ところで、循環液を冷却及び加熱するヒートポンプ装置は、運転に適した環境で稼動する場合だけでなく、例えば、冷媒の流量が少ない場合、外気温が低い状況で冷却を行いたい場合、又は、循環液温度が低い状況で加熱を行いたい場合等においても、冷媒を圧縮機で圧縮したときの圧力(高圧圧力)が十分に高いことが望まれる。
しかしながら、特許文献1においては、空気調和機において逆止弁ブリッジ回路とレシーバとの間に第1の絞り装置が設けられているものの、この絞りの開度を状況に応じてどのように制御するかについて、特に触れられていない。従って、ヒートポンプ装置の高性能化等の観点から改善の余地が残されていた。
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、高圧圧力が上がりにくい場合を回避することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の観点によれば、供給される循環液を冷却及び加熱することが可能なヒートポンプ装置における以下の構成が提供される。即ち、このヒートポンプ装置は、第1熱交換器と、第2熱交換器と、レシーバと、ブリッジ回路と、絞り部と、制御部と、を備える。前記第1熱交換器は、外気と冷媒との間で熱交換を行う。前記第2熱交換器は、前記循環液と前記冷媒との間で熱交換を行う。前記レシーバは、前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器に接続される。前記ブリッジ回路は、前記循環液の冷却時には前記第1熱交換器からの前記冷媒を前記レシーバへ供給し、前記循環液の加熱時には前記第2熱交換器からの前記冷媒を前記レシーバへ供給する。前記絞り部は、前記レシーバと前記ブリッジ回路とを接続する冷媒経路に配置される。前記制御部は、前記循環液の冷却時において前記外気の温度が予め定められた第1温度よりも低い場合、又は、前記循環液の加熱時において前記循環液の温度が予め定められた第2温度よりも低い場合に、前記絞り部における冷媒の流れ易さを冷媒回路の圧力に応じて変更する。
これにより、循環液の冷却運転時及び加熱運転時の何れにおいても、冷媒の高圧圧力が得られにくい状況を絞り部の制御によって回避することができるので、良好なサイクルを実現することができる。
前記のヒートポンプ装置においては、前記第1温度は21℃以下であることが好ましい。
これにより、循環液の冷却時において外気温が低い状況に対し、冷媒回路の圧力に応じた絞り部の制御を適切に行うことができる。
前記のヒートポンプ装置においては、前記第2温度は、加熱運転時における循環液の温度設定範囲の下限以下の温度であることが好ましい。
これにより、循環液の加熱時において循環液の温度が低い状況に対し、冷媒回路の圧力に応じた絞り部の制御を適切に行うことができる。
前記のヒートポンプ装置においては、前記冷媒の高圧圧力が予め定められた判定範囲から外れている場合に、前記絞り部における冷媒の流れ易さを冷媒回路の圧力に応じて変更することが好ましい。
これにより、高圧圧力が上がりにくい場合、及び、過負荷により圧力が過剰に高くなっている場合等において、冷媒回路の圧力を適切に制御することができる。
前記のヒートポンプ装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記制御部は、第1制御と、第2制御と、を選択的に行う。前記第1制御において、前記制御部は、前記絞り部における冷媒の流れ易さを冷媒回路の圧力に応じて変更する。前記第2制御において、前記制御部は、前記絞り部で行われる過冷却の強さを、目標過冷却度と現在の過冷却度との差に応じて変更する。
これにより、共通の絞り部を用いて、高圧圧力を良好に得たい状況と、冷媒に適切な強さで過冷却を行いたい状況と、の両方に対応することができる。
前記のヒートポンプ装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記制御部は、前記第2制御を、前記循環液の冷却時においては、前記外気の温度が前記第1温度以上であり、かつ、前記冷媒の高圧圧力が予め定められた第1判定範囲内であるときに行う。前記制御部は、前記第2制御を、前記循環液の加熱時においては、前記循環液の温度が前記第2温度以上であり、かつ、前記冷媒の高圧圧力が予め定められた第2判定範囲内であるときに行う。
これにより、状況に応じた適切な制御を行うことができる。
前記のヒートポンプ装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記制御部は、前記目標過冷却度を、前記冷媒回路における冷媒の循環流量に基づいて求める。前記制御部は、前記現在の過冷却度を、前記第1熱交換器又は前記第2熱交換器から前記絞り部に至る冷媒経路において検出された冷媒の温度と、冷媒の高圧圧力と、を用いて求める。
これにより、目標過冷却度を実質的に負荷に応じて定めることができるとともに、第1熱交換器又は第2熱交換器の出口等で冷媒の圧力を検出することなく、冷媒の過冷却度を取得することができる。これにより、簡素な構成で冷媒の過冷却度を適切に制御することができるので、性能の優れたヒートポンプ装置を実現することができる。
前記のヒートポンプ装置においては、前記絞り部は、互いに並列に接続された複数の弁を備えることが好ましい。
これにより、絞り部における冷媒の流れ易さを、状況に応じて柔軟に変更することができる。
前記のヒートポンプ装置においては、前記絞り部は、開度を調整可能な膨張弁を備えることが好ましい。
これにより、絞り部によって、冷媒に与えられる過冷却の強さを調整することができる。
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、本実施形態に係るヒートポンプ装置1の冷媒回路図である。
図1に示すヒートポンプ装置1はヒートポンプチラーとして構成されており、外気−冷媒熱交換器(第1熱交換器)31と、循環液−冷媒熱交換器(第2熱交換器)32と、を備える。ヒートポンプ装置1は、外気−冷媒熱交換器31と、循環液−冷媒熱交換器32と、の間で冷媒を介して熱交換を行うことで、循環液−冷媒熱交換器32に供給される循環液を冷却したり加熱したりすることができる。
本明細書において、冷媒とは熱を運ぶ媒体を意味し、ヒートポンプ装置1に導入された循環液を冷却するために用いられる場合と、循環液を加熱するために用いられる場合と、を含む概念である。循環液がヒートポンプ装置1において冷却される場合は、外部装置90に冷熱が供給され、循環液がヒートポンプ装置1において加熱される場合は、外部装置90に温熱が供給される。循環液としては、例えば水を用いることができるが、これに限定されない。
ヒートポンプ装置1(循環液−冷媒熱交換器32)と、外部装置90と、の間は、1対の循環液配管91によって接続されている。循環液は、この循環液配管91で循環するように構成される。ヒートポンプ装置1で冷却又は加熱された循環液は、外部装置90に送られて冷熱又は温熱を供給した後、ヒートポンプ装置1に戻される。
ヒートポンプ装置1は、コンプレッサ11を備える。このコンプレッサ11は、駆動源としてのエンジン12によって駆動される。本実施形態において、このエンジン12は、ガスを燃料とするガスエンジンとして構成されているが、ガス以外の燃料(重油、灯油等)を用いても良い。また、コンプレッサ11は、エンジン12以外の駆動源(例えば、電動モータ)によって駆動されても良い。
アキュムレータ13は、冷媒を液とガスとに分離して、ガス状態の冷媒をコンプレッサ11に供給する。これにより、コンプレッサ11による液圧縮が防止される。コンプレッサ11は、駆動されることにより、アキュムレータ13からガス状態の冷媒を吸入する。冷媒は、コンプレッサ11により断熱的に圧縮されることで過熱状態となり、高温かつ高圧のガス状となる。コンプレッサ11は、このガス状の冷媒をオイルセパレータ15へ吐出する。
オイルセパレータ15は、ガス状の冷媒から、コンプレッサ11用の潤滑油を分離する。この分離された潤滑油は、図略の油戻し回路によってコンプレッサ11に戻される。オイルセパレータ15によって潤滑油が分離されたガス状の冷媒は、四方弁17へ供給される。
四方弁17は、4つのポートを有する切替弁として構成されている。四方弁17は、循環液を冷却する冷却運転時と、循環液を加熱する加熱運転時とで、冷媒の供給先を異ならせるように切り替えることができる。
最初に、冷却運転時の冷媒の流れについて説明する。
循環液を冷却する場合、四方弁17は、図1の実線で示すようにポート同士を接続することで、2つの外気−冷媒熱交換器31へガス状の冷媒を供給する。外気−冷媒熱交換器31としては、例えば、プレートフィンチューブ式の熱交換器を用いることができる。外気−冷媒熱交換器31では外気と高温の冷媒との間で熱交換が行われ、これにより冷媒は凝縮して、高圧の液状に変化する。即ち、このとき、外気−冷媒熱交換器31は凝縮器として機能する。外気−冷媒熱交換器31で熱交換されて液状となった冷媒は、複数の逆止弁から構成される公知のブリッジ回路18を通過した後、絞り回路(絞り部)19を経由して、レシーバ23へ供給される。なお、絞り回路19は、その絞り効果によって、外気−冷媒熱交換器31の出口の冷媒に過冷却を付与することが可能であり、その詳細については後述する。
レシーバ23から出た高圧の液状の冷媒は、過冷却用熱交換器24を通過することにより過冷却が行われた後、膨張弁26を通過することにより減圧され、低温かつ低圧の霧状(気液混合状態)となる。その後、冷媒は、ブリッジ回路18を経由して、循環液−冷媒熱交換器32へ供給される。循環液−冷媒熱交換器32としては、例えば、プレート式の熱交換器を用いることができる。循環液−冷媒熱交換器32では、循環液と低温の冷媒との間で熱交換が行われ、これにより、循環液を冷却することができる。この熱交換に伴って冷媒の霧状の部分が蒸発し、低温かつ低圧のガス状に変化する。即ち、このとき、循環液−冷媒熱交換器32は蒸発器として機能する。その後、冷媒は、四方弁17を経由してアキュムレータ13に戻される。
次に、加熱運転時の冷媒の流れについて説明する。
循環液を加熱する場合、四方弁17は、図1の破線で示すようにポート同士を接続することで、循環液−冷媒熱交換器32へガス状の冷媒を供給する。循環液−冷媒熱交換器32では、循環液と高温の冷媒との間で熱交換が行われ、これにより、循環液を加熱することができる。これにより冷媒は凝縮して、低温かつ高圧の液状に変化する。即ち、このとき、循環液−冷媒熱交換器32は凝縮器として機能する。循環液−冷媒熱交換器32で熱交換されて液状になった冷媒は、ブリッジ回路18及び絞り回路19を経由して、レシーバ23へ供給される。
レシーバ23から出た低温かつ高圧の液状の冷媒は、過冷却用熱交換器24を通過することにより過冷却が行われた後、膨張弁26を通過することにより減圧され、低温かつ低圧の霧状(気液混合状態)となる。その後、冷媒は、ブリッジ回路18を経由して、外気−冷媒熱交換器31へ供給される。外気−冷媒熱交換器31では、外気と低温の冷媒との間で熱交換が行われる。この熱交換に伴って冷媒の霧状の部分が蒸発し、低温かつ低圧のガス状に変化する。即ち、このとき、外気−冷媒熱交換器31は蒸発器として機能する。その後、冷媒は、四方弁17を経由してアキュムレータ13に戻される。
次に、冷媒に過冷却を付与可能であり、かつ、その過冷却度を調整可能な絞り回路19について、詳細に説明する。
この絞り回路19は、ブリッジ回路18とレシーバ23とを接続する冷媒経路に配置されている。絞り回路19は、ブリッジ回路18から流入する低温かつ高圧の液状の冷媒に対して例えば絞り膨張を行うことによって、上流側の熱交換器(外気−冷媒熱交換器31又は循環液−冷媒熱交換器32)の出口の冷媒に対して過冷却を付与することができる。
絞り回路19は、互いに並列に接続された、第1路41と、第2路42と、第3路43と、第4路44と、を備える。
第1路41には、第1開閉弁51が配置されている。この第1開閉弁51は電磁弁として構成されており、電気信号に基づいて、第1路41における冷媒の流れを許容する状態と、阻止する状態と、の間で切り換えることができる。
第2路42には、第2開閉弁52が配置されている。この第2開閉弁52は第1開閉弁51と同様に電磁弁として構成されており、電気信号に基づいて第2路42を開閉することができる。
第3路43には、膨張弁53が配置されている。この膨張弁53は、第3路43を流れる冷媒を減圧することができる。また、この膨張弁53は、冷媒を減圧する度合いを変更するために、その開度を調節可能に構成されている。
第4路44は、例えばキャピラリ管等の細管として構成され、固定絞りとして冷媒の流量を制限できるように構成されている。
以上の構成で、第1開閉弁51及び第2開閉弁52の開閉の組合せにより、絞り回路19における冷媒の流れ易さを複数段階で変更することができる。また、膨張弁53の開度を変更することで、減圧されてレシーバ23に流入する冷媒の割合を変更することができる。
次に、レシーバ23を出た冷媒に対して過冷却を付与する過冷却用熱交換器24を説明する。
過冷却用熱交換器24は、レシーバ23と膨張弁26との間に配置されており、レシーバ23から膨張弁26に流れる液状の冷媒を冷却することができる。具体的に説明すると、過冷却用熱交換器24を出た液状の冷媒の一部は、膨張弁27によって減圧されて霧状にされるとともに過冷却用熱交換器24に流れ、レシーバ23から流れる液状の冷媒との間で熱交換が行われる。これにより、膨張弁26に対し、より低温な液状の冷媒を供給することができる。
次に、絞り回路19を制御するためにヒートポンプ装置1が備える電気的構成について説明する。図2は、絞り回路19を制御するための構成を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、ヒートポンプ装置1は、絞り回路19を制御するための制御部80を備える。
具体的に説明すると、この制御部80は公知のコンピュータとして構成され、CPU、ROM、RAM等を備える。そして、前記ROMには、絞り回路19を適宜するためのプログラムが記憶されている。このハードウェア及びソフトウェアの協働により、このコンピュータを、絞り回路19を制御する制御部80として動作させることができる。
次に、制御部80が行う制御のために情報を取得するための各種のセンサを説明する。
ヒートポンプ装置1は、高圧センサ71と、循環液温度センサ73と、第1温度センサ76と、第2温度センサ77と、外気温センサ74と、を備える。これらのセンサは、何れも制御部80に電気的に接続されている。
高圧センサ71は、図1に示すように、コンプレッサ11とオイルセパレータ15の間の冷媒の経路に配置されており、冷媒の圧力を検出することができる。この高圧センサ71による検出結果は、冷媒の凝縮温度を推定するために用いられる。
第1温度センサ76は、外気−冷媒熱交換器31からブリッジ回路18に至る冷媒の経路に配置されており、冷媒の温度を検出することができる。この第1温度センサ76が検出した温度は、冷却運転時の過冷却度を計算するために用いられる。
第2温度センサ77も第1温度センサ76と同様の構成を有しており、循環液−冷媒熱交換器32からブリッジ回路18に至る冷媒の経路に配置される。この第2温度センサ77が検出した温度は、加熱運転時の過冷却度を計算するために用いられる。
循環液温度センサ73は、ヒートポンプ装置1に供給される循環液の温度を検出することができる。循環液温度センサ73は、循環液−冷媒熱交換器32において、循環液が供給される入口の近傍に配置されている。
外気温センサ74は、外気の温度を検出することができる。この外気温センサ74は、例えば、エンジン12を配置するためにヒートポンプ装置1に形成される図示しないエンジンルームの換気口に配置することができるが、これに限定されない。
制御部80は、第1開閉弁51、第2開閉弁52及び膨張弁53のそれぞれに電気的に接続されている。制御部80は、上記のセンサから入力された情報に基づいて、第1開閉弁51、第2開閉弁52及び膨張弁53に対して電気信号を出力して制御する。
この構成のヒートポンプ装置1が使用される状況は様々であり、例えば、冷媒の流量が少ない場合、外気温が低い状況で循環液の冷却を行いたい場合、又は、循環液温度が低い状況で循環液の加熱を行いたい場合等も想定される。一般的に、これらの場合においては、回路内での冷媒圧力が低くなるので、十分な高圧圧力が得られにくい傾向にある。
この点、本実施形態のヒートポンプ装置1は、制御部80が以下のようにして絞り回路19の流れ易さを適宜制御することで、良好なサイクルを実現するように構成されている。
まず、冷却運転時のフローについて、図3を参照して説明する。図3は、循環液を冷却する場合の制御部80の処理を示すフローチャートである。
図3の処理が開始されると、制御部80は、外気温センサ74の検出結果に基づき、外気の温度が所定の閾値(第1温度)より低いか否かを判断する(ステップS101)。この第1温度は適宜定めることができるが、好ましくは20℃以下、更に好ましくは15℃以下の温度とすることができる。別の観点で言えば、日本工業規格のB8613に規定するウォータチリングユニットの冷却試験に関し、熱源が空冷式である場合の凍結条件として定められる乾球温度が21℃であるので、第1温度は、この21℃以下とすることが望ましい。本実施形態では、第1温度は10℃に定められている。
外気温が上記の第1温度より低い場合には、冷媒回路における圧力が低下するために、十分に高い高圧圧力を実現しにくい状態であると考えられる。そこで、この場合、制御部80は、絞り回路19より上流側での冷媒の圧力が適切となるように、第1開閉弁51、第2開閉弁52及び膨張弁53のうち少なくとも何れかの開閉を制御する(ステップS102)。なお、ステップS102の制御の具体例については後述する。その後、処理はステップS101に戻る。
ステップS101の判断で、外気温が第1温度と等しいかそれよりも高い場合、制御部80は、高圧センサ71の検出結果に基づき、ヒートポンプ装置1における冷媒の圧力が所定の範囲(第1判定範囲)に入っているか否かを判断する(ステップS103)。この第1判定範囲は、コンプレッサ11の仕様で定められている適正な圧力範囲、例えば、コンプレッサの保護のための圧力範囲等に基づいて定められる。言い換えれば、ステップS103における第1判定範囲は、コンプレッサ11の性能等に応じて様々に設定され得る。
ステップS103の判断で、冷媒の圧力が上記の第1判定範囲内に入っていない場合、制御部80は、外気温が第1温度より低い場合と同様に、絞り回路19より上流側での冷媒の圧力が適切となるように、第1開閉弁51、第2開閉弁52及び膨張弁53のうち少なくとも何れかを制御する(ステップS102)。その後、処理はステップS101に戻る。
ステップS102の処理としては様々なものが考えられるが、例えば以下のように制御することができる。
ステップS101において、外気温センサ74で得られる外気の温度の値が閾値より低い場合、又は、ステップS103において、高圧センサ71で得られる高圧圧力の値が第1判定範囲から低い側に外れる場合は、ステップS102で、制御部80は、第1開閉弁51を閉じ、第2開閉弁52を閉じる。次に、制御部80は、高圧センサ71が検出した圧力が所定の範囲(第1圧力制御範囲)より低い側に外れている場合は、膨張弁53の開度を現在より減少させ、高い側に外れている場合は、膨張弁53の開度を現在より増加させる制御を、一定の周期で繰り返す。なお、この制御で用いられる第1圧力制御範囲は、ステップS103の判断で用いられる第1判定範囲とは異なるが、当該第1判定範囲を考慮して定められることは勿論である。
これにより、例えば、コンプレッサ11の性能維持のために好ましくない程に高圧圧力が低い場合に、第1開閉弁51、第2開閉弁52及び膨張弁53を閉じることで、高圧圧力の上昇を促して、コンプレッサ11を良好に保護することができる。また、外気温が低い場合でも、絞り回路19において冷媒が流れにくくする制御を行うことで、高圧圧力が上がり易くすることができる。一方、高圧圧力が上昇するのに伴って膨張弁53の開度が増加するように制御されるので、高圧圧力の制御がオーバーシュートして上がり過ぎるのを抑制することができる。
一方、ステップS103において、高圧センサ71から得られる高圧圧力の値が第1判定範囲から高い側に外れる場合は、ステップS102で、制御部80は、第1開閉弁51及び第2開閉弁52を開くように制御する。ただし、第1開閉弁51及び第2開閉弁52のうち一方だけを開いても良い。これにより、絞り回路19において絞りが実質的に行われなくなるので、例えば何らかの理由で過負荷が生じている場合において、高圧圧力の過剰な上昇を回避することができる。
これにより、絞り回路19の上流側で適切な高圧圧力が得られ、ヒートポンプ装置1において良好なサイクルを実現することができる。
ステップS103の判断で、冷媒の圧力が上記の第1判定範囲内に入っている場合、制御部80は、冷媒の循環量を推定するとともに、これに応じた最適な過冷却度となるように、第1開閉弁51、第2開閉弁52及び膨張弁53のうち少なくとも何れかを制御する(ステップS104)。
以下、この過冷却調整制御について詳細に説明する。まず、制御部80は、ヒートポンプ装置1において冷媒が循環する循環流量を求める。この冷媒の循環流量は、コンプレッサ11の回転数を(例えばエンジン回転数に基づいて)求めるとともに、この回転数と、コンプレッサ11における冷媒吐出し量と、に基づいて求めることができる。一般的に、低負荷運転時には冷媒の循環流量が少なくなる一方、高負荷運転時には循環流量が多くなる。従って、冷媒の循環流量は、ヒートポンプ装置1の負荷を実質的に示すものであるということができる。
そして、制御部80は、得られた冷媒の循環流量に基づいて、当該循環流量の場合に目標とする過冷却度を計算により求める。この目標過冷却度の計算は、冷媒の循環流量と、設計者が意図する目標過冷却度と、の関係を表す関数を予め作成して制御部80に記憶させ、この関数を用いることにより行うことができる。ただし、上記の関係は、関数に限定されず、例えばマップによって表現することもできる。
次に、制御部80は、外気−冷媒熱交換器31の出口における飽和液温度を取得する。
本来、この飽和液温度を求めるには冷媒の圧力が必要になる。しかし、本実施形態においては図1に示すように、外気−冷媒熱交換器31の出口に圧力センサが設けられていない。
そこで、制御部80は、冷媒の循環流量と、当該循環流量において外気−冷媒熱交換器31の部分等で生じる圧力損失と、の関係について、予め実験等により求めた結果を、関数又はマップ等の形で記憶している。制御部80は、計算により得られた循環流量を当該関数に代入することで、圧力損失を求める。そして、制御部80は、得られた圧力損失と、高圧センサ71が検出した圧力と、を用いることにより、外気−冷媒熱交換器31の出口の圧力を推定することができる。
そして、制御部80は、この圧力の推定値に基づいて飽和液温度を求めるように構成されている。
過冷却度は、飽和液温度と、実際の冷媒温度と、の差で表される。従って、制御部80は、上記の計算により得られた飽和液温度から、第1温度センサ76の検出値を減算することにより、過冷却度を求める。
上記の結果を踏まえて、第1開閉弁51、第2開閉弁52及び膨張弁53の制御が行われる。具体的には、制御部80は、第1開閉弁51を開き、第2開閉弁52を閉じた状態とした上で、得られた過冷却度(現在の過冷却度)と、目標過冷却度と、を比較する。現在の過冷却度が目標過冷却度よりも小さかった場合には、制御部80は、膨張弁53の開度を小さくするように制御する。この結果、膨張弁53が冷媒に付与する過冷却を強めることができる。一方、現在の過冷却度が目標過冷却度よりも大きかった場合には、制御部80は、膨張弁53の開度を大きくするように制御する。この結果、膨張弁53が冷媒に付与する過冷却を弱めることができる。
制御部80は、現在の過冷却度及び目標過冷却度を一定の周期で再計算し、新しい結果に基づいて、膨張弁53の開度の制御を行う。この反復により、冷媒の循環流量に応じた適切な過冷却度を安定して実現し、高性能なヒートポンプ装置1を得ることができる。
次に、本実施形態における加熱運転時のフローについて、図4を参照して説明する。
図4の処理が開始されると、制御部80は、循環液温度センサ73から得られた循環液の温度が所定の閾値(第2温度)より低くなっているか否かを判断する(ステップS201)。この第2温度は適宜定めることができるが、好ましくは30℃以下、更に好ましくは25℃以下の温度とすることができる。別の観点で言えば、第2温度は、チラーを加熱運転する場合の温度設定範囲(本実施形態では、35℃から55℃までの範囲)の下限以下とすることが望ましい。本実施形態では、第2温度は20℃に定められている。
ステップS201の判断で、循環液の温度が上記の第2温度より低い場合には、絞り回路19より上流側での冷媒の圧力が適切となるように、第1開閉弁51、第2開閉弁52及び膨張弁53のうち少なくとも何れかを制御する(ステップS202)。なお、ステップS202の制御の具体例については後述する。その後、処理はステップS201に戻る。
ステップS201の判断で、循環液の温度が第2温度と等しいかそれよりも高い場合、制御部80は、高圧センサ71の検出結果に基づき、ヒートポンプ装置1における冷媒の圧力が所定の範囲(第2判定範囲)に入っているか否かを判断する(ステップS203)。このステップS203の判断は、上述の冷却運転時のフローにおけるステップS103と同様である。ステップS203の判断で、冷媒の圧力が上記の第2判定範囲内に入っていない場合、制御部80は、上記のステップS202の処理を行う。その後、処理はステップS201に戻る。
ステップS202の処理としては様々なものが考えられるが、例えば以下のように制御することができる。
即ち、高圧センサ71で得られる高圧圧力の値が、所定圧力P1よりも低い場合は、制御部80は、第1開閉弁51を閉じ、第2開閉弁52を閉じるとともに、膨張弁53を全閉状態とする。
高圧センサ71で得られる高圧圧力の値が、上記の圧力P1を上回っている場合は、制御部80は、第1開閉弁51を閉じ、第2開閉弁52を開く。そして、制御部80は、高圧センサ71が検出した圧力が所定の範囲(第2圧力制御範囲)より低い側に外れている場合は、膨張弁53の開度を現在より減少させ、高い側に外れている場合は、膨張弁53の開度を現在より増加させる制御を、一定の周期で繰り返す。なお、この制御で用いられる第2圧力制御範囲は、ステップS203の判断で用いられる第2判定範囲とは異なるが、当該第2判定範囲を考慮して定められることは勿論である。
ステップS203の判断で、冷媒の圧力が上記の第2判定範囲内に入っている場合は、制御部80は、冷媒の循環量を推定するとともに、これに応じた最適な過冷却度となるように、第1開閉弁51、第2開閉弁52及び膨張弁53のうち少なくとも何れかを制御する(ステップS204)。
このステップS204の処理は、上述の冷却運転時のフローにおけるステップS104の処理と殆ど同様であるので、詳細な説明は省略する。ただし、ステップS204の処理では、第1開閉弁51及び第2開閉弁52の両方が開かれた状態で、膨張弁53の開度が制御される。また、ステップS204で飽和液温度を求めるときは、圧力損失として、外気−冷媒熱交換器31ではなく循環液−冷媒熱交換器32の部分で生じる圧力損失が用いられる。また、過冷却度は、飽和液温度から、第2温度センサ77の検出値を減算することにより求められる。
これにより、加熱運転時において循環液の温度が低い場合でも、絞り回路19の上流側において適切な高圧圧力が得られ、ヒートポンプ装置1において良好なサイクルを実現することができる。更に、冷媒の循環流量に応じた適切な過冷却度を実現できるので、ヒートポンプ装置1の性能を向上させることができる。
以上に説明したように、本実施形態のヒートポンプ装置1は、供給される循環液を冷却及び加熱することが可能に構成されている。ヒートポンプ装置1は、外気−冷媒熱交換器31と、循環液−冷媒熱交換器32と、レシーバ23と、ブリッジ回路18と、絞り回路19と、制御部80と、を備える。外気−冷媒熱交換器31は、外気と冷媒との間で熱交換を行う。循環液−冷媒熱交換器32は、循環液と冷媒との間で熱交換を行う。レシーバ23は、外気−冷媒熱交換器31及び循環液−冷媒熱交換器32に接続される。ブリッジ回路18は、循環液の冷却時には外気−冷媒熱交換器31からの冷媒をレシーバ23へ供給し、循環液の加熱時には循環液−冷媒熱交換器32からの冷媒をレシーバ23へ供給する。絞り回路19は、レシーバ23とブリッジ回路18とを接続する冷媒経路に配置される。制御部80は、循環液の冷却時において外気の温度が予め定められた閾値(第1温度)よりも低い場合、又は、循環液の加熱時において循環液の温度が予め定められた閾値(第2温度)よりも低い場合に、絞り回路19における冷媒の流れ易さを冷媒回路の圧力に応じて変更する(ステップS101、ステップS102、ステップS201、ステップS202)。
これにより、循環液の冷却運転時及び加熱運転時の何れにおいても、冷媒の高圧圧力が得られにくい状況を絞り回路19の制御によって回避することができるので、良好なサイクルを実現することができる。
また、本実施形態のヒートポンプ装置1において、前記第1温度は、21℃以下の温度、具体的には10℃である。
これにより、循環液の冷却時において外気温が低い状況に対し、冷媒回路の圧力に応じた絞り回路19の制御を適切に行うことができる。
また、本実施形態のヒートポンプ装置1において、前記第2温度は、加熱運転時における循環液の温度設定範囲の下限以下(35℃以下)の温度、具体的には15℃である。
これにより、循環液の加熱時において循環液の温度が低い状況に対し、冷媒回路の圧力に応じた絞り回路19の制御を適切に行うことができる。
また、本実施形態のヒートポンプ装置1において、制御部80は、冷媒の高圧圧力が予め定められた判定範囲(第1判定範囲又は第2判定範囲)から外れている場合に、絞り回路19における冷媒の流れ易さを冷媒回路の圧力に応じて変更する(ステップS102、ステップS103、ステップS202、ステップS203)。
これにより、高圧圧力が上がりにくい場合、及び、過負荷により圧力が過剰に高くなっている場合等において、冷媒回路の圧力を適切に制御することができる。
また、本実施形態のヒートポンプ装置1において、制御部80は、第1制御と、第2制御と、を選択的に行う。前記第1制御において、制御部80は、絞り回路19における冷媒の流れ易さを冷媒回路の圧力に応じて変更する(図3のステップS102、図4のステップS202)。前記第2制御において、制御部80は、絞り回路19で行われる過冷却の強さを、目標過冷却度と現在の過冷却度との差に応じて変更する(図3のステップS104、図4のステップS204)。
これにより、共通の絞り回路19を用いて、高圧圧力を良好に得たい状況と、冷媒に適切な強さで過冷却を行いたい状況と、の両方に対応することができる。
また、本実施形態のヒートポンプ装置1において、制御部80は、前記第2制御を、循環液の冷却時においては、外気の温度が前記第1温度以上であり、かつ、冷媒の高圧圧力が予め定められた第1判定範囲内であるときに行う(図3のステップS101、ステップS103、ステップS104)。制御部80は、前記第2制御を、循環液の加熱時においては、循環液の温度が前記第2温度以上であり、かつ、冷媒の高圧圧力が予め定められた第2判定範囲内であるときに行う(図4のステップS201、ステップS203、ステップS204)。
これにより、状況に応じた適切な制御を行うことができる。
また、本実施形態のヒートポンプ装置1において、制御部80は、前記目標過冷却度を、冷媒回路における冷媒の循環流量に基づいて求める。制御部80は、前記現在の過冷却度を、外気−冷媒熱交換器31又は循環液−冷媒熱交換器32から絞り回路19に至る冷媒経路において検出された冷媒の温度(第1温度センサ76又は第2温度センサ77の検出温度)と、冷媒の高圧圧力(高圧センサ71の検出圧力)と、を用いて求める。
これにより、目標過冷却度を実質的に負荷に応じて定めることができるとともに、外気−冷媒熱交換器31又は循環液−冷媒熱交換器32の出口等で冷媒の圧力を検出することなく、冷媒の過冷却度を取得することができる。これにより、簡素な構成で冷媒の過冷却度を適切に制御することができるので、性能の優れたヒートポンプ装置1を実現することができる。
また、本実施形態のヒートポンプ装置1において、絞り回路19は、互いに並列に接続された複数の弁(第1開閉弁51、第2開閉弁52、及び膨張弁53)を備える。
これにより、絞り回路19における冷媒の流れ易さを、状況に応じて柔軟に変更することができる。
また、本実施形態のヒートポンプ装置1において、絞り回路19は、開度を調整可能な膨張弁53を備える。
これにより、絞り回路19によって、冷媒に与えられる過冷却の強さを調整することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
冷媒の循環流量を上述と同様にコンプレッサ11の回転数から求め、この冷媒流量が少ない場合に、絞り回路19を冷媒が流れにくくなるように第1開閉弁51、第2開閉弁52、及び膨張弁53を制御しても良い。
高圧センサ71が検出する圧力が所定値以上になった場合に、制御部80が、第1開閉弁51、第2開閉弁52及び膨張弁53が全て全開状態となるように制御しても良い。これにより、過負荷による圧力上昇を効果的に緩和することができる。
絞り回路19は、第1開閉弁51及び第2開閉弁52を備える構成に代えて、開閉弁を1つだけ備える構成とすることもできる。また、開閉弁は3つ以上備えられても良い。更には、膨張弁が複数並列に配置されても良い。
外気−冷媒熱交換器31の数を1つ又は3つ以上に変更することができる。また、循環液−冷媒熱交換器32の数を2つ以上に変更することができる。
レシーバ23から出た冷媒に過冷却を付与する過冷却用熱交換器24については、省略することもできる。
本発明は、エンジンで駆動されるコンプレッサと、電動モータで駆動されるコンプレッサと、を備えるハイブリッド型のヒートポンプ装置に適用することもできる。