JP2019002429A - 上下動抑制装置および制振装置 - Google Patents
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Abstract
Description
かかる制振装置のフレーム構造や、ワイヤとフレームとの取り合い、ワイヤとマスとの取り合い等は、十分に検証を重ねて定められたものであるため、容易には変更できない。ワイヤとの取り合い部分には、典型的には、ワイヤの軸周りに結合したナット状の部材が使用される。
この取り合い部分の構造を考慮すると、マス、懸垂ワイヤ、およびフレームからなる制振装置に、特許文献2のように、軸部材が外筒から引き出される向きに引っ張られたときには軸部材および内筒と外筒とが相対変位し、逆向きに引っ張られたときには軸部材および内筒と外筒とが相対変位しないように両端部が構成された制振ダンパを適用するのは難しい。
さらに、特許文献2の制振ダンパは、軸部材が外筒から引き出される向きとは逆向きに引っ張られたときには、内筒と外筒とが相対変位しないため、粘弾性体により振動エネルギーが吸収されない。そのため、特許文献2の制振ダンパを適用できたとしても、振動系の上下動の応答を低減する効果が十分でない。
摩擦付与物として、ブラシを用いることが好ましい。
まず、図1を参照し、第1〜第7実施形態に共通する適用対象としての制振装置10を説明する。
図1に示す制振装置10は、風揺れやあるいは地震への対策としてビルや鉄塔等の高層建造物の主に上層フロア10Fや、屋上部分に設置される。
制振装置10は、マス11と、マス11を揺動可能に懸垂する複数の軸部材12と、それらの軸部材12を支持する金属製のフレーム13とを含んで構成された振動系100を備える。
第1取付部121および第2取付部122は、ワイヤ12Wの軸周りに結合したナット状の金属部材である。
複数の軸部材12のそれぞれの軸周りに、後述する上下動抑制装置1〜7が設置される。
軸部材12の第2取付部122は、マス11と結合する。
本実施形態の制振装置10は、4つの軸部材12を備えている。フレーム13やマス11の形状等に応じて、適宜な数の軸部材12を備えることができる。
本発明の第1実施形態に係る上下動抑制装置を説明する。
図2(a)および(b)に示す上下動抑制装置1は、上下方向に延びた軸部材12の軸周りに配置される円筒状の筒20と、第1弾性体シール21と、第2弾性体シール22と、筒20の内側に充填される粘性充填物23とを備える。
第2弾性体シール21も、円環状に形成されており、軸部材12の軸方向の下方側で筒20の下端部の内壁20Aと第2取付部122の外周部との間を封止する。この第2弾性体シール21により、筒20の下端部と軸部材12とが柔に結合されることとなる。
第1取付部121および第2取付部122は、第1、第2取付部121,122と筒20との間の隙間を密閉可能なゴム等の弾性材料から構成することができる。この第1、第2弾性体シール21,22を介して筒20が軸部材12に支持される。
なお、粘性充填物23により振動減衰効果を十分に得るために、筒20の内側に粘性充填物23が満タンに充填されていることが好ましいが、筒20の内側の上部に空隙が残されていてもよい。空隙が残されている場合も、粘性充填物23が筒20の内側に「充填」されているものとする。
上下動抑制装置1は、既設の制振装置10にも適用することができる。その場合、例えば、下記の手順により施工する。
第2取付部122からマス11を取り外し、軸部材12を第2取付部122側から筒20に通すことで、軸部材12の軸周りに筒20を配置する。なお、筒20の半割体(図4(d)参照)を使用する場合は、マス11を取り外す必要がない。軸部材12の周りに半割体を配置した後、溶接すればよい。
次いで、筒20の上端側から筒20内に、粘性充填物23をほぼ満タン量となるまで充填する。
そして、筒20の上端部の内壁20Aと第1取付部121との間に第1弾性体シール21を装着する。
以上により、上下動抑制装置1の施工を完了する。
第1、第2弾性体シール21,22により軸部材12が筒20に柔に結合されているため、上述したフロア10Fと振動系100との固有振動数の近接により軸部材12が大きい変位で軸方向に引っ張られたり縮んだりする際に、筒20は動かずにその場に留まろうとする。このとき、筒20の内側に充填されている粘性充填物23が、筒20と軸部材12との相対的な変位の振動のエネルギーを熱に変換することで、振動エネルギーを消散させる。つまり、振動系100およびフロア10Fの上下動に対して減衰を付与し、上下動を抑制することができる。
減衰要素である粘性充填物23が発生させる力である減衰力をF[N]、減衰係数をc[Ns/m]、速度をv[m/s]とすれば、1自由度減衰自由振動の基本式としてF=cvであり、軸部材12と筒20との相対的な速度vに比例した減衰力Fが得られることとなる。
したがって、上下動抑制装置1により、上下動の抑制に足りる十分な上下動抑制効果を得ることができる。
次に、図3(a)および(b)を参照し、本発明の第2実施形態に係る上下動抑制装置2を説明する。
以降の各実施形態では、第1実施形態と相違する事項を中心に説明する。第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付している。
第2実施形態の上下動抑制装置2は、第1実施形態の上下動抑制装置1(図2)が備えている構成要素に加えて、複数の可動フィン24(可動部材)を備える。なお、上下動抑制装置2が単一の可動フィン24を備えていてもよい。
本実施形態の可動フィン24は、図3(b)に示すように円形の板状の部材であり、筒20の内壁20Aと可動フィン24の外端24Aとの間には所定のクリアランスが設定されている。
可動フィン24の形態は、円形の板状に限らず、ワイヤ12Wの伸縮に伴い上下動し、それによって粘性充填物23へ粘性抵抗を付与する限りにおいて、適宜に定めることができる。
次に、図4(a)〜(e)を参照し、本発明の第3実施形態に係る上下動抑制装置3を説明する。
第3実施形態の上下動抑制装置3は、第2実施形態の上下動抑制装置2(図3)が備えている構成要素に加えて、筒20の内壁20Aに固定フィン25(固定部材)を備える。
固定フィン25は、内壁20Aに設置されて径方向内側に突出している。筒20と軸部材12とが上下方向に相対変位するとき、実質的に位置が固定されている固定フィン25に対して、可動フィン24がワイヤ12Wの軸方向変位に伴い上下動する。そのため、固定フィン25と可動フィン24との間に粘性充填物23が圧縮される。
最小の単位として、可動フィン24と固定フィン25とを1つずつ設けることが許容される。
第1の例を図4(b)および(c)に示し、第2の例を図4(d)および(e)に示している。
第1の例では、図4(b)に示すように、略矩形状の一対の固定板251,252から固定フィン25が構成されている。固定板251,252は、内端側に隙間26ができるように内壁20Aに設置される。図4(a)に示す複数の固定フィン25がいずれも一対の固定板251,252から構成されていると、隙間26は、筒20内で上下方向に連続する。
次に、図5(a)および(b)を参照し、本発明の第4実施形態に係る上下動抑制装置4を説明する。
第4実施形態の上下動抑制装置4は、第1実施形態の上下動抑制装置1(図2)と同様に、筒20と、第1、第2弾性体シール21,22と、粘性充填物23とに加えて、筒20の内側でワイヤ12Wの軸周りに配置される内筒123と、軸部材12の軸方向への変位を軸周りへの回転運動に変換する変換機構としてのボールねじ28および軸受291,292とを備える。
粘性充填物23は、筒20(外筒)と同軸に配置された内筒123の外壁123Aと外筒20の内壁20Aとの間に充填される。
ボールナット282は、第2軸受292により回転可能に支持されている。第2軸受292の外周部と筒20の内壁20Aとの間に介在する第2弾性体シール22により、筒20の下端部で軸部材12と筒20との間が封止されている。
したがって、本実施形態によれば、第1実施形態により得られる減衰効果と併せて、ボールねじ28による回転方向への変換および変位増幅に基づいて、振動系の上下動に対する抑制効果をより十分に得ることができる。
例えば、第1軸受291および第1弾性体シール21が内筒123の上端部の外壁123Aと筒20の内壁20Aとの間に装着されていてもよい。
また、図5に示す例とは逆に、ボールねじ28および第2軸受292を軸部材12の上端側に配置し、第1軸受291を軸部材12の下端側に配置することもできる。あるいは、上下両端側とも、ボールねじ28および軸受292を配置することもできる。
ボールねじ28に代えて、その他の直動回転変換機構を用いることもできる。
次に、図6(a)および(b)を参照し、本発明の第5実施形態に係る上下動抑制装置5を説明する。
第5実施形態の上下動抑制装置5は、上下方向への振動に減衰を付与する機構が第1実施形態(図2)とは相違する。第5実施形態では、摩擦により減衰を付与する。上下動抑制装置5は、粘性充填物23を備えていない。
このとき、軸部材12と共に軸方向に変位するブラシ31が筒20の内壁20Aを擦るため、摩擦抵抗により、振動系100およびフロア10Fの上下動に対して減衰を付与することができる。
したがって、構造物のフロア10Fに上下動抑制装置5が設置されることに伴ういわば弊害として、上下方向の固有振動数f0,f1(図1)の近接により上下方向の振動が大きくなったとしても、上下動を十分に抑制することができる。
ブラシ31に適切な剛性を与えていれば、ブラシ31の摩耗はさほど大きくなく、摩耗したとしても内壁20Aに接触しながらワイヤ12Wの軸方向変位に追随するので、長期間に亘り、振動減衰機能を維持しながら上下動抑制装置5を使用できる。
以上の観点より、上下動抑制装置5はメンテナンスが容易である。
なお、ブラシ31以外の摩擦付与物も採用することができる。
次に、図7(a)および(b)を参照し、本発明の第6実施形態に係る上下動抑制装置6を説明する。
第6実施形態の上下動抑制装置6は、第5実施形態の上下動抑制装置5(図6)が備えている構成要素に加えて、筒20の内壁20Aに配置される粘性体32を備える。
ブラシ31の線材が粘性体32に突き刺さり、内壁20Aに接触している。
粘性体32は、筒20の長さ方向の全体に亘って設ける方が減衰付与の効果が高いが、筒20の長さ方向の一部の区間にのみ設けることもできる。
次に、図8(a)および(b)を参照し、本発明の第7実施形態に係る上下動抑制装置7を説明する。
第7実施形態は、第5実施形態(図6)と第1実施形態(図2)とを組み合わせたものである。
第7実施形態の上下動抑制装置7は、第5実施形態の上下動抑制装置5(図6)が備えている構成要素に加えて、筒20の内側に充填される粘性充填物23を備える。粘性充填物23は、第1実施形態の上下動抑制装置1でも使用されていたものと同様である。
本発明の上下動抑制装置1〜7は、振動等の外力の入力に対してマス11をモータ等により駆動することで水平方向への振動応答を低減するタイプの制振装置にも適用することができる。
また、本発明の上下動抑制装置1〜7は、振動系の上下方向の振動応答を低減するため、制振装置以外にも適用することができる。
10 制振装置
10F フロア
11 マス
12 軸部材
12W ワイヤ
13 フレーム
13A 柱
13B 梁
13C 補助梁
14 基台
20 筒
20A 内壁
21 第1弾性体シール
21´ 第1弾性体
22 第2弾性体シール
22´ 第2弾性体
23 粘性充填物
24 可動フィン(可動部材)
24A 外端
25 固定フィン(固定部材)
26 隙間
28 ボールねじ(変換機構)
31 ブラシ(摩擦付与部材)
32 粘性体
100 振動系
121 第1取付部
122 第2取付部
123 内筒
123A 外壁
201,202 半割体
251,252 固定板
281 ねじ
282 ボールナット
291 第1軸受(変換機構)
292 第2軸受(変換機構)
L 分割線
f0,f1 固有振動数
Claims (12)
- 鉛直方向に延びた軸部材の軸周りに配置される筒と、
前記軸部材の軸方向の一方側で前記筒と前記軸部材との間を封止する第1弾性体シールと、
前記軸部材の軸方向の他方側で前記筒と前記軸部材との間を封止する第2弾性体シールと、
粘性材料または粘弾性材料からなり、前記筒の内側に充填される粘性充填物と、を備える、
ことを特徴とする上下動抑制装置。 - 前記軸部材は、ワイヤと、いずれも前記ワイヤの軸周りに結合される第1取付部および第2取付部と、を有し、
前記第1弾性体シールは、前記筒と前記第1取付部との間を封止し、
前記第2弾性体シールは、前記筒と前記第2取付部との間を封止する、
請求項1に記載の上下動抑制装置。 - 前記軸部材から径方向外側に突出し、前記軸部材の軸方向への変位に伴い前記筒の内側を上下動可能に前記軸部材に支持される1以上の可動部材をさらに備える、
請求項1または2に記載の上下動抑制装置。 - 前記筒の内壁に設置されて径方向内側に突出し、前記可動部材との間に前記粘性充填物を圧縮可能な1以上の固定部材をさらに備える、
請求項3に記載の上下動抑制装置。 - 前記軸部材に連結されて前記軸部材の軸方向の変位を軸周りへの回転運動に変換する変換機構をさらに備え、
前記軸部材は、
ワイヤと、前記ワイヤの軸周りに配置されて前記変換機構により軸周りに回転される内筒と、を有し、
前記粘性充填物は、前記筒の内壁と前記内筒の外壁との間に充填される、
請求項1または2に記載の上下動抑制装置。 - 鉛直方向に延びた軸部材の軸周りに配置される筒と、
前記筒を前記軸部材に支持する弾性体と、
前記軸部材に設けられて前記筒の内壁に接触する摩擦付与物と、を備える、
ことを特徴とする上下動抑制装置。 - 前記摩擦付与物は、ブラシである、
請求項6に記載の上下動抑制装置。 - 前記軸部材は、ワイヤと、前記ワイヤの軸周りに結合される取付部と、を有し、
前記弾性体は、前記筒と前記取付部との間に装着される、
請求項6または7に記載の上下動抑制装置。 - 粘性材料または粘弾性材料からなり、前記筒の内壁に配置される粘性体をさらに備える、
請求項6から8のいずれか一項に記載の上下動抑制装置。 - 粘性材料または粘弾性材料からなり、前記筒の内側に充填される粘性充填物をさらに備える、
請求項6から8のいずれか一項に記載の上下動抑制装置。 - マスと、
前記マスを懸垂する軸部材と、
前記軸部材を支持するフレームと、
前記軸部材に設けられる請求項1から10のいずれか一項に記載の上下動抑制装置と、を備える、
ことを特徴とする制振装置。 - 前記軸部材は、ワイヤと、いずれも前記ワイヤの軸周りに結合される第1取付部および第2取付部と、を有し、
前記第1取付部は、前記フレームと結合し、
前記第2取付部は、前記マスと結合する、
請求項11に記載の制振装置。
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- 2017-06-13 JP JP2017115575A patent/JP6942527B2/ja active Active
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