JP2018531261A6 - Cpf1を用いた、rnaガイド遺伝子編集方法および組成物 - Google Patents

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Abstract

組成物は、Cpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)ファミリーのエンドヌクレアーゼと、遺伝子中の標的配列に相補的な少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)とを含み、当該少なくとも1つのガイドRNAによって、上記Cpf1のエンドヌクレアーゼをインビトロまたはインビボの宿主細胞内の上記標的部位に特異的に誘導する。被検体を処置する方法は、これらの組成物の1つ以上を使用することを含む。

Description

(連邦政府に後援された研究についての陳述)
本発明は、合衆国政府の支援のもと、国立保健研究所から資金を受けた許可番号R01MH093271、R01NS087971、およびP30MH092177によってなされた。合衆国政府は本発明に対して特定の権利を有しうる。
本発明は、特定の標的部位でDNAを切断して遺伝子編集を可能にする組成物および方法に関する。上記組成物は、Cpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)ファミリーのエンドヌクレアーゼと、DNA中の標的配列に相補的な少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)とを含み、上記Cpf1エンドヌクレアーゼを、標的部位(例えば、宿主細胞ゲノムに組み込まれたHIV‐1プロウイルスDNAと関連する部位)へ導く。
遺伝子編集の分野は大きく進歩してきた。改良された、より正確でより簡単な遺伝子編集方法が、過去十年の間に導入されてきた。主な革新は、CRISPR/Cas9(CRISPR:clustered regularly interspersed short palindromic repeats、Cas9:CRISPR associated protein 9)と呼ばれる遺伝子編集システムの導入であった。CRISPR/Cas9システムはもともと、バクテリオファージウイルスの特徴的なDNA配列を認識し切断するために特定の細菌種が用いる抗ウイルス防御機構として発見された。CRISPR/Cas9システムは、イースト菌、ショウジョウバエ、ゼブラフィッシュ、カエノラブディティス・エレガンス、およびマウスを含む広範囲の生物の遺伝子編集機能を実行するために使われてきた。このシステムは、いくつもの研究所で、ヒトの疾病に関する広範囲にわたるインビボおよびインビトロの研究に多用されてきた(Di Carlo J. E. et al., Nucl Acids Res 41:4336-4346 (2013); Gratz S. J. et al., Genetics 194,1029-1035 (2013); Hwang W. Y. et al., Nature Biotech 31, 227-229, (2013); Yu L. et al., OncoTargets Ther 8, 37-44 (2015); Hu W. et al., Proc Natl Acad Sci USA 111, 11461-11466 (2014))。
CRISPR/Cas9システムでは、遺伝子編集複合体が集められる。各複合体は、Cas9ヌクレアーゼと、標的DNAの標的配列に相補的なガイドRNA(gRNA)とを含む。gRNAはCas9ヌクレアーゼを導いて、上記標的配列またはその近傍で上記標的DNAと結合し切断させる。上述の切断により、二本鎖の平滑な切断点が生じ、さらなる介入がないならば、当該切断点が修復酵素をトリガして、切断部位またはその近傍でDNA配列を再結合させるか置換させる。これらの修復は通常、欠陥があり、標的DNAに1つ以上の変異(ヌクレオチドの置換、挿入、欠失など)が生じる。多数の標的部位が同時に切断された場合はとりわけ、上記変異は、DNAの長いストレッチの切除を含み得る。DNAの望ましいストレッチのコピーが編集プロセス中に導入されると、それらは相同組み換え修復(HDR)として知られるプロセスによって切断部位に接合され得る(Sander J.D. and Joung L.K., Nature Biotech 32, 347-355 (2014))。
最近、CRISPR/Cas9システムが改良されて、ヒトゲノムに組み込まれたレトロウイルスの標的配列を認識し切断することが可能になった。HIV‐1プロウイルスゲノムは主要な標的である。HIV‐1プロウイルスゲノムが宿主T細胞に組み込まれることは、活性化によりAIDSの症状をトリガし得る潜伏感染を意味するからである。HIV‐1の長い末端反復(LTR)配列内に位置するDNA配列を認識するgRNAが開発されてきた。これらのRNAをCRISPR/Cas9システムで用いることで、組み込みHIV‐1配列が不活性化され、多くの場合、ヒトT細胞、ミクログリア細胞、および単球細胞内で完全に根絶された。LTR中の異なる部位をそれぞれ標的とする少なくとも2つのgRNAが用いられた場合に、切除はもっとも効果的になされた。CRISPR/Cas9要素を安定して発現することで、ヒトT細胞におけるさらなる感染に対する抵抗力が与えられた(Hu W. et al., Proc Natl Acad Sci USA 111, 11461-11466 (2014); Khalili et al., 2015, International Patent Application No. WO2015/031775 to Khalili, et al.)ヒト神経向性JCウイルス(JCV)を不活性化するためのCRISPR/Casシステムも開発されてきた。このヒトポリオーマ・ウイルスは神経系の細胞に感染し、致命的な脱髄疾患を引き起こす(Wollebo H. S. et al., Ann. Neurol. 77:560-570 (2015))。
CRISPR/Cas9システムは、他にも多くの用途がある。例えば、CRISPR/Cas9を用いることで、動物モデルにおいて少なくとも1つのヒト遺伝病が治癒された。遺伝性チロシン血症I型(HTI)は、タンパク質の代謝に不可欠な酵素であるフマリルアセト酢酸ヒドラーゼ(FAH)の点変異によって引き起こされる致命的な遺伝病である。単一のNTの点変異がこの疾病を引き起こす。上記の変異を含むDNAのストレッチに隣接する二本鎖の切断を引き起こすためのgRNAが設計された。上記のgRNAとCas9を、正常なFAH遺伝子の同じストレッチをコードする199ヌクレオチド一本鎖ドナーDNAとともに、マウスに注射した。ドナーDNAはうまく接合されて、相同組み換え修復(HDR)プロセスにより、変異DNAと置き換わった。マウスの肝臓細胞はその正常な機能を取り戻し、当該マウスのHTIは治癒された(Yin H. et al., Nature Biotech 32, 551-554 (2014))。
他の例では、CRISPR/Cas9システムを用いて、ゲノム中の特定の標的部位に、検出可能な標識(例えば蛍光標識)を付けることができる。この用途は、標的部位(例えばHIVプロウイルス結合部位やレトロトランスポゾン)の蛍光画像を撮るのに有益である。上記用途はまた、全ゲノムシーケンシング技術(例えばIRYS(登録商標)単一分子DNAマッピングシステムを用いる技術)用に、多数のDNAモチーフに印を付けるのにも有益である。これらの標識システムでは、触媒欠損Cas9を用いる。触媒欠損Cas9は、gRNAと複合体を形成し、標的部位に結合することができるが、当該部位のDNAを切断することはできない。触媒欠損Cas9は、蛍光タンパク質(例えば、伸長緑色蛍光タンパク質(EGFP)および/または赤色蛍光タンパク質)でしばしば標識される。Cas9/gRNA複合体が標的部位を特定し、当該部位に蛍光標識を付ける。
残念ながら、CRISPR/Cas9システムには、その可能性を制限する欠点がいくつかある。これらの欠点の多くは、上記システムの大半で用いられる化膿レンサ球菌のCas9エンドヌクレアーゼに固有なものである。このCas9エンドヌクレアーゼは、PAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)と呼ばれる短鎖天然配列に隣接する標的DNA配列のみに結合し、切断することができる。一般に、PAMはトリヌクレオチドNGGを含む。したがって、CRISPR/Cas9システムの使用は、NGG PAMに隣接する標的配列に限定される。
さらに、Cas9は、二本鎖DNAの両方の鎖で同じ部位を切断し、「平滑末端」を有する切断点を作る。平滑末端は、所望のDNA配列を切断部位に正確に挿入するのには好ましくない。それぞれの鎖に「突出」を残す段違いの切断の方が好ましい。
Cas9の他の短所は、サイズが比較的大きいことであり、このため、生存細胞の核内に入り込むのが難しい。最後に、CRISPR/Cas9システムは、従来技術のシステムよりずっと単純で使いやすいけれども、それでもまだ複雑である。gRNAは実際には、2つの小さなRNAの二本鎖からできている。成熟CRISPR RNA(crRNA)とトランス活性化小RNA(tracrRNA)である。
DNA標的部位とし得る範囲を広げる遺伝子編集システムが強く求められている。特に、所望の遺伝子を挿入するのにCRISPR/Cas9システムよりも好ましく、CRISPR/Cas9システムが提供するよりも小さく単純な遺伝子編集複合体を提供する遺伝子編集システムが求められている。
本発明は、宿主細胞のゲノム中の標的遺伝子の不活性化に用いられる組成物を提供する。上記組成物は、Cpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)エンドヌクレアーゼをコードする単離核酸配列と、上記標的遺伝子中の標的DNA配列と相補的である少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)と、を含む。上記gRNAは、上記Cpf1エンドヌクレアーゼを上記標的DNA配列へ導く。それによってDNA中に生じた二本鎖切断が、上記標的遺伝子を含むDNAのストレッチの点変異、挿入、欠失、または完全な切除を生じさせて、上記標的遺伝子を不活性化する。本発明はまた、これらの組成物を用いて標的遺伝子を不活性化する方法も提供する。
本発明はさらに、宿主細胞のゲノム中に組み込まれたウイルスDNAの不活性化に用いられる組成物を提供する。上記組成物は、Cpf1エンドヌクレアーゼをコードする単離核酸配列と、プロウイルスDNA中の標的DNA配列と相補的である少なくとも1つのガイドgRNAと、を含む。いくつかの実施形態では、上記標的配列は、HIV、例えばHIV−1プロウイルスDNAの長い末端反復(LTR)中にある。本発明はさらに、これらの組成物を用いて組み込まれたプロウイルスを不活性化する方法も提供する。
本発明はまた、宿主細胞のゲノム中の標的遺伝子の不活性化に用いられる発現ベクターを提供する。上記ベクターは、少なくとも1つのCpf1エンドヌクレアーゼの発現と、上記標的遺伝子中の標的配列と相補的である少なくとも1つのgRNAの発現とを誘導する。好ましいベクターは、レンチウイルス発現ベクターである。
本発明はさらに、ウイルス感染のリスクがある患者の宿主細胞のウイルス感染を防ぐ方法を提供する。上記方法は、Cpf1エンドヌクレアーゼと、ウイルスゲノム中の標的配列に相補的である少なくとも1つのgRNAとを、上記宿主細胞内に安定して発現させる工程を含む。ウイルス感染の一例はHIV‐1感染である。
本発明はさらに、哺乳類の被検体の細胞内のプロウイルスを不活性化する薬学的組成物を提供する。上記組成物は、Cpf1エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列と、プロウイルスDNA中の標的配列と相補的である少なくとも1つのgRNAと、を含む。上記単離核酸配列は、少なくとも1つの発現ベクターに含まれる。本発明はまた、これらの薬学的組成物を用いて宿主細胞中のプロウイルスを不活性化する方法も提供する。
本発明はさらに、細胞内の遺伝病を直す方法を提供する。上記方法は、DNAが病原性変異DNA配列を含む任意の細胞に適用できる。これらの方法において、細胞は、病原性変異DNA配列に隣接する標的部位に相補的な少なくとも1つのgRNAに暴露される。上記gRNAはCpf1エンドヌクレアーゼを導いて、標的部位に隣接する二本鎖切断を生じさせる。細胞はそれから、病原性変異DNA配列に対応する野生型DNA配列を含む一本鎖ドナーオリゴヌクレオチドに暴露される。変異DNA配列は、野生型DNA配列と置換され、遺伝病が直される。
本発明はさらに、診断およびゲノム解析の目的で、検出可能な標識(例えば蛍光標識)を用いて特定のDNA配列を検出する方法を提供する。上記方法は、DNA中の標的部位に、ニッカーゼ活性を有するCpf1変異体を用いてニックを入れる工程と、標識ヌクレオチドを、上記ニックを入れられた部位に組み込む工程と、を含む。
本発明はまた、診断およびゲノム解析の目的で、特定のDNA配列を検出する組成物を提供する。上記組成物は触媒欠損Cpf1を含み、当該触媒欠損Cpf1は、gRNAによって特定のDNA配列に導かれることができるが、当該配列において当該DNAを切断することはできない。上記触媒欠損Cpf1は、例えば蛍光タグによって標識化されており、その結果、上記特定のDNA配列は標識化される。
CRISPR/Cpf1システムを含む本発明の組成物すべては、当然ながら、CRISPR/Cas9システムと組み合わせることができ、それによって、Cpf1エンドヌクレアーゼとCas9エンドヌクレアーゼの両方の利点を得ることができる。
本発明の1つ以上の実施形態を、添付の図面および以下の記載で詳述する。本発明の他の特徴、目的、および利点は、以下の記載、図面、および請求項から明らかになるであろう。
本発明の1つ以上の実施形態を、添付の図面および以下の記載で詳述する。本発明の他の特徴、目的、および利点は、以下の記載、図面、および請求項から明らかになるであろう。
標的DNA配列に作用するCpf1/gRNA複合体の図を示す。
本発明は、Cas9以外のエンドヌクレアーゼを用いる細菌性CRISPRシステムの発見、および、それらのヌクレアーゼのいくつかは、CRISPRシステムにおいて、Cas9の代替物、場合によってはCas9より優れた代替物として機能しうるという発見に、部分的に基づくものである。特に可能性があるのは、エンドヌクレアーゼファミリーの一種であるCpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)(Zetsche, et al., 2015)である。これまで、2種のCpf1エンドヌクレアーゼ、Acidaminococcus sp. BV3L6 Cpf1とLachnospiraceae bacterium ND2006 Cpf1が、培養されたヒト腎臓細胞システムでの遺伝子編集に効果的であることがわかっている。gRNA/Cpf1複合体の概略図を図1に示す。
〔定義〕
他に定義しない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。本発明を試験するための実施において、本明細書に記載のものと類似または同様の、任意の方法および材料を使用することができる。しかし、本明細書に記載の材料および方法を使用することが好ましい。本発明を説明および請求するにあたり、下記の用語を使用する。
本明細書において使用する用語は、特定の実施形態を説明するという目的でのみ使用され、限定する意図は無いということも理解されたい。
本明細書に記載の全ての遺伝子、遺伝子の名称、および遺伝子産物は、本明細書に記載の組成物および方法が適用可能な任意の種に由来する相同体に対応することが、意図される。特定の種に由来する遺伝子または遺伝子産物が開示される場合、本開示はただの例示を意図しているに過ぎず、文脈から明示されていると取れる場合を除き、限定と解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、例えば、本明細書に記載の遺伝子または遺伝子産物に関しては、他の種に由来する、相同および/またはオーソロガス(orthologues)な遺伝子および遺伝子産物を包含することを意図している。
本明細書にて使用される冠詞「a」および「an」は、当該冠詞の文法的目的語が1つまたは1つより多い(つまり、少なくとも1つである)ことを示す。例として、「an element(要素)」は1つの要素または1つより多い要素を意味する。したがって、「a cell(細胞)」という記載は、例えば、同じ種類の複数の細胞を含む。また、用語「含んでいる(including)」、「含む(includes)」、「有している(having)」、「有する(has)」、「共に(with)」、またはそれらの異形が、詳細な説明および/または請求項にて使用される範囲において、そのような用語は、「備えている(comprising)」という用語と同様に、包括的であることを意図している。
本明細書に使用されるとき、用語「備えている(comprising)」または「備える(comprise)」または「備えられた(comprised)」およびそれらの変形は、関連する事項、組成、装置、方法、プロセス、システム、などの定義または記載された要素が、包括的またはオープンエンドであることを意味する。これらには追加の要素も認められるので、定義されたまたは記載された事項、組成、装置、方法、プロセス、システム、などは、その特定された要素(または、適宜、その同等物)を含み、他の要素が含まれてもよいことを示す。また、他の要素が含まれても、依然として、定義された事項、組成、装置、方法、プロセス、システム、などの範囲/定義にも該当することを示す。
本明細書において、測定可能な値(量や時間の長さなど)を指して使用される「約」は、特定された値の+/−20%、+/−10%、+/−5%、+/−1%、または+/−0.1%の変動を包含することを意味する。これにより、変動値が、本開示の方法を実施するために適当であることを意味する。または、特に生物学的システムまたはプロセスにおいて、当該用語は、5倍以内のオーダー、および2倍以内のオーダーの値も意味し得る。本願および請求項にて特定の値が記載されている場合、特に断りのない限り、用語「約」は、特定の値にとって許容できる誤差の範囲以内であることを意味するものとする。
本明細書で用いられる用語「抗ウイルス剤」は、ウイルスの処置に用いられる任意の分子を指し、当該ウイルスと関連する任意の症状を緩和する剤、例えば、抗発熱剤、抗炎症剤、化学療法剤、抗発熱剤、抗炎症剤、抗真菌剤、駆虫剤、化学療法剤、抗生物質、免疫調整剤などを含む。抗ウイルス剤としては、抗体、アプタマー、アジュバント、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ケモカイン、サイトカイン、免疫促進剤、免疫調整剤、B細胞調整剤、T細胞調整剤、NK細胞調整剤、抗原提示細胞調整剤、酵素、siRNA、リバビリン、リボザイム、プロテアーゼ阻害剤、ヘリカーゼ阻害剤、ポリメラーゼ阻害剤、ヘリカーゼ阻害剤、ノイラミニダーゼ阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、プリンヌクレオシド、ケモカイン受容体拮抗薬、インターロイキン、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。免疫調整剤としては、サイトカイン、リンフォカイン、T細胞共刺激リガンド、ケモカイン、アジュバントなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で用いられる用語「抗体」は、ウイルス(例えばHIV)に結合し、免疫媒介による当該ウイルスの破壊および一掃を助ける1つ以上のウイルス特異的結合領域を含む。抗体またはその断片は、IgA、IgM、IgG、IgE、IgD、またはそれらの組み合わせを含む。
本明細書に使用されるとき、ウイルス、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)の「根絶」という用語は、当該ウイルスが複製できず、ゲノムが欠失し、断片化され、劣化し、遺伝子的に不活性化され、又は、当該ウイルスから遺伝性を失わせあるいは当該ウイルスが他の任意の細胞又は対象に感染するのを妨げる他の任意の物理的、生物学的、化学的、又は構造的発現が生じ、その結果、当該ウイルスがインビボで一掃されることを意味する。場合によっては、ウイルスゲノムの断片が検出されるかもしれないが、当該ウイルスは複製又は感染などができない。
本明細書に使用されるとき、「有効量、有効な量(effective amount)」は、治療的または予防的に利益を提供する量を意味する。
「コードしている」とは、ポリヌクレオチド(遺伝子、cDNA、またはmRNAなど)におけるヌクレオチドの特異的配列に固有の性質を指す。上記性質とは、(i)ヌクレオチドの定義された配列(つまり、rRNA、tRNA、およびmRNA)またはアミノ酸の定義された配列のいずれかを有する生物学的プロセスにおいて、他の重合体および高分子の合成用テンプレートとして機能すること、ならびに、(ii)これに起因する生物学的性質、である。したがって、遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が、細胞または他の生物学的システム中でタンパク質を産生する場合には、当該遺伝子はタンパク質をコードしていると言える。コーディング鎖(自身のヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通例配列表に記載されている)、および非コーディング鎖(遺伝子またはcDNAの転写用テンプレートとして用いられる)の両方が、その遺伝子またはcDNAの、タンパク質または他の産物をコードしている、と言うことができる。
用語「外来性」は、核酸またはポリペプチドが組み換え核酸コンストラクトの一部であるか、もしくは組み換え核酸コンストラクトにコードされていること、または、核酸またはポリペプチドがその自然環境にはないことを指す。例えば、外来性の核酸とは、ある種から別の種へ導入される配列(つまり、異種核酸)であり得る。典型的には、そのような外来性の核酸は、組み換え核酸コンストラクトを介して別の種へと導入される。外来性の核酸は、ある生物に固有の配列であって、その生物の細胞に再導入された配列であってもよい。外来性の核酸と結合した非天然配列(例えば、組み換え核酸コンストラクトにおいて、ネイティブ配列に隣接する非ネイティブ制御配列)の存在により、ネイティブ配列を含む外来性の核酸は、しばしば天然に存在する配列と区別されることがある。さらに、安定して形質転換された外来性の核酸は、一般的に、ネイティブ配列の位置とは別の位置に組み込まれる。
用語「発現」は、本明細書に使用されるとき、特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳(そのプロモーターによって駆動される)、として定義される。
「発現ベクター」とは、組み換えポリヌクレオチド(発現すべきヌクレオチド配列と操作的に結合している、発現調節配列を有する)を含むベクターを指す。発現ベクターは、発現のための十分なシス作用要素を含む。発現のための他の要素は、宿主細胞によって供給されてもよいし、または、インビトロ発現システム中に存在してもよい。発現ベクターは当該技術分野で知られているあらゆるものを含む。その例としては、組み換えポリヌクレオチドが組み込まれた、コスミド、プラスミド(例えば、そのままの、またはリポソームに格納された)、およびウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)などが挙げられる。
用語「免疫調製」、「免疫細胞調整剤」または「免疫調整剤」は、免疫原性(すなわち、免疫反応を刺激または増加させる)または免疫抑制性(すなわち、免疫反応を減少させるまたは抑制する)化合物、組成物、または物質を意図する。「免疫システムの細胞」または「免疫細胞」は、免疫反応の増大を検出し得るか、あるいは、免疫反応の増大に関連し得る、免疫システムの任意の細胞を含むことを意図する。例として、Bリンパ球(B細胞とも呼ばれる)、Tリンパ球(T細胞とも呼ばれる)、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NK)細胞、リンフォカイン活性化キラー(LAK)細胞、単核白血球、マクロファージ、好中球、顆粒球、肥満細胞、血小板、ランゲルハンス細胞、幹細胞、樹状細胞、末梢血単核球細胞、腫瘍浸潤(TIL)細胞、遺伝子改変免疫細胞(ハイブリドーマを含む)、薬剤改変免疫細胞、および、上記の細胞型の誘導体、前駆体、または原種が挙げられるが、これらに限定されない。抗原への機能または応答は、任意の種類の検定法(例えば、RIA、ELISA、FACS、ウェスタンブロッティングなど)にて測定できる。
用語「免疫反応を誘導または高める」は、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が投与されていないコントロールサンプルに比べて、免疫反応を統計的に測定可能なほど誘導または増強することを意図する。その反対に、免疫反応の「抑制」は、えば、自己免疫シナリオにおいて、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が投与されたコントロールサンプルに比べて、免疫反応を測定可能なほど減少させることである。免疫反応の誘導または増強は、被検体における予防反応または治療反応をもたらすことが好ましい。免疫反応の例としては、I型IFNの産生の増加、代わりの病原体によるウイルスまたは他の型の感染に対する抵抗力の増加が挙げられる。ウイルスに対する免疫反応(抗ウイルス反応)の増強、またはウイルス感染を防ぐもしくは現存のウイルスを除去するワクチンの開発。
「単離された」とは、天然状態から変化したか、または取り去られたことを意味する。例えば、動物の生体中に天然に存在する核酸またはペプチドは「単離されて」いないが、その天然状態の共在物質から部分的または完全に分離した同じ核酸またはペプチドは、「単離されて」いる。単離核酸または単離タンパク質は、実質的に純化された形態で存在してもよく、または、天然状態でない環境(例えば宿主細胞など)に存在してもよい。
「単離核酸」は、自然発生状態において隣接する配列から単離した、核酸セグメントまたはフラグメントを指す。つまり、通常ならば上記フラグメントが隣接している配列(つまり、上記フラグメントが自然発生するゲノムにおいて、当該フラグメントに隣接している配列)から取り除かれた、DNAフラグメントである。当該用語は、通常は核酸を伴う他の成分(つまり、通常は細胞中において核酸を伴う、RNAまたはDNAまたはタンパク質)から実質的に精製された核酸にも適用される。したがって、当該用語は、例えば、(i)ベクターに組み込まれた組み換えDNA、(ii)自律的に複製するプラスミドもしくはウイルスに組み込まれた組み換えDNA、または(iii)原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれた組み換えDNA、または(iv)他の配列から独立した単離分子(つまり、cDNAまたは、PCRもしくは制限酵素消化によって作製されたゲノムフラグメントもしくはcDNAフラグメント)としての組み換えDNA、を含む。また、追加のポリペプチド配列をコードしている、ハイブリッド遺伝子の一部である組み換えDNA;相補的DNA(cDNA);天然および/または修飾されたモノマーまたはリンケージ(デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、その置換形態およびαアノマー形態、ペプチド核酸(PNA)、ロック核酸(LNA)、ホスホロチオアート、およびメチルホスホナートなども含む)の、直鎖状または環状のオリゴマーまたは重合体も含まれる。
核酸配列は「キメラ」であり得る。つまり、異なる領域から構成され得る。本発明の文脈において、「キメラ」化合物は、2つ以上の化学領域(例えば、DNA領域、RNA領域、PNA領域など)を含む、オリゴヌクレオチドである。化学領域のそれぞれは、少なくとも1つのモノマーユニット(つまり、ヌクレオチド)から構成されている。これらの配列は、一般的に少なくとも1つの領域を含み、上記配列は、1つ以上の所望の性質を示すように修飾されている。
用語「標的核酸」配列は、核酸(多くの場合、生体試料に由来する)を指し、オリゴヌクレオチドが特異的にハイブリダイズされるようになっている。標的核酸は、標的に向けられている、対応するオリゴヌクレオチドの核酸配列に相補的な配列を有する。標的核酸という用語は、オリゴヌクレオチドが向けられている、より大きな核酸の特定の配列または配列全体(例えば、遺伝子またはmRNA)を意味し得る。使用される意味の違いは、文脈から明白である。
本発明の文脈において、通常の核酸塩基について、以下の略語が使用される:「A」はアデノシンを意味し、「C」はシトシンを意味し、「G」はグアノシンを意味し、「T」はチミジンを意味し、「U」はウリジンを意味する。
特に指定のない限り、「アミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列」は、互いに縮重したバージョンの関係にあり、同じアミノ酸配列をコードしている、全てのヌクレオチド配列を含む。「タンパク質またはRNAをコードしているヌクレオチド配列」という語は、上記タンパク質をコードしているヌクレオチド配列のいくつかのバージョンがイントロンを含みうる程度に、イントロンを含んでもよい。
免疫原性組成物の「非経口的」投与は、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、または胸骨内(intrasternal)への、注射または注入技術を含む。
「患者」または「個体」または「被検体」という用語は、本明細書中において互換的に用いられ、治療される哺乳類の被検体を意味し、ヒト患者であることが好ましい。場合によっては、本発明の方法は、実験動物、獣医学への応用、および疾患動物モデル(マウス、ラット、ハムスターを含む齧歯類、および霊長類が挙げられるが、これらに限定されない)の開発に供される。
「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は互換的に使用され、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸残基からなる化合物を意味する。タンパク質またはペプチドは少なくとも2つのアミノ酸を必須に含み、タンパク質の配列またはペプチドの配列に含まれ得るアミノ酸の最大数は限定されない。ポリペプチドは、ペプチド結合によって互いに結合した2つ以上のアミノ酸を有する、任意のペプチドまたはタンパク質を含んでいる。本明細書に使用されるとき、当該用語は、短鎖(本発明の分野において、例えばペプチド、オリゴペプチド、およびオリゴマーを、通常は指す)、および、長鎖(本発明の分野において、多数の種類があるタンパク質を一般的に指す)、の両方を意味する。その中でも「ポリペプチド」は、例えば、生物活性のあるフラグメント、実質的に相同的なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドのバリアント、修飾されたポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質を含む。ポリペプチドは天然ペプチド、組み換えペプチド、合成ペプチド、またはそれらの組み合わせを含む。
用語「パーセント配列同一性」、または、「配列同一性」を有する、は、任意のクエリ配列と対象配列との間の、同一性の程度を意味する。
「薬学的に許容できる」(または「薬理学的に許容できる」)という用語は、動物またはヒトに適宜投与されたときに、有害反応、アレルギー性反応、または他の不都合な反応を起こさない、分子的実体および組成物を意味する。本明細書に使用されるとき、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的に許容できる物質の媒体として使用され得る、溶媒、分散媒、被膜、抗菌剤、等張性薬剤、および吸収遅延剤、緩衝液、賦形剤、結合剤、潤滑剤、ゲル、界面活性剤、などの全てを含む。
用語「ポリヌクレオチド」はヌクレオチドの鎖を指し、「核酸」としても知られている。本明細書において使用する場合、ポリヌクレオチドは、本分野において利用可能な任意の手段によって得られる全ての核酸配列を含み、天然核酸および合成核酸の両方を含むが、これらに限定されない。
「トランスフェクション」または「形質転換」または「形質導入」という用語は、外来性の核酸が、宿主細胞に移動または導入されるプロセスを意味する。「トランスフェクション」細胞または「形質転換」細胞または「形質導入」細胞とは、外来性の核酸と共にト
ランスフェクション、形質転換、または形質導入された細胞である。トランスフェクション細胞/形質転換細胞/形質導入細胞は、一次被検体細胞およびその子孫を含む。
病気を「処置する」とは、本明細書で用いられる場合、被検体が経験する病気または異常の少なくとも1つのサインまたは症状の頻度または重症度を減らすことを意味する。
「ベクター」とは、単離核酸を含む物質の組成物であり、細胞の内部に単離核酸を送達するのに使用することができる。ベクターの例としては、線状ポリヌクレオチド、イオン性化合物または両親媒性化合物と会合したポリヌクレオチド、プラスミド、およびウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、用語「ベクター」は、自律的に複製するプラスミドまたはウイルスを含む。当該用語は、核酸の細胞への移動を促進する、非プラスミド化合物および非ウイルス性化合物(例えば、ポリリシン化合物およびリポソームなど)を含むとも解釈される。ウイルスベクターの例としては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、などが含まれるが、これらに限定されない。
任意のアミノ酸配列について、スイスプロットまたはGENBANK寄託番号によって具体的に言及する場合、当該配列は参照によって本開示に援用される。シグナルペプチドの特定、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、プロモーター配列、および翻訳開始点などの寄託番号に関連する情報も、参照により全て本開示に援用される。
範囲:本開示を通して、本発明の様々な様態を、範囲の形式で示すことができる。範囲の型式による記載は、単に便宜および簡潔さのためのものであることを理解されたい。また、このような記載は、本発明の範囲における変更できない限定と解釈されるべきではない。したがって、範囲の記載は、その範囲内の個々の数値だけでなく、具体的に開示された全ての取り得る部分範囲も含むと考えられるべきである。例えば、「1から6」という範囲の記載は、その範囲内の個々の数値(例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6)だけでなく、具体的に開示された部分範囲(1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6など)も含むと考えられるべきである。このことは、範囲の広さを問わず適用される。
〔細胞または被検体中のレトロウイルスを根絶する組成物〕
本発明の実施形態は、エンドヌクレアーゼと、少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)配列であって、標的遺伝子中の標的核酸配列に相補的であるガイドRNAと、を含む組成物に関する。いくつかの実施形態では、本明細書で開示した組成物は、エンドヌクレアーゼ(例えばCas9)をコードする核酸を含む。ある実施形態では、上記組成物は、Cpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)エンドヌクレアーゼをコードする単離核酸配列と、標的遺伝子中の標的DNA配列に相補的な少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)と、を含む。上記gRNAが、上記Cpf1エンドヌクレアーゼを上記標的DNA配列へ導く。それによって生じたDNA中の二本鎖切断が、上記標的遺伝子を含むDNAのストレッチの点変異、挿入、欠失、または完全な切除を生じさせることにより、上記標的遺伝子を不活性化する。
他の実施形態では、使用可能なヌクレアーゼシステムとして、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性化様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、または、宿主の遺伝物質の通常の機能に干渉することなくウイルス核酸を分解またはウイルス核酸に干渉するのに用いうる他の任意のシステムが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明はまた、これらの組成物を用いて標的遺伝子を不活性化し宿主のウイルス感染を根絶する方法も提供する。本発明の方法を用いて、宿主の遺伝物質の全体性に干渉することなく、宿主の組織からウイルス遺伝物質または他の外来の遺伝物質を取り除いてよい。ウイルス核酸を標的としてヌクレアーゼを用い、それによってウイルスの複製または転写に干渉してもよく、あるいは宿主ゲノムからウイルス遺伝物質を切除してもよい。ウイルス核酸が細胞内に粒子として存在する場合でも、宿主ゲノムに組み込まれている場合でも、ヌクレアーゼは宿主の物質には作用することなくウイルス核酸のみを除去するよう特異的に標的化してもよい。任意の形態またはウイルスのライフサイクル中の任意の段階のウイルス核酸を標的として、上記組成物を用いてよい。標的としたウイルス核酸は、宿主細胞中に独立した粒子として存在してよい。好ましい実施形態では、ウイルス感染は潜伏性でありウイルス核酸は宿主ゲノムに組み込まれている。任意の適切なウイルス核酸を、切断および消化の標的としてよい。
(遺伝子編集剤)
本発明の組成物は少なくとも1つの遺伝子編集剤を含み、当該少なくとも1つの遺伝子編集剤にはCRISPR関連ヌクレアーゼ(例えばCas9やCpf1 gRNA)、エンドヌクレアーゼのアルゴノートファミリー、clustered regularly interspaced short palindromic repeat(CRISPR)ヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、他のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼ、またはそれらの組み合わせが含まれる。Schiffer, 2012, J Virol 88(17):8920-8936を参照されたい。当該文献は参照によって本明細書に援用される。
上述したように、アルゴノートはもう1つの有力な遺伝子編集システムである。アルゴノートは、標的を切断するガイドとして5’リン酸化短鎖一本鎖核酸を用いるエンドヌクレアーゼのファミリーである(Swarts, D.C. et al. The evolutionary journey of Argonaute proteins. Nat. Struct. Mol. Biol. 21, 743-753 (2014))。Cas9と同様、アルゴノートは、遺伝子発現抑制および外来の核酸に対する防御に重要な役割を担っている(Swarts, D.C. et al. Nat. Struct. Mol. Biol. 21, 743-753 (2014); Makarova, K.S., et al. Biol. Direct 4, 29 (2009). Molloy, S. Nat. Rev. Microbiol. 11, 743 (2013); Vogel, J. Science 344, 972-973 (2014). Swarts, D.C. et al. Nature 507, 258-261 (2014); Olovnikov, I., et al. Mol. Cell 51, 594-605 (2013))。しかし、アルゴノートは、多くの点でCas9と異なる(Swarts, D.C. et al. The evolutionary journey of Argonaute proteins. Nat. Struct. Mol. Biol. 21, 743-753 (2014))。Cas9が原核生物のみに存在するのに対し、アルゴノートは進化を通して維持され、事実上すべての生物の中に存在する。大半のアルゴノートは一本鎖(ss)RNAと関連しており、RNAのサイレンシングに中心的な役割を果たしているが、アルゴノートの中にはssDNAに結合し標的DNAを切断するものもある(Swarts, D.C. et al. Nature 507, 258-261 (2014); Swarts, D.C. et al. Nucleic Acids Res. 43, 5120-5129 (2015))。ガイドRNAは、Cas9の正確な結合のために3’RNA‐RNAハイブリダイゼーション構造を有する必要があるが、一方、アルゴノートの結合にはガイドの特異的コンセンサス二次構造は必要ではない。Cas9はPAMの上流にある標的のみを切断できるが、アルゴノートは標的に特異的な配列を必要としない。ひとたびアルゴノートとガイドが結合すると、両者はお互いの物理化学的特性に影響を及ぼし、全体としては核酸結合タンパク質により典型的に見られる動的特性をもって働く(Salomon, W.E., et al. Cell 162, 84-95 (2015))。
上記組成物は、C2c2――RNAのみを標的とする最初の天然CRISPRシステムも含みうる。クラスIIタイプVI−A CRISPR‐Casエフェクター「C2c2」は、RNA誘導RNase機能を実証する。レプトトリキア・シャヒイ(Leptotrichia shahii)細菌から得られたC2c2は、RNAファージに対する干渉を提供する。インビトロの生化学的分析により、C2c2は単一のcrRNAによってガイドされ、相補的なプロトスペーサーを有するssRNA標的を切断するようプログラムできることがわかる。細菌中で、C2c2は特定のmRNAをノックダウンするようプログラムできる。切断は、2つのコンセンサスHEPNドメイン(触媒不活性RNA結合タンパク質を生成する変異)中の触媒残留物によって媒介される。これらの結果は、C2c2が新たなRNA標的ツールとなりうることを実証する。C2c2は、細菌細胞中の特定のRNA配列を切断するようプログラムできる。RNAに集中したC2c2の作用は、細胞の個性および機能に関するゲノムの青写真であるDNAを標的とするCRISPR‐Cas9システムを補う。RNA(ゲノムの指示の実行を助ける)だけを標的とする能力は、高い処理能力でRNAを特異的に操作し、遺伝子機能をより広範に操作する能力を提供する。
いくつかの実施形態において、HIVの標的配列に相補的な1つ以上のガイドRNAもコードされていてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、ヒ ト免疫不全ウイルス(HIV)に潜伏感染した宿主細胞のゲノムに組み込まれたプロウイルスDNAの不活性化に用いられる組成物であって、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つの単離核酸配列と、少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)であって、プロウイルスHIVのDNAの長い末端反復(LTR)中の標的配列に相補的なスペーサー配列を含む、少なくとも1つのgRNAと、を含む組成物が提供される。
(Cpf1エンドヌクレアーゼ)
Cas9は、約20塩基対(bp)の特有の標的配列(スペーサーと呼ばれる)を含む成熟crRNAと、前crRNAのリボヌクレアーゼIII介在処理用のガイドとして働くトランス活性化小RNA(tracrRNA)と、によってガイドされる。crRNA:tracrRNA二本鎖は、crRNA上のスペーサーと標的DNA上の相補標的配列(「プロトスペーサー」とも呼ばれる)間の相補塩基対を介して、Cas9を当該標的DNAへ導く。Cas9は、グアニンリッチなトリヌクレオチド(NGG)プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を認識し、切断部位(PAMから3番目のヌクレオチド)を特定する。PAMは、標的配列の3’末端に隣接する。
それに対して、Cpf1はチミンリッチなPAM(コンセンサス配列はTTN)を認識し、当該PAMは標的配列の5’末端に位置する。このため、CRISPR/Cpf1システムは、CRISPR/Cas9システムとは異なる標的の範囲を有し、利用可能な遺伝子編集標的の範囲を広げる。
(Cpf1が媒介した切断は遺伝子編集に好ましい)
上述したように、Cas9は、二本鎖DNAで平滑末端切断を行う。これはエラーが生じ易い修復および遺伝子の不活性化を引き起こすが、DNAの所望のセグメントを切断部位に接合するには好ましくない。それに対して、Cpf1は段違いの切断を行い、各DNA鎖に5つのヌクレオチドの突出を残す。これは、所望のDNAセグメントを、例えば相同組み換え修復によって組み込むために好ましい切断である。さらに、上記切断部位は標的部位の遠位端にあり、標的を特異的に決定するのにもっとも重要な領域であるPAM近傍の「シード」配列から離れている。シード配列が完全な状態に保たれるので、多数回の編集が可能である。
(Cpf1システムはCas9システムより単純かつ小さい)
機能するために、CRISPR/Cas9システムは、2つの置換RNA(スペーサー配列を含むcrRNAと、tracrRNA)の処理および集合を必要とする。crRNAおよびtracrRNAは処理されて、単一の小ガイドRNA(sgRNA)として知られるハイブリッド分子にされてきた。当該単一の小ガイドRNAは、より単純だが依然として大きく複雑なシステムを提供する。それに対して、Cpf1のすべての結合機能および酵素機能は、単一のガイドRNA(gRNAと称する)のみを必要とする。この単純さが、CRISPR/Cpf1システムの設計および使用を容易にする。
Cpf1はまた、Cas9にある2つのヌクレアーゼ領域の1つを欠いている。より小さな分子として、Cpf1は、例えば核孔を通して標的部位に輸送するのがより容易なはずである。
CRISPR/Cpf1システムの利点は、本発明においてさまざまな目的に適用される。
(CRISPR/Cpf1組成物)
本発明は、宿主細胞のゲノム中の標的遺伝子の不活性化に用いられる組成物であって、少なくとも1つのCpf1エンドヌクレアーゼと、少なくとも1つのgRNAであって、上記標的遺伝子中の標的配列と相補的である少なくとも1つのgRNAと、を含む、組成物を含む。gRNAが標的DNA配列と相補的であると記載される場合、当該標的DNA配列と実際に相補的であるのは当該gRNAのスペーサー配列であると理解されたい。
Cpf1の好ましい実施形態は、Acidaminococcus sp. BV3L6 Cpf1および Lachnospiraceae bacterium ND2006に由来するものである。これらのCpf1ファミリーメンバーは徹底的に特徴を調べられ、ヒト腎臓細胞中のDNMT1遺伝子を編集するのにCas9とほぼ同じぐらい効果的であることが判明した(Zetsche B. et al., Cell 163, 1-13 October 22, 2015)。
本発明のgRNAの配列は、編集のために選択される特定の標的部位の配列に応じる。一般に、gRNAは、配列5’TTNの、チミンリッチなPAMのすぐ3’側にある標的DNA配列に相補的だと予測されている。gRNA配列は、センス配列またはアンチセンス配列でありうる。gRNA配列は、PAM配列に対する補足物を含んでも含まなくてもよい。gRNA配列は、標的配列に相補的でない、さらなる5’および/または3’配列を含み得る。gRNA配列は、標的配列に対して100%未満の相補性、例えば95%の相補性を有しうる。gRNA核酸配列は、コード標的配列または非コード標的配列に相補的な配列を有する。gRNA配列は多重配列において用いることができる。多重配列としては、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10またはそれ以上の異なるgRNAの組み合わせを挙げることができる。CRISPR/Cas9システムにおいて、HIV−1 LTR中の各部位を標的とする2つの異なるgRNAを用いる二本鎖の「二か所の切断」(two cut)法は、切断部位間のDNAの全ストレッチの切除を行うことができることが明らかにされてきた(Hu W. et al., Proc Natl Acad Sci USA 111, 11461-11466 (2014))。二本鎖gRNA構成が、CRISPR/Cpf1システムにおいて、HIV−1ゲノムおよび他の標的DNAの両方において、HIVおよび他のレトロウイルスの両方において、切除を行うのにも効果的である可能性は高い。
ある実施形態では、Cpf1ヌクレアーゼおよびgRNAは、単離核酸配列中にコードされており、当該単離核酸配列は、標的遺伝子を含む細胞に送達され、その場で発現する。単離核酸配列は、特定の細胞型で発現するため、任意の適切な発現ベクターに含まれてよい。あるいは、単離核酸配列は、任意の適切なインビボまたはインビトロ翻訳システムにおいてポリペプチドとして発現することができ、マイクロ送達ビヒクル(例えば、リポソームなど)で宿主細胞に送達することができる。ポリペプチドはさまざまな方法(例えば、組み換え技術または化学合成)によって生成できる。一度生成したら、ポリペプチドは、当該分野で周知の手段を用いて、どのような所望の程度に単離し精製してもよい。例えば、逆相HPLC(こちらが好ましい)または順相HPLC、または、多糖類ゲル媒体(例えばSephadex G-25)に基づくサイズ排除クロマトグラフィーまたは分配クロマトグラフィーに続いて、凍結乾燥を用いることができる。最終的なポリペプチドの組成は、標準的な手段でペプチドを分解した後アミノ酸分析によって、またはアミノ酸シーケンシングによって、またはFAB‐MS技術によって、確認してよい。ポリペプチドのアミノ基の塩(酸性塩、エステル、アミド、およびN‐アセチル誘導体)は、当該分野で周知の方法を用いて調製してよく、そのようなペプチドは本発明の文脈において有用である。
本発明のCpf1エンドヌクレアーゼは、野生型Acidaminococcus sp. BV3L6のヌクレオチド配列またはLachnospiraceae bacterium ND2006のヌクレオチド配列(Zetsche B. et al., Cell 163, 1-13 October 22, 2015)と同じヌクレオチド配列を有しうる。あるいは、特定の細胞型または個々の動物におけるgRNAガイド遺伝子編集を媒介するとわかるならば、任意の種のCpf1を用いてよい。
野生型AcidaminococcusまたはLachnospiraceaeのCpf1配列を改変して、Cpf1の生物学的活性バリアントをコードしてもよい。これらのバリアントは、例えば、1つ以上の変異(例えば、付加変異、欠失変異、もしくは置換変異、またはそのような変異の組み合わせ)を含むという点で、野生型Cpf1とは異なっているアミノ酸配列を有していてもよいし、または含んでいてもよい。Cpf1ヌクレオチド配列を改変して、Cpf1の生物学的活性バリアントをコードしてもよい。これらのバリアントは、例えば、1つ以上の変異(例えば、付加変異、欠失変異、もしくは置換変異、またはそのような変異の組み合わせ)を含むという点で、野生型Cpf1とは異なっているアミノ酸配列を有していてもよいし、または含んでいてもよい。置換変異の1つ以上は、置換(例えば、保存的アミノ酸置換)でよい。例えば、Cpf1ポリペプチドの生物学的に活性なバリアントは、野生型Cpf1ポリペプチドに対して、少なくとも50%または約50%の配列同一性(例えば、少なくともまたは約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有していてもよい。保存的アミノ酸置換は、一般的に、以下の群の中における置換を含む:グリシンおよびアラニン;バリン、イソロイシン、およびロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギン、グルタミン、セリンおよびトレオニン;リジン、ヒスチジンおよびアルギニン;ならびにフェニルアラニンおよびチロシン。Cpf1アミノ酸配列中のアミノ酸残基は、非天然アミノ酸残基であってもよい。天然アミノ酸残基は、遺伝暗号によって天然にコードされたものに加えて、標準的でないアミノ酸(例えば、L型ではなくD型のアミノ酸)も含む。本発明のペプチドは、標準的な残基の修飾バージョンであるアミノ酸残基も含んでもよい(例えば、ピロリジンをリジンの代わりに使用してもよく、セレノシステインをシステインの代わりに使用してもよい)。非天然アミノ酸残基は、天然に存在しないが、アミノ酸の基本式に合致するものであり、ペプチドに組み込まれることができる。これらには、D−アロイソロイシン((2R,3S)−2−アミノ−3−メチル吉草酸)およびL−シクロペンチルグリシン((S)−2−アミノ−2−シクロペンチル酢酸)が含まれる。他の例は、教科書またはワールドワイドウェブで調べることができる(現在カリフォルニア工科大学が運営しているサイトでは、機能タンパク質に正常に組み込まれた非天然アミノ酸の構造が公開されている)。
例えば、Cpf1の核酸配列は、哺乳類の細胞における効率的な発現のためにコドン最適化(つまり、「ヒト化」)されていてよい(Zetsche, et al., 2015)。Cpf1エンドヌクレアーゼを改変して「ニッカーゼ」として働くようにしてよい。
Cpf1ヌクレアーゼ配列を変異させて「ニッカーゼ」としてふるまうようにしてよい。ニッカーゼはDNAを切断するのではなくニックを入れて一本鎖切断を行う。Cas9では、ニッカーゼ活性は鎖特異的切断に関わるHNHおよびRuvCの保存領域での変異により達成される。例えば、RuvC触媒領域でのアスパラギン酸からアラニンへの(D10A)変異により、Cas9ニッカーゼ変異体(Cas9n)がDNAを切断するのではなくニックを入れて一本鎖切断を行えるようになる(Sander J.D. and Joung L.K., Nature Biotech 32, 347-355 (2014))。AcidaminococcusおよびLachnospiraceaeのCpf1はHNH領域が欠けているが、RuvC領域を含んでいる。そのため、ニッカーゼCpf1は、Cas9で用いたのと類似の変異によって生成できる可能性が高い。変異Cpf1の生物学的活性は、当業者に周知の方法で評価することができ、そうした方法としてはインビトロ切断アッセイまたは機能的アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。
Cpf1ヌクレアーゼ配列を変異させて、触媒欠損Cpf1を産生することもできる。触媒欠損Cpf1は、Cas9で達成したように、RuvC領域を適切に変異させることにより生成できる(Gilbert L. A. et al. Cell 154,442-51 (2013))。触媒欠損Cpf1は、蛍光標識または調節タンパク質をDNA分子上の特定の標的部位に適用するのに有用である。
Cpf1ヌクレアーゼ配列を変異させて、野生型Cpf1に比べて、ターゲッティング効率が改善され、かつ/または分子のオフターゲットを防ぐCpf1を生成することもできる。Cpf1分子はCpf1ヌクレアーゼ配列中に1つ以上の変異を有することができ、当該変異としては、欠失、置換、改変核酸塩基、ロックド核酸、ペプチド核酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明は、細菌門および古細菌門のすべての網にわたるCpf1のすべての同族体および相同分子種も含み、例えばHaft D.H., et al. PLoS Comput Biol 1, 0474-0483 (2005)の図2に示す系統に含まれる種も含む。これらの同族体および相同分子種は、上述したように、バリアントおよび変異型としても含まれる。Cpf1相同分子種は、例えば、Acidaminococcus sp. BV3L6およびLachnospiraceae bacterium ND 2006由来のCpf1(それぞれ、AsCpf1およびLbCpf1)を含む。これらの相同分子種は、通常、プロトスペーサーの5’側に位置するTTTN PAMを認識する。
(ガイド核酸配列)
本発明に係るガイドRNA配列は、センス配列またはアンチセンス配列であってもよい。gRNAの具体的な配列は変わり得る。しかし有用なガイドRNA配列とは、配列に関係なく、オフターゲット効果を最小限にしつつ、高効率を達成し、ゲノム的に組み込まれたHIV−1プロウイルスの除去を完遂する配列である。ガイドRNA配列の長さは、約20から約60ヌクレオチド、またはそれ以上であり、例えば、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約45、約50、約55、約60ヌクレオチド、またはそれ以上である。
ガイドRNA配列は単一の配列として構成されてもよく、または1つ以上の異なる配列の組み合わせ(例えば、多重構造)として構成されてもよい。多重構造は、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、またはそれ以上の異なるガイドRNAの組み合わせを含んでもよい。
本発明の組成物および方法は、HIVにおける標的配列に相補的なガイドRNAをコードしている配列を含んでもよい。HIVの遺伝的変異性は、すでに記載した複数のグループおよびサブタイプにおいて反映される。HIV配列のコレクションは、ロスアラモスHIVデータベースおよび一覧表(つまり、配列データベースウェブサイト:hitp://www.hiv.lani.gov)にまとめられている。本発明の方法および組成物は、上述の様々なグループ、サブタイプ、および組み換え流行株のうち、任意のHIVに適用可能である。これらには、例えば、HIV−1メジャーグループ(グループMとも称される)およびマイナーグループ(グループN、0、およびP)、さらに、以下の任意のサブタイプA、B、C、D、F、G、H、J、および、Kが挙げられるが、これらに限定されない。また、HIVのグループ(例えば、以下の任意のグループN、0、およびPがあるが、これらに限定されない)も挙げられる。
ガイドRNAは、コーディング配列または非コーディング配列(つまり、標的配列)に好意的な配列(sequence complimentary to)であってもよい。例えば、ガイドRNAは、HIVの長い末端反復(LTR)領域に相補的な配列であってもよい。本発明のgRNA配列は、標的配列のセンスまたはアンチセンス鎖のどちらかに相補的でありうる。それらは、標的配列に相補的な、または、相補的でない、さらなる5’および/または3’配列を含みうる。それらは、標的配列に対して100%未満相補的、例えば75%相補的でありうる。本発明の組成物が単離核酸として投与される場合、または発現ベクターに含まれる場合、Cpf1エンドヌクレアーゼは、gRNA配列と同じ核酸またはベクターによってコードされてよい。その代わりにまたはそれに加えて、Cpf1エンドヌクレアーゼは、gRNA配列から物理的に離れた核酸内で、または別のベクター内でコードされてもよい。
(単離核酸配列)
単離核酸分子は、標準的な技術によって作製することができる。例えば、本明細書に記載のヌクレオチド配列(本明細書に記載のポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を含む)を有する単離核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて得ることができる。DNAおよびRNA由来の特異的な配列(全ゲノムDNAまたは全細胞RNAから得られる配列を含む)を、PCRを用いて増幅することができる。様々なPCR方法が、例えば、PCR Primer: A Laboratory Manual, Dieffenbach and Dveksler, eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995に記載されている。一般的に、対象領域の末端またはその先の領域の配列情報を用いて、増幅すべきテンプレートの逆側の鎖と配列が同一または類似しているオリゴヌクレオチドプライマーを設計する。様々なPCR戦略も利用することができ、これによって、部位特異的ヌクレオチド配列修飾をテンプレート核酸に導入できる。
単離核酸は、1つの核酸分子として化学合成されてもよいし(例えば、ホスホラミダイト法を用いた、3’から5’方向の自動DNA合成を用いて)、または一連のオリゴヌクレオチドとして化学的に合成されてもよい。例えば、1つ以上の長鎖オリゴヌクレオチド対(例えば、50超〜100ヌクレオチド)を、目的の配列を有するように合成してもよい。上記合成においては、それぞれのオリゴヌクレオチド対は、アニーリングされたときに二本鎖となる領域を形成するような、相補的な短いセグメント(例えば、約15ヌクレオチド)を有している。DNAポリメラーゼはオリゴヌクレオチドの伸長に使用され、その結果、各オリゴヌクレオチド対につき1つの二本鎖核酸分子が得られる。そして、この二本鎖核酸分子は、ベクター内にライゲーションされ得る。本発明の単離核酸は、例えば、Cas9をコードしているDNAの天然状態の領域に対する、突然変異の発生によっても得られる(例えば、上述の方式に基づいて)。
本発明のすべてのCRISPR/Cpf1組成物または方法は、CRISPR/Cas9システムの組成物または方法と組み合わせて、両システムの標的配列の範囲を得ることができる。
(改変された核酸配列または突然変異した核酸配列)
いくつかの実施形態において、本明細書で具体化した核酸配列(例えば、標的効率を高める、かつ/またはオフターゲット効果を防ぐための変異Cpf1)はいずれも、ネイティブな核酸配列から(例えば、突然変異、欠失、置換、核酸塩基の改変、骨格の改変などによって)改変または誘導され得る。核酸配列は、ベクター、遺伝子編集剤、単離核酸、gRNA、tracrRNAなどを含んでいる。本発明の核酸配列はまた、化合物中で異なる塩基が1つ以上のヌクレオチドの位置にあるバリアントも含む。例えば、第1のヌクレオチドがアデノシンの場合、この位置にチミジン、グアノシン、またはシチジンを含むバリアントを産生してよい。これは、単離核酸配列の任意の位置で行ってよい。本発明の核酸配列は、核酸塩基または骨格に対する改変を有してもよい。本発明で想像されるいくつかの改変された核酸配列の例は、改変された骨格(例えば、ホスホロチオエート、ホスホトリエステル、メチルホスホナート、短鎖アルキルもしくはシクロアルキル糖内結合、または短鎖ヘテロ原子もしくは複素環式糖内結合)を含有する改変された核酸配列を含んでいる。いくつかの実施形態において、改変されたオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート骨格を備えるもの、およびヘテロ原子骨格、CH2--NH--O--CH2、CH、--N(CH3)--O--CH2 [メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として知られている]、CH2--O--N(CH3)--CH2、CH2--N(CH3)--N(CH3)--CH2およびO--N(CH3)--CH2--CH2骨格(ここで、ネイティブなホスホジエステル骨格はO--P--O--CHと表される)を備えるものを含んでいる。De Mesmaeker et al. Acc. Chem. Res. 1995, 28:366-374によって開示されているアミド骨格も、本書において具体化される。いくつかの実施形態において、モルホリノ骨格構造を有する核酸配列(Summerton and Weller, U.S. Pat. No. 5,034,506)、ペプチド核酸(PNA)骨格(オリゴヌクレオチドのホスホジエステル骨格がポリアミド骨格に置き換えられており、核酸塩基がポリアミド骨格のアザ窒素原子に直接的または間接的に結合している)を有する核酸配列(Nielsen et al. Science 1991, 254, 1497)。核酸配列はまた、1つ以上の置換された糖部分を含み得る。核酸配列はまた、ペントフラノシル基の代わりに、シクロブチル等の糖疑似体を有し得る。
核酸配列はまた、追加的に、または代替的に、核酸塩基(しばしば当該分野において単に「塩基」と呼ばれる)の改変または置換を含み得る。本書において使用されるとき、「改変されていない」または「天然の」核酸塩基は、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を含んでいる。改変された核酸塩基は、天然の核酸において稀にまたは一過的にしか見出されない核酸塩基(例えば、ヒポキサンチン、6−メチルアデニン、5−Meピリミジン(特には5−メチルシトシン(5−メチル−2’デオキシシトシンとも呼ばれ、しばしば当該分野において5−Me−Cとも呼ばれる)、5−ヒドロキシメチルシトシン(HMC)、グリコシルHMCおよびゲントビオシルHMC)、ならびに合成核酸塩基(例えば、2−アミノアデニン、2−(メチルアミノ)アデニン、2−(イミダゾリルアルキル)アデニン、2−(アミノアルキルアミノ)アデニンまたは他のヘテロ置換アルキルアデニン、2−チオウラシル、2−チオチミン、5−ブロモウラシル、5−ヒドロキシメチルウラシル、8−アザグアニン、7−デアザグアニン、N(6−アミノヘキシル)アデニンおよび2,6−ジアミノプリン))を含んでいる。Kornberg, A., DNA Replication, W. H. Freeman & Co., SanFrancisco, 1980, pp75-77; Gebeyehu, G., et al. Nucl. Acids Res. 1987, 15:4513。当該分野で知られている「遍在的な」塩基(例えば、イノシン)も含まれ得る。5−Me−C置換は、核酸二本鎖安定性を0.6〜1.2℃増加させることが示されている(Sanghvi, Y. S., in Crooke, S. T. and Lebleu, B., eds., Antisense Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993, pp. 276-278)。
本発明の核酸配列の別の改変は、オリゴヌクレオチドの活性または細胞吸収を向上させる1つ以上の部分または共役を、核酸配列と化学結合させることを含む。そのような部分としては、脂質部分(コレステロール部分、コレステリル部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1989, 86, 6553)、コール酸(Manoharan et al. Bioorg. Med. Chem. Let. 1994, 4, 1053)等)、チオエステル(例えば、ヘキシル−S−トリチルチオール(Manoharan et al. Ann. N.Y. Acad. Sci. 1992, 660, 306;Manoharan et al. Bioorg. Med. Chem. Let. 1993, 3, 2765)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res. 1992, 20, 533))、脂肪鎖(例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al. EMBO J. 1991, 10, 111;Kabanov et al. FEBS Lett. 1990, 259, 327;Svinarchuk et al. Biochimie 1993, 75, 49))、リン脂質(例えば、ジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホナート(Manoharan et al. Tetrahedron Lett. 1995, 36, 3651;Shea et al. Nucl. Acids Res. 1990, 18, 3777))、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al. Nucleosides & Nucleotides 1995, 14, 969)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al. Tetrahedron Lett. 1995, 36, 3651)が挙げられるが、これらに限定されない。
他の好ましい実施形態では、単離核酸配列(例えば、Cpf1)は、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合と、少なくとも1つのヌクレオチド間結合とを含み、当該少なくとも1つのヌクレオチド間結合は、アルキルホスホネート、ホスホロジチオエート、 アルキルホスホノチオエート、ホスホラミデート、カルバミン酸塩、炭酸塩、リン酸トリエステル、アセトアミデート、カルボキシメチルエステル、および/またはそれらの組み合わせから成る群から選ばれる。他の好ましい実施形態では、単離核酸配列は、任意で、少なくとも1つの改変核酸塩基を含み、当該少なくとも1つの改変核酸塩基は、ペプチド核酸、ロックド核酸(LNA)分子、それらの類縁物質、派生体、および/またはそれらの組み合わせを含む。
所定の核酸配列における全ての位置について均一に改変されている必要はなく、実際、2つ以上の前述の改変が1つの核酸配列中に組み込まれていてもよいし、核酸配列内の1つのヌクレオシド内において組み込まれていてもよい。
本発明のある好ましい単離核酸配列は、キメラ分子である。本発明の文脈において、「キメラ分子」または「キメラ」は、2つ以上の化学的に別々の領域を有し、各領域は少なくとも1つのヌクレオチドから成る。これらの単離核酸配列は、典型的には、1つ以上の有益な性質(例えば、ヌクレアーゼ耐性の増大、細胞への取り込みの増大、標的への結合親和性の増大)を与える、改変ヌクレオチドの少なくとも1つの領域と、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを切断できる酵素の基質である領域と、を含む。例として、RNase Hは、RNA‐DNA二本鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである。したがって、RNase Hを活性化することにより、RNA標的が切断され、それにより、遺伝子発現のアンチセンス調節の効率が非常に高まる。その結果、キメラ単離核酸配列を用いる場合の方が、同じ標的領域にホスホロチオエートデオキシオリゴヌクレオチドを交雑する場合に比べ、類似の結果をより短い単離核酸配列を用いて得られることが多い。
本発明のキメラ単離核酸配列は、上述のオリゴヌクレオチド、改変オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、および/またはオリゴヌクレオチド模倣物のうち2つ以上から成る複合構造として生成されてよい。そのような化合物は、当該分野において、ハイブリッドまたはgapmersとも呼ばれてきた。そのようなハイブリッド構造の調製を教示する代表的な合衆国特許としては、合衆国特許番号5,013,830号、5,149,797号、5,220,007号、5,256,775号、5,366,878号、5,403,711号、5,491,133号、5,565,350号、5,623,065号、5,652,355号、5,652,356号、および5,700,922号が挙げられるが、これらに限定されない。これらの文献のそれぞれが、参照によって本明細書に援用される。
他の実施形態では、改変された単離核酸配列は、糖の2’位で改変された少なくとも1つのヌクレオチドを含み、もっとも好ましくは2’‐O‐アルキル、2’‐O‐アルキル‐O‐アルキル、または2’‐フルオロ‐修飾ヌクレオチドである。他の実施形態では、単離核酸配列を改変してヌクレアーゼ耐性を高めてもよい。細胞は、核酸を分解し得る様々なエキソヌクレアーゼおよびエンドヌクレアーゼを含む。多数のヌクレオチド改変およびヌクレオシド改変から、そのような改変を含んだ核酸配列は、ネイティブなオリゴデオキシヌクレオチドに比べ、核酸消化に対してより耐性を有することがわかってきた。ヌクレアーゼ耐性は、単離核酸配列を細胞抽出物または単離ヌクレアーゼ溶液で培養し、一定時間経過後に残っている完全なオリゴヌクレオチドの程度を、通常はゲル電気泳動で測定することにより、規定通りに測定する。ヌクレアーゼ耐性を高めるよう改変された単離核酸配列は、改変されていない単離核酸配列よりも長い時間、完全な状態であり続ける。さまざまなオリゴヌクレオチド改変が、ヌクレアーゼ耐性を高めるまたはヌクレアーゼ耐性を与えることが実証されてきた。単離核酸配列は、少なくとも1つのホスホロチオエート改変を含みうる。いくつかの場合では、標的結合親和性を高めるオリゴヌクレオチド改変は、それとは独立して、ヌクレアーゼ耐性を高めることもできる。望ましい改変のいくつかは、De Mesmaeker et al. Acc. Chem. Res. 1995, 28:366-374に記載されている。
いくつかの実施形態において、RNA分子(例えば、crRNA、tracrRNA、gRNA)は、1つ以上の改変された核酸塩基を含むよう操作される。例えば、RNA分子の公知の改変は、例えば、Genes VI, Chapter 9 (“Interpreting the Genetic Code”), Lewis, ed.(1997, Oxford University Press, New York)、およびModification and Editing of RNA, Grosjean and Benne, eds. (1998, ASM Press, Washington DC)において見出すことができる。改変されたRNA成分としては、以下が挙げられる:2’−O−メチルシチジン;N−メチルシチジン;N−2’−O−ジメチルシチジン;N−アセチルシチジン;5−メチルシチジン;5,2’−O−ジメチルシチジン;5−ヒドロキシメチルシチジン;5−ホルミルシチジン;2’−O−メチル−5−ホルマイルシチジン;3−メチルシチジン;2−チオシチジン;リシジン;2’−O−メチルウリジン;2−チオウリジン;2−チオ−2’−O−メチルウリジン;3,2’−O−ジメチルウリジン;3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)ウリジン;4−チオウリジン;リボシルチミン;5,2’−O−ジメチルウリジン;5−メチル−2−チオウリジン;5−ヒドロキシウリジン;5−メトキシウリジン;ウリジン5−オキシ酢酸;ウリジン5−オキシ酢酸メチルエステル;5−カルボキシメチルウリジン;5−メトキシカルボニルメチルウリジン;5−メトキシカルボニルメチル−2’−O−メチルウリジン;5−メトキシカルボニルメチル−2’−チオウリジン;5−カルバモイルメチルウリジン;5−カルバモイルメチル−2’−O−メチルウリジン;5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン;5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジンメチルエステル;5−アミノメチル−2−チオウリジン;5−メチルアミノメチルウリジン;5−メチルアミノメチル−2−チオウリジン;5−メチルアミノメチル−2−セレノウリジン;5−カルボキシメチルアミノメチルウリジン;5−カルボキシメチルアミノメチル−2’−O−メチル−ウリジン;5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン;ジヒドロウリジン;ジヒドロリボシルチミン;2’−メチルアデノシン;2−メチルアデノシン;NNメチルアデノシン;N,N−ジメチルアデノシン;N,2’−O−トリメチルアデノシン;2メチルチオ−NNイソペンテニルアデノシン;N−(シス−ヒドロキシイソペンテニル)−アデノシン;2−メチルチオ−N−(シス−ヒドロキシイソペンテニル)−アデノシン;N−(グリシニルカルバモイル)アデノシン;Nトレオニルカルバモイルアデノシン;N−メチル−N−トレオニルカルバモイルアデノシン;2−メチルチオ−N−メチル−N−トレオニルカルバモイルアデノシン;N−ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン;2−メチルチオ−N−ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン;2’−O−リボシルアデノシン(リン酸塩);イノシン;2’O−メチルイノシン;1−メチルイノシン;1,2’−O−ジメチルイノシン;2’−O−メチルグアノシン;1−メチルグアノシン;N−メチルグアノシン;N,N−ジメチルグアノシン;N,2’−O−ジメチルグアノシン;N,N,2’−O−トリメチルグアノシン;2’−O−リボシルグアノシン(リン酸塩);7−メチルグアノシン;N,7−ジメチルグアノシン;N,N,7−トリメチルグアノシン;ワイオシン;メチルワイオシン;修飾中ヒドロキシワイブトシン;ワイブトシン;ヒドロキシワイブトシン;ペルオキシワイブトシン;クエオシン;エポキシクエオシン;ガラクトシル−クエオシン;マンノシル−クエオシン;7−シアノ−7−デアザグアノシン;アラカエオシン[7−ホルムアミド−7−デアザグアノシンとも呼ばれる];および7−アミノメチル−7−デアザグアノシン。
他の実施形態では、RNA改変は、RNAの3’末端でのピリミジン、非塩基残基、または逆塩基のリボース上での2’‐フルオロ、2’‐アミノ、および2’O‐メチル改変を含む。そのような改変は規定通りにオリゴヌクレオチドに含められ、これらのオリゴヌクレオチドは、任意の標的に対して、2’‐デオキシオリゴヌクレオチドよりも高いT(すなわち、高い標的結合親和性)を有することがわかっている。
〔ウイルス感染の予防および処置方法〕
一次HIV感染症は数週間から数カ月以内に沈静化し、通常はその後、最長10年間にも及ぶことのある、長期臨床「潜伏」期間がある。被検体のCD4リンパ球数は回復するが、感染前のレベルまでは戻らず、ほとんどの被検体では血清反応の反転が生じる(つまり、感染から2〜4週間以内だけ、血液中に検知可能なレベルの抗HIV抗体が見られる)。潜伏期間(臨床潜伏期とも呼ばれる)中は、HIVに感染した人々にHIV関連の症状が見られないか、ほんの軽度なものである場合がある。しかし、HIVウイルスは、非常に低いレベルで繁殖し続けている。抗レトロウイルス療法を施された被検体では、この潜伏期間が数十年以上にも及ぶことがある。しかしながら、抗レトロウイルス療法は伝染のリスクを低減することができるが、このステージの被検体は、抗レトロウイルス療法を受けている最中であったとしても、依然としてHIVを他者に伝染させることができる。抗レトロウイルス療法は、低いレベルのウイルスゲノム発現は抑制せず、潜伏感染細胞(休眠期記憶T細胞、脳マクロファージ、小膠細胞、星状膠細胞、および腸関連リンパ系細胞など)を能率的に標的にしない。
組み込まれたウイルスによる潜伏感染はレトロウイルスの特徴であり、他の多くの種類のウイルス(ポリオーマウイルス、ヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルス、およびヒトパピローマウイルスを含む)でも見られる。宿主細胞ゲノムに組み込まれたプロウイルスDNAを不活性化するまたは宿主細胞ゲノムから組み込まれたプロウイルスDNAを切除する処置、あるいはそもそもプロウイルスDNAへの組み込みを防ぐ処置が必要とされている。
したがって、本発明は、インビトロまたはインビボの宿主細胞のゲノム中に組み込まれたプロウイルスDNAの不活性化に用いられる組成物を含む。当該組成物は、Cpf1エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つの単離核酸配列と、少なくとも1つのgRNAとを含む。当該少なくとも1つのgRNAは、上記プロウイルスDNAの標的DNA配列と相補的である。
本発明はまた、インビトロまたはインビボの宿主細胞のゲノム中に組み込まれたプロウイルスDNAを不活性化する方法であって、上記宿主細胞を、Cpf1エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つの単離核酸配列で処置する工程と、上記宿主細胞を、gRNAをコードする少なくとも1つの単離核酸配列で処置する工程であって、当該少なくとも1つのgRNAは上記プロウイルスDNA中の標的配列と相補的である、工程と、上記プロウイルスDNAを不活性化する工程と、を含む方法を含む。
本発明はまた、レトロウイルス感染のリスクがある患者の宿主細胞のウイルス感染を防ぐ方法を提供する。当該方法は、患者の宿主細胞にウイルス感染のリスクがあると判定する工程と、上記患者の宿主細胞を、有効量の発現ベクター組成物に暴露する工程であって、当該発現ベクター組成物は、Cpf1エンドヌクレアーゼをコードする単離核酸と、ウイルスゲノム中の標的配列に相補的な少なくとも1つのgRNAを含む、工程と、上記Cpf1エンドヌクレアーゼおよび上記少なくとも1つのgRNAを上記宿主細胞内にて安定して発現させる工程と、上記宿主細胞のウイルス感染を防ぐ工程と、を含む。
組み込まれたHIV(例えばHIV−1)の場合、HIV−1 LTRのU3領域、R領域、またはU5領域に相補的である有益なgRNAが開発されてきた(Hu W. et al., Proc Natl Acad Sci USA 111, 11461-11466 (2014))。上記gRNAは、組み込まれたプロウイルスHIV−1を根絶するのに効果的である。上記gRNAの安定した発現およびCas9の安定した発現により、T細胞がHIV−1に新たに感染するのを防ぐことができる(Hu W. et al., Proc Natl Acad Sci USA 111, 11461-11466 (2014))。上記gRNAはCas9とともに用いるために開発されたが、Cpf1 PAMに隣接する標的配列に相補的なgRNAも、潜伏HIV−1感染を根絶または予防するのに効果的である。
HIV−1 LTRにおける、Cpf1の、PAMに隣接する標的配列の例を、実施例1に開示する。gRNAは、他のウイルスにおいても同様に、Cpf1 PAMに対する近さによって特定できる。当該他のウイルスとしては、ヒト免疫不全ウイルス‐1(HIV−1)、ヒト免疫不全ウイルス‐2(HIV−2)、ヒトT細胞リンパ好性ウイルスI型(HTLV‐I)、ヒトT細胞リンパ好性ウイルスII型(HTLV‐II)、単純ヘルペスウイルス1型(HSV‐1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV‐2)、およびJCウイルス(JCV)が挙げられるが、これらに限定されない。宿主の希突起膠細胞のJCVの不活性化または宿主の希突起膠細胞からのJCVの切除は、進行性多病巣性白質脳障害(PML)の治療に非常に有用であろう。
〔組み換えコンストラクトおよび送達ビヒクル〕
薬学的組成物に含まれる発現ベクターの例としては、プラスミドベクターやレンチウイルスベクターが挙げられるが、本発明はこれらのベクターに限定されるものではない。広範囲な宿主/発現ベクターの組み合わせを用いて、本明細書に記載する核酸配列を発現してよい。適切な発現ベクターとしては、例えば、バクテリオファージ、バキュロウイルス、およびレトロウイルス由来のプラスミドおよびウイルスベクターが挙げられるが、それらに限定されるものではない。Novagen (Madison, WI)、Clontech (Palo Alto, CA)、Stratagene (La Jolla, CA)、および Invitrogen/Life Technologies (Carlsbad, CA)のような企業から、さまざまなベクターおよび発現システムが販売されている。マーカー遺伝子は、宿主細胞に選別が可能な表現型を与えることができる。例えば、マーカーは、抗生物質(例えば、カナマイシン、G418、ブレオマイシン、またはハイグロマイシン)に対する抵抗性などの、殺生物剤抵抗性を与えることができる。発現ベクターは、発現するポリペプチドの操作または検出(例えば、精製または局在化)を促進するように設計された、タグ配列を含んでもよい。タグ配列(緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン、c−myc、ヘマグルチニン、またはFLAG(登録商標)タグ(Kodak, New Haven, CT)配列など)は、一般的に、コードされているポリペプチドと融合した状態で発現する。そのようなタグは、ポリペプチド中のどの場所に挿入されてもよい(カルボキシルまたはアミノ末端のいずれかをも含む)。ベクターは、複製開始点、足場付着領域(SAR)、調節領域なども含んでもよい。「調節領域」という用語は、転写または翻訳の開始および速度、ならびに転写産物または翻訳産物の安定性および/または移動性に影響を及ぼす、ヌクレオチド配列を意味する。調節領域としては、プロモーター配列、エンハンサー配列、応答要素、タンパク質認識部位、誘導要素、タンパク質結合配列、5’非翻訳領域および3’非翻訳領域(UTR)、転写開始部位、終止配列、ポリアデニル化配列、核局在化シグナル、およびイントロンが挙げられるが、これらに限定されない。「操作可能に結合している」という用語は、調節領域および転写される配列が、当該配列が配列の転写または翻訳に影響を及ぼすように、核酸中に位置していることを意味する。例えば、コーディング配列をプロモーターの制御下に置くために、ポリペプチドの翻訳リーディングフレームの翻訳開始点は、一般的に、プロモーターから1〜約50ヌクレオチドだけ下流に位置する。しかしながら、プロモーターは翻訳開始点から約5,000ヌクレオチドも上流に位置してもよく、または、転写開始点から約2,000ヌクレオチドも上流に位置してもよい。プロモーターは、一般的に、少なくともコア(基本)プロモーターを含む。プロモーターは、少なくとも1つの制御要素(エンハンサー配列、上流要素、または上流活性化領域(UAR)など)も含み得る。含まれるプロモーターは、いくつかの要因に合わせて選択される。当該要因としては、効率、選択性、誘導性、所望の発現レベル、ならびに細胞または組織優先的な発現が挙げられるが、これらに限定されない。コーディング配列に関連するプロモーターおよび他の調節領域を、適宜選択および配置することによりコーディング配列の発現を調節することは、当業者にとっては通常の事項である。用い得る適切なプロモーターとしては、Miller, et al., Biotechniques, Vol. 7, No. 9, 980-990 (1989)に記載されているレトロウイルスLTR、SV40プロモーター、およびヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、または他の任意のプロモーター(例えば、真核細胞プロモーターのような細胞プロモーター。ヒストン、polIII、およびβアクチンプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。用いうる他のウイルスプロモーターとしては、アデノウイルスプロモーター、TKプロモーター、およびB19パルボウイルスプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
Cpf1/ガイド核酸配列の発現は、当該分野で公知の任意のプロモーター/エンハンサーで制御してよいが、これらの調節因子は、発現用に選択された宿主において機能する必要がある。遺伝子発現を制御するのに用いうるプロモーターとしては、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(合衆国特許番号5,385,839号および5,168,062号)、SV40初期プロモーター領域(Benoist and Chambon, 1981, Nature 290:304-310)、ラウス肉腫ウイルスの3’位の長い末端反復に含まれるプロモーター(Yamamoto, et al., Cell 22:787-797, 1980)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1441-1445, 1981)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster et al., Nature 296:39-42, 1982)、原核生物発現ベクター(例えば、β‐ラクタマーゼプロモーター(Villa-Kamaroff, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 75:3727-3731, 1978)またはtacプロモーター(DeBoer, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:21-25, 1983))(Scientific American, 242:74-94, 1980の“Useful proteins from recombinant bacteria”も参照)、酵母菌または他の菌類からのプロモーター要素(例えば、Gal4プロモーター、ADC(アルコール脱水素酵素)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリ・ホスファターゼ・プロモーター)、および動物の転写制御領域(組織特異性を示し、トランスジェニック動物で用いられてきた)が挙げられるが、これらに限定されない。上記動物の転写制御領域としては、膵臓の腺房細胞で活性化するエラスターゼI遺伝子制御領域(Swift et al., Cell 38:639-646, 1984; Ornitz et al., Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409, 1986; MacDonald, Hepatology 7:425-515, 1987)、膵臓のベータ細胞で活性化するインシュリン遺伝子制御領域(Hanahan, Nature 315:115-122, 1985)、リンパ細胞で活性化する免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedl et al., Cell 38:647-658, 1984; Adames et al., Nature 318:533-538, 1985; Alexander et al., Mol. Cell. Biol. 7:1436-1444, 1987)、精巣細胞、乳腺細胞、リンパ細胞、および肥満細胞で活性化するマウス乳癌ウイルス制御領域(Leder et al., Cell 45:485-495, 1986)、肝臓で活性化するアルブミン遺伝子制御領域(Pinkert et al., Genes and Devel. 1:268-276, 1987)、肝臓で活性化するアルファ‐フェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlauf et al., Mol. Cell. Biol. 5:1639-1648, 1985; Hammer et al., Science 235:53-58, 1987)、肝臓で活性化するアルファ1‐抗トリプシン遺伝子制御領域(Kelsey et al., Genes and Devel. 1: 161-171, 1987)、骨髄性細胞で活性化するベータ‐グロビン遺伝子制御領域(Mogram et al., Nature 315:338-340, 1985; Kollias et al., Cell 46:89-94, 1986)、脳の希突起膠細胞で活性化するミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readhead et al., Cell 48:703-712, 1987)、骨格筋で活性化するミオシン軽鎖‐2遺伝子制御領域(Sani, Nature 314:283-286, 1985)、および視床下部で活性化する性腺刺激性放出ホルモン遺伝子制御領域(Mason et al., Science 234:1372-1378, 1986)が挙げられる。
他の実施形態では、本発明は誘導プロモーターを含む。そのようなプロモーターの1つは、哺乳類の細胞で用いられてきた原核生物の誘導プロモーターシステムである、テトラサイクリン制御トランス活性化因子(tTA)応答プロモーター(tetシステム)である。tetシステムは、構成的に産生された高レベルのtTA mRNAが、tTAタンパク質の産生のために機能するだけでなく、アンチセンス阻害による応答ユニットの塩基発現の減少のためにも機能するように、レトロウイルスベクター内で組織化された(Paulus, W. et al., "Self-Contained, Tetracycline-Regulated Retroviral Vector System for Gene Delivery to Mammalian Cells", J of Virology, January. 1996, Vol. 70, No. 1, pp. 62-67参照)。適切なプロモーターを選ぶことは、本明細書の教示から、当業者には明白であろう。
本発明は、宿主細胞のゲノム中の標的遺伝子の不活性化に用いられる発現ベクターを提供する。各発現ベクターは、Cpf1エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つの単離核酸配列と、少なくとも1つのgRNAであって、上記標的遺伝子中の標的配列と相補的である少なくとも1つのgRNAと、を含む。上記少なくとも1つのCpf1エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列と、少なくとも1つのgRNAをコードする核酸配列は、単一の発現ベクターに含まれてもよいし、あるいは別々のベクターに含まれてもよい。
哺乳類の細胞中でCpf1システムを発現するのに好ましいベクターは、形質導入効率が高く、かつ、毒性が低いことから、レンチウイルスベクターである。他の適した発現ベクターとしては、プラスミドや、ウイルスベクター(例えば、バクテリオファージ、バキュロウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス(「Ad」)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、および水疱性口内炎ウイルス(VSV)に由来するもの)や、ポックスウイルスベクター(例えばアビポックスベクターまたはオルソポックスベクター)が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる発現ベクターとしては、SV40および公知の細菌プラスミドの誘導体、例えば、E. coliプラスミドであるcol El、pCR1、pBR322、pMal−C2、pET、pGEX、pMB9およびそれらの誘導体;RP4などのプラスミド;ファージDNA(例えば、ファージ1の多数の誘導体(例えば、NM989)、および他のファージDNA(例えば、M13や、線維状一本鎖ファージDNA));酵母プラスミド(2μプラスミドなど)またはその誘導体;プラスミドおよびファージDNAの組み合わせから得られるベクター(ファージDNAまたは他の発現制御配列を用いるように改変されたプラスミドなど)が挙げられる。
Novagen (Madison, WI)、Clontech (Palo Alto,CA)、Stratagene (La Jolla, CA)、および Invitrogen/Life Technologies (Carlsbad, CA)のような企業から、さまざまなベクターおよび発現システムが販売されている。適切なプロモーターおよびエンハンサーを上記ベクターに含めてもよい。選択は、発現が望まれる細胞型に従って、当該分野で周知の実験手段によって行われる。
本発明のポリヌクレオチドは、マイクロ送達ビヒクル(カチオン性リポソームおよびアデノウイルスベクターなど)と共に使用されてもよい。リポソームの調製、標的化、および内容物の送達の手順としては、Mannino and Gould-Fogerite, BioTechniques,6:682 (1988)を参照。また、Felgner and Holm, Bethesda Res. Lab. Focus, 11(2):21 (1989)およびMaurer, R.A., Bethesda Res. Lab. Focus, 11(2):25 (1989)も参照。
したがって、本発明は、HIVに潜伏感染した宿主細胞のゲノムに組み込まれたプロウイルスDNAの不活性化に用いられるレンチウイルスベクター組成物を含む。上記組成物は、エンドヌクレアーゼをコードする単離核酸と、プロウイルスHIVのDNAの標的配列に相補的なスペーサー配列を含む少なくとも1つのガイドgRNAをコードする少なくとも1つの単離核酸と、を含み、上記各単離核酸は少なくとも1つのレンチウイルス発現ベクターに含まれる。上記レンチウイルス発現ベクターは、宿主細胞において、上記エンドヌクレアーゼと上記少なくとも1つのgRNAの発現を誘導する。
上記単離核酸のすべてを単一のレンチウイルス発現ベクターに含ませてもよく、あるいは上記核酸はレンチウイルスベクターの任意の適切な組み合わせに細分してもよい。例えば、エンドヌクレアーゼを第1のレンチウイルス発現ベクターに含ませることができ、第1のgRNAを第2のレンチウイルス発現ベクターに含ませることができ、第2のgRNAを第3のレンチウイルス発現ベクターに含ませることができる。複数の発現ベクターが用いられる場合、それらのすべてがレンチウイルスベクターである必要はない。
本明細書では組み換えコンストラクトも提供され、細胞を形質転換するために用いることができる。組み換え核酸コンストラクトは、Cpf1をコードする核酸、および/または、本明細書に記載したHIV中の標的配列に相補的なガイドRNAをコードする核酸を含み、上記Cpf1および/または細胞内のHIV中の標的配列に相補的なガイドRNAを発現するのに適した調節領域に動作可能に結合している。多数の核酸により、特定のアミノ酸配列を有するポリペプチドがコードされ得ることが、理解されるであろう。遺伝コードの縮重が、当該技術分野でよく知られている。多くのアミノ酸では、1つより多いヌクレオチド・トリプレットが、アミノ酸のコドンとして機能している。例えば、特定の生物において最適な発現が得られるように、その生物にとって適切なコドンバイアス表を用いて、Cpf1をコードしている配列中のコドンを変更してもよい。
インビトロ系(培養細胞)およびインビボ系(動物および患者)のために、本明細書で具体化される分子と、いくつかの送達方法とを組み合わせて利用してもよい。一実施形態において、レンチウイルス性遺伝子送達システムを利用してもよい。そのようなシステムによって、幅広い親和性および大きなDNAを挿入する余地を備えつつ、分裂細胞および非分裂細胞において、遺伝子が安定的に長期間存在することができる(Dull et al, J Virol, 72:8463-8471 1998)。一実施形態において、アデノ随伴ウイルス(AAV)を送達方法として利用してもよい。AAVは非病原性の一本鎖DNAウイルスであり、インビトロ系およびインビボ系における治療的遺伝子の送達に、近年積極的に採用されている(Choi et al, Curr Gene Ther, 5:299-310, 2005)。
本発明のある実施形態では、非ウイルスベクターを用いてトランスフェクションを行ってよい。核酸の非ウイルス送達の方法としては、リポフェクション法、ヌクレオフェクション法、マイクロインジェクション法、バイオリスティック法、ウイロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸共役、そのままのDNA、人工ビリオン、薬剤によるDNAの取り込み強化が挙げられる。リポフェクション法は、例えば、合衆国特許番号5、049、386号、4、946、787号、および4、897、355号に記載されており、リポフェクション試薬は市販されている(例えば、TransfectamやLipofectin)。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適したカチオン性および中性脂質は、Jesseeに付与された合衆国特許番号7、166、298号またはJesseに付与された合衆国特許番号6、890、554号に記載されており、そのそれぞれの内容が、参照によって援用される。送達は、細胞に対するものでもよいし(例えば、インビトロまたはエクスビボ投与)、標的組織に対するものでもよい(例えば、インビボ投与)。
合成ベクターは通常、カチオン性脂質またはポリマーに基づいている。当該カチオン性脂質またはポリマーは、マイナスに帯電した核酸と複合して、直径100nmのオーダーの粒子を形成する。上記複合体は、ヌクレアーゼによる分解から核酸を守る。さらに、細胞およびローカル送達方法は、適切な亜細胞コンパートメントにおける内在化、放出、および分配の必要性に対処しなければならない。全身性送達方法にはさらなるハードルがある。例えば、カチオン性送達ビヒクルの、血液構成成分との強力な相互作用や、細網内皮系による摂取や、腎臓による濾過や、対象の細胞に対するキャリアの毒性および標的能力である。カチオン性非ウイルスの表面を修飾することは、血液構成成分との相互作用を最小にし、細網内皮系による摂取を減らし、その毒性を減少させ、標的細胞との結合親和性を増すことができる。プラズマタンパク質の結合(オプソニン化とも呼ばれる)は、循環するナノ粒子をRESが認識する主要なメカニズムである。例えば、マクロファージ(肝臓のクッパー細胞など)は、スカベンジャー受容体を介して、オプソニン化ナノ粒子を認識する。
本発明の核酸配列は、被検体の適切な細胞へと送達され得る。これは、例えば、食細胞(マクロファージなど)による食作用に最適な大きさの、重合体送達ビヒクル、生分解性微粒子送達ビヒクル、またはマイクロカプセル送達ビヒクルを用いることで達成され得る。例えば、直径約1〜10μmのPLGA(ポリ−ラクト−コ−グリコリド)微粒子が使用され得る。ポリヌクレオチドはこれら微粒子内に格納され、マクロファージによって取り込まれて、細胞内で徐々に生分解される。これによって、ポリヌクレオチドが放出される。ポリヌクレオチドが放出されると、細胞内でDNAが発現する。第2の種類の微粒子は細胞によって直接取り込まれず、主に核酸の徐放性保有体として機能する。上記核酸は、生分解を通じて微粒子から放出されたときのみ、細胞によって取り込まれる。したがって、これらの重合体粒子は、食作用を妨げるために、十分な大きさであるべきである(すなわち、5μmより大きく、好ましくは20μmより大きい)。核酸を能動的に取り込む別の方法は、リポソーム(標準的な方法で調製される)を使用することである。核酸は、これらの送達ビヒクルに単独で組み込まれてもよいし、組織特異的抗体と共に組み込まれてもよい。当該組織特異的抗体としては、例えば、HIV感染の一般的な潜伏感染保有体である細胞型を標的にする抗体が挙げられる。あるいは、静電気力または共有結合力によってポリ−L−リジンに結合している、プラスミドまたは他のベクターから構成される分子複合体を調製してもよい。ポリ−L−リジンは、標的細胞の受容体に結合し得るリガンドに結合する。インビボでの発現を実現する別の手段では、「そのままのDNA」(すなわち、送達媒体を含まない)を、筋肉内、皮膚内または皮下の部位へ送達する。関連するポリヌクレオチド(例えば、発現ベクター)において、核酸配列は、Cpf1および/または上述したHIVの標的配列に相補的なガイドRNAをコードする配列を含む単離核酸配列をコードする。
いくつかの実施形態では、ベクターの送達はエクソソームによって媒介されてもよい。エクソソームは、多くの細胞型によって放出される脂質ナノ小胞である。それらは、細胞間で核酸およびタンパク質を移送することにより細胞間コミュニケーションを媒介する。エクソソームは、RNA、miRNA、およびエンドサイトーシス経路に由来するタンパク質を含む。エクソソームは、標的細胞によってエンドサイトーシス、融合、またはその両方で消化されうる。エクソソームを用いて核酸を特定の標的細胞に送達できる。
本発明の発現コンストラクトは、ナノクロー(Nanoclews)によって送達することもできる。ナノクローは繭状のDNAナノ混合物である(Sun, et al., J. Am. Chem. Soc. 2014,136:14722-14725)。ナノクローは核酸を積んで、標的細胞によって消化されたり標的細胞の細胞質内へ放出されたりすることができる。ナノクローをコンストラクトし、それらに積み、放出分子を設計する方法は、Sun, et al. (Sun W, et al., J. Am. Chem. Soc. 2014, 136:14722-14725;Sun W, et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2015: 12029-12033.)に記載されている。
核酸およびベクターは、器具(例えば、カテーテル)の表面に適用されてもよく、またはポンプ、パッチ、または他の薬物送達装置内に含まれていてもよい。本明細書に記載の核酸およびベクターは単独で投与されてもよいし、薬学的に許容できる賦形剤または担体(例えば、生理的食塩水)の存在下において混合物として投与されてもよい。賦形剤または担体は、投与の方法および経路に基づいて選択される。好適な薬学的担体は、医薬製剤における使用のための医薬必需品と共に、当該分野においてよく知られた参考書であるRemington's Pharmaceutical Sciences (E. W. Martin)およびUSP/NF (United States Pharmacopeia and the National Formulary)に記載されている。
本発明のいくつかの実施形態では、リポソームを用いて細胞または組織へのトランスフェクションを行う。核酸のリポソーム製剤の薬理学的特性は、核酸がリポソーム二重層内に封入される程度によって主に決定される。封入された核酸は、ヌクレアーゼによる劣化から守られ、一方、リポソームの表面に単に結合しているだけのものは守られない。封入された核酸は、完全なリポソームによる延長された循環寿命と生体内分布を有するが、一方、表面に結合したものは、ひとたびリポソームから離れると、むき出しの核酸の薬理学的特性を有する。核酸は、従来のパッシブローディング(passive loading)の技術(例えば、エタノールドロップ法(SALPの場合)、逆相蒸着法、エタノール希釈法(SNALPの場合))でリポソーム内に閉じ込めてよい。
リポソーム送達システムは、安定した製剤、改善された薬物動態学、および組織に対するある程度「受動的」または「生理学的」ターゲッティングを提供する。親水性物質および疎水性物質(例えば、化学療法をなしうる物質)を封入することが知られている。例えば、合衆国特許番号5、466、468号(Schneider。合成脂質を含む、非経口で投与可能なリポソーム製剤を開示)や、合衆国特許番号5、580、571号(Hostetler et al.。リン脂質に共役結合したヌクレオシドの類縁物質を開示)や、合衆国特許番号5、626、869号(Nyqvist。薬学的活性部分がヘパリンまたはその断片である薬学的組成物であって、当該ヘパリンまたはその断片は、少なくとも1つの両親媒性および有極性の脂質化合物および少なくとも1つの無極性の脂質化合物とを含む特定の脂質システム中に含まれている、薬学的組成物を開示)を参照されたい。
リポソームおよびポリマーソームは、複数の溶液および化合物を含みうる。ある実施形態では、本発明の複合体は、ポリマーソームに結合しているか、ポリマーソーム中に封入されている。人工小胞の1つの集団として、ポリマーソームは溶液を含む小さな空洞の球であり、両親媒性合成ブロックコポリマーを用いて小胞膜を形成して生成されている。一般的なポリマーソームは、そのコアに水溶液を含み、傷つきやすい分子(例えば、薬品、酵素、他のタンパク質およびペプチド、DNA断片およびRNA断片)を封入し守るのに役に立つ。ポリマーソーム膜は、封入した物質を外部の物質(例えば生体系にある物質)から単離する物理的な障壁を提供する。ポリマーソームは、周知の技術によって二重エマルションから生成できる。Lorenceau et al., 2005, Generation of Polymerosomes from Double-Emulsions, Langmuir 21(20):9183-6を参照されたい。当該文献は、引用により本明細書に援用される。
本発明のいくつかの実施形態において、非ウイルスベクターを修飾して、目標とする送達およびトランスフェクションを達成する。PEG化(すなわち、表面をポリエチレングリコールで修飾すること)は、非ウイルスベクターのオプソニン化および凝固を減らし、細網内皮系による除去を最小にするのに用いられる主な方法であり、静脈内(i.v.)投与後の循環寿命が延長される。したがって、PEG化されたナノ粒子は、「見えない」ナノ粒子としばしば呼ばれる。血液循環からすぐには除去されないナノ粒子は、感染細胞と遭遇する機会があるであろう。
本発明のいくつかの実施形態では、組織の特異な環境および外部の刺激に対応する、狙いを定めた制御放出システムが用いられる。金のナノロッドは、近赤外領域で強い吸収バンドを有し、吸収された光エネルギーはそれから金のナノロッドによって熱に変換される。いわゆる「光熱効果」である。近赤外線光は組織に深く浸透できるので、金のナノロッドの表面を核酸で修飾して制御された放出を行うことができる。修飾された金のナノロッドが近赤外線光で照射されると、光熱効果によって誘発された熱変性により、核酸が放出される。放出される核酸の量は、光照射のパワーと露出時間によって決まる。
組成物が核酸として投与されるかポリペプチドとして投与されるかに関わらず、組成物は、哺乳動物細胞による取り込みを促進するように製剤される。有用なベクターシステムおよび製剤は、上述したとおりである。いくつかの実施形態において、ベクターは、組成物を特定の細胞型に送達することができる。しかしながら、本発明はこれに限定されず、他のDNA送達方法(例えば、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、リポソーム、リポプレックス、界面活性剤、およびペルフルオロ薬液を使用した化学的トランスフェクションなど)も考えられる。同様に、物理的送達方法(エレクトロポーション法、マイクロインジェクション、弾道粒子、および「遺伝子銃」システムなど)も考えられる。
他の実施形態において、組成物は、1つ以上のCpf1コードベクターおよびgRNAを用いて形質転換またはトランスフェクションされた細胞を含む。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、エクスビボで適用することができる。つまり、被検体の細胞を体から取り出し、培養中に組成物で処置して、例えばHIV配列を切除し、処置された細胞を上記被検体の体に戻してもよい。細胞は、被検体の細胞であってもよく、または、ハプロタイプ適合細胞または細胞株であってもよい。複製を防止するために、細胞に放射線を照射してもよい。いくつかの実施形態において、細胞はヒト白血球抗原(HLA)適合細胞、自家移植細胞、細胞株、またはそれらの組み合わせである。他の実施形態において、細胞は幹細胞であってもよい。例えば、胚性幹細胞または人工的な多能性幹細胞(人工多能性幹細胞(iPS細胞))が挙げられる。胚性幹細胞(ES細胞)および人工的な多能性幹細胞(人工多能性幹細胞、iPS細胞)は、ヒトを含む多数の動物種から確立されてきた。これらの種類の多能性幹細胞は、再生医療用の細胞の、最も有用な供給源と考えられる。なぜなら、これらの細胞は、その多能性を保有しつつ活発に分裂する能力を維持しながら、適切な分化誘導によって、ほとんど全ての器官へと分化可能であるからである。特にiPS細胞は、自己由来の体細胞から確立することができる。したがって、胚を破壊することによって作製されるES細胞と比較して、倫理的および社会的問題を引き起こす可能性が低い。さらに、iPS細胞は自己由来の細胞であるので、再生医療または移植療法において最大の障害となる、拒絶反応を回避することが可能になる。
形質導入された細胞が、確立された方法に従って再注入のために調製される。約2〜4週間の培養期間の後、細胞は1×10から1×1010の間の数になり得る。この点については、細胞の増殖特性は、患者間および細胞の種類間で変わる。形質導入された細胞の再注入前の約72時間、表現型の分析および治療剤を発現している細胞のパーセンテージの分析のために一部が採取される。投与については、本発明の細胞は、細胞型のLD50ならびに患者の体重および全体的な健康に適用されるときの様々な濃度における細胞型の副作用によって決定される割合にて投与され得る。投与は1回投与または分割投与を介して達成され得る。成体幹細胞は、それらの産生を刺激し組織または空隙(骨髄または脂肪組織が挙げられるが、これらに限定されない)から出る、外因的に投与される因子を用いて集められてもよい。
したがって、本発明は、HIVに潜伏感染したエクスビボ培養された宿主細胞のゲノムに組み込まれたプロウイルスDNAを取り除く方法を含む。プロウイルスHIVのDNAは宿主細胞ゲノムに組み込まれている。当該方法は、HIVに潜伏感染した宿主細胞の集団を得る工程と、上記宿主細胞をエクスビボで培養する工程と、上記宿主細胞を、Cpf1エンドヌクレアーゼと、上記プロウイルスHIVのDNAのLTR中の標的配列に相補的な少なくとも1つのgRNAとを含む組成物で処置する工程と、上記プロウイルスDNAを上記宿主細胞ゲノムから取り除く工程と、を含む。同じ方法の工程は、次に示す追加の工程を加えるならば、潜伏感染した宿主細胞集団のドナーを処置するのにも有用である。当該追加の工程とは、HIV除去済みT細胞集団を産生する工程と、上記HIV除去済みT細胞集団を患者に注入する工程と、上記患者を処置する工程である。
潜伏感染T細胞のエクスビボ処置に効果的だと証明された組成物及び方法は、1つ以上の適切な発現ベクターによって送達されるならば、インビボでも効果的である可能性が非常に高い。したがって、本発明は、哺乳類の被検体の細胞中に組み込まれたHIVのDNAの不活性化のための薬学的組成物であって、エンドヌクレアーゼをコードする単離核酸配列と、プロウイルスHIVのDNA中の標的配列に相補的な少なくとも1つのgRNAをコードする少なくとも1つの単離核酸配列と、を含む薬学的組成物を含む。好ましくは、gRNA分子の組み合わせが含まれる。上記薬学的組成物は、上記各単離核酸配列がコードされる少なくとも1つの発現ベクターも含むことも好ましい。
〔薬学的組成物〕
上述した、潜伏ウイルスの不活性化におけるCRISPR/Cpf1の使用に鑑みて、本発明はまた、哺乳類の被検体の細胞中のに組み込まれたウイルスを不活性化する薬学的組成物も提供する。上記組成物は、Cpf1エンドヌクレアーゼをコードする単離核酸配列と、プロウイルスプロウイルスDNA中の標的配列に相補的な少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)をコードする少なくとも1つの単離核酸配列と、を含む。上記各単離核酸配列は少なくとも1つの発現ベクターに含まれていることが好ましい。
本発明はまた、ウイルスに感染した哺乳類の被検体を処置する方法を提供する。上記方法は、哺乳類の被検体がウイルスに感染したと判定する工程と、上述の薬学的組成物を有効量、上記被検体に投与する工程と、上記被検体の上記ウイルス感染を処置する工程と、を含む。
他の実施形態では、細胞または被検体中のレトロウイルス(例えば、HIV)の複製を阻止する方法は、上記細胞を薬学的組成物に接触させる、または当該薬学的組成物を上記被検体に投与する工程を含み、上記薬学的組成物は、Cpf1エンドヌクレアーゼをコードする治療上有効な量の単離核酸配列、少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)であって、レトロウイルスゲノムの標的核酸配列と相補的であるgRNA、抗ウイルス剤、またはそれらの組み合わせを含む。ある実施形態では、細胞または被検体中のレトロウイルスゲノムを根絶する方法は、上記細胞を薬学的組成物に接触させる、または当該薬学的組成物を上記被検体に投与する工程を含み、上記薬学的組成物は、治療上有効な量の遺伝子編集剤、少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)であって、レトロウイルスゲノムの標的核酸配列と相補的であるgRNA、抗ウイルス剤、またはそれらの組み合わせを含む。さらに、ウイルス感染と関連しているかもしれない他の任意の症状(例えば、発熱、さむけ、頭痛、二次感染)を緩和する1つ以上の治療剤を、上記薬学的組成物に合わせて、または上記薬学的組成物の一部として、または別々の時間に、投与してよい。これらの剤として、抗発熱剤、抗炎症剤、抗真菌剤、駆虫剤、化学療法剤、抗生物質、免疫調整剤、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
組成物の治療上有効な量(つまり、効果的な投与量)とは、所望の治療的(例えば臨床的)結果をもたらすのに、十分な量を意味する。組成物は、日に1回以上〜週に1回以上投与されてもよい(2日に1回の投与を含む)。当業者であれば、被検体を効果的に処置するために必要な投与量およびタイミングが、ある種の要因に影響され得ることを理解するであろう。当該ある種の要因としては、疾患または障害の重篤度、過去の処置、被検体の全身の健康状態および/または年齢、ならびに他に発症している疾患が挙げられるが、これらに限定されない。また、本発明の組成物の治療上有効な量を用いる被検体の処置としては、1回の処置または一連の複数回の処置が挙げられる。
本発明の薬学的組成物は、当業者に公知の様々な方法によって調製することができる。その原材料またはそれを得る方法にかかわらず、本明細書に記載の組成物は、その用途に合わせて製剤され得る。例えば、上述した核酸およびベクターは、組織培養の細胞に適用するための組成物、または、患者もしくは被検体に投与するための組成物内で製剤できる。本発明の薬学的組成物はいずれも、医薬品の調製への使用のために製剤され得る。特定の用途は、処置(例えば、HIV感染症を患う被検体またはHIV感染症のリスクがある被検体の処置)という文脈の中で後述されている。医薬として用いられる場合、任意の核酸およびベクターを、薬学的組成物の形態で投与してもよい。それらの組成物は、薬学の分野において周知の方法で調製することが可能である。また、局所的治療と全身治療のいずれが望まれるかに応じて、さらに処置される部位に応じて、様々な経路で投与することができる。投与としては、局所投与(点眼および粘膜(鼻腔、膣、および直腸を含む)への送達を含む)、肺内投与(例えば、粉末またはエアロゾルの吸入または吹送(噴霧器によるものを含む)による;気管内、鼻腔内、表皮、および経皮)、点眼投与、経口投与、または非経口投与が挙げられる。目への送達方法としては、(i)局所投与(点眼)、(ii)結膜下、眼周囲もしくは硝子体内への注射、または(iii)バルーンカテーテルもしくは手術により結膜嚢に配置された眼内挿入物による導入、が挙げられる。非経口投与としては、(i)静脈内、動脈内、皮下、腹腔内もしくは筋肉内への注射もしくは注入、または(ii)頭蓋内投与(例えば、クモ膜下投与またはは脳室内投与)が挙げられる。非経口投与は、単回のボーラス投与の形態で行われてもよい。または、例えば、連続潅流ポンプによって行われてもよい。局所投与用の薬学的組成物および製剤としては、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、滴薬、座薬、スプレー、液体、粉末、などが挙げられる。従来の薬学的担体(水系、粉末系または油系の基剤、増粘剤など)が、必要であるかまたは望ましい場合がある。
本発明はまた、薬学的組成物を含み、当該薬学的組成物は、本明細書に記載の核酸およびベクターを有効成分として含み、1つ以上の薬学的に許容される担体をさらに含んでもよい。「薬学的に許容できる」(または「薬理学的に許容できる」)という用語は、動物またはヒトに適宜投与されたときに、有害反応、アレルギー性反応、または他の不都合な反応を起こさない、分子的実体および組成物を意味する。本明細書に使用されるとき、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的に許容できる物質の媒体として使用され得る、溶媒、分散媒、被膜、抗菌剤、等張性薬剤、および吸収遅延剤、緩衝液、賦形剤、結合剤、潤滑剤、ゲル、界面活性剤、などのいずれかおよび全てを含む。本発明の組成物を調製する際、当該有効成分は一般的に賦形剤と混合され、(i)賦形剤によって希釈されるか、または(ii)担体(例えば、カプセル、錠剤、小袋、紙包み、またはその他の容器の形態である)の中に封入される。賦形剤が希釈剤として機能する場合、当該賦形剤は、固体、半固体、または液体(例えば、生理食塩水)であってもよく、有効成分用のビヒクル、担体、または媒体としての役割を果たす。したがって、組成物は、錠剤、ピル、粉末、トローチ剤、小袋、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、エマルション、溶液、シロップ、エアロゾル(固体または液体媒体中の)、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、軟質および硬質ゼラチンカプセル、座薬、無菌注射液、ならびに無菌包装粉末の形態であり得る。当該技術分野で知られている通り、希釈剤の種類は、目的とする投与経路に合わせて変わり得る。得られる組成物は、追加の薬剤(防腐剤など)を含んでもよい。いくつかの実施形態において、担体は、脂質系もしくは重合体系コロイドであるか、またはこれらを含んでもよい。いくつかの実施形態において、担体物質は、リポソーム、ヒドロゲル、微粒子、ナノ粒子、またはブロック共重合体ミセルとして製剤された、コロイドであってもよい。上述の通り、担体物質はカプセルを形成してもよく、その材料は重合体系コロイドであってもよい。
本発明の核酸配列は、被検体の適切な細胞へと送達され得る。これは、例えば、食細胞(マクロファージなど)による食作用に最適な大きさの、重合体送達ビヒクル、生分解性微粒子送達ビヒクル、またはマイクロカプセル送達ビヒクルを用いることで達成され得る。例えば、直径約1〜10μmのPLGA(ポリ−ラクト−コ−グリコリド)微粒子が使用され得る。ポリヌクレオチドはこれら微粒子内に格納され、マクロファージによって取り込まれて、細胞内で徐々に生分解される。これによって、ポリヌクレオチドが放出される。ポリヌクレオチドが放出されると、細胞内でDNAが発現する。第2の種類の微粒子は細胞によって直接取り込まれず、主に核酸の徐放性保有体として機能する。上記核酸は、生分解を通じて微粒子から放出されたときのみ、細胞によって取り込まれる。したがって、これらの重合体粒子は、食作用を妨げるために、十分な大きさであるべきである(すなわち、5μmより大きく、好ましくは20μmより大きい)。核酸を能動的に取り込む別の方法は、リポソーム(標準的な方法で調製される)を使用することである。核酸は、これらの送達ビヒクルに単独で組み込まれてもよいし、組織特異的抗体と共に組み込まれてもよい。当該組織特異的抗体としては、例えば、HIV感染の一般的な潜伏感染保有体である細胞型を標的にする抗体が挙げられる。あるいは、静電気力または共有結合力によってポリ−L−リジンに結合している、プラスミドまたは他のベクターから構成される分子複合体を調製してもよい。ポリ−L−リジンは、標的細胞の受容体に結合し得るリガンドに結合する。インビボでの発現を実現する別の手段では、「そのままのDNA」(すなわち、送達媒体を含まない)を、筋肉内、皮膚内または皮下の部位へ送達する。関連するポリヌクレオチド(例えば、発現ベクター)において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼおよびガイドRNAをコードする配列を含む単離核酸配列をコードする核酸配列が、プロモーターと、またはエンハンサーおよびプロモーターの組み合わせと、動作可能に結合している。プロモーターおよびエンハンサーは上述した通りである。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、ナノ粒子として製剤されてもよい。当該ナノ粒子は、例えば、(i)DNAと複合体を形成している、高分子量の線状ポリエチレンイミン(LPEI)からなるコアを有し、さらに当該コアが(ii)ポリエチレングリコールによって修飾された(PEG化された)低分子量のLPEIからなるシェルによって覆われている、ナノ粒子である。
核酸およびベクターは、器具(例えば、カテーテル)の表面に適用されてもよく、またはポンプ、パッチ、または他の薬物送達装置内に含まれていてもよい。本明細書に記載の核酸およびベクターは単独で投与されてもよいし、薬学的に許容できる賦形剤または担体(例えば、生理的食塩水)の存在下において混合物として投与されてもよい。賦形剤または担体は、投与の方法および経路に基づいて選択される。好適な薬学的担体は、医薬製剤における使用のための医薬必需品と共に、当該分野においてよく知られた参考書であるRemington's Pharmaceutical Sciences (E. W. Martin)およびUSP/NF (United States Pharmacopeia and the National Formulary)に記載されている。
いくつかの実施形態において、組成物は、HIVの性感染を防止する局所ゲルとして製剤されてもよい。局所ゲルは、性交に先立って、男性器または女性器の皮膚または粘膜に直接塗布することができる。他の場合(またはそれに加えて)、局所ゲルは、男性用または女性用のコンドームまたはペッサリーの表面に塗布されるか、またはそれらの中に収容されていてもよい。
本発明は、HIVに感染した哺乳類の被検体を処置する方法であって、哺乳類の被検体がHIVに感染していると判定する工程と、上記被検体に、上述の薬学的組成物を有効量、投与する工程と、上記被検体に対し、HIV感染の処置を行う工程と、を含む方法も含む。
本発明に係る薬学的組成物は、当業者に周知のさまざまな方法で調製できる。例えば、上述した核酸およびベクターは、組織培地中の細胞に適用する、または患者または被検体に投与する組成物中で調製できる。これらの組成物は、薬学分野で周知の方法で調製でき、局所的治療と全身治療のいずれが望まれるかに応じて、さらに治療される部位に応じて、様々な経路で投与することができる。投与としては、局所投与(点眼および粘膜(鼻腔、膣、および直腸を含む)への送達を含む)、肺内投与(例えば、粉末またはエアロゾルの吸入または吹送(噴霧器によるものを含む)による;気管内、鼻腔内、表皮、および経皮)、点眼投与、経口投与、または非経口投与が挙げられる。目への送達方法としては、(i)局所投与(点眼)、(ii)結膜下、眼周囲もしくは硝子体内への注射、または(iii)バルーンカテーテルもしくは手術により結膜嚢に配置された眼内挿入物による導入、が挙げられる。非経口投与としては、(i)静脈内、動脈内、皮下、腹腔内もしくは筋肉内への注射もしくは注入、または(ii)頭蓋内投与(例えば、クモ膜下投与またはは脳室内投与)が挙げられる。非経口投与は、単回のボーラス投与の形態で行われてもよい。または、例えば、連続潅流ポンプによって行われてもよい。局所投与用の薬学的組成物および製剤としては、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、滴薬、座薬、スプレー、液体、粉末、などが挙げられる。従来の薬学的担体(水系、粉末系または油系の基剤、増粘剤など)が、必要であるかまたは望ましい場合がある。
本発明はまた、薬学的組成物を含み、当該薬学的組成物は、本明細書に記載の核酸およびベクターを有効成分として含み、1つ以上の薬学的に許容される担体をさらに含んでもよい。「薬学的に許容できる」(または「薬理学的に許容できる」)という用語は、動物またはヒトに適宜投与されたときに、有害反応、アレルギー性反応、または他の不都合な反応を起こさない、分子的実体および組成物を意味する。本明細書に使用されるとき、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的に許容できる物質の媒体として使用され得る、溶媒、分散媒、被膜、抗菌剤、等張性薬剤、および吸収遅延剤、緩衝液、賦形剤、結合剤、潤滑剤、ゲル、界面活性剤、などのいずれかおよび全てを含む。本発明の組成物を調製する際、当該有効成分は一般的に賦形剤と混合され、(i)賦形剤によって希釈されるか、または(ii)担体(例えば、カプセル、錠剤、小袋、紙包み、またはその他の容器の形態である)の中に封入される。賦形剤が希釈剤として機能する場合、当該賦形剤は、固体、半固体、または液体(例えば、生理食塩水)であってもよく、有効成分用のビヒクル、担体、または媒体としての役割を果たす。したがって、組成物は、錠剤、ピル、粉末、トローチ剤、小袋、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、エマルション、溶液、シロップ、エアロゾル(固体または液体媒体中の)、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、軟質および硬質ゼラチンカプセル、座薬、無菌注射液、ならびに無菌包装粉末の形態であり得る。当該技術分野で知られている通り、希釈剤の種類は、目的とする投与経路に合わせて変わり得る。得られる組成物は、追加の薬剤(防腐剤など)を含んでもよい。いくつかの実施形態において、担体は、脂質系もしくは重合体系コロイドであるか、またはこれらを含んでもよい。いくつかの実施形態において、担体物質は、リポソーム、ヒドロゲル、微粒子、ナノ粒子、またはブロック共重合体ミセルとして製剤された、コロイドであってもよい。上述の通り、担体物質はカプセルを形成してもよく、その材料は重合体系コロイドであってもよい。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、ナノ粒子として製剤されてもよい。当該ナノ粒子は、例えば、(i)DNAと複合体を形成している、高分子量の線状ポリエチレンイミン(LPEI)からなるコアを有し、さらに当該コアが(ii)ポリエチレングリコールによって修飾された(PEG化された)低分子量のLPEIからなるシェルによって覆われている、ナノ粒子である。いくつかの実施形態において、上記組成物は、本明細書で具現化される組成物を封入したナノ粒子として調製してよい。L‐PEIは、インビボの遺伝子をさまざまな臓器(例えば、肺、脳、膵臓、網膜、膀胱)や腫瘍に効率的に送達するのに用いられてきた。L‐PEIは、核酸をインビトロおよびインビボで効率的に濃縮し、安定させ、送達することができる。
核酸およびベクターは、器具(例えば、カテーテル)の表面に適用されてもよく、またはポンプ、パッチ、または他の任意の薬物送達装置内に含まれていてもよい。本発明の核酸およびベクターは単独で投与されてもよいし、薬学的に許容できる賦形剤または担体(例えば、生理的食塩水)の存在下において混合物として投与されてもよい。賦形剤または担体は、投与の方法および経路に基づいて選択される。好適な薬学的担体は、医薬製剤における使用のための医薬必需品と共に、当該分野においてよく知られた参考書であるRemington's Pharmaceutical Sciences (E. W. Martin)およびUSP/NF (United States Pharmacopeia and the National Formulary)に記載されている。
いくつかの実施形態において、組成物は、Cpf1(またはバリアントCpf1)をコードしている核酸および標的HIVに相補的な少なくとも1つのgRNA配列を内包している、ナノ粒子として製剤されてもよい。または、これらの要素をコードするベクターを含んでもよい。あるいは、組成物は、エンドヌクレアーゼ、および/または本発明の核酸組成物のうち1つ以上によってコードされるポリペプチド、を内包しているナノ粒子として製剤されてもよい。
HIV感染の処置法において、被検体は、標準的な臨床テストを用いて特定することができる。当該標準的な臨床テストとしては、例えば、被検体の血清におけるHIV抗体またはHIVポリペプチドp24の存在を検出するイムノアッセイ、またはHIV核酸増幅分析が挙げられる。被検体に与えられる組成物の量であって、感染症の症状の完全解消、感染症の症状の重篤度の低減、または感染症の進行の減速をもたらす量を、治療上有効な量とみなす。本発明の方法は、投与量および投与計画を最適化するための監視工程に加えて、結果を予測する工程も含んでもよい。本発明のいくつかの方法において、まず患者が潜伏期のHIV感染症であるか否かを判定し、その後、本明細書に記載の1つ以上の組成物を用いて患者を処置するか否かを決定してもよい。
本発明の組成物は、潜伏的な宿主細胞内で安定的に発現すると、HIVによる新たな感染を減らすか妨げる。したがって、本発明は、HIV感染のリスクのある患者のT細胞のHIV感染を防ぐ方法を含む。上記方法は、患者がHIV感染のリスクがあると判定する工程と、上記患者のT細胞を、有効量の発現ベクター組成物に暴露する工程であって、当該発現ベクター組成物は、エンドヌクレアーゼをコードする単離核酸と、HIV DNAの標的配列に相補的な少なくとも1つのgRNAをコードする少なくとも1つの単離核酸とを含む、工程と、上記エンドヌクレアーゼおよび上記少なくとも1つのgRNAを上記T細胞中に安定して発現させる工程と、上記T細胞のHIV感染を防ぐ工程と、を含む。
HIV感染症のリスクを有する被検体としては、例えば、無防備な性交(つまり、コンドームを使用しない性行為)を行った、現在性交渉のある個体;別の性感染症を患う現在性交渉のある個体;静脈内薬の使用者;または割礼を受けていない男性、が挙げられる。HIV感染症のリスクを有する被検体としては、また、例えば、職業上HIV感染した人々と接触することになる個体(例えば、医療関係者または初期対応者)が挙げられる。HIV感染症のリスクを有する被検体としては、例えば、矯正施設の収容者、またはセックスワーカー(つまり、収入を得る仕事のために、または貨幣以外のもの(食物、薬物、または宿など)のために、性交を行う個体)が挙げられる。
〔遺伝病を直すためのCRISPR/Cpf1組成物〕
CRISPR/Cas9システムがDNA配列で切断または切除を行えるだけでなく、それに続いて所望のDNA配列の接合も行えることは周知である(例えば、Doudna and Charpentier, Science 346, 1258096-1-1258096-9 (2014)を参照)。Cas9が媒介した切断の近傍にある一本鎖オリゴヌクレオチドは、相同組み換え修復によって上述の切断部位に挿入することができる。このプロセスは、マウスモデルの遺伝欠陥を直せることが判明している(Yin H. et al., Nature Biotech 32, 551-554 (2014))。平滑末端切断を有するCRISPR/Cas9システムを、遺伝病を直すのに用いることができるのならば、切断点に突出末端を残すCRISPR/Cpf1システムは、さらに有用だと判明するであろう。
したがって、本発明は、細胞内の遺伝病を直す方法を提供する。上記方法は、DNAが病原性変異DNA配列を含む細胞を提供する工程と、上記細胞を、上記病原性変異DNA配列に隣接する標的部位に相補的な少なくとも1つのgRNAに暴露する工程と、上記細胞を、Cpf1エンドヌクレアーゼに暴露する工程と、上記Cpf1エンドヌクレアーゼを、上記少なくとも1つのgRNAによって、上記標的部位へと導く工程と、上記病原性変異DNA配列に隣接する上記DNAに、上記CPfエンドヌクレアーゼによって二本鎖切断を生じさせる工程と、上記細胞を、上記病原性変異DNA配列に対応する野生型DNA配列を含む単離一本鎖ドナーオリゴヌクレオチドに暴露する工程と、上記病原性変異DNA配列を、上記野生型DNA配列と置換する工程と、上記遺伝病を直す工程と、を含む。
適切に設計したgRNAを用いることにより、CRISPR/Cpf1システムは、遺伝病、特に単一の変異によって生じる病(嚢胞性線維症、重症複合型免疫不全、アデノシン・デアミナーゼ欠損症、慢性肉芽腫症、血友病、ゴーシェ病、およびレット症候群が挙げられるが、これらに限定されない)を直すのに効果を発揮するであろう。
〔ゲノムシーケンシングおよび診断のためのCRISPR/Cpf1組成物および方法〕
近年における蛍光画像化および画像分析の進歩により、病気の診断およびゲノム分析(全ゲノム分析を含む)のための技術が、より早く、より簡単に、より使いやすくなってきた。特定のDNA配列またはモチーフの蛍光標識化により、組み込みめれたHIV−1および他の組み込まれたウイルスを視覚化および定量化し、ゲノムDNA中のテロメア(TTAGGG配列の繰り返しにより認識できる)の長さを測定し、遺伝子コピー数およびヌクレオチド反復(例えば、ポリグルタミン病の特徴的な反復)をカウントし、DNAの損傷および癌のリスクと関連するレトロトランスポゾンの場所を特定し定量化し、全染色体を直線状にして標識化DNAモチーフの位置に従ってそれらの配列を決定する機器(例えば、BIONANO IRYS(登録商標)システム)を用いて、全染色体の配列を決定することができる。
CRISPR/Cas9システムは、DNA鎖上の特定の標的配列を切断するのではなく標識化するようにうまく改変されてきた。一つの方法は、上述した触媒欠損Cas9と、当該触媒欠損Cas9を特定の標的DNA配列に結合させる少なくとも1つのgRNAとを用いるものである。上記触媒欠損Cas9を蛍光ポリペプチドまたは他の検出可能なシグナルで標識化することで、上記触媒欠損Cas9を標的配列へ結合したときに当該配列が検出用のタグ付けをされるようにする。それに代えてまたはそれに加えて、1つ以上のgRNAを、当該gRNAの1つ以上のループに付加されるアプタマーによって標識化することもできる。上記アプタマーは、二量化バクテリオファージコートタンパク質であるMS2に結合することができ、次に、当該MS2が1つまたは複数の蛍光タンパク質(例えばEGFP)と融合することができる。
他の方法は、上述したCas9のニッカーゼ形態の1つを用いるものである。上述のニッカーゼは適切なgRNAによって標的配列に誘導され、DNAの一本鎖にニックを入れる。蛍光色素標識ヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼを当該部位に配置する。ニックは蛍光色素標識ヌクレオチドによって修復され、標的配列に検出可能な標識が付与される。
上述したように、Cas9に用いたのと類似の方法を用いて、Cpf1の触媒欠損ニッカーゼ変異体を生成できる可能性が高い。したがって、CRISPR/Cpf1システムは、ゲノム標識の可能性を大きく広げるであろう。CRISPR/Cpf1システムが認識する標的配列の組は、CRISPR/Cas9が認識する標的配列とほとんど重ならないからである。
したがって、本発明は、ゲノム中の標的部位におけるDNA配列をニック標識する方法を提供する。上記方法は、DNAゲノムをCpf1エンドヌクレアーゼのニッカーゼ変異体に暴露する工程と、上記DNAゲノムを、上記標的部位内の標的配列に相補的な少なくとも1つのガイドgRNAに暴露する工程と、上記少なくとも1つのgRNAを用いて、上記ニッカーゼ変異体Cpf1を上記標的配列へ導く工程と、上記標的配列にニックを入れる工程と、ニックを入れられた標的配列を生成する工程と、上記ニックを入れられた標的配列を少なくとも1つの標識ヌクレオチド(NT)に暴露する工程と、標識NTを上記ニックを入れられた標的配列に組み込ませる工程と、上記ゲノム中の上記標的部位の上記DNA配列を標識化する工程と、を含む。
本発明は、ゲノム中の標的部位のDNA配列を標識化する組成物を含む。上記組成物は、少なくとも1つの触媒欠損Cpf1エンドヌクレアーゼと、少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)とを含み、上記少なくとも1つのgRNAは上記標的部位の標的DNA配列に相補的である。検出可能な標識(例えば、蛍光標識)を、上記少なくとも1つの触媒欠損Cpf1エンドヌクレアーゼ、または上記少なくとも1つのgRNA、またはその両方に組み込まれる。
〔キット〕
本発明はまた、HIV感染を処置及び予防する上述の方法の適用を容易にするキットも含む。当該キットは、エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つの単離核酸配列と、1つ以上のgRNAをコードする少なくとも1つの核酸配列とを含む、一定量の組成物を含む。上記gRNAのそれぞれは、HIVプロウイルスの標的配列に相補的なスペーサー配列を含む。当該キットはまた、パッケージ材料、使用上の注意書きを含む添付文書、滅菌液、注射器、および滅菌容器から成る群から選ばれる1つ以上の品物も含む。1つの好ましい実施形態では、核酸配列は発現ベクター中に含まれる。上記キットは、意図された用途に応じて、適切な安定剤、担体分子、人口香味料などを適宜含んでよい。
他の実施形態では、上記キットはさらに、フラビウイルス感染と関連するかもしれない症状または二次細菌感染のいくつかを緩和する1つ以上の抗ウイルス剤および/または治療試薬を含む。したがって、パッケージ化された製品(例えば、本明細書に記載された組成物であって、保管、出荷、または販売のために、濃縮状態で、またはすぐに使用可能な濃度でパッケージ化されている組成物の1つ以上を含む滅菌容器)およびキット(本発明の少なくとも1つの組成物(例えば、エンドヌクレアーゼ(例えば、Cpf1エンドヌクレアーゼ)をコードする核酸配列と、レトロウイルス中の標的配列に相補的なガイドRNAまたは上記核酸をコードするベクター)、および使用上の注意書きを含む)も、本発明の範囲に含まれる。製品は、本発明の1つ以上の組成物を含む容器(例えば、ビン、ジャー、ボトル、袋など)を含みうる。それに加えて、製品はさらに、例えば、パッケージ材料、使用上の注意書き、注射器、送達装置、緩衝剤、または予防または処置が求められる状態を処置または監視する調整試薬を含んでよい。
製品はまた、説明(例えば、印刷されたラベル、または挿入物、または当該製品の用途を説明する他の媒体(例えば、音声テープまたは映像テープ))も含んでよい。上記説明は容器に付随させる(例えば、容器に貼る)ことができ、当該製品内の組成物の投与の仕方(例えば、投与の頻度および経路)を説明でき、当該製品の各表示を説明でき、他の用途を説明できる。上記組成物は、すぐに投与できる状態であってよく(例えば、適切な服用量単位になっている)、1つ以上の薬学的に許容できる追加のアジュバント、担体、または他の希釈剤および/または追加の治療薬を含んでよい。あるいは、上記組成物は、希釈剤および希釈の指示を伴った濃縮形態で提供されてもよい。
本発明のさまざまな実施形態を説明してきたが、それらは例示としてのみ提示されたものであり、限定として提示されたものではないことを理解されたい。開示された実施形態は、本明細書の開示に従い、本発明の精神または範囲から離れることなく、さまざまに変更することが可能である。したがって、本発明の範囲は、上述の実施形態のいずれによっても限定されるべきものではない。
本明細書で言及したすべての文献は、参照により本明細書に援用される。本願で引用されたすべての刊行物および特許文献は、参照によって援用され、各刊行物または各特許文献が個別に示されたのと同じ効果を持つ。出願人は、本明細書でさまざまな文献を引用することにより、いかなる特定の文献も本発明に対する「従来技術」だと認めたわけではない。
本発明を、以下の特定の実施例によりさらに例示する。当該実施例は例示目的でのみ提供されるものであり、いかなるかたちでも本発明の範囲または内容を限定すると解釈されるべきではない。
[実施例1:潜伏HIV−1を不活性化および除去するCRISPR/Cpf1システム]
ヒトT細胞および他の宿主細胞に組み込まれた潜伏HIV−1は、Cas9/gRNAシステムによって不活性化することができ、多くの場合は宿主ゲノムから完全に根絶できることが判明している。特に効果的なのは、プロウイルスHIV−1の長い末端反復(LTR)の標的配列、とりわけU3領域の標的配列に相補的なgRNAであった。いくつかの実施形態では、gRNAの対(対の各構成要素は別々の標的配列に対して特異的)は、5’LTRと3’LTRのあいだに広がるDNAの全ストレッチを切除するのにとりわけ効果的であった(Hu W. et al., Proc Natl Acad Sci USA 111, 11461-11466 (2014); Khalili et al., 2015, International Patent Application No. WO2015/031775 to Khalili, et al.)。
上述したように、AcidaminococcusおよびLachnospiraceae由来のCpf1エンドヌクレアーゼは、コンセンサスPAMである5’−TTNから3’側にヌクレオチド約24個分伸びる標的配列に相補的なgRNAによってガイドされることも知られている(Zetsche B. et al., Cell 163, 1-13 October 22, 2015)。したがって、HIV−1 LTR中の上述のヌクレオチド配列は、Cpf/gRNAシステムの標的配列として機能する可能性が高い。すなわち、ヒトHIV−1のLTR中の標的配列の少なくとも一部に相補的なgRNAは、Cpf1と複合体を形成すると、潜伏プロウイルスHIV−1を不活性化および/または根絶するであろう。表1は、ヒトHIV−1のLTR中の標的配列の組を示す。当該標的配列は、Khalili, et al.の国際特許出願番号WO2015/031775の図18に開示されたHIV‐LTRヌクレオチド配列に由来するものである。当該配列を、各配列のPAM(括弧内に示す)が位置しているLTR領域に従って分類する。
Figure 2018531261
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本発明は、表1に示す標的配列のそれぞれに相補的なgRNAを含む。本発明のgRNAは標的配列のPAM配列に相補的な配列を含んでもよく、含まなくてもよい。gRNAは、表1に示した配列の短縮型変異(例えば、3’端のヌクレオチドが1つ、2つ、3つ、またはそれ以上短縮された配列)に相補的でもよい。gRNAは、表1に示した標的配列に100%未満相補的でもよい。例えば、gRNAは、表1に示した標的配列に対して、75%相補的、または、80%相補的、または、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%相補的でもよい。本発明は、表1に示す標的配列のそれぞれのアンチセンス鎖に相補的なgRNAを含むか、95%相補的なgRNAを含むか、またはヌクレオチドが1つ、2つ、3つ、またはそれ以上短縮されたアンチセンス配列に相補的なgRNAを含む。表1は、HIV−1のLTR中の標的配列の代表的なサンプルのみを含んでいると理解されたい。異なるPAMに隣接する配列もさらに存在し、それらも本発明の範囲に含まれる。
ある実施形態では、インビトロまたはインビボの宿主細胞のゲノム中の標的遺伝子の不活性化に用いられる組成物は、Cpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つの単離核酸配列と、少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)であって、上記標的遺伝子中の標的配列に対して少なくとも75%の相補的配列同一性を有する少なくとも1つのgRNAと、を含む。ある実施形態では、上記少なくとも1つのgRNAは、上記標的遺伝子中の標的配列に対して少なくとも95%の相補的配列同一性を有する。他の実施形態では、上記少なくとも1つのgRNAは、上記標的遺伝子中の標的配列に相補的である。ある実施形態では、標的遺伝子は、レトロウイルスゲノム(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV))のコード核酸配列および非コード核酸配列を含む。ある実施形態では、上記非コード領域は、HIVの長い末端反復、または、HIVの上記長い末端反復中の配列を含む。他の実施形態では、HIVの上記長い末端反復中の上記配列は、U3領域、R領域、またはU5領域中の配列を含む。
上記gRNAは、ある実施形態では、多重配列であり、同じベクターまたは物理的に別々のベクターによってコードされる。各ベクターは、単一のgRNAをコートしてもよく、または、1つ以上の標的配列と相補的な複数の配列の組み合わせを有する複数のgRNAをコードしてもよい。したがって、ある実施形態では、上記組成物は、ヒト免疫不全ウイルスの複数の標的核酸配列に相補的な複数のガイドRNA核酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、標的遺伝子は、配列番号1から33を含む配列のいずれか1つに対して少なくとも75%の配列同一性を有する。他の実施形態では、標的遺伝子は、配列番号1から33を含む配列のいずれか1つを含む。
上述したように、ある実施形態では、Cpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)エンドヌクレアーゼをコードする1つの単離核酸配列、および、上記少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)をコードする1つの単離核酸配列は、同じベクターによって発現される。他の実施形態では、Cpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)エンドヌクレアーゼをコードする1つの単離核酸配列は第1のベクターによって発現され、上記少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)をコードする1つの単離核酸配列は第2のベクターによって発現される。
他の実施形態では、上記組成物は、任意で、抗ウイルス剤、化学療法剤、抗真菌剤、駆虫剤、抗細菌剤、抗炎症剤、免疫調整剤、またはそれらの組み合わせのうち1つ以上を含む。他の実施形態では、これらの剤の任意の1つ以上を必要としている被検体に、これらの剤の任意の1つ以上を、本明細書で具体化した組成物と同時に、または本明細書で具体化した組成物の投与前に、または本明細書で具体化した組成物の投与後に、または通常の治療法の一部として、投与することにより、これらの剤の任意の1つ以上を共同治療的処置において組み合わせてもよい。
本発明のgRNAは、一般的に、Zetsche B. et al., Cell 163, 1-13 October 22, 2015に記載されたように合成する。宿主細胞での発現のためにgRNAをベクターにクローニングすることは、Hu, et al., 2014およびKhalili, et al.のWO2015/031775に記載されている。これらはどちらも、その全文がここに援用される。遺伝子編集作業用のCpf1/gRNAの組み合わせのスクリーニングは、Hu W. et al., Proc Natl Acad Sci USA 111, 11461-11466 (2014)およびKhalili, et al.のWO2015/031775に開示されているように、ゲノム解析や、サーベイヤーアッセイや、ウイルス感染、ウイルス活性化、およびウイルス発現の分析によって行われる。
本発明は、例示を用いて記載してきた。用いられた用語は、限定のための語ではなく説明のための語であることを意図している。上記教示に照らして、本発明をさまざまに変形・変更可能であることは明らかである。したがって、本発明は、添付の請求項の範囲内であるならば、具体的に説明されたのとは異なるように実施し得ることを理解されたい。

Claims (40)

  1. インビトロまたはインビボの宿主細胞のゲノム中の標的遺伝子の不活性化に用いられる組成物であって、
    Cpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つの単離核酸配列と、
    少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)であって、上記標的遺伝子中の標的配列に対して少なくとも75%の相補的配列同一性を有する少なくとも1つのgRNAと、を含む、組成物。
  2. 上記少なくとも1つのgRNAは、上記標的遺伝子中の標的配列に対して少なくとも95%の相補的配列同一性を有する、請求項1に記載の組成物。
  3. 上記少なくとも1つのgRNAは、上記標的遺伝子中の標的配列に相補的である、請求項2に記載の組成物。
  4. 標的遺伝子は、レトロウイルスゲノムのコード核酸配列および非コード核酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
  5. 上記レトロウイルスはヒト免疫不全ウイルス(HIV)である、請求項4に記載の組成物。
  6. 上記非コード領域は、HIVの長い末端反復、または、HIVの上記長い末端反復中の配列を含む、請求項4に記載の組成物。
  7. HIVの上記長い末端反復中の上記配列は、U3領域、R領域、またはU5領域中の配列を含む、請求項6に記載の組成物。
  8. ヒト免疫不全ウイルスの複数の標的核酸配列に相補的な複数のガイドRNA核酸配列をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
  9. 標的遺伝子は、配列番号1から33を含む配列のいずれか1つに対して少なくとも75%の配列同一性を有する、請求項1に記載の組成物。
  10. 標的遺伝子は、配列番号1から33を含む配列のいずれか1つを含む、請求項1に記載の組成物。
  11. Cpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)エンドヌクレアーゼをコードする上記1つの単離核酸配列、および、上記少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)をコードする単離核酸配列は、ベクターによって発現される、請求項1に記載の組成物。
  12. Cpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)エンドヌクレアーゼをコードする上記1つの単離核酸配列は第1のベクターによって発現され、上記少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)をコードする単離核酸配列は第2のベクターによって発現される、請求項1に記載の組成物。
  13. 任意で、抗ウイルス剤、化学療法剤、抗真菌剤、駆虫剤、抗細菌剤、抗炎症剤、免疫調整剤、またはそれらの組み合わせのうち1つ以上を含む、請求項1に記載の組成物。
  14. インビトロまたはインビボの宿主細胞のゲノム中の標的遺伝子の不活性化に用いられる組成物であって、
    Cpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つの単離核酸配列と、
    少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)であって、上記標的遺伝子中の標的配列と相補的である少なくとも1つのgRNAと、を含む、組成物。
  15. 宿主細胞のゲノム中の標的遺伝子を不活性化する方法であって、
    上記宿主細胞を、Cpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つの単離核酸配列で処置する工程と、
    上記宿主細胞を、ガイドRNA(gRNA)をコードする少なくとも1つの単離核酸配列で処置する工程であって、当該少なくとも1つのgRNAは上記標的遺伝子中の標的配列と相補的である、工程と、
    上記標的遺伝子を不活性化する工程と、を含む方法。
  16. 宿主細胞のゲノム中に組み込まれたプロウイルスDNAの不活性化に用いられる組成物であって、
    Cpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つの単離核酸配列と、
    少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)であって、プロウイルスDNA中の標的配列と相補的である少なくとも1つのgRNAと、を含む、組成物。
  17. 上記プロウイルスDNAは、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV‐1)、ヒト免疫不全ウイルス2(HIV‐2)、ヒトT細胞リンパ好性ウイルスI型(HTLV‐I)、ヒトT細胞リンパ好性ウイルスII型(HTLV‐II)、単純ヘルペスウイルス1型(HSV‐1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV‐2)、またはJCウイルス(JCV)のプロウイルスDNAを含む、請求項16に記載の組成物。
  18. 上記プロウイルスDNAはHIV‐1DNAであり、上記少なくとも1つのgRNAは上記HIV‐1DNAの標的配列に相補的である、請求項17に記載の組成物。
  19. 上記少なくとも1つのgRNAは、上記HIV‐1DNAの長い末端反復(LTR)中の標的配列に相補的である、請求項18に記載の組成物。
  20. 宿主細胞のゲノム中に組み込まれたプロウイルスDNAを不活性化する方法であって、
    組み込まれたプロウイルスDNAを含む上記宿主細胞を、Cpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つの単離核酸配列で処置する工程と、
    上記宿主細胞を、少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)をコードする少なくとも1つの単離核酸配列で処置する工程であって、当該少なくとも1つのgRNAは上記プロウイルスDNA中の標的配列と相補的である、工程と、
    上記プロウイルスDNAを不活性化する工程と、を含む方法。
  21. 上記プロウイルスDNAは、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV‐1)、ヒト免疫不全ウイルス2(HIV‐2)、ヒトT細胞リンパ好性ウイルスI型(HTLV‐I)、ヒトT細胞リンパ好性ウイルスII型(HTLV‐II)、単純ヘルペスウイルス1型(HSV‐1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV‐2)、またはJCウイルス(JCV)のプロウイルスDNAを含む、請求項20に記載の方法。
  22. 上記標的配列は、プロウイルスHIV‐1DNAの中に位置している、請求項21に記載の方法。
  23. 上記HIV‐1プロウイルスDNAの中に位置している上記標的配列は、上記プロウイルスHIV−1DNAの長い末端反復(LTR)の中に位置している標的配列である、請求項22に記載の方法。
  24. インビトロまたはインビボの宿主細胞のゲノム中の標的遺伝子の不活性化に用いられるベクター組成物であって、
    Cpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つの単離核酸配列と、
    少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)であって、上記標的遺伝子中の標的配列と相補的である少なくとも1つのgRNAと、を含み、
    上記少なくとも1つのCpf1エンドヌクレアーゼをコードする上記少なくとも1つの単離核酸配列と、上記少なくとも1つのgRNAは、少なくとも1つの発現ベクターに含まれ、
    上記少なくとも1つの発現ベクターは、宿主細胞内で、上記少なくとも1つのCpf1エンドヌクレアーゼと上記少なくとも1つのgRNAの発現を誘導する、ベクター組成物。
  25. 上記少なくとも1つの発現ベクターはレンチウイルス発現ベクターを含む、請求項24に記載のベクター組成物。
  26. ウイルス感染のリスクがある患者の宿主細胞のウイルス感染を防ぐ方法であって、
    患者がウイルスによる感染のリスクがあると判定する工程と、
    上記感染のリスクがある患者の宿主細胞を、有効量の発現ベクター組成物に暴露する工程であって、当該発現ベクター組成物は、Cpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)エンドヌクレアーゼをコードする単離核酸と、上記ウイルスのゲノム中の標的配列に相補的な少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)を含む、工程と、
    上記Cpf1エンドヌクレアーゼおよび上記少なくとも1つのgRNAを上記宿主細胞内に安定して発現させる工程と、
    上記宿主細胞の上記ウイルスによる感染を防ぐ工程と、
    を含む、方法。
  27. 上記ウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV‐1)、ヒト免疫不全ウイルス2(HIV‐2)、ヒトT細胞リンパ好性ウイルスI型(HTLV‐I)、ヒトT細胞リンパ好性ウイルスII型(HTLV‐II)、単純ヘルペスウイルス1型(HSV‐1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV‐2)、またはJCウイルス(JCV)から選ばれる、請求項26に記載の方法。
  28. 哺乳類の被検体の細胞中に組み込まれたプロウイルスを不活性化する薬学的組成物であって、
    Cpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)エンドヌクレアーゼをコードする単離核酸配列と、プロウイルスDNA中の標的配列に相補的な少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)をコードする少なくとも1つの単離核酸配列と、を含み、
    上記各単離核酸配列は少なくとも1つの発現ベクターに含まれている、薬学的組成物。
  29. 上記プロウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV‐1)、ヒト免疫不全ウイルス2(HIV‐2)、ヒトT細胞リンパ好性ウイルスI型(HTLV‐I)、ヒトT細胞リンパ好性ウイルスII型(HTLV‐II)、単純ヘルペスウイルス1型(HSV‐1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV‐2)、またはJCウイルス(JCV)を含む、請求項28に記載の薬学的組成物。
  30. 抗ウイルス剤、化学療法剤、抗真菌剤、駆虫剤、抗細菌剤、抗炎症剤、免疫調整剤、またはそれらの組み合わせのうち1つ以上をさらに含む、請求項28に記載の薬学的組成物。
  31. ウイルスに感染した哺乳類の被検体を処置する方法であって、
    哺乳類の被検体がウイルスに感染していると判定する工程と、
    上記被検体に、請求項28に記載の薬学的組成物を有効量、投与する工程と、
    上記被検体に対し、上記ウイルス感染の処置を行う工程と、
    を含む方法。
  32. 細胞内の遺伝病を直す方法であって、
    DNAが病原性変異DNA配列を含む細胞を提供する工程と、
    上記細胞を、上記病原性変異DNA配列に隣接する標的部位に相補的な少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)に暴露する工程と、
    上記細胞を、Cpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)エンドヌクレアーゼに暴露する工程と、
    上記Cpf1エンドヌクレアーゼを、上記少なくとも1つのgRNAによって、上記標的部位へと導く工程と、
    上記病原性変異DNA配列に隣接する上記DNAに、上記Cpf1エンドヌクレアーゼによって二本鎖切断を生じさせる工程と、
    上記細胞を、上記病原性変異DNA配列に対応する野生型DNA配列を含む単離一本鎖ドナーオリゴヌクレオチドに暴露する工程と、
    上記病原性変異DNA配列を、上記野生型DNA配列と、相同組み換え修復によって置換する工程と、
    上記遺伝病を直す工程と、を含む、方法。
  33. DNAゲノム中の標的配列を検出する方法であって、
    DNAゲノムをCpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)エンドヌクレアーゼのニッカーゼ変異体に暴露する工程と、
    上記DNAゲノムを少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)に暴露する工程であって、上記少なくとも1つのgRNAは上記標的部位内に位置する標的配列に相補的である、工程と、
    上記ニッカーゼ変異体Cpf1を、上記少なくとも1つのgRNAによって、上記標的配列へと導く工程と、
    上記標的配列にニックを入れる工程と、
    ニックを入れられた標的配列を作る工程と、
    上記ニックを入れられた標的配列を少なくとも1つの標識ヌクレオチド(NT)に暴露する工程と、
    上記標識NTを上記ニックを入れられた標的配列に含ませる工程と、
    上記ゲノム中の上記標的部位の上記DNA配列を標識化する工程と、
    上記ゲノム中の上記標的配列を検出する工程と、を含む、方法。
  34. 上記少なくとも1つの標識NTは蛍光標識NTである、請求項33に記載の方法。
  35. 上記標的部位は、プロウイルスレトロウイルスDNA、テロメア、またはレトロトランスポゾンから選ばれる場所の中にある、請求項33に記載の方法。
  36. ゲノム内の標的部位における標的DNA配列を検出する組成物であって、
    少なくとも1つの触媒欠損Cpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)エンドヌクレアーゼと、
    少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)であって、標的部位における標的配列に相補的である少なくとも1つのgRNAと、を含み、
    上記少なくとも1つの触媒欠損Cpf1エンドヌクレアーゼ、上記少なくとも1つのgRNA、または上記少なくとも1つの触媒欠損Cpf1エンドヌクレアーゼと上記少なくとも1つのgRNAの両方は、検出可能な標識を含む、組成物。
  37. 上記少なくとも1つの触媒欠損Cpf1エンドヌクレアーゼが、上記検出可能な標識を含む、請求項36に記載の組成物。
  38. 上記検出可能な標識は、蛍光ポリペプチドである、請求項37に記載の組成物。
  39. 上記蛍光ポリペプチドは、伸長緑色タンパク質(EGFP)または赤色蛍光タンパク質(RFP)から選ばれる、請求項38に記載の組成物。
  40. 上記少なくとも1つのgRNAは上記検出可能な標識を含み、上記検出可能な標識は上記少なくとも1つのgRNAに対してアプタマーを介して結合している、請求項39に記載の組成物。
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