JP2019004756A - グルコシダーゼ阻害能を有する乳酸菌 - Google Patents

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実希 藤原
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威史 善藤
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Abstract

【課題】安全性に優れ、効果的に食後血糖値の上昇を抑制し、糖尿病予防、抗糖化、肥満予防に効果がある乳酸菌、及びそれを用いた食品等の提供。
【解決手段】グルコシダーゼ阻害能を有することを特徴とする乳酸菌。
【選択図】図1

Description

本発明は、グルコシダーゼ阻害能を有する乳酸菌、ならびに該乳酸菌を含むグルコシダーゼ阻害剤、グルコース吸収抑制剤、機能性食品、肥満予防剤及び食後血糖値上昇予防剤に関する。
生活習慣由来のII型糖尿病患者にとって、食後血糖値の上昇を緩和することは必要不可欠であり、食後血糖値をコントロールする食品の選択肢を広げることがQOL向上の面で注目されている。また、食後高血糖は糖尿病だけではなく、動脈硬化や心疾患等につながるリスクがある。
食事から摂取された炭水化物は、唾液や膵臓から分泌されるアミラーゼによって多糖類あるいは二糖類に分解され、次いで小腸上皮細胞に存在するグルコシダーゼによってグルコースに分解された後、主に膜タンパクであるグルコーストランスポーター1によって吸収されることで食後血糖値を上昇させる。すなわち、グルコシダーゼの働きを阻害することができれば、血糖値の上昇に直接影響を与えるグルコースの吸収を抑制することができるため、食後血糖値の上昇を効率的に抑制することができる。
また、近年では人体に良い影響を与える乳酸菌又はそれらを含む製品や食品、いわゆるプロバイオティクスが注目されている。乳酸菌には、腸内環境を整えたり、胃がんの発生原因の一つであるピロリ菌の活動を抑制する等の様々な効果があることが知られている。グルコシダーゼ阻害能を有する乳酸菌を経口摂取し、腸内に定着させることができれば、プロバイオティクスの観点から非常に有用である。このような乳酸菌は、安全性に優れ、効果的に食後血糖値の上昇を抑制し、糖尿病予防、抗糖化及び肥満予防に効果があると期待される。
特許文献1においては、津田カブ漬けから単離された乳酸菌の培養液上清がアミラーゼ阻害能を有することが記載されている。
特許文献2には、メタボリックシンドローム改善組成物に関する発明が開示され、ブドウの種子や皮を乳酸菌で発酵して得たブドウ乳酸発酵物がα−アミラーゼ阻害能及び/又はα−グルコシダーゼ阻害能を有することが記載されている。
特許文献3には、食後の急激な血糖値を緩和する食品に関する発明が開示され、乳酸菌の培養上清の乳酸にはα−グルコシダーゼ阻害能及び/又はα−アミラーゼ阻害能があり、血糖上昇を有意に抑制することが記載されている。
特開2011−193820号公報 特開2011−10648号公報 特開2003−116486号公報
しかしながら、本発明者らは、特許文献1〜3には、以下の技術的課題が存在することを知見した。特許文献1に記載の乳酸菌は、アミラーゼ阻害能のみが報告されており、グルコシダーゼ阻害能の有無が不明である。特許文献2に記載のα−アミラーゼ阻害能及び/又はα−グルコシダーゼ阻害能は、ブドウの種子や皮に含まれるポリフェノール類等と、乳酸菌とが相乗的に作用した結果発現したものと考えられ、乳酸菌自体が有するα−アミラーゼ阻害能及び/又はα−グルコシダーゼ阻害能については開示されていない。特許文献3には、乳酸によるα−グルコシダーゼ阻害能及び/又はα−アミラーゼ阻害能のみが記載され、乳酸菌の菌体自体のα−グルコシダーゼ阻害能及び/又はα−アミラーゼ阻害能については開示されていない。すなわち、従来の技術では、グルコシダーゼ阻害能を有する乳酸菌は見出されていなかった。
本発明においては、菌体を直接経口摂取することができ、安全性に優れ、効果的に食後血糖値の上昇を抑制し、糖尿病予防、抗糖化、肥満予防に効果がある乳酸菌、及びそれを用いたグルコシダーゼ阻害剤、グルコース吸収抑制剤、機能性食品、肥満予防剤、食後血糖値上昇予防剤等を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、グルコシダーゼ阻害能を有する乳酸菌を見出し、本発明を完成するに至った。本発明にかかる乳酸菌は、好ましくは、グルコシダーゼ阻害能の他、さらにアミラーゼ阻害能及びグルコーストランスポーター1阻害能を有し、より効率的に食後血糖値の上昇を抑制することができる。
すなわち、本発明は以下の発明を提供するものである。
(1)
グルコシダーゼ阻害能を有することを特徴とする乳酸菌。
(2)
前記乳酸菌を添加しない系のグルコシダーゼ活性に対する、前記乳酸菌を添加した系のグルコシダーゼ活性の減少率が20%以上であることを特徴とする、(1)に記載の乳酸菌。
(3)
アミラーゼ阻害能を有することを特徴とする、(1)又は(2)に記載の乳酸菌。
(4)
加熱処理により前記アミラーゼ阻害能が向上することを特徴とする、(3)に記載の乳酸菌。
(5)
前記加熱処理の条件が100℃30分間であり、前記加熱処理した際の前記アミラーゼ阻害能の向上率が10%以上であることを特徴とする、(4)に記載の乳酸菌。
(6)
前記加熱処理の条件が121℃15分間であり、前記加熱処理した際の前記アミラーゼ阻害能の向上率が10%以上であることを特徴とする、(4)に記載の乳酸菌。
(7)
グルコーストランスポーター1阻害能を有することを特徴とする、(1)〜(6)いずれかに記載の乳酸菌。
(8)
グルコース吸収抑制能をさらに有することを特徴とする、(1)〜(7)いずれかに記載の乳酸菌。
(9)
前記グルコシダーゼ阻害能がα−グルコシダーゼ阻害能であることを特徴とする、(1)〜(8)いずれかに記載の乳酸菌。
(10)
前記アミラーゼ阻害能がα−アミラーゼ阻害能であることを特徴とする、(3)〜(6)いずれかに記載の乳酸菌。
(11)
前記アミラーゼ阻害能を発現するα−アミラーゼ阻害物が50kDa以上の分子量を有することを特徴とする、(3)〜(6)又は(10)のいずれかに記載の乳酸菌。
(12)
前記乳酸菌の16S rDNAが、Weissella cibariaWeissella confusa、又はWeissella kimchiiと99%以上の相同性を有することを特徴とする、(1)〜(11)いずれかに記載の乳酸菌。
(13)
(1)〜(12)いずれかに記載の乳酸菌の菌体乾燥物。
(14)
(1)〜(12)いずれかに記載の乳酸菌を含むことを特徴とする、グルコシダーゼ阻害剤。
(15)
前記グルコシダーゼ阻害剤が、α−グルコシダーゼ阻害剤であることを特徴とする、(14)に記載のグルコシダーゼ阻害剤。
(16)
(7)〜(12)いずれかに記載の乳酸菌を含むことを特徴とする、グルコース吸収抑制剤。
(17)
(1)〜(12)いずれかに記載の乳酸菌又は(14)〜(16)いずれかに記載の剤を含むことを特徴とする、機能性食品。
(18)
(1)〜(12)いずれかに記載の乳酸菌又は(14)〜(16)いずれかに記載の剤を含むことを特徴とする、肥満予防剤。
(19)
(1)〜(12)いずれかに記載の乳酸菌又は(14)〜(16)いずれかに記載の剤を含むことを特徴とする、食後血糖値上昇予防剤。
本発明に係る乳酸菌は、乳酸菌自体がグルコシダーゼ阻害能を有するため、様々な形態の医薬品や食品等に適用可能であり、効果的に食後血糖値の上昇を抑制することができる。
本発明に係る乳酸菌は、乳酸菌自体がグルコシダーゼ阻害能を有するため、菌体乾燥物とした場合にもグルコシダーゼ阻害能を有する。また、本発明に係る乳酸菌のグルコシダーゼ阻害能は、食後血糖値の上昇を抑制する代表的な食品であるグアバ葉茶の抽出物と比べて大きい。
本明細書において他に特に明記しない限り、「グルコシダーゼ阻害能」は、マルトースとグルコシダーゼを37℃、60分で反応した際のグルコース生成量によって算出したグルコシダーゼ活性の減少率として表される。すなわち、本明細書において他に特に明記しない限り、乳酸菌の「グルコシダーゼ阻害能」は、乳酸菌を添加しない系のグルコシダーゼ活性に対する、乳酸菌を添加した系のグルコシダーゼ活性の減少率である。例えば、乳酸菌のグルコシダーゼ阻害能が20%であるという表記は、乳酸菌を添加しない系のグルコシダーゼ活性に対する、乳酸菌を添加した系のグルコシダーゼ活性の減少率が20%であることを意味する。
本発明に係る乳酸菌のグルコシダーゼ阻害能は、乳酸菌を添加しない系のグルコシダーゼ活性に対する、乳酸菌を添加した系のグルコシダーゼ活性の減少率が、好ましくは20%以上であり、より好ましくは40%以上であり、さらに好ましくは50%以上であり、さらにより好ましくは60%以上であり、特に好ましくは70%以上であり、最も好ましくは80%以上である。乳酸菌を添加しない系のグルコシダーゼ活性に対する、乳酸菌を添加した系のグルコシダーゼ活性の減少率が20%以上であることで、食後血糖値の上昇を効果的に抑制することができる。
本発明に係る乳酸菌が阻害するグルコシダーゼは、マルターゼとも呼ばれるα−グルコシダーゼ、β−D−グルコシドグルコヒドロラーゼ、アミグダーゼ、セロビアーゼ、ゲンチオビアーゼとも呼ばれるβ−グルコシダーゼが含まれる。本発明に係る乳酸菌は、特にα−グルコシダーゼの働きを効率的に阻害することができる。
本発明に係る乳酸菌はアミラーゼ阻害能を有し、菌体乾燥物とした場合にもアミラーゼ阻害能を有する。
本明細書において他に特に明記しない限り、「アミラーゼ阻害能」は、デンプンとアミラーゼを37℃、60分で反応した際のマルトース生成量によって算出したアミラーゼ活性の減少率として表される。すなわち、本明細書において他に特に明記しない限り、乳酸菌の「アミラーゼ阻害能」は、乳酸菌を添加しない系のアミラーゼ活性に対する、乳酸菌を添加した系のアミラーゼ活性の減少率である。例えば、乳酸菌のアミラーゼ阻害能が20%であるという表記は、乳酸菌を添加しない系のアミラーゼ活性に対する、乳酸菌を添加した系のアミラーゼ活性の減少率が20%であることを意味する。
本発明に係る乳酸菌は、乳酸菌を添加しない系のアミラーゼ活性に対する、乳酸菌を添加した系のアミラーゼ活性の減少率が、好ましくは40%以上であり、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは55%以上である。乳酸菌を添加しない系のアミラーゼ活性に対する、乳酸菌を添加した系のアミラーゼ活性の減少率が40%以上であることで、食後血糖値の上昇を効果的に抑制することができる。
本発明に係る乳酸菌が阻害するアミラーゼは、1,4−α−D−グルカングルカノヒドロラーゼ、グリコゲナーゼとも呼ばれるα−アミラーゼ、1,4−α−D−グルカングルカノマルトヒドロラーゼ、グリコゲナーゼあるいはサッカロゲンアミラーゼとも呼ばれるβ−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、1,4−α−D−グルカングルコヒドロラーゼ、エキソ1,4−α−グルコシダーゼ、γ−アミラーゼ、リソソーマルα−グルコシダーゼあるいはアミログルコシダーゼとも呼ばれるグルカン1,4−α−グルコシダーゼ、ならびにイソアミラーゼが含まれる。本発明に係る乳酸菌は、特にα−アミラーゼの働きを効率的に阻害する。
本発明に係る乳酸菌は、好ましい一態様として、グルコーストランスポーター1阻害能を有し、体内へのグルコースの吸収を抑制する。また、本発明に係る乳酸菌の好ましい一態様として、菌体乾燥物とした場合にもグルコーストランスポーター1阻害能を有する。
本発明に係る乳酸菌のアミラーゼ阻害能は、好ましくは耐熱性を有し、加熱処理により向上するものである。加熱処理によりアミラーゼ阻害能が向上する現象は、菌体乾燥物とした場合においても観察されることが好ましい。
一例では、60℃30分加熱処理した乳酸菌は、加熱処理しない乳酸菌のアミラーゼ阻害能と比較して、5%〜15%の向上率を示し、好ましくは6%〜13%の向上率を示し、最も好ましくは7〜10%の向上率を示す。一例では、100℃で30分加熱処理した乳酸菌は、加熱処理しない乳酸菌と比べて、アミラーゼ阻害能において10%〜20%の向上率を示し、好ましくは11%〜18%の向上率を示し、最も好ましくは12〜15%の向上率を示す。一例では、121℃で15分加熱処理した乳酸菌は、加熱処理しない乳酸菌と比べてアミラーゼ阻害能において20%〜30%の向上率を示し、好ましくは22%〜28%の向上率を示し、最も好ましくは23〜27%の向上率を示す。
本発明に係る乳酸菌は、好ましい一態様として、16S rDNAがWeissella cibariaWeissella confusa、又はWeissella kimchiiと99%以上の相同性を有する。また、本発明に係る乳酸菌は、Lactococcus lactisLactobacillus rhamnosus及びEnterococcus hiraeに属する乳酸菌であってもよい。
本発明に係るアミラーゼ阻害物の分子量は50kDa以上であり、乳酸とは異なる物質である。特許文献2に開示されるα−グルコシダーゼ阻害能及び/又はα−アミラーゼ阻害能は、乳酸によるものであり、本願発明に係るアミラーゼ阻害能とは発現メカニズムが異なる。
本発明に係る乳酸菌の培養は、上記乳酸菌を効率良く培養できる方法、例えば、下記の培地を用いて、液体培養、固体培養、又はそれらの組み合わせによって培養するような任意の方法を用いることができる。
本発明に係る乳酸菌は、乳酸菌の培養に通常用いられる培地を使用して、適当な条件下で培養することにより調製することができる。培養に用いる培地は、炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、乳酸菌の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよく、当業者であれば使用する菌株に適切な公知の培地を適宜選ぶことができる。炭素源としてはラクトース、グルコース、ガラクトース、廃糖蜜などを使用することができ、窒素源としてはカゼインの加水分解物、ホエータンパク質加水分解物、大豆タンパク質加水分解物等の有機窒素含有物を使用することができる。また無機塩類としては、リン酸塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどを用いることができる。乳酸菌の培養に適した培地としては、例えばMRS液体培地、GAM培地、BL培地、Briggs Liver Broth、獣乳、脱脂乳、乳性ホエーなどが挙げられる。好ましくは、滅菌した脱脂粉乳を含む乳培地を使用する。
本発明に係る乳酸菌の培養は、20℃から50℃、好ましくは25℃から42℃、より好ましくは28℃から37℃において、嫌気条件下で行う。温度条件は、恒温槽、マントルヒーター、ジャケットなどにより調整することができる。また、嫌気条件下とは、乳酸菌が増殖可能な程度の低酸素環境下のことであり、例えば嫌気チャンバ、嫌気ボックス又は脱酸素剤を入れた密閉容器若しくは袋などを使用することにより、あるいは単に培養容器を密閉することにより、嫌気条件とすることができる。培養の形式は、静置培養、振とう培養、タンク培養などである。また、培養時間は3時間から96時間とすることができる。培養開始時の培地のpHは4.0〜8.0に維持することが好ましい。
本発明に係る乳酸菌は、適宜乾燥することができる。乾燥は、培養物又は遠心分離等で培地から分離した乳酸菌を、通常用いられる乾燥方法によって乾燥させる。乾燥方法の方式としては、熱風受熱乾燥方式、伝熱受熱乾燥方式、除湿空気乾燥方式、冷風乾燥方式、マイクロ波乾燥方式、赤外線乾燥方式、天日乾燥方式、真空乾燥方式、凍結乾燥方式が挙げられ、これらの2種以上を組み合わせて用いることもできる。熱風受熱乾燥方式は目的物に熱風を当てることで乾燥を行い、伝熱受熱乾燥方式は加熱された受熱部からの伝熱により乾燥を行う。凍結乾燥方式は、目的物を凍結させてから真空中で水分を蒸発させることにより乾燥を行い、対象物中の成分の劣化を最小限に抑えることができる利点を有する。
熱風受熱乾燥方式の乾燥機としては、トンネル乾燥機、衝突噴流乾燥機、バンド乾燥機、回転型乾燥機、流動層乾燥機、噴霧乾燥機、気流乾燥機等が挙げられる。噴霧乾燥機はスプレードライヤーともいい、液体やスラリーに熱風を当てることで目的物を乾燥させる。伝熱受熱乾燥方式の乾燥機としては、真空箱型乾燥機、ドラムドライヤー(ドラム式乾燥機又はドラム乾燥機ともいう)、多円筒乾燥機、溝型乾燥機、棚段式乾燥機、ホットプレート乾燥機等が挙げられる。目的物を伝熱部に接触させるには、目的物を伝熱部に塗布、滴下等すればよい。伝熱部の素材は金属であってよく、熱振動により加熱するアクリル樹脂であってよい。伝熱部は十分な伝熱面積があればよく、平面、湾曲面、シリンダーの側面等の適当な形状のプレートとすることができる。伝熱部に接触させて乾燥させた目的物はシート状となっており、必要に応じてヘラ等でかき取ることができる。凍結乾燥方式の乾燥機は、凍結した目的物を収容する真空チャンバ、目的物を冷却しつつ放出された水分をトラップするコールドトラップとして機能する冷却装置、及び真空ポンプを備える。これらの乾燥機は、目的を達成し得るものであればいかなる乾燥機であっても使用できる。
本発明に係る乳酸菌のアミラーゼ阻害能は加熱処理により向上するため、例えば熱風受熱乾燥方式により、本発明に係る乳酸菌を加熱しながら乾燥させることにより、アミラーゼ阻害能を向上させた菌体乾燥物を得ることもできる。一方で、凍結乾燥方式により、他の成分の劣化を最小限に抑えた菌体乾燥物を得ることもできる。
本発明に係る乳酸菌は、生活習慣病の改善に適用することもできる。「生活習慣病」とは、食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣がその発症、進行に関与する疾患群をいい、成人肥満、小児肥満、栄養失調症、拒食症、胃がん、大腸がん、痛風、高血圧、動脈硬化症、腎臓結石、心筋梗塞、狭心症、胃潰瘍、腎臓病、骨粗しょう症、歯周囲炎、アルコール性肝炎、肝硬変、肝臓がん、肺がん、気管支炎、肺気腫、歯周病、脳卒中、脳梗塞、動脈瘤、過労死、不眠症等の病態が挙げられる。
さらに、本発明に係る乳酸菌は、糖尿病(I型糖尿病、II型糖尿病、妊婦糖尿病等)、糖尿病合併症(動脈硬化性疾患、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害等)、脂質代謝異常、高脂血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、インスリン抵抗性、脂肪肝の予防又は改善に使用することもできる。
あるいは、ヒト、又はヒト以外の動物(例えば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ブタ、ウシ、ニワトリ、インコ、九官鳥、ヤギ、ウマ、ヒツジ、サル等)に本発明の代謝改善剤を投与し、肥満、糖尿病、脂質代謝異常、高脂血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、インスリン抵抗性、脂肪肝からなる群から選択される少なくとも1種を予防又は治療するために、使用することができる。
本発明に係る乳酸菌は、例えば、医薬品、食品、飼料、化粧品等として、あるいはそれらに配合して使用することができる。当該医薬品の剤型としては、散剤、顆粒剤、丸剤、ソフトカプセル、ハードカプセル、錠剤、チュアブル錠、速崩錠、シロップ、液剤、懸濁剤、座剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤、吸入剤、注射剤等が挙げられる。本発明の乳酸菌を含むグルコシダーゼ阻害能及びグルコーストランスポーター1阻害能は、消化管内において作用するため、本発明に係るグルコシダーゼ阻害剤及びグルコース吸収抑制剤は、経口投与に適した剤型であることが好ましい。
製剤化のために用いることができる添加剤には、例えば大豆油、サフラー油、オリーブ油、胚芽油、ひまわり油、牛脂、いわし油等の動植物性油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の界面活性剤、精製水、乳糖、デンプン、結晶セルロース、D−マンニトール、レシチン、アラビアガム、ソルビトール液、糖液等の賦形剤、甘味料、着色料、pH調整剤、香料等を挙げることができる。なお、液体製剤は、服用時に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁する形であってもよい。また、錠剤、顆粒剤は周知の方法でコーティングしても良い。
本発明に係る乳酸菌を食品又は食品添加物として使用する場合、当該食品は、溶液、懸濁物、粉末、固体成形物等、経口摂取可能な形態であればよく、特に限定するものではない。具体例としては、サプリメント(散在、顆粒剤、ソフトカプセル、ハードカプセル、錠剤、チュアブル錠、速崩錠、シロップ、液剤等)、飲料(炭酸飲料、乳酸飲料、スポーツ飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、栄養飲料、アルコール飲料等)、菓子(グミ、ゼリー、ガム、チョコレート、クッキー、キャンデー、キャラメル、和菓子、スナック菓子等)、即席食品類(即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品等)、油、油脂食品(マヨネーズ、ドレッシング、バター、クリーム、マーガリン等)、小麦粉製品(パン、パスタ、麺、ケーキミックス、パン粉等)、調味料(ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、つゆ類等)、畜産加工品(畜肉ハム・ソーセージ等)が挙げられる。
本発明に係る乳酸菌を含む食品に対しては、必要に応じて各種栄養素、各種ビタミン類(ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンE等)、各種ミネラル類、食物繊維、多価不飽和脂肪酸、その他の栄養素(コエンザイムQ10、カルニチン、セサミン、α−リポ酸、イノシトール、D−カイロイノシトール、ピニトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルDHA、ホスファチジルイノシトール、タウリン、グルコサミン、コンドロイチン硫酸、S−アドノシルメチオニン等)、分散剤、乳化剤等の安定剤、甘味料、呈味成分(クエン酸、リンゴ酸等)、フレーバー、ローヤルゼリー、プロポリス、アガリクス等を配合することができる。また、ペパーミント、ベルガモット、カモンミール、ラベンダーなどのハーブ類を配合してもよい。また、テアニン、デヒドロエピアンドステロン、メラトニンなどの素材を配合してもよい。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定しない。また、これらの実施形態は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることができる。
<α−アミラーゼ阻害能の評価>
デンプンとα−アミラーゼを反応させ、生成したマルトースを定量することにより、α−アミラーゼ阻害能を評価した。評価に使用する0.025Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.86)、デンプン溶液及びα−アミラーゼ溶液は以下のように調製した。0.025Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.86)は、リン酸二水素ナトリウム二水和物とリン酸水素二ナトリウムより調製し、オートクレーブにて121℃、20分間滅菌した。デンプン溶液は、所定量のデンプン(ナカライテスク社製)を0.025Mリン酸ナトリウム緩衝液にて溶解させ、オートクレーブにて105℃、10分間滅菌して調製した。α−アミラーゼ溶液は、ブタ膵臓由来のα−アミラーゼ(Roche社製、比活性2500U/L)を0.025Mリン酸ナトリウム緩衝液にて希釈して調製した。
α−アミラーゼ阻害能の測定対象となる検体を0.025Mリン酸ナトリウム緩衝液に懸濁して6g/Lの懸濁液とし、懸濁液50mLに、比活性2,500U/Lになるようα−アミラーゼ溶液を加え、さらに1.5%デンプン溶液100mLを添加し、37℃で0〜60分間反応させた。その後、105℃で10分間処理することにより反応を停止させ、10,000rpmで10分間遠心分離し、上清を回収してフィルター(ADVANTEC社製、DISMIC−13HP、ポアサイズ0.20μm)でろ過した。HPLC(島津製作所社製)を用いてろ液中のマルトースを外部標準法により定量し、α−アミラーゼ活性を算出した。検体のα−アミラーゼ阻害能は、検体を添加しない系に対するα−アミラーゼ活性の減少率により評価される。HPLCの測定条件は以下の通りとした。
−HPLC測定−
カラム:Shodex Sugar KS−802(昭和電工社製)、
カラム温度:80℃、
移動相:水、
移動相流量:1.0mL/min、
検出器:示差屈折計RID−10A(島津製作所社製)、
試料注入量:20μL
<α−グルコシダーゼ阻害能の評価>
マルトースとα−グルコシダーゼを反応させ、生成したグルコースを定量することにより、α−グルコシダーゼ阻害能を評価した。α−グルコシダーゼは、ラット腸管アセトン抽出物を用いた。ラット腸管アセトン抽出物は、ラット腸管アセトンパウダー(シグマアルドリッチ社製)100mgを温度条件4℃下、0.025Mリン酸ナトリウム緩衝液10mLに懸濁し、遠心分離(3,000rpm、10分、4℃)して得られた上清を使用した。マルトース溶液は、所定量のマルトース(和光純薬工業株式会社製)を0.025Mリン酸ナトリウム緩衝液にて溶解させ、オートクレーブにて105℃、10分間滅菌して調製した。
α−グルコシダーゼ阻害能の測定対象となる検体を0.025Mリン酸ナトリウム緩衝液に懸濁して6g/Lの懸濁液とし、懸濁液50mLに、ラット腸管アセトン抽出物50mL及び2%マルトース溶液50mLを添加し、37℃で0〜60分間反応させた。その後、105℃で10分間処理することにより反応を停止させ、10,000rpmで10分間遠心分離し、上清を回収してグルコースメーター(東亜ディーケーケー社製 GLU−1)によって生成したグルコースを定量し、α−グルコシダーゼ活性を算出した。検体のα−グルコシダーゼ阻害能は、検体を添加しない系に対するα−グルコシダーゼ活性の減少率により評価される。
<乳酸菌の選抜と同定>
(実施例1)
既知の乳酸菌分離手法に従い、津田カブ漬けから菌体を単離後、単離した菌体培養液上清においてBacillus licheniformis由来のα−アミラーゼ阻害能を示す96株を事前選抜した。次いで、ブタ膵臓由来α−アミラーゼを使用した比色定量法(ヨウ素デンプン反応)によって、最もα−アミラーゼ阻害能が高い乳酸菌として、KY5−4株を選抜した。KY5−4株について16S rRNA遺伝子の相同性を解析した結果、Weissella属乳酸菌と99%の相同性を示した。
KY5−4株を、MRS培地(Difco社製)、アネロパックケンキ(三菱ガス化学社製)にて5%−CO2下嫌気培養(静置)、pH制御なしの条件で37℃で18時間培養した後、生理食塩水で洗菌し、菌体を凍結乾燥してKY5−4株検体とし、α−アミラーゼ阻害能及びα−グルコシダーゼ阻害能を測定した。結果を図1(a)及び図1(b)に示す。KY5−4株は反応開始から60分間後に55.27%(n=3、標準偏差0.510)のα−アミラーゼ阻害能を示し、87.21%(n=3、標準偏差2.18)のα−グルコシダーゼ阻害能を示した。すなわち、KY5−4株は優れたα−アミラーゼ阻害能及び優れたα−グルコシダーゼ阻害能を有することが分かった。
(実施例2)
実施例1と同様にして、Lactococcus lactis(NBRC100933株、寄託品)について評価したところ、α−アミラーゼ阻害能は46.94%(n=3、標準偏差0.405)であり、α−グルコシダーゼ阻害能は31.87%(n=3、標準偏差2.93)であった。すなわち、Lactococcus lactisのNBRC100933株はα−アミラーゼ阻害能及びα−グルコシダーゼ阻害能を有することが分かった。
(実施例3)
実施例1と同様にして、Lactobacillus rhamnosus(NBRC3425株、寄託品)について評価したところ、α−アミラーゼ阻害能は47.49%(n=3、標準偏差0.148)であり、α−グルコシダーゼ阻害能は30.99%(n=3、標準偏差1.69)であった。すなわち、Lactobacillus rhamnosusのNBRC3425株はα−アミラーゼ阻害能及びα−グルコシダーゼ阻害能を有することが分かった。
(実施例4)
実施例1と同様にして、Enterococcus hirae(NBRC3181株、寄託品)について評価したところ、α−アミラーゼ阻害能は48.02%(n=3、標準偏差0.227)であり、α−グルコシダーゼ阻害能は64.63%(n=3、標準偏差0.39)であった。すなわち、Enterococcus hiraeのNBRC3181株はα−アミラーゼ阻害能及び優れたα−グルコシダーゼ阻害能を有することが分かった。
(比較例1)
比較例として、食後血糖値の上昇を抑制する代表的な食品であるグアバ葉茶の抽出物(GTLEx)を用いた。GTLEx検体は、グアバ葉茶(マルサン萩間茶取扱品)50gを蒸留水中1Lで80℃、30分間抽出し、3重にしたガーゼでろ過し、ろ液を凍結乾燥して作製した。GTLEx検体について、実施例1と同様にα−アミラーゼ阻害能及びα−グルコシダーゼ阻害能を算出した。結果を図1(a)及び図1(b)に示す。GTLExは反応開始から60分間後に98.33%(n=3、標準偏差1.63)のα−アミラーゼ阻害能を示し、71.32%(n=3、標準偏差0.47)のα−グルコシダーゼ阻害能を示した。
(比較例2)
実施例1と同様にして、Sporolactobacillus inullinus(NBRC13595株、寄託品)について評価したところ、α−アミラーゼ阻害能は44.99%(n=3、標準偏差0.556)であり、α−グルコシダーゼ阻害能は10.62%(n=3、標準偏差1.34)であった。すなわち、Sporolactobacillus inullinusのNBRC13595株はα−アミラーゼ阻害能は有するものの、α−グルコシダーゼ阻害能は低いことが分かった。
<50%阻害濃度(IC50)によるα−グルコシダーゼ阻害能の評価>
ヒト体内における乳酸菌のα−グルコシダーゼ阻害能を評価するため、ヒト結腸癌由来のCaco−2細胞を用いて評価を行った。ヒト結腸癌由来のCaco−2細胞は、培養により腸管上皮様に分化し、α−グルコシダーゼを発現することが知られている。Caco−2細胞から発現したα−グルコシダーゼとマルトースの反応により生成するグルコース量からα−グルコシダーゼ活性を求め、以下の式によりα−グルコシダーゼ活性の50%阻害濃度(IC50)を算出した。
Figure 2019004756
グルコース濃度[Sa]:測定対象のCaco−2細胞上清のグルコース濃度
グルコース濃度[CN]:未処理対照のCaco−2細胞上清のグルコース濃度
Caco−2細胞はRIKEN BRC CELL BANKより入手した。DMEM培地は、牛胎児血清:10vol%、Penicillin−Streptomycin:1vol%、MEM非必須アミノ酸溶液:1vol%、GlutaMAX−1:1vol%を含む。デオキシノジリマイシンは和光純薬工業株式会社製であり、マルトースは和光純薬工業株式会社製である。緩衝液はpH7.2であり、NaCl:137mmol/L、KCl:4.7mmol/L、KHPO:1.2mmol/L、MgCl・6HO:1.2mmol/L、CaCl:2mmol/L、D(−)−マンニトール:10mmol/L、HEPES Free acid:10mmol/Lの組成である。
(実施例5)
実施例1と同様にKY5−4株検体を調製し、KY5−4株検体に水を加え、超音波処理により懸濁することで50mg/mLの試験液原液を調製した。試験液原液を緩衝液で段階希釈し、所定濃度のKY5−4株検体の懸濁液を調製した。DMEM培地中で96ウェルマイクロプレート(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に播種されたCaco−2細胞を37℃で15日間培養した後、KY5−4株検体の懸濁液を添加した。緩衝液のみを加えたものを未処理対照、デオキシノジリマイシンを終濃度0.02μg/mLとなるように加えたものを陽性対照とした。Caco−2細胞を含まない培地を添加した後、同様に操作したものをブランクとした。すべてのウェルにマルトース溶液を終濃度20mmol/Lとなるように添加し、37℃で2時間反応後、細胞上清を別のプレートに分取した。細胞上清中のグルコースをグルコースCII−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)で比色し、マイクロプレートリーダー(SpectraMax M2e,Molecular Devices Corporation)を用いて吸光度を測定することで生成したグルコースを定量した(測定波長:505nm)。グルコースの定量のため、キシダ化学社製グルコースを標準品として検量線を作成した。検量線に代入する吸光度は各検体の懸濁液を添加した細胞上清の吸光度から、ブランクの上清の吸光度を減じた値を用い、次式によりα−グルコシダーゼ活性を算出した。陽性対照のα−グルコシダーゼ活性についても同様に算出した。結果を図2に示す。図2からα−グルコシダーゼ活性のIC50を算出した結果、KY5−4株のIC50は反応開始後120分間で70.2mg/L(n=6、標準偏差5.3)であった。
(比較例3)
比較例1と同様にGTLEx検体を調製し、GTLEx検体に水を加え、超音波処理により懸濁することで50mg/mLの試験液原液を調製した。試験液原液を緩衝液で段階希釈し、所定濃度のGTLEx検体の懸濁液を調製した。実施例5と同様にCaco−2細胞を培養し、GTLEx検体の懸濁液を添加し、α−グルコシダーゼ活性を算出した。結果を図2に示す。図2からα−グルコシダーゼ活性のIC50を算出した結果、GTLExのIC50は反応開始後120分間で200mg/L(n=6、標準偏差9.2)であった。すなわち、GTLExはKY5−4株の35%のα−グルコシダーゼ阻害能しか有さないことが分かった。
<グルコーストランスポーター1阻害能>
ヒト結腸癌由来のCaco−2細胞を用いて、グルコーストランスポーター1阻害能の評価を行った。ヒト結腸癌由来のCaco−2細胞は小腸における腸管機能の細胞モデルとして用いられる。透過性を有する培養膜上でCaco−2細胞を培養し、単層膜を形成させた後、単層膜を透過するグルコースを定量することによってグルコース吸収率を求め、グルコーストランスポーター1阻害能を評価した。グルコーストランスポーター1阻害能は、乳酸菌を作用させた系のグルコース吸収率と、乳酸菌を作用させなかった系のグルコース吸収率から算出されるIC50により評価できる。
(実施例6)
DMEM培地中でマイクロプレートのインサート(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)内のPET膜上に播種されたCaco−2細胞を37℃で20日間培養し、培地成分を除去した後にマイクロプレートのインサート内に10mmol/Lのグルコース溶液を添加し、インサート外に0.025Mリン酸ナトリウム緩衝液を添加し、実施例1と同様にして調製したKY5−4株検体を添加して37℃で2時間培養した後、インサート外部のグルコース量をグルコース測定キットにより測定した。KY5−4株のグルコーストランスポーター1に対するIC50は981.0mg/L(n=6、標準偏差7.6)であり、高いグルコーストランスポーター1阻害能を有することが分かった。
<加熱処理によるα−アミラーゼ阻害能の向上>
(実施例7)
実施例1と同様に調製したKY5−4株検体を0.025Mリン酸ナトリウム緩衝液に懸濁して6g/L懸濁液とした。次いで、60℃30分、100℃30分、121℃15分の条件でそれぞれオートクレーブ(ALP社製、CLS32−L)加熱処理をし、室温まで空冷した。加熱処理後のKY5−4株検体の懸濁液50mLに対し、実施例1と同様にデンプンとα−アミラーゼを反応させ、生成したマルトースを定量した。α−アミラーゼ阻害能は以下の式を用いて算出した。
Figure 2019004756
KY5−4株のα−アミラーゼ阻害能は加熱処理を行わなかったときは55.27%(n=3、標準偏差2.15)であり、60℃で30分処理したときは59.61%(n=3、標準偏差2.53)であり、100℃で30分処理したときは62.45%(n=3、標準偏差0.89)であり、121℃で15分処理したときは69.41%(n=3、標準偏差2.93)であった。
KY5−4株のα−アミラーゼ阻害能はオートクレーブ加熱処理(121℃、15分)にて処理しても低下するどころか、むしろ向上する傾向が見られた。60℃で30分加熱処理したときのα−アミラーゼ阻害能は、加熱処理しなかったときと比べて7.9%向上し、100℃で30分加熱処理はすることで13%向上し、121℃で15分加熱処理することで25.6%向上した。
<KY5−4株のα−アミラーゼ阻害物>
(実施例8)
実施例1と同様にKY5−4株検体を調製し、0.025Mリン酸ナトリウム緩衝液に懸濁した後の上清と沈殿、ならびに上清を限外ろ過フィルターで分画した各画分について、α−アミラーゼ阻害能の評価を行った。KY5−4株検体を0.025Mリン酸ナトリウム緩衝液に懸濁して6g/L懸濁液とし、遠心分離(使用装置:日立社製、himac CR−21N、12,000rpm、4℃、30分)によって上清を回収した。得られた上清を、限外ろ過フィルター(Amicon Ultra)のMWCO(分画分子量)100kDa、50kDa、30kDa、及び10kDaを連続的に用いてさらに分画化した。各分画50mLに、比活性2,500U/Lになるようにα−アミラーゼ溶液を加え、さらに1.5%デンプン溶液100mLを添加し、37℃で60分間反応させた。その後、105℃で10分間処理することにより反応を停止させ、10,000rpmで10分間遠心分離し、上清中のマルトースをHPLCにて定量した。HPLCは、カラムとしてShodex SUGAR KS−802×2を用い、カラム温度80℃で、溶媒をHO(1mL/分)とし、検出器として示差屈折計を用いた。各分画において生成したマルトースを、外部標準法により定量した。各分画のα−アミラーゼ阻害能は、KY5−4株のα−アミラーゼ阻害能に対する相対値として表される。
KY5−4株の上清と沈殿の混合物には53.72%(n=3、標準偏差0.47)、沈殿には27.40%(n=3、標準偏差3.31)、上清には45.68%(n=3、標準偏差1.34)のα−アミラーゼ阻害能が確認された。すなわち、KY5−4株のα−アミラーゼ阻害物は菌体表面に存在し、溶媒に懸濁させると遊離することが分かった。
さらに、限外ろ過フィルターで分子量ごとに分画した各分画のα−アミラーゼ阻害能は、分画100kDaには22.17%(n=3、標準偏差1.48)、分画50kDaには22.20%(n=3、標準偏差2.43)、分画30kDaには1.27%(n=3、標準偏差0.95)、分画10kDaには2.14%(n=3、標準偏差1.45)のα−アミラーゼ阻害能が確認された。すなわち、上清の分画100kDa以上と50kDa以上100kDa未満の分画において同等のα−アミラーゼ阻害能が確認され、KY5−4株のα−アミラーゼ阻害物の分子量は50kDa以上であることが分かった。
本発明に係る乳酸菌は、菌体自体がグルコシダーゼ阻害能を有するため、医薬、健康食品などの分野において広く利用可能である。本発明に係る乳酸菌は、さらにアミラーゼ阻害能及びグルコーストランスポーター1阻害能を有することで、多糖類の分解を抑制し、かつグルコースの吸収を抑制することにより、糖類の体内への吸収を効率的に抑制することができる。
本明細書において引用される参考文献は、引用によりそのすべての内容をここに組み入れる。
デンプンとα−アミラーゼの反応において、KY5−4株又はGTLExを添加した際のα−アミラーゼ生成量(a)及びα−グルコシダーゼ生成量(b)を示す図である。図中、「○」は、KY5−4株及びGTLExを添加しない系であり、「●」はKY5−4株を添加した系であり、「△」はGTLExを添加した系である。 Caco−2細胞において発現するα−グルコシダーゼに対する、KY5−4株及びGTLExの阻害能を示す図である。図中「●」はKY5−4株を添加した系であり、「△」はGTLExを添加した系である。

Claims (19)

  1. グルコシダーゼ阻害能を有することを特徴とする乳酸菌。
  2. 乳酸菌を添加しない系のグルコシダーゼ活性に対する、前記乳酸菌を添加した系のグルコシダーゼ活性の減少率が20%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の乳酸菌。
  3. アミラーゼ阻害能を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の乳酸菌。
  4. 加熱処理により前記アミラーゼ阻害能が向上することを特徴とする、請求項3に記載の乳酸菌。
  5. 前記加熱処理の条件が100℃、30分間であり、前記加熱処理した際の前記アミラーゼ阻害能の向上率が10%以上であることを特徴とする、請求項4に記載の乳酸菌。
  6. 前記加熱処理の条件が121℃15分間であり、前記加熱処理した際の前記アミラーゼ阻害能の向上率が20%以上であることを特徴とする、請求項4に記載の乳酸菌。
  7. グルコーストランスポーター1阻害能を有することを特徴とする、請求項1〜6いずれか1項に記載の乳酸菌。
  8. グルコース吸収抑制能をさらに有することを特徴とする、請求項1〜7いずれか1項に記載の乳酸菌。
  9. 前記グルコシダーゼがα−グルコシダーゼであることを特徴とする、請求項1〜8いずれか1項に記載の乳酸菌。
  10. 前記アミラーゼがα−アミラーゼであることを特徴とする、請求項3〜6いずれか1項に記載の乳酸菌。
  11. 前記アミラーゼ阻害能を発現するα−アミラーゼ阻害物が50kDa以上の分子量を有することを特徴とする、請求項3〜6又は10のいずれか1項に記載の乳酸菌。
  12. 乳酸菌の16S rDNAがWeissella cibariaWeissella confusa、又はWeissella kimchiiと99%以上の相同性を有することを特徴とする、請求項1〜11いずれか1項に記載の乳酸菌。
  13. 請求項1〜12いずれか1項に記載の乳酸菌の菌体乾燥物。
  14. 請求項1〜12いずれか1項に記載の乳酸菌を含む、グルコシダーゼ阻害剤。
  15. 前記グルコシダーゼ阻害剤が、α−グルコシダーゼ阻害剤であることを特徴とする、請求項14に記載のグルコシダーゼ阻害剤。
  16. 請求項7〜12いずれか1項に記載の乳酸菌を含むことを特徴とする、グルコース吸収抑制剤。
  17. 請求項1〜12いずれか1項に記載の乳酸菌又は請求項14〜16いずれか1項に記載の剤を含むことを特徴とする、機能性食品。
  18. 請求項1〜12いずれか1項に記載の乳酸菌又は請求項14〜16いずれか1項に記載の剤を含むことを特徴とする、肥満予防剤。
  19. 請求項1〜12いずれか1項に記載の乳酸菌又は請求項14〜16いずれか1項に記載の剤を含むことを特徴とする、食後血糖値上昇予防剤。
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