JP2019003464A - 半導体装置、演算回路及び電子機器 - Google Patents

半導体装置、演算回路及び電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】新規な半導体装置の提供。【解決手段】メモリセルと、差分回路と、を有し、メモリセルは、第1の回路と、第2の回路と、を有し、第1の回路及び第2の回路は、第1のデータを格納する機能と、第1のデータと第2のデータの乗算を行う機能と、を有し、第1のデータの値が正である場合、第1のデータの反転データが第2の回路に格納され、第1のデータの値が負である場合、第1のデータが第1の回路に格納され、第1の回路は、第1の配線を介して差分回路と電気的に接続され、第2の回路は、第2の配線を介して差分回路と電気的に接続され、差分回路は、第1の配線に流れる電流と、第2の配線に流れる電流と、の差に相当する電流を出力する機能を有する半導体装置。【選択図】図1

Description

本発明の一態様は、半導体装置、演算回路及び電子機器に関する。
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、撮像装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、表示システム、電子機器、照明装置、入力装置、入出力装置、それらの駆動方法、又はそれらの製造方法、を一例として挙げることができる。
また、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指す。トランジスタ、半導体回路、演算装置、記憶装置等は半導体装置の一態様である。また、表示装置、撮像装置、電気光学装置、発電装置(薄膜太陽電池、有機薄膜太陽電池等を含む)、及び電子機器は半導体装置を有している場合がある。
IoT(Internet of things)、人工知能(AI:Artificial Intelligence)などの情報技術の発展により、扱われるデータ量が増大の傾向を示している。電子機器がIoT、AIなどの情報技術を利用するためには、データを大量に記憶することのできる半導体装置が求められている。さらに、電子機器を快適に使用するためには、高速に処置ができる半導体装置が求められている。
特許文献1では、積和演算を行うデジタル回路において、メモリの使用方法により回路規模が削減された積和演算回路の構成について開示している。
特開1997−319730号公報
本発明の一態様は、新規な半導体装置の提供を課題とする。又は、本発明の一態様は、消費電力の小さい半導体装置の提供を課題とする。又は、本発明の一態様は、面積の小さい半導体装置の提供を課題とする。又は、本発明の一態様は、信頼性の高い半導体装置の提供を課題とする。
なお、本発明の一態様は、必ずしも上記の課題の全てを解決する必要はなく、少なくとも一の課題を解決できるものであればよい。また、上記の課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。これら以外の課題は、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
本発明の一態様に係る半導体装置は、メモリセルと、差分回路と、を有し、メモリセルは、第1の回路と、第2の回路と、を有し、第1の回路及び第2の回路は、第1のデータを格納する機能と、第1のデータと第2のデータの乗算を行う機能と、を有し、第1のデータの値が正である場合、第1のデータの反転データが第2の回路に格納され、第1のデータの値が負である場合、第1のデータが第1の回路に格納され、第1の回路は、第1の配線を介して差分回路と電気的に接続され、第2の回路は、第2の配線を介して差分回路と電気的に接続され、差分回路は、第1の配線に流れる電流と、第2の配線に流れる電流と、の差に相当する電流を出力する機能を有する半導体装置である。
また、本発明の一態様に係る半導体装置において、第1の回路は、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、第1の容量素子と、を有し、第2の回路は、第3のトランジスタと、第4のトランジスタと、第2の容量素子と、を有し、第1のトランジスタのソース又はドレインの一方は、第2のトランジスタのゲート及び第1の容量素子と電気的に接続され、第3のトランジスタのソース又はドレインの一方は、第4のトランジスタのゲート及び第2の容量素子と電気的に接続され、第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、第1の配線と電気的に接続され、第4のトランジスタのソース又はドレインの一方は、第2の配線と電気的に接続され、第1のトランジスタ及び第3のトランジスタは、チャネル形成領域に酸化物半導体を有していてもよい。
また、本発明の一態様に係る半導体装置において、第2のトランジスタのゲートには、参照データに対応する電位に、第1のデータに対応する電位を加算した電位が保持され、第4のトランジスタのゲートには、参照データに対応する電位から、第1のデータに対応する電位を差し引いた電位が保持されてもよい。
また、本発明の一態様に係る半導体装置は、オフセット回路を有し、オフセット回路は、第3の配線を介して差分回路と電気的に接続され、オフセット回路は、第1の電流と第2の電流の差分を検出する機能を有し、第1の電流は、第2のデータがメモリセルに入力されていないときに、第3の配線に流れる電流であり、第2の電流は、第2のデータがメモリセルに入力されているときに、第3の配線に流れる電流であってもよい。
また、本発明の一態様に係る演算回路は、上記の半導体装置と、活性化関数回路と、を有し、半導体装置により、ニューラルネットワークの積和演算が行われる演算回路である。
また、本発明の一態様に係る電子機器は、上記の演算回路を有する電子機器である。
本発明の一態様により、新規な半導体装置を提供することができる。又は、本発明の一態様により、消費電力の小さい半導体装置を提供することができる。又は、本発明の一態様により、面積の小さい半導体装置を提供することができる。又は、本発明の一態様により、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。また、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。これら以外の効果は、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
半導体装置の構成例を示す図。 メモリセルの構成例を示す図。 メモリセルの構成例を示す図。 メモリセルの構成例を示す図。 電源回路の構成例を示す図。 電源回路の構成例を示す図。 差分回路の構成例を示す図。 オフセット回路の構成例を示す図。 タイミングチャート。 ニューラルネットワークの構成例を示す図。 演算回路の構成例を示す図。 半導体装置の構成例を示す図。 半導体装置の構成例を示す図。 半導体装置の構成例を示す図。 半導体装置の構成例を示す図。 半導体装置の構成例を示す図。 電子機器の構成例を示す図。 電子機器の構成例を示す図。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態における説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
また、本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い表現での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む)、酸化物半導体(Oxide Semiconductorまたは単にOSともいう)などに分類される。例えば、トランジスタのチャネル形成領域に金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、金属酸化物が増幅作用、整流作用、及びスイッチング作用の少なくとも1つを有する場合、当該金属酸化物を、金属酸化物半導体(metal oxide semiconductor)、略してOSと呼ぶことができる。以下、チャネル形成領域に金属酸化物を含むトランジスタを、OSトランジスタとも表記する。
また、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。金属酸化物の詳細については後述する。
また、本明細書等において、XとYとが接続されている、と明示的に記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが機能的に接続されている場合と、XとYとが直接接続されている場合とが、本明細書等に開示されているものとする。したがって、所定の接続関係、例えば、図又は文章に示された接続関係に限定されず、図又は文章に示された接続関係以外のものも、図又は文章に記載されているものとする。ここで、X、Yは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。
XとYとが直接的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)が、XとYとの間に接続されていない場合であり、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)を介さずに、XとYとが、接続されている場合である。
XとYとが電気的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、スイッチは、オンオフが制御される機能を有している。つまり、スイッチは、オン状態、又は、オフ状態になり、電流を流すか流さないかを制御する機能を有している。又は、スイッチは、電流を流す経路を選択して切り替える機能を有している。なお、XとYとが電気的に接続されている場合は、XとYとが直接的に接続されている場合を含むものとする。
XとYとが機能的に接続されている場合の一例としては、XとYとの機能的な接続を可能とする回路(例えば、論理回路(インバータ、NAND回路、NOR回路など)、信号変換回路(DA変換回路、AD変換回路、ガンマ補正回路など)、電位レベル変換回路(電源回路(昇圧回路、降圧回路など)、信号の電位レベルを変えるレベルシフタ回路など)、電圧源、電流源、切り替え回路、増幅回路(信号振幅又は電流量などを大きく出来る回路、オペアンプ、差動増幅回路、ソースフォロワ回路、バッファ回路など)、信号生成回路、記憶回路、制御回路など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、一例として、XとYとの間に別の回路を挟んでいても、Xから出力された信号がYへ伝達される場合は、XとYとは機能的に接続されているものとする。なお、XとYとが機能的に接続されている場合は、XとYとが直接的に接続されている場合と、XとYとが電気的に接続されている場合とを含むものとする。
なお、XとYとが電気的に接続されている、と明示的に記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の素子又は別の回路を挟んで接続されている場合)と、XとYとが機能的に接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の回路を挟んで機能的に接続されている場合)と、XとYとが直接接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の素子又は別の回路を挟まずに接続されている場合)とが、本明細書等に開示されているものとする。つまり、電気的に接続されている、と明示的に記載されている場合は、単に、接続されている、とのみ明示的に記載されている場合と同様な内容が、本明細書等に開示されているものとする。
また、図面上は独立している構成要素同士が電気的に接続しているように図示されている場合であっても、1つの構成要素が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合もある。例えば配線の一部が電極としても機能する場合は、一の導電膜が、配線の機能、及び電極の機能の両方の構成要素の機能を併せ持っている。したがって、本明細書における電気的に接続とは、このような、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合も、その範疇に含める。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る半導体装置について説明する。本発明の一態様に係る半導体装置は、積和演算を行う機能を有する。
<半導体装置の構成例>
図1に、半導体装置10の構成例を示す。半導体装置10は、第1のデータと第2のデータの積和演算を行う機能を有する。なお、第1のデータ及び第2のデータはそれぞれ、アナログデータ又は多値のデータ(離散的なデータ)とすることができる。
半導体装置10は、セルアレイCA、電源回路PC、差分回路DC、及びオフセット回路OFSTを有する。
[セルアレイ]
セルアレイCAは、複数のメモリセルMEM及び複数のメモリセルMEM0を有する。図1には、セルアレイCAがm行n列(m,nは1以上の整数)のメモリセルMEM(MEM[1,1]乃至[m,n])と、m個のメモリセルMEM0(MEM0[1]乃至[m])を有する構成例を示している。メモリセルMEMは第1のデータを格納する機能を有し、メモリセルMEM0は参照データを格納する機能を有する。なお、参照データは積和演算の結果の抽出に用いられるデータである。参照データは第1のデータと同様、アナログデータ又は多値のデータとすることができる。
また、メモリセルMEMは、回路MP及び回路MMを有する。以下、メモリセルMEM[i,j](iは1以上m以下の整数、jは1以上n以下の整数)が有する回路MPと回路MMを、それぞれ回路MP[i,j]、回路MM[i,j]と表記する。回路MP[i,j]は、配線WL[i]、配線XL[i]、配線BLp[j]、及び配線YLp[j]と接続されている。回路MM[i,j]は、配線WL[i]、配線XL[i]、配線BLm[j]、及び配線YLm[j]と接続されている。また、メモリセルMEM0[i]は、配線WL[i]、配線XL[i]、配線BL0、及び配線YL0と接続されている。
回路MP及び回路MMはそれぞれ、第1のデータを格納する機能を有する。また、回路MP及び回路MMには配線XLを介して第2のデータが供給され、回路MP及び回路MMは、第1のデータと第2のデータの乗算を行う機能を有する。すなわち、回路MP及び回路MMは、記憶回路としての機能と乗算回路としての機能を有する。
なお、第1のデータがアナログデータである場合、回路MP及び回路MMはアナログメモリとしての機能を有する。また、第1のデータが多値データである場合、回路MP及び回路MMは多値メモリとしての機能を有する。
回路MPによる乗算の結果は、回路MPと配線YLpの間を流れる電流に反映され、回路MMによる乗算の結果は、回路MMと配線YLmの間を流れる電流に反映される。そして、配線YLpを流れる電流には、同じ列に属するm個の回路MPに流れる電流を足し合わせた結果が反映される。また、配線YLmを流れる電流には、同じ列に属するm個の回路MMに流れる電流を足し合わせた結果が反映される。これにより、セルアレイCAによって第1のデータと第2のデータの積和演算を行うことができる。
図2に、メモリセルMEM及びメモリセルMEM0の具体的な構成例を示す。メモリセルMEMは、回路MPと回路MMのペアによって構成されている。回路MP、回路MM、及びメモリセルMEM0は、トランジスタTr1、トランジスタTr2、及び容量素子C1を有する。なお、図2には代表例としてメモリセルMEM[1,1]、[2,1]及びメモリセルMEM0[1]、[2]を示しているが、他のメモリセルMEM及びメモリセルMEM0にも同様の構成を用いることができる。また、ここではトランジスタTr1及びトランジスタTr2がnチャネル型のトランジスタである場合について説明する。
トランジスタTr1のゲートは配線WLと接続され、ソース又はドレインの一方はトランジスタTr2のゲート及び容量素子C1の一方の電極と接続され、ソース又はドレインの他方は配線BLp、配線BLm、又は配線BL0のいずれか一と接続されている。トランジスタTr2のソース又はドレインの一方は、配線YLp、配線YLm、又は配線YL0のいずれか一と接続され、ソース又はドレインの他方は所定の電位が供給される配線VRと接続されている。容量素子C1の他方の電極は、配線XLと接続されている。なお、トランジスタTr1のソース又はドレインの一方、トランジスタTr2のゲート、及び容量素子C1の一方の電極と接続されたノードを、ノードFNとする。また、回路MP[i,j]、回路MM[i,j]、メモリセル[i]のノードFNを、それぞれFNp[i,j]、FNm[i,j]、FN0[i]とする。
ここでは一例として、配線VRに低電源電位(接地電位など)が供給されている場合について説明する。以下、回路MP[i,j]と配線YLp[j]の間を流れる電流をIMP[i,j]と表記し、回路MM[i,j]と配線YLm[j]の間を流れる電流をIMM[i,j]と表記する。また、メモリセルMEM0[i]と配線BY0の間を流れる電流をIMEM0[i]と表記する。
ノードFNp、ノードFNm、ノードFN0はそれぞれ、回路MP、回路MM、メモリセルMEM0の保持ノードとして機能する。具体的には、ノードFNp及びノードFNmには第1のデータが保持され、ノードFN0には参照データが保持される。ここで、トランジスタTr1はノードFNp、FNm、FN0の電位を保持する機能を有するため、トランジスタTr1のオフ電流は小さいことが好ましい。よって、トランジスタTr1としてOSトランジスタを用いることが好ましい。
酸化物半導体のバンドギャップは3.0eV以上であるため、OSトランジスタは熱励起によるリーク電流が小さく、またオフ電流が極めて小さい。なお、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態のときにソースとドレインとの間に流れる電流をいう。トランジスタのチャネル形成領域に用いられる酸化物半導体は、インジウム(In)および亜鉛(Zn)の少なくとも一方を含む酸化物半導体であることが好ましい。このような酸化物半導体としては、In−M−Zn酸化物(元素Mは、例えばAl、Ga、YまたはSn)が代表的である。電子供与体(ドナー)となる水分、水素などの不純物を低減し、かつ酸素欠損も低減することで、酸化物半導体をi型(真性)、又は実質的にi型にすることができる。このような酸化物半導体は、高純度化された酸化物半導体と呼ぶことができる。なお、OSトランジスタの詳細については、実施の形態3で説明する。
OSトランジスタはオフ電流が極めて小さいため、メモリセルMEM及びメモリセルMEM0に用いるトランジスタとして好適である。OSトランジスタは例えば、チャネル幅1μmあたりのオフ電流を、100zA/μm以下、又は10zA/μm以下、又は1zA/μm以下、又は10yA/μm以下とすることができる。OSトランジスタをメモリセルMEM及びメモリセルMEM0に用いることにより、保持ノードの電位の変動を抑えることができるため、積和演算の精度を向上させ、半導体装置10の信頼性を向上させることができる。また、保持ノードの電位をリフレッシュする動作の頻度を低く抑えることができるため、半導体装置10の消費電力を低減することができる。
トランジスタTr2は特に限定されず、OSトランジスタの他、チャネル形成領域にシリコン(単結晶シリコンなど)を含むトランジスタ(以下、Siトランジスタともいう)などを用いることができる。また、トランジスタTr2はnチャネル型であってもpチャネル型であってもよい。トランジスタTr1、Tr2の両方にnチャネル型のOSトランジスタを用いる場合、メモリセルMEM及びメモリセルMEM0を単極性回路によって構成することができる。
ここで、積和演算には、ノードFNに保持された電位(第1のデータに相当)と、配線XLに供給された電位(第2のデータに相当)の乗算結果が用いられる。この乗算結果は、トランジスタTr2を流れる電流値から得ることができる。乗算結果を得る過程を、図2における回路MP[1,1]とメモリセルMEM0[1]を例にとって説明する。
まず、回路MP[1,1]に第1のデータが書き込まれ、メモリセルMEM0に参照データが書き込まれる。ここでは一例として、メモリセルMEM0のノードFN0[1]には電位Wが供給され、回路MP[1,1]のノードFNp[1,1]には電位W+W[1,1]が供給される場合を考える。ここで、電位Wは参照データに相当する電位であり、電位W[1,1]は第1のデータに相当する電位である。
そして、配線XL[1]に電位VX[1]が供給される。電位VX[1]は、第2のデータに相当する電位である。このとき、回路MP[1,1]、及びメモリセルMEM0[1]のそれぞれの容量素子C1には電位VX[1]が供給され、容量結合によりトランジスタTr2のゲートの電位が上昇する。
トランジスタTr2のゲートの電位の変化量は、配線XL[1]の電位の変化量に、メモリセルの構成によって決まる容量結合係数を乗じた値となる。容量結合係数は、容量素子C1の容量、トランジスタTr2のゲート容量、及び寄生容量などによって算出される。以下では便宜上、配線XLの電位の変化量とトランジスタTr2のゲートの電位の変化量が同じ、すなわち容量結合係数が1であるとして説明する。
このとき、回路MP[1,1]のトランジスタTr2に流れる電流IMP[1,1]、及び、メモリセルMEM0[1]のトランジスタTr2に流れる電流IMEM0[1]は、それぞれ式(1)、(2)で表される。
ここで、βはトランジスタTr2の構造によって定まる定数である。また、VthはトランジスタTr2のしきい値電圧である。そして、電流IMP[1,1]と電流IMEM0[1]の差分電流ΔI[1]は、式(3)で表される。
ここで、VX[1]=0であるときの差分電流ΔI[1]をオフセット電流Ioffsetとすると、オフセット電流Ioffsetは式(4)で表される。
そして、式(3)の電流ΔI[1]から式(4)のオフセット電流Ioffsetを差し引くことにより、式(5)が得られる。
式(5)は、第1のデータに相当する電位W[1,1]と、第2のデータに相当する電位VX[1]との積に対応する。したがって、電流ΔI[1]からオフセット電流Ioffsetを差し引いた値を検出することにより、第1のデータと第2のデータの乗算結果を得ることができる。そして、回路MP[1,1]と同じ列に属する回路MP[2,1]乃至[m,1]に流れる電流と、メモリセルMEM0[1]と同じ列に属するメモリセルMEM0[2]乃至[m]に流れる電流も考慮すると、式(5)は以下のように一般化される。
このように、回路MP[1,1]乃至[m,1]に流れる電流の合計値と、メモリセルMEM0[1]乃至[m]に流れる電流の合計値との差から、オフセット電流を差し引くことにより、第1のデータと第2のデータの積和演算の結果を得ることができる。
ここで、回路MP[1,1]を流れる電流IMP[1,1]、すなわち消費電流を考える。第1のデータに相当する電位W[1,1]、及び第2のデータに相当する電位VX[1]が正と負の両方の値を取り得る場合、回路MP[1,1]の消費電流の変動が大きくなる。例えば、電位W[1,1]の範囲が電位VX[1]の範囲よりも大きい場合を想定し、電位W[1,1]の範囲が−(3/4)Wから+(3/4)W、電位VX[1]の範囲が−(1/4)Wから+(1/4)Wであり、W≫Vthと仮定する。このとき、消費電流の範囲は式(1)より、おおよそ0から4βW 程度となる。消費電力は、電位W[1,1]と電位VX[1]が共に負の値であるときに最小となり、共に正の値であるときに最大となる。
このように、回路MP[1,1]の消費電流は、第1のデータと第2のデータの値に応じて変動し得る。そして、消費電力の変動量が大きくなると、セルアレイCAに局所的な消費電流が発生し、回路動作が不安定になる場合がある。
そこで、本発明の一態様においては図2に示すように、メモリセルMEMを回路MPと回路MMのペアによって構成する。そして、第1のデータの値が正である場合は、第1のデータの反転データが回路MMに格納され、第1のデータの値が負である場合は、第1のデータが回路MPに格納される。これにより、メモリセルMEMにおける消費電流の変動を抑制することができ、半導体装置10の消費電力の低減、又は信頼性の向上を図ることができる。以下、図3を用いて詳細を説明する。
図3に、回路MP及び回路MMの動作の具体的を示す。なお、図3にはメモリセルMEM[1,1]、[2,1]を示しているが、他のメモリセルMEMも同様に動作させることができる。
ここでは一例として、メモリセルMEM[1,1]に第1のデータとして正の電位W[1,1]が格納され、メモリセルMEM[2,1]に第1のデータとして負の電位W[2,1]が格納される場合について説明する。
〔第1のデータの値が正である場合〕
第1のデータに相当する電位W[1,1]の値が正である場合、図3(A)に示すように、ノードFNp[1,1]にはメモリセルMEM0[1](図示せず)と同様に電位Wが格納される。また、ノードFNm[1,1]には、参照データに対応する電位Wから、第1のデータに対応する電位W[1,1]を差し引いた電位(電位W−W[1,1])が格納される。つまり、第1のデータの反転データが格納される。そして、第2のデータに相当する電位Vx[1]が、配線XL[1]を介して回路MP[1,1]及び回路MM[1,1]に供給される。
このとき、回路MP[1,1]のトランジスタTr2に流れる電流IMP[1,1]、及び、回路MM[1,1]のトランジスタTr2に流れる電流IMM[1,1]は、それぞれ式(7)、(8)で表される。
また、回路MP[1,1]を流れる電流IMP[1,1]とメモリセルMEM0[1]を流れる電流IMEM0[1]の差をΔIp[1]とし、回路MM[1,1]を流れる電流IMM[1,1]とメモリセルMEM0[1]を流れる電流IMEM0[1]の差をΔIm[1]とすると、ΔIp[1]とΔIm[1]の差分に相当する電流ΔI´[1]は式(9)で表される。
また、VX[1]=0であるときの電流ΔI´[1]をオフセット電流Ioffsetとすると、オフセット電流Ioffsetは式(10)で表される。
そして、式(9)の差分電流ΔI´[1]から式(10)のオフセット電流Ioffsetを差し引くことにより、式(11)が得られる。
式(11)は、第1のデータに相当する電位W[1,1](>0)と、第2のデータに相当する電位VX[1]の乗算を示している。このように、差分電流ΔI´[1]からオフセット電流Ioffsetを差し引くことにより、第1のデータと第2のデータの乗算結果を得ることができる。
ここで、回路MP[1,1]と回路MM[1,1]の消費電流を考える。例えば、電位W[1,1]の範囲が電位VX[1]の範囲よりも大きい場合を想定し、電位W[1,1]が+(3/4)Wまでの正の値、電位VX[1]の範囲が−(1/4)Wから+(1/4)Wであり、W≫Vthと仮定する。このとき、メモリセルMEM[1,1]の消費電流の範囲は式(7)、(8)より、おおよそ(9/16)βW から(50/16)βW 程度となる。よって、式(1)と比較して、消費電流の範囲を小さくすることができる。また、消費電流の最大値も小さくすることができる。
〔第1のデータの値が負である場合〕
第1のデータに相当する電位W[2,1]の値が負(W[2,1]=−|W[2,1]|)である場合、図3(B)に示すように、ノードFNp[2,1]には、参照データに対応する電位Wに、第1のデータに対応する電位W[2,1]を加算した電位(W+W[2,1]=W−|W[2,1]|)が格納される。つまり、第1のデータが格納される。また、ノードFNm[2,1]にはメモリセルMEM0[2](図示せず)と同様に電位Wが格納される。そして、第2のデータに相当する電位Vx[2]が、配線XL[2]を介して回路MP[2,1]及び回路MM[2,1]に供給される。
このとき、回路MP[2,1]のトランジスタTr2に流れる電流IMP[2,1]、及び、回路MM[2,1]のトランジスタTr2に流れる電流IMP[2,1]は、それぞれ式(12)、(13)で表される。
また、回路MP[2,1]を流れる電流IMP[2,1]とメモリセルMEM0[2]を流れる電流IMEM0[2]の差をΔIp[1]とし、回路MM[2,1]を流れる電流IMM[2,1]とメモリセルMEM0[2]を流れる電流IMEM0[2]の差をΔIm[1]とすると、ΔIp[1]とΔIm[1]の差分電流ΔI´[1]は式(14)で表される。
また、VX[1]=0であるときの差分電流ΔI´[1]をオフセット電流Ioffsetとすると、オフセット電流Ioffsetは式(15)で表される。
そして、式(14)の差分電流ΔI´[1]から式(15)のオフセット電流Ioffsetを差し引くことにより、式(16)が得られる。
ここで、W[2,1]<0であるため、式(16)は以下のように表される。
式(17)は、第1のデータに相当する電位W[2,1](<0)と、第2のデータに相当する電位VX[2]との乗算を示している。このように、差分電流ΔI´[1]からオフセット電流Ioffsetを差し引くことにより、第1のデータと第2のデータの乗算を行うことができる。
ここで、回路MP[2,1]と回路MM[2,1]の消費電流を考える。例えば、電位W[2,1]の範囲が電位VX[2]の範囲よりも大きい場合を想定し、電位W[2,1]が−(3/4)Wまでの負の値、電位VX[2]の範囲が−(1/4)Wから+(1/4)Wであり、W≫Vthと仮定する。このとき、メモリセルMEM[2,1]の消費電流の範囲は式(12)、(13)より、おおよそ(9/16)βW から(50/16)βW 程度となる。よって、式(1)と比較して、消費電流の範囲を小さくすることができる。また、消費電流の最大値も小さくすることができる。
上記のように、第1のデータが正である場合は、第1のデータの反転データが回路MMに格納され、回路MMによって乗算が行われる。一方、第1のデータが負である場合は、第1のデータが回路MPに格納され、回路MPによって乗算が行われる。このような構成を用いることにより、メモリセルMEMを流れる電流の変動を抑え、消費電流の局所的な発生を防止することができる。
そして、メモリセルMEM[1,1]、[1,2]と同じ列に属するメモリセルMEM[3,1]乃至[m,1]を流れる電流を考慮すると、式(11)及び式(17)は以下のように一般化できる。
式(18)は、第1のデータに相当する電位Wと、第2のデータに相当する電位Vとの積和演算を示している。このように、第1のデータと第2のデータの積和演算を、回路MPと回路MMのペアによって構成されたメモリセルMEMを用いて行うことができる。
なお、メモリセルMEMの構成は図2に示すものに限られない。例えば、回路MP及び回路MMはそれぞれさらに他の素子(スイッチ、容量素子など)を有していてもよいし、トランジスタTr1及び/又はトランジスタTr2は一対のゲートを有していてもよい。トランジスタが一対のゲートを有する場合、一方のゲートを第1のゲート、フロントゲート、又は単にゲートと呼ぶことがあり、他方のゲートを第2のゲート、又はバックゲートと呼ぶことがある。
図4(A)に、トランジスタTr1がバックゲートを有する構成例を示す。トランジスタTr1のバックゲートは、配線BGLと接続されている。配線BGLからトランジスタTr1のバックゲートに所定の電位を供給することにより、トランジスタTr1の閾値電圧を制御することができる。例えば、トランジスタTr1の閾値電圧を0Vより大きくすることができる。これにより、オフ電流を低減することができる。また、トランジスタTr1のバックゲートは、トランジスタTr1のフロントゲートと接続されていてもよい。
また、回路MPと回路MMは、一部の配線を共有してもよい。例えば図4(B)に示すように、配線BLpと配線BLmの代わりに、回路MP及び回路MMと接続された配線BLを設けることができる。この場合、回路MPのトランジスタTr1のゲートと、回路MMのトランジスタTr1のゲートは、それぞれ異なる配線WL(WLp、WLm)と接続される。そして、回路MPと回路MMの書き込みは交互に行われる。このように配線を共有化することにより、メモリセルMEMと接続された配線の数を減らすことができ、半導体装置10の面積を縮小することができる。
[電源回路]
図1に示す電源回路PCは、配線YLp[1]乃至[n]、YLm[1]乃至[n]、及び配線YL0と接続されている。電源回路PCは、配線YLp[1]乃至[n]、YLm[1]乃至[n]、及び配線YL0に、所定の電流を供給する機能を有する。
図5に、電源回路PCの構成例を示す。電源回路PCは、出力回路OUTp[1]乃至[n]、出力回路OUTm[1]乃至[n]、及び出力回路OUT0を有する。出力回路OUTp[1]乃至[n]は、配線YLp[1]乃至[n]に電流を供給する機能を有する。出力回路OUTm[1]乃至[n]は、配線YLm[1]乃至[n]に電流を供給する機能を有する。出力回路OUT0は、配線YL0に電流を供給する機能を有する。なお、図5には代表例として、出力回路OUTp[1]及び出力回路OUTm[1]を示しているが、出力回路OUTp[2]乃至[n]、及び出力回路OUTm[2]乃至[n]にも同様の構成を用いることができる。また、図中のVDDは高電源電位を表し、VSSは低電源電位を表す。
出力回路OUTp[1]および出力回路OUTm[1]は、それぞれトランジスタTr11、トランジスタTr12、トランジスタTr13、容量素子C11を有する。出力回路OUT0は、トランジスタTr14、トランジスタTr15、トランジスタTr16および容量素子C12を有する。なお、トランジスタTr11及びトランジスタTr14は、一対のゲートを有する。
出力回路OUTp[1]は、配線GW、配線FGp、及び配線YLp[1]と接続されている。出力回路OUTm[1]は、配線GW、配線FGm、及び配線YLm[1]と接続されている。出力回路OUT0は、配線GW、配線FG0、及び配線YL0と接続されている。
出力回路OUTp[1]乃至[n]、及び出力回路OUTm[1]乃至[n]が有するトランジスタTr11、トランジスタTr12、容量素子C11と、出力回路OUT0が有するトランジスタTr14、トランジスタTr15、容量素子C12と、によって、電流源CSが構成される。また、出力回路OUTp[1]乃至[n]、及び出力回路OUTm[1]乃至[n]が有するトランジスタTr13と、出力回路OUT0が有するトランジスタTr16と、によって、カレントミラー回路CMが構成される。
配線GWの電位がハイレベルになると、出力回路OUTp[1]のトランジスタTr12、出力回路OUTp[1]のトランジスタTr12、出力回路OUT0のトランジスタTr15がオン状態になる。そして、配線FGp又は配線FGmを介してトランジスタTr11のゲートに所定の電位が供給され、配線FG0介してトランジスタTr14のゲートに所定の電位が供給される。これにより、トランジスタTr11及びトランジスタTr14に流れる電流が制御され、配線YLp[1]、配線YLm[1]、配線YLOにそれぞれ電流ICp、ICm、IC0が供給される。
配線YL0には、トランジスタTr14に流れる電流IC0(吐き出し電流)から、トランジスタTr16に流れる電流ICM(吸い込み電流)を差し引いた電流Irefが流れる。ここで、電流Irefは、配線YL0と接続されたメモリセルMEM0[1]乃至[m]に流れる電流(吸い込み電流)の総和に等しい。そして、トランジスタTr13とトランジスタTr16によってカレントミラーが構成され、トランジスタTr13にも電流ICMが流れる。
そして、配線YLp[1]には、トランジスタTr11に流れる電流ICp(吐き出し電流)から、トランジスタTr13に流れる電流ICM(吸い込み電流)を差し引いた電流が流れる。また、配線YLm[1]には、トランジスタTr11に流れる電流ICm(吐き出し電流)から、トランジスタTr13に流れる電流ICM(吸い込み電流)を差し引いた電流が流れる。
配線YLp[1]及び配線YLm[1]に電流Irefを供給する場合は、トランジスタTr11のゲートとトランジスタTr14のゲートに同じ電位を供給すればよい。そして、配線YLp[1]に供給された電流Irefは回路MP[1,1]乃至[1,m]に流れ、配線YLm[1]に供給された電流Irefは回路MM[1,1]乃至[1,m]に流れる(吸い込み電流)。電流Irefと、回路MP[1,1]乃至[1,m]に流れる電流の総和と、の差が、上記の式(9)、(14)におけるΔIp[1]に相当する。また、電流Irefと、回路MM[1,1]乃至[1,m]に流れる電流の総和と、の差が、上記の式(9)、(14)におけるΔIm[1]に相当する。
なお、図5に示す電源回路PCは、pチャネル型のトランジスタを用いずに構成することができる。この場合、nチャネル型とpチャネル型の作り分けが不要になり、製造コストを下げることができる。
また、電源回路PCには図6に示す構成を用いることもできる。図6に示す電源回路PCは、トランジスタTr11、Tr14として、ゲートに電位が供給されていないとき(Vg=0Vのとき)に、ソース−ドレイン間に電流が流れるトランジスタ、すなわちノーマリーオン型のトランジスタを用いている。また、トランジスタTr11、Tr14は、ゲートとソース又はドレインの一方とが接続されている。このような構成を用いることにより、トランジスタTr12、Tr15、及び容量素子C11、C12を省略することができ、電源回路PCの素子数を低減することができる。
[差分回路]
図1に示す差分回路DCは、電流の差分を出力する機能を有する。具体的には、回路DCは減算回路SC[1]乃至[n]を有し、減算回路SC[j]は配線YLp[j]及び配線YLm[j]と接続されている。そして、減算回路SC[j]は、配線YLp[j]を流れる電流IMP[j]と、配線YLm[j]を流れる電流IMM[j]の差に相当する電流IMEM[j]を、配線YL[j]に出力する機能を有する。
減算回路SCによって、上記の式(9)、(14)における電流ΔI´[1](ΔIp[1]とΔIm[1]の差分)を得ることができる。
図7(A)に、差分回路DC構成例を示す。差分回路DCは、減算回路SC[1]乃至[n]を有する。ここでは代表例として減算回路SC[1]の回路構成を示しているが、減算回路[2]乃至[n]にも同様の構成を用いることができる。
図7(A)に示す回路SC[1]は、トランジスタTr21、Tr22を有する。トランジスタTr21とトランジスタTr22は、カレントミラー回路を構成している。配線YLp[1]からトランジスタTr21に電流IMP[1]が流れると、電流IMP[1]がコピーされトランジスタTr22に流れる。そして、配線YL[1]には、配線YLm[1]に流れる電流IMM[1]から電流IMP[1]が差し引かれた差分電流IMEM[1](=IMM[1]−IMP[1])が流れる。このようにして、減算回路SC[1]から差分電流が出力される。
なお、減算回路SCには、図7(B)に示す構成を用いることもできる。図7(B)に示す減算回路SCは、カスコード接続回路としての機能を有するトランジスタTr23、Tr24を有する点において、図7(A)と異なる。トランジスタTr23、Tr24により、カレントミラー回路の出力抵抗を増加させ、電流のコピーの精度を向上させることができる。
[オフセット回路]
図1に示すオフセット回路OFSTは、配線YL[1]乃至[n]と接続されている。オフセット回路OFSTは、配線YL[1]乃至[n]からオフセット回路OFSTに流れる電流の変化量を検出する機能を有する。また、オフセット回路OFSTは、検出結果を配線OL[1]乃至[n]に出力する機能を有する。なお、オフセット回路OFSTは、検出結果に対応する電流を配線OLに出力してもよいし、検出結果に対応する電流を電圧に変換して配線OLに出力してもよい。
オフセット回路OFSTの構成例を図8に示す。図8に示すオフセット回路OFSTは、回路OC[1]乃至[n]を有する。また、回路OC[1]乃至[n]はそれぞれ、トランジスタTr31、トランジスタTr32、トランジスタTr33、容量素子C31、及び抵抗素子R1を有する。各素子の接続関係は図8に示す通りである。なお、容量素子C31の第1の電極及び抵抗素子R1の第1の端子と接続されたノードを、ノードNaとする。また、容量素子C31の第2の電極、トランジスタTr31のソース又はドレインの一方、及びトランジスタTr32のゲートと接続されたノードを、ノードNbとする。
配線VrefLは電位Vrefを供給する機能を有し、配線VaLは電位Vaを供給する機能を有し、配線VbLは電位Vbを供給する機能を有する。また、配線VDDLは電位VDDを供給する機能を有し、配線VSSLは電位VSSを供給する機能を有する。ここでは、電位VDDが高電源電位であり、電位VSSが低電源電位である場合について説明する。また、配線RSTは、トランジスタTr31の導通状態を制御するための電位を供給する機能を有する。トランジスタTr32、トランジスタTr33、配線VDDL、配線VSSL、及び配線VbLによって、ソースフォロワ回路が構成される。
次に、回路OC[1]乃至[n]の動作例を説明する。なお、ここでは代表例として回路OC[1]の動作例を説明するが、回路OC[2]乃至[n]も同様に動作させることができる。まず、配線YL[1]に第1の電流が流れると、ノードNaの電位は、第1の電流と抵抗素子R1の抵抗値に応じた電位となる。また、このときトランジスタTr31はオン状態であり、ノードNbに電位Vaが供給される。その後、トランジスタTr31はオフ状態となる。
次に、配線YL[1]に第2の電流が流れると、ノードNaの電位は、第2の電流と抵抗素子R1の抵抗値に応じた電位に変化する。このときトランジスタTr31はオフ状態であり、ノードNbはフローティング状態となっているため、ノードNaの電位の変化に伴い、ノードNbの電位は容量結合により変化する。ここで、ノードNaの電位の変化をΔVNaとし、容量結合係数を1とすると、ノードNbの電位はVa+ΔVNaとなる。そして、トランジスタTr32のしきい値電圧をVthとすると、配線OL[1]から電位Va+ΔVNa−Vthが出力される。ここで、Va=Vthとすることにより、配線OL[1]から電位ΔVNaを出力することができる。
電位ΔVNaは、第1の電流と第2の電流の差分、抵抗素子R1、及び電位Vrefに応じて定まる。ここで、抵抗素子R1と電位Vrefは既知であるため、電位ΔVNaから配線YLに流れる電流の変化量を求めることができる。このようにして、オフセット回路OFSTによって検出された電流の変化量に対応する信号は、配線OL[1]乃至[n]に出力される。
第2のデータがメモリセルMEMに入力されていないときに、配線YLに流れる電流を上記の第1の電流とし、第2のデータがメモリセルMEMに入力されているときに、配線YLに流れる電流を上記の第2の電流とすることにより、式(11)、(17)における演算を行うことができる。
<半導体装置の動作例>
上記の半導体装置10を用いて、第1のデータと第2のデータの積和演算を行うことができる。以下、積和演算を行う際の半導体装置10の動作例を説明する。図9は、半導体装置10の動作例を示すタイミングチャートである。
なお、ここでは代表例として図2に示すメモリセルMEM[1,1]、[2,1]及びメモリセルMEM0[1]、[2]に着目して説明するが、他のメモリセルMEM及びメモリセルMEM0も同様に動作させることができる。
また、ここでは一例として、メモリセルMEM[1,1]には正の値の電位W[1,1]が格納され、メモリセルMEM[2,1]には負の値の電位W[2,1]が格納される場合について説明する。なお、図9においてGNDは接地電位を表し、REFPは基準電位を示す。
[第1のデータの格納]
まず、時刻T1−T2において、配線BLp[1]の電位がW、配線BLmの電位がW−W[1,1]、配線BL0の電位がWとなる。また、配線WL[1]の電位がハイレベルとなり、回路MP[1,1]、回路MM[1,1]、及びメモリセルMEM0[1]が有するトランジスタTr11がオン状態となる。これにより、ノードFNp[1,1]、ノードFNm[1,1]、ノードFN0[1]の電位がそれぞれ、W、W−W[1,1]、Wとなる。
次に、時刻T2−T3において、配線WL[1]の電位がローレベルとなる。これにより、回路MP[1,1]、回路MM[1,1]、及びメモリセルMEM0[1]が有するトランジスタTr11がオフ状態となり、ノードFNp[1,1]、ノードFNm[1,1]、及びノードFN0[1]の電位が保持される。
なお、W[1,1]は、メモリセルMEM[1,1]に格納される第1のデータに対応する電位であり、Wは参照データに対応する電位である。上記のように、W[1,1]が正の値である場合は、回路MPに電位Wが格納され、回路MMに電位W−W[1,1]が格納される。
なお、前述の通り、トランジスタTr11としてOSトランジスタを用いることが好ましい。これにより、トランジスタTr11のリーク電流を抑えることができ、ノードFNp[1,1]、ノードFNm[1,1]、及びノードFN0[1]の電位を長期間、正確に保持することができる。
次に、時刻T3−T4において、配線BLp[1]の電位がW−|W[2,1]|、配線BLmの電位がW、配線BL0の電位がWとなる。また、配線WL[2]の電位がハイレベルとなり、回路MP[2,1]、回路MM[2,1]、及びメモリセルMEM0[2]が有するトランジスタTr11がオン状態となる。これにより、ノードFNp[2,1]、ノードFNm[2,1]、ノードFN0[2]の電位がそれぞれ、W−|W[2,1]|、W、Wとなる。
次に、時刻T4−T5において、配線WL[2]の電位がローレベルとなる。これにより、回路MP[2,1]、回路MM[2,1]、及びメモリセルMEM0[2]が有するトランジスタTr11がオフ状態となり、ノードFNp[2,1]、ノードFNm[2,1]、及びノードFN0[2]の電位が保持される。
なお、W[2,1]は、メモリセルMEM[2,1]に格納される第1のデータに対応する電位である。上記のように、W[2,1]が負の値である場合は、回路MPに電位W−|W[2,1]|が格納され、回路MMに電位Wが格納される。
以上の動作により、第1のデータの値に応じて、第1のデータが回路MP又は回路MMに格納される。ここで、電源回路PC(図5参照)の機能により、配線YLp[1]には、回路MP[1,1]、[2,1]に流れる電流の合計値と、メモリセルMEM0[1]、[2]に流れる電流の合計値との差に対応する電流ΔIp[1]が流れる。また、配線YLm[1]には、回路MM[1,1]、[2,1]に流れる電流の合計値と、メモリセルMEM0[1]、[2]に流れる電流の合計値との差に対応する電流ΔIm[1]が流れる。これらの電流は、減算回路SC[1](図7参照)に入力され、減算回路SC[1]から差分電流ΔI´[1]=ΔIp[1]−ΔIm[1]が出力される。このときの差分電流ΔI´[1]が、回路PC[1](図8参照)に入力される第1の電流(オフセット電流)に対応する。
[第1のデータと第2のデータの積和演算]
次に、時刻T5−T6において、配線XL[1]の電位が基準電位よりもVX[1]大きい電位となり、配線XL[2]の電位が基準電位よりもVX[2]小さい電位となる。このときの配線XL[1]の電位の変化量は、回路MP[1,1]、回路MM[1,1]、及びメモリセルMEM0[1]に供給される第2のデータに相当する。また、配線XL[2]の電位の変化量は、回路MP[2,1]、回路MM[2,1]、及びメモリセルMEM0[2]に供給される第2のデータに相当する。
配線XL[1]の電位が上昇すると、回路MP[1,1]、回路MM[1,1]、及びメモリセルMEM0[1]において、容量結合によりトランジスタTr12のゲートの電位が上昇する。また、配線XL[2]の電位が下降すると、回路MP[2,1]、回路MM[2,1]、及びメモリセルMEM0[2]において、容量結合によりトランジスタTr12のゲートの電位が下降する。
なお、トランジスタTr12のゲートの電位の変化量は、配線XLの電位の変化量に、メモリセルの構成によって決まる容量結合係数を乗じた値となる。容量結合係数は、容量素子C11の容量、トランジスタTr12のゲート容量、及び寄生容量などによって算出される。以下では便宜上、配線XLの電位の変化量とトランジスタTr12のゲートの電位の変化量が同じ、すなわち容量結合係数が1であるとして説明する。実際には、容量結合係数を考慮して電位Vを決定すればよい。
配線XL[1]の電位がVX[1]上昇すると、ノードFNp[1,1]、ノードFNm[1,1]、及びノードFN0[1]の電位がそれぞれVX[1]上昇する。また、配線XL[2]の電位がVX[2]下降すると、ノードFNp[2,1]、ノードFNm[2,1]、及びノードFN0[2]の電位がそれぞれVX[2]下降する。
このとき、減算回路SC[1](図5参照)から出力される差分電流ΔI´[1]は、式(9)、(15)で表される。そして、回路PC[1](図8参照)によって、式(9)、(15)で表される差分電流ΔI´[1]から、オフセット電流(時刻T4−T5における電流ΔI´[1])が差し引かれる。その結果、配線XL[1]、[2]の電位(第1のデータに相当)と、メモリセルMEM[1,1]、[2,1]に格納された電位(第2のデータに相当)の積和演算の結果が出力される(式(11)、(17)参照)。
その後、時刻T6−T7において、配線XL[1]、[2]の電位は基準電位となり、ノードFNp[1,1]、[2,1]、ノードFNm[1,1]、[2,1]及びノードFN0[1]、[2]の電位は、時刻T4−T5と同様になる。
次に、時刻T7−T8において、配線XL[1]の電位が基準電位よりもVX[1]小さい電位となり、配線XL[2]の電位が基準電位よりもVX[2]大きい電位となる。そして、時刻T5−T6と同様の動作により、配線XL[1]、[2]の電位(第1のデータに相当)と、メモリセルMEM[1,1]、[2,1]に格納された電位(第2のデータに相当)の積和演算の結果が出力される(式(11)、(17)参照)。
その後、時刻T8−T9において、配線XL[1]、[2]の電位は基準電位となり、ノードFNp[1,1]、[2,1]、ノードFNm[1,1]、[2,1]及びノードFN0[1]、[2]の電位は、時刻T4−T5と同様になる。
以上の動作により、第1のデータと第2のデータの積和演算を行うことができる。
上記の通り、本発明の一態様に係る半導体装置10は、積和演算の乗算を行うメモリセルMEMに流れる電流を低減することができる。よって、半導体装置10の消費電力の低減、又は信頼性の向上を図ることができる。また、メモリセルMEM及びメモリセルMEM0として図2に示す構成を用いることにより、少ないトランジスタ数で積和演算回路を構成することができる。そのため、半導体装置10の回路規模の縮小を図ることができる。
また、図2、図5、図7、図8に示すように、メモリセルMEM、メモリセルMEM0、電源回路PC、差分回路DC、及びオフセット回路OFSTは、n型のOSトランジスタを用いた単極性回路によって構成することができる。これにより、半導体装置10を単極性回路によって構成することができ、製造コストを低減することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置を用いた演算回路の構成例について説明する。当該演算回路は、人工知能(AI:Artificial Intelligence)の演算に用いることができる。
人工知能とは、人間の知能を模した計算機の総称である。本明細書等において、人工知能には人工ニューラルネットワーク(ANN:Artificial Neural Network)が含まれる。人工ニューラルネットワークは、ニューロンとシナプスで構成される神経網を模した回路である。本明細書等において「ニューラルネットワーク」と記載する場合、特に人工ニューラルネットワークを指す。
図10(A)に示すように、ニューラルネットワークNNは入力層IL、出力層OL、中間層(隠れ層)HLによって構成することができる。入力層IL、出力層OL、中間層HLはそれぞれ、1又は複数のニューロン(ユニット)を有する。なお、中間層HLは1層であってもよいし2層以上であってもよい。2層以上の中間層HLを有するニューラルネットワークはDNN(ディープニューラルネットワーク)と呼ぶこともでき、ディープニューラルネットワークを用いた学習は深層学習と呼ぶこともできる。
入力層ILの各ニューロンには入力データが入力され、中間層HLの各ニューロンには前層又は後層のニューロンの出力信号が入力され、出力層OLの各ニューロンには前層のニューロンの出力信号が入力される。なお、各ニューロンは、前後の層の全てのニューロンと結合されていてもよいし(全結合)、一部のニューロンと結合されていてもよい。
図10(B)に、ニューロンによる演算の例を示す。ここでは、ニューロンNと、ニューロンNに信号を出力する前層の2つのニューロンを示している。ニューロンNには、前層のニューロンの出力xと、前層のニューロンの出力xが入力される。そして、ニューロンNにおいて、出力xと重みwの乗算結果(x)と出力xと重みwの乗算結果(x)の総和x+xが計算された後、必要に応じてバイアスbが加算され、値a=x+x+bが得られる。そして、値aは活性化関数hによって変換され、ニューロンNから出力信号y=h(a)が出力される。
このように、ニューロンによる演算には、前層のニューロンの出力と重みの積を足し合わせる演算、すなわち積和演算が含まれる。ニューラルネットワークNNをハードウェアによって構成する場合、ニューラルネットワークNNの積和演算を行う演算回路に、上記実施の形態で説明した半導体装置10を用いることができる。
図11に、半導体装置10を搭載した演算回路20の構成例を示す。演算回路20は、半導体装置10及び活性化関数回路ACTVを有する。半導体装置10の構成及び機能については、実施の形態1を参酌することができる。また、半導体装置10は、駆動回路BD、駆動回路XD、及び駆動回路WDを有する。
駆動回路BDは、セルアレイCAに第1のデータを供給する機能を有する。具体的には、駆動回路BDは、複数の配線BLp及び複数の配線BLpと接続されている。そして、駆動回路BDから複数の配線BLp及び複数の配線BLpに、第1のデータに対応する電位が供給される。
駆動回路XDは、セルアレイCAに第2のデータを供給する機能を有する。具体的には、駆動回路XDは、複数の配線XLと接続されている。また、駆動回路XDには、外部からデータXが入力される。このデータXが、第2のデータに相当する。そして、駆動回路XDから複数の配線XLに、第2のデータに対応する電位が供給される。なお、データXはデジタルデータである場合、駆動回路XDはデータXをアナログデータに変換する機能を有していてもよい。
駆動回路WDは、セルアレイCAに含まれるメモリセルを選択する機能を有する。具体的には、駆動回路WDは、複数の配線WLと接続されている。そして、駆動回路WDから一の配線WLに選択信号が供給されることにより、所定の行のメモリセルが選択され、選択されたメモリセルに第1のデータが書き込まれる。
半導体装置10をニューラルネットワークの演算に用いる場合、第1のデータとして重みがセルアレイCAに格納され、第2のデータとしてデータXがセルアレイCAに供給される。これにより、ニューラルネットワークNNの中間層HL又は出力層OLにおける積和演算を行うことができる。なお、セルアレイCAに含まれるメモリセルの行数mは一のニューロンに供給されるデータの数に対応し、メモリセルの列数nは中間層HL又は出力層OLに含まれるニューロンの数に対応する。そして、データXと重みの積和演算の結果は、差分回路DC及びオフセット回路OFSTを介して、活性化関数回路ACTVに入力される。
活性化関数回路ACTVは、オフセット回路OFSTから入力された信号を、あらかじめ定義された活性化関数に従って変換するための演算を行う機能を有する。活性化関数としては、例えば、シグモイド関数、tanh関数、softmax関数、ReLU関数、しきい値関数などを用いることができる。活性化関数回路ACTVによって変換された信号は、データYと出力される。
このように、半導体装置10及び活性化関数回路ACTVを用いることにより、ニューラルネットワークの演算を行うことができる。なお、演算回路20を複数用いて、多層のニューラルネットワークを構成することもできる。この場合、一の演算回路20から出力されたデータYが、他の演算回路20のデータXとして用いられる。
また、演算回路20を適用するニューラルネットワークの構造は特に限定されない。例えば半導体装置MACは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、オートエンコーダ、ボルツマンマシン(制限ボルツマンマシンを含む)などに用いることもできる。
上記の通り、半導体装置10は、ニューラルネットワークの積和演算に用いることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置の具体的な構成例について、図12乃至図16を用いて説明する。
<半導体装置の構成例>
図12(A)、図12(B)、図13(A)、図13(B)、および図14は、本発明の一態様に係るトランジスタ200、トランジスタ500、および容量素子100を有するメモリセル600の上面図および断面図である。
図12(A)は、メモリセル600を有する半導体装置の上面図である。また、図12(B)、図13(A)、図13(B)、および図14は当該半導体装置の断面図である。ここで、図12(B)は、図12(A)にA1−A2の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200のチャネル長方向、およびトランジスタ500のチャネル幅方向の断面図でもある。また、図13(A)は、図12(A)にA3−A4の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200のチャネル幅方向の断面図でもある。また、図13(B)は、図12(A)にA5−A6の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ500のチャネル長方向の断面図でもある。また、図14は、図12(A)にA7−A8の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200のソース領域またはドレイン領域の断面図でもある。なお、図12(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
ここで、メモリセル600は図2における回路MP、回路MM、又はメモリセルMEM0に対応する。また、トランジスタ200はトランジスタTr1と対応し、トランジスタ500はトランジスタTr2と対応し、容量素子100は容量素子C1と対応する。
本発明の一態様の半導体装置は、トランジスタ200と、トランジスタ500と、容量素子100と、層間膜として機能する絶縁体210、絶縁体212、絶縁体273、絶縁体274、絶縁体280を有する。また、トランジスタ200と電気的に接続し、配線として機能する導電体203、およびプラグとして機能する導電体240(導電体240a、導電体240b)とを有する。また、トランジスタ500と電気的に接続し、配線として機能する導電体503、およびプラグとして機能する導電体540aとを有する。また、容量素子100と電気的に接続し、プラグとして機能する導電体540bとを有する。なお、以下において導電体540aおよび導電体540bをまとめて導電体540とする場合がある。ここで、導電体503は導電体203と、導電体540は導電体240と、同じ層に形成され、同様の構成を有する。よって、導電体503は導電体203の、導電体540は導電体240の、記載を参酌することができる。
なお、導電体203は、絶縁体212の開口の内壁に接して導電体203の第1の導電体が形成され、さらに内側に導電体203の第2の導電体が形成されている。ここで、導電体203の上面の高さと、絶縁体212の上面の高さは同程度にできる。なお、本実施の形態では、導電体203の第1の導電体および導電体203の第2の導電体を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体203を単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。また、構造体が積層構造を有する場合、形成順に序数を付与し、区別する場合がある。なお、導電体503も導電体203と同様の構成を有する。
絶縁体273は、トランジスタ200、トランジスタ500、および容量素子100の上に配置される。絶縁体274は絶縁体273上に配置される。絶縁体280は絶縁体274上に配置される。
また、導電体240は、絶縁体273、絶縁体274、および絶縁体280の開口の内壁に接して形成されている。ここで、導電体240の上面の高さと、絶縁体280の上面の高さは同程度にできる。なお、本実施の形態では、導電体240が2層の積層構造である構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体240は、単層、又は3層以上の積層構造でもよい。なお、導電体540も導電体240と同様の構成を有する。
図12、図13(A)に示すように、トランジスタ200は、基板(図示せず。)の上に配置された絶縁体214および絶縁体216と、絶縁体214および絶縁体216に埋め込まれるように配置された導電体205と、絶縁体216と導電体205の上に配置された絶縁体220と、絶縁体220の上に配置された絶縁体222と、絶縁体222の上に配置された絶縁体224と、絶縁体224の上に配置された酸化物230(酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230c)と、酸化物230の上に配置された絶縁体250と、絶縁体250上に配置された金属酸化物252と、金属酸化物252の上に配置された導電体260(導電体260a、および導電体260b)と、導電体260の上に配置された絶縁体270と、絶縁体270上に配置された絶縁体271と、少なくとも酸化物230c、絶縁体250、金属酸化物252、および導電体260の側面と接して配置された絶縁体275と、酸化物230上に形成された層242と、を有する。また、層242の一方に接して導電体240aが配置される。
トランジスタ200において、層242の一方がソース及びドレインの一方として機能し、層242の他方がソース及びドレインの他方として機能し、導電体260がフロントゲートとして機能し、導電体205がバックゲートとして機能する。また、導電体240aは、配線WBLに相当する導電体に電気的に接続される。また、導電体260は配線WLに相当する導電体に電気的に接続される。
また、図12、図13(B)に示すように、トランジスタ500は、基板(図示せず。)の上に配置された絶縁体214および絶縁体216と、絶縁体214および絶縁体216に埋め込まれるように配置された導電体505と、絶縁体216と導電体505の上に配置された絶縁体220と、絶縁体220の上に配置された絶縁体222と、絶縁体222の上に配置された絶縁体524と、絶縁体524の上に配置された酸化物530(酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530c)と、酸化物530の上に配置された絶縁体550と、絶縁体550上に配置された金属酸化物552と、金属酸化物552の上に配置された導電体560(導電体560a、および導電体560b)と、導電体560の上に配置された絶縁体570と、絶縁体570上に配置された絶縁体571と、少なくとも酸化物530c、絶縁体550、金属酸化物552、および導電体560の側面と接して配置された絶縁体575と、酸化物530上に形成された層542と、を有する。また、層542の一方に接して導電体540aが配置され、層542の他方に接して導電体540bが配置される。
トランジスタ500において、層542の一方がソース及びドレインの一方として機能し、層542の他方がソース及びドレインの他方として機能し、導電体560がフロントゲートとして機能し、導電体505がバックゲートとして機能する。また、導電体540aは、配線YLp、配線YLm、又は配線YL0に相当する導電体に電気的に接続される。また、導電体540bは、配線VRに相当する導電体に電気的に接続される。
ここで、トランジスタ500は、トランジスタ200と同じ層に形成され、同様の構成を有する。よって、酸化物530は、酸化物230と同様の構成を有し、酸化物230の記載を参酌することができる。導電体505は、導電体205と同様の構成を有し、導電体205の記載を参酌することができる。絶縁体524は、絶縁体224と同様の構成を有し、絶縁体224の記載を参酌することができる。絶縁体550は、絶縁体250と同様の構成を有し、絶縁体250の記載を参酌することができる。金属酸化物552は、金属酸化物252と同様の構成を有し、金属酸化物252の記載を参酌することができる。導電体560は、導電体260と同様の構成を有し、導電体260の記載を参酌することができる。絶縁体570は、絶縁体270と同様の構成を有し、絶縁体270の記載を参酌することができる。絶縁体571は、絶縁体271と同様の構成を有し、絶縁体271の記載を参酌することができる。絶縁体575は、絶縁体275と同様の構成を有し、絶縁体275の記載を参酌することができる。以下に、おいて、特段の記載がない限り、上記のようにトランジスタ500の構成は、トランジスタ200の構成の記載を参酌することができる。
なお、トランジスタ200では、酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230cの3層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、酸化物230bの単層、酸化物230bと酸化物230aの2層構造、酸化物230bと酸化物230cの2層構造、または4層以上の積層構造を設ける構成にしてもよい。また、トランジスタ500の酸化物530についても同様である。また、トランジスタ200では、導電体260aおよび導電体260bを積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。また、トランジスタ500の導電体560についても同様である。
容量素子100は、導電体110と、導電体110上に絶縁体130、絶縁体130上に導電体120を有する。導電体120は、絶縁体130を介して、少なくとも一部が導電体110と重なるように、配置されることが好ましい。また、導電体120の上に接して導電体240cが配置される。導電体110は、トランジスタ200のソース及びドレインの一方として機能する層242と接し、且つ絶縁体570および絶縁体571の開口を介して導電体560と接する。
容量素子100において、導電体110は電極の一方として機能し、導電体120は電極の他方として機能する。また、絶縁体130は容量素子100の誘電体として機能する。導電体240bは、配線XLに相当する導電体に電気的に接続される。ここで、導電体110は、トランジスタ200のソースおよびドレインの一方、およびトランジスタ500のゲートと、接続されており、ノードFNとして機能する。
図12(A)に示すように、容量素子100の一部が、トランジスタ200またはトランジスタ500と重畳するように形成される。これにより、トランジスタ200、トランジスタ500、および容量素子100の投影面積の合計を小さくし、メモリセル600の占有面積を低減することができる。よって、上記半導体装置の微細化および高集積化が容易になる。また、トランジスタ200、トランジスタ500、および容量素子100を同じ工程で形成することができるので、工程を短縮し、生産性を向上させることができる。
なお、メモリセル600において、トランジスタ200のチャネル長方向とトランジスタ500のチャネル長方向が直交するように、トランジスタ200、トランジスタ500および容量素子100を設けているが、本実施の形態に示す半導体装置はこれに限られるものではない。メモリセル600は、半導体装置の構成の一例であり、回路構成や駆動方法に応じて、適切な構造のトランジスタを、適宜配置すればよい。
次に、トランジスタ200に用いる酸化物230に係る詳細の説明を行う。以下において、特段の記載を行わない場合、トランジスタ500の酸化物530についても酸化物230の記載を参酌するものとする。トランジスタ200は、チャネルが形成される領域(以下、チャネル形成領域ともいう。)を含む酸化物230(酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230c)に、酸化物半導体として機能する金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう。)を用いることが好ましい。
チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたトランジスタ200は、非導通状態において極めてリーク電流が小さいため、低消費電力の半導体装置を提供できる。また、酸化物半導体は、スパッタリング法などを用いて成膜できるため、高集積型の半導体装置を構成するトランジスタ200に用いることができる。
例えば、酸化物230として、In−M−Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。また、酸化物230として、In−Ga酸化物、In−Zn酸化物を用いてもよい。
ここで、酸化物半導体は、酸化物半導体を構成する元素の他に、アルミニウム、ルテニウム、チタン、タンタル、クロム、タングステン、などの金属元素が添加されることで、金属化合物を形成し、低抵抗化する。なお、好ましくは、アルミニウム、チタン、タンタル、タングステンなどを用いることが好ましい。
酸化物半導体に、金属元素を添加するには、例えば、酸化物半導体上に、当該金属元素を含む金属膜、金属元素を有する窒化膜、または金属元素を有する酸化膜を設けるとよい。また、当該膜を設けることで、当該膜と酸化物半導体との界面、または当該界面近傍に位置する酸化物半導体中の一部の酸素が該膜などに吸収され、酸素欠損を形成し、当該界面近傍が低抵抗化する場合がある。
また、酸化物半導体上に、金属膜、金属元素を有する窒化膜、または金属元素を有する酸化膜を設けた後、窒素を含む雰囲気下で、熱処理を行うとよい。窒素を含む雰囲気下での熱処理により、金属膜、金属元素を有する窒化膜、または金属元素を有する酸化膜から、当該膜の成分である金属元素が酸化物半導体へ、または酸化物半導体の成分である金属元素が当該膜へと、拡散し、酸化物半導体と、当該膜とが金属化合物を形成し、低抵抗化することができる。酸化物半導体に添加された金属元素は、酸化物半導体と金属元素と、金属化合物を形成することで、比較的安定な状態となるため、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
また、金属膜、金属元素を有する窒化膜、または金属元素を有する酸化膜と、酸化物半導体との界面に、化合物層(以下、異層ともいう。)が形成されていてもよい。なお、化合物層(異層)とは、金属膜、金属元素を有する窒化膜、または金属元素を有する酸化膜の成分と、酸化物半導体の成分とを含む金属化合物を有する層とする。例えば、化合物層として、酸化物半導体の金属元素と、添加された金属元素とが、合金化した層が形成されていてもよい。当該合金化した層は、比較的安定な状態であり、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
また、酸化物半導体に存在する水素は、酸化物半導体の低抵抗化した領域に拡散し、低抵抗化した領域に存在する酸素欠損の中に入った場合、比較的安定な状態となる。また、酸化物半導体に存在する酸素欠損中の水素は、250℃以上の熱処理によって、酸素欠損から抜け出し、酸化物半導体の低抵抗化した領域に拡散し、低抵抗化した領域に存在する酸素欠損の中に入り、比較的安定な状態となることがわかっている。従って、熱処理によって、酸化物半導体の低抵抗化した領域、または金属化合物が形成された領域は、より低抵抗化し、低抵抗化していない酸化物半導体は、高純度化(水、水素などの不純物の低減)し、より高抵抗化する傾向がある。
また、酸化物半導体は、水素、または窒素などの不純物元素が存在すると、キャリア密度が増加する。酸化物半導体中の水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になり、酸素欠損を形成する場合がある。当該酸素欠損に水素が入ると、キャリア密度は増加する。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。つまり、窒素、または水素を有する酸化物半導体は、低抵抗化される。
従って、酸化物半導体に、金属元素、並びに、水素、および窒素などの不純物元素を、選択的に添加することで、酸化物半導体に高抵抗領域、および低抵抗領域を設けることができる。つまり、酸化物230を選択的に低抵抗化することで、島状に加工した酸化物230に、キャリア密度が低い半導体として機能する領域と、ソース領域、またはドレイン領域として機能する低抵抗化した領域を設けることができる。
ここで、図12(B)において破線で囲む、選択的に低抵抗化した酸化物230bを含む領域239の拡大図を図15に示す。
図15に示すように、酸化物230は、トランジスタのチャネル形成領域として機能する領域234と、ソース領域またはドレイン領域として機能する領域231(領域231a、および領域231b)と、領域234と領域231との間に設けられる、領域232(領域232a、および領域232b)と、を有する。
ソース領域またはドレイン領域として機能する領域231は、酸素濃度が低く、低抵抗化した領域である。また、チャネル形成領域として機能する領域234は、ソース領域またはドレイン領域として機能する領域231よりも、酸素濃度が高く、キャリア密度が低い高抵抗領域である。また、領域232は、ソース領域またはドレイン領域として機能する領域231よりも、酸素濃度が高く、キャリア密度が低い、かつ、チャネル形成領域として機能する領域234よりも、酸素濃度が低く、キャリア密度が高い領域である。
なお、領域231は、金属元素、並びに水素、および窒素などの不純物元素、の少なくとも一の濃度が領域232、および領域234よりも高いことが好ましい。
例えば、領域231は、酸化物230の他に、アルミニウム、ルテニウム、チタン、タンタル、タングステン、クロムなどの金属元素の中から選ばれるいずれか一つまたは複数の金属元素を有することが好ましい。
領域231を形成するために、例えば、酸化物230の領域231に接して、金属元素を有する膜を設ければよい。当該金属元素を有する膜は、領域231の形成後に、島状にパターニングして導電体110となる。なお、当該金属元素を有する膜として、金属膜、金属元素を有する酸化膜、または金属元素を有する窒化膜を用いることができる。その際、当該金属元素を有する膜と、酸化物230との界面に、層242が形成されていてもよい。例えば層242は、酸化物230の上面および側面に形成される場合がある。なお、層242は、当該金属元素を有する膜の成分と、酸化物230の成分とを含む金属化合物を有する層とし、化合物層と呼ぶこともできる。例えば、層242として、酸化物230中の金属元素と、添加された金属元素とが、合金化した層が形成されていてもよい。
酸化物230に、金属元素が添加されることで、酸化物230中に、金属化合物が形成され、領域231を低抵抗化することができる。なお、当該金属化合物は、必ずしも、酸化物230中に形成されていなくともよい。例えば、上記金属元素を有する膜(導電体110)に、金属化合物が形成されていてもよい。また、例えば、酸化物230の表面、導電体110の表面、または導電体110と酸化物230との界面に形成された層242に設けられていてもよい。
従って、領域231は、層242の低抵抗化領域も含む場合がある。よって、層242の少なくとも一部がトランジスタ200のソース領域またはドレイン領域として機能する場合がある。
領域232は、絶縁体275と重畳する領域を有する。領域232は、アルミニウム、ルテニウム、チタン、タンタル、タングステン、クロムなどの金属元素、並びに水素、および窒素などの不純物元素、の少なくとも一の濃度が領域234よりも高いことが好ましい。例えば、酸化物230の領域231に接して、上記金属元素を有する膜を設けることで、上記金属元素を有する膜中の成分と、酸化物半導体の成分とが、金属化合物を形成する場合がある。当該金属化合物は、酸化物230に含まれる水素を引き寄せる場合がある。従って、領域231の近傍である領域232の水素の濃度が高くなる場合がある。
なお、領域232a、および領域232bのいずれか一方または双方は、導電体260と重畳する領域を有する構成としてもよい。当該構成とすることで、導電体260と、領域232aおよび領域232bとを、オーバーラップさせることが可能となる。
また、図15では、領域234、領域231、および領域232が、酸化物230bに形成されているが、これに限られない。例えば、これらの領域は層242、層242と酸化物230との間に形成された化合物層、酸化物230a、および酸化物230cにも、形成されていてもよい。また、図15では、各領域の境界を、酸化物230の上面に対して略垂直に表示しているが、本実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、領域232が酸化物230bの表面近傍では導電体260側に張り出し、酸化物230aの下面近傍では、導電体240a側または導電体240b側に後退する形状になる場合がある。
また、酸化物230において、各領域の境界は明確に検出することが困難な場合がある。各領域内で検出される金属元素、並びに水素、および窒素などの不純物元素の濃度は、領域ごとの段階的な変化に限らず、各領域内でも連続的に変化(グラデーションともいう。)していてもよい。つまり、チャネル形成領域に近い領域であるほど、金属元素、並びに水素、および窒素などの不純物元素の濃度が減少していればよい。
酸化物230を、選択的に低抵抗化するには、例えば、アルミニウム、ルテニウム、チタン、タンタル、タングステン、クロムなどの導電性を高める金属元素、および不純物の少なくとも一を、所望の領域に添加すればよい。なお、不純物としては、酸素欠損を形成する元素、または酸素欠損に捕獲される元素などを用いればよい。例えば、当該元素として、水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、リン、硫黄、塩素、希ガス等が挙げられる。また、希ガス元素の代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、およびキセノン等がある。
領域231は、上述の導電性を高める金属元素、酸素欠損を形成する元素、または酸素欠損に捕獲される元素の含有率を高くすることで、キャリア密度を高くし、低抵抗化を図ることができる。
領域231を低抵抗化するために、例えば、酸化物230の領域231に接して、上記金属元素を有する膜を成膜するとよい。当該金属元素を有する膜としては、金属膜、金属元素を有する酸化膜、または金属元素を有する窒化膜などを用いることができる。当該金属元素を有する膜は、少なくとも、絶縁体250、金属酸化物252、導電体260、絶縁体270、絶縁体271、および絶縁体275を介して、酸化物230上に設けることが好ましい。なお、上記金属元素を有する膜は、10nm以上200nm以下の膜厚にするとよい。上記金属元素を有する膜は、例えば、アルミニウム、ルテニウム、チタン、タンタル、タングステン、クロムなどの金属元素を含む膜とする。なお、上記金属元素を有する膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。
酸化物230と上記金属元素を有する膜とが接することにより、当該金属元素を有する膜の成分と、酸化物230の成分とが、金属化合物を形成し、領域231となり、低抵抗化する。また、酸化物230と当該金属元素を有する膜との界面、または当該界面近傍に位置する酸化物230中の酸素の一部が層242に吸収され、酸化物230に酸素欠損を形成し、低抵抗化し、領域231を形成する場合がある。
また、酸化物230と、上記金属元素を有する膜とが、接した状態で、窒素を含む雰囲気下において熱処理を行うとよい。当該熱処理により、当該金属元素を有する膜から、当該金属元素を有する膜の成分である金属元素が酸化物230へ、または酸化物230の成分である金属元素が当該金属元素を有する膜へと、拡散し、酸化物230と、当該金属元素を有する膜とが金属化合物を形成し、低抵抗化する。このようにして、酸化物230と当該金属元素を有する膜との間に層242が形成される。なお、その際、酸化物230の金属元素と、当該金属元素を有する膜の金属元素とが、合金化してもよい。従って、層242は合金を含む場合がある。当該合金は、比較的安定な状態であり、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
上記熱処理は、例えば、250℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下、さらに好ましくは320℃以上450℃以下で行えばよい。なお、熱処理は、窒素または不活性ガス雰囲気で行う。また、熱処理は減圧状態で行ってもよい。また、窒素または不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、酸化性ガスを含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。
また、酸化物230中の水素は、領域231に拡散し、領域231に存在する酸素欠損の中に入った場合、比較的安定な状態となる。また、領域234に存在する酸素欠損中の水素は、250℃以上の熱処理によって、酸素欠損から抜け出し、領域231に拡散し、領域231に存在する酸素欠損の中に入り、比較的安定な状態となる。従って、熱処理によって、領域231は、より低抵抗化し、領域234は、高純度化(水、水素などの不純物の低減)し、より高抵抗化する。
一方、酸化物230の導電体260、および絶縁体275と重畳する領域(領域234、および領域232)は、導電体260、および絶縁体275を介しているため、金属元素の添加が抑制される。また、酸化物230の領域234、および領域232において、酸化物230中の酸素原子が、上述した上記金属元素を有する膜へ吸収されることが抑制される。
また、上記金属元素を有する膜に、酸化物230の領域231、および領域231に近接する領域232の酸素が吸収されることで、領域231、および領域232に酸素欠損が生じる場合がある。酸化物230中の水素が、当該酸素欠損に入ることで、領域231、および領域232のキャリア密度は増加する。従って、酸化物230の領域231、および領域232は、低抵抗化される。
ここで、上記金属元素を有する膜が、水素を吸収する特性を有する場合、酸化物230中の水素は、当該膜へと吸収される。従って、酸化物230中の不純物である水素を低減することができる。上記金属元素を有する膜は、後に導電体110にパターニングされるので、酸化物230から吸収した水素の大部分は除去される。
層242を形成した後で、上記金属元素を有する膜の一部を除去して、島状の導電体110を形成する。当該金属元素を有する膜の膜厚を十分厚く、例えば10nm以上200nm以下程度にしておくことで、導電体110に十分な導電性を与えることができる。よって、導電体110も、上記金属元素を有する膜と同様に、膜厚は10nm以上200nm以下が好ましく、例えば、アルミニウム、ルテニウム、チタン、タンタル、タングステン、クロムなどの金属元素を含むことが好ましい。また、導電体110は、金属元素を有する酸化膜、または金属元素を有する窒化膜としてもよい。
導電体110と酸化物230の間には、層242が形成される。層242は、上記金属元素を有する膜の金属元素と、酸化物230の金属元素とが、合金化している場合があり、導電体110と領域231bの間の抵抗が低減される場合がある。
図12(B)に示すように、導電体110は、絶縁体570および絶縁体571の開口を介して、トランジスタ500のゲートとして機能する導電体560に接する。このように十分な導電性を有する導電体110を用いることにより、トランジスタ200とトランジスタ500の間の導電性を良好にし、ノードFNにデータに対応する電荷を正確に保持することができる。さらに、このようにトランジスタ200とトランジスタ500を同じ層に形成し、導電体110で接続することで、余計なプラグを形成して、上層または下層でトランジスタ200とトランジスタ500を接続しなくてもよい。よって、トランジスタ200及びトランジスタ500を形成する層に、形成するプラグの数を減らすことができるので、当該プラグを通じて、トランジスタ200及びトランジスタ500に水素などの不純物が拡散することを抑制することができる。
ここで、酸化物半導体を用いたトランジスタは、酸化物半導体中のチャネルが形成される領域に不純物及び酸素欠損が存在すると、電気特性が変動しやすく、信頼性が悪くなる場合がある。また、酸化物半導体中のチャネルが形成される領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、チャネルが形成される領域234中の酸素欠損はできる限り低減されていることが好ましい。
そこで、図15に示すように、絶縁体250、酸化物230bの領域232、および酸化物230cに接して、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素(過剰酸素ともいう。)を含む絶縁体275を設けることが好ましい。つまり、絶縁体275が有する過剰酸素が、酸化物230の領域234へと拡散することで、酸化物230の領域234における酸素欠損を低減することができる。
また、絶縁体275に過剰酸素領域を設けるには、絶縁体275に接する絶縁体273として、酸化物を、スパッタリング法により成膜するとよい。酸化物の成膜にスパッタリング法を用いることにより、水または水素などの不純物の少ない絶縁体を成膜することができる。スパッタリング法を用いる場合は、例えば、対向ターゲット型のスパッタリング装置を用いて成膜することが好ましい。対向ターゲット型のスパッタリング装置は、対向するターゲット間の高電界領域に被成膜面が晒されることなく成膜できるので、被成膜面がプラズマによる損傷を受けにくく成膜することができるので、絶縁体273となる絶縁体の成膜時に酸化物230への成膜ダメージを小さくすることができるので好ましい。対向ターゲット型のスパッタリング装置を用いた成膜法を、VDSP(Vapor Deposition SP)(登録商標)と呼ぶことができる。
スパッタリング法による成膜時には、ターゲットと基板との間には、イオンとスパッタされた粒子とが存在する。例えば、ターゲットは、電源が接続されており、電位E0が与えられる。また、基板は、接地電位などの電位E1が与えられる。ただし、基板が電気的に浮いていてもよい。また、ターゲットと基板の間には電位E2となる領域が存在する。各電位の大小関係は、E2>E1>E0である。
プラズマ内のイオンが、電位差E2−E0によって加速され、ターゲットに衝突することにより、ターゲットからスパッタされた粒子がはじき出される。このスパッタされた粒子が成膜表面に付着し、堆積することにより成膜が行われる。また、一部のイオンはターゲットによって反跳し、反跳イオンとして形成された膜を介して、形成された膜を通過し、被成膜面と接する絶縁体275に取り込まれる場合がある。また、プラズマ内のイオンは、電位差E2−E1によって加速され、成膜表面を衝撃する。この際、一部のイオンは、絶縁体275内部まで到達する。イオンが絶縁体275に取り込まれることにより、イオンが取り込まれた領域が絶縁体275に形成される。つまり、イオンが酸素を含むイオンであった場合において、絶縁体275に過剰酸素領域が形成される。
絶縁体275に過剰な酸素を導入することで、絶縁体275中に過剰酸素領域を形成することができる。絶縁体275の過剰な酸素は、酸化物230の領域234に供給され、酸化物230の酸素欠損を補償することができる。
なお、絶縁体275は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることが好ましい。酸化窒化シリコンなどの材料は、過剰酸素領域を形成されやすい傾向がある。一方、上述の酸化窒化シリコンなどの材料と比較して、酸化物230は、スパッタリング法を用いた酸化膜を、酸化物230上に形成したとしても、過剰酸素領域が形成しにくい傾向がある。従って、過剰酸素領域を有する絶縁体275を、酸化物230の領域234の周辺に設けることで、酸化物230の領域234へ、絶縁体275の過剰酸素を効果的に供給することができる。
また、絶縁体273は、酸化アルミニウムを用いることが好ましい。酸化アルミニウムは、酸化物230と近接した状態で、熱処理を行うことで、酸化物230中の水素を引き抜く場合がある。なお、酸化物230と、酸化アルミニウムとの間に層242が設けられている場合、層242中の水素を酸化アルミニウムが吸収し、水素が低減された層242は、酸化物230中の水素を吸収する場合がある。従って、酸化物230中の水素濃度を低減することができる。また、絶縁体273と、酸化物230とを近接した状態で熱処理を行うことで、絶縁体273から酸化物230、絶縁体224、または絶縁体222に酸素を供給できる場合がある。
上記構成、または上記工程を組み合わせることで、酸化物230の選択的な低抵抗化を行うことができる。
つまり、酸化物230に低抵抗領域を形成する際に、ゲート電極として機能する導電体260、および絶縁体275をマスクとすることで、自己整合的に酸化物230は低抵抗化する。そのため、複数のトランジスタ200を同時に形成する場合、トランジスタ間の電気特性バラつきを小さくすることができる。また、トランジスタ200のチャネル長は、導電体260の幅、または絶縁体275の成膜膜厚により決定され、導電体260の幅を最小加工寸法とすることにより、トランジスタ200の微細化が可能となる。
以上より、各領域の範囲を適宜選択することにより、回路設計に合わせて、要求に見合う電気特性を有するトランジスタを容易に提供することができる。
また、酸化物半導体は、スパッタリング法などを用いて成膜できるため、高集積型の半導体装置を構成するトランジスタに用いることができる。また、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたトランジスタは、非導通状態において極めてリーク電流(オフ電流)が小さいため、低消費電力の半導体装置を提供できる。また、トランジスタ200は、オフ電流が小さいため、これを半導体装置に用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、あるいは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ないため、半導体装置の消費電力を十分に低減することができる。
以上より、オン電流が大きいトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。または、オフ電流が小さいトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。または、電気特性の変動を抑制し、安定した電気特性を有すると共に、信頼性を向上させた半導体装置を提供することができる。
以下では、本発明の一態様に係るメモリセル600を有する半導体装置の詳細な構成について説明する。以下において、特段の記載を行わない場合、トランジスタ500の詳細な構成についてもトランジスタ200の詳細な構成の記載を参酌するものとする。
導電体203は、図12(A)、および図13(A)に示すように、チャネル幅方向に延伸されており、導電体205に電位を印加する配線として機能する。なお、導電体203は、絶縁体212に埋め込まれて設けることが好ましい。
導電体205は、酸化物230、および導電体260と、重なるように配置する。また、導電体205は、導電体203の上に接して設けるとよい。また、導電体205は、絶縁体214および絶縁体216に埋め込まれて設けることが好ましい。
ここで、導電体260は、第1のゲート(フロントゲートともいう。)電極として機能する場合がある。また、導電体205は、第2のゲート(バックゲートともいう。)電極として機能する場合がある。その場合、導電体205に印加する電位を、導電体260に印加する電位と、連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ200の閾値電圧を制御することができる。特に、導電体205に負の電位を印加することにより、トランジスタ200の閾値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体205に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体260に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
また、導電体203上に導電体205を設けることで、第1のゲート電極、および配線としての機能を有する導電体260と、導電体203との距離を適宜設計することが可能となる。つまり、導電体203と導電体260の間に絶縁体214および絶縁体216などが設けられることで、導電体203と導電体260の間の寄生容量を低減し、導電体203と導電体260の間の絶縁耐圧を高めることができる。
また、導電体203と導電体260の間の寄生容量を低減することで、トランジスタ200のスイッチング速度を向上させ、高い周波数特性を有するトランジスタにすることができる。また、導電体203と導電体260の間の絶縁耐圧を高めることで、トランジスタ200の信頼性を向上させることができる。よって、絶縁体214および絶縁体216の膜厚を厚くすることが好ましい。なお、導電体203の延伸方向はこれに限られず、例えば、トランジスタ200のチャネル長方向に延伸されてもよい。
なお、導電体205は、図12(A)に示すように、酸化物230、および導電体260と重なるように配置する。また、導電体205は、酸化物230における領域234よりも、大きく設けるとよい。特に、図13(A)に示すように、導電体205は、酸化物230の領域234のチャネル幅方向と交わる端部よりも外側の領域においても、延伸していることが好ましい。つまり、酸化物230のチャネル幅方向における側面において、導電体205と、導電体260とは、絶縁体を介して重畳していることが好ましい。
上記構成を有することで、導電体260、および導電体205に電位を印加した場合、導電体260から生じる電界と、導電体205から生じる電界と、がつながり、酸化物230に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。
つまり、第1のゲート電極としての機能を有する導電体260の電界と、第2のゲート電極としての機能を有する導電体205の電界によって、領域234のチャネル形成領域を電気的に取り囲むことができる。本明細書において、第1のゲート電極、および第2のゲート電極の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(S−channel)構造とよぶ。
また、導電体205は、絶縁体214および絶縁体216の開口の内壁に接して第1の導電体が形成され、さらに内側に第2の導電体が形成されている。ここで、第1の導電体および第2の導電体の上面の高さと、絶縁体216の上面の高さは同程度にできる。なお、トランジスタ200では、導電体205の第1の導電体および導電体205の第2の導電体を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体205は、単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。
ここで、導電体205、または導電体203の第1の導電体は、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(NO、NO、NOなど)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい。)導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の少なくとも一の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)導電性材料を用いることが好ましい。なお、本明細書において、不純物、または酸素の拡散を抑制する機能とは、上記不純物、または上記酸素のいずれか一または、すべての拡散を抑制する機能とする。
導電体205、または導電体203の第1の導電体が酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体205、または導電体203の第2の導電体が酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウムまたは酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。したがって、導電体205、または導電体203の第1の導電体としては、上記導電性材料を単層または積層とすればよい。これにより、絶縁体210より基板側から、水素、水などの不純物が、導電体203、および導電体205を通じて、トランジスタ200側に拡散するのを抑制することができる。
また、導電体205の第2の導電体は、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。なお、導電体205の第2の導電体を単層で図示したが、積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
また、導電体203の第2の導電体は、配線として機能するため、導電体205の第2の導電体より導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体203の第2の導電体は積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
特に、導電体203に、銅を用いることが好ましい。銅は抵抗が小さいため、配線等に用いることが好ましい。一方、銅は拡散しやすいため、酸化物230に拡散することで、トランジスタ200の電気特性を低下させる場合がある。そこで、例えば、絶縁体214には、銅の透過性が低い酸化アルミニウム、または酸化ハフニウムなどの材料を用いることで、銅の拡散を抑えることができる。
なお、導電体205、絶縁体214、および絶縁体216は必ずしも設けなくともよい。その場合、導電体203の一部が第2のゲート電極として機能することができる。
絶縁体210、および絶縁体214は、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ200に混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。したがって、絶縁体210、および絶縁体214は、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(NO、NO、NOなど)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい。)絶縁性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の少なくとも一の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)絶縁性材料を用いることが好ましい。また、絶縁体280の上に、絶縁体210または絶縁体214と同様のバリア絶縁膜として機能する絶縁体を設けてもよい。これにより、絶縁体280の上から、水または水素などの不純物が、トランジスタ200に混入するのを抑制することができる。
例えば、絶縁体210として酸化アルミニウムなどを用い、絶縁体214として窒化シリコンなどを用いることが好ましい。これにより、水素、水などの不純物が絶縁体210および絶縁体214よりも基板側からトランジスタ200側に拡散することを抑制することができる。または、絶縁体224などに含まれる酸素が、絶縁体210および絶縁体214よりも基板側に、拡散することを抑制することができる。
また、導電体203の上に導電体205を積層して設ける構成にすることにより、導電体203と導電体205の間に絶縁体214を設けることができる。ここで、導電体203の第2の導電体に銅など拡散しやすい金属を用いても、絶縁体214として窒化シリコンなどを設けることにより、当該金属が絶縁体214より上の層に拡散するのを抑制することができる。
また、層間膜として機能する絶縁体212、絶縁体216、および絶縁体280は、絶縁体210、または絶縁体214よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
例えば、絶縁体212、絶縁体216、および絶縁体280として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)または(Ba,Sr)TiO(BST)などの絶縁体を単層または積層で用いることができる。またはこれらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
絶縁体220、絶縁体222、および絶縁体224は、ゲート絶縁体としての機能を有する。また、トランジスタ500に設けられる絶縁体524も、絶縁体224と同様にゲート絶縁体としての機能を有する。なお、本実施の形態では、絶縁体224と絶縁体524は分離されているが、絶縁体224と絶縁体524がつながっていてもよい。
ここで、酸化物230と接する絶縁体224は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む絶縁体を用いることが好ましい。つまり、絶縁体224には、過剰酸素領域が形成されていることが好ましい。このような過剰酸素を含む絶縁体を酸化物230に接して設けることにより、酸化物230中の酸素欠損を低減し、トランジスタ200の信頼性を向上させることができる。
過剰酸素領域を有する絶縁体として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm、または3.0×1020atoms/cm以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
また、絶縁体224が、過剰酸素領域を有する場合、絶縁体222は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の少なくとも一の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)ことが好ましい。
絶縁体222が、酸素の拡散を抑制する機能を有することで、絶縁体224が有する過剰酸素領域の酸素は、絶縁体220側へ拡散することなく、効率よく酸化物230へ供給することができる。また、導電体205が、絶縁体224が有する過剰酸素領域の酸素と反応することを抑制することができる。
絶縁体222は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)または(Ba,Sr)TiO(BST)などのいわゆるhigh−k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁体の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁体として機能する絶縁体にhigh−k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
特に、不純物、および酸素などの拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)絶縁性材料であるアルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体222を形成した場合、絶縁体222は、酸化物230からの酸素の放出や、トランジスタ200の周辺部から酸化物230への水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
または、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
また、絶縁体220は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、high−k材料の絶縁体と絶縁体220とを組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
なお、絶縁体220、絶縁体222、および絶縁体224が、2層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
酸化物230は、酸化物230aと、酸化物230a上の酸化物230bと、酸化物230b上の酸化物230cと、を有する。酸化物230b下に酸化物230aを有することで、酸化物230aよりも下方に形成された構造物から、酸化物230bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物230b上に酸化物230cを有することで、酸化物230cよりも上方に形成された構造物から、酸化物230bへの不純物の拡散を抑制することができる。
なお、酸化物230は、各金属原子の原子数比が異なる酸化物により、積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物230aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物230bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物230aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物230bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物230bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物230aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物230cは、酸化物230aまたは酸化物230bに用いることができる金属酸化物を、用いることができる。
また、酸化物230aおよび酸化物230cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物230bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物230aおよび酸化物230cの電子親和力が、酸化物230bの電子親和力より小さいことが好ましい。
ここで、酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230cの接合部において、伝導帯下端はなだらかに変化する。換言すると、酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230cの接合部における伝導帯下端は、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物230aと酸化物230bとの界面、および酸化物230bと酸化物230cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
具体的には、酸化物230aと酸化物230b、酸化物230bと酸化物230cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする。)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物230bがIn−Ga−Zn酸化物の場合、酸化物230aおよび酸化物230cとして、In−Ga−Zn酸化物、Ga−Zn酸化物、酸化ガリウムなどを用いるとよい。
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物230bとなる。酸化物230a、酸化物230cを上述の構成とすることで、酸化物230aと酸化物230bとの界面、および酸化物230bと酸化物230cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ200は高いオン電流を得られる。
また、酸化物230は、領域231、領域232、および領域234を有する。なお、領域231の少なくとも一部は、絶縁体273と近接する領域を有する。また、領域232は、少なくとも、絶縁体275と重畳する領域を有する。
なお、トランジスタ200をオンさせると、領域231a、または領域231bは、ソース領域、またはドレイン領域として機能する。一方、領域234の少なくとも一部は、チャネルが形成される領域として機能する。領域231と、領域234の間に領域232を有することで、トランジスタ200において、オン電流を大きくし、かつ、非導通時のリーク電流(オフ電流)を小さくすることができる。
トランジスタ200において、領域232を設けることで、ソース領域およびドレイン領域として機能する領域231と、チャネルが形成される領域234との間に高抵抗領域が形成されないため、トランジスタのオン電流、および移動度を大きくすることができる。また、領域232を有することで、チャネル長方向において、ソース領域およびドレイン領域と、第1のゲート電極(導電体260)とが重ならないため、両者の間で不要な容量が形成されることを抑制できる。また、領域232を有することで、非導通時のリーク電流を小さくすることができる。
つまり、各領域の範囲を適宜選択することにより、回路設計に合わせて、要求に見合う電気特性を有するトランジスタを容易に提供することができる。例えば、トランジスタ200をオフ電流が小さくなる構成とし、トランジスタ500をオン電流が大きくなる構成にすることができる。
酸化物230は、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、領域234となる金属酸化物としては、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
酸化物半導体を用いたトランジスタは、非導通状態において極めてリーク電流が小さいため、低消費電力の半導体装置を提供できる。また、酸化物半導体は、スパッタリング法などを用いて成膜できるため、高集積型の半導体装置を構成するトランジスタに用いることができる。
絶縁体250は、ゲート絶縁体として機能する。絶縁体250は、酸化物230cの上面に接して配置することが好ましい。絶縁体250は、加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。例えば、昇温脱離ガス分光法分析(TDS分析)にて、酸素分子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm、または3.0×1020atoms/cmである酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下の範囲が好ましい。
具体的には、過剰酸素を有する酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体250として、酸化物230cの上面に接して設けることにより、絶縁体250から、酸化物230bの領域234に効果的に酸素を供給することができる。また、絶縁体224と同様に、絶縁体250中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体250の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
また、絶縁体250が有する過剰酸素を、効率的に酸化物230へ供給するために、金属酸化物252を設けてもよい。従って、金属酸化物252は、絶縁体250からの酸素拡散を抑制することが好ましい。酸素の拡散を抑制する金属酸化物252を設けることで、絶縁体250から導電体260への過剰酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物230へ供給する過剰酸素量の減少を抑制することができる。また、過剰酸素による導電体260の酸化を抑制することができる。
なお、金属酸化物252は、第1のゲートの一部としての機能を有してもよい。例えば、酸化物230として用いることができる酸化物半導体を、金属酸化物252として用いることができる。その場合、導電体260をスパッタリング法で成膜することで、金属酸化物252の電気抵抗値を低下させて導電体とすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。
また、金属酸化物252は、ゲート絶縁体の一部としての機能を有する場合がある。したがって、絶縁体250に酸化シリコンや酸化窒化シリコンなどを用いる場合、金属酸化物252は、比誘電率が高いhigh−k材料である金属酸化物を用いることが好ましい。当該積層構造とすることで、熱に対して安定、かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。したがって、物理膜厚を保持したまま、トランジスタ動作時に印加するゲート電位の低減化が可能となる。また、ゲート絶縁体として機能する絶縁体の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。
トランジスタ200において、金属酸化物252を単層で示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、ゲート電極の一部として機能する金属酸化物と、ゲート絶縁体の一部として機能する金属酸化物とを積層して設けてもよい。
金属酸化物252を有することで、ゲート電極として機能する場合は、導電体260からの電界の影響を弱めることなく、トランジスタ200のオン電流の向上を図ることができる。または、ゲート絶縁体として機能する場合は、絶縁体250と、金属酸化物252との物理的な厚みにより、導電体260と、酸化物230との間の距離を保つことで、導電体260と酸化物230との間のリーク電流を抑制することができる。従って、絶縁体250、および金属酸化物252との積層構造を設けることで、導電体260と酸化物230との間の物理的な距離、および導電体260から酸化物230へかかる電界強度を、容易に適宜調整することができる。
具体的には、金属酸化物252として、酸化物230に用いることができる酸化物半導体を低抵抗化することで、金属酸化物252として用いることができる。または、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、または、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
特に、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱履歴において、結晶化しにくいため好ましい。なお、金属酸化物252は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
第1のゲート電極として機能する導電体260は、導電体260a、および導電体260a上の導電体260bを有する。導電体260aは、導電体205の第1の導電体と同様に、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(NO、NO、NOなど)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の少なくとも一の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
導電体260aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、絶縁体250、および金属酸化物252が有する過剰酸素により、導電体260bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウムまたは酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。
また、導電体260bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体260は、配線として機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体260bは積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
また、図13(A)に示すように、導電体205が、酸化物230のチャネル幅方向と交わる端部よりも外側の領域において、延伸している場合、導電体260は、当該領域において、絶縁体250を介して、重畳していることが好ましい。つまり、酸化物230の側面の外側において、導電体205と、絶縁体250と、導電体260とは、積層構造を形成することが好ましい。
上記構成を有することで、導電体260、および導電体205に電位を印加した場合、導電体260から生じる電界と、導電体205から生じる電界と、がつながり、酸化物230に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。
つまり、第1のゲート電極としての機能を有する導電体260の電界と、第2のゲート電極としての機能を有する導電体205の電界によって、領域234のチャネル形成領域を電気的に取り囲むことができる。
また、導電体260bの上に、バリア膜として機能する絶縁体270を配置してもよい。絶縁体270は、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。これにより、絶縁体270よりも上方からの酸素で導電体260が酸化するのを抑制することができる。また、絶縁体270よりも上方からの水または水素などの不純物が、導電体260および絶縁体250を介して、酸化物230に混入することを抑制することができる。
また、絶縁体270上に、ハードマスクとして機能する絶縁体271を配置することが好ましい。絶縁体271を設けることで、導電体260の加工の際、導電体260の側面が概略垂直、具体的には、導電体260の側面と基板表面のなす角を、75度以上100度以下、好ましくは80度以上95度以下とすることができる。導電体260をこのような形状に加工することで、次に形成する絶縁体275を所望の形状に形成することができる。
なお、絶縁体271に、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いることで、バリア膜としての機能を兼ねさせてもよい。その場合、絶縁体270は設けなくともよい。
バッファ層として機能する絶縁体275は、酸化物230cの側面、絶縁体250の側面、金属酸化物252の側面、導電体260の側面、および絶縁体270の側面に接して設ける。
例えば、絶縁体275として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンまたは樹脂などを有することが好ましい。特に、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンは、後の工程で、容易に過剰酸素領域を形成することができるため好ましい。
また、絶縁体275は、過剰酸素領域を有することが好ましい。加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体275として、酸化物230c、および絶縁体250と接して設けることで、絶縁体250から、酸化物230bの領域234に効果的に酸素を供給することができる。また、絶縁体275中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
絶縁体130は、比誘電率の大きい絶縁体を用いることが好ましく、絶縁体222などに用いることができる絶縁体を用いればよい。例えば、アルミニウム及びハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いることができる。アルミニウム及びハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。また、絶縁体130は、積層構造であってもよい、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などから、2層以上を選び積層構造としても良い。例えば、ALD法によって、酸化ハフニウム、酸化アルミニウムおよび酸化ハフニウムを順に成膜し、積層構造とすることが好ましい。酸化ハフニウムおよび酸化アルミニウムの膜厚は、それぞれ、0.5nm以上5nm以下とする。このような積層構造とすることで、容量値が大きく、かつ、リーク電流の小さな容量素子100とすることができる。
図12(A)に示すように、上面視において、絶縁体130の側面は、導電体110および導電体120の側面と一致しているが、これに限られるものではない。例えば、絶縁体130をパターン形成せずに、絶縁体130がトランジスタ200およびトランジスタ500を覆う構成にしてもよい。
導電体120は、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、図示しないが、導電体120は積層構造としても良く、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
絶縁体273は、少なくとも層242、絶縁体275、層542、絶縁体575、および導電体120上に設けられる。絶縁体273をスパッタリング法で成膜することで、絶縁体275および絶縁体575へ過剰酸素領域を設けることができる。これにより、当該過剰酸素領域から、酸化物230および酸化物530中に酸素を供給することができる。また、絶縁体273を、酸化物230の層242、および酸化物530の層542上に設けることで、酸化物230および酸化物530中の水素を、絶縁体273へと引き抜くことができる。
例えば、絶縁体273として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、または、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
特に、酸化アルミニウムはバリア性が高く、0.5nm以上3.0nm以下の薄膜であっても、水素、および窒素の拡散を抑制することができる。
また、絶縁体273の上に、絶縁体274を設ける。絶縁体274は、バリア性を有し、水素濃度が低減された膜を用いることが好ましい。例えば、絶縁体274としては、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコンなどを用いるとよい。バリア性を有する絶縁体273と、バリア性を有する絶縁体274を設けることで、層間膜など、他の構造体から不純物がトランジスタ200へ拡散することを抑制することができる。
また、絶縁体274の上に、層間膜として機能する絶縁体280を設けることが好ましい。絶縁体280は、絶縁体224などと同様に、膜中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。なお、絶縁体280の上に絶縁体210と同様の絶縁体を設けてもよい。当該絶縁体をスパッタリング法で成膜することで、絶縁体280の不純物を低減することができる。
また、絶縁体280、絶縁体274、および絶縁体273に形成された開口に、導電体240a、導電体240b、導電体540a、および導電体540bを配置する。導電体240aおよび導電体240bは、導電体260を挟んで対向して設ける。導電体540aおよび導電体540bは、導電体560を挟んで対向して設ける。なお、導電体240a、導電体240b、導電体540a、および導電体540bの上面の高さは、絶縁体280の上面と、同一平面上としてもよい。
なお、絶縁体280、絶縁体274、および絶縁体273の開口の内壁に接して導電体240aが形成されている。当該開口の底部の少なくとも一部には酸化物230の領域231aが位置しており、導電体240aが領域231aと接する。導電体540a、導電体540bについても同様である。
ここで、図14に示すように、導電体240aは、酸化物230の側面と重畳することが好ましい。特に、導電体240aは、酸化物230のチャネル幅方向と交わる側面において、A7側の側面、およびA8側の側面の双方または一方と重畳することが好ましい。また、導電体240aが、酸化物230のチャネル長方向と交わる側面において、A1側(A2側)の側面と重畳する構成にしてもよい。このように、導電体240aが、ソース領域またはドレイン領域となる領域231、および酸化物230の側面と重畳する構成とすることで、導電体240aとトランジスタ200のコンタクト部の投影面積を増やすことなく、コンタクト部の接触面積を増加させ、導電体240aとトランジスタ200の接触抵抗を低減することができる。これにより、トランジスタのソース電極およびドレイン電極の微細化を図りつつ、オン電流を大きくすることができる。また、酸化物230のソース領域またはドレイン領域となる領域231と接する導電体110も同様に酸化物230および層242と接することが好ましい。また、導電体540a、導電体540bについても同様である。
導電体240a、導電体240b、導電体540a、および導電体540bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体240a、導電体240b、導電体540a、および導電体540bは積層構造としてもよい。
ここで、例えば、絶縁体280、絶縁体274、および絶縁体273に開口を形成する際に、酸化物230において、領域231の低抵抗化した領域が除去され、低抵抗化していない酸化物230が露出する場合がある。その場合、導電体240の酸化物230と接する導電体(以下、導電体240の第1の導電体ともいう。)に用いる導電体として、金属膜、金属元素を有する窒化膜、または金属元素を有する酸化膜を用いるとよい。つまり、低抵抗化していない酸化物230と導電体240の第1の導電体とが接することで、金属化合物、または酸化物230に酸素欠損が形成され、酸化物230の領域231が、低抵抗化する。従って、導電体240の第1の導電体と接する酸化物230を低抵抗化することで、酸化物230と導電体240とのコンタクト抵抗を低減することができる。従って、導電体240の第1の導電体は、例えば、アルミニウム、ルテニウム、チタン、タンタル、タングステン、などの金属元素を含むことが好ましい。導電体540も同様の構造にすればよい。
また、導電体240および導電体540を積層構造とする場合、絶縁体280、絶縁体274、および絶縁体273と接する導電体には、導電体205の第1の導電体などと同様に、水または水素などの不純物の透過を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。例えば、タンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、ルテニウムまたは酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、水または水素などの不純物の透過を抑制する機能を有する導電性材料は、単層または積層で用いてもよい。当該導電性材料を用いることで、絶縁体280より上層から水素、水などの不純物が、導電体240および導電体540を通じて酸化物230および酸化物530に混入するのを抑制することができる。
また、図示しないが、導電体240および導電体540の上面に接して配線として機能する導電体を配置してもよい。配線として機能する導電体は、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、当該導電体は、積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。なお、当該導電体は、導電体203などと同様に、絶縁体に設けられた開口に埋め込むように形成してもよい。
<半導体装置の構成材料>
以下では、半導体装置に用いることができる構成材料について説明する。以下において、特段の記載を行わない場合、トランジスタ200に用いることができる構成材料は、トランジスタ500に用いることができるものとする。
以下に示す構成材料の成膜は、スパッタリング法、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、パルスレーザ堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、または原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法などを用いて行うことができる。
なお、CVD法は、プラズマを利用するプラズマCVD(PECVD:Plasma Enhanced CVD)法、熱を利用する熱CVD(TCVD:Thermal CVD)法、光を利用する光CVD(Photo CVD)法などに分類できる。さらに用いる原料ガスによって金属CVD(MCVD:Metal CVD)法、有機金属CVD(MOCVD:Metal Organic CVD)法に分けることができる。
プラズマCVD法は、比較的低温で高品質の膜が得られる。また、熱CVD法は、プラズマを用いないため、被処理物へのプラズマダメージを抑制することが可能な成膜方法である。例えば、半導体装置に含まれる配線、電極、素子(トランジスタ、容量素子など)などは、プラズマから電荷を受け取ることでチャージアップする場合がある。このとき、蓄積した電荷によって、半導体装置に含まれる配線、電極、素子などが破壊される場合がある。一方、プラズマを用いない熱CVD法の場合、こういったプラズマダメージが生じないため、半導体装置の歩留まりを高くすることができる。また、熱CVD法では、成膜中のプラズマダメージが生じないため、欠陥の少ない膜が得られる。
また、ALD法も、被処理物へのプラズマダメージを抑制することが可能な成膜方法である。よって、欠陥の少ない膜が得られる。なお、ALD法で用いるプリカーサには炭素などの不純物を含むものがある。このため、ALD法により設けられた膜は、他の成膜法により設けられた膜と比較して、炭素などの不純物を多く含む場合がある。なお、不純物の定量は、X線光電子分光法(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて行うことができる。
CVD法およびALD法は、ターゲットなどから放出される粒子が堆積する成膜方法とは異なり、被処理物の表面における反応により膜が形成される成膜方法である。したがって、被処理物の形状の影響を受けにくく、良好な段差被覆性を有する成膜方法である。特に、ALD法は、優れた段差被覆性と、優れた厚さの均一性を有するため、アスペクト比の高い開口部の表面を被覆する場合などに好適である。ただし、ALD法は、比較的成膜速度が遅いため、成膜速度の速いCVD法などの他の成膜方法と組み合わせて用いることが好ましい場合もある。
CVD法およびALD法は、原料ガスの流量比によって、得られる膜の組成を制御することができる。例えば、CVD法およびALD法では、原料ガスの流量比によって、任意の組成の膜を成膜することができる。また、例えば、CVD法およびALD法では、成膜しながら原料ガスの流量比を変化させることによって、組成が連続的に変化した膜を成膜することができる。原料ガスの流量比を変化させながら成膜する場合、複数の成膜室を用いて成膜する場合と比べて、搬送や圧力調整に掛かる時間を要さない分、成膜に掛かる時間を短くすることができる。したがって、半導体装置の生産性を高めることができる場合がある。
また、当該構成材料の加工はリソグラフィー法を用いて行えばよい。また、当該加工はドライエッチング法やウエットエッチング法を用いることができる。ドライエッチング法による加工は微細加工に適している。
リソグラフィー法では、まず、マスクを介してレジストを露光する。次に、露光された領域を、現像液を用いて除去または残存させてレジストマスクを形成する。次に、当該レジストマスクを介してエッチング処理することで導電体、半導体または絶縁体などを所望の形状に加工することができる。例えば、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、EUV(Extreme Ultraviolet)光などを用いて、レジストを露光することでレジストマスクを形成すればよい。また、基板と投影レンズとの間に液体(例えば水)を満たして露光する、液浸技術を用いてもよい。また、前述した光に代えて、電子ビームやイオンビームを用いてもよい。なお、電子ビームやイオンビームを用いる場合には、レジスト上に直接描画を行うため、上述のレジスト露光用のマスクは不要となる。なお、レジストマスクは、アッシングなどのドライエッチング処理を行う、ウエットエッチング処理を行う、ドライエッチング処理後にウエットエッチング処理を行う、またはウエットエッチング処理後にドライエッチング処理を行う、などで、除去することができる。
また、レジストマスクの代わりに絶縁体や導電体からなるハードマスクを用いてもよい。ハードマスクを用いる場合、当該構成材料上にハードマスク材料となる絶縁膜や導電膜を形成し、その上にレジストマスクを形成し、ハードマスク材料をエッチングすることで所望の形状のハードマスクを形成することができる。当該構成材料のエッチングは、レジストマスクを除去してから行ってもよいし、レジストマスクを残したまま行ってもよい。後者の場合、エッチング中にレジストマスクが消失することがある。当該構成材料のエッチング後にハードマスクをエッチングにより除去してもよい。一方、ハードマスクの材料が後工程に影響が無い、あるいは後工程で利用できる場合、必ずしもハードマスクを除去する必要は無い。
ドライエッチング装置としては、平行平板型電極を有する容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)エッチング装置を用いることができる。平行平板型電極を有する容量結合型プラズマエッチング装置は、平行平板型電極の一方の電極に高周波電源を印加する構成でもよい。または平行平板型電極の一方の電極に複数の異なった高周波電源を印加する構成でもよい。または平行平板型電極それぞれに同じ周波数の高周波電源を印加する構成でもよい。または平行平板型電極それぞれに周波数の異なる高周波電源を印加する構成でもよい。または高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置を用いることができる。高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置は、例えば、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)エッチング装置などを用いることができる。
[基板]
トランジスタ200およびトランジスタ500を形成する基板としては、例えば、絶縁体基板、半導体基板または導電体基板を用いればよい。絶縁体基板としては、例えば、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、安定化ジルコニア基板(イットリア安定化ジルコニア基板など)、樹脂基板などがある。また、半導体基板としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどの単体半導体基板、または炭化シリコン、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、酸化亜鉛、酸化ガリウムからなる化合物半導体基板などがある。さらには、前述の半導体基板内部に絶縁体領域を有する半導体基板、例えばSOI(Silicon On Insulator)基板などがある。導電体基板としては、黒鉛基板、金属基板、合金基板、導電性樹脂基板などがある。または、金属の窒化物を有する基板、金属の酸化物を有する基板などがある。さらには、絶縁体基板に導電体または半導体が設けられた基板、半導体基板に導電体または絶縁体が設けられた基板、導電体基板に半導体または絶縁体が設けられた基板などがある。または、これらの基板に素子が設けられたものを用いてもよい。基板に設けられる素子としては、容量素子、抵抗素子、スイッチ素子、発光素子、記憶素子などがある。
また、基板として、可撓性基板を用いてもよい。なお、可撓性基板上にトランジスタを設ける方法としては、非可撓性の基板上にトランジスタを作製した後、トランジスタを剥離し、可撓性基板である基板に転置する方法もある。その場合には、非可撓性基板とトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。また、基板が伸縮性を有してもよい。また、基板は、折り曲げや引っ張りをやめた際に、元の形状に戻る性質を有してもよい。または、元の形状に戻らない性質を有してもよい。基板は、例えば、5μm以上700μm以下、好ましくは10μm以上500μm以下、さらに好ましくは15μm以上300μm以下の厚さとなる領域を有する。基板を薄くすると、トランジスタを有する半導体装置を軽量化することができる。また、基板を薄くすることで、ガラスなどを用いた場合にも伸縮性を有する場合や、折り曲げや引っ張りをやめた際に、元の形状に戻る性質を有する場合がある。そのため、落下などによって基板上の半導体装置に加わる衝撃などを緩和することができる。すなわち、丈夫な半導体装置を提供することができる。
可撓性基板である基板としては、例えば、金属、合金、樹脂もしくはガラス、またはそれらの繊維などを用いることができる。また、基板として、繊維を編みこんだシート、フィルムまたは箔などを用いてもよい。可撓性基板である基板は、線膨張率が低いほど環境による変形が抑制されて好ましい。可撓性基板である基板としては、例えば、線膨張率が1×10−3/K以下、5×10−5/K以下、または1×10−5/K以下である材質を用いればよい。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリルなどがある。特に、アラミドは、線膨張率が低いため、可撓性基板である基板として好適である。
[絶縁体]
絶縁体としては、絶縁性を有する酸化物、窒化物、酸化窒化物、窒化酸化物、金属酸化物、金属酸化窒化物、金属窒化酸化物などがある。
例えば、トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁体の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁体として機能する絶縁体に、high−k材料を用いることで物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時の低電圧化が可能となる。一方、層間膜として機能する絶縁体には、比誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。したがって、絶縁体の機能に応じて、材料を選択するとよい。
また、比誘電率の高い絶縁体としては、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化物、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化窒化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化窒化物またはシリコンおよびハフニウムを有する窒化物などがある。
また、比誘電率が低い絶縁体としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンまたは樹脂などがある。
また、特に、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定である。そのため、例えば、樹脂と組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の低い積層構造とすることができる。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネートまたはアクリルなどがある。また、例えば、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは、比誘電率の高い絶縁体と組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
また、酸化物半導体を用いたトランジスタは、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体で囲うことによって、トランジスタの電気特性を安定にすることができる。
水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。具体的には、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
例えば、絶縁体273として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、または、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
特に、酸化アルミニウムはバリア性が高く、0.5nm以上3.0nm以下の薄膜であっても、水素、および窒素の拡散を抑制することができる。また、酸化ハフニウムは、酸化アルミニウムよりもバリア性が低いが、膜厚を厚くすることによりバリア性を高めることができる。したがって、酸化ハフニウムの膜厚を調整することで、水素、および窒素の適切な添加量を調整することができる。
例えば、ゲート絶縁体の一部として機能する絶縁体224および絶縁体250は、過剰酸素領域を有する絶縁体であることが好ましい。例えば、過剰酸素領域を有する酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを酸化物230と接する構造とすることで、酸化物230が有する酸素欠損を補償することができる。
また、例えば、ゲート絶縁体の一部として機能する絶縁体222において、アルミニウム、ハフニウム、およびガリウムの一種または複数種の酸化物を含む絶縁体を用いることができる。特に、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。
例えば、絶縁体220には、熱に対して安定である酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを用いることが好ましい。ゲート絶縁体として、熱に対して安定な膜と、比誘電率が高い積層構造とすることで、物理膜厚を保持したまま、ゲート絶縁体の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。
上記積層構造とすることで、ゲート電極からの電界の影響を弱めることなく、オン電流の向上を図ることができる。また、ゲート絶縁体の物理的な厚みにより、ゲート電極と、チャネルが形成される領域との間の距離を保つことで、ゲート電極とチャネル形成領域との間のリーク電流を抑制することができる。
絶縁体212、絶縁体216、絶縁体271、絶縁体275、および絶縁体280は、比誘電率の低い絶縁体を有することが好ましい。例えば、当該絶縁体は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンまたは樹脂などを有することが好ましい。または、当該絶縁体は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコンまたは空孔を有する酸化シリコンと、樹脂と、の積層構造を有することが好ましい。酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、樹脂と組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の低い積層構造とすることができる。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネートまたはアクリルなどがある。
絶縁体210、絶縁体214、絶縁体270、および絶縁体273としては、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体を用いればよい。絶縁体270および絶縁体273としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いればよい。
[導電体]
導電体とは、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウムなどから選ばれた金属元素を1種以上含む材料を用いることができる。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。
また、上記の材料で形成される導電層を複数積層して用いてもよい。例えば、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。
なお、トランジスタのチャネル形成領域に酸化物を用いる場合において、ゲート電極として機能する導電体には、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造を用いることが好ましい。この場合は、酸素を含む導電性材料をチャネル形成領域側に設けるとよい。酸素を含む導電性材料をチャネル形成領域側に設けることで、当該導電性材料から離脱した酸素がチャネル形成領域に供給されやすくなる。
特に、ゲート電極として機能する導電体として、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる金属元素および酸素を含む導電性材料を用いることが好ましい。また、前述した金属元素および窒素を含む導電性材料を用いてもよい。例えば、窒化チタン、窒化タンタルなどの窒素を含む導電性材料を用いてもよい。また、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、シリコンを添加したインジウム錫酸化物を用いてもよい。また、窒素を含むインジウムガリウム亜鉛酸化物を用いてもよい。このような材料を用いることで、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる水素を捕獲することができる場合がある。または、外方の絶縁体などから混入する水素を捕獲することができる場合がある。
導電体260、導電体203、導電体205、および導電体240としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウムなどから選ばれた金属元素を1種以上含む材料を用いることができる。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。
[金属酸化物]
酸化物230として、酸化物半導体として機能する金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう。)を用いることが好ましい。以下では、本発明に係る酸化物230に適用可能な金属酸化物について説明する。
金属酸化物は、少なくともインジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特にインジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
ここでは、金属酸化物が、インジウム、元素Mおよび亜鉛を有するIn‐M‐Zn酸化物である場合を考える。なお、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどとする。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。
なお、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。
〔金属酸化物の構成〕
以下では、本発明の一態様で開示されるトランジスタに用いることができるCAC(Cloud−Aligned Composite)−OSの構成について説明する。
なお、本明細書等において、CAAC(c−axis aligned crystal)、およびCAC(Cloud−Aligned Composite)と記載する場合がある。なお、CAACは結晶構造の一例を表し、CACは機能、または材料の構成の一例を表す。
CAC−OSまたはCAC−metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC−OSまたはCAC−metal oxideを、トランジスタの活性層に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(または正孔)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC−OSまたはCAC−metal oxideに付与することができる。CAC−OSまたはCAC−metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
また、CAC−OSまたはCAC−metal oxideは、導電性領域、および絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
また、CAC−OSまたはCAC−metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
また、CAC−OSまたはCAC−metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC−OSまたはCAC−metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC−OSまたはCAC−metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、および高い電界効果移動度を得ることができる。
すなわち、CAC−OSまたはCAC−metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
〔金属酸化物の構造〕
酸化物半導体(金属酸化物)は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC−OS(c−axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc−OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a−like OS:amorphous−like oxide semiconductor)および非晶質酸化物半導体などがある。
CAAC−OSは、c軸配向性を有し、かつa−b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC−OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することは難しい。すなわち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC−OSが、a−b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためである。
また、CAAC−OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
CAAC−OSは結晶性の高い金属酸化物である。一方、CAAC−OSは、明確な結晶粒界を確認することが難しいため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、金属酸化物の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC−OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない金属酸化物ともいえる。したがって、CAAC−OSを有する金属酸化物は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC−OSを有する金属酸化物は熱に強く、信頼性が高い。
nc−OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc−OSは、分析方法によっては、a−like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
a−like OSは、nc−OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する金属酸化物である。a−like OSは、鬆または低密度領域を有する。すなわち、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて、結晶性が低い。
酸化物半導体(金属酸化物)は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a−like OS、nc−OS、CAAC−OSのうち、二種以上を有していてもよい。
〔金属酸化物を有するトランジスタ〕
続いて、上記金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合について説明する。
なお、上記金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
また、トランジスタには、キャリア密度の低い金属酸化物を用いることが好ましい。金属酸化物膜のキャリア密度を低くする場合においては、金属酸化物膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。例えば、金属酸化物は、キャリア密度が8×1011/cm未満、好ましくは1×1011/cm未満、さらに好ましくは1×1010/cm未満であり、1×10−9/cm以上とすればよい。
また、高純度真性または実質的に高純度真性である金属酸化物膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
また、金属酸化物のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い金属酸化物をチャネル形成領域に有するトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
したがって、トランジスタの電気特性を安定にするためには、金属酸化物中の不純物濃度を低減することが有効である。また、金属酸化物中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
〔不純物〕
ここで、金属酸化物中における各不純物の影響について説明する。
金属酸化物において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、金属酸化物において欠陥準位が形成される。このため、金属酸化物におけるシリコンや炭素の濃度と、金属酸化物との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1017atoms/cm以下とする。
また、金属酸化物にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。したがって、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれている金属酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、金属酸化物中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる金属酸化物中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1016atoms/cm以下にする。
また、金属酸化物において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている金属酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。したがって、当該金属酸化物において、チャネル形成領域の窒素はできる限り低減されていることが好ましい。例えば、金属酸化物中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm未満、好ましくは5×1018atoms/cm以下、より好ましくは1×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm以下とする。
また、金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。当該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。したがって、水素が含まれている金属酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、金属酸化物中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、金属酸化物において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm未満、好ましくは1×1019atoms/cm未満、より好ましくは5×1018atoms/cm未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm未満とする。
不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
<半導体装置の変形例>
上記では、図2におけるトランジスタTr1、Tr2に対応するトランジスタが共にOSトランジスタである構成例について説明したが、トランジスタTr2に対応するトランジスタとしてSiトランジスタを用いることもできる。この場合、トランジスタTr2に対応するSiトランジスタの上方に、トランジスタTr1に対応するOSトランジスタを設けることができる。このような構成を有する半導体装置の構成例を、図16に示す。
図16に示す層310はトランジスタ300を有する層であり、層610はトランジスタ700を有する層である。なお、トランジスタ300はSiトランジスタであり、図2におけるトランジスタTr2に対応する。また、トランジスタ700はOSトランジスタであり、図2におけるトランジスタTr1に対応する。トランジスタ700の構成の詳細については、トランジスタ200の説明を参酌することができる。
トランジスタ300は、基板311上に設けられ、基板311の一部によって構成される半導体領域313、絶縁体315、導電体316、ソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域314aおよび低抵抗領域314bを有する。また、トランジスタ300は、素子分離絶縁層として機能する絶縁体321によって、他のトランジスタと電気的に分離されている。
絶縁体315はトランジスタ300のゲート絶縁膜としての機能を有し、導電体316はトランジスタ300のゲートとしての機能を有する。そして、トランジスタ300のゲートは、トランジスタ700のソース又はドレインの他方と接続されている。これにより、トランジスタ300及びトランジスタ700を用いたメモリセルを構成することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置又は演算回路が搭載された電子機器の例について説明する。
本発明の一態様に係る半導体装置は、様々な電子機器に搭載することができる。電子機器の例としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用などのモニタ、デジタルサイネージ(Digital Signage:電子看板)、パチンコ機などの大型ゲーム機などの比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、などが挙げられる。また、本発明の一態様に係る演算回路を電子機器に設けることにより、電子機器に人工知能を搭載することができる。
本発明の一態様の電子機器は、アンテナを有していてもよい。アンテナで信号を受信することで、表示部で映像や情報等の表示を行うことができる。また、電子機器がアンテナ及び二次電池を有する場合、アンテナを、非接触電力伝送に用いてもよい。
本発明の一態様の電子機器は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)を有していてもよい。
本発明の一態様の電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)を実行する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出す機能等を有することができる。図17及び図18に、電子機器の例を示す。
図17(A)に示すロボット2100は、演算装置2110、照度センサ2101、マイクロフォン2102、上部カメラ2103、スピーカ2104、ディスプレイ2105、下部カメラ2106および障害物センサ2107、移動機構2108を備える。なお、ここでは一例として、人型のロボットを示している。
ロボット2100において、演算装置2110、照度センサ2101、上部カメラ2103、下部カメラ2106および障害物センサ2107等に、上記半導体装置又は演算回路を使用することができる。
マイクロフォン2102は、使用者の話し声及び環境音等を検知する機能を有する。また、スピーカ2104は、音声を発する機能を有する。ロボット2100は、マイクロフォン2102およびスピーカ2104を用いて、使用者とコミュニケーションをとることが可能である。
ディスプレイ2105は、種々の情報の表示を行う機能を有する。ロボット2100は、使用者の望みの情報をディスプレイ2105に表示することが可能である。ディスプレイ2105は、タッチパネルを搭載していてもよい。
上部カメラ2103および下部カメラ2106は、ロボット2100の周囲を撮像する機能を有する。また、障害物センサ2107は、ロボット2100が二足歩行で前進する際の進行方向における障害物の有無を察知することができる。ロボット2100は、上部カメラ2103、下部カメラ2106および障害物センサ2107を用いて、周囲の環境を認識し、安全に移動することが可能である。
図17(B)は、自動車の一例を示す外観図である。自動車2980は、カメラ2981等を有する。また、自動車2980は、赤外線レーダー、ミリ波レーダー、レーザーレーダーなど各種センサなどを備える。自動車2980は、カメラ2981が撮影した画像を解析し、歩行者の有無など、周囲の交通状況を判断し、自動運転を行うことができる。
自動車2980において、カメラ2981に上記半導体装置又は演算回路を用いることができる。
図17(C)に、互いに別々の言語で話す複数の人間のコミュニケーションにおいて、携帯電子機器2130に同時通訳を行わせる状況を示す。
携帯電子機器2130は、マイクロフォンおよびスピーカ等を有し、使用者の話し声を認識してそれを話し相手の話す言語に翻訳する機能を有する。携帯電子機器2130の演算装置に、上記半導体装置又は演算回路を使用することができる。
図18(A)は、飛行体2120を示す外観図である。飛行体2120は、演算装置2121と、プロペラ2123と、カメラ2122と、を有し、自立して飛行する機能を有する。
飛行体2120において、演算装置2121およびカメラ2122に上記半導体装置又は演算回路を用いることができる。
図18(B−1)及び図18(B−2)に、飛行体2120の使用形態の例を示す。図18(B−1)に示すように、飛行体2120は貨物2124の運搬に用いることができる。また、図18(B−2)に示すように、飛行体2120に農薬を封入した容器2125を搭載し、飛行体2120を農薬の散布に用いることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。
10 半導体装置
20 演算回路
100 容量素子
110 導電体
120 導電体
130 絶縁体
200 トランジスタ
203 導電体
205 導電体
210 絶縁体
212 絶縁体
214 絶縁体
216 絶縁体
220 絶縁体
222 絶縁体
224 絶縁体
230 酸化物
231 領域
232 領域
234 領域
239 領域
240 導電体
242 層
250 絶縁体
252 金属酸化物
260 導電体
270 絶縁体
271 絶縁体
273 絶縁体
274 絶縁体
275 絶縁体
280 絶縁体
300 トランジスタ
310 層
311 基板
313 半導体領域
314a 低抵抗領域
314b 低抵抗領域
315 絶縁体
316 導電体
321 絶縁体
500 トランジスタ
503 導電体
505 導電体
524 絶縁体
530 酸化物
540 導電体
542 層
550 絶縁体
552 金属酸化物
560 導電体
570 絶縁体
571 絶縁体
575 絶縁体
600 メモリセル
610 層
700 トランジスタ
2100 ロボット
2101 照度センサ
2102 マイクロフォン
2103 上部カメラ
2104 スピーカ
2105 ディスプレイ
2106 下部カメラ
2107 障害物センサ
2108 移動機構
2110 演算装置
2120 飛行体
2121 演算装置
2122 カメラ
2123 プロペラ
2124 貨物
2125 容器
2130 携帯電子機器
2980 自動車
2981 カメラ

Claims (6)

  1. メモリセルと、差分回路と、を有し、
    前記メモリセルは、第1の回路と、第2の回路と、を有し、
    前記第1の回路及び前記第2の回路は、第1のデータを格納する機能と、前記第1のデータと第2のデータの乗算を行う機能と、を有し、
    前記第1のデータの値が正である場合、前記第1のデータの反転データが前記第2の回路に格納され、
    前記第1のデータの値が負である場合、前記第1のデータが前記第1の回路に格納され、
    前記第1の回路は、第1の配線を介して前記差分回路と電気的に接続され、
    前記第2の回路は、第2の配線を介して前記差分回路と電気的に接続され、
    前記差分回路は、前記第1の配線に流れる電流と、前記第2の配線に流れる電流と、の差に相当する電流を出力する機能を有する半導体装置。
  2. 請求項1において、
    前記第1の回路は、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、第1の容量素子と、を有し、
    前記第2の回路は、第3のトランジスタと、第4のトランジスタと、第2の容量素子と、を有し、
    前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第2のトランジスタのゲート及び前記第1の容量素子と電気的に接続され、
    前記第3のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第4のトランジスタのゲート及び前記第2の容量素子と電気的に接続され、
    前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第1の配線と電気的に接続され、
    前記第4のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第2の配線と電気的に接続され、
    前記第1のトランジスタ及び前記第3のトランジスタは、チャネル形成領域に酸化物半導体を有する半導体装置。
  3. 請求項2において、
    前記第2のトランジスタのゲートには、参照データに対応する電位に、前記第1のデータに対応する電位を加算した電位が保持され、
    前記第4のトランジスタのゲートには、参照データに対応する電位から、前記第1のデータに対応する電位を差し引いた電位が保持される半導体装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項において、
    オフセット回路を有し、
    前記オフセット回路は、第3の配線を介して前記差分回路と電気的に接続され、
    前記オフセット回路は、第1の電流と第2の電流の差分を検出する機能を有し、
    前記第1の電流は、前記第2のデータが前記メモリセルに入力されていないときに、前記第3の配線に流れる電流であり、
    前記第2の電流は、前記第2のデータが前記メモリセルに入力されているときに、前記第3の配線に流れる電流である半導体装置。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の半導体装置と、活性化関数回路と、を有し、
    前記半導体装置により、ニューラルネットワークの積和演算が行われる演算回路。
  6. 請求項5に記載の演算回路を有する電子機器。
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