JP2019013186A - 生鮮農産物の鮮度保持装置 - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、前記ガス吸着材による方法では、使用し続けると吸着性能の低下が起こり、適宜新しいものと交換しなければならならず、その管理は大変面倒である。
又、前記プラズマ放電でエチレンを分解させる方法では、高電圧を使用するため大掛かりな装置と多くの電力消費が必要となり、高電圧の電流の印加によるプラズマの発熱で冷却すべき保冷庫内の温度が逆に上昇するという問題や、プラズマにより有害なオゾンが発生するという問題がある。
この提案では、保水体に付着させた水滴に紫外線を照射させることによって水滴内にOHラジカルを生成させ、そのOHラジカルに空気中の有害なエチレンを接触させて鮮度保持にとって無害なエタンと水に改質させ、庫内の生鮮農産物の鮮度を保持することが可能となった。
そこで本発明は、紫外線と二酸化チタンを用いてOHラジカルを発生させ、そのOHラジカルに庫内の空気中の有害なエチレンを改質して無害化することで庫内の生鮮農産物の鮮度を保持可能としつつ、噴霧器等の水の供給装置を使用せずに水を空気中の湿気から得ると共に照射する紫外線によって装置内の部品の劣化や損傷を起こすことなく長期間使用できる寿命の長い鮮度保持装置を提供するものである。
そして、送風ファンの稼働中の前記フィルタの表面への水分の供給については、空気の接触面積が大きな通気可能な平板状としたフィルタと、空中に露出した超親水性を有する二酸化チタンとの組み合わせによって、湿気を含む空気の接触面積を増大させてその湿気で二酸化チタン4を濡らし、装置の複雑化と故障の原因となる噴霧器等の水分の供給装置を使用することなく、又水分を供給するための電力を消費することなくOHラジカルの生成に必要な水を二酸化チタン4の表面に得ることが可能となる。
この結果、筐体の吸入口から吸入されたエチレンを含んだ空気はエチレンの減じられた空気となって排出口から排出され続けて庫内の空気循環が繰り返され、庫内で保存されている生鮮農産物から常時発生されるエチレンの空気中の濃度の増加が抑えられ、生鮮農産物の鮮度が長期間保持されることとなる。
同時に、中央に配した波長が短く化学的作用の大きい254nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管の両側にそれより波長が長く化学的作用の小さい300nm〜400nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管にあってもフィルタまでの距離を20mm以上に離したことでフィルタの劣化を抑えることが可能となる。
一方、波長300nm〜400nmの紫外線発光管は中央の波長254nmの紫外線発光管から15mm〜35mmの距離に配したことで、全体で3本の紫外線発光管により二酸化チタンの表面の水の中に確実にOHラジカルの生成が可能となる。
即ち、エチレンの改質を効率良く確実に行いつつ、フィルタや筐体内の各種部品の紫外線による劣化を抑制して鮮度保持装置の使用寿命を大幅に延ばすことが可能となった。
この結果、通風フィルタに対してより多くのOHラジカルを生成させ、有害なエチレンを、そのOHラジカルの作用でより効率良く改質させること可能となる。
又、排気口1b側では外部からの接触や衝撃による脆く崩れやすい二酸化チタン4を含むフィルタ3の損傷を防止可能ともなるので、長く使用し続けるためのクリーニングや補修等のメンテナンスが楽になる。
本発明は野菜果物等の生鮮農産物から発生した有害なエチレンを庫内の空気中から除去するため、図4に示すように、生鮮農産物15を収蔵する保冷庫等の庫14内に設置する鮮度保持装置である。
該図4は、本発明の生鮮農産物15からは有害なエチレンE(黒塗り矢印で示す)が発生して庫内空間Sの空気中に放出され、該エチレンEが庫14内を周回する循環気流K(線矢印で示す)に運ばれて、該循環気流Kが通過する天井下の鮮度保持装置内を通過し、その際、エチレンE(黒塗り矢印で示す)がエタンe(白抜き矢印で示す)に改質して庫14内に排出される様子を示している。
なお、図4では庫14内の生鮮農産物15の保管の邪魔にならない天井に本発明の鮮度保持装置を設置した態様を示しているが、該鮮度保持装置は庫内空間S中に循環気流Kを発生させるに適した場所に設置することが好ましく、壁面上部等の生鮮農産物15の保管に邪魔にならない場所であれば何処にでも設置することができる。
そして、本発明の鮮度保持装置を庫14内の天井等に固定するため、前記筐体1にボルト、ナット等による天井への取付け部(図示省略)を設ける。
前記送風ファン2を稼働させるためのモータ7は、モータ用配線8を介して電源線10に接続する。
そして、該送風ファン2の稼働により、庫14内の空気が吸気口1aから筐体1内に吸入され、前記フィルタ3に吹き付けるように送風された空気はフィルタ3内を通過して排気口1bから庫14外に排出されることとなる。
該フィルタ3は前記送風ファン2によって吸気口1aから筐体1内に送風された空気はフィルタ3の通気路Fを通過し、その通過する過程で空気中のエチレンEがフィルタ3に補足されることとなる。
又、排気口1b側では外部からの接触や衝撃による二酸化チタン4を含むフィルタ3の損傷を防ぐこともできる。
そして、図5に示すように、その二酸化チタン4の粒子の表面を濡らした水wに紫外線発光管5、6から紫外線Aが照射されると、電子が励起され、水分子が酸素と水素イオンに分解されてOHラジカルが生成される。
そして、空気中のエチレンEが二酸化チタン4の表面の水分中に生成したOHラジカルに接触すると、無害なエタンeと水wに改質することとなる。
なお、エチレンEを改質させるためのOHラジカルは水分中に生成されるが、エチレンEを改質した際に発生する水wも二酸化チタン4の粒子の表面に付着して、この水wにもOHラジカルが生成される。
又、フィルタ3は平板状としたことで、湿気を含む空気の接触面積を増大させ、電力消費と装置の複雑化及び故障の原因となる噴霧器等の水分の供給装置を使用することなく必要な水を効率良く二酸化チタン4の表面に得ることが可能となる。
なお、該送風ファン2は、筐体1中の吸気口1aから吸入して排気口1bから排出させることで庫14内に一定方向への空気の流れを作り、庫14内の全体の空気を、エチレンの濃度を希釈させつつ大きく循環させ、生鮮農産物15から放出されたエチレン濃度の高い空気を発生源である生鮮農産物15から早く遠ざける機能も果たす。
前記各紫外線発光管5、6は、図2及び図3に示すように、いずれもフィルタ3に沿って該フィルタ3の空気吸入側の表面3aから20mm〜30mmの距離に配設し、その際、各紫外線発光管5同士は15mm〜35mmの間隔を置いて平行に各台座12上に直立させて固定する。
前記中央の254nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管5とその両側の300nm〜400nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管6はいずれも細長棒状の蛍光灯タイプの紫外線発光管を使用することができる。
なお、図1中の符号11は、送風ファン2のモータ用配線8と、紫外線管用配線9をそれぞれ分岐させて夫々に接続する分電部11である。
なお、遠紫外線領域の波長が10nm〜200nm以下のVUVタイプ紫外線は化学的作用が大変強く、装置内の樹脂製品を急激に劣化させ、又、オゾンを発生させるので本発明には使用を控える。
一般的に販売されている蛍光灯タイプのUV−Aタイプの紫外線を発光させる紫外線発光管6は、波長が370nmで最も強いピークとなり、その前後で減衰し、300nm〜400nm範囲の幅を持った波長の紫外線を含んでおり、これが使用できる。
図7は1本の波長254nmの紫外線発光管5の照射距離によって紫外線照射度が急激に減衰して行くことを示すグラフ図である。
そして、照射距離が15cmを超えると、紫外線照射度はほぼ「0」に等しくなってしまう。
従って、本発明では、フィルタ3の二酸化チタン4に対してOHラジカルを生成可能とする紫外線照射度は0.8以上の値が期待できる30mm以内の距離で照射させることとした。
但し、15mmよりも近すぎると紫外線の照射でフィルタ3が劣化を起こすので、フィルタ3の表面3aからの距離を20mm〜30mmとした。
なお、フィルタ3に対して、接するほど距離が近すぎると、フィルタ3の254nmの紫外線発光管5の近接した部分では通風性が悪くなる場合があり、そのためには通風性が阻害されない程度の位置まで離した方が好ましい。
但し、各紫外線発光管5、6は相互に接するほどに距離が小さいと相互の隙間が閉じて通風性が悪くなるので、通風性が阻害されない程度の15mm以上に離すこととした。
又、各紫外線発光管5、6は相互に大きく離すと、フィルタ3の表面3aに対する各紫外線発光管5、6の照射による化学的作用を起こさせることができない離れた場所が生じるので十分な照射が可能となる程度の35mm以内に近づけることとした。
この距離は、前記図7に示されるように、紫外線照射度が「0」に等しくなる照射距離である15cmを大きく超えたものなので、強い化学的作用がある紫外線の影響を殆ど受けることなく、製品の劣化による寿命の短命化を防止できる。
この結果、フィルタ3の表面3aのどの部分でも万遍なく同程度の紫外線照射度が得られることとなる。
図5の符号のEはエチレン、eはエタン、wは水、Aは紫外線、Fは通気路、3はフィルタ、4は二酸化チタンの粒子を示すものである。
この時、「O」と「OH」の解離エネルギーは4.8eVであり、この解離エネルギーを持つ紫外線の波長はλ=254nmである。又、波長はλ=300〜400nmの紫外線発光管6での解離エネルギーは3.2eVである。
そして、水(H2O)から分離され生成されたOHラジカルはエチレン(C2H4)に結合する。
そのOHラジカルとエチレンC2H4の反応で、エタン(C2H3)と水(H2O)が生成される。
この反応を次の化1の化学式で示す。
二酸化チタン4の表面へ紫外線発光管5、6から紫外線Aが照射されると光触媒作用によってフィルタ3内の二酸化チタン4の粒子表面の水w中にOHラジカルが生成される。
該二酸化チタン4の粒子表面の水wに対して、吸気口1aから通気ファン2で吸入した空気が流れて、空気中に含まれるエチレンEが二酸化チタン4表面のOHラジカルに接触すると、紫外線照射エネルギーと二酸化チタン4の光触媒作用とによって効果的にエチレンEがエタンeと水wに改質されることとなる。
又、その際、紫外線は一つの通気路Fに対して3本の紫外線発光管5、6で3方向から同時に紫外線が照射され、更に乱反射して受光面側の通気路F内を照射することが可能となる。
又、2本の紫外線発光管の中間の位置ではフィルタ3はいずれの紫外線発光管からも離れた位置に当たるので弱く照射されるが、その位置では両側の紫外線発光管かから同時に照射されるので合計では強く照射されることになる。
このため、通風フィルタ3の表面3aのどの位置においても3本の紫外線発光管から同時に照射され、フィルタ3の表面3aのどの位置においても、OHラジカルが生成されるのに有効な照射が得られることとなる。
そして、本発明では、紫外線照射エネルギーと二酸化チタン4の光触媒作用とによってフィルタ3に多量のOHラジカルが生成され、その多量のOHラジカルに対して空気中のエチレンEが接触し、その結果、空気中のエチレンEが確実にエタンeと水wに改質されることなる。
例えば、図6に示すように、各紫外線発光管5、6の空気吸入側の表面3aの近傍に、各紫外線発光管5、6の通風フィルタ3側を避けて空気吸入側の外周面を覆う反射板13を設けた形態が可能である。
この形態では、各紫外線発光管5、6の通風ファン2に照射される紫外線を反射させて通風フィルタ3の表面3aに向け反射できるので紫外線の照射効率が良くなる。
なお、図1に示す装置の形態は一つの紫外線発光管ユニットUを用いた態様を示すが、大型保存庫に使用する場合等では紫外線の照射能力を高めるに一つの筐体1内に、複数の紫外線発光管ユニットUを組み込むことで対応可能となる。
図1及び2に示すように、筐体1は、縦横30cm、奥行き20cmのステンレス製としし、一方に空気を吸入する縦横20cmの吸気口1aと、他方に吸った空気を排出する縦横20cmの排気口1bとを備えた箱状のものを用いた。
そして、該筐体1の吸気口1aに装着は径が10cmのプロペラを上下に2機の送風ファン2を装着した。
又、該筐体1中の吸気口1aから排気口1bへと通過する通風路を遮るように排気口1b側には縦横20cmm、厚さ15mmの空気に接触可能に露出した二酸化チタン4を有する通気可能な平板上のフィルタ3を配設した。
前記フィルタ3の表面全面に一定の紫外線照射度を得られるように、前記紫外線発光管は、長さが200mm、直径が30mmの蛍光灯タイプの蛍光灯タイプの紫外線発光管5、6を使用し、そのうち両外側の波長300nm〜400nmの紫外線発光管6のワット数は40ワットのものを使用し中央の波長254nmの紫外線発光管5は8ワットのものを用いた。
そして、上記本発明の鮮度保持装置を、図4に示すように、庫内の天井に吊設した
保冷庫に見立てた112リットルのアクリル製の密封容器内にエチレンを130ppm注入して、本発明の実施例1の態様の装置を設置した場合と設置しない場合とについてエチレンの時間的な減衰状態を観察した。
その実験結果を、図8に示す。
エチレンは自然減衰で25分に、45ppm減少している。これはエチレンの改質によるものではなく、壁面等に吸着されて減少したものと思われるが、それでも60分たって65ppmのエチレンが残されてしまう。
これに対して、本発明の装置を入れた場合には、エチレンは25分に130ppm全て減少した。
これにより本発明の装置の優れたエチレンの改質効果が確認できた。
1a 吸気口
1b 排気口
2 送風ファン
3 フィルタ
3a フィルタの空気吸入側の表面
4 二酸化チタン
5 254nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管
6 300nm〜400nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管
7 モータ
8 モータ用配線
9 紫外線管用配線
10 電源線
11 分電部
12 台座
13 反射板
14 庫
15 生鮮農産物
16、17 防護フィルタ
E エチレン
e エタン
w 水
A 紫外線
F 通気路
S 庫内空間
K 循環気流
U 紫外線発光管ユニット
Claims (4)
- 紫外線照射によって二酸化チタンの表面に生成したOHラジカルに接触させて生鮮農産物から発生した有害なエチレンを無害なエタンと水に改質し、庫内の生鮮農産物の鮮度を長期間保持させる庫内設置型の鮮度保持装置であって、
送風ファンの稼働により空気を吸入する一方の吸気口と、空気を排出する他方の排気口とを備えた筐体内に、
該筐体中の前記吸気口から排気口へと通過する通風路を遮るように二酸化チタンが空気に接触可能に露出した通気可能な平板状のフィルタを配設し、
該フィルタの空気吸入側表面に沿って20mm〜30mmの距離に254nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管を配設し、
該紫外線管から15mm〜35mmの間隔を置いて、前記フィルタの空気吸入側表面から20mm〜30mmの距離で平行に300nm〜400nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管を両側に夫々1本配設したことを特徴とする生鮮農産物の鮮度保持装置。 - 中央の254nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管と、その両側の300nm〜400nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管とを1単位の紫外線発光管ユニットとし、該紫外線発光管ユニットを一つの筐体内に複数設置したことを特徴とする請求項1に記載の生鮮農産物の鮮度保持装置。
- 各紫外線発光管の空気吸入側近傍に、各紫外線発光管の空気吸入側の外周面を覆う反射板を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の生鮮農産物の鮮度保持装置。
- 筐体の排気口及び吸気口に、開口部を通気可能に遮断する防護フィルタを設けたことを特徴とする請求項1から3のうちのいずれかに記載の生鮮農産物の鮮度保持装置。
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