JP2018536130A - 粘性式クラッチ用流体捕集システム - Google Patents

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Abstract

粘性式クラッチ(20;120;220)は、入力部材(24;126;224)と、出力部材(26;124;226)と、作動室(38;138;238)と、剪断流体の供給を行うリザーバ(36;136;236;504;604;704;804;904;1004;1104)と、流出部(36-2;182;236-2;512;612;712;812;912;1012;1112)と、戻し通路(26-2;124B;226-2)と、アキュムレータ(72;502;602;702;802;902;1002;1102)と、弧状部(70-1A;506B;606B;706B;806B;906B;1006B;1106B)を有する第1壁(70-1;170;270;506;606;706;806;906;1006;1106)とを備える。リザーバは、流体回路により前記作動室に連通し、この流体回路に沿って、リザーバから作動室へと剪断流体が移動し、戻し通路が、作動室から送り出された剪断流体をアキュムレータに戻す。アキュムレータは、流体回路においてリザーバと直列に配置される。第1壁は、リザーバ内に位置して、リザーバの第1部分をリザーバの第2部分から分離する。【選択図】図2

Description

本発明は、粘性式クラッチに関するものであり、より具体的には、粘性式クラッチにおける「モーニングシックネス現象」を抑制または防止するための流体捕集システムに関するものである。
粘性式クラッチは、様々な用途、とりわけ自動車のファン駆動用として広範に使用されている。これらの粘性式クラッチは、2つの回転部材の間での選択的なトルク伝達のために、比較的濃密な剪断流体または粘性流体(一般的には、シリコーンオイル)を用いる。入力部材と出力部材との間(例えば、入力ロータと出力ハウジングとの間)に設けられた粘性式クラッチの作動空間に対し、剪断流体を選択的に吸排させることにより、粘性式クラッチの接続や切断が可能となる。入力部材と出力部材との間の作動空間に対するオイルの流動を制御するためにバルブが用いられる。近年の粘性式クラッチの構成として、粘性式クラッチが切断状態にある間、粘性式クラッチの回転する入力部材の内部に剪断流体を蓄えることができるようにして、運動エネルギを適用可能な状態に剪断流体に維持することにより、切断状態からの粘性式クラッチの迅速な接続を可能とにするものが用いられている。また、これにより、切断状態にある間、粘性式クラッチは極めて低い出力速度(例えば、ファン速度)を有することが可能となる。更に、粘性クラッチは電気的に制御されるのが一般的となっている。これにより、粘性式クラッチの制御性が向上すると共に、車両における多種多様な冷却要求に粘性式クラッチを適応させることが可能となる。冷却を必要とするものには、クーラント温度、吸気温度、空調装置圧力、及びオイル温度が含まれる。
一方、粘性式クラッチには、「モーニングシックネス現象」と一般的に呼ばれる問題がある。「モーニングシックネス現象」の問題は、リザーバと作動室とを連通する開口または孔の存在によって生じるものである。粘性式クラッチを装備した車両が一晩にわたって使用されない場合のように、粘性式クラッチが「停止」の状態にあるとき、剪断流体は、リザーバから作動室に戻ってしまう可能性がある。多くの場合、このような流体移動問題は、粘性式クラッチが静止状態になったときの、粘性式クラッチの回転方向における位置(即ち、回転角度位置)に依存するものであり、回転により、剪断流体が留まっている粘性式クラッチの比較的低い位置に開口または孔があるような場合には、重力によって比較的大量の剪断流体が作動室内へと誘導されてしまうことになる。一晩の間使用せずにおいた後の翌朝の「コールドスタート」などで、車両が始動されると、作動室内に移動した、即ち戻った剪断流体によって、入力部材と出力部材との間に、かなり大きな程度の接続が生じる可能性がある。冷却ファン用クラッチとして用いた場合には、これにより、車両始動の際に比較的高速のファン回転を引き起こし、好ましくないファン騒音や、好ましくない冷却作用が生じる可能性がある。粘性式クラッチでは、最終的に、不要な剪断流体を作動室から排出させて、出力部材との接続を解除することにはなるものの、「モーニングシックネス現象」の剪断流体の移動に起因して生じる粘性式クラッチの接続状態の期間を減少させ、またはなくすことが、より一層望ましい。
「モーニングシックネス現象」の問題に対し、様々な解決策が提案されている。これらの公知の構成の多くは比較的複雑な構造となっており、粘性式クラッチの製造や組立を困難なものとしている。また、公知のモーニングシックネス現象防止機構は、径方向及び軸線方向の少なくとも一方において、粘性式クラッチのサイズを容認できないほど大きくしうるものとなっている。
従って、「モーニングシックネス現象」を抑制する、新たな粘性式クラッチシステムの提供が望まれている。
本発明の一態様による粘性式クラッチは、入力部材と、出力部材と、前記入力部材と前記出力部材との間に形成される作動室と、剪断流体の供給を行うリザーバと、流出部と、戻し通路と、前記戻し通路から剪断流体を受け取るアキュムレータと、弧状部を有する第1壁とを備える。リザーバは、流体回路によって前記作動室に連通する。流出部は、前記流体回路に沿って前記リザーバから前記作動室へと剪断流体が通過するように構成され、前記戻し通路は、前記作動室から送り出された剪断流体を、前記流体回路に沿って戻すように構成される。アキュムレータは、前記流体回路において前記リザーバと直列に配置される。第1壁は、前記リザーバ内に位置して、前記リザーバの第1部分を前記リザーバの第2部分から分離する。
本発明のもう1つの態様において、粘性式クラッチを使用する方法は、作動室からアキュムレータへと径方向内方に向けて剪断流体を送給するステップと、前記アキュムレータから、封止構造を有するリザーバに剪断流体を移動させるステップと、前記リザーバ内に設けられた弧状の第1壁により、前記リザーバの第1部分を、前記リザーバの第2部分から分離するステップと、前記リザーバから前記作動室に剪断流体を供給するステップと、前記粘性式クラッチを静止させてアイドル状態とするステップとを備える。前記アイドル状態において、剪断流体の一部が、前記アキュムレータと前記リザーバの前記第1部分との双方に保持されることにより、前記リザーバから前記作動室への剪断流体の移動が抑制される。
本発明の更にもう1つの態様において、粘性式クラッチを使用する方法は、作動室からアキュムレータへと径方向内方に向けて剪断流体を送給するステップと、前記アキュムレータから、封止構造を有するリザーバに剪断流体を移動させるステップと、前記粘性式クラッチの軸線の周りに少なくとも540°の角度範囲で周回する湾曲形状を有したリザーバ通路に沿って、前記アキュムレータから剪断流体の全てを移動させるステップと、前記リザーバから前記作動室に剪断流体を供給するステップと、前記粘性式クラッチを静止させてアイドル状態とするステップとを備える。前記アイドル状態において、剪断流体の一部が、前記アキュムレータと前記リザーバ通路の上流部分との双方に保持されることにより、前記リザーバから前記作動室への剪断流体の移動が抑制される。
ここで示す発明の概要は、例として提示するものに過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明の他の態様は、本明細書、特許請求の範囲、及び添付図面の全てを含め、ここに開示する全てに鑑みて認識されうるものである。
本発明の一実施形態に係る粘性式クラッチの断面図である。 図1の粘性式クラッチの一部を示す斜視図である。 本発明の別の実施形態に係る粘性式クラッチを、中心軸線より上方の部分のみで示す断面図である。 本発明の別の実施形態に係る粘性式クラッチを、中心軸線より上方の部分のみで示す断面図である。 本発明の様々な実施形態に係る粘性式クラッチのための流体捕集システムの1つを示す概略図である。 本発明の様々な実施形態に係る粘性式クラッチのための流体捕集システムの1つを示す概略図である。 本発明の様々な実施形態に係る粘性式クラッチのための流体捕集システムの1つを示す概略図である。 本発明の様々な実施形態に係る粘性式クラッチのための流体捕集システムの1つを示す概略図である。 本発明の様々な実施形態に係る粘性式クラッチのための流体捕集システムの1つを示す概略図である。 本発明の様々な実施形態に係る粘性式クラッチのための流体捕集システムの1つを示す概略図である。 本発明の様々な実施形態に係る粘性式クラッチのための流体捕集システムの1つを示す概略図である。
上記の図は本発明のいくつかの実施形態を示すものであるが、以下に言及するように、別の実施形態もまた考えられる。いずれの場合においても、ここに開示するものは、代表的なものとして本発明を提示するものであって、発明を限定するものではない。別の様々な変更や態様が、当業者によって案出され得るが、それらはいずれも本発明の本質の範囲及び趣旨内にあると理解すべきである。図は、一定の縮尺で描かれたものではない場合があり、本発明の適用や具現化には、具体的には図面に明確に示されていないような特徴、ステップ、または構成部材を含み得るものである。
全般的に、本発明は、入力部材(例えば、ロータディスク)と、出力部材(例えば、ハウジング)と、入力部材と出力部材との間に形成される作動室と、剪断流体(例えば、シリコーンオイル)の供給を行うリザーバとを備えた粘性式クラッチに関するものである。粘性式クラッチの接続及び切断により、出力部材に連結されたファンなどの部品の回転を制御することができる。粘性式クラッチは、リザーバから作動室に剪断流体を移動させることによって選択的に接続することが可能であり、これにより、所定の滑り速度を有した状態での入力部材と出力部材との間のトルク結合が形成される。リザーバは、粘性式クラッチが、回転入力のないアイドル状態、即ち「停止」の状態にあるときに、ある程度の量の剪断流体を捕集することにより、「モーニングシックネス現象」として知られている現象を抑制できるように構成されており、通常、この「モーニングシックネス現象」は、アイドル状態にあるときに、剪断流体が受動的にリザーバから作動室に戻ってしまう場合に発生する。「モーニングシックネス現象」の抑制を実現するため、多くの実施形態が開示される。いくつかの実施形態では、リザーバ内に少なくとも1つの部分的な壁が設けられて、リザーバを複数の部分に分割すると共に、リザーバの1以上の部分にある流体を、リザーバのそれ以外の1以上の部分から隔離する。この壁は、後に詳述するように、弧状部(例えば、円弧状、渦巻状、螺旋状など)を有していてもよいし、それ以外の適合する様々な形状や構造を有していてもよい。リザーバは、封止された状態とすることが可能であり、これは、流入部及び流出部をそれぞれ形成する2つの孔を除き、リザーバが実質的に密閉されていることを意味する。いくつかの実施形態において、壁は、リザーバの1以上の部分が、剪断流体の少なくとも一部を、流入孔及び流出孔のいずれからも隔離された状態で捕集(即ち、貯留して一時的に保持)できるようにして、剪断流体の戻りのほか、「モーニングシックネス現象」を抑制または防止する。別の実施形態では、壁が、流入孔と流出孔との間に湾曲通路を形成し、この湾曲通路は、粘性式クラッチの軸線の周りに180°以上(360°以上など)の角度範囲にわたって延設することができる。いくつかの実施形態では、剪断流体が孔から離間した状態で留まることができるように、位置によって断面積が変化する流体用空間が、壁によって形成される。いくつかの実施形態では、リザーバの近傍または上流側にアキュムレータを設けることにより、「モーニングシックネス現象」を抑制することが可能となっている。アキュムレータは、リザーバ内に部分的な壁を設ける実施形態のいずれとも組み合わせて用いることが可能であり、また単独で用いることも可能である(即ち、リザーバ内に壁を有さない実施形態)。これらの特徴及び利点は、一例として説明するものにすぎず、本発明を限定するものではない。本発明における別の様々な特徴及び利点は、添付の図面を含め、ここに開示する全てに鑑みて当業者が認識しうるものである。
本出願は、2015年12月3日付で出願の米国特許仮出願第62/262565号に基づき優先権を主張すると共に、2016年10月4日付で出願の国際特許出願PCT/US2016/55258に基づき優先権を主張するものであり、これら米国特許仮出願及び国際出願における開示内容は、その全体が参照によりここに組み入れられるものである。
図1は、一実施形態に係る粘性式クラッチ20の断面図であって、この粘性式クラッチ20は、シャフト22、複合体のハウジング(即ち、ハウジングアセンブリ)24、ロータ26、ハブ28、取付ディスク30、バルブアセンブリ32(図1では、一部のみが見えている)、電磁石34、リザーバ36、及び作動室38を備えている。更なる部材については、以下に説明する。粘性式クラッチ20の特徴は、国際特許出願PCT/US2016/55258に開示されるものと同じまたは同等とすることができる。
本実施形態において、シャフト22は中央「活軸」であり、この中央「活軸」とは、シャフト22が回転可能であって、回転の中心軸線Aによって規定される粘性式クラッチ20の中心に位置することを意味する。シャフト22は、ハウジング24の少なくとも一部分を貫通して軸線方向に延び、ハウジング24の前面または前面近傍にて、ハウジング24に相対回転不能に固定されている。本実施形態において、シャフト22は、粘性式クラッチ20全体に対して主たる構造支持体として機能しうるものであり、即ち、シャフト22によって、主に(または完全に)粘性式クラッチ20の質量を支持することができるようになっている。シャフト22は、エンジン(図示せず)の駆動軸等のトルク入力部材に結合可能であって、これによりシャフト22は、入力トルクが伝達され、粘性式クラッチ20の駆動部材、即ち入力部材として作動する。
ハウジング24は、相対回転不能に互いに固定されたベース24−1とカバー24−2とを備える。本実施形態において、シャフト22の一端は、カバー24−2のセンタースリーブ(またはハブ部)に固定され、ベース24−1が、カバー24−2によってシャフト22に間接的に支持されている。このように、ベース24−1は、片持ち状態または半片持ち状態となる構造を有する。ハウジング24は、アルミニウム、またはそれ以外の適切な材料で形成することができる。ハウジング24の外面には、ベース24−1及びカバー24−2の少なくとも一方に、冷却フィン24−3を設けることが可能であり、これにより周囲の空気中への熱の放散を促進することができる。また、ハウジング24に沿って(例えば、ベース24−1とハブ28との間に)1以上のシール40を設けることが可能であり、これにより粘性式クラッチ20内での剪断流体の保持が容易となる。ハウジング24は、シャフト22に相対回転不能に固定されているので、シャフト22が回転する際には、ハウジング24も常に回転する。シャフト22が粘性式クラッチ20に入力されたトルクを受け取ると、シャフト22に入力されたトルクの大きさに応じた入力速度でハウジング24が回転し、粘性式クラッチ20にトルクが入力されたときには常に、ハウジング24とシャフト22とが一緒に回転する。そして、粘性式クラッチ20にトルクが入力されたときには常に、冷却フィン24−3がハウジング24と共に入力速度で回転可能であり、クラッチ接続時にしか回転しない出力部材にフィンを有する場合に比べ、熱の放散効果を高めることができる。
ロータ26は、少なくとも一部がハウジング24内にあり、好ましくは全体がハウジング24内にあって、中央開口26−1を備えたディスク形状とすることができる。ロータ26は、アルミニウム、またはそれ以外の適切な材料で形成することができる。シャフト22及びハウジング24が粘性式クラッチ20のトルク入力部材として作動する際、ロータ26は、(ハブ28及び取付ディスク30と共に)トルク出力部材として作動する。本実施形態において、シャフト22とハウジング24の一部との少なくとも一方が、ロータ26に形成された中央開口26−1を、わずかな径方向ギャップをもって離間した状態で貫通することにより、トルク伝達経路に沿ってシャフト22からハウジング24にトルクを伝達することが可能となっている。
作動室38は、ロータ26とハウジング24との間に形成される(そして、両者間で機能するように配置される)。作動室38は、ロータ26の両面に延設することが可能である。後に詳述するように、作動室38への剪断流体(例えば、シリコーンオイル)の選択的な導入により、ハウジング24とロータ26との間でトルクを伝達する粘性剪断結合を生じさせることで、作動室38内に存在する剪断流体の量に応じてトルク伝達の度合い(及び、付随して生じる滑り速度)を変更しながら、粘性式クラッチ20を接続することが可能である。ロータ26及びハウジング24には、公知技術と同様に、同心状に形成された環状リブ、環状溝、及びそれ以外の適切な構造のうちの少なくともいずれかを設け、作動室38に面する表面積を増大させて、作動室38内に剪断流体が存在するときの剪断結合を助長することが可能である。更に、ロータ26には、後に詳述するように、作動室38からリザーバ36まで、概ね径方向に延びる流体戻し通路26−2を設けることができる。
ハブ28は、全体的に軸線方向に延設されたスリーブ状の部材であって、様々なクラッチ構成部材の構造的な支持、トルク伝達経路の形成、及び磁束回路の一部の形成を含む様々な機能を果たすことが可能となっている。ロータ26は、ハブ28に相対回転不能に固定され、更にハブ28が、取付ディスク30に相対回転不能に固定さており、この取付ディスク30が粘性式クラッチ20の出力部材として作動可能となっている。ハブ28は、中央開口26−1またはその近傍において、ロータ26に取り付けることができるようになっている。更に、ハブ28は、ベアリング機構42により、シャフト22に回転可能に支持することができる。なお、図面に示して上述したハブ28の具体的な構成は、単に例として示したものであって、このような構成に限定されるものではない。例えば、別の実施形態として、ハブ28の一部は、ロータ26と一体であってもよいし、或いは別の形状(例えば、段のない形状)を有していてもよいし、必要に応じ、更なるベアリング機構をロータ26の近傍に設けることも可能である。ハブ28は、後述するような磁束回路の一部として機能するように、鋼などの強磁性材料のような、適切な磁束伝導材料で形成することができる。
取付ディスク30は、ハブ28に相対回転不能に固定されており、ハブ28によって、ロータ26と取付ディスク30との間に回転結合(例えば、不変のまたは直接的なトルク結合)がなされ、取付ディスク30が、ロータ26と同じ速度(例えば、出力滑り速度)で一緒に回転することができる。取付ディスク30には、ファンなどのような出力装置44を連結し、相対回転不能に固定することができる。取付ディスク30は、ハウジング24の後面またはその近傍に配置することが可能であり、取付ディスク30の少なくとも一部は、ハウジング24の外に延在する。このような構成により、出力装置44を後方側に取り付けることが可能となり、出力装置44がファンである実施形態では、粘性式クラッチ20の後方(即ち、粘性式クラッチ20とシャフト22が取り付けられる箇所との間)にファンを配置することができる。
バルブアセンブリ32は、リザーバ36と作動室38との間での剪断流体の流動を選択的に制御する。図示した実施形態において、リザーバ36は、ハウジング24に、即ちハウジング24内に設けられ、より具体的には、ハウジング24のベース24−1内に設けられており、リザーバ36のプレート36−1を、ハウジング24に取り付けて保持できるようにすることで、剪断流体の保持を容易にして、リザーバ36を、それ以外の粘性式クラッチ20の部分から隔てる境界を形成する。プレート36−1は、粘性式クラッチ20の内部に配置することが可能であり、ロータ26に対向するように配置することができる。粘性式クラッチ20を接続する必要がないときには、リザーバ36内に剪断流体を蓄えておくことができる。本実施形態において、リザーバ36は、ハウジング24によって保持されており、リザーバ36と、リザーバ36内部にある剪断流体とは、いずれもハウジング24と共に回転することになる。このようにして、シャフト22及びハウジング24が粘性式クラッチ20の入力部材として作動する際に、粘性式クラッチ20にトルクが入力されるときには常に、リザーバ36が入力速度で回転するので、ハウジング24に保持されたリザーバ36内の剪断流体に運動エネルギを付与して、比較的迅速なクラッチ接続応答時間を得ることができるようになる。更に、リザーバ36が、粘性式クラッチ20の外側の構成部材であるハウジング24に保持されているので、リザーバ36及びリザーバ36内に収容されている剪断流体は、周囲の空気及び冷却フィン24−3の両方に対して物理的に近接した位置にあり、内側のクラッチ構成部材(ロータなど)に保持されたリザーバを有する粘性式クラッチに比べ、熱の放散が促進される。
粘性式クラッチ20は、電磁的に制御することが可能であって、電磁石34の選択的な励磁により、バルブアセンブリ32の作動を制御して、入力部材と出力部材との接続の度合いを制御することができる。図1には、バルブアセンブリ32の全ての構成部材が示されているわけではないが、電磁石34から生成された磁束は、アーマチュアを移動(例えば、平行移動)させることが可能であり、これにより制御ロッドを移動させ(例えば、平行移動させ)ることで、バルブ素子を動かす(例えば、揺動させる)ことができる。バルブ素子は、閉位置にあるとき、リザーバ36からの剪断流体の流出を制限または阻止することが可能となっている。「故障時オン」と称される設定がなされたいくつかの実施形態では、既定状態として、バルブ素子を開位置に機械的に付勢できるようになっており、電磁石34の励磁により、バルブ素子を閉位置に動かすことができる。いくつかの実施形態では、バルブアセンブリ32の構成及び作動を、通常の譲渡がなされた国際特許出願PCT/US2016/55258である国際公開第2014/047430号に記載されたものと同様とすることができる。但し、ここに開示するバルブアセンブリ32の具体的な構成は、単に例として示すものであって、これに限定されるものではない。これに代わる実施形態として、流体戻し通路26−2を選択的に塞ぐバルブのほか、揺動または回転する部材を有したバルブなど、別の形式の様々なバルブ構成を採用することが可能である。また、更なる実施形態として、電磁制御式のバルブアセンブリに代え、公知技術のバイメタル式のバルブアセンブリを採用することも可能である。
粘性式クラッチ20には、後に詳述するように、アキュムレータまたはチャンバ(70または72)を設けることも可能である。
図2は、ハウジング24のベース24−1とリザーバ36とを含む粘性式クラッチ20の一部を、分離した状態で示す斜視図である。図2に示すように、リザーバ36の境界には、流出部である流出孔36−2が形成され、リザーバ36から作動室38に剪断流体を供給できるようになっている。本実施形態において、流出孔36−2は、プレート36−1に形成され、プレート36−1の外周縁部から径方向内側となる位置にあって、剪断流体が、リザーバ36から実質的に軸線方向(即ち、粘性式クラッチ20の中心軸線Aに平行な方向)に流出できるようになっている。流出孔36−2は、バルブアセンブリ32(図2には示されず)のバルブ素子により、選択的に開閉することが可能であり、これにより、どの程度の量の剪断流体をリザーバ36から流出させ、作動室38に流入させるのかが制御され、粘性式クラッチ20の滑り速度を制御することができる。なお、これに代わる実施形態として、プレート36−1を、リザーバ36の境界の全体または一部を形成する別の部分と一体的に単体で形成することも可能である。図示する実施形態の場合、流出孔36−2及び流入孔(後述)の2つの開口を介したリザーバ36に対する剪断流体の流入及び流出のみが可能となるよう、リザーバ36は封止された状態となっている。
粘性式クラッチ20の作動中、剪断流体は、流体戻し通路26−2を介し、作動室38からリザーバ36へと継続的に戻すことが可能となっている。図示した実施形態では、流体戻し通路26−2がロータ26を通っているが、別の実施形態として、ハウジング24の中(例えば、カバー24−2内)に流体戻し通路を通すようにしてもよい。作動室38内には、流体戻し通路26−2に近接して、公知技術と同様の方法で、堰または流動調整部材を配置し、リザーバ36に戻す剪断流体を送り出しやすくすることが可能である。
粘性式クラッチ20には流体回路が設けられる。粘性式クラッチ20の作動中、剪断流体は、流体回路に沿って移動することが可能である。即ち、流体回路は、流出孔36−2を介し、リザーバ36から作動室38に延び、更に流体戻し通路26−2を介し、作動室38からリザーバ36に延びるように設けることができる。また、本実施形態において、流体回路は、流体戻し通路26−2とリザーバ36との間に(流体的に直列に)配置されたアキュムレータ72も通過する。既に述べたとおり、流出孔36−2を通過する剪断流体の流動は、バルブアセンブリ32によって選択的に制御することが可能である。少なくともいくつかの実施形態において、リザーバ内に保持される剪断流体の少なくとも一部が流動する湾曲した通路となるように、リザーバ36内にリザーバ通路を形成することができる。
本発明は、クラッチが、不作動となる期間(即ち、アイドル期間)の後に回転入力を受けたときの、いわゆる「モーニングシックネス現象」を抑制または防止する上で有用な特徴の具体的構成を含むものである。「モーニングシックネス現象」は、アイドル状態にあるとき(即ち、入力トルクが全くないとき)の、剪断流体の作動室への戻りに関係するものであって、入力トルクを受けたときに、剪断流体をリザーバに送り戻すことができるようになるまでの間に、クラッチが一時的に接続されてしまうものである。粘性式クラッチ20にとっては、粘性式クラッチ20が長い期間にわたって使用されないときに、できるだけ多くの量の剪断流体を、リザーバ36内に保持するなど、作動室38から遠ざけた状態に維持することが望ましい。
リザーバ36は、仕切るか、またはそれ以外の方法で、別個の複数部分に分割することにより、アイドル状態にあるときの剪断流体の捕集及び保持を容易にして、「モーニングシックネス現象」、即ち、作動室38への剪断流体の戻りを抑制または防止することが可能である。このような目的のため、弧状部70−1Aを有した壁70−1により、リザーバ36内に副チャンバ(またはアキュムレータ)70を形成することが可能であり、この弧状部70−1Aは、粘性式クラッチ20の中心軸線Aを中心として、一方の端部70−1Bと他方の端部70−1Cとの間で、角度範囲βにわたって延在する。いくつかの実施形態では、角度範囲βを、180°≦β<360°となるように選定することができる(これに代わる後述の実施形態では、リザーバ内の壁の角度範囲βを360°より大とすることができる)。いくつかの好ましい実施形態として、角度範囲βは、270°より大など、比較的大きくなっている。図示した実施形態では、角度範囲βが約315°である。
壁70−1の端部70−1Bまたはその近傍には、突出部70−1Pを設けることができる。突出部70−1Pは径方向に延びて、壁70−1の弧状部70−1Aを、リザーバ36の境界に接続する。図示した実施形態において、突出部70−1Pは、弧状部70−1Aから径方向内方に、リザーバ36の径方向内側の境界まで延び、副チャンバ(アキュムレータ)70の「行き止まり」を形成していて、剪断流体が端部70−1Bを通り過ぎないようにして、端部70−1B及びその近傍で、剪断流体が壁70−1の外側と内側との間で移動しないようにしている。図示した実施形態では、突出部が内設孔、即ち通路を備えており、この内設孔は、リザーバ36から流体的に隔離されていて、リザーバ36の封止構造を維持しつつ、バルブアセンブリ32(図2には示されず)の制御ロッドが通過可能な空間を提供する。
壁70−1の端部70−1Cは、リザーバ36の径方向中間部分に位置する「開放」した端部として構成することが可能である。図示した実施形態の場合、開放した端部70−1Cは、リザーバ36の内側境界及び外側境界には接続されていない。粘性式クラッチ20の作動中、剪断流体は、特定の状況にあるとき、端部70−1Cにおいて、壁70−1の内側と外側との間で移動することが可能となっている。従って、副チャンバ70への入口(及び副チャンバ70からの出口)が、壁70−1の端部70−1Cによって形成される。
副チャンバ70は、リザーバ36の第2部分を形成し、リザーバ36の径方向内側部分に沿って配置することができる。剪断流体は、開放した端部70−1Cの直近においてのみ、副チャンバ70に対する流入及び流出が可能である。リザーバ36内に存在する剪断流体の少なくとも一部が副チャンバ70内に流入可能であり、粘性式クラッチ20がアイドル状態において静止しているとき、ある程度の量の剪断流体を、副チャンバ70内に捕集して保持することが可能である。副チャンバ70内に保持される剪断流体の量(即ち、比率)は、静止しているときの開放した端部70−1Cの向きに応じて変動し、開放した端部70−1Cの回転方向における位置が、下死点またはその近傍にあるとき、即ち粘性式クラッチ20の下半分の領域にあるときには、より多くの量の剪断流体が、重力によって副チャンバ70からリザーバ36内の別の部分へと流出する。なお、粘性式クラッチ20にトルクが入力されている間は、遠心力により、リザーバ36内の剪断流体が皆、リザーバ36内の外側境界に沿った領域に移動しようとするので、リザーバ36内の剪断流体が、副チャンバ70に流入することは全くなくなり、粘性式クラッチ20の流体回路は、副チャンバ70内への剪断流体の流入を必要としない。一方、粘性式クラッチ20がアイドル状態にあるときには、剪断流体が流入可能な「引き込み」流路または支流の流路が、副チャンバ70によって形成され、遠心力ではなく重力が、剪断流体に作用する主たる力となる。
更に、リザーバ36の周方向の所定位置に、壁70−2を設けることが可能であり、リザーバ36内で、この壁70−2を周方向に越えて剪断流体が流動しないように、壁70−2は、リザーバ36の径方向全長、且つ軸線方向全長にわたって延設される。即ち、剪断流体が壁70−2によって遮られ、リザーバ36内で360°の全周にわたっ剪断流体がて周回移動しないようにしている。図示した実施形態では、壁70−2が平坦形状を有し、中心軸線Aに対して単純に放射状となるように延びている。壁70−2は、壁70−1の端部70−1Cと壁70−2との間に周方向の空隙またはギャップを設けた状態で、壁70−1の弧状部70−1Aの端部70−1Cの近傍に配置することができる。この空隙またはギャップにより、剪断流体が、壁70−1の端部70−1Cの部分で向きを変えることが可能となり、特定の状況下において、剪断流体が、壁70−1の内側と外側との間で移動し、副チャンバ70内に流入することが可能となる。また、壁70−2は、壁70−1の端部70−1Cとリザーバ36の流入部との間に位置するようにして、リザーバ36の流入部の近傍に配置することが可能である。壁70−2により、流出孔36−2に向けて剪断流体が周方向に通過しないようにできるので、壁70−2により、粘性式クラッチ20がアイドル状態にあるときの壁70−2の回転方向の静止位置に応じた分の量の剪断流体を更に付加して、リザーバ36内に留めることが可能となる。
壁70−1及び壁70−2の少なくとも一方は、鋳造または機械加工により、ハウジング24のベース24−1と一体に単体として形成することが可能である。このような構造を鋳造または機械加工可能とすることにより、粘性式クラッチ20を比較的容易に製造して組み立てることが可能となる。これに代えて、壁70−1及び壁70−2の少なくとも一方を、ハウジング24に装着する別体の構造体とすることも可能である。
アキュムレータ72は、リザーバ36の近傍(流体的に上流側)に設けることが可能であり、壁72−1(例えば、環状壁)によってリザーバ36から隔てられている。図示した実施形態において、アキュムレータ72は、リザーバ36より径方向内方に位置し、軸線方向における共通位置でリザーバ36に並んで配置され、壁72−1は、全円状をなして、アキュムレータ72の径方向外側の境界となると共に、リザーバ36の径方向内側の境界となる共用または共通の仕切壁となっている。アキュムレータ72は、ハウジング24(例えば、ベース24−1)、またはそれ以外の粘性式クラッチ20の入力部材に保持すると共に相対回転不能に固定することが可能であり、アキュムレータ72が、常に(即ち、粘性式クラッチ20にトルクの入力があるときは常に)リザーバ36と一緒に回転するようになっている。壁72−1には、粘性式クラッチ20の作動中に、アキュムレータ72からリザーバ36へと実質的に径方向外方に剪断流体が流動できるようにする、径方向に向いた単一の孔またはポート72−2を、周方向の単一箇所に設けることが可能である。これに代わる実施形態として、孔72−2の向きを、軸線方向などの別の方向とすることも可能である。機能上、孔72−2は、リザーバ36への流入孔であり、アキュムレータ72からの流出孔であり、(粘性式クラッチ20の流体回路全体についての)中継孔であると考えることができる。粘性式クラッチ20の作動中、剪断流体に作用する遠心力によって、孔72−2を通過する径方向外方への剪断流体の流動が可能となる。このような、アキュムレータ72からリザーバ36への径方向外方に向かう剪断流体の流動は、アキュムレータ72(または、アキュムレータ72及びリザーバ36の両方)が入力部材(例えば、ハウジング24)に保持されている粘性式クラッチ20の実施形態の場合に特に好適である。
アキュムレータ72には、軸線方向に向く開口面72−3を設けることが可能である。図示した実施形態において、アキュムレータ72の開口面72−3は、前方、即ちロータ26の方を向いている。開口面72−3により、360°の角度範囲にわたり、アキュムレータ72の環状の入口、即ち流入口が得られる。作動中、流体戻し通路26−2(図1参照)は、開口面72-3を介し、作動室38からアキュムレータ72に剪断流体を供給することができる。流体戻し通路26-2とアキュムレータ72とが、互いに入力部材と出力部材との異なる方に設けられる実施形態の場合(図示した実施形態では、流体戻し通路26−2が、出力部材のロータ26に設けられ、アキュムレータ72が、入力部材のハウジング24に設けられている)、アキュムレータ72は、アキュムレータ72と流体戻し通路26−2との回転方向の相対位置にかかわらず、流体戻し通路26−2から剪断流体を受け取ることができる。図示した実施形態におけるアキュムレータ72は、周方向に妨げるもののない環状のチャンバとなっており、全周にわたって剪断流体が支障なく流動できるようになっている。
粘性式クラッチ20がアイドル状態にあるとき、モーニングシックネス現象を抑制するため、剪断流体の少なくとも一部を、アキュムレータ72に保持することが可能である。アキュムレータ72に保持される剪断流体の量(即ち、比率)は、静止状態にあるときの孔72−2及び流体戻し通路26−2の位置に応じて変動する。全般に、孔72−2の回転方向における位置が、下死点またはその近傍にあるとき、即ち粘性式クラッチ20の下半分の領域にあるときには、重力によって、より多くの量の剪断流体が、孔72−2を介してアキュムレータ72からリザーバ36に流出する。また、静止状態において、流体戻し通路26−2が概ね下方を向いているとき、即ちアイドル状態で静止しているときの、回転方向における流体戻し通路26−2の位置が、粘性式クラッチ20の下半分の領域にあるときには、アキュムレータ72内の剪断流体が、作動室38に戻る可能性がある。それでも、孔72−2と流体戻し通路26−2とが、静止状態において、実質的に独立した回転方向の位置を有することができるようにすることで、粘性式クラッチ20は、可能性のある静止時の位置の範囲にわたって、アキュムレータ72で保持可能な剪断流体の平均量を増大させることが可能である。なお、粘性式クラッチ20の更なる実施形態として、副チャンバ70を用いずに、アキュムレータ72を適用することも可能である。更に、アキュムレータ72とリザーバ36との間には、単一の孔を設けることで、粘性式クラッチ20がアイドル状態のときの剪断流体の戻りを抑制しやすくなるが、1以上の付加的な孔を設けることも可能である。また、アキュムレータ72の開口面72−3は、別の実施形態として、部分的に開口(例えば、360°未満の角度範囲で開口)していてもよく、これは、アキュムレータ72とリザーバ36とが相対回転不能には互いに固定されていない場合に有利となることがある。
リザーバ36とアキュムレータ72との内部容積の関係や、副チャンバ(アキュムレータ)70など,アキュムレータ36の分割部分についての内部容積の関係は、個々の用途ごとに必要に応じて変えることが可能である。図示した実施形態では、アキュムレータ72の方が、アキュムレータ36より小さな内部容積を有している。
リザーバ36及びアキュムレータ72の少なくとも一方の軸線方向の奥行きも、アイドル状態における剪断流体の捕集及び保持を更に促進するために、変更することが可能である。このような調整により、リザーバ36及びアキュムレータ72の少なくとも一方の容積に対応して、作動室38の容積及び断面積の少なくとも一方が適切となるように調整することが可能となる。例えば、リザーバの選定した部位に設けた突起や溝などにより、特定の角度位置(即ち、周方向の位置)において、剪断流体の保持を助長するようにしてもよい。
更に、別の実施形態として、国際特許出願PCT/US2016/55260、及び米国特許仮出願第62/237286号に開示されるような、戻り防止バルブ、即ちモーニングシックネス防止バルブを、粘性式クラッチ20が備えるようにしてもよい。また、個々の用途ごとに必要に応じ、公知技術である様々なチェックバルブを、粘性式クラッチ20と共に用いることも可能である。
図1及び図2に示す粘性式クラッチ20は、単に一例として示すものであり、これに限定されるものではない。本発明による、モーニングシックネス現象を抑制するための流体捕集システムは、様々な形式の粘性式クラッチに適用することが可能であり、それらの粘性式クラッチは、様々な入出力構造を有している。図3及び図4は、更なるクラッチ構造から選抜した例を示すものであるが、更なる実施形態(具体的には図示せず)も考えられる。
図3は、もう1つの実施形態である粘性式クラッチ120の断面図であって、この粘性式クラッチ120は、シャフト122、複合体のハウジング(即ち、ハウジングアセンブリ)124、ロータ126、バルブアセンブリ132、電磁石134、リザーバ136、及び作動室138を備えている。粘性式クラッチ120の全般的な作動は、上述した粘性式クラッチ20と同様である。但し、本実施形態では、ロータ126がシャフト122に固定されており、粘性式クラッチ120の入力部材となっている。ハウジング124は、粘性式クラッチ120の出力部材として作動する。リザーバ136は、ロータ126に保持されている。本実施形態では、粘性式クラッチ120の前側(電磁石134がある側とは反対側)にリザーバ136が設けられているが、更なる実施形態として、リザーバ136がロータ126の後ろ側に配置されていてもよいし、ロータ126の軸線方向中間部分に内蔵されていてもよい。ハウジング124を通って流体戻し通路124Bが延設されており、作動室138から送られてきた剪断流体を、流入孔180を介してリザーバ136に供給する。剪断流体は、リザーバ136から流出可能であり、バルブアセンブリ132によって選択的に開閉される流出孔182を介し、作動室138へ送られて、流体回路を完結する。リザーバ136は、これら流入孔180及び流出孔182を除き、封止状態とすることができる。粘性式クラッチ120は、粘性式クラッチ20のアキュムレータ72が省かれているが、これに代わる実施形態として、そのようなアキュムレータを粘性式クラッチ120に用いることも可能である。
リザーバ136内には壁170が設けられ、リザーバ136をいくつかの部分に隔て、即ち分割している(例えば、概ね径方向に)。但し、粘性式クラッチ20の壁70−1とは異なり、壁170によって長い湾曲したリザーバ通路が形成され、この湾曲したリザーバ通路が粘性式クラッチ120の流体回路に含まれるようになっている。即ち、壁170は、流入孔180と流出孔182との間に配置されており、剪断流体が直線的な経路で流入孔180から流出孔182に流動できないようになっている。リザーバ136内を通る剪断流体は、湾曲したリザーバ通路を通過しなければならず、リザーバ通路の湾曲構造により、流体回路が長く延びているため(例えば、周方向に)、粘性式クラッチ120がアイドル状態にあるときに、剪断流体の少なくとも一部をリザーバ136内に捕集して保持するのが容易になる。壁170の形状、並びに流入孔180及び流出孔182の配置により、粘性式クラッチ120が休止状態(即ち、「停止」またはアイドル状態)にあるときに、静止状態にあるクラッチ構成部材の回転方向の位置にかかわらず、かなりの量の剪断流体を確実にリザーバ136内に保持することが可能となる。湾曲したリザーバ通路については、後に詳述する(例えば、図7に基づく説明を参照)。なお、これに代わる実施形態として、例えば、粘性式クラッチ20の副チャンバ70及びアキュムレータ72の少なくとも一方を、壁170を用いる代わりとして粘性式クラッチ120に適用することも可能である。
剪断流体の捕集及び保持をより良好に行うため、流入孔180及び流出孔182の角度位置(即ち、周方向の位置)を互いにずらし、別個の流体経路を確保できるようにすることも可能である。
図4は、もう1つの実施形態である粘性式クラッチ220の断面図であって、この粘性式クラッチ220は、シャフト222、複合体のハウジング(即ち、ハウジングアセンブリ)224、ロータ226、バルブアセンブリ232、電磁石234、リザーバ236、及び作動室238を備えている。粘性式クラッチ220の全般的な作動は、上述した粘性式クラッチ20及び粘性式クラッチ120と同様であり、通常の譲渡がなされた米国特許出願公開第2015/0240888号に記載されたクラッチに類似したものとすることができる。但し、本実施形態の場合、粘性式クラッチ220は、静止した(即ち、回転しない)シャフト222を採用する。ハウジング224は、粘性式クラッチ220の入力部材として機能し、ロータ226は、粘性式クラッチ220の出力部材として機能することができる。ロータ226は、ハウジング224から外方に突出するハブ226−1を備えることが可能であり、ファン(図示せず)などの出力装置の取り付けを可能としている。また、ハウジング224は、トルク入力源に接続されるプーリ224−1を備えることが可能である。
ロータ226には、リザーバ236に向け、流体回路に沿って、作動室238から送給された剪断流体を供給するための流体戻し通路226−2が設けられている。
リザーバ236の境界の一部を形成するリザーバプレート236−1が設けられ、リザーバプレート236−1を貫通して、流出孔236−2及び流入孔236−3が設けられる。流入孔236−3の部材の隙間により、リザーバ236に付加的な開口が生じ、リザーバ236は封止状態にないことになるが、このような隙間は、粘性式クラッチ220の中心軸線Aに比較的近い位置にあるため、モーニングシックネス現象の原因となる剪断流体の戻りは生じにくい。更なる実施形態として、必要に応じ、この隙間にシール(図示せず)を追加して、封止されたリザーバとなるようにすることも可能である。
リザーバ236内には壁270が設けられ、リザーバ236をいくつかの部分に隔て、即ち分割している(例えば、概ね径方向に)。壁170と同様に、壁270によって長い湾曲したリザーバ通路が形成され、この湾曲したリザーバ通路が粘性式クラッチ220の流体回路に含まれるようになっている。即ち、壁270は、流出孔236−2と流入孔236−3との間に配置され、剪断流体が直線的な経路で流入孔236−3から流出孔236−2に流動できないようになっている。リザーバ236内を通る剪断流体は、湾曲したリザーバ通路を通過しなければならず、リザーバ通路の湾曲構造により、流体回路が長く延びているため(例えば、周方向に)、粘性式クラッチ220がアイドル状態にあるときに、剪断流体の少なくとも一部を、リザーバ通路に沿った1以上の箇所で、リザーバ136内に捕集して保持するのが容易になる。壁270の形状、並びに流出孔236−2及び流入孔236−3の配置により、粘性式クラッチ220が休止状態(即ち、「停止」またはアイドル状態)にあるときには、静止状態にあるクラッチ構成部材の回転方向の位置にかかわらず、かなりの量の剪断流体を確実にリザーバ236内に保持することが可能となる。湾曲したリザーバ通路については、後に詳述する(例えば、図7に基づく説明を参照)。なお、これに代わる実施形態として、例えば、粘性式クラッチ20の副チャンバ70及びアキュムレータ72の少なくとも一方を、壁270を用いる代わりとして粘性式クラッチ220に適用することも可能である。
図5〜図11は、粘性式クラッチのための流体捕集システムの様々な実施形態を示す概略図である。図5〜図11には、説明のために、保持されている剪断流体が網掛けで示されている。簡略化のため、図5〜図11では、流体捕集システムのみを独立して示しており、(図1〜図4に示すような)粘性式クラッチにおける他の構成部材は示していない。なお、図5〜図11に示す流体捕集システムの実施形態は、図1〜図4に示す例のような粘性式クラッチや、或いは具体的には示していない粘性式クラッチなど、様々な構成の粘性式クラッチの全般に適用することが可能であり、個々の用途ごとの必要に応じて、粘性式クラッチの入力部材または出力部材に適用することが可能である。
図5は、一実施形態として、粘性式クラッチと共に用いられる流体捕集システム500を示す概略図である。流体捕集システム500は、アキュムレータ502、リザーバ504、壁506、壁508、孔510、及び孔512を備えている。
アキュムレータ502は、戻し通路(図5には示さず)を介し、作動室から剪断流体を受け取る概ね環状のチャンバとすることができる。アキュムレータ502は、流入口として開口面を有することが可能であるが、別の形式の流入孔とすることも可能である。剪断流体は、孔510を介し、アキュムレータ502からリザーバ504へと流動することが可能であり、図示した実施形態では、孔510が、リザーバ504より径方向内方に位置するアキュムレータ502から、径方向に向けられている。孔510は、単一の通路が単一の位置において、粘性式クラッチの流体回路に沿ってアキュムレータ502とリザーバ504とを直列に接続するような、アキュムレータ502とリザーバ504との唯一の連通路とすることが可能である。
リザーバ504は、内側境界504Aと外側境界504Bとを有し、少なくとも一部が壁506によって形成される副チャンバを備えており、壁506は、軸線方向におけるリザーバ504の全長に延在して液密な仕切りとなることが可能である。壁506は、本体(または、本体部)506B、並びに一方の端部506−1及び他方の端部506−2を有しており、少なくとも部分的に弧状に形成して(例えば、本体506Bを弧状とすることができる)、角度範囲βにわたって粘性式クラッチの中心軸線Aの周りに延設することができる。本実施形態において、角度範囲は約315°であるが、これに代わる実施形態として、別の角度範囲を適用することも可能である。本体506Bは、リザーバ504の径方向中間部分または径方向中央部分に配置することが可能である。端部506−1またはその近傍、好ましくは端部506−1において、壁506の本体506Bから径方向内方に向け、突出部506−3を延設することが可能である。突出部506−3は、リザーバ504の内側境界504Aまで延設されて、壁506によって形成される副チャンバの「行き止まり」となる。壁508は、内側境界504Aから外側境界504Bまで、リザーバ504の径方向全長に延設されており、壁506の端部506−2の近傍に、当該端部506−2からギャップによって離間した状態で配置される。本実施形態では、回転方向、即ち周方向において、一方の端部506−1と他方の端部506−2との間で、突出部506−3と壁508との間に、孔510が配置されている。孔510に隣接するリザーバ504の領域は、リザーバ504の流入部と考えることができる。
孔512は、孔510の近くに配置することができる。孔512は、リザーバプレートに設けることが可能であり、孔510の向きに対して概ね直角な方向に向けることができる(例えば、実質的に軸線方向に孔512を延設することが可能)。孔512は、リザーバ504からの流出部となり、剪断流体は、リザーバ504から作動室(図示せず)に向け、流体回路に沿って流出を継続することができるようになっている。本実施形態において、孔510及び孔512は、リザーバ504の共通の四分円弧(中心軸線Aを中心とする)の範囲内にあって、より具体的には、中心軸線Aを中心とする約15°の角度範囲内に位置することが可能である。更に、孔512は、突出部506−3と壁508との間に配置することができる。孔510及び孔512だけが、リザーバ504の流入部及び流出部となり、それ以外の部分ではリザーバ504が密閉され、封止されている。
流体捕集システム500を有する粘性式クラッチがアイドル状態にあるとき、リザーバ504内にある剪断流体は、孔510及び孔512のいずれかを介して作動室に戻る可能性がある。従来の粘性式クラッチの場合、いずれかの孔が下方を向いていると、ほとんどの剪断流体が、リザーバから作動室に戻りやすくなる。しかしながら、壁506及び壁508の少なくとも一方によって形成される副チャンバが、ある程度の剪断流体を捕集して保持するので、流体捕集システム500では、リザーバ504内における剪断流体の保持が助長され、流体捕集システム500が静止状態にあるときに、重力によって孔510及び孔512のいずれかから作動室に戻りうる剪断流体の量を制限することが可能となる。更に、アキュムレータ502により、剪断流体の作動室への戻りに対する抑制効果を助長することができる。
図5に示すように、剪断流体は、壁506及び壁508によってリザーバ504内に保持される。図示した実施形態の場合、剪断流体は、アキュムレータ502からリザーバ504に流出可能となっているが、回転方向で別の角度位置にある場合には、剪断流体の一部が、アキュムレータ502内にも留まることになる。
図6は、一実施形態として、粘性式クラッチと共に用いられる流体捕集システム600を示す概略図である。流体捕集システム600は、アキュムレータ602、リザーバ604、壁606、壁608、孔610、及び孔612を備えている。リザーバ604は、内側境界604Aと外側境界604Bとを有し、少なくとも一部が壁606によって形成される副チャンバを備えている。壁606は、本体(または、本体部)606B、並びに一方の端部606−1及び他方の端部606−2を有しており、少なくとも部分的に弧状に形成して(例えば、本体606Bを弧状とすることができる)、角度範囲βにわたって粘性式クラッチの中心軸線Aの周りに延設することができる。
流体捕集システム600の構成及び作動は、図5に基づき上述した流体捕集システム500と概ね同様であるが、壁606の角度範囲βが約170°となっており、孔512よりも径方向内側に孔612が配置されている。流体捕集システム600の実施形態は、短縮した壁606により重量を低減すると共に、端部606−2と壁608との間に拡大したギャップを設けて、剪断流体を流動しやすくしている。回転方向のある程度の角度位置では、壁606が、壁506に比べて少ない量の剪断流体を保持することになるが、図示した位置の場合には、孔612の変更された位置により、流体捕集システム600に保持される剪断流体の量が、流体捕集システム500よりわずかに増加することで、流体捕集システム600と流体捕集システム500とでは、同様の量の剪断流体が捕集され保持される。更に、図5の実施形態と図6の実施形態との間のトレードオフの関係として、より径方向外方に位置する孔512の方が、作動中に剪断流体に作用する遠心力のため、粘性式クラッチの応答性をわずかに改善することができるという点がある。
図7は、一実施形態として、粘性式クラッチと共に用いられる流体捕集システム700を示す概略図である。流体捕集システム700は、アキュムレータ702、リザーバ704、壁706、孔710、及び孔712を備えている。粘性式クラッチの流体回路の周辺機構として補助的に設けられる副室または副チャンバに、作動室から遠ざけた状態で剪断流体を捕集して保持することを主たる目的とした流体捕集システム500及び流体捕集システム600の実施形態とは異なり、流体捕集システム700は、流体回路の長さを増大させる湾曲したリザーバ通路714を設けることにより、剪断流体を作動室から遠ざけて捕集し保持するものとなっている。
アキュムレータ702は、戻し通路(図7には示さず)を介して作動室から剪断流体を受け取る、概ね環状のチャンバとなっている。アキュムレータ702は、流入口として開口面を有することが可能であり、これは別の形式の流入孔とすることもできる。剪断流体は、孔710を介し、アキュムレータ702からリザーバ704へと流動し、本実施形態の場合、この孔710は、リザーバ704より径方向内方に位置するアキュムレータ702から、径方向に向けられている。孔710は、単一の通路が単一の位置において、粘性式クラッチの流体回路に沿ってアキュムレータ702とリザーバ704とを直列に接続するような、アキュムレータ702とリザーバ704との唯一の連通路とすることが可能である。また、孔710及び孔712だけが、リザーバ704の流入部及び流出部となり、それ以外の部分ではリザーバ704が封止されている。
リザーバ704は、内側境界704Aと外側境界704Bとを有する。孔710は、内側境界704Aなど、リザーバ704の内周面(ID)またはその近傍に配置することが可能であり、孔712は、外側境界704Bの近傍で外側境界704Bから径方向内方など、リザーバ704の外周面(OD)またはその近傍に配置することが可能である。孔712は、リザーバプレートに配置することが可能であり、孔710が向く方向に対して概ね直角な方向に向けることが可能である(例えば、実質的に軸線方向に孔712を延設することが可能である)。孔710に隣接するリザーバ704の領域は、リザーバ704の流入部と考えることができる。孔712は、リザーバ704からの流出部となり、剪断流体は、リザーバ704から作動室(図示せず)に向け、流体回路に沿って流出を継続することができるようになっている。作動時のリザーバ704が回転すると、剪断流体が遠心力によってリザーバ704の外周面(OD)の方に移動しようとするため、外周面(OD)またはその近傍への孔712の配置により、粘性式クラッチのバルブアセンブリが作動したときに、比較的迅速に剪断流体をリザーバ704から作動室に送給することが可能となる。孔710及び孔712は、中心軸線Aを中心とした互いの位置が角度αをなすように配置することが可能である。この角度αは、約180°とすることが可能であり、別の実施形態として、これより大きい角度または小さい角度とすることも可能である。
リザーバ704は、壁706によって全体的にまたは部分的に形成される液密な仕切構造、即ち分割構造を有し、この壁706は、リザーバ704の軸線方向の全長にわたって延設することができる。壁706は、本体(または本体部)706B、並びに一方の端部706−1及び他方の端部706−2を有しており、少なくとも部分的に弧状に形成し、中心軸線Aの周りに角度範囲βにわたって延設することができる。本体706Bは、リザーバ704の径方向中間部分または径方向中央部分に配置することが可能であり、端部706−1から他方の端部706−2へと、螺旋状に径方向外方にずれていく形状を有することが可能である。本実施形態において、角度範囲βは約180°であるが、これに代わる実施形態として、別の角度範囲を適用することも可能である。端部706−1またはその近傍、好ましくは端部706−1において、壁706の本体706Bから径方向内方に向け、リザーバ704の内側境界704Aまで、突出部(即ち、終端部)706−3が延設されている。また、端部706−2またはその近傍において、壁706の本体706Bから径方向外方に向け、リザーバ704の外側境界704Bまで、突出部(即ち、終端部)706−4が延設されている。このようにして、突出部706−3と突出部706−4とが、壁706の本体706Bから、径方向で互いに逆となる方向に延設される。突出部706−4は、回転方向、即ち周方向に凸状となる形状(例えば、孔712から離間する方向に凸状に突出する形状)を有することが可能である。本実施形態において、孔710は、端部706−1の近傍、且つ壁706の突出部706−3に隣接して配置され、孔712は、端部706−2の近傍、且つ壁706の突出部706−4に隣接して配置されている。突出部706−3及び突出部706−4は、いずれも、孔710及び孔712の中心を通る仮想線716の同じ側に配置することが可能である。即ち、壁706は、ひげ状の突出部706−3及び706−4を両端部706−1及び706−2に有したC字状の形状をなし、これら突出部706−3及び706−4は、いずれも径方向で同じ方向(例えば、図7に示すように下方)に突設されている。
図7の実施形態に示すように、リザーバ704の第1の部分は、突出部706−3及び孔710の近傍にあって壁706から径方向内方に延びる第1の「行き止まり」部を有しており、リザーバ704の第2の部分は、突出部706−4及び孔712の近傍にあって壁706から径方向外方に延びる第2の「行き止まり」部を有している。このように、分割構造によって、孔710と孔712との間に、湾曲した形状(例えば、螺旋状、または巻き貝の貝殻状)のリザーバ通路714が形成される。このリザーバ通路714は、中心軸線Aの周りに角度範囲θにわたって周回し、即ち延在している。本実施形態において、角度範囲θは約540°である。また、本実施形態では、θ≧3αの関係にある。これに代わる実施形態として、角度範囲θは、θ≧360°またはθ>180°というように、より大きくすることや、より小さくすることも可能である。更に、いくつかの実施形態では、θ≧αの関係にあり、好ましくはθ>α、より好ましくはθ>>αの関係にある。作動中、剪断流体は、角度範囲θの全域にわたってリザーバ通路714に沿って移動させられることになり、入口または流入部(即ち、孔710)から、出口または流出部(即ち、孔712)まで移動することにより、流体回路に沿ってリザーバ704内を通過することになる。
流体捕集システム700を有する粘性式クラッチが、アイドル状態または「停止」状態にあるとき、リザーバ704内にある剪断流体は、孔710及び孔712のいずれかを介して作動室に戻る可能性がある。従来の粘性式クラッチの場合、いずれかの孔が下方を向いていると、ほとんどの剪断流体が、リザーバから作動室に戻りやすくなる。しかしながら、2つの孔710及び孔712は、中心軸線Aを中心とした互いの位置が角度α(例えば、約180°)をなすように配置され、リザーバ通路714は、角度範囲θにわたって周回しているので、いつでも、一方の孔(孔710または孔712)のみが下方に向く(即ち、中心軸線Aを通る水平仮想線より下方に位置する)ことになる。更に、壁706により、リザーバ704内における剪断流体の保持が助長され、流体捕集システム700が静止状態にあるときに、重力によって孔710及び孔712のいずれかから作動室に戻りうる剪断流体の量を制限することが可能となる。また、流動方向において、リザーバ通路714の中間部分は、壁706によって何ら狭められたり妨げられたりすることなく、内側境界704Aから外側境界704Bまでの径方向の幅を有しており、アイドル状態において、このリザーバ通路714の中間部分に、比較的大量の剪断流体を捕集して保持することが可能となる。
図8は、一実施形態として、粘性式クラッチと共に用いられる流体捕集システム800を示す概略図である。流体捕集システム800は、アキュムレータ802、リザーバ804、壁806、孔810、及び孔812を備えている。リザーバ804は、内側境界804Aと外側境界804Bとを有する。孔810及び孔812は、中心軸線Aを中心とした互いの位置が角度αをなすように配置可能である。壁806は、本体(または本体部)806B、並びに一方の端部806−1及び他方の端部806−2を有しており、少なくとも部分的に弧状に形成し、中心軸線Aの周りに角度範囲βにわたって延設することができる。本実施形態において、本体806Bは、端部806−1から他方の端部806−2へと、螺旋状に径方向外方にずれていく形状を有することが可能である。端部806−1またはその近傍、好ましくは端部806−1において、壁806の本体806Bから径方向内方に向け、リザーバ804の内側境界804Aまで、突出部806−3が延設されている。また、端部806−2またはその近傍において、壁806の本体806Bから径方向外方に向け、リザーバ804の外側境界804Bまで、突出部806−4が延設されている。突出部806−3及び突出部806−4は、いずれも、孔810及び孔812の中心を結ぶ仮想線816の同じ側に配置することが可能である。孔810から孔812に至るリザーバ通路814は、中心軸線Aの周りに角度範囲θにわたって周回させ、即ち延設することが可能である。
流体捕集システム800は、流体捕集システム700と概ね同様の構成を有しており、流体回路の長さを増大させる湾曲したリザーバ通路814を形成し、剪断流体を作動室から遠ざけた状態で捕集し保持することを容易にする壁806を有している。但し、壁806は、壁706よりも長くなっており、中心軸線Aの周りに、回転方向、即ち周方向に、一回りを上回って周回することで、自身がオーバラップしている。より具体的には、図示した実施形態において、角度範囲θが約540°となっている。流体捕集システム700と同様に、流体捕集システム800の作動中、剪断流体は、角度範囲θの全域にわたりリザーバ通路814に沿って移動させられることになり、入口または流入部(即ち、孔810)から、出口または流出部(即ち、孔812)まで移動することにより、流体回路に沿ってリザーバ804内を通過することになる。孔810及び孔812は、中心軸線Aを中心とした互いの位置が角度α(例えば、約180°)をなすように配置され、リザーバ通路814は、角度範囲θ(例えば、θ>αの関係)にわたって周回しているので、常に、一方の孔(孔810または孔812)のみが下方に向く(即ち、中心軸線Aを通る水平仮想線より下方に位置する)ことになる。更に、壁806により、リザーバ804内における剪断流体の保持が助長され、流体捕集システム800が静止状態にあるときに、重力によって孔810及び孔812のいずれかから作動室に戻りうる剪断流体の量を制限することが可能となる。
図9は、一実施形態として、粘性式クラッチと共に用いられる流体捕集システム900を示す概略図である。流体捕集システム900は、アキュムレータ902、リザーバ904、壁906、孔910、及び孔912を備えている。リザーバ904は、内側境界904Aと外側境界904Bとを有する。孔910及び孔912は、中心軸線Aを中心とした互いの位置が角度α(例えば、約180°)をなすように配置することが可能である。壁906は、本体(または本体部)906B、並びに一方の端部906−1及び他方の端部906−2を有しており、少なくとも部分的に弧状に形成し、中心軸線Aの周りに角度範囲βにわたって延設することができる。本実施形態において、本体906Bは、部分的に渦巻状または螺旋状をなし、上流側の部分(端部906−1の方に近い部分)が、端部906−1から他方の端部906−2に向けて、螺旋状に径方向外方にずれていく形状を有し、下流側の部分(端部906−2の方に近い部分)は、螺旋状ではなく円弧状に形成されている。本体906Bの螺旋状部は、点906Hにおいて、本体906Bの円弧状部に接続している。端部906−1またはその近傍、好ましくは端部906−1において、壁906の本体906Bから径方向内方に向け、リザーバ904の内側境界904Aまで、突出部906−3が延設されている。また、端部906−2またはその近傍において、壁906の本体906Bから径方向外方に向け、リザーバ904の外側境界904Bまで、突出部906−4が延設されている。突出部906−3及び突出部906−4は、いずれも、孔910及び孔912の中心を結ぶ仮想線916の同じ側に配置することが可能である。本実施形態において、突出部906−4は、本体906Bの近接部分から径方向内方に突設されて丸みを帯びた凸状の屈曲部を介して弧状の本体906Bに接続される、実質的に平坦な部分を備える。この丸みのある屈曲部の径方向内方に突出する形状は、壁906の内側から、この屈曲部を剪断流体が容易に越えないようにすることにより、流体捕集システム900が様々な回転方向の向きにあるときに、より多くの剪断流体の捕集及び保持を可能とする。孔910から孔912まに至るリザーバ通路914は、中心軸線Aの周りに角度範囲θ(例えば、約540°)にわたって周回させ、即ち延設することが可能である。
流体捕集システム900は、流体捕集システム700及び流体捕集システム800と概ね同様の構成を有しており、流体回路の長さを増大させる湾曲したリザーバ通路914を形成し、剪断流体を作動室から遠ざけた状態で捕集し保持することを容易にする壁906を有している。但し、流体捕集システム800の螺旋状の本体806Bとは異なり、壁906の本体906Bは、部分的に螺旋状となっているだけで、上流側の螺旋状の部分と、下流側の円弧状(非螺旋状)の部分とを有している。壁906の本体906Bの螺旋状の形状及び非螺旋状の形状によって生じるリザーバ通路914の断面積の変化は、剪断流体の捕集及び保持を、機能上適切なものとする上で有用である。例えば、リザーバ通路914の上流側端部及び下流側端部の双方に比べ、リザーバ通路914の中間部分におけるリザーバ904の部分の断面積及び容積を大きくすることが可能である。また、螺旋状の形状及び非螺旋状の形状により、回転中に、より強力に剪断流体をリザーバ904の外側に追いやることができる。これにより、内周面(ID)側から外周面(OD)側への剪断流体のより迅速な移動が助長され、粘性式クラッチの応答性を改善することができる。流体捕集システム700及び流体捕集システム800と同様に、流体捕集システム900の作動中、剪断流体は、角度範囲θの全域にわたりリザーバ通路914に沿って移動させられることになり、入口または流入部(即ち、孔910)から、出口または流出部(即ち、孔912)まで移動することにより、流体回路に沿ってリザーバ904内を通過することになる。孔910及び孔912は、中心軸線Aを中心とした互いの位置が角度α(例えば、約180°)をなすように配置され、リザーバ通路914は、角度範囲θ(例えば、θ>αの関係)にわたって周回しているので、常に、一方の孔(孔910または孔912)のみが下方に向く(即ち、中心軸線Aを通る水平仮想線より下方に位置する)ことになる。更に、壁906により、リザーバ904内における剪断流体の保持が助長され、流体捕集システム900が静止状態にあるときに、重力によって孔910及び孔912のいずれかから作動室に戻りうる剪断流体の量を制限することが可能となる。
図10は、一実施形態として、粘性式クラッチと共に用いられる流体捕集システム1000を示す概略図である。流体捕集システム1000は、アキュムレータ1002、リザーバ1004、壁1006、孔1010、及び孔1012を備えている。リザーバ1004は、内側境界1004Aと外側境界1004Bとを有し、必要に応じ、軸線方向に奥行きを増大させた1箇所以上の部分を設けることができる。孔1010及び孔1012は、中心軸線Aを中心とした互いの位置が角度αをなすように配置することが可能である。角度αは、90°未満、45°未満、または好ましくは約30°というように、比較的小さな角度とすることが可能である。壁1006は、本体(または本体部)1006B、並びに一方の端部1006−1及び他方の端部1006−2を有しており、少なくとも部分的に弧状に形成し、中心軸線Aの周りに角度範囲βにわたって延設することができる。孔1010から孔1012に至るリザーバ通路1014は、中心軸線Aの周りに角度範囲θ(例えば、約330°)にわたって周回させ、即ち延設することが可能である。
本実施形態において、本体1006Bは、部分的に渦巻状または螺旋状をなし、上流側の部分(端部1006−1の方に近い部分)及び下流側の部分(端部1006−2の方に近い部分)が円弧状(非螺旋状)に形成され、本体1006Bの中間部分は、本体1006Bに沿う第1の点1006Hから第2の点1006H’へと、螺旋状に径方向外方にずれていく形状を有する。このような構成により、リザーバ1004における(リザーバ通路1014に沿った)上流側部分と下流側部分とは比較的小さな容積とする一方、リザーバ1004における(リザーバ通路1014に沿った)中間部分は比較的大きな容積とすることが可能となり、アイドル状態における剪断流体の捕集及び保持を助長することができる。このような構成において、本体1006Bにおける上流側の部分(端部1006−1に近い部分)は、内側境界1004Aに比較的近い位置にあり、本体1006Bにおける下流側の部分(端部1006−2に近い部分)は、外側境界1004Bに比較的近い位置にある。
端部1006−1またはその近傍、好ましくは端部1006−1に、壁1006の本体1006Bから径方向内方に向け、リザーバ1004の内側境界1004Aまで、突出部1006−3が延設されている。また、端部1006−2またはその近傍に、壁1006の本体1006Bから径方向外方に向け、リザーバ1004の外側境界1004Bまで、突出部1006−4が延設されている。本実施形態において、突出部1006−4は、本体1006Bの近接部分から径方向内方に突設されて丸みのある凸状の屈曲部を介して弧状の本体1006Bに接続される、実質的に平坦な部分を備える。更に、図示する実施形態に示すように、孔1010の位置において、リザーバ1004からアキュムレータ1002を隔離する壁に、概ね径方向に形成された窪みまたは溝を設け、リザーバ1004の流入部の容積を増大させることが可能であり、これにより、粘性式クラッチがアイドル状態にあるときに剪断流体が保持されるリザーバ1004の領域から、より遠くに孔1010を配置することが可能となる。
流体捕集システム1000は、流体捕集システム700、流体捕集システム800、及び流体捕集システム900と概ね同様の構成を有しており、流体回路の長さを増大させる湾曲したリザーバ通路1014を形成し、剪断流体を作動室から遠ざけた状態で捕集し保持することを容易にする壁1006を有している。また、流体捕集システム700、流体捕集システム800、及び流体捕集システム900と同様に、流体捕集システム1000の作動中、剪断流体は、角度範囲θの全域にわたりリザーバ通路1014に沿って移動させられることになり、入口または流入部(即ち、孔1010)から、出口または流出部(即ち、孔1012)まで移動することにより、流体回路に沿ってリザーバ1004内を通過することになる。但し、流体捕集システム1000の場合の角度範囲θは、360°に近く、大きめに設定されている。アイドル状態では、孔1010及び孔1012の両方が下方に向く(即ち、中心軸線Aを通る水平仮想線より下方に位置する)可能性もあるが、これにより剪断流体が作動室に戻る可能性は、比較的長く設けられたリザーバ通路1014によって相殺される。前述した実施形態と同様に、壁1006により、リザーバ1004内における剪断流体の保持が助長され、流体捕集システム1000が静止状態にあるときに、重力によって孔1010及び孔1012のいずれかから作動室に戻りうる剪断流体の量を制限することが可能となる。
図11は、一実施形態として、粘性式クラッチと共に用いられる流体捕集システム1100を示す概略図である。流体捕集システム1100は、アキュムレータ1102、リザーバ1104、壁1106、壁1108、孔1110、及び孔1112を備えている。粘性式クラッチの流体回路の周辺機構として補助的に設けられる副室または副チャンバに、作動室から遠ざけた状態で剪断流体を捕集して保持することを主たる目的とした流体捕集システム500及び流体捕集システム600の実施形態とは異なり、流体捕集システム1100は、流体回路の長さを増大させる湾曲したリザーバ通路1114を設けることにより、剪断流体を作動室から遠ざけて捕集し保持するものとなっている。
アキュムレータ1102は、戻し通路(図11には示さず)を介して作動室から剪断流体を受け取る、概ね環状のチャンバとなっている。アキュムレータ1102は、流入口として開口面を有することが可能であり、これは別の形式の流入孔とすることもできる。剪断流体は、孔1110を介し、アキュムレータ1102からリザーバ1104へと流動することが可能であり、本実施形態において、この孔1110は、リザーバ1104より径方向内方に位置するアキュムレータ1102から、径方向に向けられている。孔1110は、単一の通路が単一の位置において、粘性式クラッチの流体回路に沿ってアキュムレータ1102とリザーバ1104とを直列に接続するような、アキュムレータ1102とリザーバ1104との唯一の連通路とすることが可能である。また、孔1110及び孔1112だけが、リザーバ1104の流入部及び流出部となり、それ以外の部分ではリザーバ1104が封止されている。
リザーバ1104は、内側境界1104Aと外側境界1104Bとを有する。孔1110は、内側境界1104Aなど、リザーバ1104の内周面(ID)またはその近傍に配置することが可能であり、孔1112は、外側境界1104Bの近傍で外側境界1104Bから径方向内方など、リザーバ1104の外周面(OD)またはその近傍に配置することが可能である。孔1112は、リザーバプレートに配置することが可能であり、孔1110が向く方向に対して概ね直角な方向に向けることが可能である(例えば、実質的に軸線方向に孔1112を延設することが可能である)。孔1110に隣接するリザーバ1104の領域は、リザーバ1104の流入部と考えることができる。孔1112は、リザーバ1104からの流出部となり、剪断流体は、リザーバ1104から作動室(図示せず)に向け、流体回路に沿って流出を継続することができるようになっている。作動時のリザーバ1104の回転で、剪断流体が遠心力によってリザーバ1104の外周面(OD)の方に移動しようとするため、外周面(OD)またはその近傍への孔1112の配置によって、粘性式クラッチのバルブアセンブリが作動したときに、比較的迅速に剪断流体をリザーバ1104から作動室に送給することが可能となる。孔1110及び孔1112は、中心軸線Aを中心とした互いの位置が角度αをなすように配置することが可能である。この角度αは、ほぼ0°とすることが可能であり、これは、孔1110及び孔1112が、回転方向(または周方向)において実質的に同じ角度位置に並んで配置されることを意味するが、これに代わる実施形態として、角度αを、これより大きい角度とすることも可能である。
リザーバ1104は、壁1106及び壁1108によって形成される分割構造を有しており、これら壁1106及び壁1108のそれぞれは、リザーバ1104の軸線方向の全長に延設し、液密な仕切を形成することができる。壁1106は、本体(または本体部)1106B、並びに一方の端部1106−1及び他方の端部1106−2を有しており、少なくとも部分的に弧状に形成し、中心軸線Aの周りに角度範囲βにわたって延設することができる。壁1108は、本体(または本体部)1108B、並びに一方の端部1108−1及び他方の端部1108−2を有しており、少なくとも部分的に弧状に形成し、中心軸線Aの周りに角度範囲βにわたって延設することができる。これら角度範囲β及び角度範囲βのそれぞれは、180°以上、270°以上、330°以上、または360°に近い大きさというように、比較的大きめの角度範囲とすることができる。本実施形態において、角度範囲βは約330°、角度範囲βは約340°であるが、これに代わる実施形態として、いずれの角度範囲についても、これとは異なる大きさを適用することが可能である。
本体1106Bおよび本体1108Bは、それぞれリザーバ1104の径方向中間部分または径方向中央部分に配置することが可能である。本実施形態では、壁1106の本体1106Bの方が、壁1108の本体1108Bより径方向内方に位置している。更に、図示した実施形態に示すように、壁1106は、壁1108よりも、リザーバ1104の内側境界1104Aに(径方向で)近い位置にあり、壁1108は、壁1106よりも、リザーバ1104の外側境界1104Bに(径方向で)近い位置にある。
端部1106−1またはその近傍、好ましくは端部1106−1には、壁1106の本体1106Bから径方向内方に向け、リザーバ1104の内側境界1104Aまで、突出部(即ち、終端部)1106−3が延設されている。端部1106−2は、開放した端部として構成することが可能であり、リザーバ1104の径方向における中間部分で、内側境界1104A及び外側境界1104Bから離間した状態で終端している。本実施形態において、孔1110は、壁1106の端部1106−1の近傍、且つ壁1106の突出部1106−3に隣接して配置されている。
端部1108−1またはその近傍、好ましくは端部1108−1には、壁1108の本体1108Bから径方向外方に向け、リザーバ1104の外側境界1104Bまで、突出部(即ち、終端部)1108−3が延設されている。端部1108−2は、開放した端部として構成することが可能であり、リザーバ1104の径方向における中間部分で、内側境界1104A及び外側境界1104Bから離間した状態で終端している。本実施形態において、孔1112は、壁1108の端部1108−1の近傍、且つ壁1108の突出部1108−3に隣接して配置されている。
突出部1106−3と突出部1108−3とは、孔1110及び孔1112の中心を通る仮想線1116に関し、互いに反対となる側に配置することができる。また、開放した端部1106−2と開放した端部1108−2とも、仮想線1116に関し、互いに反対となる側に配置することができる。更に、突出部1106−3と開放した端部1106−2とは、仮想線1116の同じ側に配置することが可能であり、突出部1108−3と開放した端部1108−2とは、仮想線1116(例えば、周方向における孔1110及び孔1112の共通の位置)の同じ側に配置することが可能である。
図11の実施形態に示すように、リザーバ1104の一部分には、突出部1106−3及び孔1110の近傍にあって壁1106から径方向内方に延びる、「行き止まり」部を有し、リザーバ1104のもう1つの部分には、突出部1108−3及び孔1112の近傍にあって壁1108から径方向外方に延びる、もう1つの「行き止まり」部を有する。径方向における壁1106と壁1108との間には、壁1106及び壁1108によって孔1110及び孔1112(及び、これらに付随する行き止まり部)から引き離された中間部1118が位置する。このように、流体捕集システム1100の分割構造により、孔1110と孔1112との間に、湾曲した形状のリザーバ通路1114が形成される。このリザーバ通路1114は、中心軸線Aの周りに最小角度範囲θにわたって周回し、即ち延在している。本実施形態において、この最小角度範囲θは約720°である。また、本実施形態では、θ≧(β+β)の関係にある。これに代わる実施形態として、角度範囲θは、これよりも大きくすることも、また小さくすることも可能である。作動中、剪断流体は、少なくとも最小角度範囲θの全域にわたってリザーバ通路1114に沿って移動させられることになり、入口または流入部(即ち、孔1110)から、出口または流出部(即ち、孔1112)まで移動することにより、流体回路に沿ってリザーバ1104内を通過することになる。中間部1118の少なくとも一部は、周方向において流動を遮るものがない。中間部1118は、剪断流体が、開放した端部1106−2及び開放した端部1108−2を概ね径方向に通過して流動できるようになっているが、剪断流体が、接線方向、即ち中間部1118に沿った周方向に流動し続けることも許容するので、リザーバ通路1114は最小角度範囲θにのみ延在するものの、剪断流体は、中間部において、これより大きな角度範囲(nを負でない整数とするとき、θ+n×360と表すことができる)にわたって循環することが可能である。
前述した実施形態と同様に、流体捕集システム1100は、アイドル状態における、湾曲したリザーバ通路1114による剪断流体の捕集及び保持を助長するものであるが、壁1106及び壁1108によって、これが更に助長される。
上述したような本発明の粘性式クラッチの構成は、数多くの利益及び利点を提供する。例えば、リザーバ内、またはアキュムレータとリザーバとの間の剪断流体を圧送する運動部材(例えば、バルブ)や、それ以外の能動的な機構または準能動的機構を何ら必要とすることなく、剪断流体の捕集及び保持を受動的に行うことが可能である。本発明の様々な実施形態では、リザーバ内の構造に加えて、アキュムレータを適用することができる。また、本発明の実施形態に係るリザーバ内の分割構造では、リザーバを径方向または軸線方向に拡大する必要がなく、コンパクトな粘性式クラッチの構成を維持することが可能となる。剪断流体の捕集及び保持を行うための様々な特徴を用いることにより、トルク入力があるときの粘性式クラッチの性能に顕著な悪影響をもたらすことなく、剪断流体の戻りによるモーニングシックネス現象の抑制に関する効果が得られることが判明した。即ち、モーニングシックネス現象を抑制または防止するための特徴、特に複数の特徴を使用することで、粘性式クラッチの接続や切断の応答時間、粘性式クラッチの径方向及び軸線方向の少なくとも一方のサイズ、製造組立の煩雑化、及び粘性式クラッチ全体の重量などの少なくとも1つに好ましくない影響を及ぼす可能性があるものの、本発明により、これらの事柄との間での好ましいトレードオフの関係を得ることが可能である。本発明による粘性式クラッチ及び流体捕集システムは、粘性式クラッチのサイズ及び重量、並びに製造性と、「モーニングシックネス現象」の緩和との間で、好ましいトレードオフの関係を提供するものである。本発明とは別のモーニングシックネス現象防止機構は、クラッチ製造を煩雑化し、特に軸線方向における粘性式クラッチのサイズや重量を増加させやすい、積み重ね式または組み重ね式のチャンバを必要とするものである。本発明の実施形態による剪断流体の捕集や保持の程度は、アイドル状態における粘性式クラッチの回転方向の位置に応じて変動するものの、全剪断流体の体積の45%を上回る量の保持が、アイドル状態におけるあらゆる位置の場合でも確認され、いくつかの実施形態では、いくつかの位置の場合に85%以上の剪断流体が保持され、大部分の実施形態では、回転方向のあらゆる位置において、概ね65%の剪断流体が保持されることが確認された。
[可能性のある実施形態の検討]
以下は、本発明の可能性のある態様についての、非排他的な記載である。
粘性式クラッチは、入力部材と、出力部材と、前記入力部材と前記出力部材との間に形成される作動室と、流体回路によって前記作動室に連通し、剪断流体の供給を行うリザーバと、前記流体回路に沿って前記リザーバから前記作動室へと剪断流体が通過する流出部と、前記作動室から送り出された剪断流体を、前記流体回路に沿って戻す戻し通路と、前記流体回路において前記リザーバと直列に配置され、前記戻し通路から剪断流体を受け取るアキュムレータと、弧状部を有し、前記リザーバ内に位置して、前記リザーバの第1部分を前記リザーバの第2部分から分離する第1壁とを備えることが可能である。
直前の段落に述べた粘性式クラッチは、以下に示す特徴、構成、及び付加的部材のうちの少なくともいずれか1つを、付加または置き換えにより選択的に備えることが可能であって、
前記リザーバは、前記入力部材に保持されることが可能であり、
前記入力部材は、ハウジングによって構成することが可能であり、前記出力部材は、ロータディスクによって構成することが可能であり、
前記アキュムレータは、軸線方向に向く開口面を有することが可能であり、
前記リザーバの内側境界から外側境界までの径方向の全長にわたって延設される径方向壁を更に備え、前記径方向壁は、前記第1壁から間をあけて設けられ、前記径方向壁を周方向に横切る剪断流体の周方向の移動を妨げるように構成され、
前記アキュムレータは、前記粘性式クラッチの前記流体回路において、前記戻し通路と前記リザーバとの間で、前記リザーバの上流側に配置することが可能であり、
前記アキュムレータは、前記リザーバより径方向内方に配置することが可能であり、
前記アキュムレータは、環状のチャンバとして構成することが可能であり、
前記アキュムレータは、周方向の全域にわたって内部を剪断流体が支障なく流動できるように構成することが可能であり、
前記リザーバの境界に沿って配置されて、径方向に延設されるリザーバプレートであって、前記流出部が、前記リザーバプレートに設けられた流出孔として構成され、前記流体回路に沿って、前記リザーバから前記作動室へと、剪断流体が前記流出孔を通過するのを許容するリザーバプレートを更に備え、
前記アキュムレータと前記リザーバとの間に設けられた隔壁を更に備え、
前記隔壁に設けられ、前記流体回路に沿って、前記アキュムレータから前記リザーバへと剪断流体が通過するのを許容する中継孔を更に備え、前記中継孔は、前記リザーバプレートに設けられた前記流出孔が向く方向に直角に向けられており、
前記流体回路に沿って、前記アキュムレータを前記リザーバに接続する中継孔を更に備え、前記流出部は、前記リザーバの境界に設けられた流出孔として構成され、前記中継孔は、前記流出孔が向く方向に直角に向けられており、
前記流体回路に沿う剪断流体の流動を調整するように構成されたバルブアセンブリを更に備え、
前記第1壁の前記弧状部は、前記粘性式クラッチの軸線の周りに、180°より大きい角度範囲βにわたって延設することが可能であり、
前記第1壁の前記弧状部は、前記粘性式クラッチの軸線の周りに、360°より大きい角度範囲βにわたって延設することが可能であり、
前記リザーバは、周方向における角度位置が流出孔から180°離間した流入部を有するように構成することが可能であり、
前記流体回路は、少なくとも540°の角度範囲にわたって周回するリザーバ通路を含むことが可能であり、
前記第1壁は、前記リザーバにおいて周方向に延在する第1境界に対し、前記弧状部を径方向に接続する第1端突設部を更に備えることが可能であり、
前記第1壁は、前記リザーバにおいて周方向に延在する第2境界に対し、前記弧状部を径方向に接続する第2端突設部を更に備えることが可能であり、前記第2端突設部は、前記弧状部に関し、前記第1突設部とは反対側に配置することが可能であり、
弧状部を有し、前記リザーバ内において前記第1壁に径方向に隣り合って設けられ、前記リザーバの前記第1部分及び前記第2部分から第3部分を分離する第2壁を更に備えることが可能であり、
前記リザーバは、第1孔と第2孔とを有することが可能であり、前記第1孔は、前記流体回路に沿った前記リザーバへの流入部となり、前記第2孔は、前記流体回路に沿った前記リザーバからの流出部となり、前記第1孔と前記第2孔とは、周方向における共通位置に並んで配置され、
前記第1壁及び前記第2壁のそれぞれは、開放された端部を有することが可能であり、前記第1壁の前記開放された端部と、前記第2壁の前記開放された端部とは、前記周方向における共通位置に関し、互いに反対となる側に位置することが可能であり、
前記第1壁の前記弧状部の少なくとも一部は、螺旋形状を有することが可能であり、
前記第1壁の前記弧状部は、前記リザーバの流出孔の近傍に位置する下流側端部に、円形部分を有し、前記弧状部の前記螺旋形状の部分は、前記円形部分の上流側に配置することが可能であり、
前記流体回路は、前記リザーバを通るリザーバ通路を含むことが可能であり、前記リザーバの断面積は、前記リザーバ通路に沿って変化し、
前記リザーバの前記断面積は、前記リザーバ通路の上流側端部及び下流側端部に比べ、前記リザーバ通路の中間部分の方が大きくなっていることが可能であり、
前記アキュムレータ及び前記リザーバは、軸線方向における共通位置に並んで配置することが可能であり、或いは
前記戻し通路の少なくとも一部は、径方向に延設することが可能である。
粘性式クラッチを使用する方法は、作動室からアキュムレータへと径方向内方に向けて剪断流体を送給するステップと、前記アキュムレータから、封止構造を有するリザーバに剪断流体を移動させるステップと、前記リザーバ内に設けられた弧状の第1壁により、前記リザーバの第1部分を、前記リザーバの第2部分から分離するステップと、前記リザーバから前記作動室に剪断流体を供給するステップと、前記粘性式クラッチを静止させてアイドル状態とするステップとを備え、前記アイドル状態において、剪断流体の一部が、前記アキュムレータと前記リザーバの前記第1部分との双方に保持されることにより、前記リザーバから前記作動室への剪断流体の移動が抑制されるようにすることが可能である。
直前の段落に述べた方法は、以下に示す特徴、構成、及び付加的ステップのうちの少なくともいずれか1つを、付加または置き換えにより選択的に備えることが可能であり、
剪断流体は、周方向の単一の位置において、前記アキュムレータから前記リザーバへと径方向に移動可能である。
粘性式クラッチを使用する方法は、作動室からアキュムレータへと、径方向内方に向けて剪断流体を送給するステップと、前記アキュムレータから、封止構造を有するリザーバに剪断流体を移動させるステップと、前記粘性式クラッチの軸線の周りに少なくとも540°の角度範囲で周回する湾曲形状を有したリザーバ通路に沿って、前記アキュムレータから剪断流体の全てを移動させるステップと、前記リザーバから前記作動室に剪断流体を供給するステップと、前記粘性式クラッチを静止させてアイドル状態とするステップとを備え、前記アイドル状態において、剪断流体の一部が、前記アキュムレータと前記リザーバ通路の上流部分との双方に保持されることにより、前記リザーバから前記作動室への剪断流体の移動が抑制されるようにすることが可能である。
直前の段落に述べた方法は、以下に示す特徴、構成、及び付加的ステップのうちの少なくともいずれか1つを、付加または置き換えにより選択的に備えることが可能であり、
剪断流体は、周方向の単一の位置において、前記アキュムレータから前記リザーバへと径方向に移動可能である。
粘性式クラッチは、入力部材と、出力部材と、前記入力部材と前記出力部材との間に形成される作動室と、流体回路によって前記作動室に連通し、剪断流体の供給を行うリザーバと、前記流体回路に沿って前記リザーバから前記作動室へと剪断流体が通過する流出孔と、前記作動室から送り出された剪断流体を、前記流体回路に沿って戻す戻し通路と、弧状部を有し、前記リザーバ内に位置して、前記リザーバの第1部分を前記リザーバの第2部分から分離する第1壁と、弧状部を有し、前記リザーバ内において前記第1壁に径方向に隣り合って設けられ、前記リザーバの前記第1部分及び前記第2部分から第3部分を分離する第2壁とを備えることが可能である。
直前の段落に述べた粘性式クラッチは、以下に示す特徴、構成、及び付加的部材のうちの少なくともいずれか1つを、付加または置き換えにより選択的に備えることが可能であり、
前記リザーバは、前記流体回路に沿った前記リザーバへの流入部となる流入孔を有することが可能であって、前記流入孔と前記流出孔とは、周方向における共通位置に並んで配置される。
粘性式クラッチは、入力部材と、出力部材と、前記入力部材と前記出力部材との間に形成される作動室と、流体回路によって前記作動室に連通し、剪断流体の供給を行うリザーバと、前記流体回路に沿って前記リザーバから前記作動室へと剪断流体が通過する流出部と、前記作動室から送り出された剪断流体を、前記流体回路に沿って戻す戻し通路と、弧状部、前記リザーバにおいて周方向に延在する第1境界に対し、前記弧状部を径方向に接続する第1端突設部、及び前記リザーバにおいて周方向に延在する第2境界に対し、前記弧状部を径方向に接続する第2端突設部を有する第1壁とを備え、前記第2端突設部は、前記弧状部に関し、前記第1突設部とは反対側に配置され、前記第1壁は、前記リザーバ内に位置して、前記リザーバの第1部分を前記リザーバの第2部分から分離することが可能である。
直前の段落に述べた粘性式クラッチは、以下に示す特徴、構成、及び付加的部材のうちの少なくともいずれか1つを、付加または置き換えにより選択的に備えることが可能であり、
前記リザーバにおいて周方向に延在する前記第1境界は、外側境界であることが可能であり、前記リザーバにおいて周方向に延在する前記第2境界は、内側境界であることが可能であり、
前記第1壁の前記弧状部は、前記粘性式クラッチの軸線の周りに、540°以上の角度範囲βにわたって延設することが可能であり、
前記第1端突設部は、前記弧状部から径方向内方に突設されて丸みを帯びた屈曲部により前記弧状部に接続される実質的に平坦な部分を備えることが可能であり、
前記第1端突設部は、周方向に向けて凸状となる形状を有することが可能であり、
前記第1壁の前記弧状部の少なくとも一部は、螺旋形状を有することが可能であり、
前記第1壁の前記弧状部は、前記リザーバの流出孔の近傍に位置する下流側端部に、円形部分を有することが可能であり、前記弧状部の前記螺旋形状の部分は、前記円形部分の上流側に配置することが可能であり、
前記流体回路は、前記リザーバを通るリザーバ通路を含むことが可能であり、前記リザーバの断面積は、前記リザーバ通路に沿って変化することが可能であり、或いは
前記リザーバの断面積は、前記リザーバを通る前記リザーバ通路の上流側端部及び下流側端部に比べ、前記リザーバを通る前記リザーバ通路の中間部分の方が大きくなっていることが可能である。
粘性式クラッチは、入力部材と、出力部材と、前記入力部材と前記出力部材との間に形成される作動室と、流体回路によって前記作動室に連通し、剪断流体の供給を行うリザーバと、前記流体回路に沿って、前記リザーバから前記作動室へと剪断流体が通過する流出孔と、前記作動室から送り出された剪断流体を、前記流体回路に沿って戻す戻し通路と、弧状部を有し、前記リザーバ内に位置して、前記リザーバの第1部分を前記リザーバの第2部分から分離する第1壁と、弧状部を有し、前記リザーバ内において前記第1壁に径方向に隣り合って設けられ、前記リザーバの前記第1部分及び前記第2部分から第3部分を分離する第2壁とを備えることが可能である。
直前の段落に述べた粘性式クラッチは、以下に示す特徴、構成、及び付加的部材のうちの少なくともいずれか1つを、付加または置き換えにより選択的に備えることが可能であり、
前記リザーバは、前記流体回路に沿った前記リザーバへの流入部となる流入孔を有することが可能であって、前記流入孔と前記流出孔とは、周方向における共通位置に並んで配置され、
前記第1壁及び前記第2壁のそれぞれは、開放された端部を有することが可能であり、前記第1壁の前記開放された端部と、前記第2壁の前記開放された端部とは、前記周方向における共通位置に関し、互いに反対となる側に位置することが可能であり、
前記第1壁の前記弧状部は、前記粘性式クラッチの軸線の周りに、330°以上の角度範囲βにわたって延設することが可能であり、前記第2壁の前記弧状部は、前記粘性式クラッチの軸線の周りに、330°以上の角度範囲βにわたって延設することが可能であり、
前記第1壁は、前記リザーバにおいて周方向に延在する第1境界に対し、前記第1壁の前記弧状部を径方向に接続する第1端突設部を更に備えることが可能であり、前記第2壁は、前記リザーバにおいて周方向に延在する第2境界に対し、前記第2壁の前記弧状部を径方向に接続する第2端突設部を更に備えることが可能であり、
前記リザーバにおいて周方向に延在する前記第1境界は、外側境界であることが可能であり、前記リザーバにおいて周方向に延在する前記第2境界は、内側境界であることが可能であり、
前記第1壁は、前記第2壁よりも前記外側境界に近く配置することが可能であり、或いは
前記第1端突設部は、前記第1壁の前記弧状部から径方向内方に突設されて丸みを帯びた屈曲部により前記第1壁の前記弧状部に接続される実質的に平坦な部分を備えることが可能である。
粘性式クラッチは、入力部材と、出力部材と、前記入力部材と前記出力部材との間に形成される作動室と、流体回路によって前記作動室に連通し、剪断流体の供給を行うリザーバと、前記流体回路に沿って、前記リザーバから前記作動室へと剪断流体が通過する流出部と、前記作動室から送り出された剪断流体を、前記流体回路に沿って戻す戻し通路と、前記リザーバより径方向内方に配置され、共通の周方向壁によって前記リザーバから隔てられるアキュムレータと、前記共通の周方向壁を径方向に貫通して前記アキュムレータと前記リザーバとを連通する単一の孔とを備えることが可能である。
直前の段落に述べた粘性式クラッチは、以下に示す特徴、構成、及び付加的部材のうちの少なくともいずれか1つを、付加または置き換えにより選択的に備えることが可能であり、
前記アキュムレータ及び前記リザーバは、軸線方向における共通位置に並んで配置することが可能であり、或いは
前記リザーバ及び前記アキュムレータは、いずれも前記入力部材に相対回転不能に固定されて保持されることにより、常に前記入力部材と一緒に回転可能である。
[総括]
ここで使用する「実質的」、「本質的」、「概ね」、「約」等の相対的な語句または程度の語句は、ここで明確に述べられた適用可能な定義または制限に従うと共に、当該定義または制限を条件として解釈すべきである。全ての例示において、ここで使用する相対的な語句または程度の語句は、関連して開示する実施形態を広く包含すると共に、ここに開示するもの全てを考慮して当業者が理解しうるような、通常の製造誤差範囲、偶発的な位置ずれ、または、温度、回転もしくは振動に関わる作動条件等に起因した一時的な位置もしくは形状の変化等の範囲及び変更を含むものであると解釈すべきである。更に、ここで使用する相対的な語句または程度の語句は、指定される品質、特性、パラメータまたは値が明らかに含まれる範囲を、特定の開示または記載において適正な相対的語句または程度の語句を用いないかのごとく、変更することなしに、包含するものと解釈すべきである。
好ましい実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態を詳細にわたって変更できることは、当業者が認識しうるものである。例えば、開示された1つの実施形態の特徴は、開示された別の実施形態と共に使用することが可能である。

Claims (53)

  1. 入力部材と、
    出力部材と、
    前記入力部材と前記出力部材との間に形成される作動室と、
    流体回路によって前記作動室に連通し、剪断流体の供給を行うリザーバと、
    前記流体回路に沿って前記リザーバから前記作動室へと剪断流体が通過する流出部と、
    前記作動室から送り出された剪断流体を、前記流体回路に沿って戻す戻し通路と、
    前記流体回路において前記リザーバと直列に配置され、前記戻し通路から剪断流体を受け取るアキュムレータと、
    弧状部を有し、前記リザーバ内に位置して、前記リザーバの第1部分を前記リザーバの第2部分から分離する第1壁と
    を備えることを特徴とする粘性式クラッチ。
  2. 前記リザーバは、前記入力部材に保持されることを特徴とする請求項1に記載の粘性式クラッチ。
  3. 前記入力部材は、ハウジングによって構成され、前記出力部材は、ロータディスクによって構成されることを特徴とする請求項1に記載の粘性式クラッチ。
  4. 前記アキュムレータは、軸線方向に向く開口面を有することを特徴とする請求項1に記載の粘性式クラッチ。
  5. 前記リザーバの内側境界から外側境界までの径方向の全長にわたって延設される径方向壁を更に備え、
    前記径方向壁は、前記第1壁から間をあけて設けられ、前記径方向壁を周方向に横切る剪断流体の周方向の移動を妨げるように構成される
    ことを特徴とする請求項1に記載の粘性式クラッチ。
  6. 前記アキュムレータは、前記粘性式クラッチの前記流体回路において、前記戻し通路と前記リザーバとの間で、前記リザーバの上流側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の粘性式クラッチ。
  7. 前記アキュムレータは、前記リザーバより径方向内方に配置されることを特徴とする請求項1に記載の粘性式クラッチ。
  8. 前記アキュムレータは、環状のチャンバとして構成されることを特徴とする請求項1に記載の粘性式クラッチ。
  9. 前記アキュムレータは、周方向の全域にわたって内部を剪断流体が支障なく流動できるように構成されることを特徴とする請求項8に記載の粘性式クラッチ。
  10. 前記リザーバの境界に沿って配置されて、径方向に延設されるリザーバプレートであって、前記流出部が、前記リザーバプレートに設けられた流出孔として構成され、前記流体回路に沿って、前記リザーバから前記作動室へと、剪断流体が前記流出孔を通過するのを許容するリザーバプレートと、
    前記アキュムレータと前記リザーバとの間に設けられた隔壁と、
    前記隔壁に設けられ、前記流体回路に沿って、前記アキュムレータから前記リザーバへと剪断流体が通過するのを許容する中継孔とを更に備え、
    前記中継孔は、前記リザーバプレートに設けられた前記流出孔が向く方向に直角に向けられている
    ことを特徴とする請求項1に記載の粘性式クラッチ。
  11. 前記流体回路に沿って、前記アキュムレータを前記リザーバに接続する中継孔を更に備え、
    前記流出部は、前記リザーバの境界に設けられた流出孔として構成され、
    前記中継孔は、前記流出孔が向く方向に直角に向けられている
    ことを特徴とする請求項1に記載の粘性式クラッチ。
  12. 前記流体回路に沿う剪断流体の流動を調整するように構成されたバルブアセンブリを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の粘性式クラッチ。
  13. 前記第1壁の前記弧状部は、前記粘性式クラッチの軸線の周りに、180°より大きい角度範囲βにわたって延設されることを特徴とする請求項1に記載の粘性式クラッチ。
  14. 前記第1壁の前記弧状部は、前記粘性式クラッチの軸線の周りに、360°より大きい角度範囲βにわたって延設されることを特徴とする請求項1に記載の粘性式クラッチ。
  15. 前記リザーバは、周方向における角度位置が流出孔から180°離間した流入部を有するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の粘性式クラッチ。
  16. 前記流体回路は、少なくとも540°の角度範囲にわたって周回するリザーバ通路を含むことを特徴とする請求項1に記載の粘性式クラッチ。
  17. 前記第1壁は、前記リザーバにおいて周方向に延在する第1境界に対し、前記弧状部を径方向に接続する第1端突設部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の粘性式クラッチ。
  18. 前記第1壁は、前記リザーバにおいて周方向に延在する第2境界に対し、前記弧状部を径方向に接続する第2端突設部を更に備え、
    前記第2端突設部は、前記弧状部に関し、前記第1突設部とは反対側に配置される
    ことを特徴とする請求項17に記載の粘性式クラッチ。
  19. 弧状部を有し、前記リザーバ内において前記第1壁に径方向に隣り合って設けられ、前記リザーバの前記第1部分及び前記第2部分から第3部分を分離する第2壁を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の粘性式クラッチ。
  20. 前記リザーバは、第1孔と第2孔とを有し、
    前記第1孔は、前記流体回路に沿った前記リザーバへの流入部となり、
    前記第2孔は、前記流体回路に沿った前記リザーバからの流出部となり、
    前記第1孔と前記第2孔とは、周方向における共通位置に並んで配置される
    ことを特徴とする請求項19に記載の粘性式クラッチ。
  21. 前記第1壁及び前記第2壁のそれぞれは、開放された端部を有し、
    前記第1壁の前記開放された端部と、前記第2壁の前記開放された端部とは、前記周方向における共通位置に関し、互いに反対となる側に位置する
    ことを特徴とする請求項20に記載の粘性式クラッチ。
  22. 前記第1壁の前記弧状部の少なくとも一部は、螺旋形状を有することを特徴とする請求項1に記載の粘性式クラッチ。
  23. 前記第1壁の前記弧状部は、前記リザーバの流出孔の近傍に位置する下流側端部に、円形部分を有し、
    前記弧状部の前記螺旋形状の部分は、前記円形部分の上流側に配置される
    ことを特徴とする請求項22に記載の粘性式クラッチ。
  24. 前記流体回路は、前記リザーバを通るリザーバ通路を含み、
    前記リザーバの断面積は、前記リザーバ通路に沿って変化する
    ことを特徴とする請求項1に記載の粘性式クラッチ。
  25. 前記リザーバの前記断面積は、前記リザーバ通路の上流側端部及び下流側端部に比べ、前記リザーバ通路の中間部分の方が大きいことを特徴とする請求項24に記載の粘性式クラッチ。
  26. 前記アキュムレータ及び前記リザーバは、軸線方向における共通位置に並んで配置されることを特徴とする請求項1に記載の粘性式クラッチ。
  27. 前記戻し通路の少なくとも一部は、径方向に延設されることを特徴とする請求項1に記載の粘性式クラッチ。
  28. 粘性式クラッチを使用する方法であって、
    作動室からアキュムレータへと、径方向内方に向けて剪断流体を送給するステップと、
    前記アキュムレータから、封止構造を有するリザーバに剪断流体を移動させるステップと、
    前記リザーバ内に設けられた弧状の第1壁により、前記リザーバの第1部分を、前記リザーバの第2部分から分離するステップと、
    前記リザーバから前記作動室に剪断流体を供給するステップと、
    前記粘性式クラッチを静止させてアイドル状態とするステップとを備え、
    前記アイドル状態において、剪断流体の一部が、前記アキュムレータと前記リザーバの前記第1部分との双方に保持されることにより、前記リザーバから前記作動室への剪断流体の移動が抑制される
    ことを特徴とする方法。
  29. 剪断流体は、周方向の単一の位置において、前記アキュムレータから前記リザーバへと径方向に移動することを特徴とする請求項28に記載の方法。
  30. 粘性式クラッチを使用する方法であって、
    作動室からアキュムレータへと、径方向内方に向けて剪断流体を送給するステップと、
    前記アキュムレータから、封止構造を有するリザーバに剪断流体を移動させるステップと、
    前記粘性式クラッチの軸線の周りに少なくとも540°の角度範囲で周回する湾曲形状を有したリザーバ通路に沿って、前記アキュムレータから剪断流体の全てを移動させるステップと、
    前記リザーバから前記作動室に剪断流体を供給するステップと、
    前記粘性式クラッチを静止させてアイドル状態とするステップとを備え、
    前記アイドル状態において、剪断流体の一部が、前記アキュムレータと前記リザーバ通路の上流部分との双方に保持されることにより、前記リザーバから前記作動室への剪断流体の移動が抑制される
    ことを特徴とする方法。
  31. 剪断流体は、周方向の単一の位置において、前記アキュムレータから前記リザーバへと径方向に移動することを特徴とする請求項30に記載の方法。
  32. 入力部材と、
    出力部材と、
    前記入力部材と前記出力部材との間に形成される作動室と、
    流体回路によって前記作動室に連通し、剪断流体の供給を行うリザーバと、
    前記流体回路に沿って前記リザーバから前記作動室へと剪断流体が通過する流出孔と、
    前記作動室から送り出された剪断流体を、前記流体回路に沿って戻す戻し通路と、
    弧状部を有し、前記リザーバ内に位置して、前記リザーバの第1部分を前記リザーバの第2部分から分離する第1壁と、
    弧状部を有し、前記リザーバ内において前記第1壁に径方向に隣り合って設けられ、前記リザーバの前記第1部分及び前記第2部分から第3部分を分離する第2壁と
    を備えることを特徴とする粘性式クラッチ。
  33. 前記リザーバは、前記流体回路に沿った前記リザーバへの流入部となる流入孔を有し、
    前記流入孔と前記流出孔とは、周方向における共通位置に並んで配置される
    ことを特徴とする請求項32に記載の粘性式クラッチ。
  34. 入力部材と、
    出力部材と、
    前記入力部材と前記出力部材との間に形成される作動室と、
    流体回路によって前記作動室に連通し、剪断流体の供給を行うリザーバと、
    前記流体回路に沿って前記リザーバから前記作動室へと剪断流体が通過する流出部と、
    前記作動室から送り出された剪断流体を、前記流体回路に沿って戻す戻し通路と、
    弧状部、前記リザーバにおいて周方向に延在する第1境界に対し、前記弧状部を径方向に接続する第1端突設部、及び前記リザーバにおいて周方向に延在する第2境界に対し、前記弧状部を径方向に接続する第2端突設部を有する第1壁とを備え、
    前記第2端突設部は、前記弧状部に関し、前記第1突設部とは反対側に配置され、
    前記第1壁は、前記リザーバ内に位置して、前記リザーバの第1部分を前記リザーバの第2部分から分離する
    ことを特徴とする粘性式クラッチ。
  35. 前記リザーバにおいて周方向に延在する前記第1境界は、外側境界であり、
    前記リザーバにおいて周方向に延在する前記第2境界は、内側境界である
    ことを特徴とする請求項34に記載の粘性式クラッチ。
  36. 前記第1壁の前記弧状部は、前記粘性式クラッチの軸線の周りに、540°以上の角度範囲βにわたって延設されることを特徴とする請求項34に記載の粘性式クラッチ。
  37. 前記第1端突設部は、前記弧状部から径方向内方に突設されて丸みを帯びた屈曲部により前記弧状部に接続される実質的に平坦な部分を備えることを特徴とする請求項34に記載の粘性式クラッチ。
  38. 前記第1端突設部は、周方向に向けて凸状となる形状を有することを特徴とする請求項34に記載の粘性式クラッチ。
  39. 前記第1壁の前記弧状部の少なくとも一部は、螺旋形状を有することを特徴とする請求項34に記載の粘性式クラッチ。
  40. 前記第1壁の前記弧状部は、前記リザーバの流出孔の近傍に位置する下流側端部に、円形部分を有し、
    前記弧状部の前記螺旋形状の部分は、前記円形部分の上流側に配置される
    ことを特徴とする請求項39に記載の粘性式クラッチ。
  41. 前記流体回路は、前記リザーバを通るリザーバ通路を含み、
    前記リザーバの断面積は、前記リザーバ通路に沿って変化する
    ことを特徴とする請求項34に記載の粘性式クラッチ。
  42. 前記リザーバの断面積は、前記リザーバ通路の上流側端部及び下流側端部に比べ、前記リザーバ通路の中間部分の方が大きいことを特徴とする請求項41に記載の粘性式クラッチ。
  43. 入力部材と、
    出力部材と、
    前記入力部材と前記出力部材との間に形成される作動室と、
    流体回路によって前記作動室に連通し、剪断流体の供給を行うリザーバと、
    前記流体回路に沿って前記リザーバから前記作動室へと剪断流体が通過する流出孔と、
    前記作動室から送り出された剪断流体を、前記流体回路に沿って戻す戻し通路と、
    弧状部を有し、前記リザーバ内に位置して、前記リザーバの第1部分を前記リザーバの第2部分から分離する第1壁と、
    弧状部を有し、前記リザーバ内において前記第1壁に径方向に隣り合って設けられ、前記リザーバの前記第1部分及び前記第2部分から第3部分を分離する第2壁と
    を備えることを特徴とする粘性式クラッチ。
  44. 前記リザーバは、前記流体回路に沿った前記リザーバへの流入部となる流入孔を有し、
    前記流入孔と前記流出孔とは、周方向における共通位置に並んで配置される
    ことを特徴とする請求項43に記載の粘性式クラッチ。
  45. 前記第1壁及び前記第2壁のそれぞれは、開放された端部を有し、
    前記第1壁の前記開放された端部と、前記第2壁の前記開放された端部とは、前記周方向における共通位置に関し、互いに反対となる側に位置する
    ことを特徴とする請求項44に記載の粘性式クラッチ。
  46. 前記第1壁の前記弧状部は、前記粘性式クラッチの軸線の周りに、330°以上の角度範囲βにわたって延設され、
    前記第2壁の前記弧状部は、前記粘性式クラッチの軸線の周りに、330°以上の角度範囲βにわたって延設される
    ことを特徴とする請求項44に記載の粘性式クラッチ。
  47. 前記第1壁は、前記リザーバにおいて周方向に延在する第1境界に対し、前記第1壁の前記弧状部を径方向に接続する第1端突設部を更に備え、
    前記第2壁は、前記リザーバにおいて周方向に延在する第2境界に対し、前記第2壁の前記弧状部を径方向に接続する第2端突設部を更に備える
    ことを特徴とする請求項43に記載の粘性式クラッチ。
  48. 前記リザーバにおいて周方向に延在する前記第1境界は、外側境界であり、
    前記リザーバにおいて周方向に延在する前記第2境界は、内側境界である
    ことを特徴とする請求項47に記載の粘性式クラッチ。
  49. 前記第1壁は、前記第2壁よりも前記外側境界に近く配置されることを特徴とする請求項48に記載の粘性式クラッチ。
  50. 前記第1端突設部は、前記第1壁の前記弧状部から径方向内方に突設されて丸みを帯びた屈曲部により前記第1壁の前記弧状部に接続される実質的に平坦な部分を備えることを特徴とする請求項47に記載の粘性式クラッチ。
  51. 入力部材と、
    出力部材と、
    前記入力部材と前記出力部材との間に形成される作動室と、
    流体回路によって前記作動室に連通し、剪断流体の供給を行うリザーバと、
    前記流体回路に沿って前記リザーバから前記作動室へと剪断流体が通過する流出部と、
    前記作動室から送り出された剪断流体を、前記流体回路に沿って戻す戻し通路と、
    前記リザーバより径方向内方に配置され、共通の周方向壁によって前記リザーバから隔てられるアキュムレータと、
    前記共通の周方向壁を径方向に貫通して前記アキュムレータと前記リザーバとを連通する単一の孔と
    を備えることを特徴とする粘性式クラッチ。
  52. 前記アキュムレータ及び前記リザーバは、軸線方向における共通位置に並んで配置されることを特徴とする請求項51に記載の粘性式クラッチ。
  53. 前記リザーバ及び前記アキュムレータは、いずれも前記入力部材に相対回転不能に固定されて保持されることにより、常に前記入力部材と一緒に回転することを特徴とする請求項51に記載の粘性式クラッチ。
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