JP2019002196A - 耐震補強構造および耐震補強工法 - Google Patents
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Description
壁式構造は、柱や梁を使用せずに、耐力壁によって鉛直荷重や地震力のような水平荷重を支える構造であって、一般に耐震強度に優れており、低層住宅に多く適用されている。
これに対して、ラーメン構造は、柱と梁を剛接合して一体化した構造であって、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の中高層の建物に多く採用されている。ラーメン構造の建物の場合、柱と梁の接合箇所に地震時の荷重が加わるため、壁式構造の建物に比べて耐震強度に劣ると言われている。特に、1981年以前に着工されたラーメン構造の建物については、同年施行の新耐震基準を満たしておらず耐震性能に問題のあるものが多いと考えられる。
ラーメン構造を有する既存建物の耐震補強手段として、PC外付けフレーム工法と呼ばれるものが知られている。この工法は、例えば特許文献1に記載されているように、既存建物の外側に、プレキャスト鉄筋コンクリート(PC)よりなる外フレームを構築して、外フレームを既存建物の柱や梁と接合するものである。外フレームと既存建物との接合は、例えば、両者の所定箇所に打ち込んで対向状に配置したアンカーを、場所打ちコンクリートによって一体化することにより行われる。
また、その他の耐震補強手段として、鉄骨ブレースを用いる工法が知られている。この工法は、例えば特許文献2に記載されているように、既存建物の開口部に鉄骨ブレースを配置して接合するものである。鉄骨ブレースと既存建物の開口部との接合は、例えば、両者の所定箇所に打ち込んで対向状に配置したアンカーを、場所打ちコンクリートによって一体化することにより行われる。
そのため、特に、分譲マンション等の既存住宅においては、上記の工法による耐震補強対策は十分に進んでおらず、大規模地震の発生による建物損壊のリスクが依然として解消されないままであった。
なお、以下において、「建物の外壁」には、一般的な意味での建物の外壁の他に、外壁から突出したベランダ、ポーチ、廊下等の突出端面を含むものとする。
また、上記1)の耐震補強構造によれば、縦補強部材および横補強部材を建物の外壁に接着するだけで施工が完了するため、例えば、建物の大規模改修・補修工事を行うために建物の外壁の周囲に仮設足場を設置した状態で、大規模改修・補修工事に先行して施工することが可能であり、したがって、特許文献1,2記載の従来工法と比べて、廉価でかつ短期間で施工を行うことができる上、施工中および施工後に居住環境を阻害するおそれもない。
また、上記3)の耐震補強構造によれば、縦補強部材を構成する横断面L形の鋼材の裏面にゴム製または樹脂製の被接着層が形成されているので、コンクリート等よりなる外壁との馴染みが良くなり、接着性が向上する。
したがって、上記4)の耐震補強工法によれば、例えば、建物の大規模改修・補修工事を行うために建物の外壁の周囲に仮設足場を設置した状態で、大規模改修・補修工事に先行して施工することが可能であって、特許文献1,2記載の従来工法と比べて、廉価でかつ短期間で施工を行うことができる上、施工中および施工後に居住環境を阻害するおそれもない。
図1に示すように、マンション(1)は、全体が略箱形のものであって、ラーメン構造、すなわち、地上部の躯体が柱および梁(図示略)によって構成された構造を有している。梁は、マンション(1)の外壁(10)のうち、最上層における庇と窓との間の高さ位置(12)および最上層以外の各層におけるベランダと窓との間の高さ位置(12)に対応して設けられている(図2参照)。
各縦補強部材(2)は、通常、所定長さの単位体(20)を、マンション(1)の地上部の高さに合わせて必要数だけ上下直列状に連結することにより形成されている。単位体(20)の長さは、後述するようにマンション(1)の周囲に仮設足場を組んだ状態で施工が行われることを考慮して、足場支柱の最大長さである3600mm以下とするのが好ましい。単位体(20)どうしの連結手段は、特に限定されないが、例えば図2に示すように、上位の単位体(20)の下端部における鋼材(21)の表面側に溶接等によって接合されかつ横断面略U形に折り曲げられた鋼片よりなる掛止部(23)に、下位の単位体(20)の上端部における鋼材(21)の表面側に溶接等によって接合されかつ上部が横断面略逆U形に折り曲げられた鋼片よりなる被掛止部(24)を掛け止めることにより、両単位体(20)を連結する構造を採用することができる。
縦補強部材(2)の外壁(20)への接着には、エポキシ樹脂系接着剤が好適に用いられるが、その他の接着剤、例えばアクリル樹脂系接着剤等を使用することも可能である。
図2および図3に示すように、横補強部材(3)は、マンション(1)の外壁(10)の各コーナー部(11)において、縦補強部材(2)の外表面側に直交状に配されている。したがって、横補強部材(3)は、各縦補強部材(2)を外壁(10)のコーナー部(11)に保持して、4つの縦補強部材(2)を連結一体化する機能も果たしている。横補強部材(3)と縦補強部材(2)とは、通常、両者(3)(2)の熱膨張率の相違を考慮して、被接着状態となされる。また、外壁(10)と縦補強部材(2)との境界部には、両者(10)(2)の段差を埋めて横補強部材(3)に長さ方向の弛みが生じないようにするために、モルタル等よりなる充填材(14)を平面より見て楔状に設けるのが好ましい(図3参照)。
横補強部材(3)の外壁(20)への接着には、エポキシ樹脂系接着剤が好適に用いられ、また、横補強部材(3)の両端部どうしの接着や、横補強部材(3)を構成する複数の材料どうしの接着にも、エポキシ樹脂系接着剤を用いるのが好ましいが、その他の接着剤、例えばアクリル樹脂系接着剤等を使用することも可能である。
なお、横補強部材(3)は、図1,2に示すように、少なくともマンション(1)の外壁(10)における梁に対応する高さ位置(12)に設けられていれば足りるが、これに加えて、例えば、マンション(1)の各層におけるベランダ、ポーチ、廊下の突出端面およびこれらに対応する高さ位置の外壁(10)部分に鉢巻状に接着されていてもよい。
まず、マンション(1)の外壁(10)の周囲には、大規模改修・補修工事を行うための仮設足場(図示略)が設置されている。
そして、4つの縦補強部材(2)を用意し、これらを、チェーンブロックや足場リフト等を用いて、マンション(1)の外壁(10)の4つのコーナー部(11)に順次配置する。そして、各縦補強部材(2)の被接着層(22)を、エポキシ樹脂系接着剤等を用いて、外壁(10)のコーナー部(11)に接着し、所定期間養生させる(第1の工程)。
次いで、所要数の横補強部材(3)を用意し、これらを、エポキシ樹脂系接着剤等を用いて、マンション(1)の外壁(10)における梁に対応する高さ位置(12)に接着し、所定期間養生させる(第2の工程)。
その後、必要に応じて、縦補強部材(2)および横補強部材(3)が目立たないように、これらの部材(2)(3)の表面を、外壁(10)とほぼ同色の塗料を用いて塗装する。
上記の各工程は、外壁(10)と仮設足場の先端との間の300〜400mm程度の隙間を利用して、大規模改修・補修工事に先行して行われる。
こうして、耐震補強構造の施工が完了する。
したがって、上記の耐震補強工法によれば、既存のマンション(1)において、大規模改修・補修工事を行うためにマンション(1)の外壁(10)の周囲に仮設足場(図示略)を設置した状態で、大規模改修・補修工事に先行して施工することが可能であって、施工自体も、実質的には、外壁(10)の所定箇所(11)(12)に縦補強部材(2)および横補強部材(3)を接着する工程のみであるため、工期が短期間で済む上、施工費用も安く抑えられる。また、上記工法によれば、重機等の使用を必要とせず、施工者も選ばない。さらに、上記工法によれば、縦補強部材(2)を地面に打ち込んだり、縦補強部材(2)および横補強部材(3)を取り付けるためにマンション(1)自体にアンカーを打ち込んだりする必要がないので、マンション(1)に居住者が居住したままで施工することができ、施工中も振動や騒音によって居住環境が損なわれるおそれがなく、さらには、施工後も、窓等の開口部が縦補強部材(2)および横補強部材(3)によって遮られることがないので、居住環境は阻害されない。
また、この発明による耐震補強構造および耐震補強工法は、新設の建物にも適用可能である。
(10):外壁
(11):コーナー部
(12):梁に対応する高さ位置
(2):縦補強部材
(3):横補強部材
Claims (4)
- ラーメン構造を有する略箱形の建物のための耐震補強構造であって、剛性材料からなりかつ前記建物の外壁の4つのコーナー部に接着されて地面から縁切り状態となされた横断面L形の縦補強部材と、高引張強度材料からなりかつ前記建物の外壁のうち少なくとも梁に対応する高さ位置に外壁を取り巻くように接着された帯状の横補強部材とを備えている、耐震補強構造。
- 横補強部材が、高引張強度を有する難燃性化学繊維製シート材からなる、請求項1記載の耐震補強構造。
- 縦補強部材が、裏面にゴム製または樹脂製の被接着層が形成された横断面L形の鋼材からなる、請求項1または2記載の耐震補強構造。
- ラーメン構造を有する略箱形の建物のための耐震補強工法であって、前記建物の外壁の4つのコーナー部に、剛性材料からなる横断面L形の縦補強部材を接着する第1の工程と、前記建物の外壁のうち少なくとも梁に対応する高さ位置に、高引張強度材料からなる帯状の横補強部材を、外壁を取り巻くように接着する第2の工程とを含んでいる、耐震補強工法。
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