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Abstract

1分以下のRTインキュベーションおよび1サイクルあたり20秒未満のPCRサイクルを用いてRT−PCRを行うための方法、キットおよび混合物を提供する。

Description

[優先権の陳述]
本出願は、合衆国法典第35巻119条(e)に基づき、その全体の内容が参照により本明細書の一部をなすものである2015年11月5日付けで出願された米国仮出願第62/251,400号の利益を主張する。
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、分子生物学において広く使用されている技術である。その名称は、その主要な構成要素の1つである、インビトロでの酵素的複製によってDNA断片を増幅するのに使用されるDNAポリメラーゼに由来する。PCRが進行するにつれて、生成したDNA(アンプリコン)はそれ自身、複製のためのテンプレートとして使用される。それにより連鎖反応が始まり、DNAテンプレートが指数関数的に増幅する。PCRを用いれば、DNA断片の単一または少数のコピーを、数桁を越えて増幅して、数百万またはそれより多くのDNA断片のコピーを生成することが可能になる。PCRは、熱安定性ポリメラーゼ、dNTP、および一対のプライマーを用いる。
PCRは概念的には3つの反応に分けられ、各反応は通常、それぞれ3つの温度で所定期間起こると考えられる。このようなPCRの「平衡パラダイム」は、サイクルごとに3つの温度で3つの期間にわたり起こる3つの反応(変性、アニーリング、および伸長)によって容易に理解される。しかし、この平衡パラダイムは、物理学的な実態とはあまりよく合致しない。即時の温度変化が起こらない、すなわちサンプルの温度を変化させるには時間がかかる。さらに、個々の反応速度が温度に応じて変動し、一度プライマーのアニーリングが起これば、それに続いてポリメラーゼ伸長が即座に起こる。特に迅速PCR(rapid PCR)の場合、反応速度と温度が常に変化するという動力学的パラダイムがより正確である。生成物が変性しプライマーがアニールしさえすれば、PCR中に温度を一定に保つことは必ずしも必要ではない。PCRの動力学的パラダイムのもとでは、生成物の変性、プライマーのアニーリング、およびポリメラーゼ伸長は、一時的に重複し、それらの速度は温度に応じて連続的に変動する場合がある。平衡パラダイムのもとでは、サイクルは、それぞれ所定期間保持される3つの温度によって定義されるが、それに対して動力学的パラダイムは、遷移速度と標的温度を必要とする。図15a〜15bに、平衡パラダイムと動力学的パラダイムの例示的な時間/温度プロファイルを示す。しかし、これらの温度プロファイルは単に例示的なものであって、いくつかのPCRの実行においては、必要な温度が2つだけになるようにアニーリングステップと伸長ステップとが一緒になっていることが理解される。
パラダイムが正しいか間違っているかということではなく、これらは有用性の点で異なっている。平衡パラダイムは理解が簡単であり、工学的な見方および機器製造に向いている。動力学的パラダイムは、生化学、迅速サイクルPCR、および融解曲線分析により大きく関連する。
1980年代後半にPCRが最初に広まったとき、そのプロセスは遅かった。典型的なプロトコールは、変性は94℃で1分、アニーリングは55℃で2分、および伸長は72℃で3分であった。温度間の遷移時間が含まれる場合、8分のサイクルが典型的であり、その結果、30サイクルが完了するのに4時間を要した。サイクル時間の25パーセントが温度遷移に費やされていた。サイクル速度が増加するにつれて、温度遷移に費やされる時間の比率も増加することから、動力学的パラダイムがますます重要となっていった。迅速サイクルPCR中、通常、温度は変化している。短い生成物(<100bp)の迅速サイクルPCRの場合、時間の100%が温度遷移に費やされる場合があり、保持時間は必要ではない。より長い生成物の迅速サイクルPCRの場合、温度を最適な伸長温度で保持することを含む場合がある。
用語「迅速PCR」は、相対的な場合と曖昧な場合のそれぞれの意味がある。1時間のPCRは、4時間と比べれば迅速であるが、15分と比べると遅い。さらに、より高いテンプレート濃度で開始したり、またはより少ないサイクルを使用したりすれば、PCRプロトコールをより短くできる。より具体的な尺度は、各サイクルに必要な時間である。したがって、1994年に、「迅速サイクルPCR」(または「迅速サイクリング」)は、10〜30分で完了する30サイクルと定義され(1)、この場合、それぞれのサイクルは20〜60秒になる。これらの各段階間で温度に傾斜をつけるのに時間を要するため、この各サイクルの実際の時間は、多くの場合、変性、アニーリング、および伸長に関してプログラムされた時間の合計よりも長い。1990年代初頭における初期の研究で、温度制御にキャピラリーチューブと熱風を使用した迅速サイクリングの実行可能性が確立された。長年かけて、システムはより速くなり、変性、アニーリング、および伸長の動力学的な必要条件がより明確になってきた。
初期の迅速システムの1つにおいて、チャンバー内には、ヘアドライヤーからの加熱要素およびファン、熱電対、ならびにキャピラリーチューブ中のPCRサンプルが同梱されていた(2)。ファンは、熱電対およびキャピラリーを通過する加熱空気の迅速フローを生じさせた。熱電対の熱的応答をサンプルと合致させることにより、温度が変化している間でさえも熱電対の温度を厳密にサンプルの温度に合わせて変化させた。空気の熱伝導率は低いが、キャピラリーによって晒された大きい表面積に対して空気を迅速に移動させることは、変性、アニーリング、および伸長温度間でサンプルをサイクリングさせるのに十分であった。電子制御器により温度をモニターし、加熱要素への出力を調節することにより求められるタイミングとサイクル数が達成された。冷却するために、制御器によりソレノイドを活性化することにより、入口を外気に向かって開いて、別の方法で閉じたチャンバーに冷却空気を導入した。
キャピラリー/空気システムを使用すれば、温度を迅速に変化させることができる。低熱質量チャンバー、循環空気、およびガラスキャピラリー中のサンプルを使用して、わずか10分のPCR(各20秒の30サイクル)の後に、500bpより大きいPCR生成物をエチジウムブロマイドで染色したゲルで可視化した(3)。生成物の収量は、伸長時間とポリメラーゼ濃度の影響を受けた。30秒サイクル時間(伸長は、70℃から80℃の間で約10秒)の場合、ポリメラーゼ濃度を反応液10μlあたり0.1ユニットから0.8ユニットに増加させるにつれてバンドの強度も増加した。ポリメラーゼのユニットの定義は紛らわしいことがあることが知られている。天然型Taqポリメラーゼの場合、0.4U/10μlは、典型的な迅速サイクリング条件下では約1.5nMである(50)。
迅速プロトコールで使用される変性温度およびアニーリング温度における保持時間は、瞬時または「0」秒である。すなわち、温度−時間プロファイルは、変性およびアニーリングの際の温度の急激な上昇は示すが最高温度および最低温度の保持は示さない。変性およびアニーリングは、極めて急速に起こる場合がある。
迅速かつ正確な温度制御は、PCRに必要な温度および時間の分析的研究を可能にする。例示的なヒトゲノムDNAの536bpのフラグメント(β−グロビン)の場合、91℃から97℃の間の変性温度が、1秒未満から16秒までの変性時間と同等に有効であった。しかし、実際には16秒よりも長い変性時間は生成物の収量を減少させることが見出された。プライマーのアニーリングにかかる時間が制限される限りは、50〜60℃のアニーリング温度で特異的生成物が優れた収量で得られた。すなわち、変性からアニーリングへの迅速な冷却と1秒未満のアニーリング時間によって最良の特異性が得られた。75〜79℃の伸長温度で収量は最大になり、最大約40秒の伸長時間で増加した。
この初期の研究の結論は以下の通りである。1)PCR生成物の変性は極めて迅速であるため、変性温度を保持する必要はない、2)プライマーのアニーリングは極めて急速に起こる場合があるため、アニーリング温度の保持は必要ではない場合がある、および3)必要な伸長時間は、PCR生成物の長さとポリメラーゼ濃度によって決まる。また迅速サイクルPCRは、温度を正確に制御しさえすれば、より速いだけでなく、特異性および収量に関してもより優れている(4、5)。PCRの速度は、利用され得る生化学によって制限されないが、サンプルの温度を厳密にまたは迅速に制御しない機器によっては制限される。
しかし、現行の実験室用PCR機器の多くは、瞬時の変性時間およびアニーリング時間に関する性能はあまり高くなく、多くは「0」秒の保持期間のプログラミングすら不可能である。コニカルチューブの壁を介して熱が移動することによる時間遅延、低い表面積対体積の比率、および大きいサンプルの加熱のために、ほとんどの機器は、サンプルが確実に望ましい温度に達するようにするために変性時間およびアニーリング時間の延長に頼らざるを得ない。これらの時間遅延により、時間経過に対する正確な温度が不確定になる。その結果、市販品における再現性は悪く、市販品間でのばらつきが大きい(6)。多くの機器は、温度遷移中に著しい温度の変動を示す(7、8)。温度のアンダーシュートおよび/またはオーバーシュートは、試みられたサンプル体積に依存するソフトウェアでの予測ではほとんど解決しない慢性的な問題である。このような難点は、経時的に変化する場合がある機器の熱的性質によってさらに悪化する。
時間が経って、「薄壁」管における漸進的な改善、サンプル間のより高い伝導熱分布、低熱質量のブロック、および他の「速い」改変により、従来のヒートブロック機器はより速くなりつつある。それにもかかわらず、これらのシステムにとって、60秒未満でサイクルを完了させる程度に迅速にサイクリングすることはめったにない。ほんの少数のヒートブロックシステムが60秒未満のサイクルを達成できるが、通常は制限された温度範囲での2温度サイクリングに限定される。サンプル容器を平板化すれば、抵抗加熱と空気冷却によって(9)、または一定温度に維持された加熱ゾーン間をフレキシブルなチューブでサンプルを移動させることによって迅速サイクリングを達成できる(米国特許第6,706,617号)。
PCR用の空気/キャピラリーシステムの商業用バージョンは1991年から利用でき(1)、リアルタイムPCR用のものは1996年から利用できるようになった(10、11)。他の機器の迅速サイクリング性能は、初めて20〜60秒のサイクルを実証した空気/キャピラリーの標準品と比較されることが多い。不思議なことに、長年にわたりキャピラリー/空気システムをより遅く運用する傾向があるが、おそらくこれは、多くの使用者による「0」秒の変性時間およびアニーリング時間への不信感を反映しているのであろう。また熱で活性化される酵素は長い活性化期間も必要とすることから、「速い」活性化酵素が使用されたとしても運転時間も二倍になることが多い。迅速サイクリングからの別の妥協点は、プラスチックキャピラリーの使用である。これらのキャピラリーは機器と熱的に適合していないため、標的温度に達するまで変性およびアニーリング時の20秒の保持が必要になることが多い(12)。
マイクロシステムにおいて、PCRのサイクル時間をさらに減少させるいくつかの進歩が起こっており、この場合、処理される体積は当然ながら小さい(13、14)。しかし、高い表面積対体積比を有するサンプルチャンバーを用いたとしても、加熱要素が高い熱質量を有し、チャンバーの外部にある場合、サイクルは長くなる場合がある(15)。サンプル近傍で薄膜の抵抗加熱器と温度センサーを用いることにより、10〜30分の増幅が達成できる(16、17)。
低熱質量システムの冷却は、通常、受動的な熱拡散および/または強制空気によってなされるが、いくつかの興味深い加熱方法が開発されている。赤外線放射は、温度のモニタリングのための較正された赤外線高温測定(19)を用いて加熱に使用できる(18)。あるいは、ガラスキャピラリー上の薄い金属膜が、迅速サイクリングのための抵抗加熱要素と温度センサーの両方として役立つ場合がある(20)。最後に、電解質の抵抗によるPCR溶液の直接のジュール加熱と温度モニタリングが考えられ、キャピラリーで実施もされている(21)。上記の方法はいずれも、固定されたサンプルに熱を移動させたり、固定されたサンプルから熱を移動させたりするものである。
静止サンプルへの熱伝達、および静止サンプルからの熱伝達の代わりに、異なる温度の槽へ、または固定された温度ゾーンを有するチャネルを介してサンプルを物理的に移動させてもよい。PCRの流体がチャネル内で変性温度、アニーリング温度、および伸長温度で維持された様々なセグメントを通過するマイクロ流体工学的な方法が普及するようになってきた。連続流型PCRは、3つの温度ゾーンを行き来する蛇行チャネル内(22)で、さらに半径が徐々に増加または減少する3つの温度セクターを通過するループ内で実証されている(23)。蛇行レイアウトを有する改変型は、PCRの動力学的パラダイムにより厳密に適合させるために、等温ゾーンの代わりに固定された熱勾配を使用している(24)。PCRに必要なマイクロチャネルの長さを制限するために、いくつかのシステムは、二方向性の圧力駆動のフロー(25)、空気力学(26)、または動電学的な力(27)によって温度ゾーン間で前後にサンプルを往復させる。直線的なサンプル往復の代わりに、単一の円形のチャネルを、強磁性流体として(28)、または対流によって(29)駆動するサンプルの動きと共に使用できる。連続流方式を包含するマイクロシステムPCRの考えられる利点の1つは、サイクル速度である。
いくつかのマイクロシステムはそれでもなお60秒より長いサイクルを必要とするが、多くは、迅速サイクルPCRの20〜60秒のサイクル範囲で稼働する(13、30)。赤外線加熱の場合、16〜37秒の範囲の最小のサイクル時間が報告されている(18、19)。金属でコーティングされたキャピラリーは、40秒のPCRサイクルを達成しており(20)、一方で直接の電解質加熱は、21秒のサイクルで増幅した(20)。閉ループ対流型PCRの場合、24〜42秒の範囲の最小のサイクル時間が報告されている(29、31)。いくつかのグループは、PCRサイクル時間を、1990年に最初に実証された迅速サイクルPCRの元の定義よりも速い20秒未満に短くすることに注目してきた。静止サンプルの薄膜抵抗加熱は、25μlのサンプルではサイクル時間を17秒に短くし(32)、100nlのサンプルでは8.5秒に短くした(17)。連続流システムは、熱勾配PCR(24)とサンプル往復(26)を用いて12〜14秒のサイクルを達成したが、強磁性流体ループにより9秒のサイクルでのPCRが成功したことが主張されている(28)。ガラス基板およびプラスチック基板による連続流システムは、様々なサイズのPCR生成物で6.9秒(22)および5.2秒(23)のサイクル時間を達成している。アルミニウム基板を介した交互の熱水および冷水の伝導により、油の下で1μlの液滴を5.25秒のサイクルで増幅した(33)。同様に、多孔質の銅ブロックを介した水の伝導により、5μlのサンプルを4.6秒のサイクルで増幅した(34)。蒸気圧によって増大した1μlの反応プラグの連続流デバイスは、3秒のサイクルを達成した(35)。加えて、ペルチエ素子の間に挟まれたガリウムにキャピラリーを浸漬することによって、キャピラリー中で大腸菌のStxバクテリオファージの85bpのフラグメントを2.7秒のサイクルで増幅することを主張する報告がなされている(36)。あるいは、加圧した熱いガスおよび冷たいガスでサイクリングしたキャピラリーでのPCR増幅により、2.6秒のサイクルが達成された(48)。
表1に、最初に「迅速PCR」を定義した20秒のサイクルより短い時間にPCRサイクル時間を最小化するための研究を要約する。過去20年にわたり、サイクル速度をさらに向上させた新しいプロトタイプ機器が開発されてきた。しかし、実用的なPCR性能(効率および収量)が不十分であることが多い。一般的な原則として、サイクルが短くなればなるほど、PCRの成功に求められることは、より高い開始濃度で使用される標的(細菌、ファージ、多コピープラスミド、またはさらにはPCR生成物)の複雑度がどれだけ低いかに関わってくる(例えば、初発サンプルとして5ngのアンプリコンが使用された米国特許第6,210,882号を参照)。実際に、表1で列挙した研究のうち、20秒未満のサイクルで例えばヒトDNAなどの複雑な真核DNAを使用したものは皆無である。成功が求められる前にほとんど増幅しなくてもいいように、初発のテンプレート分子のコピー数が極めて高いことが多い(例えば、1μlあたり180,000,000のλファージのコピー)。さらに、多くの研究において、特に高いテンプレート濃度を用いた環境での肯定的な結果の有効性に関して、テンプレート非含有対照がないことが疑問視されることもない。ある機器に注目した報告は、熱的サイクリングデバイスの設計およびモデリングについて広範に調べており、最後の短時間PCRの実証では、高濃度の複雑度が低い標的を使用している。PCRサンプル非存在下でのモデリングおよび測定に基づいて、加熱速度および冷却速度(最大175℃/秒)が報告されている(17)。
サイクル時間を短くする方法の1つは、温度サイクリングの必要条件を簡易化するためにPCRプロトコールにバリエーションを導入することである。より長いプライマーはより高いTmを有するため、アニーリング温度が高くなる場合がある。生成物の長さとそのTmを制限することによって、生成物のTmをわずかに超えた温度まで変性温度を低くできる。より高いアニーリング温度とより低い変性温度とを組み合わせることにより、増幅の成功に必要な温度範囲を減少させる。また3ステップサイクリング(変性、アニーリング、および伸長)を2ステップ(変性および併合されたアニール/伸長ステップ)に減らすことも、温度サイクリングの必要条件を簡易化する。温度範囲の減少と2ステップサイクリングはいずれも、表1に記載された20秒未満のサイクル時間を用いた研究において典型的である。しかし、併合されたアニール/伸長ステップが、70℃よりも低い温度から、ポリメラーゼが最も活性化する最適な80℃までの温度で行われる場合、2ステップサイクリングはポリメラーゼ伸長速度を遅くする場合がある。ポリメラーゼ伸長速度は、約70〜80℃までの温度では対数線形を示し、60〜120bp/秒の最大値が報告されている(50)。
プロトコールのバリエーションを用いたとしても、サイクル時間が20秒未満である場合、対照反応と比較して、増幅効率および収量は不十分であることが多い(22、23)。これらのより速いPCRに向けられた努力は工学面に偏りすぎているようであり、生化学面はほとんど注目されていない。サイクル時間が20秒から2秒に短くなるにつれて、PCR収量は減少し、最終的には収量ゼロになるが、これは、単純な標的を高コピー数で用いた場合でさえもロバスト性が欠如することを反映している。
表1で開示された様々な参考文献に記載の機器は、反応条件が合えば極めて速いPCRに適している場合がある。本明細書において開示されたように、プライマー、ポリメラーゼ、およびMg++の濃度を高めることに注目することにより、反応ロバスト性と収量を保持しつつ「エクストリームPCR(extreme PCR)」(20秒未満のサイクル(10分未満で30サイクル)のPCR)が実現化される。また本明細書において開示されたように、プライマー、逆転写酵素の濃度の増加、および例えばトレハロースなどの糖の包含に重点を置くことによって、逆転写PCR(RT−PCR)での使用のためにより速い逆転写(RT)が可能になる。
本発明の一実施態様において、増幅中の生体サンプル中の標的RNAを増幅する方法であって、生体サンプル、逆転写酵素、熱安定性ポリメラーゼ、および生体サンプル中の標的RNAを増幅するように構成されたプライマーを含む反応混合物を提供するステップと、ここで、ポリメラーゼが少なくとも0.5μMの濃度で提供され、プライマーがそれぞれ少なくとも2μMの濃度で提供され;5分以下の時間でインキュベートすることによってRNAをDNAに逆転写するステップと;エクストリーム温度サイクリングプロファイルを使用して、複数の増幅サイクルにわたり少なくとも変性温度と伸長温度との間で生体サンプルを熱的にサイクリングすることによるポリメラーゼ連鎖反応によって、DNAを増幅するステップと、ここで、各サイクルが1サイクルあたり20秒未満のサイクル時間で完了する、を含む方法が提供される。
キットおよび反応混合物も、本明細書で提供される。
以下に記載された、現在認識される本発明を実行するにあたり最良の形態を例示した好ましい実施形態の詳細な説明を考察すれば、本発明の追加の特徴が当業者に明らかになるであろう。
エクストリームPCRを行うための略図である。 水槽中の1つのサンプルチューブをモニタリングするためのリアルタイム機能を有するエクストリームPCRを行うための例示的なデバイスを示す図である。 3温度サイクリングを用いた例示的なエクストリームPCRを行うためのデバイスを示す図である。 温度参照キャピラリーを共に示した図1bにおけるデバイスの光学素子の拡大図である。 図1bのサンプルホルダーの位置(点線)にサンプル温度(直線)を重ね合わせたグラフである。 図1bに示したデバイスを使用したエクストリームPCRの温度を示したグラフである。 図2bとの比較のために示された回転式のLightCycler(Roche)を使用した迅速サイクルPCRの温度を示したグラフである。 図2bの温度プロファイルを使用して増幅した、エクストリームPCR生成物(点線)および迅速サイクルPCR生成物(二点鎖線)の微分融解曲線をエクストリームサイクリングの陰性対照(直線)および迅速サイクリングの陰性対照(一点鎖線)と共に示すグラフである。 図3aの同じサンプルの2%SeaKem LEアガロースゲルの写真であり、レーン1および8はサイズマーカーであり、レーン2および3は30秒のエクストリームPCRの結果得られた生成物であり、レーン4は30秒のエクストリームPCRのテンプレート非含有対照であり、レーン5および6は12分のPCRの結果得られた生成物であり、レーン7は12分のPCRのテンプレート非含有対照である。 図3aおよび3bで示されたのと同じ生成物を増幅したエクストリームPCRの温度の軌跡(点線)を、同じ反応のリアルタイムモニタリング(直線)と共に示すグラフである。 温度制御により伸長速度を増加させたエクストリームPCRの温度の軌跡を示すグラフである。 図1bのサンプルホルダーの位置(直線)にサンプル温度(点線)を重ね合わせた、図4aの部分拡大図である。 IRL10RBの58bpのアンプリコンの負の微分融解曲線(−dF/dT)を示すグラフであり、AA(直線)、AG(一点鎖線)、およびGG(点線)の遺伝子型が示される。 エクストリームPCRを使用して、ポリメラーゼ濃度対プライマー濃度対PCR生成物濃度をプロットした3次元グラフである。 図5aで使用されたエクストリームPCRの温度の軌跡を示すグラフである。 図5aからの4μMのKlenTaqポリメラーゼ(KT POL)生成物の負の微分融解曲線を示すグラフである。 図5aに基づき10μMのプライマー濃度で様々なポリメラーゼ濃度を使用したエクストリームPCRの結果を示すアガロースゲルの写真である。 19ゲージのステンレス鋼チューブ中で行われたエクストリームPCRの温度の軌跡を示すグラフである。 図6aのエクストリーム温度サイクルによって生産されたPCR生成物のゲルの写真である。 長い(1秒の)併合されたアニール/伸長ステップを用いたエクストリームPCRの温度の軌跡を示すグラフである。 102bpの生成物にエクストリームPCRを使用して、ポリメラーゼ濃度対プライマー濃度対PCR生成物濃度をプロットした3次元グラフである。 1秒の併合されたアニール/伸長ステップを使用して226bpの生成物を増幅するのに使用されるエクストリームPCRの温度プロファイルを示すグラフである。 4秒の併合されたアニール/伸長ステップを使用して428bpの生成物を増幅するのに使用されるエクストリームPCRの温度プロファイルを示すグラフである。 図8aから得られたリアルタイムの結果と、2秒のアニール/伸長ステップを使用した類似の温度の軌跡を示すグラフであり、それぞれテンプレート非含有対照を包含する。 図8bから得られたリアルタイムの結果と、5秒のアニール/伸長ステップを使用した類似の温度の軌跡を示すグラフであり、それぞれテンプレート非含有対照を包含する。 異なる開始濃度でのKCNE1の45bpのフラグメントの増幅曲線を示すグラフである。 図9aからのデータのCq対log10(最初のテンプレートのコピー数)のプロットである。反応は5連で行われた。 NQO1の102bpのフラグメントの増幅が示されていることを除いては図9a〜9bと同様のグラフである。 300bpの生成物にエクストリームPCRを使用して(20サイクル、1サイクルあたり4.9秒)、ポリメラーゼ濃度対プライマー濃度対PCR生成物濃度をプロットした3次元グラフである。 KAPA2G FASTポリメラーゼおよび1〜5秒の伸長時間を使用した500bpの合成テンプレートのPCR増幅に関する蛍光対サイクル数のプロットである。 数種のKlenTaqポリメラーゼ濃度およびKAPA2G FASTポリメラーゼに関する伸長した長さ対最小の伸長時間のプロットである。 100bpのサイズを有する生成物のPCR増幅に関する蛍光対サイクル数のプロットである。 200bpのサイズを有する生成物のPCR増幅に関する蛍光対サイクル数のプロットである。 300bpのサイズを有する生成物のPCR増幅に関する蛍光対サイクル数のプロットである。 400bpのサイズを有する生成物のPCR増幅に関する蛍光対サイクル数のプロットである。 500bpのサイズを有する生成物のPCR増幅に関する蛍光対サイクル数のプロットである。 様々なマグネシウム濃度を使用したエクストリームPCRの35サイクル後における、AKAP10の60bpのフラグメントの負の微分融解曲線を示すグラフである。 図12aの負の微分融解曲線で示されたPCR生成物のゲルの写真である。 5mMのMg++と共に様々なサイクル時間を使用した35サイクル後における、AKAP10の60bpのフラグメントの負の微分融解曲線を示すグラフである。サイクル時間は、0.32秒(直線)、0.42秒(二点鎖線)、0.52秒(一点鎖線)、および0.62秒(点線)であった。サイクル時間には、60°の槽中での0.1〜0.4秒の保持時間が包含される。 図13aの負の微分融解曲線で示されたPCR生成物のゲルの写真である。 3種の異なる機器、(1)エクストリームPCR、(2)LightCycler、および(3)CFX96(Bio−Rad)で増幅した場合の、AKAP10の60bpのフラグメントの負の微分融解曲線を示すグラフである。 図14aの負の微分融解曲線で示されたPCR生成物のゲルの写真である。 PCRの平衡パラダイム(図15a)および動力学的パラダイム(図15b)に関する例示的なプロファイルを示すグラフである。黒く塗り潰された部分は、熱的サイクリング中の核酸の変性を示し、斜線部分はアニーリングを示し、白一色の部分は伸長を示す。 二重鎖RT−PCRプロトコールにおけるAKAP10およびACTBの増幅プロファイル(図16a)、融解プロファイル(図16b)、および融解ピーク(図16c)を示す図である。2回の運転が示される。 30分のインキュベーション時間と比較したより短いインキュベーション時間でのパーセントRTを示す図である。 RTステップに関して様々な温度および時間を使用したRT−PCRのPCR生成物のゲルの図である。レーン1〜3は、それぞれ15、20、および25秒にわたる45℃のインキュベーションを示し、レーン4〜6は、それぞれ15、20、および25秒にわたる47.5℃のインキュベーションを示し、レーン7〜9は、それぞれ15、20、および25秒にわたる50℃のインキュベーションを示し、レーン10〜11は、それぞれ15および20秒にわたる55℃のインキュベーションを示す。 トレハロースあり(直線)およびトレハロースなし(点線)でiScriptを使用した(図19a)、ならびに両方ともトレハロースありでiScript(直線)およびRocketScript(点線)を使用した(図19b)、様々なRTインキュベーション温度でのRTステップにおける、0.6Mのトレハロースの作用を示すグラフである。 20秒(点線)および60秒(直線)のインキュベーションを含む2ステップRT−PCRにおけるリバースプライマー濃度の作用を示すグラフである。 5,000、500、50、または5コピーでのRSVのRNAの1ステップRT−PCR増幅を示すゲルの図である(左から右に、3連で)。 10ミリ秒から20秒間のインキュベーション時間を用いたRT−PCRを示すゲルの図である。 RSVのRNAの5,000個の最初のテンプレートのコピーを、5秒のRTステップおよび45サイクルのPCRと共に使用した、1ステップRT−PCRのリアルタイム結果を示す図である。 例示的なRTステップの非常に短い時間を示すゲルである。左から右へ、2つの左のレーンは、陰性対照(NC)であり、次の3つのレーンは、56℃で0、1、および5秒のインキュベーションを用いた、低温で調製されたサンプルであり、最後の3つのレーンは、56℃で0、1、および5秒のインキュベーションを用いた、室温で1分のサンプルである。 例示的なRTステップに対するトレハロースの作用を比較するゲルの図である。トレハロースのセットは左側であり、(左から右に)テンプレートなしの対照、ブランク、1、2、5、および10秒のインキュベーション、続いて同じ順番でトレハロースなしである。 様々な時間およびMg++濃度で、42℃で酵素としてAMVを用いて行われた1ステップRT−PCRを示すゲルの図である。Mg++は、3(左上)、6(右上)、10(左下)、および13(右下)mMのMgClで包含され、それぞれ1、2、5、および10秒のRT時間(左から右に)であった。 1秒(左上)、5秒(右上)、および10(左下)秒継続する42℃でのRTステップで、0、10、20、40、および75(右から左に)mMのKClで行われた、例示的な1ステップRT−PCRプロトコールの結果を示すゲルの図である。 0、10、または38mMのDTTおよび0または40mMのKCl(示された通り)を、42℃で1秒(左上)、5秒(右上)、および10秒(左下)のRTインキュベーションにより行われた、例示的な1ステップRT−PCRプロトコールの結果を示すゲルの図である。 MMLV濃度およびRT時間のCqに対する作用を示すグラフである。 2秒のRT反応時間での、AMV濃度のCqに対する作用を示すグラフである。 8mMのMg++を含有するAMV、48℃で2秒の反応時間を使用する反応、および3.8mMのMg++を含有するMMLV、45℃で2.5秒の反応時間を使用する反応による、MMLVおよびAMV濃度のCqに対する作用を示すグラフである。 RT温度および時間のCqに対する作用を示すグラフである。 RT酵素としてAMVを用いた、RT温度のCqに対する作用を示すグラフである。 MMLVおよびAMVの両方を使用した結果を示す、RT温度のCqに対する作用を示すグラフであり、白丸は、MMLVを表し、黒丸は、AMVを表す。 AMVを使用し、2秒のRT反応時間を使用した、Mg++濃度のCqに対する作用を示すグラフである。 MMLVを使用し、2秒および5秒のRT反応時間を使用した、Mg++濃度のCqに対する作用を示すグラフであり、実線(黒丸)は2秒のRTを表し、点線(白丸)は5秒のRTを表す。 MMLVを、1.25U/μL、45℃で2秒(塗り潰されたひし形)およびAMVを、0.31U/μL、45℃で2秒(白抜きの四角形)で使用した、Mg++濃度のCqに対する作用を示すグラフである。 7.4mMのMgClと共にMMLVを1.25U/μL、45℃で2秒で使用した、RT反応時間のCqに対する作用を示すグラフである。 11mMのMgClと共にAMVを0.31U/μL、45℃で2秒使用した、RT反応時間のCqに対する作用を示すグラフである。 図38〜39に示された結果を、AMV(白丸)およびMMLV(黒丸)と組み合わせたグラフである。 ジカテンプレートありおよびなし(2つの左のバー)ならびにhRSVテンプレートありおよびなし(2つの右のバー)の氷結技術(glaciate technique)を使用したCq間の差を示すグラフである。 氷結技術を使用した異なる凍結および冷却された部分を比較するグラフであり、実験番号1、番号2、番号3は実施例26に記載され、実験番号1は表4に対応し、実験番号2は表5に対応し、実験番号3は表6に対応する。 実施例26に記載される氷結技術を使用した、陽性および陰性対照の温度のCqに対する作用を示すグラフである。 ヒトゲノムDNAおよび迅速サイクルPCRを使用した、陽性対照、陰性対照のCq、およびそれらの差(デルタCq)へのアプタマーTrnc.2−30の作用のグラフであり、ひし形は、陰性対照のCqを表し、四角形は、陽性対照のCqを表し、三角形は、デルタCqを表す。 3’−ブロッカーありおよびなしの異なるDNAアプタマーの作用を比較するグラフであり、なしは、ブロッカーなし、Phosは、3’−ホスフェートあり、アミノは、3’末端でC6−アミノ末端修飾剤で修飾されていることである。 DNAアプタマー濃度のCqに対する作用を示すグラフであり、ひし形は、陰性対照のCqを表し、四角形は、陽性対照のCqを表し、三角形は、デルタCqを表す。 RNAアプタマー濃度のCqに対する作用を示すグラフであり、ひし形は、陰性対照のCqを表し、四角形は、陽性対照のCqを表し、三角形は、デルタCqを表す。
本明細書で使用される場合、用語「a」、「an」、および「the」は、1つまたは複数を意味し、状況が不適切でない限り複数形を包含するものと定義される。範囲は、本明細書では、「およその」1つの特定の値から、および/または「およその」別の特定の値までと表される場合がある。用語「約」は、本明細書では、およそ、ほぼ、だいたい、または概ねを意味するものとして使用される。用語「約」が数値範囲と共に使用される場合、「約」は、明示された数値よりも上および下に境界を広げることによりその範囲を修正する。一般的に、用語「約」は、本明細書では、述べられている値よりも5%の偏差で上および下に数値を修正するために使用される。このような範囲が示される場合、他の実施形態は、1つの特定の値から、および/または他の特定の値までを包含する。同様に、接頭語「約」の使用によって値が近似値として示される場合、特定の値により他の実施形態が形成されるものと理解されよう。さらに、それぞれの範囲の端点は、他方の端点と関連して、かつ他方の端点とは独立してどちらも有意であることが理解されよう。
単語「または」は、本明細書で使用される場合、具体的に列挙されたもののうちいずれか1つのものを意味し、さらにその列挙されたもののいずれかの組合せも包含する。
語句「から本質的になる」は、本明細書で使用される場合、特許請求の範囲は、請求項に列挙された特定された材料またはステップであるが、特許請求された発明の「基礎的な新規の特徴に実質的に影響を与えないもの」を包含すると解釈されることを意味する。In re Herz,537F.2d549,551−52,190U.S.P.Q.461,463(CCPA1976)(原文において強調)を参照されたい;MPEP§2111.03も参照されたい。したがって、用語「から本質的になる」は、本発明の特許請求の範囲で使用される場合、「含む」と同等であると解釈されることを意図しない。
「サンプル」は、動物;動物からの組織または臓器;細胞(対象内の細胞、対象から直接採取した細胞、または培養物中で維持された細胞もしくは培養細胞株からの細胞のいずれか);細胞溶解産物(または溶解産物画分)または細胞抽出物;細胞、細胞材料、またはウイルス材料から誘導された1種または複数の分子(例えばポリペプチドまたは核酸)を含有する溶液;または本明細書で説明されているようなアッセイされる天然に存在する核酸もしくは天然に存在しない核酸を含有する溶液を意味する。またサンプルは、細胞、細胞成分、または核酸を含有する任意の体液または排出物(例えば、これらに限定されないが、血液、尿、便、唾液、涙、胆汁など)であってもよい。
語句「核酸」は、本明細書で使用される場合、天然に存在する、または合成のオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドを指し、これらは、DNAまたはRNAまたはDNA−RNAハイブリッド、一本鎖または二本鎖、センスまたはアンチセンスかどうかにかかわらず、ワトソン−クリック塩基対形成によって相補的核酸にハイブリダイズ可能なものである。また本発明の核酸は、ヌクレオチド類似体(例えば、BrdU、dUTP、7−デアザ−dGTP)、およびヌクレオシド間の非ホスホジエステル結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)またはチオジエステル結合)を包含していてもよい。特に、核酸としては、これらに限定されないが、DNA、RNA、cDNA、gDNA、ssDNA、dsDNA、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。
「プローブ」、「プライマー」、または「オリゴヌクレオチド」は、相補配列を含有する第二のDNA分子またはRNA分子(「標的」)と塩基対を形成できる限定された配列の一本鎖のDNA分子またはRNA分子を意味する。その結果得られたハイブリッドの安定性は、長さ、GC含量、最隣接のスタッキングエネルギー、および発生する塩基対形成の程度によって決まる。塩基対形成の程度は、例えばプローブと標的分子との相補性の程度などのパラメーター、およびハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーの程度の影響を受ける。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーの程度は、例えば温度、塩濃度、および例えばホルムアミドなどの有機分子の濃度といったパラメーターの影響を受け、当業者に公知の方法によって決定される。プローブ、プライマー、およびオリゴヌクレオチドは、当業者に周知の方法で、放射性標識、蛍光標識、または非放射性標識のいずれかによって検出できるように標識されていてもよい。dsDNA結合色素(二本鎖DNAに結合すると、一本鎖DNAに結合するかまたは溶液中で遊離状態である場合よりも強い蛍光を発する色素)を使用して、dsDNAを検出することができる。「プライマー」は、ポリメラーゼによって伸長するように特異的に構成されるが、それに対して「プローブ」または「オリゴヌクレオチド」は、そのように構成されていてもよいし、または構成されなくてもよいことが理解されている。
「特異的にハイブリダイズする」は、プローブ、プライマー、またはオリゴヌクレオチドが、高いストリンジェンシー条件下で実質的に相補的な核酸(例えばサンプル核酸)を認識し物理的に相互作用して(すなわち塩基対を形成して)、他の核酸とは実質的に塩基対を形成しないことを意味する。
「高いストリンジェンシー条件」は、典型的には、ほぼ融解温度(Tm)マイナス5℃で(すなわちプローブのTmより5°低い温度で)起こることを意味する。機能的には、高いストリンジェンシー条件は、少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を同定するのに使用される。
例示的な実施形態において、20秒未満のサイクル時間を用いたPCR、いくつかの実施形態では10秒未満、5秒未満、2秒未満、1秒未満、および0.5秒未満のサイクル時間を使用したPCRのための方法およびキットが提供される。これらのサイクル時間を用いれば、30サイクルのPCRは、それぞれ10分未満、5分未満、2.5分未満、1分未満、30秒未満、および15秒未満で完了する。PCR速度が速くなればなるほど、プライマー濃度もしくはポリメラーゼ濃度またはその両方が増加することによりPCR効率および収量が維持される。
PCRの3要素反応(プライマーのアニーリング、ポリメラーゼ伸長、およびテンプレート変性)のどれが不十分になっても、PCRの効率および収量が制限される場合がある。例えば、プライマーがテンプレートの95%にしかアニールしない場合、たとえそのテンプレートの100%が変性してプライマーが結合したテンプレートの100%が伸長して全長生成物になったとしても、PCR効率が95%よりも大きくなることはできない。同様に、伸長効率がわずか95%である場合も、可能な最大のPCR効率は95%でしかない。PCR生成物濃度をサイクルごとに2倍にするためには、全ての要素が、100%の達成率を得なければならない。以降の段落で、変性、アニーリング、および伸長を順次考察する。
遅いPCR(60秒未満のサイクル)、迅速PCR(20〜60秒のサイクル)、およびエクストリームPCR(20秒未満のサイクル)の温度サイクリングにおいて、PCRの失敗に関する一般的な原因は、不十分な変性である。目標は、各サイクルでの変性を完全に行い、プライマーのアニーリングで定量的なテンプレートが利用できるようにすることである。PCR前の最初のテンプレートの変性、特にゲノムDNAの変性は通常、PCR中の増幅生成物の変性よりもより厳しい条件を必要とする。元の迅速サイクルPCRの最適化(4)は、テンプレートを沸騰させた後に行われているが、これは、最初のゲノムDNAを確実に変性させる優れた方法である。不完全な最初の変性は、高いTmを有する標的、特に高い安定性のフランキング領域を有する標的の場合に起こる場合がある(37)。そのために、特に、変性中のわずかな温度差がPCR効率に影響を与える場合、例えばゲノムの挿入または欠失に関して、定量的PCRの性能が損なわれる場合がある(37〜39)。先に行われた沸騰または制限消化(37)が望ましくなく、より高い変性温度がポリメラーゼ性能を損なう場合、生成物のTmを下げるアジュバントを使用して変性を補助してもよい。
変性のための初期設定の標的温度として94℃が使用されることが多いが、それが最適であることはめったにない。PCR生成物は、主にGC含量と長さに応じて40℃より高い温度範囲で融解する(43)。PCR生成物が、より低い変性温度が使用できるように十分低い温度で融解する場合、低い変性標的温度は、速度の利点と特異性の利点の両方を有する。変性温度が低ければ低いほど、サンプルはより速く変性温度に到達でき、より速くPCRを行うことができる。より高い変性温度で発生し得る生成物は二本鎖のままであり、プライマーのアニーリングに利用できないと予想されるため、これらの発生し得る全ての生成物を排除することによりさらに特異性が高められる。高いTmの生成物を増幅するために、標的温度を94℃より高くする必要がある場合がある。しかし、現行の熱安定性ポリメラーゼのほとんどは97℃より高温で変性し始め、PCR溶液は標高に応じて95℃(または未満)から100℃の間で沸騰する場合があるため、温度を高める余地がさほどない。1価の塩およびMg++濃度を低くすると、生成物のTmが下がる。同様に、dUTPおよび/または7−デアザ−dGTPを取り込むことによっても生成物のTmは下がるが、ポリメラーゼ伸長速度を減少させる場合がある。ほとんどの独自のPCRの「エンハンサー」は、生成物のTmを下げて高いTmの生成物の変性(および増幅)を可能にする単純な有機物質である。これらのなかでも最も一般的に普及しているものは、DMSO、ベタイン、グリセロール、エチレングリコール、およびホルムアミドである。Tmを下げることに加えて、これらの添加剤のうちいくつかは、PCR混合物の沸点も上昇させる(特に高い標高で有用である)。エンハンサー濃度が増加するにつれ、生成物のTmは下がるが、ポリメラーゼ阻害が増加する場合がある。
しかし、エクストリームサイクリング条件下であっても変性が律速である必要はない。なぜなら、温度が生成物のTmからわずかしか上回っていなくても、DNAの巻き戻しが最初に極めて速く起こる(10〜100ミリ秒)ためである。変性は、増幅生成物のTmよりも測定が困難な2〜3℃高い温度で迅速に起こるが、アンプリコンの完全な変性はおそらく0.1秒未満で起こる。複数のドメインで生成物が融解する場合、標的の変性温度は、最も高い融解ドメインよりも2〜3℃高いと予想される。サンプルがこの温度に到達する限りは、長い生成物であったとしても変性は極めて速い。キャピラリーおよび水槽を使用すれば(40)、20kBを超えるPCR生成物の完全な変性が1秒未満で起こる(52)。生成物のTmおよび融解ドメインは、例示的には、DNA色素および高解像度融解を用いて実験的に決定される(41)。Tmの推測はソフトウェアでの予測により達成できるが(42)、その精度は限定的である。さらに、観察されたTmは、例えば塩濃度および任意の色素やアジュバントの存在などの局所的な反応条件に強く依存する。したがって、観察されたTmは通常、より反応条件に適合されている。
効率への影響がなければ、変性への接近速度は、可能な限り速くてもよく、例えば図2aおよび図6aで示されるように200〜400℃/秒であってもよい。これらの速度では、変性温度に到達するのに約0.1〜0.2秒しか要さない。しかし、標的温度に接近するときのより遅い速度は、標的温度を上回る危険を減少させ、起こり得るポリメラーゼの不活性化または溶液の沸騰を回避する。より遅い接近温度を達成する例示的な方法の1つは、標的温度よりも5〜10℃高い温度の高温槽にサンプルを浸すことである。標的と槽温度との温度差により指数関数的な接近曲線が定められ、差が小さくなるにつれてこの接近曲線は自動的に遅くなる。温度を連続的にモニタリングすることによって、変性の目標が達成されたら次の相(アニーリングまで冷却すること)が始動する。まとめると、PCRにおける完全な生成物の変性は、生成物の最も高い融解ドメイン温度よりも2〜3℃高い温度で0.2秒未満を必要とし、可能な限り迅速に、例示的には40〜400℃/秒で変性温度に接近し得る。変性は最初に起こるため、その速度は生成物の濃度にのみ依存し、効率(または変性される生成物のパーセンテージ)は生成物の濃度とは無関係である。
低品質のPCRでは、不完全なかつ/または間違ったプライマーのアニーリングが生じる場合がある。全てのテンプレート部位にプライマーが結合しない場合に、効率が低くなる。さらに、望ましくない部位でプライマー結合が起こる場合、別の生成物が生産される場合がある。目標は、実質的に、各サイクルで望ましい部位でのみ完全なプライマーのアニーリングを達成し、ポリメラーゼ伸長のために定量的なプライマーが結合したテンプレートを提供することである。
20〜60秒のサイクルを用いた迅速PCRプロトコールは、500nMのプライマーのTmよりも5℃低い温度で1秒未満のアニーリング時間を提唱している(52)。20秒未満のサイクルを試みた機器の場合のプライマー濃度は、それぞれ200〜1,000nMの範囲である(表1)。これらの濃度は、長いアニーリング時間が使用される従来のPCR(60秒未満のサイクル)で使用される濃度に類似している。プライマー濃度を低くすることは、特異性を向上させるために使用されることが多く、プライマー濃度を増加させることは、非特異的増幅に関する懸念のために考慮されることはまれである。しかし、迅速サイクリングを用いる場合、特異性の向上はより短いアニーリング時間に起因している(5)。この傾向が継続すれば、エクストリームPCRの極めて短いアニーリング時間は、高いプライマー濃度を容認するものと想像できる。アニーリングを促進するために、20〜60秒のサイクルの場合、プライマーのTmよりも5℃低いアニーリング温度が推奨される。Tmは、増幅で使用されるのと同じ緩衝液条件下で飽和させたDNA色素およびオリゴヌクレオチドを使用した融解分析によって最もよく実験的に測定される。プライマーを、ダングリング末端(dangling end)として5’−伸長部分を有するその相補標的と組み合わせることにより、そのテンプレートにアニールしたプライマーの安定性を最適に概算し、融解分析が行われる。
変性と対照的に、アニーリング効率はプライマー濃度に依存する。プライマーのアニーリングは、極めて速いサイクル速度で制限的になる場合がある。プライマーのアニーリングは、2番目に起こる反応であり、プライマー濃度と標的濃度の両方に依存する。しかし、多くのPCRにおいて、プライマー濃度は標的濃度よりもかなり高く、実際的にはアニーリングは擬似的に最初に起こり、プライマー濃度にのみ依存する。このケースにおいて、プライマーが結合した生成物の比率(アニーリング効率)は、プライマー濃度にのみ依存して生成物濃度には依存しないことから、より高いプライマー濃度は、より短いアニーリング時間を可能にすると予想される。さらに、理論にとらわれずにいえば、その関係は直線的であると考えられる。アニーリング時間がより短くなればなるほど、PCRの効率および収量を維持するためにはプライマー濃度の増加が必要になる。例えば、迅速サイクリングは、プライマーのTmよりも5℃低い温度で約1〜3秒のアニーリングを可能にする(3)。エクストリームPCRにおいて、このアニーリング時間(Tm−5℃、またはそれより低い温度で)を10倍短くする場合、プライマー濃度を10倍増加させれば類似のプライマー結合効率が期待される。有効なアニーリング時間が次第に短くなるにつれて、プライマー濃度もほぼ同じ倍率で次第に高くなるべきである。典型的な迅速PCRプロトコールは、500nMの各プライマーを使用する。エクストリームPCRにおいてアニーリング時間が3倍から40倍短くなると、同じプライマー結合効率を得るのに必要なプライマー濃度は、各プライマーで1,500〜20,000nMである。これは、プライマーの合計で3,000〜40,000nMと同等であり、表1に記載されたいずれのプライマー濃度よりも高い。これは、先に行われた試みで20秒未満のサイクリングでの効率が不十分であることの理由の1つは、不十分なプライマー濃度の後に起こる不十分なアニーリング効率であることを示唆している。エクストリームPCRでは、プライマー濃度をそれぞれ1.5〜20μMに増加させることにより、0.05〜0.3秒のアニーリング時間にもかかわらず優れたアニーリング効率を達成している。増加させたプライマー濃度を使用すれば、アニーリング時間の短縮を相殺して同じアニーリング効率を達成することが可能なため、より短いアニーリング時間でもさらにより高いプライマー濃度を考慮できる。市販されているほとんどの機器は少なくとも1秒の保持時間を必要とし、わずかな機器が「0」秒の保持時間を許容することが知られているが、わずかな秒の保持時間を許容する市販の機器はない。エクストリームPCRのいくつかの実例について、0.1秒または0.01秒きざみの保持時間が望ましい場合がある。
効率を犠牲にすることなくアニーリング速度を増加させアニーリング時間を短くする別の方法は、例示的にはMg++濃度を増加させることによって、イオン強度を増加させることである。アニーリング速度は、イオン強度の増加に伴い増加し、プライマーのアニーリングを包含するハイブリダイゼーション速度を増加させるには2価カチオンが特に有効であることが当分野において知られている。
例示的には、アニーリングの標的温度への接近速度は、可能な限り速くてもよい。例えば、200〜800℃/秒で(図2aおよび図6a)、0.05〜0.2秒でアニーリング温度に到達することが可能である。また迅速な冷却も、全長生成物の再ハイブリダイゼーションを最小化する。冷却中に二重鎖増幅生成物が形成される程度になると、プライマーは二重鎖生成物にアニールできないため、PCR効率は低下する。これはPCR初期ではめったに起こらないが、生成物濃度が増加するにつれて、冷却中に二重鎖がますます形成されるようになる。SYBR(登録商標)グリーンIを用いた連続的なモニタリングから、このような生成物の再アニーリングが、PCRがプラトーになる主な原因である場合があることが示唆される(44)。
ポリメラーゼ伸長も時間を必要とし、伸長時間が短い場合にPCR効率を限定する場合がある。より長い生成物は、PCR中により長い伸長時間を必要とすることが知られており、推定上全ての生成物の伸長を完了させるために、PCRの最後に数分の最終的な伸長が付け足されることが多い。長い生成物のための通常のアプローチは、伸長にかかる時間を長くすることである。プライマーのアニーリングおよびポリメラーゼ伸長が同じ温度で行われる2ステップサイクリングのいくつかのケースと同様に、より低い伸長温度を使用することにより必要な時間がさらに長くなる。
最適なPCR効率のためには、各サイクルにおけるプライマーが結合したテンプレートの実質的に完全な伸長が必要である。ほとんどのポリメラーゼ伸長速度は、温度に伴い所定の最大値まで増加する。Taqポリメラーゼの場合、最大値は75〜80℃で約100ヌクレオチド/秒であり、温度が10℃低下するごとに約4倍減少する(50)。536bpのベータグロビン生成物の場合、迅速サイクルPCRでは76℃が最適であることが見出された(4)。近年、商業的な要求に応じて、全体のPCR時間を短くできるより速いポリメラーゼが導入されつつあり、これは、このようなポリメラーゼが、より長い生成物のための伸長保持時間を不要にするかまたは短くできることを示唆している。
より速いポリメラーゼ伸長速度の代替策またはそれを補強する策として、ポリメラーゼ濃度を増加させると、必要な伸長時間が短くなることが発見された。500nMの各プライマーと共に、PCRにおいて標準的なTaqポリメラーゼ濃度(0.04U/μl)または1.5nM(49)を使用すると仮定すれば、各プライマーがテンプレートに結合する場合、一度にテンプレートの0.15%が伸長する程度のポリメラーゼしか存在していないため、新しいプライマーが結合したテンプレート全てを伸長させるためにはポリメラーゼをそれらに何度も再利用することが必要となる。ポリメラーゼ濃度を増加させることにより、プライマーが結合した有効なテンプレートのより多くが一度に伸長され、テンプレート全てを伸長させるのに必要な時間を短くするが、これはおそらく、より速い伸長速度によるのではなく、いずれの時点においてもプライマーが結合したテンプレートのより高い比率を伸長することによるものと予想される。
一次近似によれば、小さいPCR生成物の場合(100bp未満)、必要な重合時間は、酵素の重合速度(それ自身が温度の関数である)およびポリメラーゼ濃度に正比例するようである。また必要な時間は、伸長させようとするテンプレートの長さ(生成物の長さからプライマーの長さを引いた長さ)に反比例する。ポリメラーゼ活性を、PCRにおいて標準的な活性である0.04U/μlの20〜300倍に増加させることにより、20秒未満のサイクルを用いたエクストリームPCRは、特異的生成物の高い収量を達成できる。すなわち、0.8〜12U/μl(1〜16μMのKlenTaq)の活性は、0.1〜1.0秒の併合されたアニール/伸長時間を用いた2ステップのエクストリームPCRを可能にする。これまでに使用された最大のポリメラーゼ活性は、0.5U/μlであった(表1)。エクストリームPCRの実例で使用される2ステップPCRの場合、70〜75℃での併合されたアニール/伸長ステップがより速い重合速度にとって有利である。さらに、2ステップPCRは温度サイクリングを簡易化するため、エクストリームサイクリング(20秒未満のサイクル)の実例では典型的には2ステップPCRが使用され、迅速なアニーリングと迅速な伸長の両方が、併合されたアニール/伸長ステップの間に起こらなければならない。それゆえに、実例では増加させたプライマー濃度と増加させたポリメラーゼ濃度の両方が使用され、その結果として、エクストリーム2温度サイクリング下でロバストなPCRがもたらされる。例示的には、以下に記載される実施例で例示されるように、50〜75℃で0.05〜5.0秒の併合されたアニール/伸長時間を用いる場合、それぞれ1.5〜20μMのプライマー濃度と、任意の標準的なポリメラーゼの0.4〜12U/μlのポリメラーゼ濃度(0.5〜16μMのKlenTaq)とが必要である。アニーリングおよび伸長の両方に対して1つのPCRサイクリングセグメントしかないため、エクストリームPCR条件は、例示的にはプライマー濃度とポリメラーゼ濃度の両方を増加させることによって両方のプロセスを強化することを必要とする。
また、エクストリーム3温度サイクリングも想定され、その場合、アニーリングステップおよび伸長ステップは異なる温度で別々に維持される。このケースにおいて、アニーリングステップおよび伸長ステップに配分される時間を個々に制御して、具体的な要求に合わせることが可能である。例えば、アニーリング時間のみが短く(0.05〜0.2秒)伸長時間が比較的長く維持される場合(例示的には1、2、5、10または15秒)、効率的なPCRのためにはプライマー濃度だけを増加させればよい。あるいは、伸長時間は短いが(70〜80℃の範囲内で1秒未満)、アニーリング時間は長い場合、効率的なPCRを達成するためにはポリメラーゼ濃度だけを増加させればよいと考えられる。効率的なPCRは、例示的には少なくとも70%、さらに例示的には少なくとも80%、最も例示的には少なくとも90%の効率を有し、多くの例において95%を超える効率も達成可能であることが理解される。
100bpよりも長い生成物の場合、エクストリームPCRを使用した効率的な伸長は、高いポリメラーゼ濃度と増加させた伸長時間との組合せを必要とする場合がある。ポリメラーゼが過量に存在する場合、例示的には、最小の時間は、塩基の伸長の長さ(生成物の長さからプライマーの長さを引いた長さと定義される)を塩基/秒単位のポリメラーゼ伸長速度で割った値であるはずである。しかし、これまで述べてきたように、ポリメラーゼが飽和しているのは通常、テンプレート濃度がポリメラーゼ濃度よりも大きくなる前の、PCRの開始時のみである。サイクル時間を短くする方法の1つは、ポリメラーゼの最大温度近傍、典型的には70〜80℃で、2温度PCRを使用することである。必要な伸長時間は、リアルタイムPCRを使用して定量サイクル、すなわちCqをモニタリングすることによって実験的に決定できる。例えば、75℃で100塩基/秒のポリメラーゼ伸長速度では、ポリメラーゼ濃度が過量である場合、200bpの生成物は、約2秒を要すると予想される。同様に、400bpの生成物は、これと同じポリメラーゼを使用した場合、その濃度が、伸長されるテンプレートの濃度よりも高い限りは約4秒を要すると予想される。ポリメラーゼが過量ではない場合、より多くのポリメラーゼを添加することによって、より多くのテンプレートが同時に伸長されて、ポリメラーゼ濃度に比例して必要な伸長時間を短くすることが可能になる。
任意のDNA分析方法の有用性は、どれだけ速く行うことができるか、どれだけ多くの情報が得られるか、およびどの程度難しいかによって決まる。従来のクローニング技術と比較して、PCRは速くかつ簡単である。迅速サイクルPCRおよびエクストリームPCRは、必要な時間の連続的な短縮に重点を置いている。リアルタイムPCRは、各サイクルでデータを得ることにより情報量を増加させる。PCR中またはPCR後に融解分析を行って、温度を増加させながらDNAハイブリダイゼーションを連続的にモニターできる。
PCRの平衡パラダイムおよび動力学的パラダイムに戻って考えると(図15a〜15b)、100bp未満の生成物のエクストリームPCRは、動力学的モデルがよく当てはまることが実証されている。温度は常に変化しており、変性、アニーリング、および伸長の速度は温度依存性であることから、PCRの適切な評価は、温度全域にわたる各要素の反応速度を統合することでしか得られない。100bpより大きい生成物の場合、より長い伸長時間を要する場合があり、反応速度論モデルと平衡モデルのどちらの要素でも適切である。
本明細書に記載の少なくとも1つの実施形態に従って反応条件が構成される場合、いくつかの実施形態に関して例示すれば、2秒未満のサイクル時間を用いて、完全な増幅のために1分未満で、極めて速い速度でPCRを行うことができることが発見された。例示的には、このエクストリームPCRに、増加させたポリメラーゼ濃度とプライマー濃度との様々な組合せが使用される。いずれの特定の理論にとらわれずにいえば、過剰な濃度のプライマーは、概して完全なプライマーのアニーリングを可能にし、それによってPCR効率を増加させると考えられる。同様にいずれの特定の理論にとらわれずにいえば、ポリメラーゼ濃度を増加させることによっても、より完全な伸長がもたらされるためにPCR効率が向上すると考えられる。ポリメラーゼ濃度を増加させることにより、アニールしたプライマーへの結合が促進され、さらに完全な伸長の前にポリメラーゼが離れた場合でも再結合が促進される。以下に記載の実施例で、複雑な真核生物ゲノムDNAおよび単一コピー標的を用いて開始した場合でもエクストリームPCRが成功したことを示す。
以下に記載される実施例ではKlenTaqを使用したが、類似の活性を有する任意の熱安定性ポリメラーゼが、ポリメラーゼ伸長速度を考慮した類似の方式により、エクストリームPCRで性能を発揮すると考えられる。本明細書で提示されたように、例示的には酵素の活性化率(activity rate)の差で調節することにより濃度を増加させて使用した場合、エクストリームPCRを可能にすると予想されるポリメラーゼの市販の調製物としては、例えば、Herculase、Kapa2G FAST、KOD Phusion、天然のまたはクローニングしたサーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)のポリメラーゼ、Platinum Taq、GoTaq、およびFast Startが挙げられる。
2秒のサイクル時間を可能にする現行の市販のPCR機器はないため、システム4を組み立てて、エクストリームPCRの構想の証明試験を行った。しかし、システム4は例示的なものであり、迅速に熱サイクリング可能な他のシステムも本開示の範囲内であることが理解される。図1aで示されるように、95.5℃(本発明の実施例が行われた場所であるユタ州ソルトレイクシティでの沸騰水の温度)の高温の水槽10、および30〜60℃の低温の水槽14を使用して、サンプル容器20中に入れられた1〜5μlのサンプルの温度を変化させる。例示的な水槽10、14は4.5クォートのステンレス鋼製ドレッシング用ジャー(Lab Safety Supply、番号41634)であるが、いくつかの実施例では500mlのガラスビーカーを使用して、磁気撹拌しながら電気ホットプレート12、16(Fisher Scientific Isotempデジタルホットプレート(番号11−300−49SHP)で加熱が行われる。しかし、他の実施形態が、サンプルを加熱したり冷却したりするのに使用され得ることが理解される。図1aに示される実施形態において、サンプル容器20は、ガラス/プラスチック複合材の反応チューブ(BioFire Diagnostics、番号1720、内径0.8mmおよび外径1.0mm)である。しかし、他の実施例では、サンプル容器20として、皮下注射針(Becton Dickenson、番号305187、内径0.042インチ、外径0.075インチ)と、ステンレス鋼管材料で構成されBioFireチューブのプラスチックの頂上部に適合させたステンレス鋼/プラスチック複合材の反応チューブ(Small Parts、内径0.042インチ/外径0.075インチ、内径0.035インチ/外径0.042インチ、または内径0.0265インチ/外径0.035インチ)とを使用した。その他のサンプル容器も本発明の範囲内であるが、大きい表面積対体積比を有し、速い熱伝達速度を有するサンプル容器が望ましい。所定の実施形態に関して、金属管材料の開放端をガス炎を使用して赤色から白色に加熱し、万力で圧縮することによって密封した。リアルタイムPCRの場合、光学的に透明であるか、または光学的に透明な部分を有するチューブが望ましい。短時間の遠心分離によりサンプルを各チューブの底部に沈降させた。
サンプル容器20は、アーム21によりステッピングモーターのシャフト26に取り付けられたチューブホルダー22によって保持される。反応溶液が6.5〜7.5cmの半径で保持されるように2〜5個のサンプル容器20を保持するためのチューブホルダー22を、黒いデルリン(Delrin)プラスチックから機械製作した(図1aでは1つのサンプル容器20のみを図示したが、このようなサンプル容器20の列が存在してもよい)。図1aでは図示されていないが、熱電対(Omega type T precision細線熱電対、番号5SRTC−TT−T−40−36、36インチのリード線、0.003インチの直径、テフロン製絶縁材を有する)を使用して、温度を測定できる。図1bと類似したチューブホルダーおよびアームを示す図1dを参照すれば(同様の数値は類似の構成要素を示す)、2つのサンプル容器を保持するように設計されたチューブホルダー222が存在しており、チューブホルダー222における一方の場所は熱電対228によって占められている。本明細書で説明される実施形態のいずれにおいても、図1dで示されるように、任意の数のサンプル容器20または220を熱電対と共に使用してもよいし、熱電対熱電対なしで使用してもよいことが理解される。熱電対による増幅および線状化は、Analog Devices AD595チップ(示さず)を用いて行われる。まず、T型電圧=(AD595の出力/247.3)−11μVに従って、AD595の出力から熱電対の電圧を計算した。次いで、T型熱電対の電圧/温度相関に関するアメリカ国立標準技術研究所の係数を使用して熱電対の電圧を温度に変換した。アナログシグナルをデジタル化し(PCIe−6363収集ボード)、CPU40にインストールされたLabViewソフトウェア(バージョン2010、National Instruments)で処理し、ユーザーインターフェース42に表示した。例示的には、ステッパーの動きを87〜92℃および60〜75℃で動的に引き起こすか、またはコンピューターで制御された期間にわたり各水槽中にステッパーを保持してもよい。典型的には30〜50サイクルが行われる。
チューブホルダー22中の全てのサンプル容器20が水槽10と水槽14との間を素早く移動して、サンプルが入っている各サンプル容器20の一部が完全に浸されるように、ステッピングモーター24(Applied Motion Products、番号HT23−401、3V、3A)が水槽10と水槽14との間に配置される。ステッピングモーター24は、例示的には4SX−411nuDrive(National Instruments、示さず)で作動し、PCI−7344運動制御器とCPU40にインストールされたNI−Motionソフトウェア(バージョン8.2、National Instruments)とで制御される。ステッピングモーター24は、水槽10と水槽14との間を約0.1秒で回転する。図2aは、90℃および50℃でステッパーの動きが引き起こされた運転に関して、サンプル容器20の位置の軌跡(直線)の上にサンプルの温度の軌跡(点線)を重ねて示す。図2aからわかるように、50℃よりも低い温度にいくつかのオーバーシュートがあるが、これは水槽14からサンプル容器20に移動させるのに必要な時間によるものと推定される。したがって、上記で論じられたように、いくらかより高い温度でステッピングモーター24を始動させることが望ましい場合がある。以下の実施例において、示された温度は、到達したサンプルの温度であって、トリガー温度ではない。図2aから計算された最大の加熱速度は385℃/秒であり、最大の冷却速度は333℃/秒である。例示的には、エクストリームPCRは、少なくとも200℃/秒の傾斜速度で行ってもよい。他の実施形態において、傾斜速度は、300℃/秒であってもよいし、またはそれよりも大きくてもよい。
いくつかの実施例では、システム4はまた、リアルタイムモニタリングのために構成される。図1aで示されるように、リアルタイムモニタリングの場合、サンプル容器20がステッピングモーター24により高温の水槽10から低温の水槽に移動したとき、このモニタリング位置を保ちながら、または保たずにサンプル容器20が光ファイバーチップ50を通過するように、光学素子ブロック25の光ファイバーチップ50がサンプル容器20上に取り付けられる。この例示的な実施形態において、光ファイバーチップは、水槽の上の空気中に提供される。熱的サイクリングデバイス4をCPU40によって制御してユーザーインターフェース42に表示してもよい。
図1bは、図1aに類似した実施形態を示す。ホットプレート212および216は、高温の水槽210および低温の水槽214の温度を制御するために備えられている。ステッピングモーター224は、例示的にはアルミニウムで作製されたアーム221とチューブホルダー222を動かしてサンプル容器220と熱電対228(図1dに示される)を動かすために備えられている。しかし、この実施形態において、ブロック254を配置させることにより、光ファイバーケーブル252のチップ250は水槽214中に保持される。光ファイバーケーブル252は、ポート248を介して水槽214に入り、光学素子ブロック225にシグナルを与える。熱的サイクリングデバイス204をCPU240によって制御してユーザーインターフェース242に表示してもよい。
Ocean OpticsのLLS−455LED光源256からの光を、光ファイバーケーブル252(Ocean OpticsのP600−2−UV−VIS、ファイバーコア直径600μm)によって440+/−20nmの励起干渉フィルター、ビーム分割のための458nmのダイクロイックフィルターおよび490+/−5nmの放出フィルター(全てSemrockより、示さず)を備えたHamamatsu Opticsの光学素子ブロック258に導いた。より低温の水槽中に配置されたきに、1つのサンプルのキャピラリーからおよそ1〜2mmの距離で一列に置かれた別の光ファイバーケーブル(示さず)を用いて、キャピラリーの落射蛍光照明が達成された。放出検出は、HamamatsuのPMT62を用いて行われた。
図1cは、3温度PCRのための例示的なシステム304を示す。95.5℃の高温の水槽310、30〜60℃の低温の水槽314、および70〜80℃の中程度の温度の水槽313を使用して、サンプル容器320中に入れられている1〜5μlのサンプルの温度を変化させ、磁気撹拌しながら3つの電気ホットプレート312、316、および318で加熱する。サンプル容器320は、アーム321でステッピングモーター324に取り付けられたチューブホルダー322によって保持される。また熱電対328も、チューブホルダー322によって保持される。ステッピングモーター324が回転するときに、アーム321を持ち上げることができる。光ファイバーチップ350は、例示的には、中程度の温度の水槽313中に提供されるが、図1aの場合のように空気中に置かれていてもよいことが理解される。この例示的な実施形態の構成のために、3つの水槽310、313、および314を互いに等距離で設けることは不可能であった。したがって、サンプルの冷却は高温の水槽310と低温の水槽314との間でなされることが望ましく、それに対してサンプルの加熱は、サンプルがその他の水槽間を移動することによってなされるために、高温の水槽310と低温の水槽314との間に最も大きいスペースを設けた。しかし、この構成は単なる例示であり、他の構成も本開示の本質の範囲内であることが理解される。2つのステッピングモーターが同時に使用されるために(一方はキャピラリーを水から持ち上げるためであり、もう一方は水槽間を移動させるためである)、それぞれの角運動を最小化することにより、槽間の運動時間を短くできる。2つの水槽によるシステムでは、槽間でサンプルを移動させるのに必要なステッパーの角運動は、270度よりも大きい。しかし、3つの水槽によるシステムでは、サンプルを持ち上げるステッピングモーターは45度未満で横断する必要があり、一方でサンプルを水槽間で移動させるステッパーは、わずか90度またはそれ未満で移動する必要がある。また水槽は、必要な角運動をさらに制限するために円形のセクター(扇形のくさび)として構成されてもよい。角運動を最小化することにより、水槽間の移動時間が短くなる。100ミリ秒未満の移動時間、または50ミリ秒未満もの移動時間が想定される。このシステム304の他の構成要素は図1a〜bに示されるシステム4、204と類似しており、図1cでは示されていない。4つの水槽によるシステムへの拡張も想定される。第4の水槽の用途としては、低温での開始を確実にして最初のPCR変性前の伸長の量を制限するための氷水槽、およびPCR(RT−PCR)の前の逆転写のための37〜56℃の水槽などが挙げられる。低温での開始と逆転写の両方が必要な場合、5つの水槽によるシステムを使用してもよい。
[実施例1]
特に他の指定がない限り、50mMのトリス(25℃でpH8.3)、3mMのMgCl、200μMの各dNTP(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)、500μg/mlの非アセチル化ウシ血清アルブミン(Sigma)、2%(v/v)グリセロール(Sigma)、50ngの精製ヒトゲノムDNA、および1×LCGreen(登録商標)プラス(BioFire Diagnostics)を含有する5μlの反応体積でPCRを行った。プライマー濃度およびポリメラーゼ濃度は、具体的な実験プロトコールに従って変更した。Klentaq1(商標)DNAポリメラーゼをAB Peptides、St.Louis、MOまたはワシントン大学(St.Louis)のWayne Barnesのいずれかから得た。KlenTaqの分子量は62.1kDであり、280nmにおける吸光係数は、配列から計算した場合、69,130M−1cm−1である(米国特許第5,436,149号)。質量分析法で、主たる分子量は62kDであることが確認され、変性ポリアクリルアミドゲルで、主要なバンドは合計で80%より高い純度を有することが示された。吸光度および純度を使用して濃度を計算したところ、10%グリセロール中、80μMのストックであることが示された。最終的なポリメラーゼ濃度は、典型的には0.25〜16μMであった。1μMのKlenTaqは、0.75U/μlに等しく、この場合の1ユニットは、活性化サケ精子DNAを用いて72℃で30分で合成された生成物10nmolと定義される。ユタ大学のコア施設でプライマーを合成し、脱塩し、濃度をA260によって決定した。各プライマーの最終濃度は、典型的には2.5〜20μMの間で様々であった。
プライマーCCCATTCAACGTCTACATCGAGTC(配列番号1)およびTCCTTCTCTTGCCAGGCAT(配列番号2)を使用して、ヒトゲノムDNAからKCNE1の45bpのフラグメントを増幅した。これらのプライマーはバリアントrs番号1805128(c.253G>A)を間に挟み、配列:CCCATTCAACGTCTACATCGAGTCC(G/A)ATGCCTGGCAAGAGAAGGA(配列番号3)を増幅した。
図3aには、図1aに示されるデバイスを使用したエクストリームPCRによって生成したPCR生成物の融解曲線が示され、この場合、0.64μMのKlenTaqおよび10μMの各プライマーを使用して、図2bで示されるように91℃から50℃の間で、35サイクルおよび28秒の総増幅時間でサイクリングされた。各サイクルは0.8秒を要した。さらに図3aには、LightCyclerでの迅速サイクリングによって生成した同じアンプリコンの融解曲線も示され、この場合、0.064μMのKlenTaqおよび0.5μMの各プライマーを使用して、35サイクルおよび12分の総増幅時間で、90℃から50℃の間でサイクリングされた(図2c)。各サイクルは10.3秒を要した。図2bおよび2cでは時間の尺度が異なるため、図2bの全体のエクストリームPCRプロトコールは、それに対応する迅速サイクルの2サイクル未満で完了することに留意されたい。両方の反応により、類似のTmを有しゲル電気泳動で強いバンドを示すアンプリコンが生産されたのに対し(図3b)、陰性対照は融解分析またはゲル電気泳動のどちらによっても増幅は示されなかった。この実例において、エクストリームPCR条件は、ゲルで分析したところ(図3b)、迅速サイクルPCR条件よりも高い収量を示した。融解曲線におけるTmの0.5℃の差は、ポリメラーゼ貯蔵緩衝液中のグリセロール含量から生じる、各反応液におけるグリセロールの量の違いに起因すると考えられる(PCRにおけるグリセロールの最終濃度は、エクストリーム条件下では1.3%であり、迅速条件下では0.1%であった)。また、図3bからも、アンプリコンのサイズが類似しており、予測通りであったことが確認される。加えて、ポリメラーゼ濃度とプライマー濃度とが高いにもかかわらず、反応は特異的のようであり、非特異的生成物は認められなかった。しかし、高解像度融解分析では3種の遺伝子型を区別することはできなかった。プライマーの総濃度に対するポリメラーゼの化学量論的なパーセンテージは、エクストリームPCRの場合は3%であり、迅速サイクルPCRの場合は6.4%であった。
1μMのポリメラーゼ、10μMの各プライマー、および1.3%グリセロールを使用して、45bpのKCNE1の反応をリアルタイムでモニタリングした。図1aのデバイスを使用して、2つの水槽間の空気中のサンプルを各サイクルでモニターした。密封されたチャンバーの空気の温度を70℃に保持し、各サイクル0.2秒でサンプルを調査した。温度参照キャピラリーで測定しながら、サンプルを図3cで示されるように60℃から90℃の間でサイクリングした。位置決めと測定の時間が追加されたために、サイクル時間が0.8秒から1.12秒に増加した。したがって、50サイクルは56秒で完了した。約30サイクルでの、すなわち約34秒後の蛍光の増加から、増幅が認められた(図3c)。測定のためにサンプルが空気中にあり、ポリメラーゼの伸長速度が制限される間も、温度はほぼ60℃に保たれた。
図3cで観察されるように、この反応は、約25サイクルの定量サイクル(Cq)を有するが、少なくとも50サイクルまではプラトーにはならないようである。またこの反応は64サイクル後に停止したため、アンプリコンの量が増加し続け、かなり後にならないとプラトーに達しない場合もある。理論にとらわれずにいえば、プライマー濃度を増加させることにより、収量を向上させ、さらに、プラトーを例示的にはCq後に20サイクル、より例示的にはCq後に25サイクルまたはそれより多くのサイクル遅延させることができると考えられる。
[実施例2]
この実施例では、インターロイキン10ベータ受容体中のA>Gバリアント(rs番号2834167)を間に挟む58bpのフラグメントを、プライマーCTACAGTGGGAGTCACCTGC(配列番号4)およびGGTACTGAGCTGTGAAAGTCAGGTT(配列番号5)を用いて増幅し、以下のアンプリコン:CTACAGTGGGAGTCACCTGCTTTTGCC(A/G)AAGGGAACCTGACTTTCACAGCTCAGTACC(配列番号6)を生成した。実施例1で説明したようにして、図1aに示される機器を使用してエクストリームPCRを行った。1μMのポリメラーゼ、10μMの各プライマー、および1.3%グリセロールを使用した(全プライマーに対するポリメラーゼのパーセンテージは5%)。ポリメラーゼがより高い伸長速度を有する場合、ポリメラーゼ伸長のために温度を70〜80℃に増加させるために、様々な位置決定プロトコールを使用した。アニーリング温度に達した後、モニターするために空気中で即座に位置決定する代わりに、伸長温度に達するまでサンプルを高温の水槽に移した。次いでサンプルを高温の水槽の真上の空気中に配置させて、図4aおよび4bに示した温度サイクルを生じさせることにより、70℃から77℃の間の最適な温度でより速いポリメラーゼ伸長を可能にした。3種の異なる遺伝子型をそれぞれ、0.97秒のサイクルを使用して39サイクルを38秒で完了させるエクストリームPCRによって増幅した。エクストリームPCRの後、LC24キャピラリーが適合するように改変されたHR−1機器で各遺伝子型の高解像度融解曲線を得た。図4cから明らかなように、3種の遺伝子型全てが予想通りに増幅され、区別された。
[実施例3]
実施例1における反応混合物はエクストリームPCRおよび迅速サイクルPCRの両方で同じであるが、見たところ図3aで観察されるTmのシフトの原因と思われるポリメラーゼおよびプライマーの量、ならびにグリセロール濃度のわずかな差が認められた。この実施例およびこの先全ての実施例において、グリセロール濃度は、必要に応じてその濃度を均一化することにより2%に保持された。エクストリームPCRの場合、1μMのポリメラーゼおよび10μMの各プライマーを使用し、迅速サイクルPCRの場合、0.064μMのポリメラーゼおよび0.5μMの各プライマーを使用した。上記で論じられたように、より速いアニーリング時間は、プライマー特異性の向上をもたらすと考えられる。この特異性の向上に伴い、増加させたプライマー濃度を使用してもよく、それにより、プライマーの結合が促進されてアニーリング時間が短くなると考えられる。同様に、増加させたポリメラーゼ濃度によりアニールしたプライマーへの結合も促進されて、完全な伸長の前にポリメラーゼが離れた場合に、不完全なアンプリコンへの再結合も促進される。加えて、ポリメラーゼ濃度が高ければ高いほど、PCRの後半でさえもより大量のプライマーが結合したテンプレートが一度に伸長でき、1つのポリメラーゼが伸長させなければならないテンプレート数が少なくなるため、全体の伸長時間が短くなる。
図5aに、様々なポリメラーゼ濃度およびプライマー濃度を用いたエクストリームPCRサイクリングの結果を要約する。この実施例において、インターロイキン10ベータ受容体の49bpのフラグメントを、プライマーGGGAGTCACCTGCTTTTGCC(配列番号7)およびTACTGAGCTGTGAAAGTCAGGTTCC(配列番号8)、ならびに3mMのMgClを用いて増幅して、GGGAGTCACCTGCTTTTGCCAAAGGGAACCTGACTTTCACAGCTCAGTA(配列番号9)を生成した。各エクストリームPCR反応で、図1bに示されるデバイスを、リアルタイムでモニタリングせずに使用した。図5bで示されるように、26秒より少し短い総反応時間(0.73秒のサイクル)で、90℃と63℃の間で35サイクル、温度をサイクリングした。図5aで示されるようにポリメラーゼおよびプライマーの量を変更したこと以外は、実施例1で論じられた通りの反応条件を用いた。図5aの縦軸は、HR−1機器で正規化しないで得られた融解曲線の負の微分プロットのピークとして数値化したものである。0.5μMのポリメラーゼでは、いずれのレベルのプライマー濃度でも実質的に増幅は観察されなかった。しかし、1.0μMのポリメラーゼでは、5μMおよびそれを超えるプライマー濃度で認識できるレベルの増幅が観察された。ポリメラーゼレベルが増加するにつれて、アンプリコンの量も最大約4μMのレベルまで増加する。8μMのポリメラーゼでは、アンプリコンの量はプライマー濃度に応じてプラトーになるかまたは低下し、より低いプライマー濃度では16μMで有意な低下が見られた。これらの49bpの生成物の場合のエクストリーム温度サイクリング条件下では、ポリメラーゼの好ましい濃度範囲は、プライマー濃度に応じて、約1μMから8μMの間であり、より具体的には2μMから8μMの間であると考えられる。
同様に、2.5μMのプライマー濃度ではほとんど増幅が観察されなかった。しかし、5μMのプライマーでは、2〜8μMのKlenTaq濃度を用いたところ増幅が成功し、増幅は濃度の増加に伴い向上し続けた。約10〜20μMのプライマー濃度を用いたところ優れた増幅が達成された。図5cは、4μMのKlenTaqで様々なプライマー濃度を用いた場合の融解曲線を示し、一方で図5dは、プライマー濃度を10μMに保持しながらポリメラーゼ濃度を変更したときの生成物のサイズを実証している。高濃度のポリメラーゼおよびプライマーにもかかわらず、非特異的増幅は観察されていない。
理論にとらわれずにいえば、酵素の量もプライマーの量も閾値を超えているのであれば、酵素の量とプライマーの量との比率が、エクストリームPCRサイクリングにとって重要であると考えられる。上記の量は、各プライマーをベースにして示されることに留意されたい。ポリメラーゼが二重鎖になったプライマーのそれぞれに結合することを考えれば、プライマーの総濃度が最も重要である場合がある。KlenTaqの場合、好適な比率は0.03〜0.4(プライマーの総濃度に対して3〜40%の酵素)であり、例示的には最小で約0.5μMのKlenTaq濃度であり、より例示的には、エクストリームPCRの場合、約1.0μMである。プライマーは、等モル量で提供されてもよいし、または非対称PCRの場合のように一方が過量に提供されてもよい。最適なポリメラーゼ:プライマーのパーセンテージはまた、温度サイクリング条件と生成物のサイズにも依存し得る。例えば、標準的な(遅い)温度サイクリングは、かなり低いプライマーに対するポリメラーゼのパーセンテージを使用することが多く、典型的には、1.5nM(0.04U/μl)のポリメラーゼ(49)および0.15%のパーセンテージの1,000nMのプライマーの総濃度が使用され、これは、エクストリームPCRに関して有効であると見出されたパーセンテージよりも10倍以上低い。
[実施例4]
熱の移動とサイクル速度を増加させるために、19ゲージの鋼の皮下注射針で8μMのポリメラーゼおよび20μMの各プライマーを用いて、実施例3におけるのと同じPCR標的を増幅した。全プライマーに対するポリメラーゼのパーセンテージは20%であった。図1bの機器で増幅を行ったところ、各0.46秒で35サイクル(図6a)、91℃から59〜63℃の間のサイクリングを使用して、16秒で増幅が完了した。サイクリング中の最大の加熱速度は407℃/秒であり、最大の冷却速度は815℃/秒であったことから、保持を行わずに400℃/秒より速い傾斜速度でPCRを実行できることが実証された。4%NuSieveの3:1アガロースゲルでの生成物分析により、正しいサイズの強い特異的なバンドが現れた(図6b)。テンプレート非含有対照は、49bpで生成物を示さなかったが、陽性サンプルに類似した顕著な量のプライマーバンドを示した。
[実施例5]
プライマーCTCTGTGCTTTCTGTATCCTCAGAGTGGCATTCT(配列番号10)およびCGTCTGCTGGAGTGTGCCCAATGCTATA(配列番号11)、ならびにリアルタイム要素を用いない図1bの機器を使用して、NQO1遺伝子の102bpのフラグメントを増幅した。ポリメラーゼ濃度を0.25から4μMの間で変更し、各プライマー濃度を0.5から8μMの間で変更した。併合されたアニール/伸長期での伸長がポリメラーゼにとってより最適な温度で起こるように、より高温で(低出力で70秒)アニールするようにプライマーを設計した。これらの温度でのより速い重合速度は、より長い生成物の増幅を可能にすると期待された。より低温の水槽を72℃に制御して、アニール/伸長期の終了を温度ではなく時間(1秒)で誘発した。30サイクルの間の72℃から90℃の間のサイクリングには、1.93秒のサイクルを使用したところ58秒を要した(図7a)。図7aで観察されるように、サンプルの温度は、空気を通って高温の水槽まで移動する間にアニール/伸長温度から約3℃低くなる。図7bは、図5aに示されるように融解曲線を定量することによって得られた増幅した生成物の量を示す。融解曲線分析では、84℃のTmを有する唯一の生成物が示された。0.25μMのポリメラーゼまたは1μMの各プライマーでは極めてわずかな生成物しか観察されなかった。2μMの各プライマーでもある程度の増幅は起こり、最良の増幅は2〜4μMのポリメラーゼおよび8μMの各プライマーで起こる。2〜4μMのプライマー濃度では、ポリメラーゼ濃度が増加するにつれて収量は減少するが、これは8μMのプライマー濃度では観察されなかった。熱的サイクリングおよび標的長さが実施例3とは異なるが、プライマーの総濃度に対するポリメラーゼ濃度が、3.1から50%のときに最良の増幅が起こる。
[実施例6]
図1bに示される機器をリアルタイムモニタリングしながら使用して、BBS2遺伝子の135bpおよび337bpのフラグメントをエクストリームPCRにより増幅した。エクストリームPCRに対する生成物の長さの影響と、様々なプライマーの起こり得る交絡的影響の調整を研究するために、まず共通の5’末端伸長部分を有するプライマーを使用してゲノムDNAからフラグメントを増幅した。135bpのフラグメントの場合、プライマーは、ACACACACACACACACACACACACACACACACACACAAAAATTCAGTGGCATTAAATACG(配列番号12)およびGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAAAAACCAGAGCTAAAGGGAAG(配列番号13)であった。337bpのフラグメントの場合、プライマーは、ACACACACACACACACACACACACACACACACACACAAAAAGCTGGTGTCTGCTATAGAACTGATT(配列番号14)およびGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAAAAAGTTGCCAGAGCTAAAGGGAAGG(配列番号15)であった。ゲノムDNAからの標準的なPCR増幅の後に、プライマーおよびdNTPをExoSAP−IT(Affymetrix、CA)によって分解し、続いてQuickStep(商標)2PCR精製キット(カタログ番号33617、Edge BioSystems、Gaithersburg、MD)を使用してPCR生成物を精製した。PCR生成物をおよそ100万倍に希釈し、標準的なリアルタイムPCRにより得られたCqを等しくすることにより等しい濃度に調節し、25サイクルのCq(反応液10μlあたりおよそ10,000コピー)を達成した。
総体積5μlの増幅したテンプレートの1,000コピーに、2μMのポリメラーゼおよび2%グリセロールと共に共通のプライマーACACACACACACACACACACACACACACACACACACAAAAA(配列番号16)およびGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAAAAA(配列番号17)をそれぞれ2μMで使用してエクストリームPCRを行った。135bpのBBS2フラグメントからは226bpの生成物が得られ、(プライマーに応じて)176塩基または185塩基の伸長を必要としたが、337bpのBBS2フラグメントからは428bpのPCR生成物が得られ、378塩基または387塩基の伸長を必要とした。アガロースゲルで、さらに融解分析によって特異的増幅を検証した。図8aに、226bpの生成物に使用された、75℃の1秒の併合されたアニール/伸長および87℃の変性を含むエクストリームPCRの温度プロファイルを示す。さらに同じ温度で2秒のアニール/伸長期も行った(軌跡示さず)。図8cに示されたこれらの増幅に関するリアルタイムPCRの結果から、1秒の伸長を用いた場合、2秒の伸長と比較してCqが約5サイクル高くシフトしたことが明らかになったが、これはおそらく伸長時間が短くなるにつれて効率も減少したことを反映しているものと思われる。図8bに、75℃の4秒の併合されたアニール/伸長および87℃の変性を示し、これは、428bpの生成物に使用されたエクストリームPCRの温度プロファイルを示す。さらに同じ温度で5秒のアニール/伸長期も行った(軌跡は示さず)。図8dに示されたこれらの増幅に関するリアルタイムPCRの結果から、4秒の伸長を用いた場合、5秒の伸長と比較してCqが約2サイクル高くシフトしたことが明らかになったが、これはおそらく伸長時間が短くなるにつれて効率も減少したことを反映しているものと思われる。
[実施例7]
実施例5のNQO1の102bpのフラグメントおよび実施例1のKCNE1の45bpのフラグメントに関して、ヒトゲノムDNAの希釈系列を使用して、NQO1には2μMのKlenTaqおよび8μMの各プライマー、ならびにKNCE1には8μMのKlenTaqおよび20μMの各プライマーを使用して、図1bのリアルタイム機器を使用してPCRの定量性能を評価した。図9aおよび図9bで見られるように、少なくとも40のダイナミックレンジを用いたところ、標準曲線から計算された増幅効率は、NQO1では95.8%であり、KCNE1では91.7%であった。テンプレート不使用の対照反応では、50サイクル後に増幅は起こらず、単一コピーの複製物(平均コピー数は、1反応あたり1.5コピー)は、増幅曲線の形状および強度においてより高い濃度と類似していた(図9Aおよび図9C)。0.15コピー/反応の平均コピー数では、二項展開により計算された0.13コピー/反応の期待値を用いたところ、(NQO1の試験とKCNE1の試験の両方を合わせた)17の反応のうち2つの反応が陽性であった。
[実施例8]
リアルタイムPCRを使用する際、様々な生成物の長さに応じた伸長時間が必要である(図10a〜c)。様々なプライマーの起こり得る交絡的影響を調整するため、100〜500bpの合成テンプレートと共に以下の共通の高いTm(77℃)を有するプライマーを使用した。
ACTCGCACGAACTCACCGCACTCC(配列番号18)およびGCTCTCACTCGCACTCTCACGCACA(配列番号19)
合成テンプレート配列は以下の通りである。
100bpのテンプレート:
ACTCGCACGAACTCACCGCACTCCGGATGGATTGTGAAGAGGCCCAAGATACTGGTCATATTATCCTTTGATCTAGCTCTCACTCGCACTCTCACGCACA(配列番号20)
200bpのテンプレート:
ACTCGCACGAACTCACCGCACTCCTCAATGCTGACAAATCGAAAGAATAGGAATAGCGTAATTACTAGAGGACTCCAATATAGTATATTACCCTGGTGACCGCCTGTACTGTAGGAACACTACCGCGGTTATATTGACAGCTTAGCAATCTACCCTGTTGGGATCTGTTTAAGTGGCTCTCACTCGCACTCTCACGCACA(配列番号21)
300bpのテンプレート:
ACTCGCACGAACTCACCGCACTCCCCTTCGAATATAAAGTACGACATTACTAGCAATGACAGTTCCAGGATTTAAGAAAGTAGTGTTCCACATCAATGCATATCCAGTGAAAGCATAACGTCAAAAAAAGCCTGGCACCGTTCGCGATCTGGACTTACTTAGATTTGTTGTAGTCAAGCCGGCTATCAGCGATTTATCCCGGAAACACATACTAGTGAGTTATTTGTATGTTACCTAGAATAGCTGTCACGAATCACTAATACATTCACCCACCAGCTCTCACTCGCACTCTCACGCACA(配列番号22)
400bpのテンプレート:
ACTCGCACGAACTCACCGCACTCCTGAATACAAGACGACAGTCCTGATTATATTTTCATTTAATTACGCCAATTTAATTATGATGAATATTAACGGAATTAAATATGTATTGATAAGTACTAAGTAATGGTTTACCCACGGCGATCTATATGCAAGGGAAACATTAACAAATTTAAACATCTGATGTGGACAAAACTTGTAATGTGGTATAGTTAAAAATATAGGTTTCAGGGACACGTAAGTATCTATCTTGAATGTTTAAGTAGGTCCTGTCTACCATTCTGAAATTTAGAAAATCGCGTTCATCGGGCTGTCGGCTACACCTCAGAAAACCATTTCGTGTTGCACAGGAGGAACTTTCGAGGGTTCGTATGAGCTCTCACTCGCACTCTCACGCACA(配列番号23)
500bpのテンプレート:
ACTCGCACGAACTCACCGCACTCCACCGCTTGACGACGTAGGGTATTTGGTATCTGAATCTACTCATTTACCTACATACTGAAGATTTTGCGATCGTCTAATATATTGGACTAATGCCCGATTTCTGATCAATTACTCTAGGCGATACTTCATCGCTGGCCTTATTTGGATTTTGCTCAAGTGCTAAACTCTCTGCGCGTCAATACTAGTCTGACATCAGTCAAGACCTGCTATCTGAAAACTACTAGAGAGATATACCTAACAACTTTAGTGGATAAATCAGGTCTGGAGATTGTCATATAATGCCACTAGGGTCAGAAGGCTGTGTCAAAGTTAGTGGTTAGTAGGTCTCCGCTCTGCGGTACTATTCTTATATTCTCTTACTATGCATCAAACAAAATAGAATGCATAGACAAACCGCCTGCCAAGTTTACAAGATAACTTGCGTATAGGTTTATAAGGGTTCTTCTGTATCGCTCTCACTCGCACTCTCACGCACA(配列番号24)
まず、中程度の長さの300bpの生成物に関して、4秒の併合されたアニール/伸長セグメントを1サイクルあたり4.9秒で使用して、プライマーおよびポリメラーゼの最適な濃度を決定した(図10a)。次いで全ての生成物の長さに関して、同一のプライマー濃度(4μM)およびポリメラーゼ濃度(2μM)を使用して、最小の伸長時間を決定した(図11a〜e)。生成物の長さに応じて、伸長時間が増加すると、さらなる変化が観察されなくなるまでの定量サイクル(Cq)がわずかに減少したことから、効率的なPCRに必要な最小の伸長時間が示された。例えば、図10Bに、KAPA2G(商標)FASTポリメラーゼ(Kapa Biosystems)を使用した500bpの生成物に関する増幅曲線を示す。KAPA2G FASTポリメラーゼを使用した場合の最小の伸長時間は3秒であり、これに対してKlenTaq1(Taqポリメラーゼの欠失突然変異体、AB Peptides)を使用した場合は7秒であった。ポリメラーゼの同一性が一定に維持される場合、より長い生成物はより長い伸長時間を必要とした(図10c)。KlenTaq1ポリメラーゼの場合、60bpごとに約1秒を要し、一方でKAPA2G FASTポリメラーゼの場合、158bpごとに1秒を要する。これらの2種のポリメラーゼは十分な濃度で市販されているが、その他ほとんどのポリメラーゼはこのような高濃度では市販されていないために、これらのポリメラーゼが選ばれたことに留意されたい。伸長に必要な時間は、伸長させようとする長さに直接的かつ直線的に依存しており、ポリメラーゼ濃度およびポリメラーゼ速度とは反比例することが理解される。これらの3種のパラメーターを関連付ける比例定数(k2)は、以下のように定義することができる。
必要な伸長時間=k2(伸長の長さ)/([ポリメラーゼ](ポリメラーゼ速度))
[実施例9]
エクストリームPCR時間は、高いMg++濃度を用いて短くすることもできる。プライマー:GCTTGGAAGATTGCTAAAATGATAGTCAGTG(配列番号25)およびTTGATCATACTGAGCCTGCTGCATAA(配列番号26)を用いてAKAP10の60bpのフラグメントを増幅し、アンプリコンGCTTGGAAGATTGCTAAAATGATAGTCAGTGAC(A/G)TTATGCAGCAGGCTCAGTATGATCAA(配列番号27)を生成した。
各反応は、体積1μlで、35サイクルを時間ベースで制御して(94℃の水槽中で0.07秒、60℃の水槽中で0.1〜0.4秒)、2〜7mMのMgCl2を使用して行われた。サンプル体積は1μlであり、5ngのヒトゲノムDNA、20μMのプライマー、および8μMのポリメラーゼを含んでいた。1サイクルあたり0.42秒のプロトコールを使用したところ、MgClが2〜3mMのときに、融解曲線(図12a)およびゲル(図12b)で生成物は観察されなかった。4mMで最低限の生成物が存在したが、5〜7mMのMgClで増幅した後に大量の生成物が観察された。5mMのMgClでは、0.32秒のサイクル時間を用いた場合、融解曲線(図13a)およびゲル(図13b)で生成物は観察されなかったが、0.42秒、0.52秒、および0.62秒のサイクル時間では大量の生成物が示され、このことは、15秒(14.7秒で35サイクル)で行われたPCRにおいて特異的な高収量の60bpの生成物が得られることを実証している。したがって、例示的なMg++濃度は、少なくとも4mM、少なくとも5mM、少なくとも6mM、少なくとも7mM、またはそれより高く、これらの例示的なMg++濃度は、本明細書で説明される実施形態のいずれかと共に使用できることが理解される。
[実施例10]
エクストリームPCRで使用される高濃度のプライマーおよびポリメラーゼは、より遅いサイクル速度で使用すると有害作用を有する場合がある。それぞれ32倍または106倍遅い迅速サイクルまたはブロックベースの機器では、非特異的生成物が生じた。図14a〜bは、実施例9で使用されたAKAP10の60bpの生成物の増幅を比較した結果を示すが、この場合、増幅は、20μMの各プライマー、8μMのKlenTaq、および10ngのヒトゲノムDNAを使用して、(1)およそ17秒の総時間をもたらす94℃で0.5秒および60℃で0.2秒の設定時間を用いたエクストリームPCR、(2)およそ9分の総時間をもたらす94℃で10秒の最初の変性、続いて0秒で85℃および0秒で60℃のサイクルの設定時間を使用した迅速サイクルPCR(Roche LightCycler)、および(3)およそ30分の総時間をもたらす94°で10秒の最初の変性、続いて85℃で0秒および60℃で5秒の温度サイクリングを用いた旧来の(ブロック)温度サイクリング(Bio−Rad CFX96)を40サイクルで使用して行われた。示されたように、LightCyclerの迅速サイクリングでさえもかなりの非特異的増幅を生じたが、エクストリームサイクリング条件では単一の融解ピークと、ゲルにおける最小の非特異的増幅が達成された。
また注目すべきことに、エクストリームPCRでは、高いプライマー濃度およびポリメラーゼ濃度によっても収量が強化される。比較のために定量的PCRを使用したところ、エクストリームPCRは迅速サイクルPCRと比較して30倍を超える量の生成物を生産した(データは示さず)。
実施例1〜17は全て、図1a〜1dに記載されるデバイスの1つまたは複数、またはそれらの構成をわずかに変更したものを、qPCRの結果を確認するためのLightCyclerで行われる特定のステップと共に使用して行われた。しかし、本明細書で説明される方法および反応は、様々な機器で起こる場合があることが理解される。これらの実施例で使用される水槽およびチューブは、濃度を高めたプライマーおよびポリメラーゼの作用を研究するのに十分な迅速な温度変化をもたらす。しかし、他の実施形態が商業的により好適である場合がある。低容量および高い表面積対体積比のマイクロ流体システムが、エクストリームPCRによく適している場合がある。このようなシステムは、エクストリームPCRで使用される高濃度のプライマーおよびポリメラーゼで求められる迅速な温度変化を可能にする。マイクロ流体システムは、サンプルを変性ゾーン、アニーリングゾーン、および伸長温度ゾーンに繰り返し通す小型化されたチャネルを取り入れたマイクロフローシステム(35、53)を包含する。これらのシステムのいくつかは、複雑度がより低い標的で3秒もの速いサイクル時間の有効なPCRであることがすでに実証されている。ポリメラーゼが少なくとも0.5μMの濃度で提供され、プライマーはそれぞれ少なくとも2μMの濃度で提供される場合、このようなシステムでより複雑な標的を増幅できることが期待される。また定置式のPCRチップおよびPCR液滴形成システム(54)は、1nlまたはそれ未満もの小さい体積が可能であり、さらに極めて迅速なサイクリングを許容するほど十分に低くできることから、プライマーおよびプローブの濃度の増加によって利益を得る場合もある。より遅いサイクル速度でより高いプライマー濃度を用いることに伴う特異性を損なうことなく増加させたプライマー濃度およびポリメラーゼ濃度を利用できるほど十分速く機器の温度がサイクリングするのであれば、本発明にとって正確な機器は重要ではないことが理解される。
上記の実施例はいずれもPCRを用いたが、PCRは単なる例示であり、PCR以外の核酸増幅方法にも増加したプライマー濃度および酵素濃度とより短い増幅時間との組合せが想定されることが理解される。程度を増加させることができる例示的な酵素活性としては、重合(DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼまたは逆転写酵素)、ライゲーション、へリックスの巻き戻し(ヘリカーゼ)、またはエキソヌクレアーゼ活性(5’から3’または3’から5’)、鎖の置換および/もしくは切断、エンドヌクレアーゼ活性、ならびにDNA/RNAハイブリッドのRNA消化(RNアーゼH)が挙げられる。増幅反応としては、これらに限定されないが、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応、転写介在増幅(例えば転写ベースの増幅システム、自家持続配列複製法、および核酸配列ベースの増幅など)、鎖置換増幅、全ゲノム増幅、多置換増幅、アンチセンスRNA増幅、ループ介在増幅、線形結合増幅(linear−linked amplification)、ローリングサークル増幅、分岐増幅(ramification amplification)、等温オリゴヌクレオチド増幅、ヘリカーゼ連鎖反応、および連続侵入シグナル増幅(serial invasive signal amplification)などが挙げられる。
一般的には、酵素活性が変化すると、同じ倍率で増幅時間は反比例して変化する。プライマーを包含する反応の場合、プライマー濃度が変化すると、同じ倍率で増幅時間は反比例して変化する。プライマーと酵素の両方が増幅に必要な場合、反応速度を最大化するためには酵素濃度とプライマー濃度の両方を変化させるべきである。増幅サイクルの固有のセグメント(例えば、3温度PCR中の固有の温度)でプライマーのアニーリングが起こる場合、そのセグメントにおいてプライマーのアニーリングが十分に完了するのに必要な時間は、プライマー濃度と反比例すると予想される。同様に、増幅サイクルの固有のセグメント(例えば、3温度PCR中の固有の温度)で酵素活性が必要な場合、そのセグメントにおいて酵素的なプロセスが十分に完了するのに必要な時間は、所定の範囲内で酵素濃度に反比例すると予想される。プライマー濃度または酵素濃度の変更は、それら個々のセグメントに要する時間を変化させるのに使用でき、または同じ条件下で(例えば2温度PCRにおいて、または等温反応プロセス中に)その両方が起こる場合、1つの反応が反応速度を制限しないように両方の濃度の変更が必要であることが予想される。増幅プロセスをさらに加速するために、Mg++濃度の増加を酵素濃度およびプライマー濃度の増加と組み合わせて使用してもよい。より高いMg++濃度は、プライマーのアニーリングの速度を増加させ、かつ核酸増幅で使用される多くの酵素反応にかかる時間を短くする。
より高いMg++、酵素、およびプライマーの濃度は、より短い増幅時間またはセグメントと共に使用される場合、特に有用である。時間を短くしないでより高い濃度を使用すると、いくつかのケースにおいて、反応の「ストリンジェンシー」が低下するために非特異的な増幅生成物が生じる場合がある。増幅時間またはセグメント時間(秒)を短くすることは、増加した反応物濃度によるストリンジェンシーの損失を埋め合わせるように見えるより高いストリンジェンシーを導入する。逆に言えば、増幅時間またはセグメント時間を増加させることによりこれらのより低い濃度を相殺すれば、反応物濃度を低下させることによって試薬のコストを最小化できる。
ポリメラーゼ濃度を増加させることにより、長時間のPCR、例示的には標的が5〜50kbである場合のPCRに必要な時間を短くできる。大きい標的を増幅するには、典型的には10分〜30分の伸長期間が使用されるが、これはなぜなら、1)ポリメラーゼが単一の標的の伸長を完了させるため、および2)再利用された酵素が、追加のプライマーが結合したテンプレートを重合させるためにそのような時間が必要になるほど大きい標的が長いためである。PCRの開始時には、プライマーが結合したテンプレート分子よりも利用可能な酵素が多く存在するため、このようなポリメラーゼの再利用は必要ない。しかし、対数期が終わる前でも、ポリメラーゼ分子の数が限界になることがしばしばあり、酵素の再利用が必要である。ポリメラーゼ濃度を増加させることによって、高いプライマー濃度に起因する収量増加を維持しつつ必要な伸長期間を5分未満まで、場合によっては2分未満まで短くできる。実際の酵素の速度は増加しないが、それほど再利用は必要ではなく、必要な最小の時間は、ほぼ直線的に酵素濃度の影響を受ける。
プライマー濃度とポリメラーゼ濃度とを増加させることによりサイクルシーケンシング時間も短くできる。典型的には、標準的なサイクルシーケンシングプライマー濃度は0.16μMであり、併合されたアニール/伸長期間は50〜60℃で10分である。プライマー濃度とポリメラーゼ濃度とを10倍増加させることによって、アニール/伸長に必要な時間をおよそ10倍短くできる。長いPCRとサイクルシーケンシングの両方において、予想される必要な時間は、ポリメラーゼまたはプライマー濃度のどちらか限定的な方に反比例する。
エクストリーム温度サイクリングとより高い濃度のプライマー、ポリメラーゼ、および/またはMg++とを組み合わせることによって、大規模並列配列決定のための調製においてプライマーとして使用されるリンカーがライゲーションしたフラグメントのPCRを、現行のものよりもかなり短い時間で完了させることができる。
上記した全ての用途において、より短い増幅時間で反応特異性が維持されるものと予想される。当業者であれば、高いプライマー濃度およびポリメラーゼ濃度は非特異的増幅による問題を引き起こすことを想像するであろうが、全体のサイクル時間および/または個々のセグメント時間を最小化することにより、PCRの高い特異性および効率がもたらされる。
表2に、エクストリームPCRの具体的な条件を示す。同時に行われた標的のうち3種に関するポリメラーゼおよびプライマー濃度の最適化実験以外の全てのデータが示される。表3に、変数間の定量的な関係が詳述されている。必要なアニーリング時間をプライマー濃度に関連付ける反比例関係はほぼ一定(k1)であり、方程式(必要なアニーリング時間)=k1/[プライマー]によって定義される。旧来の(標準)PCR、迅速サイクルPCR、およびエクストリームPCRの条件下でこれらの変数の典型的な値の範囲を使用することにより反比例定数の範囲が得られ、その大部分は重複している(旧来のPCRは0.75〜30、迅速サイクルPCRは0.2〜10、およびエクストリームPCRは1〜20である)。この反比例定数によって、現行のものの範囲から外れる望ましいアニーリング時間は、望ましい時間に必要なプライマー濃度を予測するのに使用できる。例えば、0.01秒のアニーリング時間で5(秒μM)の定数を使用すれば、500μMのプライマー濃度の計算が可能である。逆に言えば、0.01μMのプライマー濃度が望ましい場合、必要なアニーリング時間は500秒と予想される。これらの条件は旧来のPCRおよびエクストリームPCR両方の範囲の外側であるが、これらの条件によりPCRの成功に有用なプライマー濃度とアニーリング時間との関係が予測される。旧来のPCR、迅速サイクルPCR、およびエクストリームPCR全てにおいて適切なk1の範囲は、0.5〜20(秒×μM)であり、より好ましくは1〜10(秒×μM)であり、最も好ましくは3〜6(秒×μM)である。
また類似の計算を行うことによっても、望ましい伸長時間と、ポリメラーゼ濃度、ポリメラーゼ速度、および増幅させようとする生成物の長さとを関連付けることができる。しかし、長期にわたり様々な実験室で行われてきた旧来のPCR、迅速サイクルPCR、およびエクストリームPCRに影響を与える多くの追加の変数(ポリメラーゼ、Mg++、緩衝液)については、本明細書において変数間の反比例関係を確立するために示されたよく制御されたエクストリームPCR条件を調べることが最善である場合がある。それにより、エクストリームPCR条件下でのポリメラーゼ濃度、ポリメラーゼ速度、生成物の長さ、および必要な伸長時間を定量的に表すことができる。定義方程式は、(必要な伸長時間)=k2(生成物の長さ)/([ポリメラーゼ](ポリメラーゼ速度))である。実験的に決定されたk2は、上記の方程式において、温度、Mg++、ポリメラーゼのタイプ、緩衝液、添加剤、およびdsDNA色素濃度を一定にした条件下での比例定数と定義される。[ポリメラーゼ]および[プライマー]の二次元最適化がなされた3種のエクストリームPCR標的に関して、プライマー濃度全体にわたり成功した増幅の境界線にある[ポリメラーゼ]を見極めて、他の3つの変数と関連付けることができる。表3で示されるように、これらの3種の異なる標的に関するk2値は2未満の倍率で変化していることから、k2は定数であり、他方がわかっているときにある変数を予測するのに使用できると推測される。必要な伸長時間は、伸長の長さ(生成物の長さからプライマーの長さを引いた長さ)に比例し、ポリメラーゼ速度とポリメラーゼ濃度に反比例する。k2は(1/μM)の単位で示され、本明細書において使用されるエクストリームPCR条件にとって最適な値は、0.3〜0.7(1/μM)の範囲のうち0.5(1/μM)である。ポリメラーゼのタイプ、Mg++濃度、または異なる緩衝液もしくは色素の状態の点で異なる他の反応条件でも、類似のk2値が誘導される場合がある。
エクストリームPCRは、サンプルの温度を迅速に、好ましくは均一に変化させることができるのであれば、どのような種類の容器で行ってもよい。多くの用途において、例示として異なるサンプルの異なるPCR効率が直接定量のエラーにつながる定量的PCRに関して、サンプル内およびサンプル間の均一性の両方が重要である。標準的なチューブおよびキャピラリーに加えて、油のストリーム中に懸濁した水性反応物の微小液滴または薄い2次元ウェーハが、優れた熱的接触をもたらす。エクストリームPCRの速さに必要な温度制御のための優れた方法は、空間的なセグメントを様々な温度で通過するサンプルストリームの連続流PCR(液滴として分散する、気泡で分離する、または他の手段で混合を防ぐことのいずれか)である。誘導加熱は、その全体が参照により本明細書の一部をなすものであるWO2015/069743に記載されたように、エクストリームPCRにとって好適な方法およびデバイスを提供することができる。
[実施例11]
PCRは、特異的なDNAフラグメントの検出および定量化のための調査および臨床診断における基本的な方法であるが、RNAは、PCRで直接増幅することができない。RNAは、まずDNAに逆転写しなければならない。典型的には、これは、「逆転写酵素」と呼ばれる酵素によって、酵素的になされる。酵素反応は時間を要し、逆転写に推奨される典型的な時間は、30〜50分である(例えば、Superscript II逆転写酵素、MAN0001342の製品説明書、報告日:2010年5月20日、Invitrogen/Life Technology/ThermoFisherを参照)。
迅速逆転写(RT)が有用であると予想される場合、例えば、RNAウイルスに関するポイントオブケアの臨床診断において、結果を得るまでの時間が迅速であることが試験の価値を高め、患者にとって、または参照遺伝子使用または不使用の特異的なmRNA転写の単一、二重もしくは多重増幅において重要であり得る多くの状況がある。上記で論じられたように、エクストリームPCRは、わずか15秒またはそれ未満でDNAを増幅することが可能な技術である。しかし、mRNAまたはウイルスRNAの逆転写が30分またはそれより長くかかる場合、1分未満のPCRはそれほど有用ではない。より速いRT−PCRが望ましいと予想され、RTステップとPCRステップの両方が同じ反応混合物中で起こる1ステップRT−PCRプロトコールを有することが特に望ましいと予想される。
この実施例では、共通の参照遺伝子ACTBを用いた迅速1ステップRT−PCR二重(duplex)反応を行う。2つのヒト転写物(AKAP10およびACTB)を逆転写し、AKAP10のプライマー(GCTTGGAAGATTGCTAAAATGATAGTCAGTG(配列番号25)およびTTGATCATACTGAGCCTGCTGCATAA(配列番号26))と、ACTBのプライマー(TTCCTGGGCATGGAGTC(配列番号28)およびCAGGTCTTTGCGGATGC(配列番号29))とを用いて、1ステップで増幅した。10μlの反応物中に、迅速PCRのマスター溶液(1×LCGreenプラス色素、0.2μMの各dNTP、3mMのMgCl、50mMのトリス、pH8.3、25ng/μlのウシ血清アルブミン、0.4UのKlenTaq DNAポリメラーゼ(AB Peptides)および64ngの抗Taq抗体(eEnzyme))中の、0.5μMの各プライマー、ヒト血液白血球から抽出された60ngの全RNA、300ユニットのSuperscript II逆転写酵素(ThermoFisher)、および0.1Mのジチオスレイトールを入れた。LightCyclerキャピラリーチューブ(Roche)中にサンプルを入れ、逆転写のために、45℃で5分インキュベートし、次いでリアルタイム増幅のために、回転トレーのLightCycler上で94から55℃の間で40サイクル(保持なし)でサイクリングした(図16a)。次いでサンプルを、95℃での瞬時の変性によりLightCycler中で融解させ、60℃に冷却し、最終的に0.2℃/秒で95℃に加熱することによって蛍光を獲得した(図16b〜16c)。79℃のピークはAKAP10アンプリコンであり、83℃のピークはACTBである。これらの結果から、二重鎖標的を含めてRNAを増幅するのに、より速いRT時間、すなわち30分よりかなり短い時間(例えば5分)を使用することができることが示される。
[実施例12]
RT−PCRの一貫性および品質は、特異的なタイプのRT酵素などの多くの事柄によって決まる(60)。RT−PCRには2つのタイプのRT酵素が一般的に使用され、1つはマウス白血病ウイルス(モロニーマウス白血病ウイルス−MMLV)由来であり、1つはトリウイルス(トリ骨髄芽球腫ウイルス−AMV)由来であるが、他のRT酵素も当分野において知られており、RNアーゼH活性がより低く(またはより高く)、温度安定性が増加したMMLVの操作されたバリアントが商業的に利用可能である。Bustin(60)は、数種の逆転写酵素を一貫性および収量に関して試験し、より優れた酵素の1つが、iScript(Bio−Rad)として販売されているMMLVであることを決定した。
RTの1「ユニット」は、本明細書で使用される場合、テンプレート/プライマーとしてポリ(rA)/オリゴ(dT)25を使用して、10分、37℃で、酸で沈殿し得る材料に1nモルのdTTPを取り込むのに必要な酵素の量である。MMLVのユニット活性を決定するのに使用される緩衝液は、50mMのトリス、pH8.3、75mMのKCl、3mMのMgCl、および10mMのDTT(ジチオスレイトール)である。AMVのユニット活性を決定するのに使用される緩衝液は、75mMの酢酸カリウム、50mMのトリス−HCl(pH8.3)、8mMの酢酸マグネシウムおよび10mMのDTTである。MMLVのRT反応に使用されるユニット数(10U/μl)は、典型的にはAMVのRT反応(1U/μl)の10倍である。ここで使用されるRT酵素としては、1)天然のクローニングされたMMLV(New England Biolabs)、2)Superscript II(低いRNアーゼH活性と増加した熱安定性を有する改変MMLV、ThermoFisher)、3)iScript(強いRNアーゼH活性を有する改変MMLV、Bio−Rad)、4)RocketScript(増加したRNアーゼH活性および増加した熱安定性を有する改変MMLV、Bioneer)、および5)天然のクローニングされたAMV(New England Biolabs)が挙げられる。これらの酵素のほとんどについて、ユニットの定義および酵素の濃度は、製造元により明示されている。例外は、公知の活性を有する酵素に対する滴定によって活性が決定されるRocketScript、さらに、製造元が使用される濃度を開示していないiScriptである。しかし、iScriptのケースでも、示唆された手順(20μlのRT反応体積中に1μlの酵素)は他のRT酵素の手順と同一であり、これは、iScriptの濃度は、200U/μlのストック溶液であり、RT反応で、他の製造元によって提供され示唆される濃度である10U/μlに希釈されることを示唆している。
iScript MMLVに推奨されるインキュベーション時間は、30分である。RT反応の時間経過を研究するために、2ステップRT−PCRを行った。この2ステップ方法を用いて、RTを、異なる期間で水槽中のマイクロ遠心管中で別々に行い、次いでリアルタイムPCRを、キャピラリーLightCycler中で行った。実施例11に列挙したACTBリバースプライマーを用いて、45℃で様々な時間(1分から30分)でRTステップを行った。RNアーゼ阻害剤を含む2μlのiScript MMLV(推定で10U/μlの最終濃度につき)を、別段の指定がない限りランダムヘキサマー、オリゴ(dT)、安定剤、dNTP、および緩衝液を包含する反応混合物と組み合わせた。40μlの反応物には、256ngの白血球由来全RNAおよび0.25μMのACTBリバースプライマーが包含されていた。45℃でインキュベートした後、85℃で5分加熱することによって反応を止め、混合物を水で3倍に希釈した。2μlの希釈したcDNAテンプレートおよび単独のACTBプライマーを使用したことを除いて実施例11と同様にして、qPCRを行った。30分の対照の定量サイクル(Cq)に対する各曲線のCqを使用して、ACTBのcDNAの相対濃度を、100%の増幅効率と仮定して計算した。図17に結果を示す。最初の5分でcDNAのおよそ60%が形成され、80%が10分、100%が20分で形成された。インキュベーション時間を変え(0.5、1、2、4、8、16、30分)、プライマー濃度を変えた(0.125、0.25、0.5、1μM)追加の研究から、プライマー濃度を増加させることにより短いインキュベーション時間が補われることが示された。マイクロ遠心管では温度平衡が遅いために、0.5分より速い時間を研究することはできなかった。
上記で論じられたように、エクストリームPCRは、迅速温度サイクリングを高いプライマーおよびポリメラーゼ濃度と組み合わせることにより、2分またはそれ未満でのPCRを可能にする。高いプライマー濃度が、プライマー濃度の増加に正比例してより速く反応を駆動させるため、アニーリング時間を低減することができる。同様に、酵素量が律速の場合、酵素濃度を高くすれば、伸長ステップの速度を比例的に高めることになる。RTに例えれば、より高いプライマーおよび酵素濃度も、RT反応の速度を高めることを助け得ることが示唆される。しかし、2つの異なる酵素を用いてRTステップとPCRステップの両方を1つの反応に組み合わせることは困難である。一般的に、逆転写酵素およびDNAポリメラーゼの反応条件は、両立できるとは考えられない。例えば、RT反応ではKClが使用されるが、KClはポリメラーゼ活性を50mMのKClで80%阻害するため、実施例11の迅速PCRマスター溶液には存在しない(61)。以下に示す通り、1ステップRT−PCR反応では、0から10mMのKClのKCl濃度が適切である場合があると考えられる。通常、RTでは、PCRで使用される場合より高い濃度のdNTP(それぞれ、それぞれ0.2mM(PCR)に対して、0.5〜1.0mM(RT))およびMg++(1.5〜5mM(PCR)に対して、3〜15mM(RT))が使用される。この問題に対する1つの解決法は、逆転写酵素活性とDNAポリメラーゼ活性の両方を有する1つの酵素、例えばRNAをテンプレートとしても使用できる組換え熱安定性DNAポリメラーゼであるrTthなどを使用することである(62)。しかし、このような酵素は限界があり、様々な理由で2つの酵素の使用が好ましいことが多い。1つの反応で2つの酵素を組み合わせる場合、両方の酵素に対処する条件を見出さなければならない。エクストリームPCRのための条件(緩衝液、[Mg++]、塩、[dNTP]、pH、[プライマー]、[酵素])は、RTのために機能しない場合があり、逆もまた同様である。しかし、RTとPCRの両方に適合する条件が本明細書において提示され、iScriptと共に販売される反応混合物の代わりに、本明細書に記載のさらなる実施例の多くで、実施例11の迅速PCRのマスター溶液(時にはMg++およびジチオスレイトールが補充される)を使用した。
[実施例13]
RNAは、DNAより高度な二次構造を有し、強い二次構造がRTを阻害すると考えられる。温度を上昇させることは、RNAの逆転写がより簡単になるようにRNAの二次構造を緩める1つの方法である。しかし、一般的に使用されるRT酵素は熱不安定性であると考えられ、したがって逆転写酵素を不活性化することなく二次構造がフォールディングしないようにどの程度サンプルを加熱できるかにも限界がある。より短い反応時間が、いずれかのRNアーゼへの曝露時間を制限することと、化学分解を制限することの両方によって、PCRのために生成した核酸のより多くを保存することが期待されると予想される。
図1cに示されるものに類似した水槽/ステッピングモーターPCR機器を使用して、通常のプライマー濃度の8倍を使用した1ステップRT−PCRを1分未満で行った。5μlの1ステップRT−PCRは、4μMの各ACTBプライマーと、25ngの全白血球RNAと、ランダムヘキサマーまたはポリ(dT)が包含されていないこと以外は実施例12と同様の50UのiScript RT(最終濃度10U/μl)と、2μMのKlenTaqと、抗Taq抗体以外は実施例11の迅速PCRのマスター溶液中に含まれるすべてを含んだ。サンプルを、水槽310のセット中で、45、47.5、50、または55℃で、それぞれ15、20、または24秒間インキュベートし、次いで水槽313および314を使用して、55℃から94℃の間でサイクリングした。35回のサイクルにわたり、各サイクルは1.05秒を要し、水槽313および314間の2回の移動を包含し、各移動は125ミリ秒を要し、水槽313および314のそれぞれで400ミリ秒で2回静止状態で保持した。RTが15秒のサンプルにおけるRTおよびPCRの合計時間は、53秒であった。アガロースゲルで測定したところ、全てのサンプルが等しく増幅されたようであった(図18)。iScript中に存在する安定剤は開示されていないが、安定剤としてはDTTが挙げられると考えられる。
[実施例14]
トレハロースは、RT酵素を熱安定化および熱活性化するのに使用されてきた糖であり、PCRのエンハンサーとして使用することができる(63)。0.6MのトレハロースありおよびなしのiScript MMLVの温度プロファイルを、2ステップRT−PCRで測定した。RNA源が5ng/μlで包含される複数の組織から得られたヒト参照全RNAサンプル(Stratagene)であり、逆転写のインキュベーションが42〜69℃の温度で20秒間であったことを除いて、条件は、実施例13と同じであった。キャピラリーを60秒かけて125ミリ秒で85℃の水槽に移動させることによる即時のRT不活性化を用いて、様々な温度で、水槽中のキャピラリーでRTを行った。次いでサンプルを希釈し、実施例12に記載したようにして、qPCRのためのキャピラリーLightCyclerに移動させた。テンプレートなしの対照は陰性であり、42℃で30分のRT運転によりサンプルを陽性対照と比較した。RTステップにおける55〜63℃で、トレハロースは保護的作用を有し、qPCRで測定したところ生成物の量が20〜40%増加した(図19a)。
類似の実験で、iScript MMLV RTを、RocketScript MMLV RT(Bioneer)と比較した。100UのRT(最終濃度10U/μl)、10mMのジチオスレイトール、0.25mMの各dNTP、および0.5UのRNアーゼ阻害剤を含む10μlの反応物中でRocketScript RTを行ったことを除いて、セットアップおよび分析は同じであった。試験された温度範囲にわたり、2つの酵素について非常に類似した結果が得られた(図19B)。これは、これらの操作されたMMLV突然変異体は、同じまたは類似の酵素であり得ることを示唆している。両方の製造元は、それらのMMLV突然変異体が天然の酵素より安定であり、RNアーゼH活性を有すると主張している。
[実施例15]
実施例14で決定されたように、逆転写に0.6Mのトレハロースおよび56℃を使用して、1〜8μMのプライマー濃度を2ステップRT−PCRで研究した。56℃で20または60秒で、それ以外は実施例14の手順に従って、逆転写を行った。60秒のRTを用いたところ、プライマーが4μMまでは相対量が増加し、次いで4〜8μM間で横ばいになった(図20)。20秒のRTを用いたところ、プライマーが8μMまでは相対量が増加し続けたことから、より短い時間は、RTプライマーの濃度をより高くすることで補うことができることが示唆される。
同じ0.6Mのトレハロース、6μMリバースプライマーでの56℃で20秒間のRTインキュベーションを使用した別の実験セットにおいて、iScript MMLV RT酵素の量を、10U/μl(通常)から40U/μlに変更した。酵素濃度が増加するにつれてCqが減少したことから、これらの条件下で、より高い酵素濃度がより大きいcDNA収量をもたらしたことが示される。
0.6Mのトレハロースならびにより高い濃度のRT(40U/μl)およびプライマー(6μM)の両方を使用したさらなる実験において、0.5、1、2、4、8、および16秒のRT時間を、42℃で30分のRT時間と比較した。定量的PCRから、56℃で4、8、および16秒のRTインキュベーション時間と、30分、42℃の対照との間に差がないことが解明され、これは、これらの条件下で、全RNAからのRT−PCRにとって4秒が十分であることを示す。
[実施例16]
上記の実験は、全RNAから特異的なmRNAの転写物を増幅した。RT−PCRの別のごく一般的な用途は、RNAウイルスの検出および定量化における用途である。例えば、HIVおよびHCVのためのウイルス負荷量アッセイは多くの需要があり、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)などの呼吸器ウイルスの検出である。
RSVのRNAの、56秒未満での1ステップRT−PCR増幅を行った。RSVのRNAを、ATCC、カタログ番号VR−3233SDから得た。RSVプライマーは、フォワード:TGGGGCAAATATGTCACGAAG(配列番号30)およびリバース:CCATTTAAGCAATGACCTCGAATTTCA(配列番号31)であり、結果生じるアンプリコンの長さは、63bpであった。逆転写およびPCRを5μlで行い、これには、抗Taq抗体を除いた実施例11の迅速PCRのマスター溶液中、6μMの各プライマー、(40U/μlの)iScript RT、2μMのKlenTaq、0.6Mのトレハロース、および5,000、500、50、または5コピーの新たに希釈したRSVのRNAが含まれていた。逆転写を56℃で20秒間行い、続いて実施例13に記載したように35サイクルのPCRを行った。図21に、様々な最初のテンプレートのコピー数でのPCR生成物のゲル(3連)を示す。最初のテンプレートのコピー数が5,000および500の左のレーンで、強いプライマーおよび生成物のバンドが見られる。生成物のバンドは50コピーでわずかに減少し、最初の5コピーでさらに明確に強度が低くなっていることから、感受性が少なくとも5コピーまで落ちていることが実証される。この例示的な1ステップRT−PCRプロトコールを使用すれば、単一のコピーを検出することが可能であると考えられる。
[実施例17]
1秒未満に短くした逆転写インキュベーションを用いたRSVのRNAの1ステップRT−PCR増幅を行った。実施例16の場合と同様にして、5,000コピーのRSVのRNAを初期テンプレートを用いてRT−PCRを行った。全ての溶液を氷上で混合して、56℃で反応を開始させる前のいかなる逆転写も制限した。56℃でのRT時間は、20秒間から1秒未満まで様々であった。最短の期間は、「10ミリ秒」と標識され、これは、キャピラリーが静止しているときの56℃の水槽中の時間を示す。水槽へのおよび水槽からの移動を包含する時間および10ミリ秒の静止状態の保持は、サンプルを所定温度にするための56℃における十分な曝露ではなかった場合がある。驚くべきことに、全てのサンプルが、20、10、5、2、1秒、および「10ミリ秒」のRT時間で強い特異的なPCR生成物を示したが、NTC(テンプレートなしの対照)は陰性のままであった(図22)。図23に、5秒のRTステップでのリアルタイムのサンプルのモニタリングを示す。
非常に短いRT時間をさらに調査するために、5、1、および0秒のインキュベーションを比較した。ここで「0秒」のインキュベーションは、56℃の水槽を回避したものである。すなわち、調製されたサンプルを、専用のRT温度でのインキュベーションを行わないエクストリームPCRで直接増幅した。全ての反応液は、氷上に集められ、最後の短い(20秒の)遠心分離は、2℃で制御された遠心分離機中で行われた。1つのサンプルセットを即座にエクストリームPCRで処理し、他のセットを室温で60秒そのままにして、調製中ずっと低温を維持することにあまり配慮がなされない状態を模擬した。結果は、陰性対照(テンプレートなしおよびRTなし)と、全ての時間および条件では強いバンドを示した(図24)。左から右に、陰性対照は2つの左のレーンであり、次の3つのレーンは、56℃で0、1、および5秒のインキュベーションを用いた低温で調製されたサンプルであり、最後の3つのレーンは、0、1、および5秒のインキュベーションを用いた室温で1分のレーンである。
[実施例18]
さらに、RTに対するトレハロースおよびスクロースの作用を検査した。0.6Mのトレハロースありおよびなしの実施例17の、1、2、5および10秒のRTインキュベーションの条件を使用して、反応あたり5,000コピーのRSVのRNAおよび45サイクルの1ステップPCRを用いて試験した。図25に結果を示す。図25において、トレハロースのセットは左側であり、(左から右に)テンプレートなしの対照、ブランク、1、2、5、および10秒のインキュベーション、続いて同じ順番のトレハロースなしのセットである。ゲルは終点で採取されるが、トレハロースは最終的な収量を増加させると考えられる。トレハロースを、0.2、0.4および0.6Mスクロースのスクロースと比較したところ、融解分析によれば全てのサンプルがよく増幅し、0.4Mのスクロースが最大の収量をもたらしたことが示された(データは示さず)。スクロースは、トレハロースと同等に優れているかまたはそれより優れているようであり、これは、グルコースおよびフルクトースなどの他の糖も類似の作用を有し得ることを示唆している。他の安定剤も同様に使用される場合がある。
[実施例19]
New England BiolabsからのAMV−RTは、クローニングされた天然のRTであり、通常、ジチオスレイトール(10〜250mM)などの還元剤、高いMg++濃度(8〜13mM)、および高いKCl(75mM)の存在下で42℃で使用される。製造元の緩衝液(反応液中の最終濃度)は、50mMのトリス、pH8.3、75mMの酢酸K、8mMの酢酸Mg、および10mMのDTTであった。この混合物に、ガラスキャピラリーチューブとの適合性のためにBSA(500μg/mlの反応液中の最終濃度)を補充した。この緩衝液を、最終的な反応液中に10mMのDTTおよび10mMのMg++(合計13mMのMg++)が補充された実施例11の迅速PCRのマスター溶液と比較した。2つの緩衝液間の主要な差は、迅速PCR混合物中にはK+が含まれないが、製造元の緩衝液には75mMのK+が包含されていることである。カリウムイオンの存在は、これまでにRT反応にとって重要であるとみなされている(64)。2ステップRT−PCR反応を行った。各緩衝液に、250コピー/μLのRSVのRNA、2.5U/μlのAMV−RT、および15μMのリバースRSVプライマーを添加し、RTを42℃で1秒、5秒、20秒、1分、または10分間行った。RT後、逆転写酵素を93℃で60秒間不活性化し、室温に冷却し、キャピラリーLightCyclerでのPCRのために1:10に希釈した。各10μlのPCRは、迅速PCRのマスター溶液中、0.5μMのRSVプライマーおよび2μlの1:10のcDNAを包含していた。94から55℃の間で45サイクル(保持なし)でサイクリングすることによりリアルタイムPCRを行った。次いでサンプルを、95℃での瞬時の変性によりLightCycler中で融解させ、60℃に冷却し、最終的に0.2℃で95℃に加熱することによって蛍光を獲得した。
リアルタイムの結果、融解曲線、およびゲル分析から、全ての反応が79℃のTmで単一の生成物を増幅したことが解明された。各緩衝液で全ての時間(1秒、2秒、20秒、1分、20分)にわたり類似の結果が見られた(データ示さず)。しかし、市販の緩衝液(75mMのK+を包含する)中での全ての増幅が、補充された迅速PCRのマスター溶液で行われた増幅と比較して平均4.6サイクル分遅くなった。すなわち、K+なしの迅速PCR溶液における定量サイクル(Cq)は、市販の緩衝液におけるCqより4.6サイクル少なかったことから、RT反応においてK+の必要性が主張されているにもかかわらず、K+による重度のPCR阻害が示唆される。
次いで1ステップRT−PCRを、42℃でAMVを用いて行って、RT時間およびMg++濃度の作用を研究した。Mg++は、3、6、10、および13mMで包含され、それぞれのRT時間は1、2、5、および10秒であった。1ステップ反応は、実施例11の迅速PCRのマスター溶液(抗Taq抗体なし)、2.5U/μlのAMV−RT、250コピー/μlのRSVのRNA、4μMの各RSVプライマー、および10mMのDTTを包含していた。サイクリング条件は、実施例13の場合と同様であった。図26に、結果を示す。パネルは、3(左上)、6(右上)、10(左下)、および13(右下)mMのMgClを包含する。各パネル中、RT時間は、左から右に1、2、5、および10秒であった。3mMのMgClでは、AMV−RTにおいて生成物は観察されず、6および10mMのMgClでは、強度が様々な生成物が観察されたがRTインキュベーション時間について明確な傾向はなく、13mMのMgClでは全てのRT時間で強いバンドが観察された。K+がなければ増幅されないことを示唆する従来技術からの予想に反して、K+が全く存在していなくても、13mMのMgClで優れた増幅が起こった。したがって、反応混合物が実質的にカリウムを含まない1ステップRT−PCRプロトコールを使用して、良好な結果を得ることができる。
[実施例20]
NEBから入手した天然のMMLVを、Bio−Radから入手した遺伝子改変されたMMLVであるiScriptと比較した。iScriptの製造元は、iScriptは、より大きいRNアーゼH活性およびより大きい熱安定性を有すると主張している。RSVのRNAを含む実施例11の迅速PCRのマスター溶液および0.6Mのトレハロース中の56℃で5秒間のRTを使用した初期の研究から、iScript(10U/μl)を使用した場合、良好な特異的融解曲線が示されたが、天然のMMLV(2.5U/μl)では増幅しなかった。各酵素を4倍に増加した場合、類似の結果が見出された。最後に、20秒のRTステップを用いてRT温度を37、42、または47℃に低くした。結果は良好な増幅を示すiScriptと同じであったが、天然のMMLVは増幅を示さなかった。反応液にDTTまたはK+は全く含有されていなかった。
実施例19の実験に類似した2ステップ実験を2つの異なる緩衝液、すなわち一方はBSA(500μg/ml)およびdNTP(各500μM)が補充された製造元の緩衝液(50mMのトリス、pH8.3、3mMのMgCl、75mMのKClおよび10mMのDTT)に基づき、他方は10μMのDTTおよび75mMのKClが補充された実施例11の迅速PCRのマスター溶液(50mMのトリス、pH8.3、3mMのMgCl、200μMの各dNTP、および250μg/mlのBSA)に基づく2つの異なる緩衝液を用いて行った。各反応で、AMVの代わりに、20U/μlのMMLVを使用し、加えて6μMのリバースRSVプライマーを使用した。また各反応には、250コピーのRSVのRNA/μLも包含されていた。結果に影響を与えないと予想されるdNTPおよびBSA濃度のわずかな差はあるが、DTTおよびKClの両方は、両方の緩衝液中に同じ濃度で存在していた。RTを42℃で1秒、10秒、1分、または10分間行った。RT後、逆転写酵素を93℃で60秒不活性化し、室温に冷却し、キャピラリーLightCyclerでのPCRのために1:20に希釈した。各10μlのPCRは、実施例11の迅速PCRのマスター溶液中に0.5μMのRSVプライマーおよび2μlの1:20のcDNAを包含していた。実施例19で詳述した2ステップの手順の場合と同様にしてリアルタイムPCRおよび融解を行った。
両方の緩衝液からの全てのタイムポイントから、特異的融解曲線および互いに3サイクル以内のCqで増幅したことが明らかになった。しかし、平均Cq(29.4)は、KClを包含しない実施例19のサンプル(平均Cq=20)と比較して非常に遅く、これは、K+での強いRT−PCR阻害を示唆している。理論に縛られることはないが、KClは、PCR中の阻害の原因であると考えられる。
KClでの阻害を実証するために、1ステップRT−PCRを、42℃で1、5または10秒継続するRTステップにより0、10、20、40、および75mMのKClで行った。迅速PCRのマスター溶液に、250コピー/μlのRSVのRNA、20U/μlのMMLV、4μMの各RSVプライマー、10mMのDTT、および2μMのKlenTaqを様々な濃度のKClと共に入れた。実施例19の1ステッププロトコールと同様にして増幅を行った。図27において、KCl濃度を増加させた1秒(左上)、5秒(右上)および10(左下)秒のRT時間のアガロースゲルを各パネル内に示す。0mMのKClを用いて1、5または10秒の時間で強い増幅が起こった。10および20mMのKClを用いた反応により生じたバンドは、0mMのKClにおけるバンドより弱かったが、RTインキュベーション時間の増加に伴い増加した。40または75mMのKClで増幅は観察されなかった。
DTTは、遊離のスルフヒドリル基を有する一部の酵素に必要な強力なスルフヒドリル還元剤である。前記の段落に類似した1ステップRT−PCRを、42℃での1、5、または10秒のRTインキュベーションにより、0、10、または38mMのDTTおよび0または40mMのKClを用いて行った。結果(図28)は、左から右に様々なDTT/KCl処理を用いた1秒(左上)、5秒(右上)、および10秒(左下)のパネルを示す(0mMのKCl/0mMのDTT、0mMのKCl/10mMのDTT、0mMのKCl/38mMのDTT、40mMのKCl/0mMのDTT、40mMのKCl/10mMのDTT、および40mMのKCl/38mMのDTT)。DTTもKClも添加されない場合、増幅は通常起こらないが、5秒のパネルは弱いバンドを示す。DTTの活性化作用は、全てのパネルで、38mMでより一層明るい別個の10mMのDTTバンドとして明らかに見られる。KClが40mMで存在するときはいつでも、DTTが存在するときでさえも、増幅は視認できない。これらのデータは、DTTがRT−PCR増幅を活性化し、KClがそれを抑制することを示す。他の還元剤、例示としてベータ−メルカプトエタノールなどは、同様に増幅を活性化する場合がある。
[実施例21]
45サイクルのエクストリームPCRの後にゲルまたは融解分析によってPCR生成物を分析する場合(図21、22、24、および25)、ほとんどの定量的情報が失われる。その原因は、ゲルのバンドが逆転写(RT)の時系列後では等しく見えるとしても、PCR要素の濃度を制限することによってサンプル間のあらゆる定量的な差が均一化され得ることである可能性がある。定量結果に関して、リアルタイムPCRは、ゲルまたは融解分析よりかなり優れていることが多い。各リアルタイム曲線から誘導される定量サイクル(Cq)は、最初のテンプレート濃度のlogに反比例する。それゆえに、低いCqは、大量の最初のテンプレートを示し、これは逆転写では逆転写反応によって生成したcDNAの量と同等である。
New England Biolabsから入手したクローニングされた天然MMLVを滴定して、最も低いCq値によって示されるRT−PCR増幅を最大化するのに必要なユニット数を検査した。製造元のプロトコールは、RT反応に関して10ユニット/μLのMMLVを示唆している。しかし、初期の結果から、エクストリーム1ステップRT−PCRにはそれより低い量が最適であったことが示唆されたため、45℃で様々なRTインキュベーション時間(2.5、5、10、20、40、および80秒)で5、2.5、1.25、0.625および0.313ユニット/μLを検査した。
ATCC、カタログ番号VR−26Dから得られたRSVのRNAを用いて1ステップRT−PCR反応を行った。RSVプライマーは、TGGGGCAAATATGTCACGAAG(配列番号30)およびCCATTTAAGCAATGACCTCGA(配列番号31)であった。ガラスキャピラリーで、5μLの体積で、5μMの各プライマー、および3.8mMのMgClを含むエクストリームPCRのマスター溶液(1×LCGreenプラス色素、0.2μMの各dNTP、50mMのトリス(pH8.3)、1.65μMのKlenTaqDNAポリメラーゼ、および25ng/μLのウシ血清アルブミン)を用いて、逆転写およびPCRを行った。各陽性サンプルは、5μL中に、6000コピーのRSVテンプレートを包含していた。陰性サンプルは、テンプレートを包含していなかった(テンプレートなしの対照)。
全ての溶液を氷上で混合して、反応開始前のあらゆる酵素活性を制限した。サンプル温度を3つの水槽によるシステム(図1c)で制御し、まず望ましいRT温度で望ましい時間にわたりサンプルを水槽に移動させるものであり、次いで95℃および55℃に設定された他の2つの水槽間で各水槽につき400ミリ秒の保持で交替する。サンプルを、各サイクルにつき蛍光をモニタリングしながら33回サイクリングし、PCRの完了には約30秒を要した。
結果から、RT時間の増加に伴いCqがわずかに減少したこと(2サイクル未満)が示された(図29)。しかし、最短時間(2.5秒)で、高濃度のMMLVが全体的な反応を強く阻害した(10サイクルまで)。2.5秒で1.25U/μLが最適なようであり、これは推奨された濃度である10U/μLの8分の1の減少であった。RT−PCRの全体時間を低減させることを目的とすれば、2.5秒は約30秒のPCR時間と比較してわずかであり、全体時間の10%未満の貢献に過ぎない。エクストリームRT−PCRにおいてRT時間が全体時間の50%未満であることが好ましく、より好ましくは全体時間の20%未満であり、最も好ましくは全体時間の10%未満である。より短いRT時間は、高温および高いマグネシウム濃度でのRNAの劣化を最小化する。より長い生産のために、RT時間とPCR時間の両方を比例して増加させてもよい。加えて、逆転写酵素の量は、意図した生産の長さの増加に比例して増加させてもよく、ただし短い長さが使用される場合、より少ない量のRTが最適である。逆転写酵素は、例えばTaqポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼを阻害することが報告されており、これが、1ステップRT−PCR反応におけるRT濃度を限定する別の理由である。
[実施例22]
クローニングされた天然型AMV(NEB)を希釈して、低いCq値によって決定された最適な濃度を決定した。製造元によるRT−PCRにおけるAMVの推奨濃度は、1.25U/μLである。しかし、初期の実験から、最適な濃度はそれより低いことが示された。1.25、0.63、0.31、0.156、0.078、および0.039U/μLのAMV濃度で反応を試験した。
8mMのMgClと共にAMVを使用し(上記の濃度で)、RT反応を48℃で2秒間行ったことを除いて実施例21の場合と同様にして、RSVのRNAを用いて1ステップRT−PCR反応を行った。AMVの各濃度でサンプルを3連で試行した。
AMVは、1.25U/μLの推奨された濃度の4分の1よりも低い0.31U/μLの濃度で最もよく性能を発揮するが(図30)、特により大きいアンプリコンの場合、より多くの量、例示として0.5、0.8、および1.0ユニット/μLを使用することができる。図31は、実施例21と実施例22両方の結果の組合せであり、製造元の推奨された濃度を共に示す。
[実施例23]
MMLVを使用したエクストリーム1ステップRT−PCRを、RTステップに関する様々な温度(37、42、45、および48℃)および保持時間(2.5、5、10、20、40、および80秒)にわたり分析した。RT−PCRは、MgCl濃度を7.4mMとし、1.25U/μLのMMLVを使用したことを除いて実施例21に従った。全体的に、Cqは、必ずではないが、RT時間が増加するにつれて減少した(図32)。さらに、MMLVにとって最適な温度を決定することはできなかった。
2秒のRT時間を選択して、生成したcDNAの量の尺度としてCqを使用して、様々な温度(39、42、45、48、51、54、および57℃)の範囲にわたりAMVを試験した。0.31U/μLのAMVを用いて実施例22の手順に従った。3連での測定により多くのバリエーションが示され(図33)、そのため最良の温度を確認することが困難であった。最も低い平均Cqは45℃であったが、これは、AMVを使用するRTのための製造元の推奨された温度でもある。図34は、MMLVのデータとAMVのデータの組合せである。最適な温度は明らかではない。実際に、類似のRT活性が多様な温度にわたり出現する。
[実施例24]
反応時間を低減するマグネシウムの触媒性の能力のために、MMLVとAMVの両方を用いてMgCl濃度を研究した。上述したように(実施例21および22)RSVを用いて1ステップRT−PCRを行った。全てのサンプルを、45℃で2秒(AMV)または2および5秒(MMLV)のRT保持で処理し、続いて即座に33サイクルのPCR増幅によって処理した。
サンプルは、実施例22の場合と同様に1×PCR緩衝液中にRSVテンプレートおよび0.31U/μLのAMVを包含していた。MgCl濃度を、3mMから20mMの間の様々な増加量で分析した。11mMで最も低いCq値が測定された(図35)。11mM未満のMgClを用いた反応は迅速に効率性が落ち始めたが、Cqのみが11から20mMの間でゆっくりと上昇した。
MMLVを含有する1ステップRT−PCRサンプルを、1×PCR緩衝液(実施例21)および1.25ユニット/μLのRTを用いて行った。MgClを2mMから15mMの間で滴定して、最適な濃度を決定した。このケースにおいて、2秒および5秒のRT時間の両方を研究した。RT時間に応じて8から11mMの間のMgClで最も低いCqが見出されたが(図36)、6から12mMの間のMgClが有効であった。Cqは、5秒のRT時間から2秒のRT時間にかけて約1サイクル増加した。両方の酵素は、図37で2秒のRT時間を用いて比較されている。MMLVは、全てのMg++濃度でAMVより活性であった。
[実施例25]
先の実施例で決定されたAMVおよびMMLVの反応条件下で、1ステップRT−PCRに必要な最小の臨界的なRT保持の再確立を行った。RT−PCR反応の大多数をAMVおよびMMLVのために最適化して、Cqに対するRT保持時間の作用を再度分析した。両方の逆転写酵素反応を、45℃のRT温度および95℃から55℃の間の33回のサイクリングで行った。
MMLV反応液は、1.25U/μLの酵素、1×PCR緩衝液(実施例21)、および7.4mMのMgClを含有していた。図38に、結果を2連で示し、X軸は対数である。1秒から2秒の間に大きいCqの低下があり、2秒から40秒の間に1サイクル未満の差がある。cDNAの大多数は、RTの最初の数秒以内に生じるようである。
AMV反応液は、0.31U/μLの酵素、1×PCR緩衝液、および11mMのMgClを含有していた。図39に、結果を3連で示し、X軸は対数である。ここでもCqのほとんどの低下は2秒までに出現しており、これらの条件下で、cDNAの大多数は、RTの最初の数秒以内に生じるようであると示唆される。
図40に、MMLVおよびAMVからのデータの組合せを示す。一部のcDNAはRT保持なしでも生成するが、保持時間を2秒に増加させることでcDNA合成が実質的に増大し、それ以降はわずかしか増加しない。ここでもMMLVが、cDNAの生成においてほとんどのタイムポイントでAMVより効率的なようである。2秒またはそれ未満で逆転写を行う能力は、RT反応時間を有意に低下させ、試薬の添加が必要ではない1ステップPCRにおいてとりわけ有用であり、診断試験において特に有用である。
[実施例26]
プライマーおよびポリメラーゼ濃度を増加させたエクストリーム条件下での1ステップRT−PCRの感受性は、低い特異性のために限定される場合がある。標的に応じて、テンプレートなしの対照の明白な増幅が観察される場合があり、テンプレートなしの対照と低コピー数の陽性サンプルとの間のCqの差はわずかである。さらに、このような反応で生成したプライマー二量体は、特異的な生成物融解温度でまたはその近傍で融解する場合があるため、プライマー二量体を望ましい生成物と区別しにくくしている。これらの作用を軽減するために、ホットスタート技術が考慮された。熱活性化されたポリメラーゼ、プライマー、およびdNTPは商業的に入手可能であるが、いずれも活性化するのに、エクストリームRT−PCRに必要な時間より長い数分を要し、このようなホットスタート技術は、方法の価値の多くを低減する場合がある。またポリメラーゼに対する抗体も入手可能であるが、エクストリームPCRの場合のようにポリメラーゼ濃度を10〜20倍に増加させる場合、抗体の必要量およびコストがどちらも高い。別の選択肢は、例えばFilmArray(BioFire Diagnostics 、LLC)などの混合中に溶液を高温で保持する機器内で要素を混合することである。高温は、反応開始前にプライマー結合を低減したりまたは無くしたりするが、これは、特殊化した機器を必要とし、このような機器は多くの用途にとって必要でない可能性がある。
全てのRT−PCRの要素が存在する場合、非特異的なテンプレートの増幅またはテンプレート以外の増幅(プライマー二量体)が、調製中に室温で起こる場合がある。それゆえに、ポリメラーゼまたはdNTPのような重要な反応要素は、典型的には、調製中できる限り反応混合物から除外される。プライマー二量体の形成は、エクストリームPCRに見出される高いプライマーおよびポリメラーゼ濃度でより容易に起こる。しかし、1つのみのプライマーがポリメラーゼに曝露される場合、プライマー二量体は起こらず、すなわちプライマー二量体の形成には2つの異なるプライマーが必要である(65)。本発明の業績から、エクストリームRT−PCRにおけるプライマー二量体の形成は、RTの直前に混合される2つの半反応液にプライマーを分けることによって低減できることが実証される。テンプレートなしの対照反応のCqは、RT−PCRの直前まで2つの半反応液にプライマーを分けた場合、それらを一緒に調製した場合に比べてより高かった(より優れた特異性、すなわち、より優れた感受性であった)。
プライマー二量体はまた、十分混合された反応を低温に維持し、RT−PCR前の混合後の時間を制限することによっても減少または防止することができる。例えば、混合後に氷上でサンプルを維持すること、およびPCRの前にサンプルを低温で遠心分離することが、テンプレートなしの対照のCqを増加させたことが発見された。一般的に、より優れた結果は、最後の混合の後、ただしRT−PCRの前に時間と温度の両方を最小化することによって得ることができる。加えて、混合温度(例示として0から25℃)からRT温度(37から90℃)に温度を迅速に高めることが、プライマー二量体の形成を少なくする。混合後のRT温度への温度変化は、例示として1秒未満で、さらなる例示として0.5秒未満で、最もよい例示としては200ミリ秒未満で、行うことができる。他の研究とは対照的に、本発明の業績は、短いRT時間で、広範囲の許容できるRT温度があることを示す。
さらに、KlenTaqなどのポリメラーゼと逆転写酵素の両方が同じ反応チューブ中に存在する場合、PCRの阻害が起こる可能性がある(66〜68)。本発明の業績から、デルタCq、すなわち陽性対照の増幅と陰性対照の増幅との間のCqの差の増加によって証明されたように、DNAを標的とするポリメラーゼ(例えば、KlenTaq)とRNAを標的とするポリメラーゼ(逆転写酵素)とを2つの別個の半反応液に分けることも、プライマー二量体を少なくすることが示される。追加の実験から、逆転写酵素を含有する半反応液がリバースプライマーを含有する場合、すなわち、いずれかのテンプレートにアニールできるプライマーが存在し、dNTPおよびMg++が存在する場合、プライマーを伸長させる場合、より優れた結果が示された。
まとめると、プライマー二量体の対照は、1ステップRT−PCR調製物を2つの半反応液に分けることによって得られた。一実施態様において、第1の半反応液は、DNAを標的とするポリメラーゼ(例えば、KlenTaq)、テンプレートにアニールしないプライマー(フォワードプライマー)、および1×緩衝液(例えば、トリス、BSA、および1×蛍光色素、例えば、LCGreenプラス)を含有する。第2の半反応液は、逆転写酵素、テンプレートにアニールするプライマー(リバースプライマー)、1×緩衝液、Mg++、dNTP、およびテンプレート)を含有する。混合後、溶液は、RT反応の前、できる限り低温に(例示として25℃未満、さらなる例示として5℃未満、よりさらなる例示として2未満)、できる限り短時間にわたり(例示として60秒未満、さらなる例示として30秒未満、よりさらなる例示として10秒未満)維持され、できる限り迅速にRT温度に高められる(例示として1秒未満、さらなる例示として500ミリ秒未満、よりさらなる例示として200ミリ秒未満)。
例示的な1ステップRT−PCRは、第1の凍結された半反応液と第2の冷却された(ただし液体の)半反応液とに分けた要素を包含していた。2つの半反応液の一部を1ステップRT−PCR運転の直前に合わせたが、以下これを「氷結」技術と称する。
氷結技術の実証は、ATCC、カタログ番号VR−26Dから得たRSVのRNAを利用した。RSVプライマーは、フォワード:TGGGGCAAATATGTCACGAAG(配列番号30)およびリバース:CCATTTAAGCAATGACCTCGA(配列番号31)であった。半分に分割した反応液の両方は、1×LCGreenプラス色素、50mMのトリス(pH8.3)、および25ng/μLのウシ血清アルブミンを含有していた。氷上で作業する場合、凍結しようとする半分の反応液は、加えて、0.2mMの各dNTP、3.2mMのKlenTaqおよび10μMのフォワードプライマーを含有していた。このサンプルのうち2つの半分のμLをピペットで各ガラスキャピラリーに採取し、短時間で遠心分離し(5秒未満)、最短でも20分かけて−20℃で凍結した。
反応液の凍結された半分を−20℃の冷凍庫に入れ、冷却された部分を氷上で調製した。冷却された部分は、10μMのリバースプライマー、12mMのMgCl、2.5ユニット/μLのMMLV、および2400コピー/μLのRSVを包含していた。MMLVは、凍結されたキャピラリーに添加する直前まで、冷却された溶液に添加されなかった。2つから3つの凍結された反応キャピラリーを冷凍庫から取り出し、即座に氷水槽に入れた。次いで、2.5μLの冷却された溶液をピペットで取り、各キャピラリーの上部に添加し、迅速に卓上遠心分離機を断続的に駆動させ(3秒未満)、敏速に氷槽に戻した。次いでRT−PCRを50℃で2秒のRT保持を用いて行い、95℃から55℃の間で45回サイクリングした。
この同じ実験を、ATCC(カタログ番号VR−1838DQ)から得られた不活性化ジカウイルスRNAを用いても行った。ジカフォワードプライマーは、CAGGTTGGAGTGGGAGTCAT(配列番号32)であり、リバースプライマーは、TTTGTAACGTGCCACATGGT(配列番号33)であった。RT−PCR反応液5μLあたり1250コピーのジカRNAを使用した。
RSVおよびジカウイルス実験の両方からの結果は、氷上で混合されたものと比較して、氷結技術によって作製されたRT−PCR反応のテンプレートなしの対照におけるΔCqの実質的な増加(約10サイクル、または1000の感受性の増加)を示した(図41)。さらに、テンプレートなしの対照の融解曲線はより低温にシフトし、陽性サンプルと容易に区別できるようになった。
一連の3つの実験を実行して、氷結RT−PCR手順の凍結されたまたは冷却された部分のいずれかにMgClおよびdNTPを入れる作用を決定した(表4〜6)。キャピラリー中で半分の反応液(2.5μL)を−20℃で凍結することによってサンプルを作製した。次いで凍結されたサンプルを氷槽中に入れ、そこで実施例26の場合と同様にして2.5μLの冷却された溶液を添加した。全ての実験において、2つのプライマーを異なる溶液に分け、KlenTaqおよびMMLVを分けた。リバースプライマーを、RNAおよびMMLVと組み合わせて、それらが2つの溶液の混合前に結合できるようにした。これにより、フォワードプライマーをMMLVおよびRNAと組み合わせることより優れた結果が得られた。
実験1(表4)において、両方の溶液にMgClを等量で入れた。実験2(表5)において、MgClの全てを冷却された半反応液に入れて、KlenTaqからMg++を分けることがテンプレートなしの対照の増幅を低減するかどうかを調べた。最終的に、実験3(表6)で、冷却された溶液にdNTPとMgClの両方を入れた。仮定として、逆転写酵素がテンプレートなしの対照の増幅に関与する場合、このような増幅は、dNTPおよびMgClの存在下で増加する可能性がある。代替として、テンプレートなしの対照の増幅がKlenTaqによって媒介される場合、Mg++またはdNTPは、KlenTaqによって伸長に利用できないと予想されるが、陽性サンプルは、cDNA合成にとって完全な条件を有すると予想される。1ステップRT−PCR反応のΔCq値に基づけば、実験3で概説した実験パラメーターは、最適な条件をもたらす(図42)。
[実施例27]
RT温度のRT−PCRへの作用を、2秒のRTを使用した氷結技術により研究した。実施例26の実験3で概説した手順をジカプライマーを使用して行い、陽性(5μLのRT−PCRあたり1250コピー)およびテンプレートなしの対照の両方を30から90℃のRT温度の範囲にわたり分析した。Cq値は、4〜8サイクルのΔCqで60℃の温度範囲にわたり極めて一定であった(図43)。エクストリームRT−PCR条件を使用したMMLVの場合、50〜60℃が最適であった。氷結技術を使用しても、なお向上の余地がある。陽性対照とテンプレートなしの対照との間のより大きいΔCqが、感受性をさらに改善すると予想される。
[実施例28]
エクストリームRT−PCRにおけるテンプレートなしの対照の「プライマー二量体」増幅を減少させるための手段として、アプタマーを調査した。アプタマーはこれまで、DNAを標的とするDNAポリメラーゼ(69〜70)およびRNAを標的とするDNAポリメラーゼ(71)の両方に特異的に重合反応を阻害するのに過去に使用されてきた。アプタマーは、インビトロでの進化的選択によって誘導される。本明細書において研究されたアプタマーの塩基配列は、以下に列挙した通りである(5’−3’):
Taqアプタマー配列(70):
6−10:CAAGACGGGCGGGTGTGGTAGGCGCCCGTG(配列番号34)
4−1:ACTTGATGGCGGGTGTGGTAGGCGCCATCT(配列番号35)
Stoffel(KlenTaq)アプタマー配列(69):
Trnc.A−30:AAGACCAGACAATGTACAGTATTGGCCTGA(配列番号36)
Trnc.2−30:GCCGGCCAATGTACAGTATTGGCCGGC(配列番号37)
Tctw.A−30:CCGGACAATGTACAGTATTGGCCCGG(配列番号38)
MuLVアプタマー配列(71):
dm.1.1:UUACCACGCGCUCUUAACUGCUAGCGCCAUGGC(配列番号39)
m.1.1:CUUACCACGCGCUCUUAACUGCUAGCGCCAUGGCCAAAACU(配列番号40)。
上記のDNAアプタマーのそれぞれを、標準的なホスホロアミダイト(phosphoroamidite)合成によって3つの形態で合成した。第1の形態は、3’末端で修飾されていないものであり、第2の形態は、3’−ホスフェートで修飾されたものであり、第3の形態は、3’末端でC6−アミノ末端修飾剤で修飾されたものであった(Glen Research)。表7に、これらのオリゴヌクレオチドのそれぞれの名称を、そのテンプレート、3’−ブロッカーおよび文献番号と共に示す。3’−ブロックを添加して、起こり得るDNAアプタマーからの伸長を防止した。アプタマーをホスフェートおよびC6アミノ基でブロックすることが本明細書に記載されるが、追加の3’−ブロッカー、例えば異なる炭素鎖長を有するアミノ修飾剤、例示として2個の炭素(C2)、3個の炭素(C3)、および最大12個の炭素(C12)のリンカーを有するものなどが予期される。正電荷を有するあらゆる3’−ブロッカーも予期され、本明細書に記載されるアプタマーの結合および有効性を増加させると考えられるが、他のブロッカーも使用することができる。オリゴヌクレオチドTctw.A−30、Tctw.A−30Phos、およびTctw.A−30アミノは、アプタマーTrnc.A−30のヘアピンループおよびヘアピンステムの非対称な内部ループを維持しながら、ステムの塩基対の1つをA::TからG::Cに変更し、追加のG::C塩基対によってステムの長さを増加させることによって安定性を追加していることから、これらは本出願の新規の態様である。加えて、その二次構造(ヘアピンループおよび非対称の内部ループ)を維持しながらステムの安定性を増加させるTrnc.A−30に対する他の修飾により、本明細書に記載される用途のための3’−アミノ修飾剤を併用してもまたは併用しなくても有用なアプタマーを生産することが期待される。Trnc.A−30およびTrnc.2−30の二次構造は公開されている(69)。MMLVのためのRNAアプタマーは、DNAポリメラーゼによって伸長されないはずなので、これらはブロックされていない。
DNAアプタマーをまず迅速サイクルPCRを用いて試験した。ヒトゲノムDNA標的は、以下のPUM1(イントロン2)プライマー:AGGTAGGTGAGGAGACTTAAG(配列番号41)およびTAACCAGCTGGTGGTGA(配列番号42)によって定義された。10μLの反応液中、50ngのDNAテンプレートを、3mMのMgCl、50mMのトリス、pH8.3中の0.5μMの各プライマー、200μMの各dNTP、500μg/mLのBSA、1×LCGreenプラス、0.064μMのKlenTaq1DNAポリメラーゼ、および様々な量のアプタマーTrnc.2−30と共に提供した。冷却またはプライマー二量体を防止する他のいかなる手段も用いずに、サンプルを室温で混合した。ゲノム変性のために95℃に5秒間加熱し、続いて95℃で0秒間および55℃で0秒間45サイクル行うことによりサンプルを増幅して、キャピラリーLightCycler1.5(Roche)で定量サイクル値(Cq)を決定した。次いでPCR生成物を60〜95℃から0.2℃/秒で融解させて、連続的に蛍光を獲得した。
図44に、異なるTrnc.2−30濃度のCqに対する作用を示す。デルタCq(ΔCq)は、感受性の尺度として使用され、ΔCqが高い程、アッセイの感受性がより優れている。アプタマーの非存在下で、ΔCqは約14サイクルであり、0.25μMで26サイクルまで上昇する。より高い濃度では、陽性対照のCqはほぼ一定にもかかわらず、陰性対照のCqは低下し、ΔCqも減少する。
上記で決定された見かけの最適なアプタマー濃度0.25μMを使用して、表7における全てのDNAアプタマーのΔCqを、同じLightCycler PUM1PCRアッセイを使用して決定した。陽性対照は1.4サイクル未満で変動し、Cqは約24〜25サイクルであったが、陰性対照は広範に変動した(データ示さず)。図45にΔCq値の結果を示す。6〜10および4〜1アプタマーの添加は、陰性(アプタマーなしの対照)に比べてそれほど優れた結果を提供しなかった。最良のアプタマーは、3’末端がC6アミノで終結したものであり、最大のΔCqのアプタマーは、Tctw.A−30アミノであった。このアプタマーは、そのC6アミノ末端とその配列において公開された文献と比べて独特である(69)。
15分間のLightCycler PCRに関して上記で最適であることが見出されたTctw.A−30アミノアプタマーを使用して、その濃度をエクストリームPCRのために最適化した。一部の実施態様において、エクストリームRT−PCRでは、プライマー濃度がLightCycler実験より10倍高いため、アプタマー濃度を増加させなければならない場合がある。エクストリームの化学物質(5μMのプライマーおよび1.6μMポリメラーゼ)およびエクストリームの増幅(90℃から60℃の間でおよそ1秒のサイクル)を除き、上記のPUM1(イントロン2)の増幅の条件を使用した。図46に結果を示す。陽性対照反応のCqはDNAアプタマー濃度が増加するにつれてゆっくり上昇したが、両方の陰性対照のCqおよびΔCqは0から1.25μMの間で迅速に上昇し、次いで横ばいになったようであった。エクストリーム条件下での最適なTctwA−30濃度は、約2μMのようであった。ある特定のDNAアプタマーがMMLVなどの一部の逆転写酵素を部分的に阻害するため(72)、1つのDNAアプタマーを、RT−PCRにおいて両方の酵素を阻害するのに使用することができる。代替として、1つは逆転写酵素に特異的であり、1つはDNAを標的とするポリメラーゼに特異的な2つのアプタマーをRT−PCRで使用することができる。
特異的なRNAアプタマーはMMLVを阻害するのに利用可能であるため、表7に列挙したRNAアプタマーdm1.1およびm.1.1を使用して、RT−PCRにおけるプライマー二量体形成を阻害した。まず、これらのRNAアプタマーを、いかなるDNAアプタマーも用いずに試験した。条件は上記のPUM1(イントロン2)の増幅に従い、RTは60℃で2秒であった。図47に示されるm.1.1の結果は、Cqに対するアプタマー濃度の作用を示す。3μMのアプタマーで陰性対照とΔCqの両方が最大であった。次に、同じシステムを使用して、それぞれ3μMのアプタマーm.1.1とアプタマーdm1.1とを比較した。m.1.1のΔCq(9.0)は、dm1.1のΔCq(7.5)より優れていた。それゆえに、RT−PCRにおける単離(DNAアプタマーなし)にRNAアプタマーが使用される場合、プライマー二量体を減少させることができ、アプタマーm.1.1が良好な選択である。
RNAおよびDNAアプタマーの両方を、試験された設定からエクストリーム条件下で別々に最適化した場合、RNAアプタマーにとっての最良の選択は、3μMでm.1.1であり、DNAアプタマーにとっての最良の選択は、2μMでTctw.A−30アミノであった。予備実験において、両方のアプタマーを一緒に試験し、1つのみのアプタマーの対照およびアプタマーが全くない対照と比較した場合、ΔCq値は、両方のアプタマーが存在する場合に最大であった。RNAおよびDNAアプタマーがもたらすΔCqが相加的または相乗的であると予想される条件は、エクストリームRT−PCRにおけるプライマー二量体の形成に逆らう力を大きく増加させると予想される。
参考文献
本発明が関係する分野の最新技術を説明するために明細書中に数々の特許、特許公報および非特許文書が引用されている。これらの文書および引用のそれぞれは、全てが記載されたのと同等に参照により本明細書の一部をなすものとする。
所定の実施形態を参照しながら本発明を詳細に説明したが、以下の特許請求の範囲で記載および定義された本発明の範囲および趣旨内にある変更形態および改変形態が存在する。

Claims (48)

  1. 増幅中の生体サンプル中の標的RNAを増幅する方法であって、
    前記生体サンプル、逆転写酵素、熱安定性ポリメラーゼ、および前記生体サンプル中の前記標的RNAを増幅するように構成されたプライマーを含む反応混合物を提供するステップと、ここで、前記ポリメラーゼが少なくとも0.5μMの濃度で提供され、かつ、プライマーがそれぞれ少なくとも2μMの濃度で提供され、
    5分以下の逆転写時間にわたりインキュベートすることによって前記RNAをDNAに逆転写するステップと、
    エクストリーム温度サイクリングプロファイルを使用して、複数の増幅サイクルにわたり少なくとも変性温度と伸長温度との間で前記生体サンプルを熱的にサイクリングすることによるポリメラーゼ連鎖反応によって、前記DNAを増幅するステップと、ここで、各サイクルが1サイクルあたり20秒未満のサイクル時間で完了する、
    を含む方法。
  2. 前記逆転写時間が、1分以下である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記逆転写時間が、16秒以下である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記逆転写時間が、8秒以下である、請求項2に記載の方法。
  5. 前記逆転写時間が、4秒以下である、請求項2に記載の方法。
  6. 前記逆転写時間が、2秒以下である、請求項2に記載の方法。
  7. 前記生体サンプルに糖もさらに添加される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記糖が、少なくとも0.2Mのトレハロースである、請求項7に記載の方法。
  9. 前記逆転写するステップが、54℃から62℃の間の温度で起こる、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記逆転写するステップが、56℃の温度で起こる、請求項9に記載の方法。
  11. 前記プライマーがそれぞれ、少なくとも4μMの濃度で提供される、請求項1に記載の方法。
  12. 前記プライマーがそれぞれ、少なくとも6μMの濃度で提供される、請求項1に記載の方法。
  13. 前記増幅するステップが、前記逆転写するステップと同じ反応混合物中で起こる、請求項1に記載の方法。
  14. 前記反応混合物が、10mM以下のKCl濃度を有する、請求項1に記載の方法。
  15. 前記反応混合物が、カリウムを実質的に含まない、請求項1に記載の方法。
  16. 前記反応混合物が、還元剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  17. 前記逆転写酵素が、約1.0から約50U/μlで提供されるMMLVである、請求項1に記載の方法。
  18. 前記転写酵素が、4.0ユニット/μL以下の濃度で提供されるMMLVである、請求項1に記載の方法。
  19. 前記逆転写酵素が、約0.1から約10U/μlで提供されるAMVである、請求項1に記載の方法。
  20. 前記逆転写酵素が、0.8ユニット/μL以下の濃度で提供されるAMVである、請求項1に記載の方法。
  21. 前記増幅するステップが、前記サイクル時間に前記サイクルの回数をかけた値に等しい増幅時間を有し、
    前記方法が、前記逆転写時間と前記増幅時間との合計に等しい全体時間を有し、
    前記逆転写時間が、前記全体時間の50%以下である、請求項1に記載の方法。
  22. 前記逆転写時間が、前記全体時間の20%以下である、請求項21に記載の方法。
  23. 前記逆転写時間が、前記全体時間の10%以下である、請求項21に記載の方法。
  24. 前記反応混合物が、6〜12mMの間のMgClを含む、請求項1に記載の方法。
  25. 前記反応混合物の第1の部分が凍結された状態で提供され、前記反応混合物の第2の部分が冷却された状態で提供され、前記逆転写するステップの前に前記第1の部分および前記第2の部分を混合するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  26. 前記第2の部分中に、dNTPおよびMgClが提供される、請求項25に記載の方法。
  27. 前記反応混合物の第1の部分が、第1のプライマーと共に提供され、前記反応混合物の第2の部分が、第2のプライマーと共に提供され、前記逆転写するステップの前に前記第1の部分および前記第2の部分を混合するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  28. 前記第1の部分または前記第2の部分の少なくとも一方が、混合前に遠心分離される、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
  29. 前記混合するステップが完了して1秒以内に、前記逆転写するステップが始まる、請求項28に記載の方法。
  30. 前記第1の部分および前記第2の部分の一方が、前記逆転写酵素を含み、前記第1の部分および前記第2の部分の他方が、前記熱安定性ポリメラーゼを含む、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
  31. 前記反応混合物が、アプタマーをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  32. 前記アプタマーが、少なくとも1μMの濃度で提供される、請求項31に記載の方法。
  33. 前記アプタマーが、RNAアプタマーである、請求項31に記載の方法。
  34. 前記アプタマーが、RNAアプタマーおよびDNAアプタマーの混合物である、請求項31に記載の方法。
  35. 前記アプタマーが、3’−ブロッカーで修飾されている、請求項31に記載の方法。
  36. 前記3’−ブロッカーが、C6−アミノ末端修飾剤である、請求項35に記載の方法。
  37. 前記3’−ブロッカーが、正電荷を有する、請求項35に記載の方法。
  38. 前記アプタマーが、安定化されたヘアピンループを有する、請求項31に記載の方法。
  39. RNAに対してRT−PCRを行うためのキットであって、
    dNTPと、
    逆転写酵素と、
    少なくとも0.5μMの濃度で提供されるポリメラーゼと、
    少なくとも2μMの濃度でそれぞれ提供される、標的核酸を増幅するように構成された一対のプライマーと
    を含むキット。
  40. 糖をさらに含む、請求項39に記載のキット。
  41. 前記糖が、トレハロースおよびスクロースからなる群から選択される、請求項40に記載のキット。
  42. 前記糖が、0.6Mで提供される、請求項40に記載のキット。
  43. 前記糖が、0.2Mで提供される、請求項40に記載のキット。
  44. 還元剤をさらに含む、請求項39に記載のキット。
  45. 前記dNTP、前記逆転写酵素、前記ポリメラーゼ、および前記一対のプライマーが、カリウムを実質的に含まない混合物中に提供される、請求項39に記載のキット。
  46. RNAに対してRT−PCRを行うための反応混合物であって、
    dNTPと、
    逆転写酵素と、
    少なくとも0.5μMの濃度で提供されるポリメラーゼと、
    少なくとも2μMの濃度でそれぞれ提供される、標的核酸を増幅するように構成された一対のプライマーと
    を含む反応混合物。
  47. 10mM以下のKCl濃度を有する、請求項46に記載の反応混合物。
  48. カリウムを実質的に含まない、請求項47に記載の反応混合物。
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