以下、図面を参照して本実施の形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態における画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。図2は、本実施の形態における画像形成装置1の制御系の主要部を示す。
本実施の形態の画像形成装置1は、用紙Sとして長尺紙または非長尺紙を使用し、当該用紙Sに画像を形成する。
本実施の形態において、長尺紙は、一般に良く用いられるA4サイズ、A3サイズ等の用紙よりも搬送方向の長さが長い枚葉紙である。以下、単に「用紙」という場合、長尺紙および非長尺紙の両方が含まれ得る。
画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙に二次転写することにより、トナー像を形成する。
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60、および制御部100等を備える。
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
制御部100は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部100は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙にトナー像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿またはコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21および操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部100の制御下で、記憶部72内の階調補正データ(階調補正テーブルLUT)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示す。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415等を備える。
感光体ドラム413は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
制御部100は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度(線速度)で回転させる。
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。これにより、感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
現像装置412は、例えば二成分現像方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるクリーニング部材等を有する。ドラムクリーニング装置415は、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーをクリーニングブレードによって除去する。
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
中間転写ベルト421は、無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
中間転写ベルト421、バックアップローラー423Bおよび二次転写ローラー424により形成される二次転写ニップは、本発明の「転写部」に対応する。
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の一次転写ローラー422と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
その後、用紙が二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙に二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙の二次転写ローラー424と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙に静電的に転写される。トナー像が転写された用紙は定着部60に向けて搬送される。
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接するベルトクリーニングブレード等を有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。
定着部60は、用紙の定着面側に配置される定着面側部材を有する上側定着部60A、用紙の定着面の反対の面側に配置される裏面側支持部材を有する下側定着部60B、及び加熱源60C等を備える。定着面側部材に裏面側支持部材が圧接されることにより、用紙を狭持して搬送する定着ニップが形成される。
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙を定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙にトナー像を定着させる。定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52および搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a〜51cには、坪量(剛度)やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53aやループローラー53b等の複数の搬送ローラー、用紙の両面に画像形成するための両面搬送経路等を有する。レジストローラー対53aは、本発明の「用紙搬送部材」に対応する。
レジストローラー対53aは、制御部100の制御の下、用紙Sの幅方向における位置を補正する。具体的には、レジストローラー対53aのニップに用紙Sが挟持されると、レジストローラー対53aが幅方向に移動して用紙Sを移動させる揺動動作(レジスト揺動)の制御が行われることにより、用紙Sの幅方向における位置が補正される。かかるレジスト揺動の制御内容については後述する。
ループローラー53bは、搬送方向におけるレジストローラー対53aの上流側に配置されたローラー対である。ループローラー53bは、制御部100の制御の下、レジストローラー対53aとの間で用紙Sにループを形成するように回転することによって、用紙Sの曲がりを補正する。
レジストローラー対53aは、用紙Sの幅方向における位置を補正した後、当該用紙Sがレジストローラー対53aを通過し終わる前、すなわち用紙Sの搬送途中で離間して、移動する前の位置(ホームポジション)に戻される。そして、レジストローラー対53aは、用紙Sの後端が通過した後、再度圧着される。
また、レジストローラー対53aにおける用紙Sの搬送速度は、制御部100の制御の下、バックアップローラー423Bと二次転写ローラー424とにより形成される二次転写ニップにおける用紙Sの搬送速度よりも高く(速く)設定される。このため、二次転写ニップに搬送される用紙Sは、二次転写ニップとレジストローラー対53aとの間でループ(たるみ)が形成されるように搬送されながら、上面にトナー像が形成される。
用紙搬送方向におけるレジストローラー対53aの下流側で二次転写ニップの上流側には、ラインセンサー54が配置されている。ラインセンサー54は、光電変換素子をライン状に配置したセンサーであり、用紙Sの幅方向の一方の端部(以下、側端という)を検出して、用紙Sの片寄り(基準位置からのずれ)を検知する役割を担う。
給紙トレイユニット51a〜51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aにより、給紙された用紙Sの傾きが補正(スキュー補正)されるとともに搬送タイミングが調整される。
そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。なお、両面印刷時には、第一面への画像形成が行われた用紙Sは、両面搬送経路を通って表裏が反転された後、第二面にトナー像が二次転写および定着された後、排紙部52により機外に排紙される。
ところで、画像形成装置では、レジストローラー対53aから二次転写ニップを経て定着ニップに至るまでのアライメントのずれによって、用紙の搬送方向が副走査方向に曲がってしまう現象(副走査曲がり)が発生する問題がある。かかる副走査曲がりは、上記のアライメントのずれの他、耐久等によりローラーの用紙幅方向(副走査方向)における両端の径に差異がある場合にも発生しやすい。また、搬送方向のサイズが長い長尺紙は、上記の影響を受けやすいため、副走査曲がりが顕著に発生する(図5参照)。かかる副走査曲がりは転写部で転写される画像のずれや歪み等による画像不良を引き起こすことから、副走査曲がりを抑制する技術が求められている。
図3(図3AおよびB)は、従来のレジスト揺動の制御を説明する図であり、用紙Sの搬送方向を矢印Yで、ラインセンサー54で検知される用紙Sの基準端の位置(目標位置)を一点鎖線で、レジストローラー対53aの揺動方向を矢印Xで、各々示す。また、用紙Sから離間状態にあるローラーを点線で示している。
図3Aは、二次転写ニップを形成するバックアップローラー423Bの上流側で用紙S(長尺紙)が全体的に右側(奥側)にずれた状態で搬送されている例を示す。この場合、制御部100は、用紙Sにおける側端のずれ方向およびずれ量をラインセンサー54の出力信号から検知し、かかる検知結果から、レジストローラー対53aの揺動方向の決定および揺動量の算出を行う。そして、制御部100は、かかる決定および算出結果に従って、図3Bに示すように、レジストローラー対53aを用紙搬送方向Yと直交するX方向に揺動させる制御を行う。
また、制御部100は、かかるレジスト揺動制御を行うために、搬送方向におけるレジストローラー対53aの上流側のローラー(図3の例ではループローラー53b)を用紙Sから離間させるように制御する。したがって、レジストローラー対53aの揺動が行われる前後の時期において、用紙Sは、レジストローラー対53a(以下、「レジストニップ」とも言う。)のみによって搬送される。
他方、かかる従来技術では、専ら画像転写前すなわち用紙Sが二次転写ニップに達する前のレジスト揺動を対象としており、画像転写中のレジスト揺動の研究が遅れていた。このため、従来の画像形成装置では、例えば長尺紙のように、画像転写中に副走査曲がりが生じやすい用紙に対する好適なレジスト揺動制御がなされておらず、かかる用紙において、副走査曲がりが正しく矯正されず画像不良の要因となることがあった。
かかる実情に鑑みて、本発明者らは、用紙の画像転写中においてレジストローラー対53aを揺動させる種々の実験を行った結果、次のような知見を得るに至った。以下、図4(図4Aおよび4B)を参照して、本発明者らが得た知見等について説明する。ここで、図4A、4Bは、各々、二次転写ニップでトナー画像が転写されているときにレジストローラー対53aを揺動させている状態を示している。
通常、図4Aに示すように、用紙Sの先端が二次転写ニップに突入した後は、二次転写ニップとレジストニップとの間のループ形成空間で、用紙SにループLが形成されるように、二次転写ニップおよびレジストニップの搬送速度が制御部100によって制御される。この状態でレジストローラー対53aが揺動すると、揺動によるレジストローラー対53aの振動が、レジストローラー対53aに挟まれている用紙Sの部位にも伝搬する。このとき、かかる振動は、用紙SのループLによって吸収され、用紙SにおけるループLよりも下流側(図4A中の左側)の部位には伝搬されなくなる。よって、用紙SにループLが正常に形成されている場合、レジストローラー対53aの揺動時の振動は、下流側の二次転写ニップには伝搬されない。
他方、レジストローラー対53aの揺動量(幅方向の一方への移動量)によっては、用紙SのループLの形状に歪みが生じ、図4Bに示すように、ループLが部分的ないし全体的に無くなった状態となり、これに伴って、ループLの無くなった用紙Sの部位が張った状態となる。この場合、レジストローラー対53aの揺動時の振動は、ループL(たるみ)が無くなった用紙Sの部位を介して下流側の二次転写ニップに伝搬されやすくなる。このため、揺動の振動が伝搬した二次転写ニップにおいて、用紙Sに転写されるトナー像に画像不良(転写ずれ)が発生しやすくなるとの知見を得るに至った。
そして、本発明者らは、更なる実験の結果、画像転写中のレジスト揺動制御では、レジストローラー対53aの揺動量に制限を設けることにより、レジスト揺動の振動を二次転写ニップに伝えないようにできることを見出した。
すなわち、本実施の形態では、二次転写ニップによりトナー像が転写されている間の用紙Sに対するレジストローラー対53aの1回の揺動動作を、画像の転写ずれが発生しないように、予め定められた揺動量閾値以下の揺動量で揺動させる制御を行う。このようなレジスト揺動の制御を行うことにより、二次転写ニップおよびレジストニップ間における用紙SのループLの形状の歪みを防止して、レジストローラー対53aの振動伝搬に伴う転写ずれ(画像不良)の発生を防止する。
以下、図5を参照して、本実施の形態におけるレジスト揺動制御の内容を詳しく説明する。
本実施の形態では、用紙Sにトナー像が転写されている間は、レジストローラー対53aの揺動量を、二次転写ニップによるトナー像の転写ずれが発生しない揺動量閾値以下の揺動量に制限する。かかる揺動量の制限は、用紙Sのずれ量が揺動量閾値を超えている場合に実行すればよい。
一具体例では、制御部100は、トナー像の転写中において揺動量閾値を超える量の用紙Sのずれが発生した場合、上記の揺動量閾値以下の揺動量で、用紙Sのずれ量に応じてレジストローラー対53aを複数回揺動させるように制御する。
このとき、制御部100は、下記の数式1に従って、揺動の回数をNに増やす。
N>用紙の目標位置に対するずれ量÷揺動量閾値 ・・・(数式1)
例えば、揺動量閾値が1mm、目標位置に対する用紙Sのずれ量(図5中のずれ量D参照)が2mmである場合、1回の揺動動作でレジストローラー対53aを用紙Sのずれ量に応じて2mm揺動させると、用紙S上のトナー像に転写ずれが発生する可能性が高い。また、1回の揺動動作でレジストローラー対53aを揺動量閾値の1mmに揺動させる制御を行う場合、レジストローラー対53aの実際の揺動量は機械の状態や誤差等により若干変動し得るため、用紙S上のトナー像に転写ずれが発生する可能性が未だある。
したがって、このような場合、制御部100は、レジストローラー対53aの揺動回数(N)を上記数式1に従って3回に増やし、例えば1回目の揺動動作で0.7mm、2回目の揺動動作で0.7mm、3回目の揺動動作で0.6mm揺動させるように制御する。
このように、制御部100は、1回分の揺動動作をいわば分割して揺動の回数をNに増やし、N回分の揺動量の総和が用紙Sの目標位置からのずれ量に対応した値になるまで、少ない揺動量での揺動動作を繰り返すようにレジストローラー対53aの揺動を制御する。このような制御を行うことにより、レジストローラー対53aの1回の揺動動作における揺動量を少なくして転写ずれ等の画像不良の発生を防止しつつ、用紙Sの位置ずれを解消することができる。
揺動量閾値に関し、転写ずれが発生する揺動動作1回当たりの揺動量は、上述のように、レジストニップおよび二次転写ニップ間での用紙Sのたるみ即ちループLが無くなるような揺動量である。換言すると、1回の揺動動作において転写ずれが発生しない揺動量は、ループLが無くならない程度の揺動量である。そして、転写ずれの発生有無の臨界的な値すなわち揺動量閾値は、以下のように、紙種等の画像形成条件によって異なった値になる。
揺動量閾値は、紙種によって異なる値になる。ここで、用紙Sの紙種の主たる要素としては、用紙Sの坪量(剛度)が挙げられる。具体的には、通常、用紙Sの坪量(剛度)が小さくなるほど、レジストローラー対53aの振動が二次転写ニップに伝わりにくくなり、揺動量閾値を大きめの値とすることができる。
このため、画像転写時におけるレジストローラー対53aの揺動量閾値を登録したテーブル(以下、「揺動量制限テーブル」という)を、上記の紙種毎に設けるとよい。また、使用される給紙トレイ(給紙トレイユニット51a〜51cや給紙装置の給紙トレイなど)が異なる場合、用紙の種類も異なることから、揺動量制限テーブルを給紙トレイ毎に設けてもよい。
この場合、制御部100は、印刷ジョブの実行時にユーザー設定画面等から紙種または給紙トレイを特定し、対応する揺動量制限テーブルに登録された揺動量閾値をメモリ等に設定する。そして、制御部100は、画像転写時におけるレジストローラー対53aの1回当たりの揺動量を、当該設定された揺動量閾値以下の値に制限する。
また、揺動量閾値は、両面印刷時における用紙Sの表面(第1面)か裏面(第2面)か、によっても異なり得る。例えば、既に片面(第1面)への画像形成プロセスを経て温度が高くなっている方が、用紙Sの見かけ上の剛度が低くなり(柔らかくなり)、1回当たりの揺動量を多めにすることができる、といった具合である。
したがって、揺動量制限テーブルは、用紙Sの表裏に応じて設けてもよい。この場合、制御部100は、用紙Sの搬送方向の先端が二次転写ニップに突入する前の段階で、当該用紙Sの表裏に応じた揺動量制限テーブルの揺動量閾値を読み出し、用紙Sの先端が二次転写ニップに突入した後、レジストローラー対53aの1回当たりの揺動量を、当該設定された揺動量閾値以下の値に制限する。
また、揺動量閾値は、装置の設置環境、特に、画像形成装置1の周囲の温湿度環境によっても異なり得る。例えば、温湿度が高いHH環境の方が、用紙Sの見かけ上の剛度が低くなり(柔らかくなり)、1回当たりの揺動量を多めにすることができる、といった具合である。
したがって、揺動量制限テーブルは、画像形成装置1の周囲の温湿度に応じて設けてもよい。この場合、制御部100は、印刷ジョブの実行時に、機内の温湿度センサー(図示せず)の出力値から周囲の温湿度を特定し、対応する揺動量制限テーブルの揺動量閾値を読み出し、用紙Sの先端が二次転写ニップに突入した後、レジストローラー対53aの1回当たりの揺動量を、当該設定された揺動量閾値以下の値に制限する。
以下、画像形成装置1において、用紙Sが二次転写ニップに入った後のレジストローラー対53aひいては用紙Sの揺動制御に関する動作の一例について、図6および図7のフローチャートを参照して説明する。なお、以下の例では、制御部100は、用紙Sが二次転写ニップに入った後の1回の揺動量の上限値(揺動量閾値)を規定した揺動量制限テーブルを用いてレジストローラー対53aの揺動を制御する。
印刷ジョブの実行時に、制御部100は、印刷ジョブのユーザー設定情報から、印刷しようとする用紙Sの種類(この例では坪量(剛度))の情報を取得する(ステップS100)。
ステップS110において、制御部100は、用紙Sの種類(すなわち坪量(剛度))に対応する揺動量制限テーブルに登録されている揺動量閾値を読み出して、かかる値を揺動動作に先立ってメモリ等に設定する。
ステップS120において、制御部100は、用紙Sの搬送方向の先端がレジストニップに入ったか否かを判定する。ここで、制御部100は、用紙Sの先端が未だレジストニップに入っていないと判定すると(ステップS120、NO)、ステップS120に戻って当該判定を繰り返す。他方、制御部100は、用紙Sの搬送方向の先端がレジストニップに入った(ステップS120、YES)と判定すると、ラインセンサー54を稼働させて用紙Sの側端の位置を検知し、揺動量の制限なしでのレジスト揺動制御を開始する(ステップS130)。
続いて、制御部100は、用紙Sの搬送方向の先端が二次転写ニップに入ったか否かを判定する(ステップS140)。ここで、制御部100は、用紙Sの搬送方向の先端が二次転写ニップに入っていない(ステップS140、NO)と判定している間は、ステップS130に戻り、上述した揺動量の制限なしでの揺動制御を続行する。したがって、この段階では、制御部100は、ラインセンサー54を通じて特定された用紙Sのずれ量と同一の揺動量でレジストローラー対53aを揺動させるように制御する。また、この制御例では、1枚の用紙Sに対して画像転写前のレジスト揺動を複数回行うことができる。
他方、制御部100は、用紙Sの搬送方向の先端が二次転写ニップに入った(ステップS140、YES)と判定すると、ステップS150に移行する。ステップS150において、制御部100は、1回の揺動動作における揺動量を、ステップS110で設定された揺動量閾値までの値に制限したレジスト揺動の制御を実行する。すなわち、用紙Sが二次転写ニップに入ると、制御部100は、画像転写中であるとして、1回の揺動動作における揺動量に制限を課するモードに移行する。
以下、用紙Sが二次転写ニップに入った後のレジスト揺動制御の一具体例を、図7のフローチャートを参照して説明する。制御部100は、用紙Sの搬送方向の先端が二次転写ニップに突入した後のタイミングで再びラインセンサー54を稼働させて用紙Sの側端の位置を検知し、用紙Sの位置ずれ発生の有無を判定する(ステップS160)。
制御部100は、用紙Sの側端の位置ずれが発生していないと判定した場合(ステップS160、NO)、用紙Sの搬送方向の後端がレジストローラー対53aによるレジストニップを抜けたか否かを判定する(ステップS170)。ここで、制御部100は、かかる用紙Sの後端がレジストニップを抜けていない間(ステップS170、NO)は、用紙Sの位置ずれ発生有無の判定を繰り返し行い(ステップS160でNO、およびステップS170)、用紙Sの位置ずれが発生したと判定する(ステップS160、YES)と、ステップS180に移行する。
ステップS180において、制御部100は、ラインセンサー54の出力信号に基づいて用紙Sの側端のずれ方向およびずれ量を特定する。続くステップS190において、制御部100は、当該特定された用紙Sのずれ量が、設定された揺動量閾値を超えているか否かを判定する(ステップS190)。
ここで、制御部100は、ずれ量が揺動量閾値を超えていない、すなわち揺動量閾値以下である(ステップS190、NO)と判定した場合、当該ずれ量分だけレジストローラー対53aを揺動させて(ステップS200)、当該揺動を停止させる(ステップS240)。すなわち、この場合、制御部100は、転写ずれが発生する虞なしとみなして、検出された用紙Sの位置ずれに対して1回の揺動動作で位置ずれを直すようにレジストローラー対53aを揺動制御する。
他方、制御部100は、用紙Sのずれ量が揺動量閾値を超えている(ステップS190、YES)と判定した場合、転写ずれが発生する虞ありとみなして、揺動の回数を増やすべく、ステップS210に移行する。
ステップS210において、制御部100は、上述した数式1に従って、揺動回数Nを算出する。また、制御部100は、用紙Sのずれ量を揺動回数Nで除算することにより、1回当たりの揺動量を算出する。
続いて、制御部100は、算出された揺動量で用紙Sの位置ずれを直す方向にレジストローラー対53aを繰り返し揺動させる(ステップS220)とともに、現在の揺動がN回目の揺動であるか否かを判定する(ステップS230)。制御部100は、未だN回目の揺動ではない(ステップS230、NO)と判定した場合、ステップS220における揺動を続行する。他方、制御部100は、現在N回目の揺動である(ステップS230、YES)と判定すると、当該揺動量でレジストローラー対53aを停止させるように制御する(ステップS240)。
レジストローラー対53aの揺動停止後のステップS260において、制御部100は、印刷ジョブが終了したか否かについて判定する。かかる判定の結果、印刷ジョブが終了していない場合(ステップS260、NO)、制御部100は、ステップS160に戻り、用紙Sの後端がレジストニップを抜けるまで用紙Sの位置ずれ発生有無の判定を続行する(ステップS170でNO、およびステップS160)。
また、制御部100は、用紙Sの後端がレジストニップを抜けたと判定した場合(ステップS170,YES)、ステップS260に移行し、印刷すべき次の用紙Sが有る場合には印刷ジョブが終了していない(ステップS260、NO)として、ステップS160に処理を戻す。したがって、この例では、複数枚の用紙Sに対してトナー画像の印刷を行いつつ、同一の設定条件でのレジスト揺動を行うことができる。
そして、制御部100は、印刷ジョブが終了したと判定した場合(ステップS260、YES)、上述した一連の処理を終了する。
このような制御を行うことにより、レジストローラー対53aの揺動時の振動に起因した画像不良の発生を防止しつつ、トナー像の転写中における用紙Sの副走査曲がりを矯正することができる。
また、トナー像の転写中における用紙Sの位置ずれ量が揺動量閾値以下の場合には、揺動の回数を増やさずに、当該ずれ量分だけレジストローラー対53aを揺動させる制御を行うことにより、印刷の生産性を高めることができる。
上述した構成例では、制御部100は、ラインセンサー54を用いて用紙Sの側端の位置ずれの方向および位置ずれ量を特定し、レジストローラー対53aの揺動を開始させる場合について説明した。
他方、機械の特有の癖などにより、用紙Sの側端の位置ずれの方向や揺動量が予め分かっている場合、制御部100は、ラインセンサー54による検知結果を用いずにレジストローラー対53aを揺動させてもよい。この場合、レジストローラー対53aの揺動を開始させるタイミングまたは用紙S上の位置(揺動ポイント)、揺動方向、および揺動量を予め固定値(プリセット値)として規定しておく。そして、制御部100は、プリセット値として規定された各値を、印刷ジョブの実行に先立ってメモリ等に読み出して設定し、かかる設定値に従って以下のような処理を行う。
制御部100は、レジストローラー対53aの揺動動作に先立って、プリセット値に規定された揺動量が揺動量閾値を超えているか否かについて判定する(ステップS190参照)。制御部100は、プリセット値に規定された揺動量が揺動量閾値を超えていない、すなわち揺動量閾値以下である(ステップS190、NO)と判定した場合、当該揺動量だけレジストローラー対53aを揺動させて(ステップS200)、揺動を停止させる(ステップS240)。他方、制御部100は、プリセット値に規定された揺動量が揺動量閾値を超えている(ステップS190、YES)と判定した場合、転写ずれが発生する虞ありとみなして、揺動の回数を増やすべく、ステップS210に移行する。ステップS210以下は上述と同様であるため、説明を省略する。
上述した制御例では、制御部100は、揺動回数Nの算出、揺動回数を増加させる処理等を揺動動作の直前に行った。他の例として、制御部100は、前に搬送した用紙Sの位置ずれ量が揺動量閾値を超えた場合、後に搬送する用紙Sに対する揺動の回数を予め増やすように設定する、すなわち、前の用紙Sの結果を後の用紙Sにフィードバックようにしてもよい。
この具体例として、用紙Sの側端の位置ずれの方向は予め分かっているが、揺動量までは予め分からない(予測できない)場合などが考えられる。この場合、上述したプリセット値を用いることができるが、各揺動ポイントに揺動方向は規定できても、揺動量は規定できないことになる。このような場合、例えば、印刷ジョブ開始時における1枚目の用紙Sを所謂テスト用として使用し、プリセット値に規定された各揺動ポイントでのレジストローラー対53aの揺動に先立って、ラインセンサー54による用紙Sの側端のずれ検知を行う。
ここで、御部100は、各揺動ポイントで検知された用紙Sの側端のずれ量の内、揺動量閾値を超えているものについて、当該揺動ポイントにおける揺動回数を増やすように揺動回数Nを算出し、当該算出結果を2枚目以降の用紙Sの印刷時に適用する。
上述した構成例では、用紙搬送方向における二次転写ニップの上側にラインセンサー54を設ける場合について説明した。他の構成例として、同様のラインセンサーを用紙搬送方向における二次転写ニップの下流側に追加的に設け、かかる2つのラインセンサーの出力信号に基づいて、用紙Sの位置ずれの方向と量を、制御部100により特定してもよい(ステップS180参照)。この場合、二次転写ニップ突入後の用紙Sのずれ量ひいてはレジストローラー対53aの必要な揺動量を、より正確に特定できるようになる。
また、他の構成例として、搬送中の用紙SにおけるループLの幅方向の両端側(左右側ないし前奥側)のループ量をリアルタイムで検出し、左(前)と右(奥)のループ量の差分から、用紙Sのずれ量を、制御部100により特定してもよい(ステップS180参照)。例えば、図5に示す例では、用紙Sの搬送方向の下流側が右(奥)方向に曲がっており、この曲がりによって、用紙Sの右(奥)側に比べて左(前)側のループ量が少なくなる。したがって、用紙Sの幅方向の両側のループ量の差分から、用紙Sのずれ方向とずれ量を特定することができる。
具体的には、用紙Sに接触し、用紙SのループLの形状に応じて角度が変位する公知のアクチュエーターを、二次転写ニップとレジストニップの間のループ形成空間(図4A参照)に設け、アクチュエーターの角度(倒れ具合)に応じた信号を制御部100に出力する。
かかるアクチュエーターは、用紙Sの幅方向の両側に合計2つ配置される。この場合、制御部100は、各々のアクチュエーターの角度から、用紙Sの副走査曲がり(図5参照)すなわち下流側のずれ方向およびずれの程度を特定する(ステップS180参照)。
上述した制御例では、用紙Sのずれ量に応じた揺動量でレジストローラー対53aを揺動させて揺動を停止する場合を説明した。他の制御例として、制御部100は、揺動を停止させない、すなわち、揺動量閾値を超えない範囲で、レジストローラー対53aひいては用紙Sを常に揺動させ続けてもよい。
なお、二次転写ニップに用紙Sが入った後であっても、用紙S上にトナー像が二次転写されていない期間(例えば、用紙の余白領域が二次転写ニップを通過している間)は、転写ずれの虞がないため、レジストローラー対53aの揺動量を制限する必要がない場合があり得る。したがって、制御部100は、用紙Sが二次転写ニップ(転写部)に入った後であっても、用紙S上にトナー像が二次転写されていない期間は、用紙Sのずれ量に応じた揺動量でレジストローラー対53aを揺動させてもよい。
上述した実施の形態では、中間転写ベルト421を用いて印刷する画像を用紙Sに二次的に転写させる転写部を備えた画像形成装置の例を説明した。他方、上記実施の形態は、印刷する画像を用紙Sに一次的に転写させる転写方式の画像形成装置(例えばモノクロプリンタやインクジェットプリンタなど)に対しても、同様に適用されることができる。
上述した実施の形態では、二次転写ニップの上流側に設けられ制御部100により揺動制御される用紙搬送部材がレジストローラー対53aである場合を説明した。他の例として、用紙搬送部材は、例えば、レジストローラー対53a以外のローラー、用紙搬送ガイド、などが付加的または代替的に適用されることができる。
上述した実施の形態では、用紙Sとして枚葉紙を使用する場合を説明した。他方、上記実施の形態は、ロール紙に対しても同様に適用することができる。
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。