JP2019005731A - 放射性物質除染用多孔質体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】プルシアンブルーを海水等の電解質溶液へ溶解させた場合、プルシアンブルーに含まれるシアン化合物が電解質溶媒中に溶出してしまう問題があった。また、高濃度の塩分を含む溶液中では、セシウム等の標的とする化学物質の吸着率が著しく低いという問題があった。【解決手段】ナノセルロースとプルシアンブルーの疑似錯体を形成させた後に、塩化銅等の遷移金属塩を混合した上で、ウレタンやポリビニルアルコール等の親水性基材と混合して、その後、多孔質体を形成させることで、高濃度の電解質溶液に浸しても、多孔質体からのシアン化合物の溶出が抑えられ、また、セシウム等の標的とする化学物質の吸着率の低下も抑えられた。【選択図】図1
Description
本発明は、セシウム、ヨウ素、トリウム、又はストロンチウム等の化学物質を低減ないし除去するために用いる捕集剤並びにこれを用いた方法及び装置に関するものである。
セシウム、ヨウ素、トリウム、又はストロンチウム等の化学物質、特にセシウム137、ヨウ素131、ストロンチウム90等の放射性物質によって汚染された水から、これらの放射性物質を低減ないし除去する手段として、これらの放射性物質を取り込むように設計されたゼオライトを用いる技術がある(例えば、特許文献1参照)。
また、ゼオライトよりもセシウムに対して高い結合力及び選択性を有するプルシアンブルー並びにその類似化合物を用いる技術や、ストロンチウムに対して高い結合力を示すアルギン酸のような高分子多糖類を用いる技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、ゼオライトよりもセシウムに対して高い結合力及び選択性を有するプルシアンブルー並びにその類似化合物を用いる技術や、ストロンチウムに対して高い結合力を示すアルギン酸のような高分子多糖類を用いる技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、ゼオライトは選択性が低いため、これを用いる方法による場合には目詰まりしたゼオライトを頻繁に交換しなければならず高コストになってしまい、さらには、低減ないし除去の対象となる化学物質が放射性物質である場合には、交換作業は容易ではないという問題がある。他方で、プルシアンブルー及びその類似化合物を使用する場合や、微小サイズのゼオライトを使用する場合には、これらの物質が水に溶出しやすいという問題があり、例えば、ウレタンやポリビニルアルコールの多孔質体へ安定的に担持させることが困難であった。
本発明の発明者らは、ウレタンやポリビニルアルコールの多孔質体へ安定的に担持させることが困難であることの原因は、プルシアンブルー及びその類似化合物がナノサイズであることや親水性が高いことにあるであろうとの考察の下、ナノセルロースとプルシアンブルーの疑似錯体を形成させてから、ウレタンやポリビニルアルコール等の多孔質体へ取り込ませることで、ウレタンやポリビニルアルコール等の親水性基材へ安定的に担持させることを可能とした(特許文献3)。
しかしながら、プルシアンブルーは、海水等の電解質溶液へ溶解させた場合、プルシアンブルーに含まれるシアン化合物が電解質溶媒中に溶出してしまう問題があった。また、高濃度の塩分を含む溶液中では、セシウム等の標的とする化学物質の吸着率が著しく低下してしまう問題があった。
本発明は、海水等の電解質溶液へ浸した場合でも、プルシアンブルーに含まれるシアン化合物が溶液中へ溶出しない除染用スポンジ等の除染器具を提供することを課題とする。また、電解質溶液中であっても、セシウムなどの標的とする化学物質の吸着率が著しく低下することのない除染用スポンジ等の除染器具を提供することを課題とする。
本発明者は、プルシアンブルーに含まれるシアン化合物が電解質溶媒中に溶出してしまう問題の原因は、プルシアンブルー中のヘキサシアノ鉄(II)酸中の二価鉄が酸化されやすいことにあるであろうとの考察の下、ナノセルロースとプルシアンブルーの疑似錯体を形成させた後に、塩化銅等の遷移金属塩を混合した上で、ウレタンやポリビニルアルコール等の親水性基材と混合して、その後、多孔質体を形成させることで、高濃度の電解質溶液に浸しても、多孔質体からのシアン化合物の溶出が抑えられ、また、セシウム等の標的とする化学物質の吸着率の低下も抑えられることを見い出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、高濃度の電解質溶液に浸しても、プルシアンブルーを含有する多孔質体からのシアン化合物の溶出を低減ないし防ぐことができる。また、本発明によれば、高濃度の電解質溶液中であっても、セシウム等の標的とする化学物質の吸着率の低下を低減ないし防ぐことができる。
本発明の作用メカニズムの詳細は明らかではないが、以下のようなものが考えられる。すなわち、シアンと結合している二価鉄は酸化されやすく、電解質溶液中では二価鉄が酸化され三価鉄になり、シアン化合物が溶液中に溶出してしまう。そこで、銅などの酸化されにくい遷移金属を混合することで、プルシアンブルー中の二価鉄と遷移金属が置換され、電解質溶液中でのシアン化合物の溶出が低減ないし防止されているものと考えられる。
もしくは、次のような作用メカニズムが考えられる。すなわち、銅などの遷移金属と置換をされた二価鉄と、二価鉄と置換されていない未反応の銅の遷移金属は、ナノセルロースの水酸基によって配位され、錯体結合を形成し、Fe(II)−OH−ナノセルロースとCu(II)−OH−ナノセルロースの形態をとっていると考えられる。ここで、遊離シアン(HCN)が存在する場合、ナノセルロースと錯体結合したFe(II)及びCu(II)は、下記の式のように反応し、遊離シアンを捕捉するものと考えられる。ここで、コバルト、ニッケル、亜鉛、マンガン、銅といった遷移金属は、二価鉄と比べ、ナノセルロースとの親和性が高いため、ナノセルロースに保持され、また、ポリウレタン等の親水性基材に安定的に担持される。このため、Cu(CN)2とFe(CN)2は、ナノセルロースによって捕捉されることになり、電解質溶液中でのシアン化合物の溶出が低減ないし防止されているものと考えられる。
また、本発明の他の作用メカニズムとしては、物理的な作用も考えられる。すなわち、銅などの遷移金属が添加されることで、ナノセルロースと遷移金属が架橋結合され、ナノセルロースと遷移金属による微小の網目構造をもつビーズを形成したような形態となる。このため、プルシアンブルーがナノセルロースと遷移金属で内包された状態になることで、プルシアンブルーの溶出が物理的に防がれると考えられる。
以下、本発明の実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、発明内容の理解を助けるためのものであり、本発明を限定するものではない。
<捕集剤>
本発明における捕集剤は、ナノセルロースと吸着剤(例えば、プルシアンブルー、ゼオライト、アルギン酸等のキレート形成物質等)との疑似錯体であり、標的とする化学物質(例えば、セシウム、トリウム、ストロンチウム、ヨウ素等)に対して高い結合力ないし選択性を有する一種類又は複数種類の吸着剤(例えば、プルシアンブルー等)を含む捕集剤である。ここでいうナノセルロース/吸着剤の疑似錯体は、ナノセルロースに対して鉄(III)イオン等の陽イオンを結合させ、ナノセルロースと陽イオンの疑似錯体を形成させた後、かかる疑似錯体に対してヘキサシアノ鉄(II)酸などの錯イオンを結合させることで形成することもでき、又は、鉄(III)イオン等の陽イオンとヘキサシアノ鉄(II)酸などの錯イオンを結合させた後に、ナノセルロースと結合させることで形成することもできる。例えば、陽イオンとして鉄(III)イオン(塩化鉄(III))とナノセルロースを結合させた後に、ヘキサシアノ鉄(II)酸と結合することで、ナノセルロースとプルシアンブルーの疑似錯体を得ることができる。また、本発明における捕集剤では、複数種類の吸着剤を組み合わせても良いため、例えば、ナノセルロース、プルシアンブルー、及びゼオライトからなる疑似錯体や、ナノセルロース、プルシアンブルー、及びアルギン酸からなる疑似錯体がある。
本発明における捕集剤は、ナノセルロースと吸着剤(例えば、プルシアンブルー、ゼオライト、アルギン酸等のキレート形成物質等)との疑似錯体であり、標的とする化学物質(例えば、セシウム、トリウム、ストロンチウム、ヨウ素等)に対して高い結合力ないし選択性を有する一種類又は複数種類の吸着剤(例えば、プルシアンブルー等)を含む捕集剤である。ここでいうナノセルロース/吸着剤の疑似錯体は、ナノセルロースに対して鉄(III)イオン等の陽イオンを結合させ、ナノセルロースと陽イオンの疑似錯体を形成させた後、かかる疑似錯体に対してヘキサシアノ鉄(II)酸などの錯イオンを結合させることで形成することもでき、又は、鉄(III)イオン等の陽イオンとヘキサシアノ鉄(II)酸などの錯イオンを結合させた後に、ナノセルロースと結合させることで形成することもできる。例えば、陽イオンとして鉄(III)イオン(塩化鉄(III))とナノセルロースを結合させた後に、ヘキサシアノ鉄(II)酸と結合することで、ナノセルロースとプルシアンブルーの疑似錯体を得ることができる。また、本発明における捕集剤では、複数種類の吸着剤を組み合わせても良いため、例えば、ナノセルロース、プルシアンブルー、及びゼオライトからなる疑似錯体や、ナノセルロース、プルシアンブルー、及びアルギン酸からなる疑似錯体がある。
本発明におけるナノセルロースとは、市販のセルロース(α-セルロース、酢酸セルロース等)を、アトライター、ボールミル、サンドミル、ビーズミル等の微細化処理装置を用いて平均の長さが10μmから1000μm程度であり平均の直径が1nmから800nm程度になるまで微細化したもの、又は、同程度の長さ及び直径に微細化されている市販のセルロースを意味する。また、本発明におけるナノセルロース分散物は、市販のセルロース(α-セルロース、酢酸セルロース等)を、脱イオン水又はその他の分散媒体と共に、アトライター、ボールミル、サンドミル、ビーズミル等の微細化処理装置を用いて、溶媒内にセルロースを分散させる処理(以下「分散処理」という。)をすることで得ることができる。
ナノセルロース分散物の分散媒体としては、親水性溶媒を使用することができ、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンを使用することができる。また、分散処理は、例えば、ナノセルロースと脱イオン水を、セルロースが脱イオン水に対して0.01〜10wt%の量比になるように調製し、アトライター、ボールミル、サンドミル、ビーズミル等を用いて混合することによって調製することができる。なお、ここでいう「分散」とは、溶解や懸濁を含む広義の分散を意味し、例えば、ナノセルロースが全て溶解している態様、全て懸濁している態様、一部が溶解し一部が懸濁している態様等を意味する。
本発明でナノセルロースと疑似錯体を形成するプルシアンブルーとしては、ヘキサシアノ鉄(II)塩化鉄(III)、フェロシアン化鉄(III)又はフェロシアン化鉄(II)と呼ばれるシアノ錯体やこれらの類似体を利用することができる。セシウムイオン等の標的とする化学物質に対して高い結合定数を有し標的とする化学物質と錯体ないし疑似錯体を形成することができる性質を有すればよく、特定の配位状態や配位数を持つ錯体ないし疑似錯体には限定されない。また、本発明で利用するプルシアンブルーとしては、その平均の粒径が1nm〜200nmであれば良いが、10nm〜20nmであることが好ましい。
本発明における標的とする化学物質とは、水中や土中に含まれる化学物質を意味し、例えば、セシウム、トリウム、ストロンチウム、ヨウ素が挙げられ、特に、放射性物質セシウム、放射性トリウム、放射性ストロンチウム、放射性ヨウ素が挙げられる。
本発明における捕集剤は、前記ナノセルロース分散物の濃度が0.01〜10wt%及びプルシアンブルー(MW = 859.23g/mol)の濃度が1.0mM〜0.5Mとなるようにし、分散処理前のナノセルロース1質量部に対してプルシアンブルーを0.1〜100質量部の比率にすることで、適当な媒体中で調製することができる。さらに、好ましくは水中で混合することで調製することができる。混合工程には特別な条件を必要とはせず、例えば、混合物全量が10リットルの場合は、4℃〜45℃で、30〜120分間の範囲で適宜調整することができる。このようにして調製される捕集剤は、ナノセルロース・プルシアンブルー疑似錯体のコロイド溶液として表すこともできる。
本発明では、捕集剤と塩化銅や硫酸銅等の遷移金属塩を混合して捕集剤と遷移金属塩の混合物を得た後に、この混合物を親水性基材と混合し、その後、親水性基材を発泡させ多孔質体を形成し、又は、親水性基材を反応させ繊維を形成することで、捕集剤を含有する多孔質体又は繊維を形成することができる。
本発明において吸着剤としてプルシアンブルーを使用する場合、捕集剤と遷移金属塩を混合する際の遷移金属のモル濃度は、プルシアンブルー中のフェロシアン化鉄のモル濃度の2倍以上にすることが好ましい。
本発明における遷移金属塩としては、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、マンガン、マグネシウム、又はカルシウムの塩を用いることができ、吸着剤としてプルシアンブルーを用いる場合には、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、又はマンガンの塩であることが好ましい。
<親水性基材>
本発明では、捕集剤を担持させる基材として、親水性基材を使用できる。本発明における親水性基材としては、親水性多孔質体や親水性繊維がある。親水性多孔質体や親水性繊維は、天然の材料、人工の材料及び/又は合成の材料を含むことができ、また、天然のセルロースから製造された合成繊維などの天然材料から製造された合成材料を含むことができる。また、親水性多孔質体や親水性繊維は、ナイロンなどのポリアミド、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、アクリル、モドアクリル、ゴム、プラスチック、熱可塑性プラスチック、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリ塩化ビニル、ビニルニトリル、シリコン、ラテックス、それらの誘導体及びそれらの組み合わせ、並びにその他の吸収性の材料から形成することができる。吸着剤としてプルシアンブルーを用いた捕集剤を用いる場合には、親水性基材としてはポリビニルアルコールが好ましい。
本発明では、捕集剤を担持させる基材として、親水性基材を使用できる。本発明における親水性基材としては、親水性多孔質体や親水性繊維がある。親水性多孔質体や親水性繊維は、天然の材料、人工の材料及び/又は合成の材料を含むことができ、また、天然のセルロースから製造された合成繊維などの天然材料から製造された合成材料を含むことができる。また、親水性多孔質体や親水性繊維は、ナイロンなどのポリアミド、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、アクリル、モドアクリル、ゴム、プラスチック、熱可塑性プラスチック、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリ塩化ビニル、ビニルニトリル、シリコン、ラテックス、それらの誘導体及びそれらの組み合わせ、並びにその他の吸収性の材料から形成することができる。吸着剤としてプルシアンブルーを用いた捕集剤を用いる場合には、親水性基材としてはポリビニルアルコールが好ましい。
本発明では、標的とする化学物質を含む水溶液に、ナノセルロース/吸着剤の疑似錯体、遷移金属、及び親水性基材から構成されている多孔質体又は繊維(多孔質捕集剤又は繊維捕集剤)を加え、標的とする化学物質が多孔質体中又は繊維中の吸着剤と優先的に複合体を形成することで、標的とする化学物質を低減ないし除去することができる。
本発明において標的とする化学物質を含む水溶液の電解質濃度は、天然の海水でもよく、また、天然の海水における塩濃度よりも高い範囲でも良い。例えば、溶液の質量%が3%以上となっても良い。また、本発明は、電解質を加えたり、電解質を含まない水を加えたりして、溶液中の塩濃度を調節する工程を含んでいてもよい。
本発明で用いられる多孔質捕集剤及び繊維捕集剤は、標的とする化学物質(例えば、セシウム、トリウム、ストロンチウム、ヨウ素等)を含む溶液と、容積比1:10〜1:10000で適当な容器(例えば、タンク、槽等)内で混合することで、溶液中のセシウム等の標的とする化学物質を捕捉して、捕集剤と複合体を形成することができる。混合には特別の条件や手段を必要とはしないが、約4℃〜50℃、5分間〜1時間の範囲で適宜調整して混合すればよく、必要に応じて攪拌を行ってもよい。
ナノセルロース/吸着剤の疑似錯体、遷移金属、及び親水性基材から構成されている多孔質体はスポンジ状ないしはスポンジ様の構造を取ることもできるため、セシウムやトリウム等の標的とする化学物質の吸着処理をした後、スポンジ状捕集剤を機械的に取り出すことで回収することができる。
本発明における多孔質捕集剤及び繊維捕集剤は、圧縮又は熱処理することで体積を減量することができる。
本発明では、多孔質捕集剤及び繊維捕集剤に含まれるプルシアンブルーによって、汚染水等の水溶液中に含まれる標的とする化学物質を吸着・保持して、汚染水等の水溶液中に含まれる標的とする化学物質の濃度を低減ないし除去することができる。
親水性基材を親水性多孔質体とする場合には、プルシアンブルー等の吸着剤とナノセルロースからなる捕集剤及び遷移金属塩の混合物と親水性多孔質体の材料とを混合した後、親水性多孔質体の材料を公知の方法で発泡させることで作製することができる。吸着剤をプルシアンブルーとし、親水性多孔質体をポリビニルアルコールとする場合、ポリビニルアルコールに対する捕集剤の質量比は、2.5〜50%とすることが好ましい。また、親水性基材を親水性繊維とする場合には、捕集剤及び遷移金属塩の混合物と親水性繊維の材料とを混合した後、捕集剤を親水性繊維に公知の方法で浸漬し含浸させることで作製することができる。
<ヨウ素除去用基材>
本発明は、セシウム、トリウム、ストロンチウム等の標的とする化学物質の濃度を低減ないし除去する工程と前後若しくは並行して、汚染水等に含まれるヨウ素濃度を低減ないし除去する工程を含んでいてもよい。この工程は、捕集剤を担持させた親水性基材にヨウ素を含む溶液を流通させることで行うことができ、セシウムやトリウム等の標的とする化学物質の濃度を低減ないし除去する前後いずれの溶液に対しても行うことができる。
本発明は、セシウム、トリウム、ストロンチウム等の標的とする化学物質の濃度を低減ないし除去する工程と前後若しくは並行して、汚染水等に含まれるヨウ素濃度を低減ないし除去する工程を含んでいてもよい。この工程は、捕集剤を担持させた親水性基材にヨウ素を含む溶液を流通させることで行うことができ、セシウムやトリウム等の標的とする化学物質の濃度を低減ないし除去する前後いずれの溶液に対しても行うことができる。
捕集剤及び親水性基材は、いずれも適当な径の管、筒、棟等の液体が流通可能な適当な容器に充填して使用することができる。また、放射性物質等を除染するための装置の一部として使用することもできる。
以下、本発明の実施例及び比較例を説明する。ただし、以下の実施例は、発明の内容の理解を助けるためのものであり、本発明を限定するものではない。
<シアン化合物の非溶出確認試験>
(実施例1)
1)ナノセルロース/プルシアンブルー/銅フィラーの調製
プルシアンブルー(大日精化工業株式会社製)1.2kg及びナノセルロース分散液(ナノセルロースは2wt%。第一工業製薬株式会社製)10kgを、ボールミルを用いて3日間混合し、その後、1M硫酸銅水溶液を1250ml添加し、さらに3時間混合し、ナノセルロース/プルシアンブルー/銅フィラーを調製した。
(実施例1)
1)ナノセルロース/プルシアンブルー/銅フィラーの調製
プルシアンブルー(大日精化工業株式会社製)1.2kg及びナノセルロース分散液(ナノセルロースは2wt%。第一工業製薬株式会社製)10kgを、ボールミルを用いて3日間混合し、その後、1M硫酸銅水溶液を1250ml添加し、さらに3時間混合し、ナノセルロース/プルシアンブルー/銅フィラーを調製した。
2)プルシアンブルー/ポリウレタンスポンジの作製
1)で調製したナノセルロース/プルシアンブルー/銅フィラー40gに、ポリウレタンポリマー40g及び整泡剤0.4mlを添加し、混合・発泡処理を行った。その後、恒温乾燥機に入れ、80℃で24時間乾燥させ、プルシアンブルー/ポリウレタンスポンジを作製した。
1)で調製したナノセルロース/プルシアンブルー/銅フィラー40gに、ポリウレタンポリマー40g及び整泡剤0.4mlを添加し、混合・発泡処理を行った。その後、恒温乾燥機に入れ、80℃で24時間乾燥させ、プルシアンブルー/ポリウレタンスポンジを作製した。
3)シアンの非溶出確認試験(経時変化)
2)で調製したプルシアンブルー/ポリウレタンスポンジ中に含有されるプルシアンブルーの質量と天然海水の体積との比が1g:1000mlとなるようにして、同ポリウレタンスポンジ1gを天然海水100ml中に浸漬して室温(20℃前後)で静置した。その後、7日後、14日後、21日後、及び28日後それぞれの時点での溶液を0.45μmフィルターを用いてそれぞれ固液分離し、得られた溶液中の全シアン濃度を測定した(測定試薬:全シアン濃度(低濃度)セット(共立理化学研究所製、WA−CNT(L))、測定機器:デジタルパックテストマルチ ラムダー9000(共立理化学研究所製))。その結果は、表1及び図1のとおりであった。いずれの時点の溶液についても、ごく微量のシアンしか確認されなかった。
2)で調製したプルシアンブルー/ポリウレタンスポンジ中に含有されるプルシアンブルーの質量と天然海水の体積との比が1g:1000mlとなるようにして、同ポリウレタンスポンジ1gを天然海水100ml中に浸漬して室温(20℃前後)で静置した。その後、7日後、14日後、21日後、及び28日後それぞれの時点での溶液を0.45μmフィルターを用いてそれぞれ固液分離し、得られた溶液中の全シアン濃度を測定した(測定試薬:全シアン濃度(低濃度)セット(共立理化学研究所製、WA−CNT(L))、測定機器:デジタルパックテストマルチ ラムダー9000(共立理化学研究所製))。その結果は、表1及び図1のとおりであった。いずれの時点の溶液についても、ごく微量のシアンしか確認されなかった。
4)シアンの非溶出確認試験(液−固比ごと)
2)で調製したプルシアンブルー/ポリウレタンスポンジ中に含有されるプルシアンブルーの質量と天然海水の体積との比が、それぞれ1g:1000ml、1g:800ml、1g:600ml、1g:400ml、及び1g:200mlとなるようにして、同ポリウレタンスポンジ1g、1.25g、1.67g、2.5g、及び5.0gをそれぞれ天然海水100ml中に浸漬して室温(20℃前後)で静置した。7日後の時点でのそれぞれの溶液を、0.45μmフィルターを用いてそれぞれ固液分離し、得られた溶液中の全シアン濃度を測定した。その結果は、表2及び図2のとおりであった。いずれの溶液についても、ごく微量のシアンの溶出しか確認されなかった。
2)で調製したプルシアンブルー/ポリウレタンスポンジ中に含有されるプルシアンブルーの質量と天然海水の体積との比が、それぞれ1g:1000ml、1g:800ml、1g:600ml、1g:400ml、及び1g:200mlとなるようにして、同ポリウレタンスポンジ1g、1.25g、1.67g、2.5g、及び5.0gをそれぞれ天然海水100ml中に浸漬して室温(20℃前後)で静置した。7日後の時点でのそれぞれの溶液を、0.45μmフィルターを用いてそれぞれ固液分離し、得られた溶液中の全シアン濃度を測定した。その結果は、表2及び図2のとおりであった。いずれの溶液についても、ごく微量のシアンの溶出しか確認されなかった。
5)シアンの非溶出確認試験(温度変化)
2)で調製したプルシアンブルー/ポリウレタンスポンジ中に含有されるプルシアンブルーの質量と天然海水の体積との比が1g:1000mlとなるようにして、同ポリウレタンスポンジ1gを天然海水100ml中に浸漬し、溶液の温度を、それぞれ10℃、30℃、及び50℃として、浸透機械(アズワン SHAKING INCUBATOR (SIC−302LW))を用いて600rpmで撹拌し浸透させた。4日後の時点でそれぞれの温度条件で得られた溶液を、0.45μmフィルターを用いてそれぞれ固液分離し、得られた溶液中の全シアン濃度を測定した。その結果は、表3及び図3のとおりであった。いずれの溶液についても、ごく微量のシアンの溶出しか確認されなかった。
2)で調製したプルシアンブルー/ポリウレタンスポンジ中に含有されるプルシアンブルーの質量と天然海水の体積との比が1g:1000mlとなるようにして、同ポリウレタンスポンジ1gを天然海水100ml中に浸漬し、溶液の温度を、それぞれ10℃、30℃、及び50℃として、浸透機械(アズワン SHAKING INCUBATOR (SIC−302LW))を用いて600rpmで撹拌し浸透させた。4日後の時点でそれぞれの温度条件で得られた溶液を、0.45μmフィルターを用いてそれぞれ固液分離し、得られた溶液中の全シアン濃度を測定した。その結果は、表3及び図3のとおりであった。いずれの溶液についても、ごく微量のシアンの溶出しか確認されなかった。
<セシウム吸着試験>
6)プルシアンブルー/ポリウレタンスポンジのセシウム飽和吸着量の測定
実施例1の2)で調製したプルシアンブルー/ポリウレタンスポンジを用い、同ポリウレタンスポンジ中に含有されるプルシアンブルーの質量と塩化セシウムを溶解させた天然海水(セシウム液)の体積との比が1g:2000mlとなるようにして、同ポリウレタンスポンジ0.2gをセシウム液40ml中に浸漬し、浸透機械(TAITEC社製 Voltex SHAKER V−36)を用いて200rpmで撹拌しながら、室温(約20℃)で浸透させた。なお、その際のセシウム液中のセシウム濃度は、5mg/L、10mg/L、20mg/L、30mg/L、50mg/Lとしたものを、それぞれ用いた。24時間後の時点で得られたそれぞれの溶液を、0.45μmフィルターを用いてそれぞれ固液分離し、得られた溶液を測定したところ、セシウム濃度と平均吸着量は表4のとおりであった。
6)プルシアンブルー/ポリウレタンスポンジのセシウム飽和吸着量の測定
実施例1の2)で調製したプルシアンブルー/ポリウレタンスポンジを用い、同ポリウレタンスポンジ中に含有されるプルシアンブルーの質量と塩化セシウムを溶解させた天然海水(セシウム液)の体積との比が1g:2000mlとなるようにして、同ポリウレタンスポンジ0.2gをセシウム液40ml中に浸漬し、浸透機械(TAITEC社製 Voltex SHAKER V−36)を用いて200rpmで撹拌しながら、室温(約20℃)で浸透させた。なお、その際のセシウム液中のセシウム濃度は、5mg/L、10mg/L、20mg/L、30mg/L、50mg/Lとしたものを、それぞれ用いた。24時間後の時点で得られたそれぞれの溶液を、0.45μmフィルターを用いてそれぞれ固液分離し、得られた溶液を測定したところ、セシウム濃度と平均吸着量は表4のとおりであった。
セシウムの最大吸着量(Qmax)は、以下の式(Langmuir吸着等温式)で算出される。
なお、ここでの吸着量(Q)は、以下の式で算出される。
実施例1の2)で調製したプルシアンブルー/ポリウレタンスポンジのセシウムに対する最大吸着量(Qmax)は、図4のとおり、2.45(Cs−mg/g−sponge)であった。
7)プルシアンブルー/ポリウレタンスポンジのセシウム吸着率の測定
実施例1の2)で調製したプルシアンブルー/ポリウレタンスポンジを用い、同ポリウレタンスポンジ中に含有されるプルシアンブルーの質量と塩化セシウムを溶解させた天然海水(天然海水セシウム液)又は脱イオン水(脱イオン水セシウム液)の体積との比が、それぞれ1g:2000mlとなるようにして、同ポリウレタンスポンジ0.2gを、セシウム濃度を2mg/Lに調製した天然海水セシウム液40ml又は脱イオン水セシウム液に浸漬し、浸透機械(TAITEC社製 Voltex SHAKER V−36)を用いて200rpmで撹拌しながら、室温(約20℃)で浸透させた。24時間後の時点で得られたそれぞれの溶液を、0.45μmフィルターを用いてそれぞれ固液分離し、得られた溶液を測定した。その結果は、セシウム濃度とセシウム吸着率は表5のとおりであった。
実施例1の2)で調製したプルシアンブルー/ポリウレタンスポンジを用い、同ポリウレタンスポンジ中に含有されるプルシアンブルーの質量と塩化セシウムを溶解させた天然海水(天然海水セシウム液)又は脱イオン水(脱イオン水セシウム液)の体積との比が、それぞれ1g:2000mlとなるようにして、同ポリウレタンスポンジ0.2gを、セシウム濃度を2mg/Lに調製した天然海水セシウム液40ml又は脱イオン水セシウム液に浸漬し、浸透機械(TAITEC社製 Voltex SHAKER V−36)を用いて200rpmで撹拌しながら、室温(約20℃)で浸透させた。24時間後の時点で得られたそれぞれの溶液を、0.45μmフィルターを用いてそれぞれ固液分離し、得られた溶液を測定した。その結果は、セシウム濃度とセシウム吸着率は表5のとおりであった。
セシウム吸着率は、以下の式で算出される。
実施例1の2)で調製したプルシアンブルー/ポリウレタンスポンジのセシウム吸着率は、天然海水中と脱イオン水中のいずれでも95%であった。したがって、脱イオン水中の場合と比べて、高濃度の電解水中でもセシウムの吸着率は低下していなかった。
本発明を用いることで、海水などの電解質溶液中であっても、シアン化合物を溶出を抑えて又は溶出させずに、汚染水等に含まれる標的とする化学物質(例えば、セシウム、ストロンチウム、ヨウ素等)を低減ないし除去できる。これにより、吸着剤としてプルシアンブルーを使用したとしても、電解質溶液中のシアン化合物濃度が地方自治体等が定める基準値を超えずに、セシウム等の除染を行うことができる。
Claims (5)
- 標的とする化学物質を含む水溶液又は標的とする化学物質が付着した固体から当該標的とする化学物質を除去ないし低減する捕集剤であって、当該標的とする化学物質を吸着・保持することのできる吸着剤とナノセルロースからなる疑似錯体と遷移金属とを含む、捕集剤。
- 請求項1記載の吸着剤がプルシアンブルーである捕集剤。
- 請求項1又は請求項2の遷移金属が銅である捕集剤。
- 請求項1ないし3の捕集剤を担持させた親水性基材
- 請求項4記載の親水性基材を親水性多孔質体とする多孔質体。
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JP2017126773A JP2019005731A (ja) | 2017-06-28 | 2017-06-28 | 放射性物質除染用多孔質体及びその製造方法 |
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WO2020149183A1 (ja) | 2019-01-17 | 2020-07-23 | 住友ベークライト株式会社 | エンジンブロック、樹脂ブロック及びエンジンブロックの製造方法 |
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- 2017-06-28 JP JP2017126773A patent/JP2019005731A/ja active Pending
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