JP2019013861A - ガス分離膜エレメント、ガス分離膜モジュール、及びガス分離装置 - Google Patents

ガス分離膜エレメント、ガス分離膜モジュール、及びガス分離装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2019013861A
JP2019013861A JP2017130540A JP2017130540A JP2019013861A JP 2019013861 A JP2019013861 A JP 2019013861A JP 2017130540 A JP2017130540 A JP 2017130540A JP 2017130540 A JP2017130540 A JP 2017130540A JP 2019013861 A JP2019013861 A JP 2019013861A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gas
separation membrane
gas separation
hydrophilic resin
flow path
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2017130540A
Other languages
English (en)
Inventor
奨平 笠原
Shohei Kasahara
奨平 笠原
雄大 太田
Yudai Ota
雄大 太田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Chemical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Chemical Co Ltd filed Critical Sumitomo Chemical Co Ltd
Priority to JP2017130540A priority Critical patent/JP2019013861A/ja
Priority to PCT/JP2018/021610 priority patent/WO2019009000A1/ja
Publication of JP2019013861A publication Critical patent/JP2019013861A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D69/00Semi-permeable membranes for separation processes or apparatus characterised by their form, structure or properties; Manufacturing processes specially adapted therefor
    • B01D69/12Composite membranes; Ultra-thin membranes
    • B01D69/1216Three or more layers
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D53/00Separation of gases or vapours; Recovering vapours of volatile solvents from gases; Chemical or biological purification of waste gases, e.g. engine exhaust gases, smoke, fumes, flue gases, aerosols
    • B01D53/22Separation of gases or vapours; Recovering vapours of volatile solvents from gases; Chemical or biological purification of waste gases, e.g. engine exhaust gases, smoke, fumes, flue gases, aerosols by diffusion
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D61/00Processes of separation using semi-permeable membranes, e.g. dialysis, osmosis or ultrafiltration; Apparatus, accessories or auxiliary operations specially adapted therefor
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D63/00Apparatus in general for separation processes using semi-permeable membranes
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D63/00Apparatus in general for separation processes using semi-permeable membranes
    • B01D63/10Spiral-wound membrane modules
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D63/00Apparatus in general for separation processes using semi-permeable membranes
    • B01D63/10Spiral-wound membrane modules
    • B01D63/107Specific properties of the central tube or the permeate channel
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D69/00Semi-permeable membranes for separation processes or apparatus characterised by their form, structure or properties; Manufacturing processes specially adapted therefor
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D69/00Semi-permeable membranes for separation processes or apparatus characterised by their form, structure or properties; Manufacturing processes specially adapted therefor
    • B01D69/12Composite membranes; Ultra-thin membranes
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D69/00Semi-permeable membranes for separation processes or apparatus characterised by their form, structure or properties; Manufacturing processes specially adapted therefor
    • B01D69/12Composite membranes; Ultra-thin membranes
    • B01D69/1213Laminated layers
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D71/00Semi-permeable membranes for separation processes or apparatus characterised by the material; Manufacturing processes specially adapted therefor
    • B01D71/02Inorganic material
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D71/00Semi-permeable membranes for separation processes or apparatus characterised by the material; Manufacturing processes specially adapted therefor
    • B01D71/02Inorganic material
    • B01D71/05Cermet materials

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Oil, Petroleum & Natural Gas (AREA)
  • Water Supply & Treatment (AREA)
  • Separation Using Semi-Permeable Membranes (AREA)

Abstract

【課題】運転時間の経過に伴う酸性ガスの分離性能の低下を抑制することができる、ガス分離膜を含むガス分離膜エレメントを提供する。
【解決手段】酸性ガスを含む原料ガスから前記酸性ガスを分離するガス分離膜エレメントであって、前記ガス分離膜エレメントは、ガス分離膜を含み、前記ガス分離膜は、親水性樹脂組成物層と、多孔層と、を含み、前記親水性樹脂組成物層は、親水性樹脂と、前記酸性ガスと可逆的に反応し得る酸性ガスキャリアと、アルカリ金属カチオンと、酸性ガス水和反応触媒とを含み、前記酸性ガス水和反応触媒は、前記親水性樹脂組成物層中に前記アルカリ金属カチオンに対して0.001モル当量以上0.030モル当量未満の範囲で含まれている、ガス分離膜エレメント。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガス分離膜エレメント、ガス分離膜モジュール、ガス分離装置、及びガス分離膜エレメントの製造方法に関する。
水素や尿素等を製造する大規模プラントで合成される合成ガス、天然ガス、排ガス等から二酸化炭素等を分離するプロセスとして、省エネルギー化を実現することができることから、ガス膜分離プロセスが近年注目されている。
ガス膜分離プロセスにおいては、ガス分離膜を用いたガス分離膜プロセスが省エネルギープロセスとして期待されている。このようなガス分離膜プロセスで用いられるガス分離膜としては、これまでに種々の分離膜が提案されている。
特許文献1では、親水性ポリマーのゲル膜中にCOキャリアとCO水和反応触媒を含んで構成される分離機能層を備えるCO促進輸送膜が記載されている。COと選択的且つ可逆的に反応するCOキャリアに加えて、CO水和反応触媒を含むことにより、COとCOキャリアの反応を促進させることができ、結果として、COの透過速度の向上が期待されることが記載されている。
WO2016/024523号
ところで、ガス分離膜の適用が想定される水素や尿素等を製造する大規模プラントでは、通常、ガス分離膜はガス分離膜エレメント内に組み込まれて使用される。
本発明者らは、ガス分離膜においてCO水和反応触媒を添加することにより、COとCOキャリアの反応を促進させることができることができるものの、運転時間の経過に伴ってCOキャリアと反応しないガスの透過度が高くなる場合があり、結果としてCO分離性能が低下する場合があるとの知見を得た。
本発明は、運転時間の経過に伴う酸性ガスの分離性能の低下を抑制することができる、ガス分離膜を含むガス分離膜エレメント、ガス分離膜モジュール、ガス分離装置、及び当該ガス分離膜エレメントの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下のガス分離膜エレメント、ガス分離膜モジュール、ガス分離装置、及びガス分離膜エレメントの製造方法を提供する。
〔1〕 酸性ガスを含む原料ガスから前記酸性ガスを分離するガス分離膜エレメントであって、
前記ガス分離膜エレメントは、
ガス分離膜を含み、
前記ガス分離膜は、
親水性樹脂組成物層と、
多孔層と、を含み、
前記親水性樹脂組成物層は、
親水性樹脂と、
前記酸性ガスと可逆的に反応し得る酸性ガスキャリアと、
アルカリ金属カチオンと、
酸性ガス水和反応触媒とを含み、
前記酸性ガス水和反応触媒は、
前記親水性樹脂組成物層中に前記アルカリ金属カチオンに対して0.001モル当量以上0.030モル当量未満の範囲で含まれている、ガス分離膜エレメント。
〔2〕 前記酸性ガスキャリアは、アルカリ金属塩を含む、〔1〕に記載のガス分離膜エレメント。
〔3〕 前記アルカリ金属カチオンは、前記親水性樹脂組成物層中に前記親水性樹脂が有するイオン交換容量の総量に対して1モル当量以上6モル当量以下の範囲で含まれている、〔1〕又は〔2〕に記載のガス分離膜エレメント。
〔4〕 前記酸性ガス水和反応触媒は、オキソ酸化合物を含む、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のガス分離膜エレメント。
〔5〕 前記親水性樹脂組成物層の厚さは、1μm〜200μmである、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のガス分離膜エレメント。
〔6〕 前記ガス分離膜エレメントは、
前記原料ガスが流れる供給側流路部材と、
前記ガス分離膜を透過した前記酸性ガスが流れる透過側流路部材と、
前記透過側流路部材を流れる前記酸性ガスを収集する中心管と、をさらに有し、
前記ガス分離膜は、
シート状であり、
前記供給側流路部材と前記透過側流路部材との間に挟まれており、
前記供給側流路部材と前記ガス分離膜と前記透過側流路部材とで形成される積層体が前記中心管に巻回されている、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のガス分離膜エレメント。
〔7〕 〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載のガス分離膜エレメントのうちの少なくとも一つをハウジング内に備える、ガス分離膜モジュール。
〔8〕 〔7〕に記載のガス分離膜モジュールを少なくとも一つ備える、ガス分離装置。
〔9〕 酸性ガスを含む原料ガスから前記酸性ガスを分離するガス分離膜エレメントの製造方法であって、
親水性樹脂組成物層と、多孔層とを有し、前記親水性樹脂組成物層が前記多孔層上に設けられたガス分離膜を準備する工程と、
前記ガス分離膜を用いて前記ガス分離膜エレメントを作製する工程と、を含み、
前記親水性樹脂組成物層は、
親水性樹脂と、
前記酸性ガスと可逆的に反応し得る酸性ガスキャリアと、
アルカリ金属カチオンと、
酸性ガス水和反応触媒とを含み、
前記酸性ガス水和反応触媒は、
前記親水性樹脂組成物層中に前記アルカリ金属カチオンに対して0.001モル当量以上0.030モル当量未満の範囲で含まれている、ガス分離膜エレメントの製造方法。
本発明のガス分離膜エレメント、ガス分離膜モジュール及びガス分離装置は、ガス分離プロセスの運転時間が経過しても、酸性ガスの分離性能の低下を抑制することができる。
本発明に係るスパイラル型ガス分離膜エレメントの一例を展開して示す、一部切欠き部分を設けた概略の斜視図である。 本発明に係るスパイラル型ガス分離膜エレメントの一例を示す、一部展開部分を設けた概略の斜視図である。 本発明に係るスパイラル型ガス分離膜エレメントを構成する巻回体(積層体)の一部を例示的に示す概略の断面図である。 本発明に係るスパイラル型ガス分離膜エレメントの一例を展開して示す、(a)は概略の断面図であり、(b)は概略の平面図である。 ガス分離装置の具体例を示す概略図である。 試験例1〜3で用いるガス分離装置の概略図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
[ガス分離膜エレメント]
本発明に係るガス分離膜エレメントは、
酸性ガスを含む原料ガスから前記酸性ガスを分離するガス分離膜エレメントであって、
前記ガス分離膜エレメントは、
ガス分離膜を含み、
前記ガス分離膜は、
親水性樹脂組成物層と、
多孔層(第1多孔層)と、を含み、
前記親水性樹脂組成物層は、
親水性樹脂と、
前記酸性ガスと可逆的に反応し得る酸性ガスキャリアと、
アルカリ金属カチオンと、
酸性ガス水和反応触媒とを含み、
前記酸性ガス水和反応触媒は、
前記親水性樹脂組成物層中に前記アルカリ金属カチオンに対して0.001モル当量以上0.030モル当量未満の範囲で含まれている。
ガス分離膜エレメントは、ガス分離膜が集積化又は一体化されて構成されている。ガス分離膜としては、例えば、シート状、中空状等の形状を挙げることができる。ガス分離膜エレメントは、シート状のガス分離膜を含む場合は、例えば、スパイラル型、プレート&フレーム型、プリーツ型等の形式とすることができ、中空状のガス分離膜を含む場合は、例えば、中空糸型、円筒型等の形式とすることができる。
酸性ガスを含む原料ガスは、ガス分離膜に供給され、ここで原料ガスに含まれる酸性ガスがガス分離膜を選択的に透過することで、原料ガスから酸性ガスが分離される。ガス分離膜は、親水性樹脂、酸性ガスと可逆的に反応し得る酸性ガスキャリア、アルカリ金属カチオン、及び酸性ガス水和反応触媒を含む親水性樹脂組成物層と、前記親水性樹脂組成物層を支持する第1多孔層とを備える。
ここで、酸性ガスとは、二酸化炭素(CO)、硫化水素(HS)、硫化カルボニル、硫黄酸化物(SO)、窒素酸化物(NO)、塩化水素等のハロゲン化水素等の酸性を示すガスをいう。また、原料ガスとは、ガス分離膜エレメントに供給されるガスをいう。原料ガスには、少なくとも酸性ガスが含まれる。透過ガスとは、ガス分離膜エレメントのガス分離膜を透過した酸性ガスを含むガスをいう。なお、透過ガスがガス分離膜エレメントに再供給される場合には、この透過ガスは、ガス分離膜エレメントに供給される原料ガスの一部となり得る。
〔ガス分離膜〕
ガス分離膜は、親水性樹脂組成物層と、親水性樹脂組成物層を支持する第1多孔層とを備え、原料ガスに含まれる酸性ガスを分離するために、酸性ガスが選択的に透過されやすい酸性ガス選択透過性を有する。ガス分離膜では、ガス分子の膜への溶解性と膜中での拡散性との差を利用した溶解・拡散機構に加えて、酸性ガスと可逆的に反応し得る酸性ガスキャリアを用い、酸性ガスと酸性ガスキャリアとの反応生成物を形成して酸性ガスの透過を促進する促進輸送機構により、酸性ガスの高い分離性能を実現することができる。
(親水性樹脂組成物層)
親水性樹脂組成物層は、ガス分離膜において酸性ガスを選択的に透過させる機能を有する。本発明において、親水性樹脂組成物層は、親水性樹脂、酸性ガスと可逆的に反応し得る酸性ガスキャリア、アルカリ金属カチオン及び酸性ガス水和反応触媒を含む。
下記反応式(1)は、酸性ガスがCOであり、酸性ガスキャリア(COキャリア)として炭酸セシウム(CsCO)を使用した場合における、COとCOキャリアとの反応を示している。なお、反応式(1)中の記号「⇔」は、この反応が可逆反応であることを示している。
CO+CsCO+HO⇔2CsHCO (1)
上記反応式(1)に示すように、COとCOキャリアとの可逆反応には水が必要であるため、親水性樹脂組成物層は酸性ガスキャリアと水分とを保持する媒体を含む。
酸性ガス水和反応触媒は、酸性ガスがCOの場合、下記反応式(2)に示すCOの水和反応の反応速度を増加させる。なお、反応式(2)中の記号「⇔」は、この反応が可逆反応であることを示している。
CO+HO⇔HCO +H (2)
上記反応式(2)で示されるような酸性ガスの水和反応は、上記反応式(1)に示されるような酸性ガスと酸性ガスキャリアの反応の素反応の1つである。上記反応式(2)で示されるような酸性ガス水和反応は、無触媒条件下では極めて遅い反応であるため、酸性ガス水和反応触媒の添加により酸性ガス水和反応が促進されることで、酸性ガスと酸性ガスキャリアの反応が促進され、結果として、酸性ガスの透過度を向上させることができる。
親水性樹脂組成物層は、少なくとも、親水性樹脂と、酸性ガスキャリアと、アルカリ金属カチオンと、酸性ガス水和反応触媒とを含むゲル状の薄膜であることが好ましい。親水性樹脂組成物層の厚さは、ガス分離膜に必要な分離性能によって適宜選択すればよいが、通常、0.1μm〜600μmの範囲であることが好ましく、0.5μm〜400μmの範囲であることがより好ましく、1μm〜200μmの範囲であることが特に好ましい。
親水性樹脂組成物層には、少なくとも、親水性樹脂、酸性ガスキャリア、アルカリ金属カチオン及び酸性ガス水和反応触媒を含み、必要に応じて、親水性樹脂、酸性ガスキャリア、アルカリ金属カチオン及び酸性ガス水和反応触媒以外の添加剤を含んでいてもよい。
(親水性樹脂)
上記反応式(1)に示すように、酸性ガスと酸性ガスキャリアとの可逆反応には水が必要となる。そのため、親水性樹脂組成物層には、水酸基や、スルホ基(−SOH)、カルボキシル基(−COOH)、ホスホノ基(−PO)およびフェノール性水酸基等の酸性のイオン交換基を有する親水性樹脂を含むことが好ましい。親水性樹脂の分子鎖同士が架橋により網目構造を有することで高い保水性を示す架橋型親水性樹脂を含むことがより好ましい。酸性ガスがガス分離膜を透過するための推進力として大きな圧力差が印加されるため、ガス分離膜に要求される耐圧強度の観点からも、架橋型親水性樹脂を含む親水性樹脂を用いることが好ましい。親水性樹脂が有するイオン交換基は、金属イオンにより中和することで、全てまたは部分的に脱プロトン化されたイオン交換基に置き換わっていてもよい。金属イオンとしてはアルカリ金属カチオンが好ましい。酸性ガスの透過性をさらに向上させる観点からは、酸性ガスキャリアとして親水性樹脂組成物層に含まれる物質が、親水性樹脂の中和剤としてではなく酸性ガスキャリアとして十分に機能するように、親水性樹脂が有するイオン交換基は金属イオンにより中和されていることが好ましい。
親水性樹脂を形成する重合体は、例えば、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、脂肪酸のビニルエステル、又はそれらの誘導体に由来する構造単位を有していることが好ましい。このような親水性を示す重合体としては、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、メタクリル酸、酢酸ビニル等の単量体を重合してなる重合体が挙げられ、具体的には、イオン交換基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸系樹脂、ポリイタコン酸系樹脂、ポリクロトン酸系樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂等、水酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂等、それらの共重合体であるアクリル酸−ビニルアルコール共重合体系樹脂、アクリル酸−メタクリル酸共重合体系樹脂、アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体系樹脂、メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体系樹脂等が挙げられる。この中でも、アクリル酸の重合体であるポリアクリル酸系樹脂、メタクリル酸の重合体であるポリメタクリル酸系樹脂、酢酸ビニルの重合体を加水分解したポリビニルアルコール系樹脂、アクリル酸メチルと酢酸ビニルとの共重合体を鹸化したアクリル酸塩−ビニルアルコール共重合体系樹脂、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体であるアクリル酸−メタクリル酸共重合体系樹脂がより好ましく、ポリアクリル酸、アクリル酸塩−ビニルアルコール共重合体系樹脂がさらに好ましい。
架橋型親水性樹脂は、親水性を示す重合体を架橋剤と反応させて調製してもよいし、親水性を示す重合体の原料となる単量体と架橋性単量体とを共重合させて調製してもよい。架橋剤又は架橋性単量体としては特に限定されず、従来公知の架橋剤又は架橋性単量体を使用することができる。
架橋剤としては、例えば、エポキシ架橋剤、多価グリシジルエーテル、多価アルコール、多価イソシアネート、多価アジリジン、ハロエポキシ化合物、多価アルデヒド、多価アミン、有機金属系架橋剤、金属系架橋剤等の、従来公知の架橋剤が挙げられる。架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル等の、従来公知の架橋性単量体が挙げられる。架橋方法としては、例えば、熱架橋、紫外線架橋、電子線架橋、放射線架橋、光架橋等の方法や、特開2003−268009号公報、特開平7−88171号公報に記載されている方法等、従来公知の手法を使用することができる。
(酸性ガスキャリア)
酸性ガスキャリアは、原料ガス中の酸性ガスと可逆的に反応する物質であり、親水性樹脂を含む親水性樹脂組成物層内に少なくとも一つ存在し、親水性樹脂組成物層に存在する水に溶解した酸性ガスと可逆的に反応することにより、酸性ガスを選択的に透過させる。酸性ガスキャリアの具体例としては、酸性ガスが二酸化炭素および硫化水素の場合、アルカリ金属炭酸塩やアルカリ金属重炭酸塩、アルカノールアミン(例えば、特許第2086581号公報等に記載)、及びアルカリ金属水酸化物(例えば、国際公開公報2016/024523号パンフレット等に記載)等が、酸性ガスが硫黄酸化物の場合、硫黄含有化合物や、アルカリ金属のクエン酸塩、及び遷移金属錯体(例えば、特許第2879057号公報等に記載)等が、酸性ガスが窒素酸化物の場合、アルカリ金属亜硝酸塩や、遷移金属錯体(例えば、特許第2879057号公報等に記載)等が、それぞれ挙げられる。
酸性ガスが二酸化炭素の場合における具体的な酸性ガスキャリアとしては、Na、K、Rb、及びCsからなる群より選ばれる少なくとも1つのアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩又はアルカリ金属水酸化物であることが好ましく、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。アルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム等が挙げられる。アルカリ金属重炭酸塩としては、例えば、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸ルビジウム、重炭酸セシウム等が挙げられる。アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が挙げられる。酸性ガスキャリアとしては、潮解性を示すアルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属水酸化物が好ましく、水への溶解度が高い炭酸セシウム又は水酸化セシウムがより好ましい。
(アルカリ金属カチオン)
親水性樹脂組成物層中には、アルカリ金属カチオンが含まれる。アルカリ金属カチオンは、Na,K,Rb,及びCsからなる少なくとも1つの元素のカチオンである。親水性樹脂組成物層中には、例えば、酸性ガスキャリアに由来するアルカリ金属カチオン、親水性樹脂が有するイオン交換基(例えばカルボキシル基)の中和反応に用いられたアルカリ金属カチオン、後述する酸性ガス水和反応触媒に由来するアルカリ金属カチオン等があるが、ここでいうアルカリ金属カチオンは、添加の目的を問わず全てのアルカリ金属カチオンを意味する。親水性樹脂組成物層に含まれるこれら全てのアルカリ金属カチオンの含有量は、親水性樹脂が有するイオン交換容量の総量に対して、1モル当量〜6モル当量の範囲が好ましく、1.5モル当量〜5モル当量の範囲がより好ましい。アルカリ金属カチオンの含有量が1モル当量未満であると、親水性樹脂組成物層の製膜性が悪くなるおそれがある。一方、アルカリ金属カチオンの含有量が6モル当量を超えると、所期の酸性ガスの選択透過性が得られないおそれがある。
(酸性ガス水和反応触媒)
酸性ガス水和反応触媒は、酸性ガスの水和反応の反応速度を増加させる触媒である。酸性ガス水和反応触媒としては、オキソ酸化合物を含むことが好ましく、14族元素、15族元素、及び16族元素からなる群より選択される少なくとも1つの元素のオキソ酸化合物を含むことがより好ましく、亜テルル酸化合物、亜セレン酸化合物、亜ヒ酸化合物、及びオルトケイ酸化合物からなる群より選択される少なくとも1つを含むことがさらに好ましい。より具体的には、亜テルル酸カリウム(KTeO、融点:465℃)、亜テルル酸ナトリウム(NaTeO、融点:710℃)、亜テルル酸リチウム(LiTe、融点:約750℃)、亜セレン酸カリウム(KSe、融点:875℃)、亜ヒ酸ナトリウム(NaOAs、融点:615℃)、オルトケイ酸ナトリウム(NaSi、融点:1018℃)等が好適に使用される。これらの中でも、より好ましくは亜テルル酸化合物であり、さらに好ましくは亜テルル酸カリウム又は亜テルル酸ナトリウムである。
酸性ガス水和反応触媒の融点が200℃以上であると、触媒が熱的に安定して親水性樹脂組成物層内に存在し得るため、ガス分離膜の性能を長期に亘って維持できる。酸性ガス水和反応触媒が水溶性であれば、酸性ガス水和反応触媒を含む親水性樹脂組成物層の作製が容易且つ安定的に行える。酸性ガス水和反応触媒として、亜テルル酸化合物、亜ヒ酸化合物、或いは、亜セレン酸化合物を使用した場合、何れも水溶性で融点が200℃以上であり、安定した膜性能改善が期待できる。
親水性樹脂組成物層中において、前記酸性ガス水和反応触媒の含有量は、前記アルカリ金属カチオン1モル当量に対して0.001モル当量以上0.030モル当量未満であり、0.003モル当量以上0.028モル当量未満であることが好ましく、0.005モル当量以上0.025モル当量未満であることがさらに好ましい。0.001モル当量以上とすることにより、酸性ガスの透過度を向上させることができる。また、0.030モル当量未満であることにより、運転時間の経過に伴って酸性ガスキャリアと反応しないガスの透過度が高くなることを抑制することができる。結果として、ガス分離プロセスの運転時間が経過しても、酸性ガスの分離性能の低下を抑制することができ、高い酸性ガス分離性能を長期間維持することができる。
(添加剤)
親水性樹脂組成物層は、酸化防止剤、フィラー等の添加剤を含んでいてもよい。酸化防止剤は、湿熱耐性を向上させる。酸化防止剤としては、市販品であれば、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、イルガノックス(登録商標)1010(BASFジャパン(株)製)、イルガノックス(登録商標)1035FF(BASFジャパン(株)製)、イルガノックス(登録商標)565(BASFジャパン(株)製)、イルガノックス(登録商標)L57(BASFジャパン(株)製)、イルガノックス(登録商標)295(BASFジャパン(株)製)などが挙げられる。
フィラーは、架橋型重合体や酸性ガスキャリアとの親和性を有し、且つ、高圧環境下での親水性樹脂組成物層の形状維持性を阻害しないものであれば、従来公知の物を使用でき、有機系又は無機系のいずれであってもよい。フィラーは、1種類単独で用いても構わないし2種類以上併用してもよい。2種以上併用する場合、有機系フィラー又は無機系フィラーのそれぞれを組み合わせてもよく、有機系及び無機系フィラーの混合の形態で用いてもよい。フィラーの粒子径としては特に制限は無いが、0.1μm〜5μm、好ましくは0.1μm〜2μm、より好ましくは0.3μm〜2μmの範囲であることが、欠陥を形成しにくい点から望ましい。フィラーの粒径は光散乱法により測定される。組成物にフィラーを添加する際の含有量としては、前記架橋型重合体に対して0.001質量%〜70質量%の割合とすることが好ましい。
(第1多孔層)
ガス分離膜は、第1多孔層を含む。第1多孔層は、親水性樹脂組成物層を透過したガス成分の拡散抵抗とならないように、ガス透過性の高い多孔性を有することが好ましい。多孔層は、1層構造でもよく2層以上の積層構造であってもよい。ガス分離膜をなす多孔層等の部材は、ガス分離膜の適用が想定される水素や尿素等を製造するプラントでのプロセス条件に応じた耐熱性を有することが好ましい。本明細書において「耐熱性」とは、多孔層等の部材を、ガス分離膜が適用されるプラントでのプロセス条件以上の温度条件下に2時間保存した後も、熱収縮或いは熱溶融による目視で確認し得るカールが生じないこと等の保存前の形態が維持されることを意味する。
第1多孔層は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の含フッ素樹脂;ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、高分子量ポリエステル等のポリエステル樹脂;ポリスチレン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、高分子量ポリエステル、耐熱性ポリアミド、アラミド、ポリカーボネート等の樹脂;金属、ガラス、セラミックスなどの無機材料等が挙げられる。これらの中でも、撥水性及び耐熱性の点から、PTFE、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなどの含フッ素樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、セラミックが好ましく、さらには、PTFEが、微小孔径を得やすいこと、気孔率を高くできるために分離のエネルギー効率が良いこと等の理由からより好ましい。
第1多孔層の厚さは特に限定されないが、機械的強度の観点からは、通常、10μm〜3000μmの範囲が好ましく、10μm〜500μmの範囲がより好ましく、15μm〜150μmの範囲がさらに好ましい。第1多孔層の細孔の平均孔径は特に限定されないが、10μm以下が好ましく、0.005μm〜1.0μmの範囲がより好ましい。第1多孔層の空孔率は、5%〜99%の範囲が好ましく、30%〜90%の範囲がより好ましい。
(ガス分離膜に含まれ得るその他の層)
ガス分離膜は、親水性樹脂組成物層及び第1多孔層以外の層を1層又は2層以上含むことができる。
例えば、ガス分離膜は、親水性樹脂組成物層における第1多孔層とは反対側の面上に設けられる多孔性の第2多孔層(多孔性の保護層)を含むことができる。分離膜エレメントの製造時に、露出した親水性樹脂組成物層に直接機械的負荷が掛ることがあるが、第2多孔層を設けることにより、親水性樹脂組成物層を保護することにより損傷が生じることを抑制することができる。第2多孔層は、特に限定されないが、ガス分離膜が適用されるプラントでのプロセス条件に応じた耐熱性を有する材料が好ましく、例えば第1多孔層を構成する材料として挙げた材料と同様の材料を好適に用いることができる。第2多孔層としては、例えば、平均孔径が0.001μm〜10μmである不織布、織布、ネット等を適宜選択して用いることができる。第2多孔層は、1層構造でもよく2層以上の積層構造であってもよい。
ガス分離膜は、第1多孔層における親水性樹脂組成物層とは反対側の面上に設けられる多孔性の第3多孔層(多孔性の補強層)を含むことができる。第3多孔層を設けることにより、ガス分離膜の製造に際し、第1多孔層に親水性樹脂組成物層を形成する工程において第1多孔層にかかる張力負荷に耐え得る強度を追加的に付与することができるとともに、原料ガスから透過ガスを分離するときにガス分離膜にかかる圧力負荷等に耐え得る強度を追加的に付与することができる。
第3多孔層は、耐圧強度と耐延伸性とを有し、ガス透過性を有する構造及び材質であれば特に限定されないが、ガス分離膜が適用されるプラントでのプロセス条件に応じた耐熱性を有する材料が好ましく、例えば、第1多孔層を構成する材料として挙げた材料と同様の材料を好適に用いることができる。第3多孔層としては、例えば、平均孔径が0.001μm〜10μmである不織布、織布、ネット等を適宜選択して用いることができる。第3多孔層は、1層構造でもよく2層以上の積層構造であってもよい。
〔ガス分離膜の製造方法〕
ガス分離膜の製造方法は、下記の第1工程(塗工液作製工程)、第2工程(塗布工程)、及び第3工程(乾燥工程)の3工程を含むことができる。第2工程及び第3工程は、多孔層を連続的に搬送しながら行うロール・トゥ・ロール(Roll-to-Roll)方式の塗工機や乾燥機を用いることが好ましい。
第1工程(塗工液作製工程)では、少なくとも親水性樹脂と酸性ガスキャリアと酸性ガス水和反応触媒を媒質と混合することによって塗工液を調製する。塗工液は、アルカリ金属カチオンに対して酸性ガス水和反応触媒が0.001モル当量以上0.030モル当量未満含まれるように調製する。なお、塗工液における酸性ガス水和反応触媒とアルカリ金属カチオンとの物質量比は、第3工程を経て得られた親水性樹脂組成物層中においても維持される。
媒質としては、例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール等のプロトン性極性溶媒;トルエン、キシレン、ヘキサン等の無極性溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒;等が挙げられる。媒質は、1種類を単独で用いてもよく、相溶する範囲で2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコールからなる群から選択される少なくとも1つが含まれる媒質が好ましく、水が含まれる媒質がより好ましい。
塗工液には、必要に応じて界面活性剤を添加してもよい。塗工液を疎水性の多孔膜に塗布する場合、界面活性剤を塗工液に添加することにより、塗工液によって形成される親水性樹脂組成物層と疎水性の多孔膜との界面に界面活性剤が偏在し、疎水性の多孔膜との濡れ性が向上して親水性樹脂組成物層の膜厚のムラ等を改善することができる。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の従来公知の界面活性剤を使用することができる。界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
第2工程(塗布工程)では、第1工程で調製した塗工液を多孔膜の一方の側の面に塗布し、塗膜を形成する。第2工程における塗工液の温度は、組成や濃度に応じて適宜決定すればよいが、温度が高すぎると塗工液から媒質が多量に蒸発して組成や濃度が変化したり、塗膜に蒸発痕が残ったりするおそれがあるので、15℃以上であることが好ましく、室温(20℃)以上であることがより好ましく、かつ、使用している媒質の沸点よりも5℃以下の温度範囲が好ましい。例えば、媒質として水を用いた場合には、第2工程における塗工液の温度は、15℃〜95℃の温度範囲が好ましい。
塗工液を多孔膜に塗布する方法は、特に限定されず、例えばスピンコート法、バー塗布、ダイコート塗布、ブレード塗布、エアナイフ塗布、グラビアコート、ロールコーティング塗布、スプレー塗布、ディップ塗布、コンマロール法、キスコート法、スクリーン印刷、インクジェット印刷等を挙げることができる。塗工液の塗布量は、目付け量(単位面積当たりの固形分量)が1g/m〜1000g/mの範囲であることが好ましく、5g/m〜750g/mの範囲であることがより好ましく、10g/m〜500g/mの範囲であることがさらに好ましい。目付け量の調節は、塗膜の形成速度(例えば、多孔膜層の搬送速度)や塗工液の濃度、塗工液の吐出量等で制御することができる。また、塗工液の多孔膜層への塗布は、ストライプ状やドット状になるようにしてもよい。
また、塗工液を塗布する多孔膜は、ガス分離膜の第1多孔層に相当する多孔膜であってもよいし、親水性樹脂組成物層を形成するための仮塗工部材であってもよい。塗工液を仮塗工部材に塗布する場合、後述する第3工程(乾燥工程)の後、形成した親水性樹脂組成物層を仮塗工部材から剥離する工程と、第1多孔層に剥離した親水性樹脂組成物層を積層する工程とを含む。そのため、仮塗工部材は、該仮塗工部材上に形成した親水性樹脂組成物層を損傷なく剥離できる多孔体であればよい。
第3工程(乾燥工程)では、形成した塗膜から媒質を除去する。媒質の除去方法には、特に制限はないが、加熱された空気等を通風させることによって媒質を蒸発除去させ、塗膜を乾燥させる方法が好ましい。具体的には、例えば、所定温度及び所定湿度に調節された通風乾燥炉に塗布物(塗膜を形成した多孔膜)を搬入して、塗膜から媒質を蒸発除去すればよい。塗膜の乾燥温度は、塗工液の媒質と多孔膜の種類とに応じて適宜決定すればよい。通常、媒質の凝固点よりも高く、かつ、多孔膜をなす材料の融点よりも低い温度とするのが好ましく、一般に80℃〜200℃の範囲が好適である。第3工程での乾燥工程を経て親水性樹脂組成物層20が形成される。得られる親水性樹脂組成物層20に含まれる媒質の濃度は、好ましくは1重量%〜34重量%である。
親水性樹脂組成物層における露出面(多孔膜と接する側とは反対側の面)に対して、上記第2工程及び上記第3工程を1回以上繰り返すことにより、親水性樹脂組成物層を積層してもよい。これにより、塗工液を塗布するときの塗膜のムラ等に起因して発生し得る親水性樹脂組成物層のピンホールを抑制することができる。第2工程及び第3工程を繰り返すときの、塗工液の組成や塗布量等の塗工条件及び乾燥条件は、それぞれの親水性樹脂組成物層の積層において、互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。上記第1工程、第2工程及び第3工程を行うことにより、ガス分離膜を製造することができる。
[スパイラル型のガス分離膜エレメント]
ガス分離膜エレメントが、スパイラル型ガス分離膜エレメントである場合の本発明の一実施形態について説明する。本実施形態のスパイラル型ガス分離膜エレメントは(以下、単に「ガス分離膜エレメント」ということがある。)、
ガス分離膜と、
原料ガスが流れる供給側流路部材(供給側のガス流路を形成する流路部材)と、
ガス分離膜を透過した酸性ガスが流れる透過側流路部材(透過側のガス流路を形成する流路部材)と、
透過側流路部材を流れる前記酸性ガスを収集する中心管と、をさらに有し、
ガス分離膜は、
シート状であり、
供給側流路部材と透過側流路部材との間に挟まれており、
供給側流路部材とガス分離膜と透過側流路部材とで形成される積層体が中心管に巻回されている構造を有する。
ガス分離膜については、上述の説明が適用される。本発明に係るガス分離膜エレメントの一例において積層体は、ガス分離膜と流路部材とからなる分離膜−流路部材複合体(膜リーフ)を含む。以下、図面を参照しながら、本実施形態に係るガス分離膜エレメントの実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係るガス分離膜エレメントの一例であるガス分離膜エレメント1を展開し、一部切欠き部分を設けた概略の斜視図である。図2は、本発明に係るガス分離膜エレメントの一例であるガス分離膜エレメント1を示す、一部展開部分を設けた概略の斜視図である。図3は、本発明に係るガス分離膜エレメントの一例であるガス分離膜エレメント1を構成する巻回体(積層体)の一部を例示的に示す概略の断面図である。
なお、図1〜3に示されるガス分離膜エレメント及び巻回体(積層体)の層構成は例示であり、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。
ガス分離膜エレメント1は、図1及び図2に示されるように、ガス分離膜2、供給側流路部材3及び透過側流路部材4をそれぞれ1以上含むとともに、これらを積層した積層体7が中心管5に巻回された巻回体を備えることができる。巻回体は、円筒状、角筒状等の任意の形状であってもよいが、円筒状のハウジング(容器)に収納されることから円筒状であることが好ましい。
ガス分離膜エレメント1は、さらに、巻回体の巻戻しや巻崩れを防止するために、外周テープやテレスコープ防止板(ATD)等の固定部材(図示せず)を備えていてもよく、ガス分離膜エレメント1にかかる内圧及び外圧による負荷に対する強度を確保するために、巻回体の最外周にアウターラップ(補強層)を有していてもよい。外周テープは、巻回体の外周に巻き付けられることにより、巻回体の巻戻しを抑制することができる。テレスコープ防止板は、巻回体の両端部に取付けられ、ガス分離膜エレメント1の使用中に、巻回体に巻崩れ(テレスコープ)現象が発生することを抑制することができる。アウターラップ(補強層)は、例えばガラスファイバーにエポキシ樹脂を含浸した繊維強化樹脂などの補強材を用いることができ、巻回体の最外周に補強材を巻き付けた後にエポキシ樹脂を硬化させることが好ましい。
〔巻回体〕
ガス分離膜エレメント1をなす巻回体は、図3に示されるように、例えば、透過側のガス流路を形成する流路部材4、ガス分離膜2、供給側のガス流路を形成する流路部材3、ガス分離膜2がこの順に繰返し積層された積層体7から構成することができる。ガス分離膜2は、多孔体からなる第1多孔層21と親水性樹脂組成物層20とを含む。
供給側流路部材3は、原料ガスが供給される部材であり、この部材を通してガス分離膜2に原料ガスが供給される。ガス分離膜2は、第1多孔層21と、供給側流路部材3から供給される原料ガスに含まれる酸性ガスを分離して透過させる親水性樹脂組成物層20とを含む。透過側流路部材4は、ガス分離膜2を透過した透過ガス(ガス分離膜2に供給された原料ガスの少なくとも一部を含む。)が流れる部材であり、該透過ガスを中心管5へ誘導する。中心管5は、透過流路部材4を流れる透過ガスを収集する。
〔分離膜−流路部材複合体〕
巻回体を構成する積層体7は、分離膜−流路部材複合体(膜リーフ)を含む。分離膜−流路部材複合体とは、対向するガス分離膜2と、この対向するガス分離膜2の間に挟み込まれた流路部材とで構成される。対向するガス分離膜2は、一枚のガス分離膜が二つ折りにされてなる折り曲げ分離膜であってもよいし、二枚のガス分離膜が対向するように組み合わせてなる組み上げ分離膜であってもよい。対向するガス分離膜2に挟まれる流路部材は、例えば、供給側流路部材3であるが、透過側流路部材4であってもよい。対向するガス分離膜2に挟まれる流路部材が供給側流路部材3である場合、ガス分離膜2は、第1多孔層21を外側にして、すなわち、第1多孔層21を親水性樹脂組成物層20よりも外側にして形成される。対向するガス分離膜2のサイズは、例えば、0.5m〜1.5m×0.5m〜1.5m程度であってよい。なお、ガス分離膜エレメントの形式等によっては、対向するガス分離膜2は、親水性樹脂組成物層20を第1多孔層21よりも外側にして形成されることもある。
(供給側流路部材及びそれを含む分離膜−流路部材複合体)
分離膜−流路部材複合体は、対向するガス分離膜2と、この対向するガス分離膜2の間に挟み込まれた流路部材とを含む。流路部材は、供給側流路部材3又は透過側流路部材4であることができる。スパイラル型ガス分離膜エレメントにおいて、分離膜−流路部材複合体は、例えば、供給側流路部材3を含む。
スパイラル型ガス分離膜エレメントに含まれる分離膜−流路部材複合体を構成する供給側流路部材3は、原料ガスが供給される流路空間を形成するものであり、この流路空間によって原料ガスを巻回体の内部に導き、ガス分離膜2に原料ガスを供給する。
供給側流路部材3は、原料ガスの流路空間を形成する流路材としての機能と、原料ガスに乱流を生じさせてガス分離膜2の供給側面の表面更新を促進させつつ、供給される原料ガスの圧力損失をできるだけ小さくする機能とを備えていることが好ましい。この観点から、供給側流路部材3は、網目形状(ネット状、メッシュ状等)を有することが好ましい。網目形状によって原料ガスの流路が変わることから、供給側流路部材3における網目の単位格子の形状は、目的に応じて、例えば、正方形、長方形、菱形、平行四辺形等の形状から選択されることが好ましい。
供給側流路部材3を構成する材料としては、樹脂、及び金属、ガラス、セラミックス等の無機材料が挙げられる。供給側流路部材3を構成する材料は、ガス分離膜2が使用される温度条件に応じた耐熱性を有することが好ましい。また、供給側流路部材3を構成する材料は、原料ガスの流路空間を形成する流路材としての機能を維持する観点から、高い機械的強度(剛性)を有することが好ましい。
耐熱性及び剛性の高い材料としては、例えば、PE、PP、PTFE、PS、PPS、PES、PEEK、PI、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)等の樹脂材料;金属、ガラス、セラミックス等の無機材料;樹脂材料と無機材料とを組み合わせた材料が挙げられる。
供給側流路部材3は、樹脂、金属及びガラスからなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む不織布、織布又はネットからなる層を含むことが好ましく、PE、PP、PTFE、PS、PPS、PES、PEEK、PI、PCT、金属及びガラスからなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む不織布、織布又はネットからなる層を含むことがより好ましい。
供給側流路部材3は、1層構造でもよく2層以上の積層構造であってもよい。例えば、上記不織布、織布又はネットからなる層を複数積層した構造であってもよい。
供給側流路部材3の厚み(複数積層した構造である場合にはそれらの総厚み)は、流通するガスの圧力損失及び機械的強度等の観点からは、10μm〜7500μmの範囲が好ましく、50μm〜5000μmの範囲がより好ましく、100μm〜2500μmの範囲がさらに好ましい。
〔透過側流路部材〕
透過側流路部材4は、ガス分離膜2を透過した透過ガスが流れる流路空間を形成するものであり、この流路空間によって透過ガスを中心管5に導く。
透過側のガス流路を形成する流路部材4は、透過ガスの流路空間を形成する流路材としての機能と、透過ガスに乱流を生じさせてガス分離膜2の透過側面の表面更新を促進する機能とを備えていることが好ましい。この観点から、透過側のガス流路を形成する流路部材4は、網目形状(ネット状、メッシュ状等)を有することが好ましい。網目形状によって透過ガスの流路が変わることから、透過側のガス流路を形成する流路部材4における網目の単位格子の形状は、目的に応じて、例えば、正方形、長方形、菱形、平行四辺形等の形状から選択されることが好ましい。
透過側流路部材4を構成する材料は、特に限定されないが、ガス分離膜2が使用される温度条件に応じた耐熱性を有する材料が好ましく、例えば、第1多孔層21を構成する材料として挙げた樹脂材料と同様の材料を好適に用いることができる。具体的には、PTFE、PES、PSF、PEEK、PI、金属が好ましく、PTFE、PPS、PEEK、金属がより好ましい。透過側流路部材4は、1層構造でもよく2層以上の積層構造であってもよい。
〔中心管〕
中心管5は、ガス分離膜2を透過した透過ガスを収集して、ガス分離膜エレメント1から排出するための導管である。中心管5の材質は特に限定されないが、ガス分離膜2が使用される温度条件に応じた耐熱性を有する材料が好ましい。また、ガス分離膜2等が外周に複数回巻き付けられることによって巻回体が形成されることから、機械的強度を有する材料であることが好ましい。中心管5の材質としては、例えば、ステンレス等が好適に用いられる。中心管5の直径や長さ、肉厚は、ガス分離膜エレメント1の大きさ、積層体7中の分離膜−流路部材複合体50の数、透過ガスの量、中心管5に要求される機械的強度等に応じて適宜設定される。
中心管5は、巻回体が円筒状である場合には円管であることが好ましく、巻回体が角筒状である場合には角管であることが好ましい。
中心管5は、図2に示すように、中心管5の外周面に、透過側のガス流路を形成する流路部材4の透過ガスの流路空間と中心管5内部の中空空間とを連通させる複数の孔30を有している。中心管5に設けられる孔30の数や孔30の大きさは、透過側のガス流路を形成する流路部材4から供給される透過ガスの量や中心管5に要求される機械的強度を考慮して決定される。例えば、中心管5に設けられる孔の大きさを大きくすることができない場合には、中心管5に設ける孔の数を増やし、透過ガスの流路を確保するようにしてもよい。中心管5に設けられる孔30は、中心管5の軸に平行な方向に亘って均一な間隔で形成されていてもよく、中心管5のいずれか一方の端部側に偏在していてもよい。
[スパイラル型ガス分離膜エレメントの製造方法]
上述の〔ガス分離膜の製造方法〕の記載にしたがって製造したガス分離膜を用いて、次のようにしてガス分離膜エレメントを製造することができる。以下、図4(a)及び図4(b)を参照しながら、分離膜−流路部材複合体50を構成する流路部材が供給側流路部材3である場合におけるガス分離膜エレメント1の製造方法について説明する。図4は、ガス分離膜エレメント1の一例を展開して示す、(a)は概略の断面図であり、(b)は概略の平面図である。
なお、図4(b)においては、図4(a)に示されている一番下の透過側流路部材4(中心管5に固定されている透過側のガス流路を形成する流路部材4)とその上に積層されている分離膜−流路部材複合体50のみを示している。
まず、巻回体を形成したときに、中心管5の軸に直交する方向の両端に位置する透過側流路部材4の端部のうち中心管5に近い側の端部(巻回体において内周側に位置する端部)を、粘着テープや接着剤等を用いて中心管5の外周面に固定する。
また、対向するガス分離膜2と、この対向するガス分離膜2に挟み込まれた供給側流路部材3とで構成される分離膜−供給側流路部材複合体50を複数作製する。親水性樹脂組成物層20を作製する際に用いた多孔体をガス分離膜2の第2多孔層とする場合、該多孔体の一方面に形成された親水性樹脂組成物層20が露出した面上に第1多孔層21を積層し、この第2多孔層を含むガス分離膜2の第2多孔層側が内側となるように分離膜2を対向させて、分離膜−流路部材複合体50を形成すればよい。親水性樹脂組成物層20を作製する際に用いた多孔体をガス分離膜2の第1多孔層21とする場合、該多孔体の一方面に形成された親水性樹脂組成物層20が露出した面上に第2多孔層を積層してもよい。
また、ガス分離膜2が第3多孔層を有する場合は、ガス分離膜2の第1多孔層21上に第3多孔層を積層すればよい。具体的には、親水性樹脂組成物層20を作製する際に、第1多孔層21に相当する多孔体上にあらかじめ第3多孔層を積層し、その後、第1多孔層21に相当する多孔体の第3多孔層を設けた側とは反対側に親水性樹脂組成物層20を設ければよい。多孔体上に第3多孔層を積層する方法として、多孔体と第3多孔層とが互いに接する表面の熱融着や、接着剤や粘着剤を用いた多孔体と第3多孔層との固着等が挙げられる。
次に、中心管5に固定した透過側流路部材4に1つの分離膜−流路部材複合体50を積層する。この際、折り曲げ分離膜を用いる場合には、ガス分離膜2の折り曲げ部を中心管5側に向けるとともに、折り曲げ部が中心管5の外周面から離間する位置に配置されるように分離膜−流路部材複合体50を積層する。
続いて、透過側流路部材4に積層された分離膜−流路部材複合体50の露出面(分離膜−流路部材複合体50における透過側流路部材4とは反対側の面)に接着剤を塗布する。具体的には、分離膜−流路部材複合体50における幅方向(中心管5に平行な方向)の両端部、及び長さ方向(中心管5に直交する方向)の一端部(中心管5から遠い側)に接着剤を塗布する(図4(b)の接着部25)。
接着剤が塗布された分離膜−流路部材複合体50の露出面に、さらに透過側流路部材4及び分離膜−流路部材複合体50(以下、「次の透過側流路部材4」及び「次の分離膜−流路部材複合体50」ということがある。)をこの順に貼り合わせて積層する。このとき、次の透過側流路部材4及び次の分離膜−流路部材複合体50の面積は、先に積層した透過側流路部材4及び分離膜−流路部材複合体50の面積と等しいか小さい。
また、次の透過側流路部材4は、中心管5の軸に対して直交する方向の両端に位置する端部のうち中心管5に近い側が、先に積層した分離膜−流路部材複合体50の長さ方向の端部のうち中心管5に近い側の端部に一致するように積層してもよいし、先に積層した透過側流路部材4の露出面に貼り付けてもよい。
次の分離膜−流路部材複合体50は、次の透過側流路部材4よりも、中心管5の外周面から離間する位置に配置されるように積層する。
上記の操作を繰り返して、透過側流路部材4及び分離膜−流路部材複合体50を積層すると、透過側流路部材4及び分離膜−流路部材複合体50の、中心管5の軸に対して直交する方向の両端に位置する端部のうち中心管5に近い側が、中心管5から順に離間するように透過側流路部材4及び分離膜−流路部材複合体50が積層された積層体7が形成される。
その後、最後に積層した分離膜−流路部材複合体50の露出面にも、上記と同様に接着剤を塗布し、中心管5の孔30を、透過側流路部材4で覆うように中心管5の周囲に積層体7を巻き付けて巻回体を形成する。
上記のように、中心管5から次第に所定の間隔で離間するように透過側のガス流路を形成する流路部材4及び分離膜−流路部材複合体50を積層することにより、中心管5に積層体7を巻回したときに、透過側流路部材4と分離膜−流路部材複合体50との中心管5側の端部が所定の間隔で中心管5の円周方向に並ぶように巻回体を形成することができるため、効率良く透過側流路部材4を流れる透過ガスを中心管5に収集することができる。
上記接着剤としては、分離膜−流路部材複合体50と透過側流路部材4とを接着できるものであれば特に限定されないが、ガス分離膜2が使用される温度・湿度条件に応じた耐熱性と耐湿性とを兼ね備えた材料が好ましい。
上記接着剤としては、例えば、エポキシ系樹脂、塩化ビニル共重合体系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体系樹脂、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体系樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体系樹脂、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、フェノキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、尿素ホルムアミド系樹脂等の樹脂を接着成分とする接着剤が挙げられる。これらの中でも、エポキシ系樹脂(エポキシ系接着剤用樹脂)、シリコーン系樹脂が好ましく、エポキシ系樹脂がより好ましい。
エポキシ系樹脂は、アミン類や酸無水物等で硬化するエポキシ基を含有する化合物であればよく、硬化方式の観点からは、一液硬化型であっても二液混合型であってもよく、硬化温度の観点からは、加熱硬化型であっても常温硬化型であってもよい。封止材料は、使用時の粘度調整や硬化後の強度向上の目的で、無機あるいは有機の充填剤を含んでいてもよく、必要に応じて硬化触媒を含んでいてもよい。
接着剤の粘度は、接着剤が広がることによって接着部25が大きくなり、ガス分離膜2における有効面積が小さくなることを防ぐ観点から、25℃において、5000cP〜50000cPの範囲であることが好ましく、20000cP〜50000cPの範囲であることがより好ましい。
なお、分離膜−流路部材複合体50と透過側流路部材4とを接着する方法は、接着剤を用いる方法に限定されない。
積層体7は、張力を掛けながら中心管5の周囲に巻き付けることが好ましい。また、中心管5に積層体7を巻き付け始める際、分離膜−流路部材複合体50が積層されていない透過側流路部材4の中心管5の軸に平行な方向の両端部に、あらかじめ接着剤を塗布しておくことが好ましい。
積層体7を中心管5に巻き付けて巻回体を得た後、巻回体の外周面に外周テープを巻き付けて固定し、巻回体の巻戻しを抑制することができる。また、ガス分離膜エレメント1の使用中に巻回体の巻崩れ(テレスコープ)現象が発生することを抑制するために、巻回体の両端部にテレスコープ防止板を取付けることができる。外周テープを巻き付け、テレスコープ防止板を取付けた巻回体の外周にアウターラップ(補強層)としての補強材をさらに巻き付けてもよい。これにより、スパイラル型ガス分離膜エレメント1を製造することができる。
[ガス分離膜モジュール]
ガス分離膜モジュールは、例えばステンレス製等のハウジング(容器)内に、少なくとも1つのガス分離膜エレメント1を備えてなるものである。ガス分離膜モジュールは、ガス分離膜エレメント1を少なくとも1つハウジング内に収納し、ハウジングに原料ガス用の出入口及び透過ガス用の出口を取り付けることにより製造することができる。
ガス分離膜エレメント1の配列及び個数は、要求される酸性ガスの回収率に応じて選択することができる。ここで酸性ガスの回収率とは、下記式:
酸性ガスの回収率=(透過ガス中の酸性ガスの流量/原料ガス中の酸性ガスの流量)×100
で算出される値である。
ハウジング内に2以上のガス分離膜エレメント1を配置する場合には、ハウジング内に、2以上のガス分離膜エレメント1を並列又は直列に配列することができる。並列に配列するとは、少なくとも原料ガスを分配して複数のガス分離膜エレメント1の供給側端部31(図2)に導入することをいい、直列に配列するとは、少なくとも前段のガス分離膜エレメント1において排出側端部33(図2)から排出されたガス分離膜2を透過しなかった原料ガス(非透過ガス)を、後段のガス分離膜エレメント1の供給側端部31に導入することをいう。
例えば、ハウジング内に2つのガス分離膜エレメント1を並列に配列する場合には、ハウジング内に見かけ上、ガス分離膜エレメント1を直列に配置し、ハウジングに設けた入口から原料ガスを2つのガス分離膜エレメント1に並列に供給し、各ガス分離膜エレメント1のガス分離膜2を透過しなかった非透過ガスを、ハウジングに設けた出口から排出すればよい。この場合、ハウジングに設ける原料ガスの入口と非透過ガスの出口とは、ガス分離膜エレメント1毎にそれぞれ設けてもよく、2つのガス分離膜エレメント1で共有するようにしてもよい。あるいは、原料ガスが供給される入口を1つとし、非透過ガスの出口をガス分離膜エレメント1毎に設けて、出口を2つとしてもよく、これとは反対に、原料ガスが供給される入口をガス分離膜エレメント1毎に設けて、入口を2つとし、非透過ガスの出口を1つとしてもよい。
[ガス分離装置]
ガス分離装置は、ガス分離膜モジュールを少なくとも1つ備える。ガス分離装置に備えられるガス分離膜モジュールの配列及び個数は、要求される処理量、酸性ガスの回収率、ガス分離装置を設置する場所の大きさ等に応じて選択することができる。
ガス分離膜モジュールの供給口から原料ガスをハウジング内に導入し、ハウジング内のガス分離膜エレメント1の供給側端部31から原料ガスが連続的に供給側流路部材3に供給され(図2の矢印a)、供給側流路部材3を流れる原料ガスに含まれる酸性ガスがガス分離膜2を透過する。ガス分離膜2を透過した透過ガスは、透過側流路部材4内を流れて孔30から中心管5に供給され、中心管5の排出口32から連続的に収集された後(図2の矢印b)、中心管5の内部と連通するガス分離膜モジュールの透過ガス排出口から排出される。一方、ガス分離膜2を透過しなかった非透過ガスは、ガス分離膜エレメント1の排出側端部33から連続的に排出された後(図2の矢印c)、排出側端部33と連通するガス分離膜モジュールの非透過ガス排出口から排出される。このようにして、原料ガスから、酸性ガスを分離することができる。
図5は、本発明のガス分離装置の一例を示す概略図である。図5のガス分離装置は、供給される原料ガスの温度、湿度、圧力などを調整する調整器Aと、ガス分離膜モジュールMと、ガス分離膜エレメント1のガス分離膜2を透過した透過ガスの圧力を調整する背圧調整器Bとを備える。ガス分離膜モジュールMは、供給される原料ガスの流量と要求される酸性ガスの回収率とに応じて、ハウジングの中に1基以上のガス分離膜エレメントを備えたガス分離膜モジュールを並列又は直列に連結したガス分離膜モジュール群であってもよい。並列にガス分離膜モジュールを連結した場合、透過ガスの圧力を調整する背圧調整基Bは、ガス分離膜モジュール毎の透過ガスの排出口32の後に備えても良いし、1基以上のガス分離膜モジュールの透過ガスの排出口を束ねた後に備えられていてもよい。
ガス分離膜モジュールMに供給される原料ガスは、調整器Aによって温度、湿度、圧力などが調整される。ガス分離膜モジュールMに供給される原料ガスの温度を調整する場合は、熱回収や排熱利用などを兼ねてもよい。調整器Aとしては、例えば、熱交換装置、加圧・減圧装置、気泡塔、加湿装置、又はこれらの組み合わせなどが挙げられる。
透過ガスの圧力は背圧調整器Bによって調整される。背圧調整器Bとしては、加圧装置、減圧装置、背圧弁など従来公知の圧力調整装置を用いることができる。あるいはまた、ガス分離膜エレメントにおける透過側の流路構造による圧力損失を利用して、透過ガスの圧力調整を行ってもよい。
ガス分離装置は、酸性ガスの回収率が10%以上となる条件で設計及び運転することが好ましく、回収率が20%〜80%あることがさらに好ましい。回収率をこのような範囲とすることにより、ガス分離膜エレメントの長期性能を安定的に維持しつつ、酸性ガスを高効率で回収することができる。
[ガス分離方法]
ガス分離膜エレメントの供給側端部31から、少なくとも酸性ガスを含む原料ガスが連続的に供給側流路部材3に供給され(図2の矢印a)、供給側流路部材3を流れる原料ガスに含まれる酸性ガスがガス分離膜2を透過する。ガス分離膜2を透過した透過ガスは、透過側流路部材4内を流れて孔30から中心管5に供給され、中心管5の排出口32から連続的に収集される(図2の矢印b)。一方、ガス分離膜2を透過しなかった非透過ガスは、ガス分離膜エレメントの排出側端部33から連続的に排出される(図2の矢印c)。このようにして、少なくとも酸性ガスを含む原料ガスから、酸性ガスを分離することができる。
酸性ガスの回収率を向上するガス分離方法として、ガス分離膜2を透過した透過ガスを希釈するために、ガス分離膜2の透過側に水蒸気等の不活性ガスを含むスイープガスを供給してもよい。この場合、ガス分離膜エレメント1は、ガス分離膜2を透過した透過ガスとスイープガスとを含む排出ガスを排出する中心管5の排出口32とは反対の開口部にスイープガス供給口と、中心管5の内部を二分割する隔壁とをさらに備える。すなわち、中心管5の外表面に有する孔の一部は、中心管5のスイープガスの供給口から供給されたスイープガスをガス分離膜エレメント1の透過側流路部材で形成される流路に導入するために用いられ、その他の孔は、ガス分離膜2を透過した透過ガスを含むスイープガスを中心管5の内部に収集するために用いられる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[試験例1:平膜のCOパーミアンスの評価(標準条件)]
(ガス分離膜Iの作製)
容器に、媒質としての水を173.8gと、親水性樹脂としての架橋ポリアクリル酸(住友精化社製「アクペックHV−501」、イオン交換容量13.5meq/g)を4g及び非架橋ポリアクリル酸(住友精化社製「アクパーナAP−40F」、40%Na鹸化、イオン交換容量12.4meq/g)0.8gとを仕込み、親水性樹脂を水に分散させた分散液を得た。この分散液に、酸性ガスキャリアとしての50%水酸化セシウム水溶液を38.1g添加し混合した後、酸性ガス水和反応触媒としての10%亜テルル酸ナトリウム水溶液を0.3g加えて混合し、さらに10%界面活性剤(AGCセイミケミカル社製「サーフロンS−242」)水溶液を1.2g加えて混合して塗工液Iを得た。得られた塗工液Iを、第1多孔層としてのPTFE多孔膜(住友電工ファインポリマー社製「ポアフロンHP−010−50」、膜厚50μm、細孔径0.1μm)の一方の面上に塗布した後、第2多孔層として、上記第1多孔層に用いたものと同じPTFE多孔膜を被せ、温度120℃程度で15分間程度乾燥させた。これにより、第1多孔層21上に親水性樹脂組成物層20及び第2多孔層をこの順に備えるガス分離膜Iを作製した。作製したガス分離膜Iにおいて、酸性ガス水和反応触媒の含有量は、アルカリ金属カチオンに対して0.001モル当量であり、アルカリ金属カチオンの含有量は、親水性樹脂が有するイオン交換容量の総量(64mmol)に対して2.0モル当量(=131mmol−アルカリ金属カチオン/64mmol−イオン交換容量の総量)である。
(ガス分離膜IIの作製)
塗工液IIを用いて、ガス分離膜Iと同様にしてガス分離膜IIを作製した。塗工液IIは、媒質として加えた水の量が170.9g、酸性ガス水和反応触媒として加えた10%亜テルル酸ナトリウム水溶液の量が3.18gであった点以外は、塗工液Iと同様にして得た。作製したガス分離膜IIにおいて、酸性ガス水和反応触媒の含有量は、アルカリ金属カチオンに対して0.011モル当量であり、アルカリ金属カチオンの含有量は、親水性樹脂が有するイオン交換容量の総量(64mmol)に対して2.1モル当量(=134mmol−アルカリ金属カチオン/64mmol−イオン交換容量の総量)である。
(ガス分離膜IIIの作製)
塗工液IIIを用いて、ガス分離膜Iと同様にしてガス分離膜IIIを作製した。塗工液IIIは、媒質として加えた水の量が167.7g、酸性ガス水和反応触媒として加えた10%亜テルル酸ナトリウム水溶液の量が6.36gであった点以外は、塗工液Iと同様にして得た。作製したガス分離膜IIIにおいて、酸性ガス水和反応触媒の含有量は、アルカリ金属カチオンに対して0.021モル当量であり、アルカリ金属カチオンの含有量は、親水性樹脂が有するイオン交換容量の総量(64mmol)に対して2.1モル当量(=137mmol−アルカリ金属カチオン/64mmol−イオン交換容量の総量)である。
(ガス分離膜IVの作製)
塗工液IVを用いて、ガス分離膜Iと同様にしてガス分離膜IVを作製した。塗工液IVは、媒質として加えた水の量が163.9g、酸性ガス水和反応触媒として加えた10%亜テルル酸ナトリウム水溶液の量が10.18gであった点以外は、塗工液Iと同様にして得た。作製したガス分離膜IVにおいて、酸性ガス水和反応触媒の含有量は、アルカリ金属カチオンに対して0.033モル当量であり、アルカリ金属カチオンの含有量は、親水性樹脂が有するイオン交換容量の総量(64mmol)に対して2.2モル当量(=140mmol−アルカリ金属カチオン/64mmol−イオン交換容量の総量)である。
(ガス分離膜Vの作製)
塗工液Vを用いて、ガス分離膜Iと同様にしてガス分離膜Vを作製した。塗工液Vは、媒質として加えた水の量が161.4g、酸性ガス水和反応触媒として加えた10%亜テルル酸ナトリウム水溶液の量が12.72gであった点以外は、塗工液Iと同様にして得た。作製したガス分離膜Vにおいて、酸性ガス水和反応触媒の含有量は、アルカリ金属カチオンに対して0.040モル当量であり、アルカリ金属カチオンの含有量は、親水性樹脂が有するイオン交換容量の総量(64mmol)に対して2.2モル当量(=142mmol−アルカリ金属カチオン/64mmol−イオン交換容量の総量)である。
(ガス分離膜VIの作製)
塗工液VIを用いて、ガス分離膜Iと同様にしてガス分離膜VIを作製した。塗工液VIは、媒質として加えた水の量が174.1gであり、酸性ガス水和反応触媒としての10%亜テルル酸ナトリウム水溶液を加えなかった点以外は、塗工液Iと同様にして得た。作製したガス分離膜VIにおいて、酸性ガス水和反応触媒の含有量は、アルカリ金属カチオンに対して0モル当量であり、アルカリ金属カチオンの含有量は、親水性樹脂が有するイオン交換容量の総量(64mmol)に対して2.0モル当量(=131mmol−アルカリ金属カチオン/64mmol−イオン交換容量の総量)である。
(COパーミアンスの評価)
図6に示す、ガス分離膜セル51を備えたガス分離装置を用いて、ガス分離膜2のCOパーミアンスを測定した。具体的には、ガス分離膜I〜Vを適切な大きさにカットして平膜形状とし、これらを各々ステンレス製のガス分離膜セル51の供給側室52と透過側室53の間に固定した。
原料ガス(CO:34.4%、N:45.6%、HO:20.0%)を1749NmL/minの流量でガス分離膜セル51の供給側室52に供給し、スイープガス(HO:100%)を235NmL/minの流量でガス分離膜セル51の透過側室53に供給した。ここで、水を定量送液ポンプ58及び60でそれぞれ送入し、加熱して蒸発させて、HOが上記混合比率となるように調整した。供給側室52の圧力は、非透過ガスの排出路の途中の冷却トラップ54の下流側に設けられた背圧調整器55によって900kPaAに調整した。また、冷却トラップ56とガスクロマトグラフ57の間にも背圧調整器59が設けられており、これによって透過側室53の圧力を大気圧に調整した。透過側流路層53から排出されたスイープガス中の水蒸気を冷却トラップ56で除去した後の透過ガスをガスクロマトグラフ57で分析し、COのパーミアンス(mol/(ms kPa))を算出した。かかる算出値を用いて、上述の計算式にしたがってCO回収率を計算した。表1に結果を示す。
なお、図示していないが、ガス分離膜セル51及び原料ガスとスイープガスの温度を一定に維持するために、ガス分離膜セル51と原料ガスをガス分離膜セル51に供給する配管は、所定の温度に設定した恒温槽内に設置されている。本試験例は、ガス分離膜セル51及び原料ガスとスイープガスの温度を122℃、原料ガスの湿度を85%RH、スイープガスの湿度を47%RHとして実施した。
(考察)
表1から明らかなように、酸性ガス水和反応触媒は、わずかな添加量であってもCOパーミアンスを向上させる効果があることがわかった。例えば、酸性ガス水和反応触媒を含まない場合(ガス分離膜VI)と比較すると、酸性ガス水和反応触媒の含有量が0.001モル当量程度(ガス分離膜I)であってもCOパーミアンスを12%程度向上させる効果があることがわかった。
[試験例2:平膜のNパーミアンスの評価(苛酷条件)]
上述したガス分離膜II〜Vを用いて、ガス分離膜エレメントによる酸性ガス分離で想定されるプロセス条件よりも苛酷条件において、Nパーミアンスを評価した。
(Nパーミアンスの評価)
ガス分離膜II〜Vについて、図6に示すガス分離膜セル51を備えたガス分離装置を用いて、試験例1と同様の方法により透過ガスをガスクロマトグラフ57で分析し、Nのパーミアンス(mol/(m s kPa))をした。なお、本試験例では以下の表2に示すガス分離膜を構成する親水性樹脂組成物層の薄膜化を含めた苛酷条件を採用し、試験例1における標準条件とは異なる条件で評価を行った。表3に、評価開始1時間後と16時間後とのNのパーミアンス(mol/(m s kPa))の比を示す。
(考察)
表3から明らかなように、ガス分離膜エレメントの供給側に相当する原料ガス及びガス分離膜エレメントの透過側に相当するスイープガスの湿度が低い苛酷条件において、酸性ガス水和反応触媒の含有量が0.030モル当量未満(ガス分離膜I〜III)であれば、膜が破損せずに安定したバリア性を有していることがわかった。
[試験例3:エレメントの性能評価]
(分離膜エレメントの作製)
上述のガス分離膜IIとVを用いて、図1及び図2に示すスパイラル型ガス分離膜エレメント1を作製した。スパイラル型ガス分離膜エレメントの作製に用いた部材の詳細は以下のとおりである。
・供給側流路部材:
PPSネット(50×50mesh)(ダイオ化成(株)製;商品名:50−150PPS)
・透過側流路部材:
PPSネット3層(50×50mesh/60×40mesh/50×50mesh)(ダイオ化成(株)製;商品名:50−150PPS及び60(40)−150PPS)
・中心管:
外径1インチのステンレス製、直径3mmの孔が中心管の外周に合計20個形成されたもの。孔は、中心管の軸に平行な方向に2列形成されており、積層体が巻回される中心管の軸に平行な方向の範囲に亘って均一な間隔となるように25.4mmのピッチで、1列あたり10個の孔が形成されている。2つの列は、中心管の軸を挟んで対向する位置に設けられている。
まず、ガス分離膜IIとVを用いて、第2多孔層の第2層側を内側にして二つ折りにし、二つ折りにされたガス分離膜の折り曲げ部に対向する開口より供給側流路部材を差し込むことにより、分離膜−流路部材複合体50を作製した。かかる分離膜−流路部材複合体50と、上記透過側流路部材と、上記中心管とを用い、上記[スパイラル型ガス分離膜エレメントの製造方法]の記載に従って、ガス分離膜エレメント1を作製した。具体的には次のとおりである。
二液混合型エポキシ系接着剤(アレムコ・プロダクツ社製「2310」)を用い、図4(a)及び図4(b)に示すように、中心管5に1層目の透過側のガス流路を形成する流路部材4の一端を固定した。上記で得られた分離膜−流路部材複合体50の一方の面において、中心管5の軸に平行な方向の両端部、及び、中心管5の軸に対して直交する方向の両端に位置する端部のうち中心管5から遠い側の端部に沿って帯状に上記と同じ接着剤を塗布し、この塗布面が透過側のガス流路を形成する流路部材4と対向するように、上記1層目の透過側のガス流路を形成する流路部材4に、1層目の分離膜−流路部材複合体50を積層した。分離膜−流路部材複合体50は、図4(a)に示すように、中心管5から離間するように積層した。
続いて、1層目の分離膜−流路部材複合体50の露出面に上記と同様に帯状に接着剤を塗布した後、2層目の透過側のガス流路を形成する流路部材4を積層した。
2層目の分離膜−流路部材複合体50についても、1層目の分離膜−流路部材複合体50と同様にして2層目の透過側のガス流路を形成する流路部材4に積層した。このとき、図4(a)に示すように、2層目の分離膜−流路部材複合体50の積層位置は、2層目の透過側のガス流路を形成する流路部材4よりも中心管5から離間した位置となるようにした。
その後、積層体7に含まれる各透過側のガス流路を形成する流路部材4における分離膜−流路部材複合体50が積層されていない中心管5の軸に平行な方向の両端部と中心管5の軸に対して直交する方向の両端に位置する端部のうち中心管5から遠い側の端部、及び最上面の分離膜−流路部材複合体50における中心管5の軸に平行な方向の両端部に、上記と同じ接着剤を塗布し、中心管5に積層体7を巻き付けて巻回体とし、外周テープとして耐熱テープを巻回体の外周に巻き付けた。その後、巻回体の軸に平行な方向の巻回体の両端部を切断し、その両端部の切断面に接してテレスコープ防止板を取り付け、巻回体の最外周にガラスファイバーにエポキシ樹脂(アレムコ・プロダクツ社製「2300」)を含浸した繊維強化樹脂でアウターラップ(補強層)を形成することで、ガス分離膜エレメント1を得た。得られたガス分離膜エレメント1の長さは15インチ(381mm)であった。
(Hパーミアンス及びCO/H選択率の測定)
図5に示すガス分離膜モジュールMを備えたガス分離装置を用いて、上記で得られたガス分離エレメントのHパーミアンスとCOパーミアンスを測定した。なお、ガス分離エレメントにガス分離膜IIを用いた試験例を試験例3A、ガス分離膜Vを用いた試験例を試験例3Bとする。
原料ガス(CO:21%、H:69%、HO:10%)を40Nm/hの流量でガス分離膜モジュールMに供給した。ガス分離膜モジュールMに供給される原料ガスの温度、圧力、湿度を、調整器Aにより、温度:110℃、圧力:1200kPaA、湿度:80%RHとなるように調整した。また、ガス分離膜モジュールMから排出される透過ガスの圧力を、背圧調整器Bにより、ガス分離膜モジュールMから排出される透過ガスの湿度が50%RHとなるように調整した。300時間運転を行った結果、COの平均回収率は28〜29%であった。背圧調整器Bから排出される透過ガス中の水蒸気を不図示の冷却トラップで除去した後の透過ガスをガスクロマトグラフで分析した。表4に、Hのパーミアンス(mol/(m s kPa))と分離係数(COパーミアンスとHパーミアンスとの比)について、評価開始3時間後と100時間後との比を計算した結果を示す。
(考察)
表4から明らかなように、スパイラル型ガス分離膜エレメントを構成し、スパイラル型ガス分離膜エレメントとして使用した場合であっても、酸性ガス水和反応触媒の含有量が0.030モル当量未満であるガス分離膜Iを用いた試験3Aでは、Hパーミアンスの増加を長期的に抑制できることがわかった。また、Hに対するCOの分離係数の低下も長期的に抑制できることがわかった。
試験例2〜3に示す結果に基づくと、酸性ガス水和反応触媒の含有量が0.030モル当量未満(ガス分離膜IIおよびIII)であれば、苛酷条件下であってもHパーミアンスの増加を長期的に抑制できるものであれば、試験例3におけるようにガス分離膜エレメントを構成しガス分離膜として使用した場合であっても、Hパーミアンスの増加とHに対するCOの分離係数の低下を長期的に抑制できると理解することができる。
水素や尿素等を製造する大規模プラントで合成される合成ガス、天然ガス、排ガス等から二酸化炭素等の酸性ガスを分離するプロセスにおいて利用することができる。
1 スパイラル型ガス分離膜エレメント(ガス分離膜エレメント)、2 ガス分離膜、3 供給側流路部材、4 透過側流路部材、5 中心管、7 積層体、20 親水性樹脂組成物層、21 第1多孔層(多孔層)、25 接着部、30 孔、31 供給側端部、32 排出口、33 排出側端部、50 分離膜−流路部材複合体、51 ガス分離膜セル、52 供給側室、53 透過側室、54,56 冷却トラップ、55 背圧調整器、57 ガスクロマトグラフ、58,60 定量送液ポンプ、M ガス分離膜モジュール、A 調整器、B 背圧調整器。

Claims (9)

  1. 酸性ガスを含む原料ガスから前記酸性ガスを分離するガス分離膜エレメントであって、
    前記ガス分離膜エレメントは、
    ガス分離膜を含み、
    前記ガス分離膜は、
    親水性樹脂組成物層と、
    多孔層と、を含み、
    前記親水性樹脂組成物層は、
    親水性樹脂と、
    前記酸性ガスと可逆的に反応し得る酸性ガスキャリアと、
    アルカリ金属カチオンと、
    酸性ガス水和反応触媒とを含み、
    前記酸性ガス水和反応触媒は、
    前記親水性樹脂組成物層中に前記アルカリ金属カチオンに対して0.001モル当量以上0.030モル当量未満の範囲で含まれている、ガス分離膜エレメント。
  2. 前記酸性ガスキャリアは、アルカリ金属塩を含む、請求項1に記載のガス分離膜エレメント。
  3. 前記アルカリ金属カチオンは、前記親水性樹脂組成物層中に前記親水性樹脂が有するイオン交換容量の総量に対して1モル当量以上6モル当量以下の範囲で含まれている、請求項1又は2に記載のガス分離膜エレメント。
  4. 前記酸性ガス水和反応触媒は、オキソ酸化合物を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス分離膜エレメント。
  5. 前記親水性樹脂組成物層の厚さは、1μm〜200μmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス分離膜エレメント。
  6. 前記ガス分離膜エレメントは、
    前記原料ガスが流れる供給側流路部材と、
    前記ガス分離膜を透過した前記酸性ガスが流れる透過側流路部材と、
    前記透過側流路部材を流れる前記酸性ガスを収集する中心管と、をさらに有し、
    前記ガス分離膜は、
    シート状であり、
    前記供給側流路部材と前記透過側流路部材との間に挟まれており、
    前記供給側流路部材と前記ガス分離膜と前記透過側流路部材とで形成される積層体が前記中心管に巻回されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガス分離膜エレメント。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のガス分離膜エレメントのうちの少なくとも一つをハウジング内に備える、ガス分離膜モジュール。
  8. 請求項7に記載のガス分離膜モジュールを少なくとも一つ備える、ガス分離装置。
  9. 酸性ガスを含む原料ガスから前記酸性ガスを分離するガス分離膜エレメントの製造方法であって、
    親水性樹脂組成物層と、多孔層とを有し、前記親水性樹脂組成物層が前記多孔層上に設けられたガス分離膜を準備する工程と、
    前記ガス分離膜を用いて前記ガス分離膜エレメントを作製する工程と、を含み、
    前記親水性樹脂組成物層は、
    親水性樹脂と、
    前記酸性ガスと可逆的に反応し得る酸性ガスキャリアと、
    アルカリ金属カチオンと、
    酸性ガス水和反応触媒とを含み、
    前記酸性ガス水和反応触媒は、
    前記親水性樹脂組成物層中に前記アルカリ金属カチオンに対して0.001モル当量以上0.030モル当量未満の範囲で含まれている、ガス分離膜エレメントの製造方法。
JP2017130540A 2017-07-03 2017-07-03 ガス分離膜エレメント、ガス分離膜モジュール、及びガス分離装置 Pending JP2019013861A (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017130540A JP2019013861A (ja) 2017-07-03 2017-07-03 ガス分離膜エレメント、ガス分離膜モジュール、及びガス分離装置
PCT/JP2018/021610 WO2019009000A1 (ja) 2017-07-03 2018-06-05 ガス分離膜エレメント、ガス分離膜モジュール、及びガス分離装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017130540A JP2019013861A (ja) 2017-07-03 2017-07-03 ガス分離膜エレメント、ガス分離膜モジュール、及びガス分離装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2019013861A true JP2019013861A (ja) 2019-01-31

Family

ID=64950879

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017130540A Pending JP2019013861A (ja) 2017-07-03 2017-07-03 ガス分離膜エレメント、ガス分離膜モジュール、及びガス分離装置

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP2019013861A (ja)
WO (1) WO2019009000A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021117361A1 (ja) * 2019-12-13 2021-06-17 住友化学株式会社 分離膜シート、分離膜エレメント、分離膜モジュール、及び分離装置

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7353281B2 (ja) 2017-11-15 2023-09-29 プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ 大環状化合物およびそれらの使用
EP4166530A4 (en) * 2021-06-08 2024-06-05 Ngk Insulators Ltd LIQUID FUEL SYNTHESIS SYSTEM

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
AU2013325599B2 (en) * 2012-10-02 2016-04-28 Renaissance Energy Research Corporation Facilitated CO2 transport membrane and method for producing same, and method and apparatus for separating CO2
JP6130607B2 (ja) * 2014-08-11 2017-05-17 住友化学株式会社 Co2ガス分離膜用組成物、co2ガス分離膜及びその製造方法並びにco2ガス分離膜モジュール
KR102404068B1 (ko) * 2014-11-18 2022-05-30 가부시키가이샤 르네상스 에너지 리서치 이산화탄소 가스 분리막 및 그 제조 방법과, 이산화탄소 가스 분리막 모듈
CN107635648B (zh) * 2015-05-29 2018-10-19 住友化学株式会社 螺旋型酸性气体分离膜元件、酸性气体分离膜模块、以及酸性气体分离装置
WO2017086293A1 (ja) * 2015-11-16 2017-05-26 株式会社ルネッサンス・エナジー・リサーチ ガス回収装置、ガス回収方法、及び、半導体洗浄システム

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021117361A1 (ja) * 2019-12-13 2021-06-17 住友化学株式会社 分離膜シート、分離膜エレメント、分離膜モジュール、及び分離装置

Also Published As

Publication number Publication date
WO2019009000A1 (ja) 2019-01-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
TWI698274B (zh) 螺旋形酸性氣體分離膜元件、酸性氣體分離膜模組,以及酸性氣體分離裝置
TWI681811B (zh) 螺旋形酸性氣體分離膜元件、酸性氣體分離膜模組,以及酸性氣體分離裝置
JP6633818B2 (ja) スパイラル型ガス分離膜エレメント、ガス分離膜モジュール、及びガス分離装置
JP6602502B2 (ja) ガス分離膜エレメント、ガス分離膜モジュール、及びガス分離装置
WO2018186109A1 (ja) スパイラル型ガス分離膜エレメント、ガス分離膜モジュール、及びガス分離装置
US20210001280A1 (en) Manufacturing method and manufacturing apparatus for acidic gas separation membrane sheet
JP2019013861A (ja) ガス分離膜エレメント、ガス分離膜モジュール、及びガス分離装置
JP7397697B2 (ja) ガス分離膜エレメント、ガス分離膜モジュール、及びガス分離装置
JP2015112502A (ja) 積層体及びガス分離膜並びに積層体の製造方法
WO2022080366A1 (ja) 分離膜エレメントの製造方法及び分離膜エレメント