以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態1]
図1は、本実施形態に係る加工装置の概略構成図である。図2は、図1のA−A断面拡大図である。図3は、本実施形態に係る加工装置の加工用ノズルの概略構成図である。図4は、本実施形態に係る加工装置の加工用ノズルの概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態の加工装置1は、水中において被加工物100を加工するものである。加工としては、例えば、溶接、切断があり、加工方法としては、例えば、レーザ加工がある。本実施形態では、レーザ加工による肉盛溶接を主として説明する。
本実施形態の加工装置1は、図1に示すように、加工ヘッド2、加工用ノズル3、ガス供給部4、水供給部5を備えている。
加工ヘッド2は、レーザビーム2Aを照射するもので加工用ノズル3に取り付けられている。
加工用ノズル3は、加工ヘッド2から照射されたレーザビーム2Aを、水中の被加工物100の加工部位100Aの加工に適した距離で照射するように図示しない保持手段(例えば、マニピュレータ)により水中にて保持される。この加工用ノズル3は、レーザ照射ノズル3A、ガス噴射ノズル3B、水噴射ノズル3C、補助ノズル3Dを備えている。
レーザ照射ノズル3Aは、加工用ノズル3の中央に設けられて加工ヘッド2から照射されたレーザビーム2Aを通過させる穴であってレーザビーム12Aを被加工物100の加工部位100Aに照射するための照射口3Aaを有する。
ガス噴射ノズル3Bは、アシストガスを噴射するもので、図1および図2に示すように、レーザ照射ノズル3Aの周囲を取り囲むように配置され、レーザ照射ノズル3Aの向きに沿う方向に向けた穴として形成されている。本実施形態において、ガス噴射ノズル3Bは、図2に示すように、レーザ照射ノズル3Aの周囲を取り囲むように環状の穴として形成されている。その他、ガス噴射ノズル3Bは、図には明示しないが、レーザ照射ノズル3Aの周囲を取り囲むように複数の穴として形成されていてもよい。なお、本実施形態において、ガス噴射ノズル3Bは、図1に示すように、レーザ照射ノズル3Aの照射口3Aaと同じ平面上に噴射口3Baが形成されている。その他、ガス噴射ノズル3Bは、図には明示しないが、レーザ照射ノズル3Aの照射口3Aaに対してレーザ照射ノズル3Aの向きの後側(レーザビーム2Aが照射される向きの反対側)に窪んだ位置に噴射口3Baが設けられていてもよく、レーザ照射ノズル3Aの照射口3Aaに対してレーザ照射ノズル3Aの向きの前側(レーザビーム2Aが照射される側)に突出した位置に噴射口3Baが設けられていてもよい。
水噴射ノズル3Cは、水を噴射するもので、図1および図2に示すように、ガス噴射ノズル3Bの周囲を取り囲むように配置され、ガス噴射ノズル3Bの向きに沿う方向に向けた穴として形成されている。本実施形態において、水噴射ノズル3Cは、図2に示すように、ガス噴射ノズル3Bの周囲を取り囲むように環状の穴として形成されている。その他、水噴射ノズル3Cは、図には明示しないが、ガス噴射ノズル3Bの周囲を取り囲むように複数の穴として形成されていてもよい。なお、本実施形態において、水噴射ノズル3Cは、図1に示すように、ガス噴射ノズル3Bの噴射口3Baと同じ平面上に噴射口3Caが形成されている。その他、水噴射ノズル3Cは、図には明示しないが、ガス噴射ノズル3Bの噴射口3Baに対してガス噴射ノズル3Bの向きの後側(アシストガスが噴射される向きの反対側)に窪んだ位置に噴射口3Caが設けられていてもよく、ガス噴射ノズル3Bの噴射口3Baに対してガス噴射ノズル3Bの向きの前側(アシストガスが噴射される側)に突出した位置に噴射口3Caが設けられていてもよい。
補助ノズル3Dは、図1および図2に示すように、水噴射ノズル3Cの外壁との間に隙間を有するように水噴射ノズル3Cの周囲を取り囲み、かつ水噴射ノズル3Cの噴射口3Caの後側(水が噴射される向きの反対側)から前側(水が噴射される側)に延在して配置されている。これにより、補助ノズル3Dは、水噴射ノズル3Cの外周において、水噴射ノズル3Cと外壁との間の隙間により水噴射ノズル3Cの向きに沿って連通する通路3Daをなす。本実施形態において、補助ノズル3Dは、水噴射ノズル3Cの周囲を取り囲む筒状部材として形成され、筒状部材の一端側の開口3Dbが水噴射ノズル3Cの噴射口3Caに対して水噴射ノズル3Cの向きの後側(水が噴射される向きの反対側)の位置にあり、筒状部材の他端の開口3Dcが水噴射ノズル3Cの噴射口3Caに対して水噴射ノズル3Cの向きの前側(水が噴射される側)の位置にあることで、水噴射ノズル3Cの外周において、水噴射ノズル3Cと外壁との間の隙間により水噴射ノズル3Cの向きに沿って連通する通路3Daをなす。また、筒状部材として形成された補助ノズル3Dは、その内側から突出する支持片3Ddが複数(本実施形態では周方向に4つ)設けられて隙間である通路3Daが維持できるように水噴射ノズル3Cの周囲に取り付けられている。なお、補助ノズル3Dは、開口3Dbおよび開口3Dcを有する通路3Daが形成するものであればよく、図には明示しないが、筒状部材として形成されている以外に複数の筒体が水噴射ノズル3Cの周囲を取り囲んで配置されている構成であってもよい。さらに、補助ノズル3Dは、開口3Dbおよび開口3Dcを有する通路3Daが形成するものであればよく、図には明示しないが、筒状部材として形成されている以外に複数の板材が水噴射ノズル3Cの周囲を取り囲んで配置されている構成であってもよい。板材の間は隙間があってもよい。
ガス供給部4は、ガス噴射ノズル3Bにアシストガスを供給するものである。ガス供給部4は、ガス噴射ノズル3Bに対してガス供給管4Aを介して接続されており、水中から出た場所に配置された図示しないガス貯留タンクを備え、このガス貯留タンクからガス供給管4Aにガスをコンプレッサなどで圧送することでガス噴射ノズル3Bにアシストガスを供給し、ガス噴射ノズル3Bからアシストガスを噴射させる。
水供給部5は、水噴射ノズル3Cに水を供給するものである。水供給部5は、水噴射ノズル3Cに対して水供給管5Aを介して接続されており、水中から出た場所に配置された図示しない水貯留タンクを備え、この水貯留タンクから水供給管5Aに水をポンプなどで圧送することで水噴射ノズル3Cに水を供給し、水噴射ノズル3Cから水を噴射させる。なお、水供給部5は、加工用ノズル3が配置される水をポンプなどで圧送することで水噴射ノズル3Cに水を供給し、水噴射ノズル3Cから水を噴射させる構成であってもよい。
このような加工装置1は、図1に示すように、加工用ノズル3が、水中の被加工物100の加工部位100Aに対して所定間隔をおいてレーザ照射ノズル3Aの照射口3Aaを向けた形態で保持される。そして、加工装置1は、ガス供給部4により供給されたアシストガスがガス噴射ノズル3Bから噴射される。ガス噴射ノズル3Bから噴射されたアシストガスは、レーザビーム2Aが照射される周囲で被加工物100の加工部位100Aの一部に至り、当該部分のガス噴射領域が気体領域であるドライスポットDとして形成される。加工ヘッド2は、ガス噴射ノズル3Bのガス噴射領域内を加工領域として設けられる。また、加工装置1は、水供給部5により供給された水が水噴射ノズル3Cから噴射される。水噴射ノズル3Cから噴射された水は、ドライスポットDの周囲で被加工物100に至り、ドライスポットDの周囲に水流により水カーテンWSを形成する。この水カーテンWSによりドライスポットDへの水の流入を防ぐ。
さらに、本実施形態の加工装置1は、水噴射ノズル3Cから噴射された水が、水噴射ノズル3Cの噴射口3Caを出た直後に圧力が下がることで、その外側の水を引き込むことになる。そして、この水の引き込み作用により、補助ノズル3Dにおける開口3Dc付近の水が水噴射ノズル3Cから噴射された水に沿って流動し、これに伴い開口3Dbから通路3Da内に水が流入することで、補助ノズル3Dの通路3Daに水流が発生する。この水流は、水噴射ノズル3Cから噴射された水と共に、ドライスポットDの周囲で水カーテンWSをなす。この結果、水カーテンWSの水量が増すため、ドライスポットDへの水の流入の防止効果を向上することができる。
従って、上述したように、本実施形態の加工用ノズル3は、ガス噴射ノズル3Bと、ガス噴射ノズル3Bの周囲を取り囲むと共にガス噴射ノズル3Bの向きに沿う方向に向けて配置された水噴射ノズル3Cと、水噴射ノズル3Cの周囲を取り囲むと共に水噴射ノズル3Cの噴射口3Caの後側から前側に延在して配置され水噴射ノズル3Cとの間で水噴射ノズル3Cの向きに沿って連通する通路3Daをなす補助ノズル3Dと、を備える。
この加工用ノズル3によれば、ガス噴射ノズル3Bから噴射されたアシストガスにより被加工物100の加工部位100AにドライスポットDが形成され、かつ水噴射ノズル3Cから噴射された水によりドライスポットDの周囲に水カーテンWSが形成され、さらに、水噴射ノズル3Cから噴射された水による引き込み作用により補助ノズル3Dの通路3Daに水流が発生し、水噴射ノズル3Cから噴射された水による水カーテンWSの水量が増加される。この結果、水カーテンWSによるドライスポットDへの水の流入の防止効果を向上することができる。
なお、本実施形態の加工用ノズル3では、図3に示すように、水噴射ノズル3Cは、噴射口3Caが外側に向けて配置され、補助ノズル3Dは、水噴射ノズル3Cの噴射口3Caの向きに沿って前端が外側に広がって形成されている。
この加工用ノズル3によれば、水カーテンWSを被加工物100に向けて末広がりに形成することができ、被加工物100に衝突した水カーテンWSの水を外側に押し出すことで、ドライスポットDへの水の流入の防止効果をさらに向上することができる。
また、本実施形態の加工用ノズル3では、図4に示すように、補助ノズル3Dは、ガス噴射ノズル3Bおよび水噴射ノズル3Cの噴射口3Ba,3Caの前側にて前端に至る途中が窄まる狭窄部3Deが形成されている。即ち、補助ノズル3Dは、ガス噴射ノズル3Bおよび水噴射ノズル3Cの噴射口3Ba,3Caの前側にて狭窄部3Deにより内側に窄まってから前端が外側に広がって形成されている。
補助ノズル3Dを設けない場合は、ガス噴射ノズル3Bの噴射口3Baを出た直後の位置で、アシストガスの圧力が最も降下する圧力降下ピーク点P1があり、当該圧力降下ピーク点P1から被加工物100に向かって徐々に圧力が上昇する。このような場合、ガス噴射ノズル3Bの噴射口3Baの付近が圧力降下ピーク点P1であるため、圧力低下により周囲の水を引き込むことになり、ドライスポットDへの水の流入の恐れがある。これに対し、この加工用ノズル3によれば、図4に示すように、補助ノズル3Dに狭窄部3Deを形成することで、狭窄部3Deのノズル作用により圧力降下ピーク点がガス噴射ノズル3Bの噴射口3Baの付近から前側に離れた位置P2に移動すると共に、圧力降下ピークが大きくなる。この結果、水カーテンWSにおいては、その流速が増加することになり水量が増加するため、ドライスポットDへの水の流入の防止効果をさらに向上することができる。
なお、この図4に示す補助ノズル3Dの構成は、図3に示すように、水噴射ノズル3Cの噴射口3Caが外側に向けて配置され、補助ノズル3Dが水噴射ノズル3Cの噴射口3Caの向きに沿って前端が外側に広がって形成されている構成において適用してもよく、双方の作用により、ドライスポットDへの水の流入の防止効果をより顕著に向上することができる。
また、本実施形態の加工用ノズル3では、補助ノズル3Dにおいて、開口3Db,3Dcの隙間(開口径)や通路3Da内の隙間(内径)は、ドライスポットDの範囲や、レーザ照射ノズル3Aの照射口3Aaの被加工物100への距離や、ガス噴射ノズル3Bの噴射口3Baの被加工物100への距離や、水噴射ノズル3Cの噴射口3Caの被加工物100への距離などに応じて適宜決定するものである。
また、本実施形態の加工用ノズル3が適用される加工装置1にあっては、上述した加工用ノズル3と、ガス噴射ノズル3Bにアシストガスを供給するガス供給部4と、水噴射ノズル3Cに水を供給する水供給部5と、ガス噴射ノズル3Bのガス噴射領域内を加工領域として設けられた加工ヘッド2と、を備える。
この加工装置1によれば、水カーテンWSによるドライスポットDへの水の流入の防止効果を向上することで、加工精度を向上することができる。
ところで、図5は、本実施形態に係る加工装置の他の例の概略構成図である。図5に示す加工装置1は、TIG溶接を行うものである。従って、加工ヘッド6は、溶接トーチ6Aを備える。溶接トーチ6Aは、加工用ノズル3のトーチ挿入ノズル3Eを貫通して設けられている。また、加工装置1は、溶接トーチ6Aの先端部に対応する位置に溶接ワイヤ6Bを備える。溶接ワイヤ6Bは、加工用ノズル3を貫通して支持されている。このような構成により、本実施形態の加工装置1は、TIG溶接を行うことも可能である。
[実施形態2]
図6は、本実施形態に係る加工装置の概略構成図である。図7は、図6のB−B断面拡大図である。図8は、他の例を示す図6のB−B断面拡大図である。図9は、本実施形態に係る加工装置の加工用ノズルにおける突状部の拡大斜視図である。図10は、本実施形態に係る加工装置の加工用ノズルにおける突状部の拡大断面図である。図11は、本実施形態に係る加工装置の加工用ノズルの概略構成図である。
図6に示すように、本実施形態の加工装置11は、水中において被加工物100を加工するものである。加工としては、例えば、溶接、切断があり、加工方法としては、例えば、レーザ加工がある。本実施形態では、レーザ加工による肉盛溶接を主として説明する。
本実施形態の加工装置11は、図6に示すように、加工ヘッド12、加工用ノズル13、第一ガス供給部14、第二ガス供給部15を備えている。
加工ヘッド12は、レーザビーム12Aを照射するもので加工用ノズル13に取り付けられている。
加工用ノズル13は、加工ヘッド12から照射されたレーザビーム12Aを、水中の被加工物100の加工部位100Aの加工に適した距離で照射するように図示しない保持手段(例えば、マニピュレータ)により水中にて保持される。この加工用ノズル13は、レーザ照射ノズル13A、第一ガス噴射ノズル13B、第二ガス噴射ノズル13C、突状部13Dを備えている。
レーザ照射ノズル13Aは、加工用ノズル13の中央に設けられて加工ヘッド12から照射されたレーザビーム12Aを通過させる穴であってレーザビーム12Aを被加工物100の加工部位100Aに照射するための照射口3Aaを有する。
第一ガス噴射ノズル13Bは、アシストガスを噴射するもので、図6および図7に示すように、レーザ照射ノズル13Aの周囲を取り囲むように配置され、レーザ照射ノズル13Aの向きに沿う方向に向けた穴として形成されている。本実施形態において、第一ガス噴射ノズル13Bは、図7に示すように、レーザ照射ノズル13Aの周囲を取り囲むように環状の穴として形成されている。その他、第一ガス噴射ノズル13Bは、図には明示しないが、レーザ照射ノズル13Aの周囲を取り囲むように複数の穴として形成されていてもよい。なお、本実施形態において、第一ガス噴射ノズル13Bは、図6に示すように、レーザ照射ノズル13Aの照射口13Aaと同じ平面上に噴射口13Baが形成されている。その他、第一ガス噴射ノズル13Bは、図には明示しないが、レーザ照射ノズル13Aの照射口13Aaに対してレーザ照射ノズル13Aの向きの後側(レーザビーム12Aが照射される向きの反対側)に窪んだ位置に噴射口13Baが設けられていてもよく、レーザ照射ノズル13Aの照射口13Aaに対してレーザ照射ノズル13Aの向きの前側(レーザビーム12Aが照射される側)に突出した位置に噴射口13Baが設けられていてもよい。
第二ガス噴射ノズル13Cは、シールドガスを噴射するもので、図6および図7に示すように、第一ガス噴射ノズル13Bの周囲を取り囲むように配置され、第一ガス噴射ノズル13Bの向きに沿う方向に向けた穴として形成されている。本実施形態において、第二ガス噴射ノズル13Cは、図7に示すように、第一ガス噴射ノズル13Bの周囲を取り囲むように環状の穴として形成されている。その他、第二ガス噴射ノズル13Cは、図8に示すように、第一ガス噴射ノズル13Bの周囲を取り囲むように複数の穴として形成されていてもよい。なお、本実施形態において、第二ガス噴射ノズル13Cは、図6に示すように、第一ガス噴射ノズル13Bの噴射口13Baと同じ平面上に噴射口13Caが形成されている。その他、第二ガス噴射ノズル13Cは、図には明示しないが、第一ガス噴射ノズル13Bの噴射口13Baに対して第一ガス噴射ノズル13Bの向きの後側(アシストガスが噴射される向きの反対側)に窪んだ位置に噴射口13Caが設けられていてもよく、第一ガス噴射ノズル13Bの噴射口13Baに対して第一ガス噴射ノズル13Bの向きの前側(アシストガスが噴射される側)に突出した位置に噴射口13Caが設けられていてもよい。
突状部13Dは、図6および図7に示すように、第二ガス噴射ノズル13Cの流路の内面に突出して設けられている。図6および図7に示す突状部13Dは、環状に形成された第二ガス噴射ノズル13Cの流路の内側内面に突出して設けられ、環状の周方向に所定間隔をおいて複数設けられている。また、図8に示す突状部13Dは、第二ガス噴射ノズル13Cが第一ガス噴射ノズル13Bの周囲を取り囲む複数の穴からなる流路を有し、第二ガス噴射ノズル13Cの各流路の内側内面に突出して設けられている。突状部13Dは、第二ガス噴射ノズル13Cの流路に設けられているが、好ましくは第二ガス噴射ノズル13Cの噴出口13Caの近傍(内縁)に設けられていることが好ましい。なお、突状部13Dは、第二ガス噴射ノズル13Cの流路の内面に突出して設けられたものと説明したが、第二ガス噴射ノズル13Cの流路の内面に形成された複数の溝により当該溝の間で突出するものであってもよい。なお、図には明示しないが、また、突状部13Dは、環状に形成された第二ガス噴射ノズル13Cの流路の外側内面に突出して設けられ、環状の周方向に所定間隔をおいて複数設けられていてもよく、第二ガス噴射ノズル13Cが第一ガス噴射ノズル13Bの周囲を取り囲む複数の穴からなる流路を有し、第二ガス噴射ノズル13Cの各流路の外側内面に突出して設けられていてもよい。
第一ガス供給部14は、第一ガス噴射ノズル13Bにアシストガスを供給するものである。第一ガス供給部14は、第一ガス噴射ノズル13Bに対して第一ガス供給管14Aを介して接続されており、水中から出た場所に配置された図示しないガス貯留タンクを備え、このガス貯留タンクから第一ガス供給管14Aにガスをコンプレッサなどで圧送することで第一ガス噴射ノズル13Bにアシストガスを供給し、第一ガス噴射ノズル13Bからアシストガスを噴射させる。
第二ガス供給部15は、第二ガス噴射ノズル13Cにシールドガスを供給するものである。第二ガス供給部15は、第二ガス噴射ノズル13Cに対して第二ガス供給管15Aを介して接続されており、水中から出た場所に配置された図示しないガス貯留タンクを備え、このガス貯留タンクから第二ガス供給管15Aにガスをコンプレッサなどで圧送することで第二ガス噴射ノズル13Cにシールドガスを供給し、第二ガス噴射ノズル13Cからシールドガスを噴射させる。
このような加工装置11は、図6に示すように、加工用ノズル13が、水中の被加工物100の加工部位100Aに対して所定間隔をおいてレーザ照射ノズル13Aの照射口13Aaを向けた形態で保持される。そして、加工装置11は、第一ガス供給部14により供給されたアシストガスが第一ガス噴射ノズル13Bから噴射される。第一ガス噴射ノズル13Bから噴射されたアシストガスは、レーザビーム12Aが照射される周囲で被加工物100の加工部位100Aの一部に至り、当該部分のガス噴射領域が気体領域であるドライスポットDとして形成される。加工ヘッド12は、第一ガス噴射ノズル13Bのガス噴射領域内を加工領域として設けられる。また、加工装置11は、第二ガス供給部15により供給されたシールドガスが第二ガス噴射ノズル13Cから噴射される。第二ガス噴射ノズル13Cから噴射されたシールドガスは、ドライスポットDの周囲で被加工物100に至り、ドライスポットDの周囲に気流によりエアカーテンASを形成する。このエアカーテンASによりドライスポットDへの水の流入を防ぐ。
さらに、本実施形態の加工装置11は、第二ガス噴射ノズル13Cから噴射されるシールドガスが、突状部13Dの外面に沿って流れ、その後に当該突状部13Dから剥離する際に流れ方向で旋回する縦渦が発生する。そして、この縦渦により第二ガス噴射ノズル13Cの噴射口13Caから噴射されたシールドガスが安定して直進する噴流となるため、形成されるエアカーテンASを安定化させることができ、ドライスポットDへの水の流入の防止効果を向上することができる。
従って、上述したように、本実施形態の加工用ノズル13は、第一ガス噴射ノズル13Bと、第一ガス噴射ノズル13Bの周囲を取り囲むと共に第一ガス噴射ノズル13Bの向きに沿う方向に向けて配置された第二ガス噴射ノズル13Cと、第二ガス噴射ノズル13Cの流路の内面に設けられた突状部13Dと、を備える。
この加工用ノズル13によれば、第一ガス噴射ノズル13Bから噴射されたアシストガスにより被加工物100の加工部位100AにドライスポットDが形成され、かつ第二ガス噴射ノズル13Cから噴射されたシールドガスによりドライスポットDの周囲にエアカーテンASが形成され、さらに、第二ガス噴射ノズル13Cから噴射されたシールドガスが突状部13Dにより縦渦となり安定して直進する噴流となる。この結果、比較的少量のシールドガスであってもエアカーテンASを安定化させることができ、ドライスポットDへの水の流入の防止効果を向上することができる。
また、本実施形態の加工用ノズル13では、図9に示すように、突状部13Dは、第二ガス噴射ノズル13Cの流路の噴射口13Caに向けて徐々に断面積を増加して形成されている。図9では、突状部13Dは、断面が三角形状であり、この三角形状の幅および高さが、シールドガスの流れる方向であって、第二ガス噴射ノズル13Cの流路の噴射口13Caに向けて徐々に大きくなるように形成されている。
この加工用ノズル13によれば、突状部13Dの断面積が徐々に増加する内面に沿ってシールドガスが流れ、断面積が最大となった部分で剥離することから縦渦が発生しやすくなるため、エアカーテンASをより安定化させることができ、ドライスポットDへの水の流入の防止効果をさらに向上することができる。
また、本実施形態の加工用ノズル13では、図10に示すように、第二ガス噴射ノズル13Cは、第一ガス噴射ノズル13Bの周囲を取り囲む複数の流路を有し、突状部13Dは、第二ガス噴射ノズル13Cの各流路の内側内面に螺旋状に設けられている。
この加工用ノズル13によれば、突状部13Dが第二ガス噴射ノズル13Cの流路の内側内面に螺旋状に設けられているため、縦渦が発生しやすくなり、エアカーテンASをより安定化させることができ、ドライスポットDへの水の流入の防止効果をさらに向上することができる。
また、本実施形態の加工用ノズル13では、図11に示すように、第二ガス噴射ノズル13Cは、噴射口13Caが外側に向けて配置されている。
この加工用ノズル13によれば、エアカーテンASを被加工物100に向けて末広がりに形成することができ、被加工物100に衝突したエアカーテンASのシールドガスを外側に押し出すことで、ドライスポットDへの水の流入の防止効果をさらに向上することができる。
また、本実施形態の加工用ノズル13では、突状部13Dにおいて、その幅や高さや長さは、ドライスポットDの範囲や、レーザ照射ノズル13Aの照射口13Aaの被加工物100への距離や、第一ガス噴射ノズル13Bの噴射口13Baの被加工物100への距離や、第二ガス噴射ノズル13Cの噴射口13Caの被加工物100への距離などに応じて適宜決定するものである。
また、本実施形態の加工用ノズル13が適用される加工装置11にあっては、上述した加工用ノズル13と、第一ガス噴射ノズル13Bにアシストガスを供給する第一ガス供給部14と、第二ガス噴射ノズル13Cにシールドガスを供給する第二ガス供給部15と、第一ガス噴射ノズル13Bのガス噴射領域内を加工領域として設けられた加工ヘッド12と、を備える。
この加工装置11によれば、エアカーテンASによるドライスポットDへの水の流入の防止効果を向上することで、加工精度を向上することができる。
ところで、図12は、本実施形態に係る加工装置の他の例の概略構成図である。図12に示す加工装置11は、TIG溶接を行うものである。従って、加工ヘッド16は、溶接トーチ16Aを備える。溶接トーチ16Aは、加工用ノズル13のトーチ挿入ノズル13Eを貫通して設けられている。また、加工装置11は、溶接トーチ16Aの先端部に対応する位置に溶接ワイヤ16Bを備える。溶接ワイヤ16Bは、加工用ノズル13を貫通して支持されている。このような構成により、本実施形態の加工装置11は、TIG溶接を行うことも可能である。
[実施形態3]
図13は、本実施形態に係る加工装置の概略構成図である。図14は、図13のC−C断面拡大図である。図15は、本実施形態に係る加工装置の加工用ノズルにおける被覆部材の概略構成図である。図16は、本実施形態に係る加工装置の加工用ノズルの概略構成図である。
図13に示すように、本実施形態の加工装置21は、水中において被加工物100を加工するものである。加工としては、例えば、溶接、切断があり、加工方法としては、例えば、レーザ加工がある。本実施形態では、レーザ加工による肉盛溶接を主として説明する。
本実施形態の加工装置21は、図13に示すように、加工ヘッド22、加工用ノズル23、第一ガス供給部24、第二ガス供給部25を備えている。
加工ヘッド22は、レーザビーム22Aを照射するもので加工用ノズル23に取り付けられている。
加工用ノズル23は、加工ヘッド22から照射されたレーザビーム22Aを、水中の被加工物100の加工部位100Aの加工に適した距離で照射するように図示しない保持手段(例えば、マニピュレータ)により水中にて保持される。この加工用ノズル23は、レーザ照射ノズル23A、第一ガス噴射ノズル23B、第二ガス噴射ノズル23C、被覆部材23Dを備えている。
レーザ照射ノズル23Aは、加工用ノズル23の中央に設けられて加工ヘッド22から照射されたレーザビーム22Aを通過させる穴であってレーザビーム12Aを被加工物100の加工部位100Aに照射するための照射口3Aaを有する。
第一ガス噴射ノズル23Bは、アシストガスを噴射するもので、図13および図14に示すように、レーザ照射ノズル23Aの周囲を取り囲むように配置され、レーザ照射ノズル23Aの向きに沿う方向に向けた穴として形成されている。本実施形態において、第一ガス噴射ノズル23Bは、図14に示すように、レーザ照射ノズル23Aの周囲を取り囲むように環状の穴として形成されている。その他、第一ガス噴射ノズル23Bは、図には明示しないが、レーザ照射ノズル23Aの周囲を取り囲むように複数の穴として形成されていてもよい。なお、本実施形態において、第一ガス噴射ノズル23Bは、図13に示すように、レーザ照射ノズル23Aの照射口23Aaと同じ平面上に噴射口23Baが形成されている。その他、第一ガス噴射ノズル23Bは、図には明示しないが、レーザ照射ノズル23Aの照射口23Aaに対してレーザ照射ノズル23Aの向きの後側(レーザビーム22Aが照射される向きの反対側)に窪んだ位置に噴射口23Baが設けられていてもよく、レーザ照射ノズル23Aの照射口23Aaに対してレーザ照射ノズル23Aの向きの前側(レーザビーム22Aが照射される側)に突出した位置に噴射口23Baが設けられていてもよい。
第二ガス噴射ノズル23Cは、シールドガスを噴射するもので、図13および図14に示すように、第一ガス噴射ノズル23Bの周囲を取り囲むように配置され、第一ガス噴射ノズル23Bの向きに沿う方向に向けた穴として形成されている。本実施形態において、第二ガス噴射ノズル23Cは、図14に示すように、第一ガス噴射ノズル23Bの周囲を取り囲むように環状の穴として形成されている。その他、第二ガス噴射ノズル23Cは、図には明示しないが、第一ガス噴射ノズル23Bの周囲を取り囲むように複数の穴として形成されていてもよい。なお、本実施形態において、第二ガス噴射ノズル23Cは、図13に示すように、第一ガス噴射ノズル23Bの噴射口23Baと同じ平面上に噴射口23Caが形成されている。その他、第二ガス噴射ノズル23Cは、図には明示しないが、第一ガス噴射ノズル23Bの噴射口23Baに対して第一ガス噴射ノズル23Bの向きの後側(アシストガスが噴射される向きの反対側)に窪んだ位置に噴射口23Caが設けられていてもよく、第一ガス噴射ノズル23Bの噴射口23Baに対して第一ガス噴射ノズル23Bの向きの前側(アシストガスが噴射される側)に突出した位置に噴射口23Caが設けられていてもよい。
被覆部材23Dは、図13および図15に示すように、第二ガス噴射ノズル23Cの外側に配置されている。被覆部材23Dは、第二ガス噴射ノズル23Cの全周囲を取り囲む筒状に形成されて第二ガス噴射ノズル23C側の端部が閉塞されている。そして、被覆部材23Dは、第二ガス噴射ノズル23Cの向きに沿って延在して設けられている。被覆部材23Dの延在長さは、加工ヘッド22から照射されるレーザビーム22Aによる加工位置(焦点位置)よりも長い。この被覆部材23Dは、弾性部材で形成されると共に外側に拡張可能に形成されている。被覆部材23Dにおいて外側に拡張可能な構成は、図15に示すように、延在端部に折返状の重複部23Daを設ける。
第一ガス供給部24は、第一ガス噴射ノズル23Bにアシストガスを供給するものである。第一ガス供給部24は、第一ガス噴射ノズル23Bに対して第一ガス供給管24Aを介して接続されており、水中から出た場所に配置された図示しないガス貯留タンクを備え、このガス貯留タンクから第一ガス供給管24Aにガスをコンプレッサなどで圧送することで第一ガス噴射ノズル23Bにアシストガスを供給し、第一ガス噴射ノズル23Bからアシストガスを噴射させる。
第二ガス供給部25は、第二ガス噴射ノズル23Cにシールドガスを供給するものである。第二ガス供給部25は、第二ガス噴射ノズル23Cに対して第二ガス供給管25Aを介して接続されており、水中から出た場所に配置された図示しないガス貯留タンクを備え、このガス貯留タンクから第二ガス供給管25Aにガスをコンプレッサなどで圧送することで第二ガス噴射ノズル23Cにシールドガスを供給し、第二ガス噴射ノズル23Cからシールドガスを噴射させる。
このような加工装置21は、図13に示すように、加工用ノズル23が、水中の被加工物100の加工部位100Aに対して所定間隔をおいてレーザ照射ノズル23Aの照射口23Aaを向けた形態で保持される。そして、加工装置21は、第一ガス供給部24により供給されたアシストガスが第一ガス噴射ノズル23Bから噴射される。第一ガス噴射ノズル23Bから噴射されたアシストガスは、レーザビーム22Aが照射される周囲で被加工物100の加工部位100Aの一部に至り、当該部分のガス噴射領域が気体領域であるドライスポットDとして形成される。加工ヘッド22は、第一ガス噴射ノズル23Bのガス噴射領域内を加工領域として設けられる。また、加工装置21は、第二ガス供給部25により供給されたシールドガスが第二ガス噴射ノズル23Cから噴射される。第二ガス噴射ノズル23Cから噴射されたシールドガスは、ドライスポットDの周囲で被加工物100に至り、ドライスポットDの周囲に気流によりエアカーテンASを形成する。このエアカーテンASによりドライスポットDへの水の流入を防ぐ。
さらに、本実施形態の加工装置21は、被覆部材23Dの延在端が被加工物100に当接し、この被覆部材23Dが弾性により変形しつつ外側に拡張することで、エアカーテンASと共にドライスポットDの周囲を覆うことになる。この結果、エアカーテンASの作用に加えて被覆部材23Dの遮蔽機能が追加されるため、ドライスポットDへの水の流入の防止効果を向上することができる。
従って、上述したように、本実施形態の加工用ノズル23は、第一ガス噴射ノズル23Bと、第一ガス噴射ノズル23Bの周囲を取り囲むと共に第一ガス噴射ノズル23Bの向きに沿う方向に向けて配置された第二ガス噴射ノズル23Cと、第二ガス噴射ノズル23Cの全周囲を取り囲む筒状に形成されて第二ガス噴射ノズル23C側の端部が閉塞されつつ第二ガス噴射ノズル23Cの向きに沿って延在して設けられており弾性部材で形成されると共に外側に拡張可能に形成された被覆部材23Dと、を備える。
この加工用ノズル23によれば、第一ガス噴射ノズル23Bから噴射されたアシストガスにより被加工物100の加工部位100AにドライスポットDが形成され、かつ第二ガス噴射ノズル23Cから噴射されたシールドガスによりドライスポットDの周囲にエアカーテンASが形成され、さらに、第二ガス噴射ノズル23CによるエアカーテンASの周囲が被覆部材23Dで被覆される。被覆部材23Dは、延在端が被加工物100に当接し、この被覆部材23Dが弾性により変形しつつ外側に拡張することで、エアカーテンASと共にドライスポットDの周囲を覆うため、ドライスポットDへの水の流入の防止効果を向上することができる。
また、本実施形態の加工用ノズル23では、図16に示すように、第二ガス噴射ノズル23Cは、噴射口23Caが外側に向けて配置され、被覆部材23Dは、第二ガス噴射ノズル23Cの向きに沿って外側に向けて延在して配置される。
この加工用ノズル23によれば、エアカーテンASを被加工物100に向けて末広がりに形成することができ、かつ被覆部材23Dが被加工物100に向けて末広がりになって当接するため、外側からの外力に抗する作用が増大し、ドライスポットDへの水の流入の防止効果をさらに向上することができる。
また、本実施形態の加工用ノズル23が適用される加工装置21にあっては、上述した加工用ノズル23と、第一ガス噴射ノズル23Bにアシストガスを供給する第一ガス供給部24と、第二ガス噴射ノズル23Cにシールドガスを供給する第二ガス供給部25と、第一ガス噴射ノズル23Bのガス噴射領域内を加工領域として設けられた加工ヘッド22と、を備える。
この加工装置21によれば、エアカーテンASに加えて被覆部材23DによりドライスポットDへの水の流入の防止効果を向上することで、加工精度を向上することができる。
なお、本実施形態の被覆部材23Dは、上述した実施形態2において適用することが可能であり、これにより、実施形態2におけるドライスポットDへの水の流入の防止効果をさらに向上することができる。
ところで、図17は、本実施形態に係る加工装置の他の例の概略構成図である。図17に示す加工装置21は、TIG溶接を行うものである。従って、加工ヘッド26は、溶接トーチ26Aを備える。溶接トーチ26Aは、加工用ノズル23のトーチ挿入ノズル23Eを貫通して設けられている。また、加工装置21は、溶接トーチ26Aの先端部に対応する位置に溶接ワイヤ26Bを備える。溶接ワイヤ26Bは、加工用ノズル23を貫通して支持されている。このような構成により、本実施形態の加工装置21は、TIG溶接を行うことも可能である。
なお、上述した各実施形態において、加工用ノズル3,13,23の外形を円柱形状として図示しているが、これに限らない。例えば、図には明示しないが、加工用ノズル3,13,23の外形は、多角柱形状としてもよく、この形状に応じて、レーザ照射ノズル3Aや、ガス噴射ノズル3Bや、水噴射ノズル3Cや、補助ノズル3Dの形状や配置を適宜決定する。