JP2018507387A - 無封止でキャピラリをテンパリングする方法およびシステム - Google Patents

無封止でキャピラリをテンパリングする方法およびシステム Download PDF

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Abstract

本発明は、キャリア(6)上に配置された複数本のキャピラリ(10)をテンパリングする方法に関する。ここで、長さ(L)、幅(B)、高さ(H)のキャリア(6)は、キャリア(6)の幅方向に複数本のキャピラリ(10)を受け入れる。キャリア(6)は、テンパリング素子(5)を収容するために凹部(61)を有し、キャピラリ(10)はその中央領域がテンパリング素子(5)との接触によりテンパリングされうるようになっている。本発明によれば、サンプルが充填されたキャピラリ(10)の両端(11、12)をテンパリング中に封止しない。

Description

本発明は、広義には、被検サンプルが充填されているキャピラリ(毛管)をテンパリング(tempering、加熱処理)するシステムおよび方法に関する。詳しくは、本発明は、温度依存性のあるサンプルをテンパリングして光学測定するためのキャピラリをテンパリングする方法に関する。好ましくは、この光学測定は、被験サンプルの蛍光特性に基づいて紫外領域内で実施される。さらに、本発明は、本発明の方法を容易かつ効率的に実施しうるようにするシステムにも関する。本発明の1つの本質的な利点は、キャピラリ内のサンプルをテンパリングして光学測定するのにキャピラリの封止(シール)を要しないことである。
生物物理学、生化学、生物学、薬学、分子診断学および分析全般の分野において、サンプルはしばしば異なる種々の温度にさらされる。これは異なる温度でのサンプルの挙動に従ってサンプルを特性評価するためである。
例えば、融解曲線分析、熱安定性測定、「熱シフトアッセイ」(Thermal Shift Assays, TFA)および示差走査蛍光測定法(Differential Scanning Fluorimetry, DSF)は、タンパク質および有効成分製剤の安定性および凝集挙動を定性的および定量的に測定するための重要なツールである。
別の例として、マイクロスケール熱泳動(熱光学的粒子特性評価)が挙げられる。この手法によれば、例えば、ファント・ホフ・プロットによる測定結果から熱力学値dHおよびdSを得る目的で、例えば、相互作用の親和力(Kd、EC50)が種々の温度で測定される。
生物物理学、生化学、生物学、薬学、分子診断学および分析(例えば、食品分析、化粧品、等)の分野では、特に、水溶液(例えば、緩衝液(バッファ)、(細胞)溶解液、尿、血清、全血、等)または液体全般が使用される。この場合、試験すべき温度範囲は、例えば、0℃から100℃まで、または、その流体が液体形態にある範囲、に及ぶ。
サンプル容器として使われるキャピラリは、上記用途に関して特に関心をもたれている。これは、キャピラリが特に小さいこと、そして特に明確に定まった容積を持つことによる。さらに、キャピラリは毛管力により自発的に液体を充填できるので、ポンプの使用が不要となる。また、例えば、ホウケイ酸ガラス3.3クオーツ製、合成石英ガラス製などのキャピラリは、その光学特性、特に、透明度、純度および自家蛍光、に関しても有利である。特に、例えば、外径1mm以下で内径0.8mm以下、好ましくは、外径0.65mmで内径0.5mmといった、内径と外径がともに小さい短いキャピラリは、容積が小さく、そのためサンプル物質を節約できるため、有利である。
上記測定方法を、例えば、融解曲線分析として実施するには、キャピラリを、例えば、10℃から100℃までテンパリングしなければならない。このテンパリング中、温度上昇による液体の気化の増加が一般的にみられる。この気化または蒸発は、液体内の流れのかく乱を招き、特に液体の損失増加を招いて、高温での長時間にわたる測定を不可能にする。
上記の気化は、例えば、キャピラリ両端をワックスで封止するか、またはキャピラリ両端を炎で溶着することにより回避または低減される。しかし、これらの封止方法は著しい不利益を伴う。キャピラリの溶着は、特に上記クオーツ(ホウケイ酸ガラス3.3)を使用したときには(その使用は、その良好な光学特性、特に自家蛍光の低さのため、紫外域での電磁波による測定に対しては有利であるが)、溶着作業中に被験分子の変化又は破壊を生じるような高温を生じるため、試験できなくなることがある。さらに、ほとんどのユーザは、上記クオーツ製キャピラリの両端を規定通りのやり方で局所的に溶着するのに十分高温の規定された炎を発生させるための必要装置を保有していない。
キャピラリを別の材料(例えば、ワックス)で封止することは、被検流体/サンプルをその封止材料で汚染し、それにより測定を誤らせてしまうというリスクを常に含んでいる。さらに、例えば、ワックスのような封止材料は、試験中に高温になったキャピラリの蒸気圧によりキャピラリから押し出されることにより、その封止機能を失ってしまうということがみられうる。
キャピラリをマイクロ・キュベット・アレイ(Micro Cuvette Arrays, MCA)の形で配置したシステムも知られている。このマイクロ・キュベット群はフレーム内に収納され、このフレームがキュベットを両端でシリコン・ストリップにより封止する。汚染を回避するために、シリコン・ストリップおよび/またはフレームを定期的に交換する必要があり、追加コストを要する。
しかし、生体分子、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、DNA、RNA、抗体のみならず、細胞、バクテリア、ナノディスク、小胞、ウィルスなどに関しては、マイクロリットル領域の微小体積での作業が望まれることから、短く非常に細いキャピラリが有利である。さらに、薄肉のキャピラリの使用も有利である。その管壁の薄さにより、例えば、自家蛍光や他の人為現象が最小化されうるからである。
しかし、薄肉の細いキャピラリ、即ち、小径で管壁の薄いキャピラリは、非常に壊れやすいという欠点がある。そのため、破壊を伴わないキャピラリの機械的封止(例えば、栓またはキャップによる)は、不可能であるか、または著しい労力を伴って効率的ではなくなる。
従って、温度上昇下でしかも長時間にわたって光学測定を実施しうる簡易なまたは改良された方法が求められている。
本発明に係る方法およびシステムは、独立請求項に記載された技術的特徴により規定される。有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
特に、本発明は、キャピラリを封止せずに流体をキャピラリ内でテンパリングして光学検査することができる方法に関する。好ましくは、複数本のキャピラリを無封止のまま同時にテンパリングし、同時または順次に光学的に検査する。キャピラリを封止しない本発明方法の優位点は次のように略述できる。まず、キャピラリの破損リスクが著しく低減される。破損リスクは、典型的にはキャピラリを閉鎖する時に最高または高くなるからである。さらに、全てのキャピラリを両端で封止する必要性がなくなるので、キャピラリを封止する作業工程が不要となる。本発明による解決策は、速いだけでなく、コスト集約性が低い、即ち、コスト効率が高く、加えて、閉鎖材料による汚染を回避することができる。
本発明は、少なくとも1本、好ましくは複数本のキャピラリをテンパリングする方法に関する。1本または複数本のキャピラリは、例えば、取扱いを容易にするためのキャリア上に配置される。キャリアは、好ましくは、長さL、幅Bおよび高さHを有する(例えば、図3参照)。好ましくは、キャピラリはキャリアの幅方向にキャリア上に配置される。キャリアは凹部を備えることが好ましく、この凹部内に、例えば、テンパリング素子を挿入しうる。さらに、テンパリング素子の幅全体が測定に使用可能となるように、キャピラリがキャリアにより保持されるのはテンパリング素子の外部のみとすることが好ましい。好ましくは、キャピラリはその中央領域においてテンパリング素子との接触によりテンパリングされるべきである。ここで、サンプルが充填されたキャピラリの両端はテンパリング時には閉鎖されていない。好ましくは、テンパリング素子に対するキャピラリの配置を充填容量に対しても考慮することがさらに有利である。本発明によれば、周囲温度を基準点として、テンパリング素子を昇温もしくは加熱ならびに/または冷却できる。
1好適態様によれば、キャピラリ内のサンプルの温度範囲は、例えば、0℃から100℃まで、またはその流体が液体形態にある温度範囲、に及ぶ。換言すると、サンプルが水溶液で、サンプルの測定を液相で実施する必要がある場合、サンプルを0℃から100℃までの範囲内でテンパリングするのが好ましい。サンプル流体がより低融点の流体である場合(例えば、有機溶媒(例、アルコール)などの他の溶媒を含有するか、または実質的にそれらの物質のみからなる流体の場合)、テンパリング温度範囲の好ましい下限は、より低温(例えば、0℃未満)となってもよい。例えば、緩衝液、塩、洗浄剤、脂質、界面活性剤、ポリマー、DMSO、スクロースまたはグリセロールを含有する水溶液の好ましい温度範囲は、0℃から100℃までの温度範囲よりも広くなるか、狭くなってもよい。塩および/または洗浄剤の含有量が高い水溶液については、テンパリング温度範囲の好ましい下限は、より低温(例、0℃未満)となってもよい。塩および/または洗浄剤の含有量が高い水溶液については、テンパリング温度範囲の好ましい上限は、より高温(例、100℃超)となってもよい。
例えば、過冷却流体も本発明に従って使用されうる。
さらに、より好ましい1実施形態によれば、流体の凍結が望まれる場合には、水溶液についてのテンパリング温度範囲の下限は0℃より低温、即ち、凝固点より低温であってもよい。本発明によれば、キャピラリを封止、即ち、閉鎖しないので、0℃より低い温度も、水溶液の膨張(水の変則性)によるキャピラリの破裂を生ずることなく使用しうる。これに対し、封止したキャピラリに入れた水溶液が凍結(凝固)すると、体積膨張によりキャピラリの破裂を生ずる可能性がある。しかし、本発明による無封止のキャピラリについては体積膨張は問題にならない。封止がないため、凍結流体の体積膨張が可能だからである。本発明による無封止キャピラリは、水溶液の凍結および解凍処理の繰り返しにも耐える。この繰り返し処理は、例えば、冷凍および解凍の繰り返しが水溶液中の生体分子の展開および/または凝集を引き起こすか否かをチェックするために実施される。生体分子を含有する水溶液は、例えば、−20℃または−80℃で保存される。保存前に、上記生体分子含有の水溶液は液状であり、例えば、−20℃または−80℃で保存されるときに、上記水溶液は凍結し、使用時には水溶液は再び冷凍庫から取り出されて、それを再度液状で使用するために解凍される。水溶液中の生体分子の変性/アンフォールディングおよび/または凝集に対して重要であるのは、冷凍時の絶対温度だけではなく、例えば、冷凍および解凍が実施される際の冷却速度および昇温速度ならびに/またはその処理の実施/反復の頻度も重要である。
本発明によれば、被検サンプルがキャピラリ内に充填されるが、キャピラリは通常はその一端から他端までがサンプル流体で満たされるわけでない。キャピラリのうちサンプル流体が充填されている部分を、以下では液柱と称する。好ましくは、キャピラリの液柱は、この液柱の両端がテンパリング素子から突き出るようにテンパリング素子に対して位置合わせされる。
好ましくは、本発明に係る管状キャピラリの長さは40〜75mmであり、好ましくは45〜55mmであり、さらに好ましくは約50mmである。
テンパリング素子の幅は、好ましくは5〜34mmであり、より好ましくは20〜30mmであり、さらに好ましくは20〜25mmであり、さらに好ましくは約25mmである。テンパリング素子としては、好ましくはシリコン、好ましくは純シリコンが使用される。
特定のいくつかの実施形態によれば、テンパリング素子を幅方向に一体に構成するか、または複数の分割されたテンパリング領域を幅方向に構成することが有利であり、後者の場合、複数のテンパリング領域は互いに接していてもよく、またはそれらの間に空間を設けてもよい。
キャピラリの信頼性のあるテンパリングを確保するため、テンパリング素子上の1本または複数本のキャピラリを蓋で押さえつけて、キャピラリとテンパリング素子との接触を確実にすることもさらに有利であるかもしれない。蓋は、一部がテンパリング領域の上方にくるように配置されていてもよく、および/またはテンパリング領域の外部でキャピラリに力を加えるようにしてもよい。
本発明によれば、個々のキャピラリには、流体、好ましくはサンプル水溶液、特に生化学的/生物学的測定のための緩衝液が充填される。これに加えて、またはこれに代えて、非水溶媒(例えば、有機溶媒)も使用または添加しうる。
サンプル溶液は、分析対象物、好ましくはタンパク質を、適切な水溶液(例、緩衝液)中に含有しうる。分析対象物は、有機溶媒中(例えば、エタノール、オクタノール、イソプロパノールなどのアルコール)、または水中、または、水と1もしくは2以上の有機溶媒(エタノール、オクタノールまたはイソプロパノールなど)との混合溶媒中に含有させてもよい。
キャピラリ内に充填する本発明のサンプル溶液またはサンプル流体に関しては、油状物、エマルジョン、分散液または他の物質もしくは混合物も、前記好ましいテンパリング温度範囲の少なくとも一部で液状であって、キャピラリ内に充填可能であれば、使用可能である。
キャピラリ内の液柱の長さは、好ましくはテンパリング素子の幅の少なくとも1.1倍であり、好ましくはテンパリング素子の幅の少なくとも1.2倍、好ましくは少なくとも1.3倍、さらに好ましくは少なくとも1.35倍、さらに好ましくは少なくとも1.4倍、さらに好ましくは少なくとも1.45倍、さらに好ましくは少なくとも1.5倍、さらに好ましくは少なくとも1.6倍、さらに好ましくは少なくとも1.7倍である。
好ましくは、キャピラリの内径は0.02〜0.9mmである。好ましくは、キャピラリの外径は0.1〜2mmである。
キャピラリの材質は、例えば、ガラス、好ましくはホウケイ酸ガラス3.3クオーツ、合成石英ガラスでよいが、これらに限定されるものではない。
既知のように、一般にキャピラリは内径が非常に小さい細管である。キャピラリ内では物理的効果である毛管現象が表面作用により発生し、この作用がより大径の管と比べて顕著に起こる。高表面張力の流体はキャピラリ内を上昇する。
さらに、本発明のキャピラリは、ある特定の断面形状に制限されるものではない。ほとんどのキャピラリは円形形状に形成される。本発明によれば、キャピラリの断面形状は、楕円形、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形、半円形または台形であってもよく、あるいは他の不規則形状から構成されていてもよい。
さらに、本発明によれば、キャピラリは固体、好ましくは、例えばガラスのような変形不能な材料から作製され、キャピラリの断面形状が測定のため、または測定中に変化しないことが好ましい。例えば、充填中の断面形状は、測定中の断面形状と同じである。測定のために断面を押しつぶすのは回避したほうが好ましい。これは、例えば、キャピラリの内径および外径が、蛍光測定、吸光測定、消光測定または拡散光測定にも影響を及ぼすからである。本発明に係るキャピラリは少なくとも一端は閉鎖されていないので、キャピラリの変形は被検サンプル流体の押出しを招く可能性があり、この事態は回避されることが好ましい。
さらに、本発明は、キャピラリに充填されたサンプルを光学的に試験する方法にも関する。最初に、キャピラリにサンプルを充填する。次に、キャピラリをテンパリングのためにテンパリング素子上の所定位置に載置する。好ましくは、まず、複数本のキャピラリを1つのキャリア上に配置し、このキャピラリを載せたキャリアをテンパリング素子上に載置する。続いて、キャピラリを上述の通りテンパリングしうる。光学測定を実施するため、サンプルを、例えば光により励起してもよい。光による励起は、特定の波長の光に限定されない。好適な実施形態によれば、励起は、例えば、紫外光により達成されうる。続いて、サンプルが発する光を測定する。本発明は、発光の測定に関しても特定の波長に制限されるものではない。
本発明の方法に加えて、本発明は、キャピラリ内のサンプルを光学的に試験するためのシステムにも関する。本発明のシステムは、好ましくはキャピラリをテンパリングするためのテンパリング装置を備える。さらに、キャピラリを保持するためのキャリアを設けることが好ましい。これに加えて、またはこれに代えて、本発明のシステムは、光を発し光を検出するための光学測定システムを備えていてもよい。さらなる好適態様によれば、本システムは、少なくとも1本のキャピラリ、好ましくは、変形不能で管状のキャピラリを備えていてもよい。
「変形不能」なる用語は、押圧してもキャピラリの断面形状が実質的に変化しないことを特に意味する。好ましくは、「変形不能」という用語は「巨視的に変形不能」であると理解されなければならない。特に、キャピラリは好ましくは硬質である。さらに、キャピラリに加えられる圧力は、ゼロであるか、またはキャピラリ断面が実質的に変化しない程度の低い圧力であることが好ましい。
本発明のシステムは、例えば、サンプルの熱泳動効果を測定するのに使用してもよい。
本発明の方法およびシステムは、特に、タンパク質のフォールディングおよびアンフォールディングに関する実験、およびタンパク質などの生体分子の安定性の試験に適する。ここで、試験される生体分子(特に、タンパク質またはタンパク質複合体)の構造の変化を、適切な化学物質(例えば、尿素もしくはグアニジン塩酸塩のようなカオトロピック剤または有機溶媒)の添加により、または温度変化により生じさせる(即ち、例えば、温度上昇による「融解」)。タンパク質および核酸のような生体分子の二次構造および三次構造は、リガンドまたはイオン(例えば、Mg2+またはCa2+)などの補因子の存在にもしばしば依存する。これは、例えば、リガンドおよび/または補因子の濃度を変化させた蛍光測定(タンパク質の場合は好ましくはトリプトファン蛍光)により達成されうる。
生体分子、好ましくはタンパク質を、化学的または熱的に変性させてもよく、構造変化は内部蛍光(自家蛍光)(タンパク質の場合は好ましくはトリプトファン蛍光)により測定されうる。この場合、例えば、蛍光強度の変化または蛍光極大のシフトを検出しうる。被検生体分子、例えば、タンパク質の融点を測定してもよい。融点とは、被検生体分子(例、タンパク質)の半分がフォールディングされ、残り半分がアンフォールディングされている状態である。タンパク質を試験する場合、例えば330nmおよび/または350nmの波長でのトリプトファン蛍光を測定することができる。この場合、例えば、温度に依存、または変性剤もしくは補因子/リガンドの添加に依存する蛍光強度の変化を測定してもよく、ならびに/あるいは周期的処理の結果を記録してもよい。350nmでの蛍光強度に対する330nmでの蛍光強度の比(F330/F350)は好ましい指標である。例えば、融点は、F330/F350曲線の一次微分の極大値から求めることができる。
また、核酸またはその複合体の融解も蛍光測定により追跡しうる。蛍光測定に加えて、円偏光二色性(CD)も選択肢の1つである。
生体分子、特に、例えば膜タンパク質または抗体などのタンパク質、の熱的、化学的、酵素的または周期的な変性に加えて、生体分子の凝集挙動もまた測定しうる。凝集挙動の測定は、特に薬剤の認可に関して関心を引くだけにとどまらない。この凝集は、例えば、内部蛍光の変化、例えば、蛍光強度の変化および/または蛍光発光極大のシフト、により測定しうる。上記凝集はまた、例えば、生体分子の蛍光異方性の測定によって測定することもできる。好ましくは、蛍光異方性の測定によって、生体分子のサイズの変化、例えば、生成中の凝集体のサイズまたは生体分子の重合体の解凝集(例えば、熱的に生じる、四量体からその4つの単量体への解凝集)も測定可能となることが好ましい。
例えば、熱的、化学的、酵素的または経時的に誘起される生体分子のサイズの変化、ならびにそれらの凝集または多量体化は、光拡散によって測定することもできる。
本発明の方法およびシステムの可能な利用分野は、例えば、「タンパク質工学」(特に、「抗体工学」)の分野、または膜タンパク質の検査時には品質管理の分野もしくは生物製剤の開発時には製薬業界である。
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照しながら説明する。
50mmのキャピラリを使用したときのテンパリング体/テンパリング素子の接触面の幅に依存する蒸発量(%)の図を示す。 長さ35mmのキャピラリを使用した場合であるが、図1と同様に、テンパリング体/テンパリング素子の接触面の幅に依存する蒸発量(%)の図を示す。 キャピラリを保持するためのキャリアを備えたテンパリング装置の分解立体図を示す。 1つのテンパリング素子上に載置された、充填レベルの異なる6本の異なるキャピラリの模式的平面図を示す。 テンパリング素子上に複数本のキャピラリを備え、LEDにより280nmで光学励起されている光学測定の模式図を示す。 図5に示した光学測定により生じた測定図を示し、各ピークはそれぞれ1本ずつのキャピラリに対応する。 発光窓(emission window)が330nmの融解曲線の推移を示す。 図7に準じているが、発光窓が350nmの融解曲線の同様の推移を示す。 図7と図8の2つの光学検出チャネルの比を示す。 図10a〜10iは形状および断面が異なるいくつかのキャピラリを示す。 図11Aは、抗体研究分野での典型的な緩衝液スクリーニングの例を示し、図11Bは、小分子の結合を介したタンパク質の熱安定性の変化の例を示す。 本発明の実施形態に基づく図を示す。 本発明の実施形態に基づく別の図を示す。 本発明の実施形態に基づく別の図を示す。 本発明の実施形態に基づく別の図を示す。 本発明の実施形態に基づく別の図を示す。 本発明の実施形態に基づく別の図を示す。 図5と同様の、テンパリング体上に48本のキャピラリを載置した光学測定の模式図を示す。
本発明は、概括すれば、被検サンプルが充填されているキャピラリ、好ましくは同時に複数本のキャピラリ、をテンパリングするシステムおよび方法に関する。本発明によれば、キャピラリはガラス製である。好ましくは、キャピラリの素材は熱伝導率がキャピラリに充填された流体と近いものであって、それよりあまり低かったり、および/または非常に/あまり高いものではない。ガラスは、熱伝導率が水溶液に似ている点でも好ましい材料である。それが特に好ましいのは、熱がガラスにより溶液に伝導されることによる。即ち、キャピラリ材料の熱伝導率が低すぎる場合、キャピラリ内の溶液が正しくテンパリングされず、および/または十分な速度でテンパリングされない。熱伝導率が高すぎる場合、熱は、キャピラリの両端に向けて移送され、蒸発の増加を招く。以下、いくつかの材料の熱容量を、単なる例示として列挙する:ポリプロピレン(PP):0.23W/(m・K);水:0.5562W/(m・K);ガラス:0.76W/(m・K);石英:1.2W/(m・K)から1.4W/(m・K);鋼:48W/(m・K)から58W/(m・K)。
測定手法または測定時間によっては、熱伝導率が水とは著しく異なる材料も本発明に従って使用されうる。従って、原則的には熱伝導率が0.15W/(m・K)から60W/(m・K)の範囲内の材料をキャピラリに使用することが好ましい。例えば、PMMA/プレキシガラス(アクリルガラス)、ポリプロピレン、PEEKおよびテフロン(登録商標)のような原材料は下限領域内である。素材としてのガラスのさらなる好適範囲は、ガラスの種類によっても異なるが、例えば、熱伝導率が0.5W/(m・K)から1.6W/(m・K)のものである。
キャピラリの材質は、ガラス、および/またはポリマー、および/または下記材料の少なくとも1つでよい:ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス3.3(例、Duran(登録商標)ガラス)、Suprasil(登録商標)、Infrasil(登録商標)、合成石英ガラスのような石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、Bk−7、ASTM−1型クラスA適合ガラス、ASTM−1型クラスB適合ガラス。ポリマーは下記を包含しうる:PTFE、PMMA、Zeonor(登録商標)、Zeonex(登録商標)、テフロン(登録商標)AF、PC、PE、PET、PPS、PVDF、PFA、および/またはアクリルガラス。
キャピラリの少なくとも一部領域が、波長200nm〜1000nm、好ましくは250nm〜900nmの光に対して光透過性であることが特に好ましい。特に好ましいのは、それに限定されないが、上記少なくとも一部領域が下記波長域の光に透過性であることである:940nm〜1040nm(好ましくは、980nm±10nm)、1150nm〜1210nm、1280nm〜1600nm(好ましくは1450nm±20nmおよび/または1480nm±20nmおよび/または1550nm±20nm)、1900nm〜2000nm(好ましくは1930nm±20nm)。当業者には自明のように、透過性領域は本管状構造物の全体に及んでいてもよい。即ち、キャピラリは透明であってもよい。
セグメントの光透過によって、ルミネセンス/蛍光/りん光の測定、および/または光学検査/測定(例えば、干渉、偏光、吸光、二色性、楕円偏光、異方性、ラマン、顕微鏡、暗視野検鏡、光拡散、FRET、マイクロスケール熱泳動、熱光学的粒子特性評価)、および/またはキャピラリ空洞内の溶液/液体の操作、が実施可能となる。また、光透過により蛍光測定も実施可能となりうる。好適な実施形態によると、光透過により、電磁線、例えば、光(好ましくは、赤外(IR)レーザ)による管状構造物内の流体の加熱、好ましくは水および/または有機溶媒の加熱、も可能になる。
本発明によれば、キャピラリは、テンパリング素子からキャピラリへの、従ってキャピラリ内のサンプルへの、温度交換が達成されるようにテンパリング素子に接触していることが好ましい。好ましくは、キャピラリは、光学測定も実施される領域内での接触熱によりテンパリングされる。上記領域内で、例えば、オイル(例えば、油浴用オイル)の適用により熱接触を向上させてもよい。好ましくは、光学測定は、ある特定の波長域には制限されず、例えば、赤外、可視または紫外域内で実施してもよい。温度素子それ自体は、サンプルの測定を妨害し得る蛍光を全く発しないか、発するとしても僅かであることがさらに望まれる。本発明によれば、テンパリング素子(即ち、キャピラリに接触し、直接接触によりキャピラリに温度を伝導する素子)の接触材料として、好ましくはシリコンを使用する。
シリコンの使用にはいくつかの利点があり、その一部をここに列挙する。まず、シリコンは、特に260nm〜700nmの波長域の励起光では自家蛍光を全く、またはごくわずかしか呈しない。一般的なトリプトファン蛍光の測定では、例えば260nm〜300nmで励起が行われ、>320nmで発光を測定する。従って、シリコンは、蛍光測定に非常に適しており、特に、紫外域(トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン蛍光)の蛍光測定にも適する。紫外蛍光域が特に有利であるのは、このようにして、天然の生体分子を、例えば色素による変性を必要とせずに、その内部蛍光により測定することができるからである。本発明によるシリコンの使用がない場合、従来技術では、自家蛍光作用を回避するために空隙部を要していた。そのため、蛍光による光学測定が必要な、まさにその領域が、十分にテンパリングされないことになる。本発明によれば、キャピラリ内の測定領域を、非蛍光性であるシリコンにより直接加熱/冷却(テンパリング)することができる。
さらに、シリコンは高純度品を製造および購入できるので、不純物の自家蛍光の可能性、従って測定のごまかし、が極めて低くなる。さらに、シリコンは化学的に不活性な物質であるので、被測定流体と接触したとしても、目的とする光学測定に悪影響を及ぼすいかなる反応も引き起こさない。テンパリング素子用のシリコン製の接触面は、非常に平滑に作製しうるので、キャピラリと接触する表面を反射面として作製でき、それにより、励起光および/またはサンプルの蛍光を反射面で反射させることができ、さらなる効果として測定シグナルの増大をもたらすことができる。反射面はブロードバンドであり、これもさらに有利である。さらに、シリコンは熱伝導性が高く、平滑性も高い。シリコン内には、例えば電子「回路/構造体」を、例えばドーピングおよび/またはエッチングによって集積してもよい。このような構造体は、例えば、1つの温度または複数の温度を測定するのに使用可能である。
接触材料として使用する材料の別の例は、金属、好ましくは陽極酸化金属、好ましくは、陽極酸化アルミニウム(アルマイト)である。従って、例えば、陽極酸化アルミニウム、例えば、黒色のものがあり、これは紫外域内で自家蛍光を何ら呈しない。陽極酸化アルミニウムとは異なり、シリコンには高純度であるという利点があるが、これは、陽極酸化処理の品質にばらつきが見られることが多いからである。
テンパリング素子それ自体は、テンパリング手段によってテンパリングされることが好ましい。換言すると、テンパリング素子の目的は、キャピラリに温度または熱を特定の手法で伝えることだけに特化されていることが好ましい。本発明は、特定のテンパリング手段には限られない。例えば、ペルチェ素子が、そのコンパクトな構造技術およびその適切な温度範囲の理由により提案される。しかし、電気加熱素子または加熱コイル(流体によってテンパリングされうる)もテンパリング手段として使用しうる。
テンパリングを受けるキャピラリは、キャピラリの少なくとも一部がテンパリング素子に接触するように配置しなければならない。好ましくは、各キャピラリの中心領域のみ、好ましくは中央部の領域が、テンパリング素子に接触する。即ち、キャピラリの少なくとも一端、さらに好ましくは両端が、テンパリング中にテンパリング素子とは接触しないことが好ましい。本出願において、キャピラリの中心領域または中央とは、キャピラリの長さ方向に関する。即ち、両端の間の中央である。換言すると、キャピラリの一端、好ましくは両端はテンパリングされないことが好ましい。
好ましい実施形態によれば、キャピラリは、各キャピラリが狭いテンパリング領域内のみでテンパリングされるように保持されなければならない。1好適態様によれば、キャピラリは、両端がテンパリング素子から突き出し、好ましくは対称的に突き出るように配置され、これによりキャピラリの両端はテンパリング素子によりテンパリングされないようになる。さらに好ましい実施形態によれば、個々のキャピラリの長さはテンパリング領域よりもdx値だけ長い。
こうして、キャピラリをその長さ方向の決まった部分だけテンパリングすることが保証可能となる。その結果、ガラスキャピラリの熱伝導率が低いことと相まって、キャピラリの両端の温度は、テンパリング領域またはテンパリング素子までに十分な距離があれば、実際として常に室温に保たれるという効果を生ずる。このことは、たとえキャピラリの中心または中央領域がテンパリング素子により90℃までテンパリングされても、相応に長いキャピラリの両端においては室温での蒸発より大きな蒸発が見られないようにできる、ということを意味する。このことは、室温での蒸発が許容される場合には封止を要しないことを意味する。
長さ50mmのキャピラリに関し、テンパリング領域は、例えば、好ましくは32mm以下、さらに好ましくは25mm以下としなければならない。即ち、キャピラリの長さの25mm以下の部分を中央部にてテンパリングすべきである。換言すると、テンパリング領域の両側には、テンパリングを受けない好ましくは12.5mmの長さのキャピラリ部分が突き出ているべきである。
テンパリング領域の長さの理論的下限として定義されるのは1mmであるが、実際上の理由から、この長さは5mm以上とすることが好ましい。本発明の例をテンパリング領域の幅25mmで説明するが、これが好ましい幅である。しかし、幅20mmのテンパリング領域でも良好に機能し、取扱いが容易であることがわかっている。また、幅30mmのテンパリング領域もやはり取扱いが容易である。
本発明の例を長さ50mmのキャピラリで説明するが、これが好ましい長さである。しかし、長さが20mm、25mm、30mm、35mm、45mmのキャピラリでも良好に機能し、取扱いが容易であることがわかっている。また、キャピラリ長さが55、60、65、70、75および80mmでもやはり取扱いは容易である。
使用するのが低濃度のサンプル/物質であるために、従来技術から既知のテンパリング素子の材料が持つ妨害性の自家蛍光の方が、往々にしてサンプル自体の蛍光よりずっと大きくなる、即ち、測定が不可能となる。ベースの純未精製アルミニウム上/アルミニウム上にじかに載置しての測定はほぼ不可能である。そのため、従来技術では、測定される領域の下側に凹部/測定ギャップ/空隙部を常に設けなければならなかった。しかし、この凹部のため、この凹部領域内でだけキャピラリの温度が、キャピラリが載っていて、それによりテンパリングを受けている領域内とは異なる、別の温度をとる結果となっていた。従来技術のこの作用を、以下の2つの例で説明する。
A)室温/装置温度/周囲温度を25℃であると仮定する。テンパリング装置は20℃に調整する。テンパリング装置上にじかに載っているキャピラリ領域の温度は約20℃である。凹部の上側で測定されるキャピラリ領域の温度は部分的には22℃であって、さらに不均一な温度分布を有する。
B)周囲温度はやはり25℃であると仮定する。テンパリング装置を今度は90℃に調整する。テンパリング装置上にじかに載っているキャピラリ領域の温度は約90℃である。凹部の上側で測定されるキャピラリ領域の温度は約82℃+であり、不均一な温度分布(空隙部の幅に依存)を有する。
本発明の枠組内で、内径および外径が異なるキャピラリを用いていくつかの蒸発実験を行った。幅25mmのテンパリング素子を試験ステーションとして用いた。キャピラリは長さ50mmのものを用いた。
各測定について下記2種類の溶液を用いた:Tween20加MST緩衝液(測定性向上のための青色色素を添加)と、Tween20を含有しないMST緩衝液(測定性向上のための緑色色素を添加)。
−MST緩衝液(キナーゼ緩衝液)Tween含有なし
・50mM トリス塩酸
・150mM NaCl
・10mM MgCl2
・pH 7.8
−Tween含有
・+0.25% Tween20
試験キャピラリを次のようにテンパリングした。温度を20℃から90℃まで1℃/分の加熱速度で上昇させ、その後90℃に30分間保持する。これは、融解曲線測定/キャピラリの熱安定性検査用測定のための温度推移の一例である。
Figure 2018507387
試験は、内径(ID)および外径(OD)がそれぞれ異なるキャピラリを用いて実施した。内径が0.1mmから0.8mmの範囲内の円形キャピラリについては、実際上有意な内径依存性を認めることはできない。
矩形キャピラリ(管壁が非常に薄く、従って外径の値は記載しないか、または外径は未知)については、わずかに高い蒸発が観測されうるが、なお許容できる範囲である。即ち、矩形キャピラリについては、テンパリングしたキャピラリとテンパリングしなかったキャピラリとの間に室温で実際上何の差異も測定されえない(=対照群)。
キャピラリとテンパリング素子との間の接触を確実にするには、キャピラリをテンパリング素子に押し付けることが好ましい。これは、例えば、蓋により実現してもよい。キャピラリを抑止して良好なテンパリングを付与する蓋にも、上と同じことを適用するのが好ましい。即ち、幅は25mmより大きくすべきではない。テンパリング素子のテンパリング領域を広げたい場合には、キャピラリの両端での多量の蒸発を回避または防止するため、キャピラリを長くする必要がある。キャピラリを長くするのは、サンプルの浪費が大きくなるので不適当となることがある。
しかし、テンパリング領域は狭くし過ぎないようにすべきである。狭すぎると、キャピラリがその中央測定領域で確実にテンパリングされなくなるか、またはテンパリング状態の異なる分子が外部から測定領域内に拡散してくるからである。
そのため、テンパリング素子の有利な幅、および/または有利なキャピラリの長さに関する上限および/または下限、ならびに特にそれらの相互依存性が実験で決定された。
図1は、長さ50mm、内径0.5mm、外径0.65mmのキャピラリ内の蒸発を試験した場合の図を示す。この図はテンパリング素子の幅に依存する蒸発%(y軸)を示す。
この試験では、界面活性剤を含有しない一般的な緩衝液(図中「MST」)と、界面活性剤を含有する同じ緩衝液(図中「Tween」)とを試験した。試験は、界面活性剤が蒸発挙動に影響を及ぼす可能性があるため、界面活性剤を含有する場合と含有しない場合とで実施した。対照群はテンパリングを受けなかった。もう一方の群のテンパリングは、一般的な融解曲線(即ち、20℃から90℃まで70分間以内に昇温させた後、90℃に30分間保持)に対応していた。
図示のように、例えば、幅40mmのテンパリング素子(テンパリング体)を使用した場合には25〜30%の蒸発が起こることが認められうる。約36mmの幅を用いた場合、蒸発は既に10〜15%の範囲内に低減している。幅が34mm以下である場合、蒸発は10%未満であって、テンパリング素子が無い場合の蒸発と同程度である。これは、テンパリング領域の幅が約30mm以上のあたりから、テンパリングを受けない対照群のサンプルとテンパリングを受けたサンプルとが同じ(蒸発が最小)であることが明らかであることを意味する。特に、<10%の蒸発が通常は許容される。即ち、蒸発が<10%である場合、封止が好ましくは必要とされなくなる。
上記試験に基づくと、長さ50mmのキャピラリに対する好ましいテンパリング領域の幅は30mm以下、好ましくは25mm以下であり、それにより、例えば100℃といったより高温も可能となる。最高温度は、流体の種類、特にその流体または溶媒の沸点に依存して異なることは当業者には自明である。また、特に、沸点に達したときの気泡の形成は、光学測定にとって不利となり得る。従って、水溶液に対する上限は好ましくは100℃である。
図2は、長さがわずか32mmで、内径0.5mm、外形0.65mmのキャピラリ内の蒸発を試験した図を示す。やはり、界面活性剤を含有しない一般的な緩衝液(「MST」)と界面活性剤を含有する同じ緩衝液(「Tween」)とを試験した。対照群はテンパリングを受けなかった。もう一方の群のテンパリングは、一般的な融解曲線(即ち、20℃から90℃まで70分間以内に昇温させた後、90℃に30分間保持)に対応していた。長さ32mmという短いキャピラリを用いた場合、封止無しでは蒸発の制御が実際上不可能であることが非常に明白に認められうる。テンパリング領域の幅が8mmの場合でさえ、10%を超える蒸発が認められうる。
図3は、本発明のテンパリング手段の分解立体図を示す。底部には、廃熱を放出するために冷却体1が配置されている。冷却体1は、例えば、可動部材上に配置される。好ましくは、高熱伝導性を実現するため、少なくとも1層の熱伝導性ホイルまたは熱伝導性ペーストが冷却体1とペルチェ素子2との間に設けられる。金属(例、アルミニウムまたは銅)製の加熱ブロック3がペルチェ素子2上に配置される。好ましくは、それらの間にも熱伝導性ホイルまたは熱伝導性ペーストを設けることができる。加熱ブロック3上には、好ましくは薄く細幅のシリコンウェハ5が、接触によりキャピラリをテンパリングするために配置されている。加熱ブロック3とシリコンウェハ5との間には、好ましくは特別な熱伝導性ホイル4が配置される。シリコンウェハ5の周囲には、合成(樹脂)フレーム6(ここではMakrolon(登録商標)製)がキャピラリ(図示せず)を位置決めするために配置される。
最後に、光学測定用の測定空間部を有する細幅の薄い蓋7が最上面に置かれる。この蓋7は、好ましくはシリコンウェハ5より広幅にすべきでない。好ましくは、蓋7はシリコンウェハ5上でのキャピラリを押さえ付ける。蓋7が断熱性の機能を果たすとさらに有利である。
キャピラリは、合成フレーム6上で中央に配置されていなければならない(即ち、キャピラリは、蒸発を最少にするため、両側が十分遠くまで突き出している)。例えば、図4は、充填レベルおよび位置の異なる6つのキャピラリa)〜f)の模式的平面図を示す。これらのキャピラリは、キャピラリ下方に配置されたシリコンウェハ5によりテンパリングされるため、合成フレーム/キャリア6上に載っている。位置a)〜f)の6本のキャピラリはいずれも長さが同じまたは実質的に同じである。位置a)は、中心合わせ、即ち、フレーム6またはシリコンウェハ5の中心軸Mに関して中心合わせされたキャピラリを示す。このキャピラリは、略完全に充填されている。即ち、キャピラリは、流体で十分に満たされ、フレーム6から左右対称に突出している。
位置b)もまた、中心軸Mに対して対称に配置されたキャピラリを示す。このキャピラリの充填レベルは位置a)のものに比べて低いが、両端での蒸発が長時間測定でも悪影響を及ぼさないようにするのになお十分である。
位置c)は、位置a)およびb)と同様に対称に充填されたキャピラリを示すが、充填レベルが位置b)のものよりさらに低いため、左側および右側でフレーム6から突き出ている液柱の突出長さAが小さい。しかし、この小さな突出のため両端で蒸発が生じ、その蒸発はシリコンウェハ5の領域内での光学測定に悪影響を及ぼしかねない。そのため、位置a)およびb)のみにチェックマーク(レ印)を付した。即ち、これらの位置および充填レベルは問題なく機能する。一方、位置c)〜f)は問題を生じかねない。位置d)の充填レベルは十分であって、位置a)と同程度であるが、シリコンウェハ5に対する位置が、右側(B)の突出が十分な幅をもたないようなものとなっている。位置e)ではキャピラリは正しく配置されている。即ち、シリコンウェハ5または中心軸Mに対して対称である。しかし、キャピラリの充填が不整合である。左側において、液柱の端からフレームまたはテンパリングされたシリコンウェハ5までの距離Aは十分に大きいが、右側での同じ距離Bは小さすぎる。最後に、位置f)が示す例では、キャピラリは対称に配置され、液柱も対称に配置されているが、充填レベルが低すぎる。
以下、本発明による光学測定を例示として説明する。
測定するサンプルをキャピラリに充填する。これは毛管力により達成してもよく、或いは、例えばピペットによりキャピラリの充填を実施してもよいが、これらに限られるものではない。次に、キャピラリをキャリア上に置く。続いて、充填されたキャピラリを載せたキャリアを本発明のテンパリング素子上に置く。好ましくは、キャピラリの充填は、少なくともキャピラリの中央領域においてテンパリング素子の幅より広い長さにわたって行われている。サンプルの測定は蛍光測定により実施すべきである。そのためには、サンプルをまず紫外域(例えば280nm)の励起LEDにより励起する。
測定開始時に、光学部材を測定位置まで移動させる。サンプルをテンパリング素子によりテンパリングする。好ましくは、温度を所定の一定勾配で最終温度に到達させる。その間にサンプルを前記光学部材の下方で絶えず移動させて、蛍光値を読み取る(図5参照)。この例では、蛍光発光を330および350nmであるとして測定した。従って、温度に対して2つの波長域での蛍光値が存在することになる。最終温度に到達したらすぐに測定データを保存し、テンパリングおよび光ダイオードの動作をオフにし、軸をオフ位置に移動させる。
測定終了後、測定データによるデータベースファイルを用意する。このデータベースを変換ソフトウェアによりCSV(comma-separated-values)ファイルに変換し、続いて解析ソフトウェアにインポートする。この解析ソフトウェアは、変曲点解析により融点を自動的に算出することができる。330nmと350nmの両蛍光チャネルの比をとることにより、S字状曲線が得られる(図9)。
図6では、全部で15本のサンプルを分析した。色ごとに特定の温度に対応する蛍光強度を示す。多数の色があることから、多数の測定回数、従って高い温度解像度を認めることができる。これは、測定ごとに1つの温度を表すからである。測定曲線の最上部頂点は開始温度での蛍光シグナルを表し、最下部の曲線(ここでは、水色)は、測定の最終温度での蛍光シグナルを表す。シリコンの小さな自家蛍光(ベースライン)も非常に明確に見ることができる。
330nm(図7)および350nm(図8)の両チャネルの別々の曲線遷移も表示しうる。350nm/330nmという両チャネルの比をとることにより、いわゆる「融解曲線」/「変性曲線」を得る(図9)。試験タンパク質の融点は対応する測定曲線の変曲点にある。
最後に、図10a)〜10i)はキャピラリの可能な断面形状の例を示す。図10a)は円形キャピラリを示し、管壁を20、中空部または空洞部を21で示す。図10f)および10g)も円形の実施形態を示すが、外径が同一でありながら、管壁の厚みとそれに対応して空洞部の径が異なる。図10b)は半円形の実施形態を示し;図10c)は六角形の実施形態を示し;図10d)は四角形の実施形態を示し;図10e)は楕円形の実施形態を示し;図10h)は外部形状が内部形状とは異なる実施形態の例(図示例では、外部形状が四角形で内部形状が円形または楕円形)を示し;そして図10i)は外部形状内に複数の空洞部を組み合わせた実施形態を示す。
図11Aは抗体研究分野での典型的な緩衝液スクリーニングの例を示す。タンパク質/生体分子のアンフォールディングにより、蛍光発光の極大が330nm±5nmのスペクトル域から350nm±5nmのスペクトル域にシフトする。このシフトは、350nmでの蛍光を330nmでの蛍光で除した比を測定および記録することにより明らかになる。上昇した温度でのアンフォールディングによる抗体のトリプトファン発光(F350nm±5nmをF330nm±5nmで除した比)の変化をここに示す。pH7未満のpH値では図示の抗体の熱的アンフォールディングが著しく低い温度で生じ、このことは酸性条件下での本抗体の不安定化を示唆している。
図11Bは、小分子の結合によるタンパク質の熱安定性の変化の例を示す。これは、量を変えた低分子リガンドの結合後に昇温下でアンフォールディングにより発生したタンパク質のトリプトファン発光(F350nm±5nmをF330nm±5nmで除した比)の変化を示すものである。リガンド添加量が多くなると、より多くのリガンドがタンパク質に結合し、タンパク質の熱安定性はより高くなる。本発明の装置ならびに本発明の方法は、特にナノDSF用途に関して、好ましくは下記の1または2以上の特徴を備える。特に、これにより超高解像度のタンパク質安定性測定が実施可能となる。
好ましい特徴
・未変性(ネイティブ)DSF:色素不要
・デュアルUVシステム:330nmおよび350nmの蛍光の検出
・各回48サンプル
・超高解像度:7秒で48本のキャピラリを測定し、より多くのアンフォールディング遷移の観測
・広い濃度範囲:5μg/mlから150mg/mlまで
・温度範囲:15℃から100℃まで
・熱的および化学的変性
・メンテナンス不要の器具、ならびに/または
・取扱いが容易:サンプル調製が容易で、ソフトウェアは直観的なユーザ・インターフェイスを有する。
本装置(以下、プロメテウスNT.48と称する)は48本のキャピラリを収容できる。好ましくは、キャピラリには毛管力によりサンプルを充填する。従って、キャピラリを単にサンプル内に浸すだけであり、次いでこれを機器内に配置する。機器は、好ましくはメンテナンス不要であり、配管やバルブやポンプを全く含まない。キャピラリは一回限りの使用のものであるので、平衡化や洗浄を要しない。
熱的アンフォールディング実験についてはアッセイ開発や面倒なサンプル調製は必要ない。キャピラリをタンパク質溶液に浸し、キャピラリ・キャリア内に装填するだけである。最適の励起および検出調整を決定するために高速の検出スキャンが実施される。続いて、温度勾配を調整するだけで、実験が開始される。
緩衝液および製剤処方のスクリーニングは、タンパク質を対象となる溶液に混合することにより容易に実施しうる。マイクロタイタープレートから数秒で多数のキャピラリを充填するためにキャピラリ充填手段を利用することができる。サンプルの注意書きは実験実施中に容易に追記可能である。化学的アンフォールディング実験の場合、濃度を変えた変性剤を対象のタンパク質と混合し、平衡化のためにインキュベーションする。このサンプルをキャピラリに充填した後、プロメテウスNT.48で分析する。
48サンプルによる化学的変性シリーズのスキャンは、例えば7秒しかかからない。
ナノDSFは、抗体工学、膜タンパク質研究、製剤および品質管理の分野での応用において、固有トリプトファン蛍光を用いてタンパク質安定性を高解像度で測定するための先進的な示差走査型蛍光定量方法である。
本発明の装置ではナノDSF技術が利用可能である。これは、タンパク質工学の分野、製剤開発および品質管理の用途において、タンパク質フォールディングおよびタンパク質安定性の簡便、迅速および精確な分析用に最適な方法である。
アミノ酸トリプトファンの蛍光変化の追跡により、化学的および熱安定性を真に無標識のやり方で評価しうる。さらに、好適なデュアルUV技術によって、オンザフライ(即座)蛍光検出が可能となり、その結果、最高のスキャン速度およびデータ点密度、従って超高解像度のアンフォールディング曲線、が生み出される。このため、極めて小さいアンフォールディング・シグナルでも検出しうる。
さらに、補足的報告用蛍光体(secondary reporting fluorophore)を要しないため、タンパク質溶液の分析を、緩衝液との組み合わせから独立して、かつ最大のタンパク質濃度範囲(好ましくは150mg/mlから僅か5μg/mlまで)にわたって実施しうる。これにより、界面活性剤により可溶化された膜タンパク質や、高濃度の抗体製剤を分析しうる。
タンパク質構造の安定性を定量化するのによく使用される方法は、熱的および化学的アンフォールディング実験である。熱的アンフォールディング実験はタンパク質立体構造の経時的変化を監視するのに一定速度での温度上昇を使用するのに対し、化学的アンフォールディング実験は緩衝液添加物(通常はカオトロピック剤、例えば、尿素)の濃度勾配を使用してタンパク質を異なるレベルでアンフォールディングさせる。
多くのタンパク質が狭い温度範囲で熱的にアンフォールディングする。フォールディング状態からアンフォールディング状態への遷移の中心は、「融解温度」または「Tm」と称され、タンパク質の安定性の指標となる。熱的アンフォールディング実験は、特にタンパク質工学および製剤開発の分野において、またスクリーニング法に関してよく使用されるが、これは大量のサンプルが容易かつ並列的に評価可能だからである。
同様のアンフォールディング曲線が化学的変性実験によっても得ることができるが、これは、熱的アンフォールディング実験に加えて、タンパク質のフォールディングとアンフォールディングに関して熱力学的パラメータおよび平衡に関する情報も提供しうる。
タンパク質内のトリプトファンの蛍光はそれらの直接的な環境に大きく依存する。通常、タンパク質構造の変化は、トリプトファン蛍光の強度および発光波長の両方に影響を及ぼす。本発明に係る装置は、2つの異なる波長、即ち、330nmと350nm、で蛍光強度を測定する蛍光検出器を備えることが好ましい。これにより、蛍光強度の変化とアンフォールディング時の蛍光極大のシフトの両方に関して装置が高感度になる。
重要な安定性パラメータを導出するためにタンパク質変性曲線が使用される。通常、ある所定タンパク質の熱安定性は、タンパク質集団の半数がアンフォールディングされる温度である融解温度Tmにより記述される。Tmは、トリプトファン蛍光強度の変化により、またはアンフォールディング時のトリプトファン発光のシフトを表す330nmと350nmでのトリプトファン発光の関係により、算出可能である。通常、350/330nmの比がタンパク質のアンフォールディングに関する明確な遷移をもったデータを生ずるのに対し、単一波長検出による場合にはTmを必ず導出できるとは限らない。従って、本装置のデュアル波長システムはアンフォールディング過程の高感度検出を提供する。
本発明に係る装置(例えば、プロメテウスNT.48)は、製剤および品質管理用に研究室で使用しうる。濃度範囲が広いため、製剤に対して通常使用される非常に高濃度のバイオ医薬品を試験しうる。このプロメテウス装置により使用される抗体工学分野での用途に向けたナノDSF技術が特に適しているが、これは、得られる超高解像度により、多数の遷移およびアンフォールディング事象の検出および分析が可能となるからである。さらに、ナノDSFでは界面活性剤中の膜タンパク質の安定性を測定することができるが、これは、本方法が真に無標識であって、蛍光体を要しないからである。
さらに、以下、好適な実施形態について説明する。
タンパク質のアンフォールディング機構の基礎的理解および製薬業界における生物製剤の開発成功の両方のための1つの条件は、タンパク質安定性の詳細分析である。ここでは、新規の機器であるプロメテウスNT.48の性能を示す。この機器は、並列手法により最大48サンプルの熱的または化学的アンフォールディング時における固有タンパク質蛍光変化を検出する。
・序論
タンパク質安定性の評価は、基礎研究、有効成分研究および医薬品開発の不可欠な部分である[1]。例えば、有効成分研究プロセスにおける一次スクリーニングでは、低分子リガンドに結合したときの標的タンパク質の融解温度(Tm)のシフトが常套手段として使用される[2]。加えて、大量生産および長期保存のための最適条件を確立するために生物製剤(例、抗体)の熱的および化学的安定性を監視することがよくある[3、4]。さらに、タンパク質のアンフォールディングおよびバックフォールディング機構の慎重な分析が、タンパク質フォールディングの熱力学的起点についての重要な知見を提供することがある。これは、アルツハイマー病、パーキンソン病または糖尿病のような変性疾患の分子的基礎を説明する一助となる。
蛍光性アミノ酸であるトリプトファンの特性は、タンパク質フォールディングの無標識での蛍光分析の基礎となる。トリプトファンは疎水性アミノ酸であるため、ほとんどがタンパク質の疎水性コア内に位置し、そこで周囲の水性溶媒から遮蔽されている。しかし、アンフォールディング後、トリプトファンは露出状態となり、その光物理的特性の変化を生ずる[6]。トリプトファンの蛍光強度の変化および発光ピークのシフトを検出することにより、タンパク質のフォールディング状態からアンフォールディング状態への遷移を正確に総括することができる。このようにして融解温度(Tm)および熱力学的特性を決定しうる[7]。
以下には、製剤スクリーニング・プロジェクトにおけるタンパク質の熱的アンフォールディングの監視に関するプロメテウスNT.48の性能を実証する。本機器プロメテウスNT.48は、最大48サンプルまでを同時に測定でき、僅か10μlのサンプルが充填された高精度キャピラリを使用する。最高の感度および速度でトリプトファンの発光スペクトルの変化を監視するように特別に構成された検出器により、最高のデータ点密度が達成される。
α−アミラーゼ族のタンパク質はタンパク質フォールディングの分析に関して長年の実績を経ている[8]。ほとんどのアミラーゼが、3つの(β/α)バレルドメインと少なくとも1つの保存Ca2+結合部位とを備えた、非常に似た三次構造を有する(図12)。図12は、ブタ膵臓のα−アミラーゼ(PPA、緑色)および麹菌(aspergillus oryzae)のα−アミラーゼ(TAKA、青色)の構造を示す。赤丸がCa2+イオンである。
しかし、同時に、それらは極めて広範囲の融解温度(40℃から110℃まで)を有するので、タンパク質の熱安定性の決定因子の基礎研究にとって完璧である[9]。アミラーゼは、医学基礎研究に対するそれらの価値とは別に、糖中エタノールの大量生産用に商業利用されている。
本例では、哺乳動物のα−アミラーゼ(ブタ膵臓のα−アミラーゼ、PPA)および真菌のα−アミラーゼ(麹菌のα−アミラーゼ、TAKA)の熱的アンフォールディングを試験した。タンパク質立体構造についてのカルシウムイオンの安定化効果を総括し、最後に、熱安定性の改善度が異なるいくつかの添加物についての製剤スクリーニングを実施した。
本機器プロメテウスNT.48は、330nmおよび350nmの発光波長での蛍光を検出することにより、アンフォールディング時のタンパク質の固有トリプトファン蛍光のシフトを監視する。タンパク質融点(Tm、タンパク質の半分がフォールディング状態で残り半分がアンフォールディング状態のとき)を決定するため、上記2チャネルの一方における蛍光変化を使用してもよく、またはこれに代えて、蛍光強度の関係(F330/F350の比)を適用してもよい。
ほとんどのタンパク質にとって後者の方法が好ましい。これは、前記の蛍光強度比がトリプトファンの蛍光強度の変化と、蛍光の発光極大の長波長側シフト(赤方向シフト)もしくは短波長側シフト(青方向シフト)、との両方を監視するからである。PPAおよびTAKAの熱的アンフォールディングは、1℃/分の加熱速度で行われた。これは、10点/℃のデータ点密度を生じ、これによりタンパク質のアンフォールディングの開始時点を精密に決定したり、フォールディング状態からアンフォールディング状態への遷移を数学的モデルに精密に適用することが可能となる。
図13は、熱的アンフォールディング時のPPAおよびTAKAのトリプトファン蛍光の変化を示す。特にTAKAに関しては、両波長の蛍光の生データがフォールディング状態からアンフォールディング状態への明確な遷移を示している(図13A、左)。これはそのままTm分析に使用しうる。これに対し、PPAの生データに基づいても、そのような遷移は明らかではない(図13B、左)。さらに、TAKAはトリプトファン蛍光の長波長側シフト(赤方向シフト)を伴う典型的なアンフォールディング・プロファイルを示したのに対し、PPAはトリプトファン蛍光のより小さい幅での短波長側シフト(青方向シフト)を示す。
両タンパク質の蛍光比F330/F350を温度との関係として適用(プロット)すると、明確な融解曲線が得られた。これは、それぞれのアミラーゼアイソフォームの融解温度を分析するのに使用可能であった。融解温度の決定には次の異なる方法を使用しうる:中央値分析では、最初に下方および上方のベースラインを規定し、中線を挿入する。実験曲線とこの中線との交点がTmであると定義される(図13Aおよび13B、中央)。これに代えて、吸光シグナルの一次微分の極大を求めてもよい。この方法により、いくぶん主観的なベースライン値の決定(図13Aおよび13B、右)を回避しうる上、例えば、抗体またはより複雑な多ドメインタンパク質のアンフォールディングに関して複数の融点を求めることも可能となる。
最も重要なことは、図14Bの表に示した一次微分の分析結果が近似誤差の範囲内に収まっていることであり、これは結果の再現性が最大であることを実証している。従って、機器プロメテウスNT.48を用いると、最小のサンプルおよび時間でTm値を精確に決定できる。
上記結果は、PPAおよびTAKAの熱的アンフォールディング実験の再現性と精確性の両方が非常に高いものであったことを示す(図14Aおよび14B)。得られたTm値は、文献[9]中で引用された値に非常に近かった。
・アミラーゼの熱安定性のCa2+依存性
二つめの一連の実験は、α−アミラーゼの上記アイソフォームの両方に及ぼすCa2+イオンの安定性効果を総括することを目的とした。Ca2+イオンがアミラーゼの多様なアイソフォームのTm値の上昇に必要であることは既に証明されている。その上昇幅は、アルテロモナス(alteromonas)属由来のアミラーゼに対するほとんど効果のないものから、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のアミラーゼに対する50℃のTm上昇までに及ぶ[9]。
PPAおよびTAKAの安定性に対するCa2+イオンの効果を試験するため、熱的アンフォールディング実験の30分前に、結合したCa2+イオンを除去する目的で、両タンパク質を5mM−EDTA加緩衝液中でインキュベーションした。予想通り、EDTAによるCa2+イオンの除去は、どちらのアイソフォームのアミラーゼについてもTmの著しい増大をもたらした(図15)。ΔTmは、TAKA(−12℃)よりもPPA(−16.6℃)の場合により顕著であり、これは、既報の結果(PPA:−17℃、TAKA:−14℃)[10、11]とよく相関している。
・アミラーゼの熱安定性に対する緩衝液添加物の効果
タンパク質安定性を改善する添加物および緩衝液の条件についてのスクリーニングは、製剤スクリーニングとも称され、抗体および他の生物製剤の保存安定性を最大にするのに非常に重要である。プロメテウスNT.48を用いて、タンパク質安定性の改善効果が既に示されている多様な緩衝液添加物(即ち、グリセロール、スクロース、トレハロースおよびソルビトール)の効果を、10〜40%(重量/体積%)の範囲内の濃度のPPAおよびTAKAで試験した。
各アミラーゼ・アイソフォームについて16の異なる緩衝液条件の製剤スクリーニングを、20℃〜90℃の温度範囲および1℃/分の加熱速度で1回測定により実施した。測定は、合計400μlのサンプル(各緩衝液条件用+添加物なしの各アイソフォームについて4回の対照実験用に各々10μl)と、合計で僅か80μgのタンパク質を用いて、約70分以内の時間で実施された。
トリプトファン蛍光比をプロットしたグラフは、各添加物が濃度に依存してPPAおよびTAKAのTm増大を生じたことを明らかに示している。PPAに関しては、トレハロースが30%濃度で最も効果的(+12℃)であったのに対し、最も効果が低いのはグリセロールで、40%濃度でTm上昇は約7.5℃にすぎなかった(図16Aおよび16B)。TAKAに関しては、Tm上昇について最も効果が高かったのは40%のスクロース添加(+12℃)であったのに対し、グリセロールおよびトレハロースが最小の効果を示した(それぞれ+7.5℃および+8℃)(図17Aおよび17B)。これらの結果は、バチラス属由来のα−アミラーゼの熱的アンフォールディングに対する添加物の効果を試験した既報の研究に合致する[12]。
・結論
本ケーススタディでは、スクリーニング用途における2種類のα−アミラーゼアイソフォームの熱的アンフォールディング特性に関する機器プロメテウスNT.48の性能を検証した。
2つの特定波長でのトリプトファン蛍光の変化を検出することにより、異なる条件下でのアミラーゼタンパク質のTm値を決定することができた。全ての結果が既報の値に非常に近い。しかし、標準的な蛍光光度計を用いる方法と比べた時の最も重要な点は、プロメテウスNT.48を用いた場合には、実験遂行に必要なサンプルおよび時間の両方の消費が飛躍的に低減することである。
上記機器がキャピラリ形式であるため、1〜48個の任意の数量のサンプルを同時に測定するという、柔軟な実験構成をとることが可能になる。重要なのは、プロメテウス機器のキャピラリの使用によって、少ないサンプル消費量、高出力および高い多用途性という利点に加えて、高性能石英キュベットと比べてもUV蛍光検出の精度がさらに高くなるということである。さらに、キャピラリを用いた方法であるため、交差汚染が避けられ、かつ面倒で時間のかかる洗浄工程が不要となる。さらに、高速スキャン、従って高データ密度により、数学適応アルゴリズムによる融解曲線の堅牢な(エラー強さのある)分析と、さらに高精度なアンフォールディング開始の決定が可能になる。
加えて、トリプトファン蛍光の直接検出によるタンパク質アンフォールディングの監視は、熱的アンフォールディングを監視するのに日常的に用いられている他の方法(例、示差走査型蛍光測定法(DSF)またはサーモフルオー(Thermoflour)アッセイ)に比べて、より有用性の高い効果を示す。上記の従来アッセイ法は、タンパク質のコア内に通常埋もれているタンパク質の疎水部に結合している外部蛍光体を利用する。アンフォールディング中に上記疎水部が露出されて蛍光体が結合し、蛍光の増加を生ずる。しかし、これらのアッセイは、タンパク質との直接相互作用によりフォールディング/アンフォールディングバランスが乱されることから、フォールディングの熱力学の詳細分析には適していない。さらに、外部蛍光体は、多くの緩衝液(特に、例えば、界面活性剤含有)またはタンパク質の種類(例えば、膜タンパク質)との適合性をもたない。最後に、DSFは有効成分研究プロセスにおける一次スクリーニングに常用されているが、外部蛍光体は化合物との相互作用または結合部位のブロックを生じて、不当に負または正となる結果をもたらす可能性がある。
多数のタンパク質の熱的アンフォールディングの並列監視に関するその特性に加えて、機器プロメテウスNT.48の別の可能な用途として、数秒以内にタンパク質の化学的変性を分析することがある。要は、結果が示すのは、機器プロメテウスNT.48が、学術および産業の両分野において、タンパク質安定性についての高速、高精度かつコスト効率的な特性評価に並外れてよく適合していることである。その柔軟性および高速性により、上記機器は、タンパク質フォールディングの効率的な特性評価から高出力のスクリーニング計画までの多種多様な実験方法のための貴重なツールとなる。
・材料および方法
・サンプル調製
ブタ由来のα−アミラーゼ(ブタ膵臓由来のα−アミラーゼ、PPA、ロシュ社)および麹菌(aspergillus oryzae)由来のα−アミラーゼ(TAKA、シグマ社)を、それぞれ30mM−Hepes、50mM−NaCl、2mM−CaCl2、pH7.4中に10mg/mlの濃度で溶解した。熱的アンフォールディング実験における最終濃度は10μMであった。残留痕跡量の硫酸アンモニウムまたは他の不純物を除去するため、緩衝液交換遠心カラム(ナノテンパー・テクノロジーズ社)による緩衝液交換を実施した。α−アミラーゼのCa2+への依存性を決定するため、CaCl2を含有しないが5mM−EDTAを加えた緩衝液に対して別の緩衝液交換を実施した。
製剤スクリーニングのため、所定濃度のスクロース、ソルビトール、トレハロースまたはグリセロールを加えた20mMのクエン酸ナトリウム緩衝液、pH5.9に上記タンパク質を入れた。
・熱的アンフォールディング実験
熱的アンフォールディング実験のため、上記タンパク質を10μMの最終濃度に希釈した。各条件について、キャピラリ1本当たり10μlのサンプルを用意した。サンプルをUVキャピラリ(ナノテンパー・テクノロジーズ社)に充填し、実験をプロメテウスNT.48を用いて実施した。温度勾配は20℃から90℃までの範囲内で1℃/分の昇温に調整した。発光波長330および350nmでトリプトファン蛍光の温度依存性の変化を検出することにより、タンパク質のアンフォールディングを測定した。
・データ分析
融解温度の決定は、蛍光比(F330/F350)の一次微分の極大を検出することにより行われる。それを達成するため、遷移領域に対して8次の多項式適合(フィット)を算出した。次に、この多項式適合の一次微分をとり、ピーク位置(Tm)を決定した。
図13は、TAKAおよびPPAの融解曲線の分析を示す。図Aは、TAKAの熱的アンフォールディングに関するトリプトファン蛍光の減衰のプロットである(左)。フォールディング状態からアンフォールディング状態への遷移は、330および350nmの発光波長での蛍光の生データでも既に視認できる。プロットが近接している図は、プロメテウスNT.48のデータ点密度が高いことを示している。Tmの決定には2つの方法が使用可能である。中央値分析を用いる場合(中央)、上方と下方の二つのベースライン間の中線を規定する。この中線と実験データとの交点がTmを表す。これに代えて、実験データを多項関数に適合させてもよい。その一次微分は最大傾斜点でピークを示し、これがTmに対応する(右)。図Bは、PPAについてのTmの同様な分析である。TAKAとは異なり、タンパク質のフォールディング状態からアンフォールディング状態への遷移は蛍光の生データでは視認できないことを考慮すべきである。一方、蛍光比をプロットすることによりTmは容易に決定可能である(右)。
図14は、プロメテウスNT.48のアンフォールディングデータの正確性および再現性を示す。図Aのプロットは、独立して記録されたPPAおよびTAKAの10個の重複させた融解曲線を示す。図Bでは、両タンパク質のTmの決定において実験間での標準偏差が小さく(0.2℃以下)、既報の結果[9]によく相関している。
図15は、アミラーゼの安定性に及ぼすCa2+効果を示す。Ca2+イオンの除去により、どちらのアミラーゼアイソフォームも著しく不安定化し、Tmのより低い値へのシフトとなって現れる。
図16は、PPAの製剤スクリーニングを示す。PPAの熱安定性向上に対する最適条件を決定するため、16の異なる添加物条件でその熱的アンフォールディングを監視した。各添加物について蛍光比をプロットしたグラフにおいて、いずれもTmのより高い値への顕著なシフトを認めることができる。異なる条件でのTmの定量化により、30%のトレハロースの添加が最も高効率であるのに対し、グリセロールは効果が最小であることが認められる。
図17は、TAKAの製剤スクリーニングを示す。TAKAの熱安定性向上に対する最適条件を決定するため、16の異なる添加物条件でその熱的アンフォールディングを監視した。各添加物について蛍光比をプロットしたグラフにおいて、いずれもTmのより高い値への顕著なシフトを認めることができる。異なる条件でのTmの定量化により、40%のスクロースの添加が最も高効率であるのに対し、グリセロールおよびトレハロースは効果が最小であることが認められる。
本発明に係る装置または本発明に係るシステムの1つの好適な実施形態を、以下に再びナノDSF技術によりプロメテウスNT.48を参照しながら説明する。
プロメテウス・シリーズにより、ナノテンパー・テクノロジーズ社はナノDSF技術を提供するが、これは、タンパク質工学の分野、製剤開発および品質管理における用途でのタンパク質フォールディングおよび安定性の簡易、迅速かつ精確な分析のための優良な方法である。
ナノDSFの好ましい有用な効果は次の通りである:
・未変性(ネイティブ)DSFから得られる便益:色素不要、緩衝液および界面活性剤から独立
・より多い遷移の監視:高解像度による効果
・より速い結果取得:より少量のサンプルでの作業
・5μg/mlから150mg/mlまでの広範囲の濃度での測定。
ナノDSFは、アミノ酸トリプトファンの内部蛍光における最小変化の検出に基づく示差走査型蛍光測定法の先進技術である。
タンパク質におけるトリプトファン類の蛍光はそれらの周辺に強く依存する。アミノ酸トリプトファンの蛍光の変化を追跡することにより、標識無しの手法で化学的および熱的な安定性を正確に評価することができる。
さらに、補足的報告用蛍光体を要しないため、タンパク質溶液の分析を、緩衝液の組み合わせとは無関係に、150mg/mlから僅か5μg/mlまでの最大のタンパク質濃度範囲にわたって実施しうる。その結果、界面活性剤により可溶化された膜タンパク質や高濃度の抗体製剤も分析できる。
ナノテンパー社によるデュアルUV技術により即座の蛍光検出が可能となり、それにより抜群のスキャン速度およびデータ点密度、従って超高解像度のアンフォールディング曲線が得られ、最小のアンフォールディングシグナルですら検出可能となる。
次の表に好ましい技術的特徴を要約する。
Figure 2018507387
タンパク質変性曲線を用いて重要な安定性パラメータを得る。通常、ある特定のタンパク質の熱安定性は、そのタンパク質集団の半数がアンフォールディング状態にある融解温度Tmにより記述される。
Tmの算出は、トリプトファンの蛍光強度での変化により、または330nmと350nmでのトリプトファン発光の比により行われ、これは、アンフォールディング時のトリプトファン発光のシフトを説明する。
一般に、350/330nm比はタンパク質アンフォールディング時の明確な遷移を持ったデータを提供するのに対し、単一波長の検出によっては必ずしもTmを得ることができるとは限らない。従って、プロメテウスNT.48のデュアル波長システムは、アンフォールディング過程の高感度の検出を提供する。
本発明はまた、表現、特徴、数値または範囲などの前後に「略、約、実質的に、一般に、少なくとも」等のような用語が付いている場合、正確または厳密な表現、特徴、数値または範囲などを含んだものである(即ち、「約3」は、「3」も含み、「実質的に半径方向」は「半径方向」を含む)。

Claims (16)

  1. キャリア(6)上に配置された、少なくとも一部が液柱で充填されている少なくとも1本のキャピラリ(10)をテンパリングする方法であって、
    ここで、長さ(L)、幅(B)および高さ(H)の前記キャリア(6)は、このキャリア(6)の幅方向に前記キャピラリ(10)を受け入れており、そして
    前記キャピラリ(10)の前記液柱は両端を備えているが、テンパリング素子(5)に対して、前記液柱の少なくとも一方の端部が前記テンパリング素子(5)から突出し、かつ前記キャピラリ(10)が前記テンパリング素子(5)と接触して前記キャピラリの少なくとも一部とそこに収容されている前記液柱とがテンパリングされるように、前記液柱が配列されており、
    下記を特徴とする方法:
    前記キャピラリの両端(11、12)をテンパリング中に封止しない。
  2. 前記少なくとも1本のキャピラリ(10)の長さが40〜75mm、好ましくは45〜55mm、さらに好ましくは約50mmである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記テンパリング素子(5)としてシリコンを用いる、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記テンパリング素子(5)の幅が5〜34mm、好ましくは20〜30mm、さらに好ましくは20〜25mm、さらに好ましくは約25mmである、請求項1〜3の何れかに記載の方法。
  5. 前記テンパリング素子(5)が、
    その幅方向に一体に形成されているか、または、
    互いに分割された複数のテンパリング領域を備え、これら複数のテンパリング領域は互いに接しているか、もしくは少なくとも1つの空間を設けてテンパリング素子(5)の幅をカバーしている、請求項4に記載の方法。
  6. 前記少なくとも1本のキャピラリ(10)とテンパリング素子(5)との間の接触を確保するために、キャピラリ(10)をテンパリング素子(5)上に蓋で押さえ付ける、請求項1〜5の何れかに記載の方法。
  7. 前記キャピラリ(10)が、水性サンプル溶液または溶媒、特に生化学的/生物学的測定用の緩衝液溶媒、で充填されている、請求項1〜6の何れかに記載の方法。
  8. 前記キャピラリ(10)内の液柱の長さが、テンパリング素子(5)の幅の少なくとも1.1倍、好ましくは少なくとも1.2倍、好ましくは少なくとも1.3倍である、請求項1〜7の何れかに記載の方法。
  9. 前記キャピラリ(10)は、
    i)内径が0.02〜0.9mmであるか、および/または、
    ii)外径が0.1〜2mmである、
    請求項1〜8の何れかに記載の方法。
  10. 前記キャピラリ(10)が、ガラス製、好ましくはホウケイ酸ガラス3.3クオーツ製、合成石英ガラス製である、請求項1〜9の何れかに記載の方法。
  11. キャピラリの断面が、円形、楕円形、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形、半円形もしくは台形であり、または他の不規則形状を含むものである、請求項1〜10の何れかに記載の方法。
  12. 下記工程を含む、キャピラリ内に充填されたサンプルを光学的に試験する方法:
    ・キャピラリ(10)にサンプルを充填し;
    ・前記キャピラリ(10)をキャリア(6)上に配置し;
    ・前記キャピラリ(10)を、請求項1〜11の何れかに記載の方法によりテンパリングし;
    ・前記サンプルを、光、好ましくは紫外光で励起させ;そして、
    ・前記キャピラリ内の前記サンプルによる発光を測定する。
  13. 複数本のキャピラリを特に請求項1〜12の何れかに記載の方法によりテンパリングするためのテンパリング装置であって、下記を備える装置:
    ・複数本のキャピラリ(10)を受け入れるためのキャリア(6)、および
    ・前記キャピラリをテンパリングするためのテンパリング装置。
  14. 前記キャリアが48本のキャピラリ(10)を受け入れ可能であり、前記テンパリング装置(5)が好ましくはシリコン製である、請求項13に記載のテンパリング装置。
  15. 下記を備える、キャピラリ(10)内のサンプルを光学的に試験するためのシステム:
    ・前記キャピラリ(10)をテンパリングするための、請求項13および14の何れかに記載のテンパリング装置;
    ・少なくとも1本のキャピラリ(10)、好ましくは変形不能なキャピラリ;および/または
    ・光、好ましくは紫外光を照射し、前記キャピラリ(10)内の前記サンプルが発する光、好ましくは紫外域内の光を検出するための光学測定システム。
  16. キャピラリまたはテンパリング装置の、請求項1〜12の何れかに記載された方法に従った、特にナノDSF用途への使用。
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