定の流量に調整する。
例えば、制御装置80は、初段のタービン段落において、燃焼ガスが上記した温度範囲となると判定した場合、制御装置80は、遮断弁160bを開き、流量調整弁160aを制御する。
この際、抽気管150に導入されるアンモニアの流量は、第1の実施の形態で説明したアンモニア噴出ノズル32から噴出するアンモニアの流量を設定するときと同じ方法で算出される。
すなわち、制御装置80は、排熱回収ボイラ30の入口における燃焼ガスに含まれるNOx量を算出する。そして、制御装置80は、算出したNOx量と等モル量のアンモニアを抽気管150に導入するように、流量調整弁160aを制御する。なお、抽気管150に導入するアンモニアの流量の調整は、例えば、流量計160cの出力信号に基づいて行われる。
ここで、燃焼器22Cから排出された燃焼ガスの作用について説明する。
なお、ここでは、燃焼ガスの温度が800〜1100℃となるタービン段落が、初段のタービン段落である場合について説明する。
燃焼器22Cから排出された燃焼ガスは、タービン23内に導かれる。タービン23内に導かれた燃焼ガスは、タービン23を駆動する。
この際、燃焼ガスの温度が800〜1100℃となるタービン段落の静翼130の中空部135に、冷却空気とともにアンモニアが導入される。冷却空気とアンモニアは、静翼130の噴出孔136から、タービン内を流れる燃焼ガス中に噴出される。
このように、ガスタービン20Cでは、無触媒選択還元法において脱硝率が高い温度範囲の燃焼ガス中にアンモニアを噴出することができる。これによって、燃焼ガスに含まれるNOxを窒素と水に還元することができる。
ここで、図6に示すように、無触媒選択還元法における脱硝率は、高くても60%程度である。そのため、タービン23から排出される燃焼ガスはNOxを含む。また、タービン23からは、燃焼ガスとともに、還元に寄与できなかったアンモニアも排出される。
タービン23から排出された燃焼ガスおよびアンモニアは、排気通路としても機能する排熱回収ボイラ30に流入する。排熱回収ボイラ30に流入した燃焼ガスおよびアンモニアは、過熱器31で熱交換され温度が低下する。前述したように、脱硝触媒33は、温度が300〜400℃の燃焼ガスが流れる位置に配置される。この温度は、選択接触還元法による脱硝が促進される温度である。なお、300〜400℃の温度は、第2の温度として機能する。
これによって、アンモニアを含む燃焼ガスが脱硝触媒33と接触することで、アンモニアを還元剤とする前述した式(3)による脱硝作用が主として促進される。これによって、残存するアンモニアおよびNOxは、水蒸気と窒素に分解される。
そして、排熱回収ボイラ30から排出された燃焼ガスは、煙突70から大気中に排出される。
上記したように、第3の実施の形態のガスタービン20Cを備える火力発電設備11では、タービン23における所定のタービン段落で、アンモニアを還元剤とする無触媒選択還元法による脱硝、および排熱回収ボイラ30内においてアンモニアを還元剤とする選択接触還元法による脱硝を行うことができる。
このように、タービン23内における脱硝処理において一部のNOxを還元することができる。これによって、排熱回収ボイラ30における、脱硝触媒33を用いた脱硝処理の負荷を低減することができる。そのため、すべての脱硝を脱硝触媒33を用いた選択接触還元法で行うよりも、脱硝触媒33の接触面積を少なくすることができる。これによって、製品コストの削減、製品の小型化を図ることができる。
また、第3の実施の形態のガスタービン20Cの燃焼器22Cとして、第1の実施の形態の燃焼器22Aまたは第2の実施の形態の燃焼器22Bを備えている。そのため、燃焼器22Cにおける作用効果は、燃焼器22A、燃焼器22Bのそれぞれの作用効果と同じである。
なお、第3の実施の形態のガスタービン20Cにおいて、静翼130、131、132の噴出孔136から冷却空気とともにアンモニアを噴出する一例を示したが、この構成に限られない。
例えば、ガスタービンでは、中空の動翼140、141、142、143内にも冷却空気を導入し、噴出孔から冷却空気を噴出している。そのため、動翼140、141、142、143に導入する冷却空気にアンモニアを導入してもよい。なお、この場合においても、燃焼ガスの温度が800〜1100℃となるタービン段落の動翼にアンモニアが導入される。
また、例えば、静翼130、131、132、133を支持する外周壁に、アンモニアを噴出する噴出孔を形成してもよい。この場合、例えば、静翼間を流れる燃焼ガス中にアンモニアが噴出される。
なお、上記した実施の形態では、ガスタービンと蒸気タービンと組み合わせたコンバインドサイクルの火力発電設備を例示して説明したが、この構成に限られない。
例えば、ガスタービンと選択接触還元法を用いた脱硝装置を備えた火力発電設備であってもよい。この場合、脱硝装置は、ガスタービンの排気通路に備えられてもよい。なお、脱硝装置における脱硝触媒は、300〜400℃の温度の燃焼ガスと接触する領域に設置されることが好ましい。
以上説明した実施形態によれば、NOxおよびCO2の発生を抑制することが可能となる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。