JP2023524840A - ラセミヘマトキシリンの半合成及び使用 - Google Patents

ラセミヘマトキシリンの半合成及び使用 Download PDF

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Abstract

安定剤化合物及び抗酸化剤の一方又は両方を含むラセミヘマトキシリン製剤が開示される。本開示の組成物は、自動染色プロセスにおいて利用するのに十分な安定性を示す。安定化組成物の使用方法及び製造方法についても開示される。【選択図】図1

Description

ヘマトキシリンは、組織学、組織化学、組織病理学、及び細胞学において、最も重要かつ最も使用されている染料として説明されている。ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色及びパパニコロウ(PAP)染色を含む幾つかの組織化学的染色プロトコールは、色素ヘマトキシリンに依拠して細胞学的試料及び組織試料を染色する。特に、細胞核のヘマトキシリン染色は、病理学者が腫瘍生検試料中の悪性及び/又は転移細胞の存在を検出するために使用している。
ヘマトキシリンは、アカミノキ属(Haematoxylum)の木の赤い心材に見られる天然に存在する化合物である。ヘマトキシリン自体は水溶液中で無色であり、組織成分を染色する活性成分ではない。むしろ、ヘマトキシリンの酸化生成物であるヘマテインは、特に媒染剤で錯化されると、ヘマトキシリン溶液の活性染色成分となる。例えば、機能性染料を製造するために、ヘマトキシリンはヘマテインへと酸化され、続いてアルミニウム(Al+3)、鉄(Fe+3)、及びクロム(Cr+3)を含む幾つかの金属イオンのうちの1つに結合される。ヘマテインは、空気及び日光への曝露によって天然に生成される。天然のプロセスは「成熟」と呼ばれ、細胞の染色に適した溶液を得るのに3か月以上かかることがある。
ヘマトキシリン染色は、浸漬(ディップアンドダンク)技法を用いて手動で行うか、Ventana Medical Systems,Inc.が提供するSymphony(登録商標)自動化システムなどの自動化システムを使用して行うことができる。染色プロセスは、概して、(a)顕微鏡スライドに固定された標本からパラフィンを除去し、水に浸して標本を水和すること;(b)特定の製剤にヘマトキシリンを適用して細胞核を染色すること;(c)水ですすぐことによって過剰のヘマトキシリンを除去すること;(d)スライドをpH値が5.0を超える濃縮溶液と接触させて、ヘマトキシリンを青色に変えること(例えば、ブルーイング溶液);及び、(e)水ですすぐことによってブルーイング溶液を除去することを包含する。
本開示は、ラセミヘマトキシリンを含むヘマトキシリン製剤を提供する。幾つかの実施形態では、ラセミヘマトキシリン製剤は、生物学的試料中の細胞の核を染色するのに適している。幾つかの実施形態では、ラセミヘマトキシリン製剤は、粗面小胞体、リボソーム、コラーゲン、ミエリン、弾性繊維、及び酸性ムチンの染色に適している。幾つかの実施形態では、ラセミヘマトキシリン製剤は、CISH(クロモジェニックin situハイブリダイゼーション)の対比染色剤として、又は特定の抗原-抗体複合体周辺の形態の可視化(クロモジェニック免疫組織化学)に適している。本出願人は、予想外に、ラセミヘマトキシリンによる染色が、市販のエナンチオピュアなヘマトキシリンによる染色と機能的に同等であることを発見した。
本開示の第1の態様は、ラセミヘマトキシリン、並びに少なくとも1つの添加剤(例えば、溶媒、化学酸化剤、媒染剤、安定剤、及び抗酸化剤から選択される少なくとも1つの添加剤)を含む、ヘマトキシリン製剤である。幾つかの実施形態では、ヘマトキシリン製剤は、少なくとも2つの添加剤を含む。幾つかの実施形態では、ヘマトキシリン製剤は、少なくとも3つの添加剤を含む。幾つかの実施形態では、ヘマトキシリン製剤は、ラセミヘマトキシリン、溶媒、化学酸化剤、媒染剤、安定剤、及び抗酸化剤を含む。幾つかの実施形態では、ヘマトキシリン製剤中に存在する化学酸化剤のある特定の量は、ラセミヘマトキシリンの少なくとも一部をヘマテインに変換するのに十分である。幾つかの実施形態では、溶媒は水性溶媒である。幾つかの実施形態では、抗酸化剤は水溶性抗酸化剤である。幾つかの実施形態では、水溶性抗酸化剤はハイドロキノンを含む。
幾つかの実施形態では、溶媒は、水、低級アルカノール、及びポリオールのうちの1つ以上を含む。幾つかの実施形態では、溶媒は、水及びポリオールを含む。幾つかの実施形態では、ポリオールは、プロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール)、及びポリ(プロピレングリコール)からなる群より選択される。
幾つかの実施形態では、ヘマトキシリン製剤中の1%と50%の間のラセミヘマトキシリンが、化学酸化剤によってヘマテインへと酸化される。幾つかの実施形態では、化学酸化剤は、ヨウ素酸ナトリウム、酸化水銀、過マンガン酸カリウム、過ヨウ素酸カリウム、及び過酸化水素のうちの1つ以上を含む。幾つかの実施形態では、化学酸化剤はヨウ素酸ナトリウムを含む。幾つかの実施形態では、組成物中のヘマトキシリンの酸化剤に対するモル比は、約6:1と約1:1の間の範囲にある。幾つかの実施形態では、媒染剤は、アルミニウム媒染剤、鉄媒染剤、ビスマス媒染剤、銅媒染剤、モリブデン媒染剤、バナジウム媒染剤、及びジルコニウム媒染剤のうちの1つ以上を含む。幾つかの実施形態では、媒染剤は硫酸アルミニウムを含む。
幾つかの実施形態では、安定剤は、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体を含む。幾つかの実施形態では、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体は、β-シクロデキストリン及びβ-シクロデキストリン誘導体のうちの1つ以上である。
幾つかの実施形態では、ヘマトキシリン製剤は酸をさらに含む。幾つかの実施形態では、ヘマトキシリン製剤には酸は添加されない。
本開示の別の態様は、生物学的試料をラセミヘマトキシリン製剤と接触させることを含む、生物学的試料を染色する方法である。幾つかの実施形態では、ラセミヘマトキシリン製剤は、溶媒、ヘマトキシリン、ヘマトキシリンの少なくとも一部をヘマテインに変換するのに十分な量の化学酸化剤、媒染剤、抗酸化剤、及び安定剤を含む。幾つかの実施形態では、安定剤は、多糖、クリプタンド、クリプトファン、キャビタンド、クラウンエーテル、デンドリマー、ナノチューブ、カリックスアレーン、バリノマイシン、及びニゲリシンからなる群より選択される。
幾つかの実施形態では、方法は、試料を対比染色剤と接触させることをさらに含む。幾つかの実施形態では、対比染色剤は、エオシンY、オレンジG、ライトグリーンSFイエロー、ビスマルクブラウン、及びファストグリーンFCFからなる群より選択される。幾つかの実施形態では、試料をラセミヘマトキシリン製剤と接触させることは、漸進的ヘマトキシリン染色プロトコールを含む。幾つかの実施形態では、試料をラセミヘマトキシリン製剤と接触させることは、回帰的ヘマトキシリン染色プロトコールを含む。幾つかの実施形態では、方法は自動化される。幾つかの実施形態では、生物学的試料が基板上に支持される。幾つかの実施形態では、基板は顕微鏡スライドを含む。
幾つかの実施形態では、安定剤は、約25℃で約100mg/mLを超える水溶解度を有する。幾つかの実施形態では、抗酸化剤は、ハイドロキノン、没食子酸n-アルキル、還元糖、ベンゾエート、ヒドロキシ安息香酸塩、亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、クエン酸、酒石酸、乳酸、エリソルビン酸、アスコルビン酸、尿酸、タンニン酸、一又は幾つかのキレート剤、コーラル水和物、それらの誘導体及び塩からなる群より選択される。
本開示の別の態様は、ラセミヘマトキシリンとpH低下ヘマトキシリン製剤の全容量の約0.2%から約4%の範囲の量の酸とを含む、pH低下ヘマトキシリン製剤であり、ここで、pH低下ヘマトキシリン製剤は約2.4未満のpH値を有する。幾つかの実施形態では、酸は、塩酸、硫酸、過塩素酸、及び硝酸からなる群より選択される。幾つかの実施形態では、pH値は約2.3未満である。幾つかの実施形態では、pH値は約2.2未満である。幾つかの実施形態では、pH値は約2.1未満である。幾つかの実施形態では、pH値は約2.1から約2.2の間の範囲にある。
幾つかの実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、媒染剤及び酸化剤をさらに含む。幾つかの実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は安定化剤をさらに含む。幾つかの実施形態では、安定化剤はポリオールを含む。幾つかの実施形態では、ポリオールは、プロピレングリコール、エチレングリコール、及びそれらの混合物からなる群より選択される。
幾つかの実施形態では、製剤は、ラセミヘマトキシリン、媒染剤、酸化剤、及び酸から本質的になる。幾つかの実施形態では、酸化剤はヨウ素酸ナトリウムを含む。幾つかの実施形態では、媒染剤はアルミニウムを含む。
本開示の別の態様は、pH低下ヘマトキシリン製剤のアリコートのpH値を上昇させて約2.4から約2.6の範囲のpH値を有するラセミヘマトキシリン染色溶液を提供すること、及び生物学的試料を約2.4から約2.6の範囲のpH値を有するヘマトキシリン染色溶液と接触させることを含む、生物学的試料を染色する方法である。幾つかの実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤のアリコートのpH値は、強塩基又はバッファーを含む再調整溶液を加えることによって上昇される。
幾つかの実施形態では、強塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、及びアンモニアからなる群より選択される。
幾つかの実施形態では、再調整溶液は、ポリオール、酸化剤、媒染剤、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される添加剤をさらに含む。幾つかの実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤のpH値は、生物学的試料をヘマトキシリン染色溶液と接触させる前に上昇される。幾つかの実施形態では、生物学的試料は、組織学的試料又は細胞学的試料を含む。
本開示の別の態様では、第1の成分及び第2の成分を含むキットが提供される。幾つかの実施形態では、第1の成分は、ラセミヘマトキシリンと、pH低下ヘマトキシリン製剤の全容量の約0.1%から約10%の範囲の量の酸とを含む、pH低下ヘマトキシリン製剤を含み、該pH低下ヘマトキシリン製剤は約2.4未満のpH値を有する。第2の成分は、強塩基又はバッファーを含み、第1の成分と第2の成分とを合わせたときにpH低下ヘマトキシリン製剤のpH値が約2.4よりも高く上昇するように、第1の成分に対して相対的な量で提供される。
幾つかの実施形態では、第2の成分は、第1の成分と第2の成分とが混合されるとpH低下ヘマトキシリン製剤のpH値が約2.5よりも高く上昇するように、第1の成分に対して相対的な量で提供される。幾つかの実施形態では、第2の成分は、第1の成分と第2の成分とが混合されるとpH低下ヘマトキシリン製剤のpH値が約2.45から約2.54の間の範囲になるように、第1の成分に対して相対的な量で提供される。幾つかの実施形態では、第2の成分は、第1の成分と第2の成分とが混合されるとpH低下ヘマトキシリン製剤のpH値が約2.5から約2.6の間の範囲になるように、第1の成分に対して相対的な量で提供される。
幾つかの実施形態では、第1の成分は、媒染剤及び酸化剤をさらに含む。幾つかの実施形態では、第1の成分は、貯蔵寿命延長剤をさらに含む。幾つかの実施形態では、貯蔵寿命延長剤はポリオールである。幾つかの実施形態では、ポリオールは、プロピレングリコール、エチレングリコール、及びそれらの混合物からなる群より選択される。
幾つかの実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、本質的に、ヘマトキシリン、媒染剤、酸化剤、及び酸からなる。幾つかの実施形態では、第2の成分は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムからなる群より選択される強塩基を含む。幾つかの実施形態では、第2の成分は、シアノ酢酸塩、フマル酸塩、及び硫酸塩からなる群より選択されるバッファーを含む。
幾つかの実施形態では、キットは、対比染色剤を含む第3の成分をさらに含む。幾つかの実施形態では、対比染色剤は、エオシンY、オレンジG、ライトグリーンSFイエロー、ビスマルクブラウン、及びファストグリーンFCFからなる群より選択される。
本開示の別の態様では、pH低下ヘマトキシリン製剤ラセミヘマトキシリンとpH低下ヘマトキシリン製剤の全容量の約0.1%から約10%の範囲の量の酸とを含む第1の容器を備えている、基板上に載せた生物学的試料を染色するためのシステムが提供され、ここで、pH低下ヘマトキシリン製剤は約2.4未満のpH値を有し、第2の容器は再調整溶液を含む。幾つかの実施形態では、第1及び第2の容器は、pH低下ヘマトキシリン製剤と再調整溶液とを混合してヘマトキシリン染色溶液を提供することができるように、混合容器に流体接続される。幾つかの実施形態では、システムは、基板上に載せた生物学的試料を保持するための基板ホルダをさらに含み、該基板ホルダは、ヘマトキシリン染色溶液を生物学的試料に適用できるように、混合容器と流体連通している。
本開示の特徴の一般的な理解のために、図面を参照する。図面では、同一の要素を特定するために、全体を通して同様の参照符号が使用されている。
市販のヘマトキシリンを含む溶液の自動スケーリングされたHPLCクロマトグラム、及びピーク結果を示す図。 溶液の各成分についての図1AのHPLCクロマトグラムのピーク結果の拡大図。 ラセミヘマトキシリンを含む溶液の自動スケーリングされたHPLCクロマトグラム、及びピーク結果を示す図。 溶液の各成分についての図2AのHPLCクロマトグラムのピーク結果の拡大図。 市販のヘマトキシリンで染色した組織試料を示す図。 市販のヘマトキシリンで染色した組織試料を示す図。 ラセミヘマトキシリンで染色した組織試料を示す図。 ラセミヘマトキシリンで染色した組織試料を示す図。 腎臓糸球体組織における、20倍の市販のヘマトキシリンを20倍の合成ヘマトキシリンと比較した図(トリクローム・ヘマトキシリン)。合成ヘマトキシリンを用いた染色では、比較的大きい細胞核の細部及びオーバーラップのより鮮明な画像が得られる。 腎臓糸球体組織における、20倍の市販のヘマトキシリンを20倍の合成ヘマトキシリンと比較した図(トリクローム・ヘマトキシリン)。合成ヘマトキシリンを用いた染色では、比較的大きい細胞核の細部及びオーバーラップのより鮮明な画像が得られる。 結腸組織における、20倍の市販のヘマトキシリンを20倍の合成ヘマトキシリンと比較した図(ムシカルミン・鉄・ヘマトキシリン)。合成ヘマトキシリンを用いた染色では、比較的大きい細胞核の細部及びオーバーラップのより鮮明な画像が得られる。 結腸組織における、20倍の市販のヘマトキシリンを20倍の合成ヘマトキシリンと比較した図(ムシカルミン・鉄・ヘマトキシリン)。合成ヘマトキシリンを用いた染色では、比較的大きい細胞核の細部及びオーバーラップのより鮮明な画像が得られる。 結腸組織における、20倍の市販のヘマトキシリンを20倍の合成ヘマトキシリンと比較した図(ヘマトキシリンII)。合成ヘマトキシリンを用いた染色では、比較的大きい細胞核の細部及びオーバーラップのより鮮明な画像が得られる。 結腸組織における、20倍の市販のヘマトキシリンを20倍の合成ヘマトキシリンと比較した図(ヘマトキシリンII)。合成ヘマトキシリンを用いた染色では、比較的大きい細胞核の細部及びオーバーラップのより鮮明な画像が得られる。 腎臓糸球体組織における、20倍の市販のヘマトキシリンを20倍の合成ヘマトキシリンと比較した図(ヘマトキシリンII)。合成ヘマトキシリンを用いた染色では、比較的大きい細胞核の細部及びオーバーラップのより鮮明な画像が得られる。 腎臓糸球体組織における、20倍の市販のヘマトキシリンを20倍の合成ヘマトキシリンと比較した図(ヘマトキシリンII)。合成ヘマトキシリンを用いた染色では、比較的大きい細胞核の細部及びオーバーラップのより鮮明な画像が得られる。 扁桃腺組織における、20倍の市販のヘマトキシリンを20倍の合成ヘマトキシリンと比較した図(ヘマトキシリンII)。合成ヘマトキシリンを用いた染色では、比較的大きい細胞核の細部及びオーバーラップのより鮮明な画像が得られる。 扁桃腺組織における、20倍の市販のヘマトキシリンを20倍の合成ヘマトキシリンと比較した図(ヘマトキシリンII)。合成ヘマトキシリンを用いた染色では、比較的大きい細胞核の細部及びオーバーラップのより鮮明な画像が得られる。 腎臓糸球体組織における、20倍の市販のヘマトキシリンを20倍の合成ヘマトキシリンと比較した図(ヘマトキシリン・エオシン)。合成ヘマトキシリンを用いた染色では、比較的大きい細胞核の細部及びオーバーラップのより鮮明な画像が得られる。 腎臓糸球体組織における、20倍の市販のヘマトキシリンを20倍の合成ヘマトキシリンと比較した図(ヘマトキシリン・エオシン)。合成ヘマトキシリンを用いた染色では、比較的大きい細胞核の細部及びオーバーラップのより鮮明な画像が得られる。 筋血管組織における、20倍の市販のヘマトキシリンを20倍の合成ヘマトキシリンと比較した図(ヘマトキシリン・エオシン)。合成ヘマトキシリンを用いた染色では、比較的大きい細胞核の細部及びオーバーラップのより鮮明な画像が得られる。 筋血管組織における、20倍の市販のヘマトキシリンを20倍の合成ヘマトキシリンと比較した図(ヘマトキシリン・エオシン)。合成ヘマトキシリンを用いた染色では、比較的大きい細胞核の細部及びオーバーラップのより鮮明な画像が得られる。 結腸組織における、20倍の市販のヘマトキシリンを20倍の合成ヘマトキシリンと比較した図(ヘマトキシリン・エオシン)。合成ヘマトキシリンを用いた染色では、比較的大きい細胞核の細部及びオーバーラップのより鮮明な画像が得られる。 結腸組織における、20倍の市販のヘマトキシリンを20倍の合成ヘマトキシリンと比較した図(ヘマトキシリン・エオシン)。合成ヘマトキシリンを用いた染色では、比較的大きい細胞核の細部及びオーバーラップのより鮮明な画像が得られる。 皮脂腺毛包組織における、20倍の市販のヘマトキシリンを20倍の合成ヘマトキシリンと比較した図(ヘマトキシリン・エオシン)。合成ヘマトキシリンを用いた染色では、比較的大きい細胞核の細部及びオーバーラップのより鮮明な画像が得られる。 皮脂腺毛包組織における、20倍の市販のヘマトキシリンを20倍の合成ヘマトキシリンと比較した図(ヘマトキシリン・エオシン)。合成ヘマトキシリンを用いた染色では、比較的大きい細胞核の細部及びオーバーラップのより鮮明な画像が得られる。 皮膚組織における、20倍の市販のヘマトキシリンを20倍の合成ヘマトキシリンと比較した図(ヘマトキシリン・エオシン)。合成ヘマトキシリンを用いた染色では、比較的大きい細胞核の細部及びオーバーラップのより鮮明な画像が得られる。 皮膚組織における、20倍の市販のヘマトキシリンを20倍の合成ヘマトキシリンと比較した図(ヘマトキシリン・エオシン)。合成ヘマトキシリンを用いた染色では、比較的大きい細胞核の細部及びオーバーラップのより鮮明な画像が得られる。 扁桃腺組織における、20倍の市販のヘマトキシリンを20倍の合成ヘマトキシリンと比較した図(ヘマトキシリン・エオシン)。合成ヘマトキシリンを用いた染色では、比較的大きい細胞核の細部及びオーバーラップのより鮮明な画像が得られる。 扁桃腺組織における、20倍の市販のヘマトキシリンを20倍の合成ヘマトキシリンと比較した図(ヘマトキシリン・エオシン)。合成ヘマトキシリンを用いた染色では、比較的大きい細胞核の細部及びオーバーラップのより鮮明な画像が得られる。
反対のことが明確に示されていない限り、本明細書で特許請求される、複数のステップ又は作用を含む任意の方法において、その方法のステップ又は作用の順序は、その方法のステップ又は作用が列挙される順序に必ずしも限定されないことも理解されるべきである。
本明細書における「一実施形態」、「ある実施形態」、「例示的な実施形態」などへの言及は、記載された実施形態が特定の特徴、構造、又は特性を含むことができることを示すが、全ての実施形態は、その特定の特徴、構造、又は特性を含む場合もあれば、必ずしも含まない場合もある。さらには、そのような句は、必ずしも同じ実施形態を指しているわけではない。さらには、特定の特徴、構造、又は特性がある実施形態に関連して説明される場合、明確に記載されているかどうかにかかわらず、他の実施形態に関連してそのような特徴、構造、又は特性に影響を与えることは、当業者の知識の範囲内であると考えられる。
本明細書で用いられる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示していない限り、複数の指示対象を含む。同様に、「又は」という語は、文脈がそうでないことを明確に示していない限り、「及び」を含むことを意図している。「含む」という用語は、「A又はBを含む」がA、B、又はA及びBを含むことを意味するように、包括的に定義される。
本明細書及び特許請求の範囲で用いられる場合、「又は」は、上で定義したように、「及び/又は」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を区切る場合、「又は」又は「及び/又は」は、包括的(例えば、少なくとも1つを含む)であると解釈されるだけでなく、多数の要素又は要素のリスト、及び、任意選択的に、追加のリストされていない項目のうちの複数を含むものと解釈される。「~のうちの1つのみ」若しくは「~のうちの正確に1つ」、又は、特許請求の範囲で用いられる場合の「からなる」など、そうでないことが明確に示されている用語のみが、多数の要素又は要素のリストのうちの正確に1つの要素を含むことを指す。概して、本明細書で用いられる「又は」という用語は、「いずれか」、「~のうちの1つ」、「~のうちの1つのみ」、又は「~のうちの正確に1つ」など、排他的な用語が先行する場合、排他的な代替案(例えば、「いずれか一方であるが両方ではない」)を示すものとしてのみ解釈されるものとする。特許請求の範囲で用いられる場合、「~から本質的になる」は、特許法の分野で用いられる通常の意味を有するものとする。
「備えている」、「含んでいる」、「有している」などの用語は、交換可能に用いられ、同じ意味を有する。同様に、「備える」、「含む」、「有する」などは、交換可能に用いられ、同じ意味を有する。具体的には、各用語は、「備えている/含んでいる」という一般的な米国特許法の定義と一致して定義されており、したがって、「少なくとも次のもの」を意味するオープンな用語であるものとして解釈され、追加の特徴、制限、態様などを排除しないものと解釈される。したがって、例えば、「構成要素a、b、及びcを有するデバイス」は、そのデバイスが少なくとも構成要素a、b、及びcを含むことを意味する。同様に、「ステップa、b、及びcを包含する方法」という句は、その方法が少なくともステップa、b、及びcを含むことを意味する。さらには、ステップ及びプロセスは、本明細書で特定の順序で概説されうるが、当業者は、ステップ及びプロセスの順序が異なりうることを認識するであろう。
本明細書及び特許請求の範囲で用いられる場合、1つ以上の要素のリストに関連する「少なくとも1つ」という句は、要素のリスト内のいずれか1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしも要素のリスト内に具体的に列挙されたすべての要素のうちの少なくとも1つを含むわけではなく、要素のリスト内の要素の任意の組合せを除外するものではないものと理解されたい。この定義は、「少なくとも1つ」という句が指す要素のリスト内で具体的に特定された要素以外の要素が、具体的に特定された要素に関連するかどうかに関係なく、任意選択的に存在することができることも可能にする。したがって、非限定的な例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は、同等に、「A又はBのうちの少なくとも1つ」、又は、同等に「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つ、任意選択的に1より多くのAを含み、Bは存在しない(かつ、任意選択的にB以外の要素を含む)ことを指し;別の実施形態では、少なくとも1つ、任意選択的に1より多くのBを含み、Aは存在しない(かつ、任意選択的にA以外の要素を含む)ことを指し;さらに別の実施形態では、少なくとも1つ、任意選択的に1より多くのAを含み、少なくとも1つ、任意選択的に1より多くのBを含み(かつ、任意選択的に他の要素を含む);などを指す。
「抗酸化剤」という用語は、第2の原子又は分子よりも大きい酸化還元電位を有しており、したがって抗酸化剤が第2の原子又は分子の代わりに選好的に酸化される、原子又は分子を指す。例えば、抗酸化剤は、ヘマテインよりも大きい酸化力を有する可能性があり、したがって、ヘマテインからオキシヘマテインへの酸化を防ぐのに役立つ。さらには、抗酸化剤はまた、例えば、オキシヘマテインを変換してヘマテインに戻す還元剤など、還元剤としても機能することができる。抗酸化剤は、開示された製剤中に、約1mMから約1M、例えば、約5mMから約500mM、例えば約50mMから約150mMの範囲の濃度で存在することができる。
「水性溶媒」という用語は、主成分として水を有し、室温で液体である組成物を指す。水と、体積で約50%以上の含水量を有する1つ以上の低級アルカノール又はポリオールとの混合物は、水性溶媒の例である。
「生物学的試料」という用語は、動物などの生物学的実体から得られるか、そうでなければそれらに由来する任意の試料、例えば、ヒト、又はイヌ、ネコ、ウマ、若しくはウシなどの獣医動物から得られる試料を指す。生物学的試料の例には、細胞学的試料、組織試料、及び生体液が含まれる。生物学的試料の非限定的な具体例には、血液、尿、射精前液、乳頭吸引液、精液、乳、痰、粘液、胸膜液、骨盤液、関節液、腹水液、体腔洗浄液、眼ブラッシング液、皮膚擦過物、頬側スワブ、膣スワブ、パップスメア、直腸スワブ、吸引物、針生検、例えば手術又は剖検で得られた組織の切片、血漿、血清、髄液、リンパ液、汗、涙、唾液、腫瘍、臓器、及びin vitroでの細胞培養又は組織培養から得られた試料が含まれる。典型的には、試料は、固定され、水を除去するために処理され、組織切片へと切断するためにパラフィン又は別の適切なワックス状物質に包埋されている、生検試料である。生物学的試料は、治療及び/又は検査のために顕微鏡スライドなどの基板上に取り付けることができる。
「媒染剤」という用語は、核DNA、ミエリン、弾性繊維及びコラーゲン繊維、筋肉横紋、及びミトコンドリアなどの特定の細胞成分に染料(ヘマテインなど)を結合させるのに役立つ複合体(カチオン複合体など)を形成することができるイオン金属種を指す。媒染剤の例には、アルミニウム(例えば、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、又は硫酸アルミニウムアンモニウムなどのミョウバンの形態)、鉄、タングステン、ジルコニウム、ビスマス、モリブデン(リンモリブデン酸又はモリブデン酸)、及びバナジウム(バナジン酸塩)が含まれる。
「酸化剤」という用語は、第2の分子より大きい酸化還元電位、例えば、ヘマトキシリンと反応してヘマトキシリンをヘマテインへと酸化するようにヘマトキシリンよりも大きい酸化還元電位を有する、原子又は分子を指す。酸化剤は、ヘマトキシリンに拡散してヘマトキシリンを酸化する、大気中に天然に存在する分子状酸素と、ヘマトキシリン(通常は溶液中)と積極的に結合してヘマトキシリンの少なくとも一部をヘマテインに変換する「化学酸化剤」とを含む。有用な化学酸化剤の例には、ヨウ素酸塩(ヨウ素酸ナトリウム及びヨウ素酸カリウムなど)、酸化水銀、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウムなど)、過ヨウ素酸塩(過ヨウ素酸ナトリウム及び過ヨウ素酸カリウムなど)、及び過酸化物(過酸化水素など)のうちの1つ以上が含まれる。特定の実施形態では、化学酸化剤はヨウ素酸ナトリウムを含む。
「安定剤」という用語は、内部空洞部分又は溝部分を有する有機若しくは無機の分子、複合体、又は材料、より具体的には、ヘマテイン又は他の染料分子の少なくとも一部を収容することができる内部空洞部分又は溝部分を有する分子を指す。
概説
本開示は、ラセミヘマトキシリンを含むヘマトキシリン製剤を提供する。幾つかの実施形態では、ラセミヘマトキシリン製剤は、生物学的試料中の細胞の核を染色するのに適している。本出願人は、予想外に、ラセミヘマトキシリンによる染色が、市販のエナンチオピュアなヘマトキシリンによる染色と機能的に同等であることを発見した。キラリティは生物系のほとんどすべての化学的プロセスにとって最も重要であることから、この結果は驚くべきものである。それは、DNA及びRNAのようなポリヌクレオチドの構造にも、分子スケールと超分子スケールの両方において、本質的に存在し、ヘマトキシリンベースの陰イオン染色の主要な標的を構成することがわかっている。[1,2]それらの非対称D-リボース及びD-2-デオキシリボース単位には、水素結合、静電相互作用、又は化学剤の配位結合に適したキラル環境を備えた、幾つかの立体中心及び部位が含まれている。[12e]さらには、それらの螺旋性は、例えばB-DNAで観察できるように、三次構造に別のレベルのキラリティを与える。
キラリティは、酵素、又は染料のような小分子など、他のキラル及びアキラルな化学剤との相互作用を導くことから、DNA及びRNAの機能において重要な役割を果たす。[1,12e]したがって、膨大な数の薬物、染料、並びに有機金属錯体と異なるDNA立体配座との間の相互作用は、数多くの研究の対象となっている。[2,3,4,5]DNA結合のエナンチオ選択性は、キラル染料による染色[2,5,6]又はエナンチオピュアな薬物による疾患の治療[4]などのプロセスにおいて決定的なパラメータであり、毒性及び突然変異原性などの望ましくない副作用の発生さえも制御できることを実証することができる。天然産物のエナンチオマーは、DNAと、異なる方法で結合及び反応することがよく知られている。
この文脈において、高い力価でDNAをアルキル化するストレプトマイセス種から単離された天然産物であるデュオカルマイシンAのエナンチオマーは、顕著な例の代表である。Bogerらは、(+)-デュオカルマイシンAがより選択的に結合し、(-)-デュオカルマイシンAよりもDNAのアルキル化効率が110倍優れていることを示した。[9]別の著名な天然産物であり、活性の高い抗がん薬であるダウノルビシンは、そのダウノマイシンアグリコン単位でDNAにインターカレートし、そのD-ダウノサミン残基を使用してB-DNAの副溝に結合する。[10]最近の研究では、(+)-ダウノルビシンは、その(-)-エナンチオマーと比較した場合、B-DNAのポリ[(dGdC)]2のような特定の配列に対して21倍増加した結合親和性を有していることが分かった。[11]加えて、多種多様な単量体及び結合ポリアミドが、ポリヌクレオチド構造への結合能力に対するキラリティの影響を解明するために使用されてきた。[12]この分子群では、R-エナンチオマーのB-DNAへの結合親和性は、概して、強く高められる。
エナンチオピュアな染料によるDNAのキラル認識は、ヘリセン並びに、ピレン及びアントラセン誘導体などの他の置換された平面多環式炭化水素について最も集中的に研究されている。[3,6]したがって、プロトン化されたアミノ基で修飾されたヘリセンのP-エナンチオマーは、B-DNAとZ-DNAとの間の結合において識別を示す。[5]一連のキラルカチオン[4]ヘリセンは、1.2から2.3の間のdsDNA因子分解に対する結合親和性に違いがあることが証明された。[3]DNA-金属相互作用の一般的な重要性に起因して、キラルな無機及び有機金属錯体も、DNA様構造に対するそれらの結合特性について詳しく調査されている。例えば、1,2-ジアミノ-シクロヘキサンのある特定のPt錯体は、毒性が大幅に低く、S,S-異性体ではなくR,R体を使用する、より効果的な抗がん薬である。[7]同様に、鉄、ロジウム、ルテニウム、及びオスミウムを中心に持つ他の多数のキラル金属錯体の結合におけるエナンチオ選択性が見出されており、さまざまなDNA立体配座を調べるためのツールとして用いられている。[8]ヘマトキシリンベースの染色製剤の主要な例として、ヘマラム自体は、ルイス酸Al3+とヘマテインとの有機金属錯体であり、後者はまだ1つの立体中心を所有しているため、その異なるpH依存性の組成と配位子球のすべてでヘマラムをキラルにする。[1]
J.A.Kiernanの最近の研究では、赤いヘマラムカチオンがDNAのリン酸アニオンに静電的に引き付けられるため、染色された調製物が5.5を超えるpH値で青くなると、赤色のカチオンが青色の化合物としてin situでむしろ沈殿することが示唆されているが、ブルーイングの前後のヘマラムとDNAの相互作用の性質は、詳細には解明されていない。[2]上記の化学原理と科学的発見を考慮すると、熟練した化学者はむしろ、組織学的染色にヘマトキシリンの純粋なエナンチオマーを使用すると、DNAへの結合親和性が異なるために、異なる強度の着色が得られると想定するであろう。以上を踏まえると、純粋な天然エナンチオマーよりもラセミヘマトキシリンを組織学に使用すると、どちらの異性体がよりDNA親和性の高いAl3+錯体を形成するかに応じて、弱い染色又は強い染色が得られるはずである。組織診断における組織学的分析は依然として実験者による主観的、視覚的判断の問題であることから、純粋な(+)-ヘマトキシリンで作られた製剤とは異なる染色特性は、組織学者の個々の操作経験とその報告結果の正確性に疑問を呈するであろう。DNAに対する(+)-ヘマトキシリン及び(-)-ヘマトキシリンのほぼ同一の挙動のみが、ヘマトキシリンに基づく組織診断で使用するラセミ体を価値あるものにするであろう。
ラセミヘマトキシリン製剤
本開示は、ラセミヘマトキシリン(以下、「ラセミヘマトキシリン製剤」)を含むヘマトキシリン製剤を提供する。概して、ラセミヘマトキシリン製剤は、ラセミヘマトキシリンと、少なくとも1つの追加の成分とを含む。幾つかの実施形態では、追加の成分は、安定剤、溶媒、抗酸化剤、酸化剤、媒染剤、及び酸から選択される。幾つかの実施形態では、ラセミヘマトキシリン製剤は、ラセミヘマトキシリンと、少なくとも2つの追加の成分とを含む。幾つかの実施形態では、ラセミヘマトキシリン製剤は、ラセミヘマトキシリンと、少なくとも3つの追加の成分とを含む。幾つかの実施形態では、ラセミヘマトキシリン製剤は、ラセミヘマトキシリンと、少なくとも4つの追加の成分とを含む。
例えば、幾つかの実施形態では、ラセミヘマトキシリン製剤は、ラセミヘマトキシリン、溶媒、化学酸化剤、及び媒染剤を含む。別の例として、幾つかの実施形態では、ラセミヘマトキシリン製剤は、ラセミヘマトキシリン、溶媒、及び酸を含む。さらに別の例として、幾つかの実施形態では、ラセミヘマトキシリン製剤は、ラセミヘマトキシリン、溶媒、化学酸化剤、媒染剤、並びに、安定剤及び抗酸化剤のいずれか又は両方を含む。さらに別の例として、幾つかの実施形態では、ラセミヘマトキシリン製剤は、ラセミヘマトキシリン、溶媒、化学酸化剤、媒染剤、安定剤、及び抗酸化剤を含む。さらに別の例として、幾つかの実施形態では、ラセミヘマトキシリン製剤は、2つ以上の異なる抗酸化剤、例えば2つ以上の水溶性抗酸化剤を含む。さらに別の例として、幾つかの実施形態では、ラセミヘマトキシリン製剤は、1つ以上の安定剤と1つ以上の抗酸化剤とを含む。
本開示のいずれかのラセミヘマトキシリン製剤内での使用に適した追加の成分は、それらの開示全体がここに参照することによって本明細書に援用される、Avwioro et al. “Histochemical Uses Of Hematoxylin - A Review,” JPCS Vol (1), April-June 2011、及びBryan D. Llewellyn, “Hematoxylin Formulae,” http://stainsfile.info, October 2013に記載されている。
ラセミヘマトキシリン
ヘマトキシリンは、以下に記載される構造を有する。ラセミヘマトキシリン(rac-ヘマトキシリン)は、(+)-ヘマトキシリンと(-)-ヘマトキシリンとの混合物を含む。
Figure 2023524840000002
幾つかの実施形態では、(+)-ヘマトキシリンの(-)-ヘマトキシリンに対する比は、約1:10から約10:1の間の範囲にある。他の実施形態では、(+)-ヘマトキシリンの(-)-ヘマトキシリンに対する比は、約1:5から約5:1の間の範囲にある。さらに他の実施形態では、(+)-ヘマトキシリンの(-)-ヘマトキシリンに対する比は、約1:4から約4:1の間の範囲にある。さらなる実施形態では、(+)-ヘマトキシリンの(-)-ヘマトキシリンに対する比は、約1:3から約3:1の間の範囲にある。さらなる実施形態では、(+)-ヘマトキシリンの(-)-ヘマトキシリンに対する比は、約1:2.5から約2.5:1の間の範囲にある。さらに別の実施形態では、(+)-ヘマトキシリンの(-)-ヘマトキシリンに対する比は、約1:2から約2:1の間の範囲にある。
幾つかの実施形態では、ラセミヘマトキシリンは、約40重量%から約60重量%の間の(+)-ヘマトキシリンを含む。他の実施形態では、ラセミヘマトキシリンは、約45重量%から約55重量%の間の(+)-ヘマトキシリンを含む。さらに他の実施形態では、ラセミヘマトキシリンは、約48重量%から約52重量%の間の(+)-ヘマトキシリンを含む。さらなる実施形態では、ラセミヘマトキシリンは、約50重量%の(+)-ヘマトキシリンを含む。
幾つかの実施形態では、ラセミヘマトキシリンは、本明細書の実施例2に記載される手順に従って誘導することができる。他の実施形態では、ラセミヘマトキシリンは、その開示全体がここに参照することによって本明細書に援用される、Dann O, Hofmann H (1965) Chromane XVII. Die Synthese von (±)-Haematoxylin. Chem. Ber. 98: 1498 - 1504, [German]に記載されている。
安定剤
適切な安定剤には、アミロース、シクロデキストリン、及び複数のアルドース環を含む他の環状又は螺旋状化合物などの多糖類、例えば、単糖類(グルコース、フルクトース、及びガラクトースなど)及び二糖類(ショ糖、マルトース、及びラクトースなど)の1,4-結合及び1,6-結合によって形成される化合物が含まれる。他の安定剤には、クリプタンド、クリプトファン、キャビタンド、クラウンエーテル、デンドリマー、ナノチューブ、カリックスアレーン、バリノマイシン、及びニゲリシンが含まれる。
幾つかの実施形態では、安定剤には、1つ以上の置換基で修飾された、シクロデキストリン誘導体、アミロース誘導体、クリプタンド誘導体、クリプトファン誘導体、キャビタンド誘導体、クラウンエーテル誘導体、デンドリマー誘導体、ナノチューブ誘導体、カリックスアレーン誘導体、バリノマイシン誘導体、及びニゲリシン誘導体が含まれうる。例えば、安定剤には、構成アルドース環のヒドロキシル基又はヒドロキシル基の水素原子の1つ以上が置換基で置換されている、アミロース誘導体及びシクロデキストリン誘導体が含まれる。置換基の例には、アシル基(アセチル基など)、アルキル基、アリール基、トシル基、メシル基、アミノ基(第一級、第二級、第三級、及び第四級アミノ基を含む)、ハロゲン基(-F、-Cl、-Br、及び-I)、ニトロ基、リン含有基(リン酸基及びアルキルリン酸基など)、硫黄含有基(硫酸塩及び硫酸エステル基など)、架橋基(例えば、シクロデキストリン環上の2つ以上のヒドロキシル位置を結合する、又は2つ以上の安定剤を結合する基)、アルデヒド基、ケトン基、オキシム基、カルボン酸基、及びそれらの誘導体、炭酸基及びカルバメート基、ケイ素含有基、ホウ素含有基、スズ含有基、並びにヒドロキシアルキル基(ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基など)が含まれる。
シクロデキストリンの具体例には、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、及びδ-シクロデキストリン、並びにシクロデキストリンのこれらのクラスの各々の誘導体が含まれる。シクロデキストリン誘導体の具体例には、ヒドロキシプロピル化α-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル化β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル化γ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル化α-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル化β-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル化γ-シクロデキストリン、ヒドロキシイソプロピル化α-シクロデキストリン、ヒドロキシイソプロピル化β-シクロデキストリン、ヒドロキシイソプロピル化γ-シクロデキストリン、カルボキシメチル化α-シクロデキストリン、カルボキシメチル化β-シクロデキストリン、カルボキシメチル化γ-シクロデキストリン、カルボキシエチル化α-シクロデキストリン、カルボキシエチル化β-シクロデキストリン、カルボキシエチル化γ-シクロデキストリン、オクチルコハク化α-シクロデキストリン、オクチルコハク化β-シクロデキストリン、オクチルコハク化γ-シクロデキストリン、アセチル化α-シクロデキストリン、アセチル化β-シクロデキストリン、アセチル化γ-シクロデキストリン、硫酸化α-シクロデキストリン、硫酸化β-シクロデキストリン、及び硫酸化γ-シクロデキストリンが含まれる。シクロデキストリン誘導体の他の具体例には、次のβ-シクロデキストリン誘導体が含まれる:2,3-ジメチル-6-アミノメチル-α-シクロデキストリン、6-アジド-α-シクロデキストリン、6-ブロモ-β-シクロデキストリン、6A,6B-ジブロモ-β-シクロデキストリン、6A,6B-ジヨード-β-シクロデキストリン、6-O-マルトシル-β-シクロデキストリン、6-ヨード-α-シクロデキストリン、6-トシル-β-シクロデキストリン、ペルアセチル-マルトシル-β-シクロデキストリン、6-t-ブチルジメチルシリル-β-シクロデキストリン、2,3-ジアセチル-6-ブチルジメチルシリル-β-シクロデキストリン、2,6-ジブチル-3-アセチル-β-シクロデキストリン、2,6-ジブチル-β-シクロデキストリン、2,6-t-ブチル-ジメチルシリル-β-シクロデキストリン、及び2,6-ジ-O-メチル-3-アリル-β-シクロデキストリン。さまざまなシクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体は、例えばCTD,Inc.(米国フロリダ州ハイスプリングス所在)から商業的に入手することができ、又は科学文献、例えば、”Synthesis of Chemically Modified Cyclodextrins,” Croft and Bartsch, Tetrahedron, 39: 1417 - 1474, 1983に概説されている手順に従って合成することができる。
幾つかの実施形態では、安定剤は、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体のうちの1つ以上である。他の実施形態では、安定剤は、β-シクロデキストリン及びβ-シクロデキストリン誘導体のうちの1つ以上である。さらに他の実施形態では、安定剤は、α-アミロース、β-アミロース、又はγ-アミロースでありうる。
幾つかの実施形態では、安定剤は、任意のラセミヘマトキシリン製剤に、約1mMから約1Mの間、約5mMから約500mMの間、又は約5mMから約25mMの間の範囲の濃度で含めることができる。
さらに他の実施形態では、安定剤は、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体であってよく、より具体的には、安定剤は、約25℃で約5mg/mLを超える、例えば、約20mg/mLを超える、約100mg/mLを超える、又は約500mg/mLを超える水溶解度を示す、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体でありうる。
溶媒
本開示のラセミヘマトキシリン製剤には、さまざまな溶媒を利用することができる。幾つかの実施形態では、溶媒は、水、エタノールなどの低級アルカノール、及びポリオールのうちの1つ以上を含む。他の実施形態では、溶媒には、水及びポリオールを含む水性溶媒が含まれる。
ポリオールの適切な例には、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール)、及びポリ(プロピレングリコール)が含まれる。幾つかの実施形態では、水性溶媒製剤は、エチレングリコール及びプロピレングリコールのうちの1つ以上を約5体積%から約45体積%の間で含む。他の実施形態では、水性溶媒製剤は、エチレングリコール及びプロピレングリコールのうちの1つ以上を約10体積%から約40体積%の間で含む。さらに他の実施形態では、水性溶媒製剤は、エチレングリコール及びプロピレングリコールのうちの1つ以上を約15体積%から約30体積%の間で含む。
抗酸化剤
任意のラセミヘマトキシリン製剤での使用に適した抗酸化剤の例には、ハイドロキノン、没食子酸、ソルビトール及びマンニトールなどの還元糖、ベンゾエート、及びヒドロキシ安息香酸塩、亜硫酸塩及びメタ重亜硫酸塩、クエン酸、酒石酸、乳酸、エリソルビン酸 アスコルビン酸、尿酸、タンニン酸などのある特定の酸、及びこれらの酸の塩(Mg2+、NH 、Na、K及びCa2+塩など)、酸化剤として機能する金属を除去するEDTAなどのキレート剤、並びにコーラル水和物が含まれる。他の実施形態では、水溶性抗酸化剤は、ハイドロキノン及び没食子酸n-プロピルのうちの1つ以上を含む。
酸化剤
適切な化学酸化剤は、ラセミヘマトキシリンに拡散してラセミヘマトキシリンを酸化する、大気中に天然に存在する分子状酸素と、ラセミヘマトキシリン(通常は溶液中)と積極的に結合してラセミヘマトキシリンの少なくとも一部をヘマテインに変換する「化学酸化剤」とを含む。半酸化ヘマトキシリン溶液は、その開示全体がここに参照することによって本明細書に援用される、Gill, Acta Cytologica, 18(4):300 -11 (1974)に記載されているように、利用可能なラセミヘマトキシリンの約半分を酸化する量で酸化剤が含まれている溶液である。有用な化学酸化剤の例には、ヨウ素酸塩(ヨウ素酸ナトリウム及びヨウ素酸カリウムなど)、酸化水銀、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウムなど)、過ヨウ素酸塩(過ヨウ素酸ナトリウム及び過ヨウ素酸カリウムなど)、及び過酸化物(過酸化水素など)のうちの1つ以上が含まれる。特定の実施形態では、化学酸化剤はヨウ素酸ナトリウムを含む。
酸化剤は、ラセミヘマトキシリンをヘマテインへと完全に(実質的に定量的になど)酸化するのに十分な量、又はラセミヘマトキシリンをヘマテインへと部分的にのみ酸化するのに十分な量で存在しうる。特定の実施形態では、ラセミヘマトキシリンの半分超が化学酸化剤によってヘマテインへと酸化され、他では、ラセミヘマトキシリンの半分未満が化学酸化剤によってヘマテインへと酸化される。例えば、1%と50%の間のラセミヘマトキシリンが化学酸化剤によってヘマテインへと酸化されうるが、より典型的には、約10%と約30%の間のラセミヘマトキシリンが化学酸化剤によってヘマテインへと酸化される。特定の例では、ラセミヘマトキシリンの製剤に用いる酸化剤に対するモル比は、6:1と1:1の間である。化学酸化剤は、製剤の一部と見なされるが、ラセミヘマトキシリンとの反応の際にその還元生成物へと変換されるものと理解されたい。これらの還元生成物は製剤中に残る。
媒染剤
任意のラセミヘマトキシリン製剤での使用に適した媒染剤には、アルミニウム媒染剤、鉄媒染剤、ビスマス媒染剤、銅媒染剤、モリブデン媒染剤、バナジウム媒染剤、及びジルコニウム媒染剤が含まれる。幾つかの実施形態では、媒染剤はミョウバンを含む。他の実施形態では、媒染剤は硫酸アルミニウムを含む。幾つかの実施形態では、媒染剤は、製剤中のヘマテインの濃度より高い濃度で製剤中に存在していてもよく(屈折率測定法、薄層クロマトグラフィー、又は分光法によって決定可能)、あるいは、製剤中のヘマテインの濃度よりも低い濃度で製剤中に存在していてもよい。代替的に、幾つかの実施形態では、製剤中のラセミヘマトキシリンの媒染剤に対するモル比は、約2:1から約1:100の間の範囲にある。他の実施形態では、製剤中のラセミヘマトキシリンの媒染剤に対するモル比は、約2:1と約1:50の間の範囲にある。さらに他の実施形態では、製剤中のラセミヘマトキシリンの媒染剤に対するモル比は、約1:5から約1:20の間の範囲にある。

幾つかの実施形態では、ラセミヘマトキシリン製剤は、酸及び/又はバッファーをさらに含みうる。ラセミヘマトキシリン製剤には、任意の酸を利用することができる。適切な酸の非限定的な例には、酢酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸、亜硝酸、及びギ酸が含まれる。
ラセミヘマトキシリン製剤の例
幾つかの実施形態では、ラセミヘマトキシリン製剤中のラセミヘマトキシリンは、約0.01Mと約0.05Mの間のモル濃度を有する。他の実施形態では、ラセミヘマトキシリン製剤中のラセミヘマトキシリンは、約0.02Mと約0.04Mの間のモル濃度を有する。さらに他の実施形態では、ラセミヘマトキシリン製剤中のラセミヘマトキシリンは、約0.03Mのモル濃度を有する。
幾つかの実施形態では、ラセミヘマトキシリン製剤は、溶媒としての水とエチレングリコールとの混合物、酸化剤としてのヨウ素酸ナトリウム、媒染剤としての硫酸アルミニウム、及び安定剤としてのβ-シクロデキストリン又はその誘導体を含む。ハイドロキノン及び没食子酸n-プロピルなどの1つ以上の水溶性抗酸化剤も、このような特定の実施形態に含まれうる。他の実施形態では、水とエチレングリコールとの混合物は、約10体積%から約40体積%のエチレングリコールと、約60体積%から約90体積%の水とを含む。幾つかの実施形態では、ラセミヘマトキシリン製剤は、水、グリコールエーテル、及びラセミヘマトキシリンの混合物を含む。
ラセミヘマトキシリン製剤の調製方法
本開示はまた、生物学的試料の組織化学的染色などのためのラセミヘマトキシリン製剤を調製する方法も対象とする。幾つかの実施形態では、該方法は、ヘマテイン溶液を形成すること、ヘマテイン溶液に媒染剤を加えて染色溶液を形成すること、及び染色溶液に安定剤及び抗酸化剤のいずれか又は両方を加えてラセミヘマトキシリン製剤を形成することを含む。幾つかの実施形態では、ヘマテイン溶液の形成は、ラセミヘマトキシリンを溶媒に溶解すること、及びラセミヘマトキシリンの少なくとも一部をヘマテインに変換するのに十分な量の化学酸化剤を添加することを含む。幾つかの実施形態では、ラセミヘマトキシリンの溶解に用いられる溶媒は、水とポリオールとを含む組成物などの水性組成物を含む。本明細書に記載される、適切なポリオールの非限定的な例には、グリセロール、エチレングリコール、及びプロピレングリコールが含まれる。ヘマトキシリン組成物を形成するさらなる方法は、その開示全体がここに参照することによって本明細書に援用される、米国特許出願公開第2017/0284908号に記載されている。
pH低下ラセミヘマトキシリン製剤
本開示は、pH低下ヘマトキシリン製剤を提供する。概して、pH低下ヘマトキシリン製剤は、ラセミヘマトキシリン、酸、及び少なくとも1つの添加剤、例えば本明細書に記載される任意の添加剤を含む。幾つかの実施形態では、少なくとも2つの添加剤が含まれる。他の実施形態では、少なくとも3つの添加剤が含まれる。幾つかの実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、溶媒、ラセミヘマトキシリン、及び酸を含む。幾つかの実施形態では、酸は強酸である。幾つかの実施形態では、強酸は、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、塩酸、及び硝酸から選択される。他の実施形態では、酸は弱酸である。幾つかの実施形態では、弱酸は、フッ化水素酸、及びギ酸から選択される。幾つかの実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、ラセミヘマトキシリン、酸、並びに媒染剤、酸化剤、貯蔵寿命延長剤、抗酸化剤、及び安定剤のうちの少なくとも1つを含む。
幾つかの実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、約2.4未満のpH値を有する。幾つかの実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、約2.375未満のpH値を有する。他の実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、約2.35未満のpH値を有する。他の実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、約2.325未満のpH値を有する。他の実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、約2.3未満のpH値を有する。他の実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、約2.275未満のpH値を有する。他の実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、約2.25未満のpH値を有する。他の実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、約2.225未満のpH値を有する。他の実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、約2.2未満のpH値を有する。他の実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、約2.175未満のpH値を有する。他の実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、約2.15未満のpH値を有する。他の実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、約2.125未満のpH値を有する。他の実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、約2.1未満のpH値を有する。
幾つかの実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、約1.5と約2.4の間のpH値を有する。他の実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、約1.5と約2.3の間のpH値を有する。他の実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、約1.6と約2.3の間のpH値を有する。他の実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、約1.8と約2.3の間のpH値を有する。他の実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、約2と約2.3の間のpH値を有する。他の実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、約2と約2.3の間のpH値を有する。他の実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、約2と約2.2の間のpH値を有する。他の実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、約1.5と約2.2の間のpH値を有する。他の実施形態では、pH低下ヘマトキシリン製剤は、約1.6と約2.2の間のpH値を有する。
当業者は、製剤中の酸の量が、当然ながら、選択される特定の酸、酸のモル濃度、酸の規定度、及び/又はラセミヘマトキシリン製剤中の他の成分の存在に応じて変化しうることを認識するであろう。幾つかの実施形態では、任意のpH低下ラセミヘマトキシリン製剤中の酸の量は、製剤の全容量の約0.05%から約15%の範囲にある。他の実施形態では、任意のpH低下ラセミヘマトキシリン製剤中の酸の量は、製剤の全容量の約0.05%から約12%の範囲にある。さらに他の実施形態では、任意のpH低下ラセミヘマトキシリン製剤中の酸の量は、製剤の全容量の約0.1%から約10%の範囲にある。さらに他の実施形態では、任意のpH低下ラセミヘマトキシリン製剤中の酸の量は、製剤の全容量の約0.1%から約7.5%の範囲にある。さらに他の実施形態では、任意のpH低下ラセミヘマトキシリン製剤中の酸の量は、製剤の全容量の約0.1%から約6%の範囲にある。さらに他の実施形態では、任意のpH低下ラセミヘマトキシリン製剤中の酸の量は、製剤の全容量の約0.1%から約5%の範囲にある。さらに他の実施形態では、任意のpH低下ラセミヘマトキシリン製剤中の酸の量は、製剤の全容量の約0.1%から約4%の範囲にある。さらに他の実施形態では、任意のpH低下ラセミヘマトキシリン製剤中の酸の量は、製剤の全容量の約0.2 %から約4%の範囲にある。
他の実施形態では、任意のpH低下ラセミヘマトキシリン製剤中の酸の量は、製剤の全容量の約0.5%から約12%の範囲にある。さらに他の実施形態では、任意のpH低下ラセミヘマトキシリン製剤中の酸の量は、製剤の全容量の約0.5%から約10%の範囲にある。さらに他の実施形態では、任意のpH低下ラセミヘマトキシリン製剤中の酸の量は、製剤の全容量の約0.5%から約7.5%の範囲にある。さらに他の実施形態では、任意のpH低下ラセミヘマトキシリン製剤中の酸の量は、製剤の全容量の約0.5%から約6%の範囲にある。さらに他の実施形態では、任意のpH低下ラセミヘマトキシリン製剤中の酸の量は、製剤の全容量の約0.5%から約5%の範囲にある。さらに他の実施形態では、任意のpH低下ラセミヘマトキシリン製剤中の酸の量は、製剤の全容量の約0.5%から約4%の範囲にある。さらに他の実施形態では、任意のpH低下ラセミヘマトキシリン製剤中の酸の量は、製剤の全容量の約1%から約4%の範囲にある。
pH低下ラセミヘマトキシリン製剤の調製方法
本開示の幾つかの態様は、pH低下ラセミヘマトキシリン製剤の製造方法を対象とする。幾つかの実施形態では、pH低下ラセミヘマトキシリン製剤は、ラセミヘマトキシリン製剤(例えば、本明細書に開示されるラセミヘマトキシリン製剤のいずれか;又は、上記のいずれかを含む、ラセミヘマトキシリンと少なくとも1つの他の添加剤とを含む任意のヘマトキシリン製剤)のpH値を下げることによって製剤化することができる。
概して、ラセミヘマトキシリン溶液のpH値は、ラセミヘマトキシリン製剤に酸(例えば、強酸)を添加することによって下げることができる。幾つかの実施形態では、酸は強酸である。幾つかの実施形態では、強酸は、塩酸、硫酸、過塩素酸、硝酸、又はそれらの混合物から選択される。他の実施形態では、強酸は塩酸である。幾つかの実施形態では、強酸は1M塩酸である。他の実施形態では、強酸は0.5M塩酸である。他の実施形態では、強酸は0.5M硫酸である。さらに他の実施形態では、強酸は0.25M硫酸である。当然ながら、当業者は、ラセミヘマトキシリン製剤が所定のpH値を達成することを可能にする任意の酸を選択することができよう。
幾つかの実施形態では、ラセミヘマトキシリン又はラセミヘマトキシリン製剤に酸性化溶液を加えて、pHを低下させたラセミヘマトキシリン製剤を提供する。幾つかの実施形態では、酸性化溶液は、酸塩基と1つ以上の添加剤とを含む。幾つかの実施形態では、酸性化溶液の1つ以上の添加剤は、安定剤、媒染剤、酸化剤、貯蔵寿命延長剤、及び抗酸化剤のうちの1つ以上から選択される。酸性化溶液の添加剤は、本明細書に記載されるラセミヘマトキシリン製剤について本明細書に記載される量又は比と同じ量又は比で存在しうる。
当業者は、ラセミヘマトキシリン又はラセミヘマトキシリン製剤に添加される酸及び/又はバッファーの量が、当然ながら、選択される特定の酸、酸のモル濃度、酸の規定度、及び/又は出発ラセミヘマトキシリン製剤中の他の成分の存在に応じて変化しうることを認識するであろう。
幾つかの実施形態では、酸(酸性化溶液)の量は、ラセミヘマトキシリンの溶液又はラセミヘマトキシリン製剤のpH値が約2%から約20%低下する、すなわち、初期のラセミヘマトキシリンの溶液又はラセミヘマトキシリン製剤のpH値が約2%から約20%低下して、比較的低いpH値を有する、pH低下ラセミヘマトキシリン溶液又はpH低下ラセミヘマトキシリン製剤を提供するように加える。他の実施形態では、ラセミヘマトキシリンの溶液又はラセミヘマトキシリン製剤のpH値が約2.5%から約15%低下するような量の酸が添加される。さらに他の実施形態では、ラセミヘマトキシリンの溶液又はラセミヘマトキシリン製剤のpH値が約3%から約12.5%低下するような量の酸が添加される。さらなる実施形態では、ラセミヘマトキシリンの溶液又はラセミヘマトキシリン製剤のpH値が約4%から約12%低下するような量の酸が添加される。さらに別の実施形態では、ラセミヘマトキシリンの溶液又はラセミヘマトキシリン製剤のpH値が約5%から約10%低下するような量の酸が添加される。
幾つかの実施形態では 酸(又は酸性化溶液)を添加したときのラセミヘマトキシリンの溶液又はラセミヘマトキシリン製剤のpH値の変化(すなわち、pH値の低下)は、約0.25である(すなわち、約0.25pH単位の低下)。他の実施形態では、酸を添加したときのラセミヘマトキシリンの溶液又はラセミヘマトキシリン製剤のpH値の変化は約0.225である。他の実施形態では、酸を添加したときのラセミヘマトキシリンの溶液又はラセミヘマトキシリン製剤のpH値の変化は約0.2である。幾つかの実施形態では、酸を添加したときのラセミヘマトキシリンの溶液又はラセミヘマトキシリン製剤のpH値の変化は約0.175である。他の実施形態では、酸を添加したときのラセミヘマトキシリンの溶液又はラセミヘマトキシリン製剤のpH値の変化は約0.15である。他の実施形態では、酸を添加したときのラセミヘマトキシリンの溶液又はラセミヘマトキシリン製剤のpH値の変化は約0.125である。他の実施形態では、酸を添加したときのラセミヘマトキシリンの溶液又はラセミヘマトキシリン製剤のpH値の変化は約0.1である。他の実施形態では、酸を添加したときのラセミヘマトキシリンの溶液又はラセミヘマトキシリン製剤のpH値の変化は約0.075である。
幾つかの実施形態では、酸の量(又は酸性化溶液)は、製剤のpH値が約2.4未満に低下するように、ラセミヘマトキシリンの溶液又はラセミヘマトキシリン製剤に加えられる。他の実施形態では、酸の量は、製剤のpH値が約2.35未満に低下するように、ラセミヘマトキシリンの溶液又はラセミヘマトキシリン製剤に加えられる。他の実施形態では、酸の量は、製剤のpH値が約2.3未満に低下するように、ラセミヘマトキシリンの溶液又はラセミヘマトキシリン製剤に加えられる。他の実施形態では、酸の量は、製剤のpH値が約2.25未満に低下するように、ラセミヘマトキシリンの溶液又はラセミヘマトキシリン製剤に加えられる。他の実施形態では、酸の量は、製剤のpH値が約2.2未満に低下するように、ラセミヘマトキシリンの溶液又はラセミヘマトキシリン製剤に加えられる。他の実施形態では、酸の量は、製剤のpH値が約2.15未満に低下するように、ラセミヘマトキシリンの溶液又はラセミヘマトキシリン製剤に加えられる。他の実施形態では、酸の量は、製剤のpH値が約2.1未満に低下するように、ラセミヘマトキシリンの溶液又はラセミヘマトキシリン製剤に加えられる。
当業者は、選択した出発ヘマトキシリン溶液の性質に関係なく、適切な量の酸(又は酸性化溶液)を添加して、ラセミヘマトキシリン溶液又はラセミヘマトキシリン製剤のpH値を下げることができる。
pH低下ラセミヘマトキシリン製剤のpH値を再調整する方法
本開示の幾つかの態様は、pH低下ラセミヘマトキシリン製剤のpH値を再調整して、染色に適したpH調整ラセミヘマトキシリン製剤を提供することを対象とする。幾つかの実施形態では、該方法は、pH低下ラセミヘマトキシリン製剤に再調整溶液を加えることを含む。幾つかの実施形態では、再調整溶液は、溶媒と、強塩基及び/又はバッファーのうちの1つとを含む。幾つかの実施形態では、溶媒は、本明細書に列挙されたものから選択される。幾つかの実施形態では、同じ溶媒が、pH低下ラセミヘマトキシリン製剤及び再調整溶液において用いられる。
幾つかの実施形態では、強塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムからなる群より選択される。他の実施形態では、塩基はアンモニアである。幾つかの実施形態では、強塩基は1M水酸化ナトリウムである。他の実施形態では、強塩基は0.5M水酸化ナトリウムである。さらに他の実施形態では、強塩基は0.1M水酸化ナトリウムである。
幾つかの実施形態では、バッファーは、マレイン酸塩、リン酸塩、グリシン、クエン酸塩、グリシルグリシン、リンゴ酸塩、ギ酸塩、シアノ酢酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、フマル酸塩、硫酸塩、アラニン、アルギニン、イソロイシン、ロイシン、ノルロイシン、プロリン、セリン、トレオニン、又はそれらの任意の組合せから選択される。幾つかの実施形態では、バッファーの弱酸は、約1.5から約3.5の範囲のpKを有する。他の実施形態では、バッファーの弱酸は、約1.8から約3.2の範囲のpKを有する。さらに他の実施形態では、バッファーの弱酸は、約2から約3の範囲のpKを有する。
幾つかの実施形態では、再調整溶液は、媒染剤、酸化剤、貯蔵寿命延長剤、及び抗酸化剤からなる群より選択される添加剤をさらに含む。
幾つかの実施形態では、十分な量の強塩基、バッファー溶液、又は再調整溶液は、pH低下ラセミヘマトキシリン製剤のpH値が少なくとも約2.4に上昇するように、pH低下ラセミヘマトキシリン製剤に添加される。他の実施形態では、強塩基、バッファー溶液、又は再調整溶液の量は、pH低下ラセミヘマトキシリン製剤が少なくとも約2.45に上昇するように加えられる。さらに他の実施形態では、強塩基、バッファー溶液、又は再調整溶液の量は、pH低下ラセミヘマトキシリン製剤が少なくとも約2.5に上昇するように加えられる。さらなる実施形態では、強塩基、バッファー溶液、又は再調整溶液の量は、pH低下ラセミヘマトキシリン製剤が少なくとも約2.55に上昇するように加えられる。
幾つかの実施形態では、方法は、pH低下ラセミヘマトキシリン製剤のアリコートの初期pH値を測定すること、及びアリコートのpH値が少なくとも約2.4に上昇するまで、ある量の強塩基、バッファー溶液、又は再調整溶液を加えることを含む。幾つかの実施形態では、方法は、pH低下ラセミヘマトキシリン製剤のアリコートの初期pH値を測定すること、及びアリコートのpH値が少なくとも約2.45に上昇するまで、ある量の強塩基、バッファー溶液、又は再調整溶液を加えることを含む。幾つかの実施形態では、方法は、pH低下ラセミヘマトキシリン製剤のアリコートの初期pH値を測定すること、及びアリコートのpH値が少なくとも約2.5に上昇するまで、ある量の強塩基、バッファー溶液、又は再調整溶液を加えることを含む。幾つかの実施形態では、方法は、pH低下ラセミヘマトキシリン製剤のアリコートの初期pH値を測定すること、及びアリコートのpH値が少なくとも約2.55に上昇するまで、ある量の強塩基、バッファー溶液、又は再調整溶液を加えることを含む。
ヘマトキシリン染色のためのシステム
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるラセミヘマトキシリン製剤は、生物学的試料に手動で適用又は導入されるか、あるいはディップアンドダンク技法を使用して適用される。他の実施形態では、ラセミヘマトキシリン製剤は、自動化染色装置などによって生物学的試料に適用又は分配される。当業者は、任意のラセミヘマトキシリン製剤の分配が、そのラセミヘマトキシリン製剤を生物学的試料又は基板(例えばスライド)に適用することを指すことを認識するであろう。
本明細書に開示される方法及び製剤は、既存の自動処理システムでの使用に適合させることができる。例えば、Ventana Medical Systems,Inc.は、各々がここに参照することによって本明細書に援用される、米国特許第5,650,327号、同第5,654,200号、同第6,296,809号、同第6,352,861号、同第6,827,901号、及び同第6,943,029号、並びに米国特許出願公開第20030211630号、及び同第20040052685号を含む、自動化分析を実施するためのシステム及び方法を開示する多くの米国特許の譲受人である。これらのシステムは、本発明と互換性があるように適合させることができる。手短に言えば、前述の出願に記載されている自動化されたスライド処理システムは、スライド上でさまざまなスライド処理動作を実施するワークステーション間で、複数のスライドを保持するトレイを(相互汚染を最小限に抑えるために)実質的に水平な位置で往復させる、大容量スライド処理システムである。処理中に新鮮な試薬を各スライドに適用することができ、スライドがトレイ内で間隔をあけて別々に処理されるため、試薬によるスライドの相互汚染を実質的に排除することができる。一構成では、システムは、輻射ヒータ、脱パラフィン装置/染色装置/溶媒交換ワークステーションの組合せ、対流式オーブン、及びカバースリッパーを含む。パラフィン包埋組織試料を載せたスライドのトレイは、システムの輻射ヒータの下で加熱して、試料内のパラフィンを広げて除去し易くすることができ、また、試料をスライドに接着させることもできる。次に、トレイを多機能性の脱パラフィン装置/染色装置/溶媒交換ワークステーションに運ぶことができ、そこでスライドを脱パラフィン、染色、及び溶媒交換することができる。その後、カバースリップの準備ができている染色されたスライドのトレイは、スライドにカバースリップを追加する、システムのカバースリッパーとの間を往復させることができる。スライドをカバースリップしたら、トレイを対流式オーブンに運び、染色されたスライド上のカバースリップを硬化させることができる。今説明した大容量の染色器は、米国アリゾナ州ツーソン所在のVentana Medical Systems,Incから市販されている。
本明細書に記載される溶液及び製剤を適用することができる他の市販の標本処理システムの例としては、VENTANA SYMPHONY(個別のスライド染色剤)及びVENTANA HE600(個別のスライド染色剤)系、並びにAgilent TechnologiesのDako CoverStainer(バッチ染色剤)、Leica ST4020 Small Linear Stainer(バッチ染色剤)、Leica ST5020 Multistainer(バッチ染色剤)、及びLeica ST5010 Autostainer XL系(バッチ染色剤)、Leica Biosystems Nussloch GmbHのH&E染色剤が挙げられる。
幾つかの実施形態では、上記の染色システムは、任意の組織学的染色プロセスを実施するように構成することができるが、例示的なヘマトキシリン・エオシン染色プロトコールは、試料をスライドに接着させるベーキングステップ、パラフィン包埋試料からパラフィンを除去する脱パラフィン化ステップ、ヘマトキシリン染色ステップ(開示されたヘマトキシリン製剤を利用することができる)、pH値を上昇させてヘマトキシリンを青色に変え、下流に加えられたエオシンとのコントラストの向上をもたらすブルーイングステップ、エオシン染色ステップ、過剰のエオシンを除去してエオシンをさまざまな色合いの赤からピンクへと変化させるために用いられる差別化ステップ、無水エタノールを使用して試料から水を除去する脱水ステップ、スライドを高温及び空気流に曝露して炭化水素を除去するステップ、D-リモネンを試料に分配するカバースリップステップ、並びに硬化ステップを含む。
他の実施形態では、上記の染色システムは任意の組織学的染色プロセスを実施するように構成することができるが、例示的なヘマトキシリン・エオシン染色プロトコールは、試料をスライドに接着させるベーキングステップ、パラフィン包埋試料からパラフィンを除去する脱パラフィン化ステップ、ヘマトキシリン染色ステップ(開示されたヘマトキシリン製剤を利用することができる)、pH値を上昇させてヘマトキシリンを青色に変え、下流に加えられたエオシンとのコントラストの向上をもたらすブルーイングステップ、エオシン染色ステップ、過剰のエオシンを除去してエオシンをさまざまな色合いの赤からピンクへと変化させるために用いられる差別化ステップ、グリコールエーテル(例えば、ジプロピレングリコールプロピルエーテル)を使用して試料から水を除去する脱水ステップ、スライドを高温及び空気流に曝露して炭化水素を除去するステップ、D-リモネンを試料に分配するカバースリップステップ、並びに硬化ステップを含む。
幾つかの実施形態では、自動化染色システムは、ラセミヘマトキシリン製剤を含む1つ以上のリザーバ、容器、及び/又はディスペンサを含む。他の実施形態では、自動化染色システムは、pH低下ヘマトキシリン製剤及び再調整溶液を別々に含む、別個のリザーバ又は容器を含む。幾つかの実施形態では、システムはさらに、ラセミヘマトキシリン製剤(pH低下ラセミヘマトキシリン製剤の再調整の後)及び任意の他の溶液を、生物学的試料、例えば、スライドに載せた生物学的試料に送給する分配システムを含む。幾つかの実施形態では、pH低下ラセミヘマトキシリン製剤及び/又は他の溶液(例えば、再調整溶液)は、生物学的試料への適用前に組み合わせる。幾つかの実施形態では、pH低下ラセミヘマトキシリン製剤の容器及び別の溶液(例えば、再調整溶液)の容器は、加圧され、かつ混合容器に流体接続される。混合容器は、剛性又は可撓性のチューブなど、混合溶液を保持又は移送することができる任意の容器でありうる。幾つかの実施形態では、混合容器はディスペンサに流体接続されたチューブである。幾つかの実施形態では、pH低下ラセミヘマトキシリン製剤及び再調整溶液は、チューブを介してTフィッティングに流体接続される。Tフィッティングからの出力は、次に、ディスペンサに流体接続される。これらの実施形態では、pH低下ラセミヘマトキシリン製剤及び再調整溶液は、Tフィッティングに供給され、Tフィッティングから延びるチューブ内で溶液の混合が行われる。幾つかの実施形態では、pH低下ラセミヘマトキシリン製剤及び再調整溶液は、生物学的試料上に別々に分配される。これらの実施形態では、溶液は、試料上での拡散によって混合するか、又はピペットでの攪拌などによって機械的に混合することができる。
幾つかの実施形態では、自動化標本処理装置は、各基板が、染色される生物学的試料を含む、例えば顕微鏡スライドなどの複数の基板を保持するカルーセルを含むことができる。幾つかの実施形態では、自動染色装置はまた、カルーセルを所定の速度で回転させるためのデバイスと、カルーセルの回転中に、本明細書に記載される溶液及び製剤を含む試薬の基板及び試料への適用を指示及び制御するための機構とを含むこともできる。幾つかの実施形態では、スライドが機器にロードされたら、試験プロトコールは、特定の時間にどの流体が基板上に分配されるかを指示する。幾つかの実施形態では、適切な時間に、ディスペンサラックが回転して、正しい流体を基板上に位置合わせし、機器が所定量の流体を基板上に分配する。幾つかの実施形態では、機器は、流体が所定の時間、生物学的試料と接触したまま維持されることを可能にする。
幾つかの実施形態では、システムは、複数のスライドを実質的に水平位置に保持する(スライドが水平から約0.2度と約1.2度の間の角度で保持された、2つの列など)スライドトレイと、スライドトレイを受け取り、スライドトレイ内のスライド(例えば、垂直スタックで配置される)に対して1つ以上のスライド処理動作を実施する1つ以上のワークステーションとを含む、自動化されたスライド処理システムである。幾つかの実施形態では、ワークステーションは、スライドトレイ内の1つ以上の個々のスライド、例えば、スライドトレイ内の少なくとも2つ又は4つのスライドに対してスライド処理動作を実施することができ、あるいはスライドトレイ内のすべてのスライドに対して同時にスライド処理動作を実施することができる。幾つかの実施形態では、1つ以上のワークステーションは、第2のスライドと接触する第1のスライドに接触する実質的な量の試薬なしに、スライドトレイ内のスライドに試薬を分配し、それによってスライド間の相互汚染を最小限に抑える。このようなワークステーションは、試薬をスライド上に分配する1つ以上の指向性ノズルを含むことができ、例えば、1つ以上の指向性ノズルは、スライドの表面にわたって反対方向に試薬を分配する一対の指向性ノズルを含むことができる。さらに特定の実施形態では、1つ以上の指向性ノズルは、試薬をスライドの底面に向かって分配する指向性ノズルをさらに含むことができる。他の特定の実施形態では、1つ以上のワークステーションは、所与のワークステーション内のスライドトレイに保持された少なくとも2つのスライドに試薬(例えば、同じ試薬)を同時に分配することができ、あるいは1つ以上のワークステーションは、所与のワークステーション内のスライドトレイに保持されたすべてのスライドに試薬(同じ試薬など)を同時に分配することができる。追加のシステム構成要素及びトレイ構成(並びに制御システム)は、それらの開示全体がここに参照することによって本明細書に援用される、米国特許第8,663,991号、同第7,468,161号、及び同第9,528,918号に記載されている。
幾つかの実施形態では、本開示は、複数のスライドを実質的に水平な位置に保持する少なくとも1つのスライドトレイ(ここで、前記生物学的標本は前記スライド上に位置する);前記スライドトレイを受け取り、前記スライドトレイに保持された前記複数のスライドに対して1つ以上のスライド処理動作を実施する、1つ以上のワークステーション;前記スライドトレイを前記1つ以上のワークステーションの内外に輸送するトランスポータ;前記1つ以上のワークステーションに試薬を供給する、前記1つ以上のワークステーションと流体連通する流体工学モジュール;前記1つ以上のワークステーション及び前記流体工学モジュールと流体連通する空気圧モジュール(ここで、前記空気圧モジュールは、真空及び/又は加圧ガスを前記1つ以上のワークステーション及び前記流体工学モジュールに供給する);並びに、前記トランスポータ、前記1つ以上のワークステーション、前記流体工学モジュール、及び前記空気圧モジュールと電気通信する制御モジュール(ここで、前記制御モジュールは、前記生物学的標本の処理中に装置の構成要素の機能を調整する)を含む、生物学的標本を自動的に処理するための装置を提供する。該装置は、本明細書に記載される溶液及び/又は製剤のうちの1つ以上を送給するように適合させることができる。
対比染色
幾つかの実施形態では、システム及び方法は、対比染色などの追加の染色で生物学的試料を染色することをさらに含む。幾つかの実施形態では、試料を対比染色剤と接触させることは、試料を、エオシンY(CAS番号15086-94-9)、オレンジG(CAS番号1936-15-8)、ライトグリーンSFイエロー(CAS番号5141-20-8)、ビスマルクブラウン(CAS番号8005-77-4)、ファストグリーンFCF(CAS番号2353-45-9)、OG-6(オレンジGを含む)、EA25(ライトグリーンSF、ビスマルクブラウン、及びエオシンYを含む)、EA36(ライトグリーンSF、ビスマルクブラウン、及びエオシンYを含む)、EA50(ライトグリーンSF、ビスマルクブラウン、及びエオシンYを含む)、並びにEA65(ライトグリーンSF、ビスマルクブラウン、及びエオシンYを含む)のうちの1つ以上と接触させることを含む。このような対比染色剤を製造する式及び方法は、例えば、StainsFile(Bryan Llewellynによって維持されている組織検査技師のためのインターネットリソース)において見出すことができる;Kiernan, “Histological and Histochemical methods: Theory and Practice,” 3rd Ed. Butterworth Heinemann, Oxford, UK;及び、Horobin and Kiernan, “Conn’s biological stains: a handbook of dyes, stains and fluorochromes for us in biology and medicine,” 10th ed., Oxford: BIOS, ISBN 1859960995, 2002。他の実施形態では、試料をヘマトキシリン製剤と接触させることは、漸進的ヘマトキシリン染色プロトコールを含む。他の実施形態では、試料をヘマトキシリン製剤と接触させることは、回帰的ヘマトキシリン染色プロトコールを含む。該方法は自動化することができ、顕微鏡スライドなどの基板上に支持された生物学的試料に対して実施することができる。特定の実施形態では、該方法は、顕微鏡スライド上に載せた組織切片又は細胞学的試料を染色するために用いられる。対比染色ステップをさらに含む特定の実施形態では、方法は、ヘマトキシリン・エオシン染色法又はPAP染色法、より具体的には自動化されたヘマトキシリン・エオシン又はPAP染色法でありうる。
本発明の染色手順に関連して有用な他の組織学的染色には、アクリジン染料、アントラキノン染料、アリールメタン染料、アゾ染料、ジアゾニウム染料、ニトロ染料、フタロシアニン染料、キニンイミン染料、テトラゾリウム染料、チアゾール染料、及びキサンテン染料などの染料が含まれる。組織学的染色に有用な染料の例には、アセチルイエロー、アシッドブラック1、アシッドブルー22、アシッドブルー93、酸性フクシン、アシッドグリーン、アシッドグリーン1、アシッドグリーン5、アシッドマゼンタ、アシッドオレンジ10、アシッドレッド4、アシッドレッド26、アシッドレッド29、アシッドレッド44、アシッドレッド51、アシッドレッド66、アシッドレッド73、アシッドレッド87、アシッドレッド91、アシッドレッド92、アシッドレッド94、アシッドレッド101、アシッドレッド103、アシッドロゼイン、アシッドルビン、アシッドバイオレット19、アシッドイエロー1、アシッドイエロー9、アシッドイエロー23、アシッドイエロー24、アシッドイエロー36、アシッドイエロー73、アシッドイエローS、アシッドイエローT、アクリジンオレンジ、アクリフラビン、アルシアンブルー、アルシアンイエロー、アルコール可溶性エオシン、アリザリン、アリザリンブルー、アリザリンブルー2RC、アリザリンカーマイン、アリザリンシアニンBBS、アリザロールシアニンR、アリザリンレッドS、アリザリンプルプリン、アルミノン、アミドブラック10B、アミドナフトールレッド、アミドシュヴァルツ、アニリンブルーWS、アニリンパープル、アントラセンブルーSWR、アントラセンブルーSWX、オーラミン0、アゾエオシン、アゾカーマインB、アゾカーマインG、アゾエオシンG、アゾイックジアゾ5、アゾイックジアゾ48、アゾフロキシン、アゾバンブルー、アズールA、アズールB、アズールC、ベーシックブルー8、ベーシックブルー9、ベーシックブルー12、ベーシックブルー15、ベーシックブルー17、ベーシックブルー20、ベーシックブルー26、ベーシックブラウン1、ベーシックフクシン、ベーシックグリーン4、ベーシックグリーン5、ベーシックオレンジ14、ベーシックレッド2、ベーシックレッド5、ベーシックレッド9、ベーシックバイオレット2、ベーシックバイオレット4、ベーシックバイオレット10、ベーシックバイオレット14、ベーシックイエロー1、ベーシックイエロー2、ビーブリッヒスカーレット、ビーブリッヒスカーレットR、ビスマルクブラウンY、ブラジレイン、ブラジリン、ブリリアントクロセイン、ブリリアントクリスタルスカーレット6R、カルシウムレッド、カーマイン、カルミン酸カルモイシン6R、セレスチンブルーB、チャイナブルー、クロランチンファストレッド5B、コチニール、セレスチンブルー、シカゴブルー4B、クロムバイオレットCG、クロモトロープ2R、クロモキサンシアニンR、コンゴコリント、コンゴレッド、コットンブルーコットンレッド、クロセインスカーレット、クロセインスカーレット3B、クロセインスカーレットMOO、クロシン、クリスタルポンソー6R、クリスタルスカーレット、クリスタルバイオレット、ダリア、ダイヤモンドグリーンB、ダイレクトブルー14、ダイレクトブルー58、ダイレクトレッド、ダイレクトレッド10、ダイレクトレッド28、ダイレクトレッド80、ダイレクトレッド81、ダイレクトイエロー7、デュラゾールブルー4R、デュラゾールブルー8G、エオシンB、エオシンブルーイッシュ、エオシン、エオシンY、エオシンイエローイッシュ、エオシノール、エリーガーネットB、エリオクロムシアニンR、エリスロシンBエチルエオシン、エチルグリーン、エチルバイオレット、エバンスブルー、ファストブルーB、ファストグリーンFCF、ファストレッドB、ファストイエロー、ファストイエローエクストラ、ファストイエローG、ファットブラックHB、フルオレセイン、フードグリーン3、ガレオン、ガラミンブルー、ガロシアニン、ゲンチアナバイオレット、ヘリオファストルビンBBL、ヘルベティアブルー、ホフマンバイオレット、ヒドラジンイエロー、インペリアルレッド、イングレインブルー1、イングレインイエロー1、INT、ケルメス、ケルメス酸、ケルンエヒトロート、ラック、ラッカイン酸、ラウスバイオレット、ライトグリーン、リサミンファストイエロー、リサミングリーンSF、ルクソールファストブルー、マゼンタ0、マゼンタI、マゼンタII、マゼンタIII、マラカイトグリーン、マンチェスターブラウン、マルチウスイエロー、モーブ、モーベイン、メルブロミン、マーキュロクロム、メタニルイエロー、メチレンアズールA、メチレンアズールB、メチレンアズールC、メチレンブルー、メチレングリーン、メチルブルー、メチルグリーン、メチルバイオレット、メチルバイオレット2B、メチルバイオレット10B、ミリングイエロー3G、モルダントブルー3、モルダントブルー10、モルダントブルー14、モルダントブルー23、モルダントブルー32、モルダントブルー45、モルダントレッド3、モルダントレッド11、モルダントバイオレット25、モルダントバイオレット39、ナフタレンブルーブラック、ナフトールブルーブラック、ナフトールグリーンB、ナフトールイエローS、ナチュラルブラック1、ナチュラルレッド、ナチュラルレッド3、ナチュラルレッド4、ナチュラルレッド8、ナチュラルレッド16、ナチュラルレッド24、ナチュラルレッド25、ナチュラルレッド28、ナチュラルイエロー6、NBT、ニュートラルレッド、ニューフクシン、ナイアガラブルー3B、ナイトブルー、ナイルブルー、ナイルブルーA、硫酸ナイルブルー、ナイルレッド、ニトロBT、ニトロブルーテトラゾリウム、ヌクレアファストレッド、オイルレッド0、オレンジG、オルセイン、パラロサニリン、パーキンスバイオレット、フロキシンB、ピクリン酸、ポンソー2R、ポンソー6R、ポンソーB、ポンソーS、ポンタミンスカイブルー5B、プリムラ、プリムリン、プルプリン、ピロニンB、ピロニンG、ピロニンY、ローダミンB、ロザニリン、ローズベンガル、サフラン、サフラニン0、スカーレットR、スカーレットレッド、シャルラッハR、シェラック、シリウスレッドF3B、シリウスレッド4B、シリウススープラブルーF3R、ソロクロムシアニンR、ソルブルブルー、ソルベントブラック3、ソルベントブルー38、ソルベントレッド23、ソルベントレッド24、ソルベントレッド27、ソルベントレッド45、ソルベントイエロー94、スピリットソルブルエオシン、スーダンIII、スーダンIV、スーダンブラックB、スーダンレッドBK、サルファーイエローS、スイスブルー、タートラジン、チオフラビンS、チオフラビンT、チオニン、トルイジンブルー、トルオイリン(toluoyline)レッド、トロペオリンG、トリパフラビン、トリパンブルー、ウラニン、ビコリア(Vicoria)ブルー4R、ビクトリアブルーB、ビクトリアブルーR、ビクトリアグリーンB、ウォーターブルーI、水溶性エオシン、ウッドステインスカーレット、及びイエローイッシュエオシン、並びにそれらの組合せが含まれる。この段落で論じた組織化学的染料溶液の製造及び使用するための式及び方法(特定の組織学的状況における「特殊染色」の手順、又は対比染色など)は、例えば、StainsFile(Bryan Llewellynによって維持されている組織検査技師向けのインターネットリソース)に見出すことができる;Kiernan, “Histological and Histochemical methods: Theory and Practice,” 3rd Ed. Butterworth Heinemann, Oxford, UK;及び、Horobin and Kiernan, “Conn’s biological stains: a handbook of dyes, stains and fluorochromes for us in biology and medicine,” 10th ed., Oxford: BIOS, ISBN 1859960995, 2002。直前に引用した2つの結合された参考文献の内容は、ここに参照することによって本明細書に援用される。
実施例1 - ラセミヘマトキシリン製剤を使用した組織染色
序文
VENTANA HE600ヘマトキシリン溶液の2つの個別のロットを調製しHPLC分析及び機能性染色によって評価した。一方のロットは市販のヘマトキシリンから調製し、他方のロットはラセミヘマトキシリンから調製した(例えば、本明細書の実施例2に記載される半合成に従って調製した)。両方の溶液を、機能性試験(H&E染色)及びHPLC分析によって評価し、両方の溶液が本質的に同等であることが分かった。
試薬
(1)EDTA/フェノールレッド希釈液
ボトルに、1Lの市販の0.02M EDTA溶液を加える。
0.01gのフェノールレッド・ナトリウム塩指示染料を加える。
染料が溶解するまで混ぜる。
(2)25mMギ酸アンモニウム移動相バッファー溶液(pH=4、水性)
ボトルに、約1Lの脱イオン(DI)水を加える。
1.0mLの99重量%ギ酸を加える。
1.3mLの約29重量%アンモニア水溶液及びを加えてかき混ぜる。
(3)アセトニトリル(HPLC等級)
(4)MS検出器用希釈液
5Lのボトルに、500mLのHPLC等級のアセトニトリルを加える。
脱イオン水で体積を5Lにする。
1mLの99重量%ギ酸を加える。
数回転倒混和する。
(5)ヘマトキシリン(市販)
(6)ヘマトキシリン(ラセミ体)
(7)エチレングリコール
(8)ヨウ素酸ナトリウム
(9)硫酸アルミニウム水和物
(10)ハイドロキノン
(11)β-シクロデキストリン水和物
試料の調製
VENTANA HE600ヘマトキシリン溶液の2つの試料を、次のHE600ヘマトキシリン製剤開発方法に従って調製した:
容器に65mLの脱イオン水を加える。
中程度の攪拌を開始。
28gのエチレングリコールを加える。
0.61gのヘマトキシリンを加える。
30から120分間、適度に混ぜる。
0.065gのヨウ素酸ナトリウムを加える。
ヨウ素酸ナトリウムの添加から10分以内に、2.7gの硫酸アルミニウム水和物を加える。
30から120分間、適度に混ぜる。
0.93gのハイドロキノンを加える。
1.1gのβ-シクロデキストリンを加える。
脱イオン水で100mLにする。
30から120分間、適度に混ぜる。
最終溶液のpH値は2.45と2.54の間である必要がある。
分析方法
各HE600ヘマトキシリン溶液を、次の条件下でHPLCで分析した:
試料の調製:20μLの試料をEDTA/フェノールレッド希釈液で1mLに希釈する
機器:Waters Alliance e2695セパレーションモジュール
実施時間:30分
注入体積:20μL
流量:1mL/分
カラムID:Waters XBridge C18
カラム長:150mm
カラム直径:4.6mm
粒径:3.5μm
移動相A:25mMギ酸アンモニウムバッファー、pH=4
移動相B:アセトニトリル
カラム温度:40℃
UV-Vis検出器:Waters 2998フォトダイオードアレイ
質量検出器:Waters QDa質量検出器
結果
両方の溶液のクロマトグラム(図1A及び2A)は、同様の定性的応答を示した(図1B及び2Bも参照)。ハイドロキノン、ヒドロキシヘマテイン、ヘマトキシリン、及びヘマテインの主要なピークはすべて、両方のクロマトグラムに存在していた。同じ未確定のマイナーピークが両方のクロマトグラムに存在していた。定量的な結果が得られた各試料を用いて、内標準を分析した。ヘマトキシリンレベルを除き、2つの溶液内のすべての成分がほぼ等しいレベルを示した。ラセミヘマトキシリン製剤は、市販のヘマトキシリンで製造した試料と比較して、約1.5倍のヘマトキシリンレベルを示した。両方のクロマトグラムの結果を表1にまとめる。
Figure 2023524840000003
機能性染色
ラセミヘマトキシリン及び市販のヘマトキシリンから製造した製剤を使用して、VENTANA HE600機器においてヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色で、8対の5-in-1組織スライドを染色した。染色結果で観察された唯一の有意差は、市販のヘマトキシリンから作製した溶液(例えば、図3A及び3Bを参照)が、セミヘマトキシリンから作製した溶液(例えば、図4A及び4Bを参照)よりもわずかに多くのムチン染色を示したことであった。
考察
ラセミ体及び市販のヘマトキシリン溶液は、同様の定性的結果を有するHPLCクロマトグラムを生成しており、両方のヘマトキシリン供給源が製剤プロセスにおいてヨウ素酸ナトリウムによって酸化されて、ヘマテイン及びヒドロキシヘマテインを形成したことが示唆された。ラセミヘマトキシリンは、市販のヘマトキシリンと化学的に同等に反応するように見えた。
ラセミヘマトキシリンのクロマトグラムで示されるヘマトキシリンの濃度がより高いことから、このヘマトキシリン供給源が市販の供給源よりも純粋である可能性があることが示唆された。ヘマトキシリンの酸化生成物(ヒドロキシヘマテイン及びヘマテイン)は、2つの異なる溶液で等しかった。ヨウ素酸ナトリウム(酸化剤)が製剤中の制限試薬であり、ラセミヘマトキシリンにおける開始時のヘマトキシリン濃度が高い(純度が高い)場合、2つの溶液の酸化の完了後に、それらの酸化生成物のレベルは等しくなるが、ラセミヘマトキシリン溶液には、酸化されていないヘマトキシリンが高レベルで残るであろう。
VENTANA HE600機器でのH&E染色に関して、同等のヘマトキシリン溶液は、多くの場合、わずかではあるが有意な染色の違いを示す。これらの違いは、VENTANA HE600機器での染色プロセスに関連する変動に起因するものである。ラセミヘマトキシリン及び市販のヘマトキシリンは、染色(ムチン染色)にわずかな違いしか示さなかったことから、溶液が異なった染色をしたとは言えない。
この実施例に記載された試験は、ラセミヘマトキシリンと市販のヘマトキシリンが、分析及び機能によって、同等であることを示唆した。
実施例2 - ラセミヘマトキシリンの半合成
1.1 一般的方法
すべての反応は、磁気的に攪拌し、標準的なシュレンク技法を利用して不活性ガス(N又はアルゴン)の正圧下で実施した。ガラス器具は、使用前に真空中620℃で繰り返し乾燥させた。液体試薬及び溶媒は、シリンジ又はオーブンで乾燥させたステンレス鋼のカニューレによってゴム隔膜を通じて加えた。固体は、不活性ガス向流下で加えるか、又は適切な溶媒に溶解させた。冷却剤(アセトン/ドライアイス(-78℃)又はHO/氷(0℃))で満たしたデュワー容器内で、低温反応を行った。室温を超える反応温度は加熱した油浴中で行った。文献で知られている手順に従った場合は、それぞれの参照を実験の詳細に追加した。収量とは、特に明記されていない限り、単離された均一かつ分光学的に純粋な材料を指す。
1.1.1 溶媒及び試薬:アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、及びトルエンなどの乾燥溶媒は、供給業者から購入し、そのまま使用した。抽出及びフラッシュカラムクロマトグラフィー用の溶媒は、HPLC等級で購入した。6S,11R-ヘムトキシリン(Hemtoxylin)(1)はSigma-Aldrichから購入した。他の全ての試薬及び溶媒は、化学品供給業者(Sigma-Aldrich、Acros Organics、Alfa Aesar、TCI Europe、abcr)から購入し、受け取ったまま使用した。
1.1.2 クロマトグラフィー:反応及びクロマトグラフィー画分を、Merck KGaAのシリカゲルF254 TLCプレートでの定性薄層クロマトグラフィー(TLC)によってモニタした。ガラスプレート上の被分析物は、紫外光を照射することによって、及び/又はTLCプレートを適切な染色溶液に浸漬した後、ホットエアガン(350℃)で加熱することによって視覚化した。次の染色溶液を適用した:
KMnO染色溶液(3.0g KMnO、20g KCO、5.0mL 5.0重量%NaOH水溶液、0.3L HO)。
フラッシュカラムクロマトグラフィーは、Merck KGaAのGeduran(登録商標)Si60(40-63μm)シリカゲルで実施した。所望の基質を含むすべての画分を合わせ、減圧下で溶媒を除去した後、真空中で乾燥させた(10-2mbar)。
1.1.3 NMR分光法:NMRスペクトルは、陽子核に対して400MHz(炭素核に対して100MHz)で動作するOneNMR Probeを備えたAgilent 400-MR DD2 400MHz分光計で測定した。DMSO-d及びCDClはSigma-Aldrichから購入した。H NMRシフトは、TMSの残留シフトに関連してppmで報告される。H NMRシフトを残留溶媒共鳴に対して較正した:DMSO-d(2.50ppm)及びCDCl(7.26ppm)。13C NMRシフトを、残留溶媒共鳴の多重シグナルの中心に合わせて較正した:DMSO-d(29.84ppm)及びCDCl(77.16ppm)。H NMR分光データは次のように報告される:ppm単位の化学シフト(多重度、結合定数J、積分強度)。多重度は、s(一重項)、br(ブロードシグナル)、d(二重項)、t(三重項)、q(四重項)、m(多重項)、及びm(中心対称多重項)と略される。複合多重度の場合、結合定数がより小さい多重度が最初に述べられる。多重項を除いて、全てのシグナルの化学シフト、並びに中心対称多重項の化学シフトは、共鳴範囲の中心として報告される。H及び13C NMR測定に加えて、等核相関分光法(COSY)、異核単一量子コヒーレンス(HSQC)、及び異核多重結合コヒーレンス(HMBC)などの2D NMR技法を使用して、シグナルを割り当てた。結合定数JはHzで報告される。すべてのNMRスペクトルは、Advanced Chemistry Development,Inc.のプログラムACD/Spectrus Processor 2015.2.7を使用して分析した。
1.1.4 質量分析法:Waters MassLynx V4.1によってコンピュータ制御されたWaters GmbHのHPLC-MSシステム(2695分離モジュール、996フォトダイオードアレイ検出器、MicromassZQ、Grace Vydac 218TP C18 5u)で、低分解能質量分析(LRMS)を記録した。各被分析物について、特徴的な分子断片又は分子イオンピークのみが示される。
1.2 合成経路
Figure 2023524840000004
スキーム1:市販の天然6S,11R-ヘマトキシリン(1)から開始する、rac-ヘマトキシリン(6)の合成経路
1.3 合成手順
Figure 2023524840000005
ベンジルエーテル2:6S,11R-ヘムトキシリン(Hemtoxylin)(1、1.00g、3.31mmol、1.00当量)及びKCO(2.05g、14.9mmol、4.50当量)を、不活性ガス雰囲気下、室温で乾燥アセトン(33mL)に溶解した。次に、臭化ベンジル(1.77mL、14.9mmol、4.50当量)を一度に加え、得られた混合物を激しく攪拌し、56℃(油浴温度)に20時間加熱した。TLC分析が物質1の完全な変換を示したとき、反応物を室温まで冷却し、酢酸エチル(150mL)及びブライン(100mL)の撹拌混合物への添加によってクエンチした。層を分離し、水相を酢酸エチルで抽出した(75mL、2回)。合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。粗ベンジルエーテル2の最終精製は、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、n-Hex:EtOAc=80:20から60:40までの勾配)によって達成し、6S,11R-テトラベンジル-ヘマトキシリン(2、2.01g、3.03mmol、92%)を黄色がかった固体として得た。
(n-Hex:EtOAc=2:3)=0.60。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ = 7.46-7.27 (m, 20H), 6.92 (dd, J = 1.00, 8.66 Hz, 1H), 6.87 (d, J = 1.00, 1H), 6.80 (s, 1H), 6.69 (d, J = 8.78 Hz, 1H), 5.15 (s, 2H), 5.11 (s, 2H), 5.08 (s, 2H), 5.08 (s, 2H), 4.04 (s, 1H), 4.01 (dd, J = 1.38, 11.29 Hz, 1H), 3.72 (d, J = 11.04 Hz, 1H), 3.17 (d, J = 16.19 Hz, 1H), 2.84 (d, J = 15.43 Hz, 1H), 2.31 (s, 1H) ppm。
13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ = 151.6, 149.1, 148.5, 148.0, 137.8, 137.5, 137.4, 137.4, 137.2, 137.0, 132.0, 128.9, 128.7, 128.6, 128.6, 128.2, 128.0, 127.9, 127.7, 127.5, 127.4, 125.0, 116.9, 112.5, 112.4, 108.4, 77.52, 75.3, 72.2, 71.8, 71.5, 70.4, 50.7, 41.2 ppm。
Figure 2023524840000006
Figure 2023524840000007
モノチオカーボネート3:6S,11R-テトラベンジル-ヘマトキシリン(2、0.50g、0.75mmol、1.00当量)を室温で不活性ガス雰囲気下で乾燥THF(10.0mL)に溶解し、その後-78℃に冷却した。次いで、メチルリチウム(0.59mL、0.94mmol、1.25当量)を撹拌された溶液に滴下した。室温で30分間撹拌した後、反応物を再び-78℃に冷却し、O-フェニルクロロチオノホルメート(0.13mL、0.94mmol、1.25当量)を滴下した。得られた混合物を室温で2時間撹拌すると、TLC分析はエーテル2の完全な変換を示した。撹拌された混合物へのジクロロメタン(100mL)及び飽和NaHCO水溶液(75mL)の添加により、反応をクエンチした。層を分離し、水相を酢酸エチルで抽出した(75mL、2回)。合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した(最高30℃)。粗モノチオカーボネート3の最終精製は、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、n-Hex:EtOAc=95:5から85:15までの勾配)によって達成し、6S,11R-テトラベンジル-ヘマトキシリン-O-フェニル-モノチオカーボネート(3、0.53g、0.66mmol、87%)を黄色がかった発泡体として得た。
(n-Hex:EtOAc=2:1)=0.75。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ = 7.46-7.25 (m, 23H), 7.10-7.08 (m, 2H), 6.96 (d, J = 1.00, 8.66 Hz, 1H), 6.89 (s, 1H), 6.82 (s, 1H), 6.71 (d, J = 8.66 Hz, 1H), 5.36 (dd, J = 1.76, 12.92 Hz, 1H), 5.15 (s, 2H), 5.13 (s, 2H), 5.09 (m, 2H), 4.60 (s, 1H), 3.75-3.70 (m, 2H), 3.59 (d, J = 16.94 Hz, 1H) ppm。
13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ = 192.2, 153.1, 151.7, 149.3, 148.9, 148.0, 137.8, 137.4, 137.4, 137.3, 137.3, 134.9, 130.5, 129.6, 128.7, 128.6, 128.6, 128.6, 128.2, 128.0, 128.0, 127.7, 127.5, 127.4, 126.7, 124.5, 122.1, 115.5, 112.2, 111.8, 108.2, 89.9, 75.3, 72.1, 71.7, 71.5, 64.5, 49.3, 39.2 ppm。
Figure 2023524840000008
Figure 2023524840000009
アルケン4:6S,11R-テトラベンジル-ヘマトキシリン-O-フェニル-モノチオカーボネート(3、470mg、0.59mmol)を不活性ガス雰囲気下、室温で乾燥トルエン(15.0mL)に溶解した。反応混合物を激しく攪拌し、115℃(油浴温度)に3時間加熱すると、TLC分析で物質3が完全に変換されたことが示された。次いで、反応物を室温まで冷却し、真空中で濃縮した。このようにして得られた粗アルケン4をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、n-Hex:EtOAc=95:5から70:30までの勾配)で精製し、3,4,9,10-テトラキス(ベンジルオキシ)-6,7-ジヒドロインデノ[2,1-c]クロメン(4、308mg、0.48mmol、81%)を無色の固体(空気に曝露すると赤みを帯びる)として得た。
(n-Hex:EtOAc=3:1)=0.50。
1HNMR (CDCl3, 400 MHz): δ = 7.52-7.25 (m, 22H), 7.14 (s, 1H), 6.61 (d, J = 8.28 Hz, 1H), 5.21 (s, 2H), 5.19 (s, 2H), 5.15 (s, 2H), 5.11 (s, 4H), 3.33 (s, 1H) ppm。
13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ = 152.7, 148.2, 147.8, 147.4, 137.9, 137.7, 137.5, 137.4, 137.2, 137.2, 135.3, 134.3, 131.8, 128.8, 128.7, 128.6, 128.6, 128.3, 128.0, 128.0, 128.0, 127.9, 127.7, 127.6, 127.5, 117.8, 116.5, 112.4, 109.4, 106.6, 75.3, 72.7, 72.0, 71.2, 67.2, 37.5 ppm。
Figure 2023524840000010
Figure 2023524840000011
rac-ベンジルエーテル5:アルケン4(200mg、0.31mmol、1.00当量)を不活性ガス雰囲気下、室温で乾燥THF(5.0mL)に溶解し、続いて0~4℃に冷却した。次いで、ボランテトラヒドロフラン複合体(0.62mL、THF中1m、0.62mmol、2.00当量)を撹拌下でゆっくり加えた。得られた混合物を室温で4時間撹拌すると、TLC分析は物質4が完全に消費されたことを示した。次に、無水エタノール(1.00mL)をゆっくり加え(H発生注意)、撹拌をさらに10分間続けた。その後、水酸化ナトリウム水溶液(3m、2.0mL)及び過酸化水素(30重量%、0.8mL)を加え、反応物をさらに90分間激しく撹拌した。ジクロロメタン(75mL)及び水(50mL)で希釈した後、層を分離し、水相をジクロロメタン(50mL、2回)で抽出した。合わせた有機層をブライン(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。粗rac-ベンジルエーテル5の最終精製は、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、n-Hex:EtOAc=80:20から60:40までの勾配)によって達成し、rac-テトラベンジル-ヘマトキシリン(5、194mg、0.29mmol、94%)を橙色の発泡体として得た。
(n-Hex:EtOAc=2:3)=0.60。
1H NMR (DMSO-D6, 400 MHz): δ = 7.46-7.27 (m, 20H), 7.11-7.08 (s, 2H), 6.93 (s, 1H), 6.74 (d, J = 8.78 Hz, 1H), 5.14-5-04 (m, 6H), 4.91 (dd, J = 1.13, 11.67 Hz, 2H), 3.97 (s, 1H), 3.90 (d, J = 11.29 Hz, 1H), 3.76 (d, J = 11.04 Hz, 1H), 2.90 (s, 2H) ppm。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz), 13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ=データは、化合物2について記録されたものと一致する。
Figure 2023524840000012
Figure 2023524840000013
rac-ヘムトキシリン(Haemtoxylin)6[1-3]:rac-テトラベンジル-ヘマトキシリン(5、600mg、0.91mmol、1.00当量)を、不活性ガス雰囲気下、室温で脱気した乾燥酢酸エチル(5.0mL)に溶解した。これに、木炭上のパラジウム(96.3mg、10重量%Pd、0.09mmol、0.10当量Pd)を加え、排気及びバックフィリングによって雰囲気を水素と交換した(3サイクル)。得られた混合物を2日間激しく攪拌すると、TLC分析は物質6への完全な変換を示した。続いて、脱気したセライトのプラグで懸濁液を濾過し(脱気した酢酸エチル洗浄液)、不活性ガス雰囲気下、真空中で濃縮した。得られた橙色のガラス状固体(250mg)を脱気水から結晶化して、rac-ヘマトキシリン(6、187mg、0.62mmol、68%)を黄色がかった茶色の固体として得た。
(n-Hex:EtOAc=2:3)=0.10。
1H NMR (DMSO-D6, 400 MHz): δ = 8.57 (s, br, 3H), 8.21 (s, br, 1H), 6.64-6.61 (m, 2H), 6.53 (s, 1H), 6.42 (d, J = 9.54 Hz, 1H), 5.27 (s, br, 1H), 3.92-3.86 (m, 2H), 3.59 (d, J = 10.29 Hz, 1H), 2.88 (d, J = 15.43 Hz, 1H), 2.72 (d, J = 15.31 Hz, 1H) ppm。
13C NMR (DMSO-D6, 100 MHz): δ = 144.2, 144.0, 143.9, 142.5, 135.6, 133.2, 129.7, 119.3, 115.2, 112.0, 111.7, 108.7, 76.3, 69.7, 49.9, 42.0 ppm。
Figure 2023524840000014
実施例3 - 合成ヘマトキシリンの等価性分析
現在、ヘマトキシリンは、少数の商用生産者によって丸太の木の心材から抽出されている。多くの場合、製品は、不純物のレベルと、ヘマトキシリンのヘマテインに対する比の両方において、バッチ間及び製造業者間で異なっている。これらの要因は、合成ヘマトキシリンが、商業生産者によって現在提供されている天然産物に代わる、より一貫した潜在的に優れた代替品を提供できることを示唆している。
合成ヘマトキシリンの染色性能を、Abbey Color, Inc.から購入した市販のヘマトキシリン(ロット#7740)に対して評価した。ラセミ体の合成ヘマトキシリンは、Otto Dann and Hans Hofman, “Die Synthese von (+/-)- Hamatoxylin, Chromane (XVII)”, 1965, pages 1498-1504に記載された手順に従って生成した。染色性能は、ヘマトキシリンを含むVentana製品のスイート全体で評価した。染色には、弾性NFヘマトキシリン、HE600ヘマトキシリン、トリクローム・ヘマトキシリン、ムシカルミン・鉄・ヘマトキシリン、ヘマトキシリンI、及びヘマトキシリンIIが含まれていた。評価した各染色について、製剤は、合成ヘマトキシリン及び市販のヘマトキシリンを用いて製造した。同等性は、16対の分析(それぞれ32枚のスライド)を使用して測定した。すべての試験スライドは、資格のあるリーダーが分析した。
概して、合成ヘマトキシリンの性能は、天然産物と同等、又は天然産物より良好であった。Hem IIの合成製剤を使用したすべてのスライドは極めて優れており、核クロマチンの詳細は、多くの場合、天然産物を使用した製剤よりも良好であった。合成製剤を試験した特別染色はすべて、天然の製剤と同等であるか、又は天然の製剤より良好であった。
材料及び方法
弾性NFヘマトキシリンは、Ventana MF 09186212001、rev Cに従って調製した。HE600ヘマトキシリンは、Ventana MF 07283270001、rev Mに従って調製した。トリクローム・ヘマトキシリンAは、Ventana MF 06518168001、rev Fに従って調製した。鉄ヘマトキシリンAは、次に従って調製した:Ventana MF 75001、rev P。いずれの場合も、各製剤20mlを製造し、それぞれ100枚のスライドを染色できるようにした。
ヘマトキシリンIの調製:0.3g
材料
脱イオン水
エチレングリコール、部品#10547
ヘマトキシリン染料、材料#06002960001又は合成材料
ヨウ素酸ナトリウム、BeanTown Chemical社、カタログ#212330-100G
硫酸アルミニウム、部品#10357
氷酢酸、VWR社、製品#0714-500ML
Tween20、Sigma社、カタログ#P-7949
手順
56.25mlの水と20.87gのエチレングリコールとを混合
0.30gのヘマトキシリン及び36.0mgのヨウ素酸ナトリウムを添加
室温で20分撹拌
5.28gの硫酸アルミニウム及び1.5mlの酢酸を添加
室温で1時間撹拌
溶液を濾過
75.0mgのTween20を添加
ヘマトキシリンIIの調製:0.15g
材料
脱イオン水
エチレングリコール、部品#10547
ヘマトキシリン染料、材料#06002960001又は合成材料
ヨウ素酸ナトリウム、BeanTown Chemical社、カタログ#212330-100G
硫酸アルミニウム、部品#10357
氷酢酸、VWR社、製品#0714-500ML
Tween20、Sigma社、カタログ#P-7949
手順
56.5mlの水と0.87gのエチレングリコールとを混合
0.15gのヘマトキシリン及び18.0mgのヨウ素酸ナトリウムを添加
室温で20分撹拌
1.32gの硫酸アルミニウム及び1.5mlの酢酸を添加
室温で1時間撹拌
溶液を濾過
75.0mgのTween20を添加
注:溶液は室温で保存し、使用前に48時間熟成させる。
ヘマトキシリンI希釈液の調製及び染色
(1)11.6mL酢酸(P/N10040)及び62.4mL PEG200(P/N10068)を使用して72mL酢酸/PEG200ストックを作製した。10回転倒混和した。
(2)以下にリストされている必要な材料の量で一連の希釈を準備した:
一連の適切なサイズの容器に適切な量の水を加える。
PEG/酢酸ストック溶液を加える。
適切な量のヘマトキシリン原料を加える。
10回転倒混和する。
希釈液を標識された顧客の充填可能なディスペンサに入れ、一般的な対比染色バーコードラベルで標識する。
(3)認定されたSymphony MTB(P/N78T7000)を使用し、次の試験プロトコールを使用して希釈液を試験する:
プロトコールの一次抗体として陰性対照マウス(Ig)P/N760-2014を選択する。16分間の一次抗体インキュベーションを選択する。
すべてのヘマトキシリン希釈液について、4分間の対比染色インキュベーションを選択する。
4分間のブルーイング試薬(P/N760-2037)インキュベーションを選択する。
Figure 2023524840000015
ヘマトキシリンII希釈液の調製及び染色
1. 以下に列挙されている、必要とされる材料の量で一連の希釈液を調製した。
一連の適切なサイズの容器に適切な量の水を加える。
必要な量の氷酢酸(P/N10040)を加える。
必要な量のポリエチレングリコール200(P/N10068)を加える。
必要な量のインハウスのヘマトキシリンII対比染色剤を加える。
10回転倒混和する。
以下の希釈液を標識された顧客の充填可能なディスペンサに入れ、一般的な対比染色バーコードラベルで標識する。
2. 認定されたSymphony MTB(P/N78T7000)を使用し、次の試験プロトコールを使用して希釈液を試験する:
プロトコールの一次抗体としてNegative Control Mouse (Ig)P/N760-2014を選択する。16分間の一次抗体インキュベーションを選択する。
すべてのヘマトキシリンII希釈液について、4分間の対比染色インキュベーションを選択する。
4分間のブルーイング試薬(P/N760-2037)インキュベーションを選択する。
Figure 2023524840000016
実施完了後、OP2100-028及びOP2100-030に従って、スライドを洗浄、脱水、及びカバースリップした。
スライドを、適格な読み取り機で読み取り、4分間のインキュベーション時間で58%の力価を標準製剤として選択した。
Figure 2023524840000017
結論
全体として、合成ヘマトキシリンの性能は天然製剤と同等であるか、又は天然製剤より良好であった。合成性能に問題があった唯一の状況は、合成製剤が標的核染色とほぼ同じ強度で、さらに誇張された細胞質染色を与えるように見えた、Hem I製剤であった。これは染料自体の問題ではなく、製剤の問題のように思われる。
図10~15に示されるように、合成HE600製剤を使用したスライドは、天然製剤よりも優れていた。合成製剤を使用したすべてのHE600スライドは、より鮮明に見え、より多くの核クロマチンの詳細を提供する。Hem IIの合成製剤を使用したすべてのスライドは優れており、核クロマチンの詳細は天然のものより良好であることが多かった。これは、より詳細には、図7A及び7B(結腸)並びに図8A及び8B(腎臓)において特に明白である。合成製剤を試験した特別染色はすべて、天然と同等であるか、又は天然より良好であった。合成トリクローム・ヘマトキシリンによる染色である、図5A及び5Bでは、天然製剤と同等であるか、又は天然製剤より良好な染色が得られた。図6A及び6Bのムシカルミン・鉄・ヘマトキシリンの場合、合成製剤は、天然製剤によって生成された染色よりもはるかに高いコントラストで明らかに優れた染色を生成した。合成ヘマトキシリンは弾性スライド上で適切な染色パターンを示したが、染色は市販のヘマトキシリンで染色されたものよりも顕著に薄かったことに留意されたい。このことは、弾性NFヘマトキシリンのSOPに従うと、合成ヘマトキシリンはエタノールに完全に溶解しなかったことから、予想されていた。
本明細書中で言及される及び/又は出願データシートに列挙される全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許刊行物は、ここに参照することによってそれらの全体が本明細書に援用される。必要に応じて、実施形態の態様を変更して、さまざまな特許、出願、及び刊行物の概念を採用し、さらに別の実施形態を提供することができる。
本開示について、多くの例示的な実施形態を参照して説明してきたが、本開示の原理の趣旨及び範囲内に含まれる他の多数の修正及び実施形態が当業者によって考案されうるものと理解されたい。より具体的には、本開示の趣旨から逸脱することなく、前述の開示、図面、及び添付の特許請求の範囲内で、主題の組合せ構成の構成部品及び/又は配置において合理的な変形及び修正が可能である。構成部品及び/又は配置における変形及び修正に加えて、代替的な使用についても当業者には明らかであろう。
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Claims (80)

  1. 溶媒、ラセミヘマトキシリン、化学酸化剤、媒染剤、安定剤、及び抗酸化剤を含む、ヘマトキシリン製剤。
  2. ヘマトキシリン製剤中に存在する化学酸化剤の量が、ラセミヘマトキシリンの少なくとも一部をヘマテインに変換するのに十分である、請求項1に記載のヘマトキシリン製剤。
  3. 溶媒が水性溶媒であり、抗酸化剤が水溶性抗酸化剤である、請求項1又は2に記載のヘマトキシリン製剤。
  4. 水溶性抗酸化剤がハイドロキノンを含む、請求項3に記載のヘマトキシリン製剤。
  5. 溶媒が、水、低級アルカノール、及びポリオールのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載のヘマトキシリン製剤。
  6. 溶媒が、水及びポリオールを含む、請求項1に記載のヘマトキシリン製剤。
  7. ポリオールが、プロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール)、及びポリ(プロピレングリコール)からなる群より選択される、請求項6に記載のヘマトキシリン製剤。
  8. 約1%と約50%の間のヘマトキシリンが、化学酸化剤によってヘマテインへと酸化される、請求項1から7のいずれか一項に記載のヘマトキシリン製剤。
  9. 化学酸化剤が、ヨウ素酸ナトリウム、酸化水銀、過マンガン酸カリウム、過ヨウ素酸カリウム、過酸化水素、及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載のヘマトキシリン製剤。
  10. 化学酸化剤がヨウ素酸ナトリウムを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のヘマトキシリン製剤。
  11. 媒染剤が、アルミニウム媒染剤、鉄媒染剤、ビスマス媒染剤、銅媒染剤、モリブデン媒染剤、バナジウム媒染剤、ジルコニウム媒染剤、及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載のヘマトキシリン製剤。
  12. 媒染剤が硫酸アルミニウムを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のヘマトキシリン製剤。
  13. 安定剤が、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のヘマトキシリン製剤。
  14. シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体が、β-シクロデキストリン及びβ-シクロデキストリン誘導体を含む、請求項13に記載のヘマトキシリン製剤。
  15. 酸をさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のヘマトキシリン製剤。
  16. ヘマトキシリン製剤が酸添加剤を含まない、請求項1から15のいずれか一項に記載のヘマトキシリン製剤。
  17. ヘマトキシリンの酸化剤に対するモル比が約6:1と約1:1の間の範囲にある、請求項1から16のいずれか一項に記載のヘマトキシリン製剤。
  18. 生物学的試料を染色するための方法であって、生物学的試料をラセミヘマトキシリン製剤と接触させることを含み、ラセミヘマトキシリン製剤が、溶媒、ヘマトキシリン、媒染剤、抗酸化剤、安定剤、及びラセミヘマトキシリンの少なくとも一部をヘマテインに変換するのに十分な量の化学酸化剤を含む、方法。
  19. 安定剤が、多糖、クリプタンド、クリプトファン、キャビタンド、クラウンエーテル、デンドリマー、ナノチューブ、カリックスアレーン、バリノマイシン、ニゲリシン、及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
  20. 試料を対比染色剤と接触させることをさらに含む、請求項18又は19に記載の方法。
  21. 対比染色剤が、エオシンY、オレンジG、ライトグリーンSFイエロー、ビスマルクブラウン、及びファストグリーンFCFからなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
  22. 試料をヘマトキシリン製剤と接触させることが、漸進的ヘマトキシリン染色プロトコールを含む、請求項18から21のいずれか一項に記載の方法。
  23. 試料をヘマトキシリン製剤と接触させることが、回帰的ヘマトキシリン染色プロトコールを含む、請求項18から21のいずれか一項に記載の方法。
  24. 方法が自動化される、請求項18から23のいずれか一項に記載の方法。
  25. 生物学的試料が基板上に支持される、請求項18から24のいずれか一項に記載の方法。
  26. 基板が顕微鏡スライドを含む、請求項25に記載の方法。
  27. 生物学的試料が、組織学的試料又は細胞学的試料を含む、請求項18から26のいずれか一項に記載の方法。
  28. 方法が自動化される、請求項27に記載の方法。
  29. 安定剤が、約25℃で約100mg/mLを超える水溶解度を有する、請求項18から28のいずれか一項に記載の方法。
  30. 抗酸化剤が、ハイドロキノン、没食子酸n-アルキル、還元糖、ベンゾエート、ヒドロキシ安息香酸塩、亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、クエン酸、酒石酸、乳酸、エリソルビン酸、アスコルビン酸、尿酸、タンニン酸、キレート剤、コーラル水和物、並びにそれらの誘導体及び塩からなる群より選択される、請求項18から29のいずれか一項に記載の方法。
  31. ラセミヘマトキシリン製剤が、請求項1から17のいずれか一項に記載のヘマトキシリン製剤である、請求項18から29のいずれか一項に記載の方法。
  32. ラセミヘマトキシリンとpH低下ヘマトキシリン製剤の全容量の約0.2%から約4%の範囲の量の酸とを含むpH低下ヘマトキシリン製剤であって、pH低下ヘマトキシリン製剤が約2.4未満のpH値を有し、酸が、塩酸、硫酸、過塩素酸、及び硝酸からなる群より選択される、pH低下ヘマトキシリン製剤。
  33. pH値が約2.3未満である、請求項32に記載のpH低下ヘマトキシリン製剤。
  34. pH値が約2.2未満である、請求項32に記載のpH低下ヘマトキシリン製剤。
  35. pH値が約2.1未満である、請求項32に記載のpH低下ヘマトキシリン製剤。
  36. pH値が約2.1と約2.2の間の範囲にある、請求項32に記載のpH低下ヘマトキシリン製剤。
  37. 酸が、塩酸、硫酸、過塩素酸、及び硝酸からなる群より選択される、請求項32から36のいずれか一項に記載のpH低下ヘマトキシリン製剤。
  38. 媒染剤及び酸化剤をさらに含む、請求項32から37のいずれか一項に記載のpH低下ヘマトキシリン製剤。
  39. ポリオールをさらに含む、請求項32から38のいずれか一項に記載のpH低下ヘマトキシリン製剤。
  40. ポリオールが、プロピレングリコール、エチレングリコール、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項39に記載のpH低下ヘマトキシリン製剤。
  41. 製剤が本質的に、ラセミヘマトキシリン、媒染剤、酸化剤、及び酸からなる、請求項32に記載のpH低下ヘマトキシリン製剤。
  42. 酸化剤がヨウ素酸ナトリウムを含み、媒染剤がアルミニウムを含む、請求項38に記載のpH低下ヘマトキシリン。
  43. 生物学的試料を染色する方法であって、請求項32から42のいずれか一項に記載のpH低下ヘマトキシリン製剤のアリコートのpH値を上昇させて、約2.4から約2.6の範囲のpH値を有するpH調整ラセミヘマトキシリン製剤溶液を提供すること、及び生物学的試料を約2.4から約2.6の範囲のpH値を有するpH調整ラセミヘマトキシリン製剤と接触させることを含む、方法。
  44. pH低下ヘマトキシリン製剤のアリコートのpH値が、強塩基及び/又はバッファーを含む再調整溶液を加えることによって上昇される、請求項43に記載の方法。
  45. 強塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、及びアンモニアからなる群より選択される、請求項44に記載の方法。
  46. バッファーの弱酸が、約1.5から約3.5の範囲のpKを有する、請求項44に記載の方法。
  47. 再調整溶液が、ポリオール、酸化剤、媒染剤、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される添加剤をさらに含む、請求項44に記載の方法。
  48. 生物学的試料をpH調整ラセミヘマトキシリン製剤と接触させる前に、pH低下ヘマトキシリン製剤のpH値が上昇される、請求項43から47のいずれか一項に記載の方法。
  49. 生物学的試料が、組織学的試料又は細胞学的試料を含む、請求項43から48のいずれか一項に記載の方法。
  50. 第1の成分及び第2の成分を含むキットであって、
    第1の成分が、ラセミヘマトキシリンとpH低下ヘマトキシリン製剤の全容量の約0.1%から約10%の範囲の量の酸とを含むpH低下ヘマトキシリン製剤を含み、pH低下ヘマトキシリン製剤が約2.4未満のpH値を有し;かつ
    第2の成分が強塩基又はバッファーを含み、第1の成分と第2の成分とが混合されるとpH低下ヘマトキシリン製剤のpH値が約2.4よりも高く上昇するように、第2の成分が第1の成分に対して相対的な量で提供される、
    キット。
  51. 第1の成分と第2の成分とが混合されるとpH低下ヘマトキシリン製剤のpH値が約2.5よりも高く上昇するように、第2の成分が第1の成分に対して相対的な量で提供される、請求項50に記載のキット。
  52. 第1の成分と第2の成分とが混合されるとpH調整ラセミヘマトキシリン製剤のpH値が約2.45から約2.54の間の範囲になるように、第2の成分が第1の成分に対して相対的な量で提供される、請求項50に記載のキット。
  53. 第1の成分及び第2の成分が混合されるとpH調整ラセミヘマトキシリン製剤のpH値が約2.5から約2.6の間の範囲になるように、第2の成分が第1の成分に対して相対的な量で提供される、請求項50に記載のキット。
  54. 第1の成分が、媒染剤及び酸化剤をさらに含む、請求項50から53のいずれか一項に記載のキット。
  55. 第1の成分が貯蔵寿命延長剤をさらに含む、請求項54に記載のキット。
  56. 貯蔵寿命延長剤がポリオールを含む、請求項55に記載のキット。
  57. ポリオールが、プロピレングリコール、エチレングリコール、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項56に記載のキット。
  58. pH低下ヘマトキシリン製剤が、ラセミヘマトキシリン、媒染剤、酸化剤、及び酸から本質的になる、請求項50に記載のキット。
  59. pH低下ヘマトキシリン製剤が請求項32から42のいずれか一項に記載のpH低下ヘマトキシリン製剤である、請求項50から58のいずれか一項に記載のキット。
  60. 第2の成分が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムからなる群より選択される強塩基を含む、請求項50から59のいずれか一項に記載のキット。
  61. 第2の成分が、シアノ酢酸塩、フマル酸塩、及び硫酸塩からなる群より選択されるバッファーを含む、請求項50から59のいずれか一項に記載のキット。
  62. 対比染色剤を含む第3の成分をさらに含む、請求項50から61のいずれか一項に記載のキット。
  63. 対比染色剤が、エオシンY、オレンジG、ライトグリーンSFイエロー、ビスマルクブラウン、及びファストグリーンFCFからなる群より選択される、請求項62に記載のキット。
  64. 基板上に載せた生物学的試料を染色するためのシステムであって、
    ラセミヘマトキシリンとpH低下ヘマトキシリン製剤の全容量の約0.1%から約10%の範囲の量の酸とを含むpH低下ヘマトキシリン製剤を含む第1の容器であって、pH低下ヘマトキシリン製剤が約2.4未満のpH値を有する、第1の容器;
    再調整溶液を含む第2の容器であって、pH低下ヘマトキシリン製剤と再調整溶液とを合わせてヘマトキシリン染色溶液を提供することができるように、第1の容器及び第2の容器が混合容器に流体接続される、第2の容器
    を含む、システム。
  65. 基板上に載せた生物学的試料を保持するための基板ホルダをさらに含み、ヘマトキシリン染色溶液を生物学的試料に適用できるように、基板ホルダが混合容器と流体連通している、請求項64に記載のシステム。
  66. pH低下ヘマトキシリン製剤が、請求項32から42のいずれか一項に記載のpH低下ヘマトキシリン製剤である、請求項64又は65に記載のシステム。
  67. 生物学的試料を染色するためのラセミヘマトキシリンの使用。
  68. 生物学的試料が組織学的試料である、請求項67に記載の使用。
  69. 生物学的試料が細胞学的試料である、請求項67に記載の使用。
  70. 生物学的試料を染色するためのヘマトキシリン製剤の使用であって、ヘマトキシリン製剤が、溶媒、ラセミヘマトキシリン、化学酸化剤、媒染剤、安定剤、及び抗酸化剤を含む、使用。
  71. 生物学的試料が組織学的試料である、請求項70に記載の使用。
  72. 生物学的試料が細胞学的試料である、請求項70に記載の使用。
  73. 生物学的試料の染色が自動化される、請求項70から72のいずれか一項に記載の使用。
  74. ヘマトキシリン製剤が、請求項1から17のいずれか一項に記載のヘマトキシリン製剤である、請求項70から73のいずれか一項に記載の使用。
  75. ヘマトキシリン染色組成物であって、溶媒、ラセミヘマトキシリン、ラセミヘマトキシリンの少なくとも一部をヘマテインに変換するのに十分な量の化学酸化剤、媒染剤を含み、組成物が塩化物(Cl)及び硫酸塩(SO 2-)をさらに含み、塩化物/硫酸塩のモル比が約2.5:1から約1:4の間の範囲にある、ヘマトキシリン染色組成物。
  76. 塩化物/硫酸塩のモル比が、約2:1から約1:2の間の範囲にある、請求項75に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  77. 塩化物/硫酸塩のモル比が、約1.5:1から約1:1.5の間の範囲にある、請求項75に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  78. 塩化物/硫酸塩のモル比が、約1:1から約1:1の間の範囲にある、請求項75に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  79. ラセミヘマトキシリンが約0.01Mから約0.05Mの間の範囲のモル濃度を有する、請求項75から78のいずれか一項に記載のヘマトキシリン染色組成物。
  80. ヘマトキシリン製剤の製造方法であって、溶媒にヘマトキシリンを加えること;ヘマトキシリンの少なくとも一部をヘマテインに変換するのに十分な量の化学酸化剤を加えること;媒染剤及び対イオンを加えることを含み、製剤が塩化物/硫酸塩のモル比を有しており、方法がさらに、塩化物/硫酸塩のモル比を約2.5:1から約1:4の間の範囲のモル比に変更するステップを含む、方法。
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