JP2018516855A - 梗塞における閉塞した血管の再疎通のための方法で使用するためのadamts13を含む組成物 - Google Patents

梗塞における閉塞した血管の再疎通のための方法で使用するためのadamts13を含む組成物 Download PDF

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Abstract

梗塞を有する対象における閉塞した血管の再疎通のための方法及び組成物をここに提供する。その方法は、特定の投薬量及び梗塞検出後の特定の時間範囲で、治療有効量の単離ADAMTS13タンパク質を対象に投与する工程を含む。本明細書に記載するように、ADAMTS13は、安定な閉塞から長時間後に投与された場合でさえ、閉塞した血管を好都合に再疎通させ、さらに梗塞サイズを低減させる。従って、そのような方法及び組成物は、血管閉塞により生じた梗塞の治療に有用である。

Description

関連出願の相互参照
本願は、その開示の全てが本願に組み込まれる、2015年5月26日出願の米国仮特許出願第62/166,586号に基づく優先権を主張する。
梗塞を有する対象における閉塞した血管の再疎通のための方法及び組成物をここに提供する。その方法は、特定の投薬量及び梗塞検出後の特定の時間範囲で、治療有効量の単離ADAMTS13タンパク質を対象に投与する工程を含む。本明細書に記載するように、ADAMTS13は、安定な閉塞から長時間後に投与された場合でさえ、閉塞した血管を好都合に再疎通させ、さらに梗塞サイズを低減させる。従って、そのような方法及び組成物は、血管閉塞により生じる梗塞の治療に有用である。
梗塞は、十分な血液供給の喪失により生じる、器官に巨視的領域の壊死組織をもたらすプロセスである。動脈の供給は、ある障害物(例えば、血栓又は脂肪質のコレステロールの沈着)によって中から妨害され、或いは外傷によって機械的に圧縮され又は破裂され得る。梗塞は通常アテローム性動脈硬化に関連し、そこでアテローム性プラークが破裂し、血栓が表面上に形成し、それが血流を塞ぎ及び時には下流の他の血管を塞ぐ塞栓を形成する。消化管(gut)の一部がヘルニアになり又は捻転した場合のように、場合によっては、梗塞は血液供給の機械的妨害を含む。
梗塞は通常、出血の量によって2つのタイプに分けることができる:1つ目のタイプは貧血性梗塞であり、心臓、脾臓、及び腎臓のような実質臓器(solid organs)に影響を及ぼす。その閉塞は最も多くは血小板からなり、臓器は白く又は青白くなる。2つ目は、出血性梗塞であり、例えば、肺、脳等に影響を及ぼす。その閉塞はより多くの赤血球細胞及びフィブリンストランドからなる。
梗塞における臓器傷害の重篤でかつ不可逆的な性質のため、梗塞のレベル及び程度を低減する新規かつ有効な方法に対する明確な必要性が存在する。
本明細書は、梗塞を有する対象において閉塞した血管を再疎通する方法を提供する。その方法は、特定の投薬量及び梗塞検出後の特定の時間範囲で、治療有効量の単離ADAMTS13タンパク質を対象に投与する工程を含む。本明細書に記載するように、ADAMTS13は、安定な閉塞から長時間後に投与された場合でさえ、閉塞した血管を好都合に再疎通させ、さらに梗塞サイズを低減させる。従って、そのような方法及び組成物は、血管閉塞により生じる梗塞の治療に有用である。例示的な実施形態において、梗塞は脳梗塞である。
1つの態様では、梗塞を有する対象における閉塞した血管の再疎通のための方法をここに提供する。その方法は、治療有効量の単離ADAMTS13タンパク質を含む医薬組成物を対象に投与する工程を含み、それにより閉塞した血管を再疎通させる。この方法において、医薬組成物は、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1,000、1,250、1,500、1,750、又は2,000U/kgの用量で対象に投与される。例示的な実施形態において、梗塞は脳梗塞である。
第2の態様では、梗塞を有する対象における閉塞した血管の再疎通の方法をここに提供する。この方法は、治療有効量の単離ADAMTS13タンパク質を含む医薬組成物を対象に投与する工程を含み、それにより閉塞した血管を再疎通させる。この方法において、医薬組成物は、梗塞検出の15、30、60、90、120、180、210、240、270又は300分以内に対象に投与される。例示的な実施形態において、梗塞は脳梗塞である。
第3の態様では、対象における閉塞した血管の再疎通により、対象において梗塞を治療する方法をここに提供する。その方法は、治療有効量の単離ADAMTS13タンパク質を含む医薬組成物を対象に投与する工程を含み、それにより梗塞を治療する。そのような方法において、医薬組成物は、約40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1,000、1,250、1,500、1,750、又は2,000U/kgの用量で対象に投与される。例示的な実施形態において、梗塞は脳梗塞である。
第4の態様では、対象における閉塞した血管の再疎通により、対象において梗塞を治療する方法をここに提供する。その方法は、治療有効量の単離ADAMTS13タンパク質を含む医薬組成物を対象に投与する工程を含み、それにより梗塞を治療する。この方法において、医薬組成物は、梗塞検出の15、30、60、90、120、180、210、240、270又は300分以内に対象に投与される。例示的な実施形態において、梗塞は脳梗塞である。
上記の方法のある実施形態において、医薬組成物は、約40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1,000、1,250、1,500、1,750、又は2,000U/kgの用量で、梗塞検出の15、30、60、90、120、180、210、240、270又は300分以内に対象に投与される。
第5の態様では、梗塞を有する対象における閉塞した血管の再疎通の方法をここに提供する。その方法は、治療有効量の単離ADAMTS13タンパク質を含む医薬組成物を対象に投与する工程を含み、それにより閉塞した血管を再疎通させる。この方法において、医薬組成物は、対象におけるADAMTS13タンパク質のレベルを、投与前の対象におけるADAMTS13タンパク質のレベルの1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、又は20倍に増加させる量で対象に投与される。この方法のある実施形態において、医薬組成物は、梗塞検出の15、30、60、90、120、180、210、240、270又は300分以内に対象に投与される。例示的な実施形態において、梗塞は脳梗塞である。
本発明の方法のある実施形態において、対象における局所脳血流量は、治療有効量の単離ADAMTS13タンパク質を含む組成物を投与されていない対照と比較して、少なくとも25%まで改善される。ここに提供される方法のある実施形態において、局所脳血流量は、対照における局所脳血流量と比較して少なくとも50%改善される。ここに提供される方法のある実施形態において、局所脳血流量は、対照における局所脳血流量と比較して少なくとも75%改善される。
例示的な実施形態において、単離ADAMTS13タンパク質はグリコシル化されている。ある実施形態において、単離ADAMTS13タンパク質は、1時間より長い血漿中半減期を有する。ある実施形態では、単離ADAMTS13タンパク質は、HEK293細胞により組換え技術で生成される。ある実施形態では、単離ADAMTS13タンパク質は、CHO細胞により組換え技術で生成される。
ここに提供される方法の例示的な実施形態において、医薬組成物は、複数回、又は連続注入によって、投与される。ある実施形態では、その投与は、医薬組成物を投与されていない対照における出血のレベルと比較して、出血のレベルを増加させない。ある実施形態において、その投与は梗塞体積を低減する。
ある実施形態において、梗塞体積は、治療有効量の単離ADAMTS13タンパク質を含む組成物を投与されていない対照における梗塞体積と比較して、少なくとも50%低減される。
第6の態様では、脳梗塞を経験した対象において、感覚運動機能の回復を改善する方法をここに提供する。この方法は、治療有効量の単離ADAMTS13タンパク質を含む医薬組成物を対象に投与する工程を含み、その対象における局所脳血流量は、対照における局所脳血流量と比較して少なくとも25%まで改善される。
右中大脳動脈(MCA)のFeCl誘発血栓性閉塞:(A)露出された右側頭骨の25倍の拡大図。局所的な小開頭により、右MCAを露出させ、MCAの走行をブレグマを越えて追跡し、レーザードップラーフロー(LDF)プローブを用いて血流をモニタリングする。 図1−1の続き。(B)MCAの血栓性閉塞は、20%FeClを染み込ませた小さな濾紙をMCA上に4分間、局所適用することにより誘発する。(C)FeClの適用は、ベースライン値の25%未満まで、rCBFの急激な低下をもたらす。(D)傷害のタイプによって、小さな(閾値傷害)又は大きな(強い傷害)白い血小板に富む血塊(white platelet rich clot)が形成される。 ADAMTS13はMCAにおける血栓安定性の決定因子である。DAMTS13 KO及び野生型(WT)動物の両方のMCAにおいてFeCl誘発傷害を誘発し、MCAの血栓性閉塞を生じさせる。(A)ADAMTS13の不在は、MCAのより速い閉塞をもたらす。最初の閉塞までの時間は、FeCl適用後rCBFが25%未満に低下するまでの時間として定義した。(B)閉塞血栓の自然溶解がADAMTS13の不在において損なわれた:閉塞後最初の再疎通までの時間は、DAMTS13 KOマウスと比較して、WTマウスにおいて有意に短かった。 図2−1の続き。(C−F)MCA領域のrCBFの代表的なレーザードップラーフローチャートは、DAMTS13 KOマウスとWTマウスとの間の再疎通プロファイルの明確な違いを示す。C及びDにおいて、WTマウスの2つの代表的なrCBFプロットを表わす。Cは、血流量がベースライン値まで急速に回復したプロットを表わし、一方、DはrCBFを徐々に回復する過程にある典型的なWTマウスを示す。 図2−2の続き。E及びFに示されている代表的なDAMTS13 KOマウスは、Eでは永続的に閉塞されたマウスを示し、Fでは再疎通はしているがベースライン値まで完全にはrCBFを回復できなかったマウスを示す(データは、13〜14匹のマウス/群からの結果を示す;*:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.005)。 rhADAMTS13の投与は、DAMTS13 KOマウスにおいて、MCAの再疎通を高め、及び脳を虚血性傷害から救う。MCAの血栓性閉塞を引き起こす閾値量のFeClの局所適用により、WT及びDAMTS13 KOマウスにおいて、閉塞性血栓を形成した。DAMTS13 KOマウスの一部に、rhADAMTS13(3500U/kg)を閉塞の5分後に投与した。閉塞後、rCBFをレーザードップラーフローメトリーによりモニターした。閉塞の24時間後、TTC染色により脳梗塞を決定した。(A)平均した閉塞後MCA血流プロファイルは、rCBFの回復が、WT動物と比較して、DAMTS13 KOマウスにおいて有意に損なわれたことを示す。rhADAMTS13の投与(矢印)は、rCBFをWTの値まで回復させた。(B)DAMTS13 KOマウス、WTマウス、及びrhADAMTS13を注射されたDAMTS13 KOマウスの代表的なTTC染色された脳スライス。 図3−1の続き。(C)閉塞の24時間後の梗塞サイズのスキャッチャードットプロット。DAMTS13 KOマウスの梗塞サイズは、WTマウスにみられる梗塞サイズよりも有意に大きかった。梗塞の5分後のrhADAMTS13でのDAMTS13 KOマウスの処置は、梗塞サイズを有意に低減した(n=10〜14マウス/群; *:p<0.05;**:p<0.01)。 rhADAMTS13は、WTマウスのMCAの血流を回復させることにより、永続的な血栓性MCA閉塞後の虚血性脳傷害に対する保護効果をもたらす。野生型(WT)C57/Bl6Jマウスの右MCAに対する重篤なFeCl誘発傷害を引き起こすことにより、閉塞し安定な血栓は自然溶解に耐性であった。閉塞の5分後に、様々な用量のrhADAMTS13を静脈投与し、rCBFを60分間モニターした。(A)MCAの血栓性閉塞の後、rhADAMTS13は、用量依存的にMCAのrCBFを回復させる。(B)25%、50%又は75%超までrCBFレベルを回復する動物の割合は、rhADAMTS13の用量と共に増加する。 図4−1の続き。(C)閉塞の24時間後に虚血性脳傷害を評価したとき、rhADAMTS13の量の増加に伴い、梗塞サイズの用量依存的減少が観察された。(D)ビヒクル又は最高用量のrhADAMTS13(3500U/kg)で処理したマウスから採取した3つの連続する冠状脳切片の代表的なTCC染色(ビヒクル及び3500U/kgのrhADAMTS13についてそれぞれn=9及び8マウス、より低い用量のrhADAMTS13についてn=5;*:p<0.05;***:p<0.005)。 閉塞の60分後の遅れたrhADAMTS13の投与は、MCAの血流を回復し、及び虚血性脳傷害を低減することができる。安定なMCA閉塞を誘発した60分後に、rhADAMTS13(3500U/kg)又はビヒクルのいずれかでマウスを処置した(矢印)。レーザードップラーフローメトリーでMCA領域のrCBFをモニターし、MCAの再疎通を評価した。(A)rhADAMTS13で処置したマウスにおいて、rCBFの有意な増加がみられた。(B)脳卒中の結果への影響を評価するため、TCC染色した脳切片において梗塞サイズを測定した。 図5−1の続き。(C)rhADAMTS13を投与されたマウスにおいて、血流の回復に応じて、脳梗塞のサイズが有意に減少した(各群においてn=8;*:p<0.05;***:p<0.005)。
定義
「再疎通」の語は、内腔の回復又は1つ以上の新規な脈管(channels)の形成による、閉塞後における血管内腔の回復を称する。「再疎通する」の語は、内腔の回復又は1つ以上の新規な脈管の形成によって、閉塞後に血管内腔が回復することを意味する。ここに記載されているある実施態様において、再疎通は、梗塞(例えば、脳梗塞)に関連する閉塞した血管に関係する。再疎通は、当業界で公知の任意の適切な方法を用いて決定できる。再疎通が閉塞した脳血管の再疎通である実施形態では、再疎通は、局所脳血流量(rCBF)の回復により決定される。
「局所脳血流量」及び「rCBF」は、所定時間内における脳の特定領域への血流の量を称する。局所脳血流量は、例えば、本明細書に記載されているレーザードップラーフローモニタリング技術を用いる等、当業界で公知の任意の適切な技術を用いて測定することができる。
「核酸」又は「ポリヌクレオチド」は、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)、及び一本鎖又は二本鎖のいずれかの形態のそれらのポリマーを意味する。特に限定されない限り、その語は、基準核酸と類似の結合特性を有し、及び天然ヌクレオチドと類似の様式で代謝される、天然ヌクレオチドの公知のアナログを含む核酸を包含する。指摘されない限り、特定の核酸配列は、明確に指示されている配列のみならず、保存的に修飾されたその変異体(例えば、縮重コドン置換(degenerate codon substitutions))、対立遺伝子、オルソログ、SNP及び相補配列も、暗黙に包含する。特に、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(又は全ての)コドンの3番目の位置が、混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成できる(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985); 及びRossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。核酸の語は、遺伝子、cDNA、及び遺伝子によりコードされるmRNAと交換可能に用いられる。
「遺伝子」の語は、ポリペプチド鎖を作成するのに関与するDNA断片を意味する。それは、目的のコードセグメント(エキソン)の間の介在配列(イントロン)の他に、コード領域に先行する及びその後に続く領域(リーダー及びトレイラー)を含み得る。
「アミノ酸」の語は、天然の及び合成のアミノ酸、並びに天然アミノ酸に類似する様式で機能するアミノ酸アナログ及びアミノ酸模倣物を意味する。天然アミノ酸は、遺伝コードによりコードされたものの他に、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸(γ-carboxyglutamate)、及びO−ホスホセリン等の、翻訳後修飾されたそれらアミノ酸もある。アミノ酸アナログは、天然アミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基及びR基に結合するα炭素を有する化合物(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム等)を意味する。そのようなアナログは、修飾R基(ノルロイシンなど)又は修飾ペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を維持する。「アミノ酸模倣物」は、アミノ酸の一般化学構造と違う構造を有するが、天然アミノ酸に似た様式で機能する化合物を意味する。
非天然アミノ酸誘導体又はアナログのポリペプチド鎖への部位特異的態様での組込みを可能にする様々な公知の方法がある(例えば、国際公開第02/086075号を参照)。
「保存的修飾変異体」は、アミノ酸及び核酸配列の両方に適用する。特定の核酸配列に関して、「保存的修飾変異体」は、同一の又は本質的に同一のアミノ酸配列をコードするそれら核酸、又は、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一の配列を意味する。遺伝コードの縮重のために、多くの機能的に同一の核酸が任意のあるタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUは全て、アミノ酸アラニンをコードする。よって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、コドンは、コードされたポリペプチドを変化させることなく記載される対応コドンのいずれかに変化され得る。そのような核酸変異は「サイレント変異」であり、これは保存的修飾変異体の1つの種である。ポリペプチドをコードする本明細書における全ての核酸配列はまた、核酸の全ての可能なサイレント変異を記載する。当業者は、核酸中の各コドン(AUG(これは通常、メチオニンに対する唯一のコドンである)及びTGG(これは通常、トリプトファンに対する唯一のコドンである)を除く)は修飾されて機能的に同一の分子をもたらすことができることを認識する。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載される配列のそれぞれに潜在している。
アミノ酸配列に関しては、当業者は、コードされる配列中の単一のアミノ酸又は数パーセントのアミノ酸を変化、付加又は欠失させる、核酸、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質配列への置換、欠失又は付加は、その変化があるアミノ酸の化学的に類似するアミノ酸との置換をもたらす場合、「保存的修飾変異体」であることを認識するであろう。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野においてよく知られている。そのような保存的修飾変異体は、本発明の多型変異体、種間ホモログ、及び対立遺伝子に追加され、及びそれらを排除しない。
下記8つの群はそれぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リシン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、スレオニン(T);及び
8)システイン(C)、メチオニン(M)
(例えば、Creighton, Proteins, W. H. Freeman and Co., N. Y. (1984)を参照)。
本出願において、アミノ酸残基は、非修飾野生型ポリペプチド配列において1に数えられる一番左の残基からの相対位置に基づき番号づけられる。
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書ではアミノ酸残基のポリマーを称するのに交換可能に用いられる。それら3つの語は、天然アミノ酸ポリマー及び非天然由来アミノ酸ポリマーのみならず、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマーにも適用する。本明細書で用いられる場合、その語は、アミノ酸残基が共有ペプチド結合によって連結している、完全長タンパク質を含む、任意の鎖長のアミノ酸鎖を包含する。
本明細書で用いられる「同一」又はパーセント「同一性」という語は、2つ以上のポリヌクレオチド又はアミノ酸配列について記載する場合、下記の配列比較アルゴリズムの1つを用いて或いは手動の整列及び目視検査によって測定して、比較ウィンドウ又は指定領域に亘り最大の一致となるように比較及び整列させたときに、同じであるか、又は特定の割合(%)の同じアミノ酸残基又はヌクレオチドを有する、2つ以上の配列又は部分配列に言及する(例えば、NRGインテグリン結合を担うコアアミノ酸配列は、例えば配列番号1のような基準配列(reference sequence)に対して、少なくとも80%の同一性を有し、好ましくは、少なくとも85%、90%、91%、92%、93、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する)。そのような配列は、「実質的に同一」とも言う。ポリヌクレオチド配列に関して、この定義は、試験配列の相補体にも言及する。好ましくは、同一性は、少なくとも約50アミノ酸又はヌクレオチド長の領域にわたり、或いはより好ましくは、75−100アミノ酸又はヌクレオチド長の領域にわたり、同一性が存在する。
配列比較のために、通常1つの配列が基準配列となり、それに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列及び基準配列をコンピューターに入力し、必要であれば部分配列座標(subsequence coordinates)を指定し、さらに配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトのプログラムパラメータを用いてもよく、或いは、別のパラメータを指定してもよい。その後、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づき、基準配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。核酸及びタンパク質の配列比較のために、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズム、並びに以下に記載のデフォルトパラメータを用いる。
2つの核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であることの指標は、以下に説明するように、第1の核酸によりコードされるポリペプチドが、第2の核酸によりコードされるポリペプチドに対して誘起された抗体と免疫学的に交差反応性であることである。従って、例えば、2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合、ポリペプチドは通常第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であることの別の指標は、下記において説明するように、2つの分子又はそれらの相補体が、ストリンジェントな条件下でお互いにハイブリダイズすることである。2つの核酸配列が実質的に同一であることのさらに別の指標は、同じプライマーを用いてその配列を増幅させることができることである。
「抗体」は、ある検体(抗原)に特異的に結合し及びそれを認識する、免疫グロブリン遺伝子により実質的にコードされているポリペプチド、又はその断片を意味する。認識されている免疫グロブリン遺伝子として、κ、λ、α、γ、δ、ε、及びμ定常領域遺伝子、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖はκ又はλのいずれかとして分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ、又はεとして分類され、それらはそれぞれ、免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを規定する。
本明細書で用いられる「有効量」の語は、ある物質が投与されて治療効果をもたらす量を意味する。その効果は、任意の検出可能な程度に、疾患/状態(例えば梗塞)及び関連する合併症の症状の予防、修正、又は阻害を含む。正確な量は、治療の目的に依存し、公知の技術を用いて当業者により確かめることができるであろう(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 1992); Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999); 及びPickar, Dosage Calculations (1999)を参照)。
本明細書で用いられる「治療する(treat)」及び「予防する」の語は、絶対的な語であることは意図されていない。治療は、発症の任意の遅延、症状の向上、患者生存性の改善、梗塞体積の減少、頻度又は重篤性の低減等を意味することができる。従って、「治療(treatment)」の語は、予防を含み得る。治療の効果は、例えば、治療を受けていない対象又は対象のプール、同じ患者における未処置組織、又は治療前の同じ対象のような、対照と比較することができる。
「生体試料」は、例えばバイオプシーのような患者から、動物モデルのような動物から、或いは、例えば細胞株又は患者から摘出し及び観察のため培養で増殖させた細胞のような培養細胞から、得ることができる。生体試料は、結腸直腸組織のような組織、或いは、血液、血液分画、リンパ、唾液、尿、糞便等の体液を含む。
1.閉塞した血管の再疎通のためのADAMTS13の使用
梗塞(例えば、脳梗塞)を有する対象において閉塞した血管の再疎通のための方法を本明細書において提供する。本明細書に記載するように、本発明者は、ADAMTS13(A Disintegrin-like And Metalloprotease with Thrombospondin type I motif No. 13)が、不十分な血液供給のせいで組織が壊死するプロセスである梗塞を有する対象において、血流を回復し(即ち、再疎通)、及び梗塞サイズを低減できることを見出した。ADAMTS13は、用量依存的にその効果を都合よく発揮し、それら効果は、血管閉塞の長時間後でさえみられる。
本発明の方法は、特定の投薬量及び梗塞検出後の特定の時間範囲で、治療有効量の単離ADAMTS13タンパク質を対象に投与する工程を含む。
本発明の方法は、血管閉塞により生じた任意の梗塞を治療するのに適している。そのような梗塞として、限定はされないが、心筋梗塞、脳梗塞、肺梗塞、脾梗塞、肢梗塞(limb infarction)、骨梗塞、精巣梗塞、及び眼梗塞(eye infarction)が挙げられる。
例示的な実施形態において、本発明の方法は、脳梗塞を有する対象における閉塞した血管の再疎通のためのものである。「脳梗塞」は、脳組織の死をもたらす脳に血液を供給する血管の閉塞により生じる虚血性脳卒中の種類を意味する。脳梗塞の症状は、冒された脳の部分により決定される。例えば、一次運動野における梗塞は、対側片麻痺を生じ得る。脳幹梗塞は、ワレンベルグ(Wallenberg)症候群、ウェーバー(Weber)症候群、ミヤール・ギュブレル(Millard-Gubler)症候群、及びベネディクト(Benedikt)症候群を含む脳幹症候群を生じる。
閉塞した血管の再疎通は、任意の適切な技術を用いて測定できる。例えば、対照ベースライン値(例えば、閉塞した血管も梗塞も有しない対照個体の血流量)と比較した血流量の割合(%)として測定できる。例えば、フレームツーフレーム解析(frame-to-frame analysis)を用いるビデオ毛細血管顕微鏡(videocapillary microscoping)、又はドップラー流速計技術を使用して、血流量を測定することができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Stucker et al. Microvascular Research 52(2): 188-192 (1996)を参照。ある実施形態において、本発明の方法は、対照ベースライン値(例えば、閉塞した血管も梗塞も有しない対照個体の血流量)と比較して、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%まで血流量を増加させる。
特定の動作原理に束縛されることなく、ADAMTS13による閉塞した血管の再疎通は梗塞体積を低減させると考えられる。ある実施形態において、ADAMTS13の投与は、ADAMTS13を投与されていない対照の梗塞体積の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%、対象における梗塞体積を減らす。
本発明の方法の特徴を下記にてより詳細に説明する。
A.ADAMTS13
本明細書において提供される本発明の方法は、治療有効量の単離ADAMTS13タンパク質を含む医薬組成物を、梗塞(例えば脳梗塞)を有する個体に投与する工程を含む。ADAMTS13(A Disintegrin-like And Metalloprotease with Thrombospondin type I motif No. 13)は、主に肝臓によって生成される190kDaのグリコシル化タンパク質である。ADAMTS13は、1605位のチロシンと1606位のメチオニンとの間でVWFを切断し、VWF多重体を、それ自体他のペプチダーゼによりさらに分解されるより小さな単位に分解する血漿メタロプロテアーゼである。
本明細書で用いられる「ADAMTS13」は、ADAMTS13の生物活性誘導体を含む。ここで用いられる「生物活性誘導体」の語は、特にその能力において、ADAMTS13と実質的に同じ生物学的機能を有する任意のポリペプチドを意味する。生物活性誘導体のポリペプチド配列は、その不在、存在及び/又は置換がポリペプチドの生物活性に実質的な負の影響を何ら及ぼさない、1つ以上のアミノ酸の欠失、付加及び/又は置換を含んでいてよい。そのポリペプチドの生物活性は、例えば、内皮又は内皮下層への血小板接着の低減又は遅延、フローチャンバーでの血小板凝集の低減又は遅延、血小板ストリング(platelet strings)の形成の低減又は遅延、血栓形成の低減又は遅延、血栓成長の低減又は遅延、血管閉塞の低減又は遅延、VWFのタンパク質分解性の切断、及び/又は本出願の実施例に記載されているものに類似する実験系における梗塞体積の低減によって、測定することができる。
「ADAMTS13」及び「生物活性誘導体」の語はそれぞれ、天然ポリペプチド及び組換えDNA技術により得られたポリペプチドを含む。例えば組換えヒトADAMTS13(「r−hu−ADAMTS13」)等の組換えADAMTS13(「rADAMTS13」、は、当業界で公知の任意の方法により作成できる。1つの具体的な例は、組換えADAMTS13を作成する方法に関して、国際公開第02/42441号に開示されている。これは、(i)遺伝子操作、例えばRNAの逆転写及び/又はDNAの増幅等による、組換えDNAの作成、(ii)トランスフェクションにより、即ち、エレクトロポレーション又はマイクロインジェクションにより、原核細胞又は真核細胞に組換えDNAを導入する、(iii)前記形質転換細胞を、例えば、連続又はバッチ式の方法で培養する、(iv)例えば、構成的に又は誘導により、ADAMTS13を発現させる、及び(vi)例えば、陰イオン交換クロマトグラフィ又はアフィニティクロマトグラフィにより、実質的に精製された組換えADAMTS13を得るために、(v)例えば、培養液から、又は形質転換細胞を採取することにより、ADAMTS13を単離する。「生物活性誘導体」の語は、例えば、哺乳類、特にヒト、の循環系中のADAMTS13の半減期のような、生物学的/薬理学的特性を改善するために、免疫グロブリン分子(Ig)と組み合わせたADAMTS13(又はその生物活性誘導体)のような、キメラ分子も含む。Igは、随意的に変異されたFc受容体に結合する部位を有していてもよい。
rADAMTS13は、薬理学的に有効なADAMTS13分子を生成することにより特徴づけられる適切な原核又は真核宿主系における発現により作成することができる。真核細胞の例は、CHO、COS、HEK 293、BHK、SK−Hep、及びHepG2のような、哺乳類細胞である。本発明に従いADAMTS13を作成又は単離するのに用いられる試薬又は条件に特定の制限はなく、当業界で公知の又は市販されている任意の系を用いることができる。本発明の1つの実施形態では、rADAMTS13は、最新技術に記載されている方法により得られる。ある実施形態において、ADAMTS13はヒトADAMTS13である。ある実施形態では、ADAMTS13はブタのADAMTS13である。
多種多様なベクターをrADAMTS13の調製に用いることができ、原核生物及び真核生物発現ベクターから選択することができる。原核生物での発現のためのベクターの例示として、pRSET、pET、pBAD等のプラスミドが挙げられ、それら原核生物発現ベクターで用いられるプロモーターとして、lac、trc、trp、recA、araBAD等が挙げられる。真核生物発現のためのベクターの例示として:(i)酵母での発現のための、pAO、pPIC、pYES、pMETのようなベクター(AOX1、GAP、GAL1、AUG1等のプロモーターを用いる);(ii)昆虫細胞での発現のための、pMT、pAc5、pIB、pMIB、pBAC等のようなベクター(PH、p10、MT、Ac5、OpIE2、gp64、polh等のプロモーターを用いる);並びに(iii)哺乳類細胞での発現のための、pSVL、pCMV、pRc/RSV、pcDNA3、pBPV等のようなベクター、及びワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、レトロウイルス等のウイルス系由来のベクター(CMV、SV40、EF−1、UbC、RSV、ADV、BPV、及びβ−actin等のプロモーターを用いる)が挙げられる。
B.医薬組成物
梗塞を有する対象における血管の再疎通に有用な医薬組成物もここに提供する。そのような組成物は、有効量のADAMTS13又はその生物活性誘導体を含む。
医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体及び/又は希釈剤を含んでいてよい。また、医薬組成物は、例えば治療される患者/対象によるADAMTS13の生成又は分泌を促進する薬剤、ADAMTS13の分解を阻害し、それによりその半減期を延長させる薬剤(或いは、ADAMTS13のグリコシル化した変異体)、(例えば、ADAMTS13に結合し、それにより活性化立体配座変化を誘導することにより)ADAMTS13の活性を増強する薬剤、或いは循環からのADAMTS13のクリアランスを阻害し、それにより血漿濃度を高める薬剤等の、1つ以上の追加の活性成分を含んでいてもよい。
本発明の組成物は、重症の疾患状態、すなわち、生命にかかわる又は潜在的に生命にかかわるような状況において使用できることに留意すべきである。そのような場合、副作用(例えば、出血、免疫系への作用)がないことから、実質的に過剰量の本発明の医薬組成物を投与することが可能であり、そうすることを治療する医師が望ましいと感じるであろう。
ある実施形態において、ADAMTS13又はその生物活性誘導体は、例えば治療される患者/対象によるADAMTS13の生成又は分泌を促進する薬剤、ADAMTS13の分解を阻害し、それによりその半減期を延長させる薬剤、(例えば、ADAMTS13に結合し、それにより活性化立体配座変化を誘導することにより)ADAMTS13の活性を増強する薬剤、或いは循環からのADAMTS13のクリアランスを阻害し、それにより血漿濃度を高める薬剤等の、1つ以上の追加の活性成分と共に投与される。共投与され得る別の成分として、血液希釈剤(例えば、アスピリン)、抗血小板薬、及びプラスミンを活性化してフィブリンを分解する血栓溶解性セリンプロテアーゼである組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)が挙げられる。
C.投与の用量及び時間
梗塞を有する対象に投与される医薬組成物は、閉塞した血管を再疎通するのに有効な量のADAMTS13タンパク質を含む。梗塞(例えば脳梗塞)を有する閉塞した血管を再疎通するのに有効な量は、例えば、0.1〜20mg/kg体重の範囲である。ある実施形態では、医薬組成物は、約40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1,000、1,250、1,500、1,600、1,750、2,000、3000、3500、5000、6000、7000、8000、又は10,000U/kg体重の用量で、対象に投与される。
ある実施形態において、対象に投与されるADAMTS13タンパク質の量は、対照(例えば、投与前の対象におけるADAMTS13の量)と比較した、対象におけるADAMTS13タンパク質の量の増加として計算される。ある実施形態において、ADAMTS13タンパク質は、対象におけるADAMTS13タンパク質のレベルを、その対象における投与前のADAMTS13タンパク質のレベルの1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、又は20倍に増加させる量で対象に投与される。ある実施形態では、ADAMTS13タンパク質は、ADAMTS13タンパク質のレベルを、投与前のその対象におけるADAMTS13タンパク質のレベルより、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%増加させる量で対象に投与される。
用量は、ADAMTS13が、予防的に(例えば、反復投与で)投与されるか、或いは梗塞の悪影響を迅速に低減するために医学的緊急事態に対応して投与されるかによって決定してもよい。
投与経路は、特別な制限はなく、例えば、皮下、動脈内、又は静脈内であってよい。ADAMTS13の経口投与も可能である。
ADAMTS13タンパク質は、予防及び/又は治療目的のために、哺乳類、特にヒト、に投与することができる。ある実施形態において、本発明は、出血の可能性を高めたり末梢免疫系を無効にしたりすることなく、血管閉塞の悪影響を低減するのに使用することができる。ある実施形態では、ADAMTS13は、例えば血管閉塞のリスクを有する対象に、予防的に投与される。そのような場合、予防的処置は通常、例えば最初の梗塞事象後の所定の期間のような、長期間にわたり低用量で繰り返される。
本発明に従い治療され得る対象の例示として、その重篤性は問わず、心臓発作、肺梗塞、又は脳卒中(例えば、脳梗塞)のような、梗塞を経験した対象が挙げられる。周辺組織への血液の損失により生じる組織損傷を低減するために、ADAMTS13タンパク質を梗塞後すぐに投与できれば、これは特にそうである。例えば病気又は血圧関連状態、外科的手術、或いは他の薬物治療の結果として、梗塞を経験するリクスのある対象にADAMTS13タンパク質を投与してもよい。
ADAMTS13タンパク質の治療的投与は、例えば再発を防ぐために、梗塞の最初の徴候が見られた時点で又は診断のすぐ後に、開始することができる。その後の期間、追加投与(boosting doses)を続けてもよい。慢性的に病に冒された対象において、長期間の治療を提供することができる。ある実施形態において、医薬組成物は、梗塞検出の15、30、60、90、120、180、210、240、270又は300分以内に対象に投与される。脳梗塞に関する症状は、組織損傷の領域により決定される。梗塞が一次運動野にある場合、対側片麻痺が生じると言われている。脳幹に局在性がある場合、ワレンベルグ症候群、ウェーバー症候群、ミヤール・ギュブレル症候群、ベネディクト症候群、又はその他のような脳幹症候群が典型的である。梗塞は、体の反対側における感覚の衰弱及び損失をもたらすであろう。頭部の身体診察は、反対側での異常な瞳孔拡張、対光反応、及び眼球運動損失を示すであろう。梗塞が左脳で生じた場合、言語が不明瞭になるであろう。反射も悪化し得る。本明細書に提供する実施例で説明するように、ADAMTS13タンパク質は、血管閉塞の長時間後でさえ、再疎通させ及び梗塞体積を低減することができる。ある実施形態では、再疎通は、対照(例えば、ADAMTS13を投与されていない対象)と比較したときに、梗塞体積の少なくとも10%、20%、30%、40%、又は50%の減少をもたらす。
本組成物及び方法を、以下の実施例においてさらに説明するが、それらに限定されない。
A.材料及び方法
マウス
全ての動物試験は、地元の倫理法及び倫理委員会(P081-2014 KU Leuven, Leuven, Belgium; act no. 87-848)、並びに実験動物の世話及び使用のガイドランに従い実施した。実験は、混合型のC57BL/6J及び129X1/SvJバックグラウンド77である8〜12週令の雄及び雌のADAMTS13 KO及びWTマウス、並びに8〜12週令の雄及び雌のC57BL/6Jマウスで実施した(ジャクソン研究所)。
MCAの血栓性閉塞
純酸素中の5%イソフランでマウスを深く麻酔し、定位固定フレームに置き、その後、外科的処置及び局所脳血流量(rCBF)のモニタリングのために2%イソフランで麻酔を維持した。麻酔の間、直腸プローブ及びマウスの下においたサーモスタット制御の温熱パッド(TC-1000 Temperature controller, CWE Inc., Ardmore, USA)により、マウスの体温を37℃に維持した。少し変更を加えて、以前説明したように、MCAにおける閉塞性血栓の形成により脳卒中を誘発した(Karatas et al., Journal of Cerebral Blood Flow and Metabolism 31: 1452-1460 (2011)を参照)。右目と鼻の間の皮膚切開により、側頭筋を切り取り、頭頂骨で小開頭を行い、右MCAを露出させる。20%FeCl(Sigma-Aldrich, St. Louis, USA)を染み込ませたワットマン濾紙の小片をMCA上の無傷の硬膜の表面に置いた(図1)。閾値MCA傷害のため、0.5x0.5mmの濾紙を用いた。強い傷害のために、濾紙の直径は0.5x1.5mmであった。4分後、濾紙を取り除き、適用部位のMCAを食塩水で洗浄し、残りのFeClを除去した。
MCA領域における局所脳血流量(rCBF)は、レーザードップラーフローモニタリング(moorVMS-LDF1; Moor Instruments; Devon, UK)により決定した。PowerLab 8/35データ収集装置(ADInstruments; Oxford, UK)を用いてrCBFの変化を記録し、LabChartソフトウェア(v8.0.5; ADInstruments; Oxford, UK)を用いて計算した。ベースラインrCBF(100%)を設定するため、MCA閉塞の誘発前10分間rCBFを連続して測定した。実験に応じて、閉塞後最大2時間まで、MCAの血栓性閉塞後rCBFをモニターした。閉塞までの時間は、最初のFeClの適用とrCBFがベースラインの25%未満に落ちる時点との間の時間として定義された。再疎通は、(60秒にわたり)平均したrCBFのベースラインの25%超への回復として定義された。
梗塞体積の測定
記載されているように脳梗塞体積を決定した(De Meyer et al., Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology 30, 1949-1951 (2010))。MCAの閉塞の24時間後にマウスを安楽死させた。脳を迅速に摘出し、マウス用ブレインスライスマトリクスを用いて、2mm厚の冠状断面に切った。スライスを、PBS中の2%2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライド(Sigma-Aldrich)で染色して、健康な組織及び染色されない梗塞を可視化した。処置条件を知らない実験者が、切断面を撮影し、Image Jソフトウェア(National Institutes of Health, Bethesda, MD; http://imagej.nih.gov/ij/)を用いて面積測定により梗塞領域(白)を解析した。
急性虚血性脳卒中患者からの血栓の染色
4%ホルマリンで血栓を一晩固定し、パラフィン中に包埋し、その後5μm厚のスライスに切った。各血栓の連続スライスを再水和させ、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E; Sigma-Aldrich (St. Louis; MO; USA))、マルチウス・スカーレット・ブルー(Martius Scarlet blue)(MSB)、又は抗VWF抗体(ウサギ抗ヒトVWF抗体(Dako A0082)、 ヘマトキシリンで対比染色される)のいずれかで染色した。
統計解析
全てのデータを平均±その平均の標準誤差として表した。GraphPad Prism(Version 6.Oc)を用いて統計解析を実施した。アンペアードスチューデントT検定(unpaired Student’s T-test)を用いて最初の閉塞/再疎通までの時間を解析した。スチューデントT検定、又はボンフェロニー多重比較検定(Bonferroni’s multiple comparison test)と共に一元配置ANOVA(one-way ANOVA)を、梗塞病変の統計的比較のため、及び適用できる場合rCBFを比較するために用いた。
B.実施例1:ADAMTS13の不在は、閉塞性血栓の形成を促進し、自然再疎通を損なう
血栓溶解におけるADAMTS13の効果を調べるため、ADAMTS13 KOマウス及びその野生型(WT)同腹子の両方において血栓性脳卒中を誘発した。第1の実験の組において、(20%FeClを染み込ませた0.5x0.5mmの濾紙を用いて)MCAに比較的小さな傷害を生じさせた。傷害を生じると、全てのWTマウスは、FeClの適用後10分以内にMCAに閉塞性血栓を生じた(図2A)。興味深いことに、ADAMTS13 KOマウスもMCAに閉塞性血栓を生じたが、WT動物と比較したときに、閉塞までの時間は有意に短かった(それぞれ、4.2分±0.5分対6.4分±0.5分、p<0.005;図2A)。これらデータは、ADAMTS13が、おそらく傷害の部位で(UL−)VWFの切断により成長する血栓を不安定にすることにより、MCAでの血栓形成を遅延させることができることを示す。一旦形成されると、閉塞性血栓は、ADAMTS13 KO及びWTマウスにおいて同程度まで、MCAの血流量を減らした(残りの血流量:それぞれ、ベースラインの13.4±1.4%対12.9±1.9%、p=0.86)。
興味深いことに、ADAMTS13 KOマウスにおいてMCAがより速く閉塞したのみならず、閾値傷害の後、ADAMTS13 KOマウスでは閉塞血栓の自然溶解が損なわれた。図2Bは、ベースラインの25%を超えるrCBFの回復に要する時間として定義される、最初の再疎通までの時間を示す。このモデルにおいて、WTマウスの大部分は、閉塞後1分以内のベースラインの25%を超える血流量の回復を以って、閉塞後迅速な自然再疎通を示した。一方、ADAMTS13 KOマウスでは、自然再疎通は、有意に遅く生じたか、或いは50分の実験時間枠内で再疎通は全く生じなかった。79%のWTマウス(14匹中11匹)は、1分未満で自然再疎通を示したが、15%(13匹中2匹)のADAMTS13 KOマウスしか同様の迅速な再疎通を示さなかった。さらに、WTマウスとADAMTS13 KOマウスとの間で、再疎通のパターンの明白な違いが観察された:最初の再疎通の後、WT型マウスの殆どにおいて安定な血流が再建された(図2C−D)が、ADAMTS13 KOマウスでは、再疎通の後、しばしば新たな血栓形成及び再閉塞が生じた(図2E−F)。
総じて、これらの結果は、ADAMTS13は動脈血栓安定性の決定因子であり、ADAMTS13が血栓性事象の間の良好な血管開放を守るのを助けることを示す。
C.実施例2:組換えADAMTS13は、ADAMTS13 KOマウスにおける不完全なMCA再疎通を立て直す
上記のデータは、ADAMTS13が血栓不安定化を促進し及び閉塞した血管の再疎通を向上させることができることを示唆する。この仮定をさらに調べるために、閾値FeCl誘発血栓性MCA閉塞の5分後に、rhADAMTS13(3500U/kg)の静脈注射でADAMTS13 KOマウスを処置した。rhADAMTS13の閉塞後の血栓溶解活性促進に続き、レーザードップラーフローメトリーによりrCBFを測定した。最初の閉塞後のいくつかの時点で平均血流量を計算して、経時的なrCBFの変化を定量化した(図3A)。予想通り、これらrCBFプロファイルは、ADAMTS13 KOマウスと比較して、WTマウスにおいてMCAの血流のかなり良好な回復を示し、閉塞後30分以降、統計学的に有意に至った。閉塞後50分で、rCBFは、ADAMTS13 KOマウスにおいて33%±10%までしか回復しなかったのに対して、WTマウスでは78%±18%に回復した(p<0.01)。興味深いことに、閉塞の5分後にADAMTS13 KOマウスにrhADAMTS13を投与したとき、損なわれた再疎通を立て直すことができ、WTマウスに類似するrCBFの効果的な回復をもたらした(図3A)。これらデータは、外因性のADAMTS13が、既存の血栓を不安定化することができ、それにより効果的な血栓溶解及び続く血管再疎通を促進することを示す。
D.実施例3:組換えADAMTS13を介したMCAの血流の回復は虚血性脳傷害に対してADAMTS13 KOマウスを保護する
次に、血流回復における観察された違いが、虚血性脳傷害への生理的影響を有するか否かを特定するために試験を実施した。従って、閉塞の24時間後にマウスの脳を分離し、TTCで切片を染色して脳梗塞を可視化した(図3B及び3C)。予測通り、WTマウスにおいて梗塞は比較的小さく、或いは存在しなかった(4.1mm±1.6mm)。ADAMTS13 KOマウスの乏しいMCA再疎通と合致して、それらマウスでの梗塞は有意に大きかった(11.9mm±1.9mm)。rhADAMTS13を投与されたADAMTS13KOマウスにおいて、梗塞体積は、WTマウスの値に類似する値まで有意に減少した(4.5mm±1.4mm)。従って、rhADAMTS13の投与によるMCAの血流の回復は、より大きな脳梗塞に発展することから脳を救う。
E.実施例4:組換えADAMTS13は、WTマウスにおいて永続的な血栓性閉塞を不安定化させる
上記の実験で用いた閾値傷害は、ADAMTS13 KOマウスとWTマウスとの間のADAMTS13に関連する違いをより詳細に分析することを可能にした。しかしながら、我々の血栓性脳卒中モデルにおける最初の血栓形成は、続く血栓不安定化に影響を及ぼし得るADAMTS13の有無により影響を受ける。より生理学的設定でrhADAMTS13の血栓溶解促進効果を試験するため、野生型C57/Bl6JマウスのMCAにおいて永続的な血栓性閉塞を誘発させた。これを達成するために、20%FeClを染み込ませたより大きな濾紙を用いて傷害の程度を調整した。結果として、MCAの損傷領域は有意に大きく、マウスMCAの永続的な血栓性閉塞を生じさせた(図1)。このモデルにおいて、MCA閉塞後少なくとも2時間の間に自然再疎通は全く観察されなかった。
このモデルを用いて、最初に、rhADAMTS13(3500U/kg)が閉塞開始の5分後に投与されたときにMCAの血流を向上させ得るか否かを決定するために試験を実施した。明らかに、この用量のrhADAMTS13は、注射後25分以内に75%超までrCBFを回復させることができた(閉塞の60分後にベースライン値の76.6%±15.9%;図4A)。ビヒクルの投与は、rCBFに全く影響を及ぼさなかった(閉塞の60分後にベースライン値の16.9%±2.3%)。次に、より低い用量のrhADAMTS13を用いて、このモデルでの最小有効用量を決定した。図5Aに示すように、用量依存的効果が見られた:1600U/kgは、閉塞の5分後に投与したときに、まだ有意にrCBFを改善した(閉塞の60分後にベースライン値の50.5%±13.6%)が、800U/kgは、血流量の限られた改善を示したのみであった(閉塞の60分後にベースライン値の33%±6%)。400U/kgの用量のrhADAMTS13は効果がなく、マウスの大部分において、rCBFは閉塞の60分後にベースライン値の25%超に回復しなかった(閉塞の60分後にベースライン値の23%±3.6%)。rCBFのモニタリングの最後に、個々のマウスについて再灌流の評価(grade)を決定した(図4B)。より少ない用量のrhADAMTS13(400U/kg及び800U/kg)はそれぞれ、5匹中1匹及び5匹中2匹のマウスにおいて、部分的な再灌流(rCBF:25%〜50%)を誘導したのみである。それぞれ5匹中2匹及び8匹中6匹のマウスにおいて50%超までrCBFを回復できたのは、より高い用量の1600U/kg及び3500U/kgのrhADMATS13のみであった。
重要なこととして、ADAMTS13による血流回復の用量依存的効果と合致して、同様の用量依存的反応が閉塞の24時間後の虚血性脳傷害において見られた(図4C及び4D)。実際に、400U/kgのrhADAMTSの投与は、ビヒクル処置と比較して、梗塞サイズに影響を及ぼさなかった(それぞれ、18.8mm±2.3mm対17.3mm±2.2mm)が、より高い用量の投与は、脳梗塞体積を低減させた。この防護効果は、最も高い2つの用量(1600U/kg及び3500U/kg)で統計的に有意であり、それぞれ、9.4mm±1.6mm及び5.3mm±1.7mmの梗塞体積であった。
F.実施例5:rhADAMTS13の遅い投与でも脳卒中の結果を改善する血栓溶解促進効果を発揮する
ADAMTS13の血栓溶解能力が臨床的により現実的なより広い時間枠においても有効であるか否かを評価するために、MCAの安定閉塞の1時間後にrhADAMTS13(3500U/kg)を静脈注射した。この長時間の血栓性閉塞の後でさえ、rhADAMTS13はまだ血栓を不安定化することができ、それによりMCAの開放を部分的に回復した(図5A)。この効果は早いrhADAMTS13投与よりも弱かったが、rCBFはrhADAMTS13注射の60分後にベールライン値の43.9%±11.7%まで回復した。再度、ビヒクルで処置した群において、rCBFは注射の60分後に18.2%±1.7%のままであった。この血流の部分的回復は、虚血発作(ischemic insult)から脳を部分的に救済するのにまだ十分であった。rhADAMTS13で処置されたマウスの梗塞1時間後の梗塞サイズは実際に、ビヒクルを投与されたマウスと比較して有意に減少した(それぞれ、11.3mm±1.6mm対18.8mm±2.9mm)。

Claims (19)

  1. 脳梗塞を有する対象において閉塞した血管を再疎通させる方法であって、治療有効量の単離ADAMTS13タンパク質を含む医薬組成物を前記対象に投与し、それにより閉塞した血管を再疎通させる工程を含み、前記医薬組成物は、約40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1,000、1,250、1,500、1,750、又は2,000U/kgの用量で前記対象に投与される、方法。
  2. 脳梗塞を有する対象において閉塞した血管を再疎通させる方法であって、治療有効量の単離ADAMTS13タンパク質を含む医薬組成物を前記対象に投与し、それにより閉塞した血管を再疎通させる工程を含み、前記医薬組成物は、梗塞検出の15、30、60、90、120、180、210、240、270又は300分以内に前記対象に投与される、方法。
  3. 対象において閉塞した血管を再疎通させることにより、対象において脳梗塞を治療する方法であって、治療有効量の単離ADAMTS13タンパク質を含む医薬組成物を前記対象に投与し、それにより脳梗塞を治療する工程を含み、前記医薬組成物は、約40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1,000、1,250、1,500、1,750、又は2,000U/kgの用量で前記対象に投与される、方法。
  4. 対象において閉塞した血管を再疎通させることにより、対象において脳梗塞を治療する方法であって、治療有効量の単離ADAMTS13タンパク質を含む医薬組成物を前記対象に投与し、それにより脳梗塞を治療する工程を含み、前記医薬組成物は、梗塞検出の15、30、60、90、120、180、210、240、270、又は300分以内に前記対象に投与される方法。
  5. 前記医薬組成物は、約40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1,000、1,250、1,500、1,750、又は2,000U/kgの用量で前記対象に投与され、かつ梗塞検出の15、30、60、90、120、180、210、240、270又は300分以内に前記対象に投与される、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
  6. 脳梗塞を有する対象において閉塞した血管を再疎通させる方法であって、治療有効量の単離ADAMTS13タンパク質を含む医薬組成物を前記対象に投与し、それにより閉塞した血管を再疎通させる工程を含み、前記医薬組成物は、前記対象におけるADAMTS13タンパク質のレベルを、投与前の前記対象におけるADAMTS13タンパク質のレベルの1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、又は20倍に増加させる量で前記対象に投与される、方法。
  7. 前記医薬組成物は、梗塞検出の15、30、60、90、120、180、210、240、270又は300分以内に前記対象に投与される、請求項6記載の方法。
  8. 前記対象における局所脳血流量は、脳梗塞を有しない対照と比較して、少なくとも25%まで改善される、請求項1から7いずれか1項記載の方法。
  9. 局所脳血流量は、前記対照における局所脳血流量と比較して、少なくとも50%まで改善される、請求項8記載の方法。
  10. 局所脳血流量は、前記対照における局所脳血流量と比較して、少なくとも75%まで改善される、請求項8記載の方法。
  11. 単離ADAMTS13タンパク質はグリコシル化されている、請求項1から10いずれか1項記載の方法。
  12. 単離ADAMTS13タンパク質は、1時間より長い血漿中半減期を有する、請求項1から11いずれか1項記載の方法。
  13. 単離ADAMTS13タンパク質は、HEK293細胞により組換え技術で生成されたものである、請求項1から12いずれか1項記載の方法。
  14. 単離ADAMTS13タンパク質は、CHO細胞により組換え技術で生成されたものである、請求項1から12いずれか1項記載の方法。
  15. 前記医薬組成物は、複数回又は連続注入により投与される、請求項1から14いずれか1項記載の方法。
  16. 前記投与は、前記医薬組成物を投与されていない対照における出血のレベルと比較して、出血のレベルを増加させない、請求項1から15いずれか1項記載の方法。
  17. 前記投与は梗塞体積を減少させる、請求項1から16いずれか1項記載の方法。
  18. 梗塞体積は、脳梗塞を有していない対照における梗塞体積と比較して、少なくとも50%低減される、請求項17記載の方法。
  19. 脳梗塞を経験した対象において、感覚運動機能の回復を改善する方法であって、治療有効量の単離ADAMTS13タンパク質を含む医薬組成物を前記対象に投与し、それにより感覚運動機能の回復を改善する工程を含み、前記対象における局所脳血流量は、脳梗塞を有しない対照における局所脳血流量と比較して、少なくとも25%まで改善される、方法。
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