本出願は、2015年8月31日に出願された豪国仮特許出願2015903523号の優先権を主張するものであり、この文献の内容は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
本開示は、微生物の生存率を低減させるための方法および製品、ならびに、微生物感染症を予防および/または処置する方法および製品に関する。
ある開示実施形態は、1つまたは複数の利点を有する方法、製品、組成物、およびその使用を提供する。例えば、本明細書に開示する一部の実施形態の利点のいくつかとしては、以下のうち1つまたは複数が挙げられる:1つもしくは複数の利点を提供するため、または、商業的代案を提供するための、細菌感染症などの微生物感染症向けの新しい処置レジメンの特定;バイオフィルム内の一部の細菌の処置に適した処置レジメンの特定;鉄キレート剤の殺生物性を、非鉄ポルフィリンを用いた後続の処置により高めることが可能であるという特定;鉄キレート剤と非鉄ポルフィリンの制御放出が、細菌などの微生物の処置向けの改善された戦略を提供するという特定;単独で用いる場合よりも、微生物を標的にする薬剤をより低い濃度で利用することが可能な、または、このような薬剤、例えば抗菌剤などの有効性を改善することが可能な、処置レジメン;バイオフィルムに関係する細菌感染症を含む、細菌感染症の処置のための新しい製品および組成物;特に、バイオフィルム内に存在する場合の、スタフィロコッカス属およびシュードモナス属などの細菌の処置のための新しいレジメン;バイオフィルムに関係する細菌感染症を含む、細菌感染症の処置のための製品および組成物。本開示の一部の実施形態の他の利点も、本明細書で開示する。
本開示のある実施形態は、微生物の生存率を低減させる方法を提供する。微生物の生存率を評価する方法は、当技術分野において既知である。
本開示のある実施形態は、微生物の生存率を低減させる方法であって、微生物を有効量のキレート剤に暴露し、続いて、微生物を有効量の鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤に暴露することにより、微生物の生存率を低減させるステップを含む、方法を提供する。
用語「鉄ミメティック」は、鉄類似体である薬剤を指し、これは、酸化還元酵素などの鉄を利用する酵素を阻害するなど、細胞中の鉄の作用を阻害するか、または、鉄代謝を阻害する。用語「ヘムミメティック」は、ヘム類似体である薬剤を指し、これは、ヘム活性、ヘム合成、またはヘム代謝を阻害する。
ある実施形態では、鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤には、非鉄ポルフィリンが含まれる。
本開示のある実施形態は、微生物の生存率を低減させる方法であって、微生物を有効量の鉄キレート剤に暴露し、続いて、微生物を有効量の非鉄ポルフィリンに暴露することにより、微生物の生存率を低減させるステップを含む、方法を提供する。
ある実施形態では、微生物には細菌が含まれる。ある実施形態では、微生物には真菌またはウイルスが含まれる。他の微生物についても考察する。
鉄キレート剤の例としては、デフェリプロン、デフェロキサミン、デフェラシロクス、テトラミン酸、デスフェリチオシン、8−ヒドロキシキノリン類似体、クリオキノール、O−トレンソックス(トリス−N−(2−アミノエチル−[8−ヒドロキシキノリン−5−スルホネート−7−カルボキサミド]アミン)、タキピリジン(N,N’,N”−トリス(2−ピリジルメチル)−シス,シス−1,3,5−トリアミノシクロヘキサン)、デクラゾン、チオセミカルバゾン、Triapine(登録商標)(3−アミノピリジン−2−カルボキシアルデヒドチオセミカルバゾン[3−AP])、ピリドキサールイソニコチノイルヒドラゾン(PIH)およびその類似体、植物性化学物質、プロアントシアニジン、エピカテキン、フラボノールおよびアントシアニン、クルクミン、アポシアニン、コラビロン、フロラノール、ニトリロトリアセテート、ピクノジェノール、プロシアニジン、バイカレイン、バイカリン、ケルセチン、テトラメチルピラジン、フェルラ酸、リグストラジン、ケルセチン、クリシン、3−ヒドロキシフラボン、3’,4’−ジヒドロキシフラボン、ルチンおよびフラボン、フェロジン、没食子酸、カテキン、エピガロカテキンガレート(EGCG)およびプロアントシアニジン、緑茶カテキン、紅茶テアフラビン、エチレンジアミン四酢酸/エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)、クエン酸、ホスホン酸/ホスホネートおよびその類似体、アミノホスホネートおよびその類似体、ビスホスホネートおよびその類似体、ならびに/または、前記のもの何れかの許容される塩、誘導体(例えば、化学的に置換された形態など)、溶媒和物、水和物、互変異性体、プロドラッグ、もしくは立体異性体が挙げられる。他の鉄キレート剤ついても考察する。
ある実施形態では、本方法は、微生物を、以下のようなある濃度の鉄キレート剤に暴露するステップを含む:100mM以下、50mM以下、20mM以下、10mM以下、5mM以下、4mM以下、3mM以下、2mM以下、1.5mM以下のデフェリプロン、1mM以下、0.5mM以下、0.4mM以下、0.3mM以下、0.2mM以下、または0.1mM以下。
ある実施形態では、鉄キレート剤には、デフェリプロン(3−ヒドロキシ−1,2−ジメチルピリジン−4(1H)−オン/1,2−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−ピリジノン)、および/または、許容される塩、化学的に置換された形態などのその誘導体、その溶媒和物、その互変異性体、そのプロドラッグ、もしくはその立体異性体が含まれる。他の鉄キレート剤についても考察する。
ある実施形態では、本方法は、微生物を、50mM以下のデフェリプロン、20mM以下のデフェリプロン、10mM以下のデフェリプロン、5mM以下のデフェリプロン、4mM以下のデフェリプロン、3mM以下のデフェリプロン、2mM以下のデフェリプロン、1.5mM以下のデフェリプロン、1mM以下のデフェリプロン、0.5mM以下のデフェリプロンに暴露するステップを含む。他の濃度についても考察する。
ある実施形態では、本方法は、微生物を20mM以下のデフェリプロンに暴露するステップを含む。
ある実施形態では、微生物には細菌が含まれ、本方法は、細菌を、50mM以下のデフェリプロン、20mM以下のデフェリプロン、10mM以下のデフェリプロン、5mM以下のデフェリプロン、4mM以下のデフェリプロン、3mM以下のデフェリプロン、2mM以下のデフェリプロン、1.5mM以下のデフェリプロン、1mM以下のデフェリプロン、0.5mM以下のデフェリプロンに暴露するステップを含む。
ある実施形態では、微生物には細菌が含まれ、本方法は、細菌を20mM以下のデフェリプロンに暴露するステップを含む。
ある実施形態では、微生物を、0.1〜50mM、0.2〜50mM、0.3〜50mM、0.4〜50mM、0.5〜50mM、1.0〜50mM、1.5〜50mM、2.0〜50mM、3.0〜50mM、4.0〜50mM、5.0〜50mM、10〜50mM、20〜50mM、30〜50mM、40〜50mM、0.1〜40mM、0.2〜40mM、0.3〜40mM、0.4〜40mM、0.5〜40mM、1.0〜40mM、1.5〜40mM、2.0〜40mM、3.0〜40mM、4.0〜40mM、5.0〜40mM、10〜40mM、20〜40mM、30〜40mM、0.1〜30mM、0.2〜30mM、0.3〜30mM、0.4〜30mM、0.5〜30mM、1.0〜30mM、1.5〜30mM、2.0〜30mM、3.0〜30mM、4.0〜30mM、5.0〜30mM、10〜30mM、20〜30mM、0.1〜20mM、0.2〜20mM、0.3〜20mM、0.4〜20mM、0.5〜20mM、1.0〜20mM、1.5〜20mM、2.0〜20mM、3.0〜20mM、4.0〜20mM、5.0〜20mM、10〜20mM、0.1〜10mM、0.2〜10mM、0.3〜10mM、0.4〜10mM、0.5〜10mM、1.0〜10mM、1.5〜10mM、2.0〜10mM、3.0〜10mM、4.0〜10mM、5.0〜10mM、0.1〜5mM、0.2〜5mM、0.3〜5mM、0.4〜5mM、0.5〜5mM、1.0〜5mM、1.5〜5mM、2.0〜5mM、3.0〜5mM、4.0〜5mM、0.1〜4mM、0.2〜4mM、0.3〜4mM、0.4〜4mM、0.5〜4mM、1.0〜4mM、1.5〜4mM、2.0〜4mM、3.0〜4mM、0.1〜3mM、0.2〜3mM、0.3〜3mM、0.4〜3mM、0.5〜3mM、1.0〜3mM、1.5〜3mM、2.0〜3mM、0.1〜2mM、0.2〜2mM、0.3〜2mM、0.4〜2mM、0.5〜2mM、1.0〜2mM、1.5〜2mM、0.1〜1.5mM、0.2〜1.5mM、0.3〜1.5mM、0.4〜1.5mM、0.5〜1.5mM、1.0〜1.5mM、0.1〜1mM、0.2〜1mM、0.3〜1mM、0.4〜1mM、0.5〜1mM、0.1〜0.5mM、0.2〜0.5mM、0.3〜0.5mM、0.4〜0.5mM、0.1〜0.4mM、0.2〜0.4mM、0.3〜0.4mM、0.1〜0.3mM、0.2〜0.3mM、または0.1〜0.2mMの範囲の濃度のデフェリプロンに暴露するステップを含む。他の範囲についても考察する。
ある実施形態では、微生物には細菌が含まれ、本方法は、細菌を、0.1〜50mM、0.2〜50mM、0.3〜50mM、0.4〜50mM、0.5〜50mM、1.0〜50mM、1.5〜50mM、2.0〜50mM、3.0〜50mM、4.0〜50mM、5.0〜50mM、10〜50mM、20〜50mM、30〜50mM、40〜50mM、0.1〜40mM、0.2〜40mM、0.3〜40mM、0.4〜40mM、0.5〜40mM、1.0〜40mM、1.5〜40mM、2.0〜40mM、3.0〜40mM、4.0〜40mM、5.0〜40mM、10〜40mM、20〜40mM、30〜40mM、0.1〜30mM、0.2〜30mM、0.3〜30mM、0.4〜30mM、0.5〜30mM、1.0〜30mM、1.5〜30mM、2.0〜30mM、3.0〜30mM、4.0〜30mM、5.0〜30mM、10〜30mM、20〜30mM、0.1〜20mM、0.2〜20mM、0.3〜20mM、0.4〜20mM、0.5〜20mM、1.0〜20mM、1.5〜20mM、2.0〜20mM、3.0〜20mM、4.0〜20mM、5.0〜20mM、10〜20mM、0.1〜10mM、0.2〜10mM、0.3〜10mM、0.4〜10mM、0.5〜10mM、1.0〜10mM、1.5〜10mM、2.0〜10mM、3.0〜10mM、4.0〜10mM、5.0〜10mM、0.1〜5mM、0.2〜5mM、0.3〜5mM、0.4〜5mM、0.5〜5mM、1.0〜5mM、1.5〜5mM、2.0〜5mM、3.0〜5mM、4.0〜5mM、0.1〜4mM、0.2〜4mM、0.3〜4mM、0.4〜4mM、0.5〜4mM、1.0〜4mM、1.5〜4mM、2.0〜4mM、3.0〜4mM、0.1〜3mM、0.2〜3mM、0.3〜3mM、0.4〜3mM、0.5〜3mM、1.0〜3mM、1.5〜3mM、2.0〜3mM、0.1〜2mM、0.2〜2mM、0.3〜2mM、0.4〜2mM、0.5〜2mM、1.0〜2mM、1.5〜2mM、0.1〜1.5mM、0.2〜1.5mM、0.3〜1.5mM、0.4〜1.5mM、0.5〜1.5mM、1.0〜1.5mM、0.1〜1mM、0.2〜1mM、0.3〜1mM、0.4〜1mM、0.5〜1mM、0.1〜0.5mM、0.2〜0.5mM、0.3〜0.5mM、0.4〜0.5mM、0.1〜0.4mM、0.2〜0.4mM、0.3〜0.4mM、0.1〜0.3mM、0.2〜0.3mM、または0.1〜0.2mMの範囲の濃度のデフェリプロンに暴露するステップを含む。他の範囲についても考察する。
ある実施形態では、鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤には、非鉄ポルフィリンが含まれる。
用語「ポルフィリン」は、本明細書で用いる場合、ポルフィリン構造に基づく分子を指し、その誘導体が含まれる。
ある実施形態では、非鉄ポルフィリンには、非鉄メタロポルフィリンが含まれる。ある実施形態では、非鉄ポルフィリンには、非鉄メタロプロトポルフィリンが含まれる。
用語「非鉄メタロポルフィリン」は、以下のような金属イオン(M)に配位結合したポルフィリン基を有する非鉄含有剤を指す:
(式中、Mは金属イオンであり、R1〜R4の何れか1つもしくは複数および/またはR1’〜R4’の何れか1つもしくは複数は、同じまたは異なる基である。)
ある実施形態では、非鉄ポルフィリンには、ガリウムプロトポルフィリン、マンガンプロトポルフィリン、亜鉛プロトポルフィリン、インジウムプロトポルフィリン、コバルトプロトポルフィリン、ルテニウムプロトポルフィリン、銀プロトポルフィリン、または銅プロトポルフィリンのうち1つまたは複数が含まれる。
ある実施形態では、非鉄ポルフィリンには、ガリウムプロトポルフィリンが含まれる。
ある実施形態では、非鉄ポルフィリンには、以下の構造を有する化合物が含まれる:
(式中、Meは、ガリウム、マンガン、亜鉛、インジウム、コバルト、ルテニウム、銀、および銅;ならびに/または、その許容される塩、置換された誘導体、溶媒和物、互変異性体、もしくは立体異性体から選択される。ある実施形態では、Meは、ガリウムである。)
ある実施形態では、本方法は、微生物を、以下のような、ある濃度の鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤に暴露するステップを含む:100mM以下、50mM以下、20mM以下、10mM以下、5mM以下、4mM以下、3mM以下、2mM以下、1.5mM以下のデフェリプロン、1mM以下、0.5mM以下、0.4mM以下、0.3mM以下、0.2mM以下、または0.1mM以下。
ある実施形態では、本方法は、微生物を、以下のような、ある濃度の鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤に暴露するステップを含む:1mg/ml以下、500μg/ml以下、200μg/ml以下、100μg/ml以下、50μg/ml以下、25μg/ml以下、10μg/ml以下、5μg/ml以下、または1μg/ml以下。
ある実施形態では、本方法は、微生物を、200μg/ml以下、100μg/ml以下、50μg/ml以下、25μg/ml以下、10μg/ml以下、5μg/ml以下、または1μg/ml以下の非鉄ポルフィリンに暴露するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、微生物を200μg/ml以下の非鉄ポルフィリンに暴露するステップを含む。
ある実施形態では、微生物には細菌が含まれ、本方法は、微生物を、200μg/ml以下、100μg/ml以下、50μg/ml以下、25μg/ml以下、10μg/ml以下、5μg/ml以下、または1μg/ml以下の非鉄ポルフィリンに暴露するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、微生物を、1〜200μg/ml、5〜200μg/ml、10〜200μg/ml、25〜200μg/ml、50〜200μg/ml、100〜200μg/ml、1〜100μg/ml、5〜100μg/ml、10〜100μg/ml、25〜100μg/ml、50〜100μg/ml、1〜50μg/ml、5〜50μg/ml、10〜500μg/ml、25〜50μg/ml、1〜25μg/ml、5〜25μg/ml、10〜25μg/ml、1〜10μg/ml、5〜10μg/ml、または1〜5μg/mlの範囲の濃度の非鉄ポルフィリンに暴露するステップを含む。
ある実施形態では、微生物には細菌が含まれ、本方法は、微生物を、1〜200μg/ml、5〜200μg/ml、10〜200μg/ml、25〜200μg/ml、50〜200μg/ml、100〜200μg/ml、1〜100μg/ml、5〜100μg/ml、10〜100μg/ml、25〜100μg/ml、50〜100μg/ml、1〜50μg/ml、5〜50μg/ml、10〜500μg/ml、25〜50μg/ml、1〜25μg/ml、5〜25μg/ml、10〜25μg/ml、1〜10μg/ml、5〜10μg/ml、または1〜5μg/mlの範囲の濃度の非鉄ポルフィリンに暴露するステップを含む。
本開示のある実施形態は、本明細書に記載の鉄キレート剤および非鉄ポルフィリンの使用を提供する。
ある実施形態では、本方法は、1つまたは複数の抗生物質に対し耐性のある細菌の生存率を低減させる。
ある実施形態では、本方法は、細菌の小コロニー変異体または細菌の抗生物質耐性変異体の生存率を低減させる。
ある実施形態では、微生物はin vitroで存在する。
ある実施形態では、微生物は、装置、系、容器、流動体、または部位に存在するように、非生物学的環境に存在する。例えば、本方法を用いて、医療装置を処置する、または、水貯蔵容器もしくは送水管を処置することができる。
ある実施形態では、微生物は、ある対象で用いる、微生物(例えば、細菌など)で汚染されている可能性のある機器、装置、または移植片に存在し、したがって、使用前に処置して微生物を除去する、および/または、対象が微生物に感染する可能性を低減させる必要がある。例としては、カテーテル、静脈内カテーテル、血管カテーテル、髄液シャント、人工心臓弁、尿路カテーテル、人工関節および整形外科固定具、心臓ペースメーカ、腹膜透析カテーテル、子宮内避妊具、胆道ステント、義歯、乳房インプラント、ならびに、コンタクトレンズが挙げられる。例えば、このような装置は、使用前に、鉄キレート剤溶液で処置し、続いて、非鉄ポルフィリン溶液で処置することができる。
ある実施形態では、微生物は生物学的環境に存在する。
ある実施形態では、微生物は生物学的環境にin vitroで存在する。
ある実施形態では、微生物は生物系に存在する。用語「生物系」は、細胞系を指し、これには、in vivo、ex vivo、in vitroの1つもしくは複数の細胞;in vivoもしくはex vivoの組織もしくは臓器、または対象全体が含まれる。ある実施形態では、生物系には、1つもしくは複数のin vitroの細胞、1つもしくは複数の培養細胞、1つもしくは複数のex vivo細胞、組織もしくは臓器、または、ヒトもしくは動物対象が含まれる。
ある実施形態では、微生物はin vivoで存在する。ある実施形態では、対象は、微生物に感染している。
ある実施形態では、対象とは、ヒト対象、哺乳類対象、家畜動物(ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタなど)、飼育動物(イヌまたはネコなど)、ならびに、非ヒト霊長類、ウサギ、ラット、マウス、鳥、および実験動物などの他のタイプの動物である。他のタイプの動物についても考察する。本開示を獣医学に適用することについても考察する。
ある実施形態では、本方法を、創傷治癒に有益な処置レジメン、感染創傷の創傷治癒に有益な処置レジメン、創傷が手術中(例えば、開腹手術、副鼻腔手術など)に生じる場合または火傷である場合の創傷治癒に有益な処置レジメン、慢性創傷、糖尿病性創傷、および/または糖尿病性潰瘍の創傷治癒に有益な処置レジメンで用いる。処置の有効性を評価する方法は、当技術分野において既知である。
ある実施形態では、本方法を、手術創の感染の可能性を低減させるような、術中および/または術後の処置レジメンで用いる。例えば、本方法を、術後の感染症の可能性の低減を補佐する、開腹手術後または副鼻腔手術中および/もしくは副鼻腔手術後の処置レジメンで用いることができる。
微生物の生存率を評価する方法は、当技術分野において既知である。
ある実施形態では、本方法を用いて、1つまたは複数の微生物の生存率を低減させる。ある実施形態では、本方法を用いて、1つまたは複数の微生物を死滅させる。
ある実施形態では、方法法は、微生物の生存率を、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、99.9%以上、99.99%以上、99.999%以上、低減させる。ある実施形態では、本方法は、微生物の生存率を、10分の1以下、100分の1以下、1000分の1以下、104分の1以下、105分の1以下、または106分の1以下にするステップを含む。他のレベルの生存率の低減についても考察する。
ある実施形態では、本方法は、実質的に、全ての微生物を死滅させる。ある実施形態では、本方法は、微生物の生存率を、検出可能レベル未満にまで低減させる。ある実施形態では、本方法は、微生物の生存率を、臨床的に意義のあるレベル未満にまで低減させる。
ある実施形態では、微生物には真菌が含まれる。真菌種の例としては、アスペルギルス、アルテルナリア、カンジダ、マラセチア、フサリウム、ペニシリウム、カーブラリア、クリプトコッカス、ヒストプラズマ、パラコクシジオイデス、ニューモシスチス、ピチウム、リゾプス、トリコスポロン、アウレオバシジウム、クラドスポリウム、ウルクラジウム、エンギオドンチウム、およびトリコフィトンが挙げられる。他の真菌についても考察する。
ある実施形態では、微生物にはウイルスが含まれる。ウイルスの例としては、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、ライノウイルス、パラインフルエンザ、コロナウイルス、ヒトパピローマウイルス、HIV−1、サイトメガロウイルス、エンテロウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルス1およびB型肝炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、出血性アレナウイルス、イヌおよびネコパルボウイルス、ならびに、マウス乳癌ウイルスが挙げられる。他のタイプのウイルスについても考察する。
ある実施形態では、微生物には、以下の種または属より選択される微生物が含まれる:根粒菌、ボルデテラ属、赤痢菌、大腸菌、ビブリオ、アエロモナス属、野兎病菌、バクテロイデス属、カンピロバクター・ジェジュニ、藍色細菌、枯草菌、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、ナイセリア属、緑膿菌、サルモネラ属、ヘリコバクター・ビロリ属、インフルエンザ菌、コリネバクテリウム属、マイコバクテリウム属、ストレプトマイセス属およびサッカロミケス属、アシネトバクター属、プロテウス属、サルモネラ属、ストレプトコッカス属、モラクセラ属、クロストリジウム属、クレブシエラ属、クラミジア属、レジオネラ、パスツレラ属、エシェリキア属、および、エンテロバクター属。
ある実施形態では、微生物には細菌が含まれる。ある実施形態では、微生物には、グラム陽性菌、グラム陰性菌、グラム検定非応答菌、好気性菌、または嫌気性菌が含まれる。
ある実施形態では、細菌は、細菌の小コロニー変異体または細菌の抗生物質耐性変異体、例えば、スタフィロコッカス菌種またはシュードモナス菌種の小コロニー変異体である。
細菌の属または種の例としては、アビオトロフィア属、アクロモバクター属、アシダミノコッカス属、アシドボラクス属、アシネトバクター属、アクチノバチルス属、アクチノバクラム属、アクチノマジュラ属、アクチノマイセス属、アエロコッカス属、アエロモナス属、アフピア属、アグロバクテリウム属、アルカリゲネス属、アロイオコッカス属、アルテロモナス属、アミコラータ属、アミコラトプシス属、アネロビオスピリルム属、アネロラブダス属、アラキニア属、アルカノバクテリウム属、アルコバクター属、アルスロバクター属、アトポビウム属、オーレオバクテリウム属、バクテロイデス属、バルネアトリックス属、バルトネラ属、ベルゲイエラ属、ビフィドバクテリウム属、ビロフィラ属、ブランハメラ属、ボレリア属、ボルデテラ属、ブラキスピラ属、ブレビバチルス属、ブレビバクテリウム属、ブレブンディモナス属、ブルセラ属、バークホルデリア属、ブティアウクセラ属、ブチリビブリオ属、カリマトバクテリウム属、カンピロバクター属、キャプノサイトファーガ属、カルジオバクテリウム属、カトネラ属、セデセア属、セルロモナス属、センチペダ属、クラミジア属、クラミドフィラ属、クロモバクテリウム属、クリセオバクテリウム属、クリセオモナス属、シトロバクター属、クロストリジウム属、コリンセラ属、コマモナス属、コリネバクテリウム属、コクシエラ属、クリプトバクテリウム属、デルフチア属、デルマバクター属、デルマトフィルス属、デスルホモナス属、デスルホビブリオ属、ジアリスタ属、ディケロバクター属、ドロシコッカス属、ドロシグラヌルム属、エドワージエラ属、エッゲルセラ属、エールリヒア属、エイケネラ属、エンペドバクター属、エンテロバクター属、エンテロコッカス属、エルウィニア属、エリシペロスリクス属、エシェリキア属、ユーバクテリウム属、エウィンゲラ属、エキシグオバクテリウム属、ファクラミア属、フィリファクター属、フラビモナス属、フラボバクテリウム属、フランシセラ属、フソバクテリウム属、ガードネレラ属、グロビカテラ属、ゲメラ属、ゴルドナ属、ヘモフィルス属、ハフニア属、ヘリコバクター属、ハロコックス属、ホールディマニア属、イグナビグラナム属、ジョンソネラ属、キンゲラ属、クレブシエラ属、コクリア属、コセレラ属、クルチア属、キトコッカス属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ロートロピア属、レクレルシア属、レジオネラ属、レミノレラ属、レプトスピラ属、レプトトリキア属、リューコノストック属、リステリア属、リストネラ属、メガスフェラ属、メチロバクテリウム属、マイクロバクテリウム属、ミクロコッカス属、ミツオケラ属、モビルンカス属、モエレレラ属、モラクセラ属、モルガネラ属、マイコバクテリウム属、マイコプラズマ属、ミロイデス属、ナイセリア属、ノカルジア属、ノカルジオプシス属、オクロバクテリウム属、オエルスコビア属、オリゲラ属、オリエンティア属、パエニバチルス属、パントエア属、パラクラミジア属、パスツレラ属、ペディオコッカス属、ペプトコッカス属、ペプトストレプトコッカス属、フォトバクテリウム属、フォトラブダス属、プレジオモナス属、ポルフィロモナス属、プレボテラ属、プロピオニバクテリウム属、プロテウス属、プロビデンシア属、シュードモナス属、シュードノカルディア属、シュードラミバクター属、サイクロバクター属、ラーネラ属、ラルストニア属、ロドコッカス属、リケッチア属、ロシャリメア属、ロゼオモナス属、ロチア属、ルミノコッカス属、サルモネラ属、セレノモナス属、セルプリナ属、セラチア属、シュワネラ属、シゲラ属、シムカニア属、スラッキア属、スフィンゴバクテリウム属、スフィンゴモナス属、スピリルム属、スタフィロコッカス属、ステノトロホモナス属、ストマトコッカス属、ストレプトバチルス属、ストレプトコッカス属、ストレプトミセス属、サクシニビブリオ属、ステレラ属、ストネラ属、テイタメラ属、ティセレラ属、トラバルシエラ属、トレポネーマ属、トロフェリマ属、ツカムレラ属、ツリセラ属、ウレアプラズマ属、バゴコッカス属、ベイロネラ属、ビブリオ属、ウィークセラ属、ウォリネラ属、ザントモナス属、ゼノラブダス属、エルシニア属およびヨケネラ属;例えばヒト型結核菌、マイコバクテリウム・ボビス、マイコバクテリウム・チフィムリウム、ウシ型結核菌株BCG、BCG亜株、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ、マイコバクテリウム・アフリカヌム、マイコバクテリウム・カンサシ、マイコバクテリウム・マリヌム、マイコバクテリウム・ウルセランス、ヨーネ菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腺疫菌、化膿連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクチア、リステリア・モノサイトゲネス、リステリア・イバノビイ、炭疽菌、枯草菌、ノカルジア・アステロイデス、アクチノミセス・イスラエリ、プロピオニバクテリウム・アクネス、およびエンテロコッカス種等のグラム陽性細菌、ならびに、例えば、クロストリジウム・テタニ、クロストリジウム・パーフリンジェンス、クロストリジウム・ボツリナム、シュードモナス・エルギノーサ、コレラ菌、アクチノバチルス・プルロニューモニエ、パスツレラ・ヘモリチカ、パスツレラ・マルトシダ、レジオネラ・ニューモフィラ、チフス菌、ブルセラ・アボルタス、クラミジア・トラコマチス、クラミドフィラ・シタッシ、コクシエラ・バーネッティイ、大腸菌、髄膜炎菌、淋菌、インフルエンザ菌、軟性下疳菌、ペスト菌、エルシニア・エンテロコリチカ、大腸菌、エシェリキア・ヒラエ、セパシア菌、類鼻疽菌、野兎病菌、バクテロイデス・フラジリス、フソバクテリウム・ヌクレアタム、およびコウドリア・ルミナンチウムなどのグラム陰性菌が挙げられる。他のタイプの細菌についても考察する。ある実施形態では、細菌には、エンテロコッカス・フェカーリス、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、緑色レンサ球菌、大腸菌、クレブシエラ・ニューモニエ、プロテウス・ミラビリス、緑膿菌のうち1つまたは複数、ならびに、前記何れかの小コロニー変異体または抗生物質耐性変異体が含まれる。
ある実施形態では、微生物には、スタフィロコッカス属の細菌、または、その小コロニー変異体もしくはその抗生物質耐性変異体が含まれる。ある実施形態では、微生物には、黄色ブドウ球菌またはその小コロニー変異体もしくはその抗生物質耐性変異体が含まれる。
ある実施形態では、微生物には、シュードモナス属、または、その小コロニー変異体もしくはその抗生物質耐性変異体が含まれる。ある実施形態では、微生物には、緑膿菌、または、その小コロニー変異体もしくはその抗生物質耐性変異体が含まれる。
ある実施形態では、微生物には、以下の属から選択される微生物が含まれる:スタフィロコッカス属、シュードモナス属、もしくはアシネトバクター属、または、前記何れかの小コロニー変異体もしくは抗生物質耐性変異体。
ある実施形態では、微生物には、黄色ブドウ球菌または表皮ブドウ球菌が含まれる。ある実施形態では、微生物には緑膿菌が含まれる。ある実施形態では、微生物には、アシネトバクター・ジョンソニイが含まれる。
ある実施形態では、微生物には、抗生物質耐性微生物が含まれる。ある実施形態では、微生物には、1つまたは複数の抗生物質に耐性のある細菌が含まれる。
ある実施形態では、本明細書に記載の方法は、細菌の、抗生物質に対する感受性を増大させる。ある実施形態では、感受性の増大は、細菌の生存率を低減させるのに必要な抗生物質の有効濃度を下げる。
本開示のある実施形態は、抗生物質に対する細菌の感受性を増大させる方法であって、細菌を有効量の鉄キレート剤に暴露し、続いて、細菌を、有効量の非鉄ポルフィリンに暴露することにより、細菌の抗生物質に対する感受性を増大させるステップを含む、方法を提供する。
抗生物質の例は本明細書に記載の通りである。
ある実施形態では、本明細書に記載の方法は、1つまたは複数の抗生物質に対し耐性のある細菌の生存率を低減させる。
本開示のある実施形態は、抗生物質に対し耐性のある細菌の生存率を低減させる方法であって、細菌を有効量の鉄キレート剤に暴露し、続いて、細菌を有効量の非鉄ポルフィリンに暴露することにより、細菌の生存率を低減させるステップを含む、方法を提供する。
抗生物質の例は本明細書に記載の通りである。
本開示のある実施形態は、対象における抗生物質耐性細菌感染症を予防および/または処置するための鉄キレート剤および非鉄ポルフィリンの使用を提供する。
ある実施形態では、抗生物質耐性細菌は、本明細書に記載する1つまたは複数の抗生物質に対し耐性がある。
ある実施形態では、微生物には、バイオフィルムの一部を形成する細菌が含まれる。ある実施形態では、微生物には、対象の細菌感染症に関係する細菌が含まれる。ある実施形態では、微生物には、対象のバイオフィルムに関係する細菌感染症に関係する細菌が含まれる。
バイオフィルムに関係する細菌感染症の例としては、再発性および急性の前立腺炎を引き起こす持続性感染症の原因となるような、尿路感染症に関係する細菌バイオフィルム(例えば、大腸菌、緑膿菌、腸球菌、クレブシエラ、エンテロバクター種、プロテウス、セラチア);急性創傷または慢性創傷を含む創傷(例えば、黄色ブドウ球菌、緑膿菌)、肺感染症(例えば、患者に嚢胞性線維症を引き起こすような緑膿菌)、慢性骨髄炎(例えば、黄色ブドウ球菌)、副鼻腔炎(例えば、黄色ブドウ球菌)、尿路感染症(大腸菌、緑膿菌)、結核(例えば、結核菌)、および、ヒトの身体に侵入した異物に関係する感染症(例えば、黄色ブドウ球菌)が挙げられる。
ある実施形態では、細菌感染症には副鼻腔炎が含まれる。ある実施形態では、細菌感染症には、慢性副鼻腔炎が含まれる。ある実施形態では、細菌感染症には、急性副鼻腔炎が含まれる。
ある実施形態では、細菌感染症には、感染創傷、慢性創傷、糖尿病性創傷、または糖尿病性潰瘍が含まれる。ある実施形態では、細菌感染症には、術後感染創傷または、開腹手術もしくは副鼻腔手術後の感染創傷が含まれる。ある実施形態では、細菌感染症には、火傷が含まれる。
感染創傷を評価する方法は、当技術分野において既知である。
用語「暴露すること(exposing)」および「暴露する(expose)」および「暴露(exposure)」などの関連用語は、本明細書で用いる場合、直接的および/または間接的に、微生物を薬剤に接触させること、および/または、微生物を薬剤を用いて処置することを指す。
微生物を薬剤に暴露する方法は、当技術分野において既知である。
例えば、微生物を直接薬剤に暴露する、組成物中の薬剤に暴露する、または、後で薬剤に変換される薬剤の代用形に暴露することができる。
in vitroの微生物については、微生物を、例えば、直接薬剤に暴露する、または、液組成物などの組成物中の薬剤に暴露することができる。
ex vivoの微生物については、微生物を、例えば、直接的または間接的に薬剤に暴露することができ、例えば、組織または臓器に薬剤を含む組成物を灌流させる。
in vivoの生物については、微生物を、例えば、感染部位に直接局所適用することにより、または、薬剤を対象に投与することにより、直接的または間接的に薬剤に暴露することができる。
ある実施形態では、本方法は、微生物を連続的に鉄キレート剤に暴露するステップを含む。ある実施形態では、本方法は、微生物を不連続的に鉄キレート剤に暴露するステップを含む。ある実施形態では、本方法は、微生物を、経時的に減量する鉄キレート剤に暴露するステップを含む。ある実施形態では、本方法は、微生物を、経時的に増量する鉄キレート剤に暴露するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、微生物を、鉄キレート剤の1回もしくは複数回の繰り返し投与または連続投与に暴露するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、微生物を鉄キレート剤に暴露した2時間以上後に、該微生物を鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤に暴露するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、微生物を鉄キレート剤に暴露した2時間以上後に、該微生物を非鉄ポルフィリンに暴露するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、微生物を鉄キレート剤に暴露した1時間以上後、2時間以上後、3時間以上後、4時間以上後、6時間以上後、8時間以上後、10時間以上後、12時間以上後、18時間以上後、24時間以上後、36時間以上後、48時間以上後、または72時間以上後に、該微生物を鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤に暴露するステップを含む。他の時間についても考察する。
ある実施形態では、本方法は、微生物を鉄キレート剤に暴露した1時間以上後、2時間以上後、3時間以上後、4時間以上後、6時間以上後、8時間以上後、10時間以上後、12時間以上後、18時間以上後、24時間以上後、36時間以上後、48時間以上後、または72時間以上後に、該微生物を非鉄ポルフィリンに暴露するステップを含む。他の時間についても考察する。
ある実施形態では、本方法は、微生物を鉄キレート剤に暴露した8時間以上後に、該微生物を鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤に暴露するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、微生物を鉄キレート剤に暴露した8時間以上後に、該微生物を非鉄ポルフィリンに暴露するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、微生物を鉄キレート剤に暴露した1時間以上後、2時間以上後、3時間以上後、4時間以上後、6時間以上後、8時間以上後、10時間以上後、12時間以上後、18時間以上後、24時間以上後、36時間以上後、48時間以上後、または72時間以上後に、該微生物を鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤に暴露して、その結果、鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックの組成物からの放出を生じさせる、ステップを含む。
ある実施形態では、微生物は、対象の感染症に関係がある。ある実施形態では、本方法は、対象に鉄キレート剤を投与し、続いて、該対象に鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤を投与するステップを含む。投与法は、本明細書に記載の通りである。
ある実施形態では、微生物は、細菌感染症に関係する細菌である。
ある実施形態では、本方法は、細菌感染部位への、鉄キレート剤および/または鉄ミメティックもしくはヘムミメティックの局所投与を含む。
ある実施形態では、本方法は、対象に、鉄キレート剤を投与し、続いて、該対象に非鉄ポルフィリンを投与するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、対象に鉄キレート剤を含む組成物を投与し、続いて、該対象に鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤を含む組成物を投与するステップを含む。ある実施形態では、本方法は、対象に鉄キレート剤を含む組成物を投与し、続いて、該対象に非鉄ポルフィリンを含む組成物を投与するステップを含む。
ある実施形態では、微生物を0.1nM以上、0.5nM以上、1nM以上、5nM以上、10nM以上、50nM以上、100nM以上、500nM以上、1μM以上、5μM以上、10μM以上、100μM以上、500μM以上、1mM以上、または10mM以上の濃度に暴露するように、鉄キレート剤を対象に投与する。ある実施形態では、本方法は、微生物を、0.1〜50mM、0.2〜50mM、0.3〜50mM、0.4〜50mM、0.5〜50mM、1.0〜50mM、1.5〜50mM、2.0〜50mM、3.0〜50mM、4.0〜50mM、5.0〜50mM、10〜50mM、20〜50mM、30〜50mM、40〜50mM、0.1〜40mM、0.2〜40mM、0.3〜40mM、0.4〜40mM、0.5〜40mM、1.0〜40mM、1.5〜40mM、2.0〜40mM、3.0〜40mM、4.0〜40mM、5.0〜40mM、10〜40mM、20〜40mM、30〜40mM、0.1〜30mM、0.2〜30mM、0.3〜30mM、0.4〜30mM、0.5〜30mM、1.0〜30mM、1.5〜30mM、2.0〜30mM、3.0〜30mM、4.0〜30mM、5.0〜30mM、10〜30mM、20〜30mM、0.1〜20mM、0.2〜20mM、0.3〜20mM、0.4〜20mM、0.5〜20mM、1.0〜20mM、1.5〜20mM、2.0〜20mM、3.0〜20mM、4.0〜20mM、5.0〜20mM、10〜20mM、0.1〜10mM、0.2〜10mM、0.3〜10mM、0.4〜10mM、0.5〜10mM、1.0〜10mM、1.5〜10mM、2.0〜10mM、3.0〜10mM、4.0〜10mM、5.0〜10mM、0.1〜5mM、0.2〜5mM、0.3〜5mM、0.4〜5mM、0.5〜5mM、1.0〜5mM、1.5〜5mM、2.0〜5mM、3.0〜5mM、4.0〜5mM、0.1〜4mM、0.2〜4mM、0.3〜4mM、0.4〜4mM、0.5〜4mM、1.0〜4mM、1.5〜4mM、2.0〜4mM、3.0〜4mM、0.1〜3mM、0.2〜3mM、0.3〜3mM、0.4〜3mM、0.5〜3mM、1.0〜3mM、1.5〜3mM、2.0〜3mM、0.1〜2mM、0.2〜2mM、0.3〜2mM、0.4〜2mM、0.5〜2mM、1.0〜2mM、1.5〜2mM、0.1〜1.5mM、0.2〜1.5mM、0.3〜1.5mM、0.4〜1.5mM、0.5〜1.5mM、1.0〜1.5mM、0.1〜1mM、0.2〜1mM、0.3〜1mM、0.4〜1mM、0.5〜1mM、0.1〜0.5mM、0.2〜0.5mM、0.3〜0.5mM、0.4〜0.5mM、0.1〜0.4mM、0.2〜0.4mM、0.3〜0.4mM、0.1〜0.3mM、0.2〜0.3mM、または0.1〜0.2mMの範囲の濃度のデフェリプロンに暴露するステップを含む。他の範囲についても考察する。
ある実施形態では、鉄キレート剤を、以下の選択範囲のうち1つの範囲の量で、対象に投与する:1μg/kg体重〜100mg/kg体重;1μg/kg体重〜10mg/kg体重;1μg/kg体重〜1mg/kg体重;1μg/kg体重〜100μg/kg体重;1μg/kg体重〜10μg/kg体重;10μg/kg体重〜100mg/kg体重;10μg/kg体重〜10mg/kg体重;10μg/kg体重〜1mg/kg体重;10μg/kg体重〜100μg/kg体重;100μg/kg体重〜100mg/kg体重;100μg/kg体重〜10mg/kg体重;100μg/kg体重〜1mg/kg体重;1mg/kg体重〜10mg/kg体重;および10mg/kg体重〜100mg/kg体重。投与の用量および頻度は、当業者により決定され得る。
ある実施形態では、微生物を以下のようなある濃度に暴露するように、鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤を対象に投与する:100mM以下、50mM以下、20mM以下、10mM以下、5mM以下、4mM以下、3mM以下、2mM以下、1.5mM以下のデフェリプロン、1mM以下、0.5mM以下、0.4mM以下、0.3mM以下、0.2mM以下、または0.1mM以下。
ある実施形態では、微生物を以下のようなある濃度に暴露するように、鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤を対象に投与する:1mg/ml以下、500μg/ml以下、200μg/ml以下、100μg/ml以下、50μg/ml以下、25μg/ml以下、10μg/ml以下、5μg/ml以下、または1μg/ml以下。
ある実施形態では、微生物を、200μg/ml以下、100μg/ml以下、50μg/ml以下、25μg/ml以下、10μg/ml以下、5μg/ml以下、または1μg/ml以下の濃度の非鉄ポルフィリンに暴露するように、非鉄ポルフィリンを対象に投与する。
ある実施形態では、微生物を、1〜200μg/ml、5〜200μg/ml、10〜200μg/ml、25〜200μg/ml、50〜200μg/ml、100〜200μg/ml、1〜100μg/ml、5〜100μg/ml、10〜100μg/ml、25〜100μg/ml、50〜100μg/ml、1〜50μg/ml、5〜50μg/ml、10〜500μg/ml、25〜50μg/ml、1〜25μg/ml、5〜25μg/ml、10〜25μg/ml、1〜10μg/ml、5〜10μg/ml、または1〜5μg/mlの範囲の濃度の非鉄ポルフィリンに暴露するように、非鉄ポルフィリンを対象に投与する。
ある実施形態では、微生物は細菌であり、本方法はさらに、細菌を抗生物質または抗菌剤に暴露するステップを含む。
抗生物質の例としては、アミノグリコシド、カルバペネム、セファロスポリン、糖ペプチド、リンコサミド、リポペプチド、マクロライド、モノバクタム、ニトロフラン、オキサゾリジノン、ペニシリン(例えば、アモキシリシン、アモキシシリンおよびクラバネート)、ポリペプチド、キノロン、フルオロキノン、スルホンアミド、およびテトラサイクリンが挙げられる。抗生物質は、商業的に入手可能であり、その使用法は、例えば、eTG completeにより刊行された「Therapeutic Guidelines−Antibiotic」,Version15,2014に記載されているように、当技術分野で既知である。
ある実施形態では、本方法は、細菌を、フルオロキノロン抗生物質および/またはペニシリン抗生物質に暴露するステップを含む。ある実施形態では、本方法は、細菌を、フルオロキノロン抗生物質および/またはペニシリン抗生物質に暴露するステップを含む。ある実施形態では、抗生物質には、シプロフロキサシン、アモキシシリン、ならびに/またはアモキシシリンおよびクラブラン酸が含まれる。
ある実施形態では、本方法は、細菌を抗生物質の繰り返し用量または連続用量に暴露するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、細菌を、鉄キレート剤に暴露する前に、暴露すると同時に、および/または、暴露した後に、抗生物質に暴露するステップを含む。ある実施形態では、本方法は、細菌を、非鉄ポルフィリンに暴露する前に、暴露すると同時に、および/または、暴露した後に、抗生物質に暴露するステップを含む。
本開示のある実施形態は、細菌の生存率を低減させる方法であって:
細菌を有効量の鉄キレート剤に暴露し、続いて、細菌を有効量の非鉄ポルフィリンに暴露するステップと;
細菌を、鉄キレート剤に暴露する前に、暴露すると同時に、および/または、暴露した後に、抗生物質に暴露するステップとを含む、方法を提供する。
ある実施形態では、細菌は、細菌の小コロニー変異体または細菌の抗生物質耐性変異体である。
本明細書に記載の薬剤を、適切な形態で対象に投与することができる。これに関し、用語「投与すること」または「提供すること」には、薬剤を投与すること、または、対象の体内で治療的に有効な量の薬剤を形成すると考えられる薬剤のプロドラッグもしくは薬剤の誘導体を投与することが含まれる。該用語には、例えば、全身的な(例えば、静脈内注射などの注射を介して、タブレット、ピル、カプセル、または製薬の全身投与に有用な他の投薬形態で経口的に)、ならびに、局所的な(例えば、局所経口投与のためのマウスウオッシュなどの溶液を含む、クリーム、溶液、およびゲルなど)投与経路が含まれる。他の投与形態には、コラーゲン、ヒドロキシアパタイト、β−リン酸三カルシウム、またはその組み合わせから生成される足場を含む生体材料足場などの、足場を経由した送達が含まれる。
薬剤を投与する方法は、当技術分野において既知である。
薬剤は、単独で投与する場合もあるし、他の治療用物質および/または薬剤の活性を高める、安定させる、もしくは維持する他の物質との混合物において送達する場合もある。ある実施形態では、投与溶媒(例えば、ピル、タブレット、移植片、注射液など)は、薬剤(単独でもしくは組み合わせて)および/または追加物質を含有することになる。
対象に投与する場合、有効投薬量は、利用する特定の薬剤、投与方式、感染症、およびその重症度、ならびに、処置する対象に関係する種々の身体的要因、例えば、併存症の存在などに応じて異なり得る。1日の投薬量は、投与経路および投与薬剤の性質により異なると予想される。
ある実施形態では、本方法は、対象に、漸増用量薬剤および/または繰り返し用量を投与するステップを含む。ある実施形態では、本方法は、対象に、逓減用量薬剤および/または繰り返し用量を投与するステップを含む。
ある実施形態では、薬剤を経口投与する。ある実施形態では、薬剤を局所投与する。ある実施形態では、薬剤を注射、例えば、静脈内注射などにより投与する。ある実施形態では、薬剤を非経口投与する。ある実施形態では、薬剤を、肺への直接導入、例えば、エアロゾル投与、噴霧投与、および、肺への滴下注入により、投与する。ある実施形態では、薬剤を移植片により投与する。ある実施形態では、薬剤を、皮下注射により、関節内、直腸、鼻腔内、眼内、膣内に、または、経皮的に投与する。ある実施形態では、薬剤を、生物学的移植片または非生物学的移植片により投与する。ある実施形態では、薬剤を、マトリックスに組み込んで投与する。
「静脈内投与」とは、静脈へ物質を直接投与することである。ある実施形態では、薬剤を、静脈内に投与することもできる。静脈内投与に適した、本明細書に記載の薬剤を含有する組成物は、当業者により製剤化され得、典型的には、等張食塩水などの担体または賦形剤を含有する。
「経口投与」とは、物質が口を介して摂取される投与経路であり、口腔投与、唇下投与、および舌下投与が含まれ、ならびに、薬物が口腔粘膜の何れにも直接接触しないように、例えば管を介して行われる場合を除き、経腸投与および呼吸器を通しての投与も含まれる。治療用物質の経口投与向けの典型的形態としては、タブレットまたはカプセルの使用が挙げられる。
ある実施形態では、薬剤をエアロゾルの形態で気道に直接投与することが望ましい場合がある。エアロゾル形態の投与用製剤は既知である。
ある実施形態では、薬剤を、非経口的に(例えば、関節腔に直接)または、腹腔内に投与することもできる。例えば、非イオン化形態のまたは薬理学的に許容される塩である薬剤の溶液または懸濁液を、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤を適切に混ぜた水において、調製することが可能である。分散液も、グリセロール、液ポリエチレングリコール、および油に溶解させたその混合物において、調製することが可能である。保存および使用の通常の条件下では、これらの製剤は、典型的には、微生物の増殖を予防するための防腐剤を含有する。
ある実施形態では、薬剤を、注射により投与することもできる。注射用途に適切な医薬形態としては、滅菌水溶液または滅菌分散液、および、滅菌注射液または分散液をその場で調製するための滅菌粉末が挙げられる。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液ポリエチレングリコール)適切なその混合物、ならびに植物油を含有する、溶媒または分散媒とすることが可能である。
例えば、鉄キレート剤の静脈内使用のための医薬組成物は以下の通りとすることができる:1つまたは複数の医薬的に許容される添加剤および/もしくは賦形剤をオプションとして含む、等張食塩水に溶解させた10〜500mgのデフェリプロン。非鉄ポルフィリンの静脈内使用のための医薬組成物は、以下の通りとすることができる:1つまたは複数の医薬的に許容される添加剤および/もしくは賦形剤をオプションとして含む、等張食塩水に溶解させた10〜500mgのガリウムプロトポルフィリン。
ある実施形態では、薬剤を、経皮的に投与することもできる。経皮投与には、身体の表面、ならびに、上皮組織および粘膜組織を含む身体導管の内部裏層を横断する全ての投与が含まれると理解される。このような投与は、ローション、クリーム、泡、パッチ、懸濁液、溶液、および坐剤(経腸的および経膣的)の状態の本明細書に記載の薬剤または医薬的に許容される塩を用いて実行することができる。
経皮投与は、また、活性化合物と、該活性化合物に対し不活性で、皮膚に対し毒性を有さず、皮膚を介して全身吸収用薬剤を血流中に送達することを可能にする担体とを含有する経皮パッチを使用して、達成することができる。担体は、クリームおよび軟膏、ペースト、ゲル、ならびに、閉鎖デバイスなど任意の数の形態をとり得る。クリームおよび軟膏は、水中油型または油中水型の何れかの粘性液体または半固形エマルジョンとすることができる。有効成分を含有する鉱油または親水ワセリン中に分散させた吸収性粉末を含むペーストも、適切であり得る。担体と共にまたは担体なしで有効成分を含有するリザーバ―を覆う半透膜または有効成分を含有するマトリックスなどの種々の閉鎖デバイスを用いて、有効成分を血流に放出することができる。
ある実施形態では、薬剤を、坐剤を介して投与することもできる。坐剤製剤は、坐剤の融点を変更するワックスを添加したまたは添加しないカカオバター、およびグリセリンを含む、伝統的材料から製造することができる。水溶性坐剤基剤、例えば、種々の分子量のポリエチレングリコールも、用いることができる。
ある実施形態では、薬剤を、例えば、生分解性のマトリックスまたは支持体などのマトリックス、足場、または支持体に組み込まれた、固形または半固形の基質を介して、投与または送達することができる。足場を介して薬剤を送達する方法は、当技術分野において既知である。例えば、コラーゲン、ヒドロキシアパタイト、β−リン酸三カルシウム、またはその組み合わせから生成される足場を含む生体材料足場を用いて、薬剤を送達することができる。このような基質に薬剤を組み込む方法は当技術分野で既知である。
ある実施形態では、薬剤を、移植型組成物を介して投与または送達することができる。移植型組成物を調製する方法は当技術分野で周知である。
追加の多数の種々の賦形剤、剤形、および分散剤などが、薬剤の投与および/または組成物、薬物、もしくは医薬組成物への製剤化に関して用いるのに適切である。
製剤化は既知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical SCIENCES,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985に記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
ある実施形態では、鉄キレート剤が、組成物、製剤、または薬物中に、以下の選択範囲のうち1つの範囲の量で存在する:1μg〜1000mg、1μg〜500mg;1μg〜250mg;1μg〜100mg;1μg〜10mg;1μg〜1mg;1μg〜100μg;1μg〜10μg;10μg〜1000mg;10μg〜500mg;10μg〜250mg、10μg〜10mg;10μg〜1mg;10μg〜100μg;100μg〜1000mg;100μg〜500mg、100μg〜250mg、100μg〜100mg;100μg〜10mg;100μg〜1mg;1mg〜1000mg、1mg〜500mg、1mg〜250mg、1mg〜100mg;1mg〜10mg、10mg〜1000mg;10mg〜500mg、10mg〜250mg、10mg〜100mg、100mg〜1000mg、100mg〜500mg、100mg〜250mg、および500mg〜100mg。他の量についても考察する。
ある実施形態では、鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤が、組成物、製剤、または薬物中に、以下の選択範囲のうち1つの範囲の量で存在する:1μg〜1000mg;1μg〜500mg;1μg〜250mg;1μg〜100mg;1μg〜10mg;1μg〜1mg;1μg〜100μg;1μg〜10μg;10μg〜1000mg;10μg〜500mg;10μg〜250mg、10μg〜10mg;10μg〜1mg;10μg〜100μg;100μg〜1000mg、100μg〜500mg、100μg〜250mg、100μg〜100mg;100μg〜10mg;100μg〜1mg;1mg〜1000mg、1mg〜500mg、1mg〜250mg、1mg〜100mg;1mg〜10mg、10mg〜1000mg、10mg〜500mg、10mg〜250mg、10mg〜100mg、100mg〜1000mg、100mg〜500mg、100mg〜250mg、および500mg〜1000mg。他の量についても考察する。
ある実施形態では、非鉄ポルフィリンが、組成物、製剤、または薬物中に、以下の選択範囲のうち1つの範囲の量で存在する:1μg〜1000mg、1μg〜500mg;1μg〜250mg;1μg〜100mg;1μg〜10mg;1μg〜1mg;1μg〜100μg;1μg〜10μg;10μg〜1000mg;10μg〜500mg;10μg〜250mg;10μg〜10mg;10μg〜1mg;10μg〜100μg;100μg〜1000mg、100μg〜500mg、100μg〜250mg、100μg〜100mg;100μg〜10mg;100μg〜1mg;1mg〜1000mg、1mg〜500mg、1mg〜250mg、1mg〜100mg;1mg〜10mg、10mg〜1000mg、10mg〜500mg、10mg〜250mg、10mg〜100mg、100mg〜1000mg、100mg〜500mg、100mg〜250mg、および500mg〜1000mg。他の量についても考察する。
ある実施形態では、本方法は、対象に、鉄キレート剤の即時放出または持続放出をもたらす組成物を投与するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、対象に、鉄キレート剤の連続放出をもたらす組成物を投与するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、対象に、鉄キレート剤を含む組成物の繰り返し用量または連続用量を投与するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、対象に、鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤の遅延放出をもたらす組成物を投与するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、対象に、非鉄ポルフィリン剤の遅延放出をもたらす組成物を投与するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、対象に、鉄キレート剤の即時放出または持続放出と、鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤の遅延放出をもたらす組成物を投与するステップと含む。
ある実施形態では、本方法は、対象に、鉄キレート剤の即時放出または持続放出と、非鉄ポルフィリンの遅延放出をもたらす組成物を投与するステップと含む。
ある実施形態では、本方法は、微生物を鉄キレート剤に暴露した1時間以上後、2時間以上後、3時間以上後、4時間以上後、6時間以上後、8時間以上後、10時間以上後、12時間以上後、18時間以上後、24時間以上後、36時間以上後、48時間以上後、または72時間以上後に、組成物から鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤の放出がもたらされる組成物を、対象に投与するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、投与の1時間以上後、2時間以上後、3時間以上後、4時間以上後、6時間以上後、8時間以上後、10時間以上後、12時間以上後、18時間以上後、24時間以上後、36時間以上後、48時間以上後、または72時間以上後に、組成物から鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤の放出がもたらされる組成物を、対象に投与するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、微生物を鉄キレート剤に暴露した1時間以上後、2時間以上後、3時間以上後、4時間以上後、6時間以上後、8時間以上後、10時間以上後、12時間以上後、18時間以上後、24時間以上後、36時間以上後、48時間以上後、または72時間以上後に、組成物から鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤の最大放出がもたらされる組成物を、対象に投与するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、投与の1時間以上後、2時間以上後、3時間以上後、4時間以上後、6時間以上後、8時間以上後、10時間以上後、12時間以上後、18時間以上後、24時間以上後、36時間以上後、48時間以上後、または72時間以上後に、組成物から鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤の最大放出がもたらされる組成物を、対象に投与するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、対象に、非鉄ポルフィリン剤の遅延放出をもたらす組成物を投与するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、微生物を鉄キレート剤に暴露した1時間以上後、2時間以上後、3時間以上後、4時間以上後、6時間以上後、8時間以上後、10時間以上後、12時間以上後、18時間以上後、24時間以上後、36時間以上後、48時間以上後、または72時間以上後に、組成物から非鉄ポルフィリンの放出がもたらされる組成物を、対象に投与するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、投与の1時間以上後、2時間以上後、3時間以上後、4時間以上後、6時間以上後、8時間以上後、10時間以上後、12時間以上後、18時間以上後、24時間以上後、36時間以上後、48時間以上後、または72時間以上後に、非鉄ポルフィリンの放出がもたらされる組成物を、対象に投与するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、微生物を鉄キレート剤に暴露した1時間以上後、2時間以上後、3時間以上後、4時間以上後、6時間以上後、8時間以上後、10時間以上後、12時間以上後、18時間以上後、24時間以上後、36時間以上後、48時間以上後、または72時間以上後に、非鉄ポルフィリンの最大放出がもたらされる組成物を、対象に投与するステップを含む。ある実施形態では、組成物は、上記の時間のうち1つでTmaxを提供する。
ある実施形態では、本方法は、投与の1時間以上後、2時間以上後、3時間以上後、4時間以上後、6時間以上後、8時間以上後、10時間以上後、12時間以上後、18時間以上後、24時間以上後、36時間以上後、48時間以上後、または72時間以上後に、非鉄ポルフィリンの最大放出がもたらされる組成物を、対象に投与するステップを含む。ある実施形態では、組成物は、上記の時間のうち1つでTmaxを提供する。
ある実施形態では、本方法は、対象に、非鉄ポルフィリンの連続放出をもたらす組成物を投与するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、対象に、非鉄ポルフィリンを含む組成物の繰り返し用量または連続用量を投与するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、対象に、非鉄ポルフィリンの最大放出時間よりも短い鉄キレート最大放出時間を提供する組成物を投与するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、対象に、鉄キレート剤の最大放出時間よりも長い非鉄ポルフィリン最大放出時間を提供する組成物を投与するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、さらに、対象に抗生物質を投与するステップを含む。抗生物質の例は、本明細書に記載の通りである。抗生物質を使用する方法は、本明細書に記載の通りである。
ある実施形態では、本方法は、抗生物質の持続放出または連続放出をもたらす組成物を投与するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、対象に、抗生物質の1回または複数回の繰り返し投薬量を投与するステップを含む。
活性剤の放出を制御する製剤、例えば、即時放出製剤、持続放出製剤、及び遅延放出製剤は、当技術分野で既知であり、例えば、Donald L Wise(2000)Marcel Dekker Inc.,270 Madison Avenue New York,NY 10016により編集された「Handbook of Pharmaceutical Controlled Release Technology」に記載されている。例えば、即時放出製剤は、タブレットの即時崩壊をもたらす架橋カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、またはポリビニルピロリドンなどの崩壊剤において即時放出用薬剤(鉄キレート剤)を利用することができ、遅延放出製剤は、Eudragit S(メタクリル酸コポリマーB、NF)および/またはEudragit L(メタクリル酸コポリマーA、NF)などのアクリル系樹脂を用いた薬剤のpH依存性コーティングにおいて遅延放出薬剤(例えば、非鉄メタロポルフィリン)を利用することができる。鉄キレート剤の即時放出または持続放出および非鉄メタロポルフィリンの遅延放出をもたらす製剤は、当業者によって調製され得る。
本開示のある実施形態は、鉄キレート剤と、鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤とを含み、前記鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤の遅延放出をもたらす組成物を提供する。
本開示のある実施形態は、鉄キレート剤と、鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤とを含み、前記鉄キレート剤の即時放出または持続放出と、前記鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤の遅延放出をもたらす組成物を提供する。
本開示のある実施形態は、鉄キレート剤と、非鉄ポルフィリンとを含み、前記非鉄ポルフィリンの遅延放出をもたらす組成物を提供する。
本開示のある実施形態は、鉄キレート剤と非鉄ポルフィリンを含み、鉄キレート剤の即時放出または持続放出と、非鉄ポルフィリンの遅延放出をもたらす組成物を提供する。
組成物の放出特徴は、本明細書に記載の通りである。
遅延放出製剤および持続放出製剤は、当技術分野で既知である。例えば、鉄キレート剤の即時放出特性および非鉄メタロポルフィリンの遅延放出特性を有する経口タブレット製剤は、以下のように調整され得る:
(i)1750mgのデフェリプロンを、以下の賦形剤:微晶質セルロース、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素、ヒプロメロース、マクロゴール3350、および二酸化チタンをゼラチンカプセルに包含するため、粉末に製剤化する。調製のため、デフェリプロンを粒状にし、その粒を乾燥させ、分級し、粒外の賦形剤と混ぜ、次に、ステアリン酸マグネシウムで滑らかにし、以下で生成する溶腸性コーティングGaPPを有するゼラチンカプセルにおいて提供することができる。
(ii)GaPPのEudragit L粒およびEudragit S粒でコーティングした700mgのGaPPを、ポリビニルピロリドンを精製水に溶解し、GaPPを溶液を用いて粒にし、得られた粒を乾燥および分級し、粒外の賦形剤と混ぜ、ステアリン酸マグネシウムで滑らかにし、適切な大きさのタブレット芯に圧縮することにより、調製することができる。コーティングのため、Eudragit L100およびEudragit S100を、イソプロピルアルコールに分散させることができる。二酸化チタン、酸化第二鉄(赤)、およびタルクを水に懸濁および撹拌することができ、懸濁液をEudragit L100およびEudragit S100の分散液に加える。クエン酸トリエチルを次に懸濁液に加え、30分撹拌し、懸濁液でコーティングすることができる。タブレット芯を、次に、懸濁的でコーティングし、ゼラチンカプセルにデフェリプロン粉末を充填する。
ある実施形態では、本明細書に記載の組成物を、抗菌剤もしくは処置として微生物の生存率を低減させるため、微生物感染症を予防および/もしくは処置するため、創傷を処置するため、または副鼻腔炎を処置するために用いる。
ある実施形態では、本明細書に記載の組成物は、ゲル組成物である。
本開示のある実施形態は、鉄キレート剤と、鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックとを含むゲル組成物を提供する。ゲル組成物およびゲル組成物を生成する方法は、本明細書に記載の通りである。
ある実施形態では、鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックは、非鉄ポルフィリンを含む。
本開示のある実施形態は、本明細書に記載のゲル組成物の使用を提供する。
ある実施形態では、本明細書に記載のゲル組成物を、抗菌剤または処置として、微生物の生存率を低減させるため、微生物感染症を予防および/もしくは処置するため、創傷を処置するため、または副鼻腔炎を処置するために用いる。
ある実施形態では、本明細書に記載の組成物は、さらに、抗生物質を含み得る。抗生物質の例は、本明細書に記載の通りである。ある実施形態では、抗生物質には、フルオロキノロン抗生物質および/またはペニシリン抗生物質が含まれる。ある実施形態では、抗生物質には、シプロフロキサシン、アモキシシリン、または、アモキシシリンおよびクラブラン酸が含まれる。
本開示のある実施形態は、鉄キレート剤と、非鉄ポルフィリンと、抗生物質とを含む組成物を提供する。ある実施形態では、本明細書に記載の組成物は、さらに、抗生物質を含み得る。抗生物質の例は、本明細書に記載の通りである。ある実施形態では、抗生物質には、フルオロキノロン抗生物質および/またはペニシリン抗生物質が含まれる。ある実施形態では、抗生物質には、シプロフロキサシン、アモキシシリン、または、アモキシシリンおよびクラブラン酸が含まれる。
本明細書に記載の組成物または製剤の解放特性を、適切な動物モデルまたは1人もしくは複数のヒト対象においてテストされる、in vitroでの溶解研究(例えば、パドルテスト)および/または薬物動態学的特性においてテストすることが可能である。このような経口製剤は、1日に1回または複数回、対象に投与することができる。
ある実施形態では、組成物は抗菌組成物、抗真菌組成物、または、抗ウイルス組成物である。他のタイプの組成物についても考察する。
ある実施形態では、組成物は、ゲルなどの局所組成物である。ある実施形態では、組成物は、タブレットまたはカプセルなどの経口組成物である。
鉄キレート剤ならびに鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤を、本明細書で記載する。非鉄ポルフィリンは、本明細書に記載の通りである。鉄キレート剤の即時放出もしくは持続放出、ならびに/または、鉄ミメティックおよび/もしくはヘムミメティックである薬剤の遅延放出を提供する組成物を製剤化する方法は、当技術分野で既知である。ある実施形態では、組成物は、ヒドロゲルなどのゲルである。
ある実施形態では、本明細書に記載の組成物を、微生物の生存率を低減させるために用いる。ある実施形態では、本明細書に記載の組成物を用いて、微生物を死滅させる。
ある実施形態では、本明細書に記載の組成物を、対象における微生物感染症を予防および/または処置するために用いる。
本開示のある実施形態は、微生物感染症を有する対象を予防および/または処置するための、鉄キレート剤ならびに鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤の使用であって、前記鉄キレート剤は即時放出または持続放出の形態で提供され、前鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである前記薬剤は遅延放出形態で提供される、使用を提供する。
本開示のある実施形態は、微生物感染症を有する対象を予防および/または処置するための鉄キレート剤および非鉄ポルフィリンの使用であって、前記鉄キレート剤は即時放出形態または持続放出の形態で提供され、前記非鉄ポルフィリンは遅延放出形態で提供される、使用を提供する。
本開示のある実施形態は、対象の微生物感染症を予防および/または処置する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載の組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
本開示のある実施形態は、微生物感染症を有する対象を予防および/または処置するための、鉄キレート剤ならびに非鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤を提供する。
本開示のある実施形態は、微生物感染症を有する対象を予防および/または処置するための、鉄キレート剤および非鉄ポルフィリンを提供する。
本開示のある実施形態は、対象の微生物感染症を予防および/または処置するための、鉄キレート剤ならびに鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤を提供する。
本開示のある実施形態は、対象の微生物感染症の予防および/または処置のための鉄キレート剤および非鉄ポルフィリンを提供する。
本開示のある実施形態は、細菌バイオフィルムに関係する感染症を有する対象を予防および/または処置するための、鉄キレート剤ならびに鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤を提供する。
本開示のある実施形態は、細菌バイオフィルムに関係する感染症を有する対象を予防および/または処置するための、鉄キレート剤および非鉄ポルフィリンを提供する。
本開示のある実施形態は、微生物感染症を有する対象を予防および/または処置するための、鉄キレート剤ならびに鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤の使用であって、鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである前記薬剤は、前記鉄キレート剤の投与後に投与される、使用を提供する。
本開示のある実施形態は、微生物感染症を有する対象を予防および/または処置するための、鉄キレート剤および非鉄ポルフィリンの使用であって、前記非鉄ポルフィリンは、前記鉄キレート剤の投与後に投与される、使用を提供する。
本開示のある実施形態は、対象の微生物感染症を予防および/または処置する方法を提供する。
ある実施形態では、微生物は細菌である。
対象の細菌感染症の例としては、尿路感染症(例えば、大腸菌、緑膿菌、腸球菌、クレブシエラ、エンテロバクター種、プロテウス、セラチアに関係する)、再発および急性前立腺炎を引き起こす持続性感染症;急性創傷または慢性創傷を含む創傷の感染症(例えば、黄色ブドウ球菌、緑膿菌に関係する)、術後創傷、肺感染症(例えば、患者に嚢胞性線維症を引き起こすような緑膿菌に関係する)、慢性骨髄炎(例えば、黄色ブドウ球菌に関係する)、副鼻腔炎(例えば、黄色ブドウ球菌に関係する)、結核(例えば、結核菌に関係する)、ならびに、ヒトの身体に侵入した/移植された異物に関係する感染症(例えば、黄色ブドウ球菌)が挙げられる。
例えば、本方法を、創傷治癒に有益な処置レジメン、感染創傷(例えば、開腹手術後の感染創傷など)の創傷治癒に有益な処置レジメン、創傷が手術中に生じる場合または火傷である場合の創傷治癒に有益な処置レジメン、慢性創傷、糖尿病性創傷、および糖尿病性潰瘍の創傷治癒に有益な処置レジメン、バイオフィルムに関係する細菌感染症を含む細菌感染症に有益な処置レジメン、真菌感染症に有益な処置レジメン、ならびに、ウイルス感染症用処置レジメンで用いることができる。
本開示のある実施形態は、対象の微生物感染症を予防および/または処置する方法であって、対象に有効量の鉄キレート剤を投与し、続いて、対象に有効量の鉄ミメティックおよび/またはヘムである薬剤を投与することにより、微生物感染症を予防および/または処置するステップを含む、方法を提供する。
本開示のある実施形態は、対象の微生物感染症を予防および/または処置する方法であって、対象に有効量の鉄キレート剤を投与し、続いて、対象に有効量の非鉄ポルフィリンを投与することにより、微生物感染症を予防および/または処置するステップを含む、方法を提供する。
本開示のある実施形態は、本明細書に記載の組成物を用いて、対象の微生物感染症を予防および/または処置する方法を提供する。
本開示のある実施形態は、対象の副鼻腔炎を予防および/または処置する方法を提供する。
本開示のある実施形態は、対象の副鼻腔炎を予防および/または処置する方法であって、対象に有効量の鉄キレート剤を投与し、続いて、対象に有効量の非鉄ポルフィリンを投与することにより、副鼻腔炎を予防および/または処置するステップを含む、方法を提供する。
ある実施形態では、本方法は、鉄キレート剤および/または非鉄ポルフィリンの局所投与を含む。
本開示のある実施形態は、対象の細菌性副鼻腔炎を予防および/または処置する方法であって、細菌性副鼻腔炎に関係する感染部位に、有効量の鉄キレート剤を局所投与し、続いて、細菌感染部位に、有効量の非鉄ポルフィリンを局所投与することにより、対象の細菌性副鼻腔炎を予防および/または処置するステップを含む、方法を提供する。
本開示のある実施形態は、対象の細菌性副鼻腔炎を予防および/または処置する方法であって、細菌性副鼻腔炎に関係する感染部位に、有効量の、鉄キレート剤および非鉄ポルフィリンを含む局所組成物を投与することにより、対象の細菌性副鼻腔炎を予防および/または処置するステップを含む、方法を提供する。
本開示のある実施形態は、対象の細菌性副鼻腔炎を予防および/または処置するための、鉄キレート剤および非鉄ポルフィリンの使用を提供する。
本開示のある実施形態は、対象の感染創傷を処置する方法を提供する。
本開示のある実施形態は、対象の感染創傷を処置する方法であって、創傷に有効量の鉄キレート剤を投与し、続いて、創傷に有効量の非鉄ポルフィリンを投与することにより、対象の感染創傷を処置するステップを含む、方法を提供する。
ある実施形態では、本方法は、鉄キレート剤および/または非鉄ポルフィリンの局所投与を含む。
本開示のある実施形態は、対象の感染創傷を処置する方法であって、創傷に有効量の鉄キレート剤を局所投与し、続いて、創傷に有効量の非鉄ポルフィリンを局所投与することにより、対象の感染創傷を処置するステップを含む、方法を提供する。
本開示のある実施形態は、感染創傷を処置するための、鉄キレート剤および非鉄ポルフィリンの使用を提供する。
本開示のある実施形態は、創傷の細菌感染症を予防および/または処置する方法を提供する。創傷の例は、開腹手術などの術中に起きる創傷など、本明細書に記載の通りである。
本開示のある実施形態は、創傷の細菌感染症を予防および/または処置する方法を提供する。
本開示のある実施形態は、創傷の細菌感染症を予防および/または処置する方法であって、創傷に有効量の鉄キレート剤を投与し、続いて、創傷に有効量の非鉄ポルフィリンを投与することにより、創傷の感染症を予防および/または処置するステップを含む、方法を提供する。
ある実施形態では、本方法は、鉄キレート剤および/または非鉄ポルフィリンの局所投与を含む。
ある実施形態では、創傷は、例えば、開腹手術または副鼻腔手術の結果として生じるような、手術創である。
本開示のある実施形態は、創傷の細菌感染を予防および/または処置する方法であって、創傷に有効量の鉄キレート剤を局所投与し、続いて、創傷に有効量の非鉄ポルフィリンを局所投与することにより、創傷の感染症を予防および/または処置するステップを含む、方法を提供する。
本開示のある実施形態は、創傷の細菌感染症を予防および/または処置するための、鉄キレート剤および非鉄ポルフィリンの使用を提供する。
用語「予防すること(preventing)」および「予防(prevention)」および「予防する(prevent)」などの関連用語は、対象における1つまたは複数の症状の出現を抑止または抑制するという点で、所望の薬理的および/または生理学的効果が得られることを指す。
用語「処置(treatment)」および「処置すること(treating)」および「処置する(treat)」などの関連用語は、対象の症状を改善するという点で所望の薬理的および/もしくは生理学的効果が得られること、対象の1つもしくは複数の症状の進行を、寛解、抑止、抑制、軽減、および/もしくは遅らせること、対象の部分的もしくは完全な安定化、1つまたは複数の症状の退行、または対象の疾病、症状、もしくは状態の治癒を指す。
微生物感染症の例を、本明細書に記載する。ある実施形態では、微生物感染症には、細菌感染症、真菌感染症、またはウイルス感染症が含まれる。
ある実施形態では、微生物感染症には、細菌感染症が含まれる。細菌感染症の例を、本明細書に記載する。ある実施形態では、微生物感染症には、グラム陽性細菌感染症またはグラム陰性細菌感染症が含まれる。ある実施形態では、微生物感染症には、細菌の小コロニー変異体感染症および/または、細菌の抗生物質耐性変異体感染症が含まれる。
ある実施形態では、微生物感染症には、細菌バイオフィルムに関係する細菌感染症が含まれる。
ある実施形態では、対象は、細菌バイオフィルム感染症などの細菌感染症を患っている。ある実施形態では、対象は、細菌バイオフィルム感染症などの細菌感染症に感染しやすい。細菌および細菌感染症の例を、本明細書に記載する。
ある実施形態では、微生物感染症には、真菌感染症が含まれる。真菌感染症の例を本明細書に記載するが、該例としては、アスペルギルス、アルテルナリア、カンジダ、マラセチア、フザリウム、ペニシリウム、カーブラリア、クリプトコッカス、ヒストプラズマ、パラコクシジオイデス、ニューモシスティス、ピシウム、リゾプス、トリコスポロン、アウレオバシジウム、クラドスポリウム、ウロクラディウム、エンギオドンチウム、およびトリコフィトンなどの真菌種に関係する感染症が挙げられる。
ある実施形態では、感染症には、真菌の皮膚または粘膜の感染症が含まれる。ある実施形態では、感染症には、真菌副鼻腔感染症が含まれる。
ある実施形態では、微生物感染症には、ウイルス感染症が含まれる。ウイルス感染症の例を本明細書に記載するが、該例としては、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、ライノウイルス、パラインフルエンザ、コロナウイルス、ヒトパピローマウイルス、HIV−1、サイトメガロウイルス、エンテロウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ワクチニアウイルス、単純ヘルペスウイルス1およびB型肝炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、出血性アレナウイルス、イヌおよびネコパルボウイルス、ならびに、マウス乳癌ウイルスなどのウイルスに関係する感染症が挙げられる。
ある実施形態では、微生物感染症には、以下の種または属から選択される微生物に関係する感染症が含まれる。根粒菌、ボルデテラ、シゲラ、大腸菌、ビブリオ、エロモナス、フランシセラ・ツラレンシス、バクテロイデス、カンピロバクター・ジェジュニ、シアノバクテリア、バチルスサブチリス、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、ナイセリア、緑膿菌、サルモネラ、ヘリコバクター・ピロリ、ヘモフィルス・インフルエンザ、コリネバクテリウム、マイコバクテリウム、ストレプトマイセスおよびサッカロミセス、アシネトバクター、プロテウス、サルモネラ、ストレプトコッカス、モラクセラ、クロストリジウム、クレブシエラ、クラミジア、レジオネラ、パスツレラ、エシェリキア、エンテロバクター、ならびに/または前記何れかの小コロニー変異体もしくは抗生物質耐性変異体。
ある実施形態では、微生物感染症には、属から選択される微生物に関係する感染症が含まれる:スタフィロコッカス属、シュードモナス属、もしくはアシネトバクター属、または、前記何れかの小コロニー変異体もしくは抗生物質耐性変異体。
ある実施形態では、微生物感染症には、スタフィロコッカス感染症が含まれる。ある実施形態では、微生物感染症には、黄色ブドウ球菌感染症もしくは表皮ブドウ球菌感染症、または、その小コロニー変異体もしくは抗生物質耐性変異体が含まれる。
ある実施形態では、微生物感染症には、シュードモナス感染症が含まれる。ある実施形態では、微生物感染症には、緑膿菌感染症、または、その小コロニー変異体もしくは抗生物質耐性変異体が含まれる。
ある実施形態では、微生物感染症には、アシネトバクター感染症が含まれる。ある実施形態では、微生物感染症には、アシネトバクター・ジョンソニイ感染症、または、その小コロニー変異体もしくは抗生物質耐性変異体が含まれる。
ある実施形態では、微生物感染症には、副鼻腔炎が含まれる。
ある実施形態では、微生物感染症には、慢性副鼻腔炎が含まれる。ある実施形態では、微生物感染症には、急性副鼻腔炎が含まれる。
ある実施形態では、微生物感染症には、感染創傷、慢性創傷、糖尿性創傷、または糖尿病性潰瘍が含まれる。ある実施形態では、微生物感染症には、術後感染創傷、または開腹手術後の感染創傷が含まれる。ある実施形態では、微生物感染症には、火傷が含まれる。
本開示のある実施形態は、細菌感染症を予防および/または処置するための、鉄キレート剤および非鉄ポルフィリンの術後使用を提供する。
ある実施形態では、対象は、本明細書に記載する微生物の感染症を患っているか、または該感染症にかかりやすい。
ある実施形態では、対象は、尿路感染症(例えば、大腸菌、緑膿菌、腸球菌、クレブシエラ、エンテロバクター種、プロテウス、セラチアに関係する)、再発および急性前立腺炎を引き起こす持続性感染症;急性創傷または慢性創傷を含む創傷の感染症(例えば、黄色ブドウ球菌、緑膿菌に関係する)、術後創傷、肺感染症(例えば、患者に嚢胞性線維症を引き起こすような緑膿菌に関係する)、慢性骨髄炎(例えば、黄色ブドウ球菌に関係する)、副鼻腔炎(例えば、黄色ブドウ球菌に関係する)、結核(例えば、結核菌に関係する)、ならびに、ヒトの身体に侵入した/移植された異物に関係する感染症(例えば、黄色ブドウ球菌)を患っているか、または該感染症にかかりやすい。
対象に、鉄キレート剤、ならびに、非鉄ポルフィリンなどの、鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤を投与する方法を、本明細書に記載する。
ある実施形態では、本方法は、細菌感染部位への、鉄ならびに/または鉄ミメティックおよび/もしくはヘムミメティックの局所投与を含む。ある実施形態では、本方法は、細菌感染部位への、鉄および/または非鉄ポルフィリンの局所投与を含む。
鉄キレート剤の例は、本明細書に記載の通りである。ある実施形態では、鉄キレート剤にはデフェリプロンが含まれる。
ある実施形態では、本方法は、感染症に関係する微生物を、20mM以下のデフェリプロンに暴露するステップを含む。他の濃度は本明細書に記載の通りである。
鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤の例を、本明細書に記載する。非鉄ポルフィリンの例は、本明細書に記載の通りである。
ある実施形態では、非鉄ポルフィリンには、非鉄メタロポルフィリンが含まれる。ある実施形態では、非鉄ポルフィリンには、非鉄メタロプロトポルフィリンが含まれる。
ある実施形態では、非鉄ポルフィリンには、ガリウムプロトポルフィリン、マンガンプロトポルフィリン、亜鉛プロトポルフィリン、インジウムプロトポルフィリン、コバルトプロトポルフィリン、ルテニウムプロトポルフィリン、銀プロトポルフィリン、または銅プロトポルフィリンのうち1つまたは複数が含まれる。
ある実施形態では、本方法は、感染症に関係する微生物を、200μg/ml以下のガリウムプロトポルフィリンに暴露するステップを含む。他の濃度は本明細書に記載の通りである。
ある実施形態では、本方法は、対象に鉄キレート剤を投与した2時間以上後に、該対象に鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤を投与するステップを含む。ある実施形態では、本方法は、対象に鉄キレート剤を投与した8時間以上後に、該対象に鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤を投与するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、対象に鉄キレート剤を投与した2時間以上後に、該対象に非鉄ポルフィリンを投与するステップを含む。ある実施形態では、本方法は、対象に鉄キレート剤を投与した8時間以上後に、該対象に非鉄ポルフィリンを投与するステップを含む。他の投与レジメンについても考察する。
ある実施形態では、本方法は、対象に、本明細書に記載の1つまたは複数の組成物を投与するステップを含む。ある実施形態では、本明細書に記載の組成物は、局所投与用組成物である。ある実施形態では、組成物は、局所組成物である。ある実施形態では、組成物は、ゲル組成物である。
ある実施形態では、本方法は、対象に鉄キレート剤を含む組成物を投与し、続いて、該対象に鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤を含む組成物を投与するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、対象に鉄キレート剤を含む組成物を投与し、続いて、該対象に非鉄ポルフィリンを含む組成物を投与するステップを含む。
組成物の例は、本明細書に記載の通りである。
ある実施形態では、本方法は、対象に、鉄キレート剤の即時放出または持続放出をもたらす組成物を投与するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、対象に、鉄キレート剤の連続放出をもたらす組成物を投与するステップを含む。
ある実施形態では、本方法は、対象に、鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤の遅延放出をもたらす組成物を投与するステップを含む。
放出特徴は、本明細書に記載の通りである。
ある実施形態では、本方法は、対象に、鉄キレート剤の即時放出または持続放出と、鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤の遅延放出をもたらす組成物を投与するステップと含む。
ある実施形態では、本方法は、対象に、鉄キレート剤の即時放出または持続放出と、非鉄ポルフィリンの遅延放出をもたらす組成物を投与するステップと含む。
ある実施形態では、本方法は、さらに、対象に有効量の抗生物質を投与するステップを含む。抗生物質の例は、本明細書に記載の通りである。ある実施形態では、抗生物質には、フルオロキノロン抗生物質および/またはペニシリン抗生物質が含まれる。ある実施形態では、抗生物質には、シプロフロキサシン、アモキシシリン、または、アモキシシリンおよびクラブラン酸が含まれる。
ある実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象に、本明細書に記載の1つまたは複数の組成物を投与するステップを含む。ある実施形態では、本明細書に記載の組成物は、局所投与用組成物である。ある実施形態では、組成物は、局所組成物である。ある実施形態では、組成物は、ゲル組成物である。
本開示のある実施形態は、微生物感染症処置のための局所組成物を生成する方法を提供する。
本開示のある実施形態は、キットを提供する。
ある実施形態では、キットには、本明細書に記載する1つもしくは複数の薬剤および/または指示書が含まれる。
本開示のある実施形態は、本明細書に記載の方法を実行するためのキットを提供する。
本開示のある実施形態は、対象における微生物感染症を予防および/または処置するための製品を提供する。
本開示のある実施形態は、対象の副鼻腔炎を予防および/または処置する方法であって、部位に有効量の鉄キレート剤を投与し、続いて、対象に有効量の非鉄ポルフィリンを投与することにより、対象の副鼻腔炎を予防および/または処置するステップを含む、方法を提供する。
本開示のある実施形態は、対象の微生物感染症を予防および/または処置するための製品であって、以下の成分:
鉄キレート剤と;
鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤とを含み;
該成分は、対象に鉄キレート剤を投与し、その後、続いて、対象に鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤を投与するという形態で提供される、製品を提供する。
ある実施形態では、鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤には、非鉄ポルフィリンが含まれる。
本開示のある実施形態は、対象の微生物感染症を予防および/または処置するための製品であって、以下の成分:
鉄キレート剤と;
非鉄ポルフィリンとを含み;
該成分は、対象に鉄キレート剤を投与し、その後、続いて、対象に非鉄ポルフィリンを投与するという形態で提供される、製品を提供する。
ある実施形態では、製品には、鉄キレート剤の投与のための組成物と、非鉄プロトポルフィリンの投与のための組成物が含まれる。組成物は、本明細書に記載の通りである。
ある実施形態では、製品には、任意選択的に、微生物を予防および/または処置するための製品を使用するための指示書が含まれる。投与方法は、本明細書に記載の通りである。
ある実施形態では、製品にはさらに、対象への投与用抗生物質が含まれる。抗生物質の例は、本明細書に記載の通りである。ある実施形態では、抗生物質には、フルオロキノンおよび/またはペニシリン抗生物質が含まれる。ある実施形態では、抗生物質には、フルオロキノロン抗生物質および/またはペニシリン抗生物質が含まれる。ある実施形態では、抗生物質には、シプロフロキサシン、アモキシシリン、ならびに/またはアモキシシリンおよびクラブラン酸が含まれる。
本開示のある実施形態は、微生物感染症を予防および/または処置するのに有用な薬剤の組み合わせをスクリーニングする方法を提供する。その後、薬剤の組み合わせを特定することができる。
本開示のある実施形態は、微生物感染症を予防および/または処置するために使用する薬剤の組み合わせを特定する方法であって:
鉄キレート剤ならびに鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤を提供するステップと;
微生物を鉄キレート剤に暴露し、続いて、微生物を鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤に暴露するステップと;
鉄キレート剤と、鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤の組み合わせを、微生物の生存率を低減させる組み合わせに基づいて微生物感染症を予防および/または処置するために使用する薬剤の組み合わせとして特定するステップとを含む、方法を提供する。
本開示のある実施形態は、微生物感染症を予防および/または処置するために使用する薬剤の組み合わせを特定する方法であって:
鉄キレート剤および非鉄ポルフィリンを提供するステップと;
微生物を鉄キレート剤に暴露し、続いて、微生物を非鉄ポルフィリンに暴露するステップと;
鉄キレート剤および非鉄ポルフィリンの組み合わせを、微生物の生存率を低減させる組み合わせに基づいて微生物感染を予防および/または処置するために用いる薬剤の組み合わせとして特定するステップとを含む、方法を提供する。
微生物を薬剤に暴露し、微生物の生存率を低減させる薬剤の能力を評価する方法は、本明細書に記載の通りである。
ある実施形態では、本方法は、微生物をin vitroで薬剤に暴露するステップを含む。ある実施形態では、本方法は、微生物をin vivoで薬剤に暴露するステップを含む。ある実施形態では、本方法は、適切な動物モデルを用いるステップを含む。
本開示のある実施形態は、細菌の抗生物質に対する感受性を増大させるのに有用な薬剤の組み合わせをスクリーニングする方法を提供する。
本開示のある実施形態は、細菌の抗生物質に対する感受性を増大させるために用いる薬剤の組み合わせを特定する方法であって:
鉄キレート剤ならびに鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤を提供するステップと;
微生物を鉄キレート剤に暴露し、続いて、微生物を鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤に暴露するステップと;
鉄キレート剤と、鉄ミメティックおよび/またはヘムミメティックである薬剤の組み合わせを、微生物の抗生物質に対する感受性を増大させる薬剤の組み合わせとして特定するステップとを含む、方法を提供する。
本開示は、さらに、以下の例により記載される。以下の記載は、特定の実施形態のみについて記載することを目的とするものであり、上記記載に関し限定することを意図するものではないことを理解されたい。
実施例1−黄色ブドウ球菌バイオフィルムに対するデフェリプロンおよびガリウム−プロトポルフィリンの抗菌効力
物質および方法
(i)培養条件およびバイオフィルム形態
黄色ブドウ球菌ATC25923(American Type Culture Collection、アメリカ合衆国、バージニア州マナサス)の単一コロニーを、0.45%生理食塩水(Sigma Aldrich,ドイツ)に浸漬し、1.0±0.1マクファーランド単位(3x108コロニー形成単位/ml)に調整し、ニュートリエントブロス(Oxoid Ltd.、英国)に1:15で希釈した。細菌−ブロス混合物を、96ウェルプレートに、ウェル毎に150μlずつ加えた(Costar(登録商標)、Corning Incorporated、アメリカ合衆国、NY)。70rmpにセットした回転板(3D Gyratory Mixer、Ratek Instruments、オーストラリア)上で37℃で72時間インキュベーションし、広範囲な黄色ブドウ球菌バイオフィルムの増殖を保証した。
(ii)バイオフィルム処置
バイオフィルムを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、Sigma Aldrich、ドイツ)を用いて2回洗浄して浮遊性細胞を取り除き、その後、バイオフィルムを、種々の濃度のi)デフェリプロン(「Def」;3−ヒドロキシ−1,2−ジメチルピリジン−4(1H)−オン、Sigma Aldrich、ドイツ)、ii)ガリウム−プロトポルフィリン(「GAPP」;Frontier Scientific、アメリカ合衆国、ユタ州)、iii)両化合物の同時併用、およびiv)両化合物の連続併用を用いて処置した。処置剤を調製するため、Defを水に溶解し、GaPPをTween(登録商標)80(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、Sigma Aldrich、ドイツ)の0.03%水溶液、つまり、Tween(登録商標)80(0.015%)の臨界ミセル濃度(CMC)を超える水溶液に溶解した。対照には、処置なしの細菌ウェル(つまり、100%細菌増殖、陰性対照)、細菌なしのブランクウェル(つまり、0%増殖、陽性対照)、および、Tween(登録商標)80処置剤を用いた細菌ウェル(GaPP希釈物の対照として)が含まれた。回転板において37℃で各処置剤をインキュベーションした2時間後、PBSを用いた第2洗浄ステップが続いて、処置剤を取り除いた。
全ての実験を、処置毎に少なくとも4ウェルを有する別個のプレートにおいて、3連で行った。
(iii)生存率評価
細菌の生存率を、Peeters,E.et al.(2008)Journal of Microbiological Methods,72(2):p.157−165に記載されているように、AlamarBlue(登録商標)細胞生存率アッセイを用いて評価した。ニュートリエントブロスに溶解させた10%AlamarBlue(登録商標)希釈液(レサズリン、Life Technologies、オーストラリア)を調製し、各ウェルに加えた。プレートを暗所の回転板において37℃でインキュベーションした。レゾルフィンの蛍光を、FLUOstar OPTIMAプレートリーダー(BMG LABTECH、ドイツ)において、1時間ごとに測定した。本方法を、ボトムリーディングに設定し、蛍光をλ励起530nm/ラムダ蛍光590nmで測定した。最大強度は、典型的には、インキュベーションの6時間後に達成され、該強度を、式1による定量化のために用いた。
細菌の生存率を、バイオフィルム死滅比率(%BK)として求めた。ここで、ICは対照(つまり、100%細菌増殖)の蛍光強度を表し、ITは処置剤の最大強度を示す。ICおよびITは、両方とも、バックグラウンド(つまり、0%細菌増殖)の強度により修正した。
(iv)最小発育阻止濃度(MIC)
通常の方法、特異的には、Wiegand,I.et al.(2008)Nat Protoc,3(2):p.163−75に記載されているように、コロニー懸濁法およびブロス微量希釈を用いて、個々の化合物DefおよびGaPPについて、浮遊性黄色ブドウ球菌に対するMIC値を評価した。簡潔に言うと、黄色ブドウ球菌ATCC25923の単一コロニーを、0.45%生理食塩水に懸濁し、0.5マクファーランド単位に調節した。細菌懸濁液を、ニュートリエントブロスを用いて1:100に希釈し、96ウェルプレートに入れた。DefおよびGaPPの種々の処置希釈物を加え、その後、プレートを37℃で20時間インキュベーションした。MICを、混濁を防ぐ最小薬物濃度として求めた。
(v)ヒト細胞培養
L929細胞(マウス線維芽細胞株)およびNuli−1細胞(ヒト気道上皮細胞株)をATCC(American Type Culture Collection、アメリカ合衆国、バージニア州マナサス)から入手した。Nuli−1細胞株を、Bronchial Epithelial Cell Growth Medium(Lonza、オーストラリア)において培養し、L929細胞を、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(Sigma−Aldrich、ドイツ)で増殖させた。細胞を、37℃で、5%CO2を備えた完全に加湿したインキュベータにおいて維持した。
(vi)細胞生存率テスト
乳酸脱水素酵素(LDH)バイオアッセイ(Roche Diagnostics Corporation、アメリカ合衆国、インディアナ州インディアナポリス)を実行して、DefおよびGaPPの細胞毒性効果を評価した。簡潔に言うと、細胞を、96ウェル平底プレートの4連ウェルの100μlの各ウェルに1×104で播種し、24時間インキュベーションして(37℃、5%CO2)、細胞を付着させた。二重処置の毒性を評価するため、まず、100μlのDef(20mM)を各ウェルに加えた。インキュベーションの2時間後、細胞をPBSを用いて3回洗浄し、異なる濃度のGaPP(100、200、300、400、および500μg/ml)に、さらに2時間暴露した。加えて、細胞を、DefまたはGaPPの何れかで、2時間別々に処置した。ODを490nmで測定した。
(vii)統計およびソフトウェア
結果を、一元配置分散分析および独立t検定(Windows用GraphPad Prism version6.00、GraphPad Software、アメリカ合衆国、カリフォルニア州ラホヤ)、ならびに、p<0.05で推論される統計的有意性を用いて、統計的に分析した。
結果
(i)有効性研究
in vitroでの有効性研究の以下の結果は、対照と比較したバイオフィルム死滅の比率を示し、陰性対照(つまり、100%細菌増殖)では0%のバイオフィルム死滅が、陽性対照(つまり、0%細菌増殖)では100%のバイオフィルム死滅が推論される。GaPP処置(つまり、Tween(登録商標)80の0.03%水溶液)の対照は、有意な抗バイオフィルム活性を示さなかった(データ未記載)。
(ii)単一処置
黄色ブドウ球菌を、0.5〜50mMの範囲の種々の濃度のDefを用いて、2時間処置した。図1Aに描くように、バイオフィルム死滅の比率は、より高いDef濃度で著しく増加したが、20mM超の濃度では、バイオフィルムの減少は、約34%で横ばいだった。
黄色ブドウ球菌バイオフィルムを、異なる濃度(1〜200μg/ml)のGaPPに2時間暴露した場合、化合物は、用量依存的に著しい有効性を実証した。最も高い濃度(200μg/ml)は、約77%の黄色ブドウ球菌バイオフィルムを死滅させた(図1B参照)。
(iii)二重処置
DefおよびGaPPを併用する処置を評価するため、薬物濃度を、最も効果的な単一処置濃度に従って選択した(つまり、Def濃度は20mM、GaPP濃度は200μg/ml)。黄色ブドウ球菌バイオフィルムに対する二重処置の有効性を、二通りで評価した。
まず、両化合物を同時処置として一緒に適用し、2時間インキュベーションした。同時処置は、図2に示すように、約48%の黄色ブドウ球菌バイオフィルムを取り除いた。しかしながら、この結果は、単一Def処置よりも有意に高くはなかったが(p>0.05)、単一GaPP処置(p<0.05)および連続二重処置(p<0.01)より有意に低かった。
第2に、黄色ブドウ球菌バイオフィルムを、2時間Defの後、2時間GaPPという連続処置に暴露した。この連続処置は、黄色ブドウ球菌バイオフィルムをほぼ完全に(約94%のバイオフィルム死滅、図3参照)根絶させ、黄色ブドウ球菌バイオフィルムに対する優れた有効性を示した。連続処置は、Def(p<0.001)およびGaPP(p<0.05)の単一処置、ならびに、同時二重処置(p<0.01)と、有意に異なった。
(iv)連続二重処置の効果
連続二重処置の力を調べるため、0.5、1.5、5、10、および20mMというより低いDefと、1、5、10、50、100、および200μg/mlというGaPP濃度を用いて、研究を行った(表1)。個々の単一処置のバイオフィルム死滅(%)を足して、相加効果モデルにおける連続二重処置の理論上のバイオフィルム死滅率を得た。測定した二重処置のバイオフィルム死滅を理論バイオフィルム死滅と比較して、相乗効果を調べた。計算した差(つまり、測定バイオフィルム死滅−理論バイオフィルム死滅)により、二重処置の効果を以下のように分類した:
i)測定バイオフィルム死滅>理論バイオフィルム死滅の場合、相乗的
ii)測定バイオフィルム死滅=理論バイオフィルム死滅の場合、相加的
iii)測定バイオフィルム死滅<理論バイオフィルム死滅の場合、陰性。
種々の薬物濃度の単一処置および連続二重処置による黄色ブドウ球菌バイオフィルム死滅(%)の比較。理論バイオフィルム死滅(つまりバイオフィルムを死滅させる、単一処置Def+単一処置GaPP)を、二重処置の測定バイオフィルム死滅と比較する。計算した差(つまり、測定バイオフィルム死滅−理論バイオフィルム死滅)により、二重処置の効果を分類した。値は、各処置での、4つのウェルを有する3つの個別プレートの平均(より読みやすくするためSDなし)を示し、n=12である。
総合的に見て、DefとGaPPの両方を低濃度の場合の二重処置は、測定バイオフィルム死滅が理論バイオフィルム死滅より有意に高かった(p<0.05)ように、相乗的抗バイオフィルム効果をもたらした。相加的効果は、DefとGaPPの両方が高濃度の場合に達成された。
黄色ブドウ球菌バイオフィルムに対する最大有効性(>85%のバイオフィルム死滅活性)は、図3で描く連続二重処置で達成された。
(v)Defに長期にわたって暴露する連続二重処置
連続二重処置の間の、長期のDefインキュベーション(2時間ではなく8.5時間)の影響を評価した。8つの異なる処置組み合わせを、モデル処置として選択した。図4は、2時間のGaPP処置前の2つの異なるDefインキュベーション時間(つまり、2時間対8.5時間)のモデル処置の有効性を比較する。低Def濃度(最大1.5mM)および低GaPP濃度(最大5μg/ml)を用いた場合、Defで8.5時間処置した後の2時間のGaPP処置は、黄色ブドウ球菌バイオフィルムに対する相乗効果を著しく高めた(約85%バイオフィルム死滅)。
(vi)最小発育阻止濃度(MIC)
浮遊性黄色ブドウ球菌ATCC25923に対し、DefのMICを2.5mMで評価し、GaPPのMICは0.4μg/mlだった(結果未記載)。
(vii)細胞毒性研究
単一処置
細胞ハザードの誘発を、LDHアッセイにより求めた。単一処置としてのDef(20mM)を、L929細胞株およびNuli−1細胞株でテストしたが、統計的有意差(p>0.05)は観察されなかった(図5)。同様に、GaPPを用いた単一処置も、100〜400μg/mlの範囲の濃度では、両細胞株に対し著しい影響を及ぼさなかった。500μg/mlGaPPという最大濃度のみ、両細胞株に細胞毒性を誘発した(図6)。
二重処置
L929細胞は、DefとGaPPを用いた連続処置では、テストした濃度の何れに対しても反応しなかった(図7)。Nuli−1細胞株では、DefとGaPPを用いた処置は、500μg/mlGaPPという濃度で、生存率を低減させた(図7)。
議論
細菌バイオフィルムは、現在の医学療法の最大の課題である。これは、バイオフィルム内に存在する細菌が、宿主の免疫系を逃れ、即時に環境条件に適応し、容易に医療処置に対し耐性をつけることができるためである。過去数十年にわたる細菌耐性の出現および広がりにより、抗生物質の効果はますます低下し、つまり、新規の処置戦略に対する需要が目下存在する。1つのアプローチは、細菌の鉄代謝を標的とすることである。これは、鉄が、特に黄色ブドウ球菌細菌の場合、細菌増殖および病態形成に必須であるためである。
黄色ブドウ球菌感染時、養分(特に、鉄)が細菌により消費され、細菌の感染および増殖の進行に伴い制限されるようになる。黄色ブドウ球菌は、表面膜の鉄トランスポータータンパク質のアップレギュレーションにより、鉄欠乏に適応する。鉄調節表面決定因子系(Isd)およびヘム輸送系(Hts)は、宿主からヘムを隔離することにより、鉄供給を効率的に確保する特異的な系である。ヘムが細菌により吸収された後、ヘムは、i)酵素的に分解されて、栄養源である遊離鉄が放出されるか、ii)膜表面の呼吸タンパク質の酵素共同因子として組み込まれるか、または、iii)ヘム蓄積の場合、ヘム中毒を予防するため、細菌細胞の外に排出ポンプにより運び出される。
この研究では、細菌の鉄代謝を阻害する新規の処置組み合わせを、2つの化合物デフェリプロン(Def)およびガリウム−プロトポルフィリン(GaPP)を用いて、調べた。黄色ブドウ球菌バイオフィルムを用いて、個々の化合物を用いた処置および処置組み合わせの有効性を評価した一方、浮遊性黄色ブドウ球菌を用いた研究は、単一化合物のMICを示した。さらに、細胞毒性研究を、処置の安全性を調べるため、2つの異なる細胞株(つまり、L929、Nuli−1)を用いて行った。
黄色ブドウ球菌バイオフィルムに対するDefおよびGaPPのin vitroでの有効性研究により、個々の化合物および二重同時処置のそれぞれと比較し、二重連続処置の優れた有効性が明らかにされた(図3)。個々の処置としてのDefおよびGaPPは、双方とも、用量依存的抗バイオフィルム効果を実証することが示されたが、個々の化合物の何れも、黄色球菌バイオフィルムを根絶できなかった(図1)。Defの抗菌作用は、鉄キレート化および栄養欠乏の結果のようだが、一方、GaPPの抗菌作用は、細菌細胞内への細胞経路の部分的阻害に因る可能性がある。
対照的に、二重連続処置としての両化合物の組み合わせは、黄色球菌バイオフィルムを根絶させ、つまり、優れた抗菌作用を実証した。この発見により、相乗的に共に作用する各個別化合物の機構的効果が示された。
理論に縛られることを望むものではないが、当社は、これらの結果を以下のように解釈した。鉄キレート剤としてのDefは、黄色ブドウ球菌の鉄欠乏を引き起こし得る。それに応じて、細菌は、環境における任意の利用可能な鉄供給源から鉄を隔離するため、鉄トランスポータータンパク質をアップレギュレーションする。GaPPが導入されると、細菌は、好適な鉄供給源であるヘム環を認識する鉄トランスポータータンパク質を介して、化合物を吸収する可能性が高い。GaPPがいったん細菌細胞に入り込むと、必須細菌経路が阻害され、飢餓、呼吸制限、および活性酸素(ROS)の導入を招く可能性があることが報告されており、これは、最終的に細菌を死滅させる。
GaPPは、ヘムの酸化電位を欠く。これは、ガリウムイオンが、+3酸化状態でのみ存在する一方、鉄はFe+2およびFe+3として見られるためである。GaPPを用いた処置の後、膜結合シトクロムを含む呼吸タンパク質は、ATP生成のための電子を輸送することができず、呼吸制限がもたらされ、ROS生成の一因となる。さらに、GaPPは、細菌酵素により切断され得ず、つまり、栄養/鉄の放出を妨げ、飢餓を引き起こす。
ヘム排出ポンプは、黄色ブドウ球菌が、細菌細胞内のヘム量を調節するのに、重要な役割をする。しばしば、高効率のヘム吸収系が、黄色ブドウ球菌の代謝機能に勝るため、過剰なヘムまたはヘム代謝産物による中毒を避けるために、排出ポンプが細菌内のヘムレベルを均衡させる。GaPPによるこれらの排出ポンプの阻害は、黄色ブドウ球菌においてヘムの蓄積を引き起こし、これは、有毒な酸素ラジカルの発生、ならびに、それに続くDNAおよびタンパク質の損傷を触媒する。
当社は、DefとGaPPを連続処置として適用した場合に、相互作用機構が最良に機能することを発見した。これは、Def処置後の、鉄トランスポータータンパク質のアップレギュレーションの遅延によるものと仮定される。鉄トランスポータータンパク質の存在の増加は、後に、細菌細胞内へのGaPPの吸収を増大および加速させることになり、GaPPは、極めて重要な細胞経路を効率的に阻害し、最終的に、有毒な酸素ラジカルを発生させる。対照的に、同時処置には、Defによる鉄トランスポータータンパク質のアップレギュレーションのための初期の時間がなく、つまり、細菌細胞に入るGaPPが少なく、これにより、連続処置と比較して同時処置の有効性がより低いことを説明されるだろう。さらに、Defは、両化合物が一緒に適用される場合、GaPPと相互作用する可能性があると考えられる。GaPPのテトラピロール骨格は、両側からのDefアクセスが、中央のガリウムイオンと相互作用する、つまり、全分子の活性を低減させることを可能にしやすい平面構造であり、これが、単一GaPP処置と比較して同時処置の有効性がより低い理由であることが示唆される。
追加の研究では、Defのインキュベーション時間を(2時間ではなく)8.5時間に延ばす一方、GaPPを用いた連続処置時間は同じまま(2時間)とした。結果は、長期にわたってDefに暴露した、非常に低い濃度のDefおよびGaPPで、連続処置の有効性がより高いことを示し、これは、鉄トランスポータータンパク質のアップレギュレーションの高まりと、続くGaPPの吸収増大に因る可能性が高い。細菌細胞に入るGaPPの量は、二重処置の有効性に強い影響を与えるだろう。これは、GaPPが、必須細菌経路の阻害およびROSの生成をもたらす、二重処置の主要な活性化合物であるためである。したがって、Defによる鉄トランスポータータンパク質のアップレギュレーションは、高効率の連続処置の重要なステップである。
2つの高感度な細胞株(つまり、L929細胞株およびNuli−1細胞株)を用いた細胞毒性研究を行って、Def、GaPP、および連続二重処置の細胞毒性リスクを評価した。有効性研究全体にわたって使用した最大薬物濃度については、毒性を調べなかった。
結論として、DefとGaPPの連続二重処置は、黄色ブドウ球菌バイオフィルムを制御する特性を約束する、安全で高効率な新規の処置戦略である。
実施例2−DefとGaPPの組み合わせの抗菌特性についてのプレートアッセイ
DefとGaPPの抗菌特性を個別に、またはDefとGaPPを組み合わせて調べるため、プレートアッセイを使用した。簡潔に言うと、液体栄養寒天培地を、一定分量の黄色ブドウ球菌または緑膿菌の一晩培養物と混ぜ、ペトリ皿に注いだ。寒天培地を凝固させた後、穴(直径0.9cm)を寒天培地に開け、吸引した。続いて、穴を、200μlの、Def/GaPPを有する媒体およびDef/GaPPを有さない媒体で満たした。37℃で24時間インキュベーションした後、阻害径を、黄色ブドウ球菌または緑膿菌の細菌に対する有効性の尺度として評価した。
黄色ブドウ球菌の阻害を図8に示す。
使用した系で見られるように、媒体のみまたはDefを有する媒体は、黄色ブドウ球菌に対し、比較的低い抗菌活性を有した。GaPPのみを媒体に組み込んだ場合、組成物は、著しい抗菌活性を示した。DefおよびGaPPの組み合わせは、さらに、抗菌活性を高めた。
緑膿菌の阻害を図9に示す。
使用した系で見られるように、媒体のみは、緑膿菌に対し抗菌活性を示さなかったが、(2つの異なる濃度の)DefとGaPPの組み合わせは、著しい抗菌活性を示した。
これらの結果は、DefとGaPPの組み合わせが抗菌活性をもたらしたことを実証する。
実施例3−デフェリプロンとGaPPの組み合わせを用いた慢性副鼻腔炎の処置
当社の研究は、DefとGaPPを連続して適用する処置プロトコルの使用をサポートする。副鼻腔炎の処置に対し、この処置様式は、例えば、DefおよびGaPPを、DefとGaPPの連続した個別適用の間の時間に遅れを持たせて、経鼻スプレー溶液、注水ボトル、または、経鼻灌注で連続的に適用することにより達成され得る。この時間の遅れは、1、2、3、4、6、8、12時間未満または1、2、3、4、6、8、12時間超とすることが可能であり、水性溶液中のDefおよびGaPPの適用の遅れにより達成することが可能である。これらの溶液は、例えば、等張性、低張性、または高張性の生理食塩水とすることができる。
代わりに、処置組み合わせを、GaPPより速くDefを送達する送達デバイスまたは製剤において、DefおよびGaPPを適用することにより達成することが可能である。これは、GaPPより速くDefを送達する、単一製剤または別のデバイスもしくは製剤に組み込んだDefおよびGaPPを適用することにより達成することが可能である。別の処置レジメンでは、GaPPと共に水性溶液中のDefを送達するが、ここで、GaPP化合物は医薬組成物に組み込まれ、溶液内のGaPP化合物の遅延送達を可能にする。
in vivoで安全性および有効性をテストするため、in vivoの動物モデル(副鼻腔炎ヒツジモデル)を、前頭洞を用いる抗バイオフィルム剤のテストのために設けた。(Ha KR,Psaltis AJ,Tan L,Wormald PJ.A sheep model for the study of biofilms in rhinosinusitis.Am J Rhinol.2007 May−Jun;21(3):339−45)。DefとGaPP化合物の最適な投薬量は、in vitroでの有効性研究に基づき選択され、加えて、幅広い安全範囲を評価するため、DefとGaPPの濃度を2倍にした投薬量とされるだろう。メリノヒツジは、全身麻酔下で、両側前頭穿孔術(両前頭洞にあけた穿孔を通して小さい金属カニューレを留置すること)を受けるだろう。ヒツジを最低2週間収容して、デバイスがその場で治療することを可能にする。ヒツジは、次に、一方の前頭洞にDef/GaPPを滴下注入され(1日に2回を14日間)((a)Def、(b)GaPP、(c)Def/GaPP同時、および(d)Def/GaPP連続を滴下注入する群それぞれに、4匹のヒツジ)、一方で、反対側の洞は媒体対照を受け取る。次にヒツジを安楽死させ、洞組織を採取し、肉眼的および顕微鏡的に評価した。(走査型電子顕微鏡法を用いた、線毛および密着結合の病理組織学的分析および形態評価)。ヒツジの全身の健康状態(食欲、行動、体重変化)が、第2の尺度である。有効性研究:第1ステージは、前頭洞小孔に便利にアクセスするために、鼻甲介切除(中鼻甲介、両鼻腔の側面の組織突起の除去)と、篩骨切除(篩骨蜂巣の除去)を必要とする。次に、ヒツジは、最低3週間の回復期を与えられる。第2手術ステージは、前頭洞ミニ穿孔術(安全性研究の場合)、ワセリンガーゼを用いた前頭洞小孔の保護、および、ふさがれた前頭洞へのミニ穿孔器を介した黄色ブドウ球菌の滴下注入を含む。ヒツジを7日間のインキュベーション期間の間モニタリングして、黄色ブドウ球菌バイオフィルムを洞粘膜上に形成させた。8日目に、小孔の保護を鎮痛状態下で外し、処置を開始した。4匹のヒツジが陽性対照の役目を担い、8日目に安楽死させた。最良のDef/GaPP組み合わせは、安全性アームおよびin vitro研究の結果に基づき選択されよう。ヒツジは、5日間の間、穿孔器を介して1日に2回灌注を与えられるだろう。右洞は、対照の0.9%塩水フラッシュ(flush)を受ける。群内(n=4)で、左洞は、(a)Def、(b)GaPP、(c)Def/GaPP同時、および(d)Def/GaPP連続の何れかを受ける。結果の尺度:いったん安楽死させたら、粘膜組織を全ての前頭洞から採取し、LiveDead Baclight染料を用いて黄色ブドウ球菌バイオフィルムを染色し、CLSMを用いて見た。バイオフィルムの定量化は、当社が以前実証したプロトコルに従ってソフトウェアCOMSTAT2を用いて実行されよう(Singhal D,Boase S,Field J,Jardeleza C,Foreman A,Wormald PJ.Quantitative analysis of in vivo mucosal bacterial biofilms.Int Forum Allergy Rhinol.2012 Jan―Feb;2(1):57−62.)。各粘膜サンプルから取った2つのz−stackのバイオフィルム生物量(μm3/μm2)を平均し、結果を、異なる処置アームごとに比較した。また、Haematoxylin&Eosinを用いて粘膜セクションを染色し、確立された当社研究所のプロトコルを用いて炎症細胞を数えることにより、組織を炎症についても評価する。これについて、3つの無作為画像を各洞で撮り、各画像から、上皮層(セクション長さ0.1mm)および上皮下層の2つのセクションを選択した(面積0.1mm2)。各上皮セクション内で、炎症細胞および杯細胞の数を数え、各上皮下セクション内で、炎症細胞数を数えた。炎症細胞数を、2つのカテゴリー:急性炎症細胞(好中球細胞および好酸球細胞)と慢性炎症細胞(リンパ球、血漿細胞、ラッセル小体)に分けた。
実施例4−デフェリプロンとGaPPの組み合わせを用いた浮遊性感染症の処置
浮遊性細菌感染症を処置するため、デフェリプロンなどの鉄キレート剤の静脈内溶液または経口剤形を、適切な細菌感染症を患った、または、該細菌感染症にかかりやすい対象に投与することができる。この場合、薬剤の局所用量は、25mg/kg体重〜33mg/kg体重の範囲であり、経口で1日に3回投与し、1日の総用量は、75mg/kg体重〜99mg/kg体重である。次に、対象を、続けて、典型的には、8〜48時間後に、GaPPなどの非鉄ポルフィリンを静脈内または経口剤形として、典型的には10mg/kg〜40mg/kgの範囲の投薬量で用いて処置することができる。処置は、GaPP処置が開始される際にデフェリプロンでの処置を中止することを伴い得るか、または、代わりに、デフェリプロンを用いた処置を続け、GaPP処置を、デフェリプロン処置の存在下で続けて行うことができる。
次に、臨床パラメータを用いて、処置レジメンの有効性を評価することができる。
実施例5−ゲル製剤
ヒドロゲル製剤を、国際公開第200902896号に記載されているように調製し、20mMのデフェリプロン(3−ヒドロキシ−1,2−ジメチルピリジン−4(1H)−オン、Sigma Aldrich,ドイツ、シュタインハイム)または、種々の濃度(100、250、および500μg/ml)のガリウム−プロトポルフィリンIX(Frontier Scientific、アメリカ合衆国、ユタ州ローガン)、または両化合物の組み合わせを充填した。対照には、薬剤フリーゲルおよび5μg/mlの抗生物質シプロフロキサシンを充填したゲル(つまり、黄色ブドウ球菌ATCC25923のMICの40倍超)が含まれた。
薬物放出:5ミリリットルのゲルをFalcon(登録商標)チューブにおいて調製して、凝固させ、その後、10mlの放出媒体(リン酸緩衝生理食塩水、Sigma Aldrich)を加えた。チューブを、回転台上で20日間、37℃でインキュベーションした。0.5mlの一定分量を、特定の時点(0.5、1、2、8、16、24、48、72、96、120、170、220、290、460時間)で取り、新しい放出媒体と交換した。DefおよびGaPPの濃度を、UV−Vis分光法(Evolution 201 UV−Vis分光測光器、Thermo Fisher Scientific、オーストラリア、ビクトリア州スコアーズビー)により、それぞれ280nmおよび405nmで、標準曲線から補間することにより、定量化した。
データを図10に示す。放出媒体におけるDefとGaPPの濃度を、ゲルの元の濃度のパーセンテージとして表現した。Defの放出は、約48〜72時間後に100%に達した一方、GaPPの放出は経時的に徐々に増加し、460時間後に20〜25%に達した。これらの放出プロファイルは、ゲルの薬物濃度とは無関係だった。単一化合物を組み込んだゲルからの放出と、組み合わせゲルからの対応薬物の放出の間に、統計的差異はなかった。
ヒドロゲル製剤は、両化合物を組み合わせる薬物送達系を提供して、Defの迅速な放出を促進する一方で、GaPPの持続放出を可能にする。水溶性薬剤であるDefは、48〜72時間以内に完全に放出された一方、低水溶性のGaPPは、拡散により生じる経時的な段階的放出を引き起こした。当社の実験系では、ヒドロゲルから放出されるGaPPの総量は、限定的だった(組み込んだGaPPの約25%が20日後に放出された)。
実施例6−浮遊性黄色ブドウ球菌およびMRSAの組み合わせ処置
細菌株:黄色ブドウ球菌ATCC25923を、American Type Culture Collection(アメリカ合衆国、バージニア州マナサス)から購入した。臨床MRSA分離株を、Adelaide Pathology Partners(オーストラリア、南オーストラリア州マイル・エンド)から得た。検体は慢性副鼻腔炎患者に由来し、これらは、4〜最大9個の抗菌剤(つまり、ペニシリン、オキサシリン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、トリメトプリム、テトラサイクリン、アモキシシリン/クラブラン酸、セファレキシン、およびシプロフロキサシン)に対する耐性をコードしていた。
可溶化したDefとGaPPを含有する実施例5に記載の、作って3週間のゲル製剤を用いて、Wiegand I,Hilpert K,Hancock RE. “Agar and broth dilution methods to determine the minimal inhibitory concentration(MIC)of antimicrobial substances” Nat Protoc 2008;3:163−75に記載されているように、(最大9個の抗菌剤に対し耐性を有する)浮遊性黄色ブドウ球菌ATCC25923および5つの臨床MRSA分離菌に対する最小阻害濃度(MIC)を評価した。処置濃度を放出プロファイルに基づいて計算したが、それは、0.02〜8mMDefおよび0.01〜25μg/mlGaPPの範囲にわたった;対照は、0.02〜5μg/mlの範囲のシプロフロキサシンを含んだ。MICを、細菌増殖を防ぐ最小薬物濃度として測定した。
浮遊性黄色ブドウ球菌ATCC25923および5つの異なる浮遊性臨床MRSA分離株に対するMICを表2に記すが、これは、デフェリプロン(Def)、ガリウム−プロトポルフィリン(GaPP)、両化合物の組み合わせ、および抗生物質対照シプロフロキサシン(CIP)の、浮遊性の黄色ブドウ球菌株およびMRSA株に対する、最小阻害濃度を示す。括弧内:株が耐性を持つ抗生物質の数。
実施例7−抗バイオフィルム有効性研究
物質および方法
細菌株:黄色ブドウ球菌ATCC25923を、American Type Culture Collection(アメリカ合衆国、バージニア州マナサス)から購入した。臨床MRSA分離株を、Adelaide Pathology Partners(オーストラリア、南オーストラリア州マイル・エンド)から得た。検体は、慢性副鼻腔炎患者に由来し、これらは、最大9個の抗菌剤(つまり、ペニシリン、オキサシリン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、トリメトプリム、テトラサイクリン、アモキシシリン/クラブラン酸、セファレキシン、およびシプロフロキサシン)に対する耐性をコードしていた。
ヒドロゲルを、実施例5に記載のように調製した。
コロニーバイオフィルムモデル:バイオフィルム培養条件および処置
黄色ブドウ球菌ATCC25923および臨床MRSA分離株(5つの抗生物質に対し耐性を持つ)の単一コロニーを、0.9%生理食塩水(Sigma Aldrich)に浸し、1.0±0.1マクファーランド単位(3x108コロニー形成単位(CFU)/ml)に調節した ニュートリエントブロス(Oxoid Ltd.、英国、ベイジングストーク)において1:1000で希釈した後、1μlの細菌懸濁液のしみを、栄養寒天培地に置いたWhatman(登録商標)ニトロセルロースメンブレンフィルタ(細孔サイズ0.2μm、直径25mm、GE Healthcare Ltd.、英国、リトル・チャルフォント)につけた。21、22のバイオフィルムを24時間37℃で増殖させてから、フィルタを低栄養ABトレース寒天培地(炭素源として0.5%グルコースを含み、アミノ酸源として0.5%ペプトンを含む、最小増殖寒天培地)に移した。次に、コロニーバイオフィルムを100μlの処置剤で覆い、5日間37℃でインキュベーションした。2.5日後、フィルタを新しいABトレース寒天培地に移した。最終的に、細菌を、ボルテックスおよび超音波処理により、フィルタ増殖バイオフィルムから抽出し、希釈し、栄養寒天培地に点在させて、CFUを数えることにより処置剤の有効性を評価した。
穿孔寒天培地モデル:バイオフィルム培養条件および処置
5つの抗生物質に対する耐性をコードした黄色ブドウ球菌ATCC25923および臨床MRSA分離株の一晩培養物を、0.9%生理食塩水を用いて7.0マクファーランド単位に調節した。20マイクロリットルの調節した一晩培養物を、25mlの液体栄養寒天培地(40℃)に懸濁し、ペトリ皿に注いだ。寒天培地が凝固した後、直径0.9cmの穴を開け、寒天培地を吸引した。穴を200μlの製剤で満たし、細菌阻害直径を、37℃で24時間インキュベーションした後で測定した。
バイオフィルム可視化
コロニーバイオフィルムを膜フィルタ上で増殖させ、上記の条件を用いて処置した。その後、バイオフィルムを(処置剤および膜と一緒に)2.5%グルタルアルデヒド溶液(Sigma Aldrich)に固定し、live/dead BacLight染色剤(SYTO9/ヨウ化プロピジウム、Life Technologies、オーストラリア、ビクトリア州スコアーズビー)を用いて、暗所でインキュベーションした。これに続いて、10%中性緩衝ホルマリン(Sigma Aldrich)に、24時間4℃で固定し、70%エタノールに移した。次に、バイオフィルムを、昇順のエタノールシリーズ(80%、85%、90%、95%、100%エタノール)で脱水し、断面化してから、パラフィンワックスに埋め込んだ。3μmのセクションを切り取り(Microtome HM325、Thermo Fisher Scientific)、粘着性のSuperfrost(登録商標)スライドガラス(Grale HDS、オーストラリア、ビクトリア州リングウッド)に置いた。続いて、セクションを、63x/1.4油対物レンズを用いた共焦点レーザー走査型顕微鏡(LSM710、Carl Zeiss、ドイツ、イェーナ)による分析の前に、脱パラフィン化し、再水和した。BacLight染色の励起/蛍光波長は、それぞれ、485/530nmおよび485/630nmだった。
Zeiss社のshuttle and findソフトウェアを用いて、共焦点顕微鏡画像と、走査型電子顕微鏡画像(MERLIN、Carl Zeiss)を互いに関係付けるため、追加のサンプルを上記のように調製した。脱パラフィン化および再水和の後、サンプルを酸化オスミウム(ProSciTech、オーストラリア、クイーンズランド州タウンズビル)と共にインキュベーションし、エタノールシリーズと次のヘキサメチルジシラザンのインキュベーション(ProSciTech)を続いて行った。最終的に、サンプルを10nmの金粒子(ANFF−Sa、オーストラリア、南オーストラリア州モーソン・レイクス)を用いてスパッタコーティングした。
統計およびソフトウェア
全ての実験を3連で行い、平均±標準偏差(SD)として表示する。
結果を、一元配置分散分析およびダネットの検定を用いて分析した(Windows用GraphPad Prism version6.00、GraphPad Software、アメリカ合衆国、カリフォルニア州ラホヤ)。統計的有意性を、95%信頼水準で評価した。
結果
コロニーバイオフィルムモデル
黄色ブドウ球菌バイオフィルムに対する処置剤の有効性を、5日後に評価した(図11A)。Def20、GaPP100、およびDef20+GaPP100のゲルは、バイオフィルムに対して実証した有効性が低く、薬物フリー対照と比較し、それぞれ、CFU/ml単位で、0.3、0.2、および0.2の対数減少を示すにすぎなかった。対照的に、GaPP250、Def40+GaPP250、GaPP500、およびDef40+GaPP500のゲルは、CFU/ml単位で、3.1〜3.8の対数減少(最大99.98%のバイオフィルム死滅に相当)を実証し、これにより、抗生物質対照の有効性(CFU/ml単位で1.3対数減少)を有意に(p<0.01)上回った。処置剤を、MRSAバイオフィルムに対してテストした場合(図2)、Def20、GaPP100、およびDef20+GaPP100のゲルは、それぞれ、CFU/ml単位で0.1、0.8、1.0の対数減少を示したが、GaPP250、Def40+GaPP250、GaPP500、およびDef40+GaPP500ゲルは、log10CFU/mlを1.1〜1.4減少させた(最大96.00%バイオフィルム死滅に相当)。この有効性は、抗生物質対照(CFU/ml単位で0.3対数減少)よりも有意に(p<0.01)良好だった。しかしながら、250μg/ml超のGaPP濃度を含む全ての薬物充填ゲルの有効性が、著しく異なることはなかった。
穿孔寒天培地モデル
このモデルにおいて、処置の有効性評価は、Defゲルが黄色ブドウ球菌に対しわずかな阻害(直径1.9cm)を示すのみである一方(図12)、全てのGaPPゲルおよび全ての組み合わせゲルが、抗生物質充填ゲル(2.4cm)と比較し、有意に(p<0.0001)バイオフィルム増殖を阻害する(最大3.4cm)ことを明らかにした。全ての薬剤充填ゲルは、MRSAバイオフィルムに対し、有意に(p<0.01〜p<0.0001)、抗生物質対照の有効性(直径2.2cm阻害)を上回り、増殖を、2.6cm(Def)、最大3.5cm(GaPP)、および最大3.7cm(Def+GaPP)阻害した(図12)。
バイオフィルム可視化
図13は、ヒドロゲルで覆われた黄色ブドウ球菌コロニーバイオフィルムの例を描く。処置および濃度は図10の通りである。バイオフィルム増殖の経時的な顕微鏡分析は、異なる処置剤の有効性を示した。バイオフィルムは、薬物フリー対照およびDefゲルでは広範に増殖した一方、明確な抗バイオフィルム効果が、GaPPゲル(画像未記載)、組み合わせゲル、および抗生物質充填ゲルでは観察された。
live/dead染色を用いた共焦点レーザー走査型顕微鏡により、薬物充填ゲルの有効性を確かめた。図14は、組み合わせDef20+GaPP250ゲルを用いた処置の5日後の、黄色ブドウ球菌コロニーバイオフィルムの代表的な断面を示す。赤の染色(ヨウ化プロピジウム)は、バイオフィルム内の死滅細菌を示す。
処置の有効性を、共焦点走査型電子顕微鏡画像と重ね合わせる光・電子相関顕顕微鏡法によって、さらに確認した(データ未記載)。
検討
本研究では、鉄キレート剤Defとヘム類似体GaPPを組み合わせた新規製剤の抗菌作用を調べた。ヒドロゲルからの薬物放出を評価し、黄色ブドウ球菌およびMRSAのバイオフィルムに対する有効性を測定した。
理論に縛られることを望むものではないが、スタフィロコッカス種の増殖、残存、および病態形成に特に不可欠な細菌の鉄代謝を標的にする場合、Defは、特定の鉄獲得系の枯渇およびアップレギュレーションを誘発する一方、GaPPは後者を活用する。ヘム(つまり、鉄プロトポルフィリン)、黄色ブドウ球菌の好適な鉄供給源を模倣することにより、GaPPは細菌細胞内に取り込まれ、そこでGaPPは必須の細胞経路を阻害し、呼吸鎖を乱し、細菌にとって有毒な活性酸素を発生させる。
抗微生物有効性を最大化するため、当社は、薬物送達系が、両化合物を組み合わせて、Defの迅速放出を促進する一方で、GaPPの持続放出を可能にすることが重要であると考える。これは、薬物送達系としてヒドロゲルを用いることにより、達成された。
臨床MRSA分離菌を含む、異なる黄色ブドウ球菌に対する抗バイオフィルム効果が、in vitroで観察された。
当社は、ヒドロゲルの使用は、臨床診療での一部の局所適用向けアプローチであると考える。
結論として、本研究は、黄色ブドウ球菌およびMRSAのバイオフィルムの局所処置向けの新規の製剤を評価した。in vitroでの研究は、DefとGaPPを組み込んだヒドロゲルが、シプロフロキサシンを含有する抗生物質対照よりも、良好な抗バイオフィルム有効性を示すことを明らかにした。
実施例8−種々の細菌のバイオフィルムに対するヒドロゲルの使用
方法
細菌株
黄色ブドウ球菌(ATCC25923)、表皮ブドウ球菌(ATCC12228)、アシネトバクター・ジョンソニイ(ATCC17946)を、American Type Culture Collection(アメリカ合衆国、バージニア州マナサス)から購入した。緑膿菌01を、英国、ノッティンガムのノッティンガム大学のSchool of Molecular Medical Sciences、Centre for Biomolecular Sciencesより受け取った。臨床分離菌を、Adelaide Pathology Partners(オーストラリア、南オーストラリア州マイル・エンド)より得たが、これには、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌株(慢性副鼻腔炎(CRS)患者に由来する)、2つの黄色ブドウ球菌小コロニー変異体(SCV)株(CRS患者に由来する)、および緑膿菌株(嚢胞性線維症患者に由来する)が含まれた。MRSA株は、5つの抗生物質(つまり、ペニシリン、オキサシリン、アモキシシリン/クラブラン酸、セファレキシン、エリスロマイシン)に対し耐性を示した。
ヒドロゲルの調製
ヒドロゲルを、実施例5に記載のように調製し、20mMのデフェリプロン(Def、3−ヒドロキシ−1,2−ジメチルピリジン−4(1H)−オン)および/または種々の濃度(100、250、および500μg/ml)のガリウム−プロトポルフィリンIX(GaPP)を充填した。対照には、薬剤フリーゲルおよび5μg/mlの抗生物質シプロフロキサシンを充填したゲル(つまり、黄色ブドウ球菌ATCC25923のMICの40倍超)が含まれた。Def20mM、GaPP100μg/ml、およびCip5μg/mlを含む三重ゲルも、テストした。シプロフロキサシン(Cip)を、例えば呼吸器および皮膚の感染症に関係する種々のグラム陽性菌(黄色ブドウ球菌など)およびグラム陰性菌に対する薬効範囲の広い治療としてのその臨床的意義により、抗生物質対照として選択した。
コロニーバイオフィルムモデルにおける活性
細菌の単一コロニーを0.9%生理食塩水に浸し、1.0±0.1マクファーランド単位(約3x108コロニー形成単位(CFU)/ml)に調節した。媒体(つまり、黄色ブドウ球菌、MRSA、表皮ブドウ球菌、A.ジョンソニイにはニュートリエントブロス、緑膿菌および緑膿菌臨床分離菌にはルリア−ベルターニブロス、両SCVにはトリプチックソイブロス)において1:1000で希釈した後、1μlの細菌懸濁液のしみを、寒天培地に置いたWhatmanニトロセルロースメンブレンフィルタ(細孔サイズ0.2μm、直径25mm、GE Healthcare Ltd.、英国、リトル・チャルフォント)につけた。バイオフィルムを24時間37℃で増殖させてから、フィルタを、低栄養ABトレース寒天培地(炭素源として0.5%グルコースを含み、アミノ酸源として0.5%ペプトンを含む、最小増殖寒天培地)に移した。次に、コロニーバイオフィルムを、100μlのゲル(活性化合物ありまたはなし)で覆い、5日間37℃でインキュベーションした。2.5日後、フィルタを新しいABトレース寒天培地に移した。最終的に、細菌を、ボルテックス(1分)および音波処理(氷水槽で15分)によりPBS中のフィルタ増殖バイオフィルムから回収し、希釈し、寒天培地上に点在させ、CFUを数えることにより処置の活性を評価した。
結果
バイオフィルムに対する充填ヒドロゲルの効果
図15および16、ならびに、表3は、種々のバイオフィルムに対する処置剤の抗バイオフィルム活性を示す。
A)Def20、GaPP100、およびDef20+GaPP100のゲルは、黄色ブドウ球菌バイオフィルムに対して実証した有効性が低く、それぞれ、42.96%、20.37%、および12.96%バイオフィルム減少を示した。対照的に、GaPP250、Def40+GaPP250、GaPP500、およびDef40+GaPP500のゲルは、99.91%〜99.98%のバイオフィルム減少を実証し、これにより、対照として含まれたCipゲルの活性(94.63%バイオフィルム減少)を有意に(p<0.01)上回った。Def20+GaPP100+Cipからなる三重ゲルは、99.48%という実質的な抗バイオフィルム減少を示し、これはCipゲルよりも有意に(p<0.01)有効だった。
B)MRSAバイオフィルム(CRS患者に由来する臨床分離菌)を、処置剤に暴露した際、Def20、GaPP100、およびDef20+GaPP100のゲルは、それぞれ、18.66%、82.8%、および88.8%のバイオフィルム減少を示した一方、GaPP250、Def40+GaPP 250、GaPP500、およびDef40+GaPP500のゲルは、バイオフィルムを91.73%〜95.33%減少させた。この減少は、Cipゲルで観察されたもの(49.33%のバイオフィルム減少)よりも有意に(p<0.01)高かった。三重ゲルは、99.88バイオフィルム減少と、MRSAに対しテストした全てのゲルの抗バイオフィルム活性を上回り、これは、Cipゲルより有意に(p<0.0001)良好だった。
C)緑膿菌バイオフィルムがDef20ゲル、ならびに、GaPP100、GaPP250、およびGaPP500のゲルに受ける影響はより少なく、それぞれ、78.10%、77.14%、89.52%、および95.05%のバイオフィルム減少を示した。Def20とGaPP(100、250、および500)を組み合わせたゲルは、それぞれ、99.79%、99.77%、および99.95%のバイオフィルム減少を実証し、これは、99.95%バイオフィルム減少のCipゲルと同程度に効果的だった。組み合わせゲルとCipゲルの間に統計的差は観察されなかった。しかしながら、三重ゲルは、100%バイオフィルム減少と計算されるCipゲルを有意に(p<0.001)を上回った。
D)類似の処置有効性パターンを、緑膿菌バイオフィルム(嚢胞性線維症患者に由来する)に対して観察した。Def20ゲル、GaPP100、GaPP250、およびGaPP500のゲルは、それぞれ、96.93%、78.73%、99.21%、および99.53%のバイオフィルム減少を示した一方、組み合わせゲルは、より高い抗バイオフィルム活性を実証した(Def20+GaPP100/250/500ゲルで、99.98%、99.97%、99.99%のバイオフィルム減少)。
E)Def20ゲルは、表皮ブドウ球菌バイオフィルムを減少させなかった;対照的に、GaPPを含有するゲルおよび組み合わせゲルは、全て、実質的な抗バイオフィルム効果を示し(99.99%〜100%バイオフィルム減少と計算される)、これは、Cipゲルと同じ程度良好であると計算された。Def20+GaPP250ゲルのみが、抗生物質対照よりも有意に(p<0.01)良好だった。
F)Def20、GaPP100、Def20+GaPP100、およびGaPP250のゲルのA.ジョンソニイバイオフィルムに対する抗バイオフィルム活性は、90.88%〜98.16%バイオフィルム減少の範囲にわたり、全て、96.23%バイオフィルム減少のCipゲルと統計的に差はなかった。対照的に、Def20+GaPP250、GaPP500、およびDef20+GaPP500のゲルは、抗生物質対照ゲルよりも有意に(p<0.05)高い抗バイオフィルム効果を示した(98.25%〜98.05%バイオフィルム減少)。
G)処置ゲルは、黄色ブドウ球菌のSCV(C8)株に対し活性を示した(ゲンタマイシン誘発性)。Def20ゲルがSCVバイオフィルム増殖を促進した一方、GaPP100およびDef20+GaPP100のゲルは、穏やかな抗バイオフィルム活性を示した(それぞれ、96.86%および94.91%のバイオフィルム減少)。対照的に、GaPP250、Def20+GaPP250、GaPP500、およびDef20+GaPP500のゲルのバイオフィルム減少は、99.99%〜100%と計算され、これにより、Cipゲルの抗バイオフィルム活性(58.17%バイオフィルム減少)を有意に(p<0.0001)上回った。同様に、三重ゲルは、99.96%バイオフィルム減少と、Cipより有意に(p<0.001)高い抗バイオフィルム効果を示した。
H)別の黄色ブドウ球菌のSCV(C12)株(CRS患者に由来する)に対しテストした場合、Def20、GaPP100、Def20+GaPP100、Cipゲルの何れもSCVバイオフィルムを減少させることができなかった。高濃度のGaPPを有するゲル、つまり、GaPP250、Def20+GaPP250、GaPP500、およびDef20+GaPP500のゲルは、91.30%〜99.66%のバイオフィルム減少と、Cipゲル(15.74%バイオフィルム減少)と比較し、有意な(p<0.01)抗バイオフィルム効果を示した。有意な(p<0.0001)抗バイオフィルム活性が、三重ゲルで達成された(99.92%バイオフィルム減少)。
表3:バイオフィルムに対する種々の処置剤の対数減少および対応する%バイオフィルム減少。A:シプロフロキサシン5μg/ml、1:デフェリプロン20(単位mMのDef)、2:ガリウム−プロトポルフィリン100(単位μg/mlのGaPP)3:Def20+GaPP100、T:Def20+GaPP100+Cipからなる三重ゲル、4:GaPP250、5:Def20+GaPP250、6:GaPP500、7:Def20+GaPP500。データは、3回の生物学的反復実験の平均である。
Defおよび最低濃度のGaPPを、三重治療としてCipと組み合わせた場合、処置剤は、黄色ブドウ球菌、MRSA、緑膿菌、および両SCV株のバイオフィルムに対して、個々の化合物の抗バイオフィルム活性を上回った。したがって、Def−GaPPは、Cipの活性を増強し、種々のバイオフィルムに対して相乗的な抗バイオフィルム効果を示すことが可能である。
概要
Def−GaPPゲルは、薬物フリー対照と比較し著しいバイオフィルム死滅を示し、該ゲルは、黄色ブドウ球菌、MRSA、および2つのSCV株に対し、Cipよりも統計的に良好だった。緑膿菌、緑膿菌の臨床分離菌、表皮ブドウ球菌、および、A.ジョンソニイに対し、Def−GaPPゲルは、ブランクゲルと比較し、著しいバイオフィルム死滅を示し、Cipと等しい抗バイオフィルム活性を実証した(統計的差異なし)。Def、GaPP、およびCipを含む三重ゲルは、黄色ブドウ球菌、MRSA、緑膿菌、および両SCV株に対し著しい抗バイオフィルム活性を示し、これにより、MRSAおよびSCVの耐性株に対しても抗生物質の効果を増強した。
結論として、DefおよびGaPPは、特に、抗生物質耐性増大の観点から、抗生物質処置の代替である。Def−GaPPと抗生物質の組み合わせは、細菌耐性に打ち勝ち、病原体の感受性を増大させるのに役立ち得る。
実施例9−副鼻腔炎モデルにおけるバイオフィルムの処置
当社は、黄色ブドウ球菌を接種した副鼻腔炎の動物(ヒツジ)モデルを用いて、in vivoにおける細菌バイオフィルムの処置の効果を研究した。このヒツジモデルは、Ha,K.R.et al(2007)American Journal of Rhinology,21(3):339−345に記載されているように、バイオフィルムと副鼻腔炎の間の関連を研究するための、一般に容認された実験モデルを提供する。
全部で23匹の1〜2歳のオスのメリノヒツジを用いた;8匹を安全性アームに配分し、15匹を有効性アームに配分した。安全性アームでは、4匹のヒツジを、各安全群(i)ヒドロゲル(ゲル)および(ii)ヒドロゲル−デフェリプロン−ガリウムプロトポルフィリン(ゲル−DG)にランダム化した。有効性アームでは、5匹のヒツジを、各有効性群(i)1日に2回の生理食塩水フラッシュ(NT)、(ii)ヒドロゲル(ゲル)、および(iii)ヒドロゲルデフェリプロン−ガリウムプロトポルフィリン(ゲル−DG)にランダム化した。
細菌接種原。黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成参考株、American Type Culture Collection(ATCC)を用いた。凍ったグリセロールストックを解凍し、37℃で24時間、振動機の上で、3mLのニュートリエントブロス(Oxoid、オーストラリア、アデレード)において一晩予備培養してから、1%栄養寒天培地プレート(Oxoid、オーストラリア、アデレード)に移した。プレートを、37℃で16〜18時間インキュベーションし、その時点での単一コロニー形成単位(CFU)を0.45%滅菌生理食塩水に希釈して、0.5マクファーランド標準液にし、ヒツジの洞に滴下注入するために、氷上に移した。
内視鏡下副鼻腔手術。安全性。ヒツジは、全身麻酔下で、両側前頭穿孔術(両前頭洞にあけた穿孔を通して小さい金属カニューレを置くこと)を受けた。次に、ヒツジを、デバイスが所定の位置で治療できるように、最低2週間収容した。安全性研究のため、ヒツジの一方の前頭洞に滴下注入した一方、反対側の洞は、媒体対照を受け取った。次にヒツジを安楽死させ、洞組織を採取し、肉眼的および顕微鏡的に評価した。(走査型電子顕微鏡法を用いた、病理組織学的分析、ならびに、線毛および密着結合の形態評価)。ヒツジの全身の健康状態(食欲、行動、体重変化)が、第2の尺度である。
有効性研究のため、ヒツジは、前頭洞小孔にアクセスするために鼻甲介切除(中鼻甲介、両鼻腔の側面の組織突起の除去)と、篩骨切除(篩骨蜂巣の除去)を受け、その後、最低3週間の回復期が続いた。ヒツジは、前頭洞ミニ穿孔術(安全性研究の場合)、ワセリンガーゼを用いた前頭洞小孔の保護、および、ふさがれた前頭洞へのミニ穿孔器を介した黄色ブドウ球菌(または、第2プロジェクトでは緑膿菌)の滴下注入を受けた。当社の十分に確立された副鼻腔炎ヒツジモデルに従い、粘膜バイオフィルムが形成されるようにヒツジを7日間モニタリングした。8日目に、小孔の保護を外し、処置を開始した。各ヒツジを、3つの有効性群(i)1日に2回の生理食塩水フラッシュ(NT)、(ii)ゲル、および(iii)ゲル−デフェリプロン−ガリウムプロトポルフィリン(G−DG)の1つに割り当てた。ゲルグループ(ii)および(iii)に割り当てられたヒツジには、調製ゲルを、前頭洞の小孔からゲルが押し出されるのが、直接的な内視鏡的視覚化の下で見えるまで、ミニ穿孔器を介して各副鼻腔に滴下注入した。次に、ミニ穿孔器に蓋をした。24時間後、副鼻腔を、残りの6日間の処置の間、15mLの滅菌通常整理食塩水で、1日に2回灌注した。8日目に、全ての有効性ヒツジを安楽死させ、副鼻腔の粘膜を採取した。
ヒドロゲル。ヒドロゲルを、実施例5に記載のように生成した。
ゲルの全成分を、本研究で用いる前に、無菌になるよう処置した。全てのストックを、室温で保管した。
デフェリプロンおよびガリウムプロトポルフィリン
20mMのデフェリプロン(Sigma−Aldrich、ドイツから供給された)および250μg/mLのガリウムプロトポルフィリン(Frontier Scientific、アメリカ合衆国、ユタ州から供給された)。全てのストックを、室温で保管した。
デフェリプロン−ガリウムプロトポルフィリンゲルの調製:
20mMのデフェリプロンおよび250μg/mLのガリウムプロトポルフィリンを、前日に、滅菌状況下で、10mlのリン酸緩衝液で希釈した。次に、この調製溶液を用いて、滅菌技法を用いてヒドロゲルを調製した。
ゲルの前頭洞への滴下注入
調製ゲルを、前篩骨複合体を直接内視鏡で視覚化しながら、ミニ穿孔器を介して、ヒツジの両側前頭洞に滴下注入した。副鼻腔に、ゲルを、該ゲルが前頭洞の小孔から押し出されるのが見えるまで、滴下注入した。次に、ミニ穿孔器に蓋をした。
有効性プロトコル。有効性プロトコルの詳細を、図17に示す。
組織病理学的組織を、炎症について、組織病理学により評価した。
走査型電子顕微鏡法を用いて、線毛および密着結合の形態を評価した。
バイオフィルムの画像化。いったん安楽死させた後、粘膜組織を全ての前頭洞から採取し、LiveDead Baclight染色剤を用いてバイオフィルムを染色し、当社が以前実証したプロトコルにしたがって、CLSMを用いて定量化した。
統計分析を、独立t検定を用いて、ヒツジそれぞれの各処置側と生理食塩水側を比較しながら行った。バイオフィルム増殖の固有の多様性および炎症の広がりにより、異なる処置アーム間で、バイオフィルム生物量および炎症を対数的に比較しなければならない。この後に、一元配置分散分析を用いた統計分析を行った。統計モデルの仮定をより満たすように、データ変換を必要に応じて適用した。分析を、R統計ソフトウェアを用いて行った。
処置群間の粘膜バイオフィルムの比較を、Kruskal Wallisの一元配置分散分析(ANOVA)とDunnの多重比較事後検定を用いて分析した。統計的有意性を0.05と考えた。全ての統計テストを、GraphPad Prism 5.0 software(カリフォルニア州、サンディエゴ)を用いて行った。
結果
安全性アーム。組織病理学およびSEM分析に着目する安全性分析では、G−DGで処置したヒツジとゲルで処置したヒツジを比較した際、線毛形態の裸出は示されなかった。
組織病理学的分析。炎症、急性炎症、上皮の厚さ、杯細胞の過形成、浮腫、線維症、および線毛(予備データ)の度合いに着目すると、(A)NT、(B)ゲル、および(C)G−DGゲルで処置したヒツジの副鼻腔粘膜を比較しても著しい差はなかった。
SEM組織分析。SEM組織分析では、G−DGで処置したヒツジとゲルで処置したヒツジを比較した際、線毛の裸出は示されなかった。
図18に示すように、バイオフィルム生物量のCOMSTAT2評価は、NT対照と比較しG−DG処置ヒツジにおける著しい減少を示したが(95%CI[0.3702、8.278]、p<0.05)、NTで処置したヒツジとゲルで処置したヒツジの間では著しい差はないことが示された。
本開示は特定の実施形態を参照して記載されてきたが、本開示は他の多くの形態により具現化されうることが理解されよう。本明細書に記載の開示は、具体的に記載されたもの以外の改変および変更が可能であることも理解されよう。本開示には、そのような改変および変更が全て含まれることが理解されるべきである。本開示には、また、本明細書で言及するまたは示すステップ、特徴、組成物、および化合物の全てが個別にまたは集合的に含まれ、かつ、任意の2つ以上のステップまたは特徴の何れかのおよび全ての組み合わせが含まれる。
また、本明細書で用いる場合、「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」の単数形には、文脈がすでに他を意味する場合を除き、複数の態様が含まれることに留意されたい。
本明細書を通し、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含み(comprising)」などの変異体は、言及された要素もしくは整数、または要素もしくは整数の群を含むが、任意の他の要素もしくは整数、または要素もしくは整数の群を排除しないことを含意することを理解されたい。
本明細書における任意の先行技術に対する言及は、その先行技術が任意の国における一般常識の一部を形成するということを認めるものでも、それを何らかの形で示唆するものでもなく、そのようにみなされるべきでもない。
本明細書で用いる見出し語は、読者の参照を容易にするために含まれているにすぎず、開示または特許請求の範囲に見られる主題を制限するために用いられるべきではない。見出し語は、特許請求の範囲または請求項の限界を解釈するために用いられるべきではない。
本明細書に提供する記載は、共通の特徴および特質を共有し得るいくつかの実施形態に関係する。1つの実施形態の1つまたは複数の特徴は、他の実施形態の1つまたは複数の特徴と組み合わせ可能であることを理解されたい。加えて、実施形態の単一の特徴または特徴の組み合わせは、追加の実施形態を構成し得る。
本明細書に記載の全ての方法は、本明細書において他が指示されない限りまたは文脈において明らかに相反しない限り、任意の適切な順番で実施することができる。本明細書に提供する任意のおよび全ての例または例示的な言葉(例えば「など」)の使用は、単に実施形態例をより上手く説明することを意図し、特に請求項に記載されていない限り、特許請求される本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書における言語は、任意の請求項の非記載要素が必須であることを示すと考えられるべきではない。
本出願に基づいて、例えば、本出願の優先権を主張することにより、分割状態を主張することにより、および/または継続状態を主張することにより、将来的な特許出願が出願される可能性がある。以下の特許請求の範囲は、例示の目的で提供するにすぎず、そのような、任意の将来の出願において請求され得るものの範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。特許請求の範囲が本開示の理解を限定する(または他の理解を除外する)と考えるべきではない。特徴は、特許請求の範囲例に後日加えられ得る、または該範囲例から省略され得る。
特定の例を参照して本開示を記載してきたが、本開示は他の多くの形態により具現化されうることが、当業者には理解されよう。