JP2019001960A - はく離性樹脂組成物および保護シート - Google Patents

はく離性樹脂組成物および保護シート Download PDF

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Abstract

【課題】アクリル系樹脂を主体とし、加熱を伴う製造工程に供された場合であってもはく離性が維持される保護シートを形成することができる、はく離性樹脂組成物を提供する。【解決手段】本発明により、基材の表面にはく離性の保護シートを形成するための樹脂組成物であって、アクリル系樹脂と、溶剤と、柔軟性維持添加剤と、を含む、はく離性樹脂組成物が提供される。上記アクリル系樹脂は、モノマー成分として少なくともガラス転移温度が0℃以下のアクリル酸エステルを含み、上記柔軟性維持添加剤は、オレイン酸以外のオレイン酸誘導体を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、はく離性樹脂組成物とこれを用いた保護シートに関する。
電気・電子部品等の製造に際し、従来より、製造品の表面の一部分をはく離性の樹脂シートで一時的に保護することが行われている。例えばプリント配線基板のめっき時やはんだ実装時に、この保護シートによって基板表面の保護すべき部分をマスクすることで、めっき液の浸入や、めっき液やはんだの飛沫などによる汚染から基板表面を保護することができる。また、保護シートは、製品の表面を保護する必要がなくなったときに、容易にはく離できることが要求される。かかる保護シートは、一般には、ポリ塩化ビニル等からなる支持フィルムに粘着層を備えるはく離性フィルムとして構成されている。はく離性フィルムは、ロール媒体の形態で提供され、使用時には、フィルム状のマスクをロール媒体からはく離して引き出し、保護表面に貼り付けられる。
その一方で、この種の保護シートを形成するための、ペースト状の樹脂組成物が提供されてもいる。例えば特許文献1には、ポリ塩化ビニルと可塑剤とを主成分として含む、マスキング用の樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物は、スクリーン印刷や刷毛塗りなどで所定の部分に供給された後、100〜150℃で数分〜数10分間程度加熱することによって、ポリ塩化ビニルと可塑剤とが相溶して樹脂シートを形成する。この樹脂組成物によると、マスキングが求められる部位のみを選択的かつ細かにマスキングすることができ、形成されるシートの寸法や形状を製品に合わせて柔軟に対応させ得る点等において上述のはく離性フィルムよりも好ましい。
なお、ポリ塩化ビニル等の塩素系樹脂からなる保護シートは、比較的安価で、強度、耐候性および耐熱性等に優れているものの、はく離後には特別管理産業廃棄物として処分する必要がある。そこで、特別管理産業廃棄物としての処分が不要な、塩素系樹脂を含まない保護シートが提供されてもいる。例えば特許文献2には、アクリル系樹脂からなる上層部と下層部とを備える2層ないしは多層構造の保護シートが開示されている。また、特許文献3には、ガラス転移温度の異なる2種類のアクリル系コポリマーの多段階重合物を含むはく離性樹脂組成物が開示されている。
特開2004−014945号公報 特開平06−279711号公報 特開2001−89697号公報
ところで近年では、スマートフォンやタブレット端末、カーナビゲーションシステムなどの普及と共に、ユーザーが画面に表示された部分に触れたり押したりすることで電子機器を感覚的に操作可能にするタッチパネルの需要が増えている。このタッチパネルの製造では、タッチセンサ部にてITOのセンサパターンを形成した後、形成されたITOセンサを保護するために保護フィルムが使用されている。この保護フィルムは、ITOパターンを形成後、タッチパネルが組み立てられるまでの間、額縁配線工程などの各種の工程等においてITOパターンを保護する。
本発明者らは、このタッチセンサ用の保護フィルムを、アクリル系のはく離性樹脂組成物を利用して形成することを検討した。ここで、タッチパネルの額縁配線は、熱硬化性あるいは乾燥硬化性の配線ペーストで形成する場合がある。したがって、保護フィルムは、自身を形成する加熱処理の後に、100℃以上の温度(例えば100℃以上170℃以下)に長時間(例えば60分間以上)晒され得る。しかしながら、上記のようなはく離性樹脂組成物により形成されるアクリル樹脂系の保護シートは、このような高温に長時間さらされた場合、シートが硬化または変質するなどして、はく離が重くなったり、はく離ができずに保護シート自体が破断したりするという問題があった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、アクリル系樹脂を主体とし、加熱を伴う製造工程に供された場合であってもはく離性が維持される保護シートを形成することができる、はく離性樹脂組成物を提供することにある。また、関連する他の目的は、このはく離性樹脂組成物により形成される保護シートを提供することにある。
ここに開示される技術によると、基材の表面にはく離性の保護シートを形成するための樹脂組成物であって、アクリル系樹脂と、溶剤と、柔軟性維持添加剤と、を含むはく離性樹脂組成物が提供される。上記アクリル系樹脂は、モノマー成分として少なくともガラス転移温度(Tg)が0℃以下の(メタ)アクリル酸エステルを含み、上記柔軟性維持添加剤は、不飽和脂肪酸誘導体を含む。
上記構成のはく離性樹脂組成物によると、ポリ塩化ビニル等の塩素系樹脂を含まないはく離性の保護シートを、任意の基材の表面に形成することができる。また、このはく離性樹脂組成物は柔軟性維持添加剤を含んでいることから、形成される保護シートは、例えば100℃以上の高温に晒された場合であっても硬化が抑制され、柔軟性(可撓性)を維持し得る。その結果、保護シートを形成した基材が高温工程等に供された場合であっても、その後、なんら特別な処理等を施すことなく、保護シートを容易に剥離することができる。
ここで開示される技術の好ましい一態様について、上記不飽和脂肪酸誘導体は、オレイン酸エーテルおよびオレイン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種を含む。詳細は明らかではないが、炭素数18の一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸のエーテルおよびエステルは、特にアクリル系樹脂の上記加熱によるはく離性の低下を好適に抑制できるために好ましい。オレイン酸エーテルとして、例えば、ポリオキシアルキレンオレイルエーテルを含むことが好ましい。オレイン酸エステルとして、例えば、ポリオキシアルキレンモノオレートおよびポリオキシアルキレンジオレートの少なくとも1つを含むことが好ましい。オレイン酸エステルとして、例えば、ソルビタンオレイン酸エステルを含むことが好ましい。
ここで開示される技術の好ましい一態様について、上記柔軟性維持添加剤は、上記アクリル系樹脂を100質量部としたとき、1質量部以上38質量部以下の割合で含まれる。これにより、はく離性樹脂組成物の供給性等の特性を過度に損なうことなく、上記のとおり保護シートの加熱によるはく離性の低下を好適に抑制することができる。
ここで開示される技術の好ましい一態様について、上記Tgが0℃以下の(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸エチルヘキシルからなる群から選択される少なくとも1つを含む。つまり、ここに開示される不飽和脂肪酸誘導体は、可塑剤等の添加剤を添加しなくても、アクリル系樹脂成分自体に良好な柔軟性および粘着性を備えることができる。
なお、本明細書において、Tgが0℃以下のアクリル酸エステルとは、当該アクリル酸エステルの単一重合体(ホモポリマー)のTgが0℃以下であることを意味する。つまり、ホモポリマーのTgをもって、当該ホモポリマーを構成する単量体(モノマー単位)のTgとしている。かかるホモポリマー等についてのTgは、JIS K7121:2012に規定されるガラス転移温度の測定方法に準じて測定することができる。また、Tgとしては、各種文献値や製品データシート等の値を採用してもよい。
ここで開示される技術の好ましい一態様において、はく離性樹脂組成物は、さらに、可塑剤を含む。つまり、ここに開示されるはく離性樹脂組成物は、可塑剤等の添加剤を添加しなくても良好な特性を実現し得るが、上記とともに可塑剤を含むことができる。このことによっても得られる保護シートに柔軟性を付与することができ、また、よりしなやかな保護シートを実現することができる。
ここで開示される技術の好ましい一態様において、はく離性樹脂組成物は、さらに、無機粉体からなるフィラーを含む。これにより、例えば、はく離性樹脂組成物にチクソ性を付与することができ、印刷性および成形性に優れたはく離性樹脂組成物を得ることができる。また、例えば、本質的に透明なアクリル系樹脂を着色等することができ、保護シートに多様性と付加価値とを付与することができる。
また他の側面において、ここで開示される技術は、上記のはく離性樹脂組成物のシート状硬化物からなる保護シートが提供される。かかる表面保護シートは、塩素系樹脂を含まないことから、特別管理産業廃棄物として処分する必要はない。また、常温におかれた場合であっても高温に晒された場合であっても、任意のタイミングで基材から容易に剥離することができる。
実施例におけるはく離試験の様子を説明する(a)平面図と(b)側面図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、はく離性樹脂組成物の構成)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、はく離性樹脂組成物の調製方法や、保護シートの形成方法およびはく離方法等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当業者における技術常識とに基づいて実施することができる。また、本明細書において、数値範囲を示す「A〜B」とは、特にことわりのない限り、A以上B以下を意味する。
なお、以下の説明において、樹脂組成物を供給する対象(被着体)を単に「基材」と言う。また、樹脂組成物をシート状に乾燥または加熱乾燥により硬化した硬化物(シート状の樹脂組成物)を「保護シート」という。
[はく離性樹脂組成物]
本明細書において、はく離性樹脂組成物とは、常温(例えば10〜30℃程度)においてペースト状の組成物であって、任意の基材の表面に供給されたときに当該基材の表面で乾燥してシート状の樹脂(保護シート)を形成する。ペースト状とは、液状、スラリー状、サスペンション、粘流動体等の意味を包含する用語である。はく離性樹脂組成物は、典型的には、基材の表面の形状に対応して密着した樹脂シートを形成する。かかる保護シートは、基材に対する粘着性を備えている。この保護シートが基材の表面に設けられることで、保護シートは、当該基材の表面を、各種の埃、薬品、反応性ガス等の異物から遮蔽し、その表面を保護することができる。そして基材の表面の保護の必要がなくなったときに、保護シートは、基材の表面から剥離することができる。
ここに開示されるはく離性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ということがある。)は、アクリル系樹脂と、溶剤と、柔軟性維持添加剤と、を含んでいる。そして本質的に、特別管理産業廃棄物として取り扱われ得る塩素系樹脂を含まない。以下、各成分について説明する。
[アクリル系樹脂]
アクリル系樹脂は、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを主モノマー成分とする重合体である。典型的には、アクリル系樹脂は、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとする重合体とすることができる。アクリル系樹脂は、アルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する、他のモノマー成分を副モノマーとしてさらに含んでもよい。ここで、主モノマーとは、アクリル系樹脂を構成するモノマー成分のうちに占める質量割合が最も大きい成分をいう。主モノマーは、典型的には、アクリル系樹脂を構成するモノマー成分のうち50質量%以上を占める成分であり、例えば60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、実質的に100質量%を占めることができる。副モノマー成分とは、アクリル系樹脂を構成するモノマー成分のうち、主モノマー成分以外のモノマー成分である。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」の用語は、アクリルおよび/またはメタクリルの意味で使用される。
アルキル(メタ)アクリレートは、例えば、一般式:CH=CRCOOR;で表される(メタ)アクリル酸化合物であり得る。ここで、式中のRは水素原子またはメチル基であり、Rはアルキル基である。主モノマーとしては、上式中のRによって示されるアルキル基の炭素数が1〜20のアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。主モノマーは、炭素数が1〜14のアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、炭素数が1〜10のアルキル(メタ)アクリレートが特に好ましい。このようなアルキル(メタ)アクリレートは、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどである。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アクリル系樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下のアルキル(メタ)アクリレートをモノマー成分として含むように構成されるとよい。以下、このようなTgが0℃以下のモノマー成分を第1モノマーと称する。また、Tgが0℃を越えるモノマー成分を第2モノマーと称する。
第1モノマーとしては、典型的には、炭素数が2〜12のアクリル酸エステルや炭素数が6〜14のメタクリル酸エステルが挙げられる。ガラス転移温度の調整のしやすさの観点からは、第1モノマーとしては、炭素数が1〜5のアルキル(メタ)アクリレートであるとよい。このような第1モノマーとしては、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシルであるとよい。これらは1種を単独でまたは2種以上が組み合わされていてもよい。第1モノマーは、なかでも、Tgが−20℃以下のアルキル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。かかるTgが−20℃以下の第1モノマーとして、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。より好ましくは、Tgが−30℃以下(例えば−40℃〜−50℃程度)の、アクリル酸n−ブチル(nBA)、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)の少なくとも1つである。かかる第1モノマー成分の存在により、アクリル系樹脂が柔軟性を備え、良好な自己粘着性を備え得る。
第2モノマーは、上記一般式で表されるアルキル(メタ)アクリレートのうち、第1モノマー以外のアルキル(メタ)アクリレートとすることができる。なお、第2モノマーのTgについては0℃を超えていればよく、典型的には10℃以上、通常は20℃以上、好ましくは50℃以上、例えば70℃以上であり、100℃以上であってよい。第2モノマーのTgの上限は特に制限されない。例えば、第2モノマーのTgは、典型的には180℃以下、通常は150℃以下、例えば120℃以下であってよい。かかる第2モノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル(MMA)が好ましい例として挙げられる。
なお、第1モノマーおよび第2モノマーは、互いがランダムに共重合していてもよいし、互いが交互に並んで共重合していてもよいし、それぞれが単独重合したブロック体が共重合していてもよい。第1モノマーによる柔軟性を効果的に発現させるとの観点からはブロック共重合体であることが好ましい。ブロック共重合体は、例えば、構成単位として第1モノマー成分からなる第1ポリマーブロックと、第2モノマー成分からなる第2ポリマーブロックとを含む。ブロック共重合体は、第1ポリマーブロックと第2ポリマーブロックとが一つずつ結合したジブロックコポリマーであってもよいし、いずれかのブロックが更にもう一つ結合したトリブロックコポリマーであってもよいし、これらの混合であってもよい。例えば、比較的硬質の第2ポリマーブロックの間に、比較的軟質の第1ポリマーブロックを挟んだシーケンスからなるABA型のトリブロックコポリマーを含むことが好ましい。ABA型のトリブロックコポリマー構造とすることにより、例えば、アクリル系の熱可塑性エラストマーを構築することができる。このことにより、例えば、アクリル系樹脂を架橋重合させるための反応性官能基を導入することなく、当該アクリル系樹脂(ベースポリマー)の物理的凝集(擬似架橋)によって樹脂組成物を硬化させることができる。
アクリル系樹脂がトリブロックコポリマー構造を有さない場合は、第1モノマーおよび第2モノマーのいずれかは、例えば、重合性官能基または架橋性官能基が導入されていてもよい。重合性官能基としては、炭素二重結合、ビニル基、ビニロキシ基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、マレオイル基、スチリル基、シンナモイル基等が挙げられる。架橋性官能基としては、カルボキシル基、水酸基(ただし、カルボキシル基中の水酸基は除く。)、アミノ基、シリル基、アルコキシシリル基などが挙げられる。この場合、樹脂組成物は、必要に応じて硬化剤を含むものであってもよい。硬化剤としては、上記のアクリル系樹脂に導入された官能基に応じて適宜選択される。たとえば水酸基が導入されている場合は、イソシアネート系硬化剤、メラミン樹脂、シリケート化合物、イソシアネート基含有シラン化合物などが好ましく用いられる。また、例えば、カルボキシル基が導入されている場合はアミノ系硬化剤やエポキシ系硬化剤が、アミノ基が導入されている場合はカルボニル基含有硬化剤やエポキシ系硬化剤、酸無水物系硬化剤などが、好ましく用いられる。硬化剤は、硬化性官能基1当量に対して、例えば0.01〜2モル当量となるように添加することが適当であり、好ましくは0.05〜1モル当量である。
アクリル系樹脂を構成するために用いられるモノマー成分のうち、全モノマー成分に占める第1モノマーの割合は20質量%以上であることが好ましい。得られる保護シートの柔軟性を向上させて、基材への粘着性を高めるとの観点から、第1モノマーの割合は、より好ましくは30質量%以上、例えば50質量%以上、70質量%以上とすることができる。なお、保護シートの強度や硬度、剥離しやすいコシを備えるとの観点から、第1モノマーの割合は、例えば、80質量%以下とすることができる。また、これに対応して、全モノマー成分に占める第2モノマーの割合は、80質量%以下とすることが好ましく、例えば70質量%以下、50質量%以下、例えば30質量%以下とすることができる。第2モノマーの割合は、典型的には20質量%以上とすることができる。このような第1モノマーと第2モノマーとの組み合わせは、第1モノマーとして、アクリル酸n−ブチル(nBA)、アクリル酸メチル(MA)およびアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)の少なくとも1つを含み、第2モノマーとして、少なくともメタクリル酸メチル(MMA)を含む組み合わせが好ましい。このような組み合わせで調製された重合体は、ここに開示されるアクリル系樹脂として特に相応しい。
アルキル(メタ)アクリレート以外の副モノマー成分の含有は必須ではなく、ここに開示される樹脂組成物の本質を損なわない範囲において、副モノマー成分を含むこともできる。副モノマー成分としては、例えば、カルボキシル基、アルコキシシリル基、水酸基、アミノ基、アミド基、エポキシ基等から選択される1種または2種以上の官能基を有する不飽和エチレン性モノマー成分が挙げられる。これら官能基含有モノマーは、アクリル系樹脂に架橋点を導入し、所望の特性を付与する役割を担う。また、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の非芳香族性環含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香族性環含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシ基含有モノマー、等が挙げられる。かかるその他の共重合性モノマーは必要に応じて適量用いればよい。副モノマー成分として、塩化ビニルエステル、塩化ビニルエーテル等に代表されるハロゲン化合物も考慮することができる。ただし、使用後の保護シートを特別管理産業廃棄物として処理する必要が生じるようなこれら化合物の含有は避けることができる。
副モノマー成分は、全モノマー成分に占める割合が、合計で50質量%以下であることが好ましく、例えば40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、実質的に0質量%とすることができる。
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、典型的には1×10以上であることが好ましく、3×10以上がより好ましく、例えば5×10以上が特に好ましい。アクリル系樹脂のMwがこのように調製されていることにより、硬化前の樹脂組成物として、基材への適切な供給性を備えることができる。例えば、基材への印刷性や、密着性、印刷後のレベリング性を良好なものにすることができる。アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、典型的には、100×10以下であることが好ましく、50×10以下がより好ましく、例えば10×10以下が特に好ましい。これにより、形成される保護シートに適度な強度と靭性とを付与することができる。以上のことは、ここに開示される樹脂組成物が、支持フィルムに粘着層を備えたいわゆる保護粘着シート等とは異なり、硬化前は塗料として、そして、硬化後には、自身がはく離可能なフィルム(支持体)としても機能しなければならない点において重要である。
なお、本明細書において重量平均分子量とは、カラムに応じた適切な溶離液(例えばテトラヒドロフラン(THF)等)を用いたゲル透過クロマトグラフィ(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。
[柔軟性維持添加剤]
柔軟性維持添加剤は、樹脂組成物の硬化物(つまり保護シート)が高温に晒されたときに、保護シートの柔軟性を好適に維持する役割を果たす成分である。アクリル系樹脂は非晶質体であり、例えば上記第2モノマーのガラス転移点(典型的には、全体で80〜100℃程度)以上の温度で軟化するが、その後に冷却されることにより硬化物の付着性状に変化が見られ得る。例えば、保護シートが高温に晒されたとき、冷却後のアクリル系樹脂はその粘着性が増して、基材への付着力やポリマー分子同士の結合が高められると考えられる。この柔軟性維持添加剤は、例えば、上記のアクリル系樹脂とともに後述の溶剤に溶解または分散し、樹脂組成物が硬化したときにアクリル系樹脂のポリマー分子または凝集体の間に配置する。このことによって、保護シートが高温に晒された後であっても上記アクリル系樹脂の粘着性の高まりを適度に抑制すると考えられる。また、アクリル系樹脂がトリブロックコポリマー構造を有する場合は、第2ポリマーブロックによる凝集が過度に進行しないように作用すると考えられる。その結果、柔軟性維持添加剤は、高温履歴後の保護シートについても柔軟性を維持できると考えられる。
発明者らによる試験によると、このような柔軟性維持添加剤としては、不飽和脂肪酸誘導体を使用できることが確認されている。詳細な理由は定かではないが、不飽和脂肪酸そのものではなく、不飽和脂肪酸の誘導体において、上記のような高温履歴後の柔軟性維持の効果を得ることができる。また、不飽和脂肪酸は、飽和脂肪酸と異なり二重結合を有することにより、たとえ長鎖のものであっても室温付近で液状を呈する点においても有用である。
不飽和脂肪酸の誘導体としては、これに限定されるものではないが、例えば、ひとつの分子内に親水基と親油基をもつ両親媒性の化学構造をもつ化合物を好ましく用いることができる。かかる化合物が上記アクリル系樹脂のポリマー分子の表面に作用することにより、ポリマー分子を安定化させて、アクリル系樹脂の粘着性が過度に高まるのを抑制することができる。不飽和脂肪酸の誘導体は、例えば、水に溶かしたときにイオン化しない親水基を有することが好ましい。このような不飽和脂肪酸の誘導体としては、例えば、典型例として、不飽和脂肪酸のエーテル誘導体や、エステル誘導体が挙げられる。不飽和脂肪酸の誘導体は、調製して用いてもよいし、例えば、非イオン性界面活性剤などとして提供されている不飽和脂肪酸のエーテル誘導体およびエステル誘導体等を入手して用いてもよい。
不飽和脂肪酸誘導体の不飽和脂肪酸部分(脂肪酸分子種)については特に制限されず、例えば、クロトン酸(4:1)、ミリストレイン酸(4:1)、パルミトレイン酸(16:1)、サピエン酸(16:1)、オレイン酸(18:1)、エライジン酸(18:1(9))、バクセン酸(18:1(11))、ガドレイン酸(20:1(9))、エイコセン酸(20:1(11))、エルカ酸(22:1)、ネルボン酸(24:1)等の一価不飽和脂肪酸であってもよいし、リノール酸(18:2(9,12))、エイコサジエン酸(20:2(11,14))、ドコサジエン酸(22:2(13,16))等の二価不飽和脂肪酸であってよいし、α−リノレン酸(18:3(9,12,15))、γ−リノレン酸(18:3(6,9,12))、ピノレン酸(18:3(5,9,12))、α−エレオステアリン酸(18:3(9,11,13))、β−エレオステアリン酸(18:3(9,11,13))、ミード酸(18:3(5,8,11))、ジホモ−γ−リノレン酸(18:3(8,11,14))、エイコサトリエン酸(18:3(11,14,17))等の三価不飽和脂肪酸であってもよいし、その他の多価不飽和脂肪酸であってもよい。なお、上記の各脂肪酸分子種名の後には対応する数値表現を記している。好ましい脂肪酸分子種は、一価不飽和脂肪酸であり、中でも入手が容易な炭素数が18のオレイン酸であることが好ましい。つまり、不飽和脂肪酸誘導体としては、オレイン酸誘導体が好ましい。以下、不飽和脂肪酸誘導体がオレイン酸誘導体である場合を例に、好適な柔軟性維持添加剤についてさらに説明する。
[オレイン酸エーテル]
オレイン酸エーテルとしては、ポリオキシアルキレンオレイルエーテルを好ましく用いることができる。取り扱い性や入手が容易な点において、好ましくは、一般式:C1835O−(CO)−R;で表わされるポリオキシエチレンオレイルエーテルである。式中のnはエチレンオキサイド単位の繰り返し数を示し、式中のRは水素原子またはアルキル基を示す。これらアルキレン鎖におけるアルキレンオキサイド単位の繰り返し数、代表的に、式中のnは、1〜30の自然数が適切であり、好ましくは10〜25、より好ましくは15〜22である。
[オレイン酸エステル]
オレイン酸エステルとしては、ポリオキシアルキレンオレイン酸エステルを好ましく用いることができる。ポリオキシアルキレンオレイン酸エステルは、直鎖型のものであってもよいし、多鎖型のものであってもよい。直鎖型の一例としては、取り扱い性や入手が容易な点において、好ましくは、一般式:C1733−COO−(CO)−R;で表わされるポリエチレングリコールモノオレイン酸エステル(ポリオキシエチレンモノオレート)であってよい。あるいは、一般式:C1733−COO−(CO)m’−CO−C1733;で表わされるポリエチレングリコールジオレイン酸エステル(ポリオキシエチレンジオレート)であってもよい。これらの式中のm、m’はエチレンオキサイド単位の繰り返し数を示し、式中のRは水素原子またはアルキル基を示す。これらアルキレン鎖におけるアルキレンオキサイド単位の繰り返し数、代表的に、式中のm、m’は、1〜30の自然数が適切であり、好ましくは10〜25、より好ましくは15〜22である。また、多鎖型の一例として、下式(1)で表わされるトリオレイン(C57104)や、トリオレイン酸ポリオキシエチレングリセリル等が挙げられる。
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上式中のR、Rは、例えば、独立して、水素原子や、メチル基、エチル基、2−メトキシエチル基、プロピル基、ブチル基、2−メチルブチル基、2−エチルブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル等の炭素原子数1〜20のアルキル基であってよい。
[ソルビタンオレイン酸エステル]
オレイン酸エステルとしては、ソルビタンオレイン酸エステルも好ましく用いることができる。取り扱い性や入手が容易な点において、好ましくは、下式(2)で表わされるソルビタンモノオレートや、下式(3)で表わされるソルビタントリオレート、さらにはソルビタンセスキオレート、であってよい。なお、ソルビタンオレイン酸エステルソルビタン環については、5員環および6員環のいずれであってもよく、オキシアルキレン基の付加部位やエステル化部位についても特に制限されない。
Figure 2019001960
Figure 2019001960
これらの柔軟性維持添加剤は、上記に例示したもののうちからいずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂組成物における柔軟性維持添加剤の割合は、アクリル系樹脂を100質量部としたとき、その総量が1質量部以上であることが好ましい。樹脂組成物中に少しでも添加されることで、形成された保護シートが高温に晒されたときでもその柔軟性を維持することができる。柔軟性維持添加剤は、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましく、10質量部以上が特に好ましい。上記の柔軟性維持添加剤は、一般には液状である。したがって、過剰な添加は、樹脂組成物としての性状、取り扱い性等とともに、保護シートの強度特性を損ない得るために好ましくない。柔軟性維持添加剤の割合は、おおよそ38質量部以下とするのが適当であり、35質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、25質量部以下がさらに好ましく、20質量部以下が特に好ましい。
[可塑剤]
樹脂組成物は、任意成分として、可塑剤を含むことができる。可塑剤は、アクリル系樹脂を可塑化し、樹脂組成物の硬化後であってもその形状を柔らかくしなやかに変化させる機能を有する。可塑剤としては特に制限されず、公知のアクリル系樹脂に対する過疎化機能を備える各種の化合物を使用することができる。かかる可塑剤の一例として、例えば、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、安息香酸等の芳香族カルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、クエン酸等の脂肪族カルボン酸、多価カルボン酸、リン酸等の酸と、オクタノール、ノナノール等に代表される炭素数が6以上の高級混合アルコールとのエステル化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸エステル、トリメリット酸トリオクチル等のトリメリット酸エステル、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油などが例示される。可塑剤は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ただし、この可塑剤は、上記の柔軟性維持添加剤のように、熱履歴後の保護シートの柔軟性を維持する能力は有しない。かかる観点から、ここに開示される技術において可塑剤は含まなくてもよく、任意成分とされている。その一方で、可塑剤は、柔軟性維持添加剤と比較して、保護シートをよりしなやかに変形させる作用を有する。そして例えば、基材の表面に比較的弱い接着力で固定された付属物等が備えられている場合には、保護シートのはく離時にこの付属物を破損や損傷等させることは避けるべき形態である。したがって、このような場合は、樹脂組成物に対し、柔軟性維持添加剤に加えて可塑剤を含ませることが好ましい。これにより、はく離時の保護シートの変形を滑らかなものとし、基材の表面に比較的弱い接着力で固定された付属物を損傷させること無く、保護シートを基材から剥離することができる。
なお可塑剤を含む場合、その割合は、可塑剤の種類にもよるため一概には言えないが、おおむね柔軟性維持添加剤と同様に考慮することができる。例えば、可塑剤の性能を発揮させるには、アクリル系樹脂を100質量部としたとき、その総量を1質量部以上とするのが適切であり、3質量部以上とすることができ、例えば5質量部以上が好ましく、7質量部以上とすることができる。可塑剤の割合の上限は、柔軟性維持添加剤と同様におおよそ38質量部以下とすることができる。しかしながら、可塑剤と柔軟性維持添加剤とを多量に加えることは樹脂組成物の性状を損ない得る。また、可塑剤を柔軟性維持添加剤の量を上回って多量に加えることは、本願発明の利点を十分に発揮させることができない恐れがある。かかる観点において、可塑剤は、例えば、柔軟性維持添加剤と等量かそれ以下の割合で樹脂組成物中に含まれることが好ましい。可塑剤は、例えば、28質量部以下とすることが適当であり、24質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
[フィラー]
樹脂組成物は、任意成分として、フィラーを含むことができる。このフィラーは、例えば、樹脂組成物に対してはチキソ性を付与する機能を有し、保護シートに対しては、着色、遮光性、剛性等の性状を付与する機能を有する。ここでチキソ性とは、揺変性とも呼ばれ、せん断力を加えることで粘度が低下する性状を意味する。例えば、樹脂組成物にフィラーを添加することで、樹脂組成物の粘性を当該組成物の基材への供給手法に適した粘度に調整することができる。このことによって、例えば、樹脂組成物の粘性を、印刷の段階では採用した印刷方法に適した粘性に調整し、印刷後には粘性を高めて垂れ難い印刷体(塗膜)を形成することができる。
フィラーは、有機物から構成されていてもよいが、樹脂組成物中での化学的安定性等の観点から無機物から構成されていることが好ましい。かかる無機フィラーとしては、具体的には、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン等の金属酸化物、サファイア、雲母等の鉱物(複酸化物)、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、ケイ酸カルシウム、タルク等のケイ酸塩、炭化ケイ素等の炭化物、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物、カーボンナノチューブ、カーボンブラック等の炭素質材料、金属粉、ガラス粉等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
またフィラーは、樹脂組成物中に均一に分散されることが好ましいことから、粉体であることが好ましい。粉体を構成する粒子の形状は特に制限されず、球状、塊状、平板状、針状、繊維状等の各種の形状であってよい。フィラーを含む場合、その寸法や割合等は、フィラーの添加目的にもよるため一概には言えないが、例えば、フィラーは、おおよその目安として、平均寸法(典型的には平均粒子径)が0.5nm以上5μm以下程度のものを、アクリル系樹脂を100質量部としたとき、その総量が100質量部以下となる範囲で適宜添加することができる。
一例として、樹脂組成物にチキソ性を付与する目的では、比較的小粒径(例えば、約0.5nm以上1μm以下)のシリカ粉末を、0.5質量部以上100質量部以下程度の範囲で好ましく添加することができる。フィラーの添加量が多くなるほどチキソ性が高められる傾向にあることから、フィラーの添加量は、概ね0.5質量部以上とするのが適切であり、1質量部以上とすることができ、例えば3質量部以上が好ましく、5質量部以上とすることができる。フィラーの割合の上限は、形成される保護シートの特性を所望のレベルより損ねない範囲で任意に設定することができる。フィラーの割合は、例えばアクリル系樹脂と同等量とすることができ、例えば100質量部以下とすることができる。しかしながら、所望の印刷粘度に応じて、50質量部以下、例えば40質量部以下、30質量部以下等と調整してもよい。一方で、例えば、保護シートを白色に呈色させる目的では、比較的大粒径(例えば、0.05μm以上10μm以下、より好ましくは約0.1μm以上5μm以下程度)の酸化チタン等のセラミック粉末を、0.05質量部以上50質量部以下(例えば、0.1質量部以上10質量部以下程度)程度の範囲で好ましく添加することができる。
[溶剤]
溶剤としては、上記のアクリル系重合体が可溶または分散可能であって、柔軟性維持添加剤を混合したときに均一なペースト状に調製可能な液媒体であれば特に制限なく使用することができる。例えば、従来から知られているものの中から、樹脂組成物の基材への供給方法等に応じて適切な溶剤を1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。溶剤は、例えば、水であってもよいし、水とアルコールとの混合溶液であってもよいし、有機溶剤であってもよい。なお、例えば、樹脂組成物の印刷時の作業性および乾燥特性や、保存安定性等の観点からは、液媒体としては、沸点が概ね150℃以上、例えば200〜300℃の高沸点有機溶剤を主成分とするとよい。この高沸点有機溶剤の具体例としては、ジヒドロターピネオール、ターピネオール等のアルコール系溶剤、イソボルニルアセテート等のテルペン系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶剤、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエステル系溶剤、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤、その他ミネラルスピリット等の、高沸点を有する有機溶剤等が挙げられる。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
樹脂組成物の総質量に占める溶剤の割合は特に限定されない。例えば、溶剤量は、樹脂組成物のハンドリング性等を考慮して、適宜調整することができる。溶剤量を調整することで、例えば樹脂組成物の粘度や粘弾性、さらには流動性等を、当該樹脂組成物の基材への供給条件(例えば印刷方法、印刷環境温度)に適した性状に調整することができる。溶剤は、典型的には、概ね70質量%以下、典型的には5〜60質量%、例えば30〜55質量%とすることができる。これにより、例えば、25℃の温度下で、ブルックフィールド形単一円筒回転粘度計によって、SC4−14番のスピンドルを用い、回転速度20rpmの条件で測定した樹脂組成物の粘度を、20〜100Pa・s程度、好ましくは40〜80Pa・s程度の範囲に好適に調整することができる。これにより、基材の表面に、適切な量の樹脂組成物を所望のパターンで供給することができる。
[他の成分]
樹脂組成物は、ここに開示される技術の効果を著しく損なわない範囲において、他の添加成分を必要に応じて含有することができる。このような添加成分としては、この種の一般的な樹脂組成物で使用しされている各種の添加剤を考慮することができる。このような添加剤としては、例えば、アクリル系樹脂の耐薬品性、物理的強度、化学的耐久性等を抑制しうる安定化剤などがある。その他、例えば、界面活性剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、酸化防止剤、顔料や染料等の着色剤等を使用することができる。樹脂組成物全体に占める添加成分の割合は特に限定されず、一般的には各々が独立して5質量%以下程度、概ねその総量が20質量%以下、好ましくは10質量%以下、例えば8質量%以下程度となるように添加するとよい。
なお、ここに開示されるアクリル系樹脂組成物は、そのままでも粘着性を発現し得るため、粘着付与剤を含まない構成とすることができる。しかしながら上記のアクリル系樹脂は、粘着付与剤を含むこともできる。粘着付与剤としては、例えば、アクリル系樹脂の粘着付与剤として公知の各種の樹脂材料を考慮することができる。例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、炭化水素系樹脂、フェノール系樹脂等の各種粘着付与樹脂が例示される。このような粘着付与剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。粘着付与剤を含む場合、その添加量は、アクリル系樹脂を100質量部としたとき、その総量が40質量部以下程度、例えば10質量部以下程度の範囲で添加することができる。
本実施形態の樹脂組成物は、上述したような材料を所定の含有割合となるよう秤量し、均質に撹拌混合することによって調製することができる。混合は、上記原料の混合物を過熱しながら行ってもよい。これらの材料の撹拌混合には、公知の種々の撹拌混合装置を用いることができる。例えば、三本ロールミル、加圧ニーダー、プラネタリミキサー、ラインミキサー等が挙げられる。原料としてのアクリル系樹脂と、柔軟性維持添加剤とが、溶剤中に均質に分散させることで、樹脂組成物を好適に調製することができる。
[保護シートの形成方法]
本実施形態の樹脂組成物は、電気・電子部品のさまざまな製造工程中や保管時、移送・搬送時等に、基材の表面を保護する保護シートを形成する目的で好適に使用することができる。アクリル系樹脂は、一般には透明性と、高い引張強さ、耐衝撃性、耐摩耗性等を備え得ることから、各種マスキング用の保護シートを形成するための樹脂組成物として好適である。ここに開示される樹脂組成物は、柔軟性維持添加剤を含むことから、かかる保護シートが特に高温環境に置かれた場合でも基材からのはく離性が好適に改善されている。そのため、電気・電子部品のさまざまな製造工程のうちでも、高温環境で実施される工程に供される電気・電子部品の保護シートとして特に好ましく用いることができる。
保護シートを形成する際には、先ず、基材の表面のマスキングしたい領域に、乾燥後の厚みが所望のものとなるように、樹脂組成物を供給する。基材としては、各種電気・電子機器の部品、例えば、タッチパネル、液晶ディスプレイ、フレキシブル配線基板や、太陽電池デバイス等の部品が挙げられる。基材は、例えば、典型的には100〜200℃程度の温度に対して耐熱性を有する材料で構成されている。基材を構成する材料は、例えば、金属、半導体、ガラス、セラミック、樹脂およびこれらが組み合わされたものであってよい。基材の表面は、例えばタッチパネルのタッチセンサ等のように、ITO等からなる透明導電性膜による配線パターンが形成された凹凸表面であってよい。
樹脂組成物の供給の手法は特に制限されず、各種の印刷方法、コーティング方法等を採用することができる。例えばスクリーン印刷、バーコーター、スリットコーター、グラビアコーター、ディップコーター、スプレーコーター、カーテンコーター等を用いて行うことができる。樹脂組成物の供給量は、乾燥後の塗膜(保護シート)の厚みが所望の厚みとなるように供給条件を調整することができる。樹脂組成物はペースト状であるため、基材の凹凸表面によく濡れて密着することができる。かかる保護シートの厚みは特に制限されないが、典型的には、厚みが200μm以下、例えば150μm以下、さらには100μm以下程度とすることができる。また、保護シートの厚みは、例えば1μm以上、5μm以上、10μm以上とすることができる。すなわち、ここに開示される樹脂組成物は、かかる厚みに乾燥されたときに、基材からのはく離が可能なような強度と柔軟性とを兼ね備えるものとして製造され得る。
次いで、樹脂組成物から、乾燥により溶剤が除去される。かかる乾燥は、自然乾燥であってもよいし、電機・電子部品の製造時間の短縮の観点から加熱乾燥を採用してもよい。この場合の加熱温度は、基材の耐熱温度よりも低い温度であって、典型的には100℃以上200℃以下、例えば130℃以上150℃以下程度とすることができる。また、加熱乾燥時間は、例えば数分〜数10分間とすることができる。これによって、樹脂組成物から溶剤が除去される。同時に、溶剤中に溶解または分散されていたアクリル系樹脂のポリマー成分が、適宜柔軟性維持添加剤を間に取り込みながらシート状に凝集する。アクリル系樹脂は、その内部に適宜、柔軟性維持添加剤を取り込んでいるため、高硬度に硬化することが抑制される。これによって、柔軟性を備えるアクリル系樹脂からなる保護シートが形成される。かかる保護シートは、ペースト状の組成物から形成されるため、樹脂フィルムを支持体として備える保護シートと比べて、基材への密着性が格段に優れる。これにより、基材の表面を環境から密に遮断して、任意の異物から基材表面を保護することができる。
なお、タッチセンサの製造に際しては、例えば、最初の導電性パターン形成工程において、透明のガラス基板や樹脂フィルム基板の表面に透明導電性材料からなる薄膜パターン(典型的にはITOパターン)が蒸着等により形成される。そして次工程において、当該基板の表面であって、前工程で形成されたITOパターンの周縁に、金属材料等からなる額縁配線が形成される。かかる額縁配線工程においては、配線材料ペーストのスクリーン印刷、加熱乾燥、洗浄等の工程が施され得る。また、フォトリソグラフィの手法により配線を形成する場合でも、レジスト固化やリンス液の除去等に加熱の工程が欠かせない。この加熱乾燥の工程において、基材は例えば100℃以上の温度に加熱され得る。加熱乾燥は、例えば、130〜160℃で、10〜60分間であり得る。この額縁配線工程の間、基材の表面のITOパターンは、損傷を受けることが無いように保護シートが設けられる。例えば、このような高温での乾燥加熱工程に供される基材(ITOパターンを含む)の保護シートを形成するために、ここに開示される樹脂組成物を好適に用いることができる。
[保護シート]
以上のようにして形成される保護シートは、上記のとおりのアクリル系樹脂の特性に由来して、高い引張強さ、耐衝撃性、耐摩耗性塔を備える。また、モノマー成分として少なくともガラス転移温度が0℃以下のアクリル酸エステルを含むことから、その硬化時に基材への粘着性を発現するとともに、硬化後には柔軟性を備え得る。そしてこの粘着性と柔軟性とがバランスよく両立されていることから、かかる保護シートは、任意のタイミングではく離可能なように構成される。このとき、保護シートは、例えば、加熱処理や薬品処理等の特別な処理を要することなく、基材の表面から剥離することができる。またはく離は、機械や人の手により簡便に実現することができる。さらに、この保護シートは、塩素系樹脂を含まないことから、特別管理産業廃棄物ではなく、一般廃棄物または(特別管理でない)産業廃棄物として処分することができる。
また、ここに開示される保護シートは、基材の表面から容易に引き剥がすことができる。例えば、はく離途中にシートが千切れたり破断したりすること無く、剥離することができるように、保護シートの機械的強度と基板との密着性とのバランスが調整されている。したがって、この保護シートは、製造されたままの状態、および、高温(例えば100〜170℃程度)に晒された場合の両方において、かかるはく離特性が維持されるように構成されている。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を係る実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
[実施形態1]
[はく離性樹脂組成物]
アクリル系樹脂と、有機溶剤と、添加剤とを下記の表1に示す質量割合となるように秤量し、3本ロールミルで混練することで、例1〜10の10通りのはく離性樹脂組成物を調製した。はく離性樹脂組成物は、いずれも、ブルックフィールド型粘度計(スピンドルSC4−14、回転数20rpm、測定温度25℃)を用いて測定される粘度が、50±30Pa・sであることを確認した。
まず、アクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチル(MMA)とアクリル酸−n−ブチル(nBA)とを50:50の質量比でブロック共重合させた共重合体(アクリル系樹脂A;重量平均分子量80000)を用いた。有機溶剤としては、沸点が247℃のジエチレングルコールモノブチルエーテルアセテート(有機溶剤A)を用いた。
添加剤としては、以下の10通りの化合物(添加剤A〜J)を使用した。また、添加剤を加えずにアクリル系樹脂と有機溶剤とから組成物を調製し、例11のはく離性樹脂組成物とした。
添加剤A:ポリエチレングリコールモノオレート
添加剤B:ポリエチレングリコールジオレート
添加剤C:ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート
添加剤D:ポリオキシエチレンオレイルエーテル
添加剤E:ポリエチレングリコールモノステアレート
添加剤F:ポリエチレングリコールジベンゾエート
添加剤G:ポリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル
添加剤H:ポリオキシエチレンイソデシルエーテル
添加剤I:メトキシ-ポリエチレングリコールアリルエーテル
添加剤J:オレイン酸
[加熱工程後はく離試験]
用意したはく離性樹脂組成物を基板の表面にスクリーン印刷し、下記の寸法の保護シート(試験用シート)が得られるように樹脂組成物を膜状に印刷した。
基板としては、石英ガラス基板と、石英ガラス基板に所定のパターンでITO膜を蒸着したタッチパネル用のITOガラス基板と、PET基板と、の3種類を用意した。ITOガラス基板を用いる場合は、ITO膜側の表面に上記保護シートを形成した。そして印刷後の基板を100℃で10分間乾燥させることで、基板の表面に試験用シートを形成した。試験用シートは、乾燥・硬化後の寸法が約10mm×85mmで厚みが約20μmとなるように印刷条件を調整した。
次いで、試験用シートを形成した石英ガラス基板およびITOガラス基板を、160℃の乾燥機内に60分間静置することで加熱した。PET基板については、基板自体の耐熱性が低いことから、乾燥機の温度を140℃に設定して60分間加熱した。なお、これらの加熱により、試験用シートが基材から浮き上がったり縮んだりするなどの変化は目視では確認できなかった。
このようにして加熱された試験用シートについて、はく離試験を行うことにより、加熱後の保護シートのはく離性を評価した。はく離試験は、JIS K6854−1:1999に準拠して実施した。具体的には、まず、基板上に形成された試験用シートの端部に、図1(a)および(b)に示すように粘着テープ(ニチバン(株)製、CT405AP、幅1.8cm×長さ5cm、4N/10mm)を重なり部分が1.0cmとなるように貼りつけ、5秒間指で擦ることで粘着テープをしっかりと試験用シートに粘着させた。その後、粘着テープを基板表面に対して90度の角度で上方に引き上げることで、試験用シートの剥離を試みた。
加熱工程後はく離試験の結果を、表1に示した。なお、評価結果は、1回のはく離試験で試験用シートがはく離できた場合を「○」、1回目は粘着テープのみが試験用シートからはく離してしまい2回目のはく離試験で試験用シートがはく離できた場合を「△」、2回目のはく離試験でもはく離できなかった場合を「×」と表記した。また、はく離の途中で試験用シートが千切れてしまった場合を「破断」と表記した。なお、本実施形態では、「破断」と評価された試験用シートはなかった。
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[評価]
はく離性樹脂組成物の調製に用いた有機溶剤は、保護シートを形成する際の加熱によってほぼ全てが揮発していると考えられる。したがって、例11の保護シートは、アクリル系樹脂のみから形成されている。また、例1〜10の保護シートは、アクリル系樹脂と各種の添加剤とが混合あるいは相溶するなどして形成されていると考えられる。なお、参考までに、例1〜11の全ての保護シートについて、上記140℃または160℃での加熱を施さずに、製造されたままの状態で上記のはく離試験を行うと、全てのサンプルについて1回のはく離試験でシートがはく離できることが確認されている。
表1に示されるように、例11の保護シートは、140℃〜160℃の加熱処理後は、1回のはく離で保護シートをはく離させることができなかった。これは、加熱処理により保護シートと基板との粘着性が高められたことや、アクリル系樹脂の常用耐熱性が約100℃以下であるため保護シート自体が変質したことによるものと考えられる。なお、PET基板に形成し140℃で熱処理した保護シートと、ITOガラス基板に形成し160℃で熱処理した保護シートについては、2回目のはく離試験ではく離することができた。しかしながら、ガラス基板に形成し160℃で熱処理した保護シートについては、2回目のはく離試験でもはく離することができないことが確認できた。このことについての理由は不明ではあるが、ITO基板と、ガラス基板とでは、ITO基板の方が密着性が低くなるためであると考えられる。
これに対し、添加剤として、(A)ポリエチレングリコールモノオレート、(B)ポリエチレングリコールジオレート、(C)ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートおよび(D)ポリオキシエチレンオレイルエーテルのいずれかを用いた例1〜4の保護シートについては、140℃〜160℃の熱処理後であっても、基材から保護シートを容易にはく離できることが確認できた。また、はく離の際に、保護シートが千切れたり、はく離が重くなったり、ITO膜を剥がしたりすることがないことも確認できた。これらの添加剤は、いずれも分子構造中に、C1733−COO−で表されるオレイン酸部分構造を備える化合物である。
一方で、添加剤として、(E)ポリエチレングリコールモノステアレート、(F)ポリエチレングリコールジベンゾエート、(G)ポリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル、(H)ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、(I)メトキシ-ポリエチレングリコールアリルエーテルおよび(J)オレイン酸のいずれかを用いた例5〜10の保護シートについては、140℃〜160℃の熱処理後にシートが基材に硬く接着し、基材から保護シートをはく離できないことが確認できた。つまり、熱処理後に保護シートの柔軟性および易はく離性は失われてしまった。これらの添加剤のうち、(E)〜(I)の化合物は、分子構造中にC1733−COO−で表されるオレイン酸構造を含まない化合物である。一方、添加剤(J)については、それ自体がオレイン酸であり、C1733COOHで表されるオレイン酸構造を有する。しかしながら、この(J)オレイン酸を用いた保護シートについても熱処理後のはく離性は失われていた。また、添加剤(E)は、ポリエチレングリコールモノステアレートであり、添加剤(A)が飽和した構造を有する。しかしながら、この(E)ポリエチレングリコールモノステアレートを用いた保護シートについても熱処理後のはく離性は失われていた。このことから、理由は定かではないが、オレイン酸自体では、アクリル系樹脂からなる保護シートの柔軟性を熱処理後まで維持する効果はないことが確認できた。
以上のことから、アクリル系樹脂を主体としnBA等で柔軟性を持たせたアクリル樹脂系の樹脂組成物は、上記のとおりオレイン酸等に代表される脂肪酸構造を一部に持つ添加剤を添加することで、形成される保護シートに耐熱性を付与できることがわかった。つまり、例えばこの保護シートが形成された電子部品等が、その製造工程において100℃以上の高温に晒されるような場合であっても、保護シートは変形等することなく電子部品の表面を保護するとともに、その後の任意のタイミングで特にはく離処理等を必要とすることなく剥離することができる。
[実施形態2]
[はく離性樹脂組成物]
アクリル系樹脂、有機溶剤、添加剤に、必要に応じて任意成分を用い、これらを下記の表2に示す割合で配合し、その他は実施形態1と同様にして、例12〜20のはく離性樹脂組成物を調製した。はく離性樹脂組成物は、いずれも、ブルックフィールド型粘度計(スピンドルSC4−14、回転数20rpm、測定温度25℃)を用いて測定される粘度が、50±30Pa・sであることを確認した。
なお、アクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチル(MMA)とアクリル酸−n−ブチル(nBA)とを以下の質量比で共重合させた共重合体(アクリル系樹脂A〜C;重量平均分子量80000)と、メタクリル酸メチル(MMA)とアクリル酸メチル(MA)とを50:50の質量比で共重合させた共重合体(アクリル系樹脂D;重量平均分子量90000)を用意した。
アクリル系樹脂A <MMA:nBA=50:50>
アクリル系樹脂B <MMA:nBA=75:25>
アクリル系樹脂C <MMA:nBA=25:75>
アクリル系樹脂D <MMA:MA=50:50>
有機溶剤としては、沸点が247℃のブチルカルビトールアセテート(有機溶剤A)と、沸点が212℃のジエチレングリコールブチルメチルエーテル(有機溶剤B)とのいずれかを用いた。
添加剤としては、実施形態1で使用した(A)ポリエチレングリコールモノオレート、(B)ポリエチレングリコールジオレート、(C)ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートのいずれかを用いた。
また、任意成分として、可塑剤およびフィラーを添加した組成物も用意した。可塑剤としてはアジピン酸ポリエステル(分子量約400)を、フィラーとしては、平均粒子径が10nmのシリカ粉末(フィラーA)と、平均粒子系が0.2μmのチタニア粉末(フィラーB)とを用意した。
用意した例12〜20のはく離性樹脂組成物を用い、実施形態1と同様に3通りの基材に試験用シートを形成し、それぞれ140℃または160℃の加熱処理を施した後、はく離試験に供した。その結果を表2に示した。表2に示した記号は、実施形態1と同じ評価内容を示している。なお、表2には、比較のため、表1に示した例1と例11の結果についても併せて示している。
Figure 2019001960
[評価]
表1に示すように、例15,16は、可塑性を付与するnBAが含まれていないアクリル系樹脂Dを用いた樹脂組成物にかかる例である。したがって、このアクリル系樹脂Dのみからなる例15の保護シートは、保護シート自体がアクリル系樹脂に由来する硬質性を備える。そのため、はく離試験においても、基板の種類にかかわらず、保護シートが撓むことができず、保護シートを基板から剥離することができなかった。また、このアクリル系樹脂Dに添加剤Aを加えることで形成された例16の保護シートは、添加剤Aの作用により保護シートは撓むことができたものの、シートの硬度と強度等とのバランスが適切ではなく、剥離中に保護シートが破断してしまうことがわかった。このことから、アクリル系樹脂により保護シートを形成する場合は、例えばnBAのような、アクリル系樹脂に可塑性を付与することができる成分を共重合させることがよいことが確認できた。
例1、12、13等の比較から、アクリル系樹脂にnBAが含まれている限り、nBAの割合は保護シートの加熱前後でのはく離性に大きな影響を与えないことがわかった。また、例1、12、13、14等の比較から、加熱後の保護シートのはく離性を維持することができる添加剤を使用している限り、その添加剤の種類と、アクリル系樹脂中のnBAの割合や溶剤との組み合わせ等によって、保護シートの加熱前後でのはく離性に大きな影響は見られないことがわかった。また、アクリル系樹脂は透明であることが利点として挙げられるが、例12、13に示すように、フィラーを添加することで保護シートを例えば白色に着色でき、さらに加熱後の保護シートのはく離性をも維持できることが確認された。
なお、この添加剤は、少量でも添加されることで加熱後の保護シートのはく離性を改善することができる。その一方で、基材の種類や加熱の温度にもよるが、本実施形態において添加剤の配合割合は、140℃程度の加熱に供される場合は45質量部程度以下に、160℃程度の高温に供される場合は35質量部程度以下に留めたほうが、その有用性を良好に発揮できるといえる。
以上、本発明を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明はその主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。

Claims (10)

  1. 基材の表面にはく離性の保護シートを形成するための樹脂組成物であって、
    アクリル系樹脂と、溶剤と、柔軟性維持添加剤と、を含み、
    前記アクリル系樹脂は、モノマー成分として少なくともガラス転移温度が0℃以下の(メタ)アクリル酸エステルを含み、
    前記柔軟性維持添加剤は、不飽和脂肪酸誘導体を含む、はく離性樹脂組成物。
  2. 前記不飽和脂肪酸誘導体は、オレイン酸エーテルおよびオレイン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載のはく離性樹脂組成物。
  3. 前記オレイン酸エーテルは、ポリオキシアルキレンオレイルエーテルを含む、請求項2に記載のはく離性樹脂組成物。
  4. 前記オレイン酸エステルは、ポリオキシアルキレンモノオレートおよびポリオキシアルキレンジオレートの少なくとも1つを含む、請求項2に記載のはく離性樹脂組成物。
  5. 前記オレイン酸エステルは、ソルビタンオレイン酸エステルを含む、請求項2または4に記載のはく離性樹脂組成物。
  6. 前記柔軟性維持添加剤は、前記アクリル系樹脂を100質量部としたとき、1質量部以上38質量部以下の割合で含まれる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のはく離性樹脂組成物。
  7. 前記ガラス転移温度が0℃以下の(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸エチルヘキシルからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のはく離性樹脂組成物。
  8. さらに、可塑剤を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のはく離性樹脂組成物。
  9. さらに、無機粉体からなるフィラーを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のはく離性樹脂組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のはく離性樹脂組成物のシート状乾燥物からなる、保護シート。
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