JP2019014299A - 車両用空気調和装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】圧縮機の回転数が低下することで発生する潤滑不良の発生を未然に回避することができる車両用空気調和装置を提供する。
【解決手段】車両用空気調和装置1は、冷媒を圧縮する圧縮機2と、この圧縮機2の回転数を所定の目標回転数に制御するヒートポンプコントローラを備え、ヒートポンプコントローラは、目標回転数を低下させる方向に変更する場合、所定の低下率にて当該目標回転数を変化させる目標回転数変更制限制御を実行する。
【選択図】図1

Description

本発明は、車室内を空調するヒートポンプ式の車両用空気調和装置に関するものである。
近年の環境問題の顕在化から、ハイブリッド自動車や電気自動車が普及するに至っている。そして、このような車両に適用することができる空気調和装置として、冷媒を圧縮して吐出する電動式の圧縮機と、車室内側に設けられて冷媒を放熱させる放熱器と、車室内側に設けられて冷媒を吸熱させる吸熱器と、車室外側に設けられて冷媒を放熱又は吸熱させる室外熱交換器を備え、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器において放熱させ、この放熱器において放熱した冷媒を室外熱交換器において吸熱させる暖房モードと、圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させる冷房モード等の各運転モードを切り換えて実行するものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
そして、上記暖房モードでは、冷媒回路の高圧側の圧力である放熱器の圧力に基づき、また、上記冷房モードでは吸熱器の温度に基づいて圧縮機の目標回転数を算出し、この目標回転数となるように圧縮機の回転数を所定の制御上の最高回転数と最低回転数の間で制御していた。
特開2017−13652号公報
ここで、冷媒には圧縮機内の摺動部を潤滑するためのオイルが含まれている。このオイルは冷媒に溶け込んでおり、圧縮機の吐出側に設けられるオイルセパレータで分離され、一部は圧縮機内の軸受等の摺動部に供給されると共に、残りは冷媒回路を循環した後、圧縮機に吸い込まれることになる。
このとき、圧縮機の回転数が急激に低下すると、圧縮機内の軸受に加わる荷重が低下するためにオイル内に溶け込んでいる冷媒が減圧により蒸発し、軸受等の摺動部において油膜切れが発生する。また、オイルを引き込む速度が低下し、潤滑油膜を形成できなくなって潤滑不良となり、圧縮機の信頼性が低下する。
この様子を図9と図10を参照しながら説明する。図9は圧縮機の軸受におけるHeltz圧力分布を示す図である。図9に示される油膜形状から明らかな如く、圧縮機の回転数が低下すると油膜引き込み速度Vが低下し、特にオイルが流出する側の最小油膜形成部(図9中にX1で示す)での油膜厚さが低下する。また、荷重の低下によりキャビテーション(泡)が発生するため、最小油膜形成部X1での油膜形成が阻害される。
また、図10はDowsonの下記式(I)を説明するための軸受の等価転がり接触を示す図である。
W=4ηUR/h00=4ηUR/W ・・・(I)
尚、Wは荷重、ηはオイル粘度、Uは周速、Rは等価円筒の半径、hoは油膜高さである。
この式(I)から圧縮機の回転数が急激に低下(減速)すると、軸受における周速Uが低下するために油膜高さhoが低下することが分かる。また、圧縮機の吐出冷媒圧力が高い場合は軸受に加わる荷重Wが上昇するために油膜高さhoが低下し、更に、圧縮機の吐出冷媒温度が高い場合もオイル粘度ηが低下するために油膜高さhoが低下することが分かる。特に、車両用空気調和装置の場合は、通常の空気調和装置の如く停止後のポンプダウン運転等ができないため、比較的高い回転数から急激に回転数が低下し、或いは、停止した場合等に、圧縮機の軸受で油膜切れ発生し易くなる。
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、圧縮機の回転数が低下することで発生する潤滑不良の発生を未然に回避することができる車両用空気調和装置を提供することを目的とする。
本発明の車両用空気調和装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、この圧縮機の回転数を所定の目標回転数に制御する制御装置を備えたものであって、制御装置は、目標回転数を低下させる方向に変更する場合、所定の低下率にて当該目標回転数を変化させる目標回転数変更制限制御を実行することを特徴とする。
請求項2の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において制御装置は、圧縮機の目標回転数を変更する前の当該圧縮機の吐出冷媒圧力Pd、又は、吐出冷媒温度Tdが所定の吐出側閾値より高く、且つ、当該圧縮機の目標回転数を所定回転数以上低下させる方向に変更する場合、目標回転数変更制限制御を実行することを特徴とする。
請求項3の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において制御装置は、圧縮機の目標回転数を変更する前の当該圧縮機の目標回転数が所定の低回転数閾値より低い場合、当該低回転数閾値以上である場合に比して低下率を高くし、又は、目標回転数変更制限制御を実行しないことを特徴とする。
請求項4の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において制御装置は、圧縮機の吸込冷媒温度Ts又は吸込冷媒圧力Psが低い程、低回転数閾値を下げ、及び/又は、低下率を低くする方向で変更することを特徴とする。
請求項5の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において制御装置は、目標回転数の制御上の最低回転数を有し、停止状態と当該最低回転数の間で圧縮機を制御する場合には、目標回転数変更制限制御を実行しないことを特徴とする。
請求項6の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において冷媒を放熱させて車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、冷媒を吸熱させて前記車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、車室外に設けられた室外熱交換器とを備え、制御装置は少なくとも、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させることで車室内を暖房し、高圧側の圧力に基づいて圧縮機の目標回転数を算出する暖房モードと、圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器で放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させることで車室内を冷房し、吸熱器の温度Teに基づいて圧縮機の目標回転数を算出する冷房モードを有し、圧縮機の冷媒吐出圧力Pd、圧縮機の冷媒吐出温度Td、冷房モードにおける吸熱器の温度Te、暖房モードにおける圧縮機の吸込冷媒温度Tsのうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てに基づいて圧縮機の目標回転数を制限し、若しくは、当該圧縮機を停止する保護制御を実行すると共に、当該保護制御を実行する場合には、目標回転数変更制限制御を実行しないことを特徴とする。
本発明によれば、冷媒を圧縮する圧縮機と、この圧縮機の回転数を所定の目標回転数に制御する制御装置を備えた車両用空気調和装置において、制御装置が目標回転数を低下させる方向に変更する場合、所定の低下率にて当該目標回転数を変化させる目標回転数変更制限制御を実行するようにしたので、圧縮機の急激な回転数の低下に伴って発生する軸受等の摺動部の潤滑不良を未然に回避し、信頼性と耐久性の向上を図ることができるようになる。
ここで、前述した式(I)から圧縮機の吐出冷媒圧力Pdや吐出冷媒温度Tdが高いときは軸受等の摺動部の油膜高さが低下する。また、圧縮機の回転数の低下度合が大きい程、軸受における周速の低下度合も大きくなるために油膜高さが低下する。そこで、請求項2の発明の如く制御装置が、圧縮機の目標回転数を変更する前の当該圧縮機の吐出冷媒圧力Pd、又は、吐出冷媒温度Tdが所定の吐出側閾値より高く、且つ、当該圧縮機の目標回転数を所定回転数以上低下させる方向に変更する場合に、目標回転数変更制限制御を実行することにより、適切且つ効果的に圧縮機の摺動部における潤滑不良の発生を回避することができるようになる。
一方、請求項3の発明の如く制御装置が、圧縮機の目標回転数を変更する前の当該圧縮機の目標回転数が所定の低回転数閾値より低い場合、当該低回転数閾値以上である場合に比して低下率を高くし、又は、目標回転数変更制限制御を実行しないようにすることで、圧縮機を停止させるまでの時間を短縮することができるようになる。
また、圧縮機の吸込冷媒温度や吸込冷媒圧力が低い状態では冷媒に溶け込んでいるオイルが多くなるので、圧縮機の回転数が急激に低下されると冷媒が蒸発し、キャビテーションによる油膜形成の阻害が発生し易くなる。そこで、請求項4の発明の如く制御装置が、圧縮機の吸込冷媒温度Ts又は吸込冷媒圧力Psが低い程、低回転数閾値を下げ、及び/又は、低下率を低くする方向で変更することで、冷媒のキャビテーションによる摺動部における油膜形成の阻害を効果的に解消することができるようになる。
また、請求項5の発明の如く制御装置が、目標回転数の制御上の最低回転数を有し、停止状態と当該最低回転数の間で圧縮機を制御する場合には、目標回転数変更制限制御を実行しないことで、圧縮機の所謂ON−OFF運転を円滑に行うことができるようになる。
更に、請求項6の発明の如く冷媒を放熱させて車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、冷媒を吸熱させて前記車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、車室外に設けられた室外熱交換器とを備え、制御装置が少なくとも、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させることで車室内を暖房し、高圧側の圧力に基づいて圧縮機の目標回転数を算出する暖房モードと、圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器で放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させることで車室内を冷房し、吸熱器の温度Teに基づいて圧縮機の目標回転数を算出する冷房モードを有し、圧縮機の冷媒吐出圧力Pd、圧縮機の冷媒吐出温度Td、冷房モードにおける吸熱器の温度Te、暖房モードにおける圧縮機の吸込冷媒温度Tsのうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てに基づいて圧縮機の目標回転数を制限し、若しくは、当該圧縮機を停止する保護制御を実行する車両用空気調和装置では、当該保護制御を実行する場合は、目標回転数変更制限制御を実行しないようにすれば、保護制御を目標回転数変更制限制御に優先して実行することで、装置破壊に至る不都合を未然に回避することができるようになる。
本発明を適用した一実施形態の車両用空気調和装置の構成図である。 図1の車両用空気調和装置の圧縮機の断面図である。 図1の車両用空気調和装置の制御装置のブロック図である。 図1の車両用空気調和装置の空気流通路の模式図である。 図3のヒートポンプコントローラの暖房モードにおける圧縮機制御に関する制御ブロック図である。 図3のヒートポンプコントローラの除湿暖房モードにおける圧縮機制御に関する制御ブロック図である。 図3のヒートポンプコントローラの除湿暖房モードにおける補助ヒータ(補助加熱装置)制御に関する制御ブロック図である。 図3のヒートポンプコントローラによる目標回転数変更制限制御を説明する図である。 圧縮機の軸受におけるHeltz圧力分布を示す図である。 Dowsonの式を説明するための軸受の等価転がり接触を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明の一実施例の車両用空気調和装置1の構成図を示している。本発明を適用する実施例の車両は、エンジン(内燃機関)が搭載されていない電気自動車(EV)であって、バッテリに充電された電力で走行用の電動モータを駆動して走行するものであり(何れも図示せず)、本発明の車両用空気調和装置1も、バッテリの電力で駆動されるものとする。即ち、実施例の車両用空気調和装置1は、エンジン廃熱による暖房ができない電気自動車において、冷媒回路を用いたヒートポンプ運転により暖房モードを行い、更に、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード、MAX冷房モード(最大冷房モード)及び補助ヒータ単独モードの各運転モードを選択的に実行するものである。
尚、車両として電気自動車に限らず、エンジンと走行用の電動モータを供用する所謂ハイブリッド自動車にも本発明は有効であり、更には、エンジンで走行する通常の自動車にも適用可能であることは云うまでもない。
実施例の車両用空気調和装置1は、電気自動車の車室内の空調(暖房、冷房、除湿、及び、換気)を行うものであり、冷媒を圧縮する電動式(バッテリ駆動)の圧縮機2と、車室内空気が通気循環されるHVACユニット10の空気流通路3内に設けられ、圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒が冷媒配管13Gを介して流入し、この冷媒を放熱させて車室内に供給する空気を加熱するためのヒータとしての放熱器4と、暖房時に冷媒を減圧膨張させる電動弁から成る室外膨張弁6(減圧装置)と、車室外に設けられて冷房時には放熱器として機能し、暖房時には蒸発器として機能すべく冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器7と、冷媒を減圧膨張させる電動弁(機械式でもよい)から成る室内膨張弁8(減圧装置)と、空気流通路3内に設けられ、冷房時及び除湿時に冷媒を吸熱させて車室内外から吸い込んで車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器9と、アキュムレータ12等が冷媒配管13により順次接続され、冷媒回路Rが構成されている。そして、この冷媒回路Rには所定量の冷媒と潤滑用のオイルが充填されている。
尚、実施例の圧縮機2の構造については後に詳述する。また、室外熱交換器7には室外送風機15が設けられており、この室外送風機15は、室外熱交換器7に外気を強制的に通風することにより、外気と冷媒とを熱交換させる。それにより停車中(即ち、車速が0km/h)にも室外熱交換器7に外気が通風されるよう構成されている。
また、室外熱交換器7は冷媒下流側にレシーバドライヤ部14と過冷却部16を順次有し、室外熱交換器7から出た冷媒配管13Aは冷房や除湿時に開放される開閉弁としての電磁弁17を介してレシーバドライヤ部14に接続され、過冷却部16の冷媒出口側の冷媒配管13Bは室内膨張弁8介して吸熱器9の冷媒入口側に接続されている。尚、レシーバドライヤ部14及び過冷却部16は構造的に室外熱交換器7の一部を構成している。
また、過冷却部16と室内膨張弁8間の冷媒配管13Bは、吸熱器9の冷媒出口側の冷媒配管13Cと熱交換関係に設けられ、両者で内部熱交換器19を構成している。これにより、冷媒配管13Bを経て室内膨張弁8に流入する冷媒は、吸熱器9を出た低温の冷媒により冷却(過冷却)される構成とされている。
また、室外熱交換器7から出た冷媒配管13Aは冷媒配管13Dに分岐しており、この分岐した冷媒配管13Dは、暖房モードで開放される開閉弁としての電磁弁21を介して内部熱交換器19の下流側における冷媒配管13Cに連通接続されている。これにより、電磁弁21は室外熱交換器7の冷媒出口側に接続され、吸熱器9の冷媒出口側は電磁弁21の冷媒出口側に連通接続されたかたちとなる。そして、冷媒配管13Cがアキュムレータ12に接続され、アキュムレータ12は圧縮機2の冷媒吸込側に接続されている。更に、放熱器4の冷媒出口側の冷媒配管13Eは室外膨張弁6を介して室外熱交換器7の冷媒入口側に接続されている。
また、圧縮機2の冷媒吐出側と放熱器4の冷媒入口側の間の冷媒配管13Gには後述する除湿暖房とMAX冷房時に閉じられる開閉弁としての電磁弁30(流路切換装置を構成する)が介設されている。この場合、冷媒配管13Gは電磁弁30の上流側でバイパス配管35に分岐しており、このバイパス配管35は除湿暖房とMAX冷房時に開放される開閉弁としての電磁弁40(これも流路切換装置を構成する)を介して室外膨張弁6の冷媒出口側の冷媒配管13Eに連通接続されている。
即ち、バイパス配管35は圧縮機2の冷媒吐出側と室外膨張弁6の冷媒出口側とを連通し、電磁弁30が閉じられ、電磁弁40が開放された状態では、圧縮機2から吐出された冷媒を放熱器4及び室外膨張弁6に流すこと無く、室外熱交換器7に直接流入させる。そして、これらバイパス配管35、電磁弁30及び電磁弁40によりバイパス装置45が構成される。
このようなバイパス配管35、電磁弁30及び電磁弁40によりバイパス装置45を構成したことで、後述する如く圧縮機2から吐出された冷媒を放熱器4及び室外膨張弁6に流すこと無く、室外熱交換器7に直接流入させる除湿暖房モードやMAX冷房モードと、圧縮機2から吐出された冷媒を放熱器4に流入させる暖房モードや除湿冷房モード、冷房モードとの切り換えを円滑に行うことができるようになる。
また、吸熱器9の空気上流側における空気流通路3には、外気吸込口と内気吸込口の各吸込口が形成されており(図1では吸込口25で代表して示す)、この吸込口25には空気流通路3内に導入する空気を車室内の空気である内気(内気循環モード)と、車室外の空気である外気(外気導入モード)とに切り換える吸込切換ダンパ26が設けられている。更に、この吸込切換ダンパ26の空気下流側には、導入した内気や外気(車室内に供給する空気)を空気流通路3に送給し、吸熱器9に通風するための室内送風機(ブロワファン)27が設けられている。
また、図1において23は実施例の車両用空気調和装置1に設けられた補助加熱装置としての補助ヒータである。実施例の補助ヒータ23は電気ヒータであるPTCヒータにて構成されており、空気流通路3の空気の流れに対して、放熱器4の風上側(空気上流側)となる空気流通路3内に設けられている。そして、補助ヒータ23に通電されて発熱すると、吸熱器9を経て放熱器4に流入する空気流通路3内の空気が加熱される。即ち、この補助ヒータ23が所謂ヒータコアとなり、車室内の暖房を行い、或いは、それを補完する。
ここで、HVACユニット10の吸熱器9より風下側(空気下流側)の空気流通路3は仕切壁10Aにより区画され、暖房用熱交換通路3Aとそれをバイパスするバイパス通路3Bとが形成されており、前述した放熱器4と補助ヒータ23は暖房用熱交換通路3Aに配置されている。
また、補助ヒータ23の風上側における空気流通路3内には、当該空気流通路3内に流入し、吸熱器9を通過した後の空気流通路3内の空気(内気や外気)を、補助ヒータ23及び放熱器4が配置された暖房用熱交換通路3Aに通風する割合を調整するエアミックスダンパ28が設けられている。
更に、放熱器4の風下側におけるHVACユニット10には、FOOT(フット)吹出口29A(第1の吹出口)、VENT(ベント)吹出口29B(FOOT吹出口29Aに対しては第2の吹出口、DEF吹出口29Cに対しては第1の吹出口)、DEF(デフ)吹出口29C(第2の吹出口)の各吹出口が形成されている。FOOT吹出口29Aは車室内の足下に空気を吹き出すための吹出口で、最も低い位置にある。また、VENT吹出口29Bは車室内の運転者の胸や顔付近に空気を吹き出すための吹出口で、FOOT吹出口29Aより上方にある。そして、DEF吹出口29Cは車両のフロントガラス内面に空気を吹き出すための吹出口で、他の吹出口29A、29Bよりも上方の最も高い位置にある。
そして、FOOT吹出口29A、VENT吹出口29B、及び、DEF吹出口29Cには、空気の吹き出し量を制御するFOOT吹出口ダンパ31A、VENT吹出口ダンパ31B、及び、DEF吹出口ダンパ31Cがそれぞれ設けられている。
次に、図2は上記圧縮機2の断面図である。実施例の圧縮機2は電動モータ82と、この電動モータ82を運転するためのインバータ83と、電動モータ82によって駆動される圧縮機構84とを備えた所謂インバータ一体型のスクロール圧縮機である。実施例の圧縮機2は、電動モータ82及びインバータ83をその内側に収容するメインハウジング86と、圧縮機構84をその内側に収容する圧縮機構ハウジング87と、インバータカバー88と、圧縮機構カバー89を備えている。そして、これらメインハウジング86と、圧縮機構ハウジング87とインバータカバー88と圧縮機構カバー89が一体的に接合されて圧縮機2のハウジング91が構成されている。
メインハウジング86は、筒状の周壁部86Aと仕切壁部86Bとから構成されている。この仕切壁部86Bは、メインハウジング86内を、電動モータ82を収容するモータ収容部92とインバータ83を収容するインバータ収容部93とに仕切る隔壁である。このインバータ収容部93は一端面が開口しており、この開口はインバータ83が収容された後、インバータカバー88によって閉塞される。モータ収容部92も他端面が開口しており、この開口は電動モータ82が収容された後、圧縮機構ハウジング87によって閉塞される。仕切壁部86Bには電動モータ82の回転軸94の一端部を支持するための滑り軸受から成る副軸受96が設けられている。
圧縮機構ハウジング87は、メインハウジング86とは反対側が開口しており、この開口は圧縮機構84が収容された後、圧縮機構カバー89によって閉塞される。圧縮機構ハウジング87は、筒状の周壁部87Aと、その一端側のフレーム部87Bとから構成され、これら周壁部87Aとフレーム部87Bで区画される空間内に圧縮機構84が収容される。フレーム部87Bはメインハウジング86内と圧縮機構ハウジング87内を仕切る隔壁を成す。また、フレーム部87Bには電動モータ82の回転軸94の他端部を挿通する貫通孔97が開設されており、この貫通孔97の圧縮機構84側には、回転軸94の他端部を支持する玉軸受(ボールベアリング)から成る主軸受98が嵌合されている。また、99は貫通孔97部分にて回転軸94の外周面と圧縮機構ハウジング87内とをシールするシール材である。
電動モータ82は、コイル101が巻装されたステータ102と、ロータ103から構成されている。そして、例えば車両のバッテリ(図示せず)からの直流電流がインバータ83により三相交流電流に変換され、電動モータ82のコイル101に給電されることで、ロータ103が回転駆動されるよう構成されている。
また、メインハウジング86には、図示しない吸入ポートが形成されており、吸入ポートから吸入された冷媒は、メインハウジング86内を通過した後、圧縮機構ハウジング87内の圧縮機構84の外側の吸入部117に吸入される。これにより、電動モータ82は吸入冷媒により冷却される。また、圧縮機構84にて圧縮された冷媒は、後述する吐出空間107から圧縮機構カバー89に形成された図示しない吐出ポートより冷媒回路Rに吐出される構成とされている。
圧縮機構84は、固定スクロール101と可動スクロール102から構成されている。固定スクロール101は、円盤状の鏡板103と、この鏡板103の表面(一方の面)に立設されたインボリュート状、又は、これに近似した曲線から成る渦巻き状のラップ104を一体に備えており、このラップ104が立設された鏡板103の表面をフレーム部87B側として圧縮機構ハウジング87に固定されている。固定スクロール101の鏡板103の中央には吐出孔106が形成されており、この吐出孔106は圧縮機構カバー89内の吐出空間107に連通している。108は吐出孔106の鏡板103の背面(他方の面)側の開口に設けられた吐出バルブである。
可動スクロール102は、固定スクロール101に対して公転旋回運動するスクロールであり、円盤状の鏡板111と、この鏡板111の表面(一方の面)に立設されたインボリュート状、又は、これに近似した曲線から成る渦巻き状のラップ112と、鏡板111の背面(他方の面)の中央に突出形成されたボス113を一体に備えている。この可動スクロール102は、ラップ112の突出方向を固定スクロール101側としてラップ112が固定スクロール101のラップ104に対向し、相互に向かい合って噛み合うように配置され、各ラップ104、112間に圧縮室114を形成する。
即ち、可動スクロール102のラップ112は、固定スクロール101のラップ104と対向し、ラップ112の先端が鏡板103の表面に接し、ラップ104の先端が鏡板111の表面に接するように噛み合い、且つ、可動スクロール102のボス113には、回転軸94の他端において軸心から偏心して設けられた偏心部116が嵌合されている。そして、電動モータ82のロータ103と共に回転軸94が回転されると、可動スクロール102は自転すること無く、固定スクロール101に対して公転旋回運動するように構成されている。
可動スクロール102は固定スクロール101に対して偏心して公転旋回するため、各ラップ104、112の偏心方向と接触位置は回転しながら移動し、外側の吸入部117から冷媒を吸入した圧縮室114は、内側に向かって移動しながら次第に縮小していく。これにより冷媒は圧縮されていき、最終的に中央の吐出孔106から吐出バルブ108を経て吐出空間107に吐出される。
図2において118は円環状のスラストプレートである。このスラストプレート118は、可動スクロール102の鏡板111の背面側に形成された背圧室119と、圧縮機構ハウジング87内の圧縮機構84の外側の吸入圧領域としての吸入部117とを区画するためのものであり、ボス113の外側に位置してフレーム部87Bと可動スクロール102の間に介設されている。121は可動スクロール102の鏡板111の背面に取り付けられてスラストプレート118に当接するシール材であり、このシール材121とスラストプレート118により背圧室119と吸入部117とが区画される。尚、122はフレーム部87Bのスラストプレート118側の面に取り付けられてスラストプレート118の外周部に当接し、フレーム部87Bとスラストプレート118間をシールするシール材である。
123は圧縮機構カバー89内のオイルセパレータ90から圧縮機構ハウジング87に渡って形成された背圧通路であり、この背圧通路123内にはオリフィス124が取り付けられている。この背圧通路123は圧縮機構カバー89内の吐出空間107内のオイルセパレータ90と背圧室119とを連通しており、これにより、背圧室119にはオリフィス124で減圧調整された吐出圧とオイルセパレータ90で分離されたオイルが供給されるように構成されている。この背圧室119内の圧力(背圧)により、可動スクロール102を固定スクロール101に押し付ける背圧荷重が生じる。この背圧荷重により、圧縮機構84の圧縮室114からの圧縮反力に抗して可動スクロール102が固定スクロール101に押し付けられ、ラップ104、112と鏡板111、103との接触が維持され、圧縮室114で冷媒を圧縮可能となる。また、背圧室119に供給されたオイルが主軸受98や副軸受96等の摺動部に供給されて潤滑される。
尚、オイルセパレータ90で分離し切れなかった冷媒は、冷媒に溶け込んだ状態で冷媒回路Rを循環した後、圧縮機2に吸い込まれ、圧縮機2内の上記各摺動部に供給されることになる。また、図2の実施例では回転軸94内にオイル通路126が形成され、このオイル通路126内には圧力調整弁127が設けられている。オイル通路126は背圧室119とメインハウジング86内(吸入圧領域)とを連通しているが、圧力調整弁127は背圧室119内の圧力(背圧)が最大値となった場合に開放し、それ以上背圧が上昇しないように機能する。
次に、図3は実施例の車両用空気調和装置1の制御装置11のブロック図を示している。制御装置11は、何れもプロセッサを備えたコンピュータの一例であるマイクロコンピュータから構成された空調コントローラ20及びヒートポンプコントローラ32から構成されており、これらがCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)を構成する車両通信バス65に接続されている。また、圧縮機2と補助ヒータ23も車両通信バス65に接続され、これら空調コントローラ20、ヒートポンプコントローラ32、圧縮機2及び補助ヒータ23が車両通信バス65を介してデータの送受信を行うように構成されている。
空調コントローラ20は、車両の車室内空調の制御を司る上位のコントローラであり、この空調コントローラ20の入力には、車両の外気温度Tamを検出する外気温度センサ33と、外気湿度を検出する外気湿度センサ34と、吸込口25から空気流通路3に吸い込まれて吸熱器9に流入する空気の温度を検出するHVAC吸込温度センサ36と、車室内の空気(内気)の温度Tinを検出する内気温度センサ37と、車室内の空気の湿度を検出する内気湿度センサ38と、車室内の二酸化炭素濃度を検出する室内CO2濃度センサ39と、車室内に吹き出される空気の温度を検出する吹出温度センサ41と、圧縮機2の吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力センサ42と、車室内への日射量を検出するための例えばフォトセンサ式の日射センサ51と、車両の移動速度(車速)を検出するための車速センサ52の各出力と、設定温度や運転モードの切り換えを設定するための空調操作部53が接続されている。
また、空調コントローラ20の出力には、室外送風機15と、室内送風機27と、吸込切換ダンパ26と、エアミックスダンパ28と、各吹出口ダンパ31A〜31Cが接続され、それらは空調コントローラ20により制御される。
ヒートポンプコントローラ32は、主に冷媒回路Rの制御を司るコントローラであり、このヒートポンプコントローラ32の入力には、圧縮機2の吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ43と、圧縮機2の吸込冷媒圧力Psを検出する吸込圧力センサ44と、圧縮機2の吸込冷媒温度Tsを検出する吸込温度センサ55と、放熱器4の冷媒温度(放熱器温度TCI)を検出する放熱器温度センサ46と、放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力PCI)を検出する放熱器圧力センサ47と、吸熱器9の冷媒温度(吸熱器温度Te)を検出する吸熱器温度センサ48と、吸熱器9の冷媒圧力を検出する吸熱器圧力センサ49と、補助ヒータ23の温度(補助ヒータ温度Tptc)を検出する補助ヒータ温度センサ50と、室外熱交換器7の出口の冷媒温度(室外熱交換器温度TXO)を検出する室外熱交換器温度センサ54と、室外熱交換器7の出口の冷媒圧力(室外熱交換器圧力PXO)を検出する室外熱交換器圧力センサ56の各出力が接続されている。
また、ヒートポンプコントローラ32の出力には、室外膨張弁6、室内膨張弁8と、電磁弁30(リヒート用)、電磁弁17(冷房用)、電磁弁21(暖房用)、電磁弁40(バイパス用)の各電磁弁が接続され、それらはヒートポンプコントローラ32により制御される。尚、圧縮機2のインバータ83と補助ヒータ23のコントローラは車両通信バス65を介してヒートポンプコントローラ32とデータの送受信を行い、このヒートポンプコントローラ32によって制御される。
ヒートポンプコントローラ32と空調コントローラ20は車両通信バス65を介して相互にデータの送受信を行い、各センサの出力や空調操作部53にて入力された設定に基づき、各機器を制御するものであるが、この場合の実施例では外気温度センサ33、吐出圧力センサ42、車速センサ52、空気流通路3に流入した空気の体積風量Ga(空調コントローラ20が算出)、エアミックスダンパ28による風量割合SW(空調コントローラ20が算出)、空調操作部53の出力は空調コントローラ20から車両通信バス65を介してヒートポンプコントローラ32に送信され、ヒートポンプコントローラ32による制御に供される構成とされている。
以上の構成で、次に実施例の車両用空気調和装置1の動作を説明する。この実施例では制御装置11(空調コントローラ20、ヒートポンプコントローラ32)は、暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード、MAX冷房モード(最大冷房モード)及び補助ヒータ単独モードの各運転モードを切り換えて実行する。先ず、各運転モードにおける冷媒の流れと制御の概略について説明する。
(1)暖房モード
ヒートポンプコントローラ32により(オートモード)或いは空調操作部53へのマニュアル操作(マニュアルモード)により暖房モードが選択されると、ヒートポンプコントローラ32は電磁弁21(暖房用)を開放し、電磁弁17(冷房用)を閉じる。また、電磁弁30(リヒート用)を開放し、電磁弁40(バイパス用)を閉じる。そして、圧縮機2を運転する。空調コントローラ20は各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は、基本的には室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の全て空気を暖房用熱交換通路3Aの補助ヒータ23及び放熱器4に通風する状態とするが、風量を調整してもよい。
これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は電磁弁30を経て冷媒配管13Gから放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒(補助ヒータ23が動作するときは当該補助ヒータ23及び放熱器4)により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化する。
放熱器4内で液化した冷媒は当該放熱器4を出た後、冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至る。室外膨張弁6に流入した冷媒はそこで減圧された後、室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒は蒸発し、走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気中から熱を汲み上げる。即ち、冷媒回路Rがヒートポンプとなる。そして、室外熱交換器7を出た低温の冷媒は冷媒配管13A及び電磁弁21及び冷媒配管13Dを経て冷媒配管13Cからアキュムレータ12に入り、そこで気液分離された後、ガス冷媒が圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。放熱器4(補助ヒータ23が動作するときは当該補助ヒータ23及び放熱器4)にて加熱された空気は各吹出口29A〜29Cから吹き出されるので、これにより車室内の暖房が行われることになる。
ヒートポンプコントローラ32は、空調コントローラ20が目標吹出温度TAOから算出する目標ヒータ温度TCO(放熱器温度TCIの目標値)から目標放熱器圧力PCO(放熱器圧力PCIの目標値)を算出し、この目標放熱器圧力PCOと、放熱器圧力センサ47が検出する放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力PCI。冷媒回路Rの高圧側の圧力)に基づいて圧縮機2の回転数NCを制御し、放熱器4による加熱を制御する。また、ヒートポンプコントローラ32は、放熱器温度センサ46が検出する放熱器4の冷媒温度(放熱器温度TCI)及び放熱器圧力センサ47が検出する放熱器圧力PCIに基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御し、放熱器4の出口における冷媒の過冷却度SCを制御する。
また、ヒートポンプコントローラ32はこの暖房モードにおいては、車室内空調に要求される暖房能力に対して放熱器4による暖房能力が不足する場合、その不足する分を補助ヒータ23の発熱で補完するように補助ヒータ23の通電を制御する。それにより、快適な車室内暖房を実現し、且つ、室外熱交換器7の着霜も抑制する。このとき、補助ヒータ23は放熱器4の空気上流側に配置されているので、空気流通路3を流通する空気は放熱器4の前に補助ヒータ23に通風されることになる。
ここで、補助ヒータ23が放熱器4の空気下流側に配置されていると、実施例の如くPTCヒータで補助ヒータ23を構成した場合には、補助ヒータ23に流入する空気の温度が放熱器4によって上昇するため、PTCヒータの抵抗値が大きくなり、電流値も低くなって発熱量が低下してしまうが、放熱器4の空気上流側に補助ヒータ23を配置することで、実施例の如くPTCヒータから構成される補助ヒータ23の能力を十分に発揮させることができるようになる。
(2)除湿暖房モード
次に、除湿暖房モードでは、ヒートポンプコントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21を閉じる。また、電磁弁30を閉じ、電磁弁40を開放すると共に、室外膨張弁6の弁開度は全閉とする。そして、圧縮機2を運転する。空調コントローラ20は各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は、基本的には室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の全て空気を暖房用熱交換通路3Aの補助ヒータ23及び放熱器4に通風する状態とするが、風量の調整も行う。
これにより、圧縮機2から冷媒配管13Gに吐出された高温高圧のガス冷媒は、放熱器4に向かうこと無くバイパス配管35に流入し、電磁弁40を経て室外膨張弁6の下流側の冷媒配管13Eに至るようになる。このとき、室外膨張弁6は全閉とされているので、冷媒は放熱器4及び室外膨張弁6に流れること無く、室外熱交換器7に直接流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気は冷却され、且つ、当該空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気流通路3内の空気は冷却され、且つ、除湿される。吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。
このとき、室外膨張弁6の弁開度は全閉とされているので、圧縮機2から吐出された冷媒が室外膨張弁6から放熱器4に逆流入する不都合を抑制若しくは防止することが可能となる。これにより、冷媒循環量の低下を抑制若しくは解消して空調能力を確保することができるようになる。更に、この除湿暖房モードにおいてヒートポンプコントローラ32は、補助ヒータ23に通電して発熱させる。これにより、吸熱器9にて冷却され、且つ、除湿された空気は補助ヒータ23を通過する過程で更に加熱され、温度が上昇するので車室内の除湿暖房が行われることになる。
ヒートポンプコントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)と、空調コントローラ20が算出する吸熱器温度Teの目標値である目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機2の回転数NCを制御すると共に、補助ヒータ温度センサ50が検出する補助ヒータ温度Tptcと前述した目標ヒータ温度TCO(この場合、補助ヒータ温度Tptcの目標値となる)に基づいて補助ヒータ23の通電(発熱による加熱)を制御することで、吸熱器9での空気の冷却と除湿を適切に行いながら、補助ヒータ23による加熱で各吹出口29A〜29Cから車室内に吹き出される空気温度の低下を的確に防止する。これにより、車室内に吹き出される空気を除湿しながら、その温度を適切な暖房温度に制御することが可能となり、車室内の快適且つ効率的な除湿暖房を実現することができるようになる。
尚、補助ヒータ23は放熱器4の空気上流側に配置されているので、補助ヒータ23で加熱された空気は放熱器4を通過することになるが、この除湿暖房モードでは放熱器4に冷媒は流されないので、補助ヒータ23にて加熱された空気から放熱器4が吸熱してしまう不都合も解消される。即ち、放熱器4によって車室内に吹き出される空気の温度が低下してしまうことが抑制され、COPも向上することになる。
(3)除湿冷房モード
次に、除湿冷房モードでは、ヒートポンプコントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21を閉じる。また、電磁弁30を開放し、電磁弁40を閉じる。そして、圧縮機2を運転する。空調コントローラ20は各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は、基本的には室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の全て空気を暖房用熱交換通路3Aの補助ヒータ23及び放熱器4に通風する状態とするが、風量の調整も行う。
これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は電磁弁30を経て冷媒配管13Gから放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化していく。
放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至り、開き気味で制御される室外膨張弁6を経て室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。この除湿冷房モードではヒートポンプコントローラ32は補助ヒータ23に通電しないので、吸熱器9にて冷却され、除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱(暖房時よりも放熱能力は低い)される。これにより車室内の除湿冷房が行われることになる。
ヒートポンプコントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)とその目標値である目標吸熱器温度TEO(空調コントローラ20から送信される)に基づいて圧縮機2の回転数NCを制御する。また、ヒートポンプコントローラ32は前述した目標ヒータ温度TCOから目標放熱器圧力PCOを算出し、この目標放熱器圧力PCOと、放熱器圧力センサ47が検出する放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力PCI。冷媒回路Rの高圧圧力)に基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御し、放熱器4による加熱を制御する。
(4)冷房モード
次に、冷房モードでは、ヒートポンプコントローラ32は上記除湿冷房モードの状態において室外膨張弁6の弁開度を全開とする。そして、圧縮機2を運転し、補助ヒータ23には通電しない。空調コントローラ20は各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の空気が、暖房用熱交換通路3Aの補助ヒータ23及び放熱器4に通風される割合を調整する状態とする。
これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は電磁弁30を経て冷媒配管13Gから放熱器4に流入すると共に、放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至る。このとき室外膨張弁6は全開とされているので冷媒はそれを通過し、そのまま室外熱交換器7に流入し、そこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮液化する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気は冷却される。また、空気中の水分は吸熱器9に凝結して付着する。
吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて冷却され、除湿された空気が各吹出口29A〜29Cから車室内に吹き出されるので(一部は放熱器4を通過して熱交換する)、これにより車室内の冷房が行われることになる。また、この冷房モードにおいては、ヒートポンプコントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)とその目標値である前述した目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機2の回転数NCを制御する。
(5)MAX冷房モード(最大冷房モード)
次に、MAX冷房モード(最大冷房モード)では、ヒートポンプコントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21を閉じる。また、電磁弁30を閉じ、電磁弁40を開放すると共に、室外膨張弁6の弁開度は全閉とする。そして、圧縮機2を運転し、補助ヒータ23には通電しない。空調コントローラ20は、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の空気が、暖房用熱交換通路3Aの補助ヒータ23及び放熱器4に通風される割合を調整する状態とする。
これにより、圧縮機2から冷媒配管13Gに吐出された高温高圧のガス冷媒は、放熱器4に向かうこと無くバイパス配管35に流入し、電磁弁40を経て室外膨張弁6の下流側の冷媒配管13Eに至るようになる。このとき、室外膨張弁6は全閉とされているので、冷媒は放熱器4及び室外膨張弁6に流れること無く、室外熱交換器7に直接流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気は冷却される。また、空気中の水分は吸熱器9に凝結して付着するので、空気流通路3内の空気は除湿される。吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。このとき、室外膨張弁6は全閉とされているので、同様に圧縮機2から吐出された冷媒が室外膨張弁6から放熱器4に逆流入する不都合を抑制若しくは防止することが可能となる。これにより、冷媒循環量の低下を抑制若しくは解消して空調能力を確保することができるようになる。
ここで、前述した冷房モードでは放熱器4に高温の冷媒が流れているため、放熱器4からHVACユニット10への直接の熱伝導が少なからず生じるが、このMAX冷房モードでは放熱器4に冷媒が流れないため、放熱器4からHVACユニット10に伝達される熱で吸熱器9からの空気流通路3内の空気が加熱されることも無くなる。そのため、車室内の強力な冷房が行われ、特に外気温度Tamが高いような環境下では、迅速に車室内を冷房して快適な車室内空調を実現することができるようになる。また、このMAX冷房モードにおいても、ヒートポンプコントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)とその目標値である前述した目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機2の回転数NCを制御する。
(6)補助ヒータ単独モード
尚、実施例の制御装置11は室外熱交換器7に過着霜が生じた場合などに、冷媒回路Rの圧縮機2と室外送風機15を停止し、補助ヒータ23に通電してこの補助ヒータ23のみで車室内を暖房する補助ヒータ単独モードを有している。この場合にも、ヒートポンプコントローラ32は補助ヒータ温度センサ50が検出する補助ヒータ温度Tptcと前述した目標ヒータ温度TCOに基づいて補助ヒータ23の通電(発熱)を制御する。
また、空調コントローラ20は室内送風機27を運転し、エアミックスダンパ28は、室内送風機27から吹き出された空気流通路3内の空気を暖房用熱交換通路3Aの補助ヒータ23に通風し、風量を調整する状態とする。補助ヒータ23にて加熱された空気が各吹出口29A〜29Cから車室内に吹き出されるので、これにより車室内の暖房が行われることになる。
(7)運転モードの切換
空調コントローラ20は、下記式(II)から前述した目標吹出温度TAOを算出する。この目標吹出温度TAOは、車室内に吹き出される空気の温度の目標値である。
TAO=(Tset−Tin)×K+Tbal(f(Tset、SUN、Tam))
・・(II)
ここで、Tsetは空調操作部53で設定された車室内の設定温度、Tinは内気温度センサ37が検出する室内温度、Kは係数、Tbalは設定温度Tsetや、日射センサ51が検出する日射量SUN、外気温度センサ33が検出する外気温度Tamから算出されるバランス値である。そして、一般的に、この目標吹出温度TAOは外気温度Tamが低い程高く、外気温度Tamが上昇するに伴って低下する。
ヒートポンプコントローラ32は、起動時には空調コントローラ20から車両通信バス65を介して送信される外気温度Tam(外気温度センサ33が検出する)と目標吹出温度TAOとに基づいて上記各運転モードのうちの何れかの運転モードを選択すると共に、各運転モードを車両通信バス65を介して空調コントローラ20に送信する。
また、ヒートポンプコントローラ32は、起動後は外気温度Tam、車室内の湿度、目標吹出温度TAO、後述する加熱温度TH(放熱器4の風下側の空気の温度。推定値)、目標ヒータ温度TCO、吸熱器温度Te、目標吸熱器温度TEO、車室内の除湿要求の有無、等のパラメータに基づいて各運転モードの切り換えを行うことで、環境条件や除湿の要否に応じて的確に暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード、MAX冷房モード及び補助ヒータ単独モードを切り換えて車室内に吹き出される空気の温度を目標吹出温度TAOに制御し、快適且つ効率的な車室内空調を実現するものである。
(8)ヒートポンプコントローラ32による暖房モードでの圧縮機2の制御
次に、図5を用いて前述した暖房モードにおける圧縮機2の制御について詳述する。図4は暖房モード用の圧縮機2の目標回転数TGNChを決定するヒートポンプコントローラ32の制御ブロック図である。ヒートポンプコントローラ32のF/F(フィードフォワード)操作量演算部58は外気温度センサ33から得られる外気温度Tamと、室内送風機27のブロワ電圧BLVと、SW=(TAO−Te)/(TH−Te)で得られるエアミックスダンパ28による風量割合SWと、放熱器4の出口における過冷却度SCの目標値である目標過冷却度TGSCと、放熱器4の温度の目標値である前述した目標ヒータ温度TCO(空調コントローラ20から送信される)と、放熱器4の圧力の目標値である目標放熱器圧力PCOに基づいて圧縮機2の目標回転数のF/F操作量TGNChffを演算する。
ここで、風量割合SWを算出する上記THは、放熱器4の風下側の空気の温度(以下、加熱温度と云う)であり、ヒートポンプコントローラ32が下記に示す一次遅れ演算の式(III)から推定する。
TH=(INTL×TH0+Tau×THz)/(Tau+INTL)・・(III)
ここで、INTLは演算周期(定数)、Tauは一次遅れの時定数、TH0は一次遅れ演算前の定常状態における加熱温度THの定常値、THzは加熱温度THの前回値である。このように加熱温度THを推定することで、格別な温度センサを設ける必要がなくなる。
尚、ヒートポンプコントローラ32は前述した運転モードによって上記時定数Tau及び定常値TH0を変更することにより、上述した推定式(III)を運転モードによって異なるものとし、加熱温度THを推定する。そして、この加熱温度THは車両通信バス65を介して空調コントローラ20に送信される。
前記目標放熱器圧力PCOは上記目標過冷却度TGSCと目標ヒータ温度TCOに基づいて目標値演算部59が演算する。更に、F/B(フィードバック)操作量演算部60はこの目標放熱器圧力PCOと放熱器4の冷媒圧力である放熱器圧力PCI(冷媒回路Rの高圧側の圧力)に基づいて圧縮機2の目標回転数のF/B操作量TGNChfbを演算する。そして、F/F操作量演算部58が演算したF/F操作量TGNCnffとF/B操作量演算部60が演算したF/B操作量TGNChfbは加算器61で加算され、リミット設定部62で制御上の最低回転数ECNpdLimLo(以下、A2とする)と制御上の最高回転数ECNpdLimHiのリミットが付けられ、目標回転数初期値TGNCh0として出力される。
次に、この目標回転数初期値TGNCh0は目標回転数変更制限部68で変更制限を受けた後、最終的に圧縮機2の目標回転数TGNChとして決定される。この目標回転数変更制限部68による圧縮機2の目標回転数変更制限制御については後に詳述する。そして、暖房モードにおいては、ヒートポンプコントローラ32はこの目標回転数TGNChとなるように圧縮機2の回転数NCを制御する。
(9)ヒートポンプコントローラ32による冷房モード等での圧縮機2の制御
一方、図6は前記除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード、MAX冷房モード用の圧縮機2の目標回転数TGNCcを決定するヒートポンプコントローラ32の制御ブロック図である。ヒートポンプコントローラ32のF/F操作量演算部63は外気温度Tamと、空気流通路3に流入した空気の体積風量Gaと、放熱器4の圧力(放熱器圧力PCI)の目標値である目標放熱器圧力PCOと、吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)の目標値である目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機2の目標回転数のF/F操作量TGNCcffを演算する。
また、F/B操作量演算部64は目標吸熱器温度TEO(空調コントローラ20から送信される)と吸熱器温度Teに基づいて圧縮機2の目標回転数のF/B操作量TGNCcfbを演算する。そして、F/F操作量演算部63が演算したF/F操作量TGNCcffとF/B操作量演算部64が演算したF/B操作量TGNCcfbは加算器66で加算され、リミット設定部67で制御上の最低回転数TGNCcLimLo(以下、A2とする)と制御上の最高回転数TGNCcLimHiのリミットが付けられ、目標回転数初期値TGNCc0として出力される。
次に、この目標回転数初期値TGNCc0は目標回転数変更制限部69で変更制限を受けた後、最終的に圧縮機2の目標回転数TGNCcとして決定される。この目標回転数変更制限部69による圧縮機2の目標回転数変更制限制御についても後に詳述する。そして、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード及びMAX冷房モードにおいては、ヒートポンプコントローラ32はこの目標回転数TGNCcとなるように圧縮機2の回転数NCを制御する。
(10)ヒートポンプコントローラ32による除湿暖房モードでの補助ヒータ23の制御
また、図7は除湿暖房モードにおける補助ヒータ23の補助ヒータ要求能力TGQPTCを決定するヒートポンプコントローラ32の制御ブロック図である。ヒートポンプコントローラ32の減算器73には目標ヒータ温度TCOと補助ヒータ温度Tptcが入力され、目標ヒータ温度TCOと補助ヒータ温度Tptcの偏差(TCO−Tptc)が算出される。この偏差(TCO−Tptc)はF/B制御部74に入力され、このF/B制御部74は偏差(TCO−Tptc)を無くして補助ヒータ温度Tptcが目標ヒータ温度TCOとなるように補助ヒータ要求能力F/B操作量を演算する。
このF/B制御部74で算出された補助ヒータ要求能力F/B操作量はリミット設定部76で制御上の下限値QptcLimLoと制御上の上限値QptcLimHiのリミットが付けられた後、補助ヒータ要求能力TGQPTCとして決定される。除湿暖房モードにおいては、コントローラ32はこの補助ヒータ要求能力TGQPTCに基づいて補助ヒータ23の通電を制御することにより、補助ヒータ温度Tptcが目標ヒータ温度TCOとなるように補助ヒータ23の発熱(加熱)を制御する。
このようにしてヒートポンプコントローラ32は、除湿暖房モードでは吸熱器温度Teと目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機の運転を制御すると共に、目標ヒータ温度TCOに基づいて補助ヒータ23の発熱を制御することで、除湿暖房モードにおける吸熱器9による冷却と除湿、並びに、補助ヒータ23による加熱を的確に制御する。これにより、車室内に吹き出される空気をより適切に除湿しながら、その温度をより正確な暖房温度に制御することが可能となり、より一層快適且つ効率的な車室内の除湿暖房を実現することができるようになる。
(11)ヒートポンプコントローラ32による圧縮機2の目標回転数変更制限制御
次に、図8を参照しながら、ヒートポンプコントローラ32による圧縮機2の目標回転数変更制限制御について説明する。圧縮機2の回転数NCが急激に低下(減速)すると、前述した如き理由で主軸受98や副軸受96において潤滑油膜を形成できなくなり、摺動部が潤滑不良となって圧縮機2の信頼性と耐久性が低下する。
また、圧縮機2の回転数NCが急激に上昇(加速)した場合にも、吸込冷媒圧力Psと吐出冷媒圧力Pdとの差が急激に拡大されるため、主軸受98や副軸受96に加わる荷重が大きくなり、同様に潤滑油膜の形成が阻害されることになる。そこで、この実施例ではヒートポンプコントローラ32の目標回転数変更制限部68(図5)及び目標回転数変更制限部69(図6)が、圧縮機2の目標回転数TGNCh、TGNCcを上昇させる場合と低下させる場合の双方で、以下に説明する目標回転数変更制限制御を実行する。
(11−1)目標回転数を上昇させるときの目標回転数変更制限制御
先ず、圧縮機2の目標回転数TGNCh、TGNCcを上昇させるときの目標回転数変更制限制御について説明する。尚、図8においてA2は前述した制御上の最低回転数(ECNpdLimLo:図5、TGNCcLimLo:図6)であり、実施例では例えば800rpmとする。また、図8においてA1はこの最低回転数A2よりも高いが、制御上の最高回転数(ECNpdLimHi:図5、TGNCcLimHi:図6。例えば8000rpm)から見て最低回転数A2に近い値、例えば3000rpm程に設定された所定の低回転数閾値である。
また、図8において実線で示すのはヒートポンプコントローラ32のリミット設定部62(図5)及びリミット設定部67(図6)から出力される目標回転数初期値TGNCh0、TGNCc0であり、破線で示すのは目標回転数変更制限部68(図5)及び目標回転数変更制限部69(図6)から最終的に出力される制限後の目標回転数TGNCh、TGNCcである。
例えば図8の時刻t1やt4で圧縮機2が起動されるものとすると、ヒートポンプコントローラ32のリミット設定部62及びリミット設定部67から出力される目標回転数初期値TGNCh0、TGNCc0は、図8に実線で示す如く時刻t1やt4の時点で垂直に上昇する。目標回転数変更制限部68及び目標回転数変更制限部69は、目標回転数TGNCh、TGNCcを上昇させる方向に変更する際、最低回転数A2までは制限を行わず、垂直に上昇させる。
一方、最低回転数A2より高い領域では垂直に上昇させずに、所定の上昇率HR1(実施例では400rpm/sec)で上昇させる。これにより、目標回転数TGNCh、TGNCcは上昇率HR1でゆっくりと上昇され、最終的に目標回転数初期値TGNCh0、TGNCc0の値とされる。これは図8の時刻t7やt8の運転中に目標回転数TGNCh、TGNCcを上昇させる方向に変更する際も同様であり、変更する前の目標回転数TGNCh、TGNCcが最低回転数A2よりも高い場合は、上昇率HR1で上昇させる。
このように、圧縮機2の目標回転数TGNCh、TGNCcを上昇させる方向に変更する際、所定の上昇率HR1で変化させることで、急激な上昇(加速)によって主軸受98や副軸受96における潤滑油膜を形成できなくなる不都合を解消する。
(11−2)目標回転数を低下させるときの目標回転数変更制限制御
次に、圧縮機2の目標回転数TGNCh、TGNCcを低下させるときの目標回転数変更制限制御について説明する。ヒートポンプコントローラ32の目標回転数変更制限部68(図5)及び目標回転数変更制限部69(図6)は、この実施例では圧縮機2の目標回転数TGNCh、TGNCcを低下させる方向に変更する際、以下の条件(i)〜(iii)が全て成立した場合には目標回転数TGNCh、TGNCcを所定の低下率LR1で変化させる。この低下率LR1は前述した上昇率HR1より高い値(例えば、500rpm/sec)である。
(i)圧縮機2の目標回転数を変更する前の圧縮機2の吐出冷媒圧力Pd、又は、吐出冷媒温度Tdが所定の吐出側閾値Pd1、Td1より高いこと。
且つ、
(ii)圧縮機2の目標回転数を所定回転数NC1以上低下させる方向に変更する場合であること。
且つ、
(iii)圧縮機2の目標回転数を変更する前の当該目標回転数が前述した所定の低回転数閾値A1より高いこと。
上記吐出冷媒圧力Pdの吐出側閾値Pd1は例えば1MPa、吐出冷媒温度Tdの吐出側閾値Td1は例えば60℃である。これらは何れも比較的高い値である。また、上記所定回転数NC1は例えば3000rpmとする。これも比較的大きな変化幅を意味する。
図8の時刻t2(停止する)やt5、t9(何れも低下させる)でヒートポンプコントローラ32のリミット設定部62及びリミット設定部67から出力される目標回転数初期値TGNCh0、TGNCc0が図8に実線で示す垂直に低下した場合、上記条件(i)〜(iii)が全て成立している場合には、目標回転数変更制限部68及び目標回転数変更制限部69は、目標回転数TGNCh、TGNCcを前記低下率LR1で低下させる。これにより、目標回転数TGNCh、TGNCcは低下率LR1でゆっくりと低下していく。
そして、時刻t2の場合には、時刻t3で目標回転数TGNCh、TGNCcで低回転数閾値A1まで降下したものとすると、この時刻t3で垂直に降下し、停止(零)され、時刻t5や時刻t9の場合には、低下率LR1で降下し、目標回転数TGNCh、TGNCcで低回転数閾値A1まで降下した時刻t6や時刻t10で垂直に降下し、それぞれ最終的に目標回転数TGNCh0、TGNCc0の値とされる。また、図8の時刻t11の場合には、変更前の目標回転数TGNCh、TGNCcが低回転数閾値A1よりも低いため、垂直に下げられて停止(零)される。
このように、ヒートポンプコントローラ32は、圧縮機2の目標回転数TGNCh、TGNCcを低下させる方向に変更する場合、所定の低下率LR1にて当該目標回転数TGNCh、TGNCcを変化させる目標回転数変更制限制御を実行するので、圧縮機2の急激な回転数NCの低下に伴って発生する主軸受98や副軸受96等の摺動部の潤滑不良を未然に回避し、信頼性と耐久性の向上を図ることができるようになる。
また、前述した如く圧縮機2の吐出冷媒圧力Pdや吐出冷媒温度Tdが高いときは主軸受98や副軸受96等の摺動部の油膜高さが低下する。また、圧縮機2の回転数NCの低下度合が大きい程、主軸受98や副軸受96における周速の低下度合も大きくなるために油膜高さが低下するが、実施例ではヒートポンプコントローラ32が、圧縮機2の目標回転数TGNCh、TGNCcを変更する前の当該圧縮機2の吐出冷媒圧力Pd、又は、吐出冷媒温度Tdが所定の吐出側閾値Pd1、Td1より高く、且つ、当該圧縮機2の目標回転数TGNCh、TGNCcを所定回転数NC1以上低下させる方向に変更する場合に、目標回転数変更制限制御を実行するようにしたので、適切且つ効果的に圧縮機2の摺動部における潤滑不良の発生を回避することができるようになる。
更に、実施例ではヒートポンプコントローラ32は、圧縮機2の目標回転数TGNCh、TGNCcを変更する前の当該圧縮機2の目標回転数TGNCh、TGNCcが所定の低回転数閾値A1より低い場合、目標回転数変更制限制御を実行しないので、圧縮機2を停止させるまでの時間を短縮することができるようになる。
尚、上記条件(iii)では圧縮機2の目標回転数を変更する前の当該目標回転数が低回転数閾値A1より高いこととしたが、それに限らず、圧縮機2の目標回転数を変更する前の当該目標回転数が低回転数閾値A1より低い場合にも目標回転数変更制限制御を行うが、低下率LR1を前述した低回転数閾値A1以上であるときの値(500rpm/sec)よりも高い、例えば800rpm/sec等とするようにしてもよい。それによっても、圧縮機2を停止させるまでの時間を短縮することが可能となる。
(11−3)吸込冷媒温度Ts又は吸込冷媒圧力Psによる低回転数閾値A1、低下率LR1の変更制御
また、ヒートポンプコントローラ32の目標回転数変更制限部68及び目標回転数変更制限部69は、圧縮機2の吸込冷媒温度Ts又は吸込冷媒圧力Psが低い程、低回転数閾値A1を下げ、且つ、低下率LR1を低くする方向で変更する。例えば、吸込冷媒温度Tsが所定の低い値Ts1(所定値)より高い場合、又は、吸込冷媒圧力Psが所定の低い値Ps1(所定値)より高い場合は前述した値とし、吸込冷媒温度Tsが所定値Ts1以下、又は、吸込冷媒圧力Psが所定値Ps1以下の場合には、低回転数閾値A1を所定値(例えば、1000rpm)まで下げ、低下率LR1を所定値(例えば、400rpm/sec)まで下げる。
暖房モードでは冷房モード等に比して圧縮機2に吸い込まれる冷媒の温度(吸込冷媒温度Ts)や冷媒の圧力(吸込冷媒圧力Ps)は低くなるが、前述した如く圧縮機2の吸込冷媒温度Tsや吸込冷媒圧力Psが低い状態では冷媒に溶け込んでいるオイルが多くなるので、圧縮機2の回転数NCが急激に低下されると冷媒が蒸発し、キャビテーションによる油膜形成の阻害が発生し易くなる。そこで、実施例ではヒートポンプコントローラ32が、圧縮機2の吸込冷媒温度Ts又は吸込冷媒圧力Psが低い程、低回転数閾値A1を下げ、且つ、低下率LR1を低くする方向に変更するようにしたので、冷媒のキャビテーションによる摺動部における油膜形成の阻害を効果的に解消することができるようになる。
尚、実施例では低回転数閾値A1と低下率LR1の双方を下げるようにしたが、何れか一方を下げるようにしても良く、それによっても油膜形成の阻害を解消することが可能となる。
(11−4)圧縮機2のON−OFF運転の場合の制御
また、暖房、冷房の負荷が小さい場合には、ヒートポンプコントローラ32は圧縮機2を停止状態(OFF)と最低回転数A2(ON)の間で制御する所謂ON−OFF運転を行うことになる。前述した如く実施例ではヒートポンプコントローラ32の目標回転数変更制限部68及び目標回転数変更制限部69は、圧縮機2を起動する場合は最低回転数A2までは目標回転数変更制限制御を実行せず、圧縮機2の目標回転数TGNCh、TGNCcを低下させる方向に変更する場合は最低回転数A2より高い低回転数閾値A1以下の領域では目標回転数変更制限制御を実行しない。
即ち、ヒートポンプコントローラ32の目標回転数変更制限部68及び目標回転数変更制限部69は、停止状態と目標回転数TGNCh、TGNCcの制御上の最低回転数A2の間で圧縮機2を制御する場合には、目標回転数変更制限制御を実行しないことになるので、圧縮機2の所謂ON−OFF運転を円滑に行うことができるようになる。
(11−5)車両用空気調和装置1の保護制御の優先制御
ここで、実施例ではヒートポンプコントローラ32は、以下に示す車両用空気調和装置1の保護制御(iv)〜(vii)を実行する。即ち、
(iv)圧縮機2の冷媒吐出圧力Pdが所定の保護閾値Pd2(例えば、2.3MPaG)に上昇した場合は圧縮機2の目標回転数TGNCh、TGNCcを制限し、又は、停止する。
(v)圧縮機2の冷媒吐出温度Tdが所定の保護閾値Td2(例えば、100℃)に上昇した場合は圧縮機2の目標回転数TGNCh、TGNCcを制限し、又は、停止する。
(vi)除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード、MAX冷房モードにおいて吸熱器温度Teが所定の保護閾値Te1(例えば、2℃)に低下した場合は圧縮機2の目標回転数TGNCh、TGNCcを制限し、又は、停止する。
(vii)暖房モードにおいて圧縮機2の吸込冷媒温度Tsが所定の保護閾値Ts2(例えば、−20℃)に低下した場合は圧縮機2の目標回転数TGNCh、TGNCcを制限し、又は、停止する。
そして、ヒートポンプコントローラ32は、上記(iv)〜(vii)の保護制御を実行する場合、前述した目標回転数変更制限制御を実行しない。即ち、ヒートポンプコントローラ32は、車両用空気調和装置1の保護制御を目標回転数変更制限制御に優先して実行するので、圧縮機2を含む車両用空気調和装置1の構成機器が破壊に至る不都合を未然に回避することができるようになる。
尚、実施例のヒートポンプコントローラ32は上記(iv)〜(vii)の保護制御の全てを実行するようにしたが、それに限らず、何れかの保護制御、又は、それらの組み合わせを実行する場合にも同様である。また、実施例では条件(i)〜(iii)が全て成立しているときに目標回転数変更制限制御を実行するようにしたが、請求項1の発明ではそれに限らず、例えば圧縮機2の目標回転数を低下させる方向に変更する場合は、最低回転数A2までは無条件で圧縮機2の目標回転数TGNCh、TGNCcを前記低下率LR1で変化させる目標回転数変更制限制御を実行するようにしてもよい。
更に、各実施例で示した数値等はそれに限られるものでは無く、適用する装置に応じて適宜設定すべきものである。更に、実施例では圧縮機2としてスクロール圧縮機を例に採り上げて説明したが、それに限らず、摺動部をオイルで潤滑する種々の電動式の圧縮機を採用可能である。
1 車両用空気調和装置
2 圧縮機
3 空気流通路
4 放熱器
6 室外膨張弁
7 室外熱交換器
8 室内膨張弁
9 吸熱器
11 制御装置
20 空調コントローラ
27 室内送風機(ブロワファン)
32 ヒートポンプコントローラ
33 外気温度センサ
42 吐出圧力センサ
43 吐出温度センサ
55 吸込温度センサ
65 車両通信バス
96 副軸受
98 主軸受
R 冷媒回路

Claims (6)

  1. 冷媒を圧縮する圧縮機と、該圧縮機の回転数を所定の目標回転数に制御する制御装置を備えた車両用空気調和装置において、
    前記制御装置は、前記目標回転数を低下させる方向に変更する場合、所定の低下率にて当該目標回転数を変化させる目標回転数変更制限制御を実行することを特徴とする車両用空気調和装置。
  2. 前記制御装置は、前記圧縮機の目標回転数を変更する前の当該圧縮機の吐出冷媒圧力Pd、又は、吐出冷媒温度Tdが所定の吐出側閾値より高く、且つ、当該圧縮機の目標回転数を所定回転数以上低下させる方向に変更する場合、前記目標回転数変更制限制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の車両用空気調和装置。
  3. 前記制御装置は、前記圧縮機の目標回転数を変更する前の当該圧縮機の目標回転数が所定の低回転数閾値より低い場合、当該低回転数閾値以上である場合に比して前記低下率を高くし、又は、前記目標回転数変更制限制御を実行しないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用空気調和装置。
  4. 前記制御装置は、前記圧縮機の吸込冷媒温度Ts又は吸込冷媒圧力Psが低い程、前記低回転数閾値を下げ、及び/又は、前記低下率を低くする方向で変更することを特徴とする請求項3に記載の車両用空気調和装置。
  5. 前記制御装置は、前記目標回転数の制御上の最低回転数を有し、停止状態と当該最低回転数の間で前記圧縮機を制御する場合には、前記目標回転数変更制限制御を実行しないことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
  6. 冷媒を放熱させて車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、
    冷媒を吸熱させて前記車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、
    車室外に設けられた室外熱交換器とを備え、
    前記制御装置は少なくとも、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、前記室外熱交換器にて吸熱させることで前記車室内を暖房し、高圧側の圧力に基づいて前記圧縮機の目標回転数を算出する暖房モードと、
    前記圧縮機から吐出された冷媒を前記室外熱交換器で放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、前記吸熱器にて吸熱させることで前記車室内を冷房し、前記吸熱器の温度Teに基づいて前記圧縮機の目標回転数を算出する冷房モードを有し、
    前記圧縮機の冷媒吐出圧力Pd、前記圧縮機の冷媒吐出温度Td、前記冷房モードにおける前記吸熱器の温度Te、前記暖房モードにおける前記圧縮機の吸込冷媒温度Tsのうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てに基づいて前記圧縮機の目標回転数を制限し、若しくは、当該圧縮機を停止する保護制御を実行すると共に、
    当該保護制御を実行する場合には、前記目標回転数変更制限制御を実行しないことを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
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