JP2019011259A - フィラグリン産生促進剤、ロリクリン産生促進剤、インボルクリン産生促進剤 - Google Patents

フィラグリン産生促進剤、ロリクリン産生促進剤、インボルクリン産生促進剤 Download PDF

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Abstract

【課題】フィラグリン、ロリクリン、インボルクリンの遺伝子の産生を促進することによって、皮膚バリア機能強化のみならずアトピー性皮膚炎、老人性乾皮症、皮脂欠乏症、湿疹及び接触皮膚炎等の皮膚疾患に有効な治療剤又は予防剤を得る。
【解決手段】エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドを有効成分として含有することを特徴とする皮膚バリア機能改善剤、フィラグリン産生促進剤、ロリクリン産生促進剤、インボルクリン産生促進剤、および、アトピー性皮膚炎、老人性乾皮症、皮脂欠乏症、湿疹及び接触皮膚炎からなる群から選択される1以上の皮膚疾患の治療剤または予防剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、フィラグリン、ロリクリン、インボルクリンの遺伝子の発現を促進し、皮膚バリア機能を改善する皮膚バリア機能改善剤、アトピー性皮膚炎、老人性乾皮症、皮脂欠乏症、湿疹及び接触皮膚炎等の皮膚疾患を治療する治療剤または予防する予防剤に関する。
皮膚は、物理的な衝撃、温度、紫外線又は化学物質の暴露や感染などの外部刺激から体を保護する生体保護機能及び生体内部からの水分蒸散を防ぐ保湿機能といった皮膚バリア機能により、生体維持に重要な役割を果たしている。皮膚バリア機能は、表皮の最外層に位置する数層から数十層に規則正しく重なる角質層により発揮される。皮膚バリア機能の低下により、乾燥性皮膚疾患や肌荒れ等の皮膚トラブルが生じることが知られている。
従来、角質層に存在するスフィンゴ脂質であるセラミドが、皮膚バリア機能に重要であることが提唱されてきた。しかし、近年の研究でタンパク質も皮膚のバリア機能に重要な役割を果たしていることが証明されてきている。皮膚バリア機能に関連しているタンパク質としては、フィラグリン、ロリクリン、インボルクリン等が知られている。
フィラグリンは、角質層直下の顆粒層に存在する角化細胞において前駆体であるプロフィラグリンから産生される。顆粒細胞の最終分化の過程で、プロフィラグリンは分解されてモノマーであるフィラグリンになる。フィラグリンは、角化細胞内でケラチン繊維を凝集させることにより、角化細胞を角質層の角質細胞に特徴的な平坦な形へ変化させる。さらに、フィラグリンは角質層内でアミノ酸に分解される。このように生成した角質層中のアミノ酸は水溶性及び吸湿性が高く、天然保湿因子(Natural Moisturizing Factors:以下、NMFと略す)を構成する主な成分であると報告されている(非特許文献1)。また、アトピー性皮膚炎の患者にフィラグリンの遺伝子異常が多く見られることが報告されており、フィラグリンはアトピー性皮膚炎治療の重要な物質として注目されている。また、尋常性魚鱗癬の患者は、フィラグリンの発現が極度に低下していることも報告されている。
以上のことから、フィラグリンの産生を促進することによってNMFの成分である角質層内のアミノ酸量を増大させ、角質層の水分環境や保湿機能を本質的に改善できることが期待される。例えば、角化細胞におけるプロフィラグリンのmRNAの発現を促進させることで、フィラグリンの産生を促進させることができると考えられる。
ロリクリン及びインボルクリンは、角質細胞の細胞膜を裏打ちするコーニファイドエンベロープ(CE)を構成する重要なタンパク質である。ロリクリン及びインボルクリンは、角化細胞の分化過程において、有棘層から顆粒層にかけて産生され、酵素トランスグルタミナーゼによって角化細胞の細胞膜に架橋され、不溶性の細胞膜様構造体であるCEを形成し、角質細胞の細胞骨格及び構造の安定性に寄与する(非特許文献2)。しかし、様々な要因でロリクリンやインボルクリンの産生量が減少すると、CE形成が不完全な状態となり、角化が正常に行われなくなる。その結果、皮膚バリア機能が低下し、肌荒れや乾燥肌等の皮膚症状を呈するようになると考えられている。
一方、活性酸素は、シワ、シミ等の皮膚老化や、肌荒れ、炎症性ニキビ等の皮膚細胞損傷などの皮膚トラブルの原因として知られている。活性酸素は、大気中の酸素が紫外線や酵素などの影響を受けて生成するが、これ以外にも電磁波や喫煙、ストレスなどでも発生すると言われている。このように、ストレスや電磁波といった社会の発展に伴って活性酸素の弊害は増大している。
活性酸素には、ラジカル種と非ラジカル種とがある。ラジカル種は、一般的にフリーラジカルと呼ばれ、スーパーオキシドやヒドロキシラジカルが挙げられる。また、非ラジカル種としては、一重項酸素や過酸化水素が挙げられる。これら活性酸素は、必要以上に体内外に存在すると、正常な細胞の細胞膜やDNA等に作用し、破壊することが知られている。また、脂質を酸化して、過酸化脂質を生成することも知られている。これにより、例えば、アトピー症状の悪化であったり、白内障や痛風、心筋梗塞、ガンなど様々な疾病の発症に関与しているといわれている。生体に対しては、コラーゲン線維の架橋、ヒアルロン酸の断片化、DNA螺旋の部分開裂、連鎖的ラジカルの発生による組織の損傷などの悪影響を及ぼし、その結果として、皮膚のシワや弾力消失、脱毛といった生体の老化を促進するといわれている。
ところで、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドは、スーパーオキシドジスムターゼ様活性やカタラーゼ活性を示すことが知られている。これらの活性によって、傷害性の高い活性酸素や中間生成物でもある過酸化水素を生体に無害な水と酸素に変換することができ、非常に強い活性酸素除去効果が得られる。また、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドは、そのフリーラジカル除去作用の反応の間に活性酸素によっていくつかの酸化還元サイクルを受けてオリジナルの元素価状態に戻るという、ユニークで驚くべき能力(自己再生特性機能)を有しており、活性酸素除去効果を持続することができる。つまり、強い活性酸素除去効果に加え、その効果の持続性も非常に優れている。
さらに、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドは、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ経路の膜損傷誘導活性化を阻害し、皮膚角化細胞内でのp53の蓄積を軽減することが知られている。これにより、紫外線(特にUVB)によって皮膚が受けるダメージを大幅に軽減し、紅班の軽減や皮膚の老化防止に良い影響を与えている。また、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドをサメ軟骨より抽出したプロテオグリカンと併用することによって、8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン形成抑制能およびコラーゲン合成促進能が得られることも知られている(特許文献1)。
しかしながら、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドが、フィラグリン、ロリクリン、インボルクリンの産生を促進することは知られていない。
特開2009−79016号公報
Nature Reviews Molecular Cell Biology、2005、Vol.6、No.4、p.328-340 Journal of Investigative Dermatology、2011、Vol.131、No.10、p.1974-1980
本発明の目的は、フィラグリン、ロリクリン、インボルクリンの遺伝子の産生を促進することによって、皮膚バリア機能強化のみならずアトピー性皮膚炎、老人性乾皮症、皮脂欠乏症、湿疹及び接触皮膚炎等の皮膚疾患に有効な治療剤又は予防剤を得ることにある。
本発明の製剤は、皮膚バリア機能改善剤、フィラグリン産生促進剤、ロリクリン産生促進剤、インボルクリン産生促進剤、アトピー性皮膚炎、老人性乾皮症、皮脂欠乏症、湿疹及び接触皮膚炎からなる群から選択される1以上の皮膚疾患の治療剤または予防剤であって、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドを有効成分として含有することを特徴とする。
上記製剤に、アスコルビン酸、アルコルビン酸誘導体、アスコルビン酸若しくはアルコルビン酸誘導体の塩、トラネキサム酸、トラネキサム酸誘導体、トラネキサム酸若しくはトラネキサム酸誘導体の塩、サメ軟骨より抽出したプロテオグリカン、アミノ酸、コラーゲンペプチド、ヒトオリゴペプチド、アセチルへキサペプチド、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、ヒアルロン酸若しくはヒアルロン酸誘導体の塩、コラーゲン、コラーゲン誘導体、リンゴ果実細胞培養物からなる群より選択される1種以上の成分を含有することを特徴とする。上記製剤は、イオントフォレーシス用製剤である。また、上記製剤は、エレクトロポレーション用製剤である。
本発明の製剤は、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドを有効成分として含み、フィラグリン産生促進作用、ロリクリン産生促進作用、インボルクリン産生促進作用を示すので、皮膚のバリア機能を効果的に改善することができる。さらに、アトピー性皮膚炎、老人性乾皮症、皮脂欠乏症、湿疹及び接触皮膚炎等の皮膚疾患に有効な治療剤または予防剤となる。
本発明の製剤は、アスコルビン酸、アルコルビン酸誘導体、アスコルビン酸若しくはアルコルビン酸誘導体の塩、トラネキサム酸、トラネキサム酸誘導体、トラネキサム酸若しくはトラネキサム酸誘導体の塩、サメ軟骨より抽出したプロテオグリカン、アミノ酸、コラーゲンペプチド、ヒトオリゴペプチド、アセチルへキサペプチド、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、ヒアルロン酸若しくはヒアルロン酸誘導体の塩、コラーゲン、コラーゲン誘導体、リンゴ果実細胞培養物からなる群より選択される1種以上の成分を含有するので、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドによるフィラグリン産生促進作用、ロリクリン産生促進作用、インボルクリン産生促進作用に加え、上記成分による皮膚の機能改善作用によって、皮膚トラブルの改善に一層効果的である。
有効成分の経皮吸収を高めるための方法として用いられるイオンフォレーシスやエレクトロポレーションは活性酸素が生じることが問題となる。この点、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドは優れた皮膚バリア機能改善作用に加え、強力な活性酸素除去作用を有しているので、イオンフォレーシス用製剤、エレクトロポレーション用製剤として用いることで、イオンフォレーシスやエレクトロポレーションによる経皮吸収を効率よく安全に高めることができる。
本発明者は、上記目的を達成するべく鋭意検討したところ、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドが、フィラグリン、ロリクリン、インボルクリンの産生を促進することを見出した。また、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドを有効成分として含有する製剤が、皮膚のバリア機能改善剤や、アトピー性皮膚炎、老人性乾皮症、皮脂欠乏症、湿疹及び接触皮膚炎等の皮膚疾患に有効な治療剤又は予防剤となることを見出した。
エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドは、化学名 Chloro[[2,2'-[1,2-ethanediylbis[(nitrilo-κN)methylidyne]]bis[6-methoxyphenolato-κN]]]-manganese で、市販品としては、ATRIUM社製 商品名 EUK−134などを利用できる。エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドは、フィラグリン、ロリクリン、インボルクリンの遺伝子の産生促進作用を有する。フィラグリンは、角質層内における天然保湿因子であるNMFの前駆タンパク質である。また、ロリクリンおよびインボルクリンは、角質細胞の細胞膜を裏打ちするコーニファイドエンベロープ(CE)の主要成分である。そのため、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドは、フィラグリン、ロリクリン、インボルクリンの産生を促進することで、皮膚バリア機能を改善する作用や、各種皮膚疾患を治療・予防する作用を発揮する。
また、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドは、上記作用に加え、強いスーパーオキシドジスムターゼ様活性やカタラーゼ活性を有しており、活性酸素を水と酸素に変換することができ、強い活性酸素除去作用を示す。また、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドは、その活性酸素除去作用の反応の間に活性酸素によっていくつかの酸化還元サイクルを受けてオリジナルの元素価状態に戻るという、ユニークで驚くべき能力(自己再生特性機能)を有しており、活性酸素除去効果を持続することができるので、より持続的に効果を発揮する。
さらに、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドは、スーパーオキシドジスムターゼ様活性やカタラーゼ活性が強いことは周知であるが、それ以外にも活性酸素に関しての作用があることが分かった。広義の活性酸素である一酸化窒素(NO)は、循環器系や神経系、免疫系等の生理活性物質として多様な作用を有することが知られており、NOが種々の炎症に密接なかかわりを持つことが明らかになってきた。NOは、生体内では、一酸化窒素合成酵素(NOS)によってL−アルギニンを酸化して産生される。NOSには非誘導型と誘導型のアイソザイムが存在し、誘導型のNOS(iNOS)はマクロファージ、内皮細胞、平滑筋細胞などに多く存在している。近年では、iNOSの活性を阻害して、NOの産生を抑制することにより、種々の炎症において治療効果が得られることが明らかになってきている。また、NOは、大気汚染物質として問題となっている窒素酸化物(NOx)の一種であり、大気中で酸化されて二酸化窒素(NO2)になる。二酸化窒素は、高濃度で呼吸器に影響を及ぼすほか、酸性雨や化学オキシダントの原因物質になると言われている。また、空気中のNOは、酸化剤として働き、皮脂に含まれる不飽和脂肪酸などを攻撃して、肌荒れを引き起こす原因となる可能性も指摘されている。
エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドは、各種の活性酸素と反応する過程でオキソ化され、活性酸素を消去する。このオキソ化されたエチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドは、オキソ化されていないエチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドとともにNOなどの反応性窒素酸化物を除去することが実験的にわかり、スーパーオキシドジスムターゼ様活性やカタラーゼ活性と相まって皮膚のトラブルを抑制することが分かった。
また、遺伝子の面からみると、フィラグリン、ロリクリン、インボルクリンの発現を促進するばかりではなく、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ経路の膜損傷誘導活性化を阻害し、皮膚角化細胞内でのp53の蓄積を軽減する。これにより、紫外線(特にUVB)によって受けるダメージを大幅に軽減することができる。
本発明の製剤中のエチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドの含有量は、製剤全量に対して、0.00001〜0.5質量%であることが好ましく、0.0001〜0.1質量%であることがより好ましい。
本発明の製剤は、皮膚に適用する皮膚外用剤であり、医薬品や医薬部外品、化粧品として用いられる。本発明の製剤は、とりわけ、フィラグリン、ロリクリン、インボルクリンの欠乏に起因する皮膚疾患を治療・予防する医薬品として有用である。近年、フィラグリンと乾燥肌を呈する疾患の関連性についての研究が進められている。例えば、老人性乾皮症、アトピー性皮膚炎などの乾燥肌において、フィラグリンに由来する角層中のアミノ酸が減少していること(参考文献:British Journal of Dermatology、1989、Vol.121、p.587-592、British Journal of Dermatology、1998、Vol.139、p.618-621)、および、フィラグリンの発現が減少していること(参考文献:Dermatology、1994、Vol.188、p.21-24、Archives of Dermatological Research、1996、Vol.288、p.442-446)が知られている。
また、ロリクリンおよびインボルクリンは、CEの主要成分であり、皮膚バリア機能に関与することが知られており、例えば、皮脂欠乏症(乾皮症)は、皮膚バリア機能の低下によって起こる疾患として知られている(参考文献:清水宏著、「あたらしい皮膚科学」、第2版、中山書店、2011年、p.69)。皮脂欠乏症は、皮脂および汗の分泌が減退し、皮膚が乾燥して光沢を失い粗造になった状態をいう。皮膚が米糠様の鱗屑および浅い亀裂を生じ、魚鱗癬様の外観を呈して軽度の掻痒を伴うことがある。加齢による変化の一つとして見られる場合がある。皮膚バリア機能が低下しているため、外的刺激を受けやすい。また、接触皮膚炎も皮膚バリア機能の低下によって起きる疾患の1つとして知られており、外来性の刺激物質や抗原(ハプテン)が皮膚に接触することによって発症する湿疹性の炎症反応である(参考文献:「接触皮膚炎診療ガイドライン」、日皮会誌、2009、119(9)、p.1757−1793)。なお、接触皮膚炎は大きく刺激性接触皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎に分類される。
以上より、本発明の製剤は、後述する実施例に示すように、フィラグリン、ロリクリン、インボルクリンの発現を促進させることから、皮膚バリア機能改善剤、アトピー性皮膚炎、老人性乾皮症、皮脂欠乏症、湿疹及び接触皮膚炎からなる群から選択される皮膚疾患の治療剤または予防剤として有用である。ここで、明細書において「治療」とは、症状の改善、重症化の防止、寛解の維持、再燃の防止、さらには再発の防止も含む。本明細書において「予防」とは、症状の発症を抑制することを意味する。
本発明の製剤には、一般に医薬品や、医薬部外品、化粧品の皮膚外用剤で用いられる各種任意成分を配合することができる。このような任意成分として、例えば、各種油脂、界面活性剤、粘剤、油溶性有効成分、水溶性有効成分、粉体、各種植物抽出物等を挙げることができる。本発明の製剤は、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドのみを有効成分として用いてもよいが、さらに皮膚の機能を改善させるための有効成分を組み合わせて用いてもよい。この場合例えば、アスコルビン酸、アルコルビン酸誘導体、アスコルビン酸若しくはアルコルビン酸誘導体の塩、トラネキサム酸、トラネキサム酸誘導体、トラネキサム酸若しくはトラネキサム酸誘導体の塩、サメ軟骨より抽出したプロテオグリカン、アミノ酸、コラーゲンペプチド、ヒトオリゴペプチド、アセチルへキサペプチド、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、ヒアルロン酸若しくはヒアルロン酸誘導体の塩、コラーゲン、コラーゲン誘導体、リンゴ果実細胞培養物からなる群より選択される1種以上の成分を配合することが好ましい。
アスコルビン酸は、水溶性ビタミンであり、活性酸素除去作用やコラーゲンの合成を促進する作用を有することが知られている。アスコルビン酸誘導体としては、例えば、アスコルビン酸グリコシドなどを用いることができる。アスコルビン酸の塩、アルコルビン酸誘導体の塩としては、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などを用いることができる。トラネキサム酸は、合成アミノ酸であり、シミなどの原因となるメラニンの合成を阻害する作用を有することが知られている。
プロテオグリカンは、蛋白質コアに 100〜200本のムコ多糖が結合した物質であり、常法に従って、ヨシキリザメ、ネズミザメ、アオザメなどの軟骨から抽出して得ることができる。また、サメ軟骨のプロテオグリカンは、化粧品原料として市販されているものを用いることができる。サメ軟骨より抽出したプロテオグリカンは、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)のうち、MMP−2、MMP−9の活性を阻害する作用を有し、これにより、コラーゲンの合成を促進させる。
ヒアルロン酸は、一般に保水成分として知られる多糖類である。具体的には、β−D−グルクロン酸とβ−D−N−アセチルグルコサミンとの二糖からなる繰り返し構成単位を1以上有している。ヒアルロン酸誘導体としては、例えば、アセチル化ヒアルロン酸などが挙げられる。また、ヒアルロン酸の塩、ヒアルロン酸誘導体の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
コラーゲンは、皮膚構造の支持体として機能する真皮の90%以上を占めるタンパク質である。コラーゲンは、真皮において線維束を形成し、真皮のほぼ全層に絡み合って三次元の網目構造を形成し、肌の弾力性などに寄与している。リンゴ果実細胞培養物は、リンゴの果実細胞の培養物のエキスである。
また、アミノ酸としては、アラニン、セリン、トレオニン、プロリンなどの中性アミノ酸、グルタミン酸、アスパラギン酸などの酸性アミノ酸、リシン、アルギニンなどの塩基性アミノ酸を1種以上配合することができる。
ペプチドとしては、コラーゲンペプチド、ヒトオリゴペプチド、アセチルヘキサペプチドを用いることができる。コラーゲンペプチドはコラーゲンの加水分解物であり、角質水分量増加、コラーゲン産生促進、肌荒れ改善、ヒアルロン酸産生促進、皮膚弾力改善等の効果が知られている。ヒトオリゴペプチドはいくつかの種類があるが、抗シワ、抗タルミ作用を有することが知られている。アセチルヘキサペプチドとしては、例えばアセチルヘキサペプチド−8がある。アセチルヘキサペプチド−8は、グルタミン酸−グルタミン酸−メチオニン−グルタミン−アルギニン−アルギニルアミドからなるヘキサペプチドのアセチル化ペプチドであり、抗シワ作用を有することが知られている。
本発明の皮膚外用剤の形態は、用途などによって、クリーム、乳液、軟膏、ローション、パック、スプレー、ジェルなど任意の形態とすることができる。また、医薬品、医薬部外品、化粧品のいずれでもよく、皮膚に適用するものであれば、入浴剤、ファンデーションなどの形態であってもよい。なお、上記に挙げた成分以外の添加物などを製剤に配合してもよく、用途や目的、要望する官能に応じた皮膚外用剤とすることができる。
さらに、本発明の製剤は、エレクトロポレーション(電気穿孔法)やイオントフォレーシス(イオン浸透療法)を施すことよって、効果が増強されることを見出した。つまり、本発明の製剤は、エレクトロポレーション用製剤やイオントフォレーシス用製剤として有用である。この点について、以下に説明する。
一般に、人体の表面組織である皮膚は、大部分が脂質やタンパク質で構成されたバリア膜からなっているため、通常の塗布ではこのバリア機能により経皮吸収は制限を受ける。特に、イオン性物質はバリア膜の性格上、ほとんどこの生体膜を透過しない。これの対処として、エレクトロポレーションやイオントフォレーシスという方法が知られている。これらは、皮膚が本来的に持っている防御機能に阻まれて有効成分がなかなか経皮吸収されにくい、という問題を解決する手段として活用されている。
イオントフォレーシスは、電気エネルギーを利用して主にイオン性薬物の生体膜透過を促進させる方法である。電極を有する2つのリザバーを皮膚に貼付し、アニオン性薬物なら陰極槽に、カチオン性薬物なら陽極槽に封入して両リザバーの電極をつなげ、電圧を印加する。その結果、薬物が皮膚に移行し、同時に、薬物と対をなす内因性イオンが皮膚からリザバー中に抽出される。また、他方のリザバーでもイオン交換が引き起こされる。また、中性すなわち荷電しない分子では電気浸透(electro-osmosis)により透過が促進される。
エレクトロポレーションは、皮膚に短く強い特殊な電気パルスを与えることにより、上皮細胞に透過経路を形成し、通常では皮下浸透しない親水成分や高分子成分をイオン化せず高分子のまま真皮層下まで導入することができる方法である。このように、エレクトロポレーションやイオントフォレーシスは皮膚のバリア機能を乗り越え、有効成分を皮膚に浸透させる有効な手段となっている。近年では、エレクトロポレーションやイオントフォレーシスによる経皮吸収を一層高めるために製剤の工夫が行われており、アルカリ土類金属イオンを配合することやマイクロエマルション製剤とすること等が試みられている。
しかしながら、エレクトロポレーションやイオントフォレーシスのいずれの方法においても電磁波が発生する。電磁波は、発生源の強さも問題となるが、人体との距離も重要な因子であり、電磁波は距離の2乗に反比例して減衰する。つまり、皮膚に密着させて行われるエレクトロポレーションやイオントフォレーシスでは、電磁波の発生量が仮に少なくても、皮膚にかなりの影響を及ぼすことになる。そして、この電磁波の発生に伴って活性酸素が発生することになる。そのため、この活性酸素によって、エレクトロポレーションやイオントフォレーシスを行うことによって有効成分の経皮吸収を高めるというメリットを相殺してしまう懸念がある。
この点、本発明の製剤は、強力な活性酸素除去作用を有するエチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドを含有しているため、エレクトロポレーションやイオントフォレーシスに特に有効である。すなわち、これらの方法を行う際に発生する電磁波によって生じる活性酸素を、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドが速やかに無毒化(除去)することで、これらの方法の実施に伴う弊害を防ぐ。すなわち、エレクトロポレーションやイオントフォレーシスにおいて、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドが本来持つ、スーパーオキシドジスムターゼ様活性、カタラーゼ活性や反応性窒素酸化物を除去する作用が、より有効に作用する。
エレクトロポレーションやイオントフォレーシスの実施によって、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドが良好に経皮吸収された後、フィラグリン、ロリクリン、インボルクリンの遺伝子の産生が一層促進され、皮膚バリア機能を強化するために重要な手段となる。このように、エレクトロポレーションやイオントフォレーシスにおいて、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドはフィラグリンなどの産生を促進させる有効成分として働くとともに、活性酸素を除去する成分としても働く。
さらに、本発明のエレクトロポレーション用製剤やイオントフォレーシス用製剤は、アスコルビン酸、アルコルビン酸誘導体、アスコルビン酸若しくはアルコルビン酸誘導体の塩、トラネキサム酸、トラネキサム酸誘導体、トラネキサム酸若しくはトラネキサム酸誘導体の塩、サメ軟骨より抽出したプロテオグリカン、アミノ酸、コラーゲンペプチド、ヒトオリゴペプチド、アセチルへキサペプチド、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、ヒアルロン酸若しくはヒアルロン酸誘導体の塩、コラーゲン、コラーゲン誘導体、リンゴ果実細胞培養物からなる群より選択される1種以上の成分を含有していることが好ましい。この場合、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドがエレクトロポレーションやイオントフォレーシスを行う際に発生する活性酸素を除去するというメリットを、上記の皮膚に対する有効成分に関しても享受することになり、皮膚に対して一層優れた効果を発揮することができる。
なお、本発明の製剤を用いて、エレクトロポレーションおよびイオントフォレーシスの少なくともいずれかの方法を行うことが好ましく、両者を併用するかまたはエレクトロポレーションを実施することがより好ましい。例えば、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、ヒアルロン酸若しくはヒアルロン酸誘導体の塩、コラーゲン、コラーゲン誘導体などのイオン化しない成分に関しては、エレクトロポレーションの方がイオントフォレーシスよりも経皮吸収が有利になる。
以下に実施例を記載するがなんらこれに限定されるものではない。
実施例1〜5に係る製剤および比較例1〜3に係る製剤を、以下に示す組成に基づいてそれぞれ調製した。各製剤は、以下の成分をそれぞれ計量後、撹拌混合することで得た。なお、各成分の数値は重量部を示している。
実施例1(ジェル剤)
エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリド 0.05
グリセリン 5.00
1.3ブチレングリコール 5.00
1%カルボキシビニルポリマー水溶液(pH=6.2) 5.00
精製水 84.95
実施例2(ローション剤)
エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリド 0.05
トラネキサム酸 2.00
サメ軟骨より抽出したプロテオグリカン 1.00
グリセリン 5.00
1.3ブチレングリコール 5.00
精製水 86.95
実施例3(ローション剤)
エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリド 0.05
ヒアルロン酸Na 0.20
加水分解ヒアルロン酸Na 0.20
アセチル化ヒアルロン酸Na 0.20
サメ軟骨より抽出したプロテオグリカン 1.00
アスコルビン酸リン酸マグネシウム 2.00
アセチルヘキサペプチド−8 0.01
セリン 0.10
グルタミン酸 0.10
アラニン 0.10
リシン 0.10
グリセリン 5.00
ジプロピレングリコール 2.50
精製水 88.44
実施例4(クリーム剤)
A組成物
スクワラン 8.00
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 5.00
セタノール 3.00
モノステアリン酸グリセリル 2.00
モノステアリン酸デカグリセリル 3.00
水添大豆レシチン 2.50
B組成物
エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリド 0.01
アスコルビン酸リン酸マグネシウム 2.00
アセチルヘキサペプチド−8 0.01
セリン 0.10
グルタミン酸 0.10
アラニン 0.10
リシン 0.10
アルギニン 0.10
トレオニン 0.10
プロリン 0.10
ジプロピレングリコール 5.00
ソルビトール 5.00
精製水 63.78
実施例4のクリーム剤は、A組成物およびB組成物をそれぞれ計量し、80℃で加温溶解させた後、撹拌しつつ、溶解したB組成物をA組成物に徐々に加えることで得た。
実施例5(ローション剤)
エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリド 0.05
アスコルビン酸グリコシド 2.00
サメ軟骨より抽出したプロテオグリカン 1.00
ヒアルロン酸Na 0.50
セリン 0.10
グルタミン酸Na 0.10
アラニン 0.10
リシン 0.10
アルギニン 0.10
トレオニン 0.10
プロリン 0.10
リンゴ果実細胞培養物 0.15
グリセリン 5.00
ジグリセリン 2.00
1.3ブチレングリコール 3.00
精製水 85.60
実施例5のヒアルロン酸Naは、精製水の一部を用いて充分に撹拌溶解させたものを用いた。
比較例1(ジェル剤)
グリセリン 5.00
1.3ブチレングリコール 5.00
1%カルボキシビニルポリマー水溶液(pH=6.2) 5.00
精製水 85.00
比較例2(ローション剤)
トラネキサム酸 2.00
サメ軟骨より抽出したプロテオグリカン 1.00
グリセリン 5.00
1.3ブチレングリコール 5.00
精製水 87.00
比較例3(ローション剤)
ヒアルロン酸Na 0.20
加水分解ヒアルロン酸Na 0.20
アセチル化ヒアルロン酸Na 0.20
サメ軟骨より抽出したプロテオグリカン 1.00
アスコルビン酸リン酸マグネシウム 2.00
アセチルヘキサペプチド−8 0.01
セリン 0.10
グルタミン酸 0.10
アラニン 0.10
リシン 0.10
グリセリン 5.00
ジプロピレングリコール 2.50
精製水 88.49
比較例1〜3の製剤は、いずれもエチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドを含んでいない。比較例1〜3の処方内容はそれぞれ、実施例1〜3の処方内容に対応している。
試験例1:フィラグリン、ロリクリン、インボルクリンの遺伝子産生促進試験
新生児正常ヒト表皮角化細胞(Lonza社)を、Human Keratinocyte Growth Supplement(Cascade Biologics社)を添加したEpiLife Medium with 0.06mM Calcium(Cascade Biologics社)にて、細胞の取扱説明書に従い、培養した。新生児正常ヒト表皮角化細胞を、5×105個/wellで12ウェルプレートに播種し、37℃、5%CO2下で2時間培養した。上記細胞から培養上清を除いた後、各種濃度(0.001mg/ml、0.01mg/ml、0.1mg/ml)のエチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドと1.3mmol/L 塩化カルシウムを含む培養培地を添加し、細胞を37℃、5%CO2下で5日間培養した。Total RNAを、GenElute Mammalian Total RNA Miniprep Kit(Sigma−Aldrich社)を用いて、取扱説明書に従い、上記培養細胞から精製した。
上記RNAをHigh Capacity cDNA Reverse Transcription Kit with RNase Inhibitor(Applied Biosystems社)を用いて、取扱説明書に従い、cDNAに逆転写した。上記cDNAをリアルタイムPCR法により、Taqman Gene Expresion Master Mix(Applied Biosystems社)を用いて、取扱説明書に従い、ABI Prism 7900HT sequence detectorで分析し、フィラグリン、ロリクリン、インボルクリン、及び、グリセルアルデヒド‐3‐リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)のCt値(Threshold Cycle)をそれぞれ求めた。GAPDHは内部標準として使用した。プライマー及びプローブは、Applied Biosystems社から購入したものを使用した(TaqMan Gene Expression Assays)。
フィラグリン、ロリクリン、及びインボルクリンのmRNA量を、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドを添加しなかった細胞における各遺伝子のmRNA量に対する比として示した。結果を表1に示す。
Figure 2019011259
試験例2:皮膚バリア機能試験
健常な男性8名、女性52名、計60名を6つのグループに分け、グループ毎に、表2に示す各製剤および各投与方法にて試験を実施した。試験では、各グループの被験者の顔面の左右一方に実施例の製剤を投与し、他方に比較例の製剤を投与した。なお、C〜Fグループでは、一回の投与において、顔面の一方に実施例1〜3の製剤を順次投与し、他方に比較例1〜3の製剤を順次投与した。
製剤の投与は、1日2回ずつ3か月間塗布を基本とした。Aグループ及びCグループは、通常の塗布のみで、エレクトロポレーションおよびイオントフォレーシスは実施しなかった。一方、B、D、Fグループではエレクトロポレーションを1日1回、週2日行った。なお、エレクトロポレーションは、一回で投与されるすべての製剤を塗布した後に1回行った。また、E、Fグループではイオントフォレーシスを1日3回、週2日行った。1日において、イオントフォレーシスは、実施例1と比較例1の塗布後と、実施例2と比較例2の塗布後と、実施例3と比較例3の塗布後の計3回実施した。Fグループでは、エレクトロポレーションとイオントフォレーシスは別の日に行った。
なお、エレクトロポレーションは、サンソリット社製、型式electroporation−013を用いて連続出力モード20分で行った。イオントフォレーシスは、サンソリット社製、型式Phorese3000を用いて連続出力モード5分で行った。
3か月後に、被験者の左右の腕を市販の石鹸で洗浄した後、測定の30分前に室温22±2℃、湿度55±5%の環境の測定室に入室させ、安静状態にて待機後、被験者の左右の腕の指定部位(上腕内側部)のTEWLを測定した。TEWLは、Tewameter TM210(Courage+Khazaka社製)を用いて測定した。試験開始前の各グループの平均値と、試験開始後の各郡の実施例および比較例の平均値をそれぞれ算出した。試験前後において、比較例を100としたときの各郡の実施例の測定値比率(%)を表2に示した。測定値比率が低いほど、皮膚バリア機能改善効果に優れていることを表している。
Figure 2019011259
以上より、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドが、今まで知られていなかったフィラグリン産生促進作用、ロリクリン産生促進作用、インボルクリン産生促進作用を示すことを見出したことにより、これを含む製剤が、フィラグリン産生促進剤、ロリクリン産生促進剤、インボルクリン産生促進剤の用途として有用であることを見出した。また、これらの効果によって、皮膚バリア機能改善剤として有用であることを見出し、さらには、アトピー性皮膚炎、老人性乾皮症、皮脂欠乏症、湿疹及び接触皮膚炎からなる群から選択される皮膚疾患の治療剤または予防剤として有用であることを見出した。
また、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドを配合した製剤を用いて、イオントフォレーシスやエレクトロポレーションを行うことで、皮膚バリア機能が飛躍的に向上することが分かった。これは、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドが、イオントフォレーシスやエレクトロポレーションを行う際に発生する電磁波の悪影響を取り除き、これらの施術のメリットを最大限に利用することができるためと考えられる。そのため、本発明の製剤は、イオントフォレーシス用製剤やエレクトロポレーション用製剤として有用である。また、この製剤に、アスコルビン酸、アルコルビン酸誘導体、アスコルビン酸若しくはアルコルビン酸誘導体の塩、トラネキサム酸、トラネキサム酸誘導体、トラネキサム酸若しくはトラネキサム酸誘導体の塩、サメ軟骨より抽出したプロテオグリカン、アミノ酸、コラーゲンペプチド、ヒトオリゴペプチド、アセチルへキサペプチド、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、ヒアルロン酸若しくはヒアルロン酸誘導体の塩、コラーゲン、コラーゲン誘導体、リンゴ果実細胞培養物からなる群より選択される1種以上の成分を配合することで、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドの作用に加え、その他の有効成分の皮膚に対する作用をより一層発揮させることができる。なお、エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドが本来持つ、スーパーオキシドジスムターゼ様活性、カタラーゼ活性や反応性窒素酸化物を除去する作用も、皮膚に対し発揮される。
本発明の製剤は、フィラグリン、ロリクリン、インボルクリンの産生を促進することによって、皮膚バリア機能を改善することができるので、医薬品、医薬部外品、化粧品に広く用いることができる。特に、医薬品としては、アトピー性皮膚炎、老人性乾皮症、皮脂欠乏症、湿疹及び接触皮膚炎などの皮膚疾患の治療剤または予防剤として有用である。また、イオントフォレーシスやエレクトロポレーションに用いられることによって、本発明の製剤の効果をより一層高めることができるため、イオントフォレーシス用製剤やエレクトロポレーション用製剤として有用である。

Claims (8)

  1. エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドを有効成分として含有することを特徴とする皮膚バリア機能改善剤。
  2. エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドを有効成分として含有することを特徴とするフィラグリン産生促進剤。
  3. エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドを有効成分として含有することを特徴とするロリクリン産生促進剤。
  4. エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドを有効成分として含有することを特徴とするインボルクリン産生促進剤。
  5. エチルビスイミノメチルグアヤコールマンガンクロリドを有効成分として含有するアトピー性皮膚炎、老人性乾皮症、皮脂欠乏症、湿疹及び接触皮膚炎からなる群から選択される1以上の皮膚疾患の治療剤または予防剤。
  6. アスコルビン酸、アルコルビン酸誘導体、アスコルビン酸若しくはアルコルビン酸誘導体の塩、トラネキサム酸、トラネキサム酸誘導体、トラネキサム酸若しくはトラネキサム酸誘導体の塩、サメ軟骨より抽出したプロテオグリカン、アミノ酸、コラーゲンペプチド、ヒトオリゴペプチド、アセチルへキサペプチド、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、ヒアルロン酸若しくはヒアルロン酸誘導体の塩、コラーゲン、コラーゲン誘導体、リンゴ果実細胞培養物からなる群より選択される1種以上の成分を含有することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項記載の剤。
  7. イオントフォレーシスに用いられるイオントフォレーシス用製剤であって、請求項1から請求項6までのいずれか1項記載の剤からなることを特徴とするイオントフォレーシス用製剤。
  8. エレクトロポレーションに用いられるエレクトロポレーション用製剤であって、請求項1から請求項7までのいずれか1項記載の剤からなることを特徴とするエレクトロポレーション用製剤。
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