[0064] 種々の実施形態において、本開示は、生物学的要素のサブ個体群又は単一要素の有無について、生物学的要素の大きな個体群をスクリーニングすることを対象とする。本開示の実施形態は、数百万又は数十億の生物学的要素の異種個体群から特定相互作用を発見、特性化、及び選択するために使用することができる。
[0065] 例として、本開示は、空間的に分離された単一のクローン又はその生成物の高密度アレイの解析が可能である、本明細書中μSCALE(マイクロキャビティ単一細胞解析及びレーザ抽出)と称する多目的技術プラットフォームを対象とする。対象細胞は、精密であるものの軽度のレーザをベースとした抽出技術を使用する事後解析で分離される。このマイクロキャビティベースのプラットフォームは、静的蛍光シグナル及び動的蛍光シグナルの双方を撮像することができ、数分の時間フレーム内で数百万に及ぶ細胞生成蛋白質異型の機能解析を可能にする。
[0066] 本開示の方法は、蛋白質、炭水化物、酵素、ペプチド、ホルモン、受容体を発現又は生成する細胞ライン、抗体を生成する他の細胞ライン、遺伝子操作された細胞、及び活性化細胞を含むが、これに限定されない生物学的細胞の特定及び分離を行うことを含む。さらに、本開示は、関心対象のペプチドを表示するウィルスの宿主となる生物学的細胞を特定する方法を含む。
[0067] さらに、本開示は、表面受容体蛋白質の発現、酵素生成、及びペプチド生成を含むが、これに限定されない種々の生物学的活性のスクリーニングに使用されてもよい。さらに、本開示は、所望の生物学的活性に対する検査薬の効果を判定するための種々の検査薬のスクリーニングに使用されてもよい。当業者は、分離及びスクリーニングしたい他の種別の細胞、検出したい他の種別の生物学的活性、及びスクリーニング対象の特定検査薬について、容易に理解するであろう。本開示の実施形態は、単一の細胞及び細胞培養のハイスループット解析に有用である。いくつかの実施形態において、本開示は、例えば、細胞間相互作用、単一細胞の成長及びシグナリング動力学、遺伝子発現の差異、及び組替型宿主発現レベルを精査する方法及び装置を提供する。
[0068] 定義
[0069] 規定のない限り、本明細書において使用する技術的用語及び科学的用語は、当業者によって通常理解されるのと同一の意味を有する。いくつかの用語の拡大と明確化について、本明細書中に提供する。本明細書において言及するすべての公開物、特許出願、特許、及びその他の参照文献については、指摘のない限り、参照として明確にここに組み込む。
[0070] 本明細書において使用される単数形の不定冠詞及び定冠詞は、文脈において明確な指示のない限り、複数の指示対象も含む。
[0071] 本明細書において使用される「結合パートナ」、「リガンド」、又は「受容体」という用語は、多数の異なる分子、又は凝集体のいずれかであってもよく、これらの用語は、相互交換可能に使用される。種々の実施形態において、結合パートナは、検出されている検体に関連付けられてもよく、又はこれに結合してもよい。蛋白質、ポリペプチド、ペプチド、核酸(ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド)、抗体、単糖類、多糖類、脂質、受容体、検査化合物(特に、組み合わせ化学で精製されたもの)が、各々、結合パートナであってもよい。
[0072] 「生物学的細胞」又は「細胞」という用語は、昆虫、微生物、菌類(例えば、酵母)、又は動物(例えば、哺乳類)の細胞を含むが、これらに限定されない、有機体からの任意の細胞をいうものである。生物学的細胞は、関心対象のウィルス又は関心対象の遺伝子型を有するウィルスの宿主ともなり、任意で、これを表示してもよい。
[0073] 本明細書において使用される「生物学的要素」という用語は、任意の生物学的細胞又は生体反応分子をいうものである。生体反応分子の非限定的な例には、蛋白質、核酸、ペプチド、抗体、抗体断片、酵素、ホルモン、及び小分子が含まれる。
[0074] 「検体」は、通常、例えば、生物学的試料における関心対象の生物学的要素等、試料における関心対象の要素をいう。
[0075] 本明細書において使用される「結合」又は「付着」という用語は、任意の物理的付着又は近接会合を含み、これらは、永続的であっても一時的であってもよい。これらの会合の非限定的な例として、水素結合、疎水性力、ファンデルワールス力、共有結合、及び/又はイオン結合が挙げられる。これらの相互作用は、関心対象の分子と測定されている検体の間の物理的付着を促進することができる。「結合」という相互作用は、例えば、結合要素が酵素であり、検体が酵素の基板である時等に、結合が化学反応を生じさせる状況としてまとめられてもよい。
[0076] 結合剤と検体の間の接触を生じる特定の結合反応も、この定義の範囲内である。このような反応は、例えば、抗体と蛋白質又はペプチドの相互作用の結果であり、相互作用が蛋白質上の特定構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存する。特定の結合相互作用は、例えば、蛋白質−蛋白質の相互作用、蛋白質−小分子の相互作用、抗体−小分子の相互作用、及び蛋白質−炭水化物の相互作用等、他の分子間で発生し得る。このような相互作用は、各々、細胞の表面で発生し得る。
[0077] 本明細書において使用される「試料」という用語は、広義な意味で使用されており、環境的試料及び生物学的試料が含まれる。環境的試料には、土壌及び水等、環境からの材料が含まれる。生物学的試料には、ヒトを含む動物、流体(例えば、液体、プラズマ、血清、尿、唾液)、固体(例えば、糞便)、組織、組織、液体食品(例えば、ミルク)、及び固形食品(例えば、野菜)であってもよい。例えば、肺疾患試料は、気管支肺胞洗浄(BAL)によって収集されてもよく、これは、肺組織由来の流体及び細胞を備える。生物学的試料の他の例として、細胞、ゲノムDNA、RNA、cDNA等から分離された細胞、組織抽出物、体液、染色体要素、又は染色体外要素を備えてもよい。
[0078] 以降、本開示の種々の態様を参照すると、本開示のアレイには、超高密度多孔質アレイに含まれる反応キャビティが含まれる。一例として、ここにおいて考慮されるマイクロアレイは、シリカキャピラリの形態等、数百万又は数十億のキャビティ又は小孔を束ね、熱プロセスを通じてこれらをともに融合させることにより、製造することができる。このような融合プロセスは、i)引張下でシングルクラッドファイバに引っ張られたキャピラリシングル引張ガラスを加熱することと、ii)結束、加熱、及び引張によってシングル引張ガラスからキャピラリマルチ引張シングルキャピラリを作成することと、iii)追加の結束、加熱、及び引張によってマルチ引張シングルキャピラリからキャピラリマルチ−マルチ引張マルチキャピラリを作成することと、iv)押圧ブロックに積層することにより、マルチ−マルチ引張マルチキャピラリから引張ガラスのブロックアセンブリを作成することと、v)熱及び圧力で処理することにより、ブロックアセンブリからブロック押圧ブロックを作成することと、vi)精密な長さ(例えば、1mm)でブロック押圧ブロックを切断することにより、ブロック形成ブロックを作成することを含むが、これに限定されないステップを備えてもよい。
[0079] 一実施形態において、キャピラリは、約1ミリメートルの高さに切断されることにより、約1.0マイクロメートル〜500マイクロメートルの内径を有する複数の細孔を形成する。一実施形態において、細孔は、約10マイクロメートル〜1ミリメートルの長さの範囲である。一実施形態において、細孔は、約10マイクロメートル〜1センチメートルの長さの範囲である。一実施形態において、細孔は、約10マクロメートル〜100ミリメートルの長さの範囲である。一実施形態において、細孔は、約0.5ミリメートル〜1センチメートルの長さの範囲である。
[0080] 非常に高密度の細孔アレイが、本開示の種々の態様において使用されてもよい。例としての実施形態において、各細孔は、5μmの直径を有し、約66%の開放空間(すなわち、各マイクロキャビティの内腔を表す)を有することができる。いくつかのアレイにおいて、開放したアレイの比率は、約50%〜約90%範囲、例えば、約60〜75%、より具体的には約67%である。一例において、5μm直径のマイクロキャビティと約66%の開放空間を有する10×10cmアレイは、約3億3000万個の細孔を有する。マイクロキャビティの内径は、約1.0マイクロメートル〜500マイクロメートルの範囲であってもよい。いくつかのアレイにおいて、各細孔は、約1.0マイクロメートル〜300マイクロメートルの範囲、任意で約1.0マイクロメートル〜100マイクロメートル、さらに任意で約1.0マイクロメートル〜75マイクロメートル、さらに任意で約1.0マイクロメートル〜50マイクロメートル、さらに任意で約5.0マイクロメートル〜50マイクロメートルの範囲の内径を有することができる。
[0081] いくつかの例において、アレイの開放面積は、開放面積(OA)の90%迄を占め、キャビティサイズが10μm〜500μmの間で変動する時、アレイ1cm毎の細孔の数が458個〜1,146,500個の間で変動するようにする。いくつかのアレイにおいて、アレイの開放面積は、開放面積の約67%を占め、キャビティサイズが10μm〜500μmの間で変動する時、アレイ1cm毎の細孔の数が341個から853,503個の間で変動するようにする。一例として、キャビティサイズが1μmであり、開放面積が90%迄であれば、アレイ1平方cmに約11,466,000個迄の細孔を収容するであろう。
[0082] 1つの特定の実施形態において、マイクロキャビティアレイは、数十億のシリカキャピラリを結合した後、熱プロセスを通じてそれらをともに融合させることにより、製造することができる。そのあと、シリカ(0.5mm以上)を切断し、非常にアスペクト比の高いガラス細孔アレイプレートを形成する。この内容を参照として個々に組み込む、国際出願PCT/EP2011/062015(WO2012/007537)を参照のこと。Hamamatsu Photonics K.K.(日本)、Incom,Inc.(マサチューセッツ州)、Photonis Technologies,S.A.S.Inc.(フランス)等より、多数の有用なアレイが市販されている。いくつかの実施形態において、アレイのマイクロキャビティは、一端において、アレイに付着された固形基板で閉鎖される。
[0083] 特定の実施形態において、アレイのキャビティの側壁は、電磁放射線を透過させないか、又はキャビティは、アレイのキャビティ間の電磁放射線の伝達を防ぐ材料でコートされている。好適なコーティングは、キャビティ内の結合反応又はキャビティへの力の付与に干渉してはならない。例としてのコーティングには、金、銀、及び白金のスパッタナノメートル層が含まれる。他の例において、アレイのキャビティ壁部は、多数の層を備え、壁部の1つ以上の層は、アレイのキャビティ間の電磁放射線の伝達を防ぐか、又は実質的に減少させる低屈折率材料からなる。多層を備えるアレイの一例としての実施形態は、Incom,Inc.(マサチューセッツ州チャールトン)から入手される。
[0084] 特定の実施形態において、アレイは、アレイを通じて電磁放射線の伝達を阻害又は遮断するために、湿式又は乾式のいずれかの水素雰囲気下で調製されるか、又はこのいずれかに晒される。例えば、アルカリドープケイ酸塩ガラスのアレイは、キャビティの壁部を含む、アレイの表面のすべてを不透明にするか、暗くするか、又は黒くして、電磁放射線がアレイのキャビティ間で透過されることを阻害又は防ぐように、水素雰囲気中で還元することができる。このプロセスでは、数百オングストロームの厚さであってもよい、単なるコーティングでないケイ酸塩層を作成することができる。一例において、このアレイは、Photonis USA Inc.(マサチューセッツ州スターブリッジ)から入手される抵抗ガラス製品から構築される。
[0085] アレイのさらなる例としての実施形態には、表2に示されるものが含まれる。
[0086] 本開示の一態様において、アレイのキャビティは、溶液のキャビティへの自然発生的摂取を促進する親水性表面を有する。他の態様において、アレイの表面は、疎水性を与えるように処理されてもよい。これらの態様を組み合わせると、アレイの一面は疎水性であり、他面が親水性であってもよい。例えば、アレイの上面及び下面は、上面に疎水特性を課し、下面に疎水性特性を与えるように、異なって処理される。アレイは、最初に疎水性を与える薬剤で処理し、次いで親水性を与える薬剤で反対側を処理するように、連続して処理されてもよい。
[0087] 従って、本開示は、開放第1端部と開放第2端部とを備える複数の個別キャビティを含むアレイを対象とし、基本的にすべての複数のキャビティの開放第1端部は、集合的に、多孔質平面状親水性表面を備え、基本的にすべての複数のキャビティの開放第2端部は、多孔質平面状疎水性表面を備える。これらの表面には、キャビティの開放端部と、キャビティ間の間質空間とが含まれる。
[0088] 親水特性は、従来既知の技術に従って、コロナ処理を使用して付与されてもよい。例えば、手持ち式Teslaコイル(例えば、Electro−Technic社の製品であるBD−20AC)では、好適な親水特性を与えるのに、アレイ面上方の数ミリメートルをガラスアレイ面に亘ってゆっくり数回通過させる(合計10〜30秒の露出)ので十分である。
[0089] また、アレイは、ポリシロキサン又はポリシロキサンを備える組成等、疎水性薬剤で処理されてもよい。一例として、疎水性薬剤は、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンである。特定の実施形態において、疎水性薬剤は、RAIN−X(登録商標)撥水剤である。
[0090] 対向する親水性表面と疎水性表面とを有するアレイを提供するために、親水特性を付与するように、一面又はアレイ全体を処理することができる。その後、親水性表面は、例えば、シーラントの付与によって保護され、対向面が疎水性薬剤で処理される。ある実施形態において、このシーラントは、例えば、Scotch(登録商標)の高性能Sure Start(登録商標)包装用テープ(分類番号A8142−6)等、この目的のために有用な市販のテープから選択される。疎水性薬剤の付与後、シーラントテープは、除去され、アレイに対抗する親水性表面及び疎水性表面を提供する。特定の実施形態において、親水性表面は、アレイの頂上部に対応し、これには試料が投入されてもよく、疎水性表面は、アレイの底部に対応する。
[0091] 種々の態様において、本開示は、蛋白質を生成する細胞又は関心対象の表現型を有する他の分子等、関心対象の表現型を有する細胞について、複数の遺伝子型を有する細胞ライブラリをスクリーニングする方法を対象とする。一般的に、この方法は、例えば、哺乳類、菌類、細菌類、及び昆虫等、アレイ内で生き延び、及び/又は、増加することのできるすべての細胞種別をスクリーニングするのに利用可能である。関心対象の表現型には、プリペプチド及び核酸の生成、分泌、及び/又は表示を含むが、これに限定されない検出可能な結果を生じさせる任意の生物学的プロセスを含むことができる。検出可能な表現型に関連付けられた複数の遺伝子型を有するライブラリは、変異性PCR、遺伝子発現のランダム活性化、ファージ表示、突出ベースDNAブロックシャフリング、ランダム突然変異生成、インビトロDNAシャフリング、部位特定組み換え、及び当業者に通常既知のその他の方法を含む方法によって生成することができる。
[0092] アレイは、一部又は全部のキャビティが、検体のスクリーニングを行うための単一の生物学的要素を含むように設計されてもよい。従って、細胞の異種混合物の濃度は、アレイの設計と特定対象の所望の検体とに応じて、計算される。蛋白質生成細胞がスクリーニングされる実施形態において、この方法は、クローン間競合をなくし、より多様な細胞のスクリーニングを可能にする。
[0093] アレイは、細胞の異種個体群等、複数の細胞を含む溶液をアレイに接触させることにより、投入されてもよい。一実施形態において、例えば、大腸菌又は酵母等の細胞を均一にマイクロキャビティのすべてに表示又は分泌する抗体の混合物を投入することには、アレイの上側に500液滴を配置することと、すべての細孔にそれを広げることとを含む。一例として、500μLの液滴中、約109個の細胞の初期濃度は、結果として、マイクロキャビティ毎に約3個の細胞(又は、サブ個体群)を生じる。一実施形態において、各細孔は、(250μm〜1mmのガラスキャピラリプレートの厚さに応じて)約20〜80pLの概算容量を有する。マイクロキャビティが一旦投入され、一晩インキュベートされると、各マイクロキャビティは、マイクロキャビティ毎に約2,000〜3,000個の細胞を含有するはずである。一実施形態において、細胞は、増殖収率を最大化するために、生存性を損なうことなく、48時間以上まで培養されてもよい。複数の細胞は、動物細胞、植物細胞、及び/又は細菌細胞又は酵母細胞等の微生物細胞であってもよい。細胞は、少なくとも1つの関心対象の化合物を分泌又は表示してもよく、このような関心対象の組替型化合物は、結合パートナとの親和性を有する。
[0094] 種々の例において、約5,000μLの溶液中に約109個の細胞が存在する場合、キャビティ容量が50ピコリットルであると仮定すると、約3〜4×106個の細孔を有するアレイでは、平均して、細孔毎に約10個の細胞が存在するはずである。正確な数は、アレイ中のキャビティの容量と、溶液中の細胞の濃度とに応じて決まるであろう。一例として、各細孔は、約20〜80ピコリットルの範囲の容量を有してもよい
[0095] 個体群及び/又は細胞ライブラリを含む試料は、アレイへの分布に先立って、調製ステップを必要としてもよい。いくつかの実施形態において、これらの調製ステップには、インキュベート時間が含まれる。インキュベート時間は、スクリーニングの設計と、スクリーニングされている細胞とに応じて決まるであろう。例としての時間には、5分、1時間、3時間、6時間、12時間、1日、2日、及び3日以上が含まれる。細胞の異種個体群は、アレイへの添加及び/又は投入に先立って、培地で増殖させてもよい。ある適用例については、培地を含む細胞が、指数関数的な成長フェーズの間、アレイ内に投入されてもよい。
[0095] 各キャビティは、細胞を複製させる容量の培地を有してもよい。例えば、20ピコリットルでは、キャビティ内の多くの単一細胞が複数回複製されるのに十分な培地を提供することができる。アレイは、任意で、細胞が対象蛋白質又はその他の関心対象の生物学的要素を増殖及び生成するのに、任意の温度、湿度、及び時間でインキュベートすることができる。インキュベートの条件は、当分野のルーチンと同様、実験的設計に基づいて判定することができる。
[0096] 一実施形態において、本開示の方法では、細胞の異種個体群の懸濁液の濃度とアレイの寸法とが、1〜1,000個の生物学的要素、任意で1〜500個の生物学的要素、さらに任意で1〜100個の生物学的要素、さらに任意で1〜10個の生物学的要素、さらに任意で1〜5個の生物学的要素がアレイのマイクロキャビティのうちの少なくとも1つに分布するようにアレンジされることを予期するものである。
[0097] アレイに投入された細胞含有容量の容量は、例えば、所望の適用例、異種混合物の濃度、及び/又は生物学的要素の所望の希釈を含む、いくつかの変数に応じて決まるであろう。1つの特定の実施形態において、アレイ表面上の所望の容量は、平方ミリメートル毎に約1マイクロリットルである。濃度条件は、生物学的要素が、任意且つ所望のパターン又は希釈で分布される。特定の実施形態において、濃度条件は、アレイのほとんどのキャビティにおいて、単一要素のみが存在するように設定される。これにより、単一要素の最も精密なスクリーニングが可能となる。
[0098] これらの濃度条件は、容易に計算することができる。例として、細胞スクリーニングにおいて、蛋白質生成細胞対キャビティの比率が約1対3である場合、109個のキャビティを備えたアレイには、6mLの容量(6mL=20ピコリットル/小孔×3×108個のキャビティ)に3×108の異なる蛋白質生成砂防を投入することができ。キャビティの圧倒的多数は、最大でも単一のクローンを含むであろう。他の特定の実施形態において、各小孔に単一細胞は、望ましくない。これらの実施形態について、異種個体群の濃度は、2つ以上の細胞が各小孔に見出されるように設定される。
[0099] 例えば、アレイが適正に投入される時、細胞は、ポアソン分布に従ってアレイ内にランダムに分布されなければならない。本分布によると、λがバルク濃度である(マイクロキャピラリの容量における細胞の平均数)場合、マイクロキャピラリにおけるk個の細胞を投入する可能性Pは、以下の式で計算される。
[00100]
[00101] マイクロキャピラリ毎の単一細胞について(k=1)について、この式は、以下の通りとなる。
[00102]
[00103] そして、マイクロキャピラリ毎の1つの細胞の分画を最大化するためには、式2の極大は、0でなければならない。式2を派生させると、以下の通りである。
[00104]
[00105] 本例において、λ=1である時、投入された試料の濃度は、マイクロキャピラリの容量毎に1つの細胞と等しくなければならない。表3は、異なるマイクロキャピラリアレイについて、λ=1に対して投入された試料の濃度をまとめたものである。
[00106] 投入した混合物の濃度は、以下の式により、マイクロキャピラリ毎の細胞の平均数、λ、及びマイクロキャピラリの容量(Vcapillary)に関連する。
[00107]
[00108] 図1は、マイクロキャピラリ毎に3個、1個、及び1/3個の粒子(λ=3、1、1/3)の平均に対応する3つの濃度にて、アレイに投入された蛍光ビーズを示している。20,000個のマイクロキャピラリの内容物を計数し、各条件に対する累積分布関数(CDF)を赤線としてプロットした。細胞は、ポアソン分布に従ってアレイ内にランダムに分布され、観察される平均値及び予期される平均値は、いくつかの粒子が撮像面内に進行しなくてもよいように、恐らくはマイクロキャピラリのアスペクト比が高いために、2倍〜3倍異なる。従って、観察される平均値と予期される平均値との間の差異を克服するために、計算された試料濃度よりも高い濃度を使用することができる。
[00109] 他の実施形態において、異種個体群及び/又は細胞ライブラリを含む試料は、アレイへの添加後、例えば、インキュベート等の調製ステップを必要としてもよい。他の実施形態において、各キャビティ内の各細胞は、インキュベート期間中、増殖する(細胞成長、ファージ増殖、蛋白質表現及び遊出等)。このインキュベート期間により、細胞に関心対象の表現型を表現又は表示させることができ、又はウィルスを複製させることができる。
[00110] 細胞がアレイに投入された後、細胞を分布させることなく、追加の分子又は粒子をアレイに対して追加又は除去することができる。例えば、細胞の検出に有用な任意の生物学的反応分子又は粒子を添加することができる。これらの追加分子又は粒子は、例えば、細胞の添加との関連で本明細書中に説明する通り、液滴添加によって、これらの分子又は粒子を備えた液体試薬をアレイの頂上部に導入することにより、アレイに添加することができる。生物学的要素を備えたアレイから特定の分子を除去するために、除去対象の選択された分子を含まないものの、キャビティアレイ内にある残りすべての分子を所望の濃度で含む溶液を調製することができる。液滴は、前述の通り、アレイに添加する。キャビティアレイの添加物がこの溶液の液滴と平衡した後、アレイ中の選択された分子の濃度は低下するであろう。この低下量は、添加された液滴の容量と、アレイ中に含まれる合計容量とによって決まる。選択された分子の濃度をさらに低減するために、このステップは、アレイの頂上部から最初の液滴が除去されてから、液体の第2の液滴が添加された後に、反復されてもよい。液体は、例えば、ペーパタオル又はピペットでアレイを拭き取ることにより、アレイの頂上部から除去することができる。
[00111] 他の例として、アレイに対して水分、栄養、又はその他の生物学的分子を添加、維持、又は交換するために、流体保持性且つ浸透性を備えたカバーをアレイ上に配置することができる。流体保持性且つ浸透性を備えたカバーについて、さらに本明細書中に説明する。
[00112] 特定の実施形態において、粒子は、1つ以上の生物学的要素とともに含まれてもよい。この粒子は、アレイのマイクロキャビティへの組み合わせの導入に先立って、1つ以上の生物学的要素と組み合わせられてもよく、又は、この粒子は、1つ以上の生物学的要素を含む前後に、マイクロキャビティに提供されてもよい。
[00113] ある実施形態において、粒子には、1つ以上の生物学的要素に対して十分な容量を残しつつ、マイクロキャビティキャビティの底部に蓄積するのに好適な濃度で、1つ以上の生物学的要素が提供される。溶液中の粒子の濃度は、特定の粒子によって決まる。例えば、1つ以上の生物学的要素を組み合わせた後、粒子の調製により、1mg/mL〜100mg/mLの最終濃度を提供してもよい。ある実施形態において、溶液中の粒子は、2.5mg/mL〜50mg/mLの最終濃度を提供する。
[00114] 関心対象の1つ又は複数のキャビティが一旦特定されると、キャビティの内容物は、本明細書に記載の装置及び方法で抽出することができる。キャビティの内容物は、さらに、解析又は増殖させることができる。1つ又は複数のキャビティからの増殖細胞個体群は、本明細書に記載の方法により、アレイで再スクリーニングすることができる。例えば、個体群中の生物学的要素の数がアレイ内のキャビティの数を超過した場合、個体群は、各小孔内の2つ以上の要素でスクリーニングすることができる。サブ個体群を提供するため、正のシグナルを提供するキャビティの内容物を抽出することができる。サブ個体群は、増殖させることができる。スクリーニングプロセスは、アレイの各キャビティが単一要素を含むまで反復することができる。スクリーニングは、所望の検体が中に入っていることを示すキャビティの検出及び/又は抽出にも適用することができる。キャビティの選抜に続いて、関心対象の個別検体を分離するために、より高レベルの蛋白質生成を提供する技術等、従来の他の技術が使用されてもよい。
[00115] ある実施形態において、アレイの頂上部は、キャビティからの培地の蒸発を低減するために、キャビティへの試料の添加に続いて、膜でシールされる。キャビティへの試料の添加に続いてアレイの表面をシールするために、1つ以上の実質的に気体及び/又は液体を透過しない膜を使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等、典型的な食品サービス種別のプラスチックラップが好適である。他の実施形態において、この膜は、水蒸気を小孔中の液体の頂上部液体層と平衡させることにより、蒸発防止に役立つことができる。例えば、マイクロキャビティアレイの頂上面に接触して、フィルムの頂上部に水が配置されるように配置されたフィルムは、個別の小孔内のキャビティの内容物を捕捉するものの、水又は培地はキャビティ内に流入させるであろう。有用な膜の例として、ニトロセルロース及びNAFION(登録商標)膜がある。キャビティ内の任意の細胞を捕捉するものの、水、培地、及びその他の試薬はキャビティ内に通過させる非常に小さな穴(例えば、10〜100nm)を有するポリテトラフルオロエチレン膜(例えば、GORE−TEX(登録商標)布)の多孔質形態で、同様のアレンジを得ることができる。
[00116] 特定の実施形態において、アレイの頂上部は、キャビティ内容物の蒸発も防ぎつつ、液体及び試薬をアレイのキャビティに供給する半透過性組成でカバーされる。同様に、このカバーは、液体及び試薬をキャビティ内容物で交換することができるようにする。一態様において、半透過性組成は、上述の通り、1つ以上の試料をアレイ内に導入した後、マイクロキャビティアレイの頂上面上に積層される。
[00117] いくつかの実施形態において、半透過性組成は、流体保持性及び浸透性を有し、弧の組成により、流体、栄養、及び生物学的反応分子をアレイの内容物に付与及び/又はこれと交換させるのに十分な容量の液体を蓄えることができる。従って、この組成は、流体を保持及び付与することができ、態様によっては、アレイのキャビティ内の流体と組成内の流体との間で生物学的活性分子の濃度を平衡に維持することができる。
[00118] 一態様において、この組成は、マイクロキャビティアレイの表面に接触するポリマーゲルであるか、又はこれを含む。ある実施形態において、ポリマーゲルは、ポリアクリルアミド、寒天、又はアガロースから選択される。当業者は、本開示の実施形態において有用な他の好適なポリマーを認識するであろう。また、ポリマーゲル中のポリマーの濃度は、異なる実施形態及び異なる適用例に応じて変動してもよい。例えば、アガロースのポリマー濃度として、0.2体積重量%〜10体積重量%含まれてもよい。一態様において、アガロースとして、アガロースの0.2体積重量%、0.5体積重量%、0.8体積重量%、1体積重量%、2体積重量%、3体積重量%、4体積重量%、5体積重量%、6体積重量%、7体積重量%、8体積重量%、9体積重量%、又は10体積重量%含まれてもよい。
[00119] 種々の実施形態において、ポリマーゲル層は、0.1〜10mmの厚さである。特定の態様において、ポリマーゲル層は、0.1mm、0.25mm、0.5mm、0.75mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、又は10mmの厚さである。種々の態様において、流体保持性且つ浸透性を備えたカバーは、所望の期間、アレイのキャビティの内容物の蒸発を回避するのに十分な厚さである。
[00120] 流体保持性及び浸透性を備えたカバーの液体フェーズには、生物学的プロセスに含まれる溶液が含まれてもよい。例えば、この液体フェーズには、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝生理食塩水、又は非緩衝水性フェーズ等、好適な緩衝水溶液が含まれてもよい。種々の実施形態において、液体フェーズには、数時間又は数日の経過でキャビティ内の細胞に栄養又は生物学的反応分子を提供する細胞培養培地が含まれてもよい。一態様において、液体フェーズには、溶解緩衝剤が含まれてもよい。
[00121] 一態様において、カバーは、カバーとキャビティの間の自由な拡散を可能にする。従って、ある実施形態においては、半透過性ゲルは、すべてのマイクロキャビティ内に均一に所望の分子を供給するために使用される。ある態様において、このゲルは、既にマイクロキャビティ内にある望ましくない分子を希釈又は「洗浄」するために使用される。ある実施形態において、細胞−培養培地ベースのゲルは、マイクロキャビティ間の接触ブリッジを提供するために使用され、成長因子が細胞自体でなく、細胞間で転写されるようにする。ある態様において、細胞−培養ベースのゲルは、細胞間のパラクリンの研究に使用される。他の実施形態において、関心対象の分子の勾配は、ゲル中に含侵させることができ、これにより、アレイの異なる箇所でマイクロキャビティに異なる刺激を与えるであろう。
[00122] 栄養の方法なゲルの使用により、例えば、アレイ内の細菌性細胞、酵母細胞、及び哺乳類細胞等、アレイのキャビティ内の細胞の成長を可能にする。各細胞種別について、特定種のための標準培地が、修正を伴って、又は修正を伴うことなく、使用されてもよい。特定の実施形態において、ある誘導培地において、リン酸緩衝剤の代わりにHEPE(例えば、25mM)又はリン酸緩衝剤の代わりにTris−HCl pH7.5(例えば、25mM)を使用し、より高い蛋白質発現を導いてもよい。HEPE又はTris−HClで置換した誘導培地は、リン酸緩衝剤の濃度がより高い誘導培地もしくは2g/Lのデキストロース又は20g/Lのラフィノース五水和物を補った誘導培地に比べて、酵母における蛋白質発現レベルが高くなる。
[00123] 従って、一態様において、本開示は、開放第1端部及び開放第2端部を備えた複数の個別キャビティを含むアレイを対象とし、基本的にすべての複数のキャビティの開放第1端部は、集合的に、第1多孔質平面状表面を備え、基本的にすべての複数のキャビティの開放第2端部は、第2多孔質平面状表面を備え、第1表面のカバーは、キャビティの内容物に、水分、栄養、又は生物学的反応分子のうちの少なくとも1つを与える。
[00124] アレイのための溶融流体及び浸透性カバーにおける培地の特定の例は、以下の通りである。
[00125] 1)細胞のためのマイクロキャビティ内の内容物/浸透圧を維持するための、水を伴う1%アガロースゲル及びリン酸緩衝生理食塩水を伴う1%アガロースゲル。このゲルは、細胞をアレイの底部に確保するために使用されてもよい。
[00126] 2)48時間に亘る酵母の成長のための、酵母成長培地を伴う1%アガロースゲル。
[00127] 3)酵素反応の適正な緩衝を確実に維持するための、酵素反応緩衝剤を伴う1%アガロースゲル。
[00128] 4)キャビティへの均一な反応基板の供給のための、酵素反応緩衝剤及び反応基板を伴う1%アガロースゲル。
[00129] 5)哺乳類細胞に栄養を供給するための、哺乳類細胞培地を伴う1%アガロースゲル。
[00130] 6)キャビティをブリッジし、キャビティの内容物を離間したキャビティの細胞に影響させる哺乳類細胞培地を伴う1%アガロースゲル。
[00131] 本明細書に記載の種々の実施形態において、1%アガロースと水の1.5mm層は、アレイの頂上部に配置することができる。アガロース等の透明ゲルは、アレイ上に配置された光源を遮断することがないため、明視野撮像に適している。
[00132] さらに、流体保持性且つ浸透性を有するカバーは、細胞のインキュベート及び/又はアレイにおける増殖期間中に、交換することができる。本実施形態において、栄養又はその他の試薬は、頂上部のカバーを試薬又はその他の化合物を含む新しいカバーに交換することにより、添加又は洗浄される。例えば、酵素反応のための基板は、成長培地を含むカバーから基板を含むゲルに切り替えることにより、正確な時間に(例えば、細胞成長後)、カバーに組み込むことができ、反応に対して添加することができる。
[00133] インキュベート、要素の添加、及び/又はその他の調製ステップに続いて、アレイは、関心対象の表現型を有する細胞を含むキャビティを特定するために走査され、これには、関心対象の表現型を表示するウィルスの宿主となる細胞が含まれてもよい。例えば、定量的格子や顕微鏡のために策定されたガイドラインに従い、アレイから検出された蛍光シグナル中のキャピラリ間の変動が測定されてもよい。プロセスを満たすマイクロキャピラリの受動的性質が、結果として、アレイ全体に亘って均一なメニスカスレベルを生じる。この均一性は、投入された細胞の重量沈降と結び付けられ、オートフォーカスの必要性を伴うことなく、撮像フォーカス面の確立を簡易化する。むしろ、フォーカスは、例えば、隅部等、アレイ上の3つの遠く離間した地点に設定されてもよい。これら3つの地点から、マイクロキャピラリアレイの平面が計算されてもよい。
[00134] 図2に示される通り、生の入力階調画像が最小明度及び閾値レベルに対する任意のユーザ入力で、閾値化(Otsu法)を介してバイナリ画像に変換されてもよい。発現及び結合の生の入力画像をパネルa)に示す。パネルb)は、Otsuka法による閾値化を示している。特徴は、サイズ(最小及び最大)及び粗度(偏心度)によるフィルタがかけられてもよい。ユーザ規定パラメータを通過する特徴は、ハイライト表示されている。パネルc)は、フィルタのかけられたバイナリマスクが生画像に適用されてもよいこと、蛍光値が定量化及びプロットされてもよいことを示している。追加の演算速度を犠牲にして、定量化を改善するため、背景差分を実施することができる。特徴フィルタリングは、蛍光片のバルクをなくしてもよく、空間的分離及び直接撮像により、個々の単一細胞の問い合わせに十分な時間を提供することができる。この能力により、研究者は、蛍光片と細胞の区別ができるようにし、偽陽性率を低下させる。
[00135] 定量的広視野顕微鏡の最適化は、結果として、光学的ケラレを生じることもあり、これは、恐らくカメラセンササイズを拡大したために、画像の縁部の明るさを低減するものである。これは、与えられた領域をカバーするより多くの画像を要求することにより、撮像速度を低減してもよい。また、絶対的定量化が必要な場合、フラットフィールド補正が使用されてもよい。Wolfらによって確立されたプロトコル(Methods CeLL Biol.(2013年)、114:337−67)に従い、4つの画像が撮られてもよい。つまり、均質蛍光参照(Hflat)、蛍光のない領域での暗画像(Hdark)、試料において蛍光がない領域での暗画像(Sdark)、及び試料画像(Simage)である。フラットフィールド補正画像は、以下の式によって見出すことができる。
[00136]
[00137] マイクロキャビティ内容物の抽出
[00138] キャビティのアレイに関連付けられた検出器から受信された光学情報に基づき、所望の特性を備えた対象キャビティが特定され、さらなる特性化及び増殖のために、それらの内容物が抽出される。本開示の方法は、キャビティ内の生物学的要素の保全を維持する。従って、本明細書に開示の方法は、数十億個の対象生物学的要素までの個体群から生物学的要素の対象個体群を表示し、独立的に回復するものである。これは、細胞がスクリーニングされる実施形態にとって特に好都合である。
[00139] 例えば、関心対象の結合イベントを配置するために、各キャビティからのシグナルが走査される。これにより、関心対象のキャビティを特定する。所望のクローンを含む個別のキャビティは、種々の方法を使用して抽出することができる。すべての抽出技術にとって、抽出された細胞又は材料は、培養又は増殖反応を通じて増殖され、蛋白質、核酸、又はその他の生物学的要素の回復のために特定できる。上述の通り、複数ラウンドのスクリーニングも考慮される。各スクリーニングに続いて、関心対象の1つ以上のキャビティは、本明細書に記載の通り、抽出することができる。その後、各キャビティの内容物は、所望の選択性が達成されるまで、スクリーニングすることができる。ある実施形態において、所望の選択性は、小孔毎の単一の生物学的要素であろう。これらの実施形態において、キャビティが単一要素のみを含む前に、各ランドのスクリーニングに従ってもよい。
[00140] 一実施形態において、この方法は、圧力放出によって、マイクロキャビティに配置された細胞を分離することを含む。例えば、離間したマイクロキャビティアレイは、プラスチックフィルムでカバーされる。一実施形態において、この方法は、さらに、プラスチックフィルムを貫通する孔を作れるレーザを提供することにより、空間的に位置指定された細孔を露出する。次いで、圧力源(例えば、空気圧)への露出により、空間的に位置指定されたマイクロキャビティからの内容物を押し出す。WO2012/007537号を参照のこと。
[00141] 他の実施形態は、マイクロキャビティアレイの単一のマイクロキャビティから生物学的要素を含む溶液を抽出する方法を対象とする。本実施形態において、マイクロキャビティは、材料がキャビティ内に収まるか、又はマイクロキャビティをコーティング又はカバーするように、電磁放射線吸収剤材料と関連付けられる。抽出は、試料、材料、又はその双方の増殖か、もしくはマイクロキャビティから試料の少なくとも一部を押し出す蒸発とを生じるために、マイクロキャビティに電磁放射線を集束することによって生じる。電磁放射線源は、蛍光ラベルを励起する発生源と同一であってもよく、又はこれと異なってもよい。発生源は、材料及びラベルの異なる吸収スペクトルに対応するために、複数の波長の電磁放射線を放出することができてもよい。
[00142] いくつかの実施形態において、集束された電磁放射線に選択されたマイクロキャビティを晒すことにより、電磁放射線吸収剤材料の増殖を生じることができ、これにより、押し出された内容物の収集を行う基板上に試料内容物を押し出す。
[00143] いくつかの実施形態において、レーザは、小径の直径と略同一であるか、又はこれより小さい直径を備えたスポットサイズに収束できるように、十分なビーム量を有していなければならない。例えば、アレイ材料が電磁放射線を吸収することができる時、例えば、アレイが電磁放射線吸収材料で製造されるか、又はこれでコーティングされる時、レーザスポットの直径は、レーザが材料−試料の界面に収束されるように、キャピラリの直径より小さくてもよい。いくつかの実施形態において、アレイ自体の材料は、暗化キャピラリアレイ又は黒化キャピラリアレイ等、コーティングを伴うことなく、電磁放射線吸収剤材料として機能することができる。例えば、本明細書においてさらに説明を行う通り、アレイは、水素雰囲気中で還元された鉛ガラスで構築されてもよい。種々の実施形態において、レーザの焦点は、キャビティの直径の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、9%、8%、7%、6%、4%、4%、3%、2%、又は1%であってもよい。
[00144] 一態様において、電磁放射線は、電磁放射線吸収材料に集束され、レーザエネルギーの線形吸収と、材料/液体の界面における液体試料の培養とを生じる。電磁放射線は、アレイの電磁放射線吸収材料の集中的且つ局所的な加熱を生じ、キャビティの内容物の残りの部分を加熱することなく、材料と接触した流体の薄膜層の爆発的蒸発及び膨張を生じる。ほとんどの適用例において、電磁放射線を材料に方向付けることは、マイクロキャビティの液体内容物の加熱及び細胞内の生物学的材料に影響を与えることを回避するため、放射の集束部分にて、材料と接触しない液体の加熱を回避すべきである。従って、電磁放射線の集束部分に近接した液体の非常に薄膜の層が加熱され、液体の爆発的蒸発と膨張とを生じ、メニスカスを破壊するのに必要なエネルギーの量が、液体内容物全体の温度を著しく上昇させるのに十分でなくなる。一態様において、レーザは、メニスカス自体に隣接したアレイのキャビティの材料に集束され、レーザ集束部分に隣接したメニスカスの一部における少量の液体の蒸発に関連付けられた加熱以外に、キャビティの液体内容物を加熱することなく、メニスカスの破壊を生じる。
[00145] ある実施形態において、アレイのキャビティからの抽出は、マイクロキャビティ内の1つ以上の粒子の励起によって達成されるが、この場合、励起エネルギーは粒子に集束される。従って、いくつかの実施形態では、キャビティ内のエネルギー吸収粒子と、アレイの各キャビティ内の粒子に電磁放射線を個別伝搬することができる電磁放射線とを採用する。ある実施形態において、エネルギーは、マイクロキャビティ内の溶液の温度を最低限に抑えるか、又は全く上昇させず、粒子に移される。ある態様において、パルスシーケンスは、メニスカスを破壊するために、キャビティ内の磁気ビーズを反復的に扇動し、押し出された内容物を収集するための基板上に試料内容物を押し出す。
[00146] 電磁放射線源からの電磁放射線放射スペクトルは、キャビティと関連付けられた電磁放射線吸収剤材料の吸収スペクトルに少なくとも部分的重複が存在するようにしなければならない。ある実施形態において、マイクロキャビティアレイからの個別のキャビティは、単一の大きなパルスでなく、短いレーザパルスのシーケンスによって抽出される。例えば、レーザは、約300〜650、より具体的には、約349nm、405nm、450nm、又は635nmの波長でパルス化される。レーザのピークパワーは、例えば、約50mW〜100mWであってもよい。また、レーザのパルス長は、約1msec〜約100msecであってもよい。ある実施形態において、レーザの総パルスエネルギーは、約10μJ〜約10mJであり、例えば、10μJ、25μJ、50μJ、100μJ、500μJ、1000μJ、2500μJ、5000μJ、7500μJ、又は10,000μJである。ある実施形態において、レーザビームウェストの集束スポットの直径は、約1μm〜約20μmであり、例えば、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、16μm、17μm、18μm、19μm、又は20μmである。特定の例としての実施形態において、レーザは、75mWピークパワー、1msecパルス長、10msecパルス分離、2μm直径ビーム、抽出毎に計10パルスでパルス化される。
[00147] いくつかの実施形態において、関心対象のキャビティは、選択された後、20〜30%の強度パワーで349nm固体状態UVレーザを集束させることにより、抽出される。一例において、発生源は、約50ナノ秒パルスで約1μジュール〜約1ミリジュールの発光を行う三周波数パルス化固体状態Nd:YAG又はNd:YVO4レーザ源である。他の例において、発生源は、ダイオード励起Q切替Nd:YLF Triton UV349nmレーザ(Spectra−Physics)である。例えば、レーザは、約15〜25msの合計操作時間で、約2〜3kHzで35〜55パルスのトレインを伝播し、約8〜18nsecのパルス幅、約4〜6μmのビーム直径、80〜120μJの合計パワー出力を有してもよい。1つの特定の例において、レーザは、約15〜20msの合計操作時間で、約2.5kHzにて約41〜53のトレインを伝播し、約10〜15nsecのパルス幅、約5μmのビーム直径、100μJの合計パワー出力を有してもよい。本開示によると、シャッタを備えた連続波レーザとパルス化レーザ源との双方を使用することができる。
[00148] いくつかの実施形態において、ダイオードレーザは、電磁放射線源として使用されてもよい。ある実施形態において、ダイオードレーザの集束は、約1μm〜約10μm、例えば、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、又は10μm、のビームウェスト直径を有する。ダイオードレーザは、約20mW〜約200mWのピークパワー、例えば、約20mW、40mW、60mW、80mW、100mW、110mW、120mW、130mW、140mW、150mW、160mW、170mW、180mW、190mW、又は200mWのピークパワーを有してもよい。ダイオードレーザは、約300〜約2000nm、例えば、約405nm、450nm、又は635nmの波長で使用することができる。他の実施形態において、赤外線ダイオードレーザが、約800nm、980nm、1300nm、1550nm、又は2000nmの波長で使用される。任意の与えられた試料に対する光毒性を低減するには、より長い波長が期待される。
[00149] ある実施形態において、ダイオードレーザは、約2〜20パルス、例えば2パルス、4パルス、6パルス、8パルス、10パルス、12パルス、14パルス、16パルス、18パルス、及び20パルスでパルス化され、約1〜10msecのパルス長、例えば、1msec、2msec、3msec、4msec、5msec、6msec、7msec、8msec、9msec、及び10msecのパルス長であり、約10msec〜100msecのパルス分離、例えば、10msec、20msec、30msec、40msec、50msec、60msec、70msec、80msec、90msec、及び100msecのパルス長を有する。例としての実施形態において、ダイオードレーザは、635nmの波長で動作するピークパワー170mWのOclaro HL63133DGレーザである。他の例としての実施形態において、ダイオードレーザは、450nmで動作するOsram PL450Bレーザである。
[00150] 他の例としての実施形態において、ダイオードレーザ又はTritonレーザは、1〜10ミクロンの直径に集束される。レーザは、10msec〜100msecの期間、10〜50パルスのトレインを放出する。各個別のパルスは、1msec(ダイオードレーザ)又は10nsec(Tritonレーザ)の持続時間を有する。合計パルストレインエネルギーは、約100マイクロジュールである。レーザエネルギーは、レーザビームウェストの直径と略等しい直径とレーザビームの吸収長によって判定される高さとを備えた略円筒形であるマイクロキャピラリの容量内に吸収される。磁気ビーズがキャピラリ内にある場合、レーザパルスエネルギーは、これらのビーズに吸収され、レーザに直接晒されたビーズの表面を主に加熱する。この表面にすぐ近接した液体は、爆発的に蒸発し、キャピラリ内のビーズを推し進める。ビーズの爆発的な動きは、付近の液体の蒸発とともに、メニスカスを破壊し、キャピラリ内を空にする。アレイ自体の材料が光を吸収する場合、レーザエネルギーは、レーザが入射するキャピラリ壁部の一部に主として蓄積される。この吸収容量で十分に短い時間で十分なレーザエネルギーが吸収される場合、周囲の液体に熱が拡散される時間はないであろう。吸収容量内の液体は、レーザパルスによって爆発的に蒸発され、試料の一部の急速な増殖を生じ、メニスカスを破壊してマイクロキャピラリの内容物を空にし、吸収容量の外側の周辺液体への熱拡散が最小化されるであろう。
[00151] 特定の例において、個々のレーザパルスは、約1msecの持続時間を有し、ビーム廃棄直径は、約10ミクロンである。本例において、単一レーザパルスは、レーザビームの吸収領域内の液体容量を加熱し、パルス中、この熱は、吸収領域の外側わずか数ミクロンに拡散するであろう。レーザパルス中に蓄積されたエネルギーは、吸収領域内の液体温度を蒸発温度の数倍まで急激に上昇させる。液体は、この吸収領域内で爆発的に蒸発されるが、周囲領域は、基本的に、その当初の温度のままである。吸収領域内の液体の爆発的蒸発により、メニスカスを破壊し、液体は、吸収材料から周辺培地へのごくわずかな熱拡散を伴ってマイクロキャピラリから押し出され、結果として、マイクロキャピラリの全液体内容物をごくわずかに加熱するか、又は全く加熱しない。
[00152] 短時間スケールにおける基板内の熱伝搬距離を記述する式は、以下の通りである。
[00153]
[00154] dが特徴的熱拡散距離である場合、αは、熱拡散係数であり、τは、エネルギー蓄積時間又はレーザパルス長である。水については、α=0.143mm2/secであり、τ=1msecであれば、この式は、結果として、予測拡散長が約10ミクロンとなる。ウェスト直径10ミクロンで高さ10ミクロン(〜10e−12cm3)のビームで判定される略円筒形吸収容量に蓄積される合計100マイクロジュールのパルスエネルギーは、この容量の液体の温度を、液体の蒸発温度より何倍も高く上昇させ、結果として、この容量内の液体の爆発的膨張を生じる。
[00155] Veritasレーザは、約40のトレイン、5nsecのパルスを供給し、各パルスは、約500マイクロ秒で分離される。各パルスは、吸収容量内の液体の爆発的膨張を生じ、ビーズ(があれば、これら)を推進し、メニスカスを破壊する。ダイオードレーザは、同様に、数ミリ秒で分離された10分の1msecのトレインで伝搬し、同様にキャピラリ内の液体と相互作用する。双方の場合において、パルストレイン内の複数のパルスを使用することにより、単一の高エネルギーパルスを使用するのに比べて、抽出効率が向上する。
[00156] 微小球の使用時、直径dの均一球に対する熱緩和時間(tr)の式は、以下の通りである。
[00157] レーザパルスが<−300ns(これは、ビーズの直径によって決まる)である限り、吸収剤材料の熱閉じ込めと急速且つ局所的な加熱が生じるであろう。
[00158] さらなる例としての実施形態において、以下のパラメータが使用されてもよい。
1)レーザパラメータ
a.ベリタスレーザ
i.Triton UV349nmレーザ(ダイオード励起Q切替Nd:YLFレーザ、Spectra−Physics)
ii.合計操作時間:18±2ms(n=5回測定)、2.5kHzにて46.6±5.9パルスのトレインを伝播
iii.パルス幅:10−15nsec
iv.ビーム直径:5μm
v.総出力:100μJ
2)吸収材料
a.超常磁性酸化鉄ドープマイクロビーズ
i.直径〜1μm(100nm〜10μmまでの範囲可)
[00158] b.黒色キャピラリ壁部(例えば、アルカリドープシリケートガラスを水素雰囲気で還元することによって得られたケイ酸鉛層)
[00159] キャビティ内の材料は、例えば、上述の通り、結合アッセイにおいて使用される粒子とすることができる。従って、粒子は、表面に蓄積するために、粒子が力に応じるようにする特性を有してもよく、例えば、DYNABEAD(登録商標)粒子等の電磁放射線吸収剤材料も含んでよい。種々の実施形態において、エネルギーが粒子に印加され、これらは(連続的又は複製的な力で)表面のシグナルが検出された後に表面に蓄積されるか、又は粒子が試料粒子に戻るように取り除かれる。あるいは、キャビティは、結合反応に関与しないものの、本明細書に記載の通り、内容物の抽出をもたらす粒子又はその他の材料を含む。これらの粒子は、アッセイの結合反応によらず、マイクロキャビティの壁部に結合するように、機能を持たせられてもよい。マイクロキャビティのコーティング又はカバーを行うために、EXPANCEL(登録商標)等、特に高膨張性材料等の同様の材料を使用することができる。他の実施形態において、各キャビティが膨張層に接合されるように、EXPANCEL(登録商標)材料をアレイの一方側に接合される接着層の形態で供給することができる。
[00160] マイクロキャビティに電磁放射線を集束させることにより、電磁放射線吸収材料を膨張せることができ、キャビティの液体容量の少なくとも一部を押し出す。材料が加熱され、キャビティ内容物の急速膨張を生じる時、内容物の一部が、例えば、1600倍まで膨張されてもよく、これにより、内容物の残りの一部をキャビティから押し出す。
[00161] 材料又はキャビティ内容物の急速な膨張を伴うことなく、加熱により、内容物の蒸発を生じることができ、基板上に内容物を凝集することにより、これを収集することができる。例えば、基板は、キャビティの開口又はその付近に配置された疎水性マイクロピラーとすることができる。内容物の排除は、メニスカスの外側でのキャピラリの壁部で試料が蒸発及び凝集する際にも発生することがあり、メニスカスに、キャピラリの内容物を破壊及び解放させる。
[00162] マイクロキャビティは、両端において開放されるものとすることができ、内容物が静水圧で定位置に保持される。抽出プロセス中、キャビティの両端のうちの一方は、キャビティの誤った方の端部から内容物が追い出されることを防ぐために、カバーすることができる。キャビティは、例えば、上述のプラスチックフィルム又はポリマーゲル等と同一の方法でカバーすることができる。また、膨張材料が、層として、アレイの一方側に接合されてもよい。
[00163] いくつかの実施形態において、捕捉面は、キャビティの内容物が押し出される吸湿性層を備える。吸湿性層は、水を引き付け、光学面が変形するのを防いで、キャビティの内容物が明確に撮像されるようにする。ある実施形態において、層は、マンサク、グリセロールを含む溶液、ウシ血清アルブミンと、例えば、0.1%重量/体積BSAの濃度のソルビトールと、1Mソルビトールとを伴うリン酸緩衝生理食塩水の溶液等の吸湿性組成である。この層は、広げること、ぬぐうこと、又は噴射することによって付与することができ、表面上に均一に分散させなければならない。通常、この層は、層を通過するEM放射をゆがめることなく、上方のアレイに接触することがない限り、約10〜100μmの厚さである。
[00164] 他の実施形態において、1つ以上のキャビティの細胞内容物が一旦捕捉面上に抽出されると、この表面が、キャビティの内容物をマトリクスに移行するように、培養マトリクスに接触されてもよい。内容物がマトリクスに一旦移行されると、細胞は、マトリクス上を伝播してもよい。マトリクスは、細胞の成長及び複製を可能にする任意の固体、半固体、又はゲルタイプの培地(例えば、アガロース)であってもよい。マトリクスは、必要に応じてインキュベートされてもよい。捕捉面は、マトリクス内の細胞培養の生存性を確保するのに適切となるように、接触直後、又は数分、数時間、数日、又は数週間のうちに取り除くことができる。あるいは、マトリクスが、本明細書に記載の通り、アレイにエネルギーを移行するのに十分な集束をせず、抽出レーザにマトリクスを貫通させる十分な透明度を有すると仮定すると、細胞は、成長マトリクス上に直接抽出されてもよい。
[00165] いくつかの実施形態において、本開示に係る検体の検出は、試料、特に、マイクロアレイ等のキャビティのアレイへ電磁放射線を付与することができる装置の使用を要求する。この装置は、試料、特に、試料キャビティから放出される電磁放射線を検出することもできなければならない。
[00166] 一実施形態において、装置の電磁放射線源は、試料の少なくとも1つのラベルの波長に合致する波長を有する広域スペクトル光又は単色光の光源である。さらなる実施形態において、電磁放射線源は、連続波レーザ等のレーザである。さらなる実施形態において、電磁波源は、固体UVレーザである。その他の好適な電磁放射線源の非限定的なリストには、アルゴンレーザ、クリプトン、ヘリウムネオン、ヘリウムカドミウムタイプ、及びダイオードレーザが含まれる。いくつかの実施形態において、電磁波源は、1つ以上の連続波レーザ、アークランプ、又はLEDである。
[00167] いくつかの実施形態において、この装置は、複数(1つ以上)の電磁波源を備える。他の実施形態において、複数の電磁波(EM)放射源は、同一波長で電磁放射線を放出する。他の実施形態において、複数の電磁波源は、試料にあってもよい種々のラベルの異なる吸収スペクトルに対処するために、異なる波長を放出する。
[00168] いくつかの実施形態において、複数の電磁放射線源は、349nmの波長、5μmの集束ビーム直径、及び20nsのパルス持続時間で動作するTriton UVレーザ(ダイオード励起Q切替Nd:YLFレーザ、Spectra−Physics)を備える。さらなる実施形態において、複数の電磁放射線源は、XF410QMAX FITCとXF406 QMAX赤色フィルタセット(Omega Optical)を備えたX−cite120照明システム(EXFO Photonic Solutions Inc.)を備える。一例としての実施形態において、ダイオードレーザは、635nmの波長で動作する170mWのピークパワーを備えたOclaro HL63133DGレーザである。他の例としての実施形態において、ダイオードレーザは、450nmで動作するOsram PL450Bレーザである。
[00169] この装置は、試料、アレイのラベルからの電磁(EM)放射を受信する検出器も含む。検出器は、1つ以上のラベルから電磁放射線を放出する少なくとも1つのキャビティ(例えば、マイクロキャビティ)を特定することができる。
[00170] 一実施形態において、電磁放射線への露出後に蛍光ラベルによって発光された光(例えば、紫外線領域、可視領域、又は赤外線領域の光)が検出される。1つ又は複数の検出器は、蛍光部分からの光子バーストの振幅及び持続時間を取得し、さらに、光子バーストの振幅及び持続時間を電気信号に変換することができる。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の検出器が反転される。
[00171] 一旦粒子又は要素が検出可能となった旨がラベル付けされると、あるいは、粒子が検出可能となる本質的特性を持っている場合、例えば、CCDカメラ、ビデオ入力モジュールカメラ、ストリークカメラ、ボロメータ、フォトダイオード、フォトダイオードアレイ、アバランシェフォトダイオード、連続シグナルを生成する光電子増倍管、及びこれらの組み合わせ等、本開示の範囲を逸脱することなく、従来既知の任意の好適な検出機構を使用してもよい。放射波長、放射強度、バーストサイズ、バースト持続時間、蛍光偏光、及びこれらの組み合わせを含む、電磁放射線の異なる特性が検出されてもよい。一例として、本開示に対応した検出器は、20×Plan Fluorite対物(開口数:0.45、CFI、WD:7.4、Nikon)とORCA−ER冷却CCDカメラ(Hamamatsu)を備えた倒立蛍光顕微鏡である。
[00172] 検出プロセスは、自動化も可能であり、この場合、装置は、レーザ走査顕微鏡等の自動化検出器を備える。
[00173] いくつかの実施形態において、本開示の装置は、少なくとも1つの検出器を備えることができる。他の実施形態において、装置は、少なくとも2つの検出器を備えることができ、各検出器は、ラベルによって放出された特定波長範囲で光エネルギーを検出するように選択及び構成することができる。例えば、異なるラベルでタグ付けされ、電磁波源で励起されると、異なるスペクトルのエネルギーで光子を放出する粒子を検出するために、2つの別の検出器を使用することができる。
[00174] マイクロキャビティアレイのキャビティからの蒸発は、キャビティ内のメニスカスの高さを変更することで、マイクロキャビティの内容物の測定を複雑化する。特に、キャビティと付近の任意の表面の間で、その表面の温度がより低い場合、キャビティ内の液体の蒸発のために物質移動が生じる。この蒸発は、キャビティ内のメニスカスの高さを変更し、キャビティ内の細胞の位置を上昇させ、レーザ抽出をより困難にしたり、顕微鏡の焦点面からシグナル生成要素を(例えば、細胞、ビーズ)を上昇させ得る。
[00175] アレイからの液体の物質移動に対処するために、マイクロキャビティアレイは、各ガラスプレートの一面が透明導電性コーティングでコーティングされた状態で、1つ又は2つの透明ガラスプレートに隣接して、又はこれらの間に配置されてもよい。例えば、図3Aは、アレイの下方の単一ガラスプレート30を備えたホルダ20におけるマイクロキャピラリアレイ10の上面図を示している。明確さのために、アレイ上方の第2プレートは図示していないが、存在してもよい。温度を制御するために、ガラスプレートを均一に加熱すべく、プレート上に透明コーティング(図示せず)を使用することができる。このコーティングは、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)であってもよく、これは、可視領域のスペクトルで透明である。コーティングが透明であることにより、上方(例えば、明視野)又は下方(例えば、倒立顕微鏡の溶射蛍光)から伝搬された光を励起する。コーティングされたガラスプレートにより、本明細書において説明した捕捉面(図示せず)を、アレイのキャピラリから抽出された内容物の収集を行うプレート間に挿入させる。捕捉面の近傍にあるプレートは、表面上のキャビティの内容物の凝集を防ぐため、捕捉面を加熱する。
[00176] 図3Bは、ホルダ20及びプレート30の底面図を示している。ガラスプレートの2つの対向縁部40上のコーティングには、導電性ストリップを付与することができる。これらの導電性ストリップは、例えば、導電性接着剤を備えた銅テープ、導電エポキシのライン、又は蒸着導電層(例えば、金、銀、チタン等)とすることができる。ストリップに印加された電圧は、結果として、コーティングを通過する電流を生じる。コーティングが有限の抵抗性を有するため、電流は、結果として、ガラスプレートの表面のオーム加熱を生じる。プレートを通過する電流が均一であれば、プレートに亘る加熱は、均一でなければならない。ガラスプレートの表面の温度は、熱電対、サーミスタ、又はその他の温度プローブで測定することができ、温度を安定化するために、フィードバック回路を使用することができる。底部又は頂上部のガラスプレート上での凝集と、凝集をなくすための温度上昇とを観察することにより、加熱の適正量を判定することができる。あるいは、メニスカスの高さは、キャビティ内の細胞又は磁気ビーズと、メニスカスをウェルの底部に下げるための温度昇降とに注目することにより、測定することができる。
[00177] 種々の態様において、本開示は、関心対象の検体又は細胞プロセスの検出、特定、及び/又は特性化のためのキットを対象とする。いくつかの実施形態において、このキットは、検出試薬及び緩衝剤に加え、関心対象の蛋白質等、検体に特定の抗体を含む。他の実施形態において、このキットは、mRNA又はcDNA(例えば、オリゴヌクレオチドプローブ又はプライマー)の検出に特定の試薬を含む。種々の実施形態において、このキットは、アッセイ実施のためのすべての制御及び指導を含む、検出アッセイの実施に必要なすべての要素を含み、キットに設けられるM個の磁気粒子の解析及び表現に必要な任意のソフトウェアが、検体のための結合パートナで機能化される。ラベルは、検体又はその他の試料要素のための結合パートナに結合させてもよい。このキットは、試料内の第2検体、第3検体、第4検体等を結合するために、又は、アレイのマイクロキャビティ間の試料要素の正規化をもたらすために、機能化される第2セット粒子、第3セット粒子、第4セット粒子等も含んでよい。光又はその他の悪条件による試薬の劣化を防ぐための安定剤(例えば、酸化防止剤)も、このキットの一部であってよい。
[00178] 指導用資料には、通常、書面又は印刷物が含まれるが、これに限定されるものでない。このような指導を記憶することができ、エンドユーザにこれらを通信することのできる任意の媒体が、本開示によって考慮される。このような媒体には、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD−ROM)等が含まれるが、これに限定されるものでない。このような媒体には、このような指導用資料を提供するインターネットサイトへのアドレスが含まれてもよい。
[00179] 一実施形態において、本開示は、新規の治療薬を特定することを備える方法を対象とする。例えば、病状に関与する既知の薬剤結合パートナ(すなわち、例えば、抗体、生物学的受容体、及び/又は酵素)は、結合パートナに対する親和性を有すると疑われる種々の化合物を分泌するか、又は表面表示する複数の細胞に対してスクリーニングすることができる。最高の結合親和性を有する化合物を表示又は分泌する細胞を含むマイクロキャビティが、適切なレポータシステムで特定できる。特定されたマイクロキャビティのニア要物は、未来の開発のために抽出及び使用することができる。他の実施形態において、治療用化合物等の化合物の存在下において、細胞生存性又は相互作用がスクリーニングされてもよい。このような化合物の存在下において生存性を有する細胞、又はその存在下における関心対象の活性が、さらに解析されてもよい。
[00180] 一実施形態において、本開示は、各細胞が、抗体を生成し、マイクロキャビティ内にその抗体を分泌するように、抗原−抗体結合を判定する方法を対象とする。抗体は、組換型抗体及び/又はモノクロナール抗体であってもよい。1つ又は複数の細胞は、2つ以上の種類の抗体か、又は同抗体の複数のコピーを生成してもよい。一実施形態において、本開示は、診療用抗体を特定することを備える方法を考慮するものである。例えば、結合パートナに対する親和性を有する疑いのある種々の交替を分泌する複数の細胞は、病状に関与する既知の結合パートナ(すなわち、例えば、抗原及び/又はエピトープ)についてスクリーニングできる。最高の結合親和性を有する化合物を表示又は分泌する細胞を含むマイクロキャビティは、適切なレポータシステムで特定することができる。
[00181] 一実施形態において、本開示は、蛋白質−蛋白質の相互作用を特定することを備える方法を対象とする。病状に関与する既知の結合パートナ(すなわち、例えば、蛋白質及び/又はペプチド)に対する親和性を有する疑いのある種々の蛋白質及び/又はペプチドを分泌又は表面表示する複数の細胞は、結合パートナに対してスクリーニングできる。最高の結合親和性を有する化合物を表示又は分泌する細胞を含むマイクロキャビティは、適切なレポータシステムで特定することができる。
[00182] 一例として、本開示は、Axl受容体チロシンキナーゼ及び介在線免疫機能、血液凝固、並びに腫瘍細胞浸潤及び転移に結合する臨床対象Growth Arrest Specific 6(Gas6)に対する蛋白質バインダを特定する方法を対象とする。本方法によると、高い親和性を備えたGas6に結合する異型を特定するために、酵母表示単鎖可変断片(scFvs)のナイーブライブラリをスクリーニングすることができる。
[00183] 一実施形態において、本開示は、蛋白質−核酸相互作用を特定することを備える方法を対象とする。病状に関与する既知の結合パートナである核酸(例えば、デオキシリボ核酸及び/又はリボ核酸及び/又はSOMAmer及び/又はアプタマー)は、結合パートナに対する親和性を有する疑いのある種々の蛋白質及び/又はペプチドを分泌又は表面表示する複数の細胞に対して、スクリーニングできる。最高の結合親和性を有する化合物を表示又は分泌する細胞を含むマイクロキャビティは、適切なレポータシステムで特定することができる。
[00184] 一実施形態において、本開示は、蛋白質−炭水化物の相互作用を特定することを備える方法を考慮するものである。病状に関与する既知の結合パートナである炭水化物(すなわち、例えば、オリゴ単糖類、及びリポ単糖類、又はプロテオ単糖類)は、結合パートナに対する親和性を有する疑いのある種々のレクチン、蛋白質、及び/又はペプチドを分泌又は表面表示する複数の細胞に対してスクリーニングできる。最高の結合親和性を有する化合物を表示又は分泌する細胞を含むマイクロキャビティは、適切なレポータシステムで特定することができる。
[00185] 一実施形態において、所望の特性(例えば、蛍光)を有する蛋白質検体又は蛋白質を検出するために、開示の方法を使用する。特定の検体蛋白質の検出は、アレイのキャビティにおいて直接実施することができる。生化学センシングは、サンドイッチ免疫測定又は同様の結合反応又は交配反応を含む標準検出技術を使用して行うことができる。例えば、本開示は、蛍光蛋白質における関心対象特性の設計方法を対象とする。関心対象特性は、放射スペクトル又は放射強度、ストークスシフト、及び吸収スペクトル又は吸収強度のうちの少なくとも1つであってもよい。特定の一例において、特定の蛍光吸光度スペクトル、放射スペクトル、及び/又は消光率を有する蛋白質を発現する細胞ライブラリをスクリーニングするために、本開示の方法を使用することができる。特定の一実施形態において、蛋白質は、図17に特定した突然変異のうちの少なくとも1つを有する二量化依存性オレンジ蛍光蛋白質(ddOFP)である。
[00186] ある実施形態において、本開示は、酵素活性のハイスループット解析を実施するのに有用な方法及び装置を提供する。一態様において、これらの実施形態は、マイクロキャビティに添加される酵素の反応速度を判定する方法を提供する。例えば、複数の酵素異型を符号化する遺伝子が、マイクロキャビティアレイに添加された細胞に導入され、ここに発現される。酵素のための基板も提供し、この場合、マイクロキャビティにおける酵素の活性は、生成物の形成又は各小孔からの基板の枯渇のいずれかを(連結アッセイを直接又は間接に介して)経時的にモニタリングすることができる。いくつかの実施形態において、特定の反応速度特性を備えた酵素異型が、マイクロキャビティアレイから選択、抽出され、続く解析ステップ、拡張ステップ、そして任意でさらに選択ステップのために分離される。酵素活性のモジュレータは、特定酵素活性のために選択的圧力を付与するために、マイクロキャビティ内でのインキュベート前又はインキュベート中に、添加されてもよい。従って、本開示の実施形態は、モジュレータへの抵抗性又はモジュレータによる刺激を示す酵素異型を特定するのに有用である。
[00187] 一例において、本開示は、蛋白質酵素の突然変異体型を生成する複数の遺伝子型を有する細胞ライブラリによって生成された蛋白質酵素ライブラリの構成員について、酵素反応速度を測定する方法を対象とする。この方法は、マイクロキャビティアレイに細胞ライブラリを投入することと、関心対象の酵素を生成させる条件下で、蛋白質酵素のための基板の存在下においてアレイをインキュベートすることとを備える。このアレイは、酵素活性の時間分解解析を提供するように選択された間隔で撮像されてもよい。この期間は、解析されている酵素及び基板システムに照らし合わせて選択されてもよい。例えば、期間は、数秒、数分、又は数時間であってもよく、アレイの1つ以上のキャビティからのシグナルは、例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、15回、20回、40回、60回、80回、又は100回等、任意の数の間隔で測定されてもよい。
[00188] 特定の例において、酵素は、アルカリホスファターゼ(AP)であり、モジュレータは、無機リン酸であって、APの活性を阻害する。本開示の方法によると、AP異型を発現する細胞ライブラリは、細胞をアレイに投入し、無機リン酸の存在下でAP活性についてマイクロキャビティをスクリーニングすることによって、スクリーニングすることができる。
[00189] 本開示の方法によって特定されたAP異型は、以下の突然変異、すなわち、D101G、I16V、N145I、D294G、N197S、T148P、及びS175Rのうちの少なくとも1つを有する。特に、異型は、D101Gであってもよく、I16V−N145I−D294G及びN197S−T148P−S175Rの一方であってもよい。また、AP異型の残りは、野生型APと、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であってもよい。D101の位置は、AP活性部位内のリン酸イオンを調整するR166残渣を配置するのに重要であることが知られている。このように、本開示の方法でカバーされていないD101G突然変異は、無機リン酸に対する酵素の親和性を低下させるR166の配置を変更してしまうようである。
[00190] 一実施形態において、検体は、核酸である。例えば、DNA又はmRNAの発現は、任意の好適な方法で測定されてもよい。例えば、RNA発現は、特定の構造の酵素開裂によって検出される(INVADER(登録商標)アッセイ、Third Wave Technologies;例えば、米国特許第5,846,717号、第6,090,543号、第6,001,567号、第5,985,557号、及び第5,994,069号を参照のこと。各々、参照としてここに組み込む)。INVADER(登録商標)アッセイは、オリゴヌクレオチドプローブを重複させる交配によって形成された錯体を開裂するために構造特定酵素を使用することにより、特定核酸(例えば、RNA)配列を検出する。他の実施形態において、RNA(又は、対応するcDNA)は、オリゴヌクレオチドプローブへの交配によって検出される。交配及び検出のための種々の技術を使用した種々の交配アッセイが利用可能である(例えば、TAQMAN(登録商標)アッセイ、PE Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ。例えば、米国特許第5,962,233号及び第5,538,848号を参照のこと。各々、参照としてここに組み込む)。また、RNAの発現を検出するために、逆転写酵素PCR(RT−PCR)が使用されてもよい。例えば、競合テンプレート法の規格化混合物による定量的逆転写酵素PCRは、米国特許第5,639,606号、第5,643,765号、及び第5,876,978号(各々、参照としてここに組み込む)に記載されている。
[00191] 蛋白質、炭水化物、酵素、ペプチド、ホルモン、受容体を発現又は生成する細胞ライン、抗体を生成する他の細胞ライン、遺伝子操作細胞、及び/又は活性化細胞を含むが、これらに限定されない任意の種別の生物学的細胞を分離するために、本開示の検出を使用してもよい。さらに、表面受容体蛋白質、酵素生成、及びペプチド生成を含むが、これに限定されない種々の生物学的活性のスクリーニングを行うために、本開示を使用してもよい。さらに、所望の生物学的活性に対する検査薬の効果を判定する種々の検査薬をスクリーニングするために、本開示を使用してもよい。分離及びスクリーニングしたい他の種別の細胞、検出したい他の種別の生物学的活性、及びスクリーニングする特定検査薬は、当業者によって容易に認識されるであろう。生物学的細胞は、形質転換生物学的細胞である。細胞の形質転換は、任意の周知の方法により、例えば、プラスミド又はウィルス等、任意の周知のベクターを使用して発生し得る。生物学的細胞は、微生物、菌類、哺乳類、昆虫、又は動物の細胞であってもよい。微生物細胞は、大腸菌細胞等、細菌性細胞であってもよい。一実施形態において、動物細胞には、希少生化学化合物が含まれる。一実施形態において、希少生化学化合物は、蛋白質、ペプチド、ホルモン、核酸、炭水化物の群より選択される。他の実施形態において、生物学的細胞は、蛍光蛋白質を生成及び/又は発現する。さらに他の実施形態において、生物学的細胞は、蛍光蛋白質に融合される蛋白質を生成する(例えば、GFP)。
[00192] 従って、本開示の実施形態は、関心対象の分子を生成するための関心対象の表現型を有する細胞に対する複数の遺伝子型を有する細胞ライブラリをスクリーニングする方法を対象とする。この方法には、マイクロキャビティアレイに細胞ライブラリを投入することと、関心対象の分子の生成を可能にする条件下で、アレイをインキュベートすることとを含む。アレイは、関心対象の表現型を有する細胞を含む1つ以上のキャビティを特定するために、アレイを撮像することができる。キャビティの内容物は、キャビティに関連付けられた放射線吸収材料にパルス化ダイオードレーザから電磁放射線を方向付けることによって、抽出されてもよい。
[00193] いくつかの実施形態において、試料液体における細胞の数は、結果として、各キャビティにおける多様な細胞の個体群を生じる。特定キャビティの内容物の抽出及び増殖後、結果として得られた個体群は、関心対象の特定細胞を特定するための次のステップでスクリーニングすることができる。図4及び図5は、アレイのキャビティの抽出前後における、例としてのアレイの係合及び明視野像の前後を示している。白色矢印は、同一のキャビティの抽出前及び抽出後を示している。
[00194] 図5に示される通り、キャビティの抽出物は、結果として、単一キャビティからの2つの関心対象細胞を生じた。他の実施形態において、試料液体における細胞の数は、アレイのキャビティの数未満であり、結果として、各キャビティに1つ以下の細胞のみを投入することとなる。従って、キャビティ毎に2つ以上の細胞を備える、初期スクリーニングで抽出されたキャビティの内容物から、キャビティの内容物の増殖に続くキャビティ内容物の次のスクリーニングと、アレイ上への低濃度投入とにより、多様な細胞の個体群から関心対象の表現型を有する単一の細胞を特定することができる。
[00195] また、ライブラリは、(1)関心対象の表現型に対する遺伝子を備えた細胞からのDNA抽出、(2)遺伝子にランダム突然変異を導入する条件下におけるDNAの増加、(3)増加されたDNAを備える第2世代細胞ライブラリの生成、及び(4)第2世代細胞ライブラリ上で特定されたステップの反復で強化されてもよい。ライブラリの初期スクリーニング中、又は強化プロセス中、複数の細胞が、任意の特定のキャピラリに添加されてもよい。細胞内容物は、抽出され、本開示の方法によってさらに解析又は強化されてもよい。最終的に、キャビティ毎に1つの細胞を有することにより、特定遺伝子型の特定を可能にする。抽出することは、関心対象の表現型を有する蛋白質を生成する細胞を有するキャビティに、電磁放射線を個別に方向付けることであってもよく、この場合、キャビティに電磁放射線を方向付けることにより、抽出に先立って液体を加熱することはない。
[00196] 本発明の種々の態様において、関心対象の表現型は、細胞表面結合剤である。他の態様において、関心対象の表現型は、関心対象の吸収又は放射の強度と、関心対象の吸収又は放射のスペクトルと、関心対象のストークスシフトとのうちの少なくとも1つを有する蛍光蛋白質である。さらに、関心対象の表現型は、酵素活性を有する蛋白質、酵素活性の阻害が欠如した蛋白質、及び酵素に対する阻害剤の存在下で活性を有する蛋白質を生成したものであってもよい。
[00197] 本開示のある実施形態は、1つ以上の生物学的要素を成長させる方法及び装置を提供する。いくつかの実施形態において、細胞は、成長に好適な培養培地におけるアレイのマイクロキャビティに導入される。そして、アレイは、例えば、好適な温度、湿度、及び周辺気体組成にて、細胞の成長をサポートする条件下でインキュベートされる。いくつかの実施形態において、マイクロキャビティアレイの表面は、アレイに添加される細胞の成長をサポートするように取り扱われる。
[00198] 粒子
[00199] 種々の実施形態において、アレイのキャビティには、キャビティ内容物の抽出を促進する結合反応をサポートする固形面及び/又はエネルギー吸収材料として、粒子を投入する。本明細書に開示の方法によると、好適な粒子は、容易に市販のものを入手可能であり、広範に亘る粒子を使用することができる。種々の実施形態は、粒子は、部分的又は完全に不透明である。ある実施形態において、粒子は、電磁放射線を吸収し、例えば、粒子は、少なくとも10%、例えば、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%の吸光効率を有する。
[00200] 種々の実施形態において、粒子のサイズは、ナノスケールから、キャビティの断面の約3分の1のサイズまでの範囲である。例えば、マイクロキャビティの直径が約20ミクロンである時、粒子の直径は、約0.01〜7ミクロンとすることができる。他の実施形態において、粒子直径は、使用キャビティのサイズに応じて、約0.01ミクロン〜約50ミクロンの範囲である。種々の実施形態において、粒子は、約0.1〜15ミクロン、約0.5〜10ミクロン、及び約1〜約5ミクロンのサイズの範囲である。特定の実施形態において、粒子は、金属又は炭素を備える。好適な金属の非限定的な例として、金、銀、及び同が含まれる。当業者に周知の通り、結合アッセイ及び検出アッセイにおける使用に他の金属材料が好適である。
[00201] 一実施形態において、粒子は、例えば、参照としてここに組み込む米国特許出願第2014/011690号に記載のマイクロキャビティのメニスカス等、各反応キャビティの表面に粒子を蓄積するために磁力を使用することができるように、磁性を有する。
[00202] 本開示のいくつかの態様において、粒子の表面化学は、当業者に周知の通り、試料要素への結合をもたらすように機能化されてもよい。例えば、粒子は、ストレプトアビジン、ビオチン、オリゴ(dT)、蛋白質A&G、タグ付蛋白質、及び/又はその他任意のリンカポリペプチドと結合される。膨大な数の適用例において、ストレプトアビジン−ビオチン相互作用の非常に高い結合親和性が利用される。ストレプトアビジンでコーティングした粒子は、ビオチン化拡散、抗体、又はその他のビオチン化リガンド及び対象を結合させるであろう。ビオチン化抗原は、検体に対するスクリーニングを行うために粒子に付着可能な試薬の有用な例でもある。特定の実施形態において、粒子は、DYANABEAD(登録商標)粒子(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)である。例えば、オリゴ(dT)、蛋白質A&G、タグ付蛋白質(His、FLAG)、二次抗体、及び/又はストレプトアビジンである(製品番号112−05D、Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)。
[00203] いくつかの実施形態において、粒子に作用する磁力を独立に制御するために、異なる磁気誘電率を有する粒子を使用することができる。他の実施形態において、各キャビティにおいて行われるアッセイの増加能力を拡張するために、粒子の他の特性を使用することができる。試料への添加時、粒子は、所望の対象(細胞、病原性微生物、核酸、ペプチド、蛋白質、又は蛋白質錯体等)に結合する。この相互作用は、粒子の表面へのリガンドの特性の親和性に依存する。あるいは、酵素のための基板に結合された粒子を試料に添加することができ、この場合、試料における酵素/検体は、蛍光に対する基板の能力を低減するか、又は蛍光される基板を活性化する(例えば、基板の酵素媒介開裂)。
[00204] 他の実施形態では、異なる形状、密度、サイズ、電荷、磁気誘電率、又は光学コーティングを有する磁気粒子を使用する。これにより、異なるプローブ(すなわち、結合パートナ)を異なる粒子上に置き、これらの粒子は、磁界又はその他の力をいつ、いかにして付与するかを調整することによって、別々に精査される。サイズ、形状、及び密度によって粒子を分離し、各キャビティにおいて実行されるアッセイの増加能力を拡大するために、沈降率も使用することができる。一例としての実施形態において、粒子は、約1μm、例えば、約100nm〜約10μmの平均直径を備えた超常磁性酸化鉄ドープマイクロビーズを備える。
[00205] ある実施形態において、キャビティの内容物を混合するために、粒子を使用する。例えば、磁気粒子を、インキュベートステップ中、間欠的磁界に晒すか、又はこれと交互に発生させる。粒子の移動及び沈降は、結果として、反応キャビティの内容物の混合を生じる。
[00206] 検出される、例えば、マーカ等の分子の形態に関する必要選択性を備えた任意の好適な結合パートナを使用することができる。例えば、マーカ等の分子がいくつかの異なる形態を有する場合、結合パートナの種々の特異性が可能となる。好適な結合パートナは、当分野で既知であり、抗体、アプタマー、レクチン、及び受容体を含む。有用且つ多目的な種別の結合パートナは、抗体である。
[00207] 本開示の試料において検体を検出する方法は、小孔毎に2つ以上の異なる抗原の同時検査を行うことを可能にする。従って、いくつかの実施形態において、同一の小孔内で、同時にポジティブスクリーニング及びネガティブスクリーニングを発生させることができる。このスクリーニング設計は、初期ヒットの選択制を改善する。特定の実施形態において、試験される第2の抗原を、コントロール抗原とすることができる。コントロール抗原の使用は、アレイにおける種々のキャビティに亘る生物学的要素濃度を正規化するのに有用である。非限定的な例としては、関心対象の検体に特定の第1の抗原と、N−又はC−末端エピトープタグ等、すべての蛋白質に対して非特定的な第2の抗原とを使用することであろう。従って、関心対象のキャビティの結果は、シグナルを合計蛋白質濃度に比較することにより、定量化することができる。
[00208] いくつかの実施形態において、第2の抗原が、第1の粒子とは異なる第2の粒子に関連付けられる。粒子は、以下の特性、すなわち、形状、サイズ、密度、磁気誘電率、電荷、及び光学コーティングの少なくとも1つにより、変動し得る。従って、第2のラベルは、試料における第2の検体の有無の結果として、第2の粒子に関連付けられることができ、後述の通り、原動力を使用して処理される。
[00209] 他の実施形態において、粒子は、非特定的に試料要素を結合させる。例えば、粒子は、試料におけるすべての蛋白質を非特定的に結合させるように機能化することができ、これにより、アレイ内の試料間の蛋白質内容物の正規化を可能とする。
[00210] 抗体
[00211] 本明細書において使用される「抗体」という用語は、広義の用語であり、その通常の意味で使用され、天然発生抗体と、例えば、単鎖抗体、キメラ、二官能性、及びヒト化抗体を含む非天然発生抗体、並びにそれらの抗原−結合断片を含むものをいうが、これに限定されるものでない。抗体が上げられるエピトープ又は分子の領域の選択により、存在する場合には分子の種々の形態について、又はそのすべてについて(例えば、分子の全部、又は略全部)の選択性を判定することが理解されるであろう。
[00212] 抗体を生成する方法は、十分に確立されている。当業者は、例えば、Antibodies、A Laboratory Manual、Ed Harlow及びDavid Lane、Cold Spring Harbor Laboratory(1988年)、ニューヨーク州コールドスプリングハーバ―に記載の通り、抗体の生成には、多くの手続きが利用可能であることを認識するであろう。当業者は、抗体を模倣する結合断片又はFab断片が種々の手続きによって遺伝情報から調製可能であることを理解するであろう(Antibody Engineering:A Practical Approach(Borrebaeck、C.,ed.)、1995年、Oxford University Press、Oxford;J.Immunol.149、3914〜3920(1992年))。例えば、蛋白質等の分子へのモノクロナール抗体及びポリクロナール抗体とマーカも、市販のものが入手可能である(R and D Systems、ミネソタ州ミネアポリス;HyTest Ltd.、フィンランド共和国トゥルク;Abcam Inc.、米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、Life Diagnostics,Inc.、米国ペンシルベニア州ウェストチェスター;Fitzgerald Industries International,Inc.、米国マサチューセッツ州コンコード;BiosPacific,カリフォルニア州エメリービル)。
[00213] いくつかの実施形態において、抗体は、ポリクロナール抗体である。他の実施形態において、抗体は、モノクロナール抗体である。
[00214] 本開示の実施形態において、例えば、捕捉抗体と検出抗体の対等、捕捉結合パートナと検出結合パートナの対を使用することができる。そこで、いくつかの実施形態においては、累積アッセイプロトコルが使用され、この場合は通常、例えば、2つの抗体等、2つの結合パートナが使用される。1つの結合パートナは捕捉パートナであり、大抵粒子状で固定化され、他方の結合パートナは検出結合パートナであり、通常検出可能なラベルを付着される。このような抗体の対は、カリフォルニア州エメリービルのBiosPacific等、いくつかの市販のソースから入手可能である。抗体の対は、当分野で周知の方法によっても設計及び調製可能である。特定の実施形態において、抗体は、ビオチン化されるか、又はビオチンラベル化される。
[00215] 一実施形態において、関心対象の検体のすべての構成員を非特定的に結合させる第2の撮像要素がある。従って、キャビティから小孔への蛍光の量を正規化するために、このシグナルを読むことができる。一例として、N−又はC−末端エピトープタグにてすべての蛋白質を結合する抗体がある。
[00216] ラベル
[00217] 粒子の混合物中での検出又は区別を可能にするために結合パートナにラベル付けを行うためにいくつかのストラテジを使用することができる。ラベルは、非特定的又は特定の相互作用を利用する方法を含む、任意の既知の手段によって付着されてもよい。また、ラベル付けは、結合パートナに対して直接的に、又はこれを通じて、達成することができる。
[00218] 部分からの放射、例えば、蛍光は、本明細書に記載の通り、検出器を使用した検出を行うのに十分でなければならない。通常、本開示の組成及び方法は、部分の励起波長で電磁放射線源によって刺激された時、電磁放射線を放出することができる部分等、蛍光部分を高度に利用する。いくつかの部分が、本開示の組成及び方法に好適である。
[00219] 本開示において、電磁放射線以外のエネルギーによって活性化可能なラベルも有用である。このようなラベルは、例えば、電気、熱、又は化学反応(例えば、化学発光ラベル)によって活性化することができる。また、多数の酵素活性ラベルは、当業者に周知である。
[00220] 通常、部分の蛍光は、検出の所望の限度、精度、及びアッセイの正確さに必要な整合性とともに、その部分が本開示の検出器における背景レベルを超えて検出可能となるのに十分な量子効率と光退色の不足との組み合わせを含む。
[00221] さらに、この部分は、選択したアッセイにおける使用と整合性のある特性を有する。いくつかの実施形態において、アッセイは、免疫測定であり、この場合、蛍光部分が抗体に付着される。またこの部分は、他の抗体又は蛋白質と凝集することのないような特性を有さなければならず、あるいは、要求されるアッセイの精度と正確さへの整合性と同程度の凝集を経験する。いくつかの実施形態において、蛍光部分染料分子は、本開示の解析器及びシステム(例えば、関心対象の蛋白質の析出、又はこの部分が付着された蛋白質の析出を生じない)を使用して解析されてもよいように、1)高吸収係数、2)高量子収率、3)高光安定性(低光退色性)、及び4)関心対象の分子(例えば、蛋白質)のラベル付けとの適合性の組み合わせを有する。
[00222] 蛍光部分は、単一の実体(例えば、量子ドット又は蛍光分子)を備えるか、又は複数の実体(例えば、複数の蛍光分子)を備えてもよい。「部分」という用語が本明細書において使用される時、例えば、複数の蛍光染料分子等の蛍光実体の群をいい、個々の実体は、別々に結合パートナに付着されてもよく、又は、それらの実体が群として検出される蛍光を十分に提供する限り、ともに付着されてもよい。
[00223] いくつかの実施形態において、蛍光染料分子は、インドリウム環の3つの炭素の置換基が科学的反応基又は結合基板を含む、少なくとも1つの置換インドリウム環系を備える。例として、Alexa Fluor分子が含まれる。
[00224] いくつかの実施形態において、ラベルは、2つの異なるALEXA FLUOR(登録商標)染料(Invitrogen)等、第1種別のラベルと、第2種別のラベルとを備え、この場合、第1種別の染料分子と第2種別の染料分子とは、異なる放射スペクトルを有する。
[00225] 蛍光部分に使用するのに有用な蛍光実体の非包括的な例として、ALEXA FLUOR(登録商標)488、ALEXA FLUOR(登録商標)532、ALEXA FLUOR(登録商標)555、ALEXA FLUOR(登録商標)647、ALEXA FLUOR(登録商標)700、ALEXA FLUOR(登録商標)750、Fluorescein、B−フィコエリトリン、アロフィコシアニン、PBXL−3、Atto590、及びQDot605が含まれる。
[00226] ラベルは、吸収、共有結合、ビオチン/ストレプトアビジン、又はその他の結合対を含む、当分野で既知の任意の方法で、粒子又は結合パートナに付着されてもよい。また、ラベルは、リンカを通じて付着されてもよい。いくつかの実施形態において、ラベルは、検体によって開裂されることにより、ラベルを粒子から解放する。あるいは、検体は、リンカの開裂を防いでもよい。
実施例
[00227] 実施例1:マイクロアレイ単一細胞解析及びレーザ抽出
[00228] 本開示の一態様のマイクロアレイ(本明細書中、「μSCALE」と称する)に関する全体的概念及びワークフローを、図6A〜図6Dにおいて説明する。図6Aは、プラットフォームワークフローを示している。
1)バクテリア又は酵母細胞に発現した蛋白質異型のライブラリを、不透明磁気ビーズと混合する。
2)混合物を、マイクロキャビティ内に平均単一細胞占有率を生じるような濃度で、アレイ内にピペット注入する。読み出された蛍光を使用して、細胞成長を伴うか、又は伴うことなく、種々の生化学アッセイを実施する。
3)蛍光顕微鏡を介してアレイを撮像する。
4)各マイクロキャビティの蛍光強度を定量化し、レーザベースの抽出法により、単一細胞又はバルクプールとして、所望のクローンをアレイから分離する。
5)抽出した細胞を液体中又は固形培地上で培養する。
6)細胞を溶解し、追加の進化ラウンドのための新たなライブラリの特性化及び/又は生成のために、プラスミドを回復させる。図6Bは、レーザベースの抽出法を表示したものである。関心対象のマイクロキャビティを抽出するために、レーザを配置及びパルス化し、マイクロキャビティの表面張力を破壊し、その内容物をアレイ下の捕捉面上に出す。図6Cは、蛍光粒子を投入した2つの近隣マイクロキャビティの抽出を示している。左側のパネルでは、抽出される第1のマイクロキャビティ及び第2のマイクロキャビティの輪郭が、各々、濃い円と薄い円とで示されている。第2のパネルは、近隣のマイクロキャビティを妨げることなく、第1のマイクロキャビティの抽出に成功した様子を実証している(濃い矢印で示されている)。第3のパネルは、アレイ下の捕捉面上に分離した粒子を示している。最後のパネルは、第2のマイクロキャビティの抽出に成功した様子を実証している(薄い矢印で示されている)。図6Dは、μSCALEプラットフォームにおいて実施される3つの多様なアッセイの表示したものである。左側は、蛍光抗体で事前染料された酵母表面表示scFvライブラリの結合相互作用を示している。中央は、マイクロキャビティ内で培養した大腸菌クローンに発現される蛍光蛋白質異型を示している。右側は、基板を蛍光生成物に転換する酵母表面表示酵素異型のライブラリにおけるリアルタイム反応速度測定を示している。高アスペクト比(1mmの厚さ、10μm又は20μmの直径)の数百万の空間的に分断して作成されたマイクロキャビティの高密度ガラス基板アレイに、磁気粒子を混合した細胞懸濁液を投入する。この懸濁液は、アレイの頂上部に付与され、キャピラリ作用を通じてマイクロキャビティに充填される。マイクロキャビティアレイは、底部ではシールされない。液体試料は、表面張力によって定位置で保持される。充填プロセスの受動的性質は、結果として、アレイ全体に亘る均一なメニスカスレベルを生じる。他の効果の中でも、この均一性は、投入細胞の重量沈降とともに、オートフォーカスの必要性なく、撮像焦点面の確立を簡易化する。
[00229] 各マイクロキャビティには、図1に示される通り、ポアソン分布に従って単一細胞又は粒子の投入が可能である。蛍光ビーズは、キャビティ毎に3個、1個、及び1/3個(λ=3、1、1/3)の粒子の平均に対応する3つの濃度でアレイ内に投入した。約25,000個のキャビティの内容物を計数し、各条件に対する累積分布関数(CDF)を赤線でプロットしている。λ=0.79、0.43、及び0.15でのポアソン分布に合う最大尤度は黒線でデータ上に重ね合わせている。分布は、ポアソン統計に密に従っており、観察及び予期される平均は、2〜3倍異なる。この差は、マイクロキャビティのアスペクト比が高いために生じるようである。いくつかの粒子は、撮像面内に完全に進行しなくてもよい。
[00230] パルス化UVレーザは、最も近隣にあるものに対して影響を与えることなく、単一のマイクロキャビティ内の表面張力を破壊するために、磁気粒子と相互作用する(図6B及び図6C)。レーザ抽出は、マイクロキャビティの内容物をアレイ下方の捕捉面上に出し、これが、抽出を確認し、追加の形態学研究を実施するために、撮像可能である。抽出技術を改良するために、レーザ強度を変動し、図7に示される通り、完全な抽出効率を達成した条件範囲を確立するために、磁気ビーズ濃度を滴定する。各抽出に対して、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)顕微鏡のTriton切断レーザは、レーザメーカによって設定された最大電流の5%〜20%の範囲の異なるレーザパワーの範囲で、10msec、パルス化した。各条件について30回の抽出を実施した。エラーバーは、各条件についての2項サンプリング誤差を表す。
[00231] 続く実験で抽出された細胞の生存性を表4に示す。
[00232] アレイのキャビティ内で種々の生化学アッセイを実施するために、方法が開発されてもよい。例えば、関心対象の蛋白質を発現する細胞をマイクロキャビティアレイに投入し、数日間、時間分解実験測定又は細胞増殖を許容する湿潤環境内にこれを維持してもよい。
[00233] 定量的広視野顕微鏡について確立されたガイドラインに従い、アレイから検出された蛍光シグナルにおけるキャピラリ間変動性を測定し、他のハイスループット方法に匹敵するものであることを見出した。μSCALEとGuava easyCyteフローサイトメトリの双方で、蛍光ビーズ(Sphero、FP−4052−2、Spherotech)を解析した(Millipore)(n=10,000)。μSCALE測定のためには、磁気粒子を伴うことなく、蛍光ビーズを20μmのマイクロキャビティアレイに投入した。双方の個体群を、各分布の平均で正規化した。フローサイトメトリ及びμSCALEで解析したビーズ蛍光の変動係数は、各々、0.15及び0.14であった。マイクロキャビティ全体をカバーするため、アレイは、毎秒約10,000個のマイクロキャビティの速度で、複数位置及び複数波長で撮像する。標準画像処理機能を使用して、結果として得られた画像を解析する。細胞は高解像度で撮像されるため、見込みのある候補が、定量化測定基準(サイズ、円形度、及び蛍光強度)又は目視検査により、細胞破片及び他の疑似蛍光シグナルから区別可能である。
[00234] 落射照明構成のバンドパスフィルタ高強度アークランプを使用して照明された高開口数顕微鏡対物を使用し、マイクロキャビティを撮像する。蛍光放射は、高感度冷却CCDカメラを使用したハイパスフィルタを通じて検出される。複数の波長で、毎秒約10,000マイクロキャビティの割合で、蛍光放射を撮像及び解析するために、アルゴリズムを開発した。そして、本明細書に記載の通り、レーザ抽出(単一細胞抽出と称する)により、関心対象の単一細胞を回収することができ、又は、抽出される細胞個体群を指定するユーザ選択指標を使用する、バルク選択法(プール抽出と称する)を採用することができる。
[00235] 蛍光強度に対する微小粒子の影響。磁気微小粒子は、不透明であってもよく、細胞懸濁液に茶色っぽい色を与えるものであってもよい。蛍光強度及び明視野撮像への磁気ビーズの影響を判定するために、抽出に使用される磁気粒子の存在下、又はこの存在を伴うことなく、μSCALEに対して蛍光ビーズ(Sphero、FP−4052−2、Spherotech)を解析した(n=10,000)。図8に示される通り、パネルaでは、正規化された「ビーズ有」個体群の平均は、0.83であり、磁気ビーズが部分的にマイクロキャビティの蛍光強度を遮蔽することを実証している。磁気粒子を伴う場合と伴わない場合の、蛍光ビーズ分布の変動係数は、各々、0.2と0.14であり、抽出のための磁気ビーズの使用が、μSCALEにおける蛍光測定の変動性を著しく増加させないことを実証している。図8のパネルbは、磁気ビーズの存在が蛍光強度を低減し、明視野像を暗くすることを示している。これらの微小粒子の添加は、限定的な程度、蛍光シグナルを均一に遮蔽し、マイクロキャビティの内容物の明視野撮像を防ぐ。
[00236] 図9は、自動化倒立蛍光顕微鏡と、UVレーザ又はダイオードレーザ等の電磁放射線源の周囲に組み込まれた一例としてのプラットフォームを示している。一例としての機器は、明視野撮像能力と蛍光撮像能力の双方を有する。3軸ステージにより、所望のマイクロキャビティによるレーザの迅速なアラインメントを可能にする。適切な蛍光照明システムとレーザ源とを備えた広範に亘る自動化倒立顕微鏡で、同様の構成を再度作成することができる。試料(黒色矢印で示されるビーズによって付与された茶色)が、マイクロキャビティアレイに投入され、ホルダ内に載置された後、機器を使用して解析される。試料回収のためのホルダの下方に、抽出カバースリップを載置する。
[00237] マイクロアレイの実験は、マイクロキャビティスクリーニング適用を可能にするハードウェア及びソフトウェアの修正で適合化されたレーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)顕微鏡で実施してもよい。一実施形態において、このシステムは、モータ化したステージとTriton UVレーザ(ダイオード励起Q切替Nd:YLFレーザ、Spectra−Physics)とを備えた倒立蛍光顕微鏡を含む。レーザシステムは、349nmの波長、5μmの集束ビーム直径、及び20nsのパルス持続時間を使用する。蛍光撮像には、XF410QMAX FITCとXF406QMAX赤色フィルタセット(Omega Optical)とともに、X−CITE(登録商標)120照明システム(EXFO Photonic Solutions Inc.)が使用される。すべての画像は、ORCA−R2冷却CCDカメラ(Hamamatsu)によって20×Plan Fluorite対物(開口数:0.45、CFI、WD:7.4、Nikon)で取得した。
[00238] LCM顕微鏡とレーザを制御する、マイクロキャビティの自動化画像定量化のためのソフトウェアを開発した。このソフトウェアスーツは、アレイ上を自動走査し、すべてのマイクロキャビティのマルチカラー蛍光画像及び明視野画像を取得する。各マイクロキャビティを定量化するために、選択されたカラー画像を閾値化し、バイナリマスクを精製するOtsu法を使用して、画像分割を実施する。各関心対象領域における蛍光強度を定量化するために、バイナリマスクを使用した。所望のマイクロキャビティを一旦特定すると、ソフトウェアは、ユーザに、2つの異なる様式、すなわち、単一細胞選別とプール選別とで細胞を検索させる。単一細胞選別では、ソフトウェアは、選択されたマイクロキャビティに戻り、ユーザに、さらなる実験を実施させ、滅菌捕捉面上へ所望の細胞を抽出させ、結果として、隔離クローナル個体群を生じる。プール選別では、選別ゲートを確立し、ソフトウェアは、単一捕捉面上に任意の特定マイクロキャビティの内容物を自動抽出し、濃縮細胞の個体群を生成する。
[00239] マイクロキャビティアレイの調製、投入、及び抽出。INCOM,Inc.から利用可能なマイクロキャビティアレイ(10μm及び20μmのキャビティ直径、1mm厚さ)をエタノールで滅菌して乾燥した。アレイの投入側を、親水性面を生成するために、1分間、テスラコイル(BD−20AC、Electro−Technic Products)でコロナ処理したが、これは、投入を促進するものである。投入側には、一片の透明パッケージテープをキャビティの開口の頂上部に付与し、平坦化した。アレイを反転し、RAIN−X(登録商標)撥水剤を、ウェットティッシュに少量の撥水剤を付与し、1分間空気乾燥を施すことにより、使い捨てウェットティッシュに付与した。その後、アレイの表面上のキャビティの開口を研磨するために、そのウェットティッシュを使用した。接着テープを除去し、アレイの投入側にテスラ処理を再度施した。
[00240] 単一細胞を含むウェルの最小分画を達成するために、ポアソン統計(20μmアレイに〜3,200個/μLの細胞と、10μmアレイに〜12,800個/μLの細胞)による投入に先立って、細胞懸濁液を希釈した。各蛋白質設計の適用例に対する特定の投入条件を、次の実施例において説明する。簡単に述べると、懸濁液を磁気ビーズ(Life Technologies、37002D)と混合して、最終ビーズ濃度を10mg/mlにし、アレイにピペット注入した。蒸発を防ぐために、1%重量/体積アガロースの〜2mmスラブをアレイに重複させた。所望のキャビティの内容物を抽出するために、LCMシステムのTriton UVレーザを使用した。図7に示される通り、単一パルスの抽出効率が100%となるように、レーザパワーを調整した。ここに述べる一例としての実施形態において、抽出パラメータは、以下を備える。すなわち、レーザが18±2ms(n=5回の測定)、動作して、約100μJの合計エネルギーにより、2.5kHzでパルスのトレインを伝播する。キャビティ内容物をガラスカバースリップ上に抽出した後、抽出細胞を繁殖させるために、酵母又は細菌性の成長培地(液体培地又は寒天プレート)に載置した。各実験後、強い流れの蒸留水で内容物を除去することにより、アレイを洗浄した後、1MのNaOHで簡単に超音波処理し、100%エタノール中で保管した。
[00241] 実施例2:蛋白質結合相互作用の高スループットスクリーニング
[00242] Axl Iglモックライブラリスクリーニング。DNA符号化ヒトAxl Igl(アミノ酸Alai9−Proi3i)及び非結合Alx異型(E59R、T77R)を、Nhel制限部位とBamHi制限部位の間でpCT酵母表示プラスミドiにクローン化した(Kariolis,M.S.ら、Nat.Chem.Biol.1〜10(2014年))。プラスミドDNAは、酵母表面表示研究のためのエレクトロポレーションにより、サッカロマイセス・セレビシエ菌株EBY100に形質転換した。FreeStyle Max 293発現システム(Invitrogen)を使用してヒト胎児腎臓(HEK)細胞に可溶Gas6を組み換え発現し、前述の通り、生成した(Kariolis,M.S.ら、Nat.Chem.Biol.1〜10(2014年))。酵母表面表示ナイーブscFvライブラリ(〜7×108個の異型)を前述した(Deventer,J.A.Van&Wittrup,K.D.、Yeast Surface Display for Antibody Isolation:Library Construction、Library Screening,and Affinity Maturation.1131、151〜181(Humana Press、2014年)。前述の通り、pCT表示プラスミドを内在したすべての酵母細胞を、選択的培地で成長させ、誘導した。(Chao,G.ら、Nat.Protoc.1、755〜68(2006年))。
[00243] Axl Iglモックライブラリについては、野生型非結合Axl異型を表示する誘導酵母細胞を、野生型:非結合が1:10、1:100、1:1,000、1:10,000、及び1:100,000という規定の細胞比率で混合した。約(3−6×106)個の酵母細胞(モックライブラリによる)を、1mg/mlのBSA(PBSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水中、1nMの精製成長停止特異6(Gas6)で、6時間、室温にてインキュベートした。Gas6によるインキュベート後、酵母を洗浄し、ニワトリ抗c−Myc抗体(250;Life Technologies、A21281)の1:250希釈液を含むPBSA中、4℃で45分間、再懸濁した。Gas6結合を検出するために、酵母を洗浄し、マウス抗His IgG Hilyte Fluor555(Anaspec、61250−H555)の1:100希釈液を含むPBSA中、4℃で45分間、再懸濁した。結合シグナルを強化するために、酵母を洗浄し、PBSA中で再懸濁を行い、次いで、ヤギ抗マウスIgG Hilyte Fluor555(Anaspec、AS−28175−05−H555)の1:100希釈液を、4℃で30分間、添加した。最後に、c−Myc発現を検出するために、酵母を洗浄し、ヤギ抗ニワトリIgG Alexa Fluor488(Life Technologies、Al 1039)の1:100希釈液を含むPBSA中、4℃で30分間、再懸濁した。ラベル付酵母を〜12,800個/μLまで希釈し、10μmアレイ上に投入し、475/40nm励起/510nmロングパス放射フィルタでGas6結合について解析を行い、525/45nm励起/565nmロングパス放射フィルタでc−Myc細胞表面発現について解析を行った。単一細胞選別により、野生型酵母又は非結合異型を抽出し、SD−CAA寒天プレート上で培養した。抽出された細胞を特定するために、Zymoprepキット(Zymo Research Corporation)を使用して、プラスミドDNAを回収し、PCRで増殖させ、Sangerシークエンシング(Sequetech)で配列決定した。
[00244] 表5は、野生型(WT)と非結合Axlクローンからなるモックライブラリからの濃縮比を示している。選別効率を定量化するために、一連のモックライブラリ抽出を実施した。濃縮比は、下記のように規定される。
[00244] 式中、ηは濃縮比であり、N+,0は、野生型細胞の初期数であり、N+,1は、選別後の野生型細胞の数であり、N−,0及びN−,1は、各々、非結合細胞の相当値である。
[00245] μSCALEは、その表面上に野生型又は非結合Axl受容体ドメインのいずれかを表示する酵母を区別した(Kariolis,M.S.らのChem.Biol.10、977〜83(2014年))。図10Aは、2つのパラメータの散布図(左側)であり、各ドットは、マイクロキャビティと、野生型Axl個体群(R)と非結合Axl異型個体群(B)の顕微鏡画像(右側)を表している。野生型:非結合クローンが1:10〜1:100,000に及ぶ範囲の酵母表示Axl異型のモックライブラリを作成し、スクリーニングした。Axl発現(C末端c−Mycエピトープタグに対する抗体によって測定)とGas6結合(Gas6上のヘキサヒスチジンに対する抗体を使用して測定)とに対する2色蛍光解析により、酵母を解析した。各モックライブラリについて、野生型Axl又は非結合Axl異型を発現する細胞に対して予測された蛍光強度を示すいくつかの個々の酵母細胞をアレイから抽出し、培養して、DNA回収及び配列決定により、査定した。図10Bは、代表的モックライブラリスクリーニング(野生型:非結合異型=1:10,000)からの散布図を示している。野生型Axl(灰色輪郭のドット)及び非結合Axl異型(黒色ドット)として、抽出したキャビティを特定した。図11は、野生型:非結合が1:1(a)、1:10(b)、1:100(c)、1:1,000(d)、1:10,000(e)、及び1:100,000(f)で表されるAxlの比率を示している。抽出されたキャビティは、赤色ドット(野生型として特定)と青色ドット(非結合突然変異体として特定)とで特定した。受容体−結合(野生型)抽出物は、プロットのゲート領域の内側に収まっており、1つを除いてすべての非結合突然変異体は、ゲート領域の外側に収まっている(単一ゲート非バインダは、左下パネルにおいて矢印で示されている(野生型:非結合の割合が1:1000)。
[00246] 6個のモックライブラリに亘って、39個中37個の抽出物が、野生型Axlとして正確に特定され、ほとんどの厳しい条件下(表4)で100,001の濃縮比であり、乳化ベーススクリーニング法に好適に匹敵する値を達成している(例えば、Zinchenko,A.らによるAnal.Chem.86、2526〜33(2014年);Fischlechner,M.らによるNat.Chem.6、791〜796(2014年)を参照のこと)。
[00247] さらに、非バインダとして選択された19個すべての抽出物を非結合Axl異型として特定した。そこで、これらのモックライブラリスクリーニングは、特に、非機能的クローンの大きな個体群における希少な機能的クローンにおいて、リガンド−結合性蛋白質異型を発現する細胞を差別化するμSCALEの能力を査定する。
[00248] scFvナイーブライブラリスクリーニング。高い親和性でGas6に結合する異型を特定するために、酵母表示単鎖可変断片(scFvs)のナイーブライブラリのスクリーニングに、μSCALEプラットフォームを適用した。上述の通り、発現のため、酵母表示scFvライブラリを成長及び誘導させた(Deventer,J.A.Van&Wittrup、K.D.、Yeast Surface Display for Antibody Isolation:Library Construction、Library Screening,and Affinity Maturation.1131、151〜181(Humana Press、2014年)。μSCALEスクリーニングに先立って論理的多様性を低減するために、ライブラリに2ラウンドの磁気活性化細胞選別(MACS)を施した。すなわち、Hisタグ分離ビーズ(Dynabeads(登録商標)、10103D、Life Technologies)に結合しない細胞のためのネガティブ選択と、Gas6コーティング磁気ビーズに結合する細胞のためのポジティブ選択とである。メーカーの指示(Dynabeads(登録商標)His−Tag Isolation&Pulldownプロトコル)により、双方の選別を実施し、前述の選別後、モデル化した(Chao,G.らによるNat.Protoc.1、755〜68(2006年))。回転子上で飽和量のHisタグGas6により、4℃で2時間、Dynabeads(登録商標)をインキュベートすることにより、Gas6コーティング磁気ビーズ(4mg)を調製した。未結合Gas6を除去するために、結合/洗浄緩衝剤(水に50mMリン酸ナトリウム(pH8.0)、300mMのNaCl、及び0.01%Tween−20を入れたもの)を含む磁気ホルダ(MPC−S、Dynal)を使用して、これらのビーズを洗浄した。選別1については、プルダウン緩衝剤(水に3.25mMのリン酸ナトリウム(pH7.4)、70mMのNaCl、及び0.01%Tween−20を入れたもの)で、8×109個の酵母細胞を洗浄し、プルダウン緩衝剤内の非コーティングHisタグDynabeads(登録商標)で、4℃にて2時間、インキュベートを行った。インキュベート後、細胞及びビーズを磁気ホルダ内に載置し、未結合細胞を収集した。これらの非結合酵母を新たなチューブに移行し、調製したGas6コーティングビーズで、4℃にて2時間のインキュベートを行った。磁気ホルダを使用して、結合/洗浄緩衝剤により、酵母及びビーズを数回洗浄した。His溶出緩衝剤(水に150mMのイミダゾール、25mMのリン酸ナトリウム(pH8.0)、150mMのNacl、及び0.005%のTween−20を入れたもの)で、Gas6結合酵母細胞を磁気ビーズから溶出し、SD−CAA中で成長させた。このプロトコルを使用することにより、MACSは、〜2×106個の異型までライブラリを低減したが、これは、当初のライブラリサイズの0.4%に対応する。
[00249] MACS低減scFvライブラリの2つの連続スクリーニングラウンドのために、μSCALEを使用した。酵母を、33nMのGas6(選別1)又は10nMのGas6(選別2)を含有するPBS A中で2時間、室温にてインキュベートした。Gas6によるインキュベートに続いて、ニワトリ抗c−Myc抗体(Life Technologies, A21281)の1:250希釈液を含有するPBSA中、4℃にて30分間、細胞を染色した。また、マウス抗HiSタグIgG Hilyte Fluor488(Anaspec、61250−H488)の1:100希釈液を含有するPBSA中、4℃にて30分間、細胞を染色した。最後に、ヤギ抗マウスIgG Alexa Fluor488(Life Technologies、Al1001)と、ヤギ抗−ニワトリIgG Alexa Fluor555(Life Technologies、A21437)との双方の1:100希釈液を含むPBSA中、4℃にて30分間、二次ラベリングを実施した。ラベル付酵母を〜12,800個/μLの細胞に希釈し、10μmアレイ上に投入し、上述の励起/放射パラメータを使用してGas6結合について解析した。μSCALEのラウンド1については、Gas6結合/c−Myc発現比が最高となる143個のキャビティを単一プール内で自動抽出し、Gas6に対する結合親和性を濃縮した個体を生成した。μSCALEのラウンド2では、単一細胞選別を介して、上位15個のキャビティを抽出した。ラウンド2の後、Zymoprepキット(Zymo Research Corporation)を使用して、プラスミドDNAを回収し、PCRで増殖させ、配列決定した(Sequetech)。
[00250] PBSA200(PBS中に0.1%BSA+200mMのNaClを入れたもの)中に、可溶Gas6の濃度を変化させて、室温で2時間、誘導した105個の酵母細胞をインキュベートすることにより、結果として得られたscFvクローンのGas6結合親和性を測定した。ニワトリ抗c−Myc抗体(Life Tecnologies、A21281)の1:250希釈液を含有するPBSA200において、4℃で15分間、細胞を染色した。マウス抗HisタグIgG Hilyte Fluor488(Anaspec、61250−H488)とヤギ抗ニワトリIgY PE(Santa Cruz Biotechnology、sc−3730)の1:100希釈液を含有するPBSA200において、4℃で30分間、二次抗体ラベリングを実施した。フローサイトメトリ(FACS Calibur、BD Biosciences)により、ラベル付細胞の結合及び発現シグナルを測定した。レポートされたKDに対する誤差は、推定された結合親和性の1−σ(68%)信頼区間に対応し、各合致点に対する3回の独立した実験からのデータを使用したパラメータブートストラップ法で計算した。
[00251] 各選別ステップの進捗をモニタリングするために、この手順で、フローサイトメトリを使用した。開始scFvライブラリ(7×108個の形質転換態)は、Gas6に対していずれの区別可能な結合も示さなかった。図12は、Gas6結合scFvに対するナイーブライブラリスクリーニング全体を通じたフローサイトメトリ散布図を示している。非特定的結合scFvのライブラリをクリアするために、磁気活性化細胞選別(MACS)をまず使用し、次いで、論理的ライブラリサイズを2.8×106個のクローンまで低減するGas6コーティング磁気ビーズを使用して、MACSのラウンドを行った。図12のパネルa)は、0nMのGas6で染色された当初のscFvナイーブライブラリ(ライブラリサイズ:7×108)を示している。パネルb)は、33nMのGas6で染色した当初のscFvナイーブライブラリを示している。パネルc)は、MACS後のscFvライブラリ(ライブラリサイズ:2.8×106)を示している。μSCALEプラットフォームへの2ラウンドのスクリーニングを使用して、結果として得られたscFv異型のプールをGas6に対するバインダについて濃縮した。
[00252] 図10Cは、Gas6バインダのための酵母表面表示ナイーブscFvライブラリのμSCALEスクリーニングのラウンドの散布図を示している。選別1:ユーザ引込ゲートによる自動化プール抽出(左側)であり、選別2:手動単一細胞抽出(右側)である。灰色ドットは、抽出クローンである。また輪郭灰色ドットは、Gas6に対する結合が最高であるクローンである。第1ラウンドにおいて、比較的低濃度のGas6(33nM)をライブラリに添加し、平衡を達成させる。scFv発現量に正規化された、Gas6結合レベルが最高である酵母を含有した約150個のマイクロキャビティを、プール抽出を介して選択した(図10C、左側)。この抽出した酵母プールを培養し、scFv発現のために再誘導し、プール抽出を介して選択した(図10C、左側)。この抽出した酵母プールを培養し、scFv発現のために再誘導し、フローサイトメトリで解析したが、酵母の個体群が、Gas6に特定の結合を有するものの、抗体ベース検出試薬とは特定の結合を有さないことが明らかであった。図12のパネルd)は、自動抽出を介して第1μSCALE選別後に分離されたscFvライブラリを示している(ライブラリサイズ:143)。
[00253] より厳しい選択圧力(10nMのGas6)下で、第2μSCALEスクリーニングを実施した。このスクリーニングでは、単一細胞抽出を介して、15個のマイクロキャビティを分離し、配列決定した。(図10C、右側)。図12のパネルe)は、単一細胞抽出を介した第2μSCALE選別後に分離されたA Gas6−結合scFvクローンを示している。
[00254] スクリーニングの回顧的検討により、最高のGas6結合レベル(scFv発現に対して正規化)が観察された5つのマイクロキャビティは同一のクローンであるであることを明らかにした(図10C、右側)。図10Dは、μSCALEで特定された酵母表示scFvのGas6結合曲線が、結合Gas6の分画対追加濃度として表されており、結果として得られるscFv異型は、ナイーブscFvライブラリから採れた他のバインダに匹敵する130±30nMのKDを伴ってGas6に結合される。エラーバーは、3回の独立した測定の標準偏差に対応する。
[00255] 実施例3:受容体の親和性成熟:変異性ライブラリ選別
[00256] 腫瘍転移の効果的な阻害剤として機能する高親和性Axl異型を分離するためのモデルシステムとして、Gas6/Axlを使用した。蛋白質設計ストラテジは、反復的な2ラウンドのライブラリ生成及びスクリーニングを含むものであり、ランダムに生成されたAxl突然変異の初期ライブラリと、第1ライブラリから回収された異型に由来する組み換えAxl突然変異の第2ライブラリとである。
[00257] Gas6コーティング磁気ビーズを使用した1ラウンドのMACSは、論理的ライブラリサイズを3.5×106個のクローンに低減するものであり、マイクロキャピラリ毎に平均4個の細胞を生じる濃度でアレイを投入した。
[00258] 結果として得られたAxl異型のプールを培養し、誘導し、平衡結合を生じるため、100pMのGas6で15時間インキュベートした。20μm直径のキャピラリ毎に平均4個の細胞を産出する濃度である、12,600個/μLの細胞となるように、ライブラリを希釈し、2色のエピ蛍光で撮像した。我々は、Gas6バインダのために濃縮を行うべく、Axl発現レベルに対して最高レベルのGas6結合で酵母を含有する30個のマイクロキャピラリを個別に抽出し、各マイクロキャピラリの内容物を、別々に繁殖させた(図34)。30個中22個の抽出物に、少なくとも1つの細胞を成長し、合計30個のクローンを産出した。これらの酵母クローンからのプラスミドDNAの配列決定時、いくつかの突然変異の一致が観察されたが、注目すべきは、D87G突然変異及びV92A突然変異であった。
[00259] バクテリア突然変異を組み合わせ、中性又は有害の突然変異を取り除くために、付着伸長プロセス(StEP)を介して第2ライブラリを生成するテンプレートとして、ライブラリクローンから分離したDNAを使用した。我々は、延長期間後、Gas6リガンドに結合したままのAxl突然変異体を分離するために、反応速度オフレートアッセイを使用して、この第2ライブラリをスクリーニングし、より解離速度の遅い異型の選択を行った。飽和レベルのGas6で、酵母表示Axlライブラリをインキュベートし、未結合リガンドを除去するために洗浄し、抗体染色に先立って、過剰な野生型Axl Igl Fcの存在下で24時間、解離を生じさせた。
[00260] 解離の24時間後であっても、このライブラリのサブセットは、高い結合レベルを保ったが、これはμSCALE上で明確に観察された。我々は、Axl発現レベルに対して最高のGas6結合を示す40個の個別マイクロキャピラリを抽出し、各マイクロキャピラリの内容物を別々に繁殖させた。我々は、30個の抽出物から少なくとも1つの細胞を回収し、合計42個のクローンを産出した。
[00261] 図43は、Gas6バインダに対する酵母表面表示変異性Axl Iglライブラリのスクリーニングを示している。平衡結合を生じるために、100pMのGas6で15時間、このライブラリをインキュベートした。30個のマイクロキャピラリを別々に抽出した。22/30個の抽出物が成長し、結果として30個のクローンが生じた。(b)StEP後、我々は、抗体染色に先立って、反応速度オフレート選別を24時間実施した。このライブラリから、30個のマイクロキャピラリを別々に抽出した。23/30個の抽出物が成長し、結果として45個のクローンが生じた。
[00262] 抽出された酵母クローンからのプラスミドDNAの配列決定後、我々は、強い合致突然変異、特に、A72V、D87G、V92A、及びV126Iの突然変異を観察した。D87G及びV92Aの突然変異は、以前に特性化したAxl Igl異型における親和性のキーとなる原動力である。我々の以前の作業においてFACSでスクリーニングした時、D87G及びV92Aに加え、点突然変異A72Vも、当初の変位性PCRライブラリから特定され、単独の場合並びにD87G及びV92Aの組み合わせの場合の双方において、GaS6結合の強い貢献因子となることが分かった。
[00263] 最終的なクローンを査定するために、我々は、μSCALEスクリーニングで最も頻繁に出現した酵母表示異型で結合アッセイを実施した。酵母表面表示WT Axl Iglは、500±300pMのKd及び4670±190s−1(n=3の技術的再現)の結合オフレート(koff)で、Gas6に結合した。開発したAxl Igl異型のすべてが、WT Axよりも約3倍タイトな親和性を備え、50倍まで低速の反応速度解離速度で、Gas6への結合が改善したことを実証した。表6並びに図42A及び図42Bを参照こと(エラーバーは、3つの技術的再現のs.d.を示している)。
[00264] 測定された結合親和性間の類似度は、真の蛋白質結合相互作用でなく、酵母上結合アッセイにおける限定を反映することができる。解離係数(IQ)、その結合パートナの半分を占有するのに必要なリガンド濃度に等しい平衡定数を使用して、結合親和性を説明する。解離定数は、会合率と解離率の比率は下記である。
[00264] 研究者は、細胞会合結合親和性の測定時の2つの共通争点、すなわち、リガンド枯渇と平衡時間とを意識しなければならない。
[00265] 結合アッセイ実施時の共通前提は、リガンドの可溶濃度が一定に保たれるということである。換言すると、遊離リガンドの小さな分画のみがその結合パートナに結合するということが前提とされる。リガンドの10分の1未満を溶液から確実に除去することが実践として良好である。しかしながら、高親和性蛋白質を得るには、リガンドの実質的分画がその結合パートナに結合して、遊離リガンド濃度を枯渇させてしまうリスクがある。例えば、5×105個の酵母細胞は、各々、高親和性(IQ=10pM)のバインダの5×105個のコピーを発現するが、10pMのリガンド溶液から約1.25×109個のリガンドに結合するであろう。このシナリオでのリガンドの枯渇を防ぐために、少なくとも2.1mLの反応体積を使用することで、必要とされる蛋白質の総量を増加させなければならない。2.5mlを超える反応体積については、大型(15ml又は50ml)のチューブを使用しなければならない。これらのチューブにおける試料を回転して静かに注入することは、非常に多くの手間を要し、誤りを生じやすい。我々は、さらに適正な反応条件を確保するには、50mLまでの反応体積を使用して、リガンド枯渇を防ぐために、必要な体積を最適化しなければならない。
[00266] 平衡に近づけるため、蛋白質相互作用に必要な時間を推定するのに、リガンド濃度と組み合わせた会合率及び解離率を使用することができる。可溶蛋白質濃度が酵母表示蛋白質のモル過剰である場合(リガンド枯渇を防ぐため)、平衡に近づくための時間定数(τ)は、下記である。
[00266] 式中、[L]0は、リガンドの初期濃度である。我々のAxl異型とGas6の間の結合相互作用をさらに特性化するために、我々は、それらの酵母上反応速度オフレートを測定した。我々は、WT Axlと我々の開発した異型との間の劇的な差異を観察した。酵母結合Gas6レベルは、WT Axlについては、6時間以内に背景レベルに対して急速に解離したが、我々のAxl異型は、48時間後も、初期のGas6結合レベルの10%超に保たれた。注目すべきは、A72V/V92A異型(koff=7.1×10−6s−1)は。他の2つの異型(koff=1.4×10−5s−1)より2倍低いオフレートを有する。以前に特性化したAxl Igl異型は、すべて、2×107M−1s−1付近の反応速度オンレート値を有し、親和性の向上がより低速なオフレートの結果であったことを提示している。興味深いことに、これらのオンレート値は、通常の抗体分画58より100倍高い。我々は、これらの高速なオンレート値により、最低のリガンド濃度([L]0=10pM)については、異型とGaS6の間の反応が6時間以下で99%の平衡結合(4.6τ)に達することを見出すことができる。論理[L]0=1pMの条件であっても、すべての反応が、48時間で99%の平衡結合に達し、これが、実験に使用した平衡時間であった。
[00267] 確実に正確な結合親和性測定を行うためにこれらの対策を採るにも関わらず、酵母表示Axl異型の結合親和性は、酵母表示結合の本質的な限定が故に、低く見積もられるようである。例えば、反応速度除外アッセイ(KinExA)による以前の作業では、33±0.6pMと12.0±0.2pMの親和性で可溶野生型Axl又はV92Aの突然変異体に結合するGas6が、各々10であることを示した。
[00268] 我々がアッセイ条件を慎重に考慮したのにも関わらず、酵母表示Axl異型の親和性は、酵母表示実験の本来の制限により、低く見積もられるようである。例えば、反応速度除外アッセイ(KinExA)による以前の作業では、Gas6が、33±0.6pM及び12.0±0.2pMの親和性で可溶野生型Axl又はV92A突然変異体に結合されたことを示した。
[00269] Axl Igl平衡選別
[00270] MACSから分離した酵母を、SD−CAA最小酵母培地(20gのデキストロース、6.7gのDifco酵母窒素塩基、5gのBactoカサミノ酸、5.4gのNa2HPO4、8.56gのNaH2PO4・H2Oであり、1lの体積に対して脱イオン化H2O中に溶解した)内で成長させ、SG−CAA培地)デキストロースを置換する20gのガラクトースを使用した以外、SD−CAAのように調製した)内で培養することにより、それらの表面上にAxlを発現させるように誘発した。Axl異型を表示する酵母を、100pMのGas6を含むPBSA(リン酸緩衝生理食塩水+1mg/mlのBSA)中、室温で15分間、インキュベートした。Gas6によるインキュベートに続き、ニワトリ抗c−Myc抗体(Thermo Fisher Scientific、A21281)の1:200希釈液を含有するPBSA中、4℃で45分間、細胞を染色した。その後、マウス抗HiSタグIgG Hilyte Fluor555(Anaspec、61250−H555)の1:100希釈液を含有するPBSA中、4℃で45分間、細胞をインキュベートした。その後、ウサギ抗マウスIgG Hilyte Fluor555(Anaspec、28164−H555)の1:100希釈液を含むPBSI中、4℃で45分間、Gas6に対する追加の二次ラベリングを実施した後、ヤギ抗ニワトリIgY Alexa Fluor4888(Thermo Fisher Scientific、A11039)の1:100希釈液を含むPBSA中、4℃で45分間、c−Mycの二次ラベリングを行った。ラベル付酵母を〜12,600個/μlの細胞まで希釈し、20μmマイクロキャピラリアレイに投入し、上述の励起/放射パラメータを使用して、Gas6結合及びc−Myc発現について解析した。最高のGas6結合/c−Myc発現比を有する30個のキャピラリを個別に抽出した。注した酵母をSD−CAA寒天プレート上で成長させ、コロニーPCRにより、それらに含まれるプラスミドを解析し、後述の通り、配列決定した。
[00271] Axl Igl反応速度オフレート選別
[00272] DNAシャッフルライブラリで形質転換した酵母細胞をSD−CAA最小酵母培地中で成長させ、SG−CAA培地内で培養することにより、それらの表面上にAxlを発現させるように誘発した。2nMのGas6を含有するPBSA中、室温で3時間、酵母表示ライブラリをインキュベートし、未結合Gas6を除去するためにPBSAで2度洗浄した後、余剰量(100nM)の野生型Axl Fc競合により、室温で24時間、インキュベートする。上述のμSCALE平衡選別と同様に、蛍光抗体ラベル化及びマイクロキャピラリアレイ投入を実施した。μSCALE反応速度オフレート選別について、最高のGas6結合/c−Myc発現比を備えた40個のキャピラリを個別に抽出した。抽出した酵母をSD−CAA寒天プレート上で成長させ、それらに含まれるプラスミドをコロニーPCRによって解析し、
[00273] 実施例4:蛍光蛋白質の細胞成長及び高スループットスクリーニング
[00274] 方法
[00275] マイクロキャビティアレイにおける細胞成長。結果としてマイクロキャビティ毎に平均1個のバクテリアとなるような大腸菌濃度で、20μm直径のマイクロキャビティアレイを投入し、0.2%アラビノースを含有するLB培地中、37℃でインキュベートを行い、順次撮像した。4000個のマイクロキャビティ培養の緑色蛍光を、時間の関数として定量化し、結果として、図41に示される観察成長曲線を作成した。合致された指数関数的曲線に基づくと、観察されたダブル化時間は、52.8±.5分(4000回の合致時間経過の再サンプル化によって推定した不確実性)であり、56±5分(ニコール5の生物学的再現)のバルク培養におけるダブル化時間に近く、合致する。レーザ時点におけるマイクロキャビティ間の蛍光強度の高い変動程度は、成長動態における細胞間不均質を反映している。
[00276] 蛍光蛋白質ライブラリの構築及びスクリーニング。ddFP技術には、蛍光ヘテロダイマーを形成するための2つの暗いFPモノマーの可逆的会合が含まれる。成分FPモノマーを命名する慣習として、ddFP−A及びddFP−Bである。ddFP−Aモノマーは、急冷発色団を所持し、ddFP−Bモノマーには発色団が不足する。我々は、非共有結合錯体をddFP−AB(例えば、ddOFP−AB)として指定し、略溶融タンデムダイマーをtdFP−ABとして指定した。tdRFP−ABをXhol及びEcoRIの制限部位(ここでは、ddRFP−Bがタンデム遺伝子溶融内の5’パートナである)の間のpBAD発現プラスミド内にクローン化し、ddOFP−ABの設計のためのテンプレートとして使用した。まず、M66Tを部位指定突然変異生成により、ddRFP−A内に導入した。以下の変位性PCR反応条件、すなわち、0.15mM又は0.075mMのMnCl2、10ngのテンプレート、200μMのdATP、200μMのdGTP、1mMのdTTP、1mMのdCTP、4mMのMgCl2を使用して、ddRFP−A(M66T)をランダムに変異誘発することにより、変異性ライブラリを作成した。68℃の伸長温度を備えたTaqポリメラーゼを使用して、各反応について、40サイクルのPCR増殖を実施した。突然変異体遺伝子ライブラリをddRFP−Bにクローン化3’した、タンデムFP異型のライブラリを作り、μSCALEプラットフォーム内での成長及びスクリーニングのため、DH10Bエレクトロコンピテント大腸菌に形質変換した。
[00277] 高度蛍光ddOFPを作成するために、各ラウンドのスクリーニング間に分離したDNA上に変異性PCRを実施し、3つの連続的大腸菌ライブラリをスクリーニングすべく、μSCALEを使用した。各ライブラリサイクルでは、大腸菌を回収するために、形質変換後、振動させつつ、37℃のLB培地内で一晩、細胞を成長させた。その後、培養液を発現培地(アンピシリン(100μg/ml)及びアラビノース(0.1%)を補ったLB)中、〜3,200個/μLの細胞となるまで希釈し、20μmアレイに投入し、湿らせたキムワイプでペトリ皿内に一晩、37℃でインキュベートした。一晩の成長後、525/45nm励起/565nmロングパス放射フィルタの蛍光強度について、アレイを解析した。μSCALEラウンド1については、10個のキャビティをバルク個体群として自動抽出し、これを、上述の通り、変異性PCRを介して次のライブラリの作製に使用した。μSCALEラウンド2については、単一細胞選別を介して12個のキャビティを抽出した。蒸気と同一の条件で第3世代変異性ライブラリを作成するために、最高蛍光シグナルを備えた4個のクローンを使用した。第3及び最終μSCALEラウンドについては、単一細胞選別を介して上位10個のキャビティを抽出した。各ライブラリスクリーニング後の蛋白質特性を評価するために、抽出した細胞を発現培地内で振動させつつ、37℃にて一晩培養した。B−Per(Pierce)を使用して蛍光蛋白質を抽出し、Biotek Synergy H4プレートリーダを使用してスペクトルを収集した。
[00278] ddOFPスペクトル特性。スペクトル解析に先立ち、金属キレートNi−NTAクロマトグラフィを使用してすべての蛋白質を精製し、PBS内に表示した。Biotek Synergy H4プレートリーダにより、放射スペクトルを記録した。1cm水晶製微小細胞キュベットを使用して、Varian Cary 50 UV/Vis Spectrophotometerに吸光度測定を行った。ε値を判定するために、アルカリ発色団変性法を使用した。ddOFPのための量子収率判定の参照として、mCitrine(φ=0.76)を使用した。所望のpHの緩衝剤において精製蛋白質をインキュベートし、96ウェルのBiotek Synergy H4プレートリーダで放射スペクトルを取得することにより、pH測定を実施した。PBS中に1μMの蛍光蛋白質溶液を調製し、所望のpHの広域緩衝剤で1:10に希釈した。この広域緩衝液は、銅体積の0.04MのH3BO3、0.04MのCH3COOH、及び0.04MのH3PO4を混合して調製した。調整して貯蔵した溶液に1MのNaOHを添加することにより、pHを所望の値に調整した。実験データを下記に合致させることにより、pKaを判定した。
[00278] 式中、Fは、蛍光であり、A及びBは、ベースラインを規定する変数であり、nHは、Hill係数である。平均統合放射ピーク強度は、pHの関数として正規化及びプロットした。
[00279] μSCALEを新たな蛍光蛋白質異型を開発するために使用し、利用可能なバイおセンサのカラーパレットを拡大し、大腸菌ライブラリでプラットフォームの適合性を実証した。従来、蛍光蛋白質は、所望の色相及び/又は明度(Ai、H.−W.らによるNat.Protoc.9、910〜28(2014年))を特定するために、寒天皿上の個別の大腸菌コロニー成長をスクリーニングすることにより、開発する。単純明快ながら、この低スループット法は、基礎的光学とコロニー選出の手間に依存しており、時間を消費し、主体的であり、最も望ましい異型の回収を妨げる。我々は、まず、マイクロキャビティアレイ内の個々の大腸菌細胞から空間的に分断された培養の能力を確立した。小孔毎に単一細胞を得るような濃度で蛋白質発現大腸菌懸濁液をアレイに投入し、37℃でインキュベートし、種々の間隔で撮像した。結果として得られた経時変化は、ロバストなクローン増殖と蛍光蛋白質精製を示している。大腸菌成長をキャビティ内に制限することにより、隔離培養の高密度アレイを作成した。
[00280] 図13は、GFPを発現する空間的に分断された大腸菌培養液の成長を示している。画像は、20μmアレイの小さな一部を示しており、ここには、マイクロキャビティ毎に単一のバクテリア細胞が投入され、指示された時間、37℃で培養され、順次撮像される。図14は、成長が小孔毎の合計GFP放射を統合することによってモニタリングされたことを反映している。エラーバーは、測定したキャビティ(n=177)の±標準偏差を示している。
[00281] 明色相移行、二量化依存蛍光蛋白質(ddFP)の新色異型を精製するために、μSCALEを使用した(図15A)。二量化依存蛋白質(ddRFPと称する)をテンプレートとして使用することにより、青色移行突然変異(M66T)を導入したが、これは、初期段階では蛍光をなくすものであった(Shaner,N.C.らによるNat.Biotechnol.22、1567〜72(2004年);Alford,S.C,らによるACS Synth.Biol.1、569〜75(2012年))。図15Bは、ddRFPテンプレートからddOFPを精製するために使用される設計ストラテジを示している。M66T突然変異をddRFP(スターバースト)のAコピーに導入し、大いに非蛍光である色相移行異型を生成した。3ラウンドの突然変異生成及び大腸菌に発現された蛋白質ライブラリのμSCALEスクリーニングにより、結果として、ddOFPを生じたが、これは、M66Tに加えて5個の突然変異を有するものである。
[00282] 蛍光を取り返して強化するために、我々は、変異性PCR突然変異生成によって生成され、大腸菌に発現されたライブラリのμSCALEスクリーニングを通じて、別々の3ランドの指向性進化を実施した。指向性進化ラウンド1及び2については、弱い蛍光を実証する約十数個のクローンを分離し、次の突然変異生成ランドのための遺伝子テンプレート混合物を生成するために使用した。ラウンド3により、ライブラリの分画は、ライブラリ平均より実質的に高い蛍光レベルを示した。図16Aは、蛍光の最も明るい10個のキャビティを反映しており、これらを抽出、培養、及び特性化した。最も明るい蛍光蛋白質異型を更なる解析のために選択した。観察されたライブラリ異型の蛍光強度の分布を線トレースで示す。この分布の上尾に最も明るい10個の細胞を示している(シェード付き)
[00283] このラウンド3の異型は、二量化依存オレンジ蛍光蛋白質(ddOFP)を指定し、ラウンド2からの最高の突然変異体と「親」M66Tクローンとに対して蛍光強度の劇的な増加を与える当初のM66T突然変異に加え、5個の突然変異を取得した。図16Bに示される通り、反復的指向性進化は、蛍光強度の増加を示している。プロットは、M66T、ラウンド2異型、及びddOFP(ラウンド3から)を発現する大腸菌粗溶解物の蛍光放射スペクトルを描いている。挿入は、上述のFP異型を発現する大腸菌の細胞ペレットの色相の増加を描いている。
[00284] 図17は、ddOFP[配列識別番号:1]とその親であるddRFP[配列識別番号:2]のAコピーの配列アラインメントを示している。当初のM66T突然変異は丸で囲んである。3ラウンドの指向性進化で取得した突然変異を灰色でハイライト表示し、下線を付した。
[00285] 図18は、ddOFPが、各々、535nm及び565nmにおいて吸収及び放射の最大値を有することを示しており、ddRFPとddYFPの異型間のスペクトルギャップを埋めている。図19は、ddGFP、ddYFP、ddOFP(ダッシュ線)、及びddRFPに対する正規化放射スペクトルを示している。ddGFP、ddYFP、及びddRFPに対する参照スペクトルは、Alford,S.CらによるACS Synth.Biol.1、569〜75(2012年)及びAlford,S.CらによるChem.Biol.19、353〜60(2012年)から得た。また、ddOFPは、他のddFPに匹敵する明度とコントラストを示し(表7)、それをddFPベースのバイオセンシング適用の好適なモジュールとする。
[00286] 図20は、ddOfp及びddOFP−Aに対するpH依存放射プロファイルを示している。平均統合放射ピーク強度をpHの関数として正規化し、プロットした。ddOFP−AとtdOFPに対するpKaの値を、各々、7.9及び6.9であると判定した。エラーバーは、3回の独立した実験に対する±標準偏差を示している。
[00287] 実施例5:改良酵素触媒に対するハイスループット反応速度測定及びスクリーニング
[00288] アルカリホスファターゼ蛋白質構築物の調製。大腸菌野生型アルカリホスファターゼ(WT AP)遺伝子と反応速度比較に使用したR166S異型とを、Nhel及びBamHI制限部位間のpCT酵母表示プラスミド内にクローン化した。酵母表面表示研究のためのエレクトロポレーションにより、プラスミドDNAをサッカロマイセス・セレビシエEBY100に形質転換した。WT APとR166S突然変異体の可溶バージョンも発現させ、上述の通り、大腸菌SM547 DE3細胞から精製した(Andrews,L.D.らによるBiochemistry 53、6811〜9(2014年))。pCT表示プラスミドで形質転換した酵母細胞を選択的培地で成長させ、上述の通り、誘発させた。酵母誘発培地には、500μMのZnCl2と500μMのMgCとを補い、触媒のために必要とされる金属イオンを提供した。酵母表面表示酵素のレベルを定量化するために、各酵素に溶融したC末端c−Mycタグの抗体ラベル化を実施した。約8×104個の酵母細胞を洗浄し、ニワトリ抗c−Myc抗体(Life Technologies、A21281)の1:250希釈液を含有するPBSA中、ロータ上で室温にて45分間、再懸濁した。インキュベート後、酵母を洗浄し、ヤギ抗ニワトリIgG Alexa Fluor488(Life Technologies、A11039)の1:100希釈液を含有するPBSA中、ロータ上で室温にて30分間、再懸濁した。その後、Guava easyCyteフローサイトメータ(Millipore)でc−Myc発現レベルを検出した。
[00289] DDAO生成物pKaの測定。生成物蛍光のpH依存性を判定するため、7−ヒドロキシ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン(DDAO)にpH測定を実施した。Milli−Q水中、1μMのDDAO貯蔵溶液を調製し、溶液のpHを調整するために1MのHClと1MのNaOHとで滴定した。Biotek Synergy H4プレートリーダを使用して、各滴定ステップからのアリコートに590/660nmの励起/放射における蛍光測定を実施した。Henderson−Hasselbalchの式にデータを合致させることにより、DDAO生成物について5のpKaを生じた。そこで、DDAO窒素のプロトン化から生じる蛍光消光をなくすため、次の酵素アッセイをpH8(生成物pKaを上回る3ユニット)で実施した。図21は、滴定の結果を示している。エラーバーは、合致したpKa値に対する1−σ(68%)の信頼区間に対応し、データのケース再サンプリングを使用したブートストラップによって判定した。
[00290] アルカリリン酸活性の解析。誘発した酵母細胞を〜3200個/sLの細胞となる最終濃度まで希釈し、AP反応緩衝剤(100mMのMOPS pH8.0、0.5MのNaCl、1mMのMgCl2、100μMのZnSO4、0.2%BSA、1mMのマンノース)中で2度、洗浄し(Alford,S.C,らによるACS Synth.Biol.1、569〜75(2012年);Alford,S.C,らによるChem.Biol.19、353〜60(2012年))を参照のこと、解析の直前に、可変濃度のDDAOP及び無機リン酸を含有するAP反応緩衝剤中で再懸濁した。その後、各々、バルク実験及び単一細胞実験のために、反応化合物を96ウェルマイクロタイタープレート又はμSCALEアレイのいずれかに投入した。Biotek SYNERGY(商標)H4プレートリーダ分光計上で、590/660nmの励起/放射にて、蛍光経時変化を測定することにより、バルク反応速度アッセイを実施し、これにより、0〜3μMの範囲のDDAO濃度で蛍光シグナルの線形相関を可能にした。図22A及び図22Bは、Biotekプレートリーダ分光計上で生成物濃度の関数として測定したDDAOの生成物に対する放射スペクトルと、右側には検量線を生じるように定量化されたピーク放射とを示している。蛍光取得パラメータは、以下の通りであった。感度=100、帯域幅=9.0nm。
[00291] μSCALEプラットフォームの反応速度測定について、アレイの各キャビティについて、単一細胞反応の経時変化を精製するために、600/60nmの励起/655nmのロングパス放射フィルタの設定間隔で、一連の画像を取得した。μSCALEフィルタセットとカメラにより、プレートリーダに匹敵する動的範囲に亘って、蛍光での生成物形成の線形相関を検出した。図23は、単一のマイクロキャビティアレイ上の分離スポット上に可変濃度の生成物標準を投入した後、アレイ上の各キャビティの蛍光強度を測定することにより、μSCALEプラットフォーム上に精製した、図22A及び図22Bと同様の検量線を示している。エラーバーは、各スポットのすべてのキャビティに亘る標準偏差を反映しており、加重最小二乗を使用して、検量線に合致させるために使用した。双方の場合において、反応速度を推定するために、各反応速度時系列の線形領域を使用した。反応速度データからの逆算率定数のために、50pMの効果的酵素濃度(細胞15、45毎に表示された〜104個の酵素コピーを前提とする)を使用した。
[00292] AP反応における無機リン酸汚染の測定。上述の通り、大腸菌(Life Technologies、PV4406)からの蛍光ラベル付リン酸結合性蛋白質(PBP)を使用して、AP反応速度アッセイにおいて使用したすべての試薬の無機リン酸内容物を定量化した(Brune,M.らによるBiochemistry 33、8262〜71(1994年))。簡単に述べると、各試料のうちの100をリン酸センサ検出緩衝剤(20mMのTrisHCl pH7.6、0.05%Triton X−100)中の1μmのPBPのうちの100と混合し、Biotek SYNERGY(商標)H4プレートリーダ分光計上にて430/450nmの励起/放射で混合物の蛍光を直ちに読み出した。PBP結合熱力学における濃縮MOPS及び食塩水からの干渉を最少化するために、センサでのインキュベートに先立ち、AP反応緩衝剤中のリン酸内容物の測定時、乾燥剤を水中で1:20に希釈した。PBP貯蔵物を−80℃にてリン酸センサ保管緩衝剤(10mMのTrisHCl pH7.6、50mMのNaCl)中、10μMのアリコートとして保管し、使用に先立って個々に解凍した。図24に示される通り、F=Fmin+(Fmax−Fmin)*(1+Kd/[Pi])−1の形態の2状態結合等温線に合致した標準曲線を使用して、蛍光測定をリン酸濃度に変換した。エラーバーは、3つの測定に亘る標準偏差を反映している。2状態結合等温線への合致は、実線としてデータ上に重ね合わせられている。結合パラメータは、Fmin=14200+/−500RFU、Fmax=85000+/−1000RFU、及びKd=0.94+/−0.05μMであると判定された。
[00293] アルカリホスファターゼライブラリの構築及びスクリーニング。以下の反応条件、すなわち、0.1mMのMnC2、10ngのWTテンプレート、200μMのdATP、200μMのdGTP、1mMのdTTP、1mMのdCTP、4mMのMgCl2を使用して、WT AP遺伝子[GENBANK登録番号:M13345]をランダムに変異させるために、変異性PCRを使用した。上述の通り、PCR増殖を実施した。変異させたAP挿入DNA及びNhel/BamHI消化pCTプラスミドを、EBY100酵母中に5:1の重量比で電気穿孔し、試験管内の相同組替で会合させた(Chao,G.らによるNat.Protoc.1、755〜68(2006年))。ライブラリサイズは、希釈平板により、〜107であると推定された。
[00294] アッセイ条件下で活性の改善した突然変異体について変異性APライブラリをスクリーニングするために、μSCALEを使用した。誘発した酵母細胞をAP反応緩衝剤中で2度洗浄し、1μMのDDAOP及び15μMの無機リン酸を含有するAP反応緩衝剤中で〜3,200個/μLの細胞となるように再懸濁し、アレイ内に投入した。30分の反応時間後、AP反応速度研究において説明した通り、各キャビティの蛍光強度を解析した。最高の蛍光強度を備えた15個のキャビティを個々に抽出し、SD−CAA寒天プレート上で成長させた。上述の通り、抽出した細胞からの酵母表示AP異型の反応速度パラメータを測定した。3つの改良した突然変異体の遺伝子型決定のために、Zymoprepキット(Zymo Research Corp.)を使用して、プラスミドDNAを回収し、DH10Bエレクトロコンピテント大腸菌に形質変換し、プラスミドminiprepキット(Thermo Scientific)を使用して分離し、配列決定した。
[00295] モデルシステムとして、アルカリホスファターゼを使用した。基板9H−(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)リン酸(DDAOP)を使用して、触媒活性を測定した。酵母表示野生型(WT)アルカリホスファターゼのMichaelis−Menten反応速度及びリン酸阻害は、大腸菌から採取した精製酵素で測定した値の2倍以内であった。さらに、WTアルカリホスファターゼと以前に特性化したR166S突然変異体の間の反応速度の差異は、DDAOP基板に対する見かけ上の二次速度定数(kcat/KM)における顕著な低下を示しているが、酵母表示構築において保たれた(O'Brien,P.J.&Herschlag,D.,Biochemistry 40:5691−5699(2001年))。図25は、大腸菌から採取した精製酵素に匹敵する酵母の表面上に表示されたWT APの反応速度を示している。誘発したSGCAA培養からの50pMの精製酵素又は6.4×105の細胞のいずれかで、96ウェルのマイクロタイタープレートにおいて200μLのスケールで反応を進行させた。エラーバーは、3回の独立した測定の標準偏差に対応している。標準Michaelis−Mentenモデルへの合致が実線としてデータ上に重ね合わせられている。GENBANK登録番号:M13345のヌクレオチド配列に対応するWT大腸菌蛋白質配列について、新たな配列異型を説明する。図26は、反応の結果が400nMのDDAOP濃度で進行される様子を示している(WT APに対する見かけ上のKmを10倍下回る)。エラーバーは、3回の独立した測定の標準偏差に対応する。競合阻害モデルへの合致が実線としてデータ上に重ね合わせられている。
[00296] 表8は、酵母表示と精製AP構築物について得られた反応速度パラメータの比較を示している。酵母表示酵素で実施された基板測定については、酵母細胞毎に104個の表示蛋白質コピーの平均を仮定することにより、初期比を酵素ターンオーバーに変換した。誤差は、合致パラメータに対する1−σ(68%)の信頼区間に対応し、各合致点に対する3回の独立した測定からのデータを使用して、パラメータブートストラップ法により、推定した。
[00297] 酵母表示WTアルカリホスファターゼとR166S突然変異体に対する単一細胞反応の経時変化を測定するために、μSCALEを使用し、プラットフォームが、時間分解、酵素異型の活性の反応速度情報を提供できることを実証した。酵母表示酵素のロバストな空間的分離と蓄積生成物7−ヒドロキシ−9H−(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン(DDAO)が、アレイ内の各反応経時変化の長さ全体に亘って維持され、高度に活性の酵母表示酵素を含有するキャビティの簡易且つ定量的反応速度を不活性/活性の低い近隣、又は空のキャビティから区別できるようにした。図27は、時間分解酵素アッセイからの代表的スナップショットを示している。活性酵素を表示している4個のマイクロキャビティ内在酵母細胞を白字の数字で示しており、近隣の空のキャビティには、比較のため、「x」を記してある。明確さのため、画像コントラストを人為的に強調してある。図28は、図27のスナップショットに対応するマイクロキャビティの定量化を示している。ラベル化は図27に対応しており、活性酵素を表示する4個のマイクロキャビティ内在酵母細胞と比較のための付近の空のキャビティを示している。各マイクロキャビティ内の生成物が一定に蓄積されていることが観察され、これが直線回帰による反応速度計算を可能にする。
[00298] アレイWTアルカリホスファターゼとR166Sについて、アレイ内で20分間又は3時間の反応(WT及びR166Sの各々について)を通じて、約5,000個の単一細胞トレースを定量化した。経時変化スロープのヒストグラムは、マイクロキャビティアレイの各突然変異体の活性分布を規定するものであり、図29に示されている。特に、触媒効率の低減した、酵母表示WTアルカリホスファターゼ及びR166S点突然変異体の単一細胞反応速度プロファイルを示している。20μMアレイにおいて、単一酵母細胞をマイクロキャビティ毎に投入し、10μMのDDAOP基板を使用して反応を実施した。単一細胞反応速度は、各クローン個体群内の酵素活性における細胞間変動性(蛋白質発現レベルの不均一によるものと思われる)にも関わらず、際立っており、μSCALEプラットフォームは、反応速度に基づくWT酵素からのR166S突然変異体を明確に示している。
[00299] 次に、改良酸素異型を特定するμSCALEの能力を実証するために、ランダム変異アルカリホスファターゼライブラリをスクリーニングした(〜107個の形質転換態で、1μMのDDAOP(WTアルカリホスファターゼの見かけ上のKMより4倍低い)に対して、各反応に対して添加された15μM無機リン酸(WTアルカリホスファターゼの測定KIより4倍高い)の存在下で)。これらの条件は、酸素設計における多数の多様な副次的分野における共通目的である、阻害薬への酵素の耐性を増す配列を強化するために、ライブラリに選択的圧力を課すものである(例えば、Alberstein,M.らによるPlant J.69、57〜69(2012年);Yang,J.−S.らによるPLoS Comput.Biol.8,el002612(2012年);Hu,X.,らによるΑppl.Microbiol.Biotechnol.87、1773〜82(2010年)を参照のこと)。0.2〜6のOD600からの形質転換と3回の継代後、酵母ePCRライブラリのアリコートにZymoprepを施し、DH10B大腸菌細胞に形質転換した。20個のクローンを取り出し、Sangerシークエンシング、図30に示される突然変異率の分布の産出によって遺伝子型分類した。単一細胞抽出を介して、検査済スクリーニング条件下におけるWTアルカリホスファターゼに対して強化活性を備えた15個の推定ヒットを分離し、上述と同一の条件下、バルクで再度スクリーニングした。図31は、ランダム変異APライブラリのμSCALEの定量化を示している。ピークは、スクリーニング中に観察された単一細胞酵素活性の分布を示している。アレイから、この分布の上尾における15個の最も活性な細胞を抽出し、増殖させ、改良酵素異型を得るべく、さらに濃縮するために再度スクリーニングした。双方のバルク生化学アッセイにおけるWTアルカリホスファターゼに対するその顕著な速度加速に基づく配列決定及び詳細な特性化のために、3つの異型を選択した。図32は、WT酵素とμSCALEライブラリスクリーニングで分離した3つの最も活性な異型との相対的比率を示している。比率は、スクリーニングで使用されるものと同一の条件下で、バルク生化学アッセイにおける酵母表示構成で測定した。図33は、酵母表示WT APと人工進化N197S−T148P−S175R三重突然変異体の単一細胞反応速度プロファイルを示している。反応は、無機リン酸を伴うことなく、5μMのDDAOPで実施し、ePCRライブラリスクリーニングで採用するのと同一の手順を使用して、μSCALEプラットフォーム上で解析した。
[00300] D101位置は、AP活性部位内のリン酸イオンを調整するR166残渣を配置するのに重要であることが知られている。このように、我々のスクリーニングではカバーされていないD101G突然変異が、無機リン酸に対する酵素の親和性を低下させるR166の配置を変えるようである。図34は、μSCALEスクリーニングから分離されたWT酵素と3つの改良異型についてのリン酸阻害曲線を示している。3つの異型のうちの1つは、WT酵素よりも10倍高い見かけ上のKiで、無機リン酸に対する感度が著しく低減したことを示している。反応は、各突然変異体の見かけ上のKmより少なくとも10倍低い基板濃度で進行させた。競合阻害モデルへの合致が、実線で示される通り、データ上に重ね合わせられている。すべての実験において、エラーバーは、3回の独立した測定の標準偏差に対応している。図35は、人工進化D101G突然変異体におけるリン酸阻害の低下の構造的基礎を示している。WT AP(PDB 1ALK)の活性部位は、無機リン酸(P)拘束されている。活性部位亜鉛イオンが示されており(z)、D101及びR166の残渣が棒状で表現され、他のすべての蛋白質残渣がリボン表現で描かれている。
[00301] 大腸菌からの可溶発現精製に際して、リン酸の存在下のWT酵素に対するこのD101G突然変異体の改良性能が保存された(表8)。図36に示される通り、他の2つの異型が、WTアルカリホスファターゼよりも高い活性の基本的レベルを示したが、これは、部分的に、これらの突然変異体の酵母表面発現が増加したことによって説明することができる。図36において、標準Michaelis−Mentenモデルへの合致が、実線の通り、データ上に重ね合わせられている。図37は、酵母の表面に表示されたAP突然変異体の発現プロファイルを示している。蛋白質表示レベルは、各酵素へのC−末端mycタグ溶融の抗体ラベリングを介して測定し、フローサイトメトリを使用して定量化した。
[00302] いずれの異型も大腸菌からのアクティブ形態で精製可能であり、これらのクローンによって得られた有益な突然変異が酵母表面環境に特定的であり、溶液中のホモダイマーの適正なフォールディングとは不適合であることを示している。
[00303] 表9は、大腸菌からの蛍光標識リン酸結合性蛋白質を使用したAP反応における無機リン酸汚染の測定を示している。図23における検量線を使用して、蛍光測定をリン酸濃度に変換した。誤差は、独立して調製した2つの試料に標準偏差を反映する。アッセイの検出限界は、10nMPiである。
[00304] 表10は、大腸菌からの蛍光標識リン酸結合性蛋白質を使用してアルカリホスファターゼ反応における無機リン酸レベルの測定を示している。図23における検量線を使用して(方法を参照のこと)、蛍光測定をリン酸濃度に変換した。誤差は、パラメータブートストラップ法を使用して、検量線の不確実性から伝えられた。アッセイの検出限界は、10nMPiである。
[00305] 表11は、酵母表示及び生成酵素フォーマットの双方で、μSCALEから分離されたWT APと3つの異型との相対的比率を示している。すべての反応は、15μM添加した無機リン酸の存在下で、1μMのDDAOPを使用して実施した。すべての酵母アッセイは、新たに形質転換した細胞を使用して、3200個/μLの細胞の細胞密度で実施した。50pM酵素を使用して、WT APとD101G突然変異体による精製酵素反応を実施し、I16V−N145I−D294GとN197S−T148P−S 175Rの三重突然変異体による反応は、50nM酵素を使用して(対応して調整されたレートで)実施した。
[00306] 表12は、原子放射分光法(AES)で測定される、μSCALEスクリーニングから分離されたWTアルカリホスファターゼと2つの三重突然変異体における金属イオンとリン内容物とを示している。アルカリホスファターゼモノマーに対して予期されるZn/Mg/蛋白質の化学量論は、2:1:1.3である。また、WTアルカリホスファターゼは、1:1の化学量論において活性部位に束縛された無機リン酸を伴って発現している。WTアルカリホスファターゼ試料におけるこれらの値の偏差は、試料調製及び蛋白質濃度の判定における誤差を、推定上、反映する。I16V−N145I−D294GとN197S−T148P−S 175Rの三重突然変異体の活性部位における著しい金属占有率の不足は、これらの異型の活性の乏しさの説明を補助するものである。AESデータは、WTアルカリホスファターゼ(PDB 1ALK)の結晶構造とともに、N145及びT148における突然変異が可溶蛋白質のフォールディング、ひいては効率的触媒に必要とされる金属補因子を結合させる能力を妨害するモデルをサポートする。
[00307] 発現の酵素活性の正規化
[00308] APスーパーファミリにおいて十分に研究された他の酵素として、ヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ(NPP)があり、リン酸ジエステルの加水分解を触媒する。このスーパーファミリの他の構成員として、NPPは、2Zn2+モチーフを含むバイメタロ酵素である。
[00309] NPPは、普通、真核性細胞表面上の膜貫通蛋白質として見出だされ、この場合、これらは、細胞外リン酸ジエステルに作用する。NPPは、カンキツかいよう病菌であり、その本来のコンテキストでは、この酵素に対する機能的データは存在しない。この異型は、その過剰発現とそのホスホジエステラーゼ活性のために選択された。このNPP異型は、モノマーであり、酵母表面表示を容易にする。
[00310] NPPについては、加水分解に際して2蛍光4−メチルウンベリフェロンロン(MU)を産出する基板ビス(4−メチルウンベリフェリル)ホスフェート(Bis−MUP)を使用して、触媒活性を測定した。Ap基板(DDAOP)とは異なり、Bis−MUPは、開裂に先立って蛍光でなく、その生産物は、狭い蛍光励起及び放射スペクトルを有する。この特性のため、酵母表面蛋白質発現のレベルの定量化を判定することができる。C末端c−mycに対して蛍光標識二次抗体を備えた酵母細胞を染色することにより、酵素活性は発現で正規化することができ、アッセイのノイズを低減することができる。
[00311] 本実験において、黒い水素焼成ガラスアレイを使用した。黒ガラスの壁部は、マイクロキャビティ間の蛍光クロストークを防ぎ、透明ガラスアレイに観察された「ハロー」効果をなくした。また、黒アレイは、磁気マイクロビーズを添加することなく、抽出を可能にする。マイクロビーズを伴うことなく、画質及び測定感度を劇的に改善する。
[00312] 発現用酵母を染色し、酵母表示NPPについて単一細胞反応の経時変化を測定した。経時的に反応をモニタリングした後、直線回帰及びNPP発現に対するプロット率により、各マイクロキャピラリの反応速度を計算した。図38は、パネルa)にて、ハイライト表示されたデータ(円)の画像を描く写真を示している。活性酵素(白字)を表示する酵母細胞を内在させた3つのマイクロキャビティと、付近の空のキャピラリ(点線円)とを比較のために示している。図38は、パネルb)にて、画像の定量化も示している。図39は、直線回帰で計算され、c−Mycタグ発現に対してプロットされたNPPを発現した酵母細胞を内在させる各マイクロキャビティの反応速度を描いている。写真は、ハイライト表示されたデータ(円)の画像を描いている。
[00313] 実施例6:培養マトリクス上の細胞の抽出及び成長
[00314] アレイで培養された酵母細胞を、培養マトリクス又は捕捉面上に直接抽出した。表面に捕捉された細胞を、培養マトリクス又は培養培地に移行した。細胞の生存性の測定を行った。
[00315] 材料
[00316] SD−CAA培地
500mlのH2O中
10gのデキストロース
アミノ酸を伴わない3.35gの窒素塩基
2.5gのCaSアミノ酸
2.7gのNa2HPO4無水
4.28gのNaH2PO4*H2O
[00317] SD−CAA寒天プレート
500mlのH2O中
91gのソルビトール
7.5gの寒天
アミノ酸を伴わない3.35gの窒素塩基
2.5gのCasアミノ酸
2.7gのNa2HPO4無水
4.28gのNaH2PO4*H2O
[00318] SG−CAA培地
500mlのH2O中
10gのガラクトース
アミノ酸を伴わない3.35gの窒素塩基
2.5gのCasアミノ酸
2.7gのNa2HPO4無水
4.28gのNaH2PO4*H2O
[00319] 酵母成長及び蛋白質誘導:PCT−Con2プラスミドを備えた出芽酵母をSD−CAA培養で培養し、30度でOD600=3−6まで24時間成長させる。細胞は、最終OD600=1となるように、SG−CAAにおいて遠心分離及び再懸濁される。その後、細胞は、最終OD600=7となるように、さらに24時間成長させられる。SG−CAAにおける成長には、酵母細胞表面上に蛋白質を発現するためのPCT−CoN2を含む。
[00320] 酵母の染色及び投入:視認性を改善するために、誘導された酵母は、PCT−Con2プラスミドを介して酵母表面に表示されたc−Mycタグを対象とした蛍光抗体で染色する。酵母は、anti−cMyc抗体で30分間インキュベートした後、ALEXAFLUOR(登録商標)555染料でタグ付けされたanti−cMyc抗体に対する二次抗体で、さらに30分間インキュベートする。ラベル付けした後、酵母細胞を、結果としてコア毎に1つの細胞(20μm小孔アレイについては3200個/uLの細胞)を生じるように、計算された濃度まで希釈し、細孔アレイ上に広げる。
[00321] 捕捉面の調製及び抽出:捕捉面を調製するために、20μLの水和流体(グリセロール)を18mm×24mmのガラスカバースリップ上に均一に広げる。このカバースリップを小孔アレイ下、約1mmに配置する。
[00322] レーザ強度が適切であれば、選択された小孔が培養マトリクス又は捕捉面上に直接抽出される。その後、細胞は、2日間、又はコロニーが形成されるまで培養した。
[00323] 図40は、検査される異なる種別の単一細胞抽出構成のすべての結果の棒グラフを示している。(1)FACS〜SD−CAAは、96ウェルプレート(ウェル毎に1つの細胞)内のSD−CAA培養培地内に直接FACSを行うことによって選別した細胞の結果を示している。(2)SD−CAA寒天は、アレイから寒天コーティングされた捕捉面上に直接抽出された細胞の結果である。(3)H流体〜SD−CAA寒天は、水和流体(グリセロール)でコーティングした捕捉面上に抽出され、寒天SD−CAA寒天マトリクス上に反転された細胞の結果である。(4)H流体〜0.3mLのSD−CAAは、捕捉面(水和流体を伴う)上に抽出された後、SD−CAA培地へ直接以降された細胞の結果を示す。(5)ガラス〜0.5mLのYPD〜0.5mLのSD CAAは、非コーティングガラス捕捉面上に捕捉され、YPD培地(Sigma−Aldrich)に移行された後、培地をSD−CAA培地に移行した細胞の結果を示している。(6)ガラス〜5mLのSD−CAAは、5mLのSD−CAA培地内に直接以降された非コーティングガラス表面上に捕捉された細胞の結果を示している。(7)ガラス〜0.3mLのSD−CAAは、0.3mLのSD−CAA培地内に直接移行された非コーティングガラス表面上に捕捉された細胞の結果を示している。単一細胞の最高生存性は、被覆された捕捉面上に細胞を抽出することと、直後のSD−CAA培地を伴う寒天上に細胞移行を配置することとを組み合わせた時に得られている。
[00324] 本明細書中、本開示の好適な実施形態について図示及び説明を行ったが、当業者にとって、このような実施形態が単なる例示として提供されることは明らかである。当業者により、本開示から逸脱することなく、多数の変形、変更、及び置換が行われるであろう。本開示の実施において、本明細書に記載の開示の実施形態に対する種々の代替が採用可能であることを理解しなければならない。以下の特許請求の範囲は、本開示の範囲を規定することを意図するものであり、本特許請求の範囲の範囲内にある方法及び構造とそれらの同等物がこれによって網羅されることを意図するものである。