以下、図面を参照して、実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、ファスナを使用して作業材を締結可能な締結工具1を例示する。
まず、図1を参照して、締結工具1で使用可能なファスナの一例としてのファスナ8について説明する。ファスナ8は、ブラインドリベット(ブラインドファスナともいう)と称されるタイプの公知のファスナであって、一体的に形成されたピン81と本体部85とで構成されている。
本体部85は、円筒状のスリーブ851と、スリーブ851の一端部から径方向外側に突出するフランジ853とを含む筒状体である。ピン81は、本体部85を貫通し、本体部85の両端から突出する棒状体である。ピン81は、軸部811と、軸部の一端部に形成されたヘッド815とを含む。ヘッド815は、スリーブ851の内径よりも大径に形成され、フランジ853とは反対側のスリーブ851の端部から突出するように配置されている。軸部811は、本体部85を貫通して、フランジ853側の端部から軸方向に突出している。軸部811のうち、スリーブ851内に配置された部分には、破断用の小径部812が形成されている。小径部812は、他の部分よりも比較的強度の弱い部分であり、ピン81が軸方向に引っ張られると、最初に破断するように構成されている。軸部811のうち、小径部812に対してヘッド815とは反対側の部分を、ピンテール813という。ピンテール813は、軸部811が破断した場合に、ピン81(ファスナ8)から分離される部分である。
以下、締結工具1について説明する。まず、図2を参照して、締結工具1の概略構成について簡単に説明する。
図2に示すように、締結工具1の外郭は、主に、アウタハウジング11と、ハンドル15と、ノーズ保持部材14を介して保持されたノーズ部6によって形成されている。
本実施形態では、アウタハウジング11は概ね矩形箱状に形成され、所定の駆動軸A1に沿って延在している。ノーズ部6は、駆動軸A1に沿って延在するように、アウタハウジング11の長軸方向における一端部に、ノーズ保持部材14を介して保持されている。なお、アウタハウジング11の他端部には、締結工程において分離されたピンテール813(図1参照)を収容可能な回収容器7が取り外し可能に装着されている。ハンドル15は、アウタハウジング11の長軸方向における中央部から、駆動軸A1に交差する方向(本実施形態では、概ね直交する方向)に突出している。
以下では、締結工具1の方向に関して、説明の便宜上、駆動軸A1の延在方向(アウタハウジング11の長軸方向とも言い換えられる)を締結工具1の前後方向、ノーズ部6が配置されている側を前側、回収容器7が着脱される側を後側と定義する。また、駆動軸A1に直交し、ハンドル15の延在方向に対応する方向を上下方向、アウタハウジング11が配置されている側を上側、ハンドル15の突出端(自由端)側を下側と定義する。また、前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向と定義する。
図2に示すように、アウタハウジング11には、主に、モータ2と、モータ2の動力によって駆動される駆動機構4と、モータ2の動力を駆動機構4に伝達する伝達機構3とが収容されている。なお、本実施形態では、駆動機構4の一部(詳細には、ボールネジ機構40のナット41)は、インナハウジング13に収容されている。インナハウジング13は、アウタハウジング11に固定状に保持されている。この観点から、アウタハウジング11とインナハウジング13とをハウジング10として一体的にとらえることもできる。なお、本実施形態では、アウタハウジング11は、ハンドル15と一体的に樹脂で形成される一方、インナハウジング13は金属(詳細には、アルミニウム)で形成されている。
ハンドル15は、使用者によって把持可能に構成されている。ハンドル15の上端部(アウタハウジング11に接続する基端部)には、使用者による押圧操作(引き操作)が可能に構成されたトリガ151が設けられている。ハンドル15の下端部には、バッテリ159を着脱可能に構成されたバッテリ装着部158が設けられている。バッテリ159は、締結工具1の各部およびモータ2へ電力を供給するための、繰り返し充電が可能な電源である。なお、バッテリ装着部158およびバッテリ159の構成は周知であるため、これらの説明は省略する。
本実施形態の締結工具1は、ファスナ8を介して作業材を締結可能に構成されている。ファスナ8(図1参照)は、ピンテール813の一部が締結工具1のノーズ部6の先端部に挿入され、本体部85とヘッド815がノーズ部6の先端部から突出した状態で、後述のジョー65によって把持される(図5参照)。そして、締結される作業材Wの一面にフランジ853が当接する位置まで、作業材Wに形成された取付け孔にスリーブ851が挿入される。トリガ151の押圧操作に応じてモータ2を介して駆動機構4が駆動され、ピンテール813が強く引っ張られると、ヘッド815側のスリーブ851の端部が拡径し、この端部とフランジ853の間に作業材Wが挟持される。また、軸部811が小径部812で破断して、ピンテール813が分離される。なお、締結工具1では、図1で例示されたファスナ8を含む複数種類のファスナが使用可能である。
以下、締結工具1の詳細構成について説明する。
まず、モータ2について説明する。図3に示すように、モータ2は、アウタハウジング11の後端部の下部に収容されている。本実施形態では、モータ2として、小型で高出力なブラシレスDCモータが採用されている。モータ2は、ステータ21およびロータ23を含むモータ本体部20と、ロータ23から延出されてロータ23と一体的に回転するモータシャフト25とを含む。モータ2は、モータシャフト25の回転軸A2が駆動軸A1の下方で駆動軸A1と平行に(つまり、前後方向に)延在するように配置されている。なお、本実施形態では、モータ2は、その全体が駆動軸A1に対して下方に配置されている。モータシャフト25は、後述する減速機ハウジング30の後端部に固定されたベアリング251と、アウタハウジング11の後端部に固定されたベアリング253によって回転可能に支持されている。モータシャフト25の前端部は、減速機ハウジング30内に突出している。モータシャフト25の後端部には、モータ2を冷却するためのファン27が固定されている。
次に、伝達機構3について説明する。図3に示すように、本実施形態では、伝達機構3は、遊星減速機31と、中間シャフト33と、ナット駆動ギア35とを主体として構成されている。以下、これらについて順に説明する。
遊星減速機31は、モータ2から駆動機構4(詳細には、ボールネジ機構40)に至る動力伝達経路において、モータ2の下流側に配置されて、モータ2のトルクを増大させて中間シャフト33に伝達するように構成されている。本実施形態では、遊星減速機31は、2組の遊星歯車機構と、これらを収容する減速機ハウジング30を主体として構成されている。なお、減速機ハウジング30は樹脂で形成されており、モータ2の前側で、アウタハウジング11に固定状に保持されている。なお、遊星歯車機構の構成自体は周知であるため、ここでの詳細な説明は省略する。モータシャフト25は、遊星減速機31への回転動力の入力シャフトとされている。モータシャフト25の前端部(減速機ハウジング30内に突出している部分)には、遊星減速機31の第1の(上流側の)遊星歯車機構の太陽ギア311が固定されている。第2の(下流側の)遊星歯車機構のキャリア313は、遊星減速機31の最終出力シャフトとされている。
中間シャフト33は、キャリア313と一体的に回転するように構成されている。具体的には、中間シャフト33は、モータシャフト25と同軸状に配置され、その後端部がキャリア313に連結されている。中間シャフト33の前端部と後端部は、インナハウジング13の下前端部に固定されたベアリング331と、減速機ハウジング30の前端部に固定されたベアリング333によって回転可能に支持されている。
ナット駆動ギア35は、中間シャフト33の前端部の外周部に固定されている。ナット駆動ギア35は、後述するナット41の外周部に形成された被動ギア411に噛合し、中間シャフト33の回転動力をナット41に伝達する。ナット駆動ギア35と被動ギア411は、減速ギア機構として構成されている。なお、本実施形態では、伝達機構3全体としての減速比は3以下とされている。
以下、駆動機構4について説明する。
図3に示すように、本実施形態では、駆動機構4は、アウタハウジング11の上部に収容されたボールネジ機構40を主体として構成されている。以下、ボールネジ機構40とその周辺の構成について、順に説明する。
以下、ボールネジ機構40について説明する。
図3および図4に示すように、ボールネジ機構40は、ナット41と、ネジシャフト46とを主体として構成されている。本実施形態では、ボールネジ機構40は、ナット41の回転運動をネジシャフト46の直線運動に変換して、後述のジョーアセンブリ63(図5参照)を直線状に移動するように構成されている。
ナット41は、前後方向の移動が規制され、且つ、駆動軸A1周りに回転可能な状態で、インナハウジング13に支持されている。ナット41は、円筒状に形成されており、外周部に一体に設けられた被動ギア411を有する。ナット41は、被動ギア411の前側および後側で、ナット41に外嵌された一対のラジアルベアリング412、413を介して、インナハウジング13に対して駆動軸A1周りに回転可能に支持されている。
本実施形態では、インナハウジング13は、ナット41の前側部分(詳細には、被動ギア411よりも前側の部分)を保持する前側ハウジング131と、ナット41の後側部分(詳細には、被動ギア411およびその後側部分)を保持する後側ハウジング133とを含む。前側ハウジング131は、ナット41の前方とナット41の前側部分の外周を覆うように形成されている。後側ハウジング133は、ナット41の後方と、被動ギア411およびナット41の後側部分の外周を覆うように形成されている。このように、インナハウジング13がナット41の前側と後側に配置される部分を有することで、駆動機構4の動作時に、ナット41の前後方向の移動をより確実に規制することができる。なお、前側ハウジング131および後側ハウジング133は、前後方向にネジ(図示略)によって連結固定されることで一体化されている。ラジアルベアリング412、413は、夫々、前側ハウジング131、後側ハウジング133の内部に固定されている。
なお、前側ハウジング131と後側ハウジング133のナット41の外周を覆う部分は、全体としての外形が直方体状に形成されている。後側ハウジング133の被動ギア411に対応する部分には、上下左右の4面に開口部134が設けられている。被動ギア411の径は、後側ハウジング133の上面に形成された開口部134を通じて、インナハウジング13の外面と略面一となるように設定されている。つまり、被動ギア411の外周がインナハウジング13の上面よりも上方へと突出しないように構成されている。これにより、締結工具1におけるいわゆるセンターハイト(駆動軸A1からアウタハウジング11の上面までの距離)の低減化が図られている。被動ギア411は、ナット駆動ギア35に噛合している。被動ギア411がナット駆動ギア35によって回転されることで、ナット41は駆動軸A1周りに回転される。
ネジシャフト46は、駆動軸A1周りの回転が規制され、且つ、駆動軸A1に沿って前後方向に移動可能な状態でナット41に係合している。詳細には、図3および図4に示すように、ネジシャフト46は、長尺体として構成され、駆動軸A1に沿って延在するように、ナット41に挿通されている。ナット41の内周面に形成された螺旋溝とネジシャフト46の外周面に形成された螺旋溝によって規定される螺旋状の軌道内には、多数のボール(図示略)が転動可能に配置されている。ネジシャフト46は、これらのボールを介してナット41に係合している。これにより、ネジシャフト46は、ナット41の回転駆動によって、駆動軸A1に沿って前後方向に直線状に移動する。
図4に示すように、ネジシャフト46の後端部には、ローラ保持部463の中央部が固定されている。ローラ保持部463は、ネジシャフト46に直交して中央部から左右方向に突出するアーム部を有する。ローラ保持部463のアーム部の左右端部には、夫々、ローラ464が回転可能に保持されている。一方、アウタハウジング11の左右の内壁部には、左右一対のローラ464に対応して、夫々、前後方向に延在するローラガイド111が固定されている。なお、詳細な図示は省略するが、ローラ464は、ローラガイド111によって上側と下側への移動が規制されている。これにより、ローラガイド111内に配置されたローラ464は、ローラガイド111に沿って前後方向に転動可能とされている。
以上のように構成されたボールネジ機構40において、ナット41が回転軸A1周りに回転されると、ボールを介してナット41に係合したネジシャフト46は、ナット41およびハウジング10に対して前後方向に直線状に移動する。なお、ナット41の回転に伴い、ネジシャフト46には駆動軸A1周りのトルクが作用する可能性もあるが、ローラ464がローラガイド111に当接することで、かかるトルクに起因するネジシャフト46の駆動軸A1周りの回転が規制されている。
以下、インナハウジング13内部のナット41周辺の構成について説明する。
図3および図4に示すように、前後方向において、ナット41の前端と前側ハウジング131の間には、スラストベアリング415が配置されている。一方、ナット41の後端と後側ハウジング133の間には、スラストベアリング417と、介在部材42と、弾性部材43とが配置されている。これらの部材について、順に説明する。
スラストベアリング415は、ナット41の回転を許容しつつ、ファスナ8のピン81が本体部85に対して後方に強く引っ張られるときにナット41に作用する前方向への荷重を受けるように構成されたベアリングである。
詳細は後述するが、本実施形態の締結工具1は、ノーズ部6を交換することで、ブラインドリベットと称されるファスナ8以外の、複数部材加締め式のファスナも締結可能に構成されている。複数部材加締め式のファスナには、ファスナ8と同様に、ピンテールが引きちぎられるタイプのファスナ(以下、引きちぎり式ファスナという)と、ピンの軸部がそのまま維持されるタイプのファスナ(以下、軸維持式ファスナという)とがある。軸維持式のファスナが使用される場合には、ネジシャフト46は、ファスナのカラーに適切な加締め力が付与されるまで後方へ移動された後、ジョーアセンブリ63(図5参照)がピンを把持した状態で前方へ移動される。このとき、ノーズ部内のテーパ孔に強固に圧着されたカラーを前方へ離脱させるため、ナット41には後側方向への荷重が作用する。そこで、ナット41の回転を許容しつつ、この後側方向への荷重を受けるために、スラストベアリング417が配置されている。
介在部材42は、前後方向において、ナット41と後側ハウジング133の後端部の間に配置されている。本実施形態では、介在部材42は、中央部にフランジ部421を有する円筒状部材として形成されており、ネジシャフト46が同軸状に挿通された状態で、後側ハウジング133内に配置されている。
弾性部材43は、前後方向において、フランジ部421と後側ハウジング133の後端部の間に介在配置されている。弾性部材43は、ファスナ8のピン81が本体部85に対して後方に強く引っ張られ、ピンテール813が引きちぎられたときの衝撃で、ナット41を相対的に後方に移動させる強い力が働いた場合に、後側ハウジング133への衝撃を緩和する。本実施形態では、弾性部材43として、ゴム製のOリングが採用されている。
また、弾性部材43は、与圧がかけられた状態で(若干圧縮された状態で)、フランジ部421と後側ハウジング133の後端部の間に配置されている。これにより、介在部材42は、常時には、フランジ部421の前面がスラストベアリング417に当接し、後面が後側ハウジング133の後端部の前面から僅かに前方に離間した位置に保持されている。このときのフランジ部421の後面と、後側ハウジング133の後端部の前面との間の距離は、後側ハウジング133に対して介在部材42およびナット41が後方に移動可能な距離(言い換えると、弾性部材43の圧縮量)の上限を規定している。
また、介在部材42の円筒状の後端部は、後側ハウジング133の後端部に形成された貫通孔内に摺動可能に配置されている。常時には、介在部材42の後端面は、前後方向において後側ハウジング133の後端面と概ね同じ位置に配置されている(つまり、介在部材42の後端面と後側ハウジング133の後端面とが面一とされている)。本実施形態では、インナハウジング13がアルミニウム製であるのに対し、介在部材42は鉄製とされている。詳細は後述するが、介在部材42の後端部は、ネジシャフト46およびジョーアセンブリ63が初期位置を超えて前方へ移動されてしまった場合の移動規制部(ストッパ)として機能する。
以下、ネジシャフト46の後端部の周辺構成と、ネジシャフト46の後端部が配置されるアウタハウジング11の後端部内部の構成について説明する。
図3に示すように、ネジシャフト46の後端部に固定されたローラ保持部463には、磁石保持部485が固定されている。磁石保持部485は、ネジシャフト46の上側に配置され、磁石保持部485の上端には、磁石486が取り付けられている。磁石486はネジシャフト46と一体化されているため、ネジシャフト46の前後方向の移動に伴って前後方向に移動する。
一方、アウタハウジング11には、前後方向におけるハウジング10に対するネジシャフト46の相対的位置(ジョーアセンブリ63の位置とも言い換えられる)を、磁石486を介して検出するように構成された位置検出機構48が設けられている。本実施形態では、位置検出機構48は、初期位置センサ481と停止位置センサ482とを含む。初期位置センサ481および停止位置センサ482は、何れも図示しない配線を介してコントローラ156(図2参照)に電気的に接続されており、磁石486が所定の検出範囲内に配置されている場合、所定の信号をコントローラ156へ出力するように構成されている。初期位置センサ481は、ネジシャフト46が初期位置に配置されたときに磁石486を検出可能な位置に取り付けられている。停止位置センサ482は、ネジシャフト46が停止位置に配置されたときに磁石486を検出可能な位置に取り付けられている。なお、本実施形態では、初期位置は、ネジシャフト46の物理的な移動可能範囲における最前方位置の近傍に設定されている。停止位置は、ネジシャフト46の移動可能範囲における最後方位置に設定されている。
図3および図4に示すように、ネジシャフト46の後端部には、延設シャフト47が同軸状に連結固定され、ネジシャフト46に一体化されている。以下、一体化されたネジシャフト46と延設シャフト47を総称して、駆動シャフト460ともいう。駆動シャフト460には、駆動軸A1に沿って駆動シャフト460を貫通する貫通孔461が設けられている。なお、貫通孔461の径は、締結工具1で使用可能なファスナのピンテールの最大径よりも僅かに大きい程度に設定されている。
アウタハウジング11の後端部における駆動軸A1上には、アウタハウジング11の内部と外部とを連通する開口部114が形成されている。開口部114の前側には、延設シャフト47の外径と概ね等しい内径を有する円筒状のガイドスリーブ117が固定されている。延設シャフト47(駆動シャフト460)の後端は、ネジシャフト46(駆動シャフト460)が初期位置(図3および図4に示す位置)に配置されたときには、ガイドスリーブ117内に配置される。ナット41の回転に伴ってネジシャフト46(駆動シャフト460)が初期位置から後方へ移動されると、延設シャフト47はガイドスリーブ117内を摺動しながら後方へ移動する。
また、図3および図4に示すように、アウタハウジング11の後端部には、円筒状に形成されて後方へ突出する容器連結部113が設けられている。容器連結部113は、ピンテール813の回収容器7を着脱可能に構成されている。図2および図4に示すように、回収容器7は、円筒状の筒状部材71と、螺合によって筒状部材71に着脱可能な有底筒状の蓋部材75とを含む。筒状部材71の開口側端部の内周部には、雌ネジが形成されている。一方、容器連結部113の外周部には、雄ネジが形成されている。使用者は、筒状部材71を容器連結部113に螺合することで、開口部114と回収容器7の内部空間が連通するように回収容器7をアウタハウジング11に取り付けることができる。なお、筒状部材71の後端部の外周部には、容器連結部113に対応する雄ネジが形成され、蓋部材75の開口側端部の内周部には、この雄ネジに螺合可能な雌ネジが形成されている。つまり、蓋部材75は、筒状部材71のみならず、容器連結部113にも螺合可能に構成されている。
以下、ノーズ部6およびノーズ保持部材14の構成について説明する。
まず、ノーズ部6について説明する。
図5に示すように、ノーズ部6は、ファスナ8の本体部85(フランジ853)に当接可能に構成されたアンビル61と、ファスナ8のピン81(ピンテール813)を把持可能に構成され、アンビル61に対して駆動軸A1に沿って相対移動可能に保持されたジョーアセンブリ63とを主体として構成されている。
本実施形態では、ノーズ部6は、ノーズ保持部材14を介してハウジング10の前端部に着脱可能に構成されている。上述のように、本実施形態の締結工具1は、ブラインドリベットと称されるファスナ8と、複数部材加締め式のファスナを使用可能に構成されている。使用者は、実際に使用されるファスナに応じて、適切な種類のノーズ部をハウジング10に装着する。本実施形態では、ファスナ8用のノーズ部6が例示されているが、複数部材加締め式のファスナに対応するノーズ部も、ファスナの筒状部(カラーともいう)に当接可能なアンビルと、ピンを把持可能に構成され、ファスナ当接部に対して駆動軸A1に沿って相対移動可能に保持されたジョーアセンブリを備えるという点で、基本的にはノーズ部6と同じ構成を有するということができる。なお、以下では、ノーズ部6の方向に関しては、ノーズ部6がハウジング10に装着された状態を基準として説明する。
以下、アンビル61について説明する。
図5に示すように、本実施形態では、アンビル61は、長尺の円筒状のスリーブ611と、スリーブ611の前端部に固定されたノーズチップ614とを含む。スリーブ611の内径は、後述するジョーアセンブリ63のジョーケース64の外径と概ね等しく設定されている。スリーブ611の外周部の中央部よりもやや後端側には、径方向外側に突出する係止リブ612が設けられている。ノーズチップ614は、前端部がファスナ8のフランジ853に当接可能に構成されるとともに、後端部がスリーブ611内に突出するように配置されている。ノーズチップ614には、ピンテール813を挿入可能な挿入孔615が形成されている。
ジョーアセンブリ63について説明する。図5に示すように、本実施形態では、ジョーアセンブリ63は、ジョーケース64と、連結部材641と、ジョー65と、付勢バネ66とを主体として構成されている。以下、これらの部材について順に説明する。
ジョーケース64は、アンビル61のスリーブ611内を駆動軸A1に沿って摺動可能、且つ、内部にジョー65を保持可能な円筒状に形成されている。なお、ジョーケース64は、概ね均一の内径を有するが、前端部のみ、前方へ向けて内径が小さくなるテーパ部として構成されている。つまり、ジョーケース64の前端部の内周面は、前端に向けて縮径する円錐状のテーパ面として形成されている。また、ジョーケース64の後端部には、円筒状の連結部材641の前端部が螺合され、ジョーケース64に一体化されている。なお、連結部材641の後端部は、後述する連結部材49の前端部に螺合可能に構成されている。
ジョー65は、全体としては、ジョーケース64のテーパ面に対応する円錐状の筒状体として形成され、ジョーケース64の前端部内に、ジョーケース64と同軸状に配置されている。ジョー65は、ピンテール813の一部を把持可能に構成され、駆動軸A1周りに配置された複数の爪651(例えば、3つの爪)を有する。爪651の内周面には、ピンテール813の把持を容易とするための凹凸が形成されている。
付勢バネ66は、前後方向においてジョー65と連結部材641の間に介在配置されている。ジョー65は、付勢バネ66の付勢力によって前方へ付勢され、その外周面がジョーケース64のテーパ面に当接した状態で保持されている。なお、本実施形態では、付勢バネ66は、ジョー65と連結部材641の間に配置されたバネ保持部材67によって保持されている。
バネ保持部材67は、ジョーケース64内で駆動軸A1に沿って摺動可能に配置された円筒状の第1部材671および第2部材675を含む。第1部材671は、前側に配置されてジョー65に当接する一方、第2部材675は、後側に配置されて連結部材641に当接する。第1部材671および第2部材675は、ジョーケース64の内径よりも小さい外径を有し、夫々の前端部と後端部には、径方向外側に突出するフランジが設けられている。これらのフランジの外径は、ジョーケース64の内径(テーパ部以外の部分)と概ね等しい。付勢バネ66は、その前端部と後端部が夫々第1部材671および第2部材675のフランジに当接した状態で、第1部材671および第2部材675に外装されている。なお、第1部材671の内部には、後方に突出する円筒状の摺動部672が固定されている。摺動部672の後端部は第2部材675内に摺動可能に挿入されている。摺動部672の内径は、ネジシャフト46の貫通孔461に概ね等しい。
以上のような構成により、アンビル61に対し、ジョーケース64が駆動軸A1方向に移動すると、付勢バネ66の付勢力によって、駆動軸A1方向におけるジョーケース64とジョー65との配置関係が変化する。このとき、ジョー65の爪651は、夫々、その外周のテーパ面がジョーケース64のテーパ面に摺動しつつ駆動軸A1方向に移動し、隣接する爪651同士が接近または離間する。これにより、ジョー65によるピンテール813の把持力は変化する。
詳細には、ネジシャフト46およびジョーアセンブリ63が図5に示す初期位置に配置されている場合、ジョー65は、爪651の外周のテーパ面がジョーケース64のテーパ面に当接するとともに、ジョーケース64の前端部内に突出する上述のノーズチップ614の後端に当接した状態で保持される。なお、本実施形態では、ネジシャフト46およびジョーアセンブリ63の初期位置は、爪651が、ピンテール813がジョー65の内部に挿入された場合、ファスナ8が自重でノーズ部6から脱落しない程度の把持力でピンテール813を緩く把持できるように調整されている。
ジョーアセンブリ63が駆動軸A1に沿ってアンビル61に対して後方へ移動すると、付勢バネ66によって前方に付勢されたジョー65に対し、ジョーケース64は後方に移動する。爪651のテーパ面とジョーケース64のテーパ面との作用で、複数の爪651は互いに近接するように移動する。これにより、ジョー65によってピンテール813は強固に把持される。反対に、ジョーアセンブリ63が駆動軸A1に沿って初期位置まで移動すると、ジョー65がノーズチップ614の後端に当接し、ジョーケース64はジョー65に対して前方に移動する。複数の爪651は、互いに離間するように移動する。これにより、ジョー65によるピンテール813の把持が解除可能となる。つまり、ピンテール813はジョー65から離脱可能となる。なお、締結工具1による締結工程については、後で詳述する。
以下、ノーズ保持部材14について説明する。
図5に示すように、ノーズ保持部材14は、円筒状に形成され、駆動軸A1に沿って前方へ突出するようにハウジング10の前端部に固定されている。より詳細には、ノーズ保持部材14は、インナハウジング13(前側ハウジング131)の円筒状の前端部に螺合されることで、ハウジング10に一体的に連結されている。ノーズ保持部材14の後側部分の内径は、ネジシャフト46の外径よりも大きく設定されている。また、ノーズ保持部材14の前後方向における中央部には、径方向内側に突出する環状の係止部141が形成されている。係止部141が形成された部分の内径は、ジョーアセンブリ63の外径と概ね等しく、係止部141よりも前側部分の内径は、アンビル61の外径と概ね等しく設定されている。
ネジシャフト46の前端部には、連結部材49が連結されている。連結部材49は、ネジシャフト46とジョーアセンブリ63とを連結する部材である。連結部材49は、円筒状に形成されており、その後端部がネジシャフト46の前端部に螺合されることで、ネジシャフト46に一体的に連結されている。連結部材49の後端部の外径は、ノーズ保持部材14の内径と概ね等しく設定されている。連結部材49の後端部の外周部に形成された環状の溝には、グリスの漏出防止用のOリング491が装着されている。連結部材49は、ネジシャフト46の前後方向の移動に伴って、ノーズ保持部材14内を摺動する。連結部材49の前端部は、ジョーアセンブリ63(詳細には、連結部材641)の後端部に螺合されている。つまり、ジョーアセンブリ63は、連結部材49を介してネジシャフト46に一体的に連結されている。なお、連結部材49が連結部材641に連結されると、両者を駆動軸A1に沿って貫通する貫通孔495が形成される。この貫通孔495の径は、ネジシャフト46の貫通孔461に概ね等しい。
ノーズ部6のハウジング10に対する連結方法は次の通りである。上述のようにジョーアセンブリ63が連結部材49に連結された後、アンビル61(詳細には、スリーブ611)の後端部がノーズ保持部材14内に挿入される。更に、ノーズ保持部材14の前端部の外周部に円筒状の固定リング145が螺合されることで、ノーズ部6がノーズ保持部材14を介してハウジング10に連結される。なお、アンビル61は、その後端がノーズ保持部材14の係止部141に当接し、係止リブ612が固定リング145の前端部とノーズ保持部材14の前端の間に配置されるように位置決めされている。
ノーズ部6がノーズ保持部材14を介してハウジング10に連結されると、図2に示すように、ノーズ部6の先端からアウタハウジング11の開口部114まで、駆動軸A1に沿って延在する通路70が形成される。より詳細には、通路70は、ノーズチップ614の挿入孔615、ジョー65の内部、バネ保持部材67の内部、連結部材641、49の貫通孔495(図5参照)、駆動シャフト460の貫通孔461、および開口部114(図3参照)によって形成される通路である。詳細は後述するが、ファスナ8のピンテール813は、通路70を通過して、回収容器7に収容される。なお、駆動シャフト460の後端部が配置されるガイドスリーブ117の後端から、開口部114の開口端までの距離は、ピンテール813の長さよりも短く設定されている。これにより、駆動シャフト460が初期位置に配置された状態でピンテール813が貫通孔461から排出された場合に、ピンテール813が通路70から外れてアウタハウジング11内に進入することが防止されている。
以下、ハンドル15およびその周辺構成について説明する。
図2に示すように、ハンドル15の上端部の前側には、トリガ151が設けられている。トリガ151の後側のハンドル15内部には、トリガ151の押圧操作に応じてオン状態とオフ状態の間で切り替えられるスイッチ152が収容されている。また、トリガ151の周囲には、トリガ151が何らかの物に当接して押圧される等の誤操作を防止するためのトリガガード153が設けられている。本実施形態では、トリガガード153は、トリガ151の前側に指の配置空間を確保しつつ、アウタハウジング11の前下端部からハンドルの前端部(詳細には、トリガ151の下側)まで延在している。
なお、本実施形態では、アウタハウジング11の前下端部には、照明ユニット115が設けられている。本実施形態の照明ユニット115は、光源としての発光ダイオード(LED)と、LEDを収容する透光材料製(透明樹脂、ガラス等)のケースを主体として構成されている。照明ユニット115は、LEDが発する光がファスナ当接部の前端部の周辺領域(言い換えると、ファスナ8による締結作業箇所)を照らすように、光の照射方向が設定されている。照明ユニット115は、図示しない配線によってコントローラ156に電気的に接続されている。トリガガード153は、この配線の通路を内部に有する。つまり、トリガガード153は、トリガ151の誤操作を防止部材としての機能と、配線用の通路としての機能とを兼ね備えている。
ハンドル15の下端部は、矩形箱状に形成され、コントローラ収容部155を構成している。コントローラ収容部155内部には、締結工具1の動作を制御するコントローラ156が収容されている。本実施形態では、コントローラ156として、CPU、ROM、RAM等を含むマイクロコンピュータで構成された制御回路が採用されている。コントローラ156は、図示しない配線によって、スイッチ152、照明ユニット115、位置検出機構48等に接続されている。
コントローラ収容部155の下部には、バッテリ装着部158が設けられている。また、コントローラ収容部155の上面には、使用者による外部操作が可能な操作部157が設けられている。なお、上述のように、本実施形態では、締結工具1は、ファスナ8を含む引きちぎり式ファスナと、軸維持式ファスナの両方に対応可能に構成されており、コントローラ156は、使用されるファスナのタイプに対応する動作モードに従ってモータ2の駆動を制御する。そこで、操作部157には、使用者による外部操作に応じて、動作モードや、制御条件の設定が可能なボタン等が設けられている。
ここで、以上のように構成された締結工具1における特定の機構間の配置関係について説明する。
まず、駆動機構4(ボールネジ機構40)とモータ2とハンドル15の配置関係は、次の通りである。
図3に示すように、上下方向に関し、モータシャフト25の回転軸A2は、駆動軸A1の下方で駆動軸A1と平行に延在している。つまり、モータ2は駆動機構4と同軸状に配置されていない。これにより、モータ2が駆動機構4と同軸状に配置される場合に比べ、ハウジング10を前後方向にコンパクト化することができる。特に、本実施形態では、モータ2の全体を、駆動軸A1に沿って移動するネジシャフト46よりも下方に配置することで、前後方向の確実なコンパクト化が図られている。
また、図6に示すように、駆動軸A1およびモータシャフト25の回転軸A2を含む仮想平面VPは、左右方向において、ハンドル15の中心を通過する。言い換えると、ナット41およびネジシャフト46を含むボールネジ機構40と、モータ2と、ハンドル15は、左右対称に(仮想平面VPに対して面対称に)配置されている。これにより、左右方向において良好な重量バランスが実現され、締結工具1の操作性を向上させることができる。
また、図2に示すように、前後方向に関し、ハンドル15の上端部に設けられたトリガ151は、ナット41とモータ本体部20の間に配置されている。より詳細には、側面視で、トリガ151の少なくとも一部がナット41の後端位置よりも後方にあり、且つ、トリガ151の少なくとも一部がモータ本体部20の前端位置よりも前方にある。なお、本実施形態では、側面視で、トリガ151の前端位置は、被動ギア411の後端位置よりも後方にあり、トリガ151の後端位置は、モータ本体部20の前端位置よりも前方にある。このように、トリガ151が、比較的重量の大きいナット41とモータ本体部20の間に配置されているため、左右方向のみならず、前後方向においても良好な重量バランスが実現され、締結工具1の操作性をより向上させることができる。
更に、前後方向に関しては、図2に示すように、ナット41とモータ2のモータ本体部20とは、少なくとも前後にずれた位置に配置されている。本実施形態では、ナット41とモータ本体部20とは、前後方向において互いに離間して配置されている。つまり、側面視で、モータ本体部20の前端位置は、ナット41の後端位置よりも後方にある。この場合、トリガ151を上方、つまり、駆動軸A1に近づけることができ、締結工具1の操作性を更に向上させることができる。特に、本実施形態では、図6に示すように、ナット41とモータ2とを後方からみた場合、ナット41とモータ2とは、部分的にオーバーラップするように配置されている。より詳細には、モータ2は、ナット41の下部と部分的にオーバーラップしている。なお、ここでいうナット41は、ナット41に設けられた被動ギア411を含む。つまり、後方からみたときの被動ギア411の外形と、モータ2のステータ21の外形とが部分的にオーバーラップしているということもできる。これにより、ハウジング10を上下方向にコンパクト化し、トリガ151を確実に駆動軸A1に近づけることができる。
また、回収容器7と駆動軸A1およびモータシャフト25の回転軸A2との配置関係は、次の通りである。
図6に示すように、回収容器7は、後方からみた場合、回収容器7が占める領域内に駆動軸A1およびモータシャフト25の回転軸A2が位置するように構成されている。このように、本実施形態では、ハウジング10の後端部に対応する合理的な範囲内で回収容器7の容積を確保することができる。
以下、ファスナ8の締結工程における締結工具1の動作について説明する。
図2および図5に示すように、締結工程の開始時には、ネジシャフト46(つまり、駆動シャフト460)およびジョーアセンブリ63は、初期位置に配置されている。使用者は、ファスナ8のピンテール813の一部を、ノーズチップ614の挿入孔615を通してジョー65の内部に挿入し、ジョー65に緩く把持させる。そして、締結される作業材Wの一面にフランジ853が当接する位置まで、作業材Wに形成された取付け孔にスリーブ851を挿入する。
使用者によってトリガ151が押圧操作され、スイッチ152がオンとされると、コントローラ156は、照明ユニット115のLEDを点灯し、更に、モータ2の正転駆動を開始する。伝達機構3を介してモータ2の回転動力がナット41に伝達され、ナット41が駆動軸A1周りに回転されることで、ネジシャフト46が初期位置から後方へ移動される。これに伴い、ネジシャフト46に連結されたジョーアセンブリ63が後方へ引き込まれ、ピンテール813は、ジョー65によって強固に把持されて、駆動軸A1に沿って後方へ引き込まれる。このとき、ナット41には、前方向への荷重が作用し、スラストベアリング415がその荷重を受けている。
図7に示すように、ネジシャフト46が更に後方へ移動されると、ネジシャフト46が停止位置に達する前にピン81が小径部812(図1参照)で破断し、ファスナ8からピンテール813が分離される。ナット41には、ピン81の破断の衝撃で、ナット41をインナハウジング13に対して相対的に後方に移動させる強い力が作用する。このため、後側ハウジング133に対し、後方への衝撃が加わることになる。しかし、本実施形態では、前後方向において、ナット41の後方、且つ、ナット41と後側ハウジング133の間に配置された弾性部材43がこの衝撃を緩和することで、後側ハウジング133を効果的に低減することができる。これにより、後側ハウジング133を含むハウジング10の耐久性を高めることができる。
特に、本実施形態では、ナット41を保持するインナハウジング13は、前側ハウジング131と後側ハウジング133とが前後方向に連結されることで形成されている。このような構成のインナハウジング13は、ナット41等の組み付けが容易である。一方で、ピン81が破断したときの衝撃で、後側ハウジング133と前側ハウジング131との連結が緩んでしまうと、ナット41が前後方向に移動可能となり、ネジシャフト46、ひいてはジョーアセンブリ63の前後方向位置がずれて、ピン81を適切に把持できなくなる可能性がある。しかし、本実施形態では、上述の弾性部材43が後側ハウジング133への衝撃を緩和することで、後側ハウジング133と前側ハウジング131の連結の緩みを効果的に抑制することができる。
また、図3に示すように、本実施形態では、弾性部材43は、ナット41の後方に配置された介在部材42のフランジ部421と後側ハウジング133の間に配置されている。これにより、弾性部材43にナット41の回転に伴う駆動軸A1周りの力が加わることを防止して、弾性部材43の耐久性を高めることができる。更に、弾性部材43は、フランジ部421と後側ハウジング133の間で与圧がかけられた状態で保持されるとともに、ナット41が後方へ移動した場合、フランジ部421の後面が後側ハウジング133の後端部の前面に当接してそれ以上の移動が規制される。つまり、介在部材42のフランジ部421は、後側ハウジング133に対するナット41の後方への移動量(弾性部材43の圧縮量とも言い換えられる)を規制するように構成されている。このフランジ部421による移動規制によって、弾性部材43が確実に衝撃を緩和する状態を維持しつつ、弾性部材43の耐久性を高めることができる。
ピン81が破断した後もモータ2は継続して正転駆動され、分離されたピンテール813がジョー65に把持された状態で、ネジシャフト46が更に後方へ移動される。図8に示すように、ネジシャフト46が停止位置に達すると、磁石486が停止位置センサ482の検出範囲内に進入する。コントローラ156は、停止位置センサ482の出力信号に応じてモータ2の駆動を停止することで、ネジシャフト46の後方への移動を停止する。これにより、ファスナ8による作業材Wの締結工程が完了する。
その後、コントローラ156は、使用者によるトリガ151の押圧操作が解除され、スイッチ152がオフとされると、照明ユニット115のLEDを消灯する。また、コントローラ156は、モータ2を逆転駆動し、初期位置センサ481の出力信号に基づいてネジシャフト46が初期位置に達したと判断するまで、ネジシャフト46を前方へ移動させる。ネジシャフト46およびジョーアセンブリ63は、初期位置へ復帰し、ピンテール813はジョー65から離脱可能となる。通路70は、その後の締結工程で別のファスナ8のピンテール813によって後方へ押し込まれたピンテール813の通過を許容する。回収容器7は、通路70を通過し、回収容器7まで到達したピンテール813を収容する。なお、本実施形態では、通路70は駆動軸A1に沿って直線状に延在しているため、ピンテール813はスムーズに通路70を通過することができる。また、回収容器7はハウジング10の後端部に着脱可能であるため、ハウジング10の中間部等に配置される場合に比べ、着脱操作が容易である。
ところで、本実施形態では、ネジシャフト46の初期位置への復帰は、初期位置センサ481の検出結果に基づいて行われるが、初期位置センサ481が何らかの理由で作動しないと、ネジシャフト46が初期位置を超えて更に前方へ移動されてしまう。この場合、本実施形態では、後側ハウジング133の後端面と面一に配置された介在部材42の後端面が、ネジシャフト46に設けられたローラ保持部463の前端面に当接することで、ネジシャフト46およびジョーアセンブリ63がそれ以上前方へ移動することを規制する。つまり、介在部材42がストッパとして機能する。これにより、ネジシャフト46およびジョーアセンブリ63が限界を超えて前方へ移動し、他の部分(例えば、インナハウジング13やアウタハウジング11)を損傷させる可能性を低減することができる。なお、本実施形態では、ローラ保持部463および介在部材42を、樹脂やアルミニウムよりも強度が高い鉄で形成することで、ローラ保持部463および介在部材42の損傷の可能性を低減しつつ、ネジシャフト46およびジョーアセンブリ63の移動の効果的な規制が図られている。
なお、本実施形態では、引きちぎり式ファスナの一例であるファスナ8(ブラインドリベット)を用いて締結工具1の動作について説明したが、複数部材加締め式の引きちぎり式ファスナが用いられる場合も、締結工具1の動作は同じである。また、複数部材加締め式の軸維持式のファスナが用いられる場合には、コントローラ156は、ファスナのカラーに適切な加締め力が付与されるまで、モータ2を正転駆動することでネジシャフト46を後方へ移動させた後、モータ2を逆転駆動してネジシャフト46を前方へ移動させて初期位置へ戻す。
上記実施形態は単なる例示であり、本発明に係る締結工具は、例示された締結工具1の構成に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。なお、これらの変更は、これらのうちいずれか1つのみ、あるいは複数が、独立して、または実施形態に示す締結工具1、あるいは各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
上述の締結工具1において、ファスナ8のような引きちぎり式ファスナが使用される場合、ピン81の破断に起因して金属粉が発生する場合がある。金属粉は、分離されたピンテール813に付着し、通路70を経由して回収容器7まで運ばれて、ピンテール813と共に回収容器7内に溜まる。この金属粉は、駆動シャフト460(延設シャフト47)の後端部の外周面に付着して、開口部114からアウタハウジング11の内部に侵入することがある。また、金属粉以外にも、開口部114から砂粒等が侵入する可能性もある。そこで、締結工具1には、例えば、金属粉や砂粒等の様々な異物(塵)が、アウタハウジング11内の駆動機構4等の収容領域に侵入するのを防止するための防塵構造が付加されてもよい。以下、図9〜図12を参照して、締結工具1に付加可能な防塵構造を2つ例示する。
まず、図9および図10を参照して、第1の変形例に係る防塵構造について説明する。
図9に示すように、第1の変形例では、アウタハウジング11の後端部内に配置されたガイドスリーブ117の後端部に、円筒状の延設スリーブ118の前端部が嵌合されている。延設スリーブ118は、ガイドスリーブ117と同軸状に延在し、後端部が開口部114に挿通されて容器連結部113内に突出している。なお、本変形例では、上記実施形態とは反対に、容器連結部113の内周部には雌ネジが形成されており、容器連結部113は、筒状部71に形成された雄ネジと螺合するように構成されている。延設スリーブ118の内径は、延設シャフト47の外径と概ね等しい。更に、ガイドスリーブ117の後端部と延設スリーブ118の前端部の間には、防塵部材91が配置されている。本変形例では、防塵部材91として、フェルトで形成された環状部材が採用されている。防塵部材91の内径は、延設シャフト47の外径よりも僅かに小さく、外径はガイドスリーブ117の後端部の内径と概ね等しく設定されている。
ネジシャフト46(駆動シャフト460)が初期位置に配置されているときには、図9に示すように、延設シャフト47(駆動シャフト460)の後端は、防塵部材91に挿通されて、延設スリーブ118の前端部内に配置されている。つまり、延設シャフト47(駆動シャフト460)の後端は、防塵部材91の前端よりも後方に配置されている。ネジシャフト46(駆動シャフト460)が停止位置まで後方に移動されると、図10に示すように、延設シャフト47(駆動シャフト460)の後端は、延設スリーブ118の後端から僅かに後方へ突出する位置に配置される。
防塵部材91は、ネジシャフト46(駆動シャフト460)が初期位置と停止位置との間で前後方向に移動する間、延設シャフト47の外周面に対して摺動するように配置されている。これにより、防塵部材91は、延設シャフト47(駆動シャフト460)の後端部がアウタハウジング11内に移動するときに、その外周面に付着した金属粉が防塵部材91よりも前方に侵入するのを防止することができる。また、防塵部材91は、回収容器7が装着されていないときに開口部114(延設スリーブ118)から進入したその他の異物(塵)についても、防塵部材91よりも前方に侵入するのを防止することができる。これにより、塵に起因した内部機構(例えば、駆動機構4、伝達機構3、モータ2、位置検出機構48)の不具合を防止することができる。
図11および図12を参照して、第2の変形例に係る防塵構造について説明する。
第2の変形例では、アウタハウジング11の後端部には、上記実施形態のガイドスリーブ117は配置されていない。また、延設シャフト47は、上記実施形態よりも長く形成されており、ネジシャフト46(駆動シャフト460)が初期位置に配置されているとき、図11に示すように、延設シャフト47(駆動シャフト460)の後端部は、開口部114に挿入されている。このとき、延設シャフト47(駆動シャフト460)の後端は、開口部114の開口端(後端)近傍に配置されている。よって、ネジシャフト46(駆動シャフト460)が停止位置まで後方に移動されると、図12に示すように、延設シャフト47(駆動シャフト460)の後端は、回収容器7の内部に突出する位置に配置される。
本変形例では、アウタハウジング11の後端部を形成する壁部には、開口部114を取り巻く環状の空間部119が形成されている。空間部119内には、空間部119に嵌合された環状の2枚のワッシャ94に前側と後側から挟まれた状態で、防塵部材93が配置されている。本変形例では、防塵部材93として、フェルトで形成された環状部材が採用されている。本変形例では、防塵部材93の内径は、延設シャフト47の外径よりも僅かに小さく、外径は空間部119の外径よりも小さく設定されている。これにより、組立性を向上しつつ、延設シャフト47(駆動シャフト460)が駆動軸A1に対して若干傾斜した場合でも、防塵部材93がそれに追従して径方向に若干移動することを許容している。
防塵部材93も、防塵部材91と同様、ネジシャフト46(駆動シャフト460)が初期位置と停止位置との間で前後方向に移動する間、延設シャフト47の外周面に対して摺動するように配置されている。これにより、防塵部材93は、延設シャフト47(駆動シャフト460)の後端部の外周面に付着した金属粉や、その他の異物(塵)が、防塵部材93よりも前方に侵入するのを防止することができる。
なお、第1の変形例、第2の変形例では、フェルト製の環状部材として構成された防塵部材91、93を例示したが、防塵部材91、93の素材は特にフェルトに限定されるものではない。例えば、ゴム、不織布、紙、スポンジ等を採用可能である。また、防塵部材91、93の形状も特に環状に限定されるものではない。例えば、移動部材の外周面を取り巻くブラシ状部材等を採用可能である。
以下、その他の変形例について説明する。
例えば、上記実施形態では、締結工具1は、ノーズ部6を交換することで、引きちぎり式ファスナおよび軸維持式ファスナの何れにも対応可能とされている。しかしながら、締結工具1は、引きちぎり式のファスナのみに対応した専用機として構成されていてもよい。この場合、ナット41の後方に配置されたスラストベアリング417(図3参照)は省略されればよい。そして、介在部材42が、ナット41の後端面に当接するように配置され、弾性部材43が、介在部材42と後側ハウジング133の後端部の間に挟持されればよい。なお、この場合には、介在部材42は、駆動軸A1周りに回転不能に配置されて、ナット41の回転を許容しつつナット41の後端面を受けることが好ましい。弾性部材53は、主に、引きちぎり式のファスナの締結工程で前提とされているピンの破断に伴って生じる衝撃緩和のために設けられるが、何らかの理由で軸維持式ファスナのピンの破断が生じる可能性を考慮して、軸維持式ファスナのみに対応した専用機に設けられてもよい。
また、ピン81の破断時にナット41を介して作用する後側ハウジング133への衝撃を緩和する構成は、ゴム製のOリングとして構成された弾性部材43(図3参照)に限られない。言い換えると、弾性部材43の素材や形状は、適宜、変更されてよい。例えば、複数のゴム部材が駆動軸A1周りの周方向に配置されてもよい。ゴムに代えて、弾性を有する合成樹脂やバネが採用されてもよい。介在部材42の構成も、適宜、変更されてよい。また、弾性部材43は、前後方向において、ナット41と後側ハウジング133の間に介在配置されていればよく、ナット41、介在部材42、弾性部材43、および後側ハウジング133の配置関係は、適宜、変更されてよい。例えば、弾性部材43は、ナット41と介在部材42のフランジ部421に前後から挟まれていてもよい。この場合、弾性部材43の耐久性を確保するために、介在部材42は後側ハウジング133に対して駆動軸A1周りに回転可能に配置され、弾性部材43と介在部材42がナット41と共に回転可能とされることが好ましい。
上記実施形態では、初期位置を超えてネジシャフト46が前方へ移動した場合、ネジシャフト46に固定されたローラ保持部463が、介在部材42の後端部に当接することで、ネジシャフト46の移動が規制されている。つまり、ネジシャフト46の移動規制部として介在部材42が利用されている。しかしながら、ネジシャフト46の移動規制部は、介在部材42以外の部材で構成されていてもよい。また、移動規制部に当接するネジシャフト46側の当接部も、ローラ保持部463に限られない。なお、ネジシャフト46の移動規制部とネジシャフト46側の当接部は、何れも比較的強度の高い金属で形成されることが好ましい。
モータ2、伝達機構3、および駆動機構4の構成についても、適宜、変更されてよい。例えば、モータ2としてブラシ付のモータが採用されてもよいし、交流モータが採用されてもよい。例えば、伝達機構3全体の減速比、遊星減速機31の遊星歯車機構の数等は、適宜、変更されてよい。また、ナット41と、ボールを介してナットに係合するネジシャフト46とを備えたボールネジ機構40に代えて、内周部に雌ネジが形成されたナットと、外周部に雄ネジが形成され、ナットに直接螺合されたネジシャフトとを備えた送りネジ機構が採用されてもよい。
上記実施形態では、ネジシャフト46(駆動シャフト460)およびジョーアセンブリ63が特定の位置(具体的には、初期位置と停止位置)に配置されていることを検出するために、初期位置センサ481と停止位置センサ482を含む位置検出機構48が設けられている。位置検出機構48に代えて、磁石式のセンサではなく、機械式のスイッチを用いた位置検出機構が採用されてもよい。また、初期位置センサ481と停止位置センサ482に代えて、1つのセンサまたはスイッチが採用されてもよい。例えば、ネジシャフト46(駆動シャフト460)およびジョーアセンブリ63が、前後方向において、初期位置または停止位置とは異なる所定の原点位置に配置されていることを検出可能なセンサまたはスイッチが採用されてもよい。この場合、コントローラ28は、ネジシャフト46が原点位置に配置されたことが検出されてからカウントされたモータ2の回転数や、駆動パルスの数に基づいてモータ2の駆動を停止することで、ネジシャフト46(駆動シャフト460)およびジョーアセンブリ63を所定の初期位置または停止位置に配置させることができる。なお、モータ2の回転数は、例えば、ホールICによって検出されればよい。
インナハウジング13は、必ずしも前側ハウジング131および後側ハウジング133とから形成されている必要はない。インナハウジング13は、ナット41の左側部分を覆う左側ハウジングと右側部分を覆う右側ハウジングとで形成されていてもよいし、ナット41の上側部分を覆う上側ハウジングと下側部分を覆う下側ハウジングとで形成されていてもよい。また、ハウジング10は必ずしもアウタハウジング11とインナハウジング13とで構成される必要はなく、単一のハウジングとして構成されていてもよい。
上記実施形態およびその変形例の各構成要素と本発明の各構成要素との対応関係を以下に示す。ファスナ8は、本発明の「ファスナ」に対応する構成例である。ピン81および本体部85は、夫々、本発明の「ピン」および「筒状部」に対応する構成例である。小径部812およびピンテール813は、夫々、本発明の「小径部」および「ピンテール」に夫々対応する構成例である。作業材Wは、本発明の「作業材」に対応する構成例である。
締結工具1は、本発明の「締結工具」に対応する構成例である。駆動軸A1は、本発明の「駆動軸」に対応する例である。ハウジング10は、本発明の「ハウジング」に対応する構成例である。アンビル61は、本発明の「ファスナ当接部」に対応する構成例である。ジョーアセンブリ63は、本発明の「ピン把持部」に対応する構成例である。モータ2は、本発明の「モータ」に対応する構成例である。ステータ21、ロータ22、モータ本体部20、モータシャフト25は、夫々、本発明の「ステータ」、「ロータ」、「モータ本体部」、「モータシャフト」に対応する構成例である。駆動機構4は、本発明の「駆動機構」に対応する構成例である。ハンドル15、トリガ151は、夫々、本発明の「ハンドル」、「トリガ」に対応する構成例である。ナット41および駆動シャフト460は、夫々、本発明の「回転部材」および「移動部材」に対応する構成例である。回転軸A2は、本発明の「モータシャフトの回転軸」に対応する例である。
被動ギア411は、本発明の「被動ギア」に対応する構成例である。中間シャフト33、ナット駆動ギア35は、夫々、本発明の「中間シャフト」、「駆動ギア」に対応する構成例である。ピンテール813の通路70は、本発明の「ピンテール通路」に対応する構成例である。回収容器7は、本発明の「回収容器」に対応する構成例である。照明ユニット115は、本発明の「照明装置」に対応する構成例である。トリガガード153は、本発明の「トリガ保護部」に対応する構成例である。
更に、本発明および上記実施形態とその変形例の趣旨に鑑み、以下の態様が構築される。以下の態様は、単独で、または、実施形態に示す締結工具1、上記変形例、または各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
[態様1]
前記ハンドルは、充電式のバッテリを着脱可能に構成されたバッテリ装着部を下端部に備えていてもよい。
[態様2]
前記締結工具は、前記モータの駆動を制御することで、前記駆動機構の動作を制御するように構成された制御部を更に備え、
前記制御部は、前記ハンドルの下端部内に収容されていてもよい。
[態様3]
前記回転部材は、外周部に形成された被動ギアを有し、
前記駆動機構は、前記モータシャフトの回転に伴って回転駆動されるように構成されるとともに、前記被動ギアに噛合する駆動ギアを有する中間シャフトを更に備え、
前記回転部材と前記モータは、後方からみた場合に、前記被動ギアの外形と前記モータの外形とが部分的にオーバーラップするように配置されていてもよい。