本発明は、回転電気機械に関するものである。
モータや発電機などの回転電気機械には、電磁鋼板を打ち抜き加工して形成したコア部材を積層した積層コアをロータコアとして採用するとともに、コギングトルクを低減するために、積層コアにスキュー構造を採用したものがある(例えば特許文献1を参照)。
ところで、回転電気機械では、固定子から、回転子の永久磁石に逆磁界が作用する。そのため、回転電気機械では、逆磁界による永久磁石の減磁を抑制する必要がある。永久磁石の減磁を抑制する方法としては、十分な厚さの永久磁石を採用することが考えられるが、それではコストや重量の増加に繋がる。
本発明は前記の問題に着目してなされたものであり、永久磁石を有した回転子を備えた回転電気機械において、コストアップを抑制しつつ、減磁対策を行うことを目的としている。
前記の課題を解決するため、第1の態様は、
固定子(10)と回転子(20)とを有した回転電気機械において、
前記固定子(10)は、電磁石として機能する複数のティース(13)を有し、
前記回転子(20)は、該回転子(20)の軸方向位置に応じてスキューが施された複数の永久磁石(26)を有し、
それぞれの永久磁石(26)は、該永久磁石(26)の軸方向中央における軸直交断面(F0)の周方向中心(Mc)が、所定のティース(13)の磁極中心線(L)上にある状態で、前記回転子(20)の軸方向端面において、磁極の周方向両端部となる部分同士の厚さを比べると、前記磁極中心線(L)から遠い方が厚いことを特徴とする回転電気機械である。
この構成では、永久磁石(26)において、より大きな逆磁界が作用する部位の厚さが他の部位よりもより厚くなるように、該永久磁石(26)が形成される。
また、第2の態様は、第1の態様において、
前記永久磁石(26)は、ボンド磁石であることを特徴とする回転電気機械である。
また、第3の態様は、第1又は第2の態様において、
それぞれの永久磁石(26)では、磁極の周方向両端部となる部分のうちで厚さが厚い方が、前記軸方向端面から前記軸方向中央に向って厚さが連続的に薄くなるように変化することを特徴とする回転電気機械である。
この構成では、永久磁石(26)は、作用する逆磁界の大きさがより大きな部位に対して、より大きな厚さが設定される。すなわち、永久磁石(26)において減磁対策の必要な箇所が適切な厚さに設定される。
また、第4の態様は、第1又は第2の態様において、
それぞれの永久磁石(26)では、磁極の周方向両端部となる部分のうちで厚さが厚い方が、前記軸方向端面から前記軸方向中央に向って厚さが段階的に薄くなるように変化することを特徴とする回転電気機械である。
この構成では、永久磁石(26)は、作用する逆磁界の大きさがより大きな部位に対して、より大きな厚さが設定される。
また、第5の態様は、第1から第4の態様の何れかにおいて、
前記永久磁石(26)は、前記軸方向中央から所定の軸方向範囲において厚さが変化しないことを特徴とする回転電気機械である。
第1の態様によれば、永久磁石を有した回転子を備えた回転電気機械において、コストアップを抑制しつつ、減磁対策を行うことが可能になる。
また、第2の態様によれば、ボンド磁石を採用したたことで、永久磁石の厚さ設定を容易に行うことが可能になる。
また、第3の態様によれば、より少ない磁石材料で減磁対策を行うことが可能になる。
また、第4の態様によれば、永久磁石の厚さが段階的に変わるので、回転子の永久磁石として、いわゆる焼結磁石を容易に採用できる。また、この構成では、いわゆる積層コアを用いて回転子を形成した場合に、回転子を形成するコア部材の種類を減らすことができ、製造がより容易になる。
また、第5の態様によれば、厚さが変化しない部分を設けたことで、いわゆる積層コアを用いて回転子を形成した場合に、回転子を形成するコア部材の種類を減らすことができ、製造がより容易になる。
図1は、本発明の実施形態1に係る電動機を示す。
図2は、回転子を軸方向から見た平面図を示す。
図3は、回転子の縦断面図を示す。
図4は、コア部材の一例を示す平面図である。
図5は、永久磁石の中央断面を示す。
図6は、正対状態における回転子の第1端面を示す。
図7は、正対状態における回転子の第2端面を示す。
図8は、永久磁石の斜視図である。
図9は、実施形態1の変形例に係る永久磁石の斜視図である。
図10は、実施形態2に係る回転子を軸方向から見た平面図である。
図11は、実施形態2の変形例に係る回転子を軸方向から見た平面図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る電動機(1)を示す。電動機(1)は、回転電気機械の一例である。この電動機(1)は、磁石埋込型の電動機であり、図1に示すように、固定子(10)、回転子(20)、駆動軸(30)、及びケーシング(2)を備えている。なお、以下の説明において、軸方向とは駆動軸(30)の軸心の方向を、また、径方向とは軸方向と直交する方向をそれぞれ意味する。外周側とは軸心から遠離する側を、また、内周側とは軸心に近接する側をそれぞれ意味する。
〈固定子(10)〉
固定子(10)は、円筒状の固定子コア(11)とコイル(16)を備えている。固定子コア(11)は、いわゆる積層コアであり、プレス加工機によって電磁鋼板を打ち抜き加工して形成した複数の板状部材が軸方向に積層されて構成されている。固定子コア(11)は、1つのバックヨーク部(12)、複数(この例では9つ)のティース(13)、及び複数のツバ部(14)を備えている。固定子コア(11)は、ケーシング(2)に、バックヨーク部(12)の外周面がケーシング(2)の内周面に接触するように嵌め入れられて固定されている。
バックヨーク部(12)は、固定子コア(11)の外周側の平面視で環状の部分である。また、各ティース(13)は、固定子コア(11)において径方向に伸びる直方体状の部分である。各ティース(13)には、例えば集中巻方式でコイル(16)が巻回される。相互に隣接するティース(13)間の空間がコイル(16)を収容するためのコイル用スロット(15)として機能する。以上により、各ティース(13)には電磁石が構成されている。
ツバ部(14)は、各ティース(13)の内周側に連続して両側に張り出した部分である。したがって、ツバ部(14)は、ティース(13)よりも幅(周方向の長さ)が大きく形成されている。ツバ部(14)は、内周側の面が円筒面であり、その円筒面は、回転子(20)の外周面(円筒面)と所定の距離(エアギャップ(G))をもって対向している。
〈回転子(20)〉
図2に回転子(20)を軸方向から見た平面図を示す。また、図3には、回転子(20)の縦断面図を示す。図3は、図2のII−II断面に相当している。なお、一般的には、回転子(20)の軸方向両端には、端板(例えばステンレス鋼等の非磁性体の材料を用いて形成した円板状の部材)が設けられるが、図1等では、端板の図示を省略してある。
回転子(20)は、回転子コア(21)、及び6つの永久磁石(26)を備えている。すなわち、回転子(20)は、6つの磁極を備えている。これらの永久磁石(26)は、いわゆるボンド磁石である。ボンド磁石は、磁石材料である微小な粉状乃至粒状のフェライト系磁石や希土類系磁石を、ナイロン樹脂、PPS樹脂等のバインダと混合して固化させることにより形成された永久磁石である。このようなボンド磁石は、回転子(20)の製造時に、回転子コア(21)の磁石用スロット(24)内に、磁性を帯びていない粉状乃至粒状の磁石材料とバインダとを混合したボンド磁石用材料を供給(より具体的には射出成形)すると共に、それを着磁させることで形成される。このように形成された永久磁石(26)は、回転子コア(21)を軸方向に貫通している。
−回転子コア(21)−
回転子コア(21)は、後に詳述するようにスキュー構造を有した、いわゆる積層コアである。具体的に、回転子コア(21)は、プレス加工機によって例えば厚さが0.3〜0.5mmの電磁鋼板を打ち抜き加工して形成した複数のコア部材(22)が軸方向に積層されて構成されている。図4は、本実施形態におけるコア部材(22)の一例を示す平面図である。このコア部材(22)には、後述の磁石用スロット(24)を形成するための貫通孔(25)が形成されている。この例では、多数枚のコア部材(22)が積層されて、各コア部材(22)間がカシメによって接合されることで、円筒状の回転子コア(21)が形成されている。なお、このコア部材(22)の原材料である電磁鋼板は、渦電流の発生を抑制する観点から、絶縁被覆されていることが好ましい。
回転子コア(21)には、永久磁石(26)を収容するための6つの磁石用スロット(24)が回転子コア(21)の軸心(O)の回りに60°ピッチで配置されている。これらの磁石用スロット(24)は、回転子コア(21)を軸方向に貫通しており、その断面形状は、当該断面における永久磁石(26)の形状に合わせた、回転子コア(21)の半径に直交する矩形状の本体部(24c)と、本体部(24c)の両端部からそれぞれ外周側に向って折れ曲がって伸びた矩形状部(24a,24b)とを組み合わせた形状である(図4参照)。
また、回転子コア(21)には、その中心に軸穴(23)が形成されている。軸穴(23)には、負荷(例えば空調装置のロータリ式圧縮機)を駆動するための駆動軸(30)が絞まり嵌め(例えば焼き嵌め)によって固定されている。したがって、回転子コア(21)の軸心(O)と駆動軸(30)の軸心は同軸上に存在する。また、既述の通り、回転子(20)には、該回転子(20)の軸方向位置に応じてスキューが施されている。そのため、この回転子コア(21)の磁石用スロット(24)には、スキュー構造が形成されている。
回転子コア(21)におけるスキュー構造とは、コア部材(22)が積層位置(軸方向の位置)に応じて周方向にずれた構造である。例えば、回転子(20)におけるスキュー角をα(機械角[度])、積層するコア部材(22)の枚数をN(Nは自然数であり、N≧2)とすると、本実施形態の回転子コア(21)では、端からm枚目(mは自然数であり、N≧m≧2)のコア部材(22)では、m−1枚目のコア部材(22)に対して、回転子コア(21)の軸心(O)を中心として、磁石用スロット(24)の本体部(24c)が、α/(N−1)[度]だけ回転した位置関係にある。
なお、本実施形態のスキュー角(α)は、コギングトルクを最も低減できる理論スキュー角(機械角[度])に定めてある。この理論スキュー角(機械角[度])は、ステータの磁極数(コイル用スロットの数)とロータの磁極数との最小公倍数をLとすると、360°/Lと表せる。これを本実施形態で見ると、固定子(10)の磁極数は9極、回転子(20)の磁極数は6極なので、最小公倍数L=18であり、α=理論スキュー角=360°/18=20°である。
〈永久磁石及び磁石用スロットの形状〉
図5は、永久磁石(26)の軸方向中央における、固定子(10)及び回転子(20)の軸直交断面(以下、説明の便宜のため中央断面(F0)と命名する)である。図5では、1つの磁極を拡大して例示してあるが、他の磁極も同様の構成である。本実施形態では、永久磁石(26)における、軸心(O)に直交する断面(以下、単に軸直交断面と呼ぶ)の形状は、回転子コア(21)の半径に直交する矩形状の本体部(26c)と、本体部(24c)の両端部からそれぞれ外周側に向って折れ曲がって伸びた矩形状部(第1及び第2端部(26a,26b)と呼ぶ)とを組み合わせた形状である。また、各磁極(すなわち永久磁石(26))には、いわゆるコギングトルクを低減するために、回転子(20)の軸方向位置に応じてスキューが施されている。そして、本実施形態では、永久磁石(26)の第1及び第2端部(26a,26b)の形状に特徴を有する。
まず、本実施形態の永久磁石(26)は、該永久磁石(26)の中央断面(F0)の周方向中心(Mc)が、所定のティース(13)の磁極中心線上にある状態で、回転子(20)の軸方向端面において、磁極の周方向両端部となる部分同士の厚さ((すなわち第1端部(26a)の厚さと第2端部(26b))の厚さ)を比べると、磁極中心(Pc)から遠い方が厚くなるように構成されている。
まず、図5において固定子(10)を見ると、各ティース(13)に形成される電磁石の磁極中心(Pc)は、ティース(13)の中心線(L)上にある。また、永久磁石(26)の中央断面(F0)では、該永久磁石(26)の周方向中心(Mc)が、対向するティース(13)の磁極中心線上、すなわち中心線(L)上にある。このように、中央断面(F0)において、永久磁石(26)の周方向中心(Mc)が、対向しているティース(13)の磁極中心線上にある状態を、以下では説明の便宜のため、「永久磁石(26)がティース(13)に正対した状態」乃至は単に「正対状態」と呼ぶことにする。
図5から分かるように、回転子コア(21)には、永久磁石(26)よりも外周側に、磁路となり得る領域(外周ブロック(21a)と命名する)が存在する。正対状態において、外周ブロック(21a)の中央断面(F0)を見ると、中心線(L)を対称軸とする対称形である(図5参照)。そのため、ティース(13)から第1端部(26a)に向かう磁路と、ティース(13)から第2端部(26b)に向かう磁路とは、磁気抵抗が同じである。すなわち、正対状態では、中央断面(F0)においては、第1端部(26a)側に作用する逆磁界の大きさと、第2端部(26b)側に作用する逆磁界の大きさは同じである。
したがって、本実施形態では、第1及び第2端部(26a,26b)の最先端の厚さを、第1端部(26a)や第2端部(26b)の「厚さ」と定義すると、中央断面(F0)では、永久磁石(26)の第1端部(26a)の厚さと、第2端部(26b)の厚さは同じでよい。中央断面(F0)における第1及び第2端部(26a,26b)の具体的な厚さは、中央断面(F0)において想定される逆磁界によっては減磁しないように定められる。本実施形態では、第1及び第2端部(26a,26b)の厚さをT0とする。
また、図6は、正対状態における、回転子(20)の一方の端面(第1端面(F1)と呼ぶ)を示している。第1端面(F1)では、永久磁石(26)の本体部(26c)は、中央断面(F0)における本体部(26c)よりも、左に回転した位置にある。これは、回転子(20)にスキュー構造が採用されているからである。図6から分かるように、第1端面(F1)では、正対状態において、中心線(L)を境界として外周ブロック(21a)を2つの部分に分けると、第1端部(26a)側の部分の方が大きい。
そのため、第1端面(F1)においては、ティース(13)から第1端部(26a)に向かう磁路の方が、ティース(13)から第2端部(26b)に向かう磁路よりも磁気抵抗が小さくなる。すなわち、正対状態では、第1端面(F1)においては、第2端部(26b)よりも、第1端部(26a)側により大きな逆磁界が作用する。より詳しくは、第1端面(F1)においては、第1端部(26a)に作用する逆磁界は、中央断面(F0)における逆磁界よりも大きい。
本実施形態では、永久磁石(26)において、より大きな逆磁界が作用する部位の厚さが他の部位よりもより厚くなるように、永久磁石(26)の厚さが設定されている。例えば、第1端面(F1)において、第1及び第2端部(26a,26b)の厚さ(Ta,Tb)を比較すると、中心線(L)から遠い方の第1端部(26a)の厚さ(Ta)の方がもう一方の第2端部(26b)の厚さ(Tb)よりも厚く形成されている。第1端面(F1)では、第1端部(26a)の厚さ(Ta)は、正対状態において想定される逆磁界によっては減磁しないように定められている。ここで、Ta=Ta1とすると、Ta1>T0である。これは、第1端部(26a)に作用する逆磁界が、中央断面(F0)における逆磁界よりも大きいからである。
このように、第1端面(F1)における第1及び第2端部(26a,26b)の厚さを定めることで、第1端面(F1)における第1端部(26a)の減磁が抑制される。同様に、第1端面(F1)では、第2端部(26b)の厚さ(Tb)も、正対状態において想定される逆磁界によっては減磁しないように定められている。第1端面(F1)では、第2端部(26b)側に作用する逆磁界の大きさは、第1端部(26a)側に作用する逆磁界よりも小さいので、第2端部(26b)の厚さ(Tb)は、第1端部(26a)の厚さ(Ta)よりも小さくてよい。この例では、第2端部(26b)の厚さ(Tb)は、中央断面(F0)における第2端部(26b)の厚さ(T0)と同じである。すなわち、Tb=T0である。
また、図7は、正対状態における、回転子(20)のもう一方の端面(第2端面(F2)と呼ぶ)を示している。第2端面(F2)では、図7に示すように正対状態では、永久磁石(26)の本体部(26c)は、中央断面(F0)(図5参照)における本体部(26c)よりも、右に回転した位置にある。これは、回転子(20)にスキュー構造が採用されているからである。図7から分かるように、第2端面(F2)では、正対状態において中心線(L)を境界として外周ブロック(21a)を2つの部分に分けると、第2端部(26b)側の部分の方が大きい。
そのため、正対状態における第2端面(F2)では、ティース(13)から第2端部(26b)に向かう磁路の方が、ティース(13)から第1端部(26a)に向かう磁路よりも磁気抵抗が小さくなる。すなわち、正対状態では、第2端面(F2)においては、第2端部(26b)側により大きな逆磁界が作用する。より詳しくは、第2端面(F2)においては、第2端部(26b)に作用する逆磁界は、中央断面(F0)における逆磁界よりも大きい。
第2端面(F2)でも、より大きな逆磁界が作用する部位の厚さが他の部位よりもより厚くなるように、永久磁石(26)の厚さが設定されている。具体的に、第2端面(F2)において、第1及び第2端部(26a,26b)の厚さ(Ta,Tb)を比較すると、中心線(L)から遠い方の第2端部(26b)の厚さ(Tb)の方がもう一方の第1端部(26a)の厚さ(Ta)よりも厚く形成されている。すなわち、第2端面(F2)における第1端部(26a)と第2端部(26b)の厚さの大小関係は、第1端面(F1)における大小関係と逆である。より具体的には、第2端面(F2)では、第2端部(26b)の厚さ(Tb)は、正対状態において想定される逆磁界によっては減磁しないように定められている。ここで、Tb=Tb2とすると、Tb2>T0である。これは、第2端部(26b)に作用する逆磁界が、中央断面(F0)における逆磁界よりも大きいからである。
このように、第2端面(F2)における第1及び第2端部(26a,26b)の厚さを定めることで、第2端面(F2)における第2端部(26b)の減磁が抑制される。同様に、第2端面(F2)では、第1端部(26a)の厚さ(Ta)も、図7に示す位置関係において想定される逆磁界によっては減磁しないように定められている。第2端面(F2)では、第1端部(26a)側に作用する逆磁界の大きさは、第2端部(26b)側に作用する逆磁界よりも小さいので、第1端部(26a)の厚さ(Ta)は、第2端部(26b)の厚さ(Tb)よりも小さくてよい。この例では、第1端部(26a)の厚さ(Ta)は、中央断面(F0)における第1端部(26a)と同じ厚さに形成されている。すなわち、Ta=T0である。
図8は、永久磁石(26)の斜視図である。図8に示すように、永久磁石(26)は、第1端面(F1)から中央断面(F0)に至るまでの間で、第1端部(26a)の厚さ(Ta)が、Ta1からT0まで、線形的に減少するように構成されている。これは、中心線(L)を境界として外周ブロック(21a)を2つの部分に分けると、第1端面(F1)から中央断面(F0)に至るまでの間で、第1端部(26a)側の部分が徐々に小さくなるからである。なお、第2端部(26b)の厚さ(Tb)は、第1端面(F1)から中央断面(F0)に至るまでの間では変化せず、一定値(=T0)に形成されている。
また、永久磁石(26)は、第2端面(F2)から中央断面(F0)に至るまでの間では、第2端部(26b)の厚さ(Tb)が、Tb2からT0まで、線形的に減少するように構成されている。これは、中心線(L)を境界として外周ブロック(21a)を2つの部分に分けると、第2端面(F2)から中央断面(F0)に至るまでの間で、第2端部(26b)側の部分が徐々に小さくなるからである。なお、第1端部(26a)の厚さ(Ta)は、第2端面(F2)から中央断面(F0)に至るまでの間では変化せず、一定値(=T0)に形成されている。
なお、永久磁石(26)の本体部(26c)は、第1端面(F1)から第2端面(F2)まで、一定の厚さである。この例では、本体部(26c)の厚さは、T0である。以上の構成により、本実施形態では、それぞれの永久磁石(26)では、磁極の周方向両端部となる部分のうち、厚さが厚い方が、前記軸方向端面から前記軸方向中央に向って厚さが連続的に薄くなるように変化する。なお、回転子コア(21)を構成するコア部材(22)は、永久磁石(26)の形状に合わせて、矩形状部(24a,24b)の形状が個々に設定される。すなわち、この例では、それぞれのコア部材(22)は、それぞれの軸方向位置に応じて、矩形状部(24a,24b)の形状が設定されることになる。
〈本実施形態における効果〉
以上のように、本実施形態では、永久磁石(26)(ここではボンド磁石)にスキューが施された回転子(20)において、永久磁石(26)に作用する逆磁界の大きさが、永久磁石(26)の部位によって異なることに着目し、より大きな逆磁界が作用する部位の厚さが他の部位よりもより厚くなるように、永久磁石(26)の厚さが設定されている。これにより、単に、永久磁石全体の厚さを増やす場合と比べ、磁石用材料が少なくて済む。したがって、本実施形態では、永久磁石(26)を有した回転子(20)を備えた回転電気機械(1)において、コストアップを抑制しつつ、減磁対策を行うことが可能になる。
《実施形態1の変形例》
図9は、実施形態1の変形例に係る永久磁石(26)の斜視図である。この変形例では、中央断面(F0)を中心とした、所定の軸方向範囲(以下、永久磁石(26)におけるこの範囲を中央ブロック(26d)と呼ぶ)では、第1及び第2端部(26a,26b)の厚さが変化していない。この中央ブロック(26d)を軸方向から見ると、中心線(L)に対して線対称である。すなわち、第1端部(26a)と第2端部(26b)の厚さは同じであり、それらの厚さは、中央ブロック(26d)において想定される逆磁界によっては減磁しないように定められている。ここでは、第1及び第2端部(26a,26b)の厚さをT0とする。
また、永久磁石(26)は、第1端面(F1)から中央ブロック(26d)に至るまでの範囲(ここでは上部領域と呼ぶ)では、実施形態1と同様に、第1端部(26a)の厚さ(Ta)がTa1からT0に線形的に減少する。本変形例でも、中心線(L)を境界として外周ブロック(21a)を2つの部分に分けると、第1端面(F1)から中央ブロック(26d)に至るまでの間で、第1端部(26a)側の部分が徐々に小さくなるからである。なお、永久磁石(26)の上部領域では、第2端部(26b)の厚さ(Tb)は、第1端面(F1)から中央ブロック(26d)に至るまでの範囲では変化しない。
また、永久磁石(26)は、第2端面(F2)から中央ブロック(26d)に至るまでの範囲(ここでは下部領域と呼ぶ)は、実施形態1と同様に、第2端部(26b)の厚さ(Tb)がTb2からT0に線形的に減少する。これは、中心線(L)を境界として外周ブロック(21a)を2つの部分に分けると、第2端面(F2)から中央ブロック(26d)に至るまでの間で、第2端部(26b)側の部分が徐々に小さくなるからである。なお、下部領域では、第1端部(26a)の厚さ(Ta)は、第2端面(F2)から中央ブロック(26d)に至るまでの範囲では変化しない。
以上の通り、本変形例でも、永久磁石(26)においてより大きな逆磁界が作用する部位の厚さが他の部位よりもより厚くなるように設定される。したがって、本変形例でも、実施形態1と同様の効果を得ることが可能になる。
また、中央ブロック(26d)は、軸直交断面の形状が一定なので、回転子コア(21)において中央ブロック(26d)に相当する部分は、同じ形状のコア部材(22)を利用して構成できる。すなわち、本変形例では、回転子コア(21)を形成するコア部材(22)の種類を減らすことができ、製造がより容易になる。
《発明の実施形態2》
図10は、実施形態2に係る電動機(1)の回転子(20)を軸方向から見た平面図である。この図10では、正対状態における一方の端面(第1端面(F1))を図示してある。図10に示すように、回転子(20)は、ボンド磁石によって形成された、4つの永久磁石(26)を備えている。すなわち、回転子(20)は、4つの磁極を備えている。各磁極を構成する永久磁石(26)の軸直交断面の形状は、内周側が凸の円弧状である。そして、本実施形態でも、各磁極(すなわち永久磁石(26))には、いわゆるコギングトルクを低減するために、回転子(20)の軸方向位置に応じてスキューが施されている。そのため、図10の例では、第1端面(F1)は、永久磁石(26)は、中央断面(F0)よりも、左に回転した位置にある。
また、図10から分かるように、この例でも、回転子コア(21)には、永久磁石(26)よりも外周側に、磁路となり得る外周ブロック(21a)が存在する。正対状態において、外周ブロック(21a)の中央断面(F0)を見ると、中心線(L)を対称軸とする対称形である。そのため、正対状態では、中央断面(F0)において永久磁石(26)の周方向両端部(それぞれ第1端部(26a)、第2端部(26b)と呼ぶ)に作用する逆磁界の大きさは同じである。したがって、第1及び第2端部(26a,26b)の最先端の厚さを、第1端部(26a)や第2端部(26b)の「厚さ」と定義すると、中央断面(F0)では、永久磁石(26)の第1端部(26a)の厚さと、第2端部(26b)の厚さは同じでよい。中央断面(F0)における第1及び第2端部(26a,26b)の具体的な厚さは、中央断面(F0)において想定される逆磁界によっては減磁しないように定められる。ここでは、第1及び第2端部(26a,26b)の厚さをT0とする。
また、本実施形態でも第1端面(F1)では、正対状態では、外周ブロック(21a)は、中心線(L)を境界として該外周ブロック(21a)を2つの部分に分けると、第1端部(26a)側の部分の方が大きい。そのため、第1端面(F1)においては、ティース(13)から第1端部(26a)に向かう磁路の方が、ティース(13)から第2端部(26b)に向かう磁路よりも磁気抵抗が小さくなる。すなわち、正対状態では、第1端部(26a)側により大きな逆磁界が作用する。より詳しくは、第1端面(F1)においては、第1端部(26a)に作用する逆磁界は、中央断面(F0)における逆磁界よりも大きい。
本実施形態でも、永久磁石(26)において、より大きな逆磁界が作用する部位の厚さが他の部位よりもより厚くなるように、永久磁石(26)の厚さが設定されている。例えば、第1端面(F1)において、第1及び第2端部(26a,26b)の厚さ(Ta,Tb)を比較すると、中心線(L)から遠い方の第1端部(26a)の厚さ(Ta)の方が第2端部(26b)の厚さ(Tb)よりも厚く形成されている(図10参照)。第1端面(F1)では、第1端部(26a)の厚さ(Ta)は、正対状態において想定される逆磁界によっては減磁しないように定められている。ここで、Ta=Ta1とすると、Ta1>T0である。これは、第1端部(26a)に作用する逆磁界が、中央断面(F0)における逆磁界よりも大きいからである。そして、永久磁石(26)は、第1端部(26a)から磁極中心の方向に向かって厚さが徐々に減少するように構成されている。なお、この例では、磁極中心(Pc)における永久磁石(26)の厚さはT0である。
このように、第1端面(F1)における第1及び第2端部(26a,26b)の厚さを定めることで、第1端面(F1)における第1端部(26a)の減磁が抑制される。同様に、第1端面(F1)では、第2端部(26b)の厚さ(Tb)も、正対状態において想定される逆磁界によっては減磁しないように定められている。第1端面(F1)では、第2端部(26b)側に作用する逆磁界の大きさは、第1端部(26a)側に作用する逆磁界よりも小さいので、第2端部(26b)の厚さ(Tb)は、第1端部(26a)の厚さ(Ta)よりも小さくてよい。この例では、第2端部(26b)の厚さ(Tb)は、中央断面(F0)における第2端部(26b)の厚さと同じである。すなわち、Tb=T0である。
また、正対状態における第2端面(F2)では、永久磁石(26)の本体部(26c)は、中央断面(F0)(図5参照)における本体部(26c)よりも、右に回転した位置にある。そのため、正対状態では、外周ブロック(21a)は、中心線(L)を境界として外周ブロック(21a)を2つの部分に分けると第2端部(26b)側の方が大きい。
したがって、正対状態における第2端面(F2)では、ティース(13)から第2端部(26b)に向かう磁路の方が、ティース(13)から第1端部(26a)に向かう磁路よりも磁気抵抗が小さくなる。すなわち、正対状態では、第2端部(26b)側により大きな逆磁界が作用する。より詳しくは、第2端部(26b)に作用する逆磁界は、中央断面(F0)における逆磁界よりも大きい。
第2端面(F2)でも、より大きな逆磁界が作用する部位の厚さが他の部位よりもより厚くなるように、永久磁石(26)の厚さが設定されている。具体的に、第2端面(F2)において、第1及び第2端部(26a,26b)の厚さ(Ta,Tb)を比較すると、中心線(L)から遠い方の第2端部(26b)の厚さ(Tb)の方がもう一方の第1端部(26a)の厚さ(Ta)よりも厚く形成されている。すなわち、第2端面(F2)における第1端部(26a)と第2端部(26b)の厚さの大小関係は、第1端面(F1)における大小関係と逆である。具体的に、第2端面(F2)では、第2端部(26b)の厚さ(Tb)は、正対状態において想定される逆磁界によっては減磁しないように定められている(Tb=Tb2とする)。なお、Tb2>T0である。これは、第2端部(26b)に作用する逆磁界が、中央断面(F0)における逆磁界よりも大きいからである。そして、永久磁石(26)では、第2端部(26b)から磁極中心の方向に向かって厚さが徐々に減少する。
このように、第2端面(F2)における第1及び第2端部(26a,26b)の厚さを定めることで、第2端面(F2)における第2端部(26b)の減磁が抑制される。同様に、第2端面(F2)では、第1端部(26a)の厚さ(Ta)も、正対状態において想定される逆磁界によっては減磁しないように定められている。第2端面(F2)では、第1端部(26a)側に作用する逆磁界の大きさは、第2端部(26b)側に作用する逆磁界よりも小さいので、第1端部(26a)の厚さ(Ta)は、第2端部(26b)の厚さ(Tb)よりも小さくてよい。この例では、第1端部(26a)の厚さ(Ta)は、中央断面(F0)における第1端部(26a)と同じ厚さに形成されている。すなわち、Ta=T0である。
また、この例でも、永久磁石(26)は、第1端面(F1)から中央断面(F0)に至るまでの間で、第1端部(26a)の厚さ(Ta)は、Ta1からT0まで、線形的に減少するように構成されている。これは、中心線(L)を境界として外周ブロック(21a)を2つの部分に分けると、第1端面(F1)から中央断面(F0)に至るまでの間で、第1端部(26a)側の部分が徐々に小さくなるからである。なお、第2端部(26b)の厚さ(Tb)は、第1端面(F1)から中央断面(F0)に至るまでの間では変化せず、一定値(=T0)に形成されている。
また、第2端面(F2)から中央断面(F0)に至るまでの間では、第2端部(26b)の厚さ(Tb)が、Tb2からT0まで、線形的に減少するように構成されている。これは、中心線(L)を境界として外周ブロック(21a)を2つの部分に分けると、第2端面(F2)から中央断面(F0)に至るまでの間で、第2端部(26b)側の部分が徐々に小さくなるからである。なお、第1端部(26a)の厚さ(Ta)は、第2端面(F2)から中央断面(F0)に至るまでの間では変化せず、一定値(=T0)に形成されている。
〈本実施形態における効果〉
以上のように、本実施形態でも、永久磁石(26)(ここではボンド磁石)にスキューが施された回転子(20)において、永久磁石(26)に作用する逆磁界の大きさが、永久磁石(26)の部位によって異なることに着目し、より大きな逆磁界が作用する部位の厚さが他の部位よりもより厚くなるように、永久磁石(26)の厚さが設定されている。これにより、単に、永久磁石全体の厚さを増やす場合と比べ、磁石用材料が少なくて済む。したがって、本実施形態でも、永久磁石(26)を有した回転子(20)を備えた回転電気機械(1)において、コストアップを抑制しつつ、減磁対策を行うことが可能になる。
《実施形態2の変形例》
図11は、実施形態2の変形例に係る電動機(1)の回転子(20)を軸方向から見た平面図である。図11には、正対状態における一方の端面(第1端面(F1))を図示してある。この電動機(1)では、複数に分割された永久磁石(26)によって各磁極が形成されている。具体的に、この電動機(1)は、実施形態2の電動機(1)における各磁極に、補強用のブリッジ(21b)を設けたものである。ブリッジ(21b)は、回転子コア(21)における永久磁石(26)よりも内周側の部分と、外周ブロック(21a)とを連結している。
すなわち、各磁極は、内周側が凸の円弧状の断面を有した永久磁石(26)を2つ用いて形成されている。これらの永久磁石(26)には、実施形態2と同様に、スキューが施されている。また、永久磁石(26)は、いわゆるボンド磁石である。この電動機(1)でも、それぞれの永久磁石(26)は、正対状態で、回転子(20)の軸方向端面において、磁極の周方向両端部となる部分同士の厚さを比べた場合に、磁極中心(Pc)から遠い方が厚くなるように構成されている。
例えば、正対状態における第1端面(F1)では、図11に示すように、各磁極において、左に位置する永久磁石(26)の最外周端の厚さ(Ta)の方が、もう一方の永久磁石(26)の最外周端の厚さ(Tb)よりも厚く形成されている。この例では、Ta=Ta1>T0、且つTb=T0である。これにより、単に、永久磁石全体の厚さを増やす場合と比べ、磁石用材料が少なくて済む。したがって、本実施形態でも、永久磁石(26)を有した回転子(20)を備えた回転電気機械(1)において、コストアップを抑制しつつ、減磁対策を行うことが可能になる。
《その他の実施形態》
なお、スキュー構造実現のためのコア部材(22)のずらし方(重ね方)は例示である。例えば、コア部材(22)間の周方向のずれ角度は等間隔である必要はない。また、所定枚数を一つの単位として周方向の位置をずらすようにしてもよい。例えば、磁石用スロットの周方向の位置が同位相となるように積み重ねたX枚(Xは自然数)のコア部材(22)を一つのグループとし、そのグループ単位(X枚単位)で周方向の位相をずらしながら、複数のグループを積み重ねるのである。こうすることで、いわゆる段スキュー構造(回転子を複数の段にわけ、段毎に磁極中心の位置をずらした構造)を実現できる。
段スキュー構造に対しては、各永久磁石(26)は、各段において、磁極の周方向両端部となる部分同士の厚さを比べた場合に、磁極中心(Pc)から遠い方が厚くなるように構成される。また、永久磁石(26)は、磁極の周方向両端部となる部分のうち、厚さが厚い方が、回転子(20)の軸方向端面から軸方向中央に向って、段毎に厚さが薄くなるよう構成される。すなわち、この構成では、各磁極において、永久磁石(26)の端部(26a,26b)の厚さが段階的に変化するのである。この構成により、実施形態1等と同様に、コストアップを抑制しつつ、減磁対策を行うことが可能になる。
なお、段スキューを採用すると、回転子(20)の永久磁石(26)として、いわゆる焼結磁石を容易に採用できる。勿論、ボンド磁石を用いて、段スキュー構造を実現してもよい。
また、段スキューを採用することで、回転子コア(21)を形成するコア部材(22)の種類を減らすことができ、製造がより容易になる。
また、各実施形態や各変形例で説明した回転子(20)の構造は、電動機の回転子の他に、発電機の回転子にも適用できる。
本発明は、回転電気機械として有用である。
1 電動機(回転電気機械)
10 固定子
13 ティース
20 回転子
26 永久磁石
F0 軸直交断面
L 中心線
Mc 周方向中心
本発明は、回転電気機械に関するものである。
モータや発電機などの回転電気機械には、電磁鋼板を打ち抜き加工して形成したコア部材を積層した積層コアをロータコアとして採用するとともに、コギングトルクを低減するために、積層コアにスキュー構造を採用したものがある(例えば特許文献1を参照)。
ところで、回転電気機械では、固定子から、回転子の永久磁石に逆磁界が作用する。そのため、回転電気機械では、逆磁界による永久磁石の減磁を抑制する必要がある。永久磁石の減磁を抑制する方法としては、十分な厚さの永久磁石を採用することが考えられるが、それではコストや重量の増加に繋がる。
本発明は前記の問題に着目してなされたものであり、永久磁石を有した回転子を備えた回転電気機械において、コストアップを抑制しつつ、減磁対策を行うことを目的としている。
前記の課題を解決するため、第1の態様は、
固定子(10)と回転子(20)とを有した回転電気機械において、
前記固定子(10)は、電磁石として機能する複数のティース(13)を有し、
前記回転子(20)は、該回転子(20)の軸方向位置に応じてスキューが施された複数の永久磁石(26)を有し、
それぞれの永久磁石(26)は、該永久磁石(26)の軸方向中央における軸直交断面(F0)の周方向中心(Mc)が、所定のティース(13)の磁極中心線(L)上にある状態で、前記回転子(20)の軸方向端面において、磁極の周方向両端部となる部分同士の厚さを比べると、前記磁極中心線(L)から遠い方が厚く、
それぞれの永久磁石(26)では、磁極の周方向両端部となる部分のうちで厚さが厚い方が、前記軸方向端面から前記軸方向中央に向って厚さが連続的に薄くなるように変化することを特徴とする回転電気機械である。
この構成では、永久磁石(26)において、より大きな逆磁界が作用する部位の厚さが他の部位よりもより厚くなるように、該永久磁石(26)が形成される。
つまり、この構成では、永久磁石(26)は、作用する逆磁界の大きさがより大きな部位に対して、より大きな厚さが設定される。すなわち、永久磁石(26)において減磁対策の必要な箇所が適切な厚さに設定される。
また、第2の態様は、第1の態様において、
前記永久磁石(26)は、ボンド磁石であることを特徴とする回転電気機械である。
また、第3の態様は、第1の態様において、
前記永久磁石(26)は、前記軸方向中央から所定の軸方向範囲において厚さが変化しないことを特徴とする回転電気機械である。
第1の態様によれば、永久磁石を有した回転子を備えた回転電気機械において、コストアップを抑制しつつ、減磁対策を行うことが可能になる。
また、第2の態様によれば、ボンド磁石を採用したたことで、永久磁石の厚さ設定を容易に行うことが可能になる。
また、第1の態様によれば、より少ない磁石材料で減磁対策を行うことが可能になる。
また、第3の態様によれば、厚さが変化しない部分を設けたことで、いわゆる積層コアを用いて回転子を形成した場合に、回転子を形成するコア部材の種類を減らすことができ、製造がより容易になる。
図1は、本発明の実施形態1に係る電動機を示す。
図2は、回転子を軸方向から見た平面図を示す。
図3は、回転子の縦断面図を示す。
図4は、コア部材の一例を示す平面図である。
図5は、永久磁石の中央断面を示す。
図6は、正対状態における回転子の第1端面を示す。
図7は、正対状態における回転子の第2端面を示す。
図8は、永久磁石の斜視図である。
図9は、実施形態1の変形例に係る永久磁石の斜視図である。
図10は、実施形態2に係る回転子を軸方向から見た平面図である。
図11は、実施形態2の変形例に係る回転子を軸方向から見た平面図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る電動機(1)を示す。電動機(1)は、回転電気機械の一例である。この電動機(1)は、磁石埋込型の電動機であり、図1に示すように、固定子(10)、回転子(20)、駆動軸(30)、及びケーシング(2)を備えている。なお、以下の説明において、軸方向とは駆動軸(30)の軸心の方向を、また、径方向とは軸方向と直交する方向をそれぞれ意味する。外周側とは軸心から遠離する側を、また、内周側とは軸心に近接する側をそれぞれ意味する。
〈固定子(10)〉
固定子(10)は、円筒状の固定子コア(11)とコイル(16)を備えている。固定子コア(11)は、いわゆる積層コアであり、プレス加工機によって電磁鋼板を打ち抜き加工して形成した複数の板状部材が軸方向に積層されて構成されている。固定子コア(11)は、1つのバックヨーク部(12)、複数(この例では9つ)のティース(13)、及び複数のツバ部(14)を備えている。固定子コア(11)は、ケーシング(2)に、バックヨーク部(12)の外周面がケーシング(2)の内周面に接触するように嵌め入れられて固定されている。
バックヨーク部(12)は、固定子コア(11)の外周側の平面視で環状の部分である。また、各ティース(13)は、固定子コア(11)において径方向に伸びる直方体状の部分である。各ティース(13)には、例えば集中巻方式でコイル(16)が巻回される。相互に隣接するティース(13)間の空間がコイル(16)を収容するためのコイル用スロット(15)として機能する。以上により、各ティース(13)には電磁石が構成されている。
ツバ部(14)は、各ティース(13)の内周側に連続して両側に張り出した部分である。したがって、ツバ部(14)は、ティース(13)よりも幅(周方向の長さ)が大きく形成されている。ツバ部(14)は、内周側の面が円筒面であり、その円筒面は、回転子(20)の外周面(円筒面)と所定の距離(エアギャップ(G))をもって対向している。
〈回転子(20)〉
図2に回転子(20)を軸方向から見た平面図を示す。また、図3には、回転子(20)の縦断面図を示す。図3は、図2のII−II断面に相当している。なお、一般的には、回転子(20)の軸方向両端には、端板(例えばステンレス鋼等の非磁性体の材料を用いて形成した円板状の部材)が設けられるが、図1等では、端板の図示を省略してある。
回転子(20)は、回転子コア(21)、及び6つの永久磁石(26)を備えている。すなわち、回転子(20)は、6つの磁極を備えている。これらの永久磁石(26)は、いわゆるボンド磁石である。ボンド磁石は、磁石材料である微小な粉状乃至粒状のフェライト系磁石や希土類系磁石を、ナイロン樹脂、PPS樹脂等のバインダと混合して固化させることにより形成された永久磁石である。このようなボンド磁石は、回転子(20)の製造時に、回転子コア(21)の磁石用スロット(24)内に、磁性を帯びていない粉状乃至粒状の磁石材料とバインダとを混合したボンド磁石用材料を供給(より具体的には射出成形)すると共に、それを着磁させることで形成される。このように形成された永久磁石(26)は、回転子コア(21)を軸方向に貫通している。
−回転子コア(21)−
回転子コア(21)は、後に詳述するようにスキュー構造を有した、いわゆる積層コアである。具体的に、回転子コア(21)は、プレス加工機によって例えば厚さが0.3〜0.5mmの電磁鋼板を打ち抜き加工して形成した複数のコア部材(22)が軸方向に積層されて構成されている。図4は、本実施形態におけるコア部材(22)の一例を示す平面図である。このコア部材(22)には、後述の磁石用スロット(24)を形成するための貫通孔(25)が形成されている。この例では、多数枚のコア部材(22)が積層されて、各コア部材(22)間がカシメによって接合されることで、円筒状の回転子コア(21)が形成されている。なお、このコア部材(22)の原材料である電磁鋼板は、渦電流の発生を抑制する観点から、絶縁被覆されていることが好ましい。
回転子コア(21)には、永久磁石(26)を収容するための6つの磁石用スロット(24)が回転子コア(21)の軸心(O)の回りに60°ピッチで配置されている。これらの磁石用スロット(24)は、回転子コア(21)を軸方向に貫通しており、その断面形状は、当該断面における永久磁石(26)の形状に合わせた、回転子コア(21)の半径に直交する矩形状の本体部(24c)と、本体部(24c)の両端部からそれぞれ外周側に向って折れ曲がって伸びた矩形状部(24a,24b)とを組み合わせた形状である(図4参照)。
また、回転子コア(21)には、その中心に軸穴(23)が形成されている。軸穴(23)には、負荷(例えば空調装置のロータリ式圧縮機)を駆動するための駆動軸(30)が絞まり嵌め(例えば焼き嵌め)によって固定されている。したがって、回転子コア(21)の軸心(O)と駆動軸(30)の軸心は同軸上に存在する。また、既述の通り、回転子(20)には、該回転子(20)の軸方向位置に応じてスキューが施されている。そのため、この回転子コア(21)の磁石用スロット(24)には、スキュー構造が形成されている。
回転子コア(21)におけるスキュー構造とは、コア部材(22)が積層位置(軸方向の位置)に応じて周方向にずれた構造である。例えば、回転子(20)におけるスキュー角をα(機械角[度])、積層するコア部材(22)の枚数をN(Nは自然数であり、N≧2)とすると、本実施形態の回転子コア(21)では、端からm枚目(mは自然数であり、N≧m≧2)のコア部材(22)では、m−1枚目のコア部材(22)に対して、回転子コア(21)の軸心(O)を中心として、磁石用スロット(24)の本体部(24c)が、α/(N−1)[度]だけ回転した位置関係にある。
なお、本実施形態のスキュー角(α)は、コギングトルクを最も低減できる理論スキュー角(機械角[度])に定めてある。この理論スキュー角(機械角[度])は、ステータの磁極数(コイル用スロットの数)とロータの磁極数との最小公倍数をLとすると、360°/Lと表せる。これを本実施形態で見ると、固定子(10)の磁極数は9極、回転子(20)の磁極数は6極なので、最小公倍数L=18であり、α=理論スキュー角=360°/18=20°である。
〈永久磁石及び磁石用スロットの形状〉
図5は、永久磁石(26)の軸方向中央における、固定子(10)及び回転子(20)の軸直交断面(以下、説明の便宜のため中央断面(F0)と命名する)である。図5では、1つの磁極を拡大して例示してあるが、他の磁極も同様の構成である。本実施形態では、永久磁石(26)における、軸心(O)に直交する断面(以下、単に軸直交断面と呼ぶ)の形状は、回転子コア(21)の半径に直交する矩形状の本体部(26c)と、本体部(24c)の両端部からそれぞれ外周側に向って折れ曲がって伸びた矩形状部(第1及び第2端部(26a,26b)と呼ぶ)とを組み合わせた形状である。また、各磁極(すなわち永久磁石(26))には、いわゆるコギングトルクを低減するために、回転子(20)の軸方向位置に応じてスキューが施されている。そして、本実施形態では、永久磁石(26)の第1及び第2端部(26a,26b)の形状に特徴を有する。
まず、本実施形態の永久磁石(26)は、該永久磁石(26)の中央断面(F0)の周方向中心(Mc)が、所定のティース(13)の磁極中心線上にある状態で、回転子(20)の軸方向端面において、磁極の周方向両端部となる部分同士の厚さ((すなわち第1端部(26a)の厚さと第2端部(26b))の厚さ)を比べると、磁極中心(Pc)から遠い方が厚くなるように構成されている。
まず、図5において固定子(10)を見ると、各ティース(13)に形成される電磁石の磁極中心(Pc)は、ティース(13)の中心線(L)上にある。また、永久磁石(26)の中央断面(F0)では、該永久磁石(26)の周方向中心(Mc)が、対向するティース(13)の磁極中心線上、すなわち中心線(L)上にある。このように、中央断面(F0)において、永久磁石(26)の周方向中心(Mc)が、対向しているティース(13)の磁極中心線上にある状態を、以下では説明の便宜のため、「永久磁石(26)がティース(13)に正対した状態」乃至は単に「正対状態」と呼ぶことにする。
図5から分かるように、回転子コア(21)には、永久磁石(26)よりも外周側に、磁路となり得る領域(外周ブロック(21a)と命名する)が存在する。正対状態において、外周ブロック(21a)の中央断面(F0)を見ると、中心線(L)を対称軸とする対称形である(図5参照)。そのため、ティース(13)から第1端部(26a)に向かう磁路と、ティース(13)から第2端部(26b)に向かう磁路とは、磁気抵抗が同じである。すなわち、正対状態では、中央断面(F0)においては、第1端部(26a)側に作用する逆磁界の大きさと、第2端部(26b)側に作用する逆磁界の大きさは同じである。
したがって、本実施形態では、第1及び第2端部(26a,26b)の最先端の厚さを、第1端部(26a)や第2端部(26b)の「厚さ」と定義すると、中央断面(F0)では、永久磁石(26)の第1端部(26a)の厚さと、第2端部(26b)の厚さは同じでよい。中央断面(F0)における第1及び第2端部(26a,26b)の具体的な厚さは、中央断面(F0)において想定される逆磁界によっては減磁しないように定められる。本実施形態では、第1及び第2端部(26a,26b)の厚さをT0とする。
また、図6は、正対状態における、回転子(20)の一方の端面(第1端面(F1)と呼ぶ)を示している。第1端面(F1)では、永久磁石(26)の本体部(26c)は、中央断面(F0)における本体部(26c)よりも、左に回転した位置にある。これは、回転子(20)にスキュー構造が採用されているからである。図6から分かるように、第1端面(F1)では、正対状態において、中心線(L)を境界として外周ブロック(21a)を2つの部分に分けると、第1端部(26a)側の部分の方が大きい。
そのため、第1端面(F1)においては、ティース(13)から第1端部(26a)に向かう磁路の方が、ティース(13)から第2端部(26b)に向かう磁路よりも磁気抵抗が小さくなる。すなわち、正対状態では、第1端面(F1)においては、第2端部(26b)よりも、第1端部(26a)側により大きな逆磁界が作用する。より詳しくは、第1端面(F1)においては、第1端部(26a)に作用する逆磁界は、中央断面(F0)における逆磁界よりも大きい。
本実施形態では、永久磁石(26)において、より大きな逆磁界が作用する部位の厚さが他の部位よりもより厚くなるように、永久磁石(26)の厚さが設定されている。例えば、第1端面(F1)において、第1及び第2端部(26a,26b)の厚さ(Ta,Tb)を比較すると、中心線(L)から遠い方の第1端部(26a)の厚さ(Ta)の方がもう一方の第2端部(26b)の厚さ(Tb)よりも厚く形成されている。第1端面(F1)では、第1端部(26a)の厚さ(Ta)は、正対状態において想定される逆磁界によっては減磁しないように定められている。ここで、Ta=Ta1とすると、Ta1>T0である。これは、第1端部(26a)に作用する逆磁界が、中央断面(F0)における逆磁界よりも大きいからである。
このように、第1端面(F1)における第1及び第2端部(26a,26b)の厚さを定めることで、第1端面(F1)における第1端部(26a)の減磁が抑制される。同様に、第1端面(F1)では、第2端部(26b)の厚さ(Tb)も、正対状態において想定される逆磁界によっては減磁しないように定められている。第1端面(F1)では、第2端部(26b)側に作用する逆磁界の大きさは、第1端部(26a)側に作用する逆磁界よりも小さいので、第2端部(26b)の厚さ(Tb)は、第1端部(26a)の厚さ(Ta)よりも小さくてよい。この例では、第2端部(26b)の厚さ(Tb)は、中央断面(F0)における第2端部(26b)の厚さ(T0)と同じである。すなわち、Tb=T0である。
また、図7は、正対状態における、回転子(20)のもう一方の端面(第2端面(F2)と呼ぶ)を示している。第2端面(F2)では、図7に示すように正対状態では、永久磁石(26)の本体部(26c)は、中央断面(F0)(図5参照)における本体部(26c)よりも、右に回転した位置にある。これは、回転子(20)にスキュー構造が採用されているからである。図7から分かるように、第2端面(F2)では、正対状態において中心線(L)を境界として外周ブロック(21a)を2つの部分に分けると、第2端部(26b)側の部分の方が大きい。
そのため、正対状態における第2端面(F2)では、ティース(13)から第2端部(26b)に向かう磁路の方が、ティース(13)から第1端部(26a)に向かう磁路よりも磁気抵抗が小さくなる。すなわち、正対状態では、第2端面(F2)においては、第2端部(26b)側により大きな逆磁界が作用する。より詳しくは、第2端面(F2)においては、第2端部(26b)に作用する逆磁界は、中央断面(F0)における逆磁界よりも大きい。
第2端面(F2)でも、より大きな逆磁界が作用する部位の厚さが他の部位よりもより厚くなるように、永久磁石(26)の厚さが設定されている。具体的に、第2端面(F2)において、第1及び第2端部(26a,26b)の厚さ(Ta,Tb)を比較すると、中心線(L)から遠い方の第2端部(26b)の厚さ(Tb)の方がもう一方の第1端部(26a)の厚さ(Ta)よりも厚く形成されている。すなわち、第2端面(F2)における第1端部(26a)と第2端部(26b)の厚さの大小関係は、第1端面(F1)における大小関係と逆である。より具体的には、第2端面(F2)では、第2端部(26b)の厚さ(Tb)は、正対状態において想定される逆磁界によっては減磁しないように定められている。ここで、Tb=Tb2とすると、Tb2>T0である。これは、第2端部(26b)に作用する逆磁界が、中央断面(F0)における逆磁界よりも大きいからである。
このように、第2端面(F2)における第1及び第2端部(26a,26b)の厚さを定めることで、第2端面(F2)における第2端部(26b)の減磁が抑制される。同様に、第2端面(F2)では、第1端部(26a)の厚さ(Ta)も、図7に示す位置関係において想定される逆磁界によっては減磁しないように定められている。第2端面(F2)では、第1端部(26a)側に作用する逆磁界の大きさは、第2端部(26b)側に作用する逆磁界よりも小さいので、第1端部(26a)の厚さ(Ta)は、第2端部(26b)の厚さ(Tb)よりも小さくてよい。この例では、第1端部(26a)の厚さ(Ta)は、中央断面(F0)における第1端部(26a)と同じ厚さに形成されている。すなわち、Ta=T0である。
図8は、永久磁石(26)の斜視図である。図8に示すように、永久磁石(26)は、第1端面(F1)から中央断面(F0)に至るまでの間で、第1端部(26a)の厚さ(Ta)が、Ta1からT0まで、線形的に減少するように構成されている。これは、中心線(L)を境界として外周ブロック(21a)を2つの部分に分けると、第1端面(F1)から中央断面(F0)に至るまでの間で、第1端部(26a)側の部分が徐々に小さくなるからである。なお、第2端部(26b)の厚さ(Tb)は、第1端面(F1)から中央断面(F0)に至るまでの間では変化せず、一定値(=T0)に形成されている。
また、永久磁石(26)は、第2端面(F2)から中央断面(F0)に至るまでの間では、第2端部(26b)の厚さ(Tb)が、Tb2からT0まで、線形的に減少するように構成されている。これは、中心線(L)を境界として外周ブロック(21a)を2つの部分に分けると、第2端面(F2)から中央断面(F0)に至るまでの間で、第2端部(26b)側の部分が徐々に小さくなるからである。なお、第1端部(26a)の厚さ(Ta)は、第2端面(F2)から中央断面(F0)に至るまでの間では変化せず、一定値(=T0)に形成されている。
なお、永久磁石(26)の本体部(26c)は、第1端面(F1)から第2端面(F2)まで、一定の厚さである。この例では、本体部(26c)の厚さは、T0である。以上の構成により、本実施形態では、それぞれの永久磁石(26)では、磁極の周方向両端部となる部分のうち、厚さが厚い方が、前記軸方向端面から前記軸方向中央に向って厚さが連続的に薄くなるように変化する。なお、回転子コア(21)を構成するコア部材(22)は、永久磁石(26)の形状に合わせて、矩形状部(24a,24b)の形状が個々に設定される。すなわち、この例では、それぞれのコア部材(22)は、それぞれの軸方向位置に応じて、矩形状部(24a,24b)の形状が設定されることになる。
〈本実施形態における効果〉
以上のように、本実施形態では、永久磁石(26)(ここではボンド磁石)にスキューが施された回転子(20)において、永久磁石(26)に作用する逆磁界の大きさが、永久磁石(26)の部位によって異なることに着目し、より大きな逆磁界が作用する部位の厚さが他の部位よりもより厚くなるように、永久磁石(26)の厚さが設定されている。これにより、単に、永久磁石全体の厚さを増やす場合と比べ、磁石用材料が少なくて済む。したがって、本実施形態では、永久磁石(26)を有した回転子(20)を備えた回転電気機械(1)において、コストアップを抑制しつつ、減磁対策を行うことが可能になる。
《実施形態1の変形例》
図9は、実施形態1の変形例に係る永久磁石(26)の斜視図である。この変形例では、中央断面(F0)を中心とした、所定の軸方向範囲(以下、永久磁石(26)におけるこの範囲を中央ブロック(26d)と呼ぶ)では、第1及び第2端部(26a,26b)の厚さが変化していない。この中央ブロック(26d)を軸方向から見ると、中心線(L)に対して線対称である。すなわち、第1端部(26a)と第2端部(26b)の厚さは同じであり、それらの厚さは、中央ブロック(26d)において想定される逆磁界によっては減磁しないように定められている。ここでは、第1及び第2端部(26a,26b)の厚さをT0とする。
また、永久磁石(26)は、第1端面(F1)から中央ブロック(26d)に至るまでの範囲(ここでは上部領域と呼ぶ)では、実施形態1と同様に、第1端部(26a)の厚さ(Ta)がTa1からT0に線形的に減少する。本変形例でも、中心線(L)を境界として外周ブロック(21a)を2つの部分に分けると、第1端面(F1)から中央ブロック(26d)に至るまでの間で、第1端部(26a)側の部分が徐々に小さくなるからである。なお、永久磁石(26)の上部領域では、第2端部(26b)の厚さ(Tb)は、第1端面(F1)から中央ブロック(26d)に至るまでの範囲では変化しない。
また、永久磁石(26)は、第2端面(F2)から中央ブロック(26d)に至るまでの範囲(ここでは下部領域と呼ぶ)は、実施形態1と同様に、第2端部(26b)の厚さ(Tb)がTb2からT0に線形的に減少する。これは、中心線(L)を境界として外周ブロック(21a)を2つの部分に分けると、第2端面(F2)から中央ブロック(26d)に至るまでの間で、第2端部(26b)側の部分が徐々に小さくなるからである。なお、下部領域では、第1端部(26a)の厚さ(Ta)は、第2端面(F2)から中央ブロック(26d)に至るまでの範囲では変化しない。
以上の通り、本変形例でも、永久磁石(26)においてより大きな逆磁界が作用する部位の厚さが他の部位よりもより厚くなるように設定される。したがって、本変形例でも、実施形態1と同様の効果を得ることが可能になる。
また、中央ブロック(26d)は、軸直交断面の形状が一定なので、回転子コア(21)において中央ブロック(26d)に相当する部分は、同じ形状のコア部材(22)を利用して構成できる。すなわち、本変形例では、回転子コア(21)を形成するコア部材(22)の種類を減らすことができ、製造がより容易になる。
《発明の実施形態2》
図10は、実施形態2に係る電動機(1)の回転子(20)を軸方向から見た平面図である。この図10では、正対状態における一方の端面(第1端面(F1))を図示してある。図10に示すように、回転子(20)は、ボンド磁石によって形成された、4つの永久磁石(26)を備えている。すなわち、回転子(20)は、4つの磁極を備えている。各磁極を構成する永久磁石(26)の軸直交断面の形状は、内周側が凸の円弧状である。そして、本実施形態でも、各磁極(すなわち永久磁石(26))には、いわゆるコギングトルクを低減するために、回転子(20)の軸方向位置に応じてスキューが施されている。そのため、図10の例では、第1端面(F1)は、永久磁石(26)は、中央断面(F0)よりも、左に回転した位置にある。
また、図10から分かるように、この例でも、回転子コア(21)には、永久磁石(26)よりも外周側に、磁路となり得る外周ブロック(21a)が存在する。正対状態において、外周ブロック(21a)の中央断面(F0)を見ると、中心線(L)を対称軸とする対称形である。そのため、正対状態では、中央断面(F0)において永久磁石(26)の周方向両端部(それぞれ第1端部(26a)、第2端部(26b)と呼ぶ)に作用する逆磁界の大きさは同じである。したがって、第1及び第2端部(26a,26b)の最先端の厚さを、第1端部(26a)や第2端部(26b)の「厚さ」と定義すると、中央断面(F0)では、永久磁石(26)の第1端部(26a)の厚さと、第2端部(26b)の厚さは同じでよい。中央断面(F0)における第1及び第2端部(26a,26b)の具体的な厚さは、中央断面(F0)において想定される逆磁界によっては減磁しないように定められる。ここでは、第1及び第2端部(26a,26b)の厚さをT0とする。
また、本実施形態でも第1端面(F1)では、正対状態では、外周ブロック(21a)は、中心線(L)を境界として該外周ブロック(21a)を2つの部分に分けると、第1端部(26a)側の部分の方が大きい。そのため、第1端面(F1)においては、ティース(13)から第1端部(26a)に向かう磁路の方が、ティース(13)から第2端部(26b)に向かう磁路よりも磁気抵抗が小さくなる。すなわち、正対状態では、第1端部(26a)側により大きな逆磁界が作用する。より詳しくは、第1端面(F1)においては、第1端部(26a)に作用する逆磁界は、中央断面(F0)における逆磁界よりも大きい。
本実施形態でも、永久磁石(26)において、より大きな逆磁界が作用する部位の厚さが他の部位よりもより厚くなるように、永久磁石(26)の厚さが設定されている。例えば、第1端面(F1)において、第1及び第2端部(26a,26b)の厚さ(Ta,Tb)を比較すると、中心線(L)から遠い方の第1端部(26a)の厚さ(Ta)の方が第2端部(26b)の厚さ(Tb)よりも厚く形成されている(図10参照)。第1端面(F1)では、第1端部(26a)の厚さ(Ta)は、正対状態において想定される逆磁界によっては減磁しないように定められている。ここで、Ta=Ta1とすると、Ta1>T0である。これは、第1端部(26a)に作用する逆磁界が、中央断面(F0)における逆磁界よりも大きいからである。そして、永久磁石(26)は、第1端部(26a)から磁極中心の方向に向かって厚さが徐々に減少するように構成されている。なお、この例では、磁極中心(Pc)における永久磁石(26)の厚さはT0である。
このように、第1端面(F1)における第1及び第2端部(26a,26b)の厚さを定めることで、第1端面(F1)における第1端部(26a)の減磁が抑制される。同様に、第1端面(F1)では、第2端部(26b)の厚さ(Tb)も、正対状態において想定される逆磁界によっては減磁しないように定められている。第1端面(F1)では、第2端部(26b)側に作用する逆磁界の大きさは、第1端部(26a)側に作用する逆磁界よりも小さいので、第2端部(26b)の厚さ(Tb)は、第1端部(26a)の厚さ(Ta)よりも小さくてよい。この例では、第2端部(26b)の厚さ(Tb)は、中央断面(F0)における第2端部(26b)の厚さと同じである。すなわち、Tb=T0である。
また、正対状態における第2端面(F2)では、永久磁石(26)の本体部(26c)は、中央断面(F0)(図5参照)における本体部(26c)よりも、右に回転した位置にある。そのため、正対状態では、外周ブロック(21a)は、中心線(L)を境界として外周ブロック(21a)を2つの部分に分けると第2端部(26b)側の方が大きい。
したがって、正対状態における第2端面(F2)では、ティース(13)から第2端部(26b)に向かう磁路の方が、ティース(13)から第1端部(26a)に向かう磁路よりも磁気抵抗が小さくなる。すなわち、正対状態では、第2端部(26b)側により大きな逆磁界が作用する。より詳しくは、第2端部(26b)に作用する逆磁界は、中央断面(F0)における逆磁界よりも大きい。
第2端面(F2)でも、より大きな逆磁界が作用する部位の厚さが他の部位よりもより厚くなるように、永久磁石(26)の厚さが設定されている。具体的に、第2端面(F2)において、第1及び第2端部(26a,26b)の厚さ(Ta,Tb)を比較すると、中心線(L)から遠い方の第2端部(26b)の厚さ(Tb)の方がもう一方の第1端部(26a)の厚さ(Ta)よりも厚く形成されている。すなわち、第2端面(F2)における第1端部(26a)と第2端部(26b)の厚さの大小関係は、第1端面(F1)における大小関係と逆である。具体的に、第2端面(F2)では、第2端部(26b)の厚さ(Tb)は、正対状態において想定される逆磁界によっては減磁しないように定められている(Tb=Tb2とする)。なお、Tb2>T0である。これは、第2端部(26b)に作用する逆磁界が、中央断面(F0)における逆磁界よりも大きいからである。そして、永久磁石(26)では、第2端部(26b)から磁極中心の方向に向かって厚さが徐々に減少する。
このように、第2端面(F2)における第1及び第2端部(26a,26b)の厚さを定めることで、第2端面(F2)における第2端部(26b)の減磁が抑制される。同様に、第2端面(F2)では、第1端部(26a)の厚さ(Ta)も、正対状態において想定される逆磁界によっては減磁しないように定められている。第2端面(F2)では、第1端部(26a)側に作用する逆磁界の大きさは、第2端部(26b)側に作用する逆磁界よりも小さいので、第1端部(26a)の厚さ(Ta)は、第2端部(26b)の厚さ(Tb)よりも小さくてよい。この例では、第1端部(26a)の厚さ(Ta)は、中央断面(F0)における第1端部(26a)と同じ厚さに形成されている。すなわち、Ta=T0である。
また、この例でも、永久磁石(26)は、第1端面(F1)から中央断面(F0)に至るまでの間で、第1端部(26a)の厚さ(Ta)は、Ta1からT0まで、線形的に減少するように構成されている。これは、中心線(L)を境界として外周ブロック(21a)を2つの部分に分けると、第1端面(F1)から中央断面(F0)に至るまでの間で、第1端部(26a)側の部分が徐々に小さくなるからである。なお、第2端部(26b)の厚さ(Tb)は、第1端面(F1)から中央断面(F0)に至るまでの間では変化せず、一定値(=T0)に形成されている。
また、第2端面(F2)から中央断面(F0)に至るまでの間では、第2端部(26b)の厚さ(Tb)が、Tb2からT0まで、線形的に減少するように構成されている。これは、中心線(L)を境界として外周ブロック(21a)を2つの部分に分けると、第2端面(F2)から中央断面(F0)に至るまでの間で、第2端部(26b)側の部分が徐々に小さくなるからである。なお、第1端部(26a)の厚さ(Ta)は、第2端面(F2)から中央断面(F0)に至るまでの間では変化せず、一定値(=T0)に形成されている。
〈本実施形態における効果〉
以上のように、本実施形態でも、永久磁石(26)(ここではボンド磁石)にスキューが施された回転子(20)において、永久磁石(26)に作用する逆磁界の大きさが、永久磁石(26)の部位によって異なることに着目し、より大きな逆磁界が作用する部位の厚さが他の部位よりもより厚くなるように、永久磁石(26)の厚さが設定されている。これにより、単に、永久磁石全体の厚さを増やす場合と比べ、磁石用材料が少なくて済む。したがって、本実施形態でも、永久磁石(26)を有した回転子(20)を備えた回転電気機械(1)において、コストアップを抑制しつつ、減磁対策を行うことが可能になる。
《実施形態2の変形例》
図11は、実施形態2の変形例に係る電動機(1)の回転子(20)を軸方向から見た平面図である。図11には、正対状態における一方の端面(第1端面(F1))を図示してある。この電動機(1)では、複数に分割された永久磁石(26)によって各磁極が形成されている。具体的に、この電動機(1)は、実施形態2の電動機(1)における各磁極に、補強用のブリッジ(21b)を設けたものである。ブリッジ(21b)は、回転子コア(21)における永久磁石(26)よりも内周側の部分と、外周ブロック(21a)とを連結している。
すなわち、各磁極は、内周側が凸の円弧状の断面を有した永久磁石(26)を2つ用いて形成されている。これらの永久磁石(26)には、実施形態2と同様に、スキューが施されている。また、永久磁石(26)は、いわゆるボンド磁石である。この電動機(1)でも、それぞれの永久磁石(26)は、正対状態で、回転子(20)の軸方向端面において、磁極の周方向両端部となる部分同士の厚さを比べた場合に、磁極中心(Pc)から遠い方が厚くなるように構成されている。
例えば、正対状態における第1端面(F1)では、図11に示すように、各磁極において、左に位置する永久磁石(26)の最外周端の厚さ(Ta)の方が、もう一方の永久磁石(26)の最外周端の厚さ(Tb)よりも厚く形成されている。この例では、Ta=Ta1>T0、且つTb=T0である。これにより、単に、永久磁石全体の厚さを増やす場合と比べ、磁石用材料が少なくて済む。したがって、本実施形態でも、永久磁石(26)を有した回転子(20)を備えた回転電気機械(1)において、コストアップを抑制しつつ、減磁対策を行うことが可能になる。
《参考例》
なお、スキュー構造実現のためのコア部材(22)のずらし方(重ね方)は例示である。例えば、コア部材(22)間の周方向のずれ角度は等間隔である必要はない。また、所定枚数を一つの単位として周方向の位置をずらすようにしてもよい。例えば、磁石用スロットの周方向の位置が同位相となるように積み重ねたX枚(Xは自然数)のコア部材(22)を一つのグループとし、そのグループ単位(X枚単位)で周方向の位相をずらしながら、複数のグループを積み重ねるのである。こうすることで、いわゆる段スキュー構造(回転子を複数の段にわけ、段毎に磁極中心の位置をずらした構造)を実現できる。
段スキュー構造に対しては、各永久磁石(26)は、各段において、磁極の周方向両端部となる部分同士の厚さを比べた場合に、磁極中心(Pc)から遠い方が厚くなるように構成される。また、永久磁石(26)は、磁極の周方向両端部となる部分のうち、厚さが厚い方が、回転子(20)の軸方向端面から軸方向中央に向って、段毎に厚さが薄くなるよう構成される。すなわち、この構成では、各磁極において、永久磁石(26)の端部(26a,26b)の厚さが段階的に変化するのである。この構成により、実施形態1等と同様に、コストアップを抑制しつつ、減磁対策を行うことが可能になる。
なお、段スキューを採用すると、回転子(20)の永久磁石(26)として、いわゆる焼結磁石を容易に採用できる。勿論、ボンド磁石を用いて、段スキュー構造を実現してもよい。
また、段スキューを採用することで、回転子コア(21)を形成するコア部材(22)の種類を減らすことができ、製造がより容易になる。
《その他の実施形態》
また、各実施形態や各変形例で説明した回転子(20)の構造は、電動機の回転子の他に、発電機の回転子にも適用できる。
本発明は、回転電気機械として有用である。
1 電動機(回転電気機械)
10 固定子
13 ティース
20 回転子
26 永久磁石
F0 軸直交断面
L 中心線
Mc 周方向中心