JP2018204643A - 変速機構および変速機構の組立方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そのため、変速機において大きな動力が伝達される際には、推力を増大させて摩擦力を確保することが必要となる。その際、推力を発生させるポンプやモータといった動力源の負荷が上昇することでエネルギー消費の増加を招くおそれがあり、また、構造的に滑りが発生する箇所では摩擦損失が増大するおそれがある。
このような変速機構の一つとして、入力側および出力側のそれぞれに、同一半径位置を保ちながら径方向へ移動可能な複数の小さなスプロケット(以下、「ピニオンスプロケット」という)を配設し、これらの複数のピニオンスプロケットで見かけ上の大きなスプロケット(以下、「複合スプロケット」という)を形成し、これらの複合スプロケットに跨って巻き掛けられて噛み合うチェーンによって動力を伝達するとともに入出力間の速度比(変速比)を変更する機構が提案されている。この変速機構では、それぞれの複合スプロケットを形成する複数のピニオンスプロケットが、動力の入力される回転軸または動力の出力される回転軸の軸心に対して等距離を維持しながら径方向に可動であって、回転軸と一体に回転するように支持され、回転軸の軸心を中心に回転(公転)する。
変速時には、軸方向移動機構によって軸方向に移動する軸方向力伝達部材にカムローラが押圧され、カムローラを軸方向に移動させることで、固定回転部と可動回転部との相対角度(位相)が変更されるのに連動して固定ディスクと可動ディスクとの相対角度が変更される。これにより、固定放射状溝と可動放射状溝との交差箇所がそれぞれ径方向に移動し、各交差箇所に挿入された支持部が径方向に移動する。このようにして、ピニオンスプロケットによって形成される複合スプロケットを相似形に拡縮させ、一方の複合スプロケットを拡径させるとともに他方の複合スプロケットを縮径させることで、変速比が変更される(特許文献1参照)。
なお、ここでいう目的に限らず、後述する〔発明を実施するための形態〕に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的として位置づけることができる。
前記同期移動機構は、前記ピニオンスプロケットの支持部が挿入されるとともに前記径方向に延びる固定放射状溝が複数形成され、前記回転軸と一体に回転する固定ディスクと、前記回転軸の軸方向から視て前記固定放射状溝のそれぞれと交差する第一交差箇所に前記支持部が挿入されるとともに前記径方向に延びる可動放射状溝が複数形成され、前記固定ディスクに対して同心に配置され且つ相対回転可能な可動ディスクと、前記可動ディスクを前記固定ディスクに対して相対回転駆動して、前記第一交差箇所を前記径方向に移動させる相対回転駆動機構とを備える。
さらに、前記相対回転駆動機構は、前記軸方向に沿う固定カム溝が形成され、前記固定ディスクと一体に回転する固定回転部と、前記径方向から視て前記固定カム溝と交差するとともに前記軸方向に沿う可動カム溝が形成され、前記可動ディスクと一体に回転する可動回転部と、前記径方向から視て前記固定カム溝と前記可動カム溝とが交差する第二交差箇所に配設されたカムローラと、前記カムローラに対して前記軸方向の力を伝達する軸方向力伝達部材と、前記軸方向力伝達部材を前記軸方向に移動させる軸方向移動機構とを備える。
また、前記固定ディスク,前記可動ディスク,前記固定回転部,前記可動回転部,前記カムローラ,前記軸方向力伝達部材のそれぞれは、前記チェーンを挟んで前記軸方向の一方および他方のそれぞれに設けられている。
そして、前記軸方向移動機構は、前記二つの軸方向力伝達部材のそれぞれに前記軸心に対する前記径方向の一方および他方に穿設された貫通孔に挿入され且つ固定された四個のナット部材と、前記二つの軸方向力伝達部材のそれぞれに配置されたナット部材のうち、前記軸方向に関して対向して配置される二つのナット部材に共通して螺合する二本のネジ軸と、を備え、前記ナット部材の少なくとも一つは、前記貫通孔の内面に接触する外周面にテーパ部が形成され、同テーパ部の小径側から前記軸方向力伝達部材の外方へ突出する部分の外周面に固定用ナットを螺合する雄ネジが形成されたテーパナットで構成されており、前記テーパナットが挿入される前記貫通孔の内周面には前記テーパ部に対応したテーパ面が形成されていることを特徴としている。
この変速機構は、動力の入力される回転軸(入力軸)を有する一方の複合スプロケットと、動力の出力される回転軸(出力軸)を有する他方の複合スプロケットと、これらの複合スプロケットに巻き掛けられて一方から他方の複合スプロケットに動力を伝達するチェーンとを備えている。各複合スプロケットは、チェーンと噛み合う複数のピニオンスプロケットを有する。これらのピニオンスプロケットは、回転軸の軸心から等距離を維持しながら径方向に同期して移動し、また、回転軸の軸心まわりに公転する。
軸方向については、チェーンに対して近接する側を軸方向内側と呼び、チェーンに対して離隔する側を軸方向外側と呼ぶ。さらに、動力伝達線を基準として、軸方向の一方(以下、「軸方向一方」という)および他方(以下、「軸方向他方」という)を定める。すなわち、軸方向一方と軸方向他方とがチェーンを挟んで互いに反対側にある。
図面では、軸方向一方を「X1」と示し、軸方向他方を「X2」と示し、径方向内側を「Y1」と示し、径方向外側を「Y2」と示し、遅角側を「Z1」と示し、進角側を「Z2」と示す。
まず、変速機構の構成を説明する。
図1に示すように、変速機構では、二組の複合スプロケット3,3にチェーン4が巻き掛けられている。このチェーン4としては、図1に例示するサイレントチェーンに限らず、ローラチェーンやリーフチェーンといった公知のものを用いることができる。
入力側の複合スプロケット3には、動力の入力される回転軸1が設けられている。また、出力側の複合スプロケット3には、動力の出力される回転軸1が設けられている。これらの複合スプロケット3,3は、動力の伝達方向の違い(即ち、動力伝達方向が入力側か出力側かの違い)を除いてそれぞれ同様に構成されている。そこで、主に入力側の複合スプロケット3の構成を説明する。
図1のピニオンスプロケット30およびガイドロッド40ならびにチェーン4は、入力側の接円Aが最小であって出力側の接円Aが最大、即ち、変速比が最Lowの状態のものを実線で示し、反対に、入力側の接円Aが最大であって出力側の接円Aが最小、即ち、変速比が最Highの状態のものを二点鎖線で示す。
相対回転駆動機構60には、軸心C1まわりに回転する回転系の構成として二種の回転部19,29が設けられている。回転部19,29のうち一方は、固定ディスク10と一体に回転する固定回転部19であり、他方は、可動ディスク20と一体に回転する可動回転部29である。そのほか、相対回転駆動機構60には、軸方向に力を授受する軸方向力授受系の構成が設けられている。
また、軸方向内側から可動ディスク20,固定ディスク10の順に並設されている。すなわち、軸方向一方および軸方向他方の可動ディスク20が向かい合って設けられている。可動ディスク20の軸方向内側では、チェーン4がピニオンスプロケット30およびガイドロッド40に巻き掛けられている。
以下の説明では、回転系の構成を公転系の構成,可動系の構成,固定系の構成の順に説明した後に、軸方向力授受系の構成を述べる。
上述したように、回転軸1の軸心C1まわりに公転する公転系の構成として、ピニオンスプロケット30およびガイドロッド40が設けられる。なお、説明の便宜ために図2および図3では、ピニオンスプロケット30やガイドロッド40を同断面に示している。
図1に示すように、ここでは六つのピニオンスプロケット30が設けられている。具体的には、第一ピニオンスプロケット301,第二ピニオンスプロケット302,第三ピニオンスプロケット303,第四ピニオンスプロケット304,第五ピニオンスプロケット305,第六ピニオンスプロケット306の順に、ピニオンスプロケット30が間隔をおいて配置される。なお、図1では、チェーン4と噛み合うピニオンスプロケット30のうち最も遅角側に第一ピニオンスプロケット301を示している。
図4に示すように第一ピニオンスプロケット301は、チェーン4と噛み合うギヤ歯311を有するギヤ部310と、ギヤ部310を支持するスプロケット支持部330との二つに大別される。これらのギヤ部310とスプロケット支持部330とは別体に設けられている。なお、図4では、軸方向一方の部材や部位に符号を付し、軸方向他方の部材や部位の符号は省略する。
基部312は、ギヤ歯311に対して径方向内側に設けられる。この基部312は、ギヤ歯311よりも軸方向寸法が長く形成され、軸方向端部のそれぞれがギヤ歯311から突出する。基部312の軸方向端部のそれぞれには、摺接部320が結合されている。
具体的には、遅角側に設けられた遅角側収容部325と進角側に設けられた進角側収容部326との二種の収容部324が凹設されている。図4では、一つの遅角側収容部325と二つの進角側収容部326とが軸方向一方に設けられるものを例示する。ただし、軸方向他方に示すように、二つの遅角側収容部と一つの進角側収容部とが設けられてもよい。
ここでは、後述する溝穴部352の周方向中央に摺接部320が位置した状態において、進角付勢用スプリング391の付勢力と遅角付勢用スプリング392の付勢力とが等しくなるように設定される。そのため、周方向の力(外力)がギヤ部310に働いていなければ、スプリング391,392の付勢力(内力)が打ち消しあって、溝穴部352の周方向中央に摺接部320が位置する。あるいは、ギヤ部310が進角側または遅角側に変位するほど、溝穴部352の周方向中央へ向けて摺接部320を付勢する力が大きくなる。つまり、外力の解放時に、溝穴部352の周方向中央に摺接部320の位置が収束するように、リターンスプリング390が摺接部320を付勢する。
この固定スプロケット支持部340では、ギヤ歯311の径方向位置に対して軸部341の径方向位置が重複するように設けられる。更に言えば、図6に例示するように、チェーン4に対してギヤ歯311が噛合する径方向位置と軸部341および軸受け342の軸心C3の径方向位置とが一致していることが好ましい。
この溝穴部352は、軸方向から視て扇形をなす。溝穴部352がなす扇形は、摺接部320がなす扇形に対応する形状に形成され、一方の円弧は径方向内側に配置され、他方の円弧は径方向外側に配置されている。そのため、溝穴部352には、接円Aの周方向に延びる一対の摺接面(内表面)353が形成される。具体的には、溝穴部352において、径方向外側に外側摺接面354が形成され、径方向内側に内側摺接面355が形成される。更に言えば、外側摺接面354の径方向内側に摺接部320の外側摺接面322が摺接し、内側摺接面355の径方向外側に摺接部320の内側摺接面323が摺接することで、溝穴部352において摺接部320が摺動することができるようになっている。
遊動許容機構370は、可動スプロケット支持部350の溝穴部352と、ギヤ部310の摺接部320とから構成される。この遊動許容機構370は、所定の基準位相に対してギヤ部310の遊動を所定の範囲内で許容する。
また、所定の範囲とは、所定の基準位相に対して、進角側および遅角側のそれぞれにギヤ歯311の半歯分の範囲である。そのため、最も遅角側または最も進角側にギヤ部310が位置していれば、進角側または遅角側へのギヤ部310の遊動がギヤ歯311の一歯分まで許容される。この所定の範囲は、溝穴部352に配置された摺接部320に対して進角側および遅角側に形成される空間の周方向寸法、即ち、摺接部320の摺接が許容される寸法に対応している。そのため、溝穴部352の周方向中央に配置された摺接部320を基準とすれば、この摺接部320に対して進角側の空間および遅角側の空間のそれぞれが、ギヤ歯311の半歯分に対応する周方向寸法に設定される。
上述したように、リターンスプリング390は、進角付勢用スプリング391で摺接部320を進角側に付勢するとともに遅角付勢用スプリング392で摺接部320を遅角側に付勢することで、所定の基準位相に向けて進角側および遅角側の双方からギヤ部310を付勢する。
図3および図5に示すように、ガイドロッド40のそれぞれには、ロッド支持部41の外周に円筒状のガイド部材42が設けられている。このガイドロッド40の軸方向端部40aには、ガイド部材42からロッド支持部41が突出している。この突出したロッド支持部41がディスク10,20に支持される。一方、ガイド部材42の軸方向外側にチェーン4が接触する。
第一ガイドロッド401は、径方向位置によらずチェーン4を常に案内するのに対して、第二ガイドロッド402は、接円Aが最も大きいときにチェーン4を案内するものの、接円Aが最も小さいときにチェーン4を案内しない。
なお、ガイドロッド40やピニオンスプロケット30の数は、多くするほどチェーン4の軌道を真円に近づけて巻き掛け半径の変動が抑えられるものの、製造コストや重量の増加を招くおそれがあるため、これらを考慮して設定することが好ましい。
放射状溝21,22のうち一方は、ピニオンスプロケット30のそれぞれに対応して設けられたスプロケット用可動放射状溝21(一箇所のみに符号を付す)であり、他方は、ガイドロッド40のそれぞれに対応して設けられたロッド用可動放射状溝22(一箇所のみに符号を付す)である。
また、穴25,26のうち一方は、連結シャフト27が挿通される貫通穴25(一箇所のみに符号を付す)であり、他方は、回転軸1の挿通される軸穴26である。回転軸1の軸心C1と同心に軸穴26が設けられ、この軸穴26の径方向外側に貫通穴25が設けられる。
スプロケット用可動放射状溝21には、ピニオンスプロケット30の可動スプロケット支持部350が挿入される。同様に、ロッド用固定放射状溝12には、ガイドロッド40のロッド支持部41が挿入される。
これらの可動放射状溝21,22は、軸方向から視て直線状に設けられている。とりわけ、直線状のスプロケット用可動放射状溝21に幅W1,W2が一定のまま径方向に延びる可動スプロケット支持部350(図4参照)が挿入されることで、ピニオンスプロケット30の回り止め(自転防止)が図られる。
また、突出溝212は、所定の長さ(径方向の寸法)Lに亘って溝幅W2′が一定のまま径方向に延びている。この所定の長さLは、可動スプロケット支持部350における突出部356の所定の長さL(図4参照)とほぼ同一に設定される。突出溝212の形状は、可動スプロケット支持部350の突出部356に対応した形状に形成される。
第一ロッド用可動放射状溝23の内周端部23aは、第二ロッド用可動放射状溝24の内周端部24aよりも、回転軸1の軸心C1に対する距離が遠く、径方向外側に位置する。これに対して、第一ロッド用可動放射状溝23の外周端部23bから回転軸1の軸心C1に対する距離と第二ロッド用可動放射状溝24の外周端部24bから回転軸1の軸心C1に対する距離とは等しい。
貫通穴25には、連結シャフト27が挿通される。そのため、連結シャフト27の本数に合わせた数(ここでは三つ)の貫通穴25(一箇所のみに符号を付す)が設けられる。これらの貫通穴25は、周方向に沿って等間隔に配置されている。
貫通穴25の内径は、連結シャフト27の外径に見合った大きさに設定される。
可動カム溝29aは、周方向に沿って等間隔に複数配置されることが好ましい。たとえば、図10に例示するように三箇所に設けられてもよいし、図3に例示するように回転軸1の軸心C1を挟んで向かい合って二箇所あるいは四箇所に設けられてもよい。
第一連結部27aは、軸方向一方および軸方向他方のそれぞれにおいて、可動ディスク20と可動回転部29とを結ぶ軸方向領域に位置する。そのため、第一連結部27aによって可動ディスク20と可動回転部29とが一体に回転するように連結される。また、第二連結部27bは、軸方向一方および軸方向他方の可動ディスク20を結ぶ軸方向領域に位置する。そのため、第二連結部27bによって一対の可動ディスク20が一体に回転するように連結される。
ここでは、連結シャフト27の軸方向端部のそれぞれがボルト28によって可動回転部29に固定されている。
なお、連結シャフト27は、可動カム溝29aと干渉しない位相に配置されるが(図5および図10参照)、説明の便宜のために図2および図3では、可動カム溝29aならびに連結シャフト27およびボルト28を同断面に示す。
図8に示すように、固定ディスク10には、径方向に延びる二種の放射状溝11,12と、これらの放射状溝11,12よりも径方向内側の二種の穴15,16とが設けられる。これらの放射状溝11,12および穴15,16は、固定ディスク10を軸方向に貫通して形成されている。
これらの固定放射状溝11,12は、可動放射状溝21,22と同様に、対応するピニオンスプロケット30,ガイドロッド40を案内するための溝である。したがって、ピニオンスプロケット30,ガイドロッド40の径方向移動経路に沿って固定放射状溝11,12のそれぞれが設けられる。
図9に示すように、固定放射状溝11,12のそれぞれは、軸方向から視て可動放射状溝21,22のそれぞれと交差するように形成される。たとえば、入力側の複合スプロケット3では、変速比が最Lowのときに、固定放射状溝11,12と可動放射状溝21,22との交差箇所(以下、「ディスク交差箇所」という)CP1が最も径方向内側に位置する。なお、固定ディスク10の外径と可動ディスク20の外径とは軸方向から視て重複するが、説明の便宜のために図9には、固定ディスク10の外径よりも可動ディスク20の外径をやや小さく示す。
支持部340,41の直径に応じて、固定放射状溝11,12の各溝幅が設定されている。詳細には、固定放射状溝11,12の溝幅は、対応する支持部340,41の外径よもやや大きい。そのため、支持部340,41が固定放射状溝11,12に沿って円滑に移動(摺動)することができる。
これらの固定放射状溝11,12は、固定ディスク10と可動ディスク20の相対回転に応じて交差箇所CP1が径方向へ移動するように、径方向に対して傾斜しており、軸方
向から視て曲線状に形成されている。
第一ロッド用固定放射状溝13の内周端部13aは、第二ロッド用固定放射状溝14の内周端部14aよりも、回転軸1の軸心C1に対する距離が遠く、径方向外側に位置する。これに対して、第一ロッド用固定放射状溝13の外周端部13bから回転軸1の軸心C1に対する距離と、第二ロッド用固定放射状溝14の内周端部14bから回転軸1の軸心C1に対する距離とは等しい。ここでは、回転軸1の軸心C1に対する距離が等しい箇所で比較したときに、第一ロッド用固定放射状溝13よりも第二ロッド用固定放射状溝14のほうが径方向に対して傾斜して設けられている。
貫通穴15には、連結シャフト27が挿通される。具体的には、連結シャフト27の第一連結部27aが貫通穴15に挿通される。そのため、連結シャフト27の本数に合わせた数の貫通穴15(ここでは三つ)が設けられる。これらの貫通穴15は、周方向に沿って等間隔に配置されている。
図9の(a)に示すように、接円Aが最小(変速比が最Low)のときには、貫通穴15において周方向の一端部15aに連結シャフト27が位置し、反対に、図9の(c)に示すように、接円Aが最大(変速比が最High)のときには、貫通穴15において周方向の他端部15bに連結シャフト27が位置する。このように貫通穴15の内部で連結シャフト27が移動するために、貫通穴15の溝幅(径方向寸法)は、連結シャフト27の第一連結部27aの外径よりも大きく設定される。
また、固定カム溝19aは、図11に示すように、径方向から視て可動カム溝29aのそれぞれと交差するように形成される。
なお、固定カム溝29aの形成箇所や形成個数は、可動カム溝29aと同様に、周囲の構成や要求仕様などに応じて設定すればよく、種々の形状や個数のものを採用することができる。
図2および図5に示すように、軸方向力授受系の構成として、カム交差箇所CP2に挿入されるカムローラ70(図2参照)と、カムローラ70に対して軸方向の力を伝達する変速用フォーク(軸方向力伝達部材)80と、変速用フォーク80に対して拡縮バイアス方向(後段にて詳述)とは反対方向に初期付勢力を付与するカウンタスプリング(カウンタ付勢部材)99と、変速用フォーク80を軸方向に移動させる軸方向移動機構90とが設けられる。この軸方向移動機構90は、変速用フォーク80を軸方向に移動させることでカムローラ70を軸方向に移動させるカムローラ移動機構ともいえる。
なお、図2において、上方に配置された変速用フォーク80の左右に設けられるナット94及び下方に配置された変速用フォーク80の左側に設けられるナット94には、図12(a),(b)に示される構成のナット94aが用いられ、下方に配置された変速用フォーク80の右側に設けられるナット94には、図13に示される構成のテーパナット94bが用いられる。これについては、詳細を後述する。
回転部19,29と軸方向位置が重複してカムローラ70,変速用フォーク80およびナット94が設けられる。これらのカムローラ70,変速用フォーク80およびナット94から軸方向外側に向けて、サポート98,連動ギヤ機構95、電動モータ92の順に設けられる。カムローラ70,変速用フォーク80,サポート98,連動ギヤ機構95は、動力伝達線C2(図2参照)を基準として対称に軸方向一方および軸方向他方のそれぞれに対向して配置される。ただし、電動モータ92は軸方向一方にだけ配置される。
また、カウンタスプリング99の軸心C4と同心のガイドシャフト993(図5参照)が付設されている。ここでは、カウンタスプリング99が径方向一方および径方向他方のそれぞれに配置される。具体的には、軸方向から視て変速用フォーク80の四隅それぞれにカウンタスプリング99およびガイドシャフト993が配置される。なお、図2および図3に示すように、ネジ軸93がカウンタスプリング99のガイドシャフトとして利用(兼用)されてもよい。
具体的には、ピニオンスプロケット30およびガイドロッド40が、軸方向一方および軸方向他方の固定ディスク10を含んでこれらを結ぶ軸方向領域に配置される。また、連結シャフト27が、軸方向一方および軸方向他方の可動回転部29を含んでこれらを結ぶ軸方向領域に配置される。さらに、カウンタスプリング99が、軸方向一方および軸方向他方の変速用フォーク80どうしの軸方向内側に配置され、そのガイドシャフト993が、軸方向一方および軸方向他方の変速用フォーク80を含んでこれらを結ぶ軸方向領域に配置される。そして、ネジ軸93が、軸方向一方および軸方向他方の連動ギヤ機構95を含んでこれらを結ぶ軸方向領域に配置される。
以下の説明では、まずカムローラ70および変速用フォーク80について述べ、続いて軸方向移動機構90,カウンタスプリング99の順に述べる。
回転部収容穴811の内径は、可動回転部29の外径よりもやや大きく設定されている。そのため、回転部収容穴811の径方向内側で回転部19,29が回転可能である。
この溝部81aには、図3,図10に示すように、カムローラ70と転がり接触する転動体81b(一箇所のみに符号を付す)が設けられている。ここでは、複数の転動体81bが溝部81aの全周に並んで配置されている。これらの転動体81bとしては、図3,図10に例示するニードルベアリングのほか、ボールベアリングを用いることができる。
ネジ機構用の貫通孔801は、径方向一方(図5および図10では右上)および径方向他方(図5および図10では左下)のそれぞれに設けられている。また、シャフト用の貫通孔802は、カウンタスプリング99の配置に対応しており、ここでは変速用フォーク80の四隅に設けられている。
ネジ軸93は、軸方向一方の部位と軸方向他方の部位とで雄ネジの向きが互いに反対向きに設定されている。このように雄ネジの向きが設定されるのに合わせて、軸方向一方のナット94と軸方向他方のナット94とで雌ネジの向きが反対向きに設定される。たとえば、ネジ軸93における軸方向一方の部位と軸方向一方のナット94とのそれぞれには右ネジが形成され、逆に、ネジ軸93における軸方向他方の部位と軸方向他方のナット94とのそれぞれには左ネジが形成される。
これらのナット94は、上記のネジ機構用の貫通孔801内に配置され、変速用フォーク80に結合(固定)される。すなわち、軸方向一方および軸方向他方のそれぞれに対向して配置された変速用フォーク80は、軸方向移動機構90のネジ軸93およびナット84によって連結されている。
二種のギヤ950,959の一方は、ネジ軸93の軸心C5と同心に設けられ、ネジ軸93と一体に回転するように結合されたピニオンギヤ950である。具体的には、第一ピニオンギヤ951が、第一ネジ軸931の軸方向端部に結合され、径方向一方に配置される。また、第二ピニオンギヤ952が、第二ネジ軸932の軸方向端部に結合され、径方向他方に配置される。
各変速用フォーク80に配設される計四個のナット94のうち、前述した如く、三個のナット94には図12に示す構成のナット94aが用いられている。
ナット94aは、内周面に雌ネジが形成された円筒状の本体941と、一端から径方向に延出するフランジ942とを備え、フランジ942に円弧状のボルト孔943が形成されており、ボルト孔943に挿入される固定用ボルト944により変速用フォーク80に固定される。
テーパナット94bが挿入される貫通孔801にはテーパ面801aが形成されており、テーパナット94bの外周面には、テーパ面801aに密接可能なテーパ部945が形成されている。
また、テーパ部945の小径側には変速用フォーク80の外方へ突出する円筒部946が形成されており、同円筒部946の外周面には固定用ナット947が螺合される雄ネジ948が形成されている。
この力N1,N2の関係は、テーパの角度をθとすると、
N2=(N1/2)/sinθ
となる。
摩擦係数をμとすると、固定用ナット947で締め付け固定したテーパナット94bを回すのに必要な力Fは、
F=N2×μ
となり、テーパ部945の外径の平均半径をrとすると、テーパナット94bを回すのに必要なトルクTは、
T=F×r
となる。
なお、他のナット94aは、固定用ボルト944で強固に固定されるため、ネジ軸93によって回されてしまうことはない。
このサポート98には、挿通されるネジ軸93のそれぞれを支持する二つのネジ軸用穴980と、挿通される回転軸1を支持する回転軸用穴989とが設けられる。ネジ軸用穴980に対してネジ軸93が回転可能に支持され、同様に、回転軸用穴989に対して回転軸1が回転可能に支持される。
なお、本発明に係るナット94a,94bおよびネジ軸93の組立工程以外については、説明を省略する。
なお、ネジ軸931の先端部が貫通孔801に到達する前に、固定用ナット947をネジ軸931に遊嵌させておく必要がある。
また、前記第三工程と同様にネジ軸931の両端が所定の位置となるように調整する必要もある。
また、各ナット94a間でねじ位相を同一に揃えることは、ネジの製造上困難である。
さらに、図12(b)に示すように、ボルト孔943を円弧状の長孔で構成することにより、ねじ位相のずれを多少吸収することも可能であるが、限界がある。
そこで、本発明の一実施形態では、最後に組み付けられるナット94として、変速用フォーク80に対する固定時の回転方向の相対位置に制約を受けないテーパナット94bを用いることで、ねじ位相のずれを吸収可能とした。
本実施形態の変速機構は、上述のように構成されるため、変速用フォーク80に懸かる初期荷重を抑制して変速時の摩擦を低減し、電動モータ92の負荷が低減できる。
また、変速機構の組立時における調整作業が容易となり、組付け性が向上する。
以上、一実施形態について説明したが、本発明は上述の一実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上述した一実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせてもよい。
たとえば、上記一実施形態では、最後に組み付けられるナット部材のみにテーパナットを用いたが、他のナット部材にもテーパナットを用いることに何ら支障はなく、テーパナットを複数個用いれば、組立時の調整がより容易化する。
3 複合スプロケット
4 チェーン
10 固定ディスク
11 スプロケット用固定放射状溝
15 貫通穴
19 固定回転部
19a 固定カム溝
20 可動ディスク
21 スプロケット用可動放射状溝
29 可動回転部
29a 可動カム溝
30 ピニオンスプロケット
40 ガイドロッド
50 同期移動機構
60 相対回転駆動機構
70 カムローラ
80 変速用フォーク(軸方向力伝達部材)
801 貫通孔
900 軸方向移動機構(カムローラ移動機構)
91 送りネジ機構
92 電動モータ
93 ネジ軸
931 第二のネジ軸
932 第一のネジ軸
94,94a ナット(ナット部材)
94b テーパナット(ナット部材)
A 接円
Claims (3)
- 動力が入力または出力される回転軸と、前記回転軸の径方向に可動に支持される複数のピニオンスプロケットと、前記複数のピニオンスプロケットを前記回転軸の軸心から等距離を維持させながら前記径方向に同期させて移動させる同期移動機構とを有する複合スプロケットを二組と、前記二組の複合スプロケットに巻き掛けられたチェーンとを備え、前記複数のピニオンスプロケットの何れをも囲み且つ前記複数のピニオンスプロケットの何れにも接する接円の半径を変更することによって変速比を変更する変速機構であって、
前記同期移動機構は、
前記ピニオンスプロケットの支持部が挿入されるとともに前記径方向に延びる固定放射状溝が複数形成され、前記回転軸と一体に回転する固定ディスクと、
前記回転軸の軸方向から視て前記固定放射状溝のそれぞれと交差する第一交差箇所に前記支持部が挿入されるとともに前記径方向に延びる可動放射状溝が複数形成され、前記固定ディスクに対して同心に配置され且つ相対回転可能な可動ディスクと、
前記可動ディスクを前記固定ディスクに対して相対回転駆動して、前記第一交差箇所を前記径方向に移動させる相対回転駆動機構とを備え、
前記相対回転駆動機構は、
前記軸方向に沿う固定カム溝が形成され、前記固定ディスクと一体に回転する固定回転部と、
前記径方向から視て前記固定カム溝と交差するとともに前記軸方向に沿う可動カム溝が形成され、前記可動ディスクと一体に回転する可動回転部と、
前記径方向から視て前記固定カム溝と前記可動カム溝とが交差する第二交差箇所に配設されたカムローラと、
前記カムローラに対して前記軸方向の力を伝達する軸方向力伝達部材と、
前記軸方向力伝達部材を前記軸方向に移動させる軸方向移動機構と、を備え、
前記固定ディスク,前記可動ディスク,前記固定回転部,前記可動回転部,前記カムローラ,前記軸方向力伝達部材のそれぞれは、前記チェーンを挟んで前記軸方向の一方および他方のそれぞれに設けられ、
前記軸方向移動機構は、
前記二つの軸方向力伝達部材のそれぞれに前記軸心に対する前記径方向の一方および他方に穿設された貫通孔に挿入され且つ固定された四個のナット部材と、
前記二つの軸方向力伝達部材のそれぞれに配置されたナット部材のうち、前記軸方向に関して対向して配置される二つのナット部材に共通して螺合する二本のネジ軸と、を備え、
前記ナット部材の少なくとも一つは、前記貫通孔の内面に接触する外周面にテーパ部が形成され、同テーパ部の小径側から前記軸方向力伝達部材の外方へ突出する部分の外周面に固定用ナットを螺合する雄ネジが形成されたテーパナットで構成されており、
前記テーパナットが挿入される前記貫通孔の内周面には前記テーパ部に対応したテーパ面が形成されている
ことを特徴とする変速機構。 - 前記ピニオンスプロケットは、
前記回転軸の周方向に沿う所定の範囲で前記支持部に対してギヤ歯が遊動することを許容する遊動許容機構を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の変速機構。 - 請求項1又は2に記載の変速機構を組み立てる組立方法であって、
前記同期移動機構および前記相対回転駆動機構を回転軸に組付ける第一工程と、
前記二つの軸方向力伝達部材の径方向の一方に穿設された前記貫通孔にそれぞれナット部材を組み付けると共に前記二つの軸方向力伝達部材間の距離を所定の状態に調整する第二工程と、
前記第二工程で組付けた二つのナット部材間に第一のネジ軸を螺合する第三工程と、
何れか一方の前記軸方向力伝達部材の径方向の他方に穿設された前記貫通孔にナット部材を組み付けると共に第二のネジ軸を螺合する第四工程と、
前記第二のネジ軸に前記テーパナットを螺合させつつ他方の前記軸方向力伝達部材の径方向の他方に穿設された前記貫通孔に組み付けたのちに前記固定用ナットで固定する第五工程とから成る
ことを特徴とする変速機構の組立方法。
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