JP2018501360A - 塩化物及び硫酸塩を含むヘマトキシリン溶液、並びに調製及び使用の方法 - Google Patents

塩化物及び硫酸塩を含むヘマトキシリン溶液、並びに調製及び使用の方法 Download PDF

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Abstract

本開示は、ヘマトキシリン染色製剤、特に全自動染色システムでの使用のための製剤に関する。開示される組成物は、保存下で典型的な安定性を有するが、高い染色品質及び十分に速い染色性能を有することが発見された。開示されるヘマトキシリン染色組成物は、溶媒系、ヘマトキシリン、化学酸化剤、及び媒染剤を含む。例示的な実施態様はまた、約2.5/1から約1/4の間のCl−/SO4−モル比を有する。【選択図】図4(B)

Description

本発明は、生物学的試料の組織化学的染色のための組成物及び方法に関する。より具体的には、本発明は分解に対する安定性が向上したヘマトキシリン製剤に関する。
ヘマトキシリンは、組織学、組織化学、組織病理学及び細胞学において、最も重要且つ最も使用される染料として記載されてきた。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色とパパニコロウ(PAP)染色を含む複数の組織化学的染色プロトコールは、ヘマトキシリン染料に依存して細胞学的及び組織試料を染色する。特に、細胞核のヘマトキシリン染色は、腫瘍生検試料中の悪性及び/又は転移性細胞の存在を検出するために、病理学者により使用される。ヘマトキシリン(haematoxylin)、ナチュラルブラック1、又はC.I.75290mとしても知られるヘマトキシリンは、例えばアカミノキの、アカミノキ属の木の赤い心材に見られる天然に存在する化合物である。ヘマトキシリンは、組織成分を染色する活性成分ではない。むしろ、ヘマトキシリンの酸化生成物であるヘマテインは、特に媒染剤との錯体形成上でヘマトキシリン染料溶液の活性染色成分となる。ヘマテイン−媒染剤錯体は、負の電荷を含有する化合物を結合させ、それらをダークブルー又はバイオレットに染色し、それは病理学者が生物学的試料中のこれらの負電荷含有構造を視覚化することを可能にする。
エールリッヒのヘマトキシリンは、青、ピンク及び赤の色合いに組織を染色するために使用されるため、広く使用されているヘマトキシリン製剤である。エールリッヒのヘマトキシリン製剤は、100mLの水、100mLのエタノール(100%)、100mLのグリセロール、10mLの氷酢酸、2gのヘマトキシリン、及び溶解度に基づく過度の硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン;AlK[SO]2・12HO)を含む。エールリッヒのヘマトキシリンを作製するために、成分を組み合わせ、およそ一か月間熟成させるようにする。製剤に応じて、空気及び日光への曝露に関与する熟成方法は、3か月以上かけて、細胞を染色するのに適した溶液を提供し得る。この方法は、非常にばらつきがあり、典型的には、臨床の全自動染色システムのためのヘマトキシリンの製造に関して十分な再現性がない。
ヘマトキシリンのヘマテインへの転換を促進するため、化学酸化剤が利用され得る。残念なことに、促進される過程はしばしばオキシヘマテインのような無効な反応生成物及び複雑な重合沈殿物を生成し、また天然に熟成される染料溶液より速く分解する溶液を提供する。ヘマトキシリンをヘマテインに定量的に酸化させるのに必要とされる正確な量の酸化剤が使用され、無効な生成物への過酸化を回避するのを助け得るが、染色が直ちに実施されない場合に、部分酸化された溶液がより典型的に利用される。部分酸化された溶液中で、化学酸化段階後に残存しているヘマトキシリンの天然の酸化は、染色の間に消費されるか又は無効な生成物に更に天然に酸化されるかのいずれかであるあらゆるヘマテインを継続して置き換えるであろう。それでもなお、ヘマテインの濃度(及び量)は経時的に変化し得る。
ヘマテインはヘマトキシリン溶液の活性染色成分であるため、経時的なその濃度(及び/又はその媒染剤錯体の濃度)の変化は染色の不一致につながる。
ヘマトキシリンは少なくとも一世紀の間、組織及び細胞のための染色剤として知られてきたが、全自動染色システムに適合する製剤は、最近発見されたばかりであった。手動染色は、典型的には、スライドに装着された試料をヘマトキシリン製剤を含有する容器に浸すか又は漬けることに関与する。この手順の第一の利点は、スライド上に沈着しないように、ボトル中に大きな沈殿物が落ちることである。手動染色手順において、ヘマトキシリン溶液のヘマテイン含量の変化は、目視検査に基づき、溶液との生物学的試料の接触時間を変えることにより補償され得る。例えば、明らかに染色不足の試料は、染色強度を増大させるための時間、ヘマトキシリン溶液中に単純に戻すことができる。自動染色手順においては、しかしながら、「目視」検査及び染色不足に応答しての曝露時間の延長は、高価な画像化装置を必要とし得、他の試料の処理を混乱させ得る。手動ヘマトキシリン染色のいくつかの実用上の利点にも関わらず、患者の安全に対する懸念、再現性、及び速さ/費用は、自動化されたヘマトキシリン染色の採用を急伸させてきた。患者の安全に対する懸念は、染色浴中それらのスライドへの接着を失う可能性があり、更には失うことである。これらの異質な試料は、次いで、誤診を招く可能性のある、同時に又は後に染色されるスライドに移動させられ得る。この問題に対する解決策は、二次汚染が不可能であるように、スライド表面上のパドルとしての使い捨ての染色試薬を提供することであった。全自動染色システムを介したスライドへの試薬の送達が、透明な沈殿物を保たなければならない配管装置を使用するため、オンスライド手法は、根本的に異なる染色製剤を要する。更に、ヘマトキシリン溶液は、市販の実行のための延長された保存期間を有するべきである。そして、高容量の全自動染色システムに関し、溶液は試料を染色するために5分以下、典型的には2分以下のみを有する可能性がある。従って、ヘマトキシリン自動染色溶液は、手動染色に適した製剤によっては満たされない独自の需要を有する。
本開示は、新規のヘマトキシリン染色組成物及びかかる組成物を使用したより効果的な組織染色法を記載する。本開示の一態様は、ヘマトキシリン溶液中の沈殿を防ぐことと同時に長期的な染色品質を改善することは、近年の多くの進歩をよそに、当分野で持続的な課題として残っていることである。本開示の別の態様は、ヘマトキシリンの安定性を高める化学添加剤又はあらゆる成分の使用は、非毒性で、環境に優しく、比較的低額であるべきであることである。したがって、本開示の一態様は、毒性のある、環境に有害な、比較的高額な成分を欠いている組成物である。沈殿物形成の速度を遅らせるための化学添加剤に依存する代わりに、本開示は、規定の対イオン比を有するヘマトキシリン溶液の調製により生じる優れた結果を記載する。別の態様によれば、対イオンとしてのサルフェートは沈殿物形成に有利に働く推定要因であると考えられ、対イオンとしてのクロリドの包含は問題の可能な解決策として発見された。特に、特定のクロリド/サルフェートの比(即ち、Cl/SO 2−モル比)は染色製剤として特に有利であることが発見された。
硫酸アルミニウムは、従来、ほぼ全てのヘマトキシリン製剤に使用されてきたが、これは、それから調製された溶液が比較的短期間で強い核染色を生成する点で優れているためであると考えられる。本開示の一態様は、硫酸アルミニウム及び塩化アルミニウムベースのヘマトキシリン溶液が知られているが、本明細書で開示される実施例は、塩化アルミニウムのみ又は硫酸アルミニウムのみを使用して調製されたヘマトキシリン溶液が、その二つの比を含む組成物より劣ることである。特に、塩化アルミニウムが硫酸アルミニウムの代替として使用される場合、硫酸アルミニウム製剤と比較して同様の染色特性を達成するために、ヘマトキシリンはより長い時間を要する。これらの塩化アルミニウム溶液が沈殿物の形成により耐性があると発見されたが、染色特性は容認しがたいほど遅かった。特定の理論に限定されるものではないが、この効果が達成されるメカニズムは、サルフェートと比較してクロリドのアルミニウムに対する結合親和性が大きいことに関することが理解される。より高い親和性の(より共有結合性又はより強い)アルミニウム−クロリド結合は、全てのヘマトキシリン溶液について溶液のpHを上げるのと同じ方法で、ヘマラム色相に影響を及ぼすことが発見された。染色色相はクロリド含有量により影響されることもまた決定された。より塩化のものは、染色色相を青から赤にさせる。サルフェートのみの製剤において、ヘマトキシリン色相は、pHが下がるにつれて(狭いpH範囲(例えば2.45−2.59)にわたってさえも)赤へシフトする。言い換えれば、より低いpHでのクロリドベースの製剤の色相は、より高いpHでの従来のサルフェート溶液の色相と同様であり、より低いpH値はヘマラム溶解度に有利に働くであろう。図1(C)に示すように、沈殿物に不利に働く、クロリドが許すより低い作用pH値で増加したプロトン濃度と共に、他の場合に個々のヘマラム分子間に起こる相互作用を妨げるように機能する、クロリドの「ブロッキング」効果があることが理解される。残念なことに、クロリドの存在(又はより低いpH値で可能な機能的染色)は沈殿物の形成を妨害するが、ヘマラムと組織との間の所望の相互作用も妨害しなければならないため、染色速度が遅くなることの原因でもある。
しかしながら、注意深い実験を通して、ヘマトキシリン製剤中の硫酸アルミニウムと塩化アルミニウムとの組み合わせは、サルフェート溶液として迅速且つ強く染色されるが、沈殿に対してはるかに耐性のある溶液を生成し得ることが発見された。更に、実施例は、クロリドによって提供される安定性の増強が、典型的には、公知の化学添加剤(例えば、ホスト化合物及び酸化防止剤)の使用によって与えられる利点を超えることを示す。これらの添加剤は依然として含まれていてもよいが、本明細書に開示されるサルフェート/クロリド比を使用する場合、それらの包含は必要ではない。更に別の態様において、本開示は、非毒性の(又は無害の)プロピレングリコールが、エチレングリコール又はエタノール(いくつかの機関が毒性/有害であるとして分類する成分)の代わりに、現在記載されるヘマトキシリン製剤において使用され得ることを示す。
Al(SO・nHOが媒染剤として使用されるヘマトキシリン溶液に存在するような、ヘマテイン及び二のアクア種によって錯化されたアルミニウムを含むヘマラム錯体を示す化学構造。 内部アルミニウム種が二のヘマテイン種によって錯化された、多数の(n)ヘマテイン錯体が鎖を形成するヘマトキシリン沈殿物のための提案構造を示すヘマラムオリゴマーを示す化学構造。 AlCl・6HOが少なくとも部分的に媒染剤として使用されるヘマトキシリン溶液に存在するような、ヘマテイン、一のアクア種、及び一のクロリド種によって錯化されたアルミニウムを含むヘマラム錯体を示す化学構造。 新たに調製された実施例1のヘマトキシリン溶液で染色された、4ミクロンの厚さの組織切片の連続切片の10倍に拡大して撮影された顕微鏡写真。 新たに調製された実施例4のヘマトキシリン溶液で染色された、4ミクロンの厚さの組織切片の連続切片の10倍に拡大して撮影された顕微鏡写真。 実施例9に記載の促進劣化(45℃、32日間)を受けた実施例1のヘマトキシリン溶液で染色された、4ミクロンの厚さの組織切片の連続切片の10倍に拡大して撮影された顕微鏡写真。 実施例9に記載の促進劣化(45℃、32日間)を受けた実施例4のヘマトキシリン溶液で染色された、4ミクロンの厚さの組織切片の連続切片の10倍に拡大して撮影された顕微鏡写真 図2(C)に示されるのと同一の切片であり、より近い視点(例えばデジタルズーム)で示されている。 図2(D)に示されるのと同一の切片であり、より近い視点(例えばデジタルズーム)で示されている。 接触している表面上のヘマトキシリン溶液の沈殿物を示す写真。ボトルが排水され、脱イオン水(DI水)ですすがれた後、5℃で32日間ヘマトキシリンを含有した(ポリエチレンテレフタレートグリコールで修飾された)二本のボトルを示し、左は実施例1に記載の製剤を含有したボトルを示し、右は実施例4の製剤を含有したボトルを示す。 接触している表面上のヘマトキシリン溶液の沈殿物を示す写真。60℃で7日間溶液を含有した後、全自動染色システムに見られるような種類(例えばパーフルオロアルコキシ樹脂(PFA))の管のループを示し、ループは、排水され、DI水ですすがれた。左の管は実施例1に記載の製剤を含有し、右の管は実施例4に記載の製剤を含有した。 実施例9に記載の促進劣化(45℃、32日間)を受けた実施例1のヘマトキシリン溶液で染色された、4ミクロンの厚さの組織切片の連続切片の顕微鏡写真。これにより、本明細書に記載される良い染色性能と劣った染色性能の差が更に説明され得る。 実施例9に記載の促進劣化(45℃、32日間)を受けた実施例4のヘマトキシリン溶液で染色された、4ミクロンの厚さの組織切片の連続切片の顕微鏡写真。これにより、本明細書に記載される良い染色性能と劣った染色性能の差が更に説明され得る。
I.用語:
特に記載がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を持つ。
単数形の「ある(a、an)」及び「該(the)」は、文脈が明らかに他を示さない限りは複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「あるホスト化合物(a host compound)」への言及は、2若しくはそれ以上のホスト化合物、3若しくはそれ以上のホスト化合物、又はさらに4若しくはそれ以上のホスト化合物のような一又は複数のホスト化合物を指す。
用語「抗酸化剤」は、第二の原子又は分子の代わりに優先的に酸化されるように、第二の原子又は分子より大きい酸化能を有する原子又は分子を指す。例えば、抗酸化剤はヘマテインより大きい酸化能を有し得、したがってヘマテインのオキシヘマテインへの酸化を予防するのを助ける。更に、抗酸化剤は、還元剤、例えばオキシヘマテインを再びヘマテインに転換する還元剤としてもまた機能し得る。
用語「水性溶媒」は、主成分として水を有し、室温で液体である組成物を指す。50%以上の体積含水量を有する水と一又は複数の低級アルカノール又はポリオールとの混合物は、水性溶媒の例である。例えば、エチレングリコール又はプロピレングリコールと水の溶液は、水性溶媒である。
用語「生物学的試料」は、動物のような生物学的実体から得られるか又は別の方法でそれらに由来するあらゆる試料、例えば、ヒト又はイヌ、ネコ、ウマ若しくはウシのような家畜動物から得られる試料を指す。生物学的試料の例は、細胞学的試料、組織試料及び生物学的流体を含む。生物学的試料の非制限的な具体的な例は、血液、尿、尿道球腺液、乳頭吸引液、精液、乳汁、喀痰、粘液、胸水、骨盤液、滑液、腹水、体腔洗浄液、アイブラッシング、皮膚擦過物、頬側スワブ、膣スワブ、パップスメア、直腸スワブ、吸引物、針生検、例えば外科手術若しくは剖検により得られる組織の切片、血漿、血清、髄液、リンパ液、汗、涙液、唾液、腫瘍、臓器及びin vitro細胞若しくは組織培養物から得られる試料を含む。典型的には、試料は、固定され、水を除去するために処理され、組織切片に切断するためにパラフィン若しくは別の適する蝋様物質に包埋された生検試料であるであろう。生物学的試料は、処理及び/又は検査のため顕微鏡スライドのような支持体上に装着され得る。
本明細書で使用される「ヘマトキシリン組成物」という用語は、ヘマテイン(ヘマトキシリンの酸化生成物)を溶媒に直接溶解することにより形成される組成物と、ヘマトキシリンを溶媒に溶解すること及びヘマトキシリンのヘマテインへの酸化を可能にする又は促進することにより形成される組成物との双方を包括的に指す。開示される組成物を、ヘマトキシリンを溶媒に溶解すること及び空気との接触による天然の酸化若しくは加速された化学的酸化によりヘマトキシリンをヘマテインに(完全に、若しくは部分的に、のいずれかで)転換することにより調製することがより典型的であるが、開示される組成物成分の安定化効果の利益は、溶媒にヘマテインを直接溶解することにより調製されるヘマテイン組成物と組合せでもまた利用され得る。したがって、いくつかの態様において、「ヘマトキシリン組成物」は、少なくとも最初にヘマトキシリンをほとんど若しくは全く含まず、主としてヘマテインから成るであろう。様々な成分のモル濃度が、本明細書において開示される。これらの濃度は、処方された時点及び作製された時の濃度を反映すると理解される。これらの成分の濃度は、様々な平衡バイアスされた反応に従って経時的に変化するであろう。したがって、濃度は処方又は作製された時点で記載される可能性がある。この手法は、経時的に熟成する傾向があるという事実のために、本明細書に記載された解決策を説明するための最も明確で正確な方法であると理解される。
「ホスト化合物」という用語は、内部空洞部分若しくは溝部分を有する有機若しくは無機の分子、複合体又は物質、より具体的には、ヘマテイン若しくは他の色素分子の少なくとも一部分を収容し得る内部空洞部分又は溝部分を有する分子を指す。ホスト化合物は、アミロース、シクロデキストリンのような多糖類及び複数のアルドース環を含有する他の環状若しくはらせん状化合物、例えば(ブドウ糖、果糖、及びガラクトースのような)単糖類並びに(ショ糖、麦芽糖、及び乳糖のような)二糖類の1,4及び1,6結合を通して形成される化合物を含む。他のホスト化合物は、クリプタンド、クリプトファン、キャビタンド、クラウンエーテル、デンドリマー、ナノチューブ、カリックスアレーン、バリノマイシン及びナイジェリシンを含む。特定の態様において、ホスト化合物はシクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体であり得る。安定化したヘマトキシリン溶液に関する開示に関して、参照によりその全体が組み込まれている米国特許第8551731号は、ホスト化合物及びヘマトキシリン溶液の安定化におけるその使用を広く開示する。ホスト化合物がヘマトキシリン溶液を安定化させるのに有効である、その一方、それらは高額である傾向があり、沈殿物が組織に残る。本明細書で示される実施例において、コントロール組成物(ANSヘマトキシリンと称する。)は、現在知られている最もよく知られた自動化ヘマトキシリン製剤を表すように、米国特許第8551731号において開示される方法に従って作製される。
ホスト化合物は、一又は複数の置換基で修飾された、シクロデキストリン誘導体、アミロース誘導体、クリプタンド誘導体、クリプトファン誘導体、キャビタンド誘導体、クラウンエーテル誘導体、デンドリマー誘導体、ナノチューブ誘導体、カリックスアレーン誘導体、バリノマイシン誘導体及びナイジェリシン誘導体を含み得る。例えば、ホスト化合物は、構成要素のアルドース環のヒドロキシル基若しくはヒドロキシル基の水素原子の一又は複数が置換基で置き換えられているアミロース誘導体及びシクロデキストリン誘導体を含む。置換基の例は、アシル基(アセチル基等)、アルキル基、アリール基、トシル基、メシル基、アミノ基(一級、二級、三級及び四級アミノ基を含む。)、ハロ基(−F、−Cl、−Br及び−I)、ニトロ基、リン含有基、(リン酸及びアルキルリン酸基等)イオウ含有基(硫酸及び硫酸エステル基等)、架橋基(例えば、シクロデキストリン環の二若しくはそれ以上のヒドロキシル位置を結合する、又は二若しくはそれ以上のホスト化合物を結合するもの。)、アルデヒド基、ケトン基、オキシム基、カルボン酸基及びそれらの誘導体、カーボネート及びカルバメート基、ケイ素含有基、ホウ素含有基、スズ含有基、並びにヒドロキシアルキル基(ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基等)を含む。
シクロデキストリンの特定の例は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン及びδ−シクロデキストリン、並びにこれらの分類のシクロデキストリンのそれぞれの誘導体を含む。シクロデキストリン誘導体の特定の例は、ヒドロキシプロピル化α−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル化β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル化γ−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル化α−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル化β−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル化γ−シクロデキストリン、ヒドロキシイソプロピル化α−シクロデキストリン、ヒドロキシイソプロピル化β−シクロデキストリン、ヒドロキシイソプロピル化γ−シクロデキストリン、カルボキシメチル化α−シクロデキストリン、カルボキシメチル化β−シクロデキストリン、カルボキシメチル化γ−シクロデキストリン、カルボキシエチル化α−シクロデキストリン、カルボキシエチル化β−シクロデキストリン、カルボキシエチル化γ−シクロデキストリン、オクチルコハク酸化α−シクロデキストリン、オクチルコハク酸化β−シクロデキストリン、オクチルコハク酸化γ−シクロデキストリン、アセチル化α−シクロデキストリン、アセチル化β−シクロデキストリン、アセチル化γ−シクロデキストリン、硫酸化α−シクロデキストリン、硫酸化β−シクロデキストリン及び硫酸化γ−シクロデキストリンを含む。シクロデキストリン誘導体の他の特定の例は、以下のβ−シクロデキストリン誘導体:2,3−ジメチル−6−アミノメチル−β−シクロデキストリン、6−アジド−β−シクロデキストリン、6−ブロモ−β−シクロデキストリン、6A,6B−ジブロモ−β−シクロデキストリン、6A,6B−ジヨード−β−シクロデキストリン、6−O−マルトシル−β−シクロデキストリン、6−ヨード−β−シクロデキストリン、6−トシル−β−シクロデキストリン、パーアセチル−マルトシル−β−シクロデキストリン、6−t−ブチルジメチルシリル−β−シクロデキストリン、2,3−ジアセチル−6−ブチルジメチルシリル−β−シクロデキストリン、2,6−ジブチル−3−アセチル−β−シクロデキストリン、2,6−ジブチル−β−シクロデキストリン、2,6−t−ブチル−ジメチルシリル−β−シクロデキストリン及び2,6−ジ−O−メチル−3−アリル−β−シクロデキストリンを含む。多様なシクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体は、例えばCTD,Inc.(フロリダ州ハイスプリングス)から商業的に得ることができるか、又は、それらは学術文献、例えば「Synthesis of Chemically Modified Cyclodextrins」,Croft and Bartsch,Tetrahedron,39:1417−1474,1983に概説される手順に従って合成され得る。
用語「低級アルカノール」は、式R−OH(ここでRは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基又はネオペンチル基等の1から5個の間の炭素原子を有するアルキル基である)を有する化合物を指す。低級アルカノールの例はメタノール、エタノール及びイソプロパノールを含む。
用語「酸化剤」は、第二の分子より大きい還元能、例えばそれがヘマトキシリンと反応し且つヘマテインに酸化することができるようなヘマトキシリンより大きい還元能を有する原子又は分子を指す。酸化剤は、ヘマトキシリンに拡散し且つヘマトキシリンを酸化する大気中の天然に存在する分子酸素、及び(典型的に溶液中の)ヘマトキシリンと能動的に結合してヘマトキシリンの少なくとも一部分をヘマテインに転換「化学酸化剤」を含む。有用な化学酸化剤の例は、ヨウ素酸塩(ヨウ素酸ナトリウム及びヨウ素酸カリウム等)、酸化第二水銀、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム等)、過ヨウ素酸塩(過ヨウ素酸ナトリウム及び過ヨウ素酸カリウム等)、並びに過酸化物(過酸化水素等)の一又は複数を含む。特定の態様において、化学酸化剤はヨウ素酸ナトリウムを含む。
用語「媒染剤」は、色素(ヘマテイン等)が、核DNA、ミエリン、弾性及びコラーゲン繊維、筋線条及びミトコンドリア等の特定の細胞成分に色素(ヘマテイン等)を結合するのに役立つ複合体(陽イオン性複合体等)を形成し得る、イオン性金属種を指す。媒染剤の例は、(例えば硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、又は塩化アルミニウムのようなミョウバンの形態の)アルミニウム、鉄、タングステン、ジルコニウム、ビスマス、モリブデン(リンモリブデン酸又はモリブデン酸)、バナジウム(バナジン酸塩)を含む。
II.概要
アルミニウムヘマトキシリンの溶液は分解しやすく、製剤調製後数日の早い時期に、溶液中又はスライド上で検出することができる、ますます著しい量の沈殿物を経時的に形成する。図1(A)は、酸性溶液中の硫酸アルミニウム媒染剤に由来するヘマラム構造を示す。ヘマラムは、示されるようにヘマテイン及び水によって錯化される。図1(B)に示されるものは、ヘマラムの凝集体から構成されるヘマラム沈殿物の提案構造であり、正の電荷を持つ染料種は活性であり、ここでnは1より大きい整数である。染色された組織標本スライド上で、ヘマトキシリン沈殿物は様々な形態を示し得、直径で4−5ミクロンの離散的な微結晶性の不透明なスポットから直径で100ミクロンを超える不透明なシート(例えば顕微鏡を使用しなくても明白なもの)にわたる。沈殿物は、図2に示されるような負の電荷を持つ組織成分上に回収する(即ち、それと結びつく)傾向がある。沈殿の速度を速めると理解される要因は、約2.3を超えるpH値、上昇した温度、凍結/解凍サイクル、温度変化、高ヘマラム濃度、及び時間の延長を含む。このように、低いpHを維持すること、安定した温度を維持すること、及びヘマトキシリン濃度を低下させることは、沈殿速度を低下させるのに使用されてきた。更に、化学的安定化の手法は、最近記載された(米国特許第8551731号を参照のこと)。
溶液それ自体において、沈殿物は、空気/液体接触面、又は表面/容器接触面(例えばボトル若しくは管の表面上)のいずれかの接触面で蓄積する傾向がある。これは、接触している表面上のヘマトキシリン溶液の沈殿物を示す写真である図3(A−B)で見られる。図3(A)は、ボトルが排水され、DI水ですすがれた後、5℃で32日間ヘマトキシリンを含有した(ポリエチレンテレフタレートグリコールで修飾された)二本のボトルを示し、左は実施例1に記載の製剤を含有したボトルを示し、右は実施例4の製剤を含有したボトルを示す。図3(B)は、60℃で7日間溶液を含有した後、全自動染色システムに見られるような種類(例えばPFA)の管のループを示し、ループは、排水され、DI水ですすがれ、左は実施例1に記載の製剤を含有したボトルを示し、右は実施例4の製剤を含有したボトルを示す。ヘマトキシリン溶液は、製品包装物のような表面上に沈殿する傾向があり、コーティングを形成し、コーティングは銅色で、及び/又は金属光沢を有するとして現れる。沈殿物の蓄積は、結果として、溶液の外観に大きな変化をもたらし、これらの溶液を用いた許容される染色は、非実用的となる。沈殿物の溶解及び防止は、例えば酸性化又はキレート化により可能であるが、これらの手法は、染色品質及び染色の診断的有用性に悪影響も及ぼすため、染料溶液には直接適用することができない。これらの理由により、自然熟成は使用することができず、ヘマトキシリン溶液は、典型的には必要な場合にのみ調製され、使用後はすぐに破棄される。
自動化染色プラットフォーム等でより長い溶液寿命が必要とされる場合、複数の方法が開発され、長期的な染色特性を維持する一方で沈殿物形成の速度を低下させてきた。最も一般的には、ヘマトキシリン溶液は不足当量論的な量の酸化剤(通常、ヨーデート(iodate))を使用して調製され得る。これは、当初形成される可能な総量よりも少ないヘマラムをもたらし、溶液中に未反応の色素前駆体を残す。残存するヘマトキシリンの、実際にアルミニウムを結合してヘマラム染料を形成する成分であるヘマテインへの遅い「熟成」(空気酸化)は、より低濃度のヘマラムがいかなる所与の時点でも溶液中に存在するため、沈殿物の形成及び蓄積を遅らせる。抗酸化剤の製剤(例えばヒドロキノン)への包含はまた、熟成工程を遅らせ得、沈殿物形成に関する更なる製剤安定性を提供し得る。一般的ではないが、ベータ−シクロデキストリン等の化学添加剤はまた、沈殿物形成の速度を遅らせるために導入され得る。添加剤は、凝集と動力学的に競合する可逆的な化学経路を提供することにより機能し、それにより、沈殿の速度は遅くなる。ベータ−シクロデキストリンの場合、溶液中のヘマラム分子は、添加剤と共に弱い錯体を形成し、ヘマラム分子が互いに錯体を形成する可能性を低下させる。残念なことに、熱力学的に望ましい生成物(沈殿物)は、依然として最終的には添加剤を用いない場合と同じ量で得られるであろうが、速度は低下する。
ヘマトキシリン溶液の革新は、若松菊男(Wadamatsu Kikuo)による公開特許公報第2014−59282号で最近開示された。「Antimicrobial Hematoxylin Solution and Expanded Antimicrobial Hematoxylin Solution(抗菌ヘマトキシリン液及び拡張抗菌ヘマトキシリン液)」と翻訳され得るこの公開特許公報は、抗菌/抗真菌特性を示すとされるヘマトキシリン溶液の調製を開示する。ヘマトキシリン組成物は細菌又は真菌に感染しやすいと広く知られていないため、抗菌ヘマトキシリンの開示は、若干不可解である。記載される溶液は、塩化アルミニウム六水和物を5.0g;ヘマトキシリンを1.5g;ヨウ素酸ナトリウムを0.3g;エタノールを30mL;水を870mL;グリセロールを100mL含有する。ヨーデートの存在及び成分の相対量を除いて、この式は、塩化アルミニウムを媒染剤として使用する手動染色のために処方されたヘマトキシリン溶液であるMayerのムシヘマテインに強く類似している。他の一般的な塩化アルミニウム含有製剤は、ロザス(Rozas)鉄ヘマトキシリンであり、それは共媒染剤として硫酸鉄アンモニウムも含有する。
出願人はMayer製剤を参照し、具体的には、典型的なアルミニウム媒染剤である硫酸アルミニウムカリウム(カリウムミョウバン)よりも容易に(速く)溶解するため、塩化アルミニウムが使用されたことを述べている。なぜこの製剤がより微生物/真菌に耐性があるのかについて明確には開示されていないが、過剰な量のAl(III)が既に溶液にあり、溶液のpHを低下させることによりヨーデートの酸化電位を上昇させた後に(1)使用される多量のヨーデート(他の製剤で使用される量の上限)及び(2)製剤化の最後でのヨーデートの添加から理解される。クロリドが微生物/真菌耐性に関連があることを示唆するものは全くない。むしろ、ヨーデートは消毒剤として知られ、高濃度はより良い殺菌特性を自然ともたらすであろう。添加の順序に関し、ヨーデート(IO )はヘマトキシリンを酸化させ、ヨージド(I)が最終生成物として形成される。いくつかのヨージドは、残存するヨーデートにより元素ヨウ素(I)に酸化されるこの工程は、溶液中の過剰なAl(III)により触媒される。例えば、当方の実験はヨーデートが報告されたのと同じ順序で添加された場合、顕著な量のヨウ素が必然的に形成され、容器中で明確に観察できた。これは当方の製剤には好ましくないため、ヘマトキシリンを生産するための当方の工程は、アルミニウムが添加される前のヘマトキシリンの酸化を定める。
更に、公開特許公報第2014−059282号は、クロリド製剤では染色は遅いことを開示しており、これは当方の結果と完全に一致している。この遅い染色に対抗するために、公開特許公報第2014−059282号は、ヘマトキシリン及びヨーデートの添加前に、塩化アルミニウムの溶液と硫酸アルミニウムの溶液とを混合することを開示している。この溶液は、その特許書類中で「拡張抗菌ヘマトキシリン液」(EAHS)と称される。しかしながら、開示された組成物は、本明細書に開示される全自動染色システムに関しては、依然としてあまりにもゆっくりと組織を染色する。その開示はまた、約2.5/1から約1/2の間のCl/SO 2−モル比が安定性に重要であることを提案していない。
III.ヘマトキシリン組成物
例示的な実施態様において、ヘマトキシリン染色組成物は、約2.5/1から約1/4の間のクロリド/サルフェート(Cl/SO 2−)モル比を有する、溶媒、ヘマトキシリン、少なくともヘマトキシリンの一部を媒染剤に転換させるのに十分な量の化学酸化剤を含む。例示的な実施態様において、ヘマトキシリン組成物は、Cl及びSO 2−を更に含み、Cl/SO 2−モル比が約2.5/1から約1/4の間である、溶媒、ヘマトキシリン、少なくともヘマトキシリンの一部をヘマテインに転換させるのに十分な量の化学酸化剤、媒染剤を含む。一実施態様において、媒染剤は、Mが一価の陽イオンである、Al(SO、Al(SO・16HO、AlM(SO・12(HO)、Al(SO・6HO、Al(SO・18HO、又は[Al(HO)(SO・5HOを含む。一価の陽イオンの非制限的な例は、Li、Na、K、Cs、NH 等を含む。
一実施態様において、媒染剤はAlCl又はAlCl・6HOを含む。別の実施態様において、媒染剤は、Mが一価の陽イオンである、Al(SO、Al(SO・16HO、AlM(SO・12(HO)、Al(SO・6HO、Al(SO・18HO、[Al(HO)(SO・5HO、AlCl又はAlCl・6HOを含む。一実施態様において、組成物は約2/1から約1/2の間のCl/SO 2−モル比を有する。別の実施態様において、組成物は約1.5/1から約1/1.5の間のCl/SO 2−モル比を有する。更に別の実施態様において、組成物は約1/1のCl/SO 2−モル比を有する。一実施態様において、化学酸化剤はヨウ素酸ナトリウムである。
例示的な実施態様において、ヘマトキシリン染色組成物は、約0.01Mから約0.05Mの間のヘマトキシリンのモル濃度であるように作製される。別の実施態様において、組成物は、約0.02Mから約0.04Mの間のヘマトキシリンのモル濃度であるように作製される。更に別の実施態様において、組成物は、約0.03Mのヘマトキシリンのモル濃度であるように作製される。別の実施態様において、組成物は、約0.001Mから約0.01Mの間のヨウ素酸ナトリウムのモル濃度であるように作製される。別の実施態様において、組成物は、約0.003Mから約0.008Mの間のヨウ素酸ナトリウムのモル濃度であるように作製される。一実施態様において、組成物は、約0.005Mのヨウ素酸ナトリウムのモル濃度であるように作製される。別の実施態様において、組成物は約0.1Mのアルミニウムである。別の実施態様において、組成物は約0.1Mのアルミニウムのモル濃度であるように作製される。更に別の実施態様において、組成物は約0.1Mより大きいアルミニウムのモル濃度であるように作製される。別の実施態様において、組成物は約4/1から約1/1の間のアルミニウム/ヘマトキシリンモル比を有する。一実施態様において、組成物は約3/1から約1.5/1の間のアルミニウム/ヘマトキシリンモル比を有する。別の実施態様において、組成物は約2/1のアルミニウム/ヘマトキシリンモル比を有する。更に別の実施態様において、組成物は約0.01Mから約0.1Mの間のクロリドである。一実施態様において、組成物は約0.02Mから約0.08Mの間のクロリドである。別の実施態様において、組成物は約0.4Mのクロリドである。
例示的な実施態様において、ヘマトキシリン染色組成物中のヘマトキシリンは、約0.01Mから約0.05Mの間のモル濃度を有する。別の態様において、ヘマトキシリン染色組成物中のヘマトキシリンは、約0.02Mから約0.04Mの間のモル濃度を有する。更に別の実施態様において、ヘマトキシリン染色組成物中のヘマトキシリンは、約0.03Mのモル濃度を有する。別の実施態様において、組成物は、約0.001Mから約0.01Mの間のモル濃度を有する、ヨウ素酸ナトリウムを含む。別の実施態様において、組成物は、約0.003Mから約0.008Mの間のモル濃度を有する、ヨウ素酸ナトリウムを含む。一実施態様において、組成物は、約0.005Mのモル濃度を有する、ヨウ素酸ナトリウムを含む。別の実施態様において、組成物は、アルミニウムが約0.1Mのモル濃度を有する、アルミニウムを含む。更に別の実施態様において、組成物は、アルミニウムが約0.1Mより大きいモル濃度を有する、アルミニウムを含む。
別の実施態様において、組成物は、約0.01Mから約0.1Mの間のクロリドのモル濃度であるように作製される。一の実施態様において、組成物は、約0.02Mから約0.08Mの間のクロリドのモル濃度であるように作製される。別の実施態様において、組成物は、約0.04Mのクロリドのモル濃度であるように作製される。
別の実施態様において、ヘマトキシリン染色組成物中のクロリドは、約0.01Mから約0.1Mの間のモル濃度を有する。別の実施態様において、ヘマトキシリン染色組成物中のクロリドは、約0.02Mから約0.08Mの間のモル濃度を有する。更に別の実施態様において、ヘマトキシリン染色組成物中のクロリドは約0.04Mのモル濃度を有する。
一実施態様において、組成物は、多糖類、クリプタンド、クリプトファン、キャビタンド、クラウンエーテル、デンドリマー、ナノチューブ、カリックスアレーン、バリノマイシン、又はナイジェリシンを実質的に欠いている。別の実施態様において、組成物は抗酸化剤を実質的に欠いている。一実施態様において、組成物のpHは約2から約2.7の間である。別の実施態様において、組成物のpHは約2.2から約2.6の間である。
IV.ヘマトキシリン組成物の作製方法
例示的な実施態様において、ヘマトキシリン製剤の作製方法は、ヘマトキシリンを溶媒に添加すること;少なくともヘマトキシリンの一部をヘマテインに転換させるのに十分な量の化学酸化剤を添加すること;製剤が約2.5/1から約1/4の間のCl/SO 2−モル比を有する、媒染剤及び対イオンを添加することを含む。一実施態様において、媒染剤は、Mが一価の陽イオンである、Al(SO、Al(SO・16HO、AlM(SO・12(HO)、Al(SO・6HO、Al(SO・18HO、[Al(HO)(SO・5HO、AlCl又はAlCl・6HOの混合物を含む。
本明細書に記載されるヘマトキシリン組成物は、この一般的な方法:
1.水溶液にヘマトキシリンを添加/溶解する
2.化学酸化剤を添加/溶解する
3.媒染剤を添加/溶解する
4.必要であれば、Cl/SO 2−モル比を修飾する
5.必要であれば、更に添加剤を添加する
に従って作製される。
したがって、ある実施態様において、ヘマトキシリン製剤の作製方法は、ヘマトキシリンを溶媒に添加すること;少なくともヘマトキシリンの一部をヘマテインに転換させるのに十分な量の化学酸化剤を添加すること;媒染剤及び対イオンを添加し、Cl/SO 2−モル比を約2.5/1から約1/4の間のモル比に修飾することを含む。
特定の工程は、この順序で開示されているが、異なる順序でもなされ得る。例えば、ヘマトキシリンは第一の溶液中で調整され得、残りの成分は第二の溶液中で作製され得る。最終組成物は、次いで、溶液を混合することにより調整され得る。更に、媒染剤、酸化剤、及び更なる添加剤は、最小限の影響のみを及ぼす異なる順序で作製され得る。これに対する例外は、ヘマトキシリンへの化学酸化剤の添加である。少なくともあまり知られてはいないが、いくつかの実施態様によれば化学酸化剤は媒染剤より前に添加されるべきであると考えられる。特定のその他成分が、Cl/SO 2−モル比を修飾するのに使用される可能性がある。例えば、あらゆるクロリド含有塩は、Cl/SO 2−モル比を修飾するのに使用される可能性がある(例えばNaCl)。代わりに、硫酸アニオン及び塩素アニオンの両方を有するアルミニウム塩である、クロロ硫酸アルミニウムが媒染剤として使用される可能性があり、次いで、適切であれば、塩が使用され、Cl/SO 2−モル比を更に修飾し得る。適切なCl/SO 2−モル比を得るための別の手法は、製剤中のあらゆる成分の塩化物塩を使用すること(例えば、通常の遊離塩基の代わりに成分の塩酸塩を使用すること)である。
いくつかの場合、本明細書に記載される組成物を使用するこれらの方法は、安定性の利点も同様に提供し得る。更に別の手法において、クロリド対イオンを有する酸が添加され、Cl/SO 2−モル比及びpHの両方を調整し得る。しかしながら、この手法を使用して添加され得るクロリドの量は、溶液のpHの制限により限定されるであろう。特に、ヘマトキシリン溶液のpHは、有益には約2から約2.7の間、又は約2.2から約2.6の間である。
V.ヘマトキシリン組成物の使用方法
例示的な実施態様において、生物学的試料を全自動染色システムを用いて染色するための方法は、全自動染色システムを使用して生物学的試料を本明細書に記載されるヘマトキシリン組成物に接触させることを含む。一実施態様において、方法は、試料を対比染色剤に接触させることを更に含む。別の実施態様において、対比染色剤はエオシンY、オレンジG、ライトグリーンSFイエローイッシュ、ビスマルクブラウン、及びファストグリーンFCFからなる群より選択される。別の実施態様において、試料をヘマトキシリン組成物に接触させることを含む方法は、進行的なヘマトキシリン染色プロトコールを含む。別の実施態様において、試料をヘマトキシリン組成物に接触させることは、退行的なヘマトキシリン染色プロトコールを含む。更に別の実施態様において、生物学的試料は基質上で支持される。一実施態様において、基質は顕微鏡スライドを含む。別の実施態様において、生物学的試料は、組織切片又は細胞学試料を含む。一実施態様において、方法はヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色法を含む。別の実施態様において、方法はパパニコロウ(PAP)染色法を含む。
全ての染色は、自動化染色機器を使用して行われた。機器は、自動化カバースリップ及び加熱硬化(92℃)のために使用された。全ての研究における組織スライドは、単一のスライドに装着された五つの異なる組織(肝臓、皮膚、腎臓、扁桃腺、小腸)を特色とするSymphony SystemMulti−Block Test Slides(P/N 1707100)であった。多くの研究は、試験及びコントロール製剤の両方の同時適用を使用した。コントロール製剤はANSとして記載され、実施例1に記載される。連続した組織片の無作為化された対は、組織形態の変化を最小化するために使用された。
様々な染色パラメーターが試験されたが、各研究に関して最も一般的に使用される手順は、2分間のヘマトキシリンインキュベーション(H2)、30秒間の酸洗浄(A30)、120秒間のエオシンインキュベーション(E120)及び70秒間の分化(D70)を特色とする、標準「中間」レベル染色プロトコールH2A30E120D70として記載される。しかしながら、追加の研究は、標準「低」及び「高」レベル染色プロトコールである、それぞれH1A180E30D70及びH10A30E420D70を使用し、試験製剤が、全てのプロトコールにわたる染色品質に関して、適切にANSに合致できたことを裏付けた。試験及びコントロールヘマトキシリン溶液を用いて処理された少なくとも8(しかし大抵の場合は16)対の連続して切断された組織は、次いで、盲検フォーマットで病理学者に提示され、フィッシャーの直接確率検定を使用して決定される変化に関する統計的有意性を可能にする分化の数及び程度を評価した。
自動化染色機器は、少ない非特異的シグナルを含むスライドを生成するために、スライド上にヘマトキシリンを置く前に、現在、典型的にはヘマトキシリンをフィルターにかける。本明細書に記載される手順の別の態様は、一次ヘマトキシリンフィルターは、溶液中のあらゆる沈殿物がスライド上に現われるように、除去されたことである。したがって、本開示による組成物を使用するための方法の一態様は、試料にフィルターされていない組成物を添加することである。本明細書、特に実施例4に記載される例となる組成物は、実施例1の組成物に見られるような、スライド上の沈殿物を示さないことが観察された。更に、全自動染色システムのハードウェアは同様に、組成物が保存され、6週間以上の連続使用のための染色に使用された後でさえも、明らかな沈殿物が存在しないままであった。
以下の実施例は、実施態様及び一般的なプロトコールの特定の具体的な特徴を説明するために提供される。本発明の範囲は、以下の実施例により実証される特徴に限定されない。
実施例1
ANSヘマトキシリン製剤は、Al(SO・nHOの媒染剤としての使用に基づいており、ベンタナのシンフォニー全自動染色システムを使用する自動化H&E染色のために具体的に最適化された。製剤は米国特許第8551731号に開示されるものに基づく。このヘマトキシリン製剤は以下の製剤:
Figure 2018501360
に従って作製した。
組成物を以下の手順:
1.水とエチレングリコールの溶液にヘマトキシリンを添加/溶解する
2.ヨウ素酸ナトリウムを添加/溶解する
3.Al(SO・16HOを添加/溶解する
4.ヒドロキノン及びβ−シクロテキストリンを添加/溶解する
に従って作製した。
この組成物は、最もよく知られた組成物であるため、自動化染色性のベンチマークとして使用した。この組成物は、およそ2分間でスライド上に適切な染色を送達することができる。組成物はよく染色し、正しい色相及び深さを有し、且つ十分な長期的安定性を有するが、全ての点では理想的ではない。特に、この組成物は経時的に沈殿し、この影響は染色機器のラインに悪影響を及ぼす。これは適切なメンテナンス及びクリーニングを通して緩和できるが、メンテナンス及びクリーニングの頻度と程度は大きすぎると考えられる。更に、沈殿物は、染色されたスライド上に見えるようになる可能性があり、更に見える可能性がある。沈殿物は見えるが、成功する課題を生み出さず、従って、美的観点から当初はこの組成物のマイナスの側面である。ヒドロキノン及びβ−シクロデキストリンの添加によって、組成物は比較的高額な費用を有することになる。そして、ヒドロキノンは、いくつかの管轄において発がん性物質として分類されてきた。ANSヘマトキシリンを使用する典型的な染色は、図2(A)で見ることができる。図2(A)は、以下のプロトコール下で染色された。
機能的染色は、フィルターされていないヘマトキシリン溶液を使用するシンフォニー「5−in−1」試験スライド上で評価された。
実施例2
1/0(即ち100%のCl)のCl/SO 2−モル比を有するヘマトキシリンが作成された。Al(SO・16HOの代わりにAlCl六水和物が使用されたことを除き、実施例1で使用されたのと同一の成分及び濃度が使用された。
Figure 2018501360
この組成物は非常に安定していることが観察されたが、染色中、非常に遅い反応速度を有することも観察された。このように、通常に動作条件下の染色について、染色は非常に薄い。
実施例3
1/1(即ち50%のCl)のCl/SO 2−モル比を有するヘマトキシリンが作成された。そのような製剤化において、SO 2−は、ANS−Clからのその完全な除去が劣等の染色(染色の深さ及び色相)並びに(例えば自動化染色が非常に遅い)許容できない反応速度をもたらすため、含まれた。更に、ヘマトキシリンの濃度は増加され、Clの存在により阻害されると理解された反応速度が増加された。
Figure 2018501360
製剤は、高品質の染色及び十分な染色速度を示した。複数の実験後、ANSと比較してより高濃度のヘマトキシリンは、染色の速度がANSベンチマークに適合することを確実にするために使用され得ると結論付けられた。組成物が、ANSに含まれるようにβ−シクロデキストリンか又はヒドロキノンのいずれかを含まずに、延長された時間、十分に安定していることが観察された。この製剤が、Cl濃度の影響であると理解される、劇的に遅延した沈殿の開始を有することも発見された。
実施例4
ANS−Cl−50の染色性能及び速度はANSのベンチマーク性能を満たすか又は超えるが、実施例4は更なる高性能を有することが発見された。
Figure 2018501360
この製剤は、染色品質、染色反応速度、及び安定性に関して、ANS−Cl−50の性能を超えたが、公知の危険物質であるエチレングリコールを含んでもいなかった。非毒性のプロピレングリコールはエチレングリコールと置換することができるが、染色品質を相乗的に改善し且つ染色速度を増加させる。当方の実験結果は、1:1より大きいCl/SO 2−モル比は安定性を高めるが、遅い染色速度を犠牲にするであろうことを立証した。この組成物に関して観察された安定性の強化が十分であったため、遅い反応速度は正当化できなかった。しかしながら、そのような組成物は、追加の時間、温度、又は反応速度が提供された有益な染色組成物であろう。染色反応速度を増加させる手段は、とりわけ、pHを高く調整すること、反応温度を増加させること、又は反応混合物の濃度を増加させることを含む。
実施例5
Cl/SO 2−モル比の影響を立証するために、AlCl・6HO及びAl(SO・16HOが媒染剤として使用された様々な他の比が調製された。pHはANS色相に適合するように調整された。その他全ての成分はANS(実施例1)と同一である。1:4のCl/SO 2−モル比(20%のCl)について、ANSと比較した場合、同等染色特性が得られるが、反応速度は実質的により遅いことが観察された。更に、沈殿の安定性又は開始はANS−Cl−50に劣ることが観察された。
実施例6
1:2のCl/SO 2−モル比(33%のCl)について、全ての成分は実施例5に記載の通りに含まれた。更に、モル比の変化に加えて、成分の濃度は実施例5より25%増加された。ANSと比較した場合、同等染色特性が得られるが、反応速度は実質的により遅いことが観察された。更に、沈殿の安定性又は開始はANS−Cl−50に劣ることが観察された。
実施例7
実施例5より濃度が50%増加したことを除き、1:2のCl/SO 2−モル比(33%のCl)について、全ての成分は実施例5に記載の通りに含まれた。ANSと比較した場合、同等染色特性が得られ、反応速度はANSと実質的に同等であることが観察された。
実施例8
実施例8は1:7のCl/SO 2−モル比(12.5%のCl)を説明する。実施例8は更に強化された性能を有することが発見された。
Figure 2018501360
製剤は、染色品質、染色反応速度、及び安定性に関して、NT−ANS−Cl−50の性能を超え、エチレングリコールを含まなかった。ANSと比較した場合、同等染色特性が得られ、反応速度はANSと実質的に同等であることが観察された。没食子酸一水和物を用いて得られた結果は、没食子酸一水和物を用いなかった実験(実施例4)で観察された結果に相当した。
実施例9
45℃での加速安定性の研究は、ANSと同等に染色された実施例7及び実施例3についてのみ行われた。実施例7はANSと同じくらい速く沈殿物を形成したが、実施例3は32日間の研究にわたって沈殿物を形成しなかったことが観察された。
実施例10
本明細書に記載される様々な組成物は、室温又は45℃のいずれか又は使用前の期間、密閉容器で保存された。残りの実施例を通して、様々な組成物と比較する顕微鏡写真が提供され、染色品質及び沈殿の程度を伝える。
図2(A)は、新たに調製された実施例1のヘマトキシリン溶液で染色された、4ミクロンの厚さの組織切片の連続切片の10倍に拡大して撮影された顕微鏡写真、図2(B)は、新たに調製された実施例4のヘマトキシリン溶液で染色された、4ミクロンの厚さの組織切片の連続切片の10倍に拡大して撮影された顕微鏡写真、図2(C)は、実施例9に記載の促進劣化(45℃、32日間)を受けた実施例1のヘマトキシリン溶液で染色された、4ミクロンの厚さの組織切片の連続切片の10倍に拡大して撮影された顕微鏡写真、図2(D)は、実施例9に記載の促進劣化(45℃、32日間)を受けた実施例4のヘマトキシリン溶液で染色された、4ミクロンの厚さの組織切片の連続切片の10倍に拡大して撮影された顕微鏡写真であり、図2(E)は、図2(C)に示されるのと同一の切片であり、より近い視点(例えばデジタルズーム)で示されており、図2(F)は、図2(D)に示されるのと同一の切片であり、より近い視点(例えばデジタルズーム)で示されている。
45℃で保存されたANSヘマトキシリンを用いた機能的染色は、〜7日間に開始した沈殿物の量の増加を明らかにした。同一条件下(6週間超)のANS−Clヘマトキシリンに関し、延長された期間後に沈殿の証拠は検出されなかった。
沈殿における差異も、ヘマトキシリン包装物に関しては観察されなかった。図3(A−B)は、接触している表面上のヘマトキシリン溶液の沈殿物を示す写真である。図3(A)は、ボトルが排水され、DI水ですすがれた後、5℃で32日間ヘマトキシリンを含有した(ポリエチレンテレフタレートグリコールで修飾された)二本のボトルを示し、左は実施例1に記載の製剤を含有したボトルを示し、右は実施例4の製剤を含有したボトルを示す。図3(B)は、60℃で7日間溶液を含有した後、全自動染色システムに見られるような種類(例えばパーフルオロアルコキシ樹脂(PFA))の管のループを示し、ループは、排水され、DI水ですすがれた。左の管は実施例1に記載の製剤を含有し、右の管は実施例4に記載の製剤を含有した。全ての場合において、ANSヘマトキシリン溶液は、クロリドベースのヘマトキシリン溶液よりも、管のループの内側に多くの沈殿物コーティングを明白に生成した。
図4(A)をここで言及して、示されるものは、実施例10に記載の促進劣化(45℃、32日間)を受けた実施例1のヘマトキシリン溶液で染色された、4ミクロンの厚さの組織切片の連続切片の顕微鏡写真であり、図4(B)をここで言及して、示されるものは、実施例10に記載の促進劣化(45℃、32日間)を受けた実施例4のヘマトキシリン溶液で染色された、4ミクロンの厚さの組織切片の連続切片の顕微鏡写真である。図4(A)を言及して、見られる核染色の強度は、図4(B)で観察されるものよりも実質的に薄い。病理学者は典型的により濃い核染色強度を好むため、図4(A)の染色は図4(B)に劣る。更に、顕微鏡で観察できるヘマトキシリン沈殿物(図4(A)の左上部)は、ヘマトキシリンで染色された試料上で観察するには望ましくない特質である。沈殿物は、根本的な組織形態をしばしば曖昧にし得、診断を困難にする。図4(B)に示される試料において、ヘマトキシリン沈殿物が存在するが、沈殿物の大きさは実質的に小さく、根本的な組織形態をそれほど重要性がないように曖昧にする。更に、染色強度は、依然として十分濃く、適切な診断を可能にする。

Claims (36)

  1. 溶媒、ヘマトキシリン、少なくともヘマトキシリンの一部をヘマテインに転換させるのに十分な量の化学酸化剤、媒染剤を含むヘマトキシリン染色組成物であって、クロリド(Cl)及びサルフェート(SO 2−)を更に含み、クロリド/サルフェートのモル比が約2.5/1から約1/4の間である、ヘマトキシリン染色組成物。
  2. 媒染剤がAl(SO、Al(SO・16HO、AlM(SO・12(HO)、Al(SO・6HO、Al(SO・18HO、又は[Al(HO)(SO・5HOを含み、Mが一価の陽イオンである、請求項1に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  3. 媒染剤がAlCl又はAlCl・6HOを含む、請求項1に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  4. 媒染剤がAl(SO、Al(SO・16HO、AlM(SO・12(HO)、Al(SO・6HO、Al(SO・18HO、[Al(HO)(SO・5HO、AlCl又はAlCl・6HOを含み、Mが一価の陽イオンである、請求項1に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  5. クロリド/サルフェートのモル比が約2/1から約1/2の間である、請求項1から4のいずれか一項に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  6. クロリド/サルフェートのモル比が約1.5/1から約1/1.5の間である、請求項1から4のいずれか一項に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  7. クロリド/サルフェートのモル比が約1/1である、請求項1から4のいずれか一項に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  8. ヘマトキシリンが約0.01Mから約0.05Mの間のモル濃度を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  9. ヘマトキシリンが約0.02Mから約0.04Mの間のモル濃度を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  10. ヘマトキシリンが約0.03Mのモル濃度を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  11. 化学酸化剤がヨウ素酸ナトリウムである、請求項1から10のいずれか一項に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  12. ヨウ素酸ナトリウムが約0.001Mから約0.01Mの間のモル濃度を有する、請求項11に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  13. ヨウ素酸ナトリウムが約0.003Mから約0.008Mの間のモル濃度を有する、請求項11に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  14. ヨウ素酸ナトリウムが約0.005Mのモル濃度を有する、請求項11に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  15. アルミニウムを含み、アルミニウムが約0.1Mのモル濃度を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  16. アルミニウムを含み、アルミニウムが約0.1Mより大きいモル濃度を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  17. 約4/1から約1/1の間のアルミニウム/ヘマトキシリンのモル比を有する、請求項15又は16に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  18. 約3/1から約1.5/1の間のアルミニウム/ヘマトキシリンのモル比を有する、請求項15又は16に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  19. 約2/1のアルミニウム/ヘマトキシリンのモル比を有する、請求項15又は16に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  20. クロリドが約0.01Mから約0.1Mの間のモル濃度を有する、請求項1から19のいずれか一項に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  21. クロリドが約0.02Mから約0.08Mの間のモル濃度を有する、請求項1から19のいずれか一項に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  22. クロリドが約0.04Mのモル濃度を有する、請求項1から19のいずれか一項に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  23. 多糖類、クリプタンド、クリプトファン、キャビタンド、クラウンエーテル、デンドリマー、ナノチューブ、カリックスアレーン、バリノマイシン、又はナイジェリシンを実質的に欠いている、請求項1から22のいずれか一項に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  24. 抗酸化剤を実質的に欠いている、請求項1から23のいずれか一項に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  25. 全自動染色システムを用いて生物学的試料を染色するための方法であって、請求項1から24のいずれか一項に記載のヘマトキシリン組成物を全自動染色システムを用いて生物学的試料に接触させることを含む、方法。
  26. 試料を対比染色剤に接触させることを更に含む、請求項25に記載の方法。
  27. 対比染色剤がエオシンY、オレンジG、ライトグリーンSFイエローイッシュ、ビスマルクブラウン、及びファストグリーンFCFからなる群より選択される、請求項26に記載の方法。
  28. 試料をヘマトキシリン組成物と接触させることが、進行性ヘマトキシリン染色プロトコールを含む、請求項25から27のいずれか一項に記載の方法。
  29. 試料をヘマトキシリン組成物と接触させることが、退色性ヘマトキシリン染色プロトコールを含む、請求項25から27のいずれか一項に記載の方法。
  30. 生物学的試料が基質上で支持される、請求項25から27のいずれか一項に記載の方法。
  31. 基質が顕微鏡スライドを含む、請求項30に記載の方法。
  32. 生物学的試料が組織切片又は細胞学試料を含む、請求項25から31のいずれか一項に記載の方法。
  33. ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色法を含む、請求項25から32のいずれか一項に記載の方法。
  34. パパニコロウ(PAP)染色法を含む、請求項25から32のいずれか一項に記載の方法。
  35. ヘマトキシリン製剤の作製方法であって、ヘマトキシリンを溶媒に添加すること;少なくともヘマトキシリンの一部をヘマテインに転換させるのに十分な量の化学酸化剤を添加すること;媒染剤及び対イオンを添加することを含み、製剤がクロリド/サルフェートのモル比を有し、クロリド/サルフェートのモル比を約2.5/1から約1/4の間のモル比に修飾する工程を更に含む、方法。
  36. 媒染剤がAl(SO、Al(SO・16HO、AlM(SO・12(HO)、Al(SO・6HO、Al(SO・18HO、[Al(HO)(SO・5HO、AlCl又はAlCl・6HOの混合物を含み、Mが一価の陽イオンである、請求項35に記載の方法。
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