JP2018114945A - 車両用空気調和装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】加熱装置の出力制限制御を行う車両用空気調和装置において、車室内に吹き出される空気の温度の変動を抑制する。
【解決手段】HVACユニット10の空気流通路3に設けた加熱装置(補助ヒータ23)により車室内に供給される空気を加熱する。制御装置のヒートポンプコントローラは、補助ヒータ温度センサが検出する加熱装置の温度Thtrが所定の制限閾値以上となった場合、加熱装置の発熱を制御する出力値TGQhtrを制限する出力制限制御を実行すると共に、この出力制限制御で制限される出力値TGQhtrに所定の下限リミット値LimLを設定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両の車室内を空調する車両用空気調和装置、特に電気ヒータ等の加熱装置を冷媒回路による暖房の補助として、若しくは、当該加熱装置を主として用いて車室内に供給する空気を加熱する車両用空気調和装置に関するものである。
近年の環境問題の顕在化から、ハイブリッド自動車や電気自動車が普及するに至っている。そして、このような車両に適用することができる空気調和装置として、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、HVACユニットの空気流通路に設けられて冷媒を放熱させる放熱器と、空気流通路に設けられて冷媒を吸熱させる吸熱器と、車室外に設けられて冷媒を放熱若しくは吸熱させる室外熱交換器等から構成される冷媒回路を備え、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器において放熱させ、室内送風機から送給される空気を加熱して車室内を暖房するものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
また、特許文献1では電気ヒータから成る補助ヒータ(加熱装置)を空気流通路に設け、冷媒回路の放熱器による暖房に加えて補助ヒータによっても暖房能力が発揮されるように構成していた。更に、係る冷媒回路の放熱器による暖房を行わず(例えば、冷媒回路は冷房のみ)、暖房はバッテリから給電される補助ヒータ(加熱装置)のみで行うものもある。
ここで、内部に前記空気流通路が構成されるHVACユニットは、通常硬質樹脂にて成形されている。そのため、補助ヒータ(加熱装置)に通電して発熱させるとき、過剰に補助ヒータの温度が上昇すると、補助ヒータの熱でHVACユニット(空気流通路)が変形や溶損を来す可能性がある。
そこで、従来よりこの種車両用空気調和装置では、補助ヒータ(加熱装置)の発熱を制御する目標補助ヒータ出力値TGQhtrを制限する出力制限制御が行われる。この出力制限制御は、例えば補助ヒータ(加熱装置)の温度を検出する複数の補助ヒータ温度センサのうちの最も高い温度を検出している補助ヒータ温度センサの検出値が上昇して、所定の制限閾値に到達した場合に開始され、コントローラが補助ヒータの発熱を制御する目標補助ヒータ出力値TGQhtrを所定値だけ下げる。
その後、当該最も高い温度を検出している補助ヒータ温度センサの検出値が制限閾値以上である間、所定値ずつ出力値を下げていくことで、補助ヒータの少なくとも一部の温度が異常に上昇して、HVACユニットが変形してしまうことを防止するものであった。
図10は係る補助ヒータの制御に関する従来のコントローラの制御ブロック図を示し、図11は従来のコントローラによる補助ヒータの出力制限制御を説明するフローチャートを示す。図10の必要能力演算部101では、車室内に吹き出される空気の温度の目標値である目標吹出温度TAOと、HVACユニットの空気流通路に流入した空気の体積風量Gaと、吸熱器温度Teから補助ヒータの必要暖房能力を演算する。この必要能力演算部101で算出された必要暖房能力は、目標温度演算部102に入力され、目標温度演算部102は補助ヒータの目標補助ヒータ温度THOを演算する。
この目標温度演算部102で算出された目標補助ヒータ温度THOは、次に目標出力値演算部103に入力される。この目標出力値演算部103では、吸熱器温度Te、体積風量Ga、目標補助ヒータ温度THO、及び、補助ヒータ温度Thtrに基づく計算式:TGQhtr=f(Te、Ga、THO、Thtr)により、目標補助ヒータ温度THOが目標電力(出力)に変換され、目標補助ヒータ出力値TGQhtrとして出力される(出力制限前)。尚、補助ヒータ温度Thtrは補助ヒータの温度を検出する前述した複数の補助ヒータ温度センサの検出値の平均値であり、コントローラが実行する上記計算式による演算では、目標補助ヒータ温度THOと補助ヒータ温度Thtrとの差に基づくフィードバック演算に、吸熱器温度Teと体積風量Gaによる影響が加味された演算となる。
次に、この目標補助ヒータ出力値TGQhtrは出力制限制御部104に入力され、ここで前述した出力制限制御が行われる。従来の出力制限制御では図11のステップS51で前述した複数の補助ヒータ温度センサのうちの最も高い温度を検出している補助ヒータ温度センサの検出値(最高補助ヒータ温度ThtrMAX)が所定の制限閾値(例えば+70℃)以上か否か判断し、制限閾値以上となっている場合はステップS55に進み、制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrが制御上の出力下限値(それ以下では制御ができなくなる下限値)となっているか否か判断し、出力下限値となっている場合にはステップS57に進んで目標補助ヒータ出力値TGQhtrを出力下限値とする。
ステップS55で制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrが制御上の出力下限値となっていない場合、ステップS56に進んで制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrを前回値−所定値とする。この制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrが図10における目標補助ヒータ出力値TGQhtr(出力制限後)として出力される。以後、これを繰り返し、ステップS51で最高補助ヒータ温度ThtrMAXが制限閾値以上である場合、目標補助ヒータ出力値TGQhtrは出力下限値となるまで所定値ずつ下げていく(出力制限中)。
係る補助ヒータの出力制限制御で最高補助ヒータ温度ThtrMAXが制限閾値より低くなった場合、ステップS51からステップS52に進むようになる。このステップS52では制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrが目標出力値演算部103から出力される目標補助ヒータ出力値TGQhtr(出力制限前)以上か否か判断し、制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrが目標補助ヒータ出力値TGQhtr(出力制限前)より小さい場合には、ステップS53に進んで制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrを前回値+所定値とする。以後、これを繰り返し、ステップS52で制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrが目標補助ヒータ出力値TGQhtr(出力制限前)以上となるまで制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrを所定値ずつ上げていく。
そして、ステップS52で制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrが目標補助ヒータ出力値TGQhtr(出力制限前)以上となった場合、ステップS54に進んで制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrを目標補助ヒータ出力値TGQhtr(出力制限前)とする(通常制御)。このような出力制限制御によって、空気流通路を構成するHVACユニット(空気流通路を構成する部材)が補助ヒータの異常な温度上昇によって変形してしまう不都合を防止するものであった。
特開2014−213765号公報
しかしながら、補助ヒータの温度を検出する補助ヒータ温度センサには応答遅れがあるため、最高補助ヒータ温度ThtrMAXが制限閾値より低くなって出力制限制御が終了するころには、制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrを下げ過ぎた状態となってしまう。この様子を図12で説明する。図12中のL1は補助ヒータ温度Thtr(複数の補助ヒータ温度センサの検出値の平均値)、L2は最高補助ヒータ温度ThtrMAX(複数の補助ヒータ温度センサのうち最も高い温度を検出している補助ヒータ温度センサの検出値)、L3は目標補助ヒータ出力値TGQhtrの推移をそれぞれ示している。
尚、図12中に制限閾値(+70℃)を示しているが、その上の+90℃に示した保護閾値まで最高補助ヒータ温度ThtrMAXが上昇した場合には、補助ヒータの通電が断たれることになる。
この図12に示されるように、最高補助ヒータ温度ThtrMAXが制限閾値以上となると、補助ヒータ(加熱装置)の目標補助ヒータ出力値TGQhtr(出力制限後)が所定値ずつ段階的に下げられていき(出力制限中)、その後、最高補助ヒータ温度ThtrMAXが制限閾値より低くなると、補助ヒータの目標補助ヒータ出力値TGQhtr(出力制限後)が所定値ずつ上げられていくが(通常制御)、前述した如く補助ヒータの温度を検出する補助ヒータ温度センサの応答が遅いために、最高補助ヒータ温度ThtrMAXが大きく変動し、出力制限中の目標補助ヒータ出力値TGQhtrの低下と、通常制御による目標補助ヒータ出力値TGQhtrの上昇が繰り返されるかたちとなって、補助ヒータ温度Thtrと車室内に吹き出される空気の温度が大きく変動してしまうと云う問題があった。
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、加熱装置の出力制限制御を行う車両用空気調和装置において、車室内に吹き出される空気の温度の変動を抑制することを目的とする。
本発明の車両用空気調和装置は、車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、この空気流通路に設けられ、車室内に供給される空気を加熱する加熱装置と、この加熱装置の温度を検出する温度センサと、この温度センサの出力に基づき、加熱装置の発熱を制御する制御装置を備え、加熱装置により車室内に供給される空気を加熱するものであって、制御装置は、温度センサが検出する加熱装置の温度Thtrが所定の制限閾値以上となった場合、加熱装置の発熱を制御する出力値TGQhtrを制限する出力制限制御を実行すると共に、この出力制限制御で制限される出力値TGQhtrに所定の下限リミット値LimLを設定することを特徴とする。
請求項2の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において温度センサを複数備え、制御装置は、複数の温度センサのうちの最も高い温度を検出している温度センサの検出値である加熱装置の最高温度ThtrMAXが上昇して制限閾値に到達した場合に出力制限制御に入り、出力値TGQhtrを所定値低下させ、以後、加熱装置の最高温度ThtrMAXが制限閾値以上である間、所定値ずつ出力値TGQhtrを低下させていくと共に、下限リミット値LimLにおいて出力値TGQhtrの低下を終了することを特徴とする。
請求項3の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において制御装置は、加熱装置の温度の目標値THOに基づいて出力値TGQhtrを算出し、出力制限制御では算出された出力値TGQhtrを制限すると共に、目標値THOを基準として下限リミット値LimLを設定することを特徴とする。
請求項4の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において制御装置は、加熱装置に流入する空気の温度、及び/又は、空気流通路に流入した空気の体積風量Gaに応じて下限リミット値LimLを変更することを特徴とする。
請求項5の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において制御装置は、加熱装置に流入する空気の温度が高い程、又は、体積風量Gaが小さい程、下げる方向で下限リミット値LimLを変更することを特徴とする。
請求項6の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において冷媒を圧縮する圧縮機と、空気流通路に設けられ、冷媒を放熱させて車室内に供給される空気を加熱する放熱器と、空気流通路に設けられ、冷媒を吸熱させて車室内に供給される空気を冷却する吸熱器を有する冷媒回路を備え、加熱装置は、冷媒回路の補助加熱装置として空気流通路に設けられることを特徴とする。
本発明によれば、車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、この空気流通路に設けられ、車室内に供給される空気を加熱する加熱装置と、この加熱装置の温度を検出する温度センサと、この温度センサの出力に基づき、加熱装置の発熱を制御する制御装置を備え、加熱装置により車室内に供給される空気を加熱する車両用空気調和装置において、制御装置が、温度センサが検出する加熱装置の温度Thtrが所定の制限閾値以上となった場合、加熱装置の発熱を制御する出力値TGQhtrを制限する出力制限制御を実行すると共に、この出力制限制御で制限される出力値TGQhtrに所定の下限リミット値LimLを設定するようにしたので、加熱装置の温度Thtrが制限閾値以上となって出力制限制御が行われる状況においても、加熱装置の発熱を制御する出力値TGQhtrが必要以上に下げられてしまう不都合を解消することができるようになる。
これにより、加熱装置の温度を検出する温度センサの応答遅れに起因して、車室内に供給される空気の温度が大きく変動する不都合を未然に防止し、安定した車室内空調を実現することができるようになる。
また、請求項2の発明の如く加熱装置の温度を検出する温度センサが複数設けられている場合、制御装置が、複数の温度センサのうちの最も高い温度を検出している温度センサの検出値である加熱装置の最高温度ThtrMAXが上昇して制限閾値に到達した場合に出力制限制御に入り、出力値TGQhtrを所定値低下させ、以後、加熱装置の最高温度ThtrMAXが制限閾値以上である間、所定値ずつ出力値TGQhtrを低下させていくと共に、下限リミット値LimLにおいて出力値TGQhtrの低下を終了するようにすることで、加熱装置の異常温度上昇によって空気流通路を構成する部材が変形等してしまう不都合を効果的に回避しながら、車室内に供給される空気の温度変動を抑制して、安定した車室内空調を実現することができるようになる。
この場合、請求項3の発明の如く制御装置が、加熱装置の温度の目標値THOに基づいて出力値TGQhtrを算出し、出力制限制御では算出された当該出力値TGQhtrを制限するようにすると共に、下限リミット値LimLは目標値THOを基準として設定するようにすれば、下限リミット値LimLは出力制限制御で制限される前の加熱装置の温度の目標値THOに基づいて設定されることになる。
これにより、下限リミット値LimLは加熱装置の出力制限制御に影響されることが無くなる。そして、下限リミット値LimLは加熱装置の温度の目標値THOを基準として設定するので、暖房に必要な加熱装置の温度に応じて適切に下限リミット値LimLを設定し、快適な車室内空調を実現することができるようになる。
更に、請求項4の発明の如く加熱装置に流入する空気の温度、及び/又は、空気流通路に流入した空気の体積風量Gaに応じて下限リミット値LimLを変更するようにすれば、例えば、請求項5の発明の如く加熱装置に流入する空気の温度が高い程、又は、体積風量Gaが小さい程、下げる方向で下限リミット値LimLを変更することで、環境条件に応じて、より適切に下限リミット値LimLを設定し、出力制限制御と安定した車室内空調を的確に実現することができるようになる。
そして、以上の発明は請求項6の発明の如く冷媒を圧縮する圧縮機と、空気流通路に設けられ、冷媒を放熱させて車室内に供給される空気を加熱する放熱器と、空気流通路に設けられ、冷媒を吸熱させて車室内に供給される空気を冷却する吸熱器を有する冷媒回路を備えた車両用空気調和装置において、加熱装置が冷媒回路の補助加熱装置として空気流通路に設けられる場合に、特に好適なものとなる。
本発明を適用した一実施形態の車両用空気調和装置の構成図である。 図1の車両用空気調和装置の制御装置のブロック図である。 図1の車両用空気調和装置の空気流通路の模式図である。 図2のヒートポンプコントローラの暖房モードにおける圧縮機制御に関する制御ブロック図である。 図2のヒートポンプコントローラの除湿暖房モードにおける圧縮機制御に関する制御ブロック図である。 図2のヒートポンプコントローラの補助ヒータ(加熱装置、補助加熱装置)制御に関する制御ブロック図である。 図2のヒートポンプコントローラによる補助ヒータの出力制限制御を説明するフローチャートである。 図7の出力制限制御における補助ヒータ温度Thtrと、最高補助ヒータ温度ThtrMAXと、目標補助ヒータ出力値TGQhtrの推移を示す図である。 本発明の他の実施例の車両用空気調和装置の構成図である。 従来の補助ヒータの制御に関する制御ブロック図である。 従来の補助ヒータの出力制限制御を説明するフローチャートである。 図11の出力制限制御における補助ヒータ温度Thtrと、最高補助ヒータ温度ThtrMAXと、目標補助ヒータ出力値TGQhtrの推移を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例の車両用空気調和装置1の構成図を示している。本発明を適用する実施例の車両は、エンジン(内燃機関)が搭載されていない電気自動車(EV)であって、バッテリに充電された電力で走行用の電動モータを駆動して走行するものであり(何れも図示せず)、本発明の車両用空気調和装置1も、バッテリの電力で駆動されるものとする。
即ち、実施例の車両用空気調和装置1は、エンジン廃熱による暖房ができない電気自動車において、冷媒回路を用いたヒートポンプ運転により暖房モードを行い、更に、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード、MAX冷房モード(最大冷房モード)及び補助ヒータ単独モードの各運転モードを選択的に実行するものである。
尚、車両として電気自動車に限らず、エンジンと走行用の電動モータを供用する所謂ハイブリッド自動車にも本発明は有効であり、更には、エンジンで走行する通常の自動車にも適用可能であることは云うまでもない。
実施例の車両用空気調和装置1は、電気自動車の車室内の空調(暖房、冷房、除湿、及び、換気)を行うものであり、冷媒を圧縮する電動式の圧縮機2と、車室内空気が通気循環されるHVACユニット10に構成された空気流通路3内に設けられ、圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒が冷媒配管13Gを介して流入し、この冷媒を放熱させて車室内に供給する空気を加熱するための放熱器4と、暖房時に冷媒を減圧膨張させる電動弁から成る室外膨張弁6(減圧装置)と、車室外に設けられて冷房時には放熱器として機能し、暖房時には蒸発器として機能すべく冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器7と、冷媒を減圧膨張させる電動弁から成る室内膨張弁8(減圧装置)と、空気流通路3内に設けられ、冷房時及び除湿時に冷媒を吸熱させて車室内外から吸い込んで車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器9と、アキュムレータ12等が冷媒配管13により順次接続され、冷媒回路Rが構成されている。
そして、この冷媒回路Rには所定量の冷媒と潤滑用のオイルが充填されている。尚、室外熱交換器7には、室外送風機15が設けられている。この室外送風機15は、室外熱交換器7に外気を強制的に通風することにより、外気と冷媒とを熱交換させるものであり、これにより停車中(即ち、車速が0km/h)にも室外熱交換器7に外気が通風されるよう構成されている。
また、室外熱交換器7は冷媒下流側にレシーバドライヤ部14と過冷却部16を順次有し、室外熱交換器7から出た冷媒配管13Aは冷房時に開放される電磁弁17を介してレシーバドライヤ部14に接続され、過冷却部16の出口側の冷媒配管13Bは室内膨張弁8介して吸熱器9の入口側に接続されている。尚、レシーバドライヤ部14及び過冷却部16は構造的に室外熱交換器7の一部を構成している。
また、過冷却部16と室内膨張弁8間の冷媒配管13Bは、吸熱器9の出口側の冷媒配管13Cと熱交換関係に設けられ、両者で内部熱交換器19を構成している。これにより、冷媒配管13Bを経て室内膨張弁8に流入する冷媒は、吸熱器9を出た低温の冷媒により冷却(過冷却)される構成とされている。
また、室外熱交換器7から出た冷媒配管13Aは冷媒配管13Dに分岐しており、この分岐した冷媒配管13Dは、暖房時に開放される電磁弁21を介して内部熱交換器19の下流側における冷媒配管13Cに連通接続されている。この冷媒配管13Cがアキュムレータ12に接続され、アキュムレータ12は圧縮機2の冷媒吸込側に接続されている。更に、放熱器4の出口側の冷媒配管13Eは室外膨張弁6を介して室外熱交換器7の入口側に接続されている。
また、圧縮機2の吐出側と放熱器4の入口側の間の冷媒配管13Gには後述する除湿暖房とMAX冷房時に閉じられる電磁弁30(流路切換装置を構成する)が介設されている。この場合、冷媒配管13Gは電磁弁30の上流側でバイパス配管35に分岐しており、このバイパス配管35は除湿暖房とMAX冷房時に開放される電磁弁40(これも流路切換装置を構成する)を介して室外膨張弁6の下流側の冷媒配管13Eに連通接続されている。これらバイパス配管35、電磁弁30及び電磁弁40によりバイパス装置45が構成される。
このようなバイパス配管35、電磁弁30及び電磁弁40によりバイパス装置45を構成したことで、後述する如く圧縮機2から吐出された冷媒を室外熱交換器7に直接流入させる除湿暖房モードやMAX冷房モードと、圧縮機2から吐出された冷媒を放熱器4に流入させる暖房モードや除湿冷房モード、冷房モードとの切り換えを円滑に行うことができるようになる。
また、吸熱器9の空気上流側における空気流通路3には、外気吸込口と内気吸込口の各吸込口が形成されており(図1では吸込口25で代表して示す)、この吸込口25には空気流通路3内に導入する空気を車室内の空気である内気(内気循環モード)と、車室外の空気である外気(外気導入モード)とに切り換える吸込切換ダンパ26が設けられている。更に、この吸込切換ダンパ26の空気下流側には、導入した内気や外気を空気流通路3に送給するための室内送風機(ブロワファン)27が設けられている。
また、図1において23は加熱装置の実施例として車両用空気調和装置1に設けられた補助加熱装置を構成する補助ヒータである。実施例の補助ヒータ23はPTCヒータ(電気ヒータ)にて構成されており、空気流通路3の空気の流れに対して、放熱器4の風上側(空気上流側)となる空気流通路3内に設けられている。そして、補助ヒータ23に通電されて発熱すると、吸熱器9を経て放熱器4に流入する空気流通路3内の空気が加熱される。即ち、この補助ヒータ23が所謂ヒータコアとなり、車室内の暖房を行い、或いは、それを補完する。
ここで、HVACユニット10の吸熱器9より風下側(空気下流側)の空気流通路3は仕切壁10Aにより区画され、暖房用熱交換通路3Aとそれをバイパスするバイパス通路3Bとが形成されており、前述した放熱器4と補助ヒータ23は暖房用熱交換通路3Aに配置されている。
また、補助ヒータ23の風上側における空気流通路3内には、当該空気流通路3内に流入し、吸熱器9を通過した後の空気流通路3内の空気(内気や外気)を、補助ヒータ23及び放熱器4が配置された暖房用熱交換通路3Aに通風する割合を調整するエアミックスダンパ28が設けられている。
更に、放熱器4の風下側におけるHVACユニット10には、FOOT(フット)吹出口29A(第1の吹出口)、VENT(ベント)吹出口29B(FOOT吹出口29Aに対しては第2の吹出口、DEF吹出口29Cに対しては第1の吹出口)、DEF(デフ)吹出口29C(第2の吹出口)の各吹出口が形成されている。FOOT吹出口29Aは車室内の足下に空気を吹き出すための吹出口で、最も低い位置にある。また、VENT吹出口29Bは車室内の運転者の胸や顔付近に空気を吹き出すための吹出口で、FOOT吹出口29Aより上方にある。そして、DEF吹出口29Cは車両のフロントガラス内面に空気を吹き出すための吹出口で、他の吹出口29A、29Bよりも上方の最も高い位置にある。
そして、FOOT吹出口29A、VENT吹出口29B、及び、DEF吹出口29Cには、空気の吹き出し量を制御するFOOT吹出口ダンパ31A、VENT吹出口ダンパ31B、及び、DEF吹出口ダンパ31Cがそれぞれ設けられている。
次に、図2は実施例の車両用空気調和装置1の制御装置11のブロック図を示している。制御装置11は、何れもプロセッサを備えたコンピュータの一例であるマイクロコンピュータから構成された空調コントローラ20及びヒートポンプコントローラ32から構成されており、これらがCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)を構成する車両通信バス65に接続されている。また、圧縮機2と補助ヒータ23も車両通信バス65に接続され、これら空調コントローラ20、ヒートポンプコントローラ32、圧縮機2及び補助ヒータ23が車両通信バス65を介してデータの送受信を行うように構成されている。
空調コントローラ20は、車両の車室内空調の制御を司る上位のコントローラであり、この空調コントローラ20の入力には、車両の外気温度Tamを検出する外気温度センサ33と、外気湿度を検出する外気湿度センサ34と、吸込口25から空気流通路3に吸い込まれて吸熱器9に流入する空気の温度(吸込空気温度Tas)を検出するHVAC吸込温度センサ36と、車室内の空気(内気)の温度(室内温度Tin)を検出する内気温度センサ37と、車室内の空気の湿度を検出する内気湿度センサ38と、車室内の二酸化炭素濃度を検出する室内CO2濃度センサ39と、車室内に吹き出される空気の温度を検出する吹出温度センサ41と、圧縮機2の吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力センサ42と、車室内への日射量を検出するための例えばフォトセンサ式の日射センサ51と、車両の移動速度(車速)を検出するための車速センサ52の各出力と、設定温度や運転モードの切り換えを設定するための空調(エアコン)操作部53が接続されている。
また、空調コントローラ20の出力には、室外送風機15と、室内送風機(ブロワファン)27と、吸込切換ダンパ26と、エアミックスダンパ28と、各吹出口ダンパ31A〜31Cが接続され、それらは空調コントローラ20により制御される。
ヒートポンプコントローラ32は、主に冷媒回路Rの制御を司るコントローラであり、このヒートポンプコントローラ32の入力には、圧縮機2の吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ43と、圧縮機2の吸込冷媒圧力Psを検出する吸込圧力センサ44と、圧縮機2の吸込冷媒温度Tsを検出する吸込温度センサ55と、放熱器4の冷媒温度(放熱器温度TCI)を検出する放熱器温度センサ46と、放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力PCI)を検出する放熱器圧力センサ47と、吸熱器9の冷媒温度(吸熱器温度Te)を検出する吸熱器温度センサ48と、吸熱器9の冷媒圧力を検出する吸熱器圧力センサ49と、補助ヒータ23の温度を検出する複数(実施例では四個)の補助ヒータ温度センサ50D、50A、68D、68Aと、室外熱交換器7の出口の冷媒温度(室外熱交換器温度TXO)を検出する室外熱交換器温度センサ54と、室外熱交換器7の出口の冷媒圧力(室外熱交換器圧力PXO)を検出する室外熱交換器圧力センサ56の各出力が接続されている。
上記補助ヒータ温度センサ50Dは、実施例では補助ヒータ23の運転席側に吹き出される空気が流通する部分の中央寄りの位置に取り付けられ、補助ヒータ温度センサ68Dは同じく補助ヒータ23の運転席側に吹き出される空気が流通する部分の周辺寄りの位置に取り付けられている。一方、補助ヒータ温度センサ50Aは、補助ヒータ23の助手席側に吹き出される空気が流通する部分の中央寄りの位置に取り付けられ、補助ヒータ温度センサ68Aは同じく補助ヒータ23の助手席側に吹き出される空気が流通する部分の周辺寄りの位置に取り付けられ、各補助ヒータ温度センサ50D、68D、50A、68Aは、それぞれが取り付けられた部分の補助ヒータ23の温度を検出してヒートポンプコントローラ32に出力する。
また、ヒートポンプコントローラ32の出力には、室外膨張弁6、室内膨張弁8と、電磁弁30(リヒート用)、電磁弁17(冷房用)、電磁弁21(暖房用)、電磁弁40(バイパス用)の各電磁弁が接続され、それらはヒートポンプコントローラ32により制御される。尚、圧縮機2と補助ヒータ23はそれぞれコントローラを内蔵しており、圧縮機2と補助ヒータ23のコントローラは車両通信バス65を介してヒートポンプコントローラ32とデータの送受信を行い、このヒートポンプコントローラ32によって制御される。
ヒートポンプコントローラ32と空調コントローラ20は車両通信バス65を介して相互にデータの送受信を行い、各センサの出力や空調操作部53にて入力された設定に基づき、各機器を制御するものであるが、この場合の実施例では外気温度センサ33、吐出圧力センサ42、車速センサ52、空気流通路3に流入した空気の体積風量Ga(空調コントローラ20が算出)、エアミックスダンパ28による風量割合SW(空調コントローラ20が算出)、空調操作部53の出力は空調コントローラ20から車両通信バス65を介してヒートポンプコントローラ32に送信され、ヒートポンプコントローラ32による制御に供される構成とされている。
以上の構成で、次に実施例の車両用空気調和装置1の動作を説明する。この実施例では制御装置11(空調コントローラ20、ヒートポンプコントローラ32)は、暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード、MAX冷房モード(最大冷房モード)及び補助ヒータ単独モードの各運転モードを切り換えて実行する。先ず、各運転モードにおける冷媒の流れと制御の概略について説明する。
(1)暖房モード
ヒートポンプコントローラ32により(オートモード)或いは空調操作部53へのマニュアル操作(マニュアルモード)により暖房モードが選択されると、ヒートポンプコントローラ32は電磁弁21(暖房用)を開放し、電磁弁17(冷房用)を閉じる。また、電磁弁30(リヒート用)を開放し、電磁弁40(バイパス用)を閉じる。そして、圧縮機2を運転する。空調コントローラ20は各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は、基本的には室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の全て空気を暖房用熱交換通路3Aの補助ヒータ23及び放熱器4に通風する状態とするが、風量を調整してもよい。
これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は電磁弁30を経て冷媒配管13Gから放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒(補助ヒータ23が動作するときは当該補助ヒータ23及び放熱器4)により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化する。
放熱器4内で液化した冷媒は当該放熱器4を出た後、冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至る。室外膨張弁6に流入した冷媒はそこで減圧された後、室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒は蒸発し、走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気中から熱を汲み上げる。即ち、冷媒回路Rがヒートポンプとなる。そして、室外熱交換器7を出た低温の冷媒は冷媒配管13A及び電磁弁21及び冷媒配管13Dを経て冷媒配管13Cからアキュムレータ12に入り、そこで気液分離された後、ガス冷媒が圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。放熱器4(補助ヒータ23が動作するときは当該補助ヒータ23及び放熱器4)にて加熱された空気は各吹出口29A〜29Cから吹き出されるので、これにより車室内の暖房が行われることになる。
ヒートポンプコントローラ32は、空調コントローラ20が目標吹出温度TAOから算出する目標ヒータ温度TCO(放熱器温度TCIの目標値。基本的にTAO=TCO)から目標放熱器圧力PCO(放熱器圧力PCIの目標値)を算出し、この目標放熱器圧力PCOと、放熱器圧力センサ47が検出する放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力PCI。冷媒回路Rの高圧圧力)に基づいて圧縮機2の回転数NCを制御し、放熱器4による加熱を制御する。また、ヒートポンプコントローラ32は、放熱器温度センサ46が検出する放熱器4の冷媒温度(放熱器温度TCI)及び放熱器圧力センサ47が検出する放熱器圧力PCIに基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御し、放熱器4の出口における冷媒の過冷却度SCを制御する。
また、ヒートポンプコントローラ32はこの暖房モードにおいては、車室内空調に要求される暖房能力に対して放熱器4による暖房能力が不足する場合、その不足する分を補助ヒータ23の発熱で補完するように補助ヒータ23の通電を制御する。この場合、ヒートポンプコントローラ32は、各補助ヒータ温度センサ50D、68D、50A、68Aが検出する温度(検出値)の平均値を補助ヒータ温度Thtrとし、この補助ヒートポンプ温度Thtrと目標補助ヒータ温度THO(暖房能力の不足分から算出される補助ヒータ温度Thtrの目標値)に基づいて補助ヒータ23の通電を制御する。この目標補助ヒータ温度THOの算出については後に詳述する。
このような放熱器4と補助ヒータ23の協調制御により、快適な車室内暖房を実現し、且つ、室外熱交換器7の着霜も抑制する。このとき、補助ヒータ23は放熱器4の空気上流側に配置されているので、空気流通路3を流通する空気は放熱器4の前に補助ヒータ23に通風されることになる。
ここで、補助ヒータ23が放熱器4の空気下流側に配置されていると、実施例の如くPTCヒータで補助ヒータ23を構成した場合には、補助ヒータ23に流入する空気の温度が放熱器4によって上昇するため、PTCヒータの抵抗値が大きくなり、電流値も低くなって発熱量が低下してしまうが、放熱器4の空気上流側に補助ヒータ23を配置することで、実施例の如くPTCヒータから構成される補助ヒータ23の能力を十分に発揮させることができるようになる。
(2)除湿暖房モード
次に、除湿暖房モードでは、ヒートポンプコントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21を閉じる。また、電磁弁30を閉じ、電磁弁40を開放すると共に、室外膨張弁6の弁開度は全閉とする。そして、圧縮機2を運転する。空調コントローラ20は各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は、基本的には室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の全て空気を暖房用熱交換通路3Aの補助ヒータ23及び放熱器4に通風する状態とするが、風量の調整も行う。
これにより、圧縮機2から冷媒配管13Gに吐出された高温高圧のガス冷媒は、放熱器4に向かうこと無くバイパス配管35に流入し、電磁弁40を経て室外膨張弁6の下流側の冷媒配管13Eに至るようになる。このとき、室外膨張弁6は全閉とされているので、冷媒は室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気は冷却され、且つ、当該空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気流通路3内の空気は冷却され、且つ、除湿される。吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。
このとき、室外膨張弁6の弁開度は全閉とされているので、圧縮機2から吐出された冷媒が室外膨張弁6から放熱器4に逆流入する不都合を抑制若しくは防止することが可能となる。これにより、冷媒循環量の低下を抑制若しくは解消して空調能力を確保することができるようになる。更に、この除湿暖房モードにおいてヒートポンプコントローラ32は、補助ヒータ23に通電して発熱させる。これにより、吸熱器9にて冷却され、且つ、除湿された空気は補助ヒータ23を通過する過程で更に加熱され、温度が上昇するので車室内の除湿暖房が行われることになる。
ヒートポンプコントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)と、空調コントローラ20が算出する吸熱器温度Teの目標値である目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機2の回転数NCを制御すると共に、前述した各補助ヒータ温度センサ50D、68D、50A、68Aが検出する温度の平均値である補助ヒータ温度Thtrと前述した目標ヒータ温度TCO(TCO=TAO)から算出される目標補助ヒータ温度THOに基づいて補助ヒータ23の通電(発熱による加熱)を制御することで、吸熱器9での空気の冷却と除湿を適切に行いながら、補助ヒータ23による加熱で各吹出口29A〜29Cから車室内に吹き出される空気温度の低下を的確に防止する。この目標補助ヒータ温度THOの算出についても後に詳述する。
これにより、車室内に吹き出される空気を除湿しながら、その温度を適切な暖房温度に制御することが可能となり、車室内の快適且つ効率的な除湿暖房を実現することができるようになる。
尚、補助ヒータ23は放熱器4の空気上流側に配置されているので、補助ヒータ23で加熱された空気は放熱器4を通過することになるが、この除湿暖房モードでは放熱器4に冷媒は流されないので、補助ヒータ23にて加熱された空気から放熱器4が吸熱してしまう不都合も解消される。即ち、放熱器4によって車室内に吹き出される空気の温度が低下してしまうことが抑制され、COPも向上することになる。
(3)除湿冷房モード
次に、除湿冷房モードでは、ヒートポンプコントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21を閉じる。また、電磁弁30を開放し、電磁弁40を閉じる。そして、圧縮機2を運転する。空調コントローラ20は各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は、基本的には室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の全て空気を暖房用熱交換通路3Aの補助ヒータ23及び放熱器4に通風する状態とするが、風量の調整も行う。
これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は電磁弁30を経て冷媒配管13Gから放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化していく。
放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至り、開き気味で制御される室外膨張弁6を経て室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。この除湿冷房モードではヒートポンプコントローラ32は補助ヒータ23に通電しないので、吸熱器9にて冷却され、除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱(暖房時よりも放熱能力は低い)される。これにより車室内の除湿冷房が行われることになる。
ヒートポンプコントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)とその目標値である目標吸熱器温度TEO(空調コントローラ20から送信される)に基づいて圧縮機2の回転数NCを制御する。また、ヒートポンプコントローラ32は前述した目標ヒータ温度TCOから目標放熱器圧力PCOを算出し、この目標放熱器圧力PCOと、放熱器圧力センサ47が検出する放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力PCI。冷媒回路Rの高圧圧力)に基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御し、放熱器4による加熱を制御する。
(4)冷房モード
次に、冷房モードでは、ヒートポンプコントローラ32は上記除湿冷房モードの状態において室外膨張弁6の弁開度を全開とする。そして、圧縮機2を運転し、補助ヒータ23には通電しない。空調コントローラ20は各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の空気が、暖房用熱交換通路3Aの補助ヒータ23及び放熱器4に通風される割合を調整する状態とする。
これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は電磁弁30を経て冷媒配管13Gから放熱器4に流入すると共に、放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至る。このとき室外膨張弁6は全開とされているので冷媒はそれを通過し、そのまま室外熱交換器7に流入し、そこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮液化する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気は冷却される。また、空気中の水分は吸熱器9に凝結して付着する。
吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて冷却され、除湿された空気が各吹出口29A〜29Cから車室内に吹き出されるので(一部は放熱器4を通過して熱交換する)、これにより車室内の冷房が行われることになる。また、この冷房モードにおいては、ヒートポンプコントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)とその目標値である前述した目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機2の回転数NCを制御する。
(5)MAX冷房モード(最大冷房モード)
次に、最大冷房モードとしてのMAX冷房モードでは、ヒートポンプコントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21を閉じる。また、電磁弁30を閉じ、電磁弁40を開放すると共に、室外膨張弁6の弁開度は全閉とする。そして、圧縮機2を運転し、補助ヒータ23には通電しない。空調コントローラ20は、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の空気が、暖房用熱交換通路3Aの補助ヒータ23及び放熱器4に通風される割合を調整する状態とする。
これにより、圧縮機2から冷媒配管13Gに吐出された高温高圧のガス冷媒は、放熱器4に向かうこと無くバイパス配管35に流入し、電磁弁40を経て室外膨張弁6の下流側の冷媒配管13Eに至るようになる。このとき、室外膨張弁6は全閉とされているので、冷媒は室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気は冷却される。また、空気中の水分は吸熱器9に凝結して付着するので、空気流通路3内の空気は除湿される。吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。このとき、室外膨張弁6は全閉とされているので、同様に圧縮機2から吐出された冷媒が室外膨張弁6から放熱器4に逆流入する不都合を抑制若しくは防止することが可能となる。これにより、冷媒循環量の低下を抑制若しくは解消して空調能力を確保することができるようになる。
ここで、前述した冷房モードでは放熱器4に高温の冷媒が流れているため、放熱器4からHVACユニット10への直接の熱伝導が少なからず生じるが、このMAX冷房モードでは放熱器4に冷媒が流れないため、放熱器4からHVACユニット10に伝達される熱で吸熱器9からの空気流通路3内の空気が加熱されることも無くなる。そのため、車室内の強力な冷房が行われ、特に外気温度Tamが高いような環境下では、迅速に車室内を冷房して快適な車室内空調を実現することができるようになる。また、このMAX冷房モードにおいても、ヒートポンプコントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)とその目標値である前述した目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機2の回転数NCを制御する。
(6)補助ヒータ単独モード
尚、実施例の制御装置11は室外熱交換器7に過着霜が生じた場合などに、冷媒回路Rの圧縮機2と室外送風機15を停止し、補助ヒータ23に通電してこの補助ヒータ23のみで車室内を暖房する補助ヒータ単独モードを有している。この場合にも、ヒートポンプコントローラ32は各補助ヒータ温度センサ50D、68D、50A、68Aが検出する温度の平均値である補助ヒータ温度Thtrと前述した目標ヒータ温度TCO(TCO=TAO)から算出される目標補助ヒータ温度THOに基づいて補助ヒータ23の通電(発熱による加熱)を制御する。この目標補助ヒータ温度THOの算出についても後に詳述する。
また、空調コントローラ20は室内送風機27を運転し、エアミックスダンパ28は、室内送風機27から吹き出された空気流通路3内の空気を暖房用熱交換通路3Aの補助ヒータ23に通風し、風量を調整する状態とする。補助ヒータ23にて加熱された空気が各吹出口29A〜29Cから車室内に吹き出されるので、これにより車室内の暖房が行われることになる。
(7)運転モードの切換
空調コントローラ20は、下記式(I)から前述した目標吹出温度TAOを算出する。この目標吹出温度TAOは、車室内に吹き出される空気の温度の目標値である。
TAO=(Tset−Tin)×K+Tbal(f(Tset、SUN、Tam))
・・(I)
ここで、Tsetは空調操作部53で設定された車室内の設定温度、Tinは内気温度センサ37が検出する室内温度、Kは係数、Tbalは設定温度Tsetや、日射センサ51が検出する日射量SUN、外気温度センサ33が検出する外気温度Tamから算出されるバランス値である。そして、一般的に、この目標吹出温度TAOは外気温度Tamが低い程高く、外気温度Tamが上昇するに伴って低下する。
ヒートポンプコントローラ32は、起動時には空調コントローラ20から車両通信バス65を介して送信される外気温度Tam(外気温度センサ33が検出する)と目標吹出温度TAOとに基づいて上記各運転モードのうちの何れかの運転モードを選択すると共に、各運転モードを車両通信バス65を介して空調コントローラ20に送信する。また、起動後は外気温度Tam、車室内の湿度、目標吹出温度TAO、後述する加熱温度TH(放熱器4の風下側の空気の温度。推定値)、目標ヒータ温度TCO、吸熱器温度Te、目標吸熱器温度TEO、車室内の除湿要求の有無、等のパラメータに基づいて各運転モードの切り換えを行うことで、環境条件や除湿の要否に応じて的確に暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード、MAX冷房モード及び補助ヒータ単独モードを切り換えて車室内に吹き出される空気の温度を目標吹出温度TAOに制御し、快適且つ効率的な車室内空調を実現するものである。
(8)ヒートポンプコントローラ32による暖房モードでの圧縮機2の制御
次に、図4を用いて前述した暖房モードにおける圧縮機2の制御について詳述する。図4は暖房モード用の圧縮機2の目標回転数(圧縮機目標回転数)TGNChを決定するヒートポンプコントローラ32の制御ブロック図である。ヒートポンプコントローラ32のF/F(フィードフォワード)操作量演算部58は外気温度センサ33から得られる外気温度Tamと、室内送風機27のブロワ電圧BLVと、SW=(TAO−Te)/(TH−Te)で得られるエアミックスダンパ28による風量割合SWと、放熱器4の出口における過冷却度SCの目標値である目標過冷却度TGSCと、放熱器4の温度の目標値である前述した目標ヒータ温度TCO(空調コントローラ20から送信される)と、放熱器4の圧力の目標値である目標放熱器圧力PCOに基づいて圧縮機目標回転数のF/F操作量TGNChffを演算する。
ここで、風量割合SWを算出する上記THは、放熱器4の風下側の空気の温度(以下、加熱温度と云う)であり、ヒートポンプコントローラ32が下記に示す一次遅れ演算の式(II)から推定する。
TH=(INTL×TH0+Tau×THz)/(Tau+INTL) ・・(II)
ここで、INTLは演算周期(定数)、Tauは一次遅れの時定数、TH0は一次遅れ演算前の定常状態における加熱温度THの定常値、THzは加熱温度THの前回値である。このように加熱温度THを推定することで、格別な温度センサを設ける必要がなくなる。
尚、ヒートポンプコントローラ32は前述した運転モードによって上記時定数Tau及び定常値TH0を変更することにより、上述した推定式(II)を運転モードによって異なるものとし、加熱温度THを推定する。そして、この加熱温度THは車両通信バス65を介して空調コントローラ20に送信される。
前記目標放熱器圧力PCOは上記目標過冷却度TGSCと目標ヒータ温度TCOに基づいて目標値演算部59が演算する。更に、F/B(フィードバック)操作量演算部60はこの目標放熱器圧力PCOと放熱器4の冷媒圧力である放熱器圧力PCIに基づいて圧縮機目標回転数のF/B操作量TGNChfbを演算する。そして、F/F操作量演算部58が演算したF/F操作量TGNCnffとF/B操作量演算部60が演算したTGNChfbは加算器61で加算され、リミット設定部62で制御上限値と制御下限値のリミットが付けられた後、圧縮機目標回転数TGNChとして決定される。前記暖房モードにおいては、ヒートポンプコントローラ32はこの圧縮機目標回転数TGNChに基づいて圧縮機2の回転数NCを制御する。
(9)ヒートポンプコントローラ32による除湿暖房モードでの圧縮機2の制御
一方、図5は前記除湿暖房モード用の圧縮機2の目標回転数(圧縮機目標回転数)TGNCcを決定するヒートポンプコントローラ32の制御ブロック図である。ヒートポンプコントローラ32のF/F操作量演算部63は外気温度Tamと、空気流通路3に流入した空気の体積風量Gaと、放熱器4の圧力(放熱器圧力PCI)の目標値である目標放熱器圧力PCOと、吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)の目標値である目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機目標回転数のF/F操作量TGNCcffを演算する。
また、F/B操作量演算部64は目標吸熱器温度TEO(空調コントローラ20から送信される)と吸熱器温度Teに基づいて圧縮機目標回転数のF/B操作量TGNCcfbを演算する。そして、F/F操作量演算部63が演算したF/F操作量TGNCcffとF/B操作量演算部64が演算したF/B操作量TGNCcfbは加算器66で加算され、リミット設定部67で制御上限値と制御下限値のリミットが付けられた後、圧縮機目標回転数TGNCcとして決定される。除湿暖房モードにおいては、ヒートポンプコントローラ32はこの圧縮機目標回転数TGNCcに基づいて圧縮機2の回転数NCを制御する。
(10)空調コントローラ20によるエアミックスダンパ28の制御
次に、図3を参照しながら空調コントローラ20によるエアミックスダンパ28の制御について説明する。図3においてGaは前述した空気流通路3に流入した空気の体積風量、Teは吸熱器温度、THは前述した加熱温度(放熱器4の風下側の空気の温度)である。
空調コントローラ20は、前述した如き式(下記式(III))により算出される暖房用熱交換通路3Aの放熱器4と補助ヒータ23に通風する風量割合SWに基づき、当該割合の風量となるようにエアミックスダンパ28を制御することで放熱器4(及び補助ヒータ23)への通風量を調整する。
SW=(TAO−Te)/(TH−Te) ・・(III)
即ち、暖房用熱交換通路3Aの放熱器4と補助ヒータ23に通風する風量割合SWは0≦SW≦1の範囲で変化し、「0」で暖房用熱交換通路3Aへの通風をせず、空気流通路3内の全ての空気をバイパス通路3Bに通風するエアミックス全閉状態、「1」で空気流通路3内の全ての空気を暖房用熱交換通路3Aに通風するエアミックス全開状態となる。即ち、放熱器4への風量はGa×SWとなる。
(11)ヒートポンプコントローラ32による暖房モード、除湿暖房モード及び補助ヒータ単独モードでの補助ヒータ23の制御
次に、図6〜図8を参照しながらヒートポンプコントローラ32による前述した暖房モード、除湿暖房モード及び補助ヒータ単独モードにおける補助ヒータ23の制御の詳細を説明する。図6は補助ヒータ23の制御に関するヒートポンプコントローラ32の制御ブロック図を示し、図7はヒートポンプコントローラ32による補助ヒータ23の出力制限制御を説明するフローチャートである。
図6の必要能力演算部71では、目標吹出温度TAOと、HVACユニットの空気流通路に流入した空気の体積風量Gaと、吸熱器温度Te(吸熱器温度Teは補助ヒータ23に流入する空気の温度)から補助ヒータ23による暖房に必要な能力(必要暖房能力)を演算する。この必要能力演算部71で算出された必要暖房能力は、目標温度演算部72に入力され、目標温度演算部72は補助ヒータ23の温度の目標値である目標補助ヒータ温度THOを演算する。
この目標温度演算部72で算出された目標補助ヒータ温度THOは、次に目標出力値演算部73に入力される。この目標出力値演算部73では、吸熱器温度Te、体積風量Ga、目標補助ヒータ温度THO、及び、補助ヒータ温度Thtr(各補助ヒータ温度センサ50D、68D、50A、68Aが検出する温度の平均値)に基づく計算式:TGQhtr=f(Te、Ga、THO、Thtr)により、目標補助ヒータ温度THOが目標電力(出力)に変換され、目標補助ヒータ出力値TGQhtrとして出力される(出力制限前)。
尚、ヒートポンプコントローラ32が実行する上記計算式による演算では、目標補助ヒータ温度THOと補助ヒータ温度Thtrとの差に基づくフィードバック演算に、吸熱器温度Teと体積風量Gaによる影響が加味された演算となる。この場合、目標補助ヒータ出力値TGQhtrは、体積風量Gaが大きい程、また、吸熱器温度Teが低い程、大きくなり、目標補助ヒータ温度THOが高い程、また、補助ヒータ温度Thtrが低い程、小さくなる。そして、この目標出力値演算部73で目標補助ヒータ温度THOに基づいて上記計算式により算出された目標補助ヒータ出力値TGQhtr(出力制限前)は出力制限制御部74に入力される。
一方、目標温度演算部72で算出された目標補助ヒータ温度THOは、更に減算器76に入力される。この減算器76には、この実施例では例えば20deg等の固定値とされた目標補助ヒータ温度THOの低減値REDが目標補助ヒータ温度THOから減算され、目標補助ヒータ温度THOの下限リミット値TlimLとして出力される。例えば目標温度演算部72で算出された目標補助ヒータ温度THOが+60℃であるとき、目標補助ヒータ温度THOの下限リミット値TlimLは20deg低減された+40℃となり、目標補助ヒータ温度THOが+50℃であるとき、目標補助ヒータ温度THOの下限リミット値TlimLは+30℃となる。
即ち、目標補助ヒータ温度THOの下限リミット値TlimLは、補助ヒータ23による暖房に必要とされる目標補助ヒータ温度THOと低減値REDの差を保って当該目標補助ヒータ温度THOと共に変動することになる。また、この目標補助ヒータ温度THOは後述する出力制限制御部74における出力制限制御が行われる前の情報(値)であるので、下限リミット値LimLも出力制限制御には影響されなくなる。
この目標補助ヒータ温度THOの下限リミット値TlimLはもう一つの目標出力値演算部77に入力される。この目標出力値演算部77では、吸熱器温度Te、体積風量Ga、目標補助ヒータ温度THOの下限リミット値TlimL、及び、補助ヒータ温度Thtr(各補助ヒータ温度センサ50D、68D、50A、68Aが検出する温度の平均値)に基づく計算式:TGQhtr=f(Te、Ga、TlimL、Thtr)により、目標補助ヒータ温度THOの下限リミット値TlimLが目標電力(出力)に変換され、目標補助ヒータ出力値TGQhtrの下限リミット値LimLとして出力される。このようなことから、下限リミット値LimLは目標補助ヒータ温度THOを基準とし、そこから低減値REDだけ下がった値を目標電力に変換した値として設定されることになる。
尚、この場合も上記計算式による演算では、目標補助ヒータ温度THOの下限リミット値TlimLと補助ヒータ温度Thtrとの差に基づくフィードバック演算に、吸熱器温度Teと体積風量Gaによる影響が加味された演算となる。また、この場合も目標補助ヒータ出力値TGQhtrの下限リミット値LimLは、体積風量Gaが大きい程、また、吸熱器温度Teが低い程、大きくなり、目標補助ヒータ温度THOの下限リミット値TlimLが高い程、また、補助ヒータ温度Thtrが低い程、小さくなる。そして、この目標出力値演算部77で算出された目標補助ヒータ出力値TGQhtrの下限リミット値LimLも出力制限制御部74に入力される。
この出力制限制御部74で出力制限制御が行われる。実施例の出力制限制御では図7のステップS1で前述した複数の補助ヒータ温度センサ50D、68D、50A、68Aのうちの最も高い温度を検出している補助ヒータ温度センサの検出値(最高補助ヒータ温度ThtrMAX)が所定の制限閾値(例えば+70℃)以上か否か判断し、制限閾値以上となっている場合はステップS5に進み、制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrが制御上の出力下限値(それ以下では制御ができなくなる下限値)となっているか否か判断し、出力下限値となっている場合にはステップS8に進んで目標補助ヒータ出力値TGQhtrを出力下限値とする。
ステップS5で制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrが制御上の出力下限値となっていない場合、ステップS6に進んで目標補助ヒータ出力値TGQhtrの下限リミット値LimLを演算する。この演算は前述した如く目標出力値演算部77で行われる。次に、ステップS7に進んで制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrを、目標補助ヒータ出力値TGQhtrの下限リミット値LimLか、制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrの前回値から所定値減算した値(前回値−所定値)のうちの大きい方(MAX)とする。
そして、この制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrが図6における目標補助ヒータ出力値TGQhtr(MAX後)として出力される。この目標補助ヒータ出力値TGQhtr(MAX後)が補助ヒータ23の発熱を制御する出力値となる。即ち、制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrの前回値から所定値減算した値(前回値−所定値)が目標補助ヒータ出力値TGQhtrの下限リミット値LimLより小さくなるまではこれを繰り返し、目標補助ヒータ出力値TGQhtrを所定値ずつ下げることで制限していく(出力制限中)。
他方、制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrの前回値から所定値減算した値(前回値−所定値)が目標補助ヒータ出力値TGQhtrの下限リミット値LimLより小さくなると、ステップS7で今度は目標補助ヒータ出力値TGQhtrの下限リミット値LimLが選択されて図6における制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtr(MAX後)として出力されるようになるので、この時点で目標補助ヒータ出力値TGQhtr(MAX後)の低下は終了され、下限リミット値LimLより下がらなくなる。
このような補助ヒータ23の出力制限制御で最高補助ヒータ温度ThtrMAXが制限閾値より低くなった場合、ステップS1からステップS2に進むようになる。このステップS2では制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrが目標出力値演算部73から出力される目標補助ヒータ出力値TGQhtr(出力制限前)以上か否か判断し、制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrが目標補助ヒータ出力値TGQhtr(出力制限前)より小さい場合には、ステップS3に進んで制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrを前回値+所定値とする。以後、これを繰り返し、ステップS2で制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrが目標補助ヒータ出力値TGQhtr(出力制限前)以上となるまで制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrを所定値ずつ上げていく。
そして、ステップS2で制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrが目標補助ヒータ出力値TGQhtr(出力制限前)以上となった場合、ステップS4に進んで制限時の目標補助ヒータ出力値TGQhtrを目標補助ヒータ出力値TGQhtr(出力制限前)とする(通常制御)。このような出力制限制御によって、空気流通路3を構成するHVACユニット10(空気流通路3を構成する部材)が補助ヒータ23の異常な温度上昇によって変形してしまう不都合を防止する。
図8は本発明における補助ヒータ23の出力制限制御での補助ヒータ温度Thtr(L1)と、複数の補助ヒータ温度センサ50D、68D、50A、68Aのうちの最も高い温度を検出している補助ヒータ温度センサの検出値(最高補助ヒータ温度ThtrMAX:L2)と、目標補助ヒータ出力値TGQhtr(L3)の推移をそれぞれ示している。
尚、図8中に示されている制限閾値は、実施例では+70℃であり、保護閾値はその上の+90℃である。ヒートポンプコントローラ32はこの保護閾値まで最高補助ヒータ温度ThtrMAXが上昇した場合には、補助ヒータ23の通電を断つことになる。
この図8に示されるように、通常制御から最高補助ヒータ温度ThtrMAXが制限閾値以上となると、補助ヒータ23の目標補助ヒータ出力値TGQhtr(MAX後)が所定値ずつ段階的に下げられていくが(出力制限中)、下限リミット値LimLまで下げられた時点で、目標補助ヒータ出力値TGQhtr(MAX後)はそれ以上下がらなくなる。これにより、補助ヒータ温度Thtrと最高補助ヒータ温度ThtrMAXは殆ど変動しなくなり、補助ヒータ温度Thtrは制限閾値より低い値で略安定し、最高補助ヒータ温度ThtrMAXは保護閾値より低い値で略安定した状態となる。
尚、実施例では或る時点で補助ヒータ23の通電を断っているので、その後補助ヒータ温度Thtrと最高補助ヒータ温度ThtrMAXも低下しているが、通電し続けた場合にも、その後、最高補助ヒータ温度ThtrMAXが制限閾値より低くなれば、補助ヒータの目標補助ヒータ出力値TGQhtr(出力制限後)が所定値ずつ上げられていくことになる(通常制御に復帰)。
以上の如く、ヒートポンプコントローラ32は最高補助ヒータ温度ThtrMAXが所定の制限閾値以上となった場合、補助ヒータ23の発熱を制御する目標補助ヒータ出力値TGQhtrを制限する出力制限制御を実行すると共に、この出力制限制御で制限される目標補助ヒータ出力値TGQhtrに所定の下限リミット値LimLを設定するようにしたので、最高補助ヒータ温度ThtrMAXが制限閾値以上となって出力制限制御が行われる状況においても、補助ヒータ23の発熱を制御する目標補助ヒータ出力値TGQhtrが必要以上に下げられてしまう不都合を解消することができるようになる。
これにより、補助ヒータ23の温度を検出する補助ヒータ温度センサ50D、68D、50A、68Aの応答遅れに起因して、車室内に供給される空気の温度が大きく変動する不都合を未然に防止し、安定した車室内空調を実現することができるようになる。
また、実施例では補助ヒータ23の温度を検出するために複数の補助ヒータ温度センサ50D、68D、50A、68Aを設けており、ヒートポンプコントローラ32は、この複数の補助ヒータ温度センサ50D、68D、50A、68Aのうちの最も高い温度を検出している補助ヒータ温度センサの検出値である最高補助ヒータ温度ThtrMAXが上昇して制限閾値に到達した場合に出力制限制御に入り、目標補助ヒータ出力値TGQhtrを所定値低下させ、以後、最高補助ヒータ温度ThtrMAXが制限閾値以上である間、所定値ずつ目標補助ヒータ出力値TGQhtrを低下させていくと共に、下限リミット値LimLにおいて目標補助ヒータ出力値TGQhtrの低下を終了するようにしているので、補助ヒータ23の異常温度上昇によって空気流通路3を構成するHVACユニット10の構成壁が変形等してしまう不都合を効果的に回避しながら、車室内に供給される空気の温度変動を抑制して、安定した車室内空調を実現することができるようになる。
この場合、ヒートポンプコントローラ32は、補助ヒータ温度Thtrの目標値である目標補助ヒータ温度THOに基づいて目標補助ヒータ出力値TGQhtrを算出し、出力制限制御では算出された当該目標補助ヒータ出力値TGQhtrを制限するが、下限リミット値LimLは目標補助ヒータ温度THOを基準として設定するようにしているので、下限リミット値LimLは出力制限制御で制限される前の補助ヒータ23の温度の目標値である目標補助ヒータ温度THOに基づいて設定されることになる。
これにより、下限リミット値LimLが補助ヒータ23の出力制限制御に影響されることが無くなる。そして、下限リミット値LimLは目標補助ヒータ温度THOを基準として設定するので、暖房に必要な補助ヒータ23の温度に応じて適切に下限リミット値LimLを設定し、快適な車室内空調を実現することができるようになる。
そして、実施例の如く冷媒を圧縮する圧縮機2と、空気流通路3に設けられ、冷媒を放熱させて車室内に供給される空気を加熱する放熱器4と、空気流通路3に設けられ、冷媒を吸熱させて車室内に供給される空気を冷却する吸熱器9を有する冷媒回路Rを備えた車両用空気調和装置1において、補助ヒータ23が冷媒回路Rの補助加熱装置として空気流通路3に設けられる場合に、特に好適なものとなる。
尚、上記実施例では目標補助ヒータ出力値TGQhtrの下限リミット値LimLを、目標補助ヒータ温度THOを基準として設定するための低減値REDを固定の値(20deg)としたが、それに限らず、この低減値REDを吸熱器温度Te(吸熱器9は補助ヒータ23の空気の上流側にあるため、吸熱器温度Teが補助ヒータ23に流入する空気の温度となる)と体積風量Gaに応じて変更することで、吸熱器温度Teや体積風量Gaに応じて目標補助ヒータ出力値TGQhtrの下限リミット値LimLを変更するようにしてもよい。
その場合は、ヒートポンプコントローラ32は吸熱器温度Teが高い程、目標補助ヒータ温度THOの低減値REDを大きくし、吸熱器温度Teが低い程、低減値REDを小さくする。また、体積風量Gaが小さい程、低減値REDを大きくし、体積風量REDが大きい程、低減値REDを小さくする方向で変更する。これにより、吸熱器温度Teが高い程、目標補助ヒータ出力値TGQhtrの下限リミット値LimLは下げられ、吸熱器温度Teが低い程、下限リミット値LimLは上げられる。また、体積風量Gaが小さい程、下限リミット値LimLは下げられ、体積風量Gaが大きい程、下限リミット値LimLは上げられることになる。
空気流通路3を構成するHVACユニット10の構成壁の温度は、補助ヒータ23に流入する空気の温度である吸熱器温度Teが高い程、また、体積風量Gaが小さい程、補助ヒータ23の発熱によって高くなり易くなる。逆に、吸熱器温度Teが低い程、また、体積風量Gaが大きい程、HVACユニット10の構成壁の温度は上がり難くなる。
そこで、この実施例のようにヒートポンプコントローラ32によって、目標温度演算部72から出力される補助ヒータ温度Thtrの目標値である目標補助ヒータ温度THOを基準とし、吸熱器温度Teや空気流通路3に流入した空気の体積風量Gaに応じて下限リミット値LimLを変更するようにすれば、吸熱器温度Teが高い程、又は、体積風量Gaが小さい程、下げる方向で下限リミット値LimLを変更することで、環境条件に応じて適切に下限リミット値LimLを設定し、出力制限制御によるHVACユニット10の保護と安定した車室内空調の双方を的確に実現することができるようになる。
尚、この実施例では吸熱器温度Teと体積風量Gaの両方に基づいて目標補助ヒータ出力値TGQhtrの下限リミット値LimLを変更するようにしたが、吸熱器温度Teのみ、又は、体積風量Gaのみに基づいて変更するようにしてもよい。
次に、図9は本発明を適用した他の実施例の車両用空気調和装置1の構成図を示している。尚、この図において図1と同一符号で示すものは同一若しくは同様の機能を奏するものである。この実施例の場合、過冷却部16の出口は逆止弁18に接続され、この逆止弁18の出口が冷媒配管13Bに接続されている。尚、逆止弁18は冷媒配管13B(室内膨張弁8)側が順方向とされている。
また、放熱器4の出口側の冷媒配管13Eは室外膨張弁6の手前で分岐しており、この分岐した冷媒配管(以下、第2のバイパス配管と称する)13Fは電磁弁22(除湿用)を介して逆止弁18の下流側の冷媒配管13Bに連通接続されている。更に、吸熱器9の出口側の冷媒配管13Cには、内部熱交換器19の冷媒下流側であって、冷媒配管13Dとの合流点より冷媒上流側に蒸発圧力調整弁70が接続されている。そして、これら電磁弁22や蒸発圧力調整弁70もヒートポンプコントローラ32の出力に接続されている。尚、前述の実施例の図1中のバイパス配管35、電磁弁30及び電磁弁40から成るバイパス装置45は設けられていない。その他は図1と同様であるので説明を省略する。
以上の構成で、この実施例の車両用空気調和装置1の動作を説明する。ヒートポンプコントローラ32はこの実施例では、暖房モード、除湿暖房モード、内部サイクルモード、除湿冷房モード、冷房モード及び補助ヒータ単独モードの各運転モードを切り換えて実行する(MAX冷房モードはこの実施例では存在しない)。尚、暖房モード、除湿冷房モード及び冷房モードが選択されたときの動作及び冷媒の流れと、補助ヒータ単独モードは前述の実施例(実施例1)の場合と同様であるので説明を省略する。但し、この実施例(実施例3)ではこれら暖房モード、除湿冷房モード及び冷房モードにおいては電磁弁22を閉じるものとする。
(12)図9の車両用空気調和装置1の除湿暖房モード
他方、除湿暖房モードが選択された場合、この実施例ではヒートポンプコントローラ32は電磁弁21(暖房用)を開放し、電磁弁17(冷房用)を閉じる。また、電磁弁22(除湿用)を開放する。そして、圧縮機2を運転する。空調コントローラ20は各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は、基本的には室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の全て空気を暖房用熱交換通路3Aの補助ヒータ23及び放熱器4に通風する状態とするが、風量の調整も行う。
これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は冷媒配管13Gから放熱器4に流入する。放熱器4には暖房用熱交換通路3Aに流入した空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化する。
放熱器4内で液化した冷媒は当該放熱器4を出た後、冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至る。室外膨張弁6に流入した冷媒はそこで減圧された後、室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒は蒸発し、走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気中から熱を汲み上げる。即ち、冷媒回路Rがヒートポンプとなる。そして、室外熱交換器7を出た低温の冷媒は冷媒配管13A、電磁弁21及び冷媒配管13Dを経て冷媒配管13Cからアキュムレータ12に入り、そこで気液分離された後、ガス冷媒が圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。
また、放熱器4を経て冷媒配管13Eを流れる凝縮冷媒の一部は分流され、電磁弁22を経て第2のバイパス配管13F及び冷媒配管13Bより内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至るようになる。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
吸熱器9で蒸発した冷媒は、内部熱交換器19、蒸発圧力調整弁70を順次経て冷媒配管13Cにて冷媒配管13Dからの冷媒と合流した後、アキュムレータ12を経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱されるので、これにより車室内の除湿暖房が行われることになる。
空調コントローラ20は、目標吹出温度TAOから算出される目標ヒータ温度TCO(放熱器出口温度TCIの目標値)をヒートポンプコントローラ32に送信する。ヒートポンプコントローラ32は、この目標ヒータ温度TCOから目標放熱器圧力PCO(放熱器圧力PCIの目標値)を算出し、この目標放熱器圧力PCOと、放熱器圧力センサ47が検出する放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力PCI。冷媒回路Rの高圧圧力)に基づいて圧縮機2の回転数NCを制御し、放熱器4による加熱を制御する。また、ヒートポンプコントローラ32は、吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度Teと、空調コントローラ20から送信された目標吸熱器温度TEOに基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御する。また、ヒートポンプコントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度Teに基づき、蒸発圧力調整弁70を開(流路を拡大する)/閉(少許冷媒が流れる)して吸熱器9の温度が下がり過ぎて凍結する不都合を防止する。
(13)図9の車両用空気調和装置1の内部サイクルモード
また、内部サイクルモードでは、ヒートポンプコントローラ32は上記除湿暖房モードの状態において室外膨張弁6を全閉とする(全閉位置)と共に、電磁弁21を閉じる。この室外膨張弁6と電磁弁21が閉じられることにより、室外熱交換器7への冷媒の流入、及び、室外熱交換器7からの冷媒の流出は阻止されることになるので、放熱器4を経て冷媒配管13Eを流れる凝縮冷媒は電磁弁22を経て第2のバイパス配管13Fに全て流れるようになる。そして、第2のバイパス配管13Fを流れる冷媒は冷媒配管13Bより内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
吸熱器9で蒸発した冷媒は、内部熱交換器19、蒸発圧力調整弁70を順次経て冷媒配管13Cを流れ、アキュムレータ12を経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱されるので、これにより、車室内の除湿暖房が行われることになるが、この内部サイクルモードでは室内側の空気流通路3内にある放熱器4(放熱)と吸熱器9(吸熱)の間で冷媒が循環されることになるので、外気からの熱の汲み上げは行われず、圧縮機2の消費動力分の暖房能力が発揮される。除湿作用を発揮する吸熱器9には冷媒の全量が流れるので、上記除湿暖房モードに比較すると除湿能力は高いが、暖房能力は低くなる。
空調コントローラ20は目標吹出温度TAOから算出される目標ヒータ温度TCO(放熱器出口温度TCIの目標値)をヒートポンプコントローラ32に送信する。ヒートポンプコントローラ32は送信された目標ヒータ温度TCOから目標放熱器圧力PCO(放熱器圧力PCIの目標値)を算出し、この目標放熱器圧力PCOと、放熱器圧力センサ47が検出する放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力PCI。冷媒回路Rの高圧圧力)に基づいて圧縮機2の回転数NCを制御し、放熱器4による加熱を制御する。
そして、この実施例の場合の暖房モードと補助ヒータ単独モード(除湿暖房モードや内部サイクルモードでも行ってもよい)においても、前述した(11)の補助ヒータ23の制御を実行することで、最高補助ヒータ温度ThtrMAXが制限閾値以上となって出力制限制御が行われる状況においても、補助ヒータ23の発熱を制御する目標補助ヒータ出力値TGQhtrが必要以上に下げられてしまう不都合を解消し、補助ヒータ23の温度を検出する補助ヒータ温度センサ50D、68D、50A、68Aの応答遅れに起因して、車室内に供給される空気の温度が大きく変動する不都合を未然に防止して、安定した車室内空調を実現することができるようになる。
尚、各実施例で示した数値等はそれに限られるものでは無く、適用する装置に応じて適宜設定すべきものである。また、加熱装置(補助加熱装置)は実施例で示した補助ヒータ23に限られるものでは無く、電気ヒータで加熱された熱媒体を循環させて空気流通路3内の空気を加熱する熱媒体循環回路や、エンジンで加熱されたラジエター水を循環するヒータコア等を利用してもよい。
また、各実施例では冷媒回路Rを備えた車両用空気調和装置1の補助加熱装置として補助ヒータ23を設けたが、請求項6以外の発明ではそれに限らず、冷媒回路Rを有さず、前述した補助ヒータ単独モードの場合と同じ動作で、補助ヒータ23(加熱装置)のみで車室内を暖房する車両用空気調和装置1にも本発明は有効である。
1 車両用空気調和装置
2 圧縮機
3 空気流通路
4 放熱器
6 室外膨張弁
7 室外熱交換器
8 室内膨張弁
9 吸熱器
10 HVACユニット
11 制御装置
20 空調コントローラ
23 補助ヒータ(加熱装置、補助加熱装置)
27 室内送風機(ブロワファン)
28 エアミックスダンパ
32 ヒートポンプコントローラ
33 外気温度センサ
50D、68D、50A、68A 補助ヒータ温度センサ
65 車両通信バス
R 冷媒回路

Claims (6)

  1. 車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、
    該空気流通路に設けられ、前記車室内に供給される空気を加熱する加熱装置と、
    該加熱装置の温度を検出する温度センサと、
    該温度センサの出力に基づき、前記加熱装置の発熱を制御する制御装置を備え、
    前記加熱装置により前記車室内に供給される空気を加熱する車両用空気調和装置において、
    前記制御装置は、前記温度センサが検出する前記加熱装置の温度Thtrが所定の制限閾値以上となった場合、前記加熱装置の発熱を制御する出力値TGQhtrを制限する出力制限制御を実行すると共に、
    該出力制限制御で制限される前記出力値TGQhtrに所定の下限リミット値LimLを設定することを特徴とする車両用空気調和装置。
  2. 前記温度センサを複数備え、
    前記制御装置は、前記複数の温度センサのうちの最も高い温度を検出している前記温度センサの検出値である前記加熱装置の最高温度ThtrMAXが上昇して前記制限閾値に到達した場合に前記出力制限制御に入り、前記出力値TGQhtrを所定値低下させ、以後、前記加熱装置の最高温度ThtrMAXが前記制限閾値以上である間、所定値ずつ前記出力値TGQhtrを低下させていくと共に、
    前記下限リミット値LimLにおいて前記出力値TGQhtrの低下を終了することを特徴とする請求項1に記載の車両用空気調和装置。
  3. 前記制御装置は、前記加熱装置の温度の目標値THOに基づいて前記出力値TGQhtrを算出し、前記出力制限制御では算出された前記出力値TGQhtrを制限すると共に、
    前記目標値THOを基準として前記下限リミット値LimLを設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用空気調和装置。
  4. 前記制御装置は、前記加熱装置に流入する空気の温度、及び/又は、前記空気流通路に流入した空気の体積風量Gaに応じて前記下限リミット値LimLを変更することを特徴とする請求項3に記載の車両用空気調和装置。
  5. 前記制御装置は、前記加熱装置に流入する空気の温度が高い程、又は、前記体積風量Gaが小さい程、下げる方向で前記下限リミット値LimLを変更することを特徴とする請求項4に記載の車両用空気調和装置。
  6. 冷媒を圧縮する圧縮機と、前記空気流通路に設けられ、冷媒を放熱させて前記車室内に供給される空気を加熱する放熱器と、前記空気流通路に設けられ、冷媒を吸熱させて前記車室内に供給される空気を冷却する吸熱器を有する冷媒回路を備え、
    前記加熱装置は、前記冷媒回路の補助加熱装置として前記空気流通路に設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
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