明細書に組み入れられ、そして、明細書の一部を形成する添付図面は、本発明の幾つかの実施態様を例証するものであり、そして、明細書と共に本発明の原理を説明する機能を有する。図面は、本発明の実施態様を例証することのみを目的とし、本発明を限定すると解釈すべきではない。
オートファジー経路の概略図。(A)3つの主なオートファジーの種類、マクロオートファジー、マイクロオートファジー、及びCMA。マクロオートファジーのプロセスは、所謂隔離膜の形成で始まる。後者は、オートファゴソームと呼ばれる特徴的な二重膜構造を形成する細胞質物質を貪食するために伸長する。後者は、次に、リソソームと融合してオートリソソームになり、その後、貪食された物質が分解される。オートファジーを制御する分子経路は、酵母から高等真核細胞に至るまで高度に保存されている。CMAでは、ペンタペプチドKFERQ様シグナル配列を有するタンパク質が、HSPA8シャペロンによって認識され、これは、次いで、LAMP-2Aに会合して、そのオリゴマー化を誘発する。この事象によって、標的となるタンパク質が、HSPA8を必要とするプロセスを通してリソソームの内腔に移動することができるようになるマイクロオートファジーは、リソソーム膜の貫入を通じたリソソームによる細胞成分の直接隔離を伴う;(B)マクロオートファジープロセスの主な工程;(C)MHCII分子によりT細胞に提示するためのペプチドの主な供給源としてのオートファジー。略記:CMA、シャペロン介在性オートファジー;ER、小胞体;HLA、ヒト白血球抗原;HSPA8/HSC70、70KDaの熱ショック同族タンパク質;LAMP-2A、リソソーム関連膜タンパク質−2A;MIIC、主要組織適合複合体クラスII区画;MHCII、主要組織適合複合体クラスII;TCR、T細胞受容体。
オートファジーの薬理学的制御因子。薬理学的オートファジー制御因子の介入の可能な部位を示す図。左から右へ:ラパマイシン及びデキサメタゾンは、mTORのキナーゼ活性を阻害し、マクロオートファジーのアップレギュレーションを導く。また、デキサメタゾンは、プレオートファゴソーム構造体に対して作用することが知られている。その標的については未だ議論中であるトレハロースは、mTORとは独立な経路を通じたオートファジーの活性化因子である。バフィロマイシンA1は、オートファゴソームとリソソームとの融合を阻害することによって自己貪食空胞の成熟を阻止する。それは、液胞型プロトンATPaseを阻害することによって作用する。マウスへの投与後にクラスリン介在性エンドサイトーシスによるBリンパ球への取り込み及びリソソームへのホーミングが生じることが証明されているP140ペプチド(▲)及びDSGは、いずれも、インビトロでHSPA8と相互作用し、そして、リソソーム内のpHを変化させる。P140は、オートファジーフラックスのダウンレギュレーションと一致して、オートファジーマーカーであるp62/セクエストソーム1及びMAP1LC3-IIのMRL/lpr B細胞における蓄積を誘発する。このペプチドは、CMA及びマクロオートファジーの両方に影響を及ぼす。CQ及びHCQは、エンドソームの酸性化を阻止するリソソーム作用剤である。これらは、エンドソーム及びリソソームの内部に蓄積し、リソソーム酵素の阻害を引き起こすが、これには、酸性pH、エンドソーム及びリソソームの融合不全、並びにオートリソソームの成熟が必要とされる。略記:CMA、シャペロン介在性オートファジー;CQ、クロロキン;DSG、15−デオキシスペルグアリン;HCQ、ヒドロキシクロロキン;HSPA8、熱ショックタンパク質8;LAMP-2A、リソソーム関連膜タンパク質−2A;MAP1LC3、微小管関連タンパク質軽鎖3;mTOR、ラパマイシンの哺乳類標的。
10位のセリンがリン酸化されている配列番号1からなるペプチドの安定性と比較した、本発明に係るペプチド(化合物II)の37℃における安定性を示す。グラフは、経時的な(日数で表す)安定性の百分率を表す。曲線A〜Cは、それぞれ、200、100、及び50μg/mLの濃度における化合物IIの安定性を表す。曲線D〜Fは、それぞれ、200、100、及び50μg/mLの濃度における、10位のセリンがリン酸化されている配列番号1からなるペプチドの安定性を表す。
NaCl(丸の線)、10位のセリンがリン酸化されている配列番号1からなるペプチド(四角の線)、及び本発明に係る化合物II(三角の線)を注射したマウスの経時的な(週数で表す)累積生存率(パーセント)を表すカプラン・マイヤーグラフ。
NaCl(丸の線)、10位のセリンがリン酸化されている配列番号1からなるペプチド(四角の線)、及び本発明に係る化合物II(三角の線)を注射したマウスの経時的な(週数で表す)タンパク尿スコア。
MRL/lprマウス細胞の細胞過形成の測定。Y軸は、NaCl(丸)、10位のセリンがリン酸化されている配列番号1からなるペプチド(四角)、及び本発明に係る化合物II(三角)で処理したマウスにおける細胞数/mL(血液)(×106)を表す。
10位のセリンがリン酸化されている配列番号1からなるペプチドのHSC70タンパク質に対する親和性の測定。曲線は、25μM(A)、12.5μM(B)、6.25μM(C)、3.12μM(D)、及び1.56μM(E)の濃度の10位のセリンがリン酸化されている配列番号1からなるペプチドを用いることによる、経時的な(秒数で表す)Biacore応答に対応する。
HSC70タンパク質に対する、本発明に係る化合物IIの親和性の測定。曲線は、25μM(A)、12.5μM(B)、6.25μM(C)、3.12μM(D)、及び1.56μM(E)の濃度の化合物IIを用いることによる、経時的な(秒数で表す)Biacore応答に対応する。
培養物中100μg CII/mLの存在下におけるCD4+ T脾細胞の増殖。
フローサイトメトリーによって可視化した、MRL/lpr B細胞及びRaji細胞における5.4% マンニトール又は10% トレハロース中の蛍光P140ペプチドの細胞取り込み。B細胞は、12〜14週齢のMRL/lprマウスから採取し(一次細胞);Raji細胞は、バーキットリンパ腫患者のBリンパ球から1963年に派生した樹立細胞株である。MRL/lpr B細胞及びRaji細胞のいずれにおいてもペプチドをトレハロースで希釈したとき、マンニトールよりもP140の細胞取り込みがはるかに少ない。
図10のB細胞の共焦点画像。全ての共焦点画像を同じ顕微鏡設定で撮影した。Rab9(赤)は、リソソームへのホーミング前にP140が局在する後期エンドソーム区画を特定し、DAPI(青)は、DNAを特定する。この結果から、トレハロース中では、B細胞に入るP140ペプチド(緑)がはるかに少ないというフローサイトメトリーの結果を裏付けるものであった。
マウスの好酸球増多性気道炎症の15日モデルにおいて局所(鼻腔内)又は全身(静脈内)に投与したときのP140ホスホペプチドの抗炎症効果を評価した。簡潔に述べると、生理食塩水 0.1mL中OVA 50μg及びalum 2mgを含有する混合物を腹腔内(i.p.)注射することによって、9週齢の雄Balb/cマウスを感作した。5日目にOVA 25μL、次いで、12、13、及び14日目にOVA及び/又は生理食塩水 25μLをi.n.投与することによって、マウスを刺激した。9日目にP140又は溶媒をi.v.注射(2mL/kg)又はi.n.投与(1mL/kg)することによってマウスを処理した。
Balb/cマウスのオボアルブミン誘導性気道過好酸球増加症モデルにおける気道炎症細胞の動員に対するP140ホスホペプチドの効果。Balb/cマウスをOVA(0、1、及び2日目)で免疫し、そして、OVA(5日目)及びOVA又は生理食塩水(12、13、及び14日目)に刺激した。9日目に4mg/kgの用量でP140をi.n.(P140-IN)又はi.v.(P140-IV)投与した。BAL中のA)好酸球、B)好中球、C)マクロファージ、D)T細胞、及びE)B細胞の絶対数を示す。ブロックは、平均であり、そして、バーは、SEM値である(n=1群当たり1又は6)。###対照群に対してp≦0.001、そして、OVA群に対して*p≦0.05、**p≦0.01、及び***p≦0.001。
HDM抽出物(Stallergenes)の鼻腔内(i.n.)投与によって9週齢の雄Balb/cマウスを感作した:0、1、2、3、4日目に生理食塩水 25μL中1μg、そして、14及び21日目に10μg。28、29、及び30日目にHDM(1μg)及び/又は生理食塩水をi.n.投与することによって、マウスを刺激した。25日目にP140又は溶媒をi.v.注射(2mL/kg)することによってマウスを処理した。
Balb/cマウスのHDM誘導性喘息モデルにおける気道反応性に対するP140ホスホペプチドの効果。ベースライン時、及びエアロゾル化されたPBS及びMCh(50mg/mL)に応答した、cm H20.s.mL-1として表される気道抵抗R、cm H20.mL-1として表されるエラスタンスE、及びmL.cm H2 -1として表されるコンプライアンスCを、Flexivent(登録商標)で評価した。ブロックは、平均であり、そして、バーは、SEM値である(n=1群当たり5〜8)。###PBS噴霧とMCh噴霧との間でp≦0.001、そして、*慢性喘息におけるP140群と溶媒群との間でp≦0.05。
Balb/cマウスのHDM誘導性喘息モデルにおける気道炎症細胞の動員に対するP140ホスホペプチドの効果。HDM(Stallergenes)の鼻腔内(i.n.)投与によってBalb/cマウスを感作した:0、1、2、3、4日目にPBS 25μL中1μg、そして、14及び21日目に10μg。28、29、及び30日目にHDM及び/又はPBSをi.n.投与することによって、マウスを刺激した。25日目に4mg/kgの用量のP140又は溶媒をi.v.注射(2mL/kg)することによってマウスを処理した。BAL中の好酸球、好中球、T細胞、B細胞、マクロファージ、及びDCの絶対数を示す。ブロックは、平均であり、そして、バーは、SEM値である(n=1群当たり5〜8)。慢性喘息における溶媒群とアレルゲン刺激との間で#p≦0.05及び###p≦0.001、そして、慢性喘息におけるP140群と溶媒群との間で*p≦0.05。
未処理ラット(□)と比較した、P140ペプチドで処理したCIDPラット(●)の体重(A)及び臨床経過(B)。P140ペプチドの注射を赤矢印によって表す。平均値及びSEMを示す。
単離唾液腺におけるリンパ球亜群の評価。
単離唾液腺における炎症のレベルの評価。
単離唾液腺におけるFSの数の評価。
関節リウマチのマウスモデルにおけるP140ペプチドの評価。
関節リウマチのマウスモデルにおけるP140ペプチドの評価。
関節リウマチのマウスモデルにおけるP140ペプチドの評価。
関節リウマチのマウスモデルにおけるP140ペプチドの評価。
関節リウマチのマウスモデルにおけるP140ペプチドの評価。
関節リウマチのマウスモデルにおけるP140ペプチドの評価。
関節リウマチのマウスモデルにおけるP140ペプチドの評価。
関節リウマチのマウスモデルにおけるP140ペプチドの評価。
関節リウマチのマウスモデルにおけるP140ペプチドの評価。
関節リウマチのマウスモデルにおけるP140ペプチドの評価。
関節リウマチのマウスモデルにおけるP140ペプチドの評価。
関節リウマチのマウスモデルにおけるP140ペプチドの評価。
毎日の前側直線枠(front straight panes)のサイズの評価、P140対NaC1(独立t検定)。
毎日の左前肢のサイズの評価、P140対NaC1(独立t検定)。
一晩の炎症のスコアの評価、P140/NaC1対Lupuzor(商標)。
詳細な説明
以下は、本発明の実施において当業者を支援するために提供される本発明の詳細な説明である。当業者は、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく本明細書に記載する実施態様において修正及び変更を行うことができる。本明細書に記載するものと類似又は均等な任意の方法及び材料を本発明の実施又は試験で用いることもできるが、好ましい方法及び材料について以下に記載する。特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書における本発明の記載において用いられる用語は、特定の実施態様を説明するためだけのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書において言及する全ての刊行物、特許出願、特許、図面、及び他の参照文献は、その全体が参照により明示的に本明細書に組み入れられる。
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。明細書において用いられる用語は、特定の実施態様を説明するためだけのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
ある範囲の値が提供される場合、文脈において特に明確な規定がない限り、その範囲の上限値と下限値の間にある、下限値の単位の10分の1までの各介在値、及び指定の範囲内の任意の他の指定値又は介在値が本発明に包含されることが理解される。より小さな範囲に独立に含まれ得る、これらのより小さな範囲の上限値及び下限値も本発明に包含されるが、ただし、指定の範囲内の特に除外される任意の限界値に従う。指定の範囲が限界値の一方又は両方を含む場合、これらの含まれる限界値のいずれか又は両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
本明細書で使用するとき、以下の用語は、特に規定しない限り、以下の用語に基づく意味を有し得る。しかし、本発明が属する技術分野の当業者によって知られているか又は理解されている他の意味も可能であり、本発明の範囲内であることを理解すべきである。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、単数形「a」、「and」、及び「the」は、これら冠詞の文法上の目的語に対する複数の言及を含む(すなわち、1つ又は1つ超又は少なくとも1つを指す)ことに留意すべきである。一例として、「an element(要素)」は、1つの要素又は1つ超の要素を意味する。
用語「約」は、数値又は数値範囲に関連して本明細書で使用するとき、実用的及び/又は理論的な制約に起因して当技術分野において認識及び許容されている特定のレベルのばらつきが存在するという事実を反映している。例えば、特定の装置が動作する及び/又は測定が行われる方式における固有の差異に起因して、多少のばらつきは許容される。上記に関連して、語句「約」は、通常、標準偏差又は標準誤差内の値を包含するために用いられる。
語句「及び/又は」は、明細書及び特許請求の範囲で使用するとき、このように結合される要素の「いずれか又は両方」を意味する、すなわち、一部の場合には連言的に存在し、そして、他の場合には選言的に存在する要素を意味すると理解すべきである。「及び/又は」と共に列挙される複数の要素は、同じように解釈すべきである、すなわち、このように結合される要素のうちの「1つ以上」である。場合により、具体的に特定される要素と関連していようといまいと、「及び/又は」節によって具体的に特定される要素以外の他の要素が存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」に対する言及は、「含む」等のオープンエンドな言語と併用されるとき、一実施態様では、Aのみ(場合によりB以外の要素を含む);別の実施態様では、Bのみ(場合によりA以外の要素を含む);更に別の実施態様では、A及びBの両方(場合により他の要素を含む)等を指し得る。
明細書及び特許請求の範囲で使用するとき、「又は」は、上に定義した「及び/又は」と同じ意味を有すると理解すべきである。例えば、リスト中の項目を分離するとき、「又は」又は「及び/又は」は、包含的であると解釈されるものとし、すなわち、多数の要素又は要素のリストのうちの少なくとも1つを含むだけでなく、1つ超も含み、そして、場合により更なる列挙されていない項目も含む。明らかに逆の意味を表す用語、例えば、「1つだけ」若しくは「正確に1つ」、又は特許請求の範囲で用いられるとき「からなる」のみが、多数の要素又は要素のリストのうちの正確に1つの要素を含むことを指す。一般的に、用語「又は」は、本明細書で使用するとき、「いずれか」、「1つ」、「1つだけ」、又は「正確に1つ」等の排他的な用語が前に記載されているとき、排他的選択肢(すなわち、「一方又は他方であるが両方ではない」)を示すとしか解釈しないものとする。
特許請求の範囲、並びに上記明細書では、全ての移行句、例えば、「含む」、「包含する」、「保有する」、「有する」、「含有する」、「伴う」、「保持する」、「で構成される」等は、オープンエンドである、すなわち、非限定的に含むことを意味すると理解すべきである。United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures, Section 2111.03.に記載の通り、移行句「からなる」及び「から本質的になる」のみが、それぞれ、クローズド又はセミクローズドな移行句であるものとする。
明細書及び特許請求の範囲で使用するとき、1つ以上の要素のリストを参照する語句「少なくとも1つ」は、要素のリスト内の要素のいずれか1つ又はそれ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内に具体的に列挙されているそれぞれの及び全ての要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含むものではなく、そして、要素のリスト内の要素の任意の組合せを除外するものでもないと理解すべきである。また、この定義は、具体的に特定される要素に関連していようといまいと、語句「少なくとも1つの」が参照する要素のリスト内において具体的に特定される要素以外の要素が場合により存在し得ることを許容する。したがって、非限定的な例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は均等に「A又はBのうちの少なくとも1つ」、又は均等に「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施態様では、少なくとも1つ(場合により1つを超えるを含む)のAを指し得、Bは存在せず(そして、場合により、B以外の要素を含む);別の実施態様では、少なくとも1つ(場合により1つを超えるを含む)のBを指し得、Aは存在せず(そして、場合により、A以外の要素を含む);更に別の実施態様では、少なくとも1つ(場合により1つを超えるを含む)のA及び少なくとも1つ(場合により1つを超えるを含む)のB(そして、場合により、他の要素を含む)等を指し得る。
また、1つを超える工程又は行為を含む本明細書に記載する特定の方法では、該方法の工程又は行為の順序は、文脈上特に指定しない限り、必ずしも該方法の行為又は行為が列挙されている順序に限定されるものではないことを理解すべきである。
用語「同時投与」及び「同時に投与する」又は「併用療法」は、処置用剤がある程度、好ましくは有効量で、同時に患者内に存在する限り、同時発生的投与(2つ以上の処置用剤を同時に投与する)及び時間変化的投与(追加の処置用剤の投与時点とは異なる時点で1つ以上の処置用剤を投与する)の両方を指す。特定の好ましい態様では、本明細書に記載する本化合物のうちの1つ以上を、少なくとも1つの更なる生物活性剤(特に、抗癌剤を含む)と組み合せて同時に投与する。特に好ましい態様では、化合物の同時投与によって、相乗的活性及び/又は療法(抗癌活性を含む)が得られる。
用語「化合物」とは、本明細書で使用するとき、特に指定しない限り、本明細書に開示する任意の特定の化学化合物を指し、そして、その互変異性体、位置異性体、幾何異性体、そして、適用可能な場合、光学異性体(鏡像異性体)及び他の立体異性体(ジアステレオ異性体)を含む立体異性体に加えて、文脈上適用可能な場合、その薬学的に許容し得る塩及び誘導体(プロドラッグ形態を含む)を含む。文脈におけるその使用において、化合物という用語は、一般的に、単一の化合物を指すだけでなく、立体異性体、位置異性体、及び/又は光学異性体(ラセミ混合物を含む)等の他の化合物、並びに開示する化合物の特定の鏡像異性体又は鏡像異性的に濃縮された混合物も含み得る。この用語は、また、文脈において活性部位への化合物の投与及び送達を促進するように修飾されている化合物のプロドラッグ形態を指す。本化合物の説明において、特に、多数の置換基及びそれに関連する変数が記載されることに留意する。本明細書に記載する分子は、概して以下に記載する通り、安定な化合物であることが当業者には理解される。結合が示されているとき、二重結合及び単結合の両方が、図示された化合物の枠内で表される。
用語「誘導体」とは、ネイティブな化合物から直接、修飾によって、又は部分置換によって形成される化学組成物、例えば、核酸、ヌクレオチド、ポリペプチド、又はアミノ酸を意味し得るが、決してこれらに限定されるものではない。用語「アナログ」とは、ネイティブな化合物と類似しているが同一ではない構造を有する化学組成物、例えば、核酸、ヌクレオチド、ポリペプチド、又はアミノ酸を意味し得るが、決してこれらに限定されるものではない。
用語「有効量/用量」、「薬学的に有効な量/用量」、「薬学的に有効な量/用量」、又は「処置的に有効な量/用量」は、病態、障害、又は疾患状態の症状を予防するか、発生を阻害するか、改善させるか、遅延させるか、又は治療する(症状をある程度、好ましくは完全に軽減する)のに十分な活性医薬成分の量/用量を意味し得るが、決してこれらに限定されるものではない。有効量は、疾患の種類、用いられる組成物、投与経路、処置される哺乳類の種類、考慮される具体的な哺乳類の身体特性、同時投薬、及び医学分野の当業者が認識する他の要因に依存する。一般的に、剤の効力に依存して0.1mg/kg〜1000mg/kg(体重)/日の量の活性成分が投与される。このような化合物の毒性及び処置有効性は、例えば、LD50(集団の50%が死亡する用量)及びED50(集団の50%において処置的に有効な用量)を決定するための、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性作用と処置効果との間の用量比が、処置指数であり、そして、比LD50/ED50として表すことができる。大きな処置指数を示す化合物が好ましい。毒性副作用を示す化合物を使用してもよいが、未感染細胞に対する潜在的損傷を最小化し、そして、それによって副作用を低減するために、このような化合物が罹患組織の部位を標的とする送達系を設計するように注意すべきである。細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータを、ヒトにおいて使用するための投薬量の範囲の決定において用いることができる。このような化合物の投薬量は、好ましくは、ほとんど又は全く毒性を有しないED50を含む血中濃度の範囲内である。投薬量は、使用される剤形及び利用される投与経路に依存してこの範囲内で変動してよい。本発明の方法で用いられる任意の化合物について、処置的に有効な用量は、細胞培養アッセイから最初に推定することができる。用量は、細胞培養物で求めたIC50(すなわち、症状を最大半分阻害する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために動物モデルで決定してよい。このような情報を用いて、ヒトにおいて有用な用量をより正確に求めることができる。血漿濃度は、例えば、高性能液体クロマトグラフィによって測定することができる。
用語「薬理組成物」、「処置用組成物」、「処置用製剤」、又は「薬学的に許容し得る製剤」は、所望の活性に最も好適な身体部位に投与(例えば、全身投与)するのに好適な形態である、本発明によって提供される剤の有効な分布を可能にする組成物又は製剤を意味し得るが、決してこれらに限定されるものではない。
用語「薬学的に許容し得る」又は「薬理学的に許容し得る」とは、必要に応じて、動物又はヒトに投与したとき、副作用、アレルギー反応、又は他の有害反応を生じさせない実体及び組成物を意味し得るが、決してこれらに限定されるものではない。
用語「薬学的に許容し得る担体」又は「薬理学的に許容し得る担体」とは、医薬投与に適合する任意の、そして、全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等を意味し得るが、決してこれらに限定されるものではない。好適な担体は、参照により本明細書に組み入れられる、この分野の標準的な参考書であるRemington's Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載されている。このような担体又は希釈剤の好ましい例は、水、生理食塩水、フィンゲル液(finger's solutions)、デキストロース溶液、及び5% ヒト血清アルブミンを含むが、これらに限定されない。リポソーム及び固形油等の非水性ビヒクルを使用してもよい。薬理学的活性物質のためにこのような媒体及び剤を使用することは、当技術分野において周知である。任意の従来の媒体又は剤が活性化合物と不適合である場合を除いて、組成物におけるその使用が企図される。また、追加の活性化合物を組成物に配合してもよい。
用語「全身投与」とは、例えば、経腸又は非経口であり、そして、全身吸収又は血流中における薬物の蓄積につながる剤の全身分布を生じさせ、続いて、体全体にわたって分布させる投与経路を指す。好適な形態は、一つには、用途又は例えば、経口、経皮、若しくは注射による等の侵入経路に依存する。このような形態は、組成物又は製剤が標的細胞(すなわち、負に帯電しているポリマーが送達されるのが望ましい細胞)に達するのを妨げてはならない。例えば、血流に注入される薬理組成物は、可溶性でなければならない。他の要因は、当技術分野において公知であり、そして、毒性等の検討事項、及び組成物又は製剤がその効果を発揮するのを妨げる形態を含む。全身吸収を導く投与経路は、静脈内、皮下、腹腔内、吸入、経口、肺内、及び筋肉内を含むが、これらに限定されるわけではない。薬物の循環への侵入速度は、分子量又はサイズの関数であることが示されている。本発明の化合物を含むリポソーム又は他の薬物担体の使用は、潜在的に、例えば、細網内皮系(RES)の組織等の特定の組織型に薬物を局在させることができる。例えば、リンパ球及びマクロファージ等の細胞の表面と薬物との会合を促進することができるリポソーム製剤も有用である。
用語「局所投与」とは、病変又は疾患の部位に適切な又は近接する(例えば、約10cm以内)部位に剤が送達される投与経路を指す。
用語「保存的突然変異」とは、核酸の変化によって化学的に類似のアミノ酸の置換が生じる、コード配列における単一のアミノ酸又は少数のアミノ酸を変化、付加、又は欠失させる核酸の置換、欠失、又は付加を指す。互いに保存的置換として機能し得るアミノ酸は、以下を含む:塩基性:アルギニン(R)、リジン(K)、ヒスチジン(H);酸性:アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q);親水性:グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I);疎水性:フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);硫黄含有:メチオニン(M)、システイン(C)。更に、保存的変異が異なる配列は、一般的に、相同である。
「相同性」とは、2つ以上の核酸分子のヌクレオチド配列又は2つ以上の核酸若しくはアミノ酸配列が部分的に又は完全に同一であることを意味する。特定の実施態様では、相同な核酸又はアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号1のアミノ酸配列をコードしている核酸又は配列番号1に対して30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%の配列類似性又は同一性を有する。
「ホモログ」は、天然に存在するものであってもよく、又は関連する配列を有する1つ以上の核酸の人工的合成によって、若しくは1つ以上の核酸を修飾して関連する核酸を生成することによって作製してもよい。核酸は、天然で又は人工的に共通の祖先配列(例えば、オルソログ又はパラログ)に由来するとき、相同である。2つの核酸間の相同性が明示的に記載されていない場合、相同性は、2つ以上の配列間の核酸比較によって推測することができる。配列がある程度、例えば、一次アミノ酸構造レベルで約30%超の配列類似性を示す場合、共通の祖先を共有していると結論付けられる。 本発明の目的のために、核酸配列が低ストリンジェントな条件下で組み換え及び/又はハイブリダイゼーションできる程度に十分に類似している場合、遺伝子は相同である。更に、その核酸配列が低ストリンジェントな条件下で組み換え又はハイブリダイゼーションできる程度に十分に類似しており、そして、場合により、膜修復活性を示し、そして、場合により、配列番号1〜6のうちの少なくとも1つのアミノ酸配列内に含有されているエピトープに特異的な抗体によって認識され得る(すなわち、交差反応することができる)場合、ポリペプチドは相同であるとみなされる。
用語「細胞」は、その通常の生物学的な意味であり得るが、決してこれに限定されるものではなく、そして、多細胞生物全体を指すものではない。細胞は、例えば、インビボ、インビトロ、若しくはエクスビボ、例えば、細胞培養物中であってもよく、又は例えば、鳥類、植物、及び哺乳類(例えば、ヒト、ウシ、ヒツジ、類人猿、サル、ブタ、イヌ、及びネコ)を含む多細胞生物中に存在していてもよい。細胞は、原核生物(例えば、細菌細胞)又は真核生物(例えば、哺乳類又は植物の細胞)であってもよい。
用語「宿主細胞」とは、異種核酸を保有するか、又は異種核酸によってコードされているペプチド若しくはタンパク質を発現するために用いることができる細胞を意味し得るが、決してこれらに限定されるものではない。宿主細胞は、細胞のネイティブな(非組み換え)形態内にはみられない遺伝子、人工的手段によって遺伝子が修飾され、そして、細胞に再導入される場合、細胞のネイティブな形態にみられる遺伝子、又は細胞から核酸を除去することなく人工的に修飾されている細胞に対して内因性である核酸を含有し得る。宿主細胞は、真核生物であってもよく、原核生物であってもよい。細菌の培養に必要な一般的な成長条件は、例えば、BERGEY'S MANUAL OF SYSTEMATIC BACTERIOLOGY, Vol. 1, N. R. Krieg, ed., Williams and Wilkins, Baltimore/London (1984)等の教科書に見出すことができる。また、「宿主細胞」は、内因性の遺伝子若しくはプロモータ又はこれら両方が本発明の複合体のポリペプチド成分のうちの1つ以上を生成するように修飾されているものであってもよい。
用語「患者」又は「被験体」は、明細書全体を通して、本発明に係る組成物による処置(予防的処置を含む)が提供される動物、好ましくは、ヒト又はペットを説明するために用いられる。ヒト患者等の特定の動物に特異的な感染症、病態、又は疾患状態の処置については、患者という用語は、イヌ若しくはネコ等のペット又はウマ、ウシ、ヒツジ等の家畜を含む特定の動物を指す。一般的に、本発明では、患者という用語は、特に指定しない限り又はこの用語の使用状況から暗示されない限り、ヒト患者を指す。
本明細書で使用するとき、「P140ペプチド」は、配列番号1、2、4、及び5に例示されているものを含む、スプライセオソームU1-70Kタンパク質に由来するリン酸化ペプチドを意味し得るが、これらに限定されない。特定の例では、P140は、具体的には、10位のセリンがリン酸化されている配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドを指すために用いられる。
用語「処置的に有効な量又は用量」は、それを必要としている被験体において処置的効果を達成することができる薬物の用量を含む。例えば、薬物の処置的に有効な量は、疾患又は障害、例えば、組織損傷又は筋肉関連疾患若しくは障害に関連する1つ以上の症状を予防又は軽減することができる量であり得る。正確な量は、公知の技術を用いて当業者によって解明可能であり得る(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 1992);Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999);Pickar, Dosage Calculations (1999);及びRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, 2003, Gennaro, Ed., Lippincott, Williams & Wilkinsを参照)。
キットは、本発明のマーカーを特異的に検出するための少なくとも1つの試薬(例えば、プローブ)を含む任意の製品(例えば、パッケージ又は容器)である。この製品は、本発明の方法を実施するためのユニットとして宣伝、流通、又は販売されていてよい。このようなキットに含まれている試薬は、感受性及び耐性の遺伝子発現の検出において用いるためのプローブ/プライマー及び/又は抗体を含む。更に、本発明のキットは、好ましくは、好適な検出アッセイについて説明する説明書を含有していてよい。このようなキットは、例えば、癌の症状を示す患者、特に、潜在的に腫瘍の存在を示す患者を診断するための臨床的状況において便利に用いることができる。
本明細書において言及する全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参照文献は、その全体が参照により組み入れられる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。更に、材料、方法、及び実施例は、単なる例示であり、そして、限定を意図するものではない。
開示全体が参照により本明細書に組み入れられる以下の参照文献は、本発明で用いられる用語の多くの一般的な定義を当業者に提供する。Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2nd ed. 1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988);The Glossary of Genetics, 5th Ed., R. Rieger et al. (eds.), Springer Verlag (1991);及びHale & Marham, the Harper Collins Dictionary of Biology (1991)。
本明細書は、本明細書に記載する化学的に修飾されたペプチドがオートファジーの強力な調節因子であるという驚くべき、そして、予想外の発見に基づく処置用組成物及びそれを用いる方法を提供する。特に、本明細書に記載するペプチド及び組成物は、驚くべきことに、シャペロン介在性オートファジー(CMA)を含む過剰のオートファジー又はハイパーオートファジーを低減するのに有効である。したがって、本明細書は、ハイパーオートファジー、例えば、ハイパーCMAに関連する疾患及び障害を処置するための組成物及び方法を提供する。
オートファジーは、リソソームに基づく生理学的プロセスであり、これは、基本条件では、不必要な細胞質の構成成分を連続的に分解するために低レベルで生じ、そして、エネルギー生成のための基質を作製する。酸化的ストレス、低酸素、又は栄養枯渇中、そのレベルは細胞生存を可能にする程度まで上昇する。したがって、オートファジーは、細胞のホメオスタシスに関与している主なハブを表す(Awan and Deng, 2014;He and Klionsky, 2009;Mizushima, 2007;Okamoto, 2014;Ravikumar et al., 2010)。また、脂肪細胞、赤血球、及びリンパ球を含む多くの系列の分化、並びに組織のリモデリングにおいて極めて重要な役割を果たす(Cenci, 2014;Lee et al., 2014;Mizushima and Komatsu, 2011;Mizushima and Levine, 2010;Nedjic et al., 2008;Pampliega et al., 2013)。しかし、特定の環境条件下では、オートファジーは、細胞死も媒介し得、そして、オートファジー細胞死(オートファジー「による」細胞死を指す)をオートファジー「を伴う」細胞死と区別することが機構的に重要である(Kroemer and Levine, 2008;Marino et al., 2014;Ryter at al., 2014;Shen et al., 2012)。したがって、最近の研究は、オートファジーのプロセスとアポトーシスのプロセスとが密接に関係しており、そして、シグナル伝達エレメント間のクロストークを共有していることを示唆している。特に、特定のオートファジー関連(ATG)タンパク質は、オートファジー及びアポトーシスの制御において二重の役割を果たしていることが示されている。これは、例えば、ATG5とその結合パートナーであるATG12、BCL-2相互作用ミオシン/モエシン様コイルドコイルタンパク質1(BECLIN1/beclin-1)、クラスIII PI3K経路と相互作用することによってオートファゴソームの形成中に作用する酵母Atg6/液胞タンパク質ソーティング(Vps)−30の哺乳類オルソログ、及び微小管関連タンパク質軽鎖3(MAP1LC3/LC3)酵母Atg8の哺乳類オルソログに当てはまる(Kang et al., 2011;Konishi et al., 2012;Li et al., 2012;Marquez et al., 2012)。また、壊死、ネクロプトーシス(制御されたFas依存性、カスパーゼ依存性の非アポトーシス細胞死)、及びピロプトーシス(カスパーゼ−1−依存性の細胞死)等の細胞死の他の形態もオートファジーと相互に関連している(Ryter et al., 2014)。
3つの主な種類のオートファジーが同定されており、そして、その生理学的機能及び細胞質カーゴをリソソームに送達するために用いる機構の両方によって区別することができる(図1A)。該オートファジーは、マクロオートファジー、マイクロオートファジー、及びシャペロン介在性オートファジー、すなわち、CMAである(Cuervo, 2004;Feng et al., 2014, Kaushik and Cuervo, 2012;Okamoto, 2014)。実際には、オートファジーのより多くの形態が報告されている。例えば、(凝集タンパク質に対する)アグリファジー、(ミトコンドリアに対する)マイトファジー、(リボソームに対する)リボファジー、(ペルオキシソームに対する)ペキソファジー、(小胞体、ERに対する)レチキュロファジー、及び(病原体に対する)ゼノファジーに言及することができる。したがって、オートファジーは、元々非選択的(ランダム)な細胞質分解系としてみられていたが、実際は、基質送達の高度に選択的かつ厳密に制御されたプロセスに関与していることを本発明者らは現在認識している。
マクロオートファジー(一般的に「オートファジー」と称され、このことが、一部の場合、文献において混乱を生じさせる場合がある)は、大量に巨大分子及びオルガネラ全体を捕捉する能力を通して、依然として主なオートファジープロセスである。後者は、二重膜オートファゴソームに捕捉され、そこで分解される。したがって、それは、プロテアソーム分解の別の機構を表し、これは、むしろ、短命な細胞内タンパク質を処理するが、次第に理解されつつあるクロストークは、ユビキチン−プロテアソームシステム(UPS)とマクロオートファジーとの間で生じると記載されている(Cuervo and Wong, 2014;Kirkin et al. 2009;Korolchuck et al., 2010;Lilienbaum et al., 2013;Ravikumar et al., 2010)。オートファゴソームとリソソームとの融合によって、飲み込まれた細胞の構成成分(脂質滴及びタンパク質凝集体を含む)がリソソームのグリコシダーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、及びスルファターゼによって分解されるオートリソソームが形成される(図1B)。CMAプロセスに関しては、KFERQに生化学的に関連する特定のペプチドモチーフを含有するタンパク質は、リソソームに内部移行し、そして、分解される前に、HSPA8/HSC70シャペロンタンパク質によって認識される(図1A)。対照的に、マイクロオートファジーでは、細胞質成分は、リソソーム膜の貫入によって直接取り込まれる(図1A)。
オートファジー経路は、ATG遺伝子ファミリーに属するタンパク質によって遺伝的に制御され、そして、酵母及び哺乳類において十分に特徴付けられている(Codogno et al., 2012;Klionsky and Emr, 2000;Lamb et al., 2013;Mizushima et al., 2011;Oshumi, 2014;Shibutani and Yoshimori, 2014)。ATGタンパク質は、進化的に保存されており、そして、それぞれオートファジー中に特定の機能を有する。それは、特定のATG遺伝子が、オートファジーと自己免疫との間に存在する関係を理解するために更なる研究が行われた自己免疫症候群に関連している可能性があるという発見に主に基づいている。遺伝解析によって、ATG遺伝子における幾つかの多型が様々な自己免疫障害に対する易罹患性を付与し得ることが効率的に報告された。したがって、SLE患者において実施されたゲノムワイドな関連研究(GWAS)によって、ATG遺伝子に位置する幾つかの一塩基多型(SNP)が同定され、これらは疾患の発生に関連していた(Harley et al., 2008;Orozco et al., 2011)。ATG5とPRDM1との間の遺伝子間領域に位置する1つのSNPは、ATG5 mRNAの発現増加と相関していることが見出された(Zhou et al., 2011)。ATG5とSLEに対する易罹患性との間の遺伝的関連は、個々の研究では確認されているが、他の研究では見出されていない(Jarvinen et al., 2012)。興味深いことに、アジア人における最近のメタ解析は、DRAM1におけるSNPとSLE易罹患性との強い関連を示した(Yang et al., 2013)。この遺伝子は、p53媒介ストレスシグナルに応答するマクロオートファジーの活性化因子をコードしている。CD患者では、GWA研究によって、易罹患性変異体としてATG16L1遺伝子座にマッピングされたrs2241880が同定された(Hampe et al., 2007)。rs2241880と確立されたCARD15/NOD2(ヌクレオチド結合オリゴマー化ドメイン含有2)易罹患性変異体との間にCDリスクに関して統計的に有意な相互作用が示された。興味深いことに、rs2241880と、別の密接に関連する炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎との間には関連がなかった。最近のデータによって、Atg16L1変異体マウスが、モデル細菌病原体であるシトロバクター・ローデンチウム(Citrobacter rodentium)によって誘導される腸疾患に対して耐性を有することが示された(Marchiando et al., 2013)。これらマウスで発現した超免疫表現型及び保護効果は、Atg16L1/Nod2二重変異体マウスでは失われ、これは、Nod2欠損に起因する易罹患性がAtg16L1欠損の効果よりも優勢であることを示す。ATG16L1は、オートファゴソームの形成における中心であり、ATG12-ATG5複合体の一部であり、これは、MAP1LC3の動員に必要である(Mizushima et al., 2011)。ATG16L1を除去すると、細胞がオートファゴソームを形成する能力がなくなる(Saitoh et al., 2008)。より最近では、300位にAla→Thr置換を含有する変異タンパク質が、細胞ストレス中に活性化されるカスパーゼ3による切断に対して高度に感受性であると報告された(Murthy et al., 2014)。ATG16L1T300Aの破壊は、オートファジーを障害し、そして、炎症促進性サイトカインTNF-□及びIL-1□の放出を増大させた。特に、いわゆる免疫関連GTPaseファミリーM(IRGM)遺伝子においてCDに関連する幾つかのSNPが報告されている(Glas et al., 2013;Lu et al., 2013)。結果は、オートファジー遺伝子−IRGM多型は、CDに対する易罹患性を付与するが、特に欧州人において潰瘍性大腸炎に対する易罹患性は付与しない。IRGMは、結核菌(M. Tuberculosis)のような細胞内病原体に対するオートファジー的保護を付与するインターフェロン誘導性GTPaseファミリーのメンバーである。IRGMは、マイコバクテリアのファゴソームの成熟を強化することによって後者を制御する(Singh et al., 2006)。
要するに、これらデータは、感染病原体に対する保護並びに炎症及び自己免疫応答の制御を含む免疫の幾つかの態様に加えて、腫瘍形成及び癌においてオートファジーエレメントの強い影響を主張するものである。逆説的には、細胞及び分子的研究に基づく実験研究が免疫におけるオートファジーの関与を一部解明したのはほんの最近である。感染及び炎症におけるオートファジーの役割について特に強調するこのトピックに関する多数の包括的総説論文が最近刊行されている(Cenci, 2014;Deretic, 2012;Deretic et al., 2013;Gros and Muller, 2014;Levine et al., 2011;Oliva and Cenci;2014;Puleston and Simon, 2013;Ravikumar et al., 2010)。本総説は、主に、有害な免疫応答を回避し、そして、自己に対する障害された寛容を少なくとも部分的に回復させるために、低分子及びペプチドによる免疫系の可能な操作に関連して、自己免疫におけるオートファジーに焦点を合わせている。
自然免疫応答は、重要なことに、自己免疫疾患の誘導及び制御において適応免疫に影響を与える。自然免疫では、オートファジーは、特に、特定のサイトカイン及びケモカインの活性化及び放出を制御することによって、様々なレベルで機能する(Deretic 2012;Deretic et al., 2013;Gros and Muller, 2014;Jones et al., 2013;Saitoh and Akira, 2010)。オートファジーは、TNFα、インターロイキン(IL)-6、IL-8、及びI型インターフェロン(IFN)の分泌を活性化するが、一方、IL-1α及びβ(後者は、インフラマソームの活性化を制御することによって、そして、分解についてpro-IL-1βを標的とすることによって)、IL-18、及びI型IFNの生成を制御する。次に、幾つかの分泌されたサイトカインがオートファジーに影響を与える。したがって、ヘルパーT1型(Th1)及び炎症促進性サイトカイン(例えば、IFN-γ(IRGMを介して)、TNFα、IL-1α及びβ、IL-23)、反応性酸素種(ROS)、及び幾つかのTLRの会合(未だあまり理解されていない機序)はオートファジーを誘導する。TWEAK(C2C12筋管における、アポトーシスのTNF様の弱い誘導因子)、CD4+ T細胞におけるIL-2、末梢血単核細胞(PBMC)におけるIL-6、及び肝細胞癌の細胞株におけるTGF-βもオートファジーを促進する。逆に、Th2及び制御性サイトカイン(例えば、IL-4、IL-13、及びIL-10)は、STAT-3又は-6経路及びセリン/スレオニンタンパク質キナーゼ(AKT)経路に対する効果を介して、セリン/スレオニンタンパク質キナーゼULK1を阻害し、それによって、オートファゴソームを形成するラパマイシンの哺乳類標的(mTOR)を活性化させることが見出された(Gutierrez et al., 2004;Jones et al., 2013)。特に、抗原提示細胞(APC)におけるサイトカイン分泌に対する効果を介して、オートファジーは、免疫応答の極めて重要な制御因子を表す(Cenci, 2014;Deretic et al., 2013;Gros and Muller, 2014;Levine et al., 2011;Nedjic et al., 2008;Ravikumar et al., 2010, Saitoh and Akira, 2010)。
現在の教科書ではこのような非常に重要なレベルまでは未だ認識されていないが、オートファジーは、実際には、適応免疫の様々な態様に対して顕著な効果を発揮する。それは、T細胞の胸腺選択において主な役割を果たし、T細胞のホメオスタシス、レパートリ、及び極性化、B細胞の生存、免疫寛容、並びに抗原提示にも影響を与える。
オートファジーが主要組織適合複合体II(MHCII)分子に自己抗原を送達するための重要な制御エレメントであるという発見は、重要な転換点であった(Dengjel et al., 2005;Paludan et al., 2005;Zhou et al., 2005)。この発見時には、MHC I分子が細胞内起源のタンパク質由来のペプチドをT細胞に提示し、一方、MHCII分子は外因性及び膜のタンパク質由来の抗原性ペプチドを提示すると古くから確立されていた。したがって、MHCIIペプチドによるT細胞の活性化の全体像が大幅に再検討され、そして、免疫応答と細胞ストレス、細胞代謝、細胞栄養、及び細胞環境との間の新たな関係が示唆され、そして、更に分析された。偶発的に、PI3-キナーゼ活性に作用する強力なマクロオートファジー阻害剤、すなわち、ワートマニン、LY294002、及び3−メチルアデニン(3-MA)を、E□52-68-eGFP(膜貫通タンパク質I-E□に由来するペプチド断片)をトランスフェクトしたマクロファージ細胞株BMC-2と共にインキュベートしたところ、効果を有しないことが示された実験に従って、マクロオートファジーが、細胞質で発現するタンパク質がMHCII分子の内腔ペプチド結合部位にアクセスための機序ではないと結論付けられたことは興味深い(Dani et al., 2004)。その時、試験された抗原の固有の特性、その半減期及び細胞内(小胞性であろうとなかろうと)輸送、並びにAPCの種類から得ることができた矛盾するデータが公開された(Dorfel et al., 2005;Leung et al., 2010;Paludan et al., 2005)。
より最近のデータは、マクロファージ等の他の細胞よりもタンパク質分解活性の低いAPCにおいて、最終的にオートリソソームに達する粒子及びタンパク質がリソソームシステインプロテアーゼ(一般的にカテプシンとして知られている)によって切断されることによりタンパク質断片が生じ、これがMHCII分子のためのペプチドの主な起源を構成することを示した(図1C)。リソソーム及びオートリソソームは、4〜4.5のpHを有し、これは、カテプシンにとって最適である。したがって、自己免疫の状況において重要なことに、MHCII分子は、リソソームによるタンパク質分解によって生じる内因性抗原から生成されるペプチドに結合することができる。このような内因性抗原は、膜、細胞質(小胞成分を含む)、又は核の起源に由来し得、そして、CD4+ T細胞の初回刺激を促進するためのその後のプロセシング及びMHCII分子による提示のためにオートファジーの幾つかの形態を介してリソソーム内ネットワークに輸送され得る(Blum et al., 2013;Munz, 2012)。興味深いことに、その先駆的な研究において、Stevanovic、Rammensee、及び協力者は、飢餓によるオートファジーの誘導がリソソームにおける活性プロテアーゼのバランスを変化させ(Dengjel et al., 2005)、これが、重要なことに、MHCII分子に負荷されるペプチドの量を変化させ得ることを既に証明している。
過去10年間にわたって、自己抗原の遊離及びプロセシングに対する特定のプロテアーゼの役割及び制御が広範に研究されており(van Kasteren and Overkleeft, 2014;Villadangos et al., 1999)、そして、特に、カテプシンの異なるセットが様々なAPC、例えば、樹状細胞(DC)及びB細胞において機能していることが示された(Burster et al., 2004;Manoury et al., 2002)。また、個々のエンドソームにおいででさえも、プロテアーゼ活性の制御に関与し、そして、抗原提示に強く影響を与える複数の機序(環境によって支配される遺伝子のアップレギュレーション又はダウンレギュレーションを含む)が存在する(Dengjel et al., 2005;van Kasteren and Overkleeft, 2014)。したがって、リソソーム内プロテアーゼは、最後にT細胞に提示される抗原を生成するための重要なプレーヤーである。レグマインとしても知られているアスパラギンエンドペプチダーゼ(AEP)、システインC、特定のカテプシン、及び他の依然として特定されていないプロテアーゼが関与する段階的プロセスを介して、リソソーム内プロテアーゼは、MHCII分子に結合している不変異(Ii)鎖をクラスII関連不変異体ペプチド(CLIP)にプロセシングするために作用し、それによって、CD4+ T細胞に提示するためにAPCの細胞表面に輸送される前に、酵素HLA-DM(図1C)によってCLIPペプチドが高親和性ペプチドに交換されるペプチド受容性MHCII分子を生成する(Neefjes et al., 2011)。また、AEPを含むリソソーム内プロテアーゼは、機能的MHCII分子によって提示されるエピトープを生成するように作用する(Colbert et al., 2009;Matthews et al., 2010;van Kasteren and Overkleeft, 2014)。
これまでに調べられた抗原の多くの例において、安定性が、抗原提示に影響を与える決定要因であることが見出されている。更に、カテプシンを介する切断は、エピトープを遊離させることができるだけでなく、幾つかの他のものを破壊することもできるので、カテプシンの制御は、送達される抗原ペプチドの最終パネルを規定するために更により戦略的に重要である。最後に、抗原提示におけるリソソーム内プロテアーゼの別の重要な役割は、TLR受容体シグナル伝達に対する影響にある。これは、TLR9シグナル伝達に対するクロロキン(CQ)の効果を観察している間に最初に主張され(Hong et al., 2004;Matsumoto et al., 2008)、後に、リソソーム内プロテアーゼがエンドソームTLR3、7、及び8も活性化し(Manoury, 2013)、そして、作用機序が最初の研究で提唱されたものではなかったことが証明されている。実際には、TLR9に対してであろうとエンドソームTLRに対してであろうと、リソソーム内プロテアーゼは、受容体を非シグナル伝達性の完全長形態から、N末端領域から欠失したより短い形態に変換することによって作用する(Ewald et al., 2008;Park et al., 2008)。特に関与している具体的なプロテアーゼを考慮すると、この効果の背後にある正確な機序については未だ議論が続いているが、プロテアーゼ活性に影響し、その結果、MHCII分子上に提示されるペプチドの量に影響を与えるTLRシグナル伝達がDC成熟の中心となるので、このような効果が戦略的に重要であり得ることに変わりない。これらデータは、自然免疫(上記を参照;Xu et al., 2007)及び適応免疫の両方に関連するオートファジープロセスにおけるTLRの重要性を強調するものである。
また、免疫におけるオートファジーの重要性は、ATG遺伝子を低発現するように操作されたマウス又は細胞を用いて実施した実験から明らかになった。このストラテジを用いて、一部の個体において欠陥があると思われる遺伝子について得られつつある知見に関連して、幾つかのATGタンパク質の潜在的役割によりよくアプローチし、そして、ヒト疾患との幾つかのつながりを確立することが可能であった(Choi et al., 2013;Jiang and Mizushima, 2014;Majai et al., 2014)。したがって、オートファゴソーム膜の伸長に関与している遺伝子であるAtg5がB細胞特異的に欠失しているマウスを用いて、オートファジー欠損B細胞前駆細胞において、骨髄におけるプロB細胞段階からプレB細胞段階への移行に欠陥があることが示されている(Miller et al., 2008)。Atg5がBリンパ球において条件的に欠失しているマウスの研究によって、この遺伝子が形質細胞(PC)のホメオスタシスにとって必須であることが更に明らかになった(Conway et al., 2013)。これらマウスでクラススイッチは生じなかったが、特定の免疫、寄生虫感染、及び粘膜炎症の後に抗体応答が大きく減少した。これらデータ及び他のデータ(Pengo et al., 2013)は、早期B細胞発生だけでなく、後期B細胞活性化及びPC分化においてもATG5の重要性を強調している。また、必須のオートファジー遺伝子であるAtg5(Stephenson et al., 2009)、Atg7(Pua et al., 2009;Jia and He, 2011)、Atg3(Jia and He, 2011)の条件的欠失も、末梢T細胞の生存にとってマクロオートファジーが重要であることを示した。幾つかのAtg遺伝子は、感染の状態において重要である。
したがって、ヒトATG16L1又はマウスAtg7、Atg9a、若しくはAtg14が欠損しているマウス胎仔線維芽細胞(MEF)を用いて、Oshima et al. (2014)は、細胞内病原体であるトキソプラズマ原虫(T. gondii)への免疫関連GTPasesのIFN−γ−誘導性動員において、ATG16L1、ATG7、及びATG16L1の重要性を示したが、ATG9A及びATG14については示されなかった。場合によっては特定の組織において、オートファジー遺伝子が欠失しているか又は過剰発現している、マクロオートファジー、CMA、及びマイトファジーを含む様々な形態のオートファジープロセスにおける多数の例が記載されている。例は、幾つか引用すると、Pink1/parkinノックアウト(KO)マウス、Atg16L1変異体、及び上記Atg16L1/Nod2二重変異体マウス、Sqstm1/p62/A170(シグナル伝達アダプタ/スカフォールドタンパク質としても知られているSQSTM1多機能タンパク質をコードしている)変異体マウス、Beclin-1又はVps34を無効化する条件的欠失モデルである。オートファジー経路の重要な要素の結合パートナーに影響を与える幾つかの突然変異も紹介された。したがって、T細胞におけるリソソーム関連膜タンパク質2(LAMP-2A)をコードしている遺伝子の欠失が、リステリア菌(L. monocytogenes)による免疫又は感染に対するインビボ欠損応答を引き起こすことが最近示された(Valdor et al., 2014)。これらマウスでは、T細胞におけるCMAが年齢と共に変化することが見出された。本明細書では、子宮内で死亡するBeclin-1 KOマウス又は少なくとも部分的にアミノ酸生成の不足に起因して産後24時間以内に死亡するAtg5 KOマウスと同様に、HSPA8が無効化されたマウスは生存不可能であることに言及しなければならない。
上に報告したオートファジーと免疫との間の密接な関係は、オートファジー機構の任意の調節解除が免疫応答の様々な態様に影響を及ぼし得、そして、自己免疫の発現につながり得ることを容易に説明する(Gros and Muller, 2014;Lleo et al., 2007;Pierdominici et al., 2012)。自己反応性リンパ球の生存を可能にする強化されたオートファジーは、自己免疫を促進し得る。更に、細胞内タンパク質の分解を通じて自己抗原を生成するオートファジーは、自己免疫の開始又は維持に関与し得る。SNP及び易罹患性遺伝子に加えて、オートファジープロセスに関連する幾つかの遺伝子の発現が自己免疫中に調節されることが多数の研究によって強調されている。関節リウマチ(RA)では、ATG7及びBECLIN-1の両遺伝子発現が患者由来の破骨細胞で増加することが示されている(Lin et al., 2013)。滑膜炎の制御を通して、発病の重要な要素である炎症促進性サイトカインTNF−αによってAtg7の発現が増加することが見出された。また、他の研究では、自己免疫性脱髄症候群及び多発性硬化症(MS)において、ATG5遺伝子の発現が健常対照に比べて著しく増加することも証明されている(Alirezaei et al., 2009)。
遺伝学的証拠に基づいて、10年間にわたってオートファジーと自己免疫との間の潜在的関連が示唆されている。しかし、一般的に、自己免疫疾患の開始及び/又は進行におけるオートファジーの役割を示す細胞及び分子レベルにおける実験的論拠は、未だ十分ではない(表1)。SLE患者及びループスの2つの遺伝的に無関係のマウスモデル、すなわち、MRL/lpr及び(NZBxNZW)F1(NZB/W)マウスにおいて、本発明者らは、オートファジーがTリンパ球で調節解除されることを独創的なレポートで示した(Gros et al., 2012)。自己貪食空胞は、T細胞で過剰提示されることが見出されており、これは、オートファジーが過活性化していることを示す。この調節解除は、T細胞がT細胞受容体(TCR)関連シグナル伝達経路の化学的活性化因子によって刺激されたときに更により明白であった。増加したオートファジー区画は、全てのT細胞でみられた訳ではなく、そのサブセットに制限されていた。オートファジーは、細胞の生存に関与していることが知られているので、これら結果は、オートファジーが疾患中に自己反応性T細胞の生存を促進し得ることを示唆している。Alessandri et al. (2012)は、T細胞におけるオートファゴソーム会合MAP1LC3-IIアイソフォームの増加を示し、これは、SLE患者から単離されたナイーブCD4 T細胞で主に生じた。本発明者らによるデータを裏付けるこれら結果は、SLE T細胞においてオートファジー活性の固有の調節解除が存在することを示唆する。著者らは、SLE T細胞がマクロオートファジー誘導に対して耐性を有し、したがって、よりアポトーシスしやすくなる可能性があると結論付けた別の解釈を提唱した。著者らは、T細胞をラパマイシン又は自己(オートファジー促進性)血清で再刺激することによってこの結論に達した。しかし、SLE T細胞は、既に最高レベルのオートファゴソーム負荷であり、そして、自身の血清に対する再曝露がオートファジー活性に対して更なる効果を有していなかった可能性がある。いずれの場合も、これらデータは、正常T細胞におけるSLE血清のオートファジーを促進する役割を裏付けるものである。Pierdominici及び共同研究者も、オートファジーの増加が疾患活動性スコアと相関していることを観察し、これは、更なる処置ストラテジにおいて利用することができる重要な情報である(Alessandri et al., 2012;Pierdominici et al., 2012;2014)。
より最近の研究は、上記先駆的な研究を補強し、そして、広げた。したがって、最初に、Clarke et al. (2014)は、NZB/Wマウスにおいて、B細胞でも、より具体的には、B細胞発生の早期発生及び移行段階においても(疾患の発症前)、マクロオートファジーの活性化が生じることを示した。ループスの患者では、オートファジーは、健常個体と比べて活性化されており、そして、この場合も、活性化はナイーブB細胞で主に生じた。オートファジー阻害剤(例えば、3-MA、バフィロマイシンA1、又はCQ)を用いたとき、形質芽球の分化及び生存はほとんど生じなかった。これら知見は、ループス易発性マウス及びループス患者の血清における自己抗体の過剰産生に関連しているはずである。この研究では、著者らは、B細胞に加えて、ループス患者由来のT細胞でもオートファジーが増加し、そして、いずれの場合も、この活性化が疾患の活動性と相関している可能性があることを確認した。また、Li et al. (2014)は、対照と比べて、ループスの誘導マウスモデル(相同な活性化リンパ球由来のDNAをフロインドアジュバント中で投与した後にループス様疾患を発現するBALB/cマウス)及びループス患者のPBMCから収集したマクロファージにおいてオートファジーが著しく活性化されたことを示す説得力のある結果を報告している。Beclin-1 KOマクロファージの養子移入は、レシピエントマウスの臨床状態(タンパク尿のレベルの低下、典型的な腎臓複合体の沈着の低減、糸球体腎炎の改善)、並びに生物学的特徴(ELISAによって測定したときの血清抗dsDNA抗体レベル並びに循環炎症促進性サイトカインIL-6及びTNF-αの減少)を著しく改善させる。
幾つかの研究によって、他の自己免疫疾患、特にヒトRA(Lin et al., 2013;Kato et al., 2014;Xu et al., 2013)及びMSのモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(Bhattacharya et al., 2014)におけるオートファジーの役割が強調されている。オートファジーは、RA患者由来の破骨細胞において活性化されると考えられ、そして、破骨細胞の分化を制御する(Lin et al., 2013)。Kato et al. (2014)によって、変形性関節炎滑膜線維芽細胞と比べてRA滑膜線維芽細胞でも見出されたこのオートファジープロセスの増加は、 RA滑膜組織におけるアポトーシスレベルの低下と相関している(Xu et al., 2013)。これら観察結果から、過剰産生されたTFN-αによって誘導されるオートファジーの活性化が、関節におけるアポトーシスの低減につながり、そして、より重要なことに、滑膜線維芽細胞の生存を引き起し、これが病状に関与していると結論付けられた。これも、ミスフォールドされたか又は大量すぎる細胞成分を排除するときには細胞保護的であるが、過剰であると有害になり得、そして、負の効果を生じさせ得るオートファジーの二重効果を強調する。
多数の最近の知見は、筋量の制御におけるマクロオートファジーの極めて重要な役割を強調しており、そして、ミオパシー及び筋ジストロフィーにおいてオートファジーの誤制御が報告されている(Sandri et al., 2013)。しかし、例えば、筋肉の炎症及び変性を特徴とする自己免疫成分を有する稀な疾患である線維筋痛又は多発性筋炎の患者に関して(Temiz et al., 2009;Lloyd, 2010)、可能性のあるオートファジープロセスの機能不全に関連する情報は不十分である。他方、CD、SLE、恐らくRA及びMS(表1)を含む幾つかの自己免疫状態、並びに炎症性症候群、特に、肺疾患において、オートファジーの欠陥が観察されている(又は疑われている)(Mizumura et al., 2012)。全てのこれら状況において、オートファジーの調節は、特に適切なフラックス制御を再確立するために、変更を回復させ、そして、処置された患者の臨床状態を改善できることが強く期待される。
最近強調されている通り(Gros and Muller, 2014)、数年間にわたって炎症及び自己免疫疾患を処置するために用いられる幾つかの分子は、ある種又は別の種類のオートファジープロセスを標的とすることがかなり後に見出された。現在では、実際にはオートファジー経路の工程、そして、更には特に単一の経路を正確に標的とする特定の化合物はほとんど存在せず(Anguiano et al., 2013)、そして、かなり驚くべきことに、患者に広く処方されている幾つかのオートファジー制御因子の標的は実際には知られていない。これは、特に、CQ及びヒドロキシクロロキン(HCQ)又はデキサメタゾンに当てはまり、その作用機序(MOA)は、未だ議論中である(以下を参照)。
多数の包括的総説論文は、最近、直接又は間接的にオートファジーを調節するために生成された、化合物、活性化因子、及び阻害因子のファミリーの構造的及び機能的な様々な態様を徹底的に網羅している(Baek et al., 2012;Cheong et al., 2012;Fleming et al., 2011;Gros and Muller, 2014;Jiang and Mizushima, 2014;Renna et al., 2010;Rubinsztein et al., 2012;van Kasteren and Overkleeft, 2014;Vidal et al., 2014)。インビトロ及びインビボの両方で実施された厳密に検定されたアッセイ(Mizushima et al., 2010;Klionsky et al., 2012)において評価された通り、これら低分子の一部は、適切な設定において自己免疫疾患を調節することに関連することが証明され得る。次の項に示す実施例では、本発明者らは、自己免疫疾患における確立された又は有望な臨床的有効性を有するオートファジーの幾つかの薬理学的制御因子に限定する。
薬理学的低分子及びペプチドは、これらを特に自己免疫疾患に対して優れた処置剤にならしめる多数の有利な特性を示す。その合成及び生成が高度に最適化され得、そして、一部の場合では、幾つかの生物製剤と比べて著しく単純になり得、そして、自動化可能なことに加えて、医薬組成物の活性成分として選択される低分子及びペプチドは、その安定性及びロバスト性、取り扱い容易性、患者に投与しなければならない用量が比較的低い、及び比較的低コストであることを特徴とし、これは、大部分の生物製剤に関して依然として合理的である。低分子及び短ペプチドは、それ自体免疫原性ではなく、これは、慢性自己免疫疾患患者の処置についての別の顕著な利点である(Schall and Muller, 2014)。
本明細書は、本明細書に記載する化学的に修飾されたペプチドがオートファジーの強力な調節因子であるという驚くべき、そして、予想外の発見に基づく処置用組成物及びそれを使用する方法を提供する。本明細書に記載する化学的に修飾されたペプチド、例えば、P140ペプチドは、U1-70Kスプライセオソームタンパク質に由来する。記載するペプチド及び有効量の該ペプチドを含む組成物は、オートファジーフラックスの増加を特徴とする疾患、すなわち、ハイパーオートファジー関連、例えば、ハイパーCMA自己免疫障害の症状の治療、予防、及び/又は改善に有効である。したがって、特定の更なる態様では、本開示は、ハイパーオートファジー、例えば、ハイパーCMAのフラックスを特徴とする疾患の症状を治療、予防、及び/又は改善するための、記載するペプチド及びそれを含む組成物を作製及び使用する方法を提供する。
したがって、一態様では、本明細書は、その誘導体、アナログ、及び塩の形態を含む、配列番号1、2、4、及び5の化学的に修飾されたペプチドを提供する。
特定の実施態様では、本明細書は、セリン残基のリン酸化、メチオニン残基の酸化、及びリジン残基のアセチル化、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの翻訳後修飾を有する配列番号1:RIHMVYSKRSGKPRGYAFIEY[配列番号1]のアミノ酸配列、すなわち、
を含むか若しくはからなる単離ペプチド又はその塩類を提供する。この態様の実施態様では、本明細書は、配列番号1のアミノ酸配列を有するか若しくはからなる単離及び/若しくは化学的に修飾されたペプチド(組み換え又は合成)又はその塩を含む組成物であって、該ペプチドが10位にホスホセリンを含む組成物を提供する。特定の実施態様では、本明細書は、配列番号1のアミノ酸配列を有するか若しくはからなる単離及び/若しくは化学的に修飾されたペプチド(組み換え又は合成)又はその塩であって、10位のホスホセリン及び4位の酸化メチオニン残基を含むペプチドを提供する。
特定の更なる実施態様では、配列番号1のペプチドは、アセチル化リジン残基も含む。具体的には、前記配列番号1のペプチドは、10位のホスホセリンと、4位の酸化メチオニン残基と、8及び12位のリジンの一方又は両方のアセチル化とを含み、そして、より具体的には、7位のホスホセリンを更に含む。
特定の実施態様では、本明細書は、9位のセリン(S)がリン酸化されており、そして、3位のメチオニン(M)が酸化されているアミノ酸配列:IHMVYSKRSGKPRGYAFIEY[配列番号2]を含むか又はからなる、単離及び/若しくは化学的に修飾されたペプチド(組み換え又は合成)又はその塩を提供する。
特定の実施態様では、本明細書は、以下の式:
を有する化合物Iのペプチドを提供する。
また、化合物Iは、IHM(O)VYSKRS(PO3H2)GKPRGYAFIEY[配列番号5](式中、「M(O)」は、酸化メチオニンを表し、そして、「S(PO3H2)」は、ホスホセリンを表す)によって表すこともできる。
これらペプチドは、ヒトU1 snRNP 70kDaタンパク質(配列番号3)に由来し、そして、配列番号3の残基132から残基151まで延在するアミノ酸セグメントによって限界が定められる領域に対応する。形式上、リン酸化されている残基は、配列番号3の最初のメチオニンから140番目の位置のアミノ酸に対応し、そして、酸化されている残基は、配列番号3の最初のメチオニンから134番目の位置のアミノ酸に対応する。
特定の態様では、本明細書は、セリン残基のリン酸化、メチオニン残基の酸化、及びリジン残基のアセチル化、並びにこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの翻訳後修飾を有する、配列番号1のアミノ酸配列を含むか若しくはからなる単離及び/若しくは化学的に修飾されたペプチド(組み換え又は合成)又はその塩を提供する。この態様の実施態様では、本明細書は、配列番号1のアミノ酸配列を有するか若しくはからなる単離ペプチド又はその塩を含む組成物であって、該ペプチドが10位にホスホセリンを含む組成物を提供する。特定の実施態様では、配列番号1は、4位の酸化メチオニン残基も含む。特定の更なる実施態様では、配列番号1のペプチドは、アセチル化リジン残基も含む。
更なる態様では、本明細書は、セリン残基のリン酸化、メチオニン残基の酸化、及びリジン残基のアセチル化、並びにこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの翻訳後修飾を有する、配列番号2のアミノ酸配列を含むか若しくはからなる単離及び/若しくは化学的に修飾されたペプチド(組み換え又は合成)又はその塩を提供する。この態様の実施態様では、本明細書は、配列番号2のアミノ酸配列を有するか若しくはからなる単離及び/若しくは化学的に修飾されたペプチド(組み換え又は合成)又はその塩を含む組成物であって、該ペプチドが、9位のホスホセリン及び3位の酸化メチオニン残基を含む組成物を提供する。特定の更なる実施態様では、配列番号2のペプチドは、アセチル化リジン残基も含む。
特定の実施態様では、本明細書は、以下の式:
を有する化合物IIのペプチドを提供する。
また、化合物IIは、RIHM(O)VYSKRS(PO3H2)GKPRGYAFIEY[配列番号4](式中、M(O)は、メチオニンの酸化を表し、そして、S(PO3H2)は、セリンのリン酸化を表す)によって表すこともできる。
したがって、本明細書は、配列番号4及び配列番号5からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか若しくはからなるペプチド又はその塩を提供する。
更なる態様では、本明細書は、9位のホスホセリン及び3位の酸化メチオニンを含む配列番号2のアミノ酸配列;ペプチドが10位にホスホセリンを含む配列番号1のアミノ酸配列又はその塩;10位のホスホセリン及び4位の酸化メチオニンを含む配列番号1のアミノ酸配列、並びにこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つのペプチド又はその塩を有効量含む組成物を提供する。
本明細書は、配列番号1、2、4、5、及びこれらの組合せからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか若しくはからなるペプチド及び/又はその塩に加えて、それを含む組成物を提供する。
特定の実施態様では、本明細書は、10位にホスホセリンを含む、配列番号1のアミノ酸配列を有する単離及び/又は化学的に修飾されたペプチド(組み換え又は合成)を提供する。特定の実施態様では、P140ペプチドは、4位の酸化メチオニンも含む(例えば、配列番号4)(本明細書では、化合物II又はP140(MO)とも呼ばれる)。特定の実施態様では、本明細書は、10位のホスホセリン及び4位の酸化メチオニンを含む配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその塩と、担体、例えば、薬学的に許容し得る担体とを提供する。特定の更なる実施態様では、本明細書は、有効量の、10位のホスホセリン及び4位の酸化メチオニンを含む配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその塩と、担体、例えば、薬学的に許容し得る担体とを含む組成物、例えば、処置用組成物を提供する。
本明細書によれば、それぞれ、配列番号1、2、4、又は5のアミノ酸配列を有する単離及び/又は化学的に修飾されたペプチド(組み換え又は合成)は、少なくとも1つの翻訳後修飾(ペプチドの合成後に生じる修飾)によって修飾される。特定の実施態様では、翻訳後修飾は、リン酸化(リン酸塩PO3H2の付加)、例えば、セリン残基のリン酸化;酸化、例えば、メチオニン残基の酸化;アセチル化、例えば、リジン残基のアセチル化;及びこれらの組合せからなる群から選択される。特定の実施態様では、それぞれ、配列番号1、2、4、又は5のアミノ酸配列を有する単離及び/又は化学的に修飾されたペプチド(組み換え又は合成)は、少なくとも2つの翻訳後修飾によって修飾される。
好ましい実施態様では、本明細書は、9位のホスホセリン及び3位の酸化メチオニンを含む配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する単離及び/若しくは化学的に修飾されたペプチド(組み換え又は合成)又はその塩を提供する。特定の実施態様では、本明細書は、9位のホスホセリン及び3位の酸化メチオニンを含む配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその塩と、担体、例えば、薬学的に許容し得る担体とを提供する。特定の更なる実施態様では、本明細書は、有効量の、9位のホスホセリン及び3位の酸化メチオニンを含む配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその塩と、担体、例えば、薬学的に許容し得る担体とを含む組成物、例えば、処置用組成物を提供する。
別の実施態様では、本明細書は、10位のホスホセリン及び4位の酸化メチオニンを含む配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する単離及び/若しくは化学的に修飾されたペプチド(組み換え又は合成)又はその塩を提供する。特定の実施態様では、本明細書は、10位のホスホセリン及び4位の酸化メチオニンを含む配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその塩と、担体、例えば、薬学的に許容し得る担体とを提供する。特定の更なる実施態様では、本明細書は、有効量の、10位のホスホセリン又はその塩及び4位の酸化メチオニンを含む配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するペプチドと、担体、例えば、薬学的に許容し得る担体とを含む組成物、例えば、処置用組成物を提供する。
別の実施態様では、本明細書は、9位のホスホセリン及び3位の酸化メチオニンを含む配列番号5に記載のアミノ酸配列を有する単離及び/若しくは化学的に修飾されたペプチド(組み換え又は合成)又はその塩を提供する。特定の実施態様では、本明細書は、9位のホスホセリン及び3位の酸化メチオニンを含む配列番号5に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその塩と、担体、例えば、薬学的に許容し得る担体とを提供する。特定の更なる実施態様では、本明細書は、有効量の、9位のホスホセリン及び3位の酸化メチオニンを含む配列番号5に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその塩と、担体、例えば、薬学的に許容し得る担体とを含む組成物、例えば、処置用組成物を提供する。
驚くべきことに、そして、予想外にも、本明細書に記載するペプチドが、酸化されていない対応物と比べて、インビトロにおいてより安定であることが見出された。安定性は、実施例の項に開示する通り測定される。リン酸化−酸化ペプチドは、酸化されていない対応物と比べて、溶液中で自然に分解される量が少なく、前記安定性は、その生物学的特性を強化する。更に、本発明者らは、驚くべきことに、先行技術の教示とは対照的に、メチオニンの酸化が、このようなペプチドの生物学的効果に影響を与えることなく、ペプチドの安定性を強化することを特定した。実際、酸化メチオニンを含有するタンパク質又はペプチドは、その三次元構造及び/又は生物活性が破壊されていると当技術分野において大きく報告されている。本明細書に記載の修飾ペプチドは、実施例の項に開示する通り、酸化されていない対応物と本質的に同一の、HSC70タンパク質に対する親和性を有する。
特定の実施態様では、酸化は、配列番号2の9位及び配列番号1の10位におけるメチオニン(M)において生じ、これらは、配列番号3の134位と等価な位置である。硫黄原子は、以下に示す通り酸化される。
上記ペプチド(配列番号1、2、4、及び5)は、生物合成又は化学合成等の当技術分野において一般的に用いられている技術によって合成することができる。生物合成とは、対象となるペプチドをコードしている核酸分子の転写及び翻訳によって、前記ペプチドをインビボ、インビトロ、又はエクスビボで生成することを指す。
例えば、核酸配列:MGNATHCAYATGGTNTAYWSNAARMGNWSNGGNAARCCNMGNGGNTAYGCNTTYATHGARTAYTRR[配列番号6]は、配列番号1のペプチドを生成するために、インビトロ系又は宿主生物のいずれかにおいて転写及び翻訳される。生成されたペプチドは、周知の技術に従って精製される。
化学合成は、必要なアミノ酸を付加することによって所望のペプチドを重合させることからなる。方法は、実施例の項に開示する。
古典的なFmoc(N−[9−フルオレニル]メトキシカルボニル)固相化学によって配列番号1及び2のペプチドを化学的に合成し、そして、逆相高性能液体クロマトグラフィ(HPLC;Neimark and Briand, 1993;Monneaux et al., 2003, Eur. J. Immunol. 33,287-296;Page et al., 2009, PloS ONE 4,e5273)によって精製することができる。
また、それぞれ10位及び9位の残基がリン酸化されている配列番号1及び2のペプチドを直接合成することもできる。この目的のために、ペプチド合成中、所望の位置においてFmoc-Ser(PO(Obz)OH)-OH-型セリン誘導体を用いた。
当技術分野において周知のプロトコルに従って、ペプチド合成後にリン酸基(-PO3H2)を付加してもよい。
アデノシン三リン酸(ATP)の存在下、配列番号1又は2のペプチドをプロテインキナーゼA若しくはC(PKA又はPKC)又はカゼインキナーゼIIから選択される特異的セリンキナーゼと共にインキュベートすることによってセリンをリン酸化することができる。このようにして、一方のセリン(配列番号2の6位若しくは9位、又は配列番号1の7位若しくは10位)又は両方のセリンにおいてペプチドがリン酸化される。所望のリン酸化されたペプチドは、例えば、クロマトグラフィによって他のペプチドから分離される。
当業者の常識に従って当業者が容易に選択することができる特異的保護基を用いることによって、特定の位置(配列番号2の9位又は配列番号1の10位)に-PO3H2の化学的付加を付加してもよい。
セリンの特異的リン酸化を可能にする当技術分野において公知の任意の他の技術を用いてもよい。
特定の実施態様では、メチオニンの酸化は、以下のプロセスに従って実施される:37℃で4時間、20mM H2O2で処理するか、又は22℃で30〜180分間、0.1M ジメチルスルホキシド(DMSO;Me2SO)+0.5M HClの溶液中で処理する。
メチオニンの特異的酸化を可能にする当技術分野において公知の任意の他の技術を用いてもよい。
本明細書に記載する態様又は実施態様のいずれかでは、本明細書によって提供されるペプチドは、当業者に公知の塩の形態、例えば、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、塩化物、硫酸塩、アミノ塩酸塩(amino chlorhydate salts)、ホウ化水素塩(borhydrate salts)、ベンゼンスルホン酸塩、リン酸塩、二水素リン酸塩(dihydrogenophosphate salts)、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩(メシラート)、又はp−トルエンスルホン酸塩(トシラート)で存在し得る。このリストは、一例として提供されるものであって、本発明を限定することを意味するものではない。例えば、当業者は、当業者の知見に従って適切な塩を容易に決定することができる。
更なる実施態様では、本明細書は、10位にホスホセリンを含むアミノ酸配列:RIHMVYSKRSGKPRGYAFIEY[配列番号1]を含むか又はからなるペプチドを提供する。特定の実施態様では、リン酸化ペプチドは、4位に酸化メチオニン又はその塩を更に含む。1つの有利な実施態様では、本発明は、配列番号4のアミノ酸からなる上に定義したペプチド又はその塩に関する。
医薬組成物
別の態様では、本明細書は、有効量の本明細書に記載するペプチドのうちの1つ以上と、賦形剤又は担体とを含む組成物を提供する。したがって、更なる実施態様では、本明細書は、また、少なくとも本明細書に記載のペプチド又は上記組合せ生成物を含み、更に薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物を提供する。
本明細書に記載するペプチド(本明細書では「活性化合物」とも称される)は、投与に好適な医薬組成物に配合され得る。このような組成物は、典型的には、ペプチドと薬学的に許容し得る担体とを含む。本明細書で使用するとき、用語「薬学的に許容し得る担体」は、医薬投与に適合する任意の、そして、全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等を含むことを意図する。薬理学的活性物質のためにこのような媒体及び剤を使用することは、当技術分野において周知である。任意の従来の媒体又は剤が活性化合物と不適合である場合を除いて、組成物におけるその使用が企図される。また、追加の活性化合物を組成物に配合してもよい。
本明細書は、医薬組成物を調製する方法を提供する。このような方法は、薬学的に許容し得る担体を本明細書に記載のペプチドと共に製剤化することを含む。このような組成物は、更に、上記追加の活性剤を含んでいてもよい。したがって、本発明は、更に、薬学的に許容し得る担体を本明細書に記載のペプチドと、そして、1つ以上の追加の活性化合物と共に製剤化することによって医薬組成物を調製する方法を含む。
本発明の医薬組成物は、その意図する投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例は、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、口腔内、鼻腔内(例えば、吸入)、経皮(局所)、経粘膜、及び直腸内の投与を含む。非経口、皮内、又は皮下への適用のために用いられる溶液又は懸濁液は、以下の成分を含んでいてよい:無菌希釈剤、例えば、注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコール;酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸又は重硫酸ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;バッファ、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩;及び塩化ナトリウム又はデキストロース等の浸透圧を調整するための剤。酸又は塩基、例えば、塩酸又は水酸化ナトリウムを用いてpHを調整してよい。非経口調製品は、ガラス又はプラスチックで作製されたアンプル、使い捨てシリンジ、又は複数回投与用バイアルに封入してよい。
注射可能な用途に好適な医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性である場合)又は分散液、並びに滅菌注射溶液又は分散液を即時調製するための滅菌粉末を含む。静脈内投与の場合、好適な担体は、生理学的食塩水、静菌水、Cremophor EL(BASF;Parsippany, N.J.)、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。全ての場合において、該組成物は、滅菌されていなければならず、そして、容易に注射可能である程度に流体でなければならない。該組成物は、製造及び保存条件下で安定でなければならず、そして、細菌及び真菌等の微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、及びこれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であってよい。例えば、レシチン等のコーティングを使用することによって、分散液の場合は必要な粒径を維持することによって、そして、界面活性剤を使用することによって、適切な流動性を維持することができる。微生物の作用は、例えば、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸等の様々な抗菌剤及び抗真菌剤によって阻止することができる。多くの場合、該組成物中に等張剤、例えば、糖、多価アルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)、又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物は、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン等の吸収を遅延させる剤を該組成物中に含めることによって、持続的に吸収させることができる。
滅菌注射液は、必要に応じて、上に列挙した成分のうちの1つ又は成分の組合せと共に、必要量の活性化合物(例えば、ポリペプチド又は抗体)を適切な溶媒中に配合し、次いで、滅菌濾過することによって調製することができる。一般的に、分散液は、塩基性分散媒を含有する滅菌ビヒクルに活性化合物を配合し、次いで、上に列挙したもののうちの必要な他の成分を配合することによって調製される。滅菌注射液を調製するための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は真空乾燥及び凍結乾燥であり、これにより、その既に滅菌濾過された溶液から活性成分+任意の更なる所望の成分の粉末が得られる。
経口組成物は、一般的に、不活性希釈剤又は可食性担体を含む。経口組成物は、ゼラチンカプセルに封入されてもよく、又は錠剤に圧縮されてもよい。経口処置用投与の目的のために、活性化合物は、賦形剤と共に配合され、そして、錠剤、トローチ剤、又はカプセル剤の形態で使用され得る。また、経口組成物は、含嗽剤として使用するために流体担体を用いて調製してもよく、この場合、該流体担体中の化合物を経口的に適用し、そして、すすぎ、そして、吐き出すか又は飲み込む。
吸入によって投与する場合、化合物は、好適な噴射剤、例えば、二酸化炭素等の気体を含有する加圧容器若しくはディスペンサ、又は噴霧器からエアロゾルスプレーの形態で送達される。
また、経粘膜又は経皮的な手段によって全身投与してもよい。経粘膜又は経皮投与については、浸透するバリアに適切な浸透剤を製剤において用いる。このような浸透剤は、一般的に、当技術分野において公知であり、そして、例えば、経粘膜投与の場合、洗浄剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻腔用スプレー又は坐剤の使用を通して行ってよい。経皮投与の場合、活性化合物は、当技術分野において一般的に知られている通り、外用剤、軟膏剤、ゲル剤、又はクリーム剤に製剤化される。
また、化合物は、直腸内に送達するために坐剤(例えば、従来の坐剤基剤、例えば、カカオバター及び他のグリセリドを用いて)又は停留浣腸の形態で調製することができる。
一実施態様では、活性化合物は、例えば、インプラント及びマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤等、身体からの急速な排出に対して該化合物を保護する担体と共に調製される。例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸等の生分解性、生体適合性ポリマーを用いてよい。このような製剤を調製する方法は、当業者に明らかである。また、材料は、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals, Inc.から商業的に入手してもよい。(モノクローナル抗体がその内部又は上に組み込まれているリポソームを含む)リポソーム懸濁液を薬学的に許容し得る担体として用いてもよい。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載の通り、当業者に公知の方法に従って調製することができる。
投与を容易にし、そして、投薬量を均一にするために、経口又は非経口組成物を単位剤形で製剤化することが特に有利である。本明細書で使用するとき、単位剤形とは、処置される被験体にとって1回の投薬量として適している物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な医薬担体と共同して所望の処置効果を生じさせるように計算された所定の量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形の規格は、活性化合物の独自の特徴、及び達成される具体的な処置効果、及び個体を処置するためにこのような活性化合物を配合する技術分野における固有の制約によって決定され、そして、直接依存する。
本明細書に提供される方法の特定の実施態様では、該方法は、約100ng〜約5mgの投薬量の本明細書に記載する処置用又は医薬組成物を投与する工程を含む。特定の実施態様では、例えば、ヒトでは、本明細書に記載する医薬組成物は、担体としてマンニトールを含有してよく、そして、該組成物は、単回投与において、10μg〜500μg、好ましくは、200μg投与される。
特定の更なる態様では、投薬レジメンは、処置濃度域を必要とする限り1〜3回/週、毎週〜4週間毎、ひいては数年間にわたって再現され得る。好ましい実施態様では、投薬レジメンは、4週間の処置毎に1回であるが、数年間にわたって1年間に2回繰り返してもよい。投与の例は、12週間にわたって4週間毎にペプチド 200μgを1回注射することである(すなわち、互いに4週間離して3回注射する)。処置は、6ヶ月間毎に投与することによって延長してよい。
好ましい薬学的に許容し得る担体は、例えば、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ガラクトース、他の糖類、オリゴ糖類及び/又は多糖類、デンプン、デンプン断片、デキストリン、イギリスゴム、並びにこれらの混合物を含んでいてよい。有利には、薬学的に許容し得る担体は、天然起源である。薬学的に許容し得る担体は、単糖又は二糖から選択される不活性糖希釈剤であってもよく、又は該希釈剤を更に含んでもよい。有利な糖は、マンニトールである。
有利には、本発明は、上に定義した医薬組成物に関し、これは、リポソーム若しくはナノ粒子の形態、又は溶液の形態である。有利な溶液は、1〜15%、特に約10%のマンニトールを含む溶液である。溶液は、等張でなければならない。
また、本発明は、同時、別々、又は逐次使用するための、上に定義した組合せ生成物を含む薬物に関する。
処置方法
更なる態様では、本明細書は、自己免疫疾患又は慢性炎症性疾患若しくは障害の症状を治療、予防、又は改善する方法であって、有効量の本明細書に記載する処置用組成物をそれを必要としている被験体に投与することを含み、該組成物が、慢性炎症関連疾患又は障害の少なくとも1つの症状を治療、予防、及び/又は改善するのに有効である方法を提供する。
更なる態様では、本明細書は、ハイパーオートファジー関連免疫系疾患又は障害、例えば、ハイパーCMA関連自己免疫疾患の症状を治療、予防、又は改善する方法であって、有効量の本明細書に記載する処置用組成物をそれを必要としている被験体に投与することを含み、該組成物が、ハイパーオートファジー、例えば、ハイパーCMA関連疾患又は障害の少なくとも1つの症状を治療、予防、及び/又は改善するのに有効である方法を提供する。(例えば、以下の表3)。
特定の実施態様では、該疾患又は障害は、過剰な又は増加したオートファジー、例えば、CMAに関連する慢性炎症性疾患又は障害である。特定の実施態様では、該疾患又は障害は、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、ミオパシー、筋ジストロフィー(MD)、クローン病(CD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、線維筋痛、多発性筋炎、肺疾患、慢性免疫性血小板減少症(ITP)、神経精神ループス、グジュロー・シェーグレン症候群、関節リウマチ、ギラン・バレー病(慢性/CIDP)、喘息(急性又は慢性)、好酸球性気道炎症、過敏性腸症候群(IBS又はIBD)、慢性炎症性脱髄性多発根神経障害(CIDP)、II型糖尿病、脂肪組織の再生、強皮症、乾癬、アルツハイマー病、又はパーキンソン病のうちの少なくとも1つである。
特定の実施態様では、自己免疫疾患は、結合組織疾患(非特異的全身器官疾患)のファミリーの自己免疫病理、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、混合結合組織病、シェーグレン症候群、若しくは慢性若年性関節炎;及び/又は器官特異的自己免疫病理、例えば、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、クローン病、又は水疱性疾患から選択される。好ましい実施態様では、自己免疫疾患は、SLEである。
更なる態様では、本明細書は、また、自己免疫疾患を処置する方法であって、有効量の本明細書に記載する医薬組成物を、このような処置を必要としている被験体(例えば、哺乳類、例えば、ヒト等の患者)に投与する工程を含み、該組成物が、該処置を達成するのに十分である方法を提供する。別の態様では、本明細書は、自己免疫疾患を処置する方法において使用するための本明細書に記載する組成物であって、該方法が、有効量の本明細書に記載する医薬組成物をそれを必要としている患者に投与する工程を含み、該組成物が、該処置を達成するのに十分である組成物を提供する。
特定の実施態様では、自己免疫疾患は、結合組織疾患(非特異的全身器官疾患)のファミリーの自己免疫病理、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、混合結合組織病、シェーグレン症候群、若しくは慢性若年性関節炎;及び/又は器官特異的自己免疫病理、例えば、多発性硬化症、クローン病、又は水疱性疾患から選択される。好ましい実施態様では、自己免疫疾患は、SLEである。
本明細書は、また、本明細書に記載するペプチドを含む薬物、及び/又は薬物としてそれを使用するため、特に自己免疫疾患を処置するための本明細書に記載する組合せを提供する。
任意の特定の理論に縛られるものではないが、本発明者らは、ホスホペプチドの結合及び内部移行を媒介するためにHSC70の結合が重要であり、したがって、HSC70の結合が本明細書に記載するペプチドの処置効果を媒介すると仮定する。したがって、本明細書は、また、細胞表面におけるHSC70の過剰発現によって引き起こされる病態を処置するか又は改善させる方法であって、それを必要としている患者に、有効量のホスホペプチド、例えば、本明細書に記載する修飾ペプチドを投与する工程を含み、該ペプチドが、該病態の少なくとも1つの症状を治療するか又は改善をもたらす方法を提供する。
10位のセリンがリン酸化されている配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドは、以下の化合物III:
に対応する。
実施例
実施例1:ペプチドの化学合成。
P140ペプチド及びP140(MO)を、古典的なFmoc(N−[9−フルオレニル]メトキシカルボニル)固相化学を用いて合成し、そして、逆相高性能液体クロマトグラフィ(HPLC;Neimark and Briand, 1993;Monneaux et al., 2003, Eur. J. Immunol. 33,287-296;Page et al., 2009, PloS ONE 4,e5273)によって精製した。その均質性を分析HPLCによって確認し、そして、アイデンティティをFinnigan LCQ Advantage Max system(Thermo Fischer Scientific)においてLC/MSによって評価した。反応の完了後、ペプチドをHPLCによって精製した。
配列番号3の残基140と等価なセリン残基にリン酸化を導入するために、Fmoc-Ser(PO(Obz)OH)-OH-型セリン誘導体を用いた。カップリング時間を30分間まで増加させ、そして、第2のカップリングを体系的に実施する。酸媒体中で切断した後、各ペプチドを冷エーテルによって沈殿させ、水及びアセトニトリルの溶液に可溶化させ、そして、最後に凍結乾燥させる。次いで、ペプチドをRP-HPLCによって精製し、その完全性及び純度を分析HPLC及び質量分析(Maldi-TOF)によって分析した。上述の通り酸化を導入する。
実施例2:ペプチドの安定性。
10位のセリンがリン酸化され、そして、4位のメチオニンが酸化されている配列番号2のペプチド(P140(MO))及び10位のセリンがリン酸化されている配列番号1のペプチド(P140)の安定性を、10%(v/v) マンニトールの溶液中37℃で測定した。各ペプチドにつき、3つの濃度を試験した:200、100、及び50μg/mL。
指定の時間に、未変化のペプチドに対応するピークの面積から高性能液体クロマトグラフィによって生理食塩水中でP140及びP140(MO)ペプチドの完全性を測定した。
結果を図3に示す。
以下の表1及び2は、結果を要約する:
安定性は、HPLCピーク表面を用いることによって測定する。
P140M(O)の安定性は、各試験濃度(50〜200μg/mL)について、37℃で100日間にわたって変化しない(100%、99.1%、及び99.4%)。
P140の安定性は、各試験濃度(50〜200μg/mL)について、経時的に減少し、そして、37℃で100日間後に低下する(97.4%、93.4%、及び89.6%)。
これらデータは、ペプチドP140におけるメチオニンの酸化がペプチドの安定性を強化することを証明する。P140M(O)は、100日間にわたって試験した全ての濃度で安定である。
実施例2:MRL/lprマウスにおけるペプチドの処置効果。
MRL/lprマウス系統は、ヒト疾患と臨床的に類似していることが見出されている全身性エリテマトーデス様症状を遺伝的に発現しやすいマウス亜系である。このマウス系統はfas遺伝子に突然変異を有することが判明している。また、MRL/lprは、自己免疫疾患においてみられる行動障害及び認知障害、並びに免疫抑制剤の有効性について研究するための有用なモデルである[Monneaux et al., 2003, Eur. J. Immunol. 33,287-296]。
2.1−生存分析
5週齢雌MRL/lprマウスに、記載の通り(Monneaux et al., 2003, Eur. J. Immunol. 33,287-296)P140又はペプチドP140(MO)を静脈内投与した。全ての実験プロトコルは、local Institutional Animal Care and Use Committee(CREMEAS)の承認を得て実施した。対照として、マウスにNaClを注射した。
各ペプチド又はNaClにつき20頭のマウスを用いた。
結果を図4に示す。
ログランク(Mantel-Cox)検定を適用し、そして、結果は以下の通りである:NaCl対P140 p=0.0686、NaCl対P140(MO) p=0.0026、P140対P140M(O) p=0.2366。
マウスの中央生存期間は、NaCl=25週間、P140=29週間、及びP140 (MO)>40週間である。これら結果は、マウスにおけるループスの処置におけるインビボでのP140(MO)ペプチドの有効性を証明する。
2.2−タンパク尿分析
上記マウスのタンパク尿を、Albustix(Bayer Diagnostics)を用いて新鮮尿で測定し、そして、製造業者によって推奨される0〜4の尺度に従って半定量的に推定した(タンパク尿無し=0;微量=1;1+=2;2+=3;3+=4;4+=5)。
結果を図5に示す。
この図では、タンパク尿がそれほど重要ではなく、そして、未処理マウスに比べてP140M(O)処理マウスの方が後で生じることが観察される。
2.3−細胞充実性分析
MRL/lprマウスに100μg/100μL P140又はP140(MO)を注射し、そして、この独自の注射の5日間後に細胞充実性(末梢血)を試験した。カウントは、全ての白血球を含む。試験したマウスの数が少ないことを考慮して、ノンパラメトリック統計検定を実現した(Mann-Whitney)。結果を図6に示す。
このように、ループスの急性マウスモデルにおいて、配列番号4のペプチドは、末梢細胞過形成を減少させることができ、そして、少なくともP140と同様又はそれ以上の有効性で疾患の生物学的及び臨床的徴候を遅延させる。
統計値
GraphPad Prism version 5.0を用いて統計検定を実施した。二要因分散分析を用いて、マウスの対照群とペプチド処理群との間のタンパク尿の差の統計的有意性を解析した。対照及びP140アナログで処理した雌MRL/lprマウスの生存期間をカプラン・マイヤー法によって解析し、そして、差の有意性をログランク検定によって決定した。他の変数については、スチューデントt検定を用いて統計的有意性を評価した。0.05未満のp値を有意であるとみなした。
実施例3:HSC70タンパク質に対するペプチドの親和性。
BIAcore 3000システム(Biacore AB)を用いて、P140ペプチドのHSC70タンパク質に対する結合を評価した(Page et al., 2009, and 2011)。センサチップCM5、界面活性剤P20、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)及びN−エチル−N’−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド(EDC)を含有するアミンカップリングキット、2−(2−ピリジニルジチオ)エタンアミン(PDEA)、並びにエタノールアミンは、Biacore AB製であった。ランニングバッファとしてHBS-EPバッファ(10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、0.005% 界面活性剤P20、pH7.4)を用いてバイオセンサアッセイを実施した。化合物をランニングバッファで希釈した。10mM HCl 10μLを注入することによって、各実験後にセンサチップ表面を再生した。NHS/EDC−活性化マトリクス上で50mM ホウ酸バッファ(pH8.3)中PDEA 35μLを用いて、そのチオール基を通してCM5センサチップのフローセルに組み換えウシHSC70(Stressgen)を固定化した。次いで、13ng/mm2HSC70に対応する13,000応答単位(RU)の応答が固定化されるまで、HSC70 35μL(ギ酸バッファ(pH4.3)中100μg/mL)を注入した。50mM システイン/1M NaCl溶液 20μLを用いて、チップ上の非占有部位を飽和させた。P140ペプチドのHSC70に対する直接結合の測定を、25℃で20μL/分の一定流速で実施した。P140ペプチド及びアナログを3分間異なる濃度でフラックスに注入し、その後、3分間解離相であった。パソコンでBIAeval 3.1ソフトウェアを用いて速度パラメータを計算した。単純1:1ラングミュア結合モデルを用いて解析を実施した。対照空チャネル及びブランクバッファ注入から応答シグナルを減じた後、特異的結合プロファイルを得た。c2値及び理論的モデルと比較した残留率分布のランダム性によって、各モデルへの当てはめを判定した。
結果を表3及び4、並びに図7及び8に示す。
これら表は、HSC70に対する親和性が、P140ペプチドとP140M(O)ペプチドとの間で統計的に異なっていないことを示す。
したがって、これら2つのペプチドは、同じ効率でHSC70に結合する。
実施例3:RAにおけるP140ペプチドの効果。
この実施例では、スプライセオソームU1-70Kタンパク質の配列131〜151を包含し、そして、140位にホスホセリン残基を含有するP140ペプチド(21merの線状ペプチド)を試験した。P140処理後、オートファジーフラックスのダウンレギュレーションと一致して、オートファジーマーカーであるSQSTM1及びMAP1LC3のMRL/lpr B細胞への蓄積が観察された(Page et al., 2011)。また、シャペロン介在性オートファジー(CMA)もP140ペプチドの標的であることが見出され、そして、CMAに対するP140ペプチドの阻害効果が、HSPA8シャペロンタンパク質と相互作用する能力(Page et al., 2009)及びHSPA8ヘテロ複合体の組成を変化させる能力(Macri et al., in press)に関連している可能性があることが証明された。HSPA8、及びMRL/lpr B細胞で増加するCMAの律速成分であるLAMP-2Aの発現はいずれも、P140ペプチドでマウスを処理した後にダウンレギュレートされる(Page et al., 2011;Macri et al., in press)。マウスにおける疾患発現から保護しない非リン酸化ペプチド(Monneaux et al., 2003)を除いて、P140は、MRL/lpr Bリンパ球に入るクラスリン依存性エンドリソソーム経路を使用し、そして、リソソーム内腔に蓄積し、そこで、リソソームのHSPA8シャペロン化機能を直接妨害し得、また、HSP90に対する効果の結果としてリソソームにおいてLAMP-2Aを不安定化し得る(Macri et al., in press)ことが更に示された。この二重効果は、内因性(自己)抗原のプロセシング及びMHCII分子へのロードに干渉し得、その結果、実験的に既に示されている自己反応性T細胞の活性化低下につながる(Monneaux et al., 2004;Monneaux et al., 2007)。
最近の研究では、RA並びに他の自己免疫疾患においてオートファジーが増加する可能性があることが示唆されている(表3;Wilhelm & Muller, submitted)。この活性化は、クローン病(CD)、RA、多発性筋炎(PM)、及び多発性硬化症(MS)について提唱されているが、対照的に、オートファジーが減少する可能性がある自己免疫性糖尿病では提唱されていない。
(1)略記:ATG、オートファジー関連遺伝子;BECN1、ベクリン−1;CD、クローン病;CMA、シャペロン介在性オートファジー;CTSB、カテプシンB;CTSD、カテプシンD;DRAM1、損傷制御性オートファジー調節因子;EM、電子顕微鏡;FM、蛍光顕微鏡;HSPA8、熱ショックタンパク質8;IRGM、免疫関連GTPaseファミリーMタンパク質;LAMP-2A、リソソーム関連膜タンパク質2A;MaA、マクロオートファジー、MAP1LC3、微小管関連タンパク質鎖3;MS、多発性硬化症;PCR、ポリメラーゼ連鎖反応;PM、多発性筋炎;PRDM1、正の制御ドメインI−結合因子1;RA、関節リウマチ;SLE、全身性エリテマトーデス;WB、ウエスタンブロット。(2)これら変化を評価するために用いた方法を括弧内に記載する。
エクスビボにおいて、(増殖を誘導する非リン酸化形態とは対照的に、そして、MRL/lprの状況でエクスビボにおいて示されたデータとは対照的に)P140はループス患者由来の末梢T細胞の増殖を誘導しないが、細胞培養物において高いレベルの制御性サイトカインIL-10を分泌させる(Monneaux et al., 2005)。他の自己免疫疾患患者由来のT細胞を試験したとき、培養物において増殖もIL-10生成も観察されなかった(Monneaux et al., 2005)。関節リウマチ(RA)、原発性シェーグレン症候群、自己免疫性難聴、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、及び自己免疫性肝炎の患者(n=27)を評価し、加えて、非自己免疫疾患又は感染性疾患で入院している4人の患者も評価した。
これらデータ(小さな患者群で実施)によって、本発明者らは、ペプチドP140は、末梢ループスCD4+ T細胞を非常に特異的に刺激するが、他の病態生理学的病態を有する患者に由来するT細胞は刺激しない可能性が最も高いと結論付けた(Monneaux et al., 2005)。また、これらデータは、これら疾患におけるオートファジーの欠陥の可能性のある制御因子としてのP140ペプチドの潜在的効果とは反対であった。
次に、RA様疾患を発現するマウスのモデルにP140ペプチドを投与した(本発明者らは、MRL/lpr−ループスになりやすいマウスのネガティブコントロールとしてこのマウスモデルを用いることを見込んでいた)。コラーゲン誘発関節炎(CIA)マウスモデルと呼ばれるこのモデルは、最も一般的に研究されているRAの自己免疫モデルである。このモデルでは、完全フロインドアジュバント(CFA)及びII型コラーゲン(CII)のエマルションでDBA/1マウスを免疫することによって自己免疫性関節炎が誘導され、そして、典型的には、関節炎の最初の徴候は、免疫の21〜28日間後に現れる(Brand et al., 2007)。CIAは、ヒトRAと幾つかの病理学的特徴を共有しており、そして、CIIは、RAの標的組織である軟骨における主なタンパク質である。病理学的特徴は、滑膜の過形成、単核細胞の浸潤、及び軟骨の退化を含む。これらマウスにおける易罹患性は、特異的MHCクラスII遺伝子の発現に関連しており、DBA/1はH-2qハプロタイプを有する。
したがって、本発明者らがMRL/lprマウスにおいて用いた設定(100μg/注射/マウス)に近い設定で、−1、+7、+14、及び+20日目にP140ペプチドをDBA/1マウスに静脈内投与した。CFA中CIIは、+1及び+21日目に注射した(200μg、皮内経路)。マウスの体重及びその臨床スコアは、非常に古典的な手順に従った。生物学的パラメータも評価した(すなわち、T細胞の応答、抗体の応答、関節の組織像等)。
この実験で得られた結果は、スクランブルドペプチドScP140を投与したマウス由来のCD4+ T脾細胞が、培養物に添加されたCIIの存在下、エクスビボで正常に増殖することを示す(図9;100μg CII/mL;FACSによるCFSEアッセイを用いて測定)。しかし、著しく対照的に、P140ペプチドを投与したマウスの脾臓からCD4 T細胞を回収した場合、増殖は大きく減少した(ScP140とP140との間のp=0.0539)。
CD8+ T細胞を同条件で試験したとき、効果は観察できなかった。はるかにより詳細にこの応答を特徴付ける更なる結果が待たれる。また、組織像は、これら細胞学的データを完全なものにする。
いかなる場合も、予測することができなかったこれら結果は、本発明者らがP140で処理したMRL/lprループス易発性マウス由来のCD4+ T細胞を試験したときに見出したものをRAにおいて模倣することができる操作スキームを示唆する。MRL/lprマウスでは、P140は、B細胞表面におけるMHCII発現の著しい減少を誘導し(CMAに対する効果を介して)、したがって、抗原提示細胞による抗原性ペプチドの提示を低減し、これは、重要な事柄として、末梢自己反応性T細胞の反応性の低下及び疾患状態の改善につながる。したがって、該データは、P140ペプチドが、CMA活性の低下が望ましい様々な他の病的状態において有効であり得ることを示す。
現在、RAにおいてCMAが変化することを細胞レベルで示す入手可能なデータは存在しない。この病状におけるリソソームの特性に関する情報は存在しない。今後の研究は、オートファジーフラックスがRAマウス及びRA患者由来のB細胞において増加し、そして、この状況においてCMAが変化することの可能な実証に集中すべきである。
特にCD、PM、強皮症(SSc)、及びMSにおいて、関連するデータを蓄積するために他の病態生理学的状況についても試験する。CD(例えば、IL-10 KOマウス、SAMP1/YitFcマウス、又は近交系ラットを用いたペプチドグリカン−多糖モデル)及びMS(実験的自己免疫性脳脊髄炎EAEのマウス及びラットのモデル)については、確立されたマウスモデルが利用可能である。しかし、現在、PM及びSScについては良好な動物モデルが存在しない。
実施例4:P140粒子のエンドサイトーシス。
P140ペプチド活性には、HSC70の結合及びエンドサイトーシスが重要であると思われる。エンドサイトーシスは、クラスリン経路を通じて生じるはずであると考えられる。これは、ペプチド+賦形剤が直径30〜500nmの範囲のサイズを有しなければならないことを示す。例えば、P140+マンニトールは、100nmの範囲であるが、一方、P140+トレハロースは、10nm未満であり、したがって、HSC70に有効に結合しない。例えば、図10は、フローサイトメトリーによって可視化した、MRL/lpr B細胞及びRaji細胞における5.4% マンニトール又は10% トレハロース中の蛍光P140ペプチドの細胞取り込みを示す。B細胞は、12〜14週齢のMRL/lprマウスから採取し(一次細胞);Raji細胞は、バーキットリンパ腫患者のBリンパ球から1963年に派生した樹立細胞株である。MRL/lpr B細胞及びRaji細胞のいずれにおいてもペプチドをトレハロースで希釈したとき、マンニトールよりもP140の細胞取り込みがはるかに少ない。この結果は、共焦点顕微鏡を用いて確認された(図11)。共焦点画像は、リソソームへのホーミング前にP140が局在する後期エンドソーム区画を示し、DAPIは、DNAを同定する。この結果は、トレハロースの場合、B細胞に入るP140ペプチドがはるかに少ないというフローサイトメトリーの結果を裏付ける(表4及び5を参照)。
実施例5.マウスにおけるオボアルブミンによって誘導される好酸球性気道炎症の15日モデルにおけるP140ホスホペプチドの抗炎症効果。
マウスの好酸球増多性気道炎症の15日モデルにおいて局所(鼻腔内)又は全身(静脈内)に投与したときのP140ホスホペプチドの抗炎症効果を評価した。
P140ホスホペプチドを滅菌水(Braun)に可溶化させ、そして、10×濃度の滅菌生理食塩水を添加して、浸透圧を300mosmに調整した。浸透圧は、マイクロオスモメータ(Loser、15型)で制御し、そして、検証した(302mosm)。
P140ホスホペプチドは、鼻腔内(i.n.)及び静脈内(i.v.)の経路によって4mg/kgの用量でインビボにおいて用いた。対照動物には、等体積(i.n.については1mL/kg、そして、i.v.については2mL/kg)の生理食塩水を投与した(表6)。
生理食塩水 0.1mL中OVA(Sigma-Aldrich) 50μg及びalum(Sigma-Aldrich) 2mgを含有する混合物を腹腔内(i.p.)注射することによって、9週齢の雄Balb/cマウスを感作した。5日目にOVA 25μL、次いで、12、13、及び14日目にOVA及び/又は生理食塩水 25μLをi.n.投与することによって、マウスを刺激した。9日目にP140又は溶媒をi.v.注射(2mL/kg)又はi.n.投与(1mL/kg)することによってマウスを処理した(図12を参照)。
(Daubeuf, F. and Frossard, N. 2012. Performing Bronchoalveolar Lavage in the Mouse. Curr Protoc Mouse Biol 2:167-175)に記載の通りLPS刺激の24時間後にBALを実施した。マウスにIP麻酔した(150mg/kg ケタミン−10mg/kg キシラジン)。心臓から血液を回収し、10,000gで2分間遠心分離し、そして、−20℃で血清を保存した。気管の半切除後、プラスチックのカニューレを挿入し、そして、1mLのシリンジで注入した0.9% NaCl 0.5mLで気腔を洗浄した。この手順を10回実施した。最初2回の洗浄液の初期濃縮上清(体積=2×0.5mL投与、〜0.5mL回収)をサイトカイン測定用に回収した。残りのBAL液を遠心分離し(300gで5分間、4℃)、そして、細胞のペレットをプールした。細胞のペレットを0.9% NaCl 500μLに懸濁させ、そして、Muse(登録商標)Cell Analyserを用いて合計細胞数を評価した。フローサイトメトリー(LSRII(登録商標)cytometer, BD Bioscience)によって示差細胞数を評価した。黒色マイクロプレートにおいてBAL細胞にFCblock(0.5μL、553142, BD Bioscience)を添加し、室温で20分間インキュベートした。次いで、マーカー抗体を添加した:CD11c-FITC(557400, BD bioscience)、Gr-1-Pe-eFluor610(61-5931-82, eBioscience)、CD11b-APC-Cy7(557657, BD bioscience)、CD45-AlexaFluor700(103128, BioLegend)、CD3-BV605(564009, BD bioscience)、CD19-PE-Cy7(552854, BD bioscience)。DAPI(5μL、BD bioscience)を添加する前に室温で30分間抗体をBAL細胞と共にインキュベートし、そして、直ちにフローサイトメトリーを実施した。
データは、平均±SEMとして提示する。群間の差を、一要因分散分析、続いて、チューキー事後検定を用いて統計的有意性について検定した。統計解析のために、対照群1、2、及び3をプールした。p≦0.05のとき、データを有意に異なるとみなした。
生理食塩水で刺激した対照マウスにおけるBAL液に回収された気道細胞の分析は、i.n.又はi.v.投与されたP140ホスホペプチドが、それ自体、ビヒクル(生理食塩水)と比べてBAL液に回収された細胞の数に対してほとんど効果を有しず、特に、炎症促進効果を有しないことを示す。(表7を参照)。
オボアルブミンで刺激したマウスでは、BAL液に回収された炎症性細胞の合計数が著しく増加する。この効果は、好酸球、好中球、T及びB細胞の流入の著しい増加に関連している(###p<0.001;図13)。
i.v.投与(4mg/kg)したP140ホスホペプチドは、好酸球(−50%、***p<0.001)、T細胞(−66%、**p<0.01)、及びB細胞(−42%、*p<0.05)の動員、並びに好中球の動員(−38%)を著しく減少させるが、有意差のカットオフは下回らない。対照的に、i.n.経路によって局所的に投与したP140ホスホペプチドは、BALにおける炎症性細胞の動員に対してほとんど効果を有しず、これは、P140が全身作用を通じて作用していることを示唆する。
このプロジェクトは、オボアルブミンで感作及び刺激されたBalb/cマウスにおける15日気道過好酸球増加症モデルにおいてi.n.によって局所的に又はi.v.によって全身に投与されたP140ホスホペプチドが、抗炎症効果を有し得るかどうかについて試験することを目的としていた。本発明者らは、OVA又は生理食塩水で刺激する2日間前、すなわち、気管支肺胞洗浄によって気道炎症性細胞を回収する6日間前にi.n.又はi.v.投与されたP140の効果を比較した。
このように、P140のi.v.投与(4mg/kg)は、Balb/cマウスでOVAに対してこの気道過好酸球増加症モデルにおいて抗炎症効果を示すが、一方、i.n.投与は、依然として実質的な効果を有しない。これは、P140の抗炎症活性が、局所作用ではなく全身作用(例えば、脾臓、リンパ器官、骨髄)であることを示唆する。
実施例6.慢性炎症のマウスモデル(DSS誘導モデル)におけるP140ペプチドの効果の研究。
−2及び−1日目に、P140ペプチド(100/注射、iv経路;10頭のマウス)又は生理食塩水のみ(対照群:10頭のマウス)を正常マウス(C57BL/6;7週齢;雄)に投与した。0日目に、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS;2〜3%)を投与して疾患を誘導した。
体重減少、便の硬さ、下痢、及び血便について毎日動物を検査した。約14日目又は重症(体重減少>25%)の場合はいつでも動物を殺処分した。統計値:マンホイットニー(正確)
DAIはほとんど差がない(p=0.5386)。しかし、この臨床指数は、マウスモデルにそれほどうまく適合していない。結腸サイズが著しく増加したが、これは、炎症の減少を反映している(p=0.0011)。2つの群間で体重の差はみられなかった。しかし、+3日目及び+4日目に傾向がみられた。P140群のみにおける+8日目に対して、対照群では+6日目に糞便中に血液がみられた。
実施例7.マウスにおけるチリダニ抽出物(HDM)によって誘導された好酸球性気道炎症の31日モデルにおけるP140ホスホペプチドの効果。
この研究の目的は、マウスにおけるHDM誘導喘息の31日モデルに全身(静脈内)投与したP140ホスホペプチドの効果を評価することであった。P140ホスホペプチドを滅菌水(Braun)に可溶化させ、そして、10×濃度の滅菌生理食塩水を添加して、浸透圧を300mosmに調整した。浸透圧は、マイクロオスモメータ(Loser、15型)で制御し、そして、検証した(303mosm)。P140ホスホペプチドは、静脈内(i.v.)経路によって4mg/kgの用量でインビボにおいて用いた。対照動物には、等体積(2mL/kg)の生理食塩水を投与した(表8)。
HDM抽出物(Stallergenes)の鼻腔内(i.n.)投与によって9週齢の雄Balb/cマウスを感作した:0、1、2、3、4日目に生理食塩水 25μL中1μg、そして、14及び21日目に10μg。28、29、及び30日目にHDM(1μg)及び/又は生理食塩水をi.n.投与することによって、マウスを刺激した。25日目にP140又は溶媒をi.v.注射(2mL/kg)することによってマウスを処理した(図14を参照)。
メタコリン(Flexivent(登録商標))に対する気道応答。31日目に、気道はPBSに応答し、次いで、記載の通り(Daubeuf et al, Bioprotocol, 645, 2013)、強制振動技術を用いてメタコリンを評価した(Flexivent(登録商標)、SCIREQ, Montreal, Canada)。マウスをキシラジン(Rompun(登録商標);1mg/kg)の腹腔内注射によって麻酔し、15分間後に、ペントバルビタールナトリウム(3.64mg/Kg)を腹腔内注射した。気管を露出させ、そして、18ゲージの金属針を気管に挿入した。気道をコンピュータ制御された小動物用人工呼吸器に接続し、そして、一回呼吸量10mL/Kg、150呼吸/分の頻度で、そして、2cm H2Oの呼吸端陽圧で準正弦波的に人工呼吸して、自発呼吸に近い平均呼吸量を達成した。ベースライン測定後、インライン噴霧器で生成し、そして、人工呼吸器を通して直接投与したPBSのエアロゾルで各マウスを10秒間刺激した。次いで、50mg/mL エアロゾル化したメタコリン(MCh)を10秒間投与した。ピーク応答、すなわち、気道抵抗(R、cm H20.s.mL-1)、エラスタンス(E、cm H20.mL-1)、及びコンプライアンス(C、mL.cm H20-1)を計算するために統合した3つの最大値の平均としてメタコリンの効果を計算した。
(Daubeuf et al. 2012)に記載の通り、HDM刺激の24時間後に気道過敏性を測定した後、BALを実施した。マウスにIP麻酔した(150mg/kg ケタミン−10mg/kg キシラジン)。心臓から血液を回収し、10,000gで2分間遠心分離し、そして、−20℃で血清を保存した。
気管の半切除後、プラスチックのカニューレを挿入し、そして、1mLのシリンジで注入した0.9% NaCl 0.5mLで気腔を洗浄した。この手順を10回実施した。最初2回の洗浄液の初期濃縮上清(体積=2×0.5mL投与、約0.5mL回収)をサイトカイン測定用に回収した。残りのBAL液を遠心分離し(300gで5分間、4℃)、そして、細胞のペレットをプールした。細胞のペレットを0.9% NaCl 500μLに懸濁させ、そして、Muse(登録商標)Cell Analyser(Millipore)を用いて合計細胞数を評価した。フローサイトメトリー(LSRII(登録商標)cytometer, BD Bioscience)によって示差細胞数を評価した。黒色マイクロプレートにおいてBAL細胞にFCblock(0.5μL、553142, BD Bioscience)を添加し、室温で20分間インキュベートした。次いで、マーカー抗体を添加した:CD11c-FITC(557400, BD bioscience)、Gr-1-PeeFluor610 (61-5931-82, eBioscience)、F4/80-PE(12-4801-82, eBioscience)、CD11b-APC-Cy7(557657, BD bioscience)、CD45-AlexaFluor700(103128, BioLegend)、CD3-BV605(564009, BD bioscience)、CD19-PE-Cy7(552854, BD bioscience)。DAPI(5μL、BD bioscience)を添加する前に室温で30分間抗体をBAL細胞と共にインキュベートし、そして、直ちにフローサイトメトリーを実施した。
0、1、2、3、4、14、21日目に全てのマウスをHDMに感作させ、そして、生理食塩水(慢性喘息)又はHDM(アレルゲンで刺激)で刺激した。結果は、平均±SEMとして提示する。炎症性細胞についてはスチューデントt検定を用いて、そして、気道応答については二要因分散分析、続いてボンフェローニ事後検定を用いて、群間の差を統計的有意性について検定した。p≦0.05のとき、データを有意に異なるとみなした。
慢性喘息における気道応答
生理食塩水で刺激し、溶媒で処理したマウスにおいてFlexivent(登録商標)技術によって評価したベースラインの気道抵抗、エラスタンス、及びコンプライアンスに対して、PBSの吸入は効果を有していなかった(図15A〜C)。P140による処理(i.v.、4mg/kg、25日目)も、溶媒で処理したマウスに比べていずれのパラメータに対しても効果を有していなかった(図15A〜C)。しかし、メタコリン(50mg/mL)の吸入は、生理食塩水で刺激し、溶媒で処理したマウスにおいて、コンプライアンスの減少を伴う、気道抵抗及びエラスタンスの顕著な増加を誘導した(それぞれ、図15A、B、及びC)。P140による処理は、溶媒群と比べてエラスタンスを有意に減少させ(−65%、*p<0.05)、そして、気道コンプライアンスを増加させ(+115%、*p<0.05)(図15)、それに加えて、気道抵抗を減少させた(−42%)が、有意ではなかった(n=5)。
アレルゲン(HDM)で刺激したマウスにおける気道応答
HDMで刺激し、溶媒で処理したマウスにおいてベースラインの気道抵抗、エラスタンス、及びコンプライアンスに対して、PBSの吸入は効果を有していなかった。P140による処理は、溶媒群に比べてアレルゲンで刺激したマウスにおける気道抵抗、エラスタンス、又はコンプライアンスに効果を有していなかった。しかし、メタコリンの吸入は、HDMで刺激し、溶媒で処理したマウスにおいて、コンプライアンスの減少を伴う、気道抵抗及びエラスタンスの有意な増加を誘導した(図15)。
慢性喘息における効果(HDMで感作し、生理食塩水で刺激したマウス)
溶媒で処理したマウスにおいて生理食塩水で刺激した際にBAL液に、好酸球(3.8×105)、好中球(0.7×105)、マクロファージ(0.4×105)、T及びBリンパ球(1.9×105及び0.3×105)、並びに樹状細胞(0.2×103)が回収された(図16)。P140による処理(4mg/kg i.v.、25日目)は、溶媒群に比べて、好中球の数を有意に減少させ(−71%、*p<0.05)、それに加えて、好酸球(−25%)及びB細胞(−40%)も減少させたが、有意ではなく、そして、マクロファージの数を4.5倍有意に増加させた(*p<0.05)(図16)。
アレルゲンで刺激したマウスにおける効果(HDMで感作し、そして、HDMで刺激した)
HDMで刺激したマウスにおいてBAL液に回収された炎症性細胞の数は、慢性喘息(生理食塩水で刺激)と比べて有意に増加した(図2)。この効果は、HDM刺激に応答した、好酸球(11.7×105、###p<0.001)、好中球(3.4、#p<0.055)、T及びB細胞(5.8×105及び0.9×105、#p<0.05)の流入の有意な増加に関連していた(図16)。したがって、P140による処理は、溶媒群に比べてHDMで刺激したマウスのBALにおける炎症性細胞の動員に対して効果を示さなかった。
この研究の目的は、チリダニ(HDM)抽出物に感作したBalb/cマウスの31日喘息モデルにおいて全身投与したとき、P140ホスホペプチドが抗喘息効果を有し得るかどうかについて試験することであった。HDM又は生理食塩水で刺激する2日間前、すなわち、MChに対する気道応答の評価及び気管支肺胞洗浄による気道炎症性細胞の回収の6日間前に、HDMで感作したマウスにP140をi.v.投与した。
本発明者らは、i)動物を生理食塩水で更に刺激したときの慢性喘息のモデル(HDMで感作し、生理食塩水で刺激したマウス)及びii)動物をHDMで更に刺激したときのアレルゲン刺激誘導喘息発作のモデル(HDMで感作し、HDMで刺激したマウス)として、全ての動物をHDMに感作する試験を設計することを選択した。したがって、プロトコル設計は、i)毎日の慢性喘息及びii)喘息の急性発作中におけるP140の効果を示すことができた。
(HDMで感作し、そして、生理食塩水で刺激した)慢性喘息マウスでは、メタコリンは、気道コンプライアンス(C)の減少を伴う、気道抵抗(R)及びエラスタンス(E)の増加として測定される気道閉塞の大きな増加を誘導した。感作されておらず、そして、刺激されてもいない対照Balb/cマウスを観察するために本発明者らが用いた正常値(ベースラインR、E、及びC)と比べて、これら値は、慢性喘息のこれらマウスにおける気道過敏の存在の代表的なものである。本発明者らは、P140処理が、溶媒処理群に比べて、MChに対する気道応答を有意に減少させ、気道エラスタンスEを有意に減少させ、そして、コンプライアンスCを増加させると共に、気道抵抗Rを減少させるが、有意ではないことを示す。これは、P140が本発明者らのアレルギー性慢性喘息モデルにおいて観察される気道過敏を減少させることを示唆する。
更に、本発明者らは、この研究において、慢性喘息において気道に存在する炎症反応に対するP140処理の効果を観察する。本発明者らの慢性喘息のモデルは、好酸球、好中球、マクロファージ、樹状細胞、T及びB細胞の浸潤を特徴とする。P140処理は、溶媒処理マウスに比べて、気管支肺胞洗浄において回収された好中球の数の有意な減少を誘導し、それに加えて、好酸球及びB細胞の減少を誘導したが、有意ではなく、そして、マクロファージの有意な増加を誘導した。喘息は、気道の好酸球性炎症として知られている。より重要なことに、重篤な制御されていない喘息は、浸潤した炎症性細胞の表現型が変化する、最も重要なことには、好中球が気道に浸潤する気道炎症性疾患として記載されている。この表現型は、グルココルチコイド処理に対して耐性であることが多い。したがって、P140ホスホペプチドで観察される効果は、P140が慢性喘息、気道過敏、及び気道炎症において抗喘息能を有することを示唆する。
任意の特定の理論に縛られるものではないが、P140は、喘息患者において最も無効化する(invalidating)症状のうちの1つである気道過敏の回復を伴う、喘息において気道に存在する慢性炎症、特に、好中球の回復を強化すると考えられる。アレルゲンで刺激したマウス(HDMで感作し、そして、HDMで刺激した)では、HDMが、気道過敏の更なる増大及びBALに回収された気道炎症性細胞の浸潤を誘導した。しかし、P140処理は、このアレルゲン刺激で誘導されたMChに対する気道過敏の増大に対してもBALにおける炎症性細胞の動員に対してもほとんど効果を有していなかった。これは、P140処理が、アレルゲン刺激の2日間前に投与されたとき、喘息の急性発作の反応をブロックするほど強力ではないことを示すが、HDM刺激の非存在下で喘息性気道過敏及び炎症の基底レベルは低下した。
生理食塩水刺激の2日間前のP140の全身投与(4mg/kg i.v.)は、ベースライン気道過敏を回復させ、そして、毎日の慢性喘息における炎症を回復させる能力を有する。対照的に、P140投与のために用いた条件では、すなわち、HDM刺激の2日間前には、P140は、アレルゲン刺激の結果に対して効果を有しておらず、これは、感作された気道においてアレルゲンの作用を改善することもなく悪化させることもないことを示す。喘息の31日モデルにおいて測定されたP140のこのような活性は、P140が慢性喘息において有効であり得ることを示す。P140処理とアレルゲン刺激との間の遅延の増加によって、喘息におけるP140の活性を増大させることができる。本発明者らは、繰り返しアレルゲンと接触することによって引き起こされる気道過敏及び気道炎症をP140が予防する、すなわち、毎日の慢性喘息の症状を回復させることができると期待する。
実施例8.慢性炎症性脱髄性多発根神経障害のラットモデルにおけるp140ペプチドの効果
慢性炎症性脱髄性多発根神経障害(CIDP)は、処置法が限定されている/存在しない末梢神経系(PNS)の自己免疫媒介炎症性疾患である。最近、CIDPの新たな動物モデルである慢性-EANが特性評価された(Brun S, Beaino W, Kremer L, Taleb O, Mensah--Nyagan AG, Lam CD, Greer JM, De Seze J, and Trifilieff T (2015). Characterizaton a new rat model for chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathies. J. Neuroimmunol. 278: 1--10)。このモデルは、免疫組織病理学によって確認される、軸索変性を伴う脱髄の電気生理学的基準を満たしている。慢性疾患の後期は、坐骨神経におけるIL-17サイトカイン陽性細胞及びマクロファージの蓄積、並びに高い血清IL-17レベルを特徴としていた。該モデルは、それを標的とする新たな免疫療法が非常に必要とされている、PNSの慢性ヒト自己免疫媒介炎症性疾患、特にCIDPについてのトランスレーショナルな薬物研究のために用いることができる、CIDPの信頼できかつ再現可能な動物モデルである。したがって、この研究は、CIDPのこの新たな臨床前ラットモデルにおけるP140ペプチドの可能性のある効果を調べようとしている。
7〜8週齢、体重250〜270gのCharles River(Domaine des Oncins, L’Arbresle, France)から購入した雄Lewisラットを用いた。慢性-EAN(CIDP)を誘導するために、生理食塩水 100μL及び不完全フロインドアジュバント(SIGMA-Aldrich, St-Quentin Fallavier, France) 100μLに乳化したペプチド(Ac(palm)KRGRQTPVLYAMLDHSRS) 200μg及び結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(H37株 RA、Difco, Detroit, Michigan, USA)を含有する接種材料 200μLを尾の基部に皮下注射することによって、ラットをS-palm-P0(180-199)ペプチドで免疫した。
免疫後(dpi)60日まで体重及び臨床スコアを毎日評価する。不全麻痺の重症度を以下の通り採点する:0=病気なし;1=尾の弛緩;2=中等度の不全対麻痺;3=重篤な不全対麻痺;4=四肢不全麻痺;5=死亡。
合計15頭のラットを用い、そして、以下の表に示す通り処理した。
水/生理食塩水(1:10) 500μL中100μg/ラット P140ペプチドを、免疫後5、7、9、13日に、及び、免疫後22日から研究の最後まで1週間に3回腹腔内注射した。
a) サイトカインELISA
処理したラット及び未処理ラット由来の血清を免疫後18、40、及び60日に回収した。製造業者の説明書に従って、ラットIL-17に特異的な市販のELISAキット(eBioscience, San Diego, CA, USA)を用いて、未希釈血清中のIL-17サイトカインの濃度をデュープリケートで測定する。
b) 抗体ELISA
また、ELISAを用いて、抗P0(180-199)抗体の存在について、免疫後18、40、及び60日に、処理したラット及び未処理ラット由来の血清を試験する。0.05M 炭酸水素塩緩衝溶液(pH9.6、100μL/ウェル)中20μg/mLのペプチドで96ウェルプレートをコーティングし、そして、4℃で一晩インキュベートする。次いで、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)でプレートを洗浄し、そして、37℃で1時間、PBS中1% ウシ血清アルブミンでブロッキングする。洗浄後、1/5000で希釈した血清(100μL/ウェル)をデュープリケートで添加し、そして、37℃で2時間インキュベートする。洗浄後、37℃で2時間、ペルオキシダーゼにカップリングしたヤギ抗ラットIgG(1:2000、SIGMA--Aldrich)と共にプレートをインキュベートする。激しく洗浄した後、各ウェルを、発色するまで室温でTMB 75μLと共にインキュベートする。1M H2SO4(25μL/ウェル)を添加することによって、反応を停止させる。
c) 免疫細胞化学
PNSにおける炎症性細胞の浸潤及び病理学的変化を評価するために、処理したラット及び未処理ラットを免疫後60日に殺処分する。ラットをKetamine/Rompunで深く麻酔し、そして、4℃のPBS中4%(v/v) パラホルムアルデヒド(PFA)を心臓内に灌流させる。坐骨神経及び馬尾を切開し、ブアンで固定し、そして、パラフィンに包埋する。
脱ろう後、切片(5μm)を80℃で10分間クエン酸バッファ中で加熱する。内因性ペルオキシダーゼを、水中0.02% H2O2で10分間阻害する。非特異的結合部位を、30分間PBS中5% ウシ胎仔血清(Gibco Invitrogen, Camarillo, CA, USA)でブロッキングし、次いで、以下のモノクローナル抗体でブロッキングする:ミエリンについては抗MBP(1:500;所内で作製);神経フィラメントについてはSMI-311(1:1000;Abcam, Paris, France);マクロファージについてはED1(1:400;Serotec, Oxford, UK)、及び抗インターロイキン-17(IL-17;1:100;Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA, USA)。組織切片に対する抗体の結合を、ビオチン化抗マウスIgG(1:200;Vectastain(登録商標)、Vector Laboratories, Burlingame, CA, USA)及びアビジン−ビオチン複合体(ABCペルオキシダーゼキット;Vectastain(登録商標)、Vector Laboratories)で可視化し、続いて、IL-17についてはDAB基質(Vector(登録商標)DAB SK-4100, Vector Laboratories)、そして、他の抗体についてはVIP基質(Vector(登録商標)VIP SK-4600, Vector Laboratories)で顕色させる。
P140ペプチドは、CIDPラットにおける疾患の重篤度に対して効果を示し、そして、慢性化を阻止する。CIDPラットに対するP140ペプチドの効果を調べるために、免疫後5、7、9、13日に、そして、免疫後22日から研究の最後までは1週間に3回、動物をP140(100μg/ラット)で腹腔内処理する。図17Aは、最大体重減少が疾患の最高臨床スコアに対応する疾患過程中の体重の変化を示す。この体重減少は、未処理ラットに比べて処理群ではそれほど重要ではない。図17Bに示す通り、P140の処理は、未処理ラットに比べて疾患の発症を遅延させ、そして、最高臨床スコアを低下させるだけでなく、疾患の慢性化を阻止すると思われる。
実施例9.グジュロー・シェーグレン症候群のマウスモデルであるMRL/lprマウスにおけるP140ペプチドの効果の研究(唾液腺に焦点を当てる)
この研究では、統計解析のために1群あたりのマウスは10頭の11〜12週齢の雌MRL/lprマウスを用いた。各マウスに、9% NaCl 100μL中ペプチドP140 100μgを後眼窩に単回注射することによって投与した。5日間後、マウスの血液をヘパリン処理したチューブに回収し、そして、唾液腺(GSS)を除去し、そして、PBS(pH7.4)を含有するエッペンドルフチューブに入れた。
ペプチドP140の効果を幾つかの系で試験した。
末梢血における細胞充実性の研究:マウス血液 300μLを、供給業者によって提供されるプロトコルに従って(手順B)、DAKO EasyLyse(ref S2364) 3mLに溶解させる。PBS(pH7.4)−2%(v/v) ウシ胎仔血清で2回洗浄した後、細胞を同バッファ 300μLにとる。次いで、Turkish Blueの存在下でMalassezセルにおいて細胞を計数して、白血球と残りの赤血球とを識別する。本発明者らは、P140ペプチドが血液中の白血球の量のばらつきを誘導するかどうかを調べるために、血液 1mLあたりの細胞数を推測して、様々な処理群間で比較する。
器官のクリオスタットの調製
唾液腺(SG)をPBS(pH7.4)で洗浄し、次いで、クリオスタット切片の調製専用のカップに入れる。組織が完全に覆われるまで、カップに「OCT」培地(Cell path, ref. 03803126)を充填する。次いで、カップを液体窒素に浸漬し、次いで、使用まで−80℃で保存する。
組織を5マイクロメートルのクリオスタット切片に切断する。切片を室温で一晩(12時間)放置した。次の日、切片を30分間100% アセトン中でインキュベートした。次いで、後で使用するまで、切片を−80℃で保存してよい。次いで、切片をPBS(pH7.4)で再水和し、5分間後に免疫染色した。
免疫染色:
プロトコルは以下の通りである:
PBS−2%(w/v) BSA中で30分間切片をインキュベートする。
切片をPBS(pH7.4)で5分間×2回洗浄する。
対象となる抗体を典型的にはPBS−2% BSAで1/200希釈し、そして、室温で2時間(又は4℃で一晩)切片上で直接インキュベートする。
PBS(pH7.4)で10分間×3回洗浄する。
PBSで1/5000希釈したDAPIで15分間核染色を実施する。
PBS(pH7.4)で10分間×3回洗浄する。
切片を4%(v/v) パラホルムアルデヒド(PFA)で20分間固定する。
過剰のPFAを除去し、次いで、「DAKO mounting medium」と共にスライドガラス上にカバースリップを載せ、そして、室温で2分間、光から保護した状態で乾燥させる。
顕微鏡で可視化する。
ヘマトキシリン/エオシンによるマーキング:
各マウスについて、病巣部位(FS)の数を求める。病巣は、50個以上の細胞の凝集体として定義する。
採点システム(評点0〜3)によって炎症SGのレベルを半定量的に求める。グレード0:炎症性細胞無し;グレード1:わずかな血管周囲の炎症及び管周囲の浸潤(<100細胞);グレード2:中等度の数の血管周囲の炎症及び管周囲の浸潤(100〜500細胞);グレード3:炎症病巣の広がりと共に広範囲に及ぶ炎症(>500細胞)。
フローサイトメトリーによる唾液腺の研究
蛍光染色された全唾液腺の細胞を、4℃で40分間抗体で標識し、FACSCaliburによってデータを収集した。
末梢血における細胞充実性の研究の結果を提供する。
切除後に唾液腺の重量を測定した。DNase I(1mg/mL)及びコラゲナーゼD(50μg/mL)を用いて唾液腺を分解した。分解後に全細胞数を評価した。
この実験では、投与(単回iv注射)の5日間後にマウスを評価し、P140ペプチドはSGの重量に対して統計的に有意な効果を有していなかった(図18)。
フローサイトメトリーによる唾液腺の研究
P140処理(5日間;単回iv注射)は、SG処理したMRL/lprマウスに存在する細胞の総数に対して明白な効果を有していなかった(図18)。
しかし、リンパ球亜群について調べたとき、特定のリンパ球サブセットにおいてP140ペプチドの効果があることが検出された。P140は、MRL/lprマウスのSGにおいてCD4+ T細胞を減少させた(しかし、CD8+ Tは減少させなかった)。予備実験(図示せず)では、CD4+ T細胞がSGに浸潤した主な細胞亜群であることが分かった。これらT細胞は、ほとんどがβTCR + T細胞である。P140ペプチドは、B細胞の総数に対して統計的に有意な効果を有していなかった。
顕微鏡による唾液腺の研究
MRL/lprマウス(1アームあたり10頭のマウス)にペプチドP140(100μL/マウス iv)を注射した。注射の5日間後、マウスを殺処分し、そして、上に示した通りSGを回収した。組織を5μmのクリオスタット切片に切断する。切片を、組織学で最も頻繁に用いられる方法であるヘマトキシリン/エオシン染色で標識した。炎症のレベル及びFSの数を求めた(図19及び20)。サンプル対照群4及び処理群サンプルの代表的な写真を撮影する(バー 500μm)。
結果は、ペプチドP140の単回投与の5日間後直ちに、MRL/lprマウスのSGにおけるリンパ球浸潤が有意に減少したことを示す。
実施例10.関節リウマチのマウスモデルにおけるP140ペプチドの効果
関節リウマチ(RA)は、関節で発症する慢性炎症性疾患である。この疾患は、様々な期間及び強度の炎症の大発生によって進行する。特に、手及び手首において関節腫脹を引き起こす。通常誘導される、RAの幾つかの動物モデルが利用可能である。以下の報告は、RAの急性モデル、すなわち、モデルK/BxNマウスにおいて得られた結果を記載する。このマウスにおけるP140の潜在的効果を「治癒的」プロトコル及び「予防的」プロトコルにおいて試験した。
KRN及びMHCクラスII Ag7分子を発現するTCRトランスジェニックマウス(K/BxNマウス)は、重篤な炎症性関節炎を発現した。これらマウスの血清の健常レシピエントマウスへの投与は、約15日間にわたって炎症性関節炎を引き起し、ピークイグニッションは注射の約7日間後である。
K/BxN由来のマウス血清投与を2回実施した(0日目及び2日目)。血清の注射(100μL/マウス)は、8週間C57BL/6(又はB6)マウス(n=10);未処理マウス(n=10)において、腹腔内(ip)注射によって実施する。
P140ペプチド(100μg/100μL;iv 後眼窩)を以下の通り投与した。
治癒的処置:炎症性疾患のピークを導くために1日目及び4日目に注射する。予防的処置:−7日目及び−2日目に注射する。出血S0(0日目)後、6日間毎に瀉血を実施して血清を処分する。炎症がその基底レベルに戻ったとき、約20日間で試験を終了する(図21を参照)。
炎症のピーク中、毎日動物を評価し、そして、関節の腫脹スコアを確立する。それは、0〜4の範囲であり、そして、動物の関節の観察に基づいている。実際には、このスコアは、各肢について与えられ(4つの値)、そして、これら値を足し合わせて0〜16の範囲の全体スコアを得る(図22)。
この実験では、疾患の誘導は最適以下であった。疾患の臨床徴候の有意な増加は観察されなかった。
2日目(K/BxN血清の注射の2日間後、そして、血清K/BxNの2回目の注射の日)、マウスをP140 NaClで処理すると、体重が減少し始める(15及び10%)。5日目から、動物の体重が再度増加し始める:本発明者らは、5日目から研究の最後までの間にP140処理されたマウスでは20%体重が増加するが、一方、対照マウスでは、5%を超えて体重が増加することを認識する。これら2本の曲線間の差は統計的に有意であった(二要因分散分析)(図23)。
動物の肢のサイズの評価
右後肢:0日目〜6日目に後肢の幅が増加し、5〜6日目の30%が最高であることが分かる。6日目から、この増加は逆行し、そして、約10日目に正常に戻ることが分かる。これら2本の曲線間の差は統計的に有意であった(二要因分散分析)(図24)。
左後肢:肢の幅が約30%増加し、ピークは約5〜6日目であり、次いで、6日目から次第に正常に戻ることが分かる。これら2本の曲線間の差は統計的に有意であった(二要因分散分析)(図25)。
炎症スコアの評価
この実験のために、炎症スコアを各肢(左及び右の後肢)について独立に計算した。スコアは、P140で処理したマウス又は対照マウスのいずれについても最大わずか1.5を超える。*処理マウスについては、2本の曲線は、二要因分散分析において任意の統計的に有意な差を示さない(図26)。
この予備実験中に得られた結果によって、本発明者らは、次の実験の設計に非常に有用な幾つかの重要な点を特定することができた。
1) 炎症は、非常に穏やかであった(肢のサイズは少し増加、体重はほとんど減少せず、非常に低い炎症スコア)。K/BxN血清の投与モードを血清 100μL及びビヒクル(NaCl) 50μLから、ビヒクル無しの100μLに変更した。
2) 動物の2本の後肢のみを調べた。しかし、最終的には、前肢もほとんど疾患に罹患していることが観察された。次に、足のスライドにおいて測定された関節の高さについて動物の4本の肢を考慮する。
3) 次の実験では、動物の全体的な炎症スコアを計算する(4本の肢の個々のスコアを足す)。
予防的プロトコル:動物の体重の評価
動物の体重の分析は、P140で処理したマウスでは5%、そして、対照マウスでは10%の体重減少を示した。この体重減少は、初期相(1日目〜7日目)に生じる。対照と比べて処理マウスではわずかに早く元の体重に戻ることが分かる。しかし、2本の曲線間に統計的に有意な差はない(二要因分散分析)(図27)。
動物の肢のサイズの評価
右後肢:処理マウスでは約12%、そして、対照マウスでは約22%関節のサイズが増加する。この関節のサイズの増加は、0日目〜7日目に生じ、その後、次第に正常に戻る。2本の曲線がわずかに異なることが分かるが、統計的に有意な差はない(二要因分散分析)(図28)。
左後肢:処理マウスでは約15%、そして、対照マウスでは約30%関節のサイズが増加する。この増加は、0日目〜7日目に生じ、次いで、正常への回復が観察される。2本の曲線のずれがみられるが、統計的に有意な差はない(二要因分散分析)(図29)。
右前肢:後肢と同様に、0日目〜7日目に炎症が生じ、そして、7日目以降に正常に戻り、処理マウスは、右前肢の関節において中等度の腫脹を示し(+20%)、一方、対照マウスは、ほぼ45%の増加を示す。2本の曲線間の差は、二要因分散分析において統計的に有意である(p=0.0069;**)(図30)。
イグニッションのピークを分割することによって、これらの間の曲線の全体ではなく1日毎に比較した場合(独立t検定)(4日目〜12日目;図30及び図33)、本発明者らは、最高の炎症を観察し(7日目)、対照は、処理マウスよりも疾患により罹患している:p=0.0037;**。
左前肢:処理マウスは、関節のサイズにおいて20%の増加を示し、d’−そして、対照マウスは、’−’45%である。2本の曲線間の差は、二要因分散分析で統計的に有意である(二要因分散分析−p=0.0397;*)(図31)。また、本発明者らは、左前肢の関節サイズの成長曲線から炎症の枠組みを認識した。上述の曲線(図30)と比べて、それは約3日目〜10日目である。
炎症ピーク(7日目)において、対照は、処理マウスよりも疾患の臨床徴候を示すマウスが多いことが分かる:p=0.0064;**。上記表現(図31及び図34)は、対照と比べて処理マウスの左前肢のサイズの成長を毎日比較する(独立t検定)。
炎症スコアの評価
炎症スコアを各肢について独立に計算し(左及び右の後及び前肢)、次いで、足し合わせて、各マウスについての全体炎症スコアを得る(図32)。対照マウスのスコアは約7日目に最高に達し、一方、処理マウスは、5日目を超えない。枠組みは、両曲線において4〜12日目に認識され、これは、炎症スコアの周期を表す(図32及び図35)。2本の曲線は、統計的に有意である:p=0.0156;*(二要因分散分析)(図32)。
この研究では、RAを模倣するK/BxNモデルにおいてP140ペプチドの重要な効果を証明する。全ての臨床徴候(関節腫脹、体重減少、及び炎症スコアの出現)は、弱まる傾向がある。
予防的モデルにおいて、そして、統計的に有意な方式で、本発明者らは、処理マウスの体重減少が少なく、そして、より早く正常に戻り;肢における炎症が少なく、そして、その変形が限定されており;炎症が最高に達したとき、炎症スコアが急激に減少することが分かる。
治癒的モデルについては、本発明者らは、疾患の誘導が非常に緩やか又は更にはゼロであることが知られているので、P140ペプチドの効果についての結論を出すことができない。
特定の態様では、本明細書は、慢性炎症性疾患又はハイパーオートファジー関連自己免疫疾患若しくは障害の症状を処置するか又は改善させるための、有効量の配列番号1、2、4、5、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つのペプチドを含む組成物であって、該ペプチドにおける少なくとも1つのセリンがリン酸化されており、該組成物が、このような処置を必要としている患者に投与され、そして、該組成物が、該疾患又は障害の少なくとも1つの症状の処置又は改善に有効である組成物を提供する。
特定の態様では、本明細書は、慢性炎症性疾患又はハイパーオートファジー関連自己免疫疾患若しくは障害の症状を処置するか又は改善させる方法で使用するための、有効量の配列番号1、2、4、5、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つのペプチドを含む組成物であって、該ペプチドにおける少なくとも1つのセリンがリン酸化されており、該方法が、このような処置を必要としている患者に該組成物を投与することを含み、そして、該組成物が、該疾患又は障害の少なくとも1つの症状の処置又は改善に有効である組成物を提供する。
特定の態様では、本明細書は、慢性炎症性疾患又はハイパーオートファジー関連自己免疫疾患若しくは障害の症状を処置するか又は改善させるための医薬を調製するための、有効量の配列番号1、2、4、5、及びこれらの組合せから選択される少なくとも1つのペプチドの使用であって、該ペプチドにおける少なくとも1つのセリンがリン酸化されており、該組成物が、このような処置を必要としている患者に投与され、そして、該組成物が、該疾患又は障害の少なくとも1つの症状の処置又は改善に有効である使用を提供する。
本明細書に記載する態様又は実施態様のいずれかでは、ハイパーオートファジー関連自己免疫疾患又は障害は、ハイパーシャペロン介在性オートファジー(CMA)関連疾患又は障害である。
態様又は実施態様のいずれかでは、CMA関連疾患又は障害は、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ(RA)、筋ジストロフィー(MD)、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、神経精神ループス、クローン病(CD)、慢性炎症性脱髄性多発根神経障害(CIDP)、線維筋痛、II型糖尿病、多発性筋炎、肺疾患、及び慢性免疫性血小板減少症(ITP)からなる群から選択される。
本明細書に記載する態様又は実施態様のいずれかでは、医薬組成物は、約100ng〜約5mgの投薬量で投与される。
本明細書に記載する態様又は実施態様のいずれかでは、医薬組成物は、本明細書に記載する凍結乾燥ペプチドと、薬学的に許容し得る賦形剤とを含む。本明細書に記載する態様又は実施態様のいずれかでは、賦形剤は、マンニトールである。
本明細書に記載する態様又は実施態様のいずれかでは、ペプチドは、以下の構造を有する。
本明細書に記載する態様又は実施態様のいずれかでは、ペプチドは、以下の構造を有する。
本発明の好ましい実施態様を本明細書に図示及び説明したが、このような実施態様はほんの一例として提供されるものであることが理解される。多数の変形、変更、及び置換が、本発明の趣旨から逸脱することなく当業者によって行われる。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の趣旨及び範囲内で全てのこのような変形を網羅することを意図する。
本願を通して引用される全ての参照文献、特許、係属中の特許出願、及び公開特許の内容は、明示的に参照により本明細書に組み入れられる。
当業者は、単なるルーチンな実験を用いて、本明細書に記載する本発明の特定の実施態様に対する多くの均等物を認識するか又は解明することができる。このような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることを意図する。本明細書に記載する詳細な実施例及び実施態様は、例示目的のためだけに一例として与えられるものであって、決して本発明に対する限定であるとは考えられないことが理解される。それに鑑みて様々な変形又は変更が当業者に示唆され、そして、この出願の趣旨及び範囲内に含まれ、そして、添付の特許請求の範囲の範囲内であると考えられる。例えば、所望の効果を最適化するために成分の相対量を変更してもよく、追加成分を添加してもよく、及び/又は記載されている成分のうちの1つ以上を類似の成分に置換してもよい。本発明のシステム、方法、及びプロセスに関連する更なる有利な特徴及び機能は、添付の特許請求の範囲から明らかになる。更に、当業者は、単なるルーチンな実験を用いて、本明細書に記載する本発明の特定の実施態様に対する多くの均等物を認識するか又は解明することができる。このような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることを意図する。