定義
用語「相同性」、「配列同一性」などは、本明細書では同義的に使用される。配列同一性は、本明細書において、配列を比較することにより決定する場合、2つ以上のアミノ酸(ポリペプチド若しくはタンパク質)配列又は2つ以上の核酸(ポリヌクレオチド)配列間の関係として定義される。当技術分野において、「同一性」はまた、場合によっては、こうした配列のストリング間のマッチによって決定する場合、アミノ酸配列又は核酸配列間の配列相関性の程度を意味する。2つのアミノ酸配列間の「類似性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列及びその保存されたアミノ酸置換を第2のポリペプチドの配列と比較することにより決定される。「同一性」及び「類似性」は、公知の方法によって容易に計算することができる。
「配列同一性」及び「配列類似性」は、グローバルアラインメントアルゴリズム又はローカルアラインメントアルゴリズムを使用し、2つの配列の長さに基づいて、2つのペプチド配列又は2つのヌクレオチド配列のアラインメントによって決定することができる。類似の長さの配列は、全長にわたって配列を最適に配列比較する、グローバルアラインメントアルゴリズム(例えば、Needleman Wunsch)を使用し配列比較するのが好ましいが、実質的に異なる長さの配列は、ローカルアラインメントアルゴリズム(例えば、Smith Waterman)を使用し配列決定するのが好ましい。次いで、配列が(例えば、デフォルトパラメーターを使用してプログラムGAP又はBESTFITによって最適に配列比較した場合)、配列同一性(下記で定義したとおりである)の少なくともある特定の最小パーセンテージを共有する場合、配列は、「実質的に同一の」又は「本質的に類似した」と称することができる。GAPは、Needleman and Wunschグローバルアラインメントアルゴリズムを使用して2つの配列をそれらの全長(完全長)にわたって配列比較し、マッチの数を最大限にし、ギャップの数を最小限にする。グローバルアラインメントは、2つの配列が類似の長さを有する場合の配列同一性を決定するために適切に使用される。一般に、GAPデフォルトパラメーターは、ギャップ生成ペナルティー=50(ヌクレオチド)/8(タンパク質)、及びギャップ伸長ペナルティー=3(ヌクレオチド)/2(タンパク質)で使用される。ヌクレオチドの場合、使用されるデフォルトスコアマトリックスはnwsgapdnaであり、またタンパク質の場合、デフォルトスコアマトリックスはBlosum62である(Henikoff & Henikoff,1992,PNAS 89,915−919)。配列同一性パーセントに関する配列アラインメント及びスコアは、例えば、Accelrys Inc.,9685 Scranton Road,San Diego,CA 92121−3752 USAから入手可能な、GCG Wisconsin Package、バージョン10.3コンピュータプログラムを使用し、又はオープンソースのソフトウェア、例えば、EmbossWINバージョン2.10.0においてプログラム「needle」(グローバルNeedleman Wunschアルゴリズムを使用)又は「water」(ローカルSmith Watermanアルゴリズムを使用)を使用し、上記GAPと同じパラメーターを使用し、或いはデフォルト設定(「needle」及び「water」の両方、並びにタンパク質アラインメント及びDNAアラインメントの両方について、デフォルトGap開始ペナルティーは10.0であり、デフォルトgap伸長ペナルティーは0.5である;デフォルトスコアリングマトリックスは、タンパク質についてはBlossum62であり、DNAについてはDNAFullである)を使用することにより決定することができる。配列が実質的に異なる全長を有する場合、ローカルアラインメント、例えば、Smith Watermanアルゴリズムを使用するのが好ましい。
或いは、類似性又は相同性パーセンテージは、アルゴリズム、例えば、FASTA、BLASTなどを使用し、公的データベースに対して検索することにより決定することができる。したがって、本発明の核酸配列及びタンパク質配列は、例えば、他のファミリーメンバー又は関連の配列を同定するための公的データベースに対して検索を実施する「照会配列」としてさらに使用することができる。このような検索は、Altschul,et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403−10のBLASTn及びBLASTxプログラム(バージョン2.0)を使用して実施することができる。BLASTヌクレオチド検索は、本発明のオキシドレダクターゼ核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12で実施することができる。BLASTタンパク質検索は、本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得るために、BLASTxプログラム、スコア=50、ワード長=3により実施することができる。比較目的でギャップアラインメントを得るために、Altschul et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25(17): 3389−3402に開示されているようにして、Gapped BLASTを利用することができる。BLASTプログラム及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、BLASTx及びBLASTn)のデフォルトパラメーターを使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/の米国バイオテクノロジー情報センターのホームページを参照されたい。
任意選択で、アミノ酸類似性の程度を決定する際に、当業者はまた、当業者には明らかな、いわゆる「保存的」アミノ酸置換も考慮に入れることができる。保存的アミノ酸置換とは、類似の側鎖を有する残基の互換性を意味する。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の基は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシンであり;脂肪族−ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の基は、セリン及びスレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の基は、アスパラギン及びグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸の基は、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸の基は、リジン、アルギニン及びヒスチジンであり;硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の基は、システイン及びメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、及びアスパラギン−グルタミンである。本明細書に開示されているアミノ酸配列の置換変異体は、開示されている配列の少なくとも1つの残基が除去され、異なる残基がその場所に挿入されたものである。アミノ酸変化は保存的であるのが好ましい。それぞれの天然のアミノ酸に対する好ましい保存的置換は以下のとおりである:Alaからser;Argからlys;Asnからgln又はhis;Aspからglu;Cysからser又はala;Glnからasn;Gluからasp;Glyからpro;Hisからasn又はgln;Ileからleu又はval;Leuからile又はval;Lysからarg;gln又はglu;Metからleu又はile;Pheからmet、leu又はtyr;Serからthr;Thrからser;Trpからtyr;Tyrからtrp又はphe;及びValからile又はleu。
本明細書で使用する場合、「選択的にハイブリダイズする(selectively hybridizing)」、「選択的にハイブリダイズする(hybridizes selectively)」及び同類の用語は、相互に少なくとも66%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、よりさらに好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%相同であるヌクレオチド配列が、相互にハイブリダイズされた状態を典型的に維持するハイブリダイゼーション及び洗浄の条件を記載することを意図している。言い換えると、このようなハイブリダイズする配列は、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、よりさらに好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を共有し得る。
こうしたハイブリダイゼーション条件の好ましい非限定例では、約45℃で、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でハイブリダイゼーションを行い、続いて約50℃、好ましくは約55℃、好ましくは約60℃、さらにより好ましくは約65℃で、1×SSC、0.1%SDS中で1回又は複数回洗浄する。
高ストリンジェント条件としては、例えば、約68℃で、5×SSC/5×Denhardt溶液/1.0%SDS中でハイブリダイズし、室温で、0.2×SSC/0.1%SDS中で洗浄することが含まれる。或いは、洗浄は42℃で実施することができる。
当業者は、ストリンジェント条件及び高ストリンジェントハイブリダイゼーション条件に関してどのような条件を適用するべきかがわかっている。こうした条件に関するさらなる手引きは、当技術分野においては容易に入手可能であり、例えば、Sambrook et al.,1989,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,N.Y.;及びAusubel et al.(eds.),Sambrook and Russell (2001)“Molecular Cloning:A Laboratory Manual (3rd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York 1995,Current Protocols in Molecular Biology,(John Wiley & Sons,N.Y.)がある。
もちろん、ポリA配列(mRNAの3’末端ポリ(A)トラクトなど)又はT(若しくはU)残基の相補的ストレッチに対してのみハイブリダイズするポリヌクレオチドは、ポリ(A)ストレッチ又はその相補体(例えば、実際には任意の二本鎖cDNAクローン)を含有する任意の核酸分子にもハイブリダイズするため、本発明の核酸の一部に特異的にハイブリダイズさせるために使用される本発明のポリヌクレオチドには含まれない。
「核酸構築物」又は「核酸ベクター」は、本明細書においては、組換えDNA技術を使用することによって得られる人工の核酸分子を意味すると理解されたい。したがって、用語「核酸構築物」は、天然の核酸分子を含まないが、核酸構築物は、天然の核酸分子(の一部)を含み得る。用語「発現ベクター」又は「発現構築物」とは、こうした配列と適合する宿主細胞又は宿主生物中の遺伝子の発現を達成することができるヌクレオチド配列を意味する。これらの発現ベクターは、典型的には、少なくとも適切な転写制御配列を含み、任意選択で、3’転写終止シグナルを含む。発現の達成に必要な、又は有用であるさらなる因子、例えば、発現エンハンサーエレメントなども存在し得る。発現ベクターは適切な宿主細胞に導入され、宿主細胞のインビトロ細胞培養においてコード配列の発現を達成することができる。発現ベクターは、本発明の宿主細胞又は生物における複製に適している。
本明細書で使用する場合、用語「プロモーター」又は「転写制御配列」とは、1つ又は複数のコード配列の転写を制御するように機能し、コード配列の転写開始部位の転写の方向に関して上流に位置している核酸断片を意味し、DNA依存性RNAポリメラーゼに関する結合部位、転写開始部位、並びに限定するものではないが、転写因子結合部位、抑制因子及びアクチベータータンパク質結合部位を含む別の任意のDNA配列、並びに、プロモーターからの転写量を制御するために直接的又は間接的に作用することが当業者に知られているヌクレオチドの別の任意の配列の存在によって構造的に同定される。「構成性」プロモーターは、ほとんどの生理学的及び発生的条件下で、ほとんどの組織において活性であるプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、例えば、化学誘導物質を適用することによって、生理学的又は発生的に制御されるプロモーターである。
用語「選択可能マーカー」は、当業者によく知られている用語であり、本明細書においては、発現された場合に、選択可能マーカーを含有している1個又は複数の細胞を選択するために使用することができる、任意の遺伝子実体を記載するために使用されている。用語「リポーター」とは、可視マーカー、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)などを意味するために主として使用されるが、マーカーと同義的に使用され得る。選択可能マーカーは、優性又は劣性又は双方向であってよい。
本明細書において使用する場合、用語「作動可能に連結されている」とは、機能的関係におけるポリヌクレオチドエレメントの連結を意味する。核酸は、別の核酸配列との機能的関係に置かれている場合、「作動可能に連結されている」。例えば、転写制御配列は、コード配列の転写に作用する場合、コード配列に作動可能に連結されている。作動可能に連結されているとは、連結しているDNA配列が典型的には連続的であり、必要な場合、2つのタンパク質コード領域に、連続的にリーディングフレーム内で結合されていることを意味する。
用語「タンパク質」又は「ポリペプチド」は同義的に使用され、特定の作用機序、サイズ、3次元構造又は起源に関係なく、アミノ酸鎖からなる分子を意味する。
用語「遺伝子」は、適切な制御領域(例えばプロモーター)に作動可能に連結されている、細胞においてRNA分子(例えばmRNA)に転写される領域(転写領域)を含むDNA断片を意味する。遺伝子は、通常、数種類の作動可能に連結されている断片、例えば、プロモーター、5’リーダー配列、コード領域及びポリアデニル化部位を含む3’−非翻訳配列(3’−末端)を含む。「遺伝子の発現」とは、適切な制御領域、特にプロモーターに作動可能に連結されているDNA領域が、生物学的に活性である、すなわち、生物学的に活性であるタンパク質又はペプチドに翻訳され得る、RNAに転写されるプロセスを意味する。用語「相同体」とは、所定の(組換え)核酸又はポリペプチド分子と所定の宿主生物又は宿主細胞との間の関係を示すために使用される場合、本質的に、核酸又はポリペプチド分子が宿主細胞又は同種の生物、好ましくは同一系統又は同一株の生物によって産生されることを意味するものと理解されたい。宿主細胞に対して相同体である場合、ポリペプチドをコードしている核酸配列は、典型的には(しかし必須ではない)、別の(異種性)プロモーター配列に作動可能に連結され、適用可能な場合、その天然環境の場合よりも別の(異種性)分泌シグナル配列及び/又はターミネーター配列に連結される。制御配列、シグナル配列、ターミネーター配列などもまた、宿主細胞に対して相同体であり得ることを理解されたい。これに関連して、「相同体」配列エレメントのみの使用は、「自己クローン化」遺伝子組換え生物(GMO)を構築することができる(自己クローニングは、本明細書においてはEuropean Directive 98/81/EC Annex II)のとおり定義する)。2つの核酸配列の相関性を示すために使用する場合、用語「相同体」とは、1つの一本鎖核酸配列が相補的な一本鎖核酸配列にハイブリダイズし得ることを意味する。ハイブリダイゼーションの程度は、配列間の同一性の量、並びにハイブリダイゼーション条件、例えば、後で論じるような温度及び塩濃度などを含む多数の要因に依存し得る。
用語「異種性」及び「外因性」とは、核酸(DNA若しくはRNA)又はタンパク質に関して使用する場合、存在する生物、細胞、ゲノム又はDNA若しくはRNA配列の一部として天然には生じない核酸又はタンパク質を意味するか、或いは、細胞又はゲノム若しくはDNA若しくはRNA配列における1つ又は複数の位置で天然に確認されるものとは異なることが確認される核酸又はタンパク質を意味する。異種性及び外因性の核酸又はタンパク質は、導入される細胞に対して内因性ではないが、別の細胞から取得されたか、又は合成的に若しくは組換えにより産生された。一般的には、必ずしもそうではないが、こうした核酸は、通常、DNAが転写又は発現される細胞によって産生されないタンパク質、すなわち、外因性タンパク質をコードする。同様に、外因性RNAは、外因性RNAが存在する細胞において通常発現されないタンパク質をコードする。異種性/外因性の核酸及びタンパク質はまた、外来核酸又はタンパク質と呼ぶこともできる。発現される細胞に対して外来性として当業者が認識する任意の核酸又はタンパク質は、異種性又は外因性の核酸又はタンパク質という用語によって本明細書に包含される。異種性及び外因性という用語はまた、核酸配列又はアミノ酸配列の非天然の組合せ、すなわち、少なくとも2つの組み合わせた配列が相互に外来である組合せにも適用される。
酵素の「比活性」とは、本明細書では、通常、全宿主細胞タンパク質のmg当たりの酵素単位活性で表される、全宿主細胞タンパク質の量当たりの特定酵素の活性量を意味するものと理解されたい。本発明の関連において、特定酵素の比活性は、(さもなければ同一の)野性型宿主細胞におけるその酵素の比活性と比べ、増加又は低減され得る。
「フラン化合物」は、本明細書において2,5−フランジカルボン酸(FDCA)並びにFDCAに酸化され得るフラン基を有する任意の化合物であると理解するものとし、後者は、本明細書において「FDCAの前駆体」又は「FDCAのフラン前駆体」として言及されている。FDCAの前駆体としては、少なくとも、5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)、2,5−ジヒドロキシメチルフラン(DHF)、又はHMF−OHとして言及される2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フラン(BHF)、5−ヒドロキシメチル−2−フランカルボン酸、又は5−ヒドロキシメチル−2−フロ酸(HMFCA)、5−ホルミル−2−フロ酸(FFCA)、及び2,5−ジホルミルフラン(DFF)が挙げられる。「フラン化合物」において、フラン環又は任意の若しくはその置換可能な側鎖基は、フラン環における任意の利用可能な位置で、例えば、環状基を含む、OH、C1〜C10アルキル、アルキル、アリル、アリール、又はRO−エーテル部分で置換され得ることをさらに理解されたい。
「好気性条件」、「酸素条件」、又は好気性若しくは酸素発酵方法は、本明細書において酸素の存在下で行われ、酸素が少なくとも0.5、1、2、5、10、20、又は50mmol/L/時間の速度で消費されることが好ましい条件又は発酵方法であって、有機分子が電子ドナーとして作用し、酸素が電子アクセプターとして作用する、条件又は発酵方法として定義される。
「嫌気性若しくは無酸素条件」又は「嫌気性若しくは無酸素発酵方法」は、本明細書において酸素の非存在下で実質的に行われる条件又は発酵方法であって、有機分子が電子ドナー及び電子アクセプターの両方として作用する条件又は発酵方法として定義される。無酸素条件では、酸素は実質的に消費されず、5、2、1、若しくは0.5mmol/L/時間未満で消費されることが好ましく、0mmol/L/時間で消費される(すなわち、酸素消費は検出不能である)ことがより好ましく、又は実質的に溶存酸素が発酵培地中に検出できず、培地中の溶存酸素濃度は、空気飽和の2%、1、0.5、0.2、0.1%未満、すなわち市販の酸素プローブの検出限界未満であることが好ましい。
本明細書における公開配列データベースにアクセス可能なヌクレオチド又はアミノ酸配列へのいかなる言及も、この文書の出願日に入手可能な配列のエントリーバージョンを意味する。
発明の詳細な説明
親宿主細胞
本発明は、宿主細胞に、適切なフラン前駆体から2,5−フランジカルボン酸(FDCA)を生産させるための、宿主細胞の遺伝的修飾に関する。この目的のため、多数の遺伝的修飾を、本発明に従って親宿主細胞に導入することができる。これらの修飾は、多数の異種遺伝子の発現の導入、並びに一部の内因性遺伝子を低減若しくは除去することによる、及び/又は他の内因性遺伝子の発現を増大させる、すなわち過剰発現させることによる、親宿主細胞に既に存在する多数の内因性遺伝子の発現の修飾を含む。これらの遺伝的修飾を、本明細書において以下に詳しく記載する。したがって、親宿主細胞は、本発明による遺伝的修飾のいずれかが宿主細胞に導入される前の宿主細胞であると理解されたい。
本発明の親宿主細胞は、例えば哺乳動物、昆虫、植物、真菌、又は藻類細胞などの真核細胞を含む任意の適切な宿主細胞でありうる。好ましい哺乳動物細胞には、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS細胞、293細胞、PerC6細胞、及びハイブリドーマが挙げられる。好ましい昆虫細胞には、例えばSf9及びSf21細胞、並びにその誘導体が挙げられる。
しかし、宿主細胞は微生物細胞であることが好ましい。また微生物宿主細胞は原核細胞であってよく、細菌細胞が好ましい。用語「細菌細胞」には、グラム陰性微生物及びグラム陽性微生物の両方が含まれる。適切な細菌は、エシェリヒア、アナベーナ、エアリバチルス、アネウリニバチルス、バークホルデリア、ブラジリゾビウム、コーロバクター、カプリアビダス、デスルホトマクルム、デスルフリスポラ、グルコノバクター、ロドバクター、ペロトマクルム、シュードモナス、パラコッカス、バチルス、ゲオバチルス、ブレビバチルス、ブレビバクテリウム、コリネバクテリウム、リゾビウム(シノリゾビウム)、フラボバクテリウム、クレブシェラ、エンテロバクター、ラクトバチルス、ラクトコッカス、メチロバクテリウム、ラルストニア、ロドシュードモナス、スタフィロコッカス、及びストレプトミセスの属から選択することができる。細菌細胞は、エアリバチルス・パリダス、アネウリニバチルス・テラノベンシス、バチルス・スブチリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・コアグランス、バチルス・クリベンシス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・プンチス、バチルス・メガテリウム、バチルス・ハロデュランス、バチルス・プミルス、バチルス・サーモルーバー、バチルス・パナチフミ、カプリアビダス・バシレンシス、デスルホトマクルム・クズネツォビイ、デスルフリスポラ・サーモフィラ、ゲオバチルス・カウストフィルス、グルコノバクター・オキシダンス、コーロバクター・クレセンタスCB15、メチロバクテリウム・エキストロクエンス、ロドバクター・スフェロイデス、ペロトマクルム・サーモプロピオニカム、シュードモナス・ゼアキサンチニファシエンス、シュードモナス・プチダ、パラコッカス・デニトリフィカンス、大腸菌、コリネバクテリウム・グルタミクム、スタフィロコッカス・カルノーサス、ストレプトミセス・リビダンス、シノリゾビウム・メリオティ、及びリゾビウム・ラジオバクターからなる群の種から選択されるのが好ましい。シュードモナス・プチダ種のうち、シュードモナス・プチダS12株及びシュードモナス・プチダKT2440株が好ましい。
しかし、本発明の親宿主細胞は、例えば真菌宿主細胞などの真核微生物宿主細胞であるであることがより好ましい。本発明に従って修飾される最も好ましい親宿主細胞は、酵母又は糸状菌宿主細胞である。
「真菌」は、本明細書において、真核微生物として定義され、亜界真菌類(Eumycotinia)(Alexopoulos,C.J.,1962,In:Introductory Mycology,John Wiley&Sons,Inc.,New York)の全ての種を含む。したがって、用語「真菌」及び「真菌の」は、糸状菌及び酵母の両方を含む又は指す。
「糸状菌」は、本明細書において亜界真菌(Eumycotina)及び卵菌(Oomycota)(“Dictionary of The Fungi”,10th edition,2008,CABI,UK,www.cabi.orgでの定義)の全ての糸状菌型を含む真核微生物として定義される。糸状菌は、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン、及び他の複合糖質で構成される菌糸体壁によって特徴付けられる。栄養増殖は、菌糸の伸長によって起こり、炭素の異化は偏性好気性である。糸状菌株としては、限定するものではないが、アクレモニウム、アスペルギルス、アウレオバシディウム、クリプトコッカス、フィリバシジウム、フザリウム、フミコラ、マグナポルテ、ムコール、ミセリオフトーラ、ネオカリマスティクス、ニューロスポラ、ペシロミセス、ペニシリウム、ピロミセス、シゾフィラム、タラロミセス、サーモアスカス、チエラビア、トリポクラジウム、トリコデルマ、及びウスチラゴの株が挙げられる。
本発明の親宿主細胞として好ましい糸状菌種は、アスペルギルス、ミセリオフトーラ、ペニシリウム、タラロミセス、又はトリコデルマ属の種に属し、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・フォエティダス、アスペルギルス・ソーヤ、アスペルギルス・フミガーツス、タラロミセス・エメルソニ、アスペルギルス・オリゼ、ミセリオフトーラ・サーモフィラ、トリコデルマ・リーゼイ、ペニシリウム・クリソゲヌム、ペニシリウム・シンプリシシマム及びペニシリウム・ブラジリアヌムから選択される種に属することがより好ましい。
「酵母」は、本明細書において真核微生物として定義され、単細胞型で主に増殖する亜界真菌(Yeasts:characteristics and identification,J.A.Barnett,R.W.Payne,D.Yarrow,2000,3rd ed.,Cambridge University Press,Cambridge UK;and,The yeasts,a taxonomic study,CP.Kurtzman and J.W.Fell(eds)1998,4th ed.,Elsevier Science Publ.B.V.,Amsterdam,The Netherlands)の全ての種を含む。酵母は、単細胞葉状体の出芽によって増殖するか、又は生物の分裂のいずれかによって増殖し得る。本発明において使用するために好ましい酵母細胞は、サッカロミセス、クルイベロミセス、カンジダ、ピチア、シゾサッカロミセス、ハンゼヌラ、クロエケラ、シュワニオミセス、ヤロウィア、クリプトコッカス、デバロミセス、サッカロミセコプシス、サッカロミコデス、ウィッカーハミア、デバリオミセス、ハンゼニアスポラ、オガタエア、クライシア、コマガタエラ、メチニコビア、ウィリオプシス、ナカザワエア、トルラスポラ、ブレラ、ロドトルラ、及びスポロボロミセス属に属する。親酵母宿主細胞は、嫌気性発酵、より好ましくはアルコール発酵、及び最も好ましくは嫌気性アルコール発酵を自然に行うことができる細胞であり得る。クルイベロミセス・ラクチス、S.セレビジエ、ハンゼヌラ・ポリモルファ(新規名称:オガタエア・ヘンリシ(Ogataea henricii))、ヤロウィア・リポリチカ、カンジダ・トロピカリス、及びピチア・パストリス(新規名称:コマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris))などの種の酵母がより好ましい。
特に細菌と比べ、真菌は、例えば酸、エタノール及び他の有害な化合物に対する高い耐性、その高い耐浸透性、その高い発酵能力、及び一部の酵母に関してその嫌気性増殖能力を含む、工業発酵方法にとって多くの魅力的な特徴を有する。
宿主細胞はさらに、低いpHに対して高い耐性を有する、すなわち5.0、4.0、3.0、2.9、2.8、2.7、2.6、2.5又は2.4に等しいpH又はそれより低いpHで増殖することができ、乳酸、酢酸、又はギ酸及びフラン酸などの有機酸に対して高い耐性、並びに上昇温度に対して高い耐性を有することが好ましい。宿主細胞のこれらの特徴又は活性はいずれも、宿主細胞に天然に存在し得るか、又は好ましくは自己クローニング若しくは以下に記載されている本発明の方法によって、遺伝的修飾によって導入若しくは修飾され得る。
適切な細胞は培養細胞、例えば深部発酵又は固相発酵での発酵方法で培養され得る細胞である。
本発明による真菌宿主細胞において生産される化合物の特定の使用において、宿主細胞の選択はこうした使用に従って行われ得る。例えば本発明による宿主細胞において生産される化合物が、食品用途において使用される場合、宿主細胞は、例えばサッカロミセス種、例えばS.セレビジエ、食品等級のペニシリウム種又はヤロウィア・リポリチカなどの食品等級の生物から選択され得る。特定の使用としては、限定するものではないが、食品、(動物用)飼料、医薬品、作物防除などの農薬、及び/又はパーソナルケアでの使用が挙げられる。
遺伝的修飾細胞
第1の態様において、本発明は、遺伝的修飾を含む細胞、好ましくは真菌細胞に関する。細胞の遺伝的修飾は、a)遺伝的修飾を欠損している対応する野生型細胞と比べ、5−ヒドロキシメチル−2−フランカルボン酸(HMFCA)を5−ホルミル−2−フロ酸(FFCA)に酸化させる能力を真菌細胞に付与する、又はHMFCAをFFCAに酸化させる酵素の比活性を上記細胞において増大させる、遺伝的修飾;及びb)遺伝的修飾を欠損している対応する野生型細胞と比べ、2,5−フランジカルボン酸の分解を触媒する酵素の比活性を低減又は除去する遺伝的修飾、のうちの少なくとも1つであることが好ましい。a)及びb)の遺伝的修飾を有する好ましい細胞を、本明細書において以下に詳述する。
本発明の細胞は、c)遺伝的修飾を欠損している対応する野生型細胞と比べ、フランアルデヒドを対応するフランカルボン酸に酸化させる能力を細胞に付与する、又はフランアルデヒドを対応するフランカルボン酸に酸化させる酵素の比活性を細胞において増大させる、遺伝的修飾をさらに含むことが好ましい。c)の遺伝的修飾を有する好ましい細胞もまた、本明細書において以下に詳述する。
HMFCAデヒドロゲナーゼ活性の導入又は増大
本発明の細胞は、5−ヒドロキシメチル−2−フランカルボン酸(HMFCA)を5−ホルミルフロ酸(FFCA)に酸化させる能力を有する細胞であることが好ましい。細胞がHMFCAをFFCAに酸化させる能力は、細胞の内因性の活性であり得るか、又は細胞に付与される外因性の活性であり得る。HMFCAをFFCAに酸化させる能力は、細胞の遺伝的修飾によって、例えばHMFCAをFFCAに酸化させる能力を有するデヒドロゲナーゼ又はオキシダーゼをコードしているヌクレオチド配列を含む核酸構築物による細胞の形質転換によって、細胞に付与されるか、又は細胞において増大させることが好ましい。デヒドロゲナーゼは、アルコールデヒドロゲナーゼ(すなわち、EC1.1活性を有する)であることが好ましい。したがって、細胞は、HMFCAをFFCAに酸化させる能力を有するデヒドロゲナーゼ又はオキシダーゼをコードしているヌクレオチド配列を発現するための発現構築物を含む細胞であることが好ましい。本発明の好ましい細胞において、発現構築物は細胞において発現可能であり、デヒドロゲナーゼ又はオキシダーゼの発現は、発現構築物を欠損している対応する細胞、例えば野生型細胞と比べ、HMFCAをFFCAに酸化させる能力を細胞に付与する、又はHMFCAをFFCAに酸化させる酵素の比活性を細胞において増大させることが好ましい。HMFCAをFFCAに酸化させる酵素の比活性は、発現構築物を欠損している対応する細胞と比べて、細胞において少なくとも1.05、1.1、1.2、1.5、2.0、5.0、10、20、50、又は100倍増大していることが好ましい。
HMFCAをFFCAに酸化させる能力を有する酵素は、アルコールデヒドロゲナーゼであり得るか、又は酵素は、本明細書において以下に記載されているオキシダーゼであり得る。HMFCAをFFCAに酸化させる能力を有する好ましい酵素は、HMFCAデヒドロゲナーゼ活性を有するアルコールデヒドロゲナーゼである。ポリペプチドがHMFCAデヒドロゲナーゼ活性を有するか否かは、HMFCAをFFCAに酸化させることができない適切な宿主細胞でポリペプチドを発現させ、ポリペプチドの発現がHMFCAをFFCAに酸化させる能力を細胞に付与するか否かを検出することによってアッセイすることができる。HMFCAデヒドロゲナーゼ活性は、例えば、HMFCAデヒドロゲナーゼ活性についてアッセイされるポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列が、pBT’hmfH−adhにおけるC.バシレンシス(C.basilensis)hmfH遺伝子と置き換わり(国際公開第2012/064195号に記載される)、その後、HMFCAデヒドロゲナーゼ活性についてアッセイされるポリペプチドのコード配列を含むプラスミドが、pJNNhmfT1(t)を含むP.プチダKT2440Δgcdに導入される(同様に国際公開第2012/064195号を参照されたい)、発現構築物を使用してアッセイすることができる。HMFCAデヒドロゲナーゼ活性についてアッセイされるポリペプチドを発現するP.プチダ形質転換体をHMFとインキュベートし、FDCAを分析するため試料を一定間隔で得る。HMFCAデヒドロゲナーゼ活性(及びC.バシレンシスhmfH遺伝子)についてアッセイされるポリペプチドを欠損している対応するP.プチダ形質転換体と比べた場合のFDCAの生産の増加は、ポリペプチドがHMFCAデヒドロゲナーゼ活性を有することを示唆しているものと考えられる。或いは、HMFCAデヒドロゲナーゼ活性についてアッセイされるポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を、真菌宿主細胞、好ましくは本明細書において実施例7に記載されるようにS.セレビジエ宿主細胞において発現させて、ポリペプチドの発現が、HMFからFFCA及び/又はFDCAの両方を生産する能力を真菌宿主細胞に付与するか否かを検出することができる。
本発明の細胞において発現されるHMFCAデヒドロゲナーゼは、アデニンジヌクレオチドから選択される補因子に依存するデヒドロゲナーゼ、例えば、NADH又はNADPH、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、フラビンモノヌクレオチド(FMN)、及びピロロキノリンキノロン(PQQ)などであるのが好ましい。本発明の細胞において発現されるHMFCAデヒドロゲナーゼは、二価カチオンに結合することが好ましく、HMFCAデヒドロゲナーゼはZn結合デヒドロゲナーゼであることがより好ましい。
本発明の細胞において発現されるHMFCAデヒドロゲナーゼは、別のフランアルコール、好ましくは2位にヒドロキシ基を有するフランアルコールを対応するアルデヒドに酸化させる能力を(さらにまた)有するアルコールデヒドロゲナーゼであるのがさらに好ましい。したがって、HMFCAデヒドロゲナーゼは、5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)を2,5−ジホルミルフラン(DFF)に酸化させる能力を有するのが好ましい。
一態様において、HMFCAをFFCAに酸化させる能力を有するデヒドロゲナーゼをコードしているヌクレオチド配列は、
(a)HMFCAデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドであって、配列番号1〜4(それぞれ、hmfL1、hmfL2、hmfL3、及びhmfL4)のうちの少なくとも1つ、より好ましくは配列番号1及び2のうちの少なくとも1つのアミノ酸配列と少なくとも45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列;
(b)その相補鎖が(a)のヌクレオチド配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列;及び
(c)遺伝子コードの縮重により(b)のヌクレオチド配列の配列と配列が異なるヌクレオチド配列
からなる群から選択される。
したがって、本発明の好ましいヌクレオチド配列は、アスペルギルス、ビソクラミス(Byssochlamys)、コクシジオイデス、ケトミウム、ユーティパ(Eutypa)、エンドカルポン(Endocarpon)、フザリウム、ミクロスポルム(Microsporum)、ネオサルトリア(Neosartorya)、ペニシリウム、スポロトリクス(Sporothrix)、及びトリコフィトン(Trichophyton)からなる群から選択される属の真菌、より好ましくはコクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、コクシジオイデス・ポサダシイ(Coccidioides posadasii)、エンドカルポン・プシルム(Endocarpon pusillum)、ミクロスポルム・ギプセウム(Microsporum gypseum)、ペニシリウム・ブラジリアヌム及びスポロトリクス・シェンキイ(Sporothrix schenckii)からなる群から選択される種の真菌、より好ましくは株P.ブラジリアヌムC1(P.brasilianum C1)である真菌から得られる(又は天然に存在する)HMFCAデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有するHMFCAデヒドロゲナーゼをコードする。
一実施形態において、本ヌクレオチド配列は、天然に存在するような、例えば、野性型供給源生物から単離され得るような、HMFCAデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする。或いは、本ヌクレオチド配列は、上記で定義したHMFCAデヒドロゲナーゼのいずれかの操作された形態をコードし、対応する天然のHMFCAデヒドロゲナーゼと比べて1つ又は複数のアミノ酸置換、挿入及び/又は欠失を含むが、本明細書において定義した相同性又は類似性の範囲内にあり得る。したがって、一実施形態において、本発明のヌクレオチド配列は、HMFCAデヒドロゲナーゼをコードし、そのアミノ酸配列がそれぞれの不変位置(表1〜4において「*」で示される)に、不変位置に存在するアミノ酸を少なくとも含む。アミノ酸配列はまた、高度に保存された位置(表1〜4において「:」で示される)に、強度に保存された位置に存在するアミノ酸のうちの1つを含むのが好ましい。アミノ酸配列はさらにまた、それほど高度に保存されていない位置(表1〜4において「.」で示される)に、それほど高度に保存されていない位置に存在するアミノ酸のうちの1つを含むのがより好ましい。これらの不変位置及び保存位置の外側のアミノ酸置換は、HMFCAデヒドロゲナーゼ活性に影響する可能性は低い。表1〜4はそれぞれ、ペニシリウム・ブラジリアヌムhmfL1、hmfL2、hmfL3、及びhmfL4のそれぞれのアミノ酸配列アライメントを、公的データベースで利用可能なその10の近縁のオルトログと共に表す。表1A〜4Aは、P.ブラジリアヌム配列とそのオルトログとの間のアミノ酸同一性パーセンテージ、並びにオルトログの受託番号を提供する。
HMFCAデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードしている本発明のヌクレオチド配列は、当技術分野でそれ自体が周知であるヌクレオチド配列の単離方法を利用して、真菌、酵母又は細菌のゲノム及び/又はcDNA、例えば、上述の供給源生物と同じ門、クラス又は属に属するものから得ることができる(例えば、Sambrook and Russell(2001)“Molecular Cloning: A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New Yorkを参照)。本発明のヌクレオチド配列は、例えば、a)(保存アミノ酸配列に基づいて設計された)縮重PCRプライマーを適切な生物のゲノム及び/又はcDNAに使用して、HMFCAデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列の一部を含むPCR断片を生成する;b)a)で得られたPCR断片をプローブとして使用し、生物のcDNA及び/又はゲノムライブラリーをスクリーニングする;並びに、c)HMFCAデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を含むcDNA又はゲノムDNAを産生する、方法で得ることができる。
本発明のHMFCAデヒドロゲナーゼが本発明の細胞において十分なレベルで、活性形態で発現される可能性を高めるために、これらの酵素をコードしているヌクレオチド配列、並びに本発明の他の酵素(下記を参照)は、それらのコドン使用を当該宿主細胞の使用に最適化するように構成されるのが好ましい。ポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列の宿主細胞のコドン使用に対する適応構成性(adaptiveness)は、コドン適応構成指数(CAI(codon adaptation index))として表すことができる。コドン適応構成指数は、本明細書において、特定の宿主細胞又は生物における高度発現遺伝子のコドン使用に対する遺伝子のコドン使用の相対的な適応構成性の測定値として定義される。それぞれのコドンの相対的適応構成性(w)は、同じアミノ酸に関する最も豊富なコドンの使用に対する、それぞれのコドンの使用比率である。CAI指数は、これらの相対的な適応構成性値の幾何平均として定義される。非同義コドン及び終止コドン(遺伝子コードに依存する)は除外される。CAI値は0〜1の範囲であり、高い値は最も豊富なコドンが高い割合であることを示す(Sharp and Li,1987,Nucleic Acids Research 15:1281−1295を参照;また、Jansen et al.,2003,Nucleic Acids Res.31(8):2242−51も参照)。適応構成されたヌクレオチド配列は、少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8又は0.9のCAIを有するのが好ましい。酵母細胞、好ましくはS.セレビジエ細胞における発現に対してコドン最適化されている、配列番号57〜59に記載されている配列が最も好ましい。
本発明のHMFCAデヒドロゲナーゼをコードしているヌクレオチド配列を発現するための核酸構築物で形質転換される真菌宿主細胞は、原則として、本HMFCAデヒドロゲナーゼ発明が、好ましくは機能的に、すなわち活性型で適切に発現され得る、任意の真菌宿主細胞である。本発明の真菌宿主細胞は、フラン化合物の細胞内及び細胞外への能動輸送又は受動輸送が可能な宿主であるのが好ましい。本発明の好ましい宿主細胞は、カルボキシル化されたフラン化合物、例えば、特にHMFCA、FFCA及びFDCAを分解(例えば、脱カルボキシル化)する検出可能な活性を欠損しているか、又は有していない。このような宿主細胞は、カルボキシル化されたフラン化合物を分解する能力を自然に欠損しているのが好ましい。或いは、真菌宿主細胞は、本発明において以下に記載するように、カルボキシル化されたフラン化合物の分解を触媒する1つ又は複数の酵素の比活性を低減又は除去するように遺伝的に修飾することができる。
本発明のHMFCAデヒドロゲナーゼをコードしているヌクレオチド配列を発現するための発現構築物は、構築物で形質転換された宿主細胞に対して異種性又は外因性である発現構築物であるのが好ましい。構築物は、本明細書においては、構築物が宿主細胞中に天然に存在しない少なくとも1つの配列又は配列エレメントを含む場合、及び/又は構築物が組合せにおいて少なくとも2つの配列エレメントを含む場合、及び/又はエレメントがそれ自体宿主細胞中に天然に存在していても、宿主細胞中で天然に存在しない生じない命令を含む場合に、構築物を含む宿主細胞に対して異種性又は外因性であると理解されたい。
適切な宿主細胞における本発明のHMFCAデヒドロゲナーゼをコードしているヌクレオチド配列を発現するためのベクター及び発現構築物は、以下の本明細書において、より詳細に記載する。
フランアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性の導入又は増大
上述のように、本発明のHMFCAデヒドロゲナーゼを発現する細胞は、さらにアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有する(すなわち、EC1.2活性を有する)ことが好ましい。アルデヒドデヒドロゲナーゼは、フランアルデヒドを変換することができることが好ましい。アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性は、フランアルデヒドを対応するフランカルボン酸に酸化させることができることがより好ましい。より詳細には、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性は、i)HMFをHMFCAに酸化させること、ii)2,5−ジホルミルフラン(DFF)を5−ホルミル−2−フロ酸(FFCA)に酸化すること、及びiii)FFCAをFDCAに酸化すること、のうちの少なくとも1つを可能にし得ることが好ましい。こうしたフランアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性は、細胞の内因性活性であってもよく、又は細胞へ付与される外因性活性であってもよい。フランアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性は、発現構築物、例えば細胞がHMFCAデヒドロゲナーゼを発現するための第1の発現構築物を既に含む場合は第2の発現構築物による細胞の形質転換によって、細胞に付与される又は細胞において増大させることが好ましい。
本発明の好ましい細胞において、フランアルデヒドデヒドロゲナーゼを発現するための発現構築物は、細胞において発現可能であり、フランアルデヒドデヒドロゲナーゼの発現は、i)HMFをHMFCAに酸化させること、ii)DFFをFFCAに酸化させること、及びiii)FFCAをFDCAに酸化させることのうちの少なくとも1つの酸化させる能力を細胞に付与する、又は発現構築物を欠損している対応する細胞、例えば野生型細胞と比べ、これらの能力のうちの少なくとも1つを有するフランアルデヒドデヒドロゲナーゼの比活性を細胞において増大させるのが好ましい。フランアルデヒドデヒドロゲナーゼの比活性は、発現構築物を欠損する対応する細胞と比べ、少なくとも1.05、1.1、1.2、1.5、2.0、5.0、10、20、50又は100倍、細胞において増大させるのが好ましい。
i)HMFからHMFCA、ii)DFFからFFCA、及びiii)FFCAからFDCAのうちの少なくとも1つを酸化させるポリペプチドの能力は、例えば、国際公開第2012/064195号の実施例IVに記載されているようにして、シュードモナス・プチダ宿主細胞、好ましくはシュードモナス・プチダKT2440宿主細胞において、ポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を、カプリアビダス・バシレンシスHMF14由来のHmfH及びHmfT1遺伝子と一緒に共発現させ、10mMのHMF中でシュードモナス・プチダ細胞をインキュベートし、ポリペプチドを発現しない対応するシュードモナス・プチダ細胞と比較し、蓄積FDCAの増大を検出することによってアッセイすることができる。ポリペプチドがHMFをHMFCAに酸化させる能力はまた、Koopman et al 2010, PNAS(前掲)によってアッセイすることもできる。C.バシレンシスHMF14のHmfT1遺伝子を発現する株は、本明細書において、配列番号53のアミノ酸配列を有する遺伝子産物を発現すると理解されたい。或いは、i)HMFをHMFCAに酸化させること、ii)DFFをFFCAに酸化させること、及びiii)FFCAをFDCAに酸化させることのうちの少なくとも1つの酸化させる能力についてアッセイされるポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を、真菌宿主細胞、好ましくはS.セレビジエ宿主細胞において、例えば本明細書の実施例7に記載されるようにHMFCAデヒドロゲナーゼと同時発現させ、ポリペプチドの発現が、ポリペプチドを発現していない対応する真菌宿主細胞と比べ、FDCAの蓄積の増大を引き起こすか否かを検出することができる。
本発明の細胞において発現されるフランアルデヒドデヒドロゲナーゼは、NADH又はNADPHなどのアデニンジヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、フラビンモノヌクレオチド(FMN)、及びピロロキノリンキノロン(PQQ)から選択される補因子に依存するデヒドロゲナーゼであるのが好ましい。
一実施形態において、フランアルデヒドデヒドロゲナーゼ又はオキシダーゼをコードしているヌクレオチド配列は、
a)i)HMFをHMFCAに酸化させる能力、ii)DFFをFFCAに酸化させる能力、及びiii)FFCAをFDCAに酸化させる能力のうちの少なくとも1つを有し、配列番号5及び6(それぞれ、アルデヒドデヒドロゲナーゼhmfN1及びhmfN2)のうちの少なくとも1つ、そのうち配列番号5が好ましいアミノ酸配列と、少なくとも45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列;
b)その相補鎖が(a)のヌクレオチド配列にハイブリダイズする、ヌクレオチド配列;及び
c)遺伝子コードの縮重により(b)のヌクレオチド配列の配列と配列が異なるヌクレオチド配列、
からなる群から選択される。
したがって、本発明の好ましいヌクレオチド配列は、アスペルギルス、ユーティパ、ネオサルトリア、ペニシリウム、ポドスポラ(Podospora)、スケドスポリウム(Scedosporium)、及びスポロトリクスからなる群から選択される属の真菌、より好ましくはユーティパ・ラタ(Eutypa lata)、ペニシリウム・ブラジリアヌム、ポドスポラ・アンセリナ(Podospora anserina)、スケドスポリウム・アピオスペルマム(Scedosporium apiospermum)、及びスポロトリクス・シェンキイからなる群から選択される種の真菌、最も好ましくは株P.ブラジリアヌムC1である真菌、から得ることができる(又は天然に存在する)フランアルデヒドデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有するフランアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする。
一態様において、ヌクレオチド配列は、天然に存在する、例えば野生型供給源生物から単離され得る、フランアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする。或いは、本ヌクレオチド配列は、対応する天然のフランアルデヒドデヒドロゲナーゼと比べ、1つ又は複数のアミノ酸置換、挿入及び/又は欠失を含むが、本明細書において定義した同一性又は類似性の範囲内である、上記で定義したようなフランアルデヒドデヒドロゲナーゼのいずれかの操作された形態をコードすることができる。したがって、一実施形態において、本発明のヌクレオチド配列は、そのアミノ酸配列がそれぞれの不変位置(表5及び6において「*」で示される)に、不変位置に存在するアミノ酸を少なくとも含む、フランアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする。アミノ酸配列はまた、高度に保存された位置(表5及び6において「:」で示される)に、高度に保存された位置に存在するアミノ酸のうちの1つを含むのが好ましい。アミノ酸配列はさらにまた、それほど高度に保存されていない位置(表5及び6において「.」で示される)に、それほど高度に保存されていない位置に存在するアミノ酸のうちの1つを含むのがより好ましい。これらの不変位置及び保存位置の外側のアミノ酸置換は、フランアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性に影響する可能性は低い。表5及び6は、ペニシリウム・ブラジリアヌムhmfN1及びhmfN2のそれぞれのアミノ酸配列アライメントを、公的データベースで利用可能なその10の近縁のオルトログと共に表す。表5A及び6Aは、P.ブラジリアヌム配列とそのオルトログとの間のアミノ酸同一性パーセンテージ、並びにオルトログの受託番号を提供する。
フランアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードしている本発明のヌクレオチド配列は、当技術分野でそれ自体が周知であるヌクレオチド配列の単離方法を利用して、真菌、酵母又は細菌、例えば、上述の供給源生物と同じ門、綱又は属に属するもののゲノム及び/又はcDNAから得ることができる(例えば、Sambrook and Russell(2001)“Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New Yorkを参照)。本発明のヌクレオチド配列は、例えば、a)(保存アミノ酸配列に基づいて設計された)縮重PCRプライマーを適切な生物のゲノム及び/又はcDNAに使用して、フランアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列の一部を含むPCR断片を生成する;b)a)で得られたPCR断片をプローブとして使用し、生物のcDNA及び/又はゲノムライブラリーをスクリーニングする;並びに、c)フランアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を含むcDNA又はゲノムDNAを生産する、方法で得ることができる。
本発明のフランアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードしているヌクレオチド配列を発現するための核酸構築物で形質転換される真菌宿主細胞は、HMFCAデヒドロゲナーゼをコードしているヌクレオチド配列を発現するための核酸構築物による形質転換に関して上述される真菌宿主細胞であることが好ましく、同様にフランアルデヒドデヒドロゲナーゼが、好ましくは機能的に、すなわち活性型で適切に発現され得る、真菌宿主細胞である。フランアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードしているヌクレオチド配列を発現するための核酸構築物で形質転換される真菌宿主細胞はまた、HMFCAデヒドロゲナーゼをコードしているヌクレオチド配列を発現することが好ましく、細胞は、HMFCAをFFCAに酸化させる能力を細胞に付与する又は細胞において増大させる、HMFCAデヒドロゲナーゼの発現構築物を含むことがより好ましい。上述のように、そのような真菌宿主細胞は、フラン化合物の細胞内及び細胞外への能動輸送又は受動輸送が可能な宿主であるのが好ましく、カルボキシル化されたフラン化合物を分解(例えば、脱カルボキシル化)する検出可能な活性を欠損しているか、又は有していないことが好ましい。
本発明のフランアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードしているヌクレオチド配列を発現するための発現構築物は、構築物で形質転換される宿主細胞に対して異種又は外因性である発現構築物であるのが好ましい。本明細書において、構築物が宿主細胞に天然に存在しない少なくとも1つの配列又は配列エレメントを含む場合、及び/又はエレメントがそれ自体宿主細胞に天然に存在していても、構築物が、宿主細胞中で天然に存在しない組み合わせ及び/又は順序で少なくとも2つの配列エレメントを含む場合、構築物は、構築物を含む宿主細胞に対して異種又は外因性であると理解されたい。
適切な宿主細胞において本発明のフランアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードしているヌクレオチド配列を発現するためのベクター及び発現構築物を、本明細書において以下により詳細に記載する。
フランアルコール/アルデヒドオキシダーゼ活性の導入又は増大
一実施形態において、HMFCAをFFCAに酸化させる能力を有する本発明の細胞は、HMFCAをFFCAに酸化させる能力を有するオキシダーゼを発現する細胞である。オキシダーゼは、そのような基を含む(すなわち、EC1.1及びEC1.2活性を有する)フラン化合物のC2及びC5位置でアルコール及びアルデヒド基を酸化させることができることが好ましい。より詳細には、オキシダーゼ活性は、i)HMFをHMFCAに酸化させること、ii)HMFを2,5−ジホルミルフラン(DFF)に酸化させること、iii)DFFを5−ホルミル−2−フロ酸(FFCA)に酸化させること、iv)HMFCAをFFCAに酸化させること、及びv)FFCAをFDCAに酸化させることのうちの少なくとも1つを可能にし得ることが好ましい。そのようなフランオキシダーゼ活性は、細胞の内因性の活性であり得るか、又は細胞に付与される外因性の活性であり得る。フランオキシダーゼは、発現構築物による細胞の形質転換によって細胞に付与されるか、又は細胞において増大することが好ましい。フランオキシダーゼを発現するための発現構築物は、HMFCAデヒドロゲナーゼを発現するための発現構築物及びフランアルデヒドデヒドロゲナーゼを発現するための発現構築物のうちの少なくとも1つを既に含む細胞におけるさらなる発現構築物であり得る。
本発明の好ましい細胞において、フランオキシダーゼを発現するための発現構築物は細胞において発現可能であり、フランオキシダーゼの発現は、発現構築物を欠損している対応する細胞、例えば野生型細胞と比べ、i)HMFをHMFCAに酸化させること、ii)HMFをDFFに酸化させること、iii)DFFをFFCAに酸化させること、iv)HMFCAをFFCAに酸化させること、及びv)FFCAをFDCAに酸化させることのうちの少なくとも1つの酸化させる能力を細胞に付与する、又はこれらの活性の少なくとも1つを有するフランオキシダーゼの比活性を細胞において増大させるのが好ましい。フランオキシダーゼの比活性は、発現構築物を欠損している対応する細胞と比べ、細胞において少なくとも1.05、1.1、1.2、1.5、2.0、5.0、10、20、50、又は100倍増大していることが好ましい。
ポリペプチドが、i)HMFをHMFCAに酸化させること、ii)HMFをDFFに酸化させること、iii)DFFをFFCAに酸化させること、iv)HMFCAをFFCAに酸化させること、及びv)FFCAをFDCAに酸化させることのうちの少なくとも1つの能力は、例えば、フランオキシダーゼ活性についてアッセイされるポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列が、pBT’hmfH−adhにおけるC.バシレンシスhmfH遺伝子と置き換わり(国際公開第2012/064195号に記載されている)、その後オキシダーゼ活性についてアッセイされるポリペプチドのコード配列を含むプラスミドが、pJNNhmfT1(t)を含むP.プチダKT2440Δgcdに導入される(同様に国際公開第2012/064195号に記載されている)、発現構築物を使用してアッセイすることができる。フランオキシダーゼ活性についてアッセイされるポリペプチドを発現するP.プチダ形質転換体をHMFと共にインキュベートし、FDCAを分析するため試料を一定間隔で得る。フランオキシダーゼ活性(及びC.バシレンシスhmfH遺伝子)についてアッセイされるポリペプチドを欠損している対応するP.プチダ形質転換体と比べた場合のFDCAの生産の増加は、ポリペプチドがフランオキシゲナーゼ活性を有することを示唆しているものと考えられる。或いは、i)HMFをHMFCAに酸化させること、ii)HMFをDFFに酸化させること、iii)DFFをFFCAに酸化させること、iv)HMFCAをFFCAに酸化させること、及びv)FFCAをFDCAに酸化させることのうちの少なくとも1つの酸化させる能力についてアッセイされるポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を、真菌宿主細胞、好ましくは本明細書において実施例7に記載されるようにS.セレビジエ宿主細胞において発現させて、ポリペプチドの発現が、HMFから両方のFDCAを生産する能力を真菌宿主細胞に付与するか否かを検出することができる。
本発明の細胞において発現されるフランオキシダーゼは、NADH又はNADPHなどのアデニンジヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、フラビンモノヌクレオチド(FMN)、及びピロロキノリンキノロン(PQQ)から選択される補因子に依存するオキシダーゼであるのが好ましい。
一実施形態において、フランオキシダーゼをコードしているヌクレオチド配列は、
a)i)HMFをHMFCAに酸化させる能力、ii)HMFをDFFに酸化させる能力、iii)DFFをFFCAに酸化させる能力、iv)HMFCAをFFCAに酸化させる能力、及びv)FFCAをFDCAに酸化させる能力のうちの少なくとも1つを有し、配列番号7〜9(それぞれ、フランオキシダーゼhmfP1、hmfP2、及びhmfP3)のうちの少なくとも1つのアミノ酸配列と、少なくとも45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、をコードしているヌクレオチド配列;
b)その相補鎖が(a)のヌクレオチド配列にハイブリダイズする、ヌクレオチド配列;及び
c)遺伝子コードの縮重により(b)のヌクレオチド配列の配列と配列が異なるヌクレオチド配列、
からなる群から選択される。
したがって、本発明の好ましいヌクレオチド配列は、アスペルギルス、アルスロデルマ(Arthroderma)、ミクロスポルム、ネオサルトリア、ペニシリウム、タラロミセス、及びトリコフィトンからなる群から選択される属の真菌、より好ましくはアルスロデルマ・オタエ(Arthroderma otae)、ミクロスポルム・ギプセウム、及びペニシリウム・ブラジリアヌムからなる群から選択される種の真菌、最も好ましくは株P.ブラジリアヌムC1である真菌、から得ることができる(又は天然に存在する)フランオキシダーゼのアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有するフランオキシダーゼをコードする。
一実施形態において、ヌクレオチド配列は、天然に存在する、例えば野生型供給源生物から単離され得る、フランオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする。或いは、ヌクレオチド配列は、対応する天然のフランオキシダーゼと比べて1つ又は複数のアミノ酸置換、挿入及び/又は欠失を含むが、本明細書において定義した同一性又は類似性の範囲内であり得る、上記で定義したようなフランオキシダーゼのいずれかの操作された形態をコードすることができる。したがって、一実施形態において、本発明のヌクレオチド配列は、そのアミノ酸配列がそれぞれの不変位置(表7〜9において「*」で示される)に、不変位置に存在するアミノ酸を少なくとも含む、フランオキシダーゼをコードする。アミノ酸配列はまた、高度に保存された位置(表7〜9において「:」で示される)に、高度に保存された位置に存在するアミノ酸のうちの1つを含むのが好ましい。アミノ酸配列はさらにまた、それほど高度に保存されていない位置(表7〜9において「.」で示される)に、それほど高度に保存されていない位置に存在するアミノ酸のうちの1つを含むのがより好ましい。これらの不変位置及び保存位置の外側のアミノ酸置換は、フランアルデヒドデヒドロゲナーゼ又はオキシダーゼ活性に影響する可能性は低い。表7〜9は、ペニシリウム・ブラジリアヌムhmfP1、hmfP2、及びhmfP3のそれぞれのアミノ酸配列アライメントを、公的データベースで利用可能なその10の近縁のオルトログと共に表す。表7A〜9Aは、P.ブラジリアヌム配列とそのオルトログとの間のアミノ酸同一性パーセンテージ、並びにオルトログの受託番号を提供する。
フランオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードしている本発明のヌクレオチド配列は、当技術分野でそれ自体が周知であるヌクレオチド配列の単離方法を利用して、真菌、酵母又は細菌、例えば、上述の供給源生物と同じ門、綱、又は属に属するもののゲノム及び/又はcDNAから得ることができる(例えば、Sambrook and Russell(2001)“Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New Yorkを参照)。本発明のヌクレオチド配列は、例えば、a)(保存アミノ酸配列に基づいて設計された)縮重PCRプライマーを適切な生物のゲノム及び/又はcDNAに使用して、フランオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列の一部を含むPCR断片を生成する;b)a)で得られたPCR断片をプローブとして使用し、生物のcDNA及び/又はゲノムライブラリーをスクリーニングする;並びに、c)フランオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を含むcDNA又はゲノムDNAを生産する、方法で得ることができる。
本発明のフランオキシダーゼをコードしているヌクレオチド配列を発現するための核酸構築物で形質転換される真菌宿主細胞は、HMFCAデヒドロゲナーゼをコードしているヌクレオチド配列を発現するための核酸構築物での形質転換に関して上述される真菌宿主細胞であることが好ましく、フランオキシダーゼが、好ましくは機能的に、すなわち活性型で適切に発現され得る、真菌宿主細胞である。上述のように、そのような真菌宿主細胞は、フラン化合物の細胞内及び細胞外への能動輸送又は受動輸送が可能な宿主であるのが好ましく、カルボキシル化されたフラン化合物を分解(例えば、脱カルボキシル化)する検出可能な活性を欠損しているか、又は有していないことが好ましい。
本発明のフランオキシダーゼをコードしているヌクレオチド配列を発現するための発現構築物は、構築物で形質転換される宿主細胞に対して異種又は外因性である発現構築物であるのが好ましい。本明細書において、構築物が宿主細胞に天然に存在しない少なくとも1つの配列又は配列エレメントを含む場合、及び/又は構築物が、エレメントがそれ自体宿主細胞中に天然に存在していても、宿主細胞に天然に存在しない組み合わせ及び/又は順序で少なくとも2つの配列エレメントを含む場合、構築物は、構築物を含む宿主細胞に対して異種又は外因性であると理解されたい。
適切な宿主細胞において本発明のフランオキシダーゼをコードしているヌクレオチド配列を発現するためのベクター及び発現構築物を、本明細書において以下により詳細に記載する。
FDCAの異化及び/又はHMF代謝の代替経路の非存在、低減、又は除去
本発明の細胞は、FDCAを分解する能力を欠損している細胞であるのが好ましい。細胞は、FDCAを分解する能力を天然に欠損している真菌種の細胞であり得る。或いは、細胞は、FDCAを分解するその天然の能力を低減又は除去するように遺伝的に修飾されている、FDCAを分解する能力を天然に有する真菌種の遺伝的修飾細胞であり得る。所定の真菌株が天然にFDCAを分解する能力を有するか否かは、例えば本明細書の実施例に記載されるように、唯一の炭素源としてHMF、HMF−アルコール、HMFCA、及びFDCAのうちの1つ又は複数を使用して株が増殖する能力を決定することによって試験することができる。FDCAを分解する能力を天然に有する真菌種の例は、本明細書の実施例に示されるようにペニシリウム・ブラジリアヌムである。これに対し、サッカロミセス及びヤロウィア種などの酵母は、FDCAを分解する能力を天然に欠損している真菌種の例である。
したがって、本発明の一実施形態において、細胞は、FDCAを分解する細胞の天然の能力を低減又は除去するように遺伝的に修飾されている。FDCAを分解する細胞の能力を低減又は除去するために修飾される遺伝子は、FDCA脱炭酸モノオキシゲナーゼをコードしている遺伝子、FDCAデカルボキシラーゼをコードしている遺伝子、FDCA脱炭酸デヒドロゲナーゼをコードしている遺伝子、及びラクトナーゼ(FDCA脱炭酸に起因するラクトンを加水分解することができる)をコードしている遺伝子のうちの少なくとも1つであり得る。
本発明の細胞においてFDCA脱炭酸モノオキシゲナーゼの比活性を低減又は除去するために修飾されるFDCA脱炭酸モノオキシゲナーゼをコードしている遺伝子は、配列番号10及び11(それぞれ、hmfK1及びhmfK2)のうちの少なくとも1つ、そのうち配列番号10が好ましい配列と、少なくとも45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードしている遺伝子であるのが好ましい。本発明の細胞において、FDCA脱炭酸モノオキシゲナーゼの比活性は、活性の低減を引き起こす遺伝的修飾を除き、遺伝的に同一である株の細胞と比べ、少なくとも1.05、1.1、1.2、1.5、2.0、5.0、10、20、50、又は100倍低減されることが好ましい。
本発明の細胞においてFDCAデカルボキシラーゼの比活性を低減又は除去するために修飾されるFDCAデカルボキシラーゼをコードしている遺伝子は、配列番号12(hmfQ)と、少なくとも45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードしている遺伝子であるのが好ましい。本発明の細胞において、FDCAデカルボキシラーゼの比活性は、活性の低減を引き起こす遺伝的修飾を除き、遺伝的に同一である株の細胞と比べ、少なくとも1.05、1.1、1.2、1.5、2.0、5.0、10、20、50、又は100倍低減されることが好ましい。
本発明の細胞においてFDCA脱炭酸デヒドロゲナーゼの比活性を低減又は除去するために修飾されるFDCA脱炭酸デヒドロゲナーゼをコードしている遺伝子は、配列番号13(hmfU)と、少なくとも45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードしている遺伝子であるのが好ましい。本発明の細胞において、FDCA脱炭酸デヒドロゲナーゼの比活性は、活性の低減を引き起こす遺伝的修飾を除き、遺伝的に同一である株の細胞と比べ、少なくとも1.05、1.1、1.2、1.5、2.0、5.0、10、20、50、又は100倍低減されることが好ましい。
理論に拘束されることを望まないが、FDCA脱炭酸に起因するラクトンは、FDCAカルボキシラーゼに対して産物阻害を発揮すると考えられる。したがって、FDCAを分解する細胞の能力を低減又は除去するための代替手段は、本発明の細胞におけるFDCA脱炭酸に起因するラクトンを加水分解することができるラクトナーゼの比活性を低減又は除去することである。FDCA脱炭酸に起因するラクトンを加水分解することができるラクトナーゼの比活性を低減又は除去するために修飾されるそのようなラクトナーゼをコードしている遺伝子は、配列番号14(hmfO)と、少なくとも45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードしている遺伝子であるのが好ましい。本発明の細胞において、ラクトナーゼの比活性は、活性の低減を引き起こす遺伝的修飾を除き、遺伝的に同一である株の細胞と比べ、少なくとも1.05、1.1、1.2、1.5、2.0、5.0、10、20、50、又は100倍低減されることが好ましい。
HMF及びFDCAの他のフラン前駆体の代謝に関する内因性の代替経路もまた、本発明の細胞に存在し得る。そのような代替経路は、HMF及びFDCAの他のフラン前駆体からのFDCAの生産と競合する。したがって、そのような代替経路における酵素の比活性も、本発明の細胞において低減又は除去されるのが好ましい。そのような1つの内因性の代替経路は、例えばデヒドロゲナーゼ、例えば短鎖デヒドロゲナーゼなどによるHMF及び/又はFFCAの対応するアルコールへの還元である。HMF及びFDCAの他のフラン前駆体を代謝する代替経路の比活性を低減又は除去するために修飾されるそのような短鎖デヒドロゲナーゼをコードしている遺伝子は、配列番号15(hmfM)と、少なくとも45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードしている遺伝子であるのが好ましい。本発明の細胞において、短鎖デヒドロゲナーゼの比活性は、活性の低減を引き起こす遺伝的修飾を除き、遺伝的に同一である株の細胞と比べ、少なくとも1.05、1.1、1.2、1.5、2.0、5.0、10、20、50、又は100倍低減されることが好ましい。
HMFをHMF−アルコールに還元することが知られている別の内因性のデヒドロゲナーゼは、Petersson et al.(2006,Yeast,23:455−464)によって記載されるように、S.セレビジエADH6遺伝子によってコードされるNADPH依存性アルコールデヒドロゲナーゼである。したがって、HMFを代謝する代替経路の比活性を低減又は除去するために修飾される遺伝子は、S.セレビジエADH6遺伝子又は別の真菌宿主種におけるそのオルトログであることが好ましい。したがって、NADPH依存性HMF還元デヒドロゲナーゼの比活性を低減又は除去するために修飾される遺伝子は、配列番号69(S.セレビジエADH6)と、少なくとも45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードしている遺伝子であるのが好ましい。本発明の細胞において、NADPH依存性HMF還元デヒドロゲナーゼの比活性は、活性の低減を引き起こす遺伝的修飾を除き、遺伝的に同一である株の細胞と比べ、少なくとも1.05、1.1、1.2、1.5、2.0、5.0、10、20、50、又は100倍低減されることが好ましい。
その比活性が、本発明の細胞において低減又は除去されることが好ましい酵素をコードしている本発明のヌクレオチド配列は、当技術分野でそれ自体が周知であるヌクレオチド配列の単離方法を利用して、真菌、酵母又は細菌、例えば、上述の供給源生物と同じ門、綱、又は属に属するもののゲノム及び/又はcDNAから得ることができる、又は同定することができる(例えば、Sambrook and Russell(2001)“Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New Yorkを参照)。本発明のヌクレオチド配列は、例えば、a)(保存アミノ酸配列に基づいて設計された)縮重PCRプライマーを適切な生物のゲノム及び/又はcDNAに使用して、その比活性が、本発明の細胞において低減又は除去されることが好ましい酵素をコードしているヌクレオチド配列の一部を含むPCR断片を生成する;b)a)で得られたPCR断片をプローブとして使用し、生物のcDNA及び/又はゲノムライブラリーをスクリーニングする;並びに、c)その比活性が、本発明の細胞において低減又は除去されることが好ましい酵素をコードしているヌクレオチド配列を含むcDNA又はゲノムDNAを生産する、方法で得ることができる。そのような保存された配列は、不変位置が「*」で示され、高度に保存された位置が「:」で示される、表10〜15に表される配列アライメントにおいて同定され得る。同様に、本発明の適切な宿主細胞は、宿主が、表10〜15に同定されるオルトログの供給源生物と同じ門、綱、目、科、又は属に属する非病原性の真菌又は酵母であることが好ましい、表10〜15に由来し得る。表10〜15はそれぞれ、ペニシリウム・ブラジリアヌムhmfK1、hmfK2、hmfQ、hmfU、及びhmfMのそれぞれのアミノ酸配列アライメントを、公的データベースで利用可能なその10の近縁のオルトログと共に表す。表10A〜15Aは、P.ブラジリアヌム配列とそのオルトログとの間のアミノ酸同一性パーセンテージ、並びにオルトログの受託番号を提供する。
フラン化合物のトランスポーターを発現する細胞
上述のように本発明の細胞はさらに、フラン化合物輸送能力を有するポリペプチドをコードしている1つ又は複数のヌクレオチド配列を発現することが好ましい。フラン化合物輸送能力を有するそのようなポリペプチドは、細胞の内因性の活性であり得るか、又は細胞に付与される外因性の活性であり得る。フラン化合物輸送能力を有するポリペプチドの活性は、発現構築物、例えば細胞がHMFCAデヒドロゲナーゼ又はオキシダーゼを発現するための第1の発現構築物と、フランアルデヒドデヒドロゲナーゼ又はオキシダーゼを発現するための第2の発現構築物を既に含む場合は、第3の構築物による細胞の形質転換によって細胞に付与されるか、又は細胞において増大することが好ましい。
本細胞は、フラン化合物輸送能力を有するポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を発現するための発現構築物で形質転換されるのが好ましい。フラン化合物輸送能力を有するポリペプチドは、HMFCAを細胞内に輸送する能力を少なくとも含む、HMFCA輸送能力を有するポリペプチドであるのが好ましい。細胞は、少なくともHMFCAを細胞に輸送する能力を有するポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を発現するための発現構築物を含むことが好ましく、ポリペプチドは、配列番号16〜18(それぞれ、hmfT3、hmfT4、及びhmfT5)の少なくとも1つと、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、発現構築物は細胞において発現可能であり、ポリペプチドの発現は、発現構築物を欠損している対応する野生型細胞と比べて、細胞に少なくともHMFCAを輸送する能力を細胞に付与する又は細胞において増大させる。
フラン化合物、特にHMFCAを細胞に輸送するポリペプチドの能力は、酵母宿主細胞、好ましくはS.セレビジエCEN.PK宿主細胞においてトランスポーターポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列と、C.バシレンシスHMF14のHmfH遺伝子及びC.バシレンシスHMF14からのHMF分解オペロン(国際公開第2012/0064195号の配列番号19のアミノ酸配列を有する)に関連するフランアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードしている遺伝子と共に同時発現させ、形質転換S.セレビジエ細胞を4mM HMF中でインキュベートすること、及び本明細書の実施例6に記載されるようにトランスポーターポリペプチドを発現しない対応する(すなわち、それ以外は同一である)S.セレビジエ細胞と比べて、FDCAの蓄積の増大を検出することによってアッセイされ得る。
したがって、本発明の好ましいヌクレオチド配列は、アスペルギルス、フザリウム、ネクトリア(Nectria)、ペニシリウム、スポロトリクス、及びトグニニア(Togninia)からなる群から選択される属の真菌、より好ましくはアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、ペニシリウム・ブラジリアヌム、ペニシリウム・ディジタツム(Penicillium digitatum)、ペニシリウム・ルベンス(Penicillium rubens)、スポロトリクス・シェンキイ、及びトグニニア・ミニマ(Togninia minima)からなる群から選択される種の真菌、最も好ましくは、株P.ブラジリアヌムC1である真菌から得ることができる(又は天然に存在する)、フラン化合物トランスポーターポリペプチドのアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有するフラン化合物トランスポーターポリペプチドをコードする。
一実施形態において、ヌクレオチド配列は、天然に存在する、例えば野生型供給源生物から単離することができるフラン化合物トランスポーターポリペプチドをコードする。或いは、ヌクレオチド配列は、対応する天然のフラン化合物トランスポーターポリペプチドと比べて1つ又は複数のアミノ酸置換、挿入及び/又は欠失を含むが、本明細書において定義した同一性又は類似性の範囲内であり得る、上記で定義したようなフラン化合物トランスポーターポリペプチドのいずれかの操作された形態をコードすることができる。したがって、一実施形態において、本発明のヌクレオチド配列は、そのアミノ酸配列がそれぞれの不変位置(表16〜18において「*」で示される)に、不変位置に存在するアミノ酸を少なくとも含む、フラン化合物トランスポーターポリペプチドをコードする。アミノ酸配列はまた、高度に保存された位置(表16〜18において「:」で示される)に、高度に保存された位置に存在するアミノ酸のうちの1つを含むのが好ましい。アミノ酸配列はさらにまた、それほど高度に保存されていない位置(表16〜18において「.」で示される)に、それほど高度に保存されていない位置に存在するアミノ酸のうちの1つを含むのがより好ましい。これらの不変位置及び保存位置の外側のアミノ酸置換は、フラン化合物トランスポーターポリペプチド活性に影響する可能性は低い。表16〜18は、ペニシリウム・ブラジリアヌムhmfT3、hmfT4、及びhmfT5のそれぞれのアミノ酸配列アライメントを、公的データベースで利用可能なその10の近縁のオルトログと共に表す。表16A〜18Aは、P.ブラジリアヌム配列とそのオルトログとの間のアミノ酸同一性パーセンテージ、並びにオルトログの受託番号を提供する。
フラン化合物トランスポーター活性を有するポリペプチドをコードしている本発明のヌクレオチド配列は、当技術分野でそれ自体が周知であるヌクレオチド配列の単離方法を利用して、真菌、酵母又は細菌、例えば、上述の供給源生物と同じ門、綱又は属に属するもののゲノム及び/又はcDNAから得ることができる(例えば、Sambrook and Russell(2001)“Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New Yorkを参照)。本発明のヌクレオチド配列は、例えば、a)(保存アミノ酸配列に基づいて設計された)縮重PCRプライマーを適切な生物のゲノム及び/又はcDNAに使用して、フラン化合物トランスポーター活性を有するポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列の一部を含むPCR断片を生成する;b)a)で得られたPCR断片をプローブとして使用し、生物のcDNA及び/又はゲノムライブラリーをスクリーニングする;並びに、c)フラン化合物トランスポーターポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を含むcDNA又はゲノムDNAを生産する、方法で得ることができる。
フラン化合物トランスポーターポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を発現するための核酸構築物で形質転換される真菌宿主細胞は、上述のように本発明の真菌宿主細胞であることが好ましい。
フラン化合物トランスポーターポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を発現するための発現構築物は、構築物で形質転換された宿主細胞に対して異種又は外因性である発現構築物であることが好ましい。構築物は、本明細書において、構築物が宿主細胞に天然に存在しない少なくとも1つの配列又は配列エレメントを含む場合、及び/又は構築物が、エレメントがそれ自体宿主細胞中に天然に存在していても、宿主細胞に天然に存在しない組み合わせ及び/又は順序で少なくとも2つの配列エレメントを含む場合、構築物を含む宿主細胞に対して異種又は外因性であると理解されたい。
適切な宿主細胞において本発明のフラン化合物トランスポーターポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を発現するためのベクター及び発現構築物を、本明細書において以下により詳細に記載する。
転写アクチベーターの発現の調節が変化した細胞
本発明の細胞の一実施形態において、フランの異化に関係する遺伝子の転写アクチベーターの発現の調節を変化させる。転写アクチベーターの発現は、FDCA分解に関する内因性の遺伝子を含む細胞において、好ましくは転写アクチベーターとは独立して発現される、HMFをFDCAに変換する酵素をコードしている遺伝子を含む細胞において、FDCAの分解を防止するために低減又は除去することができる。或いは、HMF及び/又は他のフラン前駆体をFDCAに変換するための内因性遺伝子の発現を増大させるために、転写アクチベーターの発現を増大させることができ、及び/又はFDCA分解を防止するように遺伝的に修飾されている細胞において構成的にすることができる。
本発明の細胞において、発現の調節が変化しているその転写アクチベーターは、好ましくは配列番号19(hmfR)と少なくとも45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列によってコードされ、ポリペプチドが、フランの異化に関係する少なくとも1つの遺伝子の転写を活性化する能力を有する。
したがって、本発明の好ましいヌクレオチド配列は、フザリウム、ペニシリウム、スケドスポリウム、スポロトリクス、及びスタキボトリス(Stachybotrys)からなる群から選択される属の真菌、より好ましくはフザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、ペニシリウム・ブラジリアヌム、スケドスポリウム・アピオスペルマム(Scedosporium apiospermum)、スポロトリクス・シェンキイ、及びスタキボトリス・クロロハロナタ(Stachybotrys chlorohalonata)からなる群から選択される種の真菌、最も好ましくは株P.ブラジリアヌムC1である真菌から得ることができる(又は天然に存在する)転写アクチベーターのアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する転写アクチベーターをコードする。
一実施形態において、ヌクレオチド配列は、天然に存在する、例えば野生型供給源生物から単離することができる、転写アクチベーターをコードする。或いは、ヌクレオチド配列は、対応する天然の転写アクチベーターポリペプチドと比べて1つ又は複数のアミノ酸置換、挿入及び/又は欠失を含むが、本明細書において定義した同一性又は類似性の範囲内にあり得る、上記で定義したような転写アクチベーターポリペプチドのいずれかの操作された形態をコードすることができる。したがって、一実施形態において、本発明のヌクレオチド配列は、そのアミノ酸配列がそれぞれの不変位置(表19において「*」で示される)に、不変位置に存在するアミノ酸を少なくとも含む、転写アクチベーターポリペプチドをコードする。アミノ酸配列はまた、高度に保存された位置(表19において「:」で示される)に、高度に保存された位置に存在するアミノ酸のうちの1つを含むのが好ましい。アミノ酸配列はさらにまた、それほど高度に保存されていない位置(表19において「.」で示される)に、それほど高度に保存されていない位置に存在するアミノ酸のうちの1つを含むのがより好ましい。これらの不変位置及び保存位置の外側のアミノ酸置換は、転写アクチベーター活性に影響する可能性は低い。表19は、ペニシリウム・ブラジリアヌムhmfRのアミノ酸配列アライメントを、公的データベースで利用可能なその10の近縁のオルトログと共に表す。表19Aは、P.ブラジリアヌム配列とそのオルトログとの間のアミノ酸同一性パーセンテージ、並びにオルトログの受託番号を提供する。
転写アクチベーター活性を有するポリペプチドをコードしている本発明のヌクレオチド配列は、当技術分野でそれ自体が周知であるヌクレオチド配列の単離方法を利用して、真菌、酵母又は細菌、例えば、上述の供給源生物と同じ門、綱又は属に属するもののゲノム及び/又はcDNAから得ることができる(例えば、Sambrook and Russell(2001)“Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New Yorkを参照)。本発明のヌクレオチド配列は、例えば、a)(保存アミノ酸配列に基づいて設計された)縮重PCRプライマーを適切な生物のゲノム及び/又はcDNAに使用して、転写アクチベーター活性を有するポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列の一部を含むPCR断片を生成する;b)a)で得られたPCR断片をプローブとして使用し、生物のcDNA及び/又はゲノムライブラリーをスクリーニングする;並びに、c)フラン転写アクチベーターをコードしているヌクレオチド配列を含むcDNA又はゲノムDNAを生産する、方法で得ることができる。
フラン転写アクチベーターポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を発現するための核酸構築物で形質転換される真菌宿主細胞は、上述のような本発明の真菌宿主細胞であることが好ましい。
フラン転写アクチベーターポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を発現するための発現構築物は、構築物で形質転換される宿主細胞に対して異種又は外因性である発現構築物であるのが好ましい。構築物は、本明細書において、構築物が宿主細胞に天然に存在しない少なくとも1つの配列又は配列エレメントを含む場合、及び/又は構築物が、エレメントがそれ自体宿主細胞中に天然に存在していても、宿主細胞に天然に存在しない組み合わせ及び/又は順序で少なくとも2つの配列エレメントを含む場合、構築物を含む宿主細胞に対して異種又は外因性であると理解されたい。
適切な宿主細胞において本発明のフラン転写アクチベーターポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を発現するためのベクター及び発現構築物を、本明細書において以下により詳細に記載する。
本発明の細胞の遺伝的修飾のためのベクター、遺伝子構築物、及び方法
本発明の親宿主細胞の遺伝的修飾のために、すなわち、本発明の修飾された宿主細胞を構築するために、当技術分野で一般的に公知であり、例えば、Sambrook and Russell(2001,“Molecular cloning:a laboratory manual”(3rd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press)及びAusubel et al.(1987,eds.,“Current protocols in molecular biology”,Green Publishing and Wiley Interscience,New York)によって記載されている標準的な遺伝子技術及び分子生物学技術を使用する。
より詳細には、酵母を遺伝的に修飾するための手段及び方法は、標準で当業者に公知であり、例えば遺伝子を(過剰)発現するためのプロモーター、エピソーム及び/又は組み込み発現構築物、並びにベクター、選択可能マーカー、内因性の酵母遺伝子又はその一部を破壊及び/又は枯渇させるための方法及び遺伝子構築物、並びに酵母を形質転換する方法を含む。そのような手段及び方法は、例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれている、Sherman et al,Methods Yeast Genetics,Cold Spring Harbor Laboratory,NY(1978);Guthrie et al.(Eds.)Guide To Yeast Genetics and Molecular Biology Vol.194,Academic Press,San Diego(1991);Sudbery,P.E.(2001)Genetic Engineering of Yeast,in Biotechnology Set,Second Edition(eds H.−J.Rehm and G.Reed),Wiley−VCH Verlag GmbH,Weinheim,Germany.doi:10.1002/9783527620999.ch13a;and,Gaillardin,C.and Heslot,H.(1988),Genetic engineering in Yarrowia lipolytica.J.Basic Microbiol.,28:161−174.doi:10.1002/jobm.3620280303に記載されている。
同様に、糸状菌を遺伝的に修飾するための手段及び方法は、標準で当業者に公知であり、例えば遺伝子を(過剰)発現するためのプロモーター、エピソーム及び/又は組み込み発現構築物、並びにベクター、選択可能マーカー、内因性の真菌遺伝子又はその一部を破壊及び/又は枯渇させるための方法及び遺伝子構築物、並びに糸状菌を形質転換させる方法を含む。そのような手段及び方法は、例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれている、Moore,M.M.(2007,“Genetic engineering of fungal cells”,In Biotechnology Vol.III.(Ed.H.W.Doelle and E.J.Dasilva),EOLSS,Ontario,Canada.pp.36−63;Lubertozzi,D.,&Keasling,J.D.(2009),“Developing Aspergillus as a host for heterologous expression”,Biotechnology advances,27(1),53−75;Meyer,V.(2008)“Genetic engineering of filamentous fungi−−progress,obstacles and future trends”,Biotechnology Advances,(26),177−85;Kuck and Hoff(2010)“New tools for the genetic manipulation of filamentous fungi.Applied microbiology and biotechnology”,86(1),51−62;及び国際公開第2014/142647号に記載されている。
したがって、別の態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチド、例えば本発明のHMFCAデヒドロゲナーゼ又はフランアルデヒドデヒドロゲナーゼ、又はその機能的同等物をコードしているヌクレオチド配列、を含むクローニングベクター及び発現ベクターを含むベクターなどの核酸構築物、並びに適切な宿主細胞にそのようなベクターで形質転換又はトランスフェクトする方法に関する。本明細書で使用する場合、用語「ベクター」及び「構築物」は同義的に使用され、本発明のポリヌクレオチドを含む、構築された核酸分子を意味する。
本発明に記載のベクターは、自律複製ベクター、すなわち染色体外の実体として存在するベクターであってもよく、その複製は、染色体複製、例えばプラスミドから独立している。或いは、ベクターは、宿主細胞に導入される場合、宿主細胞ゲノムに組み込まれ、それが組み込まれた染色体(複数可)と共に複製されるものであってもよい。便宜上、ベクターは、操作及び生産を容易にするために、大腸菌(E.coli)などの細菌において使用するための複製開始点及び選択可能マーカーを同様に含むシャトルベクターであり得る。
一実施形態において、核酸構築物は、(過剰)発現される本発明のポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を含む発現構築物又は発現ベクターであり、ポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列は、当該宿主細胞におけるコードヌクレオチド配列の発現(速度)に影響を及ぼす及び制御することができる調節配列に作動可能に連結されている。そのような調節配列は典型的には少なくとも、通常、コード配列の上流に位置し、コード配列に作動可能に連結されることが好ましい、コード配列の転写を制御するように機能するプロモーターを含む。プロモーターに加えて、上流の転写調節配列は、エンハンサー、上流の活性化配列、転写因子結合部位、リプレッサー、及びアクチベータータンパク質結合部位等などのエレメントをさらに含み得る。プロモーター配列は通常、転写開始部位(複数可)を含む。酵母及び糸状菌においてコード配列を発現させるために適切なプロモーター及び転写調節配列は、上記で列挙した参考文献に記載されている。プロモーター及び転写開始部位(複数可)の下流で、発現構築物は、翻訳開始コドン、すなわちコード配列の最初のコドンの周囲に真核細胞コザックコンセンサス配列などの翻訳開始配列を含む。コード配列は、翻訳終止コドンで終了する。コード配列の下流で、発現構築物は、同様にポリアデニル化部位を含むことが好ましい1つ又は複数の転写終止部位、例えばターミネーターを含む3’非翻訳領域を含み得る。ターミネーターの起源はそれほど重要ではない。ターミネーターは、例えば、ポリペプチドをコードしているDNA配列に天然であり得る。しかし、酵母ターミネーターは酵母宿主細胞において使用されるのが好ましく、糸状菌ターミネーターは糸状菌宿主細胞において使用されるのが好ましい。ターミネーターは宿主細胞(ポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列が発現される)に対し内因性であるのがより好ましい。適切な上流及び下流の調節配列に作動可能に連結されたコード配列を含む機能的発現単位は、発現カセットと呼ばれ得る。本発明の発現ベクター又は発現構築物は、任意選択で1つより多くの異なるコード配列を発現させるための1つより多くの発現カセットを含みうる。
少なくとも1つの発現カセットに加えて、本発明の発現ベクター又は発現構築物はまた、ベクター又は構築物によって形質転換された宿主細胞を選択するための選択可能マーカーを含むことが好ましい。好ましい実施形態において、発現ベクター又は発現構築物における選択可能マーカーは、宿主細胞において形質転換体の初回選択後、例えば欧州特許第0 635 574号に記載される相同的組換えを使用して、又はGuldener et al.(1996,Nucleic Acids Res.24:2519−2524)によって記載されるCre−lox系を使用して、発現構築物/ベクターからのマーカーの切り出しを可能にする構成で存在する。
本発明は、本発明のポリペプチド、例えばHMFCAデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチド、フランアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチド、及びその発現が本発明の細胞において低減/除去されるポリペプチドを含む、ポリペプチドを調製するための方法にさらに関する。方法は、ポリペプチドの発現を誘導する条件で本発明による細胞を培養するステップと、任意選択で、発現されたポリペプチドを回収するステップとを含む。本発明はまた、そのような方法によって得ることができるポリペプチドにも関する。
したがって、別の態様において、本発明は、コードされる標的タンパク質の発現及び/又は活性を低減又は除去するために、本発明の細胞における内因性の標的遺伝子を修飾するための手段及び方法に関する。標的タンパク質の発現を低減又は除去するために使用され得る修飾は、限定するものではないが、標的タンパク質をコードしている遺伝子全体又は遺伝子の一部の欠失、タンパク質が発現されないように又は低レベルで発現されるように標的遺伝子への(プロモーター又はコード領域のいずれかへの)DNA断片の挿入、機能的タンパク質が発現されないように終止コドン又はフレームシフトを付加する変異の標的コード領域への導入、及び非機能的標的タンパク質又は低減された酵素活性を有する標的タンパク質が発現されるようにアミノ酸を変化させるための1つ又は複数の変異の標的コード領域への導入が挙げられる、破壊である。さらに、標的遺伝子の発現を、アンチセンスRNA又は干渉RNAの発現によって遮断してもよく、共抑制をもたらす構築物を導入してもよい。その上、この準最適コード配列を対応する内因性の標的コード配列の代わりに置換すると、多くのコドンがまれなコドンで置換されるために、その発現が低い標的コード配列が合成され得る。このような準最適コード配列は、0.5、0.4、0.3、0.2、又は0.1未満のcodon adaptation index(上記を参照されたい)を有することが好ましい。このような準最適コード配列は、同じポリペプチドを生産するが、翻訳が非効率的であるために生産速度は低い。さらに、転写物の合成又は安定性を、変異によって低減させてもよい。同様に、タンパク質がmRNAから翻訳される効率は、変異によって、例えば、準最適翻訳開始コドンを使用することによって調節することができる。これらの方法は全て、標的タンパク質をコードしている配列を利用する当業者が容易に実践することができる。
特に、標的コード配列周囲のゲノムDNA配列は、相同組換えを使用する修飾方法にとって有用である。例えば、この方法において、標的遺伝子に隣接する配列を、相同組換えを媒介するために選択可能マーカー遺伝子のいずれかの部位に配置すると、それによってマーカー遺伝子が標的遺伝子と置き換わる。同様に、部分標的遺伝子配列及び選択可能マーカー遺伝子に結合している標的遺伝子隣接配列を使用して、相同組換えを媒介してもよく、それによってマーカー遺伝子が標的遺伝子の一部と置き換わる。さらに、不活化構築物における選択可能マーカーは、宿主細胞ゲノムに組み込まれた後、例えば欧州特許第0 635 574号に記載される相同組換えを使用して、又はGuldener et al.(1996,Nucleic Acids Res.24:2519−2524)によって記載されるCre−lox系を使用して、不活化構築物発現構築物/ベクターからのマーカーの切り出しを可能にするように構成することができる。
標的遺伝子の欠失はまた、Wach et al.(1994,Yeast 10:1793−1808)に記載されるように体細胞分裂組換えを使用して行ってもよい。この方法は、20bpもの短さであり得て、標的DNA配列に結合する、すなわち隣接する選択可能マーカーをゲノム領域の間に含むDNA断片を調製することを伴う。このDNA断片は、マーカー遺伝子の末端にハイブリダイズし、真菌ゲノムと組換えすることができるゲノム領域を含むオリゴヌクレオチドを、プライマーとして使用する、選択可能マーカー遺伝子のPCR増幅によって調製することができる。線状DNA断片は、酵母又は糸状菌を効率よく形質転換することができ、ゲノムとの組換えによって、標的DNA配列の欠失を含む遺伝子置換をもたらす(Methods in Enzymology,1991,v 194,pp 281−301に記載されるように)。その上、プロモーター置換法を使用して、内因性の転写制御エレメントを交換してもよく、それによってMnaimneh et al.(2004,Cell 118(1):31−44)及び本明細書の実施例に記載されるように、別の手段に発現を調節させることができる。
さらに、任意の細胞における標的タンパク質又は遺伝子の活性を、ランダム変異誘発を使用して破壊してもよく、この後に標的タンパク質の活性が低減された株を同定するためにスクリーニングを行う。このタイプの方法を使用する場合、標的タンパク質をコードしているDNA配列又は標的タンパク質の発現に影響を及ぼすゲノムの他のいかなる領域も、全く知る必要はない。遺伝子変異を作製する方法は当技術分野で一般的で周知であり、変異体を作製する実践に応用され得る。一般的に使用されるランダム遺伝子修飾方法(Methods in Yeast Genetics,2005,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.において論評されている)としては、自然突然変異誘発、突然変異誘発遺伝子によって引き起こされる突然変異誘発、化学的突然変異誘発、UV若しくはX線の照射、又はトランスポゾン突然変異誘発が挙げられる。
真菌の化学的突然変異誘発は、一般的に以下のDNA変異原の1つによる細胞の処理を伴う:メタンスルホン酸エチル(EMS)、亜硝酸、硫酸ジエチル、又はN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソ−グアニジン(MNNG)。これらの突然変異誘発方法は、Spencer et al(Mutagenesis in Yeast,1996,Yeast Protocols:Methods in Cell and Molecular Biology.Humana Press,Totowa,N.J.)において論評されている。EMSによる化学的突然変異誘発は、Methods in Yeast Genetics,2005,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Yに記載されるように実施され得る。紫外(UV)光又はX線の照射もまた、酵母細胞においてランダム突然変異誘発を生じるために使用することができる。UV照射による突然変異誘発の主な効果は、DNA複製の忠実度を混乱させるピリミジン二量体の形成である。酵母のUV突然変異誘発のプロトコールは、Spencer et al(Mutagenesis in Yeast,1996,Yeast Protocols:Methods in Cell and Molecular Biology.Humana Press,Totowa,N.J.)において見出され得る。突然変異誘発遺伝子表現型の導入もまた、酵母におけるランダム染色体突然変異を生成するために使用することができる。一般的な突然変異誘発遺伝子の表現型は、以下の遺伝子:PMS1、MAG1、RAD18、又はRAD51のうちの1つ又は複数の破壊を通して得ることができる。非突然変異誘発遺伝子表現型の回復は、野生型対立遺伝子の挿入により容易に得ることができる。これら又は他の公知のランダム突然変異誘発方法のいずれかから生産された修飾された細胞のコレクションを、標的タンパク質の低減された活性に関してスクリーニングしてもよい(米国特許出願公開第20090305363号)。
フラン化合物を酸化させる方法
さらなる態様において、本発明は、フラン化合物を酸化させる方法に関する。特に、本発明は、FDCAのフラン前駆体を酸化させる方法に関する。本発明の方法は、生成物が得られる単一の酸化反応ステップ(例えば、HMFCAのFFCAへの酸化)を含み得る。或いは、本発明の方法は、複数の酸化反応ステップを含むことができ、それぞれのステップは中間体を生じ、最後の中間体は最終生成物である。HMFが連続する酸化ステップでFDCAに酸化される、このような一連のステップの例としては、例えば:1)HMFをまずHMFCAに酸化させ、これを第2のステップでFFCAに酸化させ、次いで、これを最終的にFDCAに酸化させるか、或いは、Dijkman et al.(2014,Angew.Chem.53(2014)6515−8)によって記載されているとおりである、2)HMFをまずDFFに酸化させ、これを第2のステップでFFCAに酸化させ、次いで、これを最終的にFDCAに酸化させる、ステップが挙げられる。したがって、本発明の好ましい方法において、FDCAの1つ又は複数のフラン前駆体は、一連のステップで最終的にFDCAに酸化される。
一実施形態において、本発明は、少なくともHMFCAのFFCAへの酸化を含む方法に関する。本方法は、細胞をHMFCAの存在下でインキュベートするステップを含む、HMFCAをFFCAに酸化させる方法であるのが好ましい。細胞は、HMFCAをFFCAに酸化させる能力を有する酵素を発現する細胞であるのが好ましい。細胞は、HMFCAをFFCAに酸化させる能力を有するように遺伝的に修飾された細胞であり得る。好ましい実施形態において、細胞は、本明細書において上記又は下記で定義された真菌である。細胞は、例えば以下に明記されるように、HMFCAの存在下で、細胞によるHMFCAの酸化を誘導する条件でインキュベートすることが好ましい。
別の実施形態において、本発明は、FDCAを生産する方法に関する。FDCAを生産する方法は、好ましくはFDCAの1つ又は複数のフラン前駆体を含む培地で細胞をインキュベートするステップを含む。細胞は、FDCAのフラン前駆体をFDCAに変換する能力を有する1つ又は複数の酵素を発現する細胞であるのが好ましい。FDCAのフラン前駆体をFDCAに変換する能力を有する酵素は、例示された真菌酵素を含む、上記で記載される、アルコール及び/若しくはアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性、並びに/又はアルコール及び/若しくはアルデヒドオキシダーゼ活性を有する酵素であり得る。したがって、好ましい実施形態において、細胞は、本明細書において上記で定義された細胞、好ましくは真菌細胞である。
しかし、或いは、細胞、好ましくは真菌細胞は、FDCAのフラン前駆体をFDCAに変換する能力を有する細菌酵素を発現する。そのような細菌酵素は、例えばカプリアビダス・バシレンシス株HMF14のHmfHオキシダーゼ及び国際公開第2011/26913号に記載される関連オキシダーゼを含む。したがって、好ましくは真菌細胞は、FDCAのフラン前駆体に対するEC1.1及びEC1.2活性のうち少なくとも1つを有するオキシダーゼを発現し、オキシダーゼは、配列番号44(C.バシレンシスHMF14 HmfHオキシダーゼのアミノ酸配列)に対して少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むのが好ましい。
細胞、好ましくは真菌細胞は、例えばカプリアビダス・バシレンシス株HMF14のアルデヒドデヒドロゲナーゼ及び国際公開第2012/64195号に記載される関連デヒドロゲナーゼなどの、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性(すなわち、EC1.2活性)を有する細菌酵素をさらに発現することができる。アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性は、フランアルデヒドを変換することができることが好ましい。アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性は、フランアルデヒドを対応するフランカルボン酸に酸化させることができることがより好ましい。より詳細には、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性は、i)HMFをHMFCAに酸化させること、ii)2,5−ジホルミルフラン(DFF)を5−ホルミル−2−フロ酸(FFCA)に酸化させること、及びiii)FFCAをFDCAに酸化させることのうち少なくとも1つを可能にし得ることが好ましい。アルデヒドデヒドロゲナーゼは、配列番号45、46、47、48、49、50、及び51のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことが好ましい。
細胞、好ましくは真菌細胞は、フラン化合物輸送能力を有する、好ましくはHMFCA輸送能力を有するポリペプチド、例えばカプリアビダス・バシレンシス株HMF14のHmfTトランスポーター及び国際公開第2012/64195号に記載される関連トランスポーターをさらに発現することができる。HMFCA輸送能力は、HMFCAを細胞に輸送する能力を少なくとも含むと理解されたい。フラン化合物輸送能力を有するポリペプチドは、配列番号52、53、54、55及び56のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことが好ましい。
細胞は、例えば以下に明記されるように細胞によるFDCAのフラン前駆体のFDCAへの酸化を誘導する条件下でFDCAの1つ又は複数のフラン前駆体の存在下でインキュベートされることが好ましい。
本方法において、FDCAの少なくとも1つのフラン前駆体は、HMF、DHF、HMFCA、FFCA及びDFFからなる群から選択されるのが好ましく、そのうち、HMFが最も好ましい。FDCAのフラン前駆体は、従来の方法において、好ましくは酸触媒脱水によって、例えば、酸の存在下で加熱することによって、1つ又は複数のヘキソース糖から得られるのが好ましい。フルクトースからHMFを生成する技術は十分に確立されており、堅実である(例えば、van Putten et al.,2013,Chem.Rev.113,1499−1597を参照)。グルコース高含有の供給原料も利用することができるが、HMFの熱化学的形成は、フルクトースからより効率的に生じる。したがって、追加の酵素的ステップは、グルコースイソメラーゼを使用して、グルコースをフルクトースに変換するために含めることができる。後者の方法は、例えば、加水分解デンプンからの高フルクトースコーンシロップ(HFCS)の生産に対し、食品産業において十分に確立されている。グルコースはまた、例えば、van Putten et al.(2013、前掲)に開示されているように、触媒及び溶媒の組合せを使用して、化学的にフルクトースに異性化することができる。
ヘキソース糖は、通常、バイオマスから得られる。用語「バイオマス」とは、農業(作物残留物などの植物物質及び動物物質を含む)、林業(木材資源など)並びに漁業及び水産養殖を含む関連産業などの生物学的起源由来の生物分解性画分の生成物、廃棄物及び残留物、並びに産業廃棄物及び自治体廃棄物、例えば、自治体ゴミ又は古紙などの生物分解性画分を意味するものと理解されたい。好ましい実施形態において、バイオマスは植物バイオマスであり、(発酵性)ヘキソース/グルコース/糖高含有バイオマス、例えば、サトウキビ、デンプン含有バイオマス、例えばコムギ穀粒若しくはトウモロコシ藁、又は穀類、例えばトウモロコシ、コムギ、オオムギ、又はそれらの混合物がより好ましい。フルクタンを天然に高含有する農業作物(例えばキクイモ又はチコリの根)が好ましい。
ヘキソース糖は、このようなバイオマスの加水分解によって得ることができる。バイオマスを加水分解する方法は、それ自体は当技術分野において公知であり、例えば、蒸気及び/又はグルコアミラーゼなどのカルボヒドラーゼの使用を含む。
本発明の方法において使用するための好ましいタイプのバイオマスは、いわゆる「第2世代」のリグノセルロース系供給原料であって、多量のFDCAをより持続可能な方法で生産しようとする場合に好ましい。リグノセルロース系供給原料は、例えば、耕作地周辺部で栽培される専用エネルギー作物から得ることができ、したがって、食用作物とは直接競合しない。又は、リグノセルロースの供給原料は、副生成物、例えば、自治体ゴミ、古紙、木材残留物(製材工場及び製紙工場の廃棄物を含む)として得ることができ、また作物残留物を考慮することができる。作物残留物の例としては、サトウキビからのバガス及び数種類のトウモロコシ及びコムギの廃棄物が挙げられる。トウモロコシ副生成物の場合、3つの廃棄物は繊維、穂軸及び茎葉である。さらに、林業バイオマスを供給原料として使用することができる。第二世代の供給原料を本発明の発酵産物に変換するには、単糖類としてセルロース及びヘミセルロースを遊離させる必要がある。ここには、熱化学的アプローチ(通常、前処理と呼ばれる)、酵素的アプローチのいずれか、又は2つの方法論の組合せが適用される。前処理は糖を完全に遊離させるために、又は高分子化合物をその後の酵素作用に対しより利用可能にするために役立ち得る。様々なタイプの前処理としては、液体温水、水蒸気爆発、酸前処理、アルカリ前処理及びイオン性液体前処理が挙げられる。様々な化合物の相対量は、使用される供給原料及び使用される前処理の両方に依存する。このようなリグノセルロース供給原料から単糖類の糖を遊離させるには、例えば、アラビナーゼ、キシラナーゼ、グルカナーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、グルカナーゼなどを含む、適切なカルボヒドラーゼが使用される。
本発明の酸化方法は、細胞に対して最適な温度で実施されることが好ましく、及び/又は細胞がオキシドレダクターゼ酵素を含むことが好ましい。したがって、好熱性細胞及び/又は好熱性酵素の場合、温度は、40〜65℃の範囲、例えば少なくとも40、42、又は45℃であり、及び/又は例えば65、60、55、又は50℃を超えないことが好ましい。しかし、中温細胞及び/又は中温菌由来の酵素の場合、酸化反応は比較的温和な温度、例えば10〜45℃の範囲で行われることが好ましく、20〜40℃がより好ましく、例えば少なくとも10、15、18、20、22、又は25℃であり、及び/又は例えば45、42、40、38、35、32、又は30℃を超えないことがより好ましい。
本発明の酸化方法は、酸性pHで行われることが好ましい。任意の生物工学方法において、特にポリマー生産のためのモノマー化合物の生産では、制御されたポリマー形成においてモノマーの純度が必須であることから、後処理プロセス(DSP)、すなわち回収及び精製は、一般的な懸念である。FDCAは、3より低いpH値で非常に限定的な溶解度を有する(pKaはおよそ2.28)。方法を酸性pHで実施すると、生産されたFDCAは、それが生産される培地から好ましくはその生産時に既に沈殿しており、それによってその回収が非常に容易となる。したがって、本発明のプロセスにおいて、細胞、好ましくは真菌細胞は、5.0、4.0、3.0、2.9、2.8、2.7、2.6、2.5、又は2.4に等しいか又はそれより低いpHで1つ又は複数のフランの存在下でインキュベートされることが好ましく、2.0、2.1、2.2、又は2.25、2.27、又は2.28に等しいか又はそれより高いpHでインキュベートされることが好ましい。本発明の方法において、この範囲のpHに対して高い抵抗性を有する細胞、好ましくは真菌宿主細胞を選択することが好ましい。酸性pHで方法を実施するさらなる利点は、ほぼ全ての細菌が低いpHでは有害な影響を受けることから、方法の微生物混入がそれほど問題ではないことである。酵母及び真菌は、感染症供給源としての細菌と比べるとそれほど問題ではなく、取り扱いが比較的容易である。
反応時間は6〜150時間であってもよく、6〜18時間がより好ましい。酸素は、酸素源、例えば純酸素として、若しくは空気中の分子酸素、又は水、或いはフラン酸化酵素の要件に依存する異なる酸素源から反応培地中の細胞に供給されるのが好ましい。空気は、分子酸素の供給源として都合よく使用することができる。
リアクターは、任意の適切な(通気型)バイオリアクターであり得る。リアクターは、連続的にバッチで操作することができ、供給型バッチで操作することができるのが好ましい。
本発明の方法は、FDCA又はHMFCAなどの本方法で生産された酸化生成物(複数可)を回収するステップを含むのがさらに好ましい。酸化生成物は、酸化ステップを行なう細胞をインキュベートする培地から回収されるのが好ましい。FDCA、HMFCAなどの酸化生成物は、例えば、(酸)沈殿、その後の冷却結晶化、及び結晶化した酸化生成物、例えば、結晶化FDCAの分離によって、反応混合物又は培地から回収され得る。しかし、他の回収方法、例えば、当技術分野で知られている、酸沈澱及び溶媒抽出も適切である。
フラン化合物を酸化させる本発明の方法は、供給原料からフラン化合物を除去するために有利に適用することができるが、この場合、フラン化合物は、例えば、バイオ燃料及びバイオケミカルズの生産用の発酵用供給原料に対して不都合であると考えられる。フラン化合物を酸化させる方法は、FDCAがポリエステルPETのPTAに置き換えられ、その場合、ベイオベースのポリエチレンフランジカルボキシラート(PEF)を得ることができる、ポリエステル(プラスチック)を生産するためのモノマー前駆体としてFDCAのバイオ生産に適用されるのがより好ましい。FDCAはまた、例えば、コハク酸の生産用の基質として、2,5−ビス(アミノメチル)−テトラヒドロフラン、2,5−ジヒドロキシメチル−テトラヒドロフラン、2,5−ジヒドロキシメチルフラン及び2,5−フランジカルバルデヒドを含む、基質として有用な様々な化合物に使用することができる。FDCAは、コーティングの生産において、例えば、アルキド樹脂及び熱可塑性コーティングにおいて使用することができる。またこれは、バイオ燃料におけるキシレン等価物として、及び溶媒として使用することができる。FDCAはエステル化されていてもよく、エステルは可塑剤として使用することができる。FDCAは、PET様ポリエステル及びポリウレタンに使用され得るそのジオールに変換され得る。さらに、FDCAはそのジアミンに変換させることができ、ジアミンは鎖延長剤として使用することができ、またジアミンは、ポリウレタンの生産に使用することができるジイソシアネートに変換させることができる。
したがって、さらなる態様において、本発明は、a)上記の本発明の酸化方法においてFDCAモノマーを調製するステップ、及びb)a)で得られたFDCAモノマー(複数可)からポリマーを生産するステップとを含む、1つ若しくは複数、又は少なくとも2つのFDCAモノマーからポリマーを生産する方法に関する。ポリマーは、ポリエチレンフランジカルボキシラート(PEF)であることが好ましい。
なお別の態様において、本発明は、FDCAのフラン前駆体の1つ又は複数をFDCAに生物変換するための細胞、好ましくは本発明の細胞の使用であって、細胞が、本明細書において上記で定義されたHMFCAデヒドロゲナーゼを発現する細胞であるか、又はフラン化合物輸送能力を有し、本明細書において上記で定義されたHMFCAデヒドロゲナーゼ又はオキシダーゼ活性をさらに含むポリペプチドを発現する細胞である、細胞の使用に関する。FDCAに生物変換されるFDCAの少なくとも1つのフラン前駆体は、HMF、DHF、HMFCA、FFCA、及びDFFからなる群から選択されることが好ましく、そのうちHMFが最も好ましい。
HMFCAをFFCAに酸化させる能力を有するポリペプチド及びそのようなポリペプチドをコードしている核酸
さらなる態様において、本発明は、HMFCAデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドに関する。ポリペプチドは、HMFCAをFFCAに酸化させる能力を有するアルコールデヒドロゲナーゼであることが好ましい。HMFCAデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号1〜4のうちの少なくとも1つのアミノ酸配列と少なくとも69、69.4、70、71、72、73、73.9、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、84.5、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99、又は100%の配列同一性を有するが、それ以外は本明細書において上記で定義したとおりである、アミノ酸配列を含む又は当該アミノ酸配列からなるのが好ましい。ポリペプチドは、単離ポリペプチドであるのが好ましい。
本発明は、さらに
a)HMFCAデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドであって、配列番号1〜4のうちの少なくとも1つのアミノ酸配列と少なくとも69、69.4、70、71、72、73、73.9、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、84.5、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、又は当該アミノ酸配列からなるポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列;
b)配列番号22、23、57、及び58のうちの少なくとも1つに示されているヌクレオチド配列;
c)長さが10、15、20、30、50又は100ヌクレオチドである、(a)又は(b)で定義したヌクレオチド配列の断片;
d)遺伝子コードの縮重によりb)又はc)のヌクレオチド配列の配列と配列が異なるヌクレオチド配列;及び、
e)a)〜d)で定義したヌクレオチド配列の逆相補体であるヌクレオチド配列、
のうちの少なくとも1つを含む、核酸分子に関する。
本発明の別の態様は、本セクションにおいて上記のa)〜e)で定義したヌクレオチド配列を含む、クローニングベクター及び発現ベクターを含むベクターに関し、さもなければ、それらのベクターは、本明細書において上述したとおりである。
さらに別の態様において、本発明は、i)本セクションにおいて上記で定義したHMFCAデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチド、及びii)本セクションにおいて上記に定義した核酸分子、の少なくとも1つを含む細胞に関する。上記細胞は、本セクションにおいて上記のa)〜e)で定義したヌクレオチド配列を含む細胞、又は当該ヌクレオチド配列で形質転換された細胞、又はこのようなヌクレオチド配列を含むベクターであるのが好ましい。細胞は、単離細胞又は培養細胞であるのが好ましく、さもなければ、細胞は、本明細書において上記で記載したとおりであるのが好ましく、本細胞は、本明細書において上記で記載した1つ又は複数の遺伝的修飾を含むのが好ましい。本細胞は、上記で記載した方法、過程及び使用のいずれかにおいて適用することができる。
フランアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチド及びそのようなポリペプチドをコードしている核酸
さらなる態様において、本発明は、フランアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性、すなわちフランアルデヒドを対応するフランカルボン酸に酸化させるデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドに関する。フランアルデヒドデヒドロゲナーゼは、i)HMFをHMFCAに酸化させること、ii)DFFをFFCAに酸化させること、及びiii)FFCAをFDCAに酸化させることのうちの少なくとも1つの酸化させる能力を有することが好ましく、配列番号5及び6のうちの少なくとも1つのアミノ酸配列と少なくとも50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、70.9、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99又は100%の配列同一性を有するが、それ以外は本明細書において上記で定義したとおりであるアミノ酸配列を含む、又は当該アミノ酸配列からなるのが好ましい。ポリペプチドは単離ポリペプチドであるのが好ましい。
本発明は、さらに
a)フランアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドであって、配列番号5及び6のアミノ酸配列と少なくとも50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、70.9、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、又は当該アミノ酸配列からなるポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列;
b)配列番号24、25、及び59のうちの少なくとも1つに示されているヌクレオチド配列;
c)長さが10、15、20、30、50又は100ヌクレオチドである、(a)又は(b)で定義したヌクレオチド配列の断片;
d)遺伝子コードの縮重によりb)又はc)のヌクレオチド配列の配列と配列が異なるヌクレオチド配列;及び、
e)a)〜d)で定義したヌクレオチド配列の逆相補体であるヌクレオチド配列、
のうちの少なくとも1つを含む核酸分子に関する。
本発明の別の態様は、本セクションにおいて上記のa)〜e)で定義したヌクレオチド配列を含むが、それ以外は本明細書において上述したとおりである、クローニングベクター及び発現ベクターを含む、ベクターに関する。
さらに別の態様において、本発明は、i)本セクションにおいて上記で定義したフランアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチド、及びii)本セクションにおいて上記に定義した核酸分子、のうちの少なくとも1つを含む細胞に関する。本細胞は、本セクションにおいて上記のa)〜e)で定義したヌクレオチド配列若しくはこのようなヌクレオチド配列を含むベクター、を含む細胞、又はそれらで形質転換された細胞であるのが好ましい。本細胞は、単離細胞又は培養細胞であるのが好ましく、本細胞は、それ以外は本明細書において上記で記載したとおりであるのが好ましく、本細胞は、本明細書において上記で記載した1つ又は複数の遺伝的修飾を含むのが好ましい。本細胞は、上記で記載した方法、過程及び使用のいずれかにおいて適用することができる。
フランアルコール/アルデヒドオキシダーゼ活性を有するポリペプチド及びそのようなポリペプチドをコードしている核酸
さらなる態様において、本発明は、フランアルコール/アルデヒドオキシダーゼ活性を有するポリペプチドに関する。ポリペプチドは、そのような基を含むフラン化合物のC2及びC5位置でアルコール及びアルデヒド基を酸化させることができるオキシダーゼ活性であることが好ましい。したがって、ポリペプチドは、EC1.1及びEC1.2活性を有することが好ましい。フランオキシダーゼ活性を有するポリペプチドは、i)HMFをHMFCAに酸化させること;ii)HMFをDFFに酸化させること;iii)DFFをFFCAに酸化させること;iv)HMFCAをFFCAに酸化させること;及びv)FFCAをFDCAに酸化させることのうちの少なくとも1つの酸化させる能力を有することが好ましく、配列番号7〜9のうちの少なくとも1つのアミノ酸配列と少なくとも49.3、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、62.7、63、64、65、66、66.9、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99又は100%の配列同一性を有するが、それ以外は本明細書において上記で定義したとおりであるアミノ酸配列を含む、又は当該アミノ酸配列からなることが好ましい。ポリペプチドは、単離ポリペプチドであるのが好ましい。
本発明は、さらに
a)フランオキシダーゼ活性を有するポリペプチドであって、配列番号7〜9のアミノ酸配列と少なくとも49.3、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、62.7、63、64、65、66、66.9、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、又は当該アミノ酸配列からなるポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列;
b)配列番号26〜28に示されているヌクレオチド配列;
c)長さが10、15、20、30、50又は100ヌクレオチドである、(a)又は(b)で定義したヌクレオチド配列の断片;
d)遺伝子コードの縮重によりb)又はc)のヌクレオチド配列の配列と配列が異なるヌクレオチド配列;及び、
e)a)〜d)で定義したヌクレオチド配列の逆相補体であるヌクレオチド配列、
のうちの少なくとも1つを含む核酸分子に関する。
本発明の別の態様は、本セクションにおいて上記のa)〜e)で定義したヌクレオチド配列を含むが、それ以外は本明細書において上述したとおりである、クローニングベクター及び発現ベクターを含む、ベクターに関する。
さらに別の態様において、本発明は、i)本セクションにおいて上記で定義したフランオキシダーゼ活性を有するポリペプチド、及びii)本セクションにおいて上記に定義した核酸分子、のうちの少なくとも1つを含む細胞に関する。本細胞は、本セクションにおいて上記のa)〜e)で定義したヌクレオチド配列若しくはこのようなヌクレオチド配列を含むベクター、を含む細胞、又はそれらで形質転換された細胞であるのが好ましい。本細胞は、単離細胞又は培養細胞であるのが好ましく、本細胞は、それ以外は本明細書において上記で記載したとおりであるのが好ましく、本細胞は、本明細書において上記で記載した1つ又は複数の遺伝的修飾を含むのが好ましい。本細胞は、上記で記載した方法、過程及び使用のいずれかにおいて適用することができる。
FDCAの異化に関係するポリペプチド及び/又はHMF代謝の代替経路に関係するポリペプチド並びにそのようなポリペプチドをコードしている核酸
さらなる態様において、本発明は、FDCAを分解する能力を有するポリペプチドに関する。FDCAを分解する能力を有するポリペプチドは、FDCA脱炭酸モノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチド、FDCAデカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチド、FDCA脱炭酸デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチド、及びラクトナーゼ活性、すなわちFDCA脱炭酸に起因するラクトンを加水分解する能力を有するポリペプチドのうちの少なくとも1つである。
一実施形態において、ポリペプチドは、FDCA脱炭酸モノオキシゲナーゼ活性を有し、配列番号10及び11のうちの少なくとも1つのアミノ酸配列と少なくとも43.4、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、82.3、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99又は100%の配列同一性を有するが、それ以外は本明細書において上記で定義したとおりであるアミノ酸配列を含む、又は当該アミノ酸配列からなることが好ましい。ポリペプチドは、単離ポリペプチドであるのが好ましい。
本発明は、さらに
a)FDCA脱炭酸モノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドであって、配列番号10及び11のうちの少なくとも1つのアミノ酸配列と少なくとも43.4、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、82.3、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、又は当該アミノ酸配列からなるポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列;
b)配列番号29及び30のうちの少なくとも1つに示されているヌクレオチド配列;
c)長さが10、15、20、30、50又は100ヌクレオチドである、(a)又は(b)で定義したヌクレオチド配列の断片;
d)遺伝子コードの縮重によりb)又はc)のヌクレオチド配列の配列と配列が異なるヌクレオチド配列;及び、
e)a)〜d)で定義したヌクレオチド配列の逆相補体であるヌクレオチド配列、
のうちの少なくとも1つを含む核酸分子に関する。
本発明の別の態様は、本セクションにおいて上記のa)〜e)で定義したヌクレオチド配列を含むが、それ以外は本明細書において上述したとおりである、クローニングベクター及び発現ベクターを含む、ベクターに関する。
一実施形態において、ポリペプチドは、FDCAデカルボキシラーゼ活性を有し、配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも62.9、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99又は100%の配列同一性を有するが、それ以外は本明細書において上記で定義したとおりであるアミノ酸配列を含む、又は当該アミノ酸配列からなることが好ましい。ポリペプチドは、単離ポリペプチドであるのが好ましい。
本発明は、さらに
a)FDCAデカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドであって、配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも62.9、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、又は当該アミノ酸配列からなるポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列;
b)配列番号31に示されているヌクレオチド配列;
c)長さが10、15、20、30、50又は100ヌクレオチドである、(a)又は(b)で定義したヌクレオチド配列の断片;
d)遺伝子コードの縮重によりb)又はc)のヌクレオチド配列の配列と配列が異なるヌクレオチド配列;及び、
e)a)〜d)で定義したヌクレオチド配列の逆相補体であるヌクレオチド配列、
のうちの少なくとも1つを含む核酸分子に関する。
本発明の別の態様は、本セクションにおいて上記のa)〜e)で定義したヌクレオチド配列を含むが、それ以外は本明細書において上述したとおりである、クローニングベクター及び発現ベクターを含む、ベクターに関する。
一実施形態において、ポリペプチドは、FDCA脱炭酸デヒドロゲナーゼ活性を有し、配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも85、85.4、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99、又は100%の配列同一性を有するが、それ以外は本明細書において上記で定義したとおりであるアミノ酸配列を含む、又は当該アミノ酸配列からなることが好ましい。ポリペプチドは、単離ポリペプチドであるのが好ましい。
本発明は、さらに
a)FDCA脱炭酸デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドであって、配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも85、85.4、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、又は当該アミノ酸配列からなるポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列;
b)配列番号32に示されているヌクレオチド配列;
c)長さが10、15、20、30、50又は100ヌクレオチドである、(a)又は(b)で定義したヌクレオチド配列の断片;
d)遺伝子コードの縮重によりb)又はc)のヌクレオチド配列の配列と配列が異なるヌクレオチド配列;及び、
e)a)〜d)で定義したヌクレオチド配列の逆相補体であるヌクレオチド配列、
のうちの少なくとも1つを含む核酸分子に関する。
本発明の別の態様は、本セクションにおいて上記のa)〜e)で定義したヌクレオチド配列を含むが、それ以外は本明細書において上述したとおりである、クローニングベクター及び発現ベクターを含む、ベクターに関する。
一実施形態において、ポリペプチドは、ラクトナーゼ活性を有し、すなわちFDCA脱炭酸に起因するラクトンを加水分解する能力を有し、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも67.5、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99又は100%の配列同一性を有するが、それ以外は本明細書において上記で定義したとおりであるアミノ酸配列を含む、又は当該アミノ酸配列からなることが好ましい。ポリペプチドは、単離ポリペプチドであるのが好ましい。
本発明は、さらに
a)ラクトナーゼ活性を有するポリペプチドであって、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも67.5、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、又は当該アミノ酸配列からなるポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列;
b)配列番号33に示されているヌクレオチド配列;
c)長さが10、15、20、30、50又は100ヌクレオチドである、(a)又は(b)で定義したヌクレオチド配列の断片;
d)遺伝子コードの縮重によりb)又はc)のヌクレオチド配列の配列と配列が異なるヌクレオチド配列;及び、
e)a)〜d)で定義したヌクレオチド配列の逆相補体であるヌクレオチド配列、
のうちの少なくとも1つを含む核酸分子に関する。
本発明の別の態様は、本セクションにおいて上記のa)〜e)で定義したヌクレオチド配列を含むが、それ以外は本明細書において上述したとおりである、クローニングベクター及び発現ベクターを含む、ベクターに関する。
さらなる態様において、本発明は、代替経路がHMF及びFDCAの他のフラン前駆体からのFDCAの生産と競合する、HMF及びFDCAの他のフラン前駆体の代謝の内因性の代替経路に関係するポリペプチドに関する。1つのそのようなポリペプチドは、HMF及び/又はFFCAを対応するアルコールに還元することができるデヒドロゲナーゼ、例えば短鎖デヒドロゲナーゼである。ポリペプチドは、短鎖アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有することが好ましい。
一実施形態において、ポリペプチドは、短鎖アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有し、配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも73.6、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99、又は100%の配列同一性を有するが、それ以外は本明細書において上記で定義したとおりであるアミノ酸配列を含む、又は当該アミノ酸配列からなることが好ましい。ポリペプチドは、単離ポリペプチドであるのが好ましい。
本発明は、さらに
a)FDCA脱炭酸デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドであって、配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも73.6、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、又は当該アミノ酸配列からなるポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列;
b)配列番号34に示されているヌクレオチド配列;
c)長さが10、15、20、30、50又は100ヌクレオチドである、(a)又は(b)で定義したヌクレオチド配列の断片;
d)遺伝子コードの縮重によりb)又はc)のヌクレオチド配列の配列と配列が異なるヌクレオチド配列;及び、
e)a)〜d)で定義したヌクレオチド配列の逆相補体であるヌクレオチド配列、
のうちの少なくとも1つを含む核酸分子に関する。
本発明の別の態様は、本セクションにおいて上記のa)〜e)で定義したヌクレオチド配列を含むが、それ以外は本明細書において上述したとおりである、クローニングベクター及び発現ベクターを含む、ベクターに関する。
詳細には、不活化構築物が、本明細書において上記の標的コード配列周囲に又は隣接するゲノムDNA配列を含むことが好ましい、このセクションに記載される標的コード配列を不活化するための不活化構築物が、本発明に含まれる。
フラントランスポーターを有するポリペプチド及びそのようなポリペプチドをコードしている核酸
さらなる態様において、本発明は、本明細書において上記で定義したフラン化合物輸送能力を有するポリペプチドに関する。ポリペプチドは、フラン化合物を輸送する能力を有することが好ましく、配列番号16〜18のうちの少なくとも1つのアミノ酸配列と少なくとも69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、84.1、85、85.2、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99、又は100%の配列同一性を有するが、それ以外は本明細書において上記で定義したとおりであるアミノ酸配列を含む、又は当該アミノ酸配列からなることが好ましい。ポリペプチドは、単離ポリペプチドであるのが好ましい。
本発明は、さらに
a)フラン化合物輸送能力を有するポリペプチドであって、配列番号16〜18のうちの少なくとも1つのアミノ酸配列と少なくとも69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、84.1、85、85.2、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、又は当該アミノ酸配列からなるポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列;
b)配列番号35〜37に示されているヌクレオチド配列;
c)長さが10、15、20、30、50又は100ヌクレオチドである、(a)又は(b)で定義したヌクレオチド配列の断片;
d)遺伝子コードの縮重によりb)又はc)のヌクレオチド配列の配列と配列が異なるヌクレオチド配列;及び、
e)a)〜d)で定義したヌクレオチド配列の逆相補体であるヌクレオチド配列、
のうちの少なくとも1つを含む核酸分子に関する。
本発明の別の態様は、本セクションにおいて上記のa)〜e)で定義したヌクレオチド配列を含む、クローニングベクター及び発現ベクターを含むベクターに関し、さもなければ、それらのベクターは、本明細書において上述したとおりである。
さらに別の態様において、本発明は、i)本セクションにおいて上記で定義したフラン化合物輸送能力を有するポリペプチド、及びii)本セクションにおいて上記に定義した核酸分子、の少なくとも1つを含む細胞に関する。本細胞は、本セクションにおいて上記のa)〜e)で定義したヌクレオチド配列を含む細胞、又は当該ヌクレオチド配列で形質転換された細胞、又はこのようなヌクレオチド配列を含むベクターであるのが好ましい。本細胞は、単離細胞又は培養細胞であるのが好ましく、さもなければ、本細胞は、本明細書において上記で記載したとおりであるのが好ましく、本細胞は、本明細書において上記で記載した1つ又は複数の遺伝的修飾を含むのが好ましい。本細胞は、上記で記載した方法、過程及び使用のいずれかにおいて適用することができる。
調節因子フランアルデヒドデヒドロゲナーゼ又はオキシダーゼ活性を有するポリペプチド並びにそのようなポリペプチドをコードしている核酸
さらなる態様において、本発明は、本明細書において上記で定義した、フランの異化に関係する遺伝子の転写アクチベーターであるポリペプチドに関する。転写アクチベーターは、フランの異化に関係する少なくとも1つの遺伝子の転写を活性化する能力を有することが好ましく、配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも52.4、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99又は100%の配列同一性を有するが、それ以外は本明細書において上記で定義したとおりであるアミノ酸配列を含む、又は当該アミノ酸配列からなることが好ましい。ポリペプチドは、単離ポリペプチドであるのが好ましい。
本発明は、さらに
a)フランの異化に関係する少なくとも1つの遺伝子の転写を活性化する能力を有するポリペプチドであって、配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも52.4、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、95、96、97、98、99又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、又は当該アミノ酸配列からなるポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列;
b)配列番号38に示されているヌクレオチド配列;
c)長さが10、15、20、30、50又は100ヌクレオチドである、(a)又は(b)で定義したヌクレオチド配列の断片;
d)遺伝子コードの縮重によりb)又はc)のヌクレオチド配列の配列と配列が異なるヌクレオチド配列;及び、
e)a)〜d)で定義したヌクレオチド配列の逆相補体であるヌクレオチド配列、
のうちの少なくとも1つを含む核酸分子に関する。
本発明の別の態様は、本セクションにおいて上記のa)〜e)で定義したヌクレオチド配列を含むが、それ以外は本明細書において上述したとおりである、クローニングベクター及び発現ベクターを含む、ベクターに関する。
さらに別の態様において、本発明は、i)本セクションにおいて上記で定義したフランの異化に関係する少なくとも1つの遺伝子の転写を活性化する能力を有するポリペプチド、及びii)本セクションにおいて上記に定義した核酸分子、のうちの少なくとも1つを含む細胞に関する。本細胞は、本セクションにおいて上記のa)〜e)で定義したヌクレオチド配列若しくはこのようなヌクレオチド配列を含むベクター、を含む細胞、又はそれらで形質転換された細胞であるのが好ましい。本細胞は、単離細胞又は培養細胞であるのが好ましく、本細胞は、それ以外は本明細書において上記で記載したとおりであるのが好ましく、本細胞は、本明細書において上記で記載した1つ又は複数の遺伝的修飾を含むのが好ましい。本細胞は、上記で記載した方法、過程及び使用のいずれかにおいて適用することができる。
本明細書及びその特許請求の範囲において、動詞の「含む(to comprise)」及びその動詞の活用形は、その単語に続く項目が含まれるが、特に言及されていない項目も除外されないことを意味する、非限定的な意味で使用される。さらに、不定冠詞「1つの(「a」又は「an」)」の構成要素への言及は、構成要素の1つ、及び1つだけが存在することを状況が明白に要求しない限り、複数の構成要素が存在する可能性を排除するものではない。したがって、不定冠詞の「1つの(「a」)」又は「1つの(an)」は、通常、「少なくとも1つ」を意味する。
本明細書に引用されているすべての特許及び文献参照は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれるものとする。
以下の実施例は、単なる例示目的として提供されており、本発明の範囲を決して限定することを意図するものではない。
方法及び材料
培養技法
使用したミネラル塩培地は、以下の脱イオン水1L当たり(NH4)2SO4、5g;K2HPO4、1.55g;NaH2PO4・2H2O、0.85g;MgSO4.7H2O、0.5g;EDTA、15mg;ZnSO4・7H2O、4.5mg;CoCl2・6H2O、0.3mg;MnCl2・4H2O、1mg;CuSO4・5H2O、0.3mg;CaCl2・2H2O、4.5mg;FeSO4・7H2O、3mg;Na2MoO4・2H2O、0.4mg;H3BO3、1mg;KI、0.1mgを含んでいた。120℃で加熱滅菌及び冷却後、滅菌炭素源を添加した。グルコース溶液を、110℃で20分間個別に加熱滅菌し、他の炭素源は120℃で滅菌した。必要であれば、ミネラル塩培地にビタミンを補充した。
プレート用の培地(1.5%寒天)は、炭素源を表記の濃度で添加したミネラル塩培地を含んだ。
小規模回分培養を、100mlエルレンマイヤーフラスコ中、30℃で実施した。回分培養は、炭素源を補充した20mlミネラル塩培地を含んでいた。回分培養は、静止して、又は様々な実験に関して示される速度のロータリーシェーカーでインキュベートした。空気は、綿栓を介してフラスコ内に入ることができた。
作業容積1Lでの発酵器での真菌の回分培養を30℃で行い、攪拌速度を制御した。ミネラル塩培地からK2HPO4を省略した。pHは、4M NaOH又は4M H2SO4のいずれかによる滴定によって、必要なpH値で自動的に制御した。空気を1分間に最大1リットルの速度で供給した。
P.ブラジリアヌムのケモスタット培養もまた、発酵器において1リットルの作業容積で行った。0.1g/lの酵母抽出物を添加したことを除き、同じ培地を使用した。培養容器(1g/lのHMF)に、小規模回分培養からのP.ブラジリアヌムの事前培養物を接種した。バッチ毎に一晩インキュベートした後、培地リザーバーから所望の速度でポンピングを開始した。培地リザーバーでの炭素基質の濃度は1g/lであった。攪拌子の速度を調節することによって、液体中の酸素レベルを自動的に制御した。空気を1分間に最大1リットルの速度で供給した。
酵母株のケモスタット培養を、発酵器において1リットルの作業容積で行った。培養容器に、小規模回分培養からの酵母の事前培養物を接種した。バッチ毎に一晩インキュベートした後、培地リザーバーから所望の速度でポンピングを開始した。攪拌子の速度を調節することによって、液体中の酸素レベルを自動的に制御した。空気を1分間に最大1リットルの速度で供給した。
株
以下の株を使用した:サッカロミセス・セレビジエCEN.PK113−1A(MATalpha;his3D1;leu2−3_112;ura3−52;trp1−289;MAL2−8c;SUC2;Euroscarf No.30000B Orf 2463);ヤロウィア・リポリチカPo1g(Yeastern Biotech Co.Ltd.,www.yeastern.comから購入);クルイベロミセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)Ky−003、DSM70073(基準株、バターミルクからの単離体);大腸菌NEB 5−アルファ(New England Biolabs,www.neb.comから購入);シュードモナス・プチダS12(ATCC 700801);カプリアビダス・バシレンシスHMF14(Wierckx et al.,2010,Microb Biotechnol.3(3):336−43);ペニシリウム・ブラジリアヌムC1(実施例1に記述されるようにオランダの土壌から単離)。
分子クローニング
本明細書において使用した全ての分子クローニング技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th Edition Manual by Michael R.Green,Howard Hughes Medical Institute,University of Massachusetts Medical School;Joseph Sambrook,Peter MacCallum Cancer Institute,Melbourne,Australia.Cold Spring Harbour Laboratory Press,2012に記述される方法と類似又は同等である。
代謝物分析
培養試料の遠心分離及び/又は濾過によって得た上清を、HPLCによってフランに関して分析した。分析は、Agilent1100システムによって実施した。フラン化合物は、Zorbax eclipse XDB C8カラム(孔径80Å、180m2/g、25℃で作動)を使用して測定した。化合物を、ダイオードアレイ検出器を備えたThermoシステムで定量した。
使用した2つの溶離液は、12mM PO4緩衝液pH7(1.293g K2HPO4及び0.543g NaH2PO4/L)及びアセトニトリル(HPLC等級、Sigma E chromasolv)であった。流速を1.2mL/分に設定して、勾配の適用時間はスキームに従って8分であった:1)最初の3.5分間は5%アセトニトリル;2)アセトニトリルを40%アセトニトリルに達するように2.5分間で線形に増加させる;3)40%アセトニトリルの一定レベルで0.5分間;4)アセトニトリルを5%アセトニトリルに達するように0.5分間線形に減少させる;及び5)5%アセトニトリルの一定レベルで1分間。
様々なフラン化合物の保持時間及び波長を、以下の表20に示す。
上清中のグルコース濃度を、D−グルコースがグルコース−6−リン酸に酸化される際に形成されるNADPHの吸収を測定することによって、酵素的に(D−グルコースUV−試験、Boehringer Mannheim/R−Biopharm)決定した。上清を、分析前に最大102に希釈した。
上清中のエタノール濃度を、エタノールがアセトアルデヒドに酸化され、その後酢酸に酸化される際に形成されるNADHの吸収を測定することによって、酵素的に(エタノールUV−試験、Boehringer Mannheim/R−Biopharm)決定した。上清を、分析前に最大103に希釈した。
実施例1:ペニシリウム・ブラジリアヌム・バチスタの単離
低いpH値でHMFを使用して増殖する能力を有する真菌株を、オランダの土壌から濃縮して単離した。空気乾燥させた土壌1グラム量を、K2HPO4が省かれている液体ミネラル塩培地20mlを含む100mlエルレンマイヤーフラスコに入れた。培地のpHを、HCl溶液で滴定することによってpH=3に低下させた。最初のHMF濃度は1g/lであった。細菌の増殖を抑制するために、ナリジクス酸(20mg/l)を培地に含めた。フラスコを30℃で通気しながら静置してインキュベートした。2週間のインキュベーション後、濃縮培養物からの材料(1ml)を同じ初回組成を有する新しい培地に移した。この第2の培養物を、ミネラル塩培地及び0.5g/lのHMFを含む寒天プレートで画線培養した。プレートを30℃の通気下で10日間インキュベートした後に出現したコロニーを、生物が純粋になるまで同じ初回培地を有するプレートに再度画線培養した。ミネラル塩培地で生物を増殖させることによって、HMFを使用する増殖に関して単離体を試験した。液体20mlを含む100mlのエルレンマイヤーフラスコを使用して、単離体をこの培地中で1g/lのHMFの存在下又は非存在下のいずれかでインキュベートした。HMFを使用して良好な増殖を示す1つの特定の株をさらなる試験のために採取した。
生物を、Fungal Biodiversity Centre of CBS−KNAWで同定して特徴付けした。生物を麦芽エキス寒天中で、25℃の暗所で3日間培養した。DNAを、MoBio−UltraClean(商標)微生物DNA単離キットを使用してメーカーの使用説明書に従って抽出した。ITS領域を含む断片を、プライマーLS266(GCATTCCCAAACAACTCGACTC;配列番号39)及びV9G(TTACGTCCCTGCCCTTTGTA;配列番号40)を使用して増幅した(Gerrits van den Ende and de Hoog,1999,Studies in Mycology,43:151−162)。β−チューブリン遺伝子の一部の増幅は、プライマーBt2a(GGTAACCAAATCGGTGCTGCTTTC;配列番号41)及びBt2b(ACCCTCAGTGTAGTGACCCTTGGC;配列番号42)を使用して実施した(Glass and Donaldson,1995,Appl Environ Microbiol.61(4):1323−1330)。PCR断片の両方の鎖を、ABI Prism(登録商標)Big DyeTM Terminator v.3.0 Ready Reaction Cycleシークエンシングキットを使用してシークエンシングした。試料をABI PRISM 3700 Genetic Analyzerを使用して分析し、LaserGeneパッケージのプログラムSeqManによってフォワード及びリバース配列を使用して、コンティグをアセンブルした。相同性検索をNCBIヌクレオチドデータベース及びCBS−KNAWの内部データベースについて実施した。これは、単離体に関してペニシリウム・ブラジリアヌム・バチスタの基準株と100%のマッチを生じた。生物をペニシリウム・ブラジリアヌムC1と命名して、本明細書に記載するさらなる試験のために使用した。
HMFを別として、生物はまた、HMF−アルコール、HMFCA、FDCA、グルコース、フルクトース、スクロース、キシロース。デンプン、及びクエン酸を利用してミネラル塩培地で増殖した。
実施例2:低いpH値でのP.ブラジリアヌムの増殖の制限
P.ブラジリアヌムC1株を、初回pH=3の培地中で土壌をインキュベートすることによって単離した。しかし、増殖の間に、同様に純粋培養によるその後の回分実験の間にも培地のpHは変化する。増殖に関するpHの限界を確認するために、既定の増殖速度で一定の既定のpHを可能にするようにケモスタット培養を作動させた。増殖速度を0.08h−1に設定し、pHをpH=2.9に維持した。3回の異なる実験において、HMF、HMFCA、又はFDCAのいずれかを炭素源として使用した。3つの条件のそれぞれで定常状態において、生物は、自己を確立することができ;失敗は起こらなかった。培養容器中の3つのフランの濃度はいずれも、3回の試行のいずれにおいても検出限界未満であった。結果は、3より低いpH値で生物が増殖できることを示し、このことは低いpH値でのHMFからのFDCAの生産における望ましい特性である。さらに生物は、均一な懸濁液で増殖し、このことは株の有用性をさらに高めた。
実施例3:HMFの異化に関係する酵素をコードしているP.ブラジリアヌムC1遺伝子の同定
P.ブラジリアヌムC1のゲノムのシークエンシング及びアノテーション
P.ブラジリアヌムC1からDNAを単離して、Illumina HiSeq2500システムを使用するペアエンドシークエンシングのためにBase−Clear社に送付した。品質チェック、フィルタリング及びアダプターの除去後、リード配列をコンティグにアセンブルして連結し、スキャホルドに入れた。
ゲノムのアノテーションは、BaseClearアノテーションパイプラインを使用して実施し、これは構造のアノテーションに関するAugustus(Stanke and Waack,2003,Bioinformatics.19 Suppl 2:ii215−25)及び機能的アノテーションに関するProkka Prokaryotic Annotation system(http://vicbioinformatics.com)の組み合わせに基づいている。1組のペニシリウム種をアノテーションの参照として使用し、アノテーションは、rRNA、tRNA、シグナルペプチド、Pfamタンパク質ファミリー予測、細胞の局在、及び保存されたドメインに関する情報を含んだ。
HMF及びクエン酸で培養したP.ブラジリアヌムC1細胞のRNAシークエンシング
比較可能なRNAシークエンシングのための細胞を、2つの異なる炭素源でのケモスタット培養においてP.ブラジリアヌムC1細胞を増殖させることによって得た。増殖速度を0.1h−1に設定し、pHをpH=7に維持した。HMF又はクエン酸のいずれかを2g/lで炭素源として使用し、定常状態の状況を両方の場合について得た。ケモスタットに、P.ブラジリアヌムC1の事前培養物100mlを接種した。24時間後に供給ポンプを開始し、36時間後(定常状態)に、RNAアーゼフリーのEppendorfチューブ中、0℃、15000rpmで50秒間の遠心分離によって、細胞6mlを得た。上清を捨て、RNA安定化及び保存のためにRNAlater(登録商標)溶液1mlを沈降物に添加した。試料を手短にボルテックスミキサーで攪拌して、4℃で一晩保存後、−80℃のフリーザーに移した。
RNAシークエンシングは、Illumina HiSeq2500システムを使用するシングルエンドシークエンシングに基づいてBaseClear社が実施した。品質チェック、フィルタリング、及びトリミング後、リードを注釈付きゲノムに対して整列させた。このアライメントに基づいて、絶対発現値を計算し、次に遺伝子間及び試料間で正規化するために、正規化RPKM(Read per kilobase per million mapped read)発現測定を行った。2つの異なる試料を比較するために、統計学検定を実施して(KalのZ検定及びBaggerlyのβ−二項分布検定)、試料間の発現の差の有意性を割付した。
HMFの異化に関係する酵素をコードしているP.ブラジリアヌムC1遺伝子の同定
ゲノムのアノテーション及び公的データベースに対する遺伝子のBLAST検索、並びに差次的発現RNAシークエンシング結果に基づいて、P.ブラジリアヌムC1によるHMFの分解に関係する酵素のコード化に関係する候補遺伝子のリストが編集されている。
最初に、遺伝子(RNAseqデータからの)を、自動アノテーション(デヒドロゲナーゼ、モノオキシゲナーゼ等)によって予想される機能毎に分類した。第2に、遺伝子を、HMFでの増殖の際の絶対的発現レベル(RPKM値;遺伝子の長さで補正した転写物の量)によって分類した。上位100個の最も高度に発現された遺伝子にタグをつけた。第3に、遺伝子を、クエン酸での増殖と比較してHMFでの増殖の際の倍率変化によって分類した。上位100個の最も高度にアップレギュレートされた遺伝子にタグをつけた。第4に、絶対的発現レベル及び倍率変化の両方に関して高いスコアを有する遺伝子を選択した。第5に、機能(自動アノテーションによって予測される)に基づいてフィルターを適用した:予想されるHMF分解経路に関連し得る機能(表21を参照されたい)を選択して、明確に指定されないヒットを棄却した。最後に、HMF代謝に関係する実際の遺伝子であると予想される上位のヒット(hmfK1、hmfL1、hmfM、hmfN1、hmfO、hmfL2、hmfP1、及びhmfP2;表21を参照されたい)、及び中等度に高く発現若しくはアップレギュレートされたがHMF代謝の(おそらく代替)経路に関連する機能を予測している、さらに可能性がある関連ヒット(例えば、「古典的な」デカルボキシラーゼ及び脱炭酸デヒドロゲナーゼ;hmfP3、hmfK2、hmfL3、hmfL4、hmfN2、hmfQ、及びhmfU)に関してランキングを作成した。さらに、少数の「アクセサリ遺伝子」(輸送/調節)を選択した(hmfR、hmfT3、hmfT4、及びhmfT5)。
実施例4:P.ブラジリアヌムC1からの異種発現hmfK1を含むP.プチダS12によるFDCAの分解
上記のP.ブラジリアヌムC1 hmfK1遺伝子(サリチル酸1−モノオキシゲナーゼnahGと相同性を示す)を、P.プチダS12での発現のために選択した。この遺伝子によってコードされる酵素(EC1.14.13.1)は、FDCAを介してのHMFの分解において重要な役割を有し、FDCAに対して脱炭酸モノオキシゲナーゼとして作用すると予想された。この仮説を調べるために、遺伝子をP.プチダS12において発現させた。次に、FDCAの分解をP.ブラジリアヌムhmfK1遺伝子を含む株(P.プチダS12 ΔGCD;pBT’nahG_aldH/pjNNhmfT1)並びに空のベクターを含む対照株(P.プチダS12 ΔGCD;pBT’hmfH_aldH/pjNNhmfT1)によってモニターした。
P.プチダ形質転換体を、50mg/Lカナマイシン及び30mg/lゲンタマイシン及び156mg/LFDCA(1mM)を補充した10mlのMM+160mMグルコースを含む100ml振盪フラスコで一晩増殖させた。開始pHはおよそ7.0であると測定された。細胞を対数中期(OD600=約0.6)で採取して、洗浄し、160mMグルコース及び50mg/Lカナマイシン、30mg/Lゲンタマイシンを補充したMMに再懸濁させた。細胞懸濁液のアリコート(10ml)(CDWの0.84gに対応する)を、100mlエルレンマイヤーフラスコ中、1mMのFDCAと共にインキュベートし、FDCAを分析するため試料を一定間隔で得た。表22に示す結果は、P.ブラジリアヌムhmfK1によってコードされる酵素がFDCAの分解に関与することを明らかに証明する。
実施例5:増殖中のP.ブラジリアヌム培養物及び緩衝溶液中の細胞懸濁液でのHMFの代謝運命
P.ブラジリアヌムC1を、ミネラル塩培地及び0.5g/lのHMFと共に小規模回分培養で培養した。HMFの存在に対する初回反応として、生物は、HMF−アルコール及びHMFCAの両方を生産し、次いで3つ全ての化合物を分解した。この挙動は、いくつかの公知の生物によるHMFの分解を想起させる。FDCAは、そのような増殖中の培地において検出されなかった。
細胞全体によるHMFからのFDCAの形成を、確信を持って証明するために、緩衝溶液中の濃縮細胞懸濁液について実験を実施した。株を、0.5g/lの初回HMFを含む100mlのミネラル塩培地を含む500mlエルレンマイヤーフラスコ中で一晩培養した。培養物を遠心分離して、リン酸緩衝液(1.55g/lのK2HPO4及び0.85g/lのNaH2PO4・2H2O)で2回洗浄した。得られた沈降物を、HMFを含む同じ緩衝液10ml中に再懸濁させた。この緩衝液中のこれらの細胞を100mlエルレンマイヤーフラスコに入れて、ロータリーシェーカーにおいて400rpmで振盪させた。120分後、試料をこのインキュベーションから取り出して、HMF、HMF−OH、HMFCA、及びFDCAに関してHPLCによって分析した。
表23に示す結果は、HMFが経時的に分解され、HMF−OH及びHMFCAの両方が形成されたことを示す。最も重要なことに、FDCAは0.20mMの濃度に蓄積したことが示され、このことは、真菌P.ブラジリアヌムC1が当初のHMFからFDCAを生産できることを証明する。初回HMFを有しないブランクインキュベーションは、3つの中間化合物のいずれも蓄積しなかった。
実施例6:カプリアビダス・バシレンシスHMFCAオキシダーゼ及びアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子の異種発現に及ぼすS.セレビジエ及びK.マルキシアヌスによるHMFからのFDCAの生産
カプリアビダス・バシレンシスHMF14からのhmfH HMFオキシダーゼ及びアルデヒドデヒドロゲナーゼ(HMF/FFCAデヒドロゲナーゼ)をコードしている遺伝子は、既にP.プチダS12において機能的に発現されている(国際公開第2012/064195号)。しかし、P.プチダなどの細菌株は、低いpH範囲、例えばpH5より低い範囲では使用することができない。様々な理由から、pH5より遙かに低いpH値でFDCA生産のために微生物を使用することは有利であろう。したがって、本発明者らは、酵母S.セレビジエ及びK.マルキシアヌスを、HMFからFDCAを生産するように修飾して、低いpHで使用することができるか否かを調べた。この効果に対して、オキシダーゼ及びアルデヒドデヒドロゲナーゼをそれぞれコードしている2つのC.バシレンシス遺伝子を、S.セレビジエCEN.PK113−1A及びK.マルキシアヌスKy−003において発現させ、組換え株を、それらがHMFからFDCAを生産する能力に関して試験した。初回試験は中性pH及び回分培養で実施した。次に、組換え株を、様々なpH値のケモスタットで培養した。
酵母S.セレビジエ及びK.マルキシアヌスにおいてC.バシレンシスhmfH及びHMF/FFCAアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子を発現するための発現構築物を調製した。この発現構築物において、C.バシレンシスhmfH遺伝子はTEF1プロモーターから発現され、転写はCYC1ターミネーターによって終止し、C.バシレンシスHMF/FFCAアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子は、TDH3プロモーターから発現され、転写はTDH3ターミネーターによって終止する(配列番号43に記載のタンデム構築物)。発現構築物は、G418耐性マーカー、並びにS.セレビジエ及びK.マルキシアヌスURA3遺伝子座への染色体組み込みのためのURA3相同部位をさらに含む。
酵母株S.セレビジエCEN.PK及びK.マルキシアヌスKy−003を、標準的なGietz及びWoodsの「酢酸リチウム/一本鎖担体DNA/ポリエチレングリコール」法(2002,Methods in Enzymology,Volume 350,pages 87−96)を使用してこの構築物で形質転換し、形質転換体を、300μg/mlジェネティシン(G418)を含むYE寒天プレートで選択した。プレートのインキュベーションは、30℃で少なくとも3日間行った。形質転換体をコロニーPCRによってチェックした。酵素を発現するいくつかのクローンを得て、S.セレビジエCEN.PKクローン2及びK.マルキシアヌスKy−003クローン3をさらなる試験のために使用した。
親CEN.PK株並びにクローン2の回分培養を、1g/lのグルコース及び4mMのHMFを補充したミネラル塩培地中で実施した。タンデムクローン2の場合、G418(200μg/ml)を培地に添加した。インキュベーションを150rpmで振盪した。これらのインキュベーションから試料を採取して、HMF、HMF−OH、HMFCA、FFCA、及びFDCAに関してHPLCによって分析した。実験開始時の酵母細胞密度は、クローン2及び親株に関してそれぞれ、OD2.2及びOD4.1であった。表24に示す結果は、HMFからFFCA及びFDCAの両方を生産するクローン2の能力を明らかに証明する。
親Ky−003株並びにクローン3のバッチ培養を、1g/lのグルコース及び4mMのHMFを充填したミネラル塩培地で実施した。タンデムクローン3の場合、G418(200μg/ml)を培地に添加した。インキュベーションを150rpmで振盪した。これらのインキュベーションから試料を採取して、HMF、HMF−OH、HMFCA、FFCA、及びFDCAに関してHPLCによって分析した。実験開始時の酵母細胞密度は、クローン3及び親株に関してそれぞれ、OD2及びOD2.5であった。S.セレビジエCEN.PKクローン2について得られた結果と類似の結果が、K.マルキシアヌスKy−003クローン3についても得られ(データは示していない)、K.マルキシアヌスも同様に、HMFからFFCA及びFDCAの両方を生産することが可能であった。
次に、S.セレビジエ株CEN.PK及びCEN.PKクローン2を、希釈率0.08h
−1でケモスタット培養において培養した。K
2HPO
4を0.3g/lで使用し、0.2g/lの酵母抽出物を添加したことを除き、ミネラル塩培地を使用した。発酵容器中のpHを、NaOH(4M)及びH
2SO
4(4M)によってpH=4.0で自動的に制御し、液体中の酸素濃度を、これらの条件でのその最大溶解度の45%〜50%の間に維持した。必要であれば消泡剤(ストラクトール10%)を使用した。培地リザーバーに添加したグルコースの量は各実験において2g/lであった。第1の試行はグルコースを含んだがHMFを含まなかった。他の実験はグルコースに加えて培地リザーバーに0.5g/lのHMFを含んだ。それぞれの実験に関して、4倍容積の交換後に定常状態の状況が確立された。培地リザーバー及び発酵容器の液体中の実際の濃度(細胞の分離後)の両方を、グルコース、エタノール、HMF、HMF−OH、HMFCA、FFCA、及びFDCAに関して決定した。さらに、OD値を測定することによって、酵母バイオマスを推定した。結果を表25に示し、CEN.PKクローン2が、pH=4.0もの低いpHで増殖させた場合にHMFからFDCAを生産することができることを確認する。
実施例7:P.ブラジリアヌムhmfL1、hmfL2、及び/又はhmfN1遺伝子を発現するS.セレビジエCEN.PKによるHMFからFDCAの生産
P.ブラジリアヌムアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子hmfL1(配列番号57)及び/又はhmfL2(配列番号58)、並びにP.ブラジリアヌムアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子hmfN1(配列番号59)をコードしているコドン最適化ヌクレオチド配列を、S.セレビジエCEN.PK113−1Aにおいて発現させて、組換え株をHMFからFDCAを生産する能力に関して試験した。初回試験を中性pH及び回分培養で実施した。配列を、酵母での発現に関してコドン最適化した。
P.ブラジリアヌムhmfL1、hmfL2、及び/又はhmfN1遺伝子を発現するための発現ベクターを以下のように調製した。コドン最適化P.ブラジリアヌムhmfN1コード配列(配列番号60)を含む合成DNA断片を制限酵素XmaI及びSpeIによって処理して断片を生じ、これをXmaI及びSpeIによって処理した後、仔ウシ腸ホスファターゼ(CIP)による脱リン酸化を行った酵母/大腸菌シャトルベクターpTT2(配列番号61)においてクローニングした。コンピテント大腸菌のライゲーション及び形質転換後、得られた構築物(pTT2−hmfN1、配列番号62)を、配列番号63(hmfL1)によって表される合成DNA断片のレシピエントとして使用した。このため、両方のDNA分子(pTT2−hmfN1及びhmfL1コード配列を含む配列番号63のDNA断片)を制限酵素Asc1及びMluIによって処理した。次に、プラスミドをCIPで処理した。ライゲーション産物pTT2−hmfLN1−hmfL1(配列番号64)で大腸菌を形質転換した。hmfN1及びhmfL2を発現することができるプラスミドを生産するアプローチにおいて、プラスミドpTT2−hmfN1(配列番号62)及び配列番号65で表される合成DNA断片(hmfL2コード配列を含む)を、BsmBI及びAatIIと共にインキュベートした。次いで、プラスミドをCIPと共にインキュベートして、消化したhmfL2断片とライゲートして、pTT2−hmfN1−hmfL2(配列番号66)を生じた。pTT2−hmfLN1−hmfL1(配列番号64)及び合成DNA断片(配列番号65)を、BsmBI及びAatIIによって消化した。再度、プラスミドをCIPの後に制限酵素によって処理し、2つのDNA断片をライゲートし、pTT2−hmfN1−hmfL1−hmfL2(配列番号67)を生じた。pTT2−hmfL1は、pTT2−hmfLN1−hmfL1(配列番号64)を制限酵素SmaI及びPacIによって消化し、TDH3プロモーター及びアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子hmfN1を含む断片を切り出すことによって誘導された。得られた5’オーバーハングをDNAポリメラーゼI、ラージ(クレノウ)断片を使用して塞いだ。DNA断片をライゲートしてコンピテント大腸菌に形質転換し、pTT2−hmfL1(配列番号68)を得た。このプラスミドは、P.ブラジリアヌムhmfL1アルコールデヒドロゲナーゼのみの発現を可能にする。このプラスミドは、酵母において3つ全てのHMF形質転換P.プラジリアヌム酵素の同時発現を可能にする。S.セレビジエCEN.PKを、pTT2、pTT2−hmfN1−hmfL1−hmfL2、pTT2−hmfN1−hmfL1、及びpTT2−hmfL1によって形質転換した。各形質転換体についていくつかのクローンを得て、各形質転換体の1つのクローンをさらなる試験に使用した。
形質転換体のバッチ培養を、1g/lのグルコース及び3mMのHMFを補充したミネラル塩培地で実施した。ヒスチジン(100mg/L)及びウラシル(100mg/L)を培地に添加した。インキュベーションを150rpmで振盪した。試料をこれらのインキュベーションから採取して、HMF、HMF−OH、HMFCA、FFCA、及びFDCAに関してHPLCによって分析した。表26に示す結果は、pTT2で形質転換したCEN.PKがHMFからFFCA及びFDCAを生産することができないが、pTT2−hmfN1−hmfL1−hmfL2、pTT2−hmfN1−hmfL1、及びpTT2−hmfL1のそれぞれは、HMFからFFCA及びFDCAの両方を生産する能力をCEN.PK宿主細胞に付与することを明らかに証明する。
次に、S.セレビジエCEN.PK形質転換体CEN.PK/pTT2及びCEN.PK/pTT2−hmfN1−hmfL1を、実施例6で上述した同じ条件でケモスタット培養で培養した。表27に示す結果は、pTT2−hmfN1−hmfL1で形質転換したCEN.PKが、十分な酸素を提供される場合、HMFからFDCAを効率よく生産する能力を有することを明らかに証明する。
実施例8:HMFCAデヒドロゲナーゼをコードしているP.ブラジリアヌムからの遺伝子の異種発現によるY.リポリチカによるHMFからのFDCAの生産
ヤロウィア・リポリチカにおける発現に関して、P.ブラジリアヌムhmfL1コドン最適化コドン配列を、PCRによって鋳型DNAとしてpTT2−hmfN1−hmfL1から増幅し、オリゴヌクレオチドの3’末端にBamHIの制限部位及び5’末端に平滑末端を導入する。次に、PCR断片を、クローニング部位としてBamHI及びPmlIを使用してpYLEX1発現ベクター(Yeastern Biotech Co.Ltd.,www.yeastern.comから得た)においてクローニングし、大腸菌を形質転換した。陽性大腸菌クローンの同定後、P.ブラジリアヌムhmfL1遺伝子を担持するpYLEX1−hmfL1発現ベクターを、NotIによってベクターを直線化することによって、Y.リポリチカPolg株(同様にYeastern Biotech Co.Ltd.から得た)に組み込むために調製する。直線化ベクターを、酢酸リチウム形質転換プロトコール及び栄養素要求性マーカーとしてロイシンを使用してPolgに組み込む。形質転換体をhmfL1遺伝子の存在に関してPCRによってチェックする。
形質転換体の回分培養を、1g/lのグルコース及び4mMのHMFを補充したミネラル塩培地で実施した。インキュベーションを150rpmで振盪した。試料をこれらのインキュベーションから採取して、HMF、HMF−OH、HMFCA、FFCA、及びFDCAに関してHPLCによって分析した。表28に示す結果は、Y.リポリチカPolg株におけるP.ブラジリアヌムhmfL1の異種発現が、HMFからFDCAを生産する能力をこの酵母株に付与することを明らかに証明する。